説明

心臓弁置換術を可能にするシステム及び方法

本発明の心臓プロテーゼシステム(400)は、ハーバー(415)と、仮の弁(305)と、心臓弁プロテーゼ(420)とを有する。ハーバー(415)刃、第1の解放可能な係合構成要素(515)を有する。心臓弁プロテーゼ(420)は、ハーバー(415)の第1の解放可能な係合構成要素(515)に堅固に結合させたりそれから分離したりすることができる第2の解放可能な係合構成要素(445)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願についての相互参照〕
本願は、2005年12月15日出願の米国特許仮出願第60/750,558号の優先権を主張するものであり、この仮出願の内容全体はここに引例に挙げることにより、後段に全部が明示す訳ではないが明示したものとして、本件の一部をなすものである。
【0002】
本発明は、広義には、心臓弁置換術の分野に関するものであり、特に、生来の心臓弁を調整してプロテーゼ(prosthesis)に備えるための移植器具及び移植方法と、置換可能な心臓弁プロテーゼを供与する移植器具及び移植方法に関連している。
【背景技術】
【0003】
先進国と発展途上国の両方において、心臓血管疾患は死因の約50%となっている。実際、心臓疾患を原因とする死の危険は、エイズや種々の種類の癌を全て組合せた症候に起因する死の危険よりも高い。心臓血管疾患を原因として年間約1200万人が死亡している。心臓血管疾患は米国では第1の死因であり、年間約95万人を死に追いやっている。また、心臓血管疾患が原因で疾患や生活の質の低下を余儀なくされる人の数も相当なものになっている。米国だけでも約6千万人が何らかの形態の心臓疾患に罹っている。よって、広範な形態の心臓疾患を治療し、治癒し、回復を図るための装置や措置を進展させる必要性は多大である。
【0004】
正常な心機能は、本来、心臓の4つの小室に血液を渡す心臓の4個の弁の各々を適切に機能させることに依存している。心臓の4つの小室は上位小室である右心房と左心房、及び、下位小室である右心室と左心室からなる。4個の弁は、これら小室に流れ込む血液を制御しているが、三尖弁、僧帽弁、肺動脈弁、及び、大動脈弁からなる。心臓弁は複雑な構造体であり、弁を開閉するのに多数の構成要素の相互作用に依存している。より詳細に説明すると、4個の心臓弁は線維組織から構成された複数の弁膜尖すなわち小葉からなり、小葉が心臓壁に付着して、弁を通る血流を制御するのを助けている。僧帽弁は2個の小葉を含んでおり、三尖弁は3個の小葉を含んでいる。大動脈弁及び肺動脈弁はそれぞれ、「弁膜尖」と呼ぶほうが適当である3個の小葉を含んでいるが、この呼び名はこれら小葉の半月形状に由来するものである。
【0005】
心臓周期は、4つの小室の内部で酸素添加血液と脱酸素血液の両方を汲出して分配することに関与している。心収縮期すなわち心臓周期の規則的収縮期には、肺で酸素濃度を高めた血液が心臓の左心房に入る。心拡張期すなわち心臓周期の休止段階では、左心房圧が左心室圧を超過し、従って、酸素添加血液が逆止弁である僧帽弁を通って左心室に流入する。左心室の収縮により酸素添加血液が大動脈弁と通して大動脈に汲出されてから、体内に渡される。心収縮期に左心室が収縮すると、僧帽弁が閉じて、酸素添加血液は僧帽弁を通って逆流するのではなく、大動脈の中に通される。心臓の裏側では、脱酸素血液が体内から帰還して、右心房を経由して心臓に入る。この脱酸素血液は三尖弁を通って右心室に流入する。右心室が収縮すると、三尖弁が閉じて、脱酸素血液が肺動脈弁を通して汲出される。脱酸素血液は肺血管床に向かわされて酸素添加され、ここまでの心臓周期が繰り返される。
【0006】
心臓の種々の構成器官によって実施される心臓周期は複雑で、入り組んだプロセスである。心臓の各種構成要素のうちの1個の障害が、又は、心臓周期を実施する際の障害が1種類以上の多数の異なる種類の心疾患の原因となることが多い。ありふれた心疾患症状の1つに大動脈弁逆流がある。大動脈弁逆流は深刻さに応じて多段階に区分される。大動脈弁逆流とは、心拡張に伴う大動脈から左心房への血液流入のことである。血液逆流が起こるのは、大動脈が不完全であるせいで、又は、心臓弁膜器官(例えば、小葉、大動脈の弁輪など)に障害があるせいで、結果的に心拡張期に左心室へ血液が流入してしまうからである。大動脈弁の閉鎖不全の原因は心臓弁膜尖の内因性疾患、大動脈の各種疾患、又は、外傷である。大動脈弁逆流は慢性疾患の一過程である場合もあれば、急性的に起こって心不全として発症することもある。大動脈弁を通る心拡張期血液還流は左心室容量過負荷を生じる結果となることがある。
【0007】
図1は正常な大動脈弁101を例示している。図1に示す大動脈弁101の斜視図は、切開して平面図化した大動脈弁101の各種構成要素を最も良好に例示している。大動脈弁101は3個の弁膜尖すなわち小葉を含んでおり、個々の名称は左心臓弁膜尖105、右心臓弁膜尖110、周辺弁膜尖115である。これら3つの弁膜尖は左心室から大動脈に流入する血流を制御し、大動脈は最終的には酸素添加された血液を体組織に配送してそれら体組織の養分補給を行う。3つの弁膜尖105、110、及び、115の真上の位置にはバルサルバ洞すなわち大動脈洞125が在り、これら洞は各々が個別の弁膜尖に付随している。冠動脈の起源はバルサルバ洞125の近位に在る。図1に示すように、右冠動脈の開口130は右小葉すなわち右心臓弁膜尖110の真上の位置に在る。同様に、左冠動脈の開口135は左小葉すなわち左心臓弁膜尖105の真上の位置に在る。加えて、大動脈弁101は前僧帽弁120と並列位置にある。
【0008】
正常な大動脈弁101では、心収縮期に左心室が収縮すると、大動脈弁の弁膜尖105、110、115が大動脈の中に向けて開き、左心室から大動脈に血液が流入する。心拡張期に左心室が休止している場合、弁膜尖105、110、115が合流して閉じ、弁輪の領域を覆う。よって、弁膜尖105、110、115は心拡張期に血液が逆流又は還流して左心室に流入するのを防止している。
【0009】
大動脈弁101は大動脈の大動脈根に位置している。大動脈根は2つの主要構成要素、すなわち、内側(大動脈と心室との接合部)及び外側(洞と大動脈管との接合部)を含んでおり、これら2つの構成要素は機能上の大動脈弁輪であると見なされる。弁膜尖105、110、115の線維構造体を支持しているのは、この大動脈弁輪である。
【0010】
図1に示すように、大動脈弁の機能は多数の構成器官の複雑な相互作用に関与している。これら構成要素のうちの1つでも、又は、複雑な相互作用の諸機能のうちの1つでも不全状態となると、大動脈弁逆流を生じる結果となることがある。例えば、三尖弁であるはずが二尖弁であったり、弁膜尖が石灰化し、弁膜尖が狭窄し、又は、弁膜尖の運動が抑制されると、大動脈弁逆流を生じたりする恐れがある。長期化した大動脈弁逆流、深刻な大動脈弁逆流、又は、その両方が生じた結果として代償性左心室拡大が起こる。大動脈弁逆流は、矯正されなければ致命傷となる恐れのある進行性疾患である。
【0011】
大動脈弁逆流に加えて、肺動脈弁逆流は、年毎に心臓疾患件数を増大させている原因であり、又は、そのような件数増大に寄与している、極めてありふれた心臓疾患である。大動脈弁逆流と同様に、肺動脈弁逆流は、肺動脈弁が不完全であって完全に閉鎖することができないことに関与している。正常な肺動脈弁では、心収縮期には右心室が収縮して、開いた肺動脈弁を通して血液を肺動脈に汲出している。これに比べて、心拡張期に右心室が休止すると肺動脈弁が閉鎖することで、血液が逆流して右心室に流入するのを阻止している。肺動脈弁逆流の場合、心拡張期に肺動脈弁は完全に閉鎖し損ない、肺動脈からの血液が逆流して右心室に流入するのを許してしまう。このような血液還流は右心室に過負荷を与えて右心室拡大を生じる結果となる場合がある。
【0012】
先行技術には、肺動脈弁逆流及び大動脈弁逆流のような種々の異なる種類の心臓弁疾患を治療する広範な方法が存在する。このような症候の治療の良く知られた成果のある方法に、機械弁及び生体プロテーゼ弁のようなプロテーゼ心臓弁の使用がある。
【0013】
極めて広く利用されている置換装置は機械弁や生体プロテーゼ弁であって、同種移植片や自家移植片はそれほど広く利用されていない。1990年から2000年までの間は、胸部外科手術登録協会(Society of Thoracic Surgery Registry)によって示すように、大動脈弁疾患に罹っている60歳未満の患者についての心臓弁置換術の割合の内訳は次のとおりである。すなわち、患者の77%が機械弁使用者で、13%が生体プロテーゼ弁使用者で、5%が同種移植片弁使用者で、5%がロス手術の被施術者であった。
