説明

心臓弁の輪調節を支援するための診断キット

弁逆流を減少するために冠状動脈洞で必要な変化の量を決定するための診断デバイス。このデバイスは、遠位チューブの遠位端部分に遠位アンカー(18)を有する遠位チューブ(14)、近位チューブの遠位端部分に近位アンカー(16)を有する近位チューブ(12)、およびこの遠位チューブを近位チューブに対して移動する調節器を含む。この近位チューブおよび遠位チューブは、冠状動脈洞内に係合するように適合された入れ子式の細長い本体を一緒に形成し、そしてこのデバイスは、上記遠位アンカーの上記近位アンカーに対する移動を測定するためのスケール(27)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓弁修復のための装置および方法に、そしてより特定すれば、標的の弁の周りの血管中に挿入されるデバイスを用いて、心臓弁機能を改善するための心臓弁の輪の調節を支援するための診断キットに関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
心臓弁の逆流、または心臓弁の流出側から流入側への漏れは、心不全を持つ患者における共通の出来事、およびこれらの患者における疾病率および死亡率の原因である。通常、逆流は、左心房および左心室の間に位置する僧帽弁、または右心室と右心室との間に位置する三尖弁で起こる。心不全を持つ患者における僧帽弁逆流は、左心室、乳頭筋および僧帽弁の輪の幾何学的形態における変化によって引き起こされる。同様に、三尖弁逆流は、右心室、乳頭筋および三尖弁の輪の幾何学的形態における変化によって引き起こされる。これらの幾何学的改変は、僧帽弁および三尖弁小葉の束縛および収縮期における不完全交連を生じる。
【0003】
心臓弁修復は、すべての病因の心臓逆流を矯正するための選択の手順である。現在の外科的技法の使用とともに、40%〜60%の逆流心臓弁が、外科医の経験および解剖学的状態に依存して修復され得る。心臓弁置換に対する心臓弁修復の利点は、良好に記載されている。これらの利点は、心臓機能のより良好な保存、ならびに、抗凝固剤関連出血、血栓塞栓症および心内膜炎の減少したリスクを含む。
【0004】
最近、手術なくして心臓弁を修復するための最小侵襲的技法におけるいくつかの開発が導入されている。これら技法のいくつかは、冠状動脈洞を通じて僧帽弁を再構築するためのシステムを導入することを含む。
【0005】
冠状動脈洞は、右心房中の冠状動脈口で開始し、そして僧帽弁の輪の後部、側方および中間局面に緊密に近接する房室溝を通過する血管である。その僧防弁の輪に隣接する位置のため、この冠状動脈洞は、僧防弁の輪に対して作用するための血管内補綴具を位置決めするための理想的導管を提供し、それによってそれを再形状化する。
【0006】
心臓弁修復のための最小侵襲的装置の例は、Solemらによる特許文献1、2001年2月5日に出願されたSolemらによる米国特許出願第09/775,677号、2002年11月26日に出願されたSolemらによる米国特許出願第10/303,765号、2002年5月9日に出願されたSolemらによる米国特許出願第10/141,348号、2002年12月24日に出願されたSolemらによる米国特許出願第10/329,720号、2003年11月13日に出願されたSolemらによる米国特許出願第10/714,462号および2003年12月16日に出願されたSolemらによる米国特許出願第60/530352号(’352出願)に見出され得、これらのすべては、本明細書中に参考として援用される。
【0007】
上記’352出願により詳細に記載され、そして本明細書中の図10および11に示されるような心臓弁修復のための最小侵襲的装置の1つの特定の例は、ブリッジ416によって連結される近位アンカー412および遠位アンカー414を有する細長い本体410を含む。これら近位アンカー412および遠位アンカー414は、両方がニチノールから作製されるステントであり、そして両方が交互するピーク42を有するジグザグ形状の材料のループ54を含むメッシュ形態を有するアンカーである。これらループ54は、各ピーク42で連結され、4つの側面が開口するリング56を形成する。この近位アンカー412および遠位アンカー414の両方は、これらアンカーが冠状動脈洞の直径より小さい直径を有する圧縮状態と、これらアンカーが冠状動脈洞の直径に等しいかまたはそれより大きい直径を有する拡大状態との間を移行可能である。
