説明

心血管疾患における予後診断マーカーとしてのBIN1

本開示は、うっ血性心不全と診断された患者における心臓病死亡リスクの評価における、心臓組織中のBIN1発現レベルの使用を含む方法を提供する。この方法は、心臓移植候補である患者を評価することにおいて、ならびにうっ血性心不全患者における治療の有効性を評定することにおいて、用途が見出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2009年4月24日に出願された米国仮出願番号61/172,608に対する優先権の利益を主張する。
【0002】
連邦政府支援の研究に関する記述
本発明は、米国国立衛生研究所、NHLBIから与えられた助成番号HL075449による政府の援助を受けてなされた。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、心血管疾患およびそれを評定する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ここ10年の間に、うっ血性心不全(CHF)は急増して、循環器科において最も突出した公衆衛生問題となった。CHFは、世界中で2000万近くの人および約500万のアメリカ人に影響を及ぼす。米国単独で、年間に約400,000のCHFの新しい症例が診断され、この状態は1年当たり約200,000件の死亡例の原因となっている。CHFと診断された約100,000患者は、末期心不全を有する。現在、これらの末期の心不全患者の治療は心臓移植である。しかし、毎年わずか2000の心臓しか心臓移植に利用可能ではない。心臓移植を待っている患者を安定させるために、機械的補助デバイスが使用されることもある。場合によっては、機械的補助デバイスは、心臓移植までの繋ぎとしてよりも治療の選択肢として考えられている。
【発明の概要】
【0005】
心臓の健康状態を診断するため、および治療の選択肢および治療の有効性を評価するための、診断方法が必要である。
【0006】
本開示は、うっ血性心不全と診断された患者における転帰不良のリスクの評価における、BIN1発現レベルの使用を含む方法を提供する。この方法は、心臓移植候補である患者を評価することにおいて、ならびに療法の選択肢を決定することおよびうっ血性心不全患者における治療の有効性を評定することにおいて、用途が見出される。
【0007】
したがって、本開示は、うっ血性心不全患者における転帰不良のリスクを決定するための方法であって、患者から得られた心臓組織試料におけるBIN1発現レベルをアッセイするステップと、BIN1発現レベルを使用して患者の転帰不良のリスクを決定するステップとを含み、BIN1発現レベルの減少が、転帰不良のリスクの増加と正に相関している、方法を提供する。転帰不良は、例えば、心臓病死、機械的デバイスサポートを必要とすること(例えば、左室補助デバイス(LVAD)埋込み)、または25%未満の左室駆出率を包含し得る。ある特定の実施形態では、うっ血性心不全患者は、心臓移植を受けており、心臓組織試料は移植された心臓のものである。関連する実施形態において、うっ血性心不全患者の心臓は、機械的補助デバイスに接続されている。別の実施形態では、患者は、CHFの治療を受けている。さらなる実施形態において、患者は、免疫抑制療法を受けている。ある特定の実施形態では、参照BIN発現レベルと比較したBIN1発現レベルの減少は、転帰不良のリスクの増加と正に相関している。
【0008】
例示的な実施形態において、アッセイするステップは、BIN1 mRNAのレベルを測定するステップを含む。特定の場合において、アッセイするステップは、BIN1タンパク質のレベルを測定するステップを含む。さらに別の実施形態において、方法は、CaV1.2発現レベルをアッセイするステップと、CaV1.2発現レベルを使用してBIN1発現レベルを正規化するステップとを含む。
【0009】
本開示はまた、うっ血性心不全患者における転帰不良のリスクを決定するための方法であって、患者から得られた心臓組織試料におけるBIN1および内部コントロール遺伝子の発現レベルをアッセイするステップと;内部コントロール遺伝子発現レベルのBIN1発現レベルに対する比を計算することによって内因性疾患因子(IDF:Intrinsic Disease Factor)を決定するステップと;IDFを使用して患者の転帰不良のリスクを決定するステップとを含み、IDFの増加が転帰不良のリスクの増加と正に相関している、方法を提供する。例示的な実施形態において、内部コントロール遺伝子は、ハウスキーピング遺伝子である。別の例において、内部コントロール遺伝子は、CaV1.2である。ある特定の実施形態では、アッセイするステップは、BIN1および内部コントロール遺伝子mRNAのレベルを測定するステップを含む。関連する実施形態において、うっ血性心不全患者は、心臓移植を受けており、心臓組織試料は、移植された心臓のものである。代替の実施形態において、うっ血性心不全患者の心臓は、機械的補助デバイスに接続されている。関連する実施形態において、患者は、CHFの治療を受けている。ある特定の実施形態では、患者は、免疫抑制療法を受けている。ある特定の実施形態では、患者のIDF比は、参照IDFと比較され、参照IDF比より大きいIDF比は、転帰不良のリスクの増加の指標となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ヒト心臓におけるCaV1.2発現を示す図である。(A)定量的RT−PCR分析(左)および半定量的ウェスタンブロットは、機能不全でないヒト心臓および機能不全ヒト心臓の両方においてCaV1.2発現の差異を示さない。(B)0.1μmのzステップで取得した100×共焦点像フレームのスタックから再構成した細胞内CaV1.2分布の3次元ボリュームビュー。
【図2】CaV1.2のT細管への、BIN1により媒介される標的化を示す図である。(A)固定されたマウス心筋細胞および免疫金標識されたBIN1(φ10nmの小さい点)およびCaV1.2(φ15nmの大きい点)の電子顕微鏡画像(スケールバー:200nm)。BIN1およびCaV1.2は、Z線に近いT細管膜上に50nm範囲内に密集している。(B)CaV1.2は、BIN1により免疫沈降する。
【図3】CaV1.2標的化が、T細管構造ではなくBIN1を必要とすることを示す図である。(A)野生型BIN1(BIN1−WT)のドメインマップは、N末端のBARドメイン、その後に続くエクソン10によりコードされる15アミノ酸、コイルドコイル領域およびC末端SH3ドメインを示す。(B)BIN1−WTまたはBIN1切断型(T細管形成ドメインを保持しているがCaV1.2結合ドメインを欠くBIN1−BAR*)のいずれかによりトランスフェクトされたHL−1細胞におけるCaV1.2の表面ビオチン化は、全長BIN1が、CaV1.2の表面発現を誘導するために必要であることを示す。
【図4】心臓およびT細管形態におけるBIN1の発現レベルを示す図である。(A)定量的rt−PCR分析(左)および半定量的ウェスタンブロットは、機能不全ヒト心臓におけるBIN1発現の顕著な低下を示す。(B)BIN1で染色された単離ヒト心筋細胞の共焦点像(100×)は、BIN1染色によりはっきりと示されるBIN1の非常に低い発現および非常に薄いT細管構造を示す。0.1μmのzステップで取得された100×共焦点像フレームのスタックから再構成されたWGA標識されたヒト心筋細胞の3Dボリュームビューは、機能不全ヒト心筋細胞における、組織化されたT細管ネットワークの喪失を明らかにしている。
【図5】CaV1.2の微小管依存性の前方輸送を示す図である。マウス心筋細胞の表面ビオチン化は、ノコダゾールが表面CaV1.2発現減少させ、CaV1.2輸送における微小管の必要性を示していたことを示す。
【図6】CaV1.2標的化は、APCが先端に結合した微小管を伴うことを示す図である。(A)表面ビオチン化は、ドミナントネガティブのAPC(DN APC)が、HL−1細胞において表面CaV1.2発現を減少させたことを示す。(B)APC粒子は、BIN1が存在しない場合、より速い速度でより長い距離運ばれる。
【図7】機能不全でない正常な心臓(A)および機能不全心臓(B)におけるBIN1発現レベルを示す図である。(A)心疾患以外の理由で死亡した個体の機能不全でない心臓は、左室自由壁(LVFW)および左室心尖部において同等のBIN1発現レベルを示す。(B)左室心尖部にLVADを入れている末期拡張型心筋症患者の心臓は、左室心尖部心臓組織においてBIN1発現の回復を示す(LVFWと比較して)。
【図8】正常心臓および罹患心臓についての、内因性疾患因子(CaV1.2 mRNAのBIN1 mRNAに対する比として測定した、IDFCaV)を示す図である。(A)外植されたドナー心臓についての心臓IDFCaV。心疾患以外の理由で死亡した個体の機能不全でない心臓(黒丸)および末期拡張型心筋症患者の機能不全心臓(黒四角)についてのIDFCaV。心臓IDFCaVは、末期拡張型心筋症の心臓において顕著に高い。(B)心臓IDFCaVは、左室駆出率(LVEF)と相関関係を示す。心疾患以外の理由で死亡した正常コントロール個体の機能不全でない心臓(黒四角)および末期拡張型心筋症患者の機能不全心臓(黒丸)についてのIDFCaV
【図9】正常心臓および罹患心臓についての、内因性疾患因子(ハウスキーピング遺伝子mRNAのBIN1 mRNAに対する比として測定した、IDFHK)を示す図である。(A)外植されたドナー心臓についての心臓IDF(HPRT1 mRNAのBIN1 mRNAに対する比として測定した、IDFHK)。心疾患以外の理由で死亡した正常コントロール個体の機能不全でない心臓(黒丸)および末期拡張型心筋症患者の機能不全心臓(黒四角)についてのIDFHK。心臓IDFHKは、末期拡張型心筋症の心臓において顕著に高い。(B)心臓IDFHKは、左室駆出率(LVEF)と相関関係を示した。心疾患以外の理由で死亡した正常コントロール個体の機能不全でない心臓(黒四角)および末期拡張型心筋症患者の機能不全心臓(黒丸)についてのIDFHK
【図10】BIN発現レベル(CaV1.2に対して正規化された)の心拍出量との相関関係を示す図である。BIN1のCav1.2に対する比は、IDFCaVの逆数である。
【図11】11Aおよび11Bは、例示的なBIN1ヌクレオチド(転写変異体8)(配列番号1)およびアミノ酸(アイソフォーム8)(配列番号2)配列をそれぞれ示す図である。
【図12】12Aおよび12Bは、例示的なBIN1ヌクレオチド(転写変異体9)(配列番号3)およびアミノ酸(アイソフォーム9)(配列番号4)配列をそれぞれ示す図である。
【図13】13Aおよび13Bは、例示的なCaV1.2ヌクレオチド(配列番号5)およびアミノ酸(配列番号6)配列をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を説明する前に、本発明は記載されている特定の実施形態に限定されず、したがって、当然ながら異なっていてもよいことが理解されるべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、限定的であることを意図しないこともまた理解されるべきである。
【0012】
値の範囲が示される場合、その範囲の上限および下限の間にある各値もまた、文脈により別途明確に規定されない限り下限の単位の10分の1まで、明確に開示されることが理解される。記載されている範囲における任意の記載されている値または間にある値の間のより小さい各範囲およびその記載されている範囲における任意の別の記載されている値または間にある値は、本発明の範囲内に包含される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、それぞれ独立に、その範囲に包含されてもよく、または除外されてもよく、そのより小さい範囲中にいずれかの限界が含まれる、いずれの限界も含まれない、またはいずれの限界も含まれる各範囲もまた、記載されている範囲における任意の明確に除外されている限界を条件として、本発明の範囲内に包含される。記載されている範囲が、限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれている限界のいずれかまたは両方を除外する範囲もまた、本発明に含まれる。
【0013】
別途規定されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様のまたは等価の任意の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用することができるが、いくつかの潜在的なおよび例示的な方法および材料を、以下に記載する。本明細書において言及されたすべての刊行物は、刊行物が関連して引用された方法および/または材料を開示および説明するために、参照により本明細書に組み込まれる。本開示は、矛盾が存在する程度まで、組み込まれている刊行物のすべての開示に優先することが理解される。
【0014】
本明細書で使用される場合および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈により別途明確に規定されない限り、複数の指示対象を包含することに留意しなければならない。したがって、例えば、「1つのハウスキーピング遺伝子(a housekeeping gene)」への言及は、複数のそのような遺伝子を包含し、「その遺伝子(the gene)」への言及は、1つまたは複数の遺伝子および当業者に知られているその等価物への言及を包含するなどである。
【0015】
特許請求の範囲は、任意選択であってもよい任意の要素を除外するように起草されてもよいことにさらに留意されたい。したがって、この記述は、請求項の要素の詳述、または「消極的」限定の使用に関連して、「のみ(solely)」、「のみ(only)」などの排他的な用語の使用のための先行詞として機能することを意図されている。
【0016】
本明細書において論じられている刊行物は、本出願の出願日の前のそれらの開示についてのみ示されている。本明細書において、本発明が、先行発明のために、そのような刊行物に先行するという権利を有さないことの承認として解釈されるものはない。さらに、示されている刊行日は、それぞれ独立に確認する必要があるであろう実際の刊行日と異なる場合がある。
【0017】
定義
「心不全」または「うっ血性心不全(congestive heart failure)」(CHF)、および「うっ血性心不全(congestive cardiac failure)」(CCF)という用語は、本明細書において互いに交換可能に使用され、心臓の、全身に十分な量の血液を満たす、または送り出す能力、体の組織における適当な血液循環を維持する能力、または静脈循環によって戻ってきた静脈血を拍出する能力を損なう、任意の構造的または機能的な心臓障害の結果として生じ得る臨床状態を指す。
【0018】
「末期心不全」という用語は、従来の医学療法に抵抗性のCHFを指す。末期心不全の患者は、高い死亡率を有する。これらの患者は、多数回の頻繁な入院、静脈内薬物療法を頻繁に経験し、大動脈内バルーンポンプ、心室補助デバイス、および心臓移植などの外科的療法を必要とする。
