説明

心臓磁界診断装置およびその作動方法

【課題】 心臓磁界計測による傷害心筋部位の心臓内の3次元的局在の評価を可能にした心臓磁界診断装置および傷害心筋の3次元局在評価方法を提供する。
【解決手段】 磁界分布計測装置1は、被験者の胸部上の複数座標における非接触磁気計測により磁界分布データを形成する。演算装置2はこれに基づいて心筋内の3次元電流密度分布データを算出する。演算装置2はさらにこの3次元電流密度分布データに基づいて、磁界積分立体図を心臓の外郭立体図として描画する。また、演算装置2は、3次元電流密度データに基づいて、同一被験者のQRS差分、T波ベクトル、またはRTディスパーションの3次元分布を描画するデータを生成して心臓外郭上に再構築する。これにより傷害心筋の3次元局在の評価が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、心臓磁界診断装置および傷害心筋の3次元局在評価方法に関し、より特定的には、被験者の心臓磁界から心臓の3次元電流密度分布を算出して心臓磁界積分立体図(心臓外郭立体図)を構築して、当該被験者の同一空間内に心臓の傷害心筋部位の3次元局在を再構成する心臓磁界診断装置、およびそのような心臓の傷害心筋の3次元局在評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心筋梗塞のような冠動脈疾患の診断においては、心筋の傷害部位の診断が重要である。心筋の傷害部位の局在を判定することにより、冠動脈の病変部位を推定することができるからである。
【0003】
従来の心筋傷害の診断方法としては、次のような方法が用いられている。たとえば、Thallium-201やTc-99m tetrofosminなどのsingle photonや、18F-FDGやNH3などの放射線同位元素(RI)を用いた核医学的手法がゴールデンスタンダードとされている。
【0004】
一方、近年、造影剤を用いたコントラスト心エコー図法やガドリニウム(Gd)造影剤を用いたMRI法による心筋傷害の評価が提案されている。
【0005】
いずれの方法も放射線同位元素、超音波、磁気共鳴法にさらに造影剤を用いた方法であり、生体には侵襲的方法である。
【0006】
また、上記の従来の診断方法では、心筋の傷害部位の絶対位置を3次元空間で表示することはできなかった。
【0007】
一方、地磁気の10億分の1程度の磁束を高感度に検出することができる超電導量子干渉素子(Superconducting Quantum Interference Device:以下、SQUID)を用いた
SQUID磁束計がさまざまな分野で応用されている。特に、非侵襲性の計測が強く要望されている生体計測の分野では、SQUID磁束計を用いた人体の非接触磁気計測が行なわれている。
【0008】
特に、近年の薄膜素子製造技術の進歩によりDC−SQUIDが開発されたことにより、SQUID磁束計を用いて心臓の磁界分布である心磁図を計測することが行なわれている。このような心臓磁界の計測は、肺やトルソー形状の臓器構成の影響を受けにくいため、心臓の電気現象により生じる心臓磁界を3次元的に解析することができるという特徴を有する。
【0009】
さらにSQUID磁束計で計測された心臓磁界の2次元磁界分布から心筋内の3次元電流密度分布を求める方法が提案されている(特許文献1〜3、非特許文献1〜5参照)。
【0010】
これらの方法では、たとえば、開口合成磁界解析法(Synthetic Aperture Magnetometry:以下、SAM)を用いた電流密度分布推定法により、計測された心臓磁界に基づいて
異常な興奮伝播の信号源を推定したり、生存心筋を評価する方法が提案されている。また、さらに進んでTikhonov正規化による最小二乗法による空間分解能に優れた新しい空間フィルタを用いて心臓磁界分布から電流密度分布を推定する方法も提案されている。
【特許文献1】特開2002−28143号公報
【特許文献2】特開2002−28144号公報
【特許文献3】特開2002−28145号公報
【非特許文献1】中居賢司他、「心磁図による梗塞心筋および虚血心筋の解析−開口合成磁界解析法の臨床応用」、日本心電学会誌、2003年、第23巻、第1号、第35頁〜第44頁
【非特許文献2】中居賢司他、「空間フィルタ法を用いた心磁図による信号源推定」、日本心電学会誌、2004年、第24巻、第1号、第59頁〜第69頁
【非特許文献3】吉澤正人他、「拡張されたSAMによる心磁界の電流密度分布の表示」、日本生体磁気学会大会集、2002;15;109
【非特許文献4】M.Yoshizawa, K.Nakai, Y.Nakamura, K.Kobayashi, Y.Uchikawa:"Current density imaging of simulated MCG signal by Modified Synthetic Aperture Magnetometry" BIOMAG 2002, 2002.8(Germany)
【非特許文献5】中居賢司他、「心磁図の臨床応用と有用性」、心臓、第36巻、第7号、第549頁〜第555頁、心臓編集委員会、2004年7月15日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
心筋傷害、特に梗塞心筋の判定には、上記の心磁図から得られる以下の情報が有効であると考えられる。
【0012】
まず、心磁図でのQRS波は心臓の起電力を反映しており、心筋傷害の判定には、心磁図でのQRS波の解析が重要である。
【0013】
また、心磁図でのT波は心筋の再分極過程を反映しており、心筋傷害の判定には、心磁図のT波ベクトル(再分極過程の方向)の解析が重要である。
【0014】
さらに、心磁図でのRT時間の分散すなわちRTディスパーション(RT-dispersion)は、心筋の再分極の時間のばらつき(最大と最小との時間差)を反映しており、心筋傷害の判定には、心磁図のRTディスパーションの解析が重要である。
【0015】
従来、心磁図より、これらQRS波、T波ベクトル、RTディスパーションの解析を行っているが、心磁図の信号は、逆問題解に関する数理的な理由により2次元情報に止まるため、心筋傷害部位に関する2次元の相対的な空間情報が得られるにすぎなかった。
【0016】
また、前述のように、空間フィルタを用いて、心臓磁界分布から心筋内の3次元電流密度分布を求める方法が提案されているが(特許文献1〜3、非特許文献1〜5参照)、同一症例の心臓における3次元的な空間認識ができないため、傷害部位の絶対的な3次元空間における局在の判定は不可能であった。
【0017】
この発明の目的は、心臓磁界計測により求められた心筋内の電流密度分布から心臓の外郭立体図の構築を可能にするとともに、構築された3次元空間内において傷害心筋の3次元局在の評価を可能にした心臓磁界診断装置を提供することである。
【0018】
この発明の他の目的は、心臓磁界計測により求められた心筋内の電流密度分布から心臓の外郭立体図の構築を可能にするとともに、構築された3次元空間内において傷害心筋の3次元局在の評価を可能にした傷害心筋の3次元局在評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この発明の1つの局面によれば、傷害心筋の3次元局在を評価するための心臓磁界診断装置は、被験者の胸部上の複数の座標における非接触磁気計測により複数の座標に対応する2次元心臓磁界分布データを生成する心臓磁界分布計測手段と、生成された2次元心臓磁界分布データに基づいて被験者の心筋内の3次元電流密度分布データを生成する電流密度データ生成手段と、3次元電流密度分布データに基づいて、心臓の外郭を示す心臓磁界積分立体図を構築する心臓立体図構築手段と、3次元電流密度分布データに基づいて、心臓の傷害心筋の3次元局在を表わすデータを生成する傷害心筋データ生成手段と、構築された心臓磁界積分立体図と同一空間内に、傷害心筋の3次元局在を再構成する画像再構成手段とを備える。
【0020】
好ましくは、傷害心筋データ生成手段は、予め求められた複数の健常者のQRS波の3次元電流密度分布データの平均データと、被験者のQRS波の3次元電流密度分布データとのQRS差分を求める差分算出手段と、求められたQRS差分に基づいて、傷害心筋の3次元局在を描画するデータを生成する描画データ生成手段とを含む。
【0021】
好ましくは、QRS差分を求める差分演算手段は、被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における3次元電流密度分布データのQRS波の期間にわたる積分値を求める積分手段と、積分手段によって求められた複数の健常者のQRS波の期間にわたる積分値の平均値を求めて保持するデータ保持手段と、胸部の3次元座標のそれぞれの座標における健常者の3次元電流密度分布データの積分値の平均値と被験者の前記3次元電流密度分布データの積分値との間の差分をQRS差分として求める演算手段とを含む。
【0022】
好ましくは、描画データ生成手段は、3次元座標のそれぞれの座標におけるQRS差分の値に基づいて、それぞれの座標に対応する点を所定の色で色付けする手段と、3次元座標のそれぞれの座標に対応する点の間を線形補間する手段と、線形補間された3次元座標空間を透視法射影する手段とを含む。
【0023】
好ましくは、描画データ生成手段は、それぞれの座標の色の透明度をQRS差分の大きさに応じて設定する。
【0024】
好ましくは、傷害心筋データ生成手段は、被験者のT波の3次元電流密度分布データから電流ベクトルの角度を求めるベクトル角度算出手段と、求められたT波の電流ベクトル角度に基づいて、傷害心筋の3次元局在を描画するデータを生成する描画データ生成手段とを含む。
【0025】
好ましくは、ベクトル角度算出手段は、被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における3次元電流密度分布データのX成分のT波の期間にわたる積分値を求める第1の積分手段と、被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における3次元電流密度分布データのY成分のT波の期間にわたる積分値を求める第2の積分手段と、胸部の3次元座標のそれぞれの座標における3次元電流密度分布データのX成分およびY成分の積分値の比から電流ベクトルの角度を求める演算手段とを含む。
【0026】
好ましくは、描画データ生成手段は、3次元座標のそれぞれの座標における電流ベクトルの角度に基づいて、それぞれの座標に対応する点を所定の色で色付けする手段と、3次元座標のそれぞれの座標に対応する点の間を線形補間する手段と、線形補間された3次元座標空間を透視法射影する手段とを含む。
【0027】
好ましくは、描画データ生成手段は、それぞれの座標の色の透明度を電流ベクトルの角度の大きさに応じて設定する。
【0028】
好ましくは、傷害心筋データ生成手段は、被験者のQRS−T波の3次元電流密度分布データからRT時間の分散であるRTディスパーションを求める時間分散算出手段と、求められたRTディスパーションに基づいて、傷害心筋の3次元局在を描画するデータを生成する描画データ生成手段とを含む。
【0029】
好ましくは、時間分布算出手段は、被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における3次元電流密度分布データからRT時間の最大値と最小値との差分の絶対値をRTディスパーションとして求める手段を含む。
【0030】
好ましくは、描画データ生成手段は、3次元座標のそれぞれの座標におけるRTディスパーションに基づいて、それぞれの座標に対応する点を所定の色で色付けする手段と、3次元座標のそれぞれの座標に対応する点の間を線形補間する手段と、線形補間された3次元座標空間を透視法射影する手段とを含む。
【0031】
好ましくは、描画データ生成手段は、それぞれの座標の色の透明度をRTディスパーションの大きさに応じて設定する。
【0032】
好ましくは、心臓立体図構築手段は、被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における3次元電流密度分布データのまたは3次元電流密度分布データを二乗した3次元エネルギ密度データの所定期間にわたる積分値を求める積分手段と、それぞれの座標における積分値のうちの最大値を求める最大値判定手段と、胸部の3次元座標を複数の立方体の集合に区分する立方体設定手段と、積分値の最大値に基づいてしきい値を設定するしきい値設定手段と、設定されたしきい値に対する、立方体の各々の各頂点に対応する座標の積分値の大小を判定する大小判定手段と、複数の立方体の集合における積分値の大小の判定結果を表示する画像を心臓磁界積分立体図として生成する画像生成手段とを含む。
【0033】
好ましくは、画像生成手段は、複数の立方体の各々ごとに、各立方体を構成する8個の頂点のうち対応する座標の積分値がしきい値より大きい頂点の数を算出する手段と、積分値がしきい値より大きい頂点の数に応じて予め定められた態様で、しきい値よりも大きい頂点を結ぶポリゴンを描画する手段と、胸部の3次元座標空間内に複数の立方体を配列して描画されたポリゴンを透視法射影する手段とを含み、透視法射影により得られた各立方体のポリゴンの集合が心臓磁界積分立体図を構成する。
【0034】