【0008】
図10に示されるように、ブリッジ416は、リンク418、419によって近位アンカー412と遠位アンカー414との間に連結される。図11により詳細に示されるように、リンク419は、ベース421と、このベースから延びそしてアンカー414に連結されるアーム422を有する。このリンクはまた、それを通じて再吸収可能な糸420がブリッジに固定され得る手段として供される穴428を含む。
【0009】
このブリッジ416は形状記憶材料から作製され、そして可撓性であって、本体410が冠状動脈洞の形状に一致することを可能にする。このブリッジ416は、隣接する要素間にスペース425を有する連結されたX形状の要素424を含む。このブリッジは、ブリッジ416が第1の長さを有する能動化状態、および、このブリッジが第2の長さであって、上記第1の長さより長い第2の長さを有する非能動化状態である2つの状態を有する。一時的スペーサーとして作用する再吸収可能な糸420は、スペース425中に織り込まれ、このブリッジをより長い非能動化状態に保持する。
【0010】
本体は、患者の冠状動脈洞中に、圧縮された状態にある両方のアンカー412、414、およびより長い非能動化状態にある再吸収可能な糸420を含むブリッジ416とともに挿入される。これらアンカー412、414が所望の位置に配置された後、それらは、それらが本体410を冠状動脈洞に付着するために供されるそれらの拡大状態に変形される。その間に冠状動脈洞の壁がこれらアンカー412、414の周りで増殖する所定の時間の後、上記再吸収可能な糸は溶解し、そしてブリッジ416は、そのより長い非能動化状態から、そのより短い能動化状態まで変形する。ブリッジ416の短縮化は、近位アンカー412および遠位アンカー414をより近くに一緒に引き、冠状動脈洞を締め、そしてその周縁を減少する。冠状動脈洞の周縁のこの減少は、僧帽弁逆流を引き起こすギャップを閉鎖する。
【0011】
【特許文献1】米国特許出願第6,210,432号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記に記載のものを含む弁の輪の再形状化デバイスは、それらが特定の寸法または特徴を変動し得るように製造され得る。例えば、これらデバイスは、それらが短縮化されるか、またはそうでなければ、弁の再形状化がどの程度必要であるかに依存して所定量だけ形状を変化するように製造され得る。換言すれば、医師は、輪を僅かに再構築するだけであるデバイス、または特定量だけ輪を再構築するように特注設計されているデバイスである間の、輪を厳しく再構築する再形状化デバイスを用いることの選択を有し得る。さらに、これら弁再形状化デバイスはまた、異なる長さ、および/またはアンカーサイズを有するように製造され得る。僧帽弁および三尖弁小葉接合の厳格さの程度を変動すること、ならびに心臓弁の輪のサイズおよび長さを変動することに起因して、医師が弁の輪のどの程度の再形状化が必要であるかを知ること、および弁再形状化デバイスを挿入する前に輪のサイズおよび長さの考えを有することが有利であり得る。この知識は、医師が適切な量だけ弁の輪を再形状化し得るデバイスを選択することを可能にし得る。従って、医師が、心臓弁の輪で必要な再形状化することの量、および/または輪のサイズおよび長さを測定するために用い得るデバイスに対する必要性が存在する。このようなデバイスは、医師が、患者中に、その特定患者のために必要な再形状化により緊密に接近する輪再形状化デバイス、ならびに患者の輪のサイズおよび長さに適合するように特注設計され得るデバイスを選択することを可能にし得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(要旨)