【0019】
「末期拡張型心筋症」および「末期CHF」という用語は、本明細書において互いに交換可能に使用される。
【0020】
「心筋症」または「心筋疾患」という用語は、任意の理由による、心筋(すなわち、心臓の筋肉)の機能低下を指す。本明細書において使用される場合、「心筋症」という用語は、「外因性心筋症」および「内因性心筋症」を包含する。外因性心筋症において、例えば、虚血性心筋症など、主な病理は心筋自体の外側にある。内因性心筋症において、心筋の衰弱は、例えば、拡張型心筋症(DCM)など、特定できる外部の原因によるものではない。DCMでは、心臓(特に、左心室)が拡張し、ポンプ機能が低下する。
【0021】
「虚血性心筋症」という用語は、アテローム性動脈硬化症および冠動脈閉塞などの、冠動脈疾患の結果として生じる心筋症を指す。
【0022】
「非虚血性心筋症」という用語は、冠動脈疾患によるものではない心筋症を指す。
【0023】
本明細書において使用される「予後」という用語は、CHF患者などの心臓疾患患者における心臓病死の見込みなどの、患者における疾患の特定の転帰の見込みの予測を指す。
【0024】
「転帰不良」は、心臓病患者(例えば、心不全患者)との関連において本明細書で使用される場合、心臓の健康状態の低下に関連した転帰を指す。「転帰不良」は、例えば、所与の期間における、左室駆出率(LVEF)が改善しないこと、または機械的デバイスサポート(例えば、左室補助デバイス(LVAD)埋込み)の必要性、または心臓移植の必要性、または心臓死を包含する。
【0025】
状態または疾患を「治療すること」またはその「治療」という用語は、対象に臨床上の利益をもたらすことを包含し、以下を包含する:(1)疾患を阻害すること、すなわち、疾患またはその症状の発症を停止もしくは減少させること、または(2)疾患を軽減すること、すなわち、疾患またはその臨床症状の退行をもたらすこと。
【0026】
概要
本開示の方法は、BIN1発現レベルの減少が、心臓組織の健康状態の悪化と、したがって、うっ血性心不全(CHF)を有する心臓疾患患者における転帰不良の見込みの増加と、正に相関しているという発見に基づいている。例えば、心臓組織におけるBIN1発現レベルは、正常な心臓組織の正常なBIN1発現レベルまたは転帰不良を示さないうっ血性心不全の患者の心臓組織のBIN1発現レベルなどの参照BIN1発現レベルと比べて減少するにつれて、患者における心臓病死亡リスクは増加する。「心臓病死」という用語は、本明細書において使用される場合、心臓疾患による患者死亡率を指す。したがって、BIN1発現は、心臓組織の健康状態が低下するにつれて低下する発現レベル値を提供するためにアッセイされる、予後診断マーカーとして使用することができる。
【0027】
本明細書において開示されている方法はまた、内因性疾患因子(IDF)を計算するためのBIN1発現レベルの使用を提供し、これは、心臓組織の健康状態が低下するにつれて値が増加するスコアを提供する。IDFは、コントロール遺伝子(複数可)発現のBIN1発現に対する比として計算される。したがって、IDFは、式:
IDF=[コントロール/BIN1]
(式中、「コントロール」は、1つまたは複数の内部コントロール遺伝子、すなわち、正常なヒト心臓組織に対して罹患ヒト心臓組織において有意に示差的に発現されない遺伝子(複数可)についての発現値を表す)によって表される。例示的な内部コントロール遺伝子は、CaV1.2、および/またはハウスキーピング遺伝子を包含する。したがって、IDF値の増加は、転帰不良のリスクの増加と正に相関し、すなわち、IDFが高いほど、転帰不良のリスクが大きい(例えば、心臓病死、LVAD埋込みの必要性、LVEFが重度の機能不全から改善しないことなどのリスクが大きいなど。
【0028】
BIN1発現レベルは、BIN1遺伝子産物の検出によって、例えば、mRNA(例えば、心臓組織試料においてmRNAから生成されたcDNAの検出によって、)またはBIN1タンパク質の検出によって、アッセイすることができる。BIN1発現をアッセイするための例示的な方法を、以下に示す。
【0029】
本開示の方法を、以下にさらに詳細に記載する。
【0030】
BIN1
ブリッジングインテグレーター1(BIN1)遺伝子は、腫瘍抑制因子の特徴を有するMyc相互作用タンパク質としてもともと同定された、核内サイトゾルタンパク質をコードする。BIN1はまた、アンフィフィシンII、アンフィフィシン様、およびボックス依存性MYC相互作用タンパク質1としても知られている。BIN1遺伝子の選択的スプライシングは、10個の異なるアイソフォームをコードしている転写変異体をもたらす。BIN1のアイソフォームは、いたるところで発現されるものもあれば、組織特異的な発現を示すものもある。BIN1アイソフォーム1〜7は、ニューロンにおいて発現される。アイソフォーム8は、筋肉特異的であるが、アイソフォーム9および10は、いたるところに存在する。中枢神経系において発現されるアイソフォームは、シナプス小胞エンドサイトーシスに関与している可能性があり、ダイナニム、シナプトジャニン、エンドフィリン、およびクラスリンと相互作用する可能性がある。腫瘍細胞系において発現される異常型スプライス変異体もまた記載されている。
【0031】
BIN1発現は、BIN1転写変異体および/またはアイソフォームの1つまたは複数の検出によってアッセイすることができる。BIN1アイソフォームまたは転写変異体1 mRNA(NM_139343.1)およびアイソフォーム1タンパク質(NP_647593.1)、BIN1転写変異体2mRNA(NM_139344.1)およびアイソフォーム2タンパク質(NP_647594.1)、BIN1転写変異体3mRNA(NM_139345.1)およびアイソフォーム3タンパク質(NP_647595.1)、BIN1転写変異体4mRNA(NM_139346.1)およびアイソフォーム4タンパク質(NP_647596.1)、BIN1転写変異体5mRNA(NM_139347.1)およびアイソフォーム5タンパク質(NP_647597.1)、BIN1変異体6mRNA(NM_139348.1)およびアイソフォーム6タンパク質(NP_647598.1)、BIN1転写変異体7mRNA(NM_139349.1)およびアイソフォーム7タンパク質(NP_647599.1)、BIN1転写変異体8mRNA(NM_004305.2)およびアイソフォーム8タンパク質(NP_004296.1)、BIN1転写変異体9mRNA(NM_139350.1)およびアイソフォーム9タンパク質(NP_647600.1)、ならびにBIN1転写変異体10mRNA(NM_139351.1)およびアイソフォーム10タンパク質(NP_647601.1)配列が、当技術分野において利用可能である。ある特定の実施形態では、BIN1発現は、BIN1転写変異体8mRNAおよび/またはBIN1アイソフォーム8タンパク質の検出によってアッセイされてもよい。別の実施形態では、BIN1発現は、BIN1転写変異体9mRNAおよび/またはBIN1アイソフォーム9タンパク質の検出によってアッセイされてもよい。別の実施形態では、BIN1発現は、BIN1転写変異体8mRNAおよびBIN1転写変異体9mRNAの両方の検出および/またはBIN1アイソフォーム8タンパク質およびBIN1アイソフォーム9タンパク質の両方の検出によってアッセイされる。例示的な実施形態において、BIN1発現は、BIN1転写変異体8および9mRNAの検出によって、例えば、BIN1転写変異体8および9mRNAにより共有されている構造的特徴の検出によって、および/またはBIN1アイソフォーム8タンパク質およびBIN1アイソフォーム9タンパク質により共有されている構造的特徴の検出によって、アッセイされてもよい。
【0032】
一般に、BIN1発現レベルは、様々なBIN1転写変異体/アイソフォームの遺伝子産物により共有されている構造の特徴の検出を提供する試薬を使用することによって、例えば、BIN1のすべての転写変異体に共通のBIN1 mRNAの領域の検出を提供するプライマーおよび/もしくはプローブ、またはBIN1アイソフォームにより共有されているエピトープ(複数可)に結合する抗体を使用することによって、アッセイされてもよい。
【0033】
内部コントロール
本明細書に記載されているアッセイ方法に関連して、様々な異なる内部コントロールを使用することができる。一般に、CHF患者の心臓組織および正常な心臓組織において顕著に示差的に発現されないことが知られている遺伝子を、内部コントロールとして使用することができる。以下は、アッセイすることができる例示的な内部コントロール遺伝子を示す。
CaV1.2
【0034】
CaV1.2
CACNA1Cは、電位依存性カルシウムチャネルのα−1サブユニットであるCav1.2をコードする。ホモ・サピエンス(Homo sapiens)CACNA1cポリペプチドのアミノ酸配列は、当技術分野において知られている。例えば、GenBankアクセッション番号NP_000710を参照されたい。ホモ・サピエンスCACNA1CアイソフォームCRA_aからCRA_pのアミノ酸配列は、GenBankアクセッション番号EAW88895(アイソフォームCRA_a);EAW88896(アイソフォームCRA_b);EAW88897(アイソフォームCRA_c);EAW88898(アイソフォームCRA_d);EAW88899(アイソフォームCRA_e);EAW88900(アイソフォームCRA_f);EAW888901(アイソフォームCRA_g);EAW888902(アイソフォームCRA_h);EAW888903(アイソフォームCRA_i);EAW888904(アイソフォームCRA_j);EAW888905(アイソフォームCRA_k);EAW888906(アイソフォームCRA_l);EAW888907(アイソフォームCRA_m);EAW888908(アイソフォームCRA_n);EAW888909(アイソフォームCRA_o);およびEAW888910(アイソフォームCRA_p)のもとで見られる。対応するヌクレオチド配列(例えば、CaV1.2をコードしているヌクレオチド配列)は、当技術分野において知られている。例えば、GenBankアクセッション番号NM_000719(GenBankアクセッション番号NP_000710に示されているアミノ酸配列を有するCaV1.2をコードしている)を参照されたい。
【0035】
一般に、CaV1.2発現レベルは、様々なCaV1.2転写変異体/アイソフォームの遺伝子産物により共有されている構造の特徴の検出を提供する試薬を使用することによって、例えば、CaV1.2のすべての転写変異体に共通するCaV1.2mRNAの領域の検出を提供するプライマーおよび/またはプローブまたはCaV1.2アイソフォームにより共有されているエピトープ(複数可)に結合する抗体を使用することによって、アッセイすることができる。ある特定の実施形態では、CaV1.2転写変異体18(NM_000719.6)をアッセイすることができる。
【0036】
CaV1.2発現レベルは、CaV1.2mRNAまたはタンパク質の検出によってアッセイされてもよい。
【0037】
ハウスキーピング遺伝子
ハウスキーピング遺伝子は、典型的には、本明細書において評価される条件すべてにわたって対象とする組織において比較的一定のレベルで転写される、構成的に発現される遺伝子である。ハウスキーピング遺伝子は、典型的には、核酸合成、代謝、細胞骨格構造などの細胞の維持を容易にする遺伝子産物をコードする。一般に、ハウスキーピング遺伝子の発現レベルは、機能不全の心臓組織および機能不全でない心臓組織の間で実質的に示差的に発現されない。ハウスキーピング遺伝子の例は、HPRT、GAPDH、β−アクチン、チューブリン、ユビキチン、RPL13A、PP1A、およびEEF1A1などを含む。
【0038】
ハウスキーピング遺伝子発現レベルは、mRNAまたはタンパク質の検出によってアッセイされてもよい。
【0039】
遺伝子発現をアッセイするための方法
遺伝子発現は、BIN1 mRNAまたはポリペプチドのレベルを定量することによってアッセイされてもよい。試料中のmRNA発現の定量のための、当技術分野において知られている一般に使用される方法を、BIN1発現レベルをアッセイするために利用してもよい。そのような方法は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)(Weisら、Trends in Genetics8:263〜264(1992))、in situハイブリダイゼーション(Parker&Barnes、Methods in Molecular Biology 106:247〜283(1999))、ノーザンブロット法、およびRNAse保護アッセイ(Hod、Biotechniques 13:852〜854(1992))などのPCRに基づく方法を含む。代替として、DNA二本鎖、RNA二本鎖、およびDNA−RNAハイブリッド二本鎖またはDNA−タンパク質二本鎖を含む配列特異的二本鎖を認識することができる抗体を利用してもよい。BIN1ポリペプチドのレベルは、定量的ウェスタンブロット、免疫沈降などによって検出されてもよく、特定の場合において、BIN−1発現レベルは、in situアッセイによって、例えば、BIN−1mRNAに特異的な標識したプローブをハイブリダイズさせることまたはBIN−1抗体を使用することによって、決定されてもよい。
【0040】
一般に、BIN1遺伝子発現は、患者の心臓組織試料において、アッセイすることができる。心臓組織は、通常、生検試料である。心臓組織は、当業者によく知られている様々な手順において生検を実施することができる。心臓組織は、実施されるアッセイに適合する任意の方法によって処理することができる。例えば、心臓組織は、新たに得られてもよく、凍結(例えば、瞬間凍結)されてもよく、ホルマリン固定されてもよく、パラフィン包埋されてもよく、またはそれらの任意の適した組み合わせであってもよい。一般に、方法は、心臓組織中のアッセイされる分析物(例えば、タンパク質および/またはmRNA)の実質的な分解を回避するように選択することができる。
【0041】
定量的逆転写酵素PCR(qRT−PCR)
第1ステップは、試料からのmRNAの単離である。出発材料は、典型的には、うっ血性心不全と診断された患者の心臓組織から、および、任意選択により、コントロールとして対応する正常な組織から、単離された全RNAである。心臓組織は、新たに得られてもよくまたは、凍結された、もしくは保存されたパラフィン包埋および固定(例えば、ホルマリン固定)された組織試料であってもよい。
【0042】