【0014】
機械弁は人造材料から構成された装置であり、患者の損傷した生来の心臓弁又は患者の罹患した生来の心臓弁と置換するために利用される。60%を越える心臓弁置換件数が機械プロテーゼを使って実施されているが、その原因は、機械プロテーゼが耐久性に富んでいるうえに、血行力学的に優れており流体抵抗が最小だからである。すぐれた耐久性にも関わらず、機械弁の乱流機構が原因で血球を損傷してしまう。このような血球損傷の一例に血栓形成がある。流動パターンが乱されたことに起因して血栓形成が生じると、生涯に亘る凝固防止治療が必要となる。また別の問題は、蝶番部材の近位に小規模な血流停滞領域が生じる機械心臓弁に付随して起こるが、このような停滞領域が原因でバクテリア感染を生じることで心臓損傷を悪化させることがある。
【0015】
多数の異なる材料で構築した多数の異なる弁設計は進化を続けて機械弁の欠陥に対処しており、例えば、血栓形成を低減し、血球破壊の原因となる恐れのある機械応力を減少させている。シリコーン、ポリオレフィンラバー、ポリテトラフルオロエチレンなどの幾種類かの合成ポリマーが小葉材料として試用されてきた。実験室内疲労試験が示したところによると、ポリウレタン弁は8億回を超える周期(20年程度までの「正常」機能)を達成することができる。市場で入手できるポリエーテルウレタンから構成された弁小葉を羊に移植した場合、生体プロテーゼ弁の心臓弁機能よりも優れた弁機能を示した。従って、ポリマー弁ならば、生体プロテーゼと比較した場合には耐久性の向上が保証され、機械弁と比較した場合には血栓形成の低減が保証されるという臨床上の利点を示すことができる。ポリマー弁は、大いに有望ではあるものの、ここ数十年に亘り開発が続けられてきて、正常な生物環境で不全症や石灰化を発症するせいで、商品化できる設計は未だ存在しない。その結果、依然として、外科手術矯正については機械弁しか選択肢に挙がらず、機械弁は抗凝固治療と組合せて利用される必要があったが、このような方法は患者の生活の質を低下させ、出血に付随する危険に患者を晒すものである。
【0016】
生体プロテーゼ弁は動物組織から製造された組織弁(すなわち、異種プロテーゼ)であり、容易かつ簡単に入手することができる。これらは1970年代前半に、機械弁の欠点の幾つかを回避する試みとして導入された。可撓性に富む、三小葉の生物組織弁は機械心臓弁よりも緻密に生来の心臓弁に似せている。これら弁の中央の流れ特性は血行力学的効率を高めており、また、これら弁の生体表面は機械弁のものと比べて血栓防止能力を向上させている。
【0017】
弁は化学処理により、体組織の免疫原性を低下させるように作用し、従って、弁移植を受けた人のアレルギー反応すなわち免疫学的反応を誘起しにくくなっている。その結果、弁が移植された体組織は存続不能であり、よって、経時的に変性する。生体プロテーゼ弁は高齢患者に広く採用されているが、このような高齢患者にとっては出血性合併症の危険が高く、また、高齢患者の望む生活様式では抗凝固治療を厳しく律するのが難しい。
【0018】
生体組織は、通常は、多数の異なる化学物質(グルタルアルデヒド、アミノオレイン酸、エタノールなど)を使って多数の異なる治療計画に基づいて修復され、弁の耐久性を増大させるよう図っている。小葉修復により組織が硬化するという不測の事態に至り、体内ずれ特性が変えられ、ずれ応力、応力弛緩、及び、ヒステリシスが高められ、実質的に脱水症状が引起されるが、これら症状はいずれも、石灰化又は組織破裂が原因となって弁の機能不全を生じる結果となる。石灰化を緩和するのに或る種の化学療法が効果的であるが、そのような化学療法は膠原線維の破損を阻止するものではない。血液に触れた膠原線維は損傷し、小葉の内側に存続できる細胞が存在しなくなるせいで修復不可能となる。よって、組織変性と石灰沈着のせいで、生体プロテーゼ弁の耐久性は、平均約10年と限られたものとなる。生体プロテーゼ弁技術は進歩しているが、弁の限られた耐久性には問題があり、この問題に完璧に対処するには長い時間がかかりそうである。
【0019】
目下のところ、次世代の生体プロテーゼ弁及び機械弁は開発途上にあり、これらの弁は経皮的に移植される。このような生体プロテーゼ弁及び機械弁は、先行技術に優る多数の改良点を提示しているが、これら装置の安全性と出来の良さも、配置処置が複雑であるためにかなり割引かれる。
【0020】
先行技術には、生体プロテーゼ弁を適切に配置する複雑さに対処しようとの試みである多数の装置が存在する。例えば、ベイエルスドルフ(Beyersdorf)ほかに交付された米国特許第6,790,230号(特許文献1)は、大動脈の形状に一致する非円筒形状を有している従来の弁固定部材を開示している。特許文献1の固定部材は、その内部に置換弁を縫合することができるように構成されている。固定部材及びこれに付随する置換弁はカテーテルを介して大動脈に配送されてから、生来の大動脈弁を使用不能にするように拡張させられる。それにより、大動脈内で固定部材を拡張させることで、生来の大動脈弁を使用不能にすると同時に置換弁を使用可能にする。
【0021】
セギュイン(Seguin)ほかに交付された米国特許第7,018,406号(特許文献2)は、欠陥のある生来の心臓弁を置換する際に使用されるプロテーゼ弁集成体を開示している。特許文献2に記載されているプロテーゼは自己拡張可能なステント上に支持された組織弁を構成要素の一部とする。プロテーゼは生来の心臓弁に経皮配送することができ、この位置でプロテーゼを拡張させて管腔壁に取付けることができる。典型例の置換弁が生体材料から製造されており、縫合部材によって弁支持帯に取付けられることを特許文献2は記載している。弁支持帯に取付けられた弁は中心軸線に沿って収縮自在であるため、配送時には構造体全体を圧縮させてカテーテルに装填可能である。
【0022】
サライアー(Salahieh)ほかに交付された米国特許出願公開第2005/0137689号(特許文献3)は、心臓弁を血管内置換する方法を開示している。特許文献3に開示されている方法は、置換弁及び拡張可能な固定構成要素を非拡張形状にしてカテーテル内に入れて心臓弁の付近まで配送する工程を含んでいる。適切な部位に配送したら、固定構成要素がカテーテルから取出されて配置され、固定部位の組織に接触するように拡張させられる。固定構成要素の拡張と同時に、固定構成要素の内部に包まれていたつぶれ状態の置換心臓弁を配置する。
【0023】
このような従来の生体プロテーゼ弁の配置は多数の工程と多数の技術を厳密に実行することが要件であり、これら工程のうちの1工程でも精度を欠いて実行されると、患者に致命的となる恐れがある。例えば、生体弁の適切な配置は、生来の心臓弁の内側の厳密な位置で弁固定部を拡張させることを要件とする場合がある。更に、弁固定部は管腔に適切に係合して、拡張時に管腔面との接触を好適にする面を設けて密な接触を行うことができるようにしなければならない。弁固定部は、良好かつ安全に着座ることが重要であり、というのも、高圧力で高流速の、しかも、かなり拍動する血液流に耐える必要があるからである。更に、不適切に固定された固定構成要素に設置された置換弁は、絶えず直径が変動する血管の力や血液乱流の力に耐えることができない。不適切かつ不十分な配置により、生体プロテーゼ弁の配置前又は配置後に弁固定部が移動する結果となることがある。弁固定部が極めて僅かに移動しただけでも多大な有害な結果を生じ、例えば、動脈出口に通じる開口を塞いでしまったり、置換弁の機能を危うくしてしまったりする恐れがある。
【0024】
生体プロテーゼ弁の弁固定部を高精度に設置するばかりが重要なのではなく、弁固定部を堅固に着座ることも極めて重要であり、というのも、弁固定部の配置が不適切又は不十分であると、固定構成要素と管腔壁との間で血液漏出が生じる恐れがあるせいである。欠陥のある生来の心臓弁及びこの生来の心臓弁の周囲の組織領域は形状不整であるとともに石灰化を生じており、その結果として、又は、これらが要因となって組織の心臓疾患を生じる結果となる場合が多い。心臓弁輪の典型的な石灰化、肥厚、及び、硬化は、生体プロテーゼ弁の弁固定部に適切な封鎖性能を達成するのが一層難しくする恐れがある。例えば、生来の心臓弁の酷い石灰化は生体表面を凸凹で不均一にし、これによっても、弁固定部が適切に配置されていなければ、固定構成要素の管腔壁に対する封鎖の質を下落させる結果となる。石灰化は弁固定部の適切な据付を困難にする恐れがあるばかりでなく、石灰沈着による堆積物の破片が弁固定部の着座中に緩んで血流に混じり、損傷を生じたり、血管を封鎖したりする可能性もある。