弁逆流を減少するために心臓血管において所望される量の変化を決定するための診断デバイスが開示される。この診断デバイスは、遠位チューブの遠位端に取り付けられた遠位アンカーを有するこの遠位チューブ(またはその他の適切な細長い本体)、近位チューブの遠位端に取り付けられた近位アンカーを有する近位チューブ(またはその他の適切な細長い本体)、およびそれによって上記遠位チューブが上記近位チューブに対して移動され得る調節器を備える。1つの実施形態では、このデバイスは、冠状動脈洞中に挿入され得る。上記近位チューブおよび遠位チューブは、一緒に、上記冠状動脈洞内に係合するように適合された入れ子式の細長い本体を形成する。さらに、上記遠位チューブは、その上に均一に間隔を置かれた複数の放射線不透過性マーカーを含み、上記近位チューブに対する上記遠位チューブによって移動された距離を測定するための手段を提供し、上記遠位アンカーおよび上記近位アンカーは、圧縮状態と拡大された状態との間で変形可能であり、そして上記調節器の特定距離の移動は、同じ距離だけ上記遠位チューブの移動を引き起こす。上記近位アンカーおよび遠位アンカーは、バルーン、バスケットまたはステントであり得る。
【0014】
心臓弁逆流を減少するために必要な冠状動脈洞への変化の量を決定するための方法もまた開示される。このような方法は、冠状動脈洞中に診断デバイスを挿入する工程、上記遠位アンカーを冠状動脈洞に係留する工程、上記近位アンカーを冠状動脈洞に係留する工程、上記遠位アンカーを僧帽弁逆流が減少するように近位方向に移動する調節器を用いる工程、および上記遠位アンカーの近位方向移動を測定し、そして同時に僧帽弁逆流の量を測定する工程を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(詳細な説明)
以下に記載されるデバイスおよび方法は、任意の適切な心臓弁の輪中で用いられ得るが、説明の容易さおよび一貫性のために、以下のデバイスおよび方法は、僧帽弁および僧帽弁の輪を詳細に参照して記載される。
【0016】
図1を参照して、冠状動脈洞20は、右心房22および冠状動脈口24から延び、そして僧帽弁26の周りを包む。本明細書において、用語「冠状動脈洞」は、房室の溝に沿って僧帽弁26に隣接して位置する静脈戻りシステムの一部分を記載するための一般用語として用いられる。本明細書で用いられる用語「冠状動脈洞20」は、一般に、冠状動脈洞、大心臓静脈および前室間動脈を含む。僧帽弁の輪28は、それに対していくつかの小葉が付着する、僧帽弁オリフィスを取り囲む組織の部分である。僧帽弁26は、2つの小葉、前部小葉29および後部小葉31を有する。この前部小葉は、3つのスキャロップP1、P2およびP3を有し、これらは、健常な僧帽弁では、前部小葉29と接合し、この弁を通る血液の逆流を防ぐ。
【0017】
僧帽弁逆流の問題は、しばしば、僧帽弁の輪28の後部局面が拡大し、そして後部小葉スキャロップP1、P2およびP3の1つ以上を前部小葉29から離れて転置し、それを通って逆流が起こるギャップが形成されることを引き起こす。僧帽弁逆流を減少するか、またはなくすために、それ故、僧帽弁の輪28の後部局面を前部方向に移動すること、およびこの小葉転置によって引き起こされるギャップを閉鎖することが所望される。
【0018】
図2および3に示されるように、本発明の診断デバイス10の実施形態は、近位チューブ12および遠位チューブ14を備える。この診断デバイス10は、それが、冠状動脈洞のような心臓弁および右心室心臓血管に隣接する血管中に挿入可能であるような寸法であり得る。さらに、この診断デバイス10は、それが挿入される血管の湾曲にそれを適合させるに十分可撓性であり得る。
【0019】
図4aに示されるように、近位チューブ12は、2つの管腔、チューブ管腔35および膨張管腔37を有するプラスチックチューブであり得る。チューブ管腔35は、遠位チューブ14が近位チューブ12を通過することを可能にする。膨張管腔は、それを通るか、またはそれによって膨張ガスまたは液体がアンカーを拡大し得るチャネルとして、また以下により詳細に記載されるように供される。このチューブ形態は、アンカーがバルーンのように膨張可能であるときに用いられ得る。1つの好ましい構築では、上記近位チューブは、約0.130インチの外径を有するナイロン管材から形成される。上記チューブ管腔35は、好ましくは、約0.085インチの直径を有する。1つの代替の実施形態では、上記近位チューブ内の膨張管腔は、半月体または卵形形状で形成され得る。別の代替の実施形態では、上記近位チューブは、2つ以上の膨張管腔を備えて形成され得、断面流れ領域を増加する。なお別の代替の実施形態では、上記近位チューブの近位部分は、プラスチックの歪み軽減管材ならびに上記チューブ管腔および膨張管腔と連通するためのハブが取り付けられる。
【0020】