mRNA抽出のための一般的な方法は、当技術分野においてよく知られており、Ausubelら、Current Protocols of Molecular Biology、John Wiley and Sons(1997)を含む分子生物学の標準的な教科書に開示されている。パラフィン包埋された組織からのRNA抽出のための方法は、例えば、RuppおよびLocker、Lab Invest.56:A67(1987)、およびDe Andresら、BioTechniques 18:42044(1995)において開示されている。特に、RNA単離は、製造業者の使用説明書に従って、Qiagenなどの市販の製造業者の精製キット、緩衝液セットおよびプロテアーゼを使用して実施することができる。例えば、全RNAは、Qiagen RNeasyミニ−カラムを使用して単離することができる。別の市販されているRNA単離キットは、MasterPure(商標)Complete DNA and RNA Purification Kit(EPICENTRE(登録商標)、Madison、WI)、およびParaffin Block RNA Isolation Kit(Ambion,Inc.)を含む。組織試料の全RNAは、RNA Stat−60(Tel−Test)を使用して単離することができる。心臓組織から調製されるRNAは、例えば、塩化セシウム密度勾配遠心分離によって単離することができる。
【0043】
典型的には、RT−PCRにおける第1ステップは、RNA鋳型のcDNAへの逆転写であり、その後に、PCR反応におけるその指数関数的な増幅が続く。トリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV−RT)、モロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV−RT)、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−I)、ウシ白血病ウイルス(BLV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびサーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)(Tth)の逆転写酵素を含むがそれらに限定されない、多くの逆転写酵素を使用することができる。逆転写ステップは、典型的には、環境およびRT−PCRの目的に応じて、特異的プライマー、ランダムヘキサマー、またはオリゴdTプライマーを使用することによって開始される。例えば、抽出されたRNAは、製造業者の使用説明書に従って、GeneAmp RNA PCRキット(Perkin Elmer、CA、USA)を使用して逆転写することができる。次いで、得られたcDNAを、その後のPCR反応において鋳型として使用することができる。
【0044】
PCRステップは、様々な熱安定性DNA依存性DNAポリメラーゼを使用することができるが、典型的には、5’−3’ヌクレアーゼ活性を有するが、3’−5’プルーフリーディングエンドヌクレアーゼ活性を欠くTaq DNAポリメラーゼを利用する。したがって、TaqMan(登録商標)PCRは、典型的には、TaqまたはTthポリメラーゼの5’−ヌクレアーゼ活性を利用して、その標的アンプリコンに結合しているハイブリダイゼーションプローブを加水分解するが、同等の5’ヌクレアーゼ活性を有する任意の酵素を使用することができる。2つのオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、PCR反応の典型的なアンプリコンを生成する。第3のオリゴヌクレオチド、またはプローブは、2つのPCRプライマーの間に位置するヌクレオチド配列を検出するように設計される。このプローブは、Taq DNAポリメラーゼ酵素により伸長されず、レポーター蛍光色素およびクエンチャー蛍光色素により標識される。レポーター色素からの、レーザーにより誘導される発光は、2つの色素がプローブ上にあるために互いに近接して位置しているとき、消光色素によって消光する。増幅反応の間、Taq DNAポリメラーゼ酵素は、鋳型依存的にプローブを切断する。結果として生じるプローブフラグメントは溶液中で解離し、放出されたレポーター色素からのシグナルには、第2のフルオロフォアの消光作用はない。合成されるそれぞれの新しい分子につきレポーター色素の1分子が遊離され、消光しないレポーター色素の検出は、データの定量的解釈のための根拠を提供する。
【0045】
TaqMan(登録商標)RT−PCRは、例えば、ABI PRISM7700(商標)Sequence Detection System(商標)(Perkin−Elmer−Applied Biosystems、Foster City、CA、USA)、またはLightcycler(Roche Molecular Biochemicals、Mannheim、Germany)などの市販されている装置を使用して実施することができる。好ましい一実施形態において、5’ヌクレアーゼ手順は、ABI PRISM7700(商標)Sequence Detection System(商標)などのリアルタイム定量的PCRデバイスにおいて行われる。このシステムは、サーモサイクラー、レーザー、電荷結合素子(CCD)、カメラおよびコンピュータからなる。このシステムは、サーモサイクラーにおいて96ウェルフォーマット中で試料を増幅する。増幅中、レーザーにより誘導される蛍光シグナルは、すべての96ウェルについて光ファイバーケーブルによってリアルタイムで集光され、CCDで検出される。システムは、機器を作動させるためおよびデータを分析するためのソフトウェアを含む。
【0046】
5’−ヌクレアーゼアッセイデータは、最初、C、または閾値サイクルとして表される。上記で論じたように、蛍光値は、毎サイクルの間記録され、増幅反応におけるその時点までに増幅された生成物の量を表す。蛍光シグナルが統計学的に有意であると最初に記録される時点が、閾値サイクル(C)である。
【0047】
エラーおよび試料間の変動の影響を最小化するために、RT−PCRは通常、内部標準を使用して実施される。理想的な内部標準は、異なる組織間で一定のレベルで発現され、実験の処理による影響を受けない。遺伝子発現のパターンを正規化するために最も頻繁に使用されるRNAは、ハウスキーピング遺伝子グリセルアルデヒド−3−リン酸−デヒドロゲナーゼ(GAPDH)およびβ−アクチンのmRNAである。
【0048】
RT−PCR技術の変形形態は、リアルタイム定量的PCRであり、これは、二重標識した蛍光性プローブ(すなわち、TaqMan(登録商標)プローブ)によってPCR産物の蓄積を測定する。リアルタイムPCRは、正規化のために各標的配列に対する内部の競合相手が使用される定量的競合PCR、およびRT−PCRのために試料中に含有される正規化遺伝子またはハウスキーピング遺伝子を使用する定量的比較PCRの両方に適合性である。さらなる詳細に関しては、例えば、Heldら、Genome Research 6:986〜994(1996)を参照されたい。
【0049】
アッセイされるRNAの量の差異および使用されるRNAの質の変動性の両方に関して補正する(正規化してしまう(normalize away))ことが望ましい。したがって、アッセイは、典型的には、GAPDH、HPRT1、ユビキチンなどのよく知られているハウスキーピング遺伝子を含む特定の参照遺伝子(または「正規化遺伝子」)の発現の分析を組み込む。
【0050】
代替として、正規化は、アッセイされる遺伝子のすべてまたはその大きい部分集団のシグナル(C)の平均または中央値に基づいて(しばしば、「グローバルノーマライゼーション」手法と称される)いてもよい。遺伝子対遺伝子の原則に基づいて、患者心臓組織mRNAの測定され正規化された量を、対応する正常な心臓組織において見出される量と比較することができる。M.Croninら、Am.Soc.Investigative Pathology 164:35〜42(2004)を参照されたい。
【0051】
プライマーおよびプローブの設計
プライマーおよびプローブ(例えば、PCR増幅ベースの方法において使用するための)は、増幅される遺伝子中に存在するエクソン配列、またはイントロン配列に基づいて設計することができる。したがって、プライマー/プローブ設計における第1ステップは、対象とする遺伝子中の標的エクソンまたはイントロン配列の描写である。これは、Kent、W.J.、Genome Res.12(4):656〜64(2002)によって開発されたDNA BLATソフトウェア、または、その変形形態を含むBLASTソフトウェアなどの公開されているソフトウェアによって行うことができる。その後のステップは、PCRプライマーおよびプローブ設計の十分に確立されている方法に従う。
【0052】
非特異的シグナルを回避するために、遺伝子の標的配列中の反復配列は、プライマーおよびプローブを設計するときにマスクすることができる。これは、反復要素のライブラリーに対してDNA配列をスクリーニングし、反復要素がマスクされているクエリ配列を返す、Baylor College of Medicineからオンラインで利用可能であるRepeat Maskerプログラムを使用することによって容易に達成することができる。次いで、マスクされた配列を使用することにより、Primer Express(Applied Biosystems);MGBアッセイごとの設計(assay−by−design)(Applied Biosystems);プライマー3(Krawetz S、Misener S(編)Bioinformatics Methods and Protocols:Methods in Molecular Biology、Humana Press、Totowa、NJ、365〜386ページの、Steve RozenおよびHelen J.Skaletsky(2000)一般ユーザーおよび生物学者プログラマーのためのWWW上のPrimer3(Primer3 on the WWW for general users and for biologist programmers))などの、任意の市販されている、またはそうでなければ公開されているプライマー/プローブ設計パッケージを使用して、プライマーおよびプローブ配列を設計することができる。
【0053】
PCRプライマー設計において考慮される因子は、プライマー長、融解温度(Tm)、G/C含量、特異性、相補的プライマー配列、および3’−末端配列を含むことができる。一般に、最適なPCRプライマーは、長さが17〜30塩基であり、約20〜80%のG+C塩基(例えば、約50〜60%のG+C塩基)を含有する。50℃〜80℃の間、例えば、約50℃〜70℃のTmが、典型的には好ましい。
【0054】
PCRプライマーおよびプローブ設計についてのさらなるガイドラインに関しては、その開示全体が参照により本明細書に明確に組み込まれる、PCR Primer、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、New York、1995、133〜155ページの、Dieffenbach,C.W.ら、「PCRプライマー設計に関する一般的概念(General Concepts for PCR Primer Design)」;PCR Protocols、A Guide to Methods and Applications、CRC Press、London、1994、5〜11ページの、InnisおよびGelfand、「PCRの最適化(Optimization of PCRs)」;およびPlasterer,T.N.Primerselect:Primer and probe design、Methods Mol.Biol.70:520〜527(1997)を参照されたい。
【0055】
マイクロアレイ
マイクロアレイ技術は、罹患心臓組織および正常な心臓組織においてBIN1の示差的発現を検出するために使用することができる。この方法において、対象とするポリヌクレオチド配列(cDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む)は、マイクロチップ基板上にプレーティングまたはアレイ化される。次いで、アレイ化された配列を、対象とする細胞または組織由来の特異的DNAプローブとハイブリダイズさせる。RT−PCR法と同様に、mRNAの供給源は、典型的には、患者心臓組織、および任意選択により、対応する正常な心臓組織から単離された全RNAである。
【0056】
蛍光標識されたcDNAプローブは、対象とする組織から抽出されたRNAの逆転写による、蛍光ヌクレオチドの組み込みによって作製することができる。チップ上にアプライされた標識cDNAプローブは、アレイ上のDNAの各スポットに対して特異的にハイブリダイズする。非特異的に結合したプローブを除去するためのストリンジェントな洗浄の後、チップを、共焦点レーザー顕微鏡によってまたはCCDカメラなどの別の検出方法によってスキャンする。各アレイ要素のハイブリダイゼーションの定量は、対応するmRNA存在量の評価を可能にする。二色蛍光を用いて、2つの供給源のRNAから作製された別々に標識されたcDNAプローブを、アレイに対ごとにハイブリダイズさせる。したがって、各指定された遺伝子に対応する2つの供給源由来の転写産物の相対的存在量が同時に決定される。マイクロアレイ法は、1細胞当たり数コピーで発現される稀にしか出現しない転写産物を検出するために、および発現レベルの少なくとも約2倍の差異を再現可能に検出するために必要とされる感度を有することが示されている(Schenaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(2):106〜149(1996))。マイクロアレイ分析は、Affymetrix GenChip技術、またはIncyteのマイクロアレイ技術を使用することによってなど、製造業者のプロトコルに従って、市販されている装置によって実施することができる。
【0057】
アレイ化されたオリゴヌクレオチドは、BIN1核酸の特定の領域にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを包含してもよい。ある特定の実施形態では、BIN1核酸の第1の領域に対して特異的にハイブリダイズする第1のオリゴヌクレオチドの多コピーがアレイ化される。ある特定の実施形態では、BIN1核酸の第1のおよび第2の領域に特異的にハイブリダイズする第1のおよび第2のオリゴヌクレオチドの多コピーが、それぞれアレイ化される、などである。ある特定の実施形態では、BIN1発現レベルは、これらのオリゴヌクレオチドのそれぞれのシグナルの平均値によって決定される。ある特定の実施形態では、アレイはまた、ハウスキーピング遺伝子または正常な心臓組織に対して罹患心臓組織において顕著に示差的に発現されないことが知られている、例えば、CaV1.2などの別の遺伝子などの正規化遺伝子の核酸に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを包含してもよい。
【0058】
免疫検出
免疫組織化学的方法もまた、BIN1の発現レベルを検出するために適し得る。したがって、BIN1に特異的な、ポリクローナル抗血清およびモノクローナル抗体などの抗体または抗血清を、BIN1発現を評定するために使用することができる。抗体は、例えば、放射性標識、蛍光標識、ビオチンなどのハプテン標識またはホースラディッシュペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼなどの酵素による抗体自体の直接的な標識化によって検出することができる。代替として、一次抗体に特異的な、抗血清、ポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗体を含む標識された二次抗体と共に、標識されていない一次抗体が使用される。ある特定の例において、患者の心臓試料におけるBIN1発現は、正常な心臓試料におけるBIN1発現と比較され得る。免疫組織化学プロトコルおよびキットは、当技術分野においてよく知られており、市販されている。
