心血管疾患の予測および治療のためのオステオポンチン
心血管疾患の予測および治療のためのオステオポンチン。本発明は、心血管疾患または合併症の治療のための内皮前駆細胞(EPC)およびオステオポンチンの使用に関する。本発明はまた、これらの心血管合併症の発症の危険性のマーカーとしてのEPCオステオポンチンレベルの使用にも関する。特に、本発明は、オステオポンチンおよびオステオポンチンをコードする遺伝子に基づく組成物および方法を提供する。本発明者らは、オステオポンチン欠損が糖尿病性EPC機能不全において機構的な役割を果たすことを示し、糖尿病性血管疾患において標的化できる新たな治療経路を同定した。同様に、本発明者らは、心血管疾患におけるOPNの役割も示した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心血管疾患または合併症の治療のための内皮前駆細胞(EPC)およびオステオポンチンの使用に関する。本発明はまた、これらの心血管合併症の発症の危険性のマーカーとしてのEPCオステオポンチンレベルの使用にも関する。特に、本発明は、オステオポンチンおよびオステオポンチンをコードする遺伝子に基づく組成物および方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
1997年のAsaharaらによる内皮前駆細胞(EPC)の発見は、多くの血管疾患状態(例えば、虚血、再狭窄および肺高血圧)の病因に関する見識を提供してきた1〜6(非特許文献1〜非特許文献6)。Urbichらは最近、内皮細胞へと分化変換する能力を有する高度に増殖性の非内皮細胞としてEPCを規定している7。EPCは、骨髄、末梢血および臍帯血を含む種々の供給源から単離できる8〜10。EPCには2つの表現型(初期対後期のEPC)が存在し、これらは共に別個の増殖能および血管形成能を有する8、11。フィブロネクチンなどのマトリックス分子に接着し、acLDLを取り込み、レクチンを結合する能力は、依然としてEPCについて一般に使用される定義であるが、種々のマーカー(例えば、造血マーカーおよび内皮マーカー)を用いたさらなるフローサイトメトリー分析および免疫染色が、EPCを規定するために益々利用されている12〜15。
【0003】
1型16および2型17、18の糖尿病を有する患者は、健常志願者と比較してEPCの数がより少ない。末梢血管疾患を合併した2型糖尿病を有する患者は、合併症を有さない患者と比較して、EPCの数がさらに少ない18。これらの患者におけるEPC数は、血糖コントロールと逆相関する16〜18。2型糖尿病を有する患者から単離されたEPCでは、活性化した内皮細胞ならびにコラーゲンおよびフィブロネクチンなどのマトリックス分子との接着が低下していた17。両方の型の糖尿病を有する患者由来のEPCは、in vitroで細管を形成する能力が損なわれている16、17。さらに、ストレプトゾトシン誘導された糖尿病マウス由来の骨髄単核細胞は、in vitroでEPCにあまり効率よく分化せず、非糖尿病マウス由来の骨髄単核細胞よりも細管を形成する可能性が低い19。1型糖尿病を有する患者から単離したEPC由来の馴化培地は、血管形成能が低く、in vitroでの細管形成のインヒビターを含む可能性がある16。1型糖尿病を有する患者由来のEPCの表現型はまた、正常血糖条件での培養の後でも依然として変化しない16。
【0004】
オステオポンチン(OPN)は、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)含有糖タンパク質である。オステオポンチンは、細胞移動、細胞生存、免疫細胞機能の調節、石灰化の阻害および腫瘍細胞表現型の制御に関与する23〜25。オステオポンチンは、腫瘍増殖26およびその進行を促進する27。原発性非小細胞肺癌の状況では、OPNの過剰発現は、腫瘍の侵襲性を増加させる28。誘導性のショートヘアピンRNAベクター29、RNA干渉30またはアンチセンスオリゴヌクレオチド31のいずれかによるOPN発現の阻害は、種々の腫瘍の侵襲性を減弱させる。
【0005】
世界中の心血管疾患(CVD)の有病率および致死率は、現在の治療レジメンの効力が無いことの証拠である。多くの心血管疾患における基礎的要素は、機能的な心筋細胞の喪失である。アポトーシスは、多くの心血管状態(例えば、心筋梗塞および心不全)に関連するが、正確な機構は知られていない。本発明者らは、心筋細胞死およびCVDの予防における治療標的としてOPNを同定した。心血管疾患を有する患者における候補遺伝子の発現の管理は、患者の平均余命を大きく増加させ得る。より重要なことには、CVDの素因を有する個体におけるこれらの遺伝子の発現の調節は、この疾患の発症を予防し得る。心筋合併症において、アポトーシスは、損なわれたヒト心臓において繰り返し観察されており、虚血/再灌流(I/R)傷害および心筋症の間の心筋細胞死に寄与する主な要因であることが証明されている(Gottlieb RA、The Journal of Clinical Investigation 1994年、Fliss H、CirculationResearch 1996年)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Asahara Tら、Science(1997)275:964〜7
【非特許文献2】Kalka Cら、Proc Natl Acad Sci USA(2000)97:3422〜7
【非特許文献3】Kubota Yら、Cell Transplant(2003)12:647〜57
【非特許文献4】Griese DPら、Circulation(2003)108:2710〜5
【非特許文献5】He Tら、Stroke(2004)35:2378〜84
【非特許文献6】Takahashi Mら、Tssue Eng.(2004)10:771〜9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、コントロール不良のT1DM心血管疾患を含む心血管疾患を有する患者由来のEPCの数および機能を評価し、心血管疾患の基礎となる機構を理解することである。さらなる目的は、T1DM心血管疾患を含む心血管疾患および結果として生じる糖尿病性潰瘍などの症状の予防および治療において使用するための組成物および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、医薬的に許容される担体または賦形剤と共にオステオポンチンを含む医薬組成物が提供される。このような組成物は、血管疾患、糖尿病関連血管疾患またはこのような疾患から生じる心血管疾患を含む合併症の治療で使用される。このような合併症の一例は足潰瘍であるが、それ以外にも多数存在する。
【0009】
本明細書で使用する場合、用語「心血管疾患または合併症」には、心筋梗塞、虚血、末梢血管疾患、虚血、脳血管疾患、冠血管疾患および心不全などの状態ならびにその基礎となる原因を含む、心血管疾患および糖尿病関連血管合併症が含まれる。このような疾患は、糖尿病、異脂肪血症および高血圧などのこれら血管疾患の危険因子の存在に起因し得る。
【0010】
さらなる態様において、本発明は、医薬的に許容される担体または賦形剤と共に、オステオポンチン遺伝子発現を増大させるように改変された内皮前駆細胞(EPC)または間葉系幹細胞(MSC)を含む、心血管合併症の治療のための組成物を提供する。心血管疾患は糖尿病に関連する場合がある。EPCまたはMSCによるオステオポンチンの過剰発現は、例えばリポソームまたはOPN遺伝子をコードするアデノウイルスで細胞をトランスフェクトすることによって、当業者に公知の種々の方法で達成できる。あるいは、EPCまたはMSCは、活性化されたEPCまたはMSCを提供するために、移植前に組換えOPNとプレインキュベートすることもできる。この文脈では、活性化された幹細胞は、細管を形成する能力をより高めるOPNで予め処理された幹細胞である。このようにOPN欠損細胞にOPNを補充すると、それらの機能が改善される。
【0011】
さらなる実施形態において、EPC/MSC投与と一緒にOPN被覆したステントを使用して、血管形成効果を促進することができる。本発明はまた、医薬的に許容される担体または賦形剤と共に、オステオポンチンをコードする遺伝子または機能的オステオポンチンもコードするその変異体を含む医薬組成物を提供する。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、被験体が、心血管疾患を有するかどうか、または心血管疾患を発症する危険性があるかどうかを決定するための方法を提供し、この方法は、患者におけるオステオポンチン発現レベルを測定し、そのレベルを健康なコントロールのレベルと比較することによる。同様に、本発明は、糖尿病を有する被験体が、血管合併症を有するかどうか、または糖尿病関係血管合併症を発症する危険性があるかどうかを決定するための方法を提供し、この方法は、患者におけるオステオポンチン発現レベルを測定する工程と、そのレベルを健康なコントロールのレベルと比較する工程とを含む。オステオポンチン発現レベルは、患者由来の血液、組織、EPCまたは血清のいずれかにおいて測定することができる。
【0013】
OPNレベルは、高血糖状態で増加する。これは、この状態におけるOPNの保護的役割に関連している可能性がある。EPC中の内因性OPNレベルを測定することは有用であり得る。なぜなら、低いOPNレベル(本明細書で示すような)は、これらの被験体がその合併症がまだ発症していなくても、近い将来糖尿病関係血管合併症を発症する危険性があることを暗示するが、一方で、上昇した内在性OPNレベル(Loomansの論文)は、血管合併症の存在を暗示するからである。OPNレベルは、EPC中で増加して、治療的血管新生を促進する。しかし、EPC数は血管合併症を有する患者において減少するので、これらのEPCにおける内因性OPN発現の増加は、治療的血管新生を強化するのに充分ではない可能性がある。内因性OPNは機能不全であり得る。外因性の機能的OPNが、EPC機能を改善するのに必要である。EPCは、虚血傷害の領域への機能的OPN移行のためのベクターとして機能し得る。機能的OPNを過剰発現しているかまたはOPNによって活性化されたさらなるEPCの使用は、T1DM関係血管合併症の非侵襲的治療のための解決法となる可能性がある。
【0014】