【0025】
【特許文献1】米国特許第6,790,230号
【特許文献2】米国特許第7,018,406号
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0137689号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
従来の装置の大半が、心臓置換弁の観血を最小に抑えた配置に付随する諸問題及び複雑さに対処しようと試みているが、患者にとって重要な問題と危険が存在する。大多数の危険は、その原因が置換弁の配置の性質にある。外科医は1回限りで心臓弁プロテーゼを正確に配置することが多い。更に、心臓弁の血管内配置では、外科医は配置の正確さと精度を検証するのに限られた能力しか得られない。置換弁を外科医が配置する際に視覚的支援を得るのに、2次元超音波画像を利用するしかないことも多い。このような2次元画像は、置換弁を3次元配置するにあたって誤差を生じる恐れが多大に残る。例えば、弁固定部は超音波画像上では適切に着座られているように見えることがあっても、弁固定部の画像では見えていない側が管腔壁と不整合であったり、管腔壁に対しての着座が不適切であったり、又は、その両方の可能性もある。上述のように、弁固定部の封鎖が僅かに不適切であったり、又は、弁固定部の設置位置が僅かに見当違いであることで、破滅的な結果を生じたり、致命的な結果さえ生じかねない。加えて、置換弁の十分な配置が完了してからは、生来の肉体構造を損傷せずにプロテーゼの位置を変えるのが難しくなり、又は、そうするのが不可能になる。
【0027】
生体プロテーゼ弁及び機械弁の両方の制約の結果として、患者は生活の質と修復結果の持続性との間で選択を迫られることになる。加えて、機械弁に付随している危険に耐えられず、生体プロテーゼ弁を利用しながらもこの弁を置換するための2回目の手術が臨床的に存命不能であると思えるので、自らの生活を制約する患者は大勢いる。
【0028】
よって、欠陥のある生来の心臓弁に代用弁を準備する装置及び方法を提示するのが有利である。
【0029】
更に、弁固定部を高精度かつ有効に配置する装置及び方法を提示するのが有利である。
【0030】
更にまた、代用心臓弁とは無関係に、心臓弁固定部を高精度かつ有効に配置する装置及び方法を提示するのが有利である。
【0031】
更に、心臓弁プロテーゼを高精度かつ有効に配置することができるようにする、心臓弁疾患を矯正する装置及び方法を提示するのが有利である。
【0032】
また、心臓弁に反復的な手術を遂行する存命可能な方法を斟酌した、心臓弁疾患を矯正する装置及び方法を提示するのが有利である。
【0033】
更にまた、事前に配置済みの心臓弁プロテーゼを置換する存命可能な方法を斟酌した、心臓弁疾患を矯正する装置及び方法を提示するのが有利である。
【0034】
更に、観血を最小に抑えた態様で実装される、置換可能な心臓弁プロテーゼの配置を斟酌した、心臓弁疾患を矯正する装置及び方法を提示するのが有利である。
【0035】
また、心臓の外側から拍動する心臓の弁まで長手のアーム又は操舵自在ニードルを使って配送される、解放可能に接続された心臓弁プロテーゼを提示するのが有利である。
【0036】
更に、心臓弁プロテーゼの配置を目的として、管腔内に平滑かつ実質的に形状が均一な表面を設けるのが有利である。
【0037】
更にまた、心臓弁置換処置が失敗した場合に、続けて患者にバイパス術を施すことができるようにする支援システムを提示するのが有利である。
【0038】
以上に加えて、心臓弁プロテーゼを解放可能に接続することを目的として、別個に配置することができる係合箇所又はハーバーを設けることができる装置を提示するのが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0039】
本発明は、心臓弁に代用弁を準備して欠陥のある心臓弁を改善するための方法及び装置を記載している。心臓弁に代用弁を準備する方法の例示の実施形態は、心臓弁に固定用導管を配送する処置を含んでいる。固定用導管は心臓弁内で拡張させられるが、このように固定用導管を拡張させることで心臓弁を使用不能にする。更に、固定用導管を拡張することで開放空洞を構成する。
【0040】
欠陥のある心臓弁を改善する方法の例示の実施形態は、心臓弁に固定用導管を配送する処置を含んでいる。固定用導管は、係合箇所又はハーバーを有し、これにより、心臓弁プロテーゼを解放可能に接続することができるようになる。次いで、仮の弁がつぶれ状態で心臓弁の近位の動脈内の目標部位まで配送される。その後で、固定用導管が心臓弁に配置され、心臓弁を使用不能にする。仮の弁は、固定用導管が拡張状態になると、一時的に心臓弁の代用となるように作動する。
【0041】
上述の目的、特徴、及び、利点とそれ以外の目的、特徴、及び、利点は、添付の図面と関連付けて後段の明細書を読むと一層明瞭となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明は、心臓弁に代用弁を準備するための観血を最小に抑えた装置及び方法と、置換することができる心臓弁プロテーゼを配置するための観血を最小に抑えた装置及び方法に関するものである。心臓弁に代用弁を準備する装置及び方法は、心臓弁置換の成功率と有効性を向上させるために利用される。本件に開示す、欠陥のある心臓弁を改善する医療装置及び医療方法は、欠陥のある心臓弁の内側に心臓弁プロテーゼを反復的に配置するために利用される。心臓弁を有効に置換することができるようにすることで、従来の装置及び方法に付随していた多数の欠陥を伴わずに、心臓弁疾患を治療する効果的態様を提案することができる。ここで重要なのは、本発明の心臓プロテーゼシステムが提示する解決策が、生体プロテーゼ弁に付随する術後生活の質を採るか、それとも、機械弁に付随する長期耐用性を採るか、二択を患者に強要しない点である。加えて、この処置手順は、拍動する心臓に観血を最小に抑えて接近することを可能にし、心臓弁置換の臨床結果の恩恵を得ることができるようにする。
【0043】
本発明の例示の実施形態は、心臓弁に代用弁を準備する方法を提示している。この方法は、心臓弁に固定用導管を配送する処置を含んでいる。この後、固定用導管は心臓弁で拡張させられる。固定用導管が拡張すると、固定用導管により、開放空洞が構成される。
【0044】
例示の実施形態において、開放空洞は、心臓弁プロテーゼの小葉又はその他の構成要素を全く含んでいない。更に、例示の実施形態では、開放空洞は、実質的に均一な内面を有している。「実質的に均一」という語は、本明細書では、概ね均一ではあるが或る程度の起伏又は特徴部を含んでもよい表面を説明するために使われている。例えば、用語「固定用導管の開放空洞の実質的に均一な表面」は、解放可能に係合する部材を含む空洞を指すことができる。よって、「空洞の実質的に均一な表面」は概ね均一ではあるが、実施形態によっては完全に均一というわけではない。
【0045】
固定用導管の拡張形状の例示の実施形態の平滑で且つ実質的に均一な内面は、心臓弁プロテーゼを配置する表面を、より安全かつ信頼できるものにする。通例、欠陥のある生来の心臓弁とこの生来の心臓弁の周囲組織の領域には凸凹と酷い石灰沈着が見られる。心臓弁輪のよくある石灰化、肥厚、及び、硬化により、弁固定部に適切な質の封鎖を達成するのを一層困難にすることがある。例えば、欠陥のある生来の心臓弁の既存の弁輪の表面は凸凹の度合いも石灰化の程度もまちまちであり、これでは、固定用導管の支持の質を劣化させるばかりか、固定用導管と弁輪との間の血液漏出源となりかねない。本発明の例示の実施形態は、心臓弁プロテーゼの置換を支援して欠陥のある心臓弁輪の凸凹のある石灰化した表面に付随する複雑さを克服するための固定用導管を提示している。生来の心臓弁の起伏のある石灰化した表面とは異なり、固定用導管の平滑で且つ実質的に均一な内面は、置換可能な心臓弁の配置をより有効かつ信頼できるものにすることができる。固定用導管の例示の実施形態は、心臓弁プロテーゼの配置とは無関係に、配置を実施することができる。更に、患者の体内に心臓弁プロテーゼを導入する前に、固定用部材の着座の質を査定及び検証することができる。
【0046】