この発明の他の局面によれば、傷害心筋の3次元局在を評価するための方法は、被験者の胸部上の複数の座標における非接触磁気計測により複数の座標に対応する2次元心臓磁界分布データを生成するステップと、生成された2次元心臓磁界分布データに基づいて被験者の心筋内の3次元電流密度分布データを生成するステップと、3次元電流密度分布データに基づいて、心臓の外郭を示す心臓磁界積分立体図を構築するステップと、3次元電流密度分布データに基づいて、心臓の傷害心筋の3次元局在を表わすデータを生成するステップと、構築された心臓磁界積分立体図と同一空間内に、傷害心筋の3次元局在を再構成するステップとを備える。
【0035】
好ましくは、傷害心筋の3次元局在を表わすデータを生成するステップは、予め求められた複数の健常者のQRS波の3次元電流密度分布データの平均データと、被験者のQRS波の3次元電流密度分布データとのQRS差分を求めるステップと、求められたQRS差分に基づいて、傷害心筋の3次元局在を描画するデータを生成するステップとを含む。
【0036】
好ましくは、QRS差分を求めるステップは、被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における3次元電流密度分布データのQRS波の期間にわたる積分値を求めるステップと、積分値を求めるステップによって求められた複数の健常者のQRS波の期間にわたる積分値の平均値を求めて保持するステップと、胸部の3次元座標のそれぞれの座標における健常者の3次元電流密度分布データの積分値の平均値と被験者の3次元電流密度分布データの積分値との間の差分を前記QRS差分として求めるステップとを含む。
【0037】
好ましくは、描画データを生成するステップは、3次元座標のそれぞれの座標におけるQRS差分の値に基づいて、それぞれの座標に対応する点を所定の色で色付けするステップと、3次元座標のそれぞれの座標に対応する点の間を線形補間するステップと、線形補間された3次元座標空間を透視法射影するステップとを含む。
【0038】
好ましくは、描画データを生成するステップは、それぞれの座標の色の透明度をQRS差分の大きさに応じて設定するステップを含む。
【0039】
好ましくは、傷害心筋の3次元局在を表わすデータを生成するステップは、被験者のT波の3次元電流密度分布データから電流ベクトルの角度を求めるステップと、求められたT波の電流ベクトル角度に基づいて、傷害心筋の3次元局在を描画するデータを生成するステップとを含む。
【0040】
好ましくは、ベクトル角度を求めるステップは、被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における3次元電流密度分布データのX成分のT波の期間にわたる積分値を求めるステップと、被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における3次元電流密度分布データのY成分のT波の期間にわたる積分値を求めるステップと、胸部の3次元座標のそれぞれの座標における3次元電流密度分布データのX成分およびY成分の積分値の比から電流ベクトルの角度を求めるステップとを含む。
【0041】
好ましくは、描画データを生成するステップは、3次元座標のそれぞれの座標における電流ベクトルの角度に基づいて、それぞれの座標に対応する点を所定の色で色付けするステップと、3次元座標のそれぞれの座標に対応する点の間を線形補間するステップと、線形補間された3次元座標空間を透視法射影するステップとを含む。
【0042】
好ましくは、描画データを生成するステップは、それぞれの座標の色の透明度を電流ベクトルの角度の大きさに応じて設定するステップを含む。
【0043】
好ましくは、傷害心筋の3次元局在を表わすデータを生成するステップは、被験者のQRS−T波の3次元電流密度分布データからRT時間の分散であるRTディスパーションを求めるステップと、求められたRTディスパーションに基づいて、傷害心筋の3次元局在を描画するデータを生成するステップとを含む。
【0044】
好ましくは、RTディスパーションを求めるステップは、被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における3次元電流密度分布データからRT時間の最大値と最小値との差分の絶対値をRTディスパーションとして求めるステップを含む。
【0045】
好ましくは、描画データを生成するステップは、3次元座標のそれぞれの座標におけるRTディスパーションに基づいて、それぞれの座標に対応する点を所定の色で色付けするステップと、3次元座標のそれぞれの座標に対応する点の間を線形補間するステップと、線形補間された3次元座標空間を透視法射影するステップとを含む。
【0046】
好ましくは、描画データを生成するステップは、それぞれの座標の色の透明度をRTディスパーションの大きさに応じて設定するステップを含む。
【0047】
好ましくは、心臓磁界積分立体図を構築するステップは、被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における3次元電流密度分布データのまたは3次元電流密度分布データを二乗した3次元エネルギ密度データの所定期間にわたる積分値を求めるステップと、それぞれの座標における積分値のうちの最大値を求めるステップと、胸部の3次元座標を複数の立方体の集合に区分するステップと、積分値の最大値に基づいてしきい値を設定するステップと、設定されたしきい値に対する、立方体の各々の各頂点に対応する座標の積分値の大小を判定するステップと、複数の立方体の集合における積分値の大小の判定結果を表示する画像を心臓磁界積分立体図として生成するステップとを含む。
【0048】
好ましくは、画像を生成するステップは、複数の立方体の各々ごとに、各立方体を構成する8個の頂点のうち対応する座標の積分値がしきい値より大きい頂点の数を算出するステップと、積分値がしきい値より大きい頂点の数に応じて予め定められた態様で、しきい値よりも大きい頂点を結ぶポリゴンを描画するステップと、胸部の3次元座標空間内に複数の立方体を配列して描画されたポリゴンを透視法射影するステップとを含み、透視法射影により得られた各立方体のポリゴンの集合が心臓磁界積分立体図を構成する。
【発明の効果】
【0049】
以上のように、この発明によれば、被験者の胸部の3次元電流密度分布から、QRS差分、T波ベクトル、またはRTディスパーションのような、傷害心筋部位を相対的に表示するデータの3次元立体表示を得るとともに、同一被験者の3次元電流密度分布から別途構築された心臓外郭立体図と再構成することにより、心臓における傷害心筋部位の絶対的な3次元空間表示を非侵襲的に可能にし、病院内や救急治療室における心疾患診断における心筋傷害の局在の判定が可能になる。
【0050】
特に、この発明は、近年増加している急性冠症候群(冠動脈の粥腫の崩壊に伴う急性心筋傷害)の診断や、冠動脈バイパス手術やカテーテルによる冠動脈形成術の評価に有用な手法を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0052】
[実施の形態1]
この発明の実施の形態1は、心磁図のQRS差分の3次元表示を可能にすることにより、心筋傷害部位の3次元の空間的局在の判定を可能にしたものである。
【0053】
図1は、心磁図の実波形を示す波形図である。図1を参照して、この発明の実施の形態1の原理について、説明する。
【0054】
図1の心磁図の実波形において、(A)の波形は、たとえばSQUID磁束計で測定された心臓磁界の各チャネルの実波形図であり、(B)の波形は、以下に説明するQRS差分を示す波形図である。
【0055】
前述したように、QRS波は、心臓の起電力を反映しており、心筋梗塞のような心筋傷害の発生している部位では、心臓の起電力の低下が認められる。したがって、心磁図信号のQRS波相当部分から3次元電流密度分布を求め、心臓の起電力を推定することにより、傷害心筋の局在の判定が可能になる。
【0056】
この発明の実施の形態1では、明らかな心疾患のない複数(たとえば30名)の健常者(以下、対象群と称する)の心磁図信号のQRS波相当部分から空間フィルタを用いて3次元電流密度分布の平均データを予め求めて保存しておく。一方、特に心筋梗塞等の心疾患を有する被験者(患者)の心磁図信号のQRS波相当部分から空間フィルタを用いて3次元電流密度分布を求める。
【0057】
そして、波形のQRS部における対照群の3次元電流密度分布の平均データと被験者の3次元電流密度分布データとの差(以下、QRS差分と称する)を求める。これが、心筋梗塞等の心筋傷害部位の空間分布を表わすことになる。
【0058】
しかしながら、3次元電流密度分布データの差分を求めただけでは、心臓内の傷害心筋部位の局在は相対的にしか判定できず、心臓における絶対的な3次元での空間的局在を判定することはできない。
【0059】
そこで、この発明の実施の形態1では、心臓磁界計測により求められた被験者の心筋内の3次元電流密度分布から心臓の外郭の描写を可能にするとともに、QRS波部における上記の対照群と上記の被験者との間の3次元電流密度分布の差分を、描写された心臓外郭立体図と同一被験者の同一空間内に再構成することにより、当該被験者の心臓における絶対的な3次元での傷害心筋の空間的局在を判定することができるようにしたものである。
【0060】
以下に、このような発明の実施の形態1を実現するための具体的構成について説明する。
【0061】
図2は、この発明の実施の形態1による心臓磁界診断装置の構成を示すブロック図である。
【0062】
図2を参照して、磁界分布計測装置1は、磁気シールドルーム(Magnetically Shielded Room:以下、MSR)11内において、被験者12の胸部上において非接触の磁気計測を行なうように設置された、SQUID磁束計を内蔵するデュワー13と、MSR11の外に設けられた磁界分布データの演算部14とを備えている。なお、磁気分布データ演算部14は、MSR11内に設けられてもよい。
【0063】
デュワー13内には液体ヘリウムが満たされて超電導が生じる低温系の環境が形成されており、その中に、超電導体からなる検出コイルで構成されたSQUID磁束計が収納されている。
【0064】
図3は、図2に示したMSR11内のデュワー13内の低温系に設置されるSQUID磁束計15、および常温に設置される演算部14をより詳細に示すブロック図である。なお、図3は、以下に説明するように、演算部14として、変調方式の磁束ロック(FLL)方式を例示しているが、非変調方式FLLも同様に適用可能である。
【0065】
なお、図3に示した構成は、被験者の胸部上の1点の磁界データを計測するための1チャネル分の構成である。後述するように、この発明では、被験者の胸部上において複数の座標における磁場の多点同時計測を行なう。したがって、図3に示す1チャネル分の構成が、計測に必要な複数チャネル分設けられていることになる。なお、以下に説明する例では、被験者の胸部座標上の64点で磁場計測が行なわれ、64チャネル分の図3の構成が設けられているものとする。
【0066】
以下に、図3を参照して、1チャネル分のSQUID磁束計による磁界データの生成について説明する。
【0067】
まず、SQUID磁束計15は、被験者の胸部表面から発生する磁場を検出するための、超電導体からなるピックアップコイル16を備える。ピックアップコイル16が磁場を捉えると電流が流れ、この電流はコイル17に伝達されてNbシールド20内に磁場を生じさせる。
【0068】
この結果、この磁場に対して線形に変化する磁場がSQUID素子18内に形成される。適当なバイアス電流をSQUID素子18に流し、このSQUID素子18の両端の電圧を、演算部14の増幅器によって検出し、演算部14は、検出電圧に変化が生じないよう、Nbシールド20内に設置された、変調方式FLLにおいては磁界のモジュレーションにも用いられるフィードバックコイル19に流れる電流を調整する。
【0069】
すなわち、このSQUIDによる生体の磁場の検出は、発生する磁場を直接計測するものではなく、いわゆるゼロ位法を用いて、SQUID素子18内の磁場が常に一定値となるようにフィードバックをかける(具体的には、フィードバックコイル19に流れる電流を調整してフィードバックコイル19に発生する磁場を制御することにより、SQUID素子18内に常に一定の磁場が生じるようにする)ことにより、ピックアップコイル16で検出される磁場を、演算部14が電気信号に変換して出力するものである。このようなフィードバックの手法は通常、フラックスロックトループ(flux locked loop:以下、FLL)と呼ばれる周知の技術である。
【0070】
このようなSQUID磁束計15およびその演算部14は周知の技術であるため、これ以上の説明を省略する。
【0071】
前述のように、図3に示した構成は、1チャネル分の磁界データの計測に必要な構成であり、被験者の胸部前面上における1点で計測された磁場の磁界時系列データを示す電気信号を出力するものである。
【0072】
この発明では、前述のように被験者の胸部前面に多くのセンサ(SQUID磁束計)を配列し、胸部前面上の磁場を多点測定しようとするものである。磁場は時間的に変化するものであり、たとえば1心拍に相当する期間中においても、測定場所が異なれば磁場は場所に応じた異なる変化をする。
【0073】