本発明は心血管疾患の治療方法も提供し、この方法は、オステオポンチン、またはオステオポンチンをコードするポリヌクレオチド、オステオポンチンを発現もしくは過剰発現する内皮前駆細胞もしくは間葉系幹細胞、または活性化されたEPCもしくはMSCを患者に投与する工程を含む。このようなEPCまたはMSCおよびオステオポンチンの同時投与もまた、これらの方法で使用できる。オステオポンチンをコードするポリヌクレオチドは、内皮前駆細胞または間葉系幹細胞中に取り込むことができ、こうして生成された形質転換細胞は、糖尿病関係血管合併症を含む心血管疾患の治療のための遺伝子治療技術において有用である。
【0015】
一実施形態において、末梢血管疾患(脚の血管におけるアテローム性動脈硬化症に起因した血流の低下)を有する患者を同定することができ、そのEPCを採血によって収集することができる。OPNの遺伝子を、非ウイルス性またはウイルス性の手段によってEPCに送達することができ、次いでこれらの改変された細胞を患者に送達することができる。患者への送達は、デバイスを使用して脈管構造を介したものでもよく、直接的筋内送達によるものでもよい。同様に、心筋または脳を治療することができるが、後者は血管内送達のみを含む。EPCは、ウイルスにより(例えば、アデノウイルス、レンチウイルスまたはレトロウイルスを介して)改変してもよく、ウイルスによらずに(例えば、エレクトロポレーションまたはリポソーム伝達を介して)改変してもよい。
【0016】
なおさらなる態様において、本発明は、心血管疾患の治療において有用な化合物を同定する方法を提供し、この方法は、その化合物の、そうしなければオステオポンチン発現が下方調節される細胞においてオステオポンチン発現を増大させる能力を評価する工程を含む。OPN発現は、例えば定量リアルタイムPCRまたはELISAを使用して測定できる。心血管疾患の治療において有用な化合物には、糖尿病関係血管合併症の治療において有用な化合物が含まれる。
【0017】
本発明はまた、オステオポンチンに対して惹起された抗体、およびオステオポンチンに対して惹起された抗体で被覆され、活性化されたEPCなどの幹細胞で被覆され、またはオステオポンチンを過剰発現するEPCなどの幹細胞で被覆された医療用デバイスを提供する。MSCも、この方法で使用できる。医療用デバイスは、ステント、縫合糸、絆創膏(bandage)もしくは包帯、またはプロテーゼであってもよい。
【0018】
本発明の方法において、組換えオステオポンチンタンパク質の使用は、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターを使用したオステオポンチンの直接投与によって達成することができ、遺伝子改変された細胞(EPCまたはMSCなど)は、ウイルス的方法または非ウイルス的方法を使用してオステオポンチンを過剰発現するように操作することができる。
【0019】
全体として、本発明者らは、オステオポンチン欠損が糖尿病性EPC機能不全において機構的な役割を果たすことを示し、糖尿病性血管疾患において標的化できる新たな治療経路を同定した。同様に、本発明者らは、心血管疾患におけるOPNの役割も示した。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】T1DMを有する患者および健常志願者におけるEPC数を示す図である。
【図2】T1DMおよび健常志願者におけるコラーゲンに対する接着を示す図である。
【図3】T1DMおよび健常志願者におけるフィブロネクチンに対するEPCの接着を示す図である。
【図4】ヒト臍帯静脈内皮細胞に対するEPCの接着を示す図である。
【図5】Matrigelアッセイを使用した、T1DMを有する患者および健常志願者由来のEPCによって形成された細管の数を示す図である。
【図6】Matrigelアッセイを使用した、糖尿病ウサギおよび非糖尿病ウサギ由来のEPCによって形成された細管数間の比較(9.6+/−1.77対13.0+/−0.65:p=0.049)を示す図である。
【図7】Matrigelアッセイを使用した、非糖尿病ウサギ由来のEPCによって形成された細管の数に対するOPNの効果(13.0+/−0.65対16.5+/−1.15:p=0.039;n=9)を示す図である。
【図8】Matrigelアッセイを使用した、糖尿病ウサギ由来のEPCによって形成された細管の数に対するOPNの効果(9.6+/−1.77対16.6+/−2.19:p=0.010;n=5)を示す図である。
【図9】Matrigelアッセイを使用した、糖尿病ウサギ由来のEPCによって形成された細管の数に対するOPNおよびRGD/RADの効果を示す図である。
【図10】WTマウスおよびOPN−KOマウスにおける手術の前、ならびに直後、7日後、14日後および28日後の数個の時点で記録したLDBFの代表的画像である。
【図11】WTマウスおよびOPN−KOマウスにおける虚血/非虚血LDBF比の定量的分析(各グループにおいてn=5)を示す図である。
【図12】WTマウスおよびOPN−KOマウスにおける片側後肢の誘導の前および3日後の、Sca−1+c−kit+細胞の決定のための、抗Sca−1抗体および抗c−kit抗体を用いた二重染色を示す、代表的サイトグラムである。
【図13】片側後肢虚血の誘導の前および3日後の、WTマウスおよびOPN−KOマウスにおけるEPC数を示す図である。
【図14】シミュレートされた虚血に対して応答した初代新生仔ラット心筋細胞におけるOPN発現のウエスタンブロット分析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
方法
被験体の採用
コントロール不良の1型糖尿病(HbAl/c>10%により規定される)を有する患者であって、1年より長きにわたってインスリンを受けており、他の薬物療法をいずれも受けていない患者を、Diabetes Day Centre、University College Hospital Galway、Irelandから採用した。この研究の倫理的承認は、University College Hospital Galway Clinical Research and Ethical Committeeから得た。微小血管または大血管合併症を有する患者は、この研究から排除した。微小血管合併症は、ミクロアルブミン尿症、糖尿病網膜症および神経障害の存在として定義した。大血管合併症は、急性冠血管症候群、末梢血管疾患および脳血管疾患の任意の以前の病歴の存在として定義した。同意書に署名した後、1型糖尿病を有する患者および健常志願者から末梢血サンプルを採取した。
【0022】
EPCの単離
EPCを、以前に記載した技術に従って培養した。簡潔に述べると、単核細胞(MNC)を、Ficollpaque密度遠心分離法によって単離した。3回の洗浄工程による精製後、10×106または2×106のMNCを、フィブロネクチン被覆した6ウェルプレートまたは4ウェルのガラススライド上にそれぞれ播いた。細胞を、5%FBS、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子−2、上皮増殖因子、インスリン様増殖因子−1およびアスコルビン酸からなるEGM−2シングルアリコート(Clonetics)を補充した内皮細胞基本培地−2(Clonetics)中で培養した。EPCを、DiI−アセチル化低密度リポタンパク質およびFITC−レクチンで二重染色することによって確認した。
【0023】
動物研究
糖尿病を、雄性ニュージーランド白ウサギにおいて、アロキサンの静脈内注射(150mg/kg)を使用して誘導した。血漿グルコース>22のウサギを、研究に含めた。静脈切開術を、麻酔下で辺縁動脈を介して実施した。この研究は、National University Ireland、Galway(NUIG)Animal Care and Use Committeeにより承認された。
【0024】
マトリックス分子に対するEPC接着
フィブロネクチン(100g/mL)で、24ウェルプレート上を、37℃で2時間被覆した。ウェルを、PBS中1%のBSAで2時間ブロッキングし、EPC(1×105)を各ウェルに添加して、1時間接着させた。接着細胞を、0.1%クリスタルバイオレットで染色し、10%酢酸でリンスして、細胞から染色を溶出させた。培地の光学濃度を、600nmの波長でマイクロタイタープレートリーダーを用いて分析することにより、接着細胞を定量した。
【0025】
成熟内皮細胞に対する接着
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の単層を、4ウェルガラススライドの各ウェル中に、2×105細胞(5〜8継代)を播くことによって、アッセイの48時間前に調製した。HUVECを、TNF−α(BD Biosciences)(1ng/mL)または培地によって、12時間にわたり前処理した。EPCをdiIで標識し、1×105細胞を各ウェルに添加し、37℃で3時間インキュベートした。非接着細胞を、PBSを用いて穏やかに除去し、接着EPCを4%パラホルムアルデヒドで固定し、盲検観察者が計数した。
【0026】
Matrigel細管アッセイ
Matrigel(Sigma)を解凍し、4ウェルのガラススライド中に室温で30分間置いて凝固させた。diI標識したEPC(2×104)を、4×104のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)と同時に播き、5μg/mlのOPN(SIGMA)ありまたはなしで、37℃で12時間インキュベートした。細管形成を、その幅に対して4倍の長さを示す構造として規定した。形成した細管の数を、盲検計数者が評価した。オステオポンチンの効果がRGD依存的であるかどうかを決定するために、異なるRGD/RAD濃度を、オステオポンチンと共にインキュベートした。
【0027】
RNA抽出
総RNAを、4日目のEPCから、RNeasy Mini Kit(Qiagen)を業者が記載したとおりに使用して、単離した。単離した総RNAの濃度を、NanoDropカウンターを使用して分析した。QuantIt DNA High Sensitivity Kitを使用して、総RNAサンプル中の任意のゲノムDNAの存在を検出した。
【0028】
マイクロアレイ分析
マイクロアレイ分析を、GeneChip Human Genome U133 Plus 2.0 Affymetrix Arrayを使用して実施した。遺伝子発現プロフィールを、健常志願者由来のEPCをベースラインとし、MAS5.1ソフトウェア(Affymetrix)を使用して、コントロール不良のT1DMを有する患者由来のEPCと健常志願者由来のEPCとの間で比較した。変化倍率を、2つのグループ間の転写物を比較することによって計算した。K平均クラスタリングを使用して、検出された(存在するまたは存在しない)コールおよび変化した(増加または減少した)コールを同定した。