本発明の例示の実施形態はまた、欠陥のある心臓弁を改善する方法を提示している。この方法はまず、心臓弁に固定用導管を配送する処置を含んでいる。固定用導管には固定部が設けられており、これにより心臓弁プロテーゼを解放可能に接続可能である。仮の弁は圧縮状態のまま心臓弁の近位の動脈内の目標部位に配送される。仮の弁は心臓弁の近位の動脈内の目標部位では拡張状態になることができる。その後、固定用導管は心臓弁においては拡張状態になり、心臓弁の生来の構成要素は心臓弁を押圧し、心臓弁を使用不能にする。固定用導管が拡張状態になると、仮の弁が一時的に心臓弁の機能の代理をするように作動することができる。
【0047】
更に、本発明は、欠陥のある心臓弁を改善することができる心臓プロテーゼシステムを提示している。例示の実施形態において、欠陥のある心臓弁とは、心臓の生来の心臓弁でも、事前に心臓に配置済みの心臓弁プロテーゼでも、いずれであってもよい。本発明による心臓プロテーゼシステムの例示の実施形態は、係合箇所又はハーバーが設けられた固定用導管を提示している。ハーバーは第1の解放可能な係合構成要素を有している。更に、心臓プロテーゼシステムには仮の弁が設けられている。加えて、ハーバーの第1の解放可能な係合構成要素に堅固に連結したりそれから切離したり可能である第2の解放可能な係合構成要素を有している心臓弁プロテーゼが設けられている。
【0048】
図2は、本発明により固定用導管200の例示の実施形態が大動脈弁に実装されているのを例示している。図2に示すように、固定用導管は、拡張可能な構造部を有し、この拡張可能な構造部は、近位固定構成要素210及び遠位固定構成要素215を有している。例示の実施形態では、固定用導管200の拡張により、近位固定構成要素210及び遠位固定構成要素215が体組織構成要素と接合され、実質的に均一な内面を有する開放空洞235を構成する。
【0049】
用語「近位」は、本明細書において、ある位置が別の位置よりも比較的近くにあることを説明するのに使用され、複数の近くの位置全体の範囲を含み、ある位置が別の位置に直接隣接し又は当接することを含む。用語「遠位」は、本明細書において、ある位置が別の位置から比較的遠くにあることを説明するのに使用される。従って、本明細書において、用語「近位」及び「遠位」は、空間的関係を言及するのに使用され、血液の流れの上流側又は下流側の位置を説明するために使用されているのではない。
【0050】
図2に示す例示の実施形態では、固定用導管200は、大動脈弁200に配置されている。固定用導管200は、血管内配送を可能にする非拡張状態、又は、それ以外の観血を最小にする配置形態で配送される。従って、例示の実施形態では、固定用導管200は、カテーテルにより大動脈弁220の部位に経皮的に配置される。外科医が大動脈弁220の内部の所望位置につぶれ状態の固定用導管200を配送したら、固定用導管200を拡張させる。このように固定用導管200を拡張させることで、近位固定構成要素210を大動脈225の内で管腔壁に係合させる。図2に示す例示の実施形態では、固定用導管200は、その近位固定構成要素210が大動脈弁220の弁輪の近位において大動脈弁220に係合するように位置決めされる。このように、近位固定構成要素210は、大動脈弁220の弁膜尖を大動脈225の管腔壁に押付けてつぶすように作用する。それにより、固定用導管200の拡張は、生来の大動脈弁220を使用不能にすることができる。
【0051】
固定用導管200の拡張は、遠位固定構成要素215を大動脈225の管腔壁に係合させるためにも作用する。図2の例示の実施形態に示すように、遠位固定構成要素215は、バルサルバ洞230の近位で大動脈225に係合するように位置決めされる。例示の実施形態では、固定用導管200は、バルサルバ洞230の形状に一致するように構成され、従って、固定用導管200を適所に固定するのを助ける。変形実施形態では、固定用導管200の遠位固定構成要素215は、バルサルバ洞230の近位で管腔壁を刺し通すことができるフックを有している。管腔壁を刺し通すことにより、固定用導管200を適所に固定するのを助けることができる。
【0052】
固定用導管200の例示の実施形態によって与えられる重要な利点は、弁プロテーゼの配置と別に、弁固定部を独立して配置することを可能にしたことにある。固定用導管200をこのように独立して配置することは、欠陥のある心臓弁を修復する際に関わる多数の危険を外科医が回避し且つ最小にするのに役立つ。従来の装置は、弁固定部と弁プロテーゼの両方を備えている1個の装置を経皮的に配置ことに関わる。しばしば、観血を最小にする処置を遂行する外科医は、超音波の2次元ソノグラフ画像だけによって視覚的に支援される。従って、外科医は、3次元装置を正確に実装することを試みる仕事に、2次元フィードバックだけを用いて向き合う。従来の装置を利用した場合、外科医は、装置を「一発勝負」で完全に配置しなければならない。
【0053】
経皮的心臓弁置換術を従来どおり「一発勝負」で行う方法に付随する危険は数限りなく存在し、不安を抱かせる。残念ながら、従来の装置を用いて実施される多くの処置は上手くいかず、患者に致死的でさえある。経皮的配置に付随する大きな危険は、従来装置の弁固定部を生来の心臓弁の硬化し且つ石灰化した表面に実装したとき、弁固定部が緩く着座させられる場合があることである。従来の心臓弁装置を比較的緩く着座させると、最終的に、心臓弁装置が移動したり、心臓弁装置と大動脈管腔壁との間に漏れが生じたりすることがある。更に、従来の装置の配置により、欠陥のある心臓弁上の石灰堆積物を崩して、石灰堆積物を血流中に解放する事実から、追加の危険を生じさせる。このような危険は全て、従来の心臓弁装置の配置に付随している。しかしながら、固定用導管200の例示の実施形態は、多数のこのような危険を最小にし且つ回避するのを助ける。
【0054】
従来の装置とは反対に、固定用導管200は、固定構成要素及び内側管腔だけを含む。固定用導管200を独立に実装することにより、外科医が、置換心臓弁プロテーゼの配置又は機能に対する心配なしに、固定用導管200を正確にかつ堅固に配置するのに関わる変化量に集中することを可能にする。よって、固定用導管200の独立の配置は、このような装置を配置する際に外科医が制御しなければならない変化量の数を最小にするのに役立つ。更に、外科医が固定用導管200を正確に配置することに失敗したら、外科医は、次いで、固定用導管200の配置を補正したり、固定用導管200を位置決めした失敗領域を摘出したりするいくつかの手順を実施することができる。例えば、限定するわけではないが、固定用導管200の配置に失敗したら、患者にバイパス手術が施され、失敗した大動脈根を大動脈根導管に置換することができる。
【0055】
図2に示すように、固定用導管200が大動脈弁220に配置されると、開放空洞235が形成される。開放空洞235は、平滑で且つ実質的に均一な表面を有している。この平滑で且つ実質的に均一な表面は、欠陥のある大動脈弁220の石灰化し且つ硬化した粗い表面に置き換わる。固定用導管200の開放空洞235の平滑で且つ実質的に均一な表面には多数の利点がある。空洞の平滑で且つ実質的に均一な表面が、心臓弁プロテーゼを配置するのに極めて改善された領域となっている点は重要である。従来の装置は、それを不均一な表面に固定する必要があったため、上手くいかないことがしばしばあった。本発明の実施形態により配置される弁プロテーゼは、固定用導管200の実質的に均一な内面に配置されることが可能である。
【0056】
例示の実施形態では、固定用導管200は、ステンレス鋼、チタン、チタンに類似する各種金属もしくは各種合金、又は、好適な可塑材から製造することのできる撚り糸状構造体から構成されている。このような撚り糸構造体、即ち、フィラメントは、格子状にされ、ループ状にされ、又は、巻かれるのがよい。或る実施形態では、固定用導管200は、外科手術用ステンレス鋼のメッシュから構成される。或る実施形態では、固定用導管200は、ニッケル−チタン合金等の形状記憶材料から構成される。固定用導管200は、それが固定される管腔壁の表面の中に曲げ可能な材料で構成されるのがよい。生来の内側管腔がしばしば不規則な硬質面であるので、固定用導管200の安全かつ堅固な着座を確実に行うために、固定用導管200は、曲がることにより固定用導管200が固定される生来の管腔壁の形状に一致することが可能であることが有利である。加えて、固定用導管200の実施形態は、生体適合性管腔を含むのがよい。この実施形態では、撚り糸状構造体は、外側コアを有し、撚り糸状構造体の中空内部は、生体適合性管腔と一直線になるのがよい。或る実施形態では、固定用導管200は、曲がることにより生来の管腔壁の形状に一致する外側層と、実質的に均一で且つ平滑な表面を維持する内側層とを有している。
【0057】