図4は、被験者の胸部前面上における複数のセンサ(各々が1チャネルのSQUID磁束計)の配置の一例を示す図である。また、図5は、図4の複数のセンサのそれぞれの位置に対応してそれぞれのセンサから得られた、1心拍期間における磁場の変化を示す1群の磁界時系列データを示している。
【0074】
図2に示す磁界分布計測装置1から出力されるデータは、図5に示すような複数の測定位置(座標)に対応する1群の磁界時系列データであるが、ある特定の時刻に着目してこれらの1群の磁界時系列データを捉えると、測定対象である胸部前面上におけるある時刻の磁場の強さの分布状態を示す実際の山谷の様子をグラフ(図)で表現するのは困難なので、天気図の気圧のように等高線図で表現している磁界分布データが得られる。この意味からも、磁界分布計測装置1から出力されるデータは、胸部前面上の磁界分布時系列データとして捉えることができる。
【0075】
磁界分布計測装置1から出力されるこのような1群の磁界時系列データ、すなわち磁界分布時系列データは、図2の演算装置2に与えられる。この演算装置2は、ソフトウェアにより、ある時刻の磁界分布データに基づいてその瞬間における胸部内の電気的活動、たとえばその瞬間に流れる胸部内の電流密度を求めるように機能する。
【0076】
また、演算装置2は、必要に応じて、演算した結果のデータを記憶装置22に保存する。
【0077】
磁界分布計測装置1によって生成された磁界分布時系列データから、測定対象となる人体内の部位(この発明では心臓)における3次元的な電気的活動の情報、たとえば当該部位を流れる電流密度分布を演算装置2で求める手法について説明する。
【0078】
図6は、このような電流密度を求める方法を模式的に説明する図である。以下に説明する方法では、解析しようとする人体内の特定の1つの部位に仮に電流センサ(仮想センサ)が設けられていたとすれば、あたかもそこに流れるはずの電流を間接的に算出しようとするものである。このため、人体胸部前面に設置されたすべてのセンサ(SQUID磁束計)から得られる磁界時系列データにある係数をかけてその総和を取ることによって、当該仮想センサの電流出力を得ることができる。そして、この係数をどのように求めるかがこの演算における中心的な課題となる。
【0079】
以下に、図6を参照して、電流密度を求める手法についてより詳細に説明する。まず、人体表面(胸部前面)上に、総数がN個の磁界センサが配列されているものとする。一方、解析対象である人体(胸部、特に心臓)を、各々が小さなブロックであるボクセルの集合体とみなす。ここで、ボクセルの総数をM個とする。
【0080】
各センサjから得られる磁界時系列データをBj(t)とし、各センサ出力(Bj(t
)に対応するボクセルiの空間フィルタ係数をβijとする。
【0081】
ここで、ボクセルiに仮想電流センサがあるものと考えた場合、当該仮想電流センサから得られる電流密度に対応する仮想センサ出力をSi(t)とすると、Si(t)は次式で定義される。
【0082】
【数1】

【0083】
したがって、空間フィルタ係数βijが決まれば、各ボクセルiにおける電流密度を得ることができ、解析対象全体における3次元的電流密度分布を得ることができる。
【0084】
上述の空間フィルタ係数βijを、対応するボクセルiの分布電流に対してのみ鋭敏な感度を有するように設定する手法としては、前述のSAM、MUSIC(Multiple Signal Classification)などの種々の手法を用いることができる。SAMやMUSICは、これまで、レーダやソナーなどの分野で研究開発が行なわれてきたものであり、それぞれの手法は周知である。
【0085】
SAMやMUSICの手法によって空間フィルタ係数を用いて求められた各ボクセルのリアルタイムに算出された仮想センサ出力は、非常に高いリアルタイム性を有するという利点を有している。
【0086】
SAMやMUSICの技術そのものは周知であり、またこれらの手法を用いて空間フィルタ係数を求めるアルゴリズムは極めて複雑なため、ここではその詳細な説明を省略するが、SAMについては、1999年発行のProceedings of the 11th International Conference on Biomagnetismの“Reent Advances in Biomagnetism”(Tohoku University Press発行)の第302頁から第305頁のRobinson SE および Vrba J による“Functional Neuroimaging by Synthetic Aperture Magnetometry(SAM)”に詳細に説明されている。MUSICについては、平成9年1月25日発行の原宏および栗城真也による「脳磁気科学−SQUID計測と医学応用−」(オーム社)の第117頁から第119頁に詳細に説明されている。
【0087】
このようにして、演算装置2は、磁界分布計測装置1によって生成された磁界分布データから解析対象である心臓内の3次元的電流密度分布を示す時系列データを生成し、さらに以下に説明する心臓磁界積分立体図を構築する演算をソフトウェアで実行する。
【0088】
この発明の心臓磁界積分立体図構築方法は、基本的に心筋部分にしか電流密度が存在しないことに注目し、心臓磁界積分立体図を構築してこれを心臓の外郭とみなすものである。
【0089】
図7および図8は、図2の演算装置2でソフトウェアで実行される心臓磁界積分立体図構築方法のフロー図であり、特に図7は、そのうちの心房の立方体描画の処理を示すフロー図である。
【0090】
図7を参照して、ステップS1において、図6に関して先に説明した空間フィルタを用いた手法により、図2のSQUID磁束計によって検出した心臓磁界分布から3次元電流密度を算出する。ここで被験者胸部の3次元座標x,y,zに対する時間tにおいて算出された3次元電流密度をFt(x,y,z)とする。なお、3次元電流密度の各頂点間のデータは線形補間を行なっている。
【0091】
次に、ステップS2において、3次元座標x,y,zのすべての組合せの座標点の各々について、図2の心電計21によって測定されるP波心房部の時間t1〜t2にわたって、電流密度Ft(x,y,z)の積分値であるS(x,y,z)を求める。そして、S(x,y,z)の最大値であるSmaxを求める。
【0092】
次に、ステップS3,S4,S5は、心臓の心房部の磁界積分立体図を描画するためのループ処理を表わしており、ステップS3で示す3次元座標x0〜xmax,y0〜ymax,z0〜zmaxのすべての組合せについて、ステップS5でx,y,zに関するループが閉じるまで、ステップS4の心房の立体図描画処理が実行繰り返し実行される。
【0093】
次に、図8は、図7の処理に引続いて実行される、心臓磁界積分立体図構築方法のうちの心室の立方体描画の処理を示すフロー図である。図8のステップS6〜S9は、ステップS6における積分時間が心電計21で測定されるQRS波心室部の時間t3〜t4である点を除いて、図7のステップS2〜S5の処理と同じなので説明は繰返さない。
【0094】
図9は、図7のステップS4の心房の立方体描画処理および図8のステップS8の心室の立方体描画処理に共通の処理を示すフロー図である。また、図10〜図14は、心房または心室の立方体描画処理を概念的に示す模式図である。
【0095】
以下に、図9〜図14を参照して、ステップS4の心房の立体描画処理またはステップS8の心室の立方体描画処理について説明する。
【0096】
まず、被験者の胸部の3次元空間を複数の立方体の集合と考え、その1つとして、3次元座標S(x,y,z),S(x+1,y,z),S(x,y+1,z),S(x,y,z+1),S(x+1,y+1,z),S(x+1,y,z+1),S(x,y+1,z+1),S(x+1,y+1,z+1)の8点を頂点とする立方体を想定する。
【0097】
一方、図7のステップS2で求めた電流密度の最大値Smaxに基づいてあるしきい値を設定する。このようなしきい値は、心筋部分の内部に電流密度の強弱が存在することに鑑み、正確な心臓外郭図を描写するために設けたものである。
【0098】
このしきい値はSmaxに0.0〜1.0の係数を掛けたものであり、たとえば係数の初期値としては、0.66666666を用いる。そして、装置のオペレータは、後述するようにして完成した心臓外郭の立体図を目視しながらこの係数を最適値に微調整する。
【0099】
まず、図9のステップS41において、上記の特定の立方体の頂点8点のなかで、上記Smaxに基づくしきい値よりも大きな電流密度の積分値を有する点の個数を計数する。そして、そのような頂点の個数が2個以下か否かを判定する(ステップS42)。2個以下であれば、何も処理は行なわない。
【0100】
一方、2個よりも多ければ、次に3個か否かが判定される(ステップS43)。3個の場合、ステップS44で三角形のポリゴン(多角形)が描画される。すなわち、たとえば図10に示すように3個の頂点を結ぶ三角形のポリゴンを描画する。
【0101】
一方、3個でなければ、次に4個か否かが判定される(ステップS45)。4個の場合、ステップS46で三角形または四角形のポリゴンが描画される。
【0102】
すなわち、たとえば図11(a)に示すように、4点のうち1点(大きい黒丸)を中心に残りの3点が隣接する場合、3点を結ぶ三角形のポリゴンを描画する。
【0103】
また、たとえば図11(b)に示すように、4点が同一平面上にある場合、4点を結ぶ四角形のポリゴンを描画する。
【0104】
また、たとえば図11(c)に示すように、上記以外の場合には、4個の三角形のポリゴンを描画する。
【0105】
一方、4個でなければ、次に5個か否かが判定される(ステップS47)。5個の場合、ステップS48で三角形のポリゴンが描画される。
【0106】
すなわち、たとえば図12(a)に示すように、5点を結ぶ三角形のポリゴンを描画する。
【0107】
また、たとえば図12(b)に示すように、5点が離れている場合、三角形のポリゴンを描画する。
【0108】
一方、5個でなければ、次に6個か否かが判定される(ステップS49)。6個の場合、ステップS50で三角形または四角形のポリゴンが描画される。
【0109】
すなわち、たとえば図13(a)に示すように、しきい値以下の2点が同じ辺上にある場合、四角形のポリゴンを描画する。
【0110】
また、たとえば図13(b)に示すように、しきい値以下の2点が同じ辺上にない場合、2個の三角形のポリゴンを描画する。
【0111】
一方、6個でなければ、次に7個か否かが判定される(ステップS51)。7個の場合、ステップS52で三角形のポリゴンが描画される。
【0112】
すなわち、たとえば図14に示すように、しきい値以下の1点に隣接する三角形のポリゴンを描画する。
【0113】
一方、ステップS51で7個でないと判断された場合、すなわち8個の場合には何も処理を行なわない。これにより、ある特定の立方体についてのポリゴンの描画を終了することになる。
【0114】
そして、図7のステップS3〜S5で繰り返し行なわれた心房に関する立方体のポリゴン描写の結果および図8のステップS7〜S9で繰り返し行なわれた心室に関する立方体のポリゴン描写の結果をすべて併せて、図8のステップS10で透視法射影を行なう。
【0115】
図15は、このステップS10の透視法射影を模式的に表わす図である。図10〜図14のようにして得られた各立方体の電流密度分布の強弱を示すポリゴンの集合を透視法射影することにより、心筋の磁界積分立体図の画像データを得ることができ、この画像データは、図2の表示装置4の一方入力に与えられ、ディスプレイ上に描写される。前述のように、基本的に電流密度は心筋内にのみ存在するため、このように得られた磁界積分立体図は、心臓全体の外郭立体図を表わすものである。
【0116】
たとえば図19の被験者胸部の64測定点の座標上に示すような心房部の外郭を示す心臓磁界積分立体図(線aで示す図中左側の実線の枠)および心室部の外郭を示す心臓磁界積分立体図(線bで示す図中右側の実線の枠)が、表示装置4のディスプレイ上に描画されることになる。
【0117】
なお、最終的な画像は、前述のように、オペレータが画像を目視してしきい値の係数を微調整することにより、最適な状態に調整される。
【0118】
次に上記のようにして求められた心臓磁界積分立体図によって表わされる心臓外郭の空間認識の方法について説明する。
【0119】
すなわち、図2を参照して、磁界発生装置5に接続された4個の磁界コイル6を被験者の胸部上の所定の位置に設置する。この例では、たとえば第4肋間胸骨右縁、第4肋間胸骨左縁、第5肋間鎖骨中線、剣状突起の4点にコイル6をそれぞれ設置するものとする。
【0120】
なお、これらの4点のうち、剣状突起を除く3点は、標準12誘導心電図の国際標準誘導点であり、本願発明のような心磁図の誘導法を標準化する上で基準点になりうる点である。
【0121】
そして、磁界発生回路5から供給される所定の信号に応じて、4個のコイル6はそれぞれ磁界を発生する。そして4個のコイル6によって発生した磁界は、デュワー13に内蔵されたSQUID磁束計によって検出される。
【0122】
図16は、被験者の胸部体表面上の4個のコイル6の位置をCT撮像画像上で示す図であり、図中4個の丸印がコイル位置を表わしている。すなわち、V1は、第4肋間胸骨右縁からの胸部誘導を表わし、V2は、第4肋間胸骨左縁からの胸部誘導を表わし、V4は、第5肋間鎖骨中線からの胸部誘導を表わし、Nは、剣状突起を表わしている。