図4bに示されるように、上記遠位チューブもまた、2つの管腔、ガイドワイヤ管腔19および膨張管腔21を含み得る。このカイドワイヤ管腔19は、以下により詳細に記載されるように、遠位チューブ14が、それが患者中に挿入されるときそれに対して辿り得るチャネルとして供される。1つの好ましい実施形態では、このガイドワイヤ管腔19は、約0.042インチの直径を備えて形成される。上記膨張管腔21は、また以下により詳細に記載されるように、それを通るか、またはそれによって膨張ガスまたは液体がアンカーを拡大し得るチャネルとして供される。このチューブ形態は、アンカーが、バルーンのような膨張可能であるときに用いられ得る。
【0021】
1つの好ましい構築では、上記遠位チューブは、約0.067インチの外径を有するPebax55D管材から形成される。上記ガイドワイヤ管腔19は、好ましくは、約0.042インチの直径を有する。1つの代替の実施形態では、上記遠位チューブの膨張管腔は、半月体または卵形形状を備えて形成され得る。別の代替の実施形態では、上記遠位チューブは、2つ以上の膨張管腔を備えて形成され得、このチューブを通る断面流れ領域を増加する。なお別の代替の実施形態では、上記遠位チューブの近位部分は、約0.0725インチの内径および約0.0780インチの外径を有するステンレス鋼編組みを持つポリアミド管材によって取り囲まれ、近位部分を強化し、そして押し可能性を増加する。この近位部分もまた、上記ガイドワイヤおよび膨張管腔との連通のためのハブが取り付けられる。
【0022】
図5は、上記遠位チューブ14が、同軸である内側チューブ68および外側チューブ66を含む代替の形態を示す。この形態を基礎に、ガイドワイヤ管腔64が内側チューブ68の内側に形成され、そして膨張管腔62がこの内側チューブと外側チューブ66との間に形成される。このチューブ形態は、アンカーが、バルーンのように膨張可能であるか、またはバスケットのように機械的に膨張可能であるときに用いられ得る。これ同軸チューブ形態はまた、上記近位チューブ12に対しても用いられ得る。いくつかの形態では、上記に記載のように、逆であるよりむしろ、この近位チューブ12が上記遠位チューブを通過することもまた認識される。
【0023】
上記遠位チューブ14は、図2に示されるように、チューブの外側の周に沿って間隔を置かれた放射線不透過性バンド27をさらに含み得る。蛍光透視の下で見えるこれらマーカーバンド27は、遠位チューブ14の位置を、このチューブが血管内で位置決めされるときに示すために供される。さらに、これらマーカーバンド27は、以下により詳細に説明されるように、冠状動脈洞の所望の部分、およびこの遠位チューブ14による移動の量を測定するために用いられ得る。これらマーカーバンド27は、白金のバンド、または蛍光透視もしくはその他の適切な可視化手段の下で見える任意のその他の生体適合性バンドであり得る。この遠位チューブ14に沿って含められるバンドの特定の数は重要ではないが、好ましくは、冠状動脈洞中のチューブの全体の曝された長さが、蛍光透視の下で見えるようにするに十分な数が存在する。1つの好ましい実施形態では、この遠位チューブは、遠位端部分の約14cmに沿って配置されたマーカーバンドを備える。これらマーカーバンドは、好ましくは、約1cmだけ離れて間隔を置かれる。さらに、これらハンドが、遠位チューブ14の移動に対する距離マーカーとして作用させるに十分な数のバンド27が存在する。類似の数のマーカーが、ヒトの眼にとって見える患者の外側の遠位チューブ上に位置される。これらマーカーは眼で見え、そして蛍光透視の支援なくしてさえカウントされ得る。
【0024】
遠位チューブ14はまた、この遠位チューブの遠位端またはその近傍に位置する遠位アンカー18を含む。1つの実施形態では、この遠位アンカー18は、2つの状態、圧縮状態および拡大状態を有する。圧縮状態では、この遠位アンカー18は、冠状動脈洞20またはその他の冠状血管中に挿入可能である。拡大状態では、遠位アンカー18は、上記遠位チューブ14を、それが挿入される血管の内壁に固定する。この遠位アンカー18は、変形手段によって、その圧縮状態から拡大状態まで変形可能である。このような変形手段は、機械的、電気的または化学的であり得る。さらに、この遠位アンカー18は、自己拡大性であり得る。
【0025】