図2に示す実施形態の変形例では、固定用導管200は、大動脈225の別の領域に配置されてもよい。例えば、限定するわけではないが、固定用導管200は、その近位固定構成要素210が大動脈洞と大動脈管の接合部の近位で大動脈225の管腔壁と接合されるように拡張させられる。よって、固定用導管200は、大動脈根上において更に下に配置される。加えて、固定用導管200は、大動脈のもっと上の、例えば、バルサルバ洞230よりも上位又は大動脈弓の近位に配置されてもよい。加えて、固定用導管200は、大動脈弁以外の各心臓弁に配置されてもよい。例示の実施形態では、固定用導管200は、肺動脈弁に配置されてもてよい。
【0058】
図3は、本発明により固定用導管200及び仮の弁305の例示の実施形態が大動脈弁に実装されているのを例示している。図3に示すように、固定用導管200を大動脈弁220に配置すると、大動脈弁220は使用不能にされる。より詳細に説明すると、固定用導管200を拡張させると、生来の大動脈弁220の弁膜尖をつぶし、かくして、大動脈弁220は、その機能を停止する。本発明の例示の実施形態において、仮の弁305は、使用不能にされた心臓弁の機能を一時的に置き換えるように実装される。
【0059】
図3に示す例示の実施形態では、仮の弁305は、機械弁であってもよいし、生体プロテーゼ弁であってもよい。仮の弁305は、図3に示すカテーテル310に取付けられる等、観血を最小にする仕方で配置されるのがよい。仮の弁305を機能実施位置まで配送する間、最初、仮の弁305はつぶされる。仮の弁305がその機能実施位置に位置したとき、次いで、仮の弁305を拡張させる。仮の弁305を拡張させたら、仮の弁305を大動脈225の管腔壁に押付け、又は、シールする。例示の実施形態では、仮の弁305は、大動脈225の壁に取付けられていない。仮の弁305を拡張させたら、その弁膜尖が開閉することにより、大動脈225を通る血液の流れを制御することができる。よって、仮の弁305は、生来の心臓弁が機能しない状態にされる前に配送される。従って、生来の心臓弁が機能しない状態になっても、仮の弁305が、拍動している心臓の心臓周期を中断させずに、生来の心臓弁の機能を実施することができる。
【0060】
図4Aは、本発明により心臓プロテーゼシステム400の例示の実施形態が大動脈弁に実装されることを示している。図4Aに示すように、固定用導管200は、大動脈弁輪の近位で大動脈根に配置される。例示の実施形態では、固定用導管200は、左心室430と大動脈225の間の入口領域を覆っている。一実施形態では、固定用導管200は、大動脈弁輪405の直ぐ近位の領域を覆うのがよい。
【0061】
図4Aに示す例示の実施形態では、固定用導管200は、つぶし形態で配送される。例えば、限定するわけではないが、固定用導管200は、それをつぶすことができる外科手術用ステンレスメッシュから構成されている。つぶされた固定用導管200は、経皮的配置又は長いアーム配送装置を含む観血を最小にする仕方で配送される。例示の実施形態では、固定用導管200は、観血を最小にする仕方で心臓小室又は動脈/静脈系を通して大動脈根410の中に配送される。つぶされた固定用導管200を、大動脈根410の基部の所望位置に配送したら、固定用導管200を拡張させ、大動脈根410の中に固定させる。例示の実施形態では、固定用導管200を、大動脈弁輪405の近位で拡張させる。また別の実施形態では、固定用導管200を大動脈根410の更に奥深くで拡張させる。加えて、変形実施形態では、本発明の方法の各処置段階を遠隔装置によって実施してもよい。例えば、限定するわけではないが、固定用導管200を所望位置へ配送したら、外科医は、固定用導管200を拡張させるために遠隔装置を使うことが可能にしてもよい。
【0062】
例示の実施形態では、固定用導管200は、係合箇所又はハーバー(harbor)415を有している。ハーバー415は、解放可能な係合構成要素を有しており、解放可能な係合構成要素は、心臓弁プロテーゼの受入れポートとして作用可能である。例示の実施形態では、解放可能な係合構成要素は、それと噛合う心臓弁プロテーゼ420の解放可能な係合構成要素と結合可能である。心臓弁プロテーゼ420は、種々の種類の機械弁及び生体プロテーゼ心臓弁を含む種々の異なる種類の心臓弁プロテーゼである。
【0063】
固定用導管200を実装することにより、生来の心臓弁が機能しない状態になるため、本発明の例示の実施形態は、生来の心臓弁の機能を実施するように大動脈225に配置された仮の弁を有している。仮の弁305は、図4Aに示す例示の実施形態では、仮の弁305は、機械弁であってもよいし、生体プロテーゼ弁であってもよい。仮の弁305は、図4Aに示すカテーテル310に取付ける等、観血を最小にする仕方で配置されるのがよい。それ故、生来の心臓弁が機能しないようにする前に、仮の弁305を配送するのがよい。生来の心臓弁が機能しない状態にされると、仮の弁305は、修復施術中、拍動している心臓の心臓周期を中断させずに、生来の心臓弁の機能を実施することができる。
【0064】
固定用導管200と仮の弁305の両方を適所に配置したとき、心臓弁プロテーゼ420を心臓に導入することができる。図4Aに示す例示の実施形態では、心臓弁プロテーゼ420をポートを通して心臓小室に導入する。変形実施形態では、心臓弁プロテーゼ420を静脈/動脈系を通して導入してもよい。図4Aに示す例示の実施形態のポート425は、左心室430の下壁に取付けられ、開口を有し、心臓弁プロテーゼ420は、オリフィスを通して配送される。ポート425は、当該技術で周知の種々の異なるポートでよいことを当業者なら認識するだろう。心臓弁プロテーゼ420は、カテーテル又は長いアーム装置により配送されてもよいし、それ以外の観血を最小にする装置により配送されてもよい。図4Aに示す例示の実施形態の心臓弁プロテーゼ420は、長いアーム装置435により配送される。
【0065】
図4Aに示す例示の実施形態では、心臓弁プロテーゼ420を左心室430に導入したら、心臓弁プロテーゼ420を固定用導管200のハーバー415に配送する。例示の実施形態では、心臓弁プロテーゼ420は、複数の小葉440を有している。これらの小葉440は欠陥のある心臓弁の作用に置き換わるように機能する。加えて、心臓弁プロテーゼ420は、弁輪445を有している。心臓弁プロテーゼ420のための適切なシールを設けるために、弁輪445を固定用導管200と接合させるのがよい。心臓弁プロテーゼ420は、特定の実装の必要に応じて、ステントを有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0066】
例示の実施形態では、心臓弁プロテーゼ420は、解放可能な係合構成要素を有している。この解放可能な係合構成要素は、ハーバー415に設けられた噛合い式の解放可能な係合構成要素への結合とそれからの分離を可能にする。心臓弁プロテーゼ420の解放可能な係合構成要素は、ハーバー415との適切な噛合いを確保するように、装置の種々の箇所に位置決めされる。この解放可能な係合構成要素は、心臓弁プロテーゼ420の弁輪又はステント部分に位置している。心臓弁プロテーゼ420を固定用導管200のハーバー415の解放可能な係合構成要素と噛合わせると、ハーバー415は、心臓弁プロテーゼ420を解放可能に適所に維持することができ、心臓弁プロテーゼ420をカテーテル又は長いアームから解放することができる。
【0067】
心臓弁プロテーゼ420を配置した後、仮の弁305を摘出する。更に、心臓弁を置換する必要が生じたとき、静脈/動脈系のポート又は心臓のポートを開口させることを可能にする機構を使用して、静脈/動脈系のポート又は心臓のポートを閉鎖するのがよい。
【0068】
心臓弁プロテーゼ420が破損し、又は、その機能的寿命の限界に達したら、動脈/静脈系及び各心臓小室のポートを再び開き、新しい心臓弁プロテーゼを固定用導管200のハーバー415に配送するのがよい。また、血液流を制御する目的で、仮の弁305を大動脈225に配置する。次に、カテーテル又は長いアームを、固定用導管200の古い心臓弁プロテーゼ420に係合させるのに使用する。次いで、心臓弁プロテーゼ420をハーバー415の解放可能な係合構成要素から分離し、心臓弁プロテーゼ420を摘出する。その後、カテーテル又は長いアーム機構を使って、新しい心臓弁プロテーゼを左心室430に導入し、固定用導管200のハーバー415に解放可能に係合させる。従って、欠陥のある心臓弁プロテーゼは、観血を最小にする仕方で新しい心臓弁プロテーゼと置換することができる。上述したプロセスは、臨床要件に応じて、患者の生涯にわたってもよいし、1回又は数回繰返されてもよい。