【0123】
次に、図17は、64チャネルのSQUID磁束計で計測された、上記体表上の4個のコイルからの信号を示す波形図である。図17において、1は、第4肋間胸骨右縁からの胸部誘導を表わし、2は、第4肋間胸骨左縁からの胸部誘導を表わし、4は、第5肋間鎖骨中線からの胸部誘導を表わし、Nは、剣状突起を表わしている。このようなコイルの位置は、オペレータの波形図の目視によって同定される。
【0124】
図18は、このような4個のコイル位置を、64チャネルのSQUID磁束計の心磁図上に再構成した状態を示す図である。
【0125】
さらに、オペレータは心磁図からコイルの空間位置を目視で認識しながら図示しない入力装置を操作し、図19に示すように、表示装置4上の心臓の外郭立体図を示す画像と同一空間上に、4個のコイルの各々について、位置1,2,4およびNを丸印で描画する。
【0126】
ここで、被験者の体表上の既知の4点(図16〜図18参照)のうち、V1,V2,Nはほぼ同一平面上にあるが、V4については、被験者により異なるがおよそ1〜2cm程度奥まっている。表示装置4に表示された心臓外郭立体図を演算装置2の処理により深さ方向の表示に切替えることにより、このような奥行きのことなるコイル位置についても外郭立体図中に3次元的に描画することができる。
【0127】
このように、この発明によれば、心臓磁界からSQUID磁束計で検出した心臓磁界分布から求めた電流密度分布に基づいて描画された心臓磁界積分立体図すなわち心臓の外郭と、既知のコイル位置4点との空間位置的関連付けを行ない、描画された心臓空間位置の認識が可能となるものである。
【0128】
特に、この発明の実施の形態1によれば、同一被験者について、同一の時刻に同一の測定方法を用いて計測した心臓外郭立体図と既知のコイル位置とを同一空間上に再構成しているので、従来の別の時刻に別の方法で得たデータを再構成する場合に比べて、空間的なずれが起こることはなく、極めて正確な心臓の空間認識が可能となる。
【0129】
なお、このように心臓の正確な空間認識が可能になると、必要に応じて、MRI,CT等の解剖学的画像データとの合成が容易になる。図2において、必要な場合には、破線で示す解剖学的画像データ生成装置3には、図示しない他の断層診断装置、たとえばMRI、X線CTなどを用いて撮影された同一被験者の胸部のスライス画像データが入力される。
【0130】
解剖学的画像データ生成装置3は、入力されたスライス画像データを加工して所定視点から3次元透視変換を施し、解剖学的画像データを生成する。このようにスライス画像データから3次元的な解剖学的画像を形成する技術は周知であり、たとえば特開平11−128224号公報、国際公開WO98/15226号公報などに詳細に開示されている。したがって、その詳細はここでは説明しない。
【0131】
このようにして、解剖学的画像データ生成装置3は、同一被験者の心臓付近の胸部の3次元的な解剖学的画像を示すデータを生成し、表示装置4の他方入力に与える。
【0132】
図2の表示装置4は、解剖学定画像データ生成装置3からのデータに基づいて形成した被験者の胸部の3次元的な解剖学的画像上に、演算装置2からの心臓磁界積分立体図のデータに基づいて形成した心臓の外郭を示す画像を重ね合わせて表示する。
【0133】
図20は、図19に示した心臓外郭の立体図とMRI画像とを合成した図である。MRIの計測時に、同一被験者の体表上の、上記4個のコイルと同じ4点にマーカーで目印を付けておくことにより、心臓外郭立体図との合成を、空間的なずれなく正確に行なうことができる。
【0134】
なお、上述の心臓の空間認識方法では、オペレータが、SQUID磁束計で取得した64チャネルの磁界波形の大きさから目視により体表上に装着された4個のコイルの位置を推定し、入力手段を操作することにより、心臓外郭立体図と同一空間上に磁界コイル位置を描画するように構成したが、オペレータによる目視に代わって、演算装置2においてソフトウェアの信号処理により、64チャネル磁束計の出力波形に基づくコイル位置の判定、および心臓外郭立体図上への描画を行なうことも可能であることは言うまでもない。
【0135】
上述のように、演算装置2は、磁界分布計測装置1によって生成された磁界分布データから解析対象である心臓内の3次元電流密度分布を示す時系列データを生成し、図7〜図9の処理により心臓磁界積分立体図すなわち心臓外郭立体図の画像データを生成する。その後、演算装置2は、このようにして得られた心臓外郭立体図における3次元電流密度のQRS差分を再構成する処理を行なう。
【0136】
すなわち、この発明の実施の形態1では、3次元電流密度解析によりQRS差分を描画して、上記のようにして得られた心臓外郭立体図と合成することにより、傷害心筋部位の推定を可能にするものである。
【0137】
図21および図22は、図2の演算装置2でソフトウェアで実行されるQRS差分の3次元分布表示方法のフロー図である。
【0138】
図21を参照して、ステップS11において、被験者の心臓磁界を図2のSQUID磁束計を用いて検出して心臓磁界波形を発生する。
【0139】
次に、ステップS12において、図2の心電計21による心電図Rトリガにより、被験者の64チャネル分の心磁図信号(図4、図5)の加算平均波形を求め、これに空間フィルタを適用して、3次元電流密度分布を検出する。ここで、被験者の時間tにおける3次元電流密度をFt(x,y,z)とする。
【0140】
特に、被験者が対照群(たとえば30名の健常者)を構成する健常者の場合、各被験者(健常者)の64チャネルの心磁図信号加算平均波形にも空間フィルタを適用して、3次元電流密度分布を検出する。そして、対照群を構成するすべての被験者(健常者)の時間tにおける3次元電流密度の平均をCt(x,y,z)として、図2の記憶装置22に保存する。
【0141】
次に、ステップS13,S14,S15は、3次元電流密度分布の積分値を求めるためのループ処理を表わしており、ステップS13で示す3次元座標x0〜xmax,y0〜ymax,z0〜zmaxのすべてに組合せについて、ステップS15でx,y,zに関するループが閉じるまで、ステップ14の処理が繰り返し実行される。
【0142】
すなわち、ステップS14においては、対照群(健常者)と被験者との間で3次元電流密度分布の比較をすべき心臓の部位に相当する間隔に渡って、被験者の時間tにおける3次元電流密度Ft(x,y,z)、および記憶装置22に保存されている対照群の時間tにおける3次元平均電流密度Ct(x,y,z)のそれぞれの積分値を求め、S(x,y,z)、SC(x,y,z)とする。
【0143】
なお、比較すべき間隔の初期値をQRS間に設定するものとする。QRS間は、心臓外郭のうち心室に対応する。したがって、初期値QRS間は、被験者と健常者平均との心室での3次元電流密度分布の比較を意味する。このような比較する間隔を変えることにより、心室以外の部位での3次元電流密度分布の比較も可能となる。
【0144】
次に、ステップS16において、3次元座標の各点におけるS(x,y,z)の最大値をSmaxとし、3次元座標の各点におけるSC(x,y,z)の最大値をSCmaxとする。
【0145】
次に、図22のステップS17において、3次元座標のすべての点において、次式のように積分値Sと積分値SCとの減算を行い、その結果をD(x,y,z)とする。
【0146】
D(x,y,z)=SC(x-cx,y-cy,z-cz)×Smax/SCmax−S(x,y,z)
ここで、cx,cy,czは、それぞれ、空間情報を補正する任意の値である。すなわち、基本的に、被験者の計測時と健常者の計測時とにおいて、計測する空間は同じであるが、ベッドでの姿勢等により、心臓の位置がずれることがある。それをこれらの値cx,cy,czで補正している。
【0147】
次に、ステップS18において、3次元座標の各点でのD(x,y,z)の最大値をDmaxとする。
【0148】
次に、ステップS19,S20,S21は、QRS差分を描画するためのループ処理を表わしており、ステップS19で示す3次元座標x0〜xmax,y0〜ymax,z0〜zmaxのすべてに組合せについて、ステップS21でx,y,zに関するループが閉じるまで、ステップ20のQRS差分描画処理が繰り返し実行される。
【0149】
図23は、図22のステップS20のQRS差分描画処理を概念的に示す模式図である。図23(A)を参照して、3次元座標の各点ごとに、D(x,y,z)が正のときは青で、負のときは赤で、各点に対し、線形的に色付けを行って描画する。図23(A)では、上段の2点が赤で色付けされ、下段の2点が青で色付けされているものとする。なお、図23では便宜上白黒の濃淡で表わされている。
【0150】
次に、図23(B)を参照して、各点には、下記の式による透明度(0.0〜1.0)を付け、点の間は、色の線形補間を行う。すなわち、透明度は次式で表わされる。
【0151】
透明度=(|D(x,y,z)|−しきい値)÷(Dmax−しきい値)
上述のように、QRS差分D(x,y,z)が負の座標点は青で表示される。心筋傷害のある症例の場合、心筋の起電力低下のため、対照群(健常者)の平均データに比較して電流密度分布は低下し、心筋の傷害部位は青色で表示されることになる。すなわち、上記の透明度の式により、QRS差分の最大値Dmaxに対するQRS差分D(x,y,z)の値で青色の濃さが決まる。
【0152】
図23(B)の例では、中央の4点で囲まれれた正方形の上方に行くほど赤、下方に行くほど青に色付けされており、その間は線形に補間されている。
【0153】
次に、図22のステップS19〜21で繰り返し行われたQRS差分描画処理の結果をすべて併せて、図22のステップS22で透視法射影を行う。図23のように得られたQRS差分の大きさを示す色の表示の集合を透視法射影することにより、心筋のQRS差分の画像データを得ることができ、この画像データは、図7〜図15の処理で得られた心臓の外郭立体図と同一空間内に、演算装置2において再構成され、表示装置4のディスプレイ上に表示される。
【0154】
図24は、健常者におけるQRS差分の実例を、図25は、患者におけるQRS差分の実例を示す図である。図24および図25において、(A)は、被験者(図24は健常者、図25は心疾患患者)の心磁図信号波形を示し、(B)は、心臓外郭立体図における対応するQRS差分の3次元表示である。
【0155】
図24においては、心臓内に、健常者間にQRS差分は認められない。
【0156】
一方、図25においては、心筋梗塞部位など心筋傷害部位(後側壁)においてはQRS差分は青で表示され、電流密度分布の低下、すなわち起電力の低下(傷害心筋)を示すものとする。図24および図25の再構成画像においては、青の濃さが白黒の階調の濃さで置き換えて表示されている。
【0157】
以上のように、この発明の実施の形態1では、傷害心筋部位を相対的に表示するQRS差分の3次元立体表示を得るとともに、別途構築された心臓外郭立体図と再構成することにより、心臓における傷害心筋部位の絶対的な3次元空間表示を可能にし、病院内や救急治療室における心疾患診断における心筋傷害の局在の判定が可能になる。
【0158】
[実施の形態2]
この発明の実施の形態2は、心磁図のT波ベクトルの3次元表示を可能にすることにより、心筋傷害部位の3次元の空間的局在の判定を可能にしたものである。以下に、この発明の実施の形態2の原理について説明する。
【0159】
再度図1を参照すると、(A)の心臓磁界の実波形はT波を含んでおり、前述のように、T波は、心筋の再分極過程(特に再分極の方向)を反映している。そして健常者では、QRS波の電流ベクトルとT波の電流ベクトルとは同じ方向を向いている(健常者の平均では凡そ45度前後)。
【0160】
これに対し、心筋が傷害を受けると、T波の電流ベクトルは種々に変化し、特に梗塞心筋では、正反対を向くことになる(通常、マイナス180度)。したがって、心磁図信号のT波相当部分から3次元電流密度分布を求め、T波の電流ベクトル角度を推定することにより、傷害心筋の判定が可能になる。
【0161】
図26は、心磁図信号と電流ベクトルとの関係を示す図である。図26(A)は、64チャネルの心磁図波形であり、各チャネルのT波部分が山となる波形と谷となる波形とが存在している。このような心臓磁界波形に対応して、右ねじの法則により、図26(B)の矢印に示すような電流ベクトルが発生する。
【0162】
この発明の実施の形態2では、被験者の心磁図信号のT波相当部分から空間フィルタを用いて3次元電流ベクトルを求める。そしてxy平面における電流ベクトルのx成分とy成分との比から求められる当該電流ベクトル角度に応じた表示(電流ベクトルの方向を色で表示)を行うことにより、心筋傷害部位の空間分布を表わすことができる。
【0163】
しかしながら、3次元電流ベクトルの角度を求めただけでは、心臓内の傷害心筋部位の局在は相対的にしか判定できず、心臓における絶対的な3次元での空間的局在を判定することはできない。
【0164】
そこで、この発明の実施の形態2では、心臓磁界計測により求められた被験者の心筋内の3次元電流密度分布から心臓の外郭の描写を可能にするとともに、T波における上記の被験者の電流ベクトルの角度を、描写された心臓外郭立体図と同一被験者の同一空間内に再構成することにより、当該被験者の心臓における絶対的な3次元での傷害心筋の空間的局在を判定することができるようにしたものである。