図2および図3に示されるように、1つの例示の実施形態では、遠位アンカー18は、それが拡大される血管のサイズおよび形状に一致する伸展性バルーンである。このバルーンは、熱または接着剤結合により、または任意のその他の適切な取り付け手段により遠位または近位チューブに取り付けられ得る。このバルーンは、それが挿入される血管を損傷するバルーンの可能性を低減し得る安全機構を有するように製造され得る。例えば、このバルーンは、それが膨張され得る最大圧力を有するように設計され得る。さらに、このバルーンは、その内部圧力を徐々に低減する「低速漏れ」を備えて設計され得る。この伸展性バルーンは血管のサイズに一致し、そしてこのバルーンは蛍光透視の下で見えるので、観察者は、寸法マーカーを有するスクリーン上でこのバルーンを見ることにより、バルーン位置で血管のサイズを決定し得る。弁修復デバイスが挿入される血管の大体のサイズを知ることは、患者に対して用いるために、デバイスのアレイからどの特定の弁修復デバイスが選択されるべきかに関してなされるべきより正確な決定を可能にし得る。1つの好ましい形態では、上記遠位アンカー18は、Pebax55Dから形成され、そして約20mmの長さを有する伸展性バルーンである。この伸展性バルーンは、好ましくは、1気圧における約4mm〜8気圧における約9mmまでの範囲の膨張直径を有する。代替の形態では、このバルーンは、例えば、ナイロン、ポリウレタンおよびポリエチレンのような任意のその他の適切な材料から形成され得る。1つの実施形態では、上記遠位管材は、非外傷性遠位先端部をさらに備える。この遠位先端部は、好ましくは、Pebax40Dから作製される。診断デバイス10のその他の代替の実施形態では、遠位アンカー18は、血管内側にこのデバイスを固定するように適合されたバスケット、ステント、または任意のその他の拡大可能なデバイスであり得る。
【0026】
このバルーンは、その圧縮状態からその拡大状態まで、生体適合性流体、そしてより特定すれば、生理食塩水溶液を用いることによって変形され得る。この流体はカテーテル(図示されず)を通って導入され得、そして膨張管腔21、62(図4および5)を通ってバルーンまで輸送され得る。
【0027】
図6に示されるような代替の実施形態では、バスケット30が遠位マーカーとして用いられ得る。1つの実施形態では、このバスケット30は、2つの状態、圧縮状態および拡大状態を有する。圧縮状態では、このバスケット30は、冠状動脈洞またはその他の冠状血管中に挿入可能である。より詳細には、圧縮状態では、このバスケット30は実質的に円筒形であり得、そしてバスケットの周縁の周りで均一に間隔を置かれ、バスケットの近位端34から遠位端36まで長軸方向に延びる複数のストランド32を含み得る。このバスケット30の遠位端36は、内側チューブ68上に係合されるように適合され得、そしてバスケットの近位端34は、外側チューブ66上に係合されるように適合され得る(図5を参照のこと)。1つの実施形態では、外側チューブ66はまた、遠位チューブ14であり得る。内側チューブ68および外側チューブ66が互いに対して移動されるとき、バスケット30は拡大され得るか、または収縮され得る。拡大状態では、バスケット30は、それが挿入されている血管の内壁に固定される。バスケット30の近位端34と遠位端36との間の距離が減少される拡大状態では、これらストランド32は、バスケットの中央から離れて突出する三角形の頂点を備えた三角形様の形状になり得る。1つの例示の実施形態では、これらストランド32は、このバスケット30が、例えば、このバスケットを覆うシース(図示されず)の退却により、その圧縮状態からその拡大状態まで変形することを可能にする形状記憶材料(例えば、ニチノール)から作製され得る。
【0028】
遠位チューブ14と同様に、近位チューブ12は、この近位チューブの遠位端またはその近傍に位置される近位アンカー16を有し得る。遠位アンカー18のように、この近位アンカー16は、血管中への送達のための圧縮状態、および遠位チューブを血管に係留するための拡大状態を有し得る。近位チューブ12は、近位アンカー16を圧縮状態と拡大状態との間で変形するために膨張管腔37をさらに含み得る。1つの好ましい形態では、この近位アンカー16は約30mmの長さを有し、そしてポリウレタンから形成される。代替の形態では、このバルーンは、例えば、ナイロン、Pebaxおよびポリエチレンのような任意の適切な材料から形成され得る。