【0069】
図4Bは、本発明の例示の実施形態による心臓プロテーゼシステム400の変形実施形態が大動脈弁に実装されているのを例示している。図4Bに示す変形実施形態では、心臓弁プロテーゼ420は、仮の弁305の導管を通して配送される。図4Bに示す変形実施形態では、仮の弁305は、内側導管455を有する拡張したカテーテル450に通して配送される。内側導管455は、心臓弁プロテーゼ420が心臓プロテーゼシステム400の例示の実施形態により配送されるときの通路にすることが可能である。
【0070】
図4Bに示すように、心臓弁プロテーゼ420の変形実施形態は、仮の弁305の中心に通ることが可能である。それにより、本発明の欠陥のある心臓弁を改善する方法によれば、仮の弁305を、欠陥のある大動脈弁220の機能を一時的に行うために配置する。次に、図4Bに示すように、固定用導管200を、欠陥のある大動脈弁の内部に適切に着座させ且つ固着させる。固定用導管200を適切に配置したことを確認した後、心臓弁プロテーゼ420を、拡張したカテーテル450の内側導管455を介して大動脈225に配送する。例示の実施形態では、心臓弁プロテーゼ420は、内側導管455の中を通すことができるように、つぶれ形態で配送することが可能である。心臓弁プロテーゼ420が大動脈225に入ったら、心臓弁プロテーゼ420を機能的形態に拡張させる。その後、心臓弁プロテーゼ420を固定用導管200内に配置する。
【0071】
図4Bに示す実施形態では、心臓弁プロテーゼ420の解放可能な係合構成要素は、それに噛合う固定用導管200のハーバー415の解放可能な係合構成要素に結合される。変形実施形態では、心臓弁プロテーゼ420は、解放可能な係合構成要素を有していない。この変形実施形態では、心臓弁プロテーゼ420を固定用導管200側で単に拡張させ、心臓弁プロテーゼ420の弁輪445を固定用導管200の平滑な内面と接合させる。当業者なら分かることであるが、本発明の範囲から逸脱することなしに、心臓弁プロテーゼ420を多数の異なる仕方で配送し且つ配置してもよい。
【0072】
心臓プロテーゼシステム400の追加の変形実施形態は、固定用導管200の配置のための変形方法を可能にする。この実施形態では、固定用導管200を、図4Bに示す拡張させたカテーテル450の内側導管455の中を通して配送することを可能にする。従って、この実施形態と共に行われる欠陥のある心臓弁を改善する方法は、最初、仮の弁305を、欠陥のある心臓弁の近位の領域へ配送し且つ配置することを含む。次いで、固定用導管200が、配置後における仮の弁305の拡張させたカテーテル450の内側導管455の中を通ることを可能にする。従って、固定用導管200を、圧縮状態のカテーテルによって仮の弁305の中を通して配送する。次に、固定用導管200を、欠陥のある心臓弁の近位に位置決めし、配置する。固定用導管200を上手く配置した後、固定用導管200を配送したカテーテルを取出す。引き続いて、心臓弁プロテーゼ420を、配置された仮の弁305の拡張されたカテーテル450の内側導管455の中を通して配送する。
【0073】
図5Aは、本発明による固定用導管200の例示の実施形態を示している。固定用導管200は、近位固定構成要素210及び遠位固定構成要素215を有している。近位固定構成要素210を、管腔壁内に固定する。図5Aに示す例示の実施形態では、近位固定構成要素210は、大動脈根と固定用導管200の壁との間の漏れを防止するシールとして役立つ口広がり縁部を有している。例示の実施形態では、遠位固定縁部215は、バルサルバ洞230の形状と一致する。この例示の実施形態では、遠位固定縁部215は、バルサルバ洞230の表面に係合するとともに固定用導管200を適所に固着させるように構成されている。
【0074】
加えて、図5Aに示す固定用導管200の例示の実施形態は、組織刺し通し構成要素505、510を有している。組織刺し通し構成要素505、510は、組織構成要素を刺通してそれに係合することが可能であり、従って、固定用導管200を安定させるのを助けることを可能にする。図5Aに示す例示の実施形態では、遠位固定構成要素220の刺し通し構成要素505、510は、バルサルバ洞230の中に広がり、固定用導管200を適所に固着させるのを助ける。当業者なら認識することであるが、刺し通し構成要素505、510は、フックであってもよいし、心臓の組織構成要素に係合するのに十分なその他の種類のアンカーであってもよい。固定用導管と大動脈壁との間の血液の移動を阻止するために、大動脈洞の中への拡張により、管腔を有するのがよい。例示の実施形態では、固定用導管200は、それが着座する表面の不規則部に噛合う外面と、実質的に均一な内面とを有している。それにより、固定用導管200の平滑で且つ実質的に均一な内面は、固定用導管200の着座後の外面に押付けられる凹凸の影響を受けない。
【0075】
図5Aに示すように、固定用導管200の例示の実施形態は、解放可能な係合構成要素515を有している。解放可能な係合構成要素515は、心臓弁プロテーゼ420の結合及び分離を可能にする多数の適当な構成要素である。図5Aの例示の実施形態に示す解放可能な係合構成要素515は、ネジ山を有している。従って、近位固定構成要素210は、解放可能な係合構成要素515のために一連のネジ山を有している。次いで、例示の実施形態では、心臓弁プロテーゼ420の噛合い式の解放可能な係合構成要素を、それに対応する適当なネジ山に取付けることによって、心臓弁プロテーゼ420の結合を達成する。よって、本発明による、欠陥のある心臓弁を改善する方法は、心臓弁プロテーゼ420を固定用導管200の解放可能な係合構成要素のネジ山に結合させる工程を有している。当業者なら分かることであるが、本発明から逸脱することなしに、多数の異なる装置、構成要素材料、及び機構を、図5Aに示す解放可能な係合構成要素515のネジ山の代わりにすることができる。例えば、限定するわけではないが、解放可能な係合構成要素515は、噛合い爪が挿入される一連の溝、拡張式トグル構成要素が挿入される開口、磁石システム、クランプ、ラッチ機構、又はその他の好適な構成要素であってもよい。
【0076】
図5Bは、本発明による固定用導管200の例示の実施形態を示している。図5Bに示す例示の実施形態では、固定用導管200は、バルサルバ洞230を縦断している。図1に関連して先に説明したように、バルサルバ洞230は、3つの弁膜尖105、10、115(図1)の真上に配置され、バルサルバ洞の各々が、個々の弁膜尖に対応している。冠動脈の起点が、バルサルバ洞230の近位に位置する。固定用導管200は、冠動脈に通じている開口を遮らないように且つ血液の自由な流れを可能にするように、バルサルバ洞230の近位に開口を有している。図5Bに示す例示の実施形態では、固定用導管200の遠位固定構成要素215は、バルサルバ洞230を越えて延び、図5Bに示すように、大動脈弓よりも下の大動脈壁の中に固定される。
【0077】
図5Bに示す例示の実施形態では、固定用導管200を適所に固定するのを助けるために、外部大動脈リング520が大動脈根の外面に解放可能に配置されている。この実施形態では、固定用導管200の遠位固定構成要素210は、管腔壁を押すように半径方向外向きに突出している。次に、大動脈リング520を固定用導管200の遠位固定構成要素350の突起部よりも下方に配置し、それにより、固定用導管200が大動脈リング520を越えて移動することを防止する。
【0078】
図5Bに示す固定用導管200の例示の実施形態は、近位固定構成要素210を有している。近位端部210は、ハーバー415を有している。ハーバー415は、心臓弁プロテーゼの解放可能な連結を可能にする。図5Bに示す例示の実施形態のハーバー415は、固定用導管200の近位固定構成要素210に配置される。別の実施形態では、ハーバー415は、生来の心臓弁の正常な位置に配置されるのがよい。変形実施形態では、ハーバー415は、固定用導管200の遠位固定構成要素215に配置される。ハーバー415は、解放可能な係合構成要素を有するのがよい。当業者なら分かることであるが、多数の異なる種類の解放可能な係合構成要素をハーバー415に組入れ、必要な機能を達成するのがよい。
【0079】