【0165】
以下に、このような発明の実施の形態2を実現するための具体的構成および動作について説明する。
【0166】
この発明の実施の形態2のハードウェア構成は、図2に示した実施の形態1の構成と同じなので説明を省略する。
【0167】
まず、図2の演算装置2において、図7〜図15に関連して説明した心臓外郭立体図の構築方法が実行され、図19に示される心臓外郭立体図が得られる。その過程についてはすでに詳細に説明したのでここでは繰返さない。
【0168】
次に、演算装置2は、このようにして得られた心臓外郭立体図における3次元電流密度を再構成する処理を行なう。
【0169】
すなわち、この発明の実施の形態2では、3次元電流密度解析によりT波ベクトル(特に電流ベクトルの角度)を色により描画して、上記のようにして得られた心臓外郭立体図と合成することにより、傷害心筋部位の推定を可能にするものである。
【0170】
図27および図28は、図2の演算装置2でソフトウェアで実行されるT波ベクトルの3次元分布表示方法(以下、T−CAD法と称する)のフロー図である。
【0171】
図27を参照して、ステップS61において、被験者の心臓磁界を図2のSQUID磁束計を用いて検出して心臓磁界波形を発生する。
【0172】
次に、ステップS62において、図2の心電計21による心電図R波トリガにより、被験者の64チャネル分の心磁図信号(図4、図5)を加算平均して、図29に示すような加算平均波形を求める。そして、図29に示す加算平均波形のうち、後半部の加算値が最大になる時間、すなわち緩やかな山(T波)の頂点の時間をTpeakとする。
【0173】
次に、ステップS63において、ステップS62で求めた64チャネル分の心磁図信号の加算平均波形に空間フィルタを適用して、3次元電流密度分布を検出する。ここで、被験者の時間tにおける3次元電流密度をFt(x,y,z)とする。また、そのx成分をFXt(x,y,z)、y成分をFYt(x,y,z)とすると、下記の関係が成り立つ。
【0174】
すなわち、Ft(x,y,z)の二乗は、FXt(x,y,z)の二乗+FYt(x,y,z)の二乗である。
【0175】
次に、ステップS64,S65,S66は、3次元電流密度分布の積分値を求めるためのループ処理を表わしており、ステップS64で示す3次元座標x0〜xmax,y0〜ymax,z0〜zmaxのすべてに組合せについて、ステップS66でx,y,zに関するループが閉じるまで、ステップ65の処理が繰り返し実行される。
【0176】
すなわち、ステップS65においては、T波に相当する間隔に渡って、すなわち、Tpeakを中心に、Tpeak−50ms〜Tpeak+50msの期間に渡って、被験者の時間tにおける3次元電流密度Ft(x,y,z)、そのx成分FXt(x,y,z)、そのy成分FYt(x,y,z)のそれぞれの積分値を求め、S(x,y,z)、SX(x,y,z)、SY(x,y,z)とする。なお、50msは、初期値であり、調整可能な値である。
【0177】
次に、ステップS67において、3次元座標の各点におけるS(x,y,z)の最大値をSmaxとする。
【0178】
次に、ステップS68,S69,S70は、T波ベクトルの3次元分布表示(T−CAD)を描画するためのループ処理を表わしており、ステップS68で示す3次元座標x0〜xmax,y0〜ymax,z0〜zmaxのすべてに組合せについて、ステップS70でx,y,zに関するループが閉じるまで、ステップ69のT波ベクトル分布描画処理が繰り返し実行される。
【0179】
図30は、図28のステップS69のT波ベクトル分布描画処理を概念的に示す模式図である。図30(A)を参照して、3次元座標の各点ごとに、電流ベクトルのx成分とy成分との比により、次式でT波電流ベクトルの角度を算出する。
【0180】
arctan(SY(x,y,z)÷SX(x,y,z))
ここで、赤=−135度、緑=−45度、青=45度として、各点に対し、T波電流ベクトルの角度に応じて、線形的に色付けを行い、描画する。図30(A)では、上段の2点がうすい青で色付けされ、下段の2点が濃い青で色付けされているものとする。なお、図30では便宜上白黒の濃淡で表わされている。
【0181】
次に、図30(B)を参照して、各点には、T波電流ベクトルの大きさに応じて、下記の式による透明度(0.0〜1.0)を付け、点の間は、色の線形補間を行う。すなわち、透明度は次式で表わされる。
【0182】
透明度=(S(x,y,z)−しきい値)÷(Smax−しきい値)
図30(B)の例では、中央の4点で囲まれれた正方形の上方に行くほど青がうすく、下方に行くほど青が濃くなるよう色付けされており、その間は線形に補間されている。
【0183】
次に、ステップS71において、図31に示すように、電流ベクトルの角度(0〜360度)に対して電流ベクトルの大きさであるS(x,y,z)を積み上げたヒストグラムを表示する。図31のヒストグラムは、T波ベクトルの分布を示し、健常者では、45度を中心に1峰性のピークを示す。
【0184】
この発明の実施の形態2では、健常者のT波ベクトルは青(45度)で示し、疾患部位では、T波ベクトルは、たとえば赤(−180度)で示されることになる。
【0185】
次に、図28のステップS68〜S70で繰り返し行われたT波ベクトル分布描画処理の結果をすべて併せて、図28のステップS72で透視法射影を行う。図30のように得られたT波ベクトルの方向を示す色の表示の集合を透視法射影することにより、心筋のT波ベクトル3次元分布の画像データを得ることができ、この画像データは、図7〜図15の処理で得られた心臓の外郭立体図と同一空間内に、演算装置2において再構成され、表示装置4のディスプレイ上に表示される。
【0186】
図32は、健常者におけるT波ベクトルの実例を、図33は、心疾患患者におけるT波ベクトルの実例を示す図である。図32および図33において、(A)は、被験者(図32は健常者、図33は心疾患患者)の心磁図信号波形を示し、(B)は、心臓外郭立体図における対応するT波ベクトルの3次元表示である。
【0187】
図34は、図32(B)および図33(B)の円形グラフの意味を説明するための図である。図34の円形グラフでは、健常者では実線の矢印で示すように45度付近に分布する(画像上は本来青で表示される)のに対し、図33(B)の症例では、破線矢印で示すように200度〜220度付近に分布する(画像上は本来赤で表示される)。
【0188】
図32(B)の健常者においては、T波ベクトルはすべて青(ベクトル角45度に対応)で表示されるものとする。
【0189】
一方、図33(B)においては、心筋梗塞部位など心筋傷害部位(後側壁)においては赤と緑で表示され、T波ベクトルの角度が異常領域(ベクトル角200度〜220度に対応)にある(傷害心筋を示す)ことを示すものとする。なお図32(B)および図33(B)の再構成画像においては、白黒の階調の濃さで置き換えて表示されている。
【0190】
以上のように、この発明の実施の形態2では、傷害心筋部位を相対的に表示するT波ベクトルの3次元立体表示を得るとともに、別途構築された心臓外郭立体図と再構成することにより、心臓における傷害心筋部位の絶対的な3次元空間表示を可能にし、病院内や救急治療室における心疾患診断における心筋傷害の局在の判定が可能になる。
【0191】
[実施の形態3]
この発明の実施の形態2は、心磁図のRTディスパーションの3次元表示を可能にすることにより、心筋傷害部位の3次元の空間的局在の判定を可能にしたものである。以下に、この発明の実施の形態3の原理について説明する。
【0192】
再度図1を参照すると、(A)の心臓磁界の実波形はR波とT波とを含んでおり、前述のように、R波とT波との間隔であるRT時間は、心筋の再分極の時間を反映している。そして健常者では、再分極の時間はほぼ均一で、再分極の最大時間と最小時間との時間的変動、すなわちRTディスパーションは、20ms〜40ms程度である。
【0193】
これに対し、心筋が傷害を受けると、再分極の最大時間と最小時間との時間差であるRTディスパーションは40ms以上の大きな値となる。
【0194】
この発明の実施の形態3では、被験者の心磁図信号のRT波相当部分から空間フィルタを用いて3次元電流密度分布を求める。そして3次元でのRTディスパーションを算出してその時間分布を立体的に表示することにより、心筋傷害部位の空間分布を表わすことができる。
【0195】
しかしながら、RTディスパーションの時間分布を求めただけでは、心臓内の傷害心筋部位の局在は相対的にしか判定できず、心臓における絶対的な3次元での空間的局在を判定することはできない。
【0196】
そこで、この発明の実施の形態3では、心臓磁界計測により求められた被験者の心筋内の3次元電流密度分布から心臓の外郭の描写を可能にするとともに、RT波における上記の被験者のRTディスパーションの時間分布を、描写された心臓外郭立体図と同一被験者の同一空間内に再構成することにより、当該被験者の心臓における絶対的な3次元での傷害心筋の空間的局在を判定することができるようにしたものである。
【0197】
以下に、このような発明の実施の形態3を実現するための具体的構成および動作について説明する。
【0198】
この発明の実施の形態3のハードウェア構成は、図2に示した実施の形態1の構成と同じなので説明を省略する。
【0199】
まず、図2の演算装置2において、図7〜図15に関連して説明した心臓外郭立体図の構築方法が実行され、図19に示される心臓外郭立体図が得られる。その過程についてはすでに詳細に説明したのでここでは繰返さない。
【0200】
次に、演算装置2は、このようにして得られた心臓外郭立体図における3次元電流密度を再構成する処理を行なう。
【0201】
すなわち、この発明の実施の形態3では、3次元電流密度解析によりRTディスパーションの時間分布を色により描画して、上記のようにして得られた心臓外郭立体図と合成することにより、傷害心筋部位の推定を可能にするものである。
【0202】
図35および図36は、図2の演算装置2でソフトウェアで実行されるRTディスパーションの3次元分布表示方法のフロー図である。
【0203】
図35を参照して、ステップS81において、被験者の心臓磁界を図2のSQUID磁束計を用いて検出して心臓磁界波形を発生する。
【0204】
次に、ステップS82において、図2の心電計21による心電図R波トリガにより、被験者の64チャネル分の心磁図信号(図4、図5)を加算平均して、図29に示すような加算平均波形を求める。そして、心電図R波トリガにより、RR間隔の平均値を求めてRR時間とする。
【0205】
さらに、図29に示す加算平均波形のうち、後半部の加算値が最大になる時間、すなわちT波の頂点の時間を、たとえばオペレータによる波形の目視から求めてTpeakとする。
【0206】
次に、ステップS83において、ステップS82で求めた64チャネル分の心磁図信号の加算平均波形に空間フィルタを適用して、3次元電流密度分布を検出する。ここで、被験者の時間tにおける3次元電流密度をFt(x,y,z)とする。
【0207】
次に、ステップS84〜S87は、RTディスパーションを求めるためのループ処理を表わしており、ステップS84で示す3次元座標x0〜xmax,y0〜ymax,z0〜zmaxのすべてに組合せについて、ステップS85で心臓外郭内にある(電流密度が存在する)と判定された3次元座標についてのみ、ステップS87でx,y,zに関するループが閉じるまで、ステップ86の処理が繰り返し実行される。
【0208】
ステップS86においては、QRS−T波にほぼ相当する間隔に渡って、すなわち、R時間+70ms〜Tpeakの期間において、T波の傾きが最大となる(T波がピークとなる)dv/dtの値(電流密度を時間で微分した値)を求め、R波の頂点からT波のピークまでの正確な間隔であるRT時間をP(x,y,z)として求める。
【0209】
そして、算出されたRT時間P(x,y,z)の最大値と最小値との差分時間をColor(x,y,z)とする。なお、70msは、初期値であり、調整可能な値である。
【0210】
次に、ステップS88において、3次元座標の各点におけるP(x,y,z)の最大値をPmaxとする。
【0211】
次に、ステップS89,S90,S91は、RTディスパーションを描画するためのループ処理を表わしており、ステップS89で示す3次元座標x0〜xmax,y0〜ymax,z0〜zmaxのすべてに組合せについて、ステップS91でx,y,zに関するループが閉じるまで、ステップ90のRTディスパーション描画処理が繰り返し実行される。
【0212】
図37は、図36のステップS90のRTディスパーション描画処理を概念的に示す模式図である。図37(A)を参照して、3次元座標の各点ごとに、次式でRTディスパーションを算出する。
【0213】
すなわち、RT時間は、心拍数により変動するので、そのときの心拍数(RR間隔時間の平方根)で、次式のように補正する。
【0214】
(Color(x,y,z)−RT時間)÷(RR間隔時間の平方根)
ここで、青=0、紫=50、赤=100として、各点に対し、RTディスパーションに応じて、線形的に色付けを行い、描画する。図37(A)では、上段の2点が赤で色付けされ、下段の2点が青で色付けされているものとする。なお、図37では便宜上白黒の濃淡で表わされている。