【0029】
プライマー配列
プライマーを、PrimerExpressソフトウェアを使用して設計し、SIGMA Genosysに注文した(表1)。
【0030】
リアルタイムPCR
発現研究を、One Step QuantiTect SYBR Green PCR Kit(Qiagen)を用い、ABl Prism 7000 Sequence Detection System(Applied Biosystems)で、96ウェルプレートを使用して実施した。反応を、僅かな改変を加えて製造業者の指示に従って実施した。PCRプログラムを、25μlのサンプル容量を使用して、逆転写工程のため50℃で30分間で開始し、Taq DNAポリメラーゼの活性化のため95℃で15分間、その後95℃で15秒および60℃で30秒の40サイクルを行った。解離曲線を、60℃と95℃との間の温度範囲を使用したリアルタイムPCRの直後に作成した。各サンプルを3連で分析した。全ての反応をさらに、2%アガロースゲルでの電気泳動に供し、SyBrGreen色素で染色して、予測されたPCR産物の存在を確認した。
【0031】
マウス後肢虚血モデル
C57BL/6(WT)マウスおよびOPN−/OPN−マウスを、Charles River LabおよびJackson Labからそれぞれ購入した。8〜10週齢のOPN−KOマウスおよびWTマウスを使用した。マウスを、Regenerative Medicine Institute(REMEDI)、NCBES、NUIGのAnimal Facilityに収容した。全ての手順は、Cruelty to Animals Act、1876年の下で、Minister of Health and Childrenにより承認された。片側後肢虚血を、以前に記載されたとおりに、C57BL/6マウスおよびOPN−/OPN−マウスにおいて行った32。簡潔に述べると、左後肢の中央部を覆う皮膚において切開を行った。大腿動脈の近位末端の結紮後、伏在動脈の遠位部分を結紮し、動脈ならびに全ての側方分岐を自由に解剖し、切除した。皮膚を、吸収性の縫合糸を使用して閉じた。動物はケタミンおよびキシラジンで麻酔し、イソフルランで維持したことに注目されたい。
【0032】
レーザードップラー血流(LDBF)評価
後肢および足の両方の後肢血流を、レーザードップラー血流(LDBF)分析器(PeriScan PIMII、Perimed Inc)を使用して、手術直前および手術後0日目、7日目、14日目および28日目に測定した。血流を、異なる色のピクセルを用い、レーザー周波数における変化として表示した。スキャン後、保存した画像を分析して血流を定量した。周囲の光および温度によって引き起こされるデータの変動を回避するために、後肢血流を、右(非虚血)LDBFに対する左(虚血)LDBFの比として表現した。
【0033】
フローサイトメトリー分析
全てのサンプルを1時間以内に処理した。生きた細胞を、Sca−I、c−kitおよびCD31に対するコンジュゲート抗体(BD Biosciences)で染色した。FACS ARIA Coulterを使用して、FACS分析を実施した。上記試薬に対して陽性な骨髄細胞の頻度を、顆粒球を排除するため適切なゲートをかけた後、異なる試薬で染色したサンプルの2次元側方散乱蛍光ドットブロット分析によって決定した。最初に、Sca−1+の骨髄細胞にゲートをかけ、次いで、得られた集団をc−kitの二重発現について試験した。さらなる分析のために、Sca−1+細胞を、前駆細胞の内皮分化を反映する、フィコエリトリンコンジュゲート抗マウスCD31モノクローナル抗体(BD Biosciences)を使用して、CD31発現について研究した。Macintosh CELL Questソフトウェアプログラム(BD Biosciences)を使用してデータを処理した。動物の状態について盲検の1人の訓練された操作者(T.B.)が、研究を通して全てのフローサイトメトリー分析を実施した。
【0034】
統計的分析
結果を、平均±SEMとして示す。グループ間の比較はANOVAによって実施した。事後分析およびペアワイズ多重比較を、Scheffe調整した両側t検定を使用して実施した。<0.05の確率値を統計的有意とみなした。全ての分析を、SPSSソフトウェア(SPSS Ver.14.0 Inc)を用いて実施した。
【0035】
A.ex−vivo心臓のLangendorff処置
雄性Sprague−Dawleyラット(225〜250g)を麻酔し、心臓を迅速に切り取り、直ぐに、Tsuchidaら(Circulation Research 1994年)から適合させたプロトコルを使用して、Langendorff灌流装置にカニューレ処置した。簡潔に述べると、心臓を、60mmHgの一定圧力でKrebs−Ringer緩衝液を用いて灌流した。全ての灌流した心臓を、種々の処置の誘導前に、Langendorff装置上で20分間安定化した。処置グループ(n=3)当たり3つの心臓を使用した。灌流した心臓を、安定化後、1時間15分にわたって連続して灌流した。虚血/再灌流傷害を模倣するために、プレコンディショニングしていない心臓を、連続して30分間灌流し、その後30分間虚血に曝し(Kreb’s緩衝液の流れの停止)、その後15分間の再灌流(Kreb’s緩衝液の流れの再開)を行った。処置後、心臓を直ぐにTrizol試薬に取り出し、ホモジナイズした(Invitrogen)。20%クロロホルムの添加後、サンプルを倒置により混合し、12,000×gで15分間、2〜8℃で遠心分離した。RNAを取り出し、0.5mlのイソプロパノールを含むEppendorfチューブに添加し、激しくボルテックスをかけてRNAを沈殿させた。室温で10分間のインキュベーション後、RNAを、12,000×gで10分間遠心分離することによってペレット化し、75%エタノール1mlで洗浄した。RNAを、7,500×gで5分間の遠心分離によってペレット化し、上清を除去し、ペレットを室温で10分間風乾させた。引き続き、ペレットを、50μlのDEPC処理した水中に再懸濁した。RNAを、260nm(UV吸収範囲)でのその光学濃度に基づいて、分光測定によって定量した。定量PCRを、AMV Reverse Transcriptase(Sigma)を使用し、2μgのRNAおよびOligo(dT)12−18(Invitrogen)を用いて実施した。グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、オステオポンチンに対するプライマーを、Primer Expressソフトウェア(Applied Biosystems、Foster City、CA)を使用して、National Centre for Biotechnology Information(NCBI)からの公開されたmRNA配列に対して設計し、配列特異性を、BLAST(NCBI)検索を実施することによって確認した。プライマーセットは、MWG Biotech(Ebersberg、Germany)が合成した。
【0036】
各遺伝子の既知数のcDNAコピーを含むcDNA定量化標準物質を、QIAGEN Qiaquickゲル抽出キットを使用して、各遺伝子のPCR産物を精製することによって調製した。次いで、これらの精製された産物を分光分析によって定量し、適切な希釈を行った。
【0037】
各プライマーセットについて別個の反応設定(各々、25μlの最終容積中に、12.5μlの1×SYBR Green 1 PCR Master Mix(Applied Biosystems)、12.5nMの各プライマーおよび2.5μlのテンプレート(cDNAの50分の1希釈)を含む)で、増幅反応をリアルタイムで実施した。増幅反応は、ABI 7000で96ウェルの光学反応プレートにおいて実施した。各施行の最後に各プライマーセットについての解離曲線を作成し、PCR産物を2%アガロースゲル上で泳動して、産物のサイズおよびプライマーの特異性を確認した。全ての示差的に調節された遺伝子のcDNAコピー数を、それぞれの標準曲線から得、ハウスキーピング遺伝子GAPDHに対して標準化した。増加倍率を、灌流したサンプルの発現レベルと比較して計算した。リアルタイムRT−PCRを、各条件について3連で実施し、次いで結果を、一元ANOVAを使用し、その後、統計パッケージWindows(登録商標)用SPSSバージョン12.0.1(SPSS Inc.、Chicago、Ill、USA)を使用するScheffe検定を行って分析した。
【0038】
B.初代新生仔心筋細胞における虚血:
新生仔心筋細胞初代培養物を、1〜4日齢のSprague Dawleyラットから単離した。簡潔に述べると、ラットを安楽死させ、心臓を切り取った。メスによるホモジネート化、4℃での一晩のトリプシン消化および37℃で20分間のコラゲナーゼ処理の後、心筋細胞を、Percoll勾配遠心分離(Amersham)によって富化し、0.2%ゼラチンで被覆した培養プレート上に、10%新生仔ウシ血清、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco−BRL)、5%インスリントランスフェリン亜セレン酸塩(ITS)液補充培地、100μMの5−ブロモ−2−デオキシウリジンを補充したDMEM/F12培地1ml当たり1×105の密度で播いた。細胞を、37℃および5%CO2で培養した。
【0039】
内因性の虚血を模倣するために、10mM 2−デオキシグルコース、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、1mMピルビン酸ナトリウム、5%ITS液補充培地を補充した無グルコースDMEM(Gibco−BRL)を使用し、グルコースおよび血清の非存在下で、低酸素症ガスチャンバ(Russkin)を使用して、培養物を低酸素条件(O2/N2/CO2、0.5:94.5:5)に曝した。
【0040】