【0029】
診断デバイス10の遠位チューブ14および近位チューブ12は、入れ子式様式で互いにスライド可能に連結され得、細長い本体を形成する。1の例示の実施形態では、近位チューブ12の外径は、遠位チューブ14の外径より大きく、この遠位チューブを近位チューブ内に適合することを可能にする。遠位チューブ14の移動は、ハンドル(図示されず)を用いることにより制御される。より詳細には、遠位チューブ14は、このハンドルに沿ってスライド可能であるカラーに取り付けられ得る。このカラーが近位方向に移動されるとき、遠位チューブ14もまた、同じ距離だけ近位方向に移動される。同様に、このカラーが遠位方向に移動されるとき、遠位チューブ14は、同じ距離だけ遠位方向に移動される。1つの例示の実施形態では、ハンドルの本体は、カラーの移動、そしてそれ故、遠位チューブ14の移動が測定されることを可能にする距離マーカーを含み得る。
【0030】
1つの例示の実施形態では、診断デバイス10は以下のように展開され得る。第1に、ガイドワイヤ(図示されず)が、大心臓静脈を超えて冠状動脈洞中に、そして動脈心室血管中に深く挿入される。診断デバイス10は、送達カテーテル(図示されず)上に同軸に取り付けられ得、そしてガイドワイヤ上を冠状動脈洞20中に挿入される。遠位チューブ14および近位チューブ12の近位端は、それらがハンドルに取り付けられる患者の身体から外に延び得る。さらに、近位アンカー16および遠位アンカー18は、診断デバイス10が冠状動脈洞20中に挿入されるとき、隣接している。
【0031】
患者中に最初に挿入されるとき、診断デバイス10は、冠状動脈洞20中に可能な限り遠位方向に挿入される。詳細には、診断デバイス10は、図7に示されるように、大心臓静脈46として知られる冠状動脈洞の一部分中に挿入され得る。その天然に湾曲された形状およびより高い濃度の脂肪組織のため、大心臓静脈46は、移動に対する抵抗性を可能にし、そして上記遠位端18のための天然の係留位置を提供する。
【0032】
一旦、遠位端14、そしてより詳細には、遠位アンカー18が冠状動脈洞20中の所望の位置に配置されると、この遠位アンカーは、その圧縮状態からその拡大状態に変形され得る。遠位アンカー18がバルーンである1つの実施形態では、生体適合性流体が、膨張管腔37中に導入され、バルーンを膨張する。遠位アンカー18が、バスケット30(図6)のような、機械的に拡大可能なアンカーである代替の実施形態では、内側チューブ68および外側チューブ66(図5)の操作は、このアンカーをその拡大状態に変形するようにする。このアンカーが自己拡大可能であるなお別の実施形態では、送達シースがこれらアンカーを覆うために用いられ、そして送達シースの退却が、このアンカーをその拡大状態に変形させる。
【0033】
一旦、遠位アンカー18が、このアンカーが冠状動脈洞20の内壁と接触しているように拡大されると、近位チューブ12は、ハンドルを用いて近位方向に引かれる。ハンドル上の距離マーカーおよび遠位チューブ14上の放射線不透過性マーカー27は、近位チューブ12が移動した距離が測定されることを可能にする。近位チューブ12は、近位アンカー16が冠状動脈洞20の口24に隣接するまで近位方向に引かれる。あるいは、上記近位アンカーは、冠状動脈洞口24の外側の右心房中にこの口に接して配置され得るが、この口をブロックしない。遠位チューブ14上の放射線不透過性マーカー27は、モニタリングスクリーン上で見え、そして近位アンカー16を冠状動脈洞20中に位置することで使用者を援助する。近位アンカー16がその所望の位置に配置された後、この近位アンカーは、その圧縮状態からその拡大状態に変形される(図8)。上記に記載のように、近位アンカー16がバルーンである実施形態では、生体適合性流体が、膨張管腔21中に導入され、バルーンを膨張する。近位アンカー16が、バスケット30(図6)のような自己拡大性アンカーである実施形態では、送達シースの近位アンカーへの退却が、このアンカーをその拡大状態に変形させる。
【0034】