【0059】
特定の場合において、心臓組織試料中に存在するBIN1タンパク質の量は、ウェスタンブロットによって決定することができる。例えば、心臓試料の全細胞溶解物中に存在するタンパク質を、SDS−PAGEによって分離し、分離されたタンパク質をニトロセルロース膜に移し、BIN1に特異的な抗体または抗血清を使用することによってBIN1を検出することができる。少なくとも1つの正規化タンパク質、例えば、Cav1.2またはGAPDHもしくはβ−アクチンなどのハウスキーピングタンパク質もまた、同時にまたは並行して検出して、BINタンパク質発現レベルを正規化するために使用することができる。代替の実施形態において、BIN1発現レベルを、過剰の抗BIN1抗体を使用してBIN1免疫沈降を実施し、その後、SDS−PAGEによる免疫沈降物の分離、分離されたタンパク質をニトロセルロース膜に移し、ゲルの染色によって、例えば、クマシーブルーまたは銀染色によって検出することによって決定してもよい。GAPDHまたはユビキチンなどのコントロールタンパク質の免疫沈降はまた、同時にまたは並行して行われてもよい。任意選択により、対応する正常な心臓組織に対して同じ手順が行われてもよい。
【0060】
心臓病死亡リスクの予後予測におけるBIN1発現レベルの使用
BIN1発現は、CHF患者における転帰不良のリスクを予測するためにアッセイされる予後診断マーカーとして使用することができる。BIN1発現レベルの減少は、心臓病死などの転帰不良のリスクの増加と正に相関している。BIN1発現レベルを使用して、心臓病死などの転帰不良のリスクが増加するにつれて値が増加するスコアを提供する内因性疾患因子(IDF)を計算することができる。
【0061】
BIN1発現レベルの使用
この方法は、CHFと診断された患者の心臓組織試料中のBIN1発現レベルをアッセイするステップを伴うことができる。BIN1の分析は、参照BIN1発現レベル、例えば、正常なBIN1発現レベルまたは転帰不良の低いリスクの指標となることが知られているBIN1発現レベルに対する、BIN発現レベルの比較を伴うことができる。
【0062】
参照BIN1発現レベルは、転帰不良の低いリスクの指標となることが知られているBIN1発現レベルであってもよい。参照BIN1発現レベルは、心臓病死、LVAD埋込み、または改善しないLVEFなどの転帰不良を有さないことが知られているCHF患者のBIN1発現レベル(または、患者群のBIN1発現レベルの平均)であってもよい。参照BIN1発現レベルと比較して低いBIN1発現レベルは、患者が増加した転帰不良の見込みを有することを示す。対照的に、参照値以上のBIN1発現レベルは、患者が減少した転帰不良の見込みを有することを示す。
【0063】
正常なBIN1発現レベルは、一般に、機能不全でない心筋におけるBIN1発現レベルを指す。正常なBIN1発現レベルは、心臓の肉眼的形態の検査、左室駆出率、心臓カテーテルから、および/または個々のカルテにおける心臓に関連する状態がないことなどから、その心臓機能が正常であると推定される個体から得られた、機能不全でない心臓組織のBIN1発現レベルから決定することができる。
【0064】
参照BIN発現レベルと比較して低いBIN1発現レベルは、患者が増加した心臓病死の見込みを有することを示す。一般に、正常なBIN発現レベルと比較したBIN1発現レベルの少なくとも20%の低下は、患者が増加した心臓病死の見込みを有することを示す。したがって、正常なBIN発現レベルと比較したBIN1発現レベルの、20%の低下、30%の低下、40%の低下、50%の低下、75%の低下、またはそれ以上の低下を有する患者は、増加した心臓病死亡リスクを有する。
【0065】
通常、BIN1 mRNAまたはタンパク質レベルは、ハウスキーピング遺伝子またはCaV1.2などの、CHFにおいて変化しないことが知られている遺伝子などの内部コントロールを参照して正規化される。ある特定の実施形態では、BIN1 mRNAまたはタンパク質レベルは、複数のハウスキーピング遺伝子などの複数の内部コントロールを参照して正規化される。一般に、複数の内部コントロールが使用される場合、これらのコントロールの平均発現レベルが、BIN1発現レベルを正規化するために使用される。
【0066】
BIN1発現レベルを使用して、BIN1発現レベルの評価後のある期間にわたる転帰不良のリスク、例えば、その次の1日〜24カ月、例えば、次の6カ月〜12カ月、または12カ月〜18カ月にわたるなどの6カ月〜18カ月にわたるCHF患者に関する転帰不良のリスクを予測することができる。
【0067】
内因性疾患因子(IDF)
内因性疾患因子(IDF)は、コントロール遺伝子(複数可)発現のBIN1発現に対する比として計算される。したがって、IDFは、式:
IDF=[コントロール/BIN1]
(式中、「コントロール」は、1つまたは複数の内部コントロール遺伝子、すなわち、正常なヒト心臓組織に対して罹患ヒト心臓組織において顕著に示差的に発現されない遺伝子(複数可)についての発現値を表す)によって表される。例示的な内部コントロール遺伝子は、CaV1.2、および/またはハウスキーピング遺伝子を含む。
【0068】
IDFCaVは、CaV1.2発現のBIN1発現に対する比として計算されるIDFを指し、式:
IDFCaV=[Cav1.2/BIN1]
によって表される。
【0069】
IDFHKは、ハウスキーピング(HK)遺伝子(複数可)発現のBIN1発現に対する比として計算されるIDFを指し、式:
IDFHK=[HK/BIN1]
によって表される。
【0070】
IDFHKを決定するために使用することができる例示的なハウスキーピング遺伝子は、上述されている。単一のハウスキーピング遺伝子の発現レベルを使用してIDFHKを計算してもよい。代替として、2つ以上のハウスキーピング遺伝子の平均発現レベルを使用してIDFHKを計算してもよい。
【0071】
IDFの分析は、参照IDF値、例えば、正常なIDF値または転帰不良の低いリスクの指標となるIDF値とのIDF値の比較を伴うことができる。正常なIDF値は、機能不全でない心臓組織におけるコントロール遺伝子(複数可)発現のBIN1発現に対する比である。機能不全でない心臓組織は、心臓の肉眼的形態、左室駆出率(LVEF)、心臓カテーテルなどの心臓の健康状態の1つまたは複数のパラメータの検査から、および/または個々のカルテにおいて心臓に関連する状態がないことなどから、その心臓機能が正常であると推論された個体から得られ、例えば、正常な心臓組織は55%以上のLVEFを有する。
【0072】
BIN1発現の減少およびそれに応じて増加するIDF値は、増加する心臓病死亡リスクと正に相関しており、すなわち、IDFが高いほど心臓病死亡リスクは大きい。例えば、正常IDF値の約1.5倍より大きいIDF値は、増加した心臓病死亡リスクの指標となる。したがって、正常なIDF値の、約1.5倍より大きい、または約2倍より大きい、または約3倍より大きい、または約4倍より大きい、または約5倍より大きい、またはそれ以上のIDF値は、増加した心臓病死亡リスクの指標となる。
【0073】
患者のBIN1発現レベルおよびIDF値はまた、閾値と比べて評定することができる。「閾値」または「リスク閾値」は、比較的高リスクの転帰不良を、比較的低リスクの転帰不良と区別するために使用することができる値である。例えば、ほとんどの場合、閾値は、それより上は転帰不良のリスクが比較的高く、それより下は転帰不良のリスクが比較的低い概算値である。例えば、約0.65の正規化されたBIN1発現レベルは、この閾値よりも低い正規化されたBIN1発現レベルを有する心臓病患者は比較的増加した転帰不良のリスクを有し、この閾値以上の正規化されたBIN1発現レベルを有する心臓病患者は比較的減少した転帰不良のリスクを有する、閾値を表す。
【0074】
BIN1発現レベルおよび/またはIDF値を使用して、評価後のある期間にわたる転帰不良のリスク、例えば、次の6カ月〜12カ月、または12カ月〜18カ月にわたるなどの、次の、例えば、6カ月〜18カ月にわたるCHF患者に関する転帰不良のリスクを予測することができる。
【0075】
臨床応用
CHF患者の心臓組織におけるBIN1発現レベルおよび/またはIDF値の決定を使用して、心臓移植を受けることについての患者に対する優先レベルを割り当て、CHF治療に対する反応の評定を容易にし、および/または治療計画の変更の指針となることができる。
【0076】
一般に、BIN1発現が低いほど、および/またはIDF値が高いほど、心臓の回復不良の見込みが高く、したがって、患者は心臓移植を受けることについて高い優先レベルに割り当てられる。代替として、CHF患者が正常なまたは正常に近いBIN発現レベルを有していれば、予想される事柄は、心臓が回復する十分な可能性を有することであり、患者は、心臓移植を受けることについて低い優先レベルに割り当てられる可能性がある。一般に、BIN1発現レベルが低いほど、および/またはIDF値が高いほど、心臓移植を受けることに関する患者の優先レベルは高い。
【0077】
同様に、中程度に減少したBIN1発現および/または中程度に増加したIDF値のみを有する患者において、患者回復を助けるために患者を左室補助デバイスに割り当てる優先順位は増加するであろう。左室補助デバイスの取外しは、BIN発現および/またはIDF値の正規化と時期を合わせることができる。左室補助デバイスにもかかわらず、さらにBIN1発現が減少またはIDF値が増加することにより、この患者の心臓移植のためのリストへの記載が示される。
【0078】
心臓病死亡リスクの決定を使用して、CHF治療の有効性を評定すること、および治療戦略に対する変更を決定することができる。CHF患者は、例えば、手術、機械的補助デバイス、心臓移植、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシン受容体ブロッカー(ARB)、βブロッカー、利尿薬などの薬物療法による、治療を受けていてもよい。CHF治療の有効性は、BIN発現レベルおよび/またはIDF値についてアッセイすることによって評定することができる。一般に、低いBIN1発現、および/または高いIDF値は、心不全の高い見込み、および治療が効果的ではないことを示す。治療有効性のそのような決定を使用して、治療を変更してもよい。例えば、心臓移植に関して高い優先レベルの患者を分類することによって。
【0079】
一方、CHF治療は、BIN発現レベルを安定化させて、正常なまたは正常に近い発現レベルをもたらすことができる。以下の実施例において記載されているように、機能不全心臓が回復するにつれて、BIN1発現レベルは増加する。正常なBIN1発現、および/または正常なIDF値は、心不全の減少した見込み、および治療が効果的であることを示す。この情報は、心臓移植を受けることに関して低い優先レベルの患者を分類するために使用されてもよく、大動脈内バルーンポンプ、心室補助デバイス、静脈内心臓療法などの別の療法を示す可能性がある。
【0080】
正規化されたBIN1発現またはIDF値を使用して、療法の選択肢を決定することができる。例えば、約0.65未満の正規化されたBIN1発現レベルは、転帰不良のリスクと正に相関し得る。約0.65未満の正規化されたBIN1発現レベルは、近い将来、例えば、その次の1日〜24カ月、例えば、1日〜7日、または1週間〜2週間、2週間〜4週間、1カ月〜3カ月、3カ月〜6カ月、6カ月〜8カ月、8カ月〜12カ月、12カ月〜18カ月、18カ月〜24カ月における患者の転帰不良と正に相関し得る。転帰不良は、死亡、LVAD埋込み、またはLVEFの改善なしまたはさらにはLVEFのさらなる悪化であり得る。この情報は、心臓移植を受けることに関して高い優先レベルの患者を分類するために使用されてもよく、大動脈内バルーンポンプ、心室補助デバイス、静脈内心臓療法などの別の療法を示す可能性がある。
【0081】
一方、0.65以上の正規化されたBIN1発現レベルは、心臓病死亡リスクと負に相関し得る。0.65以上の正規化されたBIN1発現レベルは、近い将来、例えば、その次の1日〜24カ月、例えば、1日〜7日、または1週間〜2週間、2週間〜4週間、1カ月〜3カ月、3カ月〜6カ月、6カ月〜8カ月、8カ月〜12カ月、12カ月〜18カ月、18カ月〜24カ月における患者の転帰不良がないことと正に相関し得る。この情報は、心臓移植および大動脈内バルーンポンプ、心室補助デバイス、静脈内心臓療法などの別の療法を受けることに関して低い優先レベルの患者を分類するために使用されてもよく、薬物ベースの療法が患者の心臓機能を安定化させ得ることを示す可能性がある。
【0082】
患者
一般に、本明細書に記載の方法に反応し易い患者は、CHFと診断されたヒト患者である。
【0083】
CHF患者は、末期CHF、または急性電撃性心筋炎、または慢性進行性非虚血性心筋症、もしくは慢性進行性虚血性心筋症と診断された患者、または心臓移植などのCHFの治療を受けているCHF患者(すなわち、心臓移植後患者)または抵抗性CHFの患者などであってよい。
【0084】
キット
本開示の方法において使用するための材料は、よく知られている手順に従って製造されるキットの調製に適している。本開示はしたがって、臨床転帰の予測、治療の選択肢の決定、または治療に対する反応の予測などのためにBIN1の発現を定量するための、遺伝子特異的または遺伝子選択的プローブおよび/またはプライマーを包含していてもよい作用物質を含むキットを提供する。そのようなキットは、任意選択により、心臓組織試料からのRNAの抽出のための試薬および/またはRNA増幅のための試薬を含有していてもよい。加えて、キットは、任意選択により、識別のための記述もしくはラベルまたは本開示の方法におけるそれらの使用に関する使用説明書とともに試薬(複数可)を含んでいてもよい。キットは、例えば、作製済み(pre−fabricated)マイクロアレイ、緩衝液、適切なヌクレオチド三リン酸(例えば、dATP、dCTP、dGTPおよびdTTP;またはrATP、rCTP、rGTPおよびUTP)、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、および1つまたは複数の本開示のプローブおよびプライマーを含む、方法において利用される様々な試薬(典型的には、濃縮された形態で)の1つまたは複数をそれぞれ含む、容器(方法の自動化された実行において使用するのに適したマイクロタイタープレートを含む)を含んでいてもよい。予後のおよび/または予測的な情報を推定または定量するために使用される数学アルゴリズムもまた、当然、キットの潜在的な構成要素である。
【0085】
本開示により提供される方法はまた、全体または一部分において自動化されていてもよい。
【0086】
報告