細胞を、全細胞溶解緩衝液(20mM HEPES、pH7.5、350mM NaCl、1mM MgCl2、0.5mM EDTA、0.5mM EGTA、1%Igepal−630、0.5mMジチオスレイトール(DTT)、100μM PMSFおよび1μg/mlペプスタチン)中で溶解した。細胞タンパク質を、10%SDS−ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動によって分離し、ニトロセルロースメンブレン上に転写した。ブロッキング(PBS中5%の無脂肪乳、0.05%のTween−20)後、ブロットをオステオポンチンに対する抗体と共にインキュベートし、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体(Pierce)を1:5,000希釈で用いて可視化した。タンパク質バンドを、X線フィルム(Agfa)上で、SuperSignal Ultra Chemiluminescent Substrate(Pierce)を用いて検出した。
【0041】
結果
被験体の採用
1型糖尿病を有する4人の患者ならびに4人の年齢および性別が一致した健常志願者を採用した(表2)。
【0042】
EPC数の評価
T1DMを有する患者は、健常志願者と比較して、より少ない数のEPCを有する(244±20対334±7、p=0.02)(図1)。
【0043】
マトリックス分子への接着
T1DMを有する患者は、コラーゲンに対する正常な接着(1.00±0.11対1.34±0.15、p=0.13)(図2)およびフィブロネクチンに対する正常な接着(1.65±0.44対2.13±0.20、p=0.16)(図3)を有する。
【0044】
内皮細胞への接着
次に、内皮細胞へのEPC接着に対する糖尿病の効果を、静止状態の内皮細胞において、TNF−αへの曝露後に評価した。コントロール不良のT1DMを有する患者由来のEPCは、静止状態の内皮細胞に対する正常な接着を実証したが(7.01±0.91対7.79±0.68、p=0.54)、活性化された内皮細胞に対する接着は損なわれていた(11.05±0.01対21.03±1.13、p=0.001)(図4)。
【0045】
T1DMを有する患者由来のEPCを使用した細管形成:
血管形成に関与するEPCの能力の測定であるin vitroの細管形成を、次に評価した。T1DMを有する患者由来のEPCは、コントロールと比較して、細管を形成する能力が損なわれていた(1.7±0.9対9.8±1.8、p=0.01)(図5)。この欠陥は、インスリン欠損糖尿病の動物モデルでも観察され、このとき、アロキソン誘導された糖尿病ウサギ由来のEPCもまた、非糖尿病のコントロールウサギ由来のEPCと比較して、損なわれた細管形成能力を示した(9.6±1.77対13.0±0.65:p=0.049)(図6)。
【0046】
コントロール不良の糖尿病を有する患者由来のEPCにおけるオステオポンチンの発現:
リアルタイムPCRを使用して、OPN発現が、健常志願者と比較して、コントロール不良の糖尿病を有する患者由来のEPCで減少することが実証された。
【0047】
細管形成に対するOPN補充の効果:
コントロール不良のT1DMを有する患者由来のEPCにおけるOPNの発現の減少が実証されたので、OPNに対するEPCの曝露がこの欠陥を逆転できるか否かを決定することが求められた。これを行うために、in vitroのEPC機能に対するOPN補充の効果を評価した。OPNとのインキュベーションは、非糖尿病ウサギ由来のEPCによって形成された細管の数を増加させた(13.0±0.65対16.5±1.15:p=0.039;図7)。OPNとのインキュベーションはまた、糖尿病ウサギ由来のEPCによって形成された細管の数も増加させた(9.88±2.48対16.56+/−2.21;p=0.01)(図8)。
【0048】
EPC機能に対するOPNの効果は、RGD依存的である。
【0049】
次に、OPNの作用機構がRGD依存的であるか否かを決定するための調査を行った。EPCを、OPNおよびRGDまたはRAD(Scrambled peptide)と同時インキュベートした。OPNおよびRGDとEPCの同時インキュベーションは、損なわれたEPC細管形成に関連したが、OPNおよびRADとのEPCの同インキュベーションは関連しなかった。この実験の結果は、EPC機能に対するOPNの効果がRGD依存的であることを示す(図9)。
【0050】
マイクロアレイ分析およびリアルタイムPCR
マイクロアレイ分析は、オステオポンチンが、糖尿病被験体由来のEPCにおいて下方調節されることを実証した。これは、リアルタイムPCRを使用してさらに立証された。平均変化倍率を、マイクロアレイ結果と比較した(表3)。
【0051】
OPN−KOマウスにおける虚血誘導された血管形成:
in vivoの血管形成におけるOPNの役割を研究するために、片側後肢虚血のマウスモデルにおいて血管形成の程度を評価した。血流を、この手順の前および後に、WTマウスおよびOPN−KOマウスにおいて評価した。OPN−KOマウスにおいて、虚血肢と非虚血肢との間のLDBF比の測定により、虚血後肢における灌流の回復が、有意に損なわれたことが示された。手術後7日目、14日目および28日目に、LDPF比は、OPN−KOマウスにおいて減少し、それぞれWTマウスに対して、0.31±0.07対0.68±0.11(P=0.021)、0.32±0.03対0.54±0.05(p=0.006)および0.45±0.06対1.09±0.13(P=0.002)(図10および11)であった。
【0052】
血管形成の障害は、EPC動員の低下に起因しない:
次に、OPNノックアウトマウスで観察された損なわれた欠陥形成の病因におけるEPC動員の役割を検討した。このために、循環EPC数を、OPNノックアウト動物および野生型動物において後肢虚血の誘導の前および後に測定した。EPC数のフローサイトメトリー分析を、後肢虚血の誘導の前および3日後に実施した。0日目に、両方のグループ間でEPC数に違いはなかった。さらに、EPC数は、OPNノックアウトマウスにおいて、後肢虚血の誘導の3日後に増加した(0日目の0.33±0.05対3日目の0.55±0.05;p=0.036)。この結果は、OPNがEPCの動員に関与しないことを示唆する。対照的に、EPC数は、コントロールマウスにおいて、後肢虚血の誘導の3日後に増大しなかった(図12および13)。
【0053】
A.ex−vivo心臓のLangendorff処置
リアルタイムPCRによって決定したように、オステオポンチン発現レベルは、灌流したサンプルにおける発現レベルと比較して、虚血/再灌流ラット心臓において、5.14分の1に減少した。
【0054】
B.初代新生仔心筋細胞における虚血:
内因性虚血状態をシミュレートする条件に供したラット新生仔心筋細胞初代培養物において、オステオポンチンタンパク質発現レベルは、ウエスタンブロット分析において決定したとおり、正常条件下で培養した心筋細胞と比較して、減少した(図14を参照のこと)。2時間目、8時間目、12時間目および24時間目に測定したオステオポンチン発現レベルは、虚血前のレベルに回復しなかった。
【0055】
まとめると、OPNのmRNAおよびタンパク質のレベルは、虚血または虚血再灌流に応答して低下する。
【0056】
考察
EPCの数および機能は、種々の因子によって効果を受け得る15。減少したEPC数が、1型DMおよび2型DMを有する患者において実証された16、17。しかし、微小血管合併症は、これらの研究において排除されなかった。最近、糖尿病網膜症がEPC数を増加させることが示されている20、21。この理由のために、糖尿病網膜症および他の合併症を有さない均一集団を選択した。T1DMを有するヒトにおいて他の混乱させる因子なしの高血糖症の効果を観察することが所望された。
【0057】
データは、無併発性の1型糖尿病を有する患者由来のEPCの数が減少していることを示した。これらの細胞は、コラーゲンおよびフィブロネクチンに対して正常な接着を示した。これらの細胞はまた、静止状態の内皮細胞に対する正常な接着を示したが、活性化された内皮細胞に対する接着は損なわれていた。T1DMを有する患者由来のEPCは、細管を形成する能力が損なわれていた。これらのデータは以前の研究と一致した16、17。糖尿病におけるEPCの機能不全におけるOPNの役割を試験した。OPN発現は、コントロール不良のT1DMを有する被験体から単離したEPCにおいて顕著に減少していることが、初めて実証された。この結果は、マイクロアレイ分析を使用してLoomansらによって観察された効果とは反対である22。この不一致の理由は不明であるが、研究した患者集団に起因する可能性がある。さらに、EPCの機能不全は、糖尿病動物由来の細胞を組換えOPNの存在下で培養した場合に逆転することが実証されている。EPC機能に対するOPNの効果は、細管形成の増加が観察された非糖尿病動物由来の細胞においても見られた。このように、本発明は、末梢血管疾患、潰瘍、虚血性心疾患および脳血管疾患、ならびに脳動脈瘤に対して二次的なくも膜下出血および糖尿病網膜症を含む、細管形成の不良、または血管形成に関する問題点に関連する疾患の治療を可能にできる。EPC機能に対するOPNの効果は、RGDによって逆転されたがRADでは逆転されず、このことは、OPNの効果がRGD依存的であることを示す。
【0058】
次に、血管形成におけるOPNの役割を、OPNノックアウトマウスを使用して検討した。虚血後肢における灌流の回復は、OPN−KOマウスにおいて有意に損なわれることが実証された。手術後7日目、OPN−KOマウスにおけるLDPF比は、WTマウスの約半分であった。血流回復におけるこの障害は、手術後28日目まで持続し、このことは、OPNの非存在が、片側後肢虚血のマウスモデルにおいて血管新生を損なうことを示唆している。この欠陥は、動員の低下および虚血部位における新たな血管へのEPCの取り込みの障害に起因し得る。この結果は、OPNノックアウトにおける後肢虚血後のEPCの循環レベルの増加が、損なわれた動員がこの機構でないことを示唆することを示す。この仮説は、糖尿病マウスにおける背側中部の皮膚創傷の誘導後7日目まで、OPNの発現がベースラインと異ならなかったことを示した、Ballardらからのデータによって支持される。OPNレベルは引き続いて、7日目に増加し、さらに4日間にわたり構成的により高いままであった。著者らは、糖尿病マウスにおけるOPNの低発現が、一部、糖尿病マウスにおける創傷治癒の遅延の原因である可能性があることを示唆した33。したがって、糖尿病EPCにおける減少したOPN発現は、糖尿病被験体の大血管合併症への傾向を説明し得る。
【0059】