【0215】
次に、図37(B)を参照して、各点には、RTディスパーションの大きさに応じて、下記の式による透明度(0.0〜1.0)を付け、点の間は、色の線形補間を行う。すなわち、透明度は次式で表わされる。
【0216】
透明度=(P(x,y,z)−しきい値)÷(Pmax−しきい値)
図37(B)の例では、中央の4点で囲まれれた正方形の上方に行くほど赤くなり、下方に行くほど青くなるよう色付けされており、その間は線形に補間されている。
【0217】
次に、図36のステップS89〜S91で繰り返し行われたRTディスパーション描画処理の結果をすべて併せて、図36のステップS92で透視法射影を行う。図37のように得られたRTディスパーションを示す色の表示の集合を透視法射影することにより、心筋のRTディスパーションの3次元分布の画像データを得ることができ、この画像データは、図7〜図15の処理で得られた心臓の外郭立体図と同一空間内に、演算装置2において再構成され、表示装置4のディスプレイ上に表示される。
【0218】
図38は、健常者におけるRTディスパーションの実例を、図39は、心疾患患者におけるRTディスパーションの実例を示す図である。図38および図39において、(A)は、被験者(図38は健常者、図39は心疾患患者)の心磁図信号波形を示し、(B)は、心臓外郭立体図における対応するRTディスパーションの3次元表示である。
【0219】
図38(B)および図39(B)の縦のグラフは、RTディスパーションの時間分布(最小341ms〜最大408ms)を表わしたものであり、健常者では38ms以内に分布する(画像上は本来青で表示される)のに対し、図39(B)の症例では、67msと大きく(画像上は本来ピンク色で表示される)。
【0220】
図38(B)の健常者においては、RTディスパーションはすべて青で表示されるものとする。
【0221】
一方、図39(B)においては、心筋梗塞部位など心筋傷害部位(左室側壁)においてはピンク色で表示され、RTディスパーションが異常領域にある(傷害心筋を示す)ことを示すものとする。なお図38(B)および図39(B)の再構成画像においては、白黒の階調の濃さで置き換えて表示されている。
【0222】
以上のように、この発明の実施の形態3では、傷害心筋部位を相対的に表示するRTディスパーションの3次元立体表示を得るとともに、別途構築された心臓外郭立体図と再構成することにより、心臓における傷害心筋部位の絶対的な3次元空間表示を可能にし、病院内や救急治療室における心疾患診断における心筋傷害の局在の判定が可能になる。
【0223】
なお、上記の実施の形態1〜3では、SQUID磁束計のチャネル数は64チャネルであったが、これに限られるものではなく、また被験者の体表に装着されるコイル数も4個に限られるものではない。
【0224】
また、上記の実施の形態1〜3では、3次元電流密度データの積分値を用いて心臓外郭立体図を得るように構成していたが、これに代えて3次元エネルギ密度データの積分値を用いて心臓外郭立体図を得るように構成してもよい。すなわち、生体のインピーダンスが一定であると仮定すると、電流密度データを二乗するとエネルギ密度データが求まる。上述の図7から図9のフロー図の処理において、3次元電流密度データの積分値に代えて、3次元電流密度データをさらに二乗して得られる3次元エネルギ密度データの積分値を用いても全く同様に心臓外郭立体図を得ることができ、上述の実施の形態の形態1〜3と全く同じ効果を得ることができる。
【0225】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0226】
この発明は、患者に負担のない非侵襲の心臓磁界計測により、傷害心筋の3次元的局在の判定が可能となるものであり、心臓磁界計測を利用した画像診断装置の分野において好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0227】
【図1】この発明の原理を説明するための心磁図の波形を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1〜3による心臓磁界診断装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図3】図2に示した磁界分布計測装置の詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】被験者の胸部前面上における複数の磁界センサの配列例を示す図である。
【図5】図4の複数のセンサのそれぞれから得られた磁界時系列データを示す図である。
【図6】磁界時系列データから電流密度データを算出する方法を模式的に説明する図である。
【図7】この発明の実施の形態1〜3による心臓外郭立体図作成処理を説明するフロー図である。
【図8】この発明の実施の形態1〜3による心臓外郭立体図作成処理を説明するフロー図である。
【図9】この発明の実施の形態1〜3による心臓外郭立体図作成処理を説明するフロー図である。
【図10】この発明による心臓外郭の描写方法を概念的に示す模式図である。
【図11】この発明による心臓外郭の描写方法を概念的に示す模式図である。
【図12】この発明による心臓外郭の描写方法を概念的に示す模式図である。
【図13】この発明による心臓外郭の描写方法を概念的に示す模式図である。
【図14】この発明による心臓外郭の描写方法を概念的に示す模式図である。
【図15】この発明による心臓外郭の描写方法を概念的に示す模式図である。
【図16】被験者の体表上のコイル位置を示すCT撮像画像である。
【図17】SQUID磁束計で計測されたコイルからの信号波形図である。
【図18】SQUID磁束計の心磁図上にコイル位置を再構成した図である。
【図19】この発明によって得られる心臓外郭立体図である。
【図20】図19の心臓外郭立体図をMRI画像と再構成した画像を示す図である。
【図21】この発明の実施の形態1によるQRS差分の表示処理を説明するフロー図である。
【図22】この発明の実施の形態1によるQRS差分の表示処理を説明するフロー図である。
【図23】図22のQRS差分描画処理を概念的に示す模式図である。
【図24】健常者におけるQRS差分の3次元表示の実例を示す図である。
【図25】心疾患患者におけるQRS差分の3次元表示の実例を示す図である。
【図26】この発明の実施の形態2によって測定される電流ベクトルを示す図である。
【図27】この発明の実施の形態2によるT波ベクトルの表示処理を説明するフロー図である。
【図28】この発明の実施の形態2によるT波ベクトルの表示処理を説明するフロー図である。
【図29】心磁図波形の加算平均波形を示す波形図である。
【図30】図28のT波ベクトル描画処理を概念的に示す模式図である。
【図31】T波ベクトルの角度分布のヒストグラムを示す図である。
【図32】健常者におけるT波ベクトルの3次元表示の実例を示す図である。
【図33】心疾患患者におけるT波ベクトルの3次元表示の実例を示す図である。
【図34】T波ベクトルの角度分布の円形グラフを示す図である。
【図35】この発明の実施の形態3によるRTディスパーションの表示処理を説明するフロー図である。
【図36】この発明の実施の形態3によるRTディスパーションの表示処理を説明するフロー図である。
【図37】図36のRTディスパーション描画処理を概念的に示す模式図である。
【図38】健常者におけるRTディスパーションの3次元表示の実例を示す図である。
【図39】心疾患患者におけるRTディスパーションの3次元表示の実例を示す図である。
【符号の説明】
【0228】
1 磁界分布計測装置、2 演算装置、3 解剖学的画像データ生成装置、4 表示装置、5 磁界発生装置、6 コイル、12 被験者、13 デュワ−、14 演算部、15 SQUID磁束計、16 検出コイル、17 コイル、18 SQUID素子、19 フィードバックコイル、20 Nbシールド、21 心電計、22 記憶装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傷害心筋の3次元局在を評価するための心臓磁界診断装置であって、
被験者の胸部上の複数の座標における非接触磁気計測により前記複数の座標に対応する2次元心臓磁界分布データを生成する心臓磁界分布計測手段と、
前記生成された2次元心臓磁界分布データに基づいて前記被験者の心筋内の3次元電流密度分布データを生成する電流密度データ生成手段と、
前記3次元電流密度分布データに基づいて、心臓の外郭を示す心臓磁界積分立体図を構築する心臓立体図構築手段と、
前記3次元電流密度分布データに基づいて、心臓の傷害心筋の3次元局在を表わすデータを生成する傷害心筋データ生成手段と、
前記構築された心臓磁界積分立体図と同一空間内に、前記傷害心筋の3次元局在を再構成する画像再構成手段とを備えた、心臓磁界診断装置。
【請求項2】
前記傷害心筋データ生成手段は、
予め求められた複数の健常者のQRS波の3次元電流密度分布データの平均データと、被験者のQRS波の3次元電流密度分布データとのQRS差分を求める差分算出手段と、
前記求められたQRS差分に基づいて、前記傷害心筋の3次元局在を描画するデータを生成する描画データ生成手段とを含む、請求項1に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項3】
前記QRS差分を求める差分演算手段は、
前記被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データのQRS波の期間にわたる積分値を求める積分手段と、
前記積分手段によって求められた複数の健常者のQRS波の期間にわたる積分値の平均値を求めて保持するデータ保持手段と、
前記胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記健常者の前記3次元電流密度分布データの積分値の平均値と前記被験者の前記3次元電流密度分布データの積分値との間の差分を前記QRS差分として求める演算手段とを含む、請求項2に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項4】
前記描画データ生成手段は、
前記3次元座標のそれぞれの座標における前記QRS差分の値に基づいて、前記それぞれの座標に対応する点を所定の色で色付けする手段と、
前記3次元座標のそれぞれの座標に対応する点の間を線形補間する手段と、
前記線形補間された3次元座標空間を透視法射影する手段とを含む、請求項3に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項5】
前記描画データ生成手段は、
前記それぞれの座標の色の透明度をQRS差分の大きさに応じて設定する、請求項4に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項6】
前記傷害心筋データ生成手段は、
被験者のT波の3次元電流密度分布データから電流ベクトルの角度を求めるベクトル角度算出手段と、
前記求められたT波の電流ベクトル角度に基づいて、前記傷害心筋の3次元局在を描画するデータを生成する描画データ生成手段とを含む、請求項1に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項7】
前記ベクトル角度算出手段は、
前記被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データのX成分のT波の期間にわたる積分値を求める第1の積分手段と、
前記被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データのY成分のT波の期間にわたる積分値を求める第2の積分手段と、
前記胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データのX成分およびY成分の積分値の比から前記電流ベクトルの角度を求める演算手段とを含む、請求項6に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項8】
前記描画データ生成手段は、
前記3次元座標のそれぞれの座標における前記電流ベクトルの角度に基づいて、前記それぞれの座標に対応する点を所定の色で色付けする手段と、
前記3次元座標のそれぞれの座標に対応する点の間を線形補間する手段と、
前記線形補間された3次元座標空間を透視法射影する手段とを含む、請求項7に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項9】
前記描画データ生成手段は、
前記それぞれの座標の色の透明度を電流ベクトルの角度の大きさに応じて設定する、請求項8に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項10】
前記傷害心筋データ生成手段は、
被験者のQRS−T波の3次元電流密度分布データからRT時間の分散であるRTディスパーション(RT-dispersion)を求める時間分散算出手段と、
前記求められたRTディスパーションに基づいて、前記傷害心筋の3次元局在を描画するデータを生成する描画データ生成手段とを含む、請求項1に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項11】