一旦、近位アンカー16および遠位アンカー18の両方が、それらの圧縮状態からそれらの拡大状態に変形すると、ハンドルが遠位チューブ14を近位方向に引くために用いられ得る。この遠位チューブ14を近位方向に引くことは、冠状動脈洞20に対して2つの効果のうち少なくとも1つを有する。第1の効果は、前部小葉29と後部小葉31との間の距離を減少して、僧帽弁26の周りに冠状動脈洞20をより堅く締めることであり得る。第2の効果は、冠状動脈洞20の湾曲の半径を減少することであり得、これはまた、前部小葉29と後部小葉31との間の距離を減少し得る。僧帽弁26の形状におけるこの変化は、前部小葉29と後部小葉31との間の僧帽弁逆流によって引き起こされるギャップが閉鎖することを可能にし(図9)、それ故、僧帽弁逆流を減少するか、またはなくする。
【0035】
冠状動脈洞の湾曲の半径が減少され、そして前部小葉29と後部小葉31との間のギャップが減少されるとき、逆流の量が測定される。この測定は、好ましくは、患者の胸部上、食道中または心臓の内側に位置される超音波プローブを用い超音波によって実施される。この逆流が最小であるとき、そして特に逆流がないとき、遠位チューブ14が近位チューブに対して移動した距離が、例えば、測定ツールとして放射線不透過性マーカーを用いることによって書き留められる。
【0036】
一旦、僧帽弁逆流がなくなるか、または所望の量だけ減少され、そして所望の効果を達成するために移動されなければならない遠位チューブ14の距離が測定されると、遠位アンカー18および近位アンカー16は、それらの拡大状態からそれらの圧縮状態まで変形されて戻る。アンカー16、18がバルーンである実施形態では、バルーンを膨張するために用いられた流体は除かれる。アンカー16、18が自己拡大性である実施形態では、送達シースが、互いの上に再挿入される。アンカー16、18がバスケット30である実施形態では、内側チューブ68および外側チューブ66は、互いから離れて移動し、アンカーをその圧縮状態に変形する。
【0037】
近位アンカー16および遠位アンカー18がそれらの圧縮状態に戻った後、近位チューブ12および遠位チューブ14は、冠状動脈洞20からガイドワイヤに沿って近位方向に、そして患者の身体から退却される。一旦、診断デバイス11が除かれると、弁修復デバイスは、ガイドワイヤに沿って挿入され、僧帽弁逆流をより永久的に修復する。冠状動脈洞の長さ、および僧帽弁逆流の所望の減少を達成するために必要な短縮の量に関する情報のような、診断デバイス10から受容される冠状動脈洞20についての情報に基づき、適切な弁修復デバイスが、種々の(または可変)直径および/または短縮長さを有するこのようなデバイスのアレイから選択され得る。
【0038】
前述は、本発明の好ましい実施形態を記載したが、種々の代替物、改変物および等価物が、添付の特許請求の範囲の範囲内で実施され得ることは当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、僧帽弁および冠状動脈洞の三次元図である。
【図2】図2は、圧縮状態にある近位アンカーを備えた近位チューブおよび遠位アンカーを備えた遠位チューブを含む本発明の診断デバイスの1つの例示の実施形態の側面図である。
【図3】図3は、拡大状態にある近位アンカーおよび遠位アンカーを含む図2の実施形態の側面図である。
【図4a】図4aは、本発明の入れ子式にされた近位チューブおよび遠位チューブの断面図である。
【図4b】図4bは、本発明の遠位チューブの断面図である。
【図5】図5は、本発明の同軸の近位チューブおよび遠位チューブの断面図である。
【図6】図6は、本発明による代替のアンカーの斜視図である。
【図7】図7は、デバイスが最初に冠状動脈洞中に挿入された後で、かつ遠位アンカーの拡大前の図2の診断デバイスの側面図である。
【図8】図8は、拡大された状態にある遠位アンカーおよび近位アンカーを備えた冠状動脈洞における使用のために位置決めされた図2の診断デバイスの側面図である。
【図9】図9は、デバイスが僧帽弁の小葉間の前部−後部距離を減少するために用いられた後の図2の診断デバイスの側面図である。
【図10】図10は、最近の僧帽弁修復デバイスの例示の実施形態である。
【図11】図11は、図10の僧帽弁修復デバイスの詳細である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓弁逆流を減少するために必要な冠状動脈洞中の調節の量を決定するための診断デバイスであって:
遠位端部分に遠位アンカーを有する第1の細長い本体、
遠位端部分に近位アンカーを有する第2の細長い本体、および