オステオポンチンは、健康な心筋において構成的に発現される分泌サイトカインまたは接着分子として存在する。その発現は、心筋梗塞後の非筋細胞において増加して、細胞生存率を保護し、適応リモデリングを助ける。オステオポンチンの喪失は、代償的な線維症および肥大化を損なって、心臓の性能を低下させる。オステオポンチン発現はまた、心筋梗塞および心不全によって、心筋細胞において顕著に増加する。オステオポンチン心臓保護の機構は、大部分未知である。オステオポンチンは、サイトカイン誘導される一酸化窒素シンターゼ発現を抑制して、一酸化窒素産生および収縮障害を防止する。細胞シグナル伝達は、細胞表面インテグリンレセプター結合を介して媒介される。インテグリンレセプターは、細胞外マトリックスにおける変化を細胞骨格に連絡する。オステオポンチンの発現増加には、肥大化の間の心臓レセプターβ1インテグリンの発現増加が伴う。抗インテグリン抗体は、抗オステオポンチン抗体によっても遮断される効果である、アンギオテンシンII誘導された心臓リモデリングを遮断し、このことは、アンギオテンシンIIのシグナル伝達がオステオポンチンを介して進行することを示唆している。
【0060】
オステオポンチン欠損心臓線維芽細胞において、酸化ストレスは、アポトーシスが優勢である野生型細胞とは異なり、壊死を誘導した。この壊死は、オステオポンチンの内因性の再発現に際して減少した。しかし、心筋梗塞したマウス心臓のin vivo研究により、オステオポンチン欠損心臓が、野生型心臓と同じ数のアポトーシス筋細胞を有することが示されている。
【0061】
結論
糖尿病におけるEPCの機能不全は、OPN発現の減少と関連し、OPN補充によって逆転でき、これは、糖尿病被験体が血管合併症になる傾向がより高い理由を説明し得る。さらに、OPNノックアウト動物における研究は、血管形成におけるOPNの重要な役割を確認している。この結果は、この効果が、EPCにおけるより低いOPN発現に関連する可能性があることを示唆している。糖尿病におけるEPCの機能不全は、この障害のための新たな治療標的を同定する、OPN発現の減少に起因する。
【0062】
単語「含む(comprises/comprising)」および単語「有する/含む(having/including)」は、本発明に関して本明細書中で使用する場合、記述された特徴、整数、工程または成分の存在を特定するために使用されるが、1以上の他の特徴、整数、工程、成分またはそれらの群の存在または付加を排除するものではない。
【0063】
明確にするために、別個の実施形態に関して記載されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態で組み合わせて提供することもできることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態に関して記載されている本発明の種々の特徴は、別個にまたは任意の適切なサブコンビネーションで提供してもよい。
【0064】
参考文献
【0065】
【化1】
【0066】
【化2】
【0067】
【化3】
【0068】
【表1】
表1:リアルタイムPCRのためのプライマー配列
【0069】
【表2】
表2:被験体の特徴
【0070】
【表3】
表3:マイクロアレイ結果とリアルタイムPCR結果との間のオステオポンチン遺伝子発現(変化倍率)の比較
【0071】
【表4】
表4:オリゴヌクレオチドプライマー
【0072】
【表5】
表5−灌流した心臓と比較した場合の、I/Rに応答して変更された遺伝子発現
【技術分野】
【0001】
本発明は、心血管疾患または合併症の治療のための内皮前駆細胞(EPC)およびオステオポンチンの使用に関する。本発明はまた、これらの心血管合併症の発症の危険性のマーカーとしてのEPCオステオポンチンレベルの使用にも関する。特に、本発明は、オステオポンチンおよびオステオポンチンをコードする遺伝子に基づく組成物および方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
1997年のAsaharaらによる内皮前駆細胞(EPC)の発見は、多くの血管疾患状態(例えば、虚血、再狭窄および肺高血圧)の病因に関する見識を提供してきた1〜6(非特許文献1〜非特許文献6)。Urbichらは最近、内皮細胞へと分化変換する能力を有する高度に増殖性の非内皮細胞としてEPCを規定している7。EPCは、骨髄、末梢血および臍帯血を含む種々の供給源から単離できる8〜10。EPCには2つの表現型(初期対後期のEPC)が存在し、これらは共に別個の増殖能および血管形成能を有する8、11。フィブロネクチンなどのマトリックス分子に接着し、acLDLを取り込み、レクチンを結合する能力は、依然としてEPCについて一般に使用される定義であるが、種々のマーカー(例えば、造血マーカーおよび内皮マーカー)を用いたさらなるフローサイトメトリー分析および免疫染色が、EPCを規定するために益々利用されている12〜15。
【0003】
1型16および2型17、18の糖尿病を有する患者は、健常志願者と比較してEPCの数がより少ない。末梢血管疾患を合併した2型糖尿病を有する患者は、合併症を有さない患者と比較して、EPCの数がさらに少ない18。これらの患者におけるEPC数は、血糖コントロールと逆相関する16〜18。2型糖尿病を有する患者から単離されたEPCでは、活性化した内皮細胞ならびにコラーゲンおよびフィブロネクチンなどのマトリックス分子との接着が低下していた17。両方の型の糖尿病を有する患者由来のEPCは、in vitroで細管を形成する能力が損なわれている16、17。さらに、ストレプトゾトシン誘導された糖尿病マウス由来の骨髄単核細胞は、in vitroでEPCにあまり効率よく分化せず、非糖尿病マウス由来の骨髄単核細胞よりも細管を形成する可能性が低い19。1型糖尿病を有する患者から単離したEPC由来の馴化培地は、血管形成能が低く、in vitroでの細管形成のインヒビターを含む可能性がある16。1型糖尿病を有する患者由来のEPCの表現型はまた、正常血糖条件での培養の後でも依然として変化しない16。
【0004】
オステオポンチン(OPN)は、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)含有糖タンパク質である。オステオポンチンは、細胞移動、細胞生存、免疫細胞機能の調節、石灰化の阻害および腫瘍細胞表現型の制御に関与する23〜25。オステオポンチンは、腫瘍増殖26およびその進行を促進する27。原発性非小細胞肺癌の状況では、OPNの過剰発現は、腫瘍の侵襲性を増加させる28。誘導性のショートヘアピンRNAベクター29、RNA干渉30またはアンチセンスオリゴヌクレオチド31のいずれかによるOPN発現の阻害は、種々の腫瘍の侵襲性を減弱させる。
【0005】
世界中の心血管疾患(CVD)の有病率および致死率は、現在の治療レジメンの効力が無いことの証拠である。多くの心血管疾患における基礎的要素は、機能的な心筋細胞の喪失である。アポトーシスは、多くの心血管状態(例えば、心筋梗塞および心不全)に関連するが、正確な機構は知られていない。本発明者らは、心筋細胞死およびCVDの予防における治療標的としてOPNを同定した。心血管疾患を有する患者における候補遺伝子の発現の管理は、患者の平均余命を大きく増加させ得る。より重要なことには、CVDの素因を有する個体におけるこれらの遺伝子の発現の調節は、この疾患の発症を予防し得る。心筋合併症において、アポトーシスは、損なわれたヒト心臓において繰り返し観察されており、虚血/再灌流(I/R)傷害および心筋症の間の心筋細胞死に寄与する主な要因であることが証明されている(Gottlieb RA、The Journal of Clinical Investigation 1994年、Fliss H、CirculationResearch 1996年)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Asahara Tら、Science(1997)275:964〜7
【非特許文献2】Kalka Cら、Proc Natl Acad Sci USA(2000)97:3422〜7
【非特許文献3】Kubota Yら、Cell Transplant(2003)12:647〜57
【非特許文献4】Griese DPら、Circulation(2003)108:2710〜5
【非特許文献5】He Tら、Stroke(2004)35:2378〜84
【非特許文献6】Takahashi Mら、Tssue Eng.(2004)10:771〜9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、コントロール不良のT1DM心血管疾患を含む心血管疾患を有する患者由来のEPCの数および機能を評価し、心血管疾患の基礎となる機構を理解することである。さらなる目的は、T1DM心血管疾患を含む心血管疾患および結果として生じる糖尿病性潰瘍などの症状の予防および治療において使用するための組成物および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、医薬的に許容される担体または賦形剤と共にオステオポンチンを含む医薬組成物が提供される。このような組成物は、血管疾患、糖尿病関連血管疾患またはこのような疾患から生じる心血管疾患を含む合併症の治療で使用される。このような合併症の一例は足潰瘍であるが、それ以外にも多数存在する。
【0009】
本明細書で使用する場合、用語「心血管疾患または合併症」には、心筋梗塞、虚血、末梢血管疾患、虚血、脳血管疾患、冠血管疾患および心不全などの状態ならびにその基礎となる原因を含む、心血管疾患および糖尿病関連血管合併症が含まれる。このような疾患は、糖尿病、異脂肪血症および高血圧などのこれら血管疾患の危険因子の存在に起因し得る。
【0010】
さらなる態様において、本発明は、医薬的に許容される担体または賦形剤と共に、オステオポンチン遺伝子発現を増大させるように改変された内皮前駆細胞(EPC)または間葉系幹細胞(MSC)を含む、心血管合併症の治療のための組成物を提供する。心血管疾患は糖尿病に関連する場合がある。EPCまたはMSCによるオステオポンチンの過剰発現は、例えばリポソームまたはOPN遺伝子をコードするアデノウイルスで細胞をトランスフェクトすることによって、当業者に公知の種々の方法で達成できる。あるいは、EPCまたはMSCは、活性化されたEPCまたはMSCを提供するために、移植前に組換えOPNとプレインキュベートすることもできる。この文脈では、活性化された幹細胞は、細管を形成する能力をより高めるOPNで予め処理された幹細胞である。このようにOPN欠損細胞にOPNを補充すると、それらの機能が改善される。
【0011】