前記時間分布算出手段は、
前記被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データからRT時間の最大値と最小値との差分の絶対値をRTディスパーションとして求める手段を含む、請求項10に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項12】
前記描画データ生成手段は、
前記3次元座標のそれぞれの座標における前記RTディスパーションに基づいて、前記それぞれの座標に対応する点を所定の色で色付けする手段と、
前記3次元座標のそれぞれの座標に対応する点の間を線形補間する手段と、
前記線形補間された3次元座標空間を透視法射影する手段とを含む、請求項11に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項13】
前記描画データ生成手段は、
前記それぞれの座標の色の透明度をRTディスパーションの大きさに応じて設定する、請求項12に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項14】
前記心臓立体図構築手段は、
前記被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データのまたは前記3次元電流密度分布データを二乗した3次元エネルギ密度データの所定期間にわたる積分値を求める積分手段と、
前記それぞれの座標における前記積分値のうちの最大値を求める最大値判定手段と、
前記胸部の3次元座標を複数の立方体の集合に区分する立方体設定手段と、
前記積分値の最大値に基づいてしきい値を設定するしきい値設定手段と、
前記設定されたしきい値に対する、前記立方体の各々の各頂点に対応する座標の前記積分値の大小を判定する大小判定手段と、
前記複数の立方体の集合における前記積分値の大小の判定結果を表示する画像を前記心臓磁界積分立体図として生成する画像生成手段とを含む、請求項1〜13のいずれかに記載の心臓磁界診断装置。
【請求項15】
前記画像生成手段は、
前記複数の立方体の各々ごとに、前記各立方体を構成する8個の頂点のうち対応する座標の前記積分値が前記しきい値より大きい頂点の数を算出する手段と、
前記積分値がしきい値より大きい頂点の数に応じて予め定められた態様で、前記しきい値よりも大きい頂点を結ぶポリゴンを描画する手段と、
前記胸部の3次元座標空間内に前記複数の立方体を配列して前記描画されたポリゴンを透視法射影する手段とを含み、
前記透視法射影により得られた各立方体のポリゴンの集合が前記心臓磁界積分立体図を構成する、請求項14に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項16】
傷害心筋の3次元局在を評価するための方法であって、
被験者の胸部上の複数の座標における非接触磁気計測により前記複数の座標に対応する2次元心臓磁界分布データを生成するステップと、
前記生成された2次元心臓磁界分布データに基づいて前記被験者の心筋内の3次元電流密度分布データを生成するステップと、
前記3次元電流密度分布データに基づいて、心臓の外郭を示す心臓磁界積分立体図を構築するステップと、
前記3次元電流密度分布データに基づいて、心臓の傷害心筋の3次元局在を表わすデータを生成するステップと、
前記構築された心臓磁界積分立体図と同一空間内に、前記傷害心筋の3次元局在を再構成するステップとを備えた、方法。
【請求項17】
前記傷害心筋の3次元局在を表わすデータを生成するステップは、
予め求められた複数の健常者のQRS波の3次元電流密度分布データの平均データと、被験者のQRS波の3次元電流密度分布データとのQRS差分を求めるステップと、
前記求められたQRS差分に基づいて、前記傷害心筋の3次元局在を描画するデータを生成するステップとを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記QRS差分を求めるステップは、
前記被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データのQRS波の期間にわたる積分値を求めるステップと、
前記積分値を求めるステップによって求められた複数の健常者のQRS波の期間にわたる積分値の平均値を求めて保持するステップと、
前記胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記健常者の前記3次元電流密度分布データの積分値の平均値と前記被験者の前記3次元電流密度分布データの積分値との間の差分を前記QRS差分として求めるステップとを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記描画データを生成するステップは、
前記3次元座標のそれぞれの座標における前記QRS差分の値に基づいて、前記それぞれの座標に対応する点を所定の色で色付けするステップと、
前記3次元座標のそれぞれの座標に対応する点の間を線形補間するステップと、
前記線形補間された3次元座標空間を透視法射影するステップとを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記描画データを生成するステップは、
前記それぞれの座標の色の透明度をQRS差分の大きさに応じて設定するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記傷害心筋の3次元局在を表わすデータを生成するステップは、
被験者のT波の3次元電流密度分布データから電流ベクトルの角度を求めるステップと、
前記求められたT波の電流ベクトル角度に基づいて、前記傷害心筋の3次元局在を描画するデータを生成するステップとを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記ベクトル角度を求めるステップは、
前記被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データのX成分のT波の期間にわたる積分値を求めるステップと、
前記被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データのY成分のT波の期間にわたる積分値を求めるステップと、
前記胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データのX成分およびY成分の積分値の比から前記電流ベクトルの角度を求めるステップとを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記描画データを生成するステップは、
前記3次元座標のそれぞれの座標における前記電流ベクトルの角度に基づいて、前記それぞれの座標に対応する点を所定の色で色付けするステップと、
前記3次元座標のそれぞれの座標に対応する点の間を線形補間するステップと、
前記線形補間された3次元座標空間を透視法射影するステップとを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記描画データを生成するステップは、
前記それぞれの座標の色の透明度を電流ベクトルの角度の大きさに応じて設定するステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記傷害心筋の3次元局在を表わすデータを生成するステップは、
被験者のQRS−T波の3次元電流密度分布データからRT時間の分散であるRTディスパーションを求めるステップと、
前記求められたRTディスパーションに基づいて、前記傷害心筋の3次元局在を描画するデータを生成するステップとを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記RTディスパーションを求めるステップは、
前記被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データからRT時間の最大値と最小値との差分の絶対値をRTディスパーションとして求めるステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記描画データを生成するステップは、
前記3次元座標のそれぞれの座標における前記RTディスパーションに基づいて、前記それぞれの座標に対応する点を所定の色で色付けするステップと、
前記3次元座標のそれぞれの座標に対応する点の間を線形補間するステップと、
前記線形補間された3次元座標空間を透視法射影するステップとを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記描画データを生成するステップは、
前記それぞれの座標の色の透明度をRTディスパーションの大きさに応じて設定するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記心臓磁界積分立体図を構築するステップは、
前記被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データのまたは前記3次元電流密度分布データを二乗した3次元エネルギ密度データの所定期間にわたる積分値を求めるステップと、
前記それぞれの座標における前記積分値のうちの最大値を求めるステップと、
前記胸部の3次元座標を複数の立方体の集合に区分するステップと、
前記積分値の最大値に基づいてしきい値を設定するステップと、
前記設定されたしきい値に対する、前記立方体の各々の各頂点に対応する座標の前記積分値の大小を判定するステップと、
前記複数の立方体の集合における前記積分値の大小の判定結果を表示する画像を前記心臓磁界積分立体図として生成するステップとを含む、請求項16〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記画像を生成するステップは、
前記複数の立方体の各々ごとに、前記各立方体を構成する8個の頂点のうち対応する座標の前記積分値が前記しきい値より大きい頂点の数を算出するステップと、
前記積分値がしきい値より大きい頂点の数に応じて予め定められた態様で、前記しきい値よりも大きい頂点を結ぶポリゴンを描画するステップと、
前記胸部の3次元座標空間内に前記複数の立方体を配列して前記描画されたポリゴンを透視法射影するステップとを含み、
前記透視法射影により得られた各立方体のポリゴンの集合が前記心臓磁界積分立体図を構成する、請求項29に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傷害心筋の3次元局在を評価するための心臓磁界診断装置であって、
被験者の胸部上の複数の座標における非接触磁気計測により前記複数の座標に対応する2次元心臓磁界分布データを生成する心臓磁界分布計測手段と、
前記生成された2次元心臓磁界分布データに基づいて前記被験者の心筋内の3次元電流密度分布データを生成する電流密度データ生成手段と、
前記3次元電流密度分布データに基づいて、心臓の外郭を示す心臓磁界積分立体図を構築する心臓立体図構築手段と、
前記3次元電流密度分布データに基づいて、心臓の傷害心筋の3次元局在を表わすデータを生成する傷害心筋データ生成手段と、
前記構築された心臓磁界積分立体図と同一空間内に、前記傷害心筋の3次元局在を再構成する画像再構成手段とを備えた、心臓磁界診断装置。
【請求項2】
前記傷害心筋データ生成手段は、
予め求められた複数の健常者のQRS波の3次元電流密度分布データの平均データと、被験者のQRS波の3次元電流密度分布データとのQRS差分を求める差分算出手段と、
前記求められたQRS差分に基づいて、前記傷害心筋の3次元局在を描画するデータを生成する描画データ生成手段とを含む、請求項1に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項3】
前記QRS差分を求める差分演算手段は、
前記被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データのQRS波の期間にわたる積分値を求める積分手段と、
前記積分手段によって求められた複数の健常者のQRS波の期間にわたる積分値の平均値を求めて保持するデータ保持手段と、
前記胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記健常者の前記3次元電流密度分布データの積分値の平均値と前記被験者の前記3次元電流密度分布データの積分値との間の差分を前記QRS差分として求める演算手段とを含む、請求項2に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項4】
前記描画データ生成手段は、
前記3次元座標のそれぞれの座標における前記QRS差分の値に基づいて、前記それぞれの座標に対応する点を所定の色で色付けする手段と、
前記3次元座標のそれぞれの座標に対応する点の間を線形補間する手段と、
前記線形補間された3次元座標空間を透視法射影する手段とを含む、請求項3に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項5】
前記描画データ生成手段は、
前記それぞれの座標の色の透明度をQRS差分の大きさに応じて設定する、請求項4に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項6】