本開示の方法は、BIN1の発現レベルをアッセイした結果を要約した報告の作成に適している。ある特定の実施形態では、報告は、CHF患者における心臓病死亡リスクの決定を包含していてもよい。本明細書において記載される「報告」は、BIN1発現レベルおよび/または心臓病死亡リスクに関する対象とする情報を提供する報告要素を包含する電子文書または有形の文書である。対象報告は、完全にまたは部分的に電子的に作成されてもよく、例えば、電子ディスプレイ(例えば、コンピュータのモニター)上に提示される。報告はさらに、1)試験設備に関する情報;2)サービス提供者情報;3)患者データ;4)試料データ;5)a)適応;b)試験データ(試験データは1つまたは複数の対象とする遺伝子の正規化されたレベルを包含し得る)を含む様々な情報を包含し得る解釈レポート、および6)別の特徴のうち1つまたは複数を包含することができる。
【0087】
本開示は、したがって、報告およびそれに起因する報告を作成する方法を提供する。報告は、患者の心臓組織から得られる細胞におけるBIN1などの特定の遺伝子についてのRNA転写産物、またはそのようなRNA転写産物の発現産物の発現レベルの要約を包含していてもよい。報告は、心臓病死亡リスクの評価を包含していてもよい。報告は、手術単独または療法と組み合わせた手術などの治療モダリティに関する推奨を包含していてもよい。報告は、電子的フォーマットでまたは紙上で提示されてもよい。本明細書において開示されている方法はさらに、報告を作成または出力するステップを包含することができ、この報告は、電子的媒体(例えば、コンピュータのモニター上の電子ディスプレイ)の形態で、または有形媒体(例えば、紙または別の有形媒体上に印刷された報告)の形態で提供することができる。
【0088】
明確にするために、「クライアント」と互いに交換可能に使用される「ユーザー」という用語は、報告が送信される人または実体を指すことを意味し、以下の、a)試料を採取する;b)試料を処理する;c)試料または処理された試料を提供する;およびd)心臓病死亡リスク評価において使用するためのデータ(例えば、反応指標遺伝子産物(複数可)のレベル;参照遺伝子産物(複数可)のレベル;反応指標遺伝子産物(複数可)の正規化されたレベル)を作成する、のうち1つまたは複数を行う同じ人または実体とすることができることに留意するべきである。場合によっては、試料採取および/または試料処理および/またはデータ作成を提供する人(複数可)または実体(複数可)、および結果および/または報告を受け取る人は異なる人であってもよいが、混乱を回避するために、本明細書において両者とも「ユーザー」または「クライアント」と称される。ある特定の実施形態では、例えば、この方法が単一のコンピュータにおいて完全に実行される場合、ユーザーまたはクライアントは、データ入力およびデータ出力の検証を提供する。「ユーザー」は、医療専門家(例えば、臨床医、検査技師、医師(例えば、心臓専門医、外科医、かかりつけ医)など)とすることができる。
【0089】
ユーザーが方法の一部分を実行するのみの実施形態において、本発明の方法によるコンピュータ化されたデータ処理の後、データ出力を検証する(例えば、完全な報告を提供するための発信前の結果、完全な報告、または「不完全な」報告を検証し、手作業による介入および解釈的報告の完了を提供するなど)個体は、本明細書において「レビュアー」と称される。レビュアーは、ユーザーとは遠隔にある位置に(例えば、ユーザーが位置し得る医療施設とは別々に提供されるサービスに)位置していてもよい。
【0090】
政府の規制または別の制限(例えば、健康状態、医療過誤、または責任保険による要件)が適用される場合、すべての結果は、全面的にまたは部分的に電子的に作成されているかどうかにかかわらず、ユーザーへの発信の前に品質管理ルーチンにかけられる。
【0091】
コンピュータによるシステムおよび方法
本明細書に記載の方法およびシステムは、非常に多くの方法で実行することができる。特に興味深い一実施形態において、この方法は、通信インフラストラクチャー、例えば、インターネットの使用を伴う。いくつかの本発明の実施形態が、下記に論じられている。本発明は、様々な形態のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、プロセッサ、またはそれらの組み合わせで実行されてもよいこともまた理解されるべきである。本明細書に記載の方法およびシステムは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせとして実行することができる。ソフトウェアは、プログラム記憶デバイスにおいてタンジブルに組み入れられているアプリケーションプログラム、またはユーザーのコンピュータ使用環境において(例えば、アプレットとして)およびレビュアーが関連付けられたリモートサイトに(例えば、サービス提供者の施設に)位置していてもよいレビュアーのコンピュータ使用環境において実行されるソフトウェアの異なる部分として実行することができる。いくつかの実施形態において、BIN1発現レベルを使用してCHF患者における心臓病死亡リスクを決定するステップは、リスクを計算するためのアルゴリズムを実行するようにプログラムされたコンピュータによって実施される。別の例において、対象方法は、コンピュータに、BIN1の発現レベルに基づいてCHF患者における心臓病死亡リスクを計算するためのアルゴリズムを実行させるステップを包含する。
【0092】
本明細書に記載のアルゴリズムを実行するためのアプリケーションプログラムは、任意の適したアーキテクチャを備えたマシンによって、アップロードおよび実行することができる。一般に、このマシンは、1つまたは複数の中央処理ユニット(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、および入力/出力(I/O)インターフェース(複数可)などのハードウェアを有するコンピュータプラットホームを伴う。このコンピュータプラットホームはまた、オペレーティングシステムおよびマイクロ命令コードを包含する。本明細書に記載の様々な処理および機能は、オペレーティングシステムを介して実行されるマイクロ命令コードの一部またはアプリケーションプログラムの一部(またはそれらの組み合わせ)のいずれかであってもよい。加えて、様々な別の周辺デバイスが、さらなるデータ記憶デバイスおよび印刷デバイスなどのコンピュータプラットホームと接続されていてもよい。
【0093】
コンピュータシステムとして、システムは、一般に、プロセッサユニットを包含する。プロセッサユニットは、動作して、試験データ(例えば、反応指標遺伝子産物(複数可)のレベル;参照遺伝子産物(複数可)のレベル;反応指標遺伝子産物(複数可)の正規化されたレベル)を包含し得る;また、患者データなどの別のデータも包含していてもよい情報を受信する。受信したこの情報を、データベースにおいて少なくとも一時的に保管することができ、データを分析して上記の報告を作成する。
【0094】
入力および出力データの一部またはすべてはまた、電子的に送信することができ、特定の出力データ(例えば、報告)は、電子的にまたは電話によって(例えば、ファクシミリによって、例えば、ファックスバックなどのデバイスを使用して)送ることができる。例示的な出力受信デバイスは、表示要素、プリンタ、ファクシミリデバイスなどを包含することができる。送信および/または表示の電子的形態は、電子メール、対話式テレビなどを包含することができる。特に興味深い一実施形態において、入力データのすべてまたは一部および/または出力データのすべてまたは一部(例えば、通常、少なくとも最終の報告)が典型的なブラウザとのアクセス、好ましくは機密アクセスのためにウェブサーバー上に維持される。データは、必要に応じて、アクセスする、または医療専門家に送ることができる。最終報告のすべてまたは一部を包含する入力および出力データを使用して、医療施設の機密データベース中に存在し得る患者のカルテを追加することができる。
【0095】
本明細書に記載の方法において使用するためのシステムは、一般に、少なくとも1つのコンピュータプロセッサ(例えば、方法が全体として単一の場所で行われる場合)または少なくとも2つのネットワーク化されたコンピュータプロセッサ(例えば、データがユーザー(本明細書において「クライアント」とも称される)によって入力され、解析のためにリモートサイトの第2のコンピュータプロセッサに送信される場合、このとき、第1および第2のコンピュータプロセッサは、ネットワークによって、例えば、イントラネットまたはインターネットを介して接続されている)を包含する。システムはまた、入力のためのユーザーコンポーネント(複数可);ならびにデータ、作成された報告、および手作業による介入の検証のためのレビュアーコンポーネント(複数可)を包含することができる。システムのさらなるコンポーネントは、サーバーコンポーネント(複数可);およびデータを保存するためのデータベース(複数可)(例えば、報告要素、例えば、解釈的報告要素のデータベース、またはユーザーによるデータ入力およびデータ出力を包含することができるリレーショナルデータベース(RDB)のような)を包含することができる。コンピュータプロセッサは、パーソナルデスクトップコンピュータ(例えば、IBM、Dell、Macintoshなど)、携帯用コンピュータ、メインフレーム、ミニコンピュータ、または別のコンピュータデバイスにおいて典型的に見出されるプロセッサとすることができる。
【0096】
ネットワーク化されたクライアント/サーバーアーキテクチャは、必要に応じて選択することができ、例えば、伝統的な2層または3層クライアントサーバーモデルとすることができる。リレーショナルデータベース管理システム(RDMS)は、アプリケーションサーバーコンポーネントの一部または別個のコンポーネント(RDBマシン)のいずれかとして、データベースにインターフェースを提供する。
【0097】
一例において、このアーキテクチャは、データベース中心のクライアント/サーバーアーキテクチャとして提供され、このアーキテクチャにおいて、クライアントアプリケーションは、一般に、データベース(または、データベースサーバー)への要求を行い、必要に応じて様々な報告要素と、特に解釈的報告要素、特に解釈テキストおよび警告とともに報告を追加するアプリケーションサーバーからのサービスを要求する。サーバー(複数可)(例えば、アプリケーションサーバーマシンの一部または別個のRDB/リレーショナルデータベースマシンのいずれかとして)は、クライアントの要求に応じる。
【0098】
入力クライアントコンポーネントは、最大範囲の能力およびアプリケーションを実行するための特徴を提供する、完全な独立型のパーソナルコンピュータとすることができる。クライアントコンポーネントは、通常、任意の所望のオペレーティングシステムのもとで動作し、通信エレメント(例えば、モデムまたはネットワークに接続するための別のハードウェア)、1つまたは複数の入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、キーパッド、または情報またはコマンドを転送するために使用される別のデバイス)、記憶エレメント(例えば、ハードドライブまたは別のコンピュータで読取り可能な、コンピュータで書き込み可能な記憶媒体)、および表示エレメント(例えば、モニター、テレビ、LCD、LED、または情報をユーザーに伝達する別の表示デバイス)を包含する。ユーザーは、入力デバイスを介してコンピュータプロセッサに入力コマンドを入力する。一般に、ユーザーインターフェースは、ウェブブラウザアプリケーション用のグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)である。
【0099】
サーバーコンポーネント(複数可)は、パーソナルコンピュータ、ミニコンピュータ、またはメインフレームとすることができ、データ管理、クライアント間の情報共有、ネットワーク管理運営およびセキュリティを提供する。アプリケーションおよび使用される任意のデータベースは、同じまたは異なるサーバー上にあってよい。
【0100】
メインフレームなど単一のマシン、マシンの集合体、または別の適当な構成における処理を含む、クライアントおよびサーバー(複数可)のための別のコンピュータの配置が想定される。一般に、クライアントおよびサーバーマシンは、一緒に作動して、本開示の処理を達成する。
【0101】
使用される場合、データベース(複数可)は、通常、データベースサーバーコンポーネントと接続されており、データを保持する任意のデバイスとすることができる。例えば、データベースは、コンピュータ(例えば、CDROM、内蔵ハードドライブ、テープドライブ)用の磁気記憶デバイスまたは光学記憶デバイスであってよい。データベースは、サーバーコンポーネントの遠隔(ネットワーク、モデムなどを介するアクセスによって)に、またはサーバーコンポーネントのローカルに位置することができる。
【0102】
システムおよび方法において使用される場合、データベースは、データ項目間の関係に従って構成およびアクセスされるリレーショナルデータベースとすることができる。リレーショナルデータベースは、一般に、複数のテーブル(実体)で構成される。テーブルの行は、レコード(別個の項目についての情報の集合)を表し、列は、フィールド(レコードの特定の属性)を表す。その最も単純な概念において、リレーショナルデータベースは、少なくとも1つの共通フィールドを介して互いに「関連付けられる」データエントリーの集合である。
【0103】
コンピュータおよびプリンタを備え付けたさらなるワークステションが、データを入力するための、および、いくつかの実施形態において、所望であれば、適切な報告を作成するための、サービスの時点で使用されてもよい。コンピュータ(複数可)は、アプリケーションを起動するためのショートカット(例えば、デスクトップ上の)を有することにより、必要に応じて、データエントリー、送信、解析、報告の受取などの開始を容易にすることができる。
【0104】
コンピュータで読取り可能な記憶媒体
本開示はまた、コンピュータ使用環境において実行されるときに、本明細書において記載されている通りに心臓病死亡リスクの計算のすべてまたは一部を行うためのアルゴリズムの実行を提供するプログラムが保存されている、コンピュータで読取り可能な記憶媒体(例えば、CD−ROM、メモリーキー、フラッシュメモリーカード、ディスケットなど)を想定する。コンピュータで読取り可能な媒体が本明細書に記載の方法を行うための完全なプログラムが入っている場合、プログラムは、出力を収集、解析、および作成するためのプログラム使用説明書を包含し、一般に、本明細書に記載の通りユーザーと情報交換するため、解析情報とともにそのデータを処理するため、そのユーザーのための独自の印刷媒体または電子的媒体を作成するための、コンピュータで読取り可能なコードデバイスを包含する。
【0105】