図6は、本発明による仮の弁305の例示の実施形態を示している。仮の弁305は、つぶれ可能フレームの内側に1枚の小葉又は複数枚の小葉を含んでいる。図4に示す例示の実施形態では、小葉605は、生体適合性材料で構成されるのがよい。限定するわけではないが、いくつかの実施形態では、生体適合性のポリマー材料が、小葉605を形成するのに使用される。変形実施形態では、仮の弁305の小葉605は、牛の心膜から構成される。また別の実施形態では、仮の弁305の小葉605は、豚の大動脈小葉から構成される。加えて、仮の弁305の小葉605は、カーボン又はその他の金属等の金属材料から構成されてもよい。当業者には分かることであるが、仮の弁305は、一時的に心臓の中に配置することが可能な多数の異なる種類の弁であるのがよい。
【0080】
図6に示す例示の実施形態では、仮の弁305のつぶれ可能フレーム610は、生体適合性のポリマー構造体から構成されるのがよい。別の実施形態では、つぶれ可能フレーム610は、ドーナッツ型バルーンを利用して構成されており、この場合、バルーンはポリマーで構成されている。変形例では、つぶれ可能フレーム610の実施形態は、記憶合金又は記憶ポリマーのメッシュから構成されてもよい。
【0081】
図6に示すように、つぶれ可能フレーム610は、心臓内の所望箇所に配送するためのポリマーカテーテル615に取付けられている。典型的には、つぶれ可能フレーム610は、それをカテーテル310から解放する必要がないので、カテーテル310に永久的に連結されている。カテーテル310により、外科医が仮の弁305の機能と位置をに対する制御を維持することを可能にする。更に、カテーテル310により、つぶれ可能フレーム610及び小葉605わ外科医の直接制御によってつぶす。例えば、限定するわけではないが、固定用導管を生来の大動脈弁内に位置決めすべきであれば、仮の弁305を大動脈内の生来の大動脈弁の近位の位置までカテーテル310を介して血管内で配送する。従って、固定用導管が生来の大動脈弁を機能させないようにするする前、仮の弁305が生来の大動脈弁の機能に置き換わるように、仮の弁305を拡張させ、即ち、展開させる。
【0082】
図7は、本発明による心臓弁プロテーゼ420の例示の実施形態を示している。心臓弁プロテーゼ420は、好ましい実施形態では、生体プロテーゼ弁である。心臓弁プロテーゼ420は、1枚の小葉又は複数枚の小葉705を備えている。例示の実施形態では、小葉705は、処理済みの組織から構成され、処理済みの組織は、例えば、牛の心膜又は大動脈の小葉材料であるが、これらに限定されない。他の実施形態では、小葉705は、生体適合性ポリマーで構成されてもよい。
【0083】
図7に示すように、心臓弁プロテーゼ420は、弁輪710を有している。弁輪710は、生体適合性金属又は生体適合性ポリマーから構成されるのがよい。加えて、図7に示すように、心臓弁プロテーゼ420は、解放可能な係合構成要素715を有している。解放可能な係合構成要素715は、ハーバー415の解放可能な係合構成要素に結合可能である。それにより、心臓弁プロテーゼ420の解放可能な係合構成要素715は、ハーバー415に堅固に取付けられる。図7に示す例示の実施形態では、心臓弁プロテーゼ420の解放可能な係合構成要素715は、心臓弁プロテーゼ420の側面に設けられたネジ山である。解放可能な係合構成要素715のネジ山は、固定用導管200の解放可能な係合構成要素515(図5A)の相手方のネジ山に結合される。解放可能な係合構成要素715は、上記以外の多数の好適な構成要素であってもよく、例えば、心臓弁プロテーゼ420をハーバー415に解放可能に係合させることができるネジ、磁石、クランプ、又は、ラッチシステムを含むが、これらに限定されないことを、当業者は認識すべきである。
【0084】
心臓弁プロテーゼ420は、カテーテル又は長いアームに連結可能であるのがよく、長いアームは、それが特定箇所に配送されるように使用される。好ましい実施形態では、心臓弁プロテーゼ420をハーバー415の中に解放可能に取付けるカテーテル又は長いアーム装置は、生体適合性ポリマー又は生体適合性金属で構成されるのがよい。長いアーム装置は、遠位端部及び近位端部を有している。カテーテル又は長いアーム装置は、その遠位端部に、心臓弁プロテーゼ420を解放可能に保持するロック構成要素を有している。このロック構成要素は、ネジ、クランプ、ラッチシステム、又は、その他の多数の好適な構成要素であるのがよい。長いアーム装置又はカテーテルは、その近位端部に、心臓弁の結合又は分離を可能にする制御構成要素を有している。加えて、長いアーム装置又はカテーテルは、心臓弁プロテーゼ420を所望位置に差し向けるために、制御可能に可撓性である。
【0085】
図8は、肺動脈弁に実装された本発明による心臓プロテーゼシステム400の例示の実施形態を例示している。図8に示すように、固定用導管200は、肺動脈弁805の近位で肺動脈815に配置されている。例示の実施形態では、固定用導管200は、右心室810と肺動脈815との間の入口領域を覆っている。1つの実施形態では、固定用導管200は、肺動脈弁805の直ぐ近位の領域に実装される。変形実施形態では、固定用導管200は、肺動脈815のより広い部分にわたって実装される。当業者には分かることであるが、種々の実施形態において、固定用導管200の寸法及び配置箇所を、本発明の範囲を逸脱することなしに変更してもよい。
【0086】
例示の実施形態において、固定用導管200は、ハーバー415を有している。ハーバー415は、心臓弁プロテーゼ420のための受入れポートとして作用する解放可能な係合構成要素を有している。固定用導管200を実装することにより、生来の肺動脈弁805を機能させないようにし、よって、本発明の例示の実施形態は、生来の肺動脈弁805の機能を実施するために肺動脈815に配置される仮の弁305を有している。
【0087】
固定用導管200と仮の弁305の両方を適所に配置したら、心臓弁プロテーゼ420を心臓に導入する。例示の実施形態では、心臓弁プロテーゼ420は、心臓小室のポート820を通して導入される。図8に示す例示の実施形態のポート820は、右心室810の下壁に取付けられ、心臓弁プロテーゼ420を配送するときに通る開口を有している。図8に示す例示の実施形態では、心臓弁プロテーゼ420を右心室810に導入したら、心臓弁プロテーゼ420を固定用導管200のハーバー415に配送する。
【0088】
例示の実施形態では、心臓弁プロテーゼ420は、解放可能な係合構成要素を有し、この解放可能な係合構成要素は、それに噛合ようにハーバー15に設けられている解放可能な係合構成要素に結合可能である。心臓弁プロテーゼ420を固定用導管200のハーバー415の解放可能な係合構成要素に噛合わせると、ハーバー415は、心臓弁プロテーゼ420を解放可能に維持し、心臓弁プロテーゼ420をカテーテル又は長いアームから解放する。
【0089】
心臓弁プロテーゼ420を適所に位置した後、仮の弁305を摘出する。更に、静脈/動脈系のポート又は心臓のポートを、心臓弁を置換する必要がある場合にかかるポートを開口させることを可能にする仕方で閉鎖する。これにより、配置した第1の心臓弁プロテーゼに欠陥が生じたら、第2の心臓弁プロテーゼを第1の心臓弁の代わりに置換することができる。
【0090】
本発明の好ましい実施形態を開示してきたが、添付の特許請求の範囲の各請求項に明示す本発明及びその均等物の真髄及び範囲から逸脱せずに、多数の修正、補充、及び、削除を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】正常な大動脈弁101を例示した図である。
【図2】大動脈弁に実装された本発明による固定用導管200の例示の実施形態を示す図である。
【図3】大動脈弁に実装された本発明による固定用導管200及び仮の弁305の例示の実施形態を示す図である。
【図4A】大動脈弁に実装された本発明による心臓プロテーゼシステム400の例示の実施形態を示す図である。
【図4B】大動脈弁に実装された本発明による心臓プロテーゼシステム400の変形実施形態を示す図である。
【図5A】本発明による固定用導管200の例示の実施形態を示す図である。
【図5B】本発明による固定用導管200の例示の実施形態を示す図である。
【図6】本発明による仮の弁305の例示の実施形態を示す図である。
【図7】本発明による心臓弁プロテーゼ420の例示の実施形態を示す図である。
【図8】肺動脈弁に実装された本発明による心臓プロテーゼシステム400の例示の実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓弁を置換する準備をする方法であって、
心臓弁に固定用導管を配送する工程と、
心臓弁で前記固定用導管を拡張させる工程とを含んでおり、