さらなる実施形態において、EPC/MSC投与と一緒にOPN被覆したステントを使用して、血管形成効果を促進することができる。本発明はまた、医薬的に許容される担体または賦形剤と共に、オステオポンチンをコードする遺伝子または機能的オステオポンチンもコードするその変異体を含む医薬組成物を提供する。
【0012】
さらなる態様において、本発明は、被験体が、心血管疾患を有するかどうか、または心血管疾患を発症する危険性があるかどうかを決定するための方法を提供し、この方法は、患者におけるオステオポンチン発現レベルを測定し、そのレベルを健康なコントロールのレベルと比較することによる。同様に、本発明は、糖尿病を有する被験体が、血管合併症を有するかどうか、または糖尿病関係血管合併症を発症する危険性があるかどうかを決定するための方法を提供し、この方法は、患者におけるオステオポンチン発現レベルを測定する工程と、そのレベルを健康なコントロールのレベルと比較する工程とを含む。オステオポンチン発現レベルは、患者由来の血液、組織、EPCまたは血清のいずれかにおいて測定することができる。
【0013】
OPNレベルは、高血糖状態で増加する。これは、この状態におけるOPNの保護的役割に関連している可能性がある。EPC中の内因性OPNレベルを測定することは有用であり得る。なぜなら、低いOPNレベル(本明細書で示すような)は、これらの被験体がその合併症がまだ発症していなくても、近い将来糖尿病関係血管合併症を発症する危険性があることを暗示するが、一方で、上昇した内在性OPNレベル(Loomansの論文)は、血管合併症の存在を暗示するからである。OPNレベルは、EPC中で増加して、治療的血管新生を促進する。しかし、EPC数は血管合併症を有する患者において減少するので、これらのEPCにおける内因性OPN発現の増加は、治療的血管新生を強化するのに充分ではない可能性がある。内因性OPNは機能不全であり得る。外因性の機能的OPNが、EPC機能を改善するのに必要である。EPCは、虚血傷害の領域への機能的OPN移行のためのベクターとして機能し得る。機能的OPNを過剰発現しているかまたはOPNによって活性化されたさらなるEPCの使用は、T1DM関係血管合併症の非侵襲的治療のための解決法となる可能性がある。
【0014】
本発明は心血管疾患の治療方法も提供し、この方法は、オステオポンチン、またはオステオポンチンをコードするポリヌクレオチド、オステオポンチンを発現もしくは過剰発現する内皮前駆細胞もしくは間葉系幹細胞、または活性化されたEPCもしくはMSCを患者に投与する工程を含む。このようなEPCまたはMSCおよびオステオポンチンの同時投与もまた、これらの方法で使用できる。オステオポンチンをコードするポリヌクレオチドは、内皮前駆細胞または間葉系幹細胞中に取り込むことができ、こうして生成された形質転換細胞は、糖尿病関係血管合併症を含む心血管疾患の治療のための遺伝子治療技術において有用である。
【0015】
一実施形態において、末梢血管疾患(脚の血管におけるアテローム性動脈硬化症に起因した血流の低下)を有する患者を同定することができ、そのEPCを採血によって収集することができる。OPNの遺伝子を、非ウイルス性またはウイルス性の手段によってEPCに送達することができ、次いでこれらの改変された細胞を患者に送達することができる。患者への送達は、デバイスを使用して脈管構造を介したものでもよく、直接的筋内送達によるものでもよい。同様に、心筋または脳を治療することができるが、後者は血管内送達のみを含む。EPCは、ウイルスにより(例えば、アデノウイルス、レンチウイルスまたはレトロウイルスを介して)改変してもよく、ウイルスによらずに(例えば、エレクトロポレーションまたはリポソーム伝達を介して)改変してもよい。
【0016】
なおさらなる態様において、本発明は、心血管疾患の治療において有用な化合物を同定する方法を提供し、この方法は、その化合物の、そうしなければオステオポンチン発現が下方調節される細胞においてオステオポンチン発現を増大させる能力を評価する工程を含む。OPN発現は、例えば定量リアルタイムPCRまたはELISAを使用して測定できる。心血管疾患の治療において有用な化合物には、糖尿病関係血管合併症の治療において有用な化合物が含まれる。
【0017】
本発明はまた、オステオポンチンに対して惹起された抗体、およびオステオポンチンに対して惹起された抗体で被覆され、活性化されたEPCなどの幹細胞で被覆され、またはオステオポンチンを過剰発現するEPCなどの幹細胞で被覆された医療用デバイスを提供する。MSCも、この方法で使用できる。医療用デバイスは、ステント、縫合糸、絆創膏(bandage)もしくは包帯、またはプロテーゼであってもよい。
【0018】
本発明の方法において、組換えオステオポンチンタンパク質の使用は、ウイルスベクターまたは非ウイルスベクターを使用したオステオポンチンの直接投与によって達成することができ、遺伝子改変された細胞(EPCまたはMSCなど)は、ウイルス的方法または非ウイルス的方法を使用してオステオポンチンを過剰発現するように操作することができる。
【0019】
全体として、本発明者らは、オステオポンチン欠損が糖尿病性EPC機能不全において機構的な役割を果たすことを示し、糖尿病性血管疾患において標的化できる新たな治療経路を同定した。同様に、本発明者らは、心血管疾患におけるOPNの役割も示した。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】T1DMを有する患者および健常志願者におけるEPC数を示す図である。
【図2】T1DMおよび健常志願者におけるコラーゲンに対する接着を示す図である。
【図3】T1DMおよび健常志願者におけるフィブロネクチンに対するEPCの接着を示す図である。
【図4】ヒト臍帯静脈内皮細胞に対するEPCの接着を示す図である。
【図5】Matrigelアッセイを使用した、T1DMを有する患者および健常志願者由来のEPCによって形成された細管の数を示す図である。
【図6】Matrigelアッセイを使用した、糖尿病ウサギおよび非糖尿病ウサギ由来のEPCによって形成された細管数間の比較(9.6+/−1.77対13.0+/−0.65:p=0.049)を示す図である。
【図7】Matrigelアッセイを使用した、非糖尿病ウサギ由来のEPCによって形成された細管の数に対するOPNの効果(13.0+/−0.65対16.5+/−1.15:p=0.039;n=9)を示す図である。
【図8】Matrigelアッセイを使用した、糖尿病ウサギ由来のEPCによって形成された細管の数に対するOPNの効果(9.6+/−1.77対16.6+/−2.19:p=0.010;n=5)を示す図である。
【図9】Matrigelアッセイを使用した、糖尿病ウサギ由来のEPCによって形成された細管の数に対するOPNおよびRGD/RADの効果を示す図である。
【図10】WTマウスおよびOPN−KOマウスにおける手術の前、ならびに直後、7日後、14日後および28日後の数個の時点で記録したLDBFの代表的画像である。
【図11】WTマウスおよびOPN−KOマウスにおける虚血/非虚血LDBF比の定量的分析(各グループにおいてn=5)を示す図である。
【図12】WTマウスおよびOPN−KOマウスにおける片側後肢の誘導の前および3日後の、Sca−1+c−kit+細胞の決定のための、抗Sca−1抗体および抗c−kit抗体を用いた二重染色を示す、代表的サイトグラムである。
【図13】片側後肢虚血の誘導の前および3日後の、WTマウスおよびOPN−KOマウスにおけるEPC数を示す図である。
【図14】シミュレートされた虚血に対して応答した初代新生仔ラット心筋細胞におけるOPN発現のウエスタンブロット分析を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
方法
被験体の採用
コントロール不良の1型糖尿病(HbAl/c>10%により規定される)を有する患者であって、1年より長きにわたってインスリンを受けており、他の薬物療法をいずれも受けていない患者を、Diabetes Day Centre、University College Hospital Galway、Irelandから採用した。この研究の倫理的承認は、University College Hospital Galway Clinical Research and Ethical Committeeから得た。微小血管または大血管合併症を有する患者は、この研究から排除した。微小血管合併症は、ミクロアルブミン尿症、糖尿病網膜症および神経障害の存在として定義した。大血管合併症は、急性冠血管症候群、末梢血管疾患および脳血管疾患の任意の以前の病歴の存在として定義した。同意書に署名した後、1型糖尿病を有する患者および健常志願者から末梢血サンプルを採取した。
【0022】
EPCの単離
EPCを、以前に記載した技術に従って培養した。簡潔に述べると、単核細胞(MNC)を、Ficollpaque密度遠心分離法によって単離した。3回の洗浄工程による精製後、10×106または2×106のMNCを、フィブロネクチン被覆した6ウェルプレートまたは4ウェルのガラススライド上にそれぞれ播いた。細胞を、5%FBS、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子−2、上皮増殖因子、インスリン様増殖因子−1およびアスコルビン酸からなるEGM−2シングルアリコート(Clonetics)を補充した内皮細胞基本培地−2(Clonetics)中で培養した。EPCを、DiI−アセチル化低密度リポタンパク質およびFITC−レクチンで二重染色することによって確認した。
【0023】
動物研究
糖尿病を、雄性ニュージーランド白ウサギにおいて、アロキサンの静脈内注射(150mg/kg)を使用して誘導した。血漿グルコース>22のウサギを、研究に含めた。静脈切開術を、麻酔下で辺縁動脈を介して実施した。この研究は、National University Ireland、Galway(NUIG)Animal Care and Use Committeeにより承認された。
【0024】
マトリックス分子に対するEPC接着
フィブロネクチン(100g/mL)で、24ウェルプレート上を、37℃で2時間被覆した。ウェルを、PBS中1%のBSAで2時間ブロッキングし、EPC(1×105)を各ウェルに添加して、1時間接着させた。接着細胞を、0.1%クリスタルバイオレットで染色し、10%酢酸でリンスして、細胞から染色を溶出させた。培地の光学濃度を、600nmの波長でマイクロタイタープレートリーダーを用いて分析することにより、接着細胞を定量した。
【0025】