記憶媒体が、本明細書に記載の方法の一部の実行を提供するプログラム(例えば、本方法のユーザー側の態様(例えば、データ入力、報告受取能力など))を提供する場合、プログラムは、遠隔地のコンピュータ使用環境への、ユーザーによるデータ入力の送信(例えば、インターネットを介して、イントラネットを介して、など)を提供する。データの処理または処理の完了を、遠隔地で行い、報告を作成する。報告および完全な報告を提供するための任意の必要とされた手作業による介入の完了の検証後、次いで、完全な報告が、電子文書または印刷文書(例えば、ファックスまたは郵送される紙の報告)としてユーザーに送り返される。本発明に従うプログラムの入っている記憶媒体は、適した基板またはそのような使用説明書を得ることができるウェブアドレス上に記録された使用説明書(例えば、プログラムインストール、使用に関するものなど)とともにパッケージ化することができる。コンピュータで読取り可能な記憶媒体はまた、対象方法のアッセイステップを行うための1つまたは複数の試薬(例えば、プライマー、プローブ、アレイ、または別のそのようなキットコンポーネント)と組み合わせて提供することもできる。
【実施例】
【0106】
以下の実施例は、本発明の製造方法および使用方法の完全な開示および説明を当業者に提供するために記載され、本発明者らが本発明者らの発明とみなすものの範囲を限定することを意図せず、以下の実験がすべての実施された実験である、または実施された実験が以下の実験だけであることを表すこともまた意図しない。使用される数字(例えば、量、温度など)に関して精度を確実にするための努力がなされたが、いくらかの実験的誤差および偏差が計上されるべきである。別途指示されない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度である。
【0107】
材料および方法
プラスミド、細胞培養、およびトランスフェクション。ヒトBIN1(アイソタイプ8)cDNAは、Origeneから入手した。次いで、全長BIN1〜8(1〜454aa)およびBIN1−BAR*(1〜282aa)を増幅し、Gateway BPクローニングを使用してpDONR/Zeo(Invitrogen)中にクローニングして、エントリークローンを作製した。その後遺伝子を、Gateway LRクローニングによってpDest−eGFP−N1、pDest−mCherry−N1(もとはClontechから入手した、変換されたベクター)、およびpcDNA3.2−V5−Dest中に挿入した。ヒトCaV1.2は、Origeneから入手した。ヒトβ2bおよびウサギα2δ1は、Michael Sangunetti博士により提供された。APC−GFPは、Torsten Wittmann博士により提供された。N末端GFP−CaV1.2は、Kurt Beam博士により提供され、C末端CaV1.2−GFPは以前に記載されている(Takahashiら、2004)。ドミナントネガティブAPC(APC1〜1450aa)は、Ken Kaplan博士により提供された。
【0108】
HeLa細胞およびマウス心房HL−1細胞を、DMEMおよびClaycomb培地中で標準的な哺乳動物細胞条件下で培養した。HeLa細胞におけるcDNAトランスフェクションには、FuGene6(Roche)を使用した。HL−1細胞におけるcDNAトランスフェクションには、リポフェクタミン(Invitrogen)を、プラス試薬と共に使用した。
【0109】
免疫染色および電子顕微鏡法。以前に記述されているWGA標識化(4%PFA、室温)を除き、すべての免疫細胞化学で、冷メタノール固定(Shawら、2007)を使用した。免疫組織化学のために、凍結切片を氷冷したアセトン中で10分間固定した。EMタンニン酸標識化のために、細胞を1.2%グルタルアルデヒドで、0.5 1mg/mlタンニン酸の存在下で固定した。免疫標識化のために、マウス心筋細胞懸濁液を、2%パラホルムアルデヒド中で、0.1%グルタルアルデヒドで2時間、室温で固定し、次いで、120mMリン酸ナトリウム緩衝液中で洗浄し、ペレットにした。次いで、ペレットをPVPスクロース中に浸透させ、マウントし、液体窒素中で凍結させた。凍結切片の免疫金標識化は、記載されている通り実施した(Butlerら、1997)。マウス抗BIN1抗体は、Sigmaから入手した。CaV1.2では、Alamoneのウサギ抗CaV1.2を使用した。
【0110】
広視野の落射蛍光、TIRFおよび回転ディスク共焦点顕微鏡法。すべての画像化を、100×1.49NA TIRF対物レンズを有するNikon Eclipse Ti顕微鏡およびNIS Elementsソフトウェアにおいて実施した。広視野の落射蛍光画像のデコンヴォリューションは、Autoquantソフトウェア(Media Cybernetics)を使用して実施した。DPSSレーザー(486,561,647nm)とともにレーザーマージモジュール5(Spectral applied research、CA)を、TIRFおよび共焦点(Yokogawa、CSU−X1)画像化の光源として使用した。多波長TIRFは、Dual−Viewエミッションスプリッター(Optical Insights)によって達成した。APCおよびBIN1の微速度連続撮影は、BIN1およびAPCについてそれぞれ1フレーム当たり200msおよび400msの曝露で、1秒当たり2フレームの連続的な速度で取得した。高解像度Cool SNAP HQ2カメラおよび高感度Cascade II 512カメラ(Photometrics)を、画像取込みのために使用した。
【0111】
ヒト組織採取および心筋細胞単離。カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)治験委員会の承認を得て、UCSFで移植時に切除された心臓由来の、または心臓が移植されない臓器ドナー由来の組織を得た。すべてのUCSF移植レシピエントから、手術の前に完全なインフォームドコンセントを得た。カリフォルニア移植ドナーネットワーク(California Transplant Donor Network)(CTDN)は、使用されないドナー心臓を提供し、それらの使用に関して近親者からインフォームドコンセントを得た。
【0112】
冷却心筋保護液によりすぐに灌流した後、左室自由壁の全層試料を、すべての心外膜脂肪から取り除き、後のタンパク質およびmRNA解析のために液体窒素中に瞬間凍結した。免疫組織化学のために、さらなる切片を、OCT培地中に包埋し、液体N2冷却されたイソペンタン中で凍結させた。心筋細胞単離では、以前に報告された方法(Beuckelmannら、1991)を変更して、予め加温したコラゲナーゼII(2mg/ml、Worthington)による37℃でカルシウムを含まないKHB溶液(134mM NaCl、11mMグルコース、10mM Hepes、4mM KCl、1.2mM MgSO、1.2mM NaHPO、10mM BDM、0.5mg/ml BSA、pH7.4)(Diplaら、1998)中での消化のために、心室自由壁試料を約1mm3切片に切断した。解離した心筋細胞を、免疫細胞化学のための固定の前に、ラミニンをプレコートされたガラス製カバースリップに接着させた。
【0113】
成体マウス心筋細胞の単離および培養。以前に記述されている方法(O’Connellら、2007)によるコラゲナーゼII(Worthington、Lakewood、NJ)を用いた解離の後、マウス心室筋細胞を、雄の成体C57/黒色マウス(8〜12週;Charles River)から単離した。表面ビオチン化実験では、心筋細胞を、ラミニンをプレコートされた培養皿に接着させ、初代心筋細胞用培地(ScienCell)中で、37℃および5%COのインキュベーターにおいて終夜、30μMノコダゾールありまたはなしで20μM Dynasoreの存在下で培養した。
【0114】
CaV1.2の表面ビオチン化。処理の後、細胞を迅速に洗浄し、氷冷した1mg/ml EZ−linkTM Sulfo−NHS−SS−ビオチン(Pierce)とともに25分間インキュベートした。2×5分間の、100μMグリシンによる結合していないビオチンの失活の後、細胞を洗浄し、Complete Miniプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を添加したRIPA緩衝液(50mM Tris pH7.4、150mM NaCl、1mMのEDTA、1%Triton X−100、1%デオキシコール酸ナトリウム、2mM NaF、200μM NaVO)中で溶解させた。総タンパク質濃度を決定し、試料間で正規化した。次いで溶解物を、予洗したNeutrAvidinコートビーズとともに4℃で終夜インキュベートした。洗浄後、結合している表面タンパク質を溶出し、変性させ、NuPageゲル(Invitrogen)上で分離し、ウサギ抗CaV1.2抗体(Alomone)でプローブした。
【0115】
共免疫沈降。Hela細胞を、制御β2bおよびa2δ1サブユニットならびにBIN1−V5に加えて、ヒトCaV1.2とともに同時トランスフェクトし、回収し、Complete Miniプロテアーゼ阻害剤カクテルを添加した1%Triton X−100 Co−IP緩衝液(50mM Tris pH7.5、150mM NaCl、2mM EDTA、2mM EGTA、1mM DTT、1mM NaF、100μM NaVO、1%Triton X−100)中で溶解させた。次いで溶解物を、rec−タンパク質−G−セファロース(Invitrogen)による1時間のプルダウンの前に、マウス抗V5抗体(2μg)または等量の非特異的マウスIgGのいずれかとともに2時間インキュベートした。洗浄したビーズに結合している物質を溶出し、変性させ、分離し、CaV1.2(Alomone)またはV5(Sigma)に対するウサギ抗体でプローブした。
【0116】
遺伝子発現の定量。ヒトCaV1.2のリアルタイムPCRのためのTaqManプライマー/プローブセット(5’FAM/3’BHQ;Applied Biosystems)、BIN1、遺伝子は、Primer Express(Applied Biosystems)を使用して得た。全RNAを、TRIzol(Invitrogen)抽出、その後のPureLinkTM RNAミニキット(Invitrogen)による精製およびTurbo DNase(Ambion)での処理によって左室自由壁から単離および精製した。第1の鎖cDNA合成は、Superscript First−Strand Synthesis System(BioRad)およびオリゴdTプライマーを使用して実施した。定量的リアルタイムPCR反応を、Platinum qPCRミックス(Applied Biosystems)を使用して384ウェルフォーマットにおいて、10μlの全反応体積でABI 7900HT(Applied Biosystems)において実施した。絶対的遺伝子発現は、PP1A、ユビキチン、EEFA1、PRL13A、およびHRPT1をコントロール遺伝子として(Dolganovら、2001)(Butlerら、1997)使用するDolganovらの方法を使用して定量した。BIN1およびCaV1.2のプライマープローブは、Applied Biosystemsから入手した。BIN1発現レベルの定量では、TaqMan(登録商標)Gene Expression Assay、アッセイID Hs01120898_m1を使用した。このアッセイは、BIN1転写変異体8および9を検出する。CaV1.2発現レベルの定量では、TaqMan(登録商標)Gene Expression Assays、アッセイID Hs00167681_m1を使用した。ハウスキーピング遺伝子では、以下のプローブを使用した:RPL13A−TMP:CAGAGCGGCCTGGCCTCGCT(配列番号7)、ユビキチン−TMP:TGAGCTTGTTTGTGTCCCTGTGGGTG(配列番号8)、EEF1A1−TMP:CACTGGCATTGCCATCCTTACGGG(配列番号9)、およびPPIA−TMP:ATGGCAAATGCTGGACCCAACACA(配列番号10)。
【0117】
心臓駆出率の定量。患者の胸部に置かれたプローブからの超音波を使用することからなる、心臓における経胸壁心エコーを実施した。超音波を使用して、心臓の1次元の断面および2次元の断面を構築した。臨床用心エコーマシン(例えば、Acuson)における標準的なボリュームレンダリングソフトウェアは、この断面から左心室の体積をコンピュータ計算する。駆出率は、心収縮中および心弛緩中の体積の差異を心弛緩時の体積で割ったものである。正常な駆出率は、約55〜60%である。
【実施例1】
【0118】
CaV1.2は、機能不全心臓において細胞内分布を有する
それぞれの拍動に必須のプロセスである心臓興奮収縮(EC)連関は、筋細胞の電気的興奮をその機械的な収縮に結び付ける。EC連関は、CaV1.2チャネルを介する局所的なカルシウムの流入から始まり、次いで、これは細胞内筋小胞体によるカルシウムの多量の放出を引き起こす(Fabiato、1983)。筋小胞体(SR)上のリアノジン受容体は、局所的なカルシウムセンサーおよび放出チャネルである(Chengら、1993;Inuiら、1987;Pessahら、1985)。心室の心筋細胞において、効率のよいカルシウム誘導性カルシウム放出(CICR)のためにCaV1.2チャネルとリアノジン受容体の密接な会合が必要である(Bers、2002)。同時CICRは、10〜25のL型カルシウムチャネルおよび100〜200のリアノジン受容体が同時に生じ、互いに協調するEC連関においてに起こる(Bers、2001)。SRに結合したリアノジン受容体に局所的に接近するために、CaV1.2チャネルは、筋繊維鞘のT細管陥入上に必然的に集中する(Scrivenら、2000)。CaV1.2チャネルの位置がT細管に集中することが明らかに必要であるにもかかわらず、CaV1.2チャネルが、膜のこれらの領域に輸送および局在化される機構はほとんど知られていない。
【0119】
機能不全心臓において、心室心筋細胞の細胞内カルシウム過渡現象は、低振幅および緩やかな下降を有し(Beuckelmannら、1992;Gwathmeyら、1987;Sipidoら、1998)、収縮の障害をもたらす(Hardingら、1994)。カルシウム除去における機能障害(Hasenfuss、1998;Hasenfussら、1999)、より最近では、リアノジン放出チャネルのリン酸化および機能障害(Lehnartら、2005;Marxら、2000)を含む、CaV1.2によるカルシウム流入の下流の多数の因子が、カルシウム過渡現象の変化に寄与する機能不全の筋肉において特定されている。非同時性CICRが、機能不全の心筋細胞において存在し、機能不全心臓における不完全なEC連関の増進に寄与する可能性があるという報告もまた存在している(Gomezら、1997;Litwinら、2000)。
【0120】
拡張型心筋症筋肉におけるCaV1.2チャネル発現の報告は、CaV1.2が変化しないものから減少しているものまで大きく異なる(Hullinら、1999;MewesおよびRavens、1994;Schroderら、1998)。末期の非虚血性拡張型心筋症を有する移植レシピエントの新たに外植された心臓および移植に使用することができない臓器ドナーの機能不全でない心臓を得た。心筋保護液ですぐに灌流後、心室切片を凍結し、心室心筋細胞もまた単離した。凍結切片の免疫組織化学は、CaV1.2およびT細管のマーカー、T細管形成タンパク質BIN1)の染色を示す(Leeら、2002)。機能不全でない心筋では、CaV1.2分布は、BIN1で印を付けたT細管に沿ってよく組織化されている。しかし、機能不全の心筋では、T細管のBIN1分布は、CaV1.2に沿って妨害されている。興味深いことに、図1Aに示しているデータは、CaV1.2発現は、機能不全の心筋においてmRNAおよびタンパク質レベルの両方で変化していないことを示す。これらのデータは、機能不全の心筋において、発現レベルではなくCaV1.2の細胞分布が変化していることを示す。