固定用導管を拡張させる前記工程は、開放空洞を構成する、方法。
【請求項2】
前記方法は、
心臓弁の近位の目標部位に仮の弁をつぶれ状態で配送する工程と、
前記仮の弁を心臓弁の近位の前記目標部位に配置する工程とを更に含んでおり、
前記固定用導管が拡張状態になると、前記仮の弁が作動して心臓弁の機能を一時的に行う、請求項1に記載の心臓弁を置換する準備をする方法。
【請求項3】
前記開放空洞は実質的に均一な内面を有している、請求項1に記載の心臓弁を置換する準備をする方法。
【請求項4】
前記固定用導管は、心臓弁プロテーゼを解放可能に接続することができるようにしたハーバーを有している、請求項1に記載の心臓弁を置換する準備をする方法。
【請求項5】
前記固定用導管の前記開放空洞には、心臓弁プロテーゼを配置する際に押圧することができる内側管腔面が設けられている、請求項1に記載の心臓弁を置換する準備をする方法。
【請求項6】
拡張可能な構造体を有する固定用導管であって、
前記拡張可能な構造体は、近位固定構成要素、及び遠位固定構成要素を有し、
前記拡張可能な構造体の拡張により、前記近位固定構成要素及び前記遠位固定構成要素が体組織構成要素と接合され、開放空洞を構成する、固定用導管。
【請求項7】
前記開放空洞は、実質的に均一な内面を有する、請求項6に記載の固定用導管。
【請求項8】
前記固定用導管は、心臓弁を使用不能にすることができる、請求項6に記載の固定用導管。
【請求項9】
前記固定構成要素は、生来の心臓弁の構成要素を生来の心臓弁の弁輪に押付けてつぶすことによって、生来の心臓弁を使用不能にすることができる、請求項6に記載の固定用導管。
【請求項10】
前記固定構成要素は、心臓弁プロテーゼを受入れるように構成される、請求項6に記載の固定用導管。
【請求項11】
前記固定構成要素は、血管内を配送可能である、請求項6に記載の固定用導管。
【請求項12】
更に、拡張可能な構造体と連通したハーバーを有し、前記ハーバーは、第1の解放可能な係合構成要素を有する、請求項6に記載の固定用導管。
【請求項13】
第2の解放可能な係合構成要素を有する心臓弁プロテーゼを、前記ハーバーの第1の解放可能な係合構成要素に堅固に結合させたりそれから分離させたりすることが可能である、請求項12に記載の固定用導管。
【請求項14】
前記心臓弁プロテーゼは、心臓内で前記ハーバーの第1の解放可能な係合構成要素に結合させたりそれから分離させたりすることが可能である、請求項13に記載の固定用導管。
【請求項15】
心臓弁の能力を改善する方法であって、
心臓弁の近位の領域に固定用導管を供与する工程と、
前記固定用導管を配置する工程であって、固定用導管を配置することにより開放空洞を構成するようにした工程と、
前記固定用導管の前記開放空洞に心臓弁プロテーゼを配置する工程とを含んでいる、方法。
【請求項16】
心臓弁プロテーゼを配置する前記工程は、前記固定用導管の前記開放空洞の内部で前記心臓弁プロテーゼを拡張させる工程を含んでいる、請求項15に記載の心臓弁の能力を改善する方法。
【請求項17】
前記開放空洞は実質的に均一な内面を有している、請求項15に記載の心臓弁の能力を改善する方法。
【請求項18】
前記固定用導管は第1の解放可能な係合構成要素を備えており、前記心臓弁プロテーゼは前記固定用導管の前記第1の解放可能な係合構成要素に堅固に連結したりそれから切離したりすることができるようにされた第2の解放可能な係合構成要素を備えている、請求項15に記載の心臓弁の能力を改善する方法。
【請求項19】
心臓弁プロテーゼを配置する前記工程は、前記心臓弁プロテーゼの前記第2の解放可能な係合構成要素を前記固定用導管の前記第1の解放可能な係合構成要素に堅固に連結する工程を含んでいる、請求項18に記載の心臓弁の能力を改善する方法。
【請求項20】
前記方法は、
前記心臓弁プロテーゼを前記固定用導管から取出す工程と、
前記固定用導管の前記開放空洞に第2の心臓弁プロテーゼを配置する工程とを更に含んでいる、請求項19に記載の心臓弁の能力を改善する方法。
【請求項21】
欠陥のある心臓弁を改善する方法であって、
心臓弁に固定用導管を配送する工程であって、前記固定用導管には、心臓弁プロテーゼを解放可能に接続することができるようにされたハーバーを設けている工程と、
仮の弁をつぶれ状態で心臓弁の近位の目標部位に配送する工程と、
前記仮の弁を心臓弁の前記目標部位に配置する工程と、
前記固定用導管を心臓弁に配置する工程であって、固定用導管を配置することで心臓弁を使用不能にするようにした工程とを含んでおり、
前記固定用導管が拡張状態になると、前記仮の弁が作動して心臓弁の機能を一時的に行うようにした、方法。
【請求項22】
前記方法は、
前記心臓弁プロテーゼを心臓内の前記固定用導管の近位の領域に配送する工程と、
前記心臓弁プロテーゼを前記固定用導管の前記ハーバーに連結する工程とを更に含んでいる、請求項21に記載の欠陥のある心臓弁を改善する方法。
【請求項23】
前記仮の弁を取外す工程を更に含んでいる、請求項22に記載の欠陥のある心臓弁を改善する方法。
【請求項24】
前記方法は、
仮の弁をつぶれ状態で心臓弁の近位の動脈内の目標部位に配送する工程と、
前記仮の弁を心臓弁の近位の動脈内の目標部位で拡張させる工程と、
前記心臓弁プロテーゼを前記固定用導管の前記ハーバーから切離す工程と、
第2の心臓弁プロテーゼを前記固定用導管の近位の心臓内の領域に配送する工程と、
前記第2の心臓弁プロテーゼを前記固定用導管の前記ハーバーに連結する工程とを更に含んでいる、請求項23に記載の欠陥のある心臓弁を改善する方法。
【請求項25】
前記仮の弁を取外す工程を更に含んでいる、請求項24に記載の欠陥のある心臓弁を改善する方法。
【請求項26】
前記心臓弁は大動脈弁である、請求項21に記載の欠陥のある心臓弁を改善する方法。
【請求項27】
前記心臓弁は肺動脈弁である、請求項21に記載の欠陥のある心臓弁を改善する方法。
【請求項28】
心臓プロテーゼシステムであって、
第1の解放可能な係合構成要素を有するハーバーを有する固定用導管と、
仮の弁と、
前記ハーバーの第1の解放可能な係合構成要素に堅固に結合させたりそれから分離させたりすることが可能な第2の解放可能な係合構成要素を有する心臓弁プロテーゼと、を有する心臓プロテーゼシステム。
【請求項29】
更に、第2の心臓弁プロテーゼを有し、前記第2の心臓弁プロテーゼは、前記ハーバーの第1の解放可能な係合構成要素に結合させたりそれから分離させたりすることが可能である第2の解放可能な係合構成要素を有する、請求項28に記載の心臓プロテーゼシステム。
【請求項30】
前記固定用導管は、大動脈心臓弁に配置可能である、請求項28に記載の心臓プロテーゼシステム。
【請求項31】
前記固定用導管は、肺動脈心臓弁に配置可能である、請求項28に記載の心臓プロテーゼシステム。
【請求項32】
前記固定用導管は、血管の中を配送可能である、請求項28に記載の心臓プロテーゼシステム。
【請求項33】
前記仮の弁は、心臓弁の機能を一時的に行う、請求項28に記載の心臓プロテーゼシステム。
【請求項34】
解放可能な係合構成要素を有する心臓弁プロテーゼを有し、
前記解放可能な係合構成要素は、心臓の中に配置されたハーバーに連結可能である、心臓装置。
【請求項35】
前記ハーバーは、固定用導管に配置される、請求項34に記載の心臓装置。
【請求項36】
前記ハーバーは、前記心臓弁プロテーゼの解放可能な係合構成要素に結合可能である解放可能な係合構成要素を有する、請求項34に記載の心臓装置。
【請求項37】
前記心臓弁プロテーゼは、心臓の中に配置されたハーバーへの結合から解放可能である、請求項34に記載の心臓装置。
【請求項38】
ハーバーを有する固定用導管を有し、
前記ハーバーは、解放可能な係合構成要素を有する、心臓プロテーゼシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2009−519785(P2009−519785A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546001(P2008−546001)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2006/062199
【国際公開番号】WO2007/100410
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(504466834)ジョージア テック リサーチ コーポレイション (17)
【Fターム(参考)】