成熟内皮細胞に対する接着
ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の単層を、4ウェルガラススライドの各ウェル中に、2×105細胞(5〜8継代)を播くことによって、アッセイの48時間前に調製した。HUVECを、TNF−α(BD Biosciences)(1ng/mL)または培地によって、12時間にわたり前処理した。EPCをdiIで標識し、1×105細胞を各ウェルに添加し、37℃で3時間インキュベートした。非接着細胞を、PBSを用いて穏やかに除去し、接着EPCを4%パラホルムアルデヒドで固定し、盲検観察者が計数した。
【0026】
Matrigel細管アッセイ
Matrigel(Sigma)を解凍し、4ウェルのガラススライド中に室温で30分間置いて凝固させた。diI標識したEPC(2×104)を、4×104のヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)と同時に播き、5μg/mlのOPN(SIGMA)ありまたはなしで、37℃で12時間インキュベートした。細管形成を、その幅に対して4倍の長さを示す構造として規定した。形成した細管の数を、盲検計数者が評価した。オステオポンチンの効果がRGD依存的であるかどうかを決定するために、異なるRGD/RAD濃度を、オステオポンチンと共にインキュベートした。
【0027】
RNA抽出
総RNAを、4日目のEPCから、RNeasy Mini Kit(Qiagen)を業者が記載したとおりに使用して、単離した。単離した総RNAの濃度を、NanoDropカウンターを使用して分析した。QuantIt DNA High Sensitivity Kitを使用して、総RNAサンプル中の任意のゲノムDNAの存在を検出した。
【0028】
マイクロアレイ分析
マイクロアレイ分析を、GeneChip Human Genome U133 Plus 2.0 Affymetrix Arrayを使用して実施した。遺伝子発現プロフィールを、健常志願者由来のEPCをベースラインとし、MAS5.1ソフトウェア(Affymetrix)を使用して、コントロール不良のT1DMを有する患者由来のEPCと健常志願者由来のEPCとの間で比較した。変化倍率を、2つのグループ間の転写物を比較することによって計算した。K平均クラスタリングを使用して、検出された(存在するまたは存在しない)コールおよび変化した(増加または減少した)コールを同定した。
【0029】
プライマー配列
プライマーを、PrimerExpressソフトウェアを使用して設計し、SIGMA Genosysに注文した(表1)。
【0030】
リアルタイムPCR
発現研究を、One Step QuantiTect SYBR Green PCR Kit(Qiagen)を用い、ABl Prism 7000 Sequence Detection System(Applied Biosystems)で、96ウェルプレートを使用して実施した。反応を、僅かな改変を加えて製造業者の指示に従って実施した。PCRプログラムを、25μlのサンプル容量を使用して、逆転写工程のため50℃で30分間で開始し、Taq DNAポリメラーゼの活性化のため95℃で15分間、その後95℃で15秒および60℃で30秒の40サイクルを行った。解離曲線を、60℃と95℃との間の温度範囲を使用したリアルタイムPCRの直後に作成した。各サンプルを3連で分析した。全ての反応をさらに、2%アガロースゲルでの電気泳動に供し、SyBrGreen色素で染色して、予測されたPCR産物の存在を確認した。
【0031】
マウス後肢虚血モデル
C57BL/6(WT)マウスおよびOPN−/OPN−マウスを、Charles River LabおよびJackson Labからそれぞれ購入した。8〜10週齢のOPN−KOマウスおよびWTマウスを使用した。マウスを、Regenerative Medicine Institute(REMEDI)、NCBES、NUIGのAnimal Facilityに収容した。全ての手順は、Cruelty to Animals Act、1876年の下で、Minister of Health and Childrenにより承認された。片側後肢虚血を、以前に記載されたとおりに、C57BL/6マウスおよびOPN−/OPN−マウスにおいて行った32。簡潔に述べると、左後肢の中央部を覆う皮膚において切開を行った。大腿動脈の近位末端の結紮後、伏在動脈の遠位部分を結紮し、動脈ならびに全ての側方分岐を自由に解剖し、切除した。皮膚を、吸収性の縫合糸を使用して閉じた。動物はケタミンおよびキシラジンで麻酔し、イソフルランで維持したことに注目されたい。
【0032】
レーザードップラー血流(LDBF)評価
後肢および足の両方の後肢血流を、レーザードップラー血流(LDBF)分析器(PeriScan PIMII、Perimed Inc)を使用して、手術直前および手術後0日目、7日目、14日目および28日目に測定した。血流を、異なる色のピクセルを用い、レーザー周波数における変化として表示した。スキャン後、保存した画像を分析して血流を定量した。周囲の光および温度によって引き起こされるデータの変動を回避するために、後肢血流を、右(非虚血)LDBFに対する左(虚血)LDBFの比として表現した。
【0033】
フローサイトメトリー分析
全てのサンプルを1時間以内に処理した。生きた細胞を、Sca−I、c−kitおよびCD31に対するコンジュゲート抗体(BD Biosciences)で染色した。FACS ARIA Coulterを使用して、FACS分析を実施した。上記試薬に対して陽性な骨髄細胞の頻度を、顆粒球を排除するため適切なゲートをかけた後、異なる試薬で染色したサンプルの2次元側方散乱蛍光ドットブロット分析によって決定した。最初に、Sca−1+の骨髄細胞にゲートをかけ、次いで、得られた集団をc−kitの二重発現について試験した。さらなる分析のために、Sca−1+細胞を、前駆細胞の内皮分化を反映する、フィコエリトリンコンジュゲート抗マウスCD31モノクローナル抗体(BD Biosciences)を使用して、CD31発現について研究した。Macintosh CELL Questソフトウェアプログラム(BD Biosciences)を使用してデータを処理した。動物の状態について盲検の1人の訓練された操作者(T.B.)が、研究を通して全てのフローサイトメトリー分析を実施した。
【0034】
統計的分析
結果を、平均±SEMとして示す。グループ間の比較はANOVAによって実施した。事後分析およびペアワイズ多重比較を、Scheffe調整した両側t検定を使用して実施した。<0.05の確率値を統計的有意とみなした。全ての分析を、SPSSソフトウェア(SPSS Ver.14.0 Inc)を用いて実施した。
【0035】
A.ex−vivo心臓のLangendorff処置
雄性Sprague−Dawleyラット(225〜250g)を麻酔し、心臓を迅速に切り取り、直ぐに、Tsuchidaら(Circulation Research 1994年)から適合させたプロトコルを使用して、Langendorff灌流装置にカニューレ処置した。簡潔に述べると、心臓を、60mmHgの一定圧力でKrebs−Ringer緩衝液を用いて灌流した。全ての灌流した心臓を、種々の処置の誘導前に、Langendorff装置上で20分間安定化した。処置グループ(n=3)当たり3つの心臓を使用した。灌流した心臓を、安定化後、1時間15分にわたって連続して灌流した。虚血/再灌流傷害を模倣するために、プレコンディショニングしていない心臓を、連続して30分間灌流し、その後30分間虚血に曝し(Kreb’s緩衝液の流れの停止)、その後15分間の再灌流(Kreb’s緩衝液の流れの再開)を行った。処置後、心臓を直ぐにTrizol試薬に取り出し、ホモジナイズした(Invitrogen)。20%クロロホルムの添加後、サンプルを倒置により混合し、12,000×gで15分間、2〜8℃で遠心分離した。RNAを取り出し、0.5mlのイソプロパノールを含むEppendorfチューブに添加し、激しくボルテックスをかけてRNAを沈殿させた。室温で10分間のインキュベーション後、RNAを、12,000×gで10分間遠心分離することによってペレット化し、75%エタノール1mlで洗浄した。RNAを、7,500×gで5分間の遠心分離によってペレット化し、上清を除去し、ペレットを室温で10分間風乾させた。引き続き、ペレットを、50μlのDEPC処理した水中に再懸濁した。RNAを、260nm(UV吸収範囲)でのその光学濃度に基づいて、分光測定によって定量した。定量PCRを、AMV Reverse Transcriptase(Sigma)を使用し、2μgのRNAおよびOligo(dT)12−18(Invitrogen)を用いて実施した。グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、オステオポンチンに対するプライマーを、Primer Expressソフトウェア(Applied Biosystems、Foster City、CA)を使用して、National Centre for Biotechnology Information(NCBI)からの公開されたmRNA配列に対して設計し、配列特異性を、BLAST(NCBI)検索を実施することによって確認した。プライマーセットは、MWG Biotech(Ebersberg、Germany)が合成した。
【0036】
各遺伝子の既知数のcDNAコピーを含むcDNA定量化標準物質を、QIAGEN Qiaquickゲル抽出キットを使用して、各遺伝子のPCR産物を精製することによって調製した。次いで、これらの精製された産物を分光分析によって定量し、適切な希釈を行った。
【0037】
各プライマーセットについて別個の反応設定(各々、25μlの最終容積中に、12.5μlの1×SYBR Green 1 PCR Master Mix(Applied Biosystems)、12.5nMの各プライマーおよび2.5μlのテンプレート(cDNAの50分の1希釈)を含む)で、増幅反応をリアルタイムで実施した。増幅反応は、ABI 7000で96ウェルの光学反応プレートにおいて実施した。各施行の最後に各プライマーセットについての解離曲線を作成し、PCR産物を2%アガロースゲル上で泳動して、産物のサイズおよびプライマーの特異性を確認した。全ての示差的に調節された遺伝子のcDNAコピー数を、それぞれの標準曲線から得、ハウスキーピング遺伝子GAPDHに対して標準化した。増加倍率を、灌流したサンプルの発現レベルと比較して計算した。リアルタイムRT−PCRを、各条件について3連で実施し、次いで結果を、一元ANOVAを使用し、その後、統計パッケージWindows(登録商標)用SPSSバージョン12.0.1(SPSS Inc.、Chicago、Ill、USA)を使用するScheffe検定を行って分析した。