【0121】
CaV1.2の細胞分布をよりよく理解するために、単離ヒト心筋細胞を染色し、回転ディスク共焦点顕微鏡で0.1μmのZ深度増分で画像化した。心筋細胞のZ軸断面図を、もとのzスタックから作成し、側面画像で示した。細胞端から2μm以内の細胞周辺の蛍光強度を定量し、全細胞蛍光強度に対して正規化し、下部右のパネルに示した。周辺蛍光シグナルは、機能不全の心筋細胞において顕著に減少した。3次元ボリュームビューおよびZ軸断面図を、図1Bに示している。機能不全でない心筋細胞(左)の小区画において見られるように、CaV1.2はT細管に集中しており、一方、罹患心筋細胞においてCaV1.2は細胞内分布を有し、特徴的なT細管の陥入はなくなっている。周辺CaV1.2の定量は、CaV1.2の周辺(T細管の集中している細胞端から2μm以内)の割合が、機能不全の心筋細胞において顕著に減少していることを示す。機能不全の心筋細胞におけるCaV1.2細胞内取込みもまた、完全な360度回転で見ることができる。CaV1.2タンパク質およびmRNAが変化していない(図1A)とすれば、機能不全の心筋細胞におけるL型カルシウムチャネルの細胞内取込みは、チャネルの不適切なポストゴルジ輸送を示す。
【実施例2】
【0122】
BIN1はCaV1.2をT細管に標的化させる
T細管膜へのCaV1.2標的化の機構を調査した。単離された機能不全でないヒト心筋細胞およびマウス心筋細胞の両方におけるBIN1およびCaV1.2の共染色は、BIN1がT細管の輪郭を示し、CaV1.2がそのような陥入に沿って集中し、BIN1と共局在化することを示す。より高解像度で画像化するために、二重免疫金標識化を用いる透過型電子顕微鏡法を使用して、成体マウス心筋細胞のT細管超微細構造においてCaV1.2およびBIN1を特定した。図2Aの代表的な画像は、BIN1(小さい10nmの点)およびCaV1.2(大きい15nmの点)が互いに10〜50nmの範囲内に集中および密集し、T細管膜構造において生じていることを示す。
【0123】
CaV1.2が、T細管で細管形成タンパク質BIN1と密接に会合しているとすれば、BIN1がCaV1.2のT細管への送達を特異的に誘引することが可能である。この可能性を、T細管形成能を有さないが内因性のCaV1.2(*)を発現する心房筋細胞細胞型HL−1細胞、およびT細管もCaV1.2も有さない非筋細胞Hela細胞におけるBIN1とCaV1.2の間の会合を研究する還元主義者の手法を使用して試験した。両方の細胞系において、外因性BIN1は、発生期のT細管様膜陥入を誘導することができる。HL−1細胞において、固定細胞の免疫細胞化学は、内因性CaV1.2が、外因性BIN1と共局在化することを示す。また、BIN1は、T細管様構造と一致する線状のトラックを形成する(Leeら、2002)。
【0124】
同様な共局在化の結果が、外因性BIN1およびCaV1.2でトランスフェクトされた非筋細胞Hela細胞で得られた。CaV1.2の表面発現を、画像化深度をカバーガラスの50〜100nm以内に限定する全内部反射蛍光(TIRF)顕微鏡法を使用して評価した。スペクトルの異なるフルオロフォアでタグ付けしたCaV1.2およびBIN1を使用して、短時間の低速度撮像を実施した。結果は、膜表面で、BIN1に誘導される構造が表面CaV1.2を誘引し、それによりカルシウムチャネルの局所的な集中を引き起こすことを示す。HeLa細胞データは興味深く、別の筋細胞構造の非存在下、ならびに内因性CaV1.2の非存在下において、膜アンカリングタンパク質BIN1およびCaV1.2は過剰発現されたときにもやはり集まるであろうことを示す。Hela細胞におけるBIN1とCaV1.2の間の密接な生化学的会合は、V5タグ付きBIN1およびCaV1.2に対してプローブされたものの明白な共免疫沈降によってさらに支持される(図2B)。
【実施例3】
【0125】
CaV1.2はT細管ではなくBIN1に標的化される
CaV1.2標的化のために十分であるのはBIN1タンパク質またはT細管構造であるかどうかを決定した。野生型BIN1(BIN1−WT、1−454aa)は、N末端BARドメイン、その後に、リン脂質結合およびT細管形成のために必要とされるエクソン10によってコードされている15アミノ酸(aa)、コイルコイルド連結ドメイン、およびタンパク質間相互作用のためのC末端SH3ドメインを有する(図3A)(Leeら、2002;Nicotら、2007)。膜陥入を誘導する能力を保持する、以前に公開されているC末端切断型BIN1−BAR*(1〜282aa、BAR+エクソン10)を作製した(Leeら、2002)。BIN1−BAR*は、内因性CaV1.2を、HL−1細胞のものなどの発生期のT細管構造に誘引することができない。BIN1−WTでトランスフェクトされたHL−1細胞において、内因性CaV1.2は、BIN1構造に沿って分布している。対照的に、BIN1−BAR*でトランスフェクトされた細胞において、CaV1.2は、BIN1構造との不十分な共局在化を示す。CaV1.2表面標的化に対するBIN1−WTおよびBIN1−BAR*の影響を、生化学的表面ビオチン化アッセイによってさらに試験した。図3Bのデータが示すように、BIN1−BAR*とは異なり、BIN1−WTはCaV1.2の表面発現を誘導する。アッセイは、CaV1.2のT細管標的化が完全長BIN1を必要とし、BIN1−BAR*により誘導されるT細管構造は、CaV1.2を誘引するのに十分ではないことを示す。
【実施例4】
【0126】
機能不全の心筋細胞はBIN1の発現量が少なく、薄いT細管を有する
BIN1はT細管を発生させ、CaV1.2をT細管に標的化する(図3)ので、機能不全の心筋細胞におけるCaV1.2の細胞内取込み(図1)が異常なBIN1発現の結果であるかどうかを決定した。BIN1 mRNAおよびタンパク質発現を、機能不全ヒト心臓において定量的RT−PCRおよびウェスタンブロットによって、それぞれ測定した。機能不全でない心臓組織と比較して、機能不全の心筋は、顕著により低いBIN1のメッセージおよびタンパク質レベルを有する(図4A)。単離ヒト心筋細胞をまた使用して、細胞レベルでBIN1発現も評価した。断面図においてBIN1染色によって示された細管のBIN1発現およびT細管の深さを定量し、まとめた(図4B)。断面図において示されるように、ヒト機能不全心筋細胞は、T細管に沿ってはるかに低いBIN1発現を有する。T細管におけるBIN1シグナルの定量は、機能不全の心筋細胞が、少ないBIN1シグナルおよびより薄いT細管を有することを示す。小麦胚芽凝集素(WGA)による膜標識化の3次元再構成は、機能不全の心筋細胞におけるT細管ネットワークの崩壊を裏付ける。断面図は、機能不全の心筋細胞が、より薄い縮小したT細管を有することを示す(図4B、下の列)。要約すると、図1〜4のデータは、BIN1がT細管形成を誘導し、CaV1.2をT細管膜に標的化し、機能不全の心筋細胞において、BIN1が減少し、薄いT細管および減少した膜結合CaV1.2をもたらすことを示す。
【実施例5】
【0127】
CaV1.2標的化は、APCが先端に結合した微小管を伴う
CaV1.2の輸送における微小管の役割を評価するために、内因性のL型カルシウムチャネル(CaV1.2)を、固定した心房HL−1細胞においてα−チューブリンで共染色し、高解像度画像化(デコンヴォルーション後処理を含む)により検査した。結果は、CaV1.2が、核周囲のゴルジに濃縮されており、微小管ネットワークに沿って分布していることを示す。微小管と結合しているCaV1.2チャネルが膜に輸送されていること(すなわち前方向への輸送)を裏付けるために、HL−1生細胞および成人心筋生細胞を、エンドサイトーシスを妨害するダイナミンGTPase阻害剤である(Maciaら、2006)Dynasoreの存在下で、微小管破壊物質ノコダゾールに曝露させた。表面CaV1.2の発現を、表面ビオチン化によってアッセイした。図5における成人心筋細胞の結果は、微小管破壊が、CaV1.2の膜への前方向輸送の減少をもたらすことを示す。同様な結果が、HL−1細胞における内因性CaV1.2の表面発現について得られた。
【0128】
次に、+TIPタンパク質が、T細管でのBIN1へのCaV1.2送達と関連しているかどうかを評価した。心筋細胞におけるEB1分布は、T細管ではなく介在板において濃縮されていることが見出された。EB1は、典型的には、細胞間境界領域と会合している(Shawら、2007)が、+TIPタンパク質APCは異なる細胞分布を有し(Barthら、2002)、移動細胞の伸長している膜とより多く会合している(Etienne−MannevilleおよびHall、2003;Neufeld and White、1997)。さらに重要なことに、APCは、上皮の細管形成に関与している(Pollackら、1997)。したがって、心筋細胞におけるAPCの分布を調査した。マウス心筋細胞におけるα−チューブリン、APC、およびCaV1.2の三重染色により、APCが、T細管およびZ線の領域に存在すること、およびAPCが先端に結合した微小管が、CaV1.2の集中している領域に頻繁に密集することが明らかとなった。APCが先端に結合した微小管が内因性CaV1.2の送達に関与しているかどうかを試験するために、APCのドミナントネガティブ(Greenら、2005)を、心房HL−1細胞において使用した。表面ビオチン化は、APC機能を妨害することにより、CaV1.2の表面発現が減少することを示した(図6A)。したがって、APCは、CaV1.2チャネルの筋繊維鞘への送達において役割を有する。
【0129】
EB1が先端に結合した微小管をアドヘレンスジャンクション構造に固定し(LigonおよびHolzbaur、2007)、イオンチャネルの送達(Shawら、2007)を容易にすることができると仮定して、生細胞画像化を使用して、APCが先端に結合した微小管をBIN1によって係留することができるかどうかを評価した。Hela細胞を、BIN1−mCherryおよびAPC−GFPでトランスフェクトし、120秒間画像化し、mCherryおよびGFPシグナルの両方を2.5秒の平均フレーム速度で交互に捕捉した。APCが先端に結合した微小管は、典型的には、細胞の前縁部に集中する。画像化の合間の、APCが先端に結合した6つの個々の微小管の経路の手作業によるトレースを得た。APCがBIN1付近にあるとき、APCが先端に結合した微小管は、BIN1構造の周囲にとどまる。対照的に、BIN1構造の存在しない細胞端では、APCが先端に結合した微小管は、係留されることなく、より速い速度でより長い距離運ばれる。APC粒子の経路長および速度の完全なデータ(図6B)は、APCは、微小管をBIN1に係留し、CaV1.2の膜含有BIN1への送達を容易にすることを示す。
【実施例6】
【0130】
LVADを装着した心臓におけるBIN1発現レベル
左室心尖部に左室補助デバイス(LVAD)を入れている末期拡張型心筋症患者の心臓を分析して、BIN1発現レベルを決定した。患者のLV−FWおよびLV−APEXの心筋においてBIN1発現レベルを決定した。この患者は、約6カ月間LVADを装着していた。心疾患以外の理由で死亡した個体の対応する組織におけるBIN1発現レベルもまた決定した。BIN1発現レベルを図7に示している。図7は、心疾患以外の理由で死亡した個体の機能不全でない心臓が、左室自由壁(LVFW)および左室心尖部(A)において匹敵するBIN1発現レベルを示し、一方、左室心尖部にLVADを入れている末期拡張型心筋症患者の心臓が、左室心尖部心臓組織におけるBIN1発現の回復(LVFWと比較して)を示す(B)ことを示す。
【実施例7】
【0131】
IDFCaV1.2値および/またはIDFHK値ならびに心臓の健康状態
IDFCaVは、CaV1.2mRNA発現レベルのBIN1 mRNA発現レベルに対する比である。IDFHKは、HPRT1(または別のハウスキーピング遺伝子)発現レベルのBIN1 mRNA発現レベルに対する比である。IDFCaV値およびIDFHK値を、機能不全心臓および機能不全でない心臓について決定した。IDFCaV値の分析の結果を、図8に示す。図8は、心臓IDFCaVが末期拡張型心筋症の心臓において顕著に高いことを示す。図8(A)は、心疾患以外の理由で死亡した個体の機能不全でない心臓(黒丸)についておよび末期拡張型心筋症患者の機能不全心臓(黒四角)についてのIDFCaVを示す。図8(B)は、心臓のIDFCaVが左室駆出率(LVEF)と相関していることを示す。心疾患以外の理由で死亡した正常コントロール個体の機能不全でない心臓(黒四角)についておよび末期拡張型心筋症患者の機能不全心臓(黒丸)についてのIDFCaVを示す。
【0132】
IDFHK値の解析結果(HPRT1 mRNAのBIN1 mRNAに対する比として測定された)を、図9に示している。図9は、心臓IDFHKが末期拡張型心筋症の心臓において顕著に高いことを示す。図9(A)は、心疾患以外の理由で死亡した正常コントロール個体の機能不全でない心臓(黒丸)についておよび末期拡張型心筋症患者の機能不全心臓(黒四角)についてのIDFHK値を示す。図9(B)は、心臓IDFHKが左室駆出率(LVEF)と相関していることを示す。心疾患以外の理由で死亡した正常コントロール個体の機能不全でない心臓(黒四角)についておよび末期拡張型心筋症患者の機能不全心臓(黒丸)についてのIDFHKを示す。
【実施例8】
【0133】
心不全患者においてBIN1発現は心拍出量と相関している
心内膜心筋生検材料を、臨床評価中、病因不明の心不全の14人の患者の右心室の中隔から得た。これらの患者は、特発性非浸潤性心筋症および減少した心拍出量(4.5L/分未満)を示した。心臓生検材料を、BIN1について、および、試料正規化のために、CaV1.2含有量について定量的免疫組織化学によって分析した。各生検試料について、個々の心筋細胞断面図を、BIN1およびCaV1.2の細胞レベルの測定(少なくとも1試料当たり10個の心筋細胞)のために概略した。図10において見られるように、正規化されたBIN1レベルと心拍出量の間には強い相関関係がある。
【実施例9】
【0134】
BIN1発現は心不全患者における転帰を予測する
心内膜心筋生検材料を入手し、正規化されたBIN1レベルが決定された14人の患者(上記の実施例8を参照されたい)を、6〜18カ月後に追跡調査して、正規化されたBIN1レベルが転帰を予測したかどうかを確かめた。
【0135】
死亡、LVAD埋込み、または25%未満のLVEFは、転帰不良とみなされる。結果を、下記の表1に示す。
【0136】
【表1】

【0137】