前記傷害心筋データ生成手段は、
被験者のT波の3次元電流密度分布データから電流ベクトルの角度を求めるベクトル角度算出手段と、
前記求められたT波の電流ベクトル角度に基づいて、前記傷害心筋の3次元局在を描画するデータを生成する描画データ生成手段とを含む、請求項1に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項7】
前記ベクトル角度算出手段は、
前記被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データのX成分のT波の期間にわたる積分値を求める第1の積分手段と、
前記被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データのY成分のT波の期間にわたる積分値を求める第2の積分手段と、
前記胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データのX成分およびY成分の積分値の比から前記電流ベクトルの角度を求める演算手段とを含む、請求項6に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項8】
前記描画データ生成手段は、
前記3次元座標のそれぞれの座標における前記電流ベクトルの角度に基づいて、前記それぞれの座標に対応する点を所定の色で色付けする手段と、
前記3次元座標のそれぞれの座標に対応する点の間を線形補間する手段と、
前記線形補間された3次元座標空間を透視法射影する手段とを含む、請求項7に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項9】
前記描画データ生成手段は、
前記それぞれの座標の色の透明度を電流ベクトルの角度の大きさに応じて設定する、請求項8に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項10】
前記傷害心筋データ生成手段は、
被験者のQRS−T波の3次元電流密度分布データからRT時間の分散であるRTディスパーション(RT-dispersion)を求める時間分散算出手段と、
前記求められたRTディスパーションに基づいて、前記傷害心筋の3次元局在を描画するデータを生成する描画データ生成手段とを含む、請求項1に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項11】
前記時間分布算出手段は、
前記被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データからRT時間の最大値と最小値との差分の絶対値をRTディスパーションとして求める手段を含む、請求項10に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項12】
前記描画データ生成手段は、
前記3次元座標のそれぞれの座標における前記RTディスパーションに基づいて、前記それぞれの座標に対応する点を所定の色で色付けする手段と、
前記3次元座標のそれぞれの座標に対応する点の間を線形補間する手段と、
前記線形補間された3次元座標空間を透視法射影する手段とを含む、請求項11に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項13】
前記描画データ生成手段は、
前記それぞれの座標の色の透明度をRTディスパーションの大きさに応じて設定する、請求項12に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項14】
前記心臓立体図構築手段は、
前記被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データのまたは前記3次元電流密度分布データを二乗した3次元エネルギ密度データの所定期間にわたる積分値を求める積分手段と、
前記それぞれの座標における前記積分値のうちの最大値を求める最大値判定手段と、
前記胸部の3次元座標を複数の立方体の集合に区分する立方体設定手段と、
前記積分値の最大値に基づいてしきい値を設定するしきい値設定手段と、
前記設定されたしきい値に対する、前記立方体の各々の各頂点に対応する座標の前記積分値の大小を判定する大小判定手段と、
前記複数の立方体の集合における前記積分値の大小の判定結果を表示する画像を前記心臓磁界積分立体図として生成する画像生成手段とを含む、請求項1〜13のいずれかに記載の心臓磁界診断装置。
【請求項15】
前記画像生成手段は、
前記複数の立方体の各々ごとに、前記各立方体を構成する8個の頂点のうち対応する座標の前記積分値が前記しきい値より大きい頂点の数を算出する手段と、
前記積分値がしきい値より大きい頂点の数に応じて予め定められた態様で、前記しきい値よりも大きい頂点を結ぶポリゴンを描画する手段と、
前記胸部の3次元座標空間内に前記複数の立方体を配列して前記描画されたポリゴンを透視法射影する手段とを含み、
前記透視法射影により得られた各立方体のポリゴンの集合が前記心臓磁界積分立体図を構成する、請求項14に記載の心臓磁界診断装置。
【請求項16】
傷害心筋の3次元局在を評価するための心臓磁界診断装置の作動方法であって、
被験者の胸部上の複数の座標における非接触磁気計測により前記複数の座標に対応する2次元心臓磁界分布データを生成するステップと、
前記生成された2次元心臓磁界分布データに基づいて前記被験者の心筋内の3次元電流密度分布データを生成するステップと、
前記3次元電流密度分布データに基づいて、心臓の外郭を示す心臓磁界積分立体図を構築するステップと、
前記3次元電流密度分布データに基づいて、心臓の傷害心筋の3次元局在を表わすデータを生成するステップと、
前記構築された心臓磁界積分立体図と同一空間内に、前記傷害心筋の3次元局在を再構成するステップとを備えた、心臓磁界診断装置の作動方法。
【請求項17】
前記傷害心筋の3次元局在を表わすデータを生成するステップは、
予め求められた複数の健常者のQRS波の3次元電流密度分布データの平均データと、被験者のQRS波の3次元電流密度分布データとのQRS差分を求めるステップと、
前記求められたQRS差分に基づいて、前記傷害心筋の3次元局在を描画するデータを生成するステップとを含む、請求項16に記載の心臓磁界診断装置の作動方法。
【請求項18】
前記QRS差分を求めるステップは、
前記被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データのQRS波の期間にわたる積分値を求めるステップと、
前記積分値を求めるステップによって求められた複数の健常者のQRS波の期間にわたる積分値の平均値を求めて保持するステップと、
前記胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記健常者の前記3次元電流密度分布データの積分値の平均値と前記被験者の前記3次元電流密度分布データの積分値との間の差分を前記QRS差分として求めるステップとを含む、請求項17に記載の心臓磁界診断装置の作動方法。
【請求項19】
前記描画データを生成するステップは、
前記3次元座標のそれぞれの座標における前記QRS差分の値に基づいて、前記それぞれの座標に対応する点を所定の色で色付けするステップと、
前記3次元座標のそれぞれの座標に対応する点の間を線形補間するステップと、
前記線形補間された3次元座標空間を透視法射影するステップとを含む、請求項18に記載の心臓磁界診断装置の作動方法。
【請求項20】
前記描画データを生成するステップは、
前記それぞれの座標の色の透明度をQRS差分の大きさに応じて設定するステップを含む、請求項19に記載の心臓磁界診断装置の作動方法。
【請求項21】
前記傷害心筋の3次元局在を表わすデータを生成するステップは、
被験者のT波の3次元電流密度分布データから電流ベクトルの角度を求めるステップと、
前記求められたT波の電流ベクトル角度に基づいて、前記傷害心筋の3次元局在を描画するデータを生成するステップとを含む、請求項16に記載の心臓磁界診断装置の作動方法。
【請求項22】
前記ベクトル角度を求めるステップは、
前記被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データのX成分のT波の期間にわたる積分値を求めるステップと、
前記被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データのY成分のT波の期間にわたる積分値を求めるステップと、
前記胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データのX成分およびY成分の積分値の比から前記電流ベクトルの角度を求めるステップとを含む、請求項21に記載の心臓磁界診断装置の作動方法。
【請求項23】
前記描画データを生成するステップは、
前記3次元座標のそれぞれの座標における前記電流ベクトルの角度に基づいて、前記それぞれの座標に対応する点を所定の色で色付けするステップと、
前記3次元座標のそれぞれの座標に対応する点の間を線形補間するステップと、
前記線形補間された3次元座標空間を透視法射影するステップとを含む、請求項22に記載の心臓磁界診断装置の作動方法。
【請求項24】
前記描画データを生成するステップは、
前記それぞれの座標の色の透明度を電流ベクトルの角度の大きさに応じて設定するステップを含む、請求項23に記載の心臓磁界診断装置の作動方法。
【請求項25】
前記傷害心筋の3次元局在を表わすデータを生成するステップは、
被験者のQRS−T波の3次元電流密度分布データからRT時間の分散であるRTディスパーションを求めるステップと、
前記求められたRTディスパーションに基づいて、前記傷害心筋の3次元局在を描画するデータを生成するステップとを含む、請求項16に記載の心臓磁界診断装置の作動方法。
【請求項26】
前記RTディスパーションを求めるステップは、
前記被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データからRT時間の最大値と最小値との差分の絶対値をRTディスパーションとして求めるステップを含む、請求項25に記載の心臓磁界診断装置の作動方法。
【請求項27】
前記描画データを生成するステップは、
前記3次元座標のそれぞれの座標における前記RTディスパーションに基づいて、前記それぞれの座標に対応する点を所定の色で色付けするステップと、
前記3次元座標のそれぞれの座標に対応する点の間を線形補間するステップと、
前記線形補間された3次元座標空間を透視法射影するステップとを含む、請求項26に記載の心臓磁界診断装置の作動方法。
【請求項28】
前記描画データを生成するステップは、
前記それぞれの座標の色の透明度をRTディスパーションの大きさに応じて設定するステップを含む、請求項27に記載の心臓磁界診断装置の作動方法。
【請求項29】
前記心臓磁界積分立体図を構築するステップは、
前記被験者の胸部の3次元座標のそれぞれの座標における前記3次元電流密度分布データのまたは前記3次元電流密度分布データを二乗した3次元エネルギ密度データの所定期間にわたる積分値を求めるステップと、
前記それぞれの座標における前記積分値のうちの最大値を求めるステップと、
前記胸部の3次元座標を複数の立方体の集合に区分するステップと、
前記積分値の最大値に基づいてしきい値を設定するステップと、
前記設定されたしきい値に対する、前記立方体の各々の各頂点に対応する座標の前記積分値の大小を判定するステップと、
前記複数の立方体の集合における前記積分値の大小の判定結果を表示する画像を前記心臓磁界積分立体図として生成するステップとを含む、請求項16〜28のいずれかに記載の心臓磁界診断装置の作動方法。
【請求項30】
前記画像を生成するステップは、
前記複数の立方体の各々ごとに、前記各立方体を構成する8個の頂点のうち対応する座標の前記積分値が前記しきい値より大きい頂点の数を算出するステップと、
前記積分値がしきい値より大きい頂点の数に応じて予め定められた態様で、前記しきい値よりも大きい頂点を結ぶポリゴンを描画するステップと、
前記胸部の3次元座標空間内に前記複数の立方体を配列して前記描画されたポリゴンを透視法射影するステップとを含み、
前記透視法射影により得られた各立方体のポリゴンの集合が前記心臓磁界積分立体図を構成する、請求項29に記載の心臓磁界診断装置の作動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図21】
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【図22】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図16】
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【図19】
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【図20】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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