該第1および第2の細長い本体の一方を該第1および第2の細長い本体の他方に対して移動するための調節器を備え、
ここで、該第1および第2の細長い本体がともに、該冠状動脈洞内に係合するように適合された入れ子式の細長い本体を形成し、そしてさらに
該遠位アンカーの該近位アンカーに対する移動の量の測定を可能にするスケールを備える、診断デバイス。
【請求項2】
前記スケールが、前記細長い本体上にある、請求項1に記載の診断デバイス。
【請求項3】
前記スケールが、複数のマーカーである、請求項2に記載の診断デバイス。
【請求項4】
前記複数のマーカーが、前記細長い本体に沿って均一に間隔を置かれる、請求項3に記載の診断デバイス。
【請求項5】
前記スケールが、前記調節器上にある、請求項1に記載の診断デバイス。
【請求項6】
前記遠位アンカーおよび前記近位アンカーが、圧縮状態と拡大状態との間との間で変形可能である、請求項1に記載の診断デバイス。
【請求項7】
前記調節器の特定距離の移動が、遠位チューブの同一距離の移動を引き起こす、請求項1に記載の診断デバイス。
【請求項8】
前記遠位アンカーおよび前記近位アンカーがバルーンである、請求項1に記載の診断デバイス。
【請求項9】
前記遠位アンカーおよび前記近位アンカーが、それらの圧縮状態から、それらの拡大状態まで変形可能である、請求項8に記載の診断デバイス。
【請求項10】
前記遠位アンカーがバスケットである、請求項1に記載の診断デバイス。
【請求項11】
前記第1および第2の細長い本体の各々が、膨張管腔およびガイドワイヤ管腔を含む、請求項1に記載の診断デバイス。
【請求項12】
前記調節器が、ハンドルである、請求項1に記載の診断デバイス。
【請求項13】
心臓弁逆流を減少するために必要な冠状動脈洞への調節の量を決定するための方法であって:
心臓弁に隣接する冠状血管中に診断デバイスを挿入する工程であって、該診断デバイスが遠位アンカーおよび近位アンカーを含む、工程、
該遠位アンカーを該冠状動脈洞に係留する工程、
該近位アンカーを該冠状動脈洞に係留する工程、
該遠位および近位アンカーの少なくとも1つを、心臓弁逆流を減少するように調節する工程、および
該調節を測定する工程、を包含する、方法。
【請求項14】
前記近位および遠位アンカーを係留する工程が、該アンカーを圧縮状態から拡大状態まで拡大することを包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記アンカーを拡大することが、流体によって拡大することを包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記診断デバイスを挿入する工程が、該診断デバイスを前記冠状動脈洞の大心臓血管中に挿入することを包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記調節する工程が、前記冠状動脈洞の湾曲を真っ直ぐにすることを包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記調節する工程が、前記冠状動脈洞を締めることを包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
治療デバイスを選択する工程、および該治療デバイスを前記冠状動脈洞に固定する工程をさらに包含する、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−522749(P2008−522749A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545613(P2007−545613)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/044373
【国際公開番号】WO2006/063108
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(500218127)エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション (93)
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
【Fターム(参考)】