低い正規化されたBIN1発現レベルは、転帰不良と正に相関している(表1)。表1は、低いBIN1発現レベルを有する患者が、概して、療法に反応せず、転帰不良を有した、すなわち、死亡、LVEFの改善がなかった、またはLVAD埋込みを必要としたことを示す。一方、高いBIN1発現レベルを有する患者は、概して、転帰不良を示さなかった。
【0138】
追跡調査データに基づいて、0.65未満の正規化されたBIN1値を、カットオフ値であると決定した。0.65未満の正規化されたBIN1発現レベルは、転帰不良について陽性基準を示し、0.65以上の正規化されたBIN1発現レベルは、転帰不良について陰性基準を示した。
【0139】
表2の2×2ボックスを使用して、真の試験陽性(4)を、真の陽性と偽陰性の和(4+2=6)で割ることによって感度を得る。真の試験陰性(7)を、真の陰性と偽陽性の和(7+1=8)で割ることによって特異性を得る。真の試験陽性(4)を、真の陽性と偽陽性の和(4+1=5)で割ることによって陽性予測値を得る。真の試験陰性(7)を、真の陰性と偽陰性の和(7+2=9)で割ることによって陰性予測値を得る。
【0140】
【表2】

【0141】
表2において見られるように、陽性基準は、上記の通り転帰不良の67%を予測する(正規化されたBIN1レベル<0.65)。陰性基準(正規化されたBIN1レベル≧0.65)は、88%の特異性(心臓が少なくとも次の6〜18カ月以内に転帰不良を有さないであろう可能性が88%と解釈される陰性基準)を有する。転帰不良についてのBIN1発現レベルの陽性予測値(PPV)は80%であり、転帰不良なしに関するBIN1発現レベルの陰性予測値(NPV)は78%であった。
【実施例10】
【0142】
機械的補助デバイスを装着した心臓の健康状態の評定
末期拡張型心筋症の患者は、心臓ポンプ機能を援助するために埋め込まれたLVADを有する。患者の心臓が療法により回復しているのかどうか、およびLVADを安全に除去することができるかどうか、または心臓が悪化し続けるかどうかを決定することは、臨床的に困難である。患者は、循環器科の入院患者または循環器チームの治療を受けている外来患者のいずれであってもよいが、心臓カテーテル検査室での心室生検が予定されている。6時間の絶食後、患者をカテーテル検査室に呼び、軽い意識下鎮静ならびに内頸静脈(首)または大腿深静脈(鼠蹊)のアクセスポイントへの局所麻酔薬(リドカイン)をかけた。心臓用バイオトームを導入し、蛍光透視ガイド下で右心室まで進めた。バイオトームを使用して、右心室の単一の生検材料を得て、これを直ちに液体窒素中で瞬間凍結させる。2〜4時間のモニタリングの後、患者は、病室に戻されるか、またはカテーテル検査室から自宅へ退院する。代替として、心臓のバイオトームを、左心室まで進め、次いで、使用して左心室の生検材料を得ることができる。
【0143】
組織試料は、摂氏−80度冷凍庫で保存するか、または直ちに処理する。RNA抽出のための標準的な実験技術を使用して組織を処理し、定量的RTPCR(qRTPCR)によって遺伝子発現を決定する。qRTPCRを使用して、心臓BIN1および/もしくはBIN1および心臓CaV1.2、ならびに/またはBIN1およびHPRT1の発現レベルを測定する。
【0144】
LV−FWと比較した、LV−Apexにおける心臓BIN1の増加した発現は、患者がLVAD治療に反応していることを示す。BIN1発現レベルのその後の決定により、BIN1発現レベルが安定化したことが示されると、患者は治療されたと診断され、LVADは除去される。
【0145】
心臓の健康状態のさらなる指標として、内因性疾患因子(IDF)もまた決定され、臨床的判断のために使用される。IDFCaVは、CaV mRNA発現レベルのBIN1 mRNA発現レベルに対する比である。IDFHKは、HPRT1(または別のハウスキーピング遺伝子)発現レベルのBIN1 mRNA発現レベルに対する比である。大幅に上昇したIDF(例えば、30より大きいIDFCaV(図7)または15より大きいIDFHK(図8)または、コントロールIDFの1.5倍より大きい任意の同様な正規化されたIDF)は、心臓が重度の心不全を有することを示す。大幅に上昇したIDFを有する患者は、長期のLVAD療法を必要とすると診断される。IDFのその後の決定において、高いIDFにより決定されるLVAD療法による改善がないと、心臓移植が勧められる。対照的に、正常なまたは少し上昇したIDFを有する患者(コントロールIDFの1.5倍未満の正規化されたIDF)は、心臓機能の潜在的な回復および、最終的に、LVADの除去の成功を示す。
【0146】
BIN1発現を、心臓組織の生検において、約1カ月の定期的な間隔で測定し、心臓の回復(または悪化)の割合を評定するための傾向を確立する。
【0147】
したがって、BIN1発現レベルおよび/またはIDFを、LVAD療法によって回復することができる心臓とできない心臓を区別することができる。
【実施例11】
【0148】
末期CHF患者におけるBIN1発現レベルの分析
現在利用可能な方法を使用した予後診断は、末期うっ血性心不全の患者には極めて困難である。BIN1発現レベルならびにIDFは、個々の心筋細胞における疾患に関連した変化の程度を定量するため、重度の心不全患者の部分集合における予後のデータを提供する。具体的なの部分集合は、急性劇症心筋炎、慢性進行性非虚血性心筋症、慢性進行性虚血性心筋症、および心臓移植後患者を包含する。
【0149】
患者のこれらの4つの部分集合由来の心内膜心筋組織生検材料を得て、後ろ向き研究を実施する。各患者について、心臓病診断、左室駆出率、年齢、性別、および生検後の生存期間などの心臓病転帰に関するデータを得る。臨床的データが不完全な患者の心臓組織は、研究に含まれていない。
【0150】
生検により得られた組織を、液体窒素中で瞬間凍結させ、上述した通りqRTPCRを実施する。ホルマリン固定されパラフィン包埋された(FFPE)試料として保存された保存心臓組織を、qRTPCRまたは免疫組織化学のいずれかによって分析する。免疫組織化学のために、BIN1および/またはBIN1およびCaV1.2ならびに/またはBIN1およびハウスキーピングタンパク質に対する一次抗体を使用する。遺伝子発現の減少は、免疫組織化学により得られる蛍光の減少に対応する。上述したqRTPCRデータにより得られた比と同様にして、タンパク質レベルの定量的免疫組織化学によってIDFも得る。
【0151】
4つのデータセットのそれぞれならびにこれらのデータセットの組み合わせについて、Kaplan−Meyer曲線などの生存曲線を導く。患者群における生存を追跡し、生検時のBIN1発現レベルまたはIDFと比較する。上昇したIDF(例えば、心臓疾患のないコントロールの1.5より大きい最初の値)を有する患者は、心臓疾患のないコントロールの1.5未満のIDFを有する患者より低い予期される生存率を有する。
【実施例12】
【0152】
心臓の健康状態の診断におけるBIN1発現レベルの使用
急性劇症心筋炎の患者は、心内膜心筋生検に強い適応を有する(巨細胞性心筋炎および好酸球性心筋炎を除外するため)。同様に、末期の虚血性および非虚血性心筋症の患者もまた、移植精密検査の一部として頻繁に生検を受ける。LVAD、右室補助デバイス(RVAD)、または両心室補助デバイス(BiVAD)などの心室補助デバイスを入れている患者は、デバイスを挿入するために除去された心室中心部の大きな生検材料を生じる。さらに、生検材料は、心臓移植後の患者から前臨床の拒絶についての年1回のスクリーニングとして、または急性拒絶を排除する急性代償不全期間中、頻繁に得られる。
【0153】
内因性疾患因子(IDF)は、内部コントロールのBIN1に対する比から得られ、両者はqRTPCRによってアッセイされる。内部コントロールは、HPRT1などのハウスキーピング遺伝子(HK)の標準的なセット、またはCaV1.2である。HK遺伝子およびCaV1.2遺伝子発現レベルは、心不全において影響を受けない。
【0154】
BIN1発現レベルおよび/またはBIN1由来のIDFは、心筋の健康状態の臨床用スナップショットである。大幅に高いIDF(1.5より大きいコントロールIDFと推定された)は、心筋の健康状態不良とともに予後の低い回復を示す。上記の実施例9において論じているように、IDFは、最初の値に基づいて死亡率を予測する(コントロールIDFの1.5より大きいIDFは、高い死亡率と対応する)。心血管治療薬および機械的補助デバイスなどの療法の開始の後に、週に1回または月1回の生検を続けて、回復の進行を追跡することができる。IDFはまた、拒絶反応についてのスクリーニングを必要とする移植後患者においても有用である。現在の生検検査は、生検試料が炎症の徴候および健康な心臓に存在し、かつ拒絶反応を起こしている心臓の特定の試料において存在しない可能性がある免疫細胞について試験されるため、感受性および特異性が比較的低い。心筋細胞自体の細胞生物学的プロセスをアッセイすることによって、BIN発現レベルおよびBIN1に導かれるIDFは、移植片拒絶反応の検出の感受性および特異性の両方を向上させる。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
うっ血性心不全患者における転帰不良のリスクを決定するための方法であって、
患者から得られた心臓組織試料におけるBIN1発現レベルをアッセイするステップと、
BIN1発現レベルを使用して患者の転帰不良のリスクを決定するステップとを含み、BIN1発現レベルの減少が、転帰不良のリスクの増加と正に相関している、方法。
【請求項2】
うっ血性心不全患者が心臓移植を受けており、心臓組織試料が移植された心臓のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
うっ血性心不全(CHF)患者の心臓が、機械的補助デバイスに接続されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
患者が、CHFの治療を受けている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
患者が、免疫抑制療法を受けている、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
アッセイするステップが、BIN1 mRNAのレベルを測定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
アッセイするステップが、BIN1タンパク質のレベルを測定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
CaV1.2発現レベルをアッセイするステップと、アッセイされたCaV1.2発現レベルを使用してBIN1発現レベルを正規化するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
転帰不良が、心臓病死である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
うっ血性心不全患者における転帰不良のリスクを決定するための方法であって、
患者から得られた心臓組織試料におけるBIN1および内部コントロール遺伝子の発現レベルをアッセイするステップと、
内部コントロール遺伝子発現レベルのBIN1発現レベルに対する比を計算することによって内因性疾患因子(IDF)を決定するステップと、
IDFを使用して患者の転帰不良のリスクを決定するステップとを含み、IDFの増加が、転帰不良のリスクの増加と正に相関している、方法。
【請求項11】
内部コントロール遺伝子が、ハウスキーピング遺伝子である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
内部コントロール遺伝子が、CaV1.2である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
アッセイするステップが、BIN1および内部コントロール遺伝子mRNAのレベルを測定するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
うっ血性心不全患者が心臓移植を受けており、心臓組織試料が移植された心臓のものである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
うっ血性心不全(CHF)患者の心臓が、機械的補助デバイスに接続されている、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
患者が、CHFの治療を受けている、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
患者が、免疫抑制療法を受けている、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
転帰不良が、心臓病死である、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A−1】
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【図11A−2】
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【図11B】
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【図12A−1】
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【図12A−2】
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【図12B】
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【図13A−1】
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【図13A−2】
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【図13A−3】
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【図13A−4】
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【図13B−1】
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【図13B−2】
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【公表番号】特表2012−524550(P2012−524550A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507440(P2012−507440)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/032282
【国際公開番号】WO2010/124240
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】