【0038】
B.初代新生仔心筋細胞における虚血:
新生仔心筋細胞初代培養物を、1〜4日齢のSprague Dawleyラットから単離した。簡潔に述べると、ラットを安楽死させ、心臓を切り取った。メスによるホモジネート化、4℃での一晩のトリプシン消化および37℃で20分間のコラゲナーゼ処理の後、心筋細胞を、Percoll勾配遠心分離(Amersham)によって富化し、0.2%ゼラチンで被覆した培養プレート上に、10%新生仔ウシ血清、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、1mMピルビン酸ナトリウム(Gibco−BRL)、5%インスリントランスフェリン亜セレン酸塩(ITS)液補充培地、100μMの5−ブロモ−2−デオキシウリジンを補充したDMEM/F12培地1ml当たり1×105の密度で播いた。細胞を、37℃および5%CO2で培養した。
【0039】
内因性の虚血を模倣するために、10mM 2−デオキシグルコース、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、1mMピルビン酸ナトリウム、5%ITS液補充培地を補充した無グルコースDMEM(Gibco−BRL)を使用し、グルコースおよび血清の非存在下で、低酸素症ガスチャンバ(Russkin)を使用して、培養物を低酸素条件(O2/N2/CO2、0.5:94.5:5)に曝した。
【0040】
細胞を、全細胞溶解緩衝液(20mM HEPES、pH7.5、350mM NaCl、1mM MgCl2、0.5mM EDTA、0.5mM EGTA、1%Igepal−630、0.5mMジチオスレイトール(DTT)、100μM PMSFおよび1μg/mlペプスタチン)中で溶解した。細胞タンパク質を、10%SDS−ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動によって分離し、ニトロセルロースメンブレン上に転写した。ブロッキング(PBS中5%の無脂肪乳、0.05%のTween−20)後、ブロットをオステオポンチンに対する抗体と共にインキュベートし、西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体(Pierce)を1:5,000希釈で用いて可視化した。タンパク質バンドを、X線フィルム(Agfa)上で、SuperSignal Ultra Chemiluminescent Substrate(Pierce)を用いて検出した。
【0041】
結果
被験体の採用
1型糖尿病を有する4人の患者ならびに4人の年齢および性別が一致した健常志願者を採用した(表2)。
【0042】
EPC数の評価
T1DMを有する患者は、健常志願者と比較して、より少ない数のEPCを有する(244±20対334±7、p=0.02)(図1)。
【0043】
マトリックス分子への接着
T1DMを有する患者は、コラーゲンに対する正常な接着(1.00±0.11対1.34±0.15、p=0.13)(図2)およびフィブロネクチンに対する正常な接着(1.65±0.44対2.13±0.20、p=0.16)(図3)を有する。
【0044】
内皮細胞への接着
次に、内皮細胞へのEPC接着に対する糖尿病の効果を、静止状態の内皮細胞において、TNF−αへの曝露後に評価した。コントロール不良のT1DMを有する患者由来のEPCは、静止状態の内皮細胞に対する正常な接着を実証したが(7.01±0.91対7.79±0.68、p=0.54)、活性化された内皮細胞に対する接着は損なわれていた(11.05±0.01対21.03±1.13、p=0.001)(図4)。
【0045】
T1DMを有する患者由来のEPCを使用した細管形成:
血管形成に関与するEPCの能力の測定であるin vitroの細管形成を、次に評価した。T1DMを有する患者由来のEPCは、コントロールと比較して、細管を形成する能力が損なわれていた(1.7±0.9対9.8±1.8、p=0.01)(図5)。この欠陥は、インスリン欠損糖尿病の動物モデルでも観察され、このとき、アロキソン誘導された糖尿病ウサギ由来のEPCもまた、非糖尿病のコントロールウサギ由来のEPCと比較して、損なわれた細管形成能力を示した(9.6±1.77対13.0±0.65:p=0.049)(図6)。
【0046】
コントロール不良の糖尿病を有する患者由来のEPCにおけるオステオポンチンの発現:
リアルタイムPCRを使用して、OPN発現が、健常志願者と比較して、コントロール不良の糖尿病を有する患者由来のEPCで減少することが実証された。
【0047】
細管形成に対するOPN補充の効果:
コントロール不良のT1DMを有する患者由来のEPCにおけるOPNの発現の減少が実証されたので、OPNに対するEPCの曝露がこの欠陥を逆転できるか否かを決定することが求められた。これを行うために、in vitroのEPC機能に対するOPN補充の効果を評価した。OPNとのインキュベーションは、非糖尿病ウサギ由来のEPCによって形成された細管の数を増加させた(13.0±0.65対16.5±1.15:p=0.039;図7)。OPNとのインキュベーションはまた、糖尿病ウサギ由来のEPCによって形成された細管の数も増加させた(9.88±2.48対16.56+/−2.21;p=0.01)(図8)。
【0048】
EPC機能に対するOPNの効果は、RGD依存的である。
【0049】
次に、OPNの作用機構がRGD依存的であるか否かを決定するための調査を行った。EPCを、OPNおよびRGDまたはRAD(Scrambled peptide)と同時インキュベートした。OPNおよびRGDとEPCの同時インキュベーションは、損なわれたEPC細管形成に関連したが、OPNおよびRADとのEPCの同インキュベーションは関連しなかった。この実験の結果は、EPC機能に対するOPNの効果がRGD依存的であることを示す(図9)。
【0050】
マイクロアレイ分析およびリアルタイムPCR
マイクロアレイ分析は、オステオポンチンが、糖尿病被験体由来のEPCにおいて下方調節されることを実証した。これは、リアルタイムPCRを使用してさらに立証された。平均変化倍率を、マイクロアレイ結果と比較した(表3)。
【0051】
OPN−KOマウスにおける虚血誘導された血管形成:
in vivoの血管形成におけるOPNの役割を研究するために、片側後肢虚血のマウスモデルにおいて血管形成の程度を評価した。血流を、この手順の前および後に、WTマウスおよびOPN−KOマウスにおいて評価した。OPN−KOマウスにおいて、虚血肢と非虚血肢との間のLDBF比の測定により、虚血後肢における灌流の回復が、有意に損なわれたことが示された。手術後7日目、14日目および28日目に、LDPF比は、OPN−KOマウスにおいて減少し、それぞれWTマウスに対して、0.31±0.07対0.68±0.11(P=0.021)、0.32±0.03対0.54±0.05(p=0.006)および0.45±0.06対1.09±0.13(P=0.002)(図10および11)であった。
【0052】
血管形成の障害は、EPC動員の低下に起因しない:
次に、OPNノックアウトマウスで観察された損なわれた欠陥形成の病因におけるEPC動員の役割を検討した。このために、循環EPC数を、OPNノックアウト動物および野生型動物において後肢虚血の誘導の前および後に測定した。EPC数のフローサイトメトリー分析を、後肢虚血の誘導の前および3日後に実施した。0日目に、両方のグループ間でEPC数に違いはなかった。さらに、EPC数は、OPNノックアウトマウスにおいて、後肢虚血の誘導の3日後に増加した(0日目の0.33±0.05対3日目の0.55±0.05;p=0.036)。この結果は、OPNがEPCの動員に関与しないことを示唆する。対照的に、EPC数は、コントロールマウスにおいて、後肢虚血の誘導の3日後に増大しなかった(図12および13)。
【0053】
A.ex−vivo心臓のLangendorff処置
リアルタイムPCRによって決定したように、オステオポンチン発現レベルは、灌流したサンプルにおける発現レベルと比較して、虚血/再灌流ラット心臓において、5.14分の1に減少した。
【0054】
B.初代新生仔心筋細胞における虚血:
内因性虚血状態をシミュレートする条件に供したラット新生仔心筋細胞初代培養物において、オステオポンチンタンパク質発現レベルは、ウエスタンブロット分析において決定したとおり、正常条件下で培養した心筋細胞と比較して、減少した(図14を参照のこと)。2時間目、8時間目、12時間目および24時間目に測定したオステオポンチン発現レベルは、虚血前のレベルに回復しなかった。
【0055】
まとめると、OPNのmRNAおよびタンパク質のレベルは、虚血または虚血再灌流に応答して低下する。
【0056】
考察
EPCの数および機能は、種々の因子によって効果を受け得る15。減少したEPC数が、1型DMおよび2型DMを有する患者において実証された16、17。しかし、微小血管合併症は、これらの研究において排除されなかった。最近、糖尿病網膜症がEPC数を増加させることが示されている20、21。この理由のために、糖尿病網膜症および他の合併症を有さない均一集団を選択した。T1DMを有するヒトにおいて他の混乱させる因子なしの高血糖症の効果を観察することが所望された。
【0057】
データは、無併発性の1型糖尿病を有する患者由来のEPCの数が減少していることを示した。これらの細胞は、コラーゲンおよびフィブロネクチンに対して正常な接着を示した。これらの細胞はまた、静止状態の内皮細胞に対する正常な接着を示したが、活性化された内皮細胞に対する接着は損なわれていた。T1DMを有する患者由来のEPCは、細管を形成する能力が損なわれていた。これらのデータは以前の研究と一致した16、17。糖尿病におけるEPCの機能不全におけるOPNの役割を試験した。OPN発現は、コントロール不良のT1DMを有する被験体から単離したEPCにおいて顕著に減少していることが、初めて実証された。この結果は、マイクロアレイ分析を使用してLoomansらによって観察された効果とは反対である22。この不一致の理由は不明であるが、研究した患者集団に起因する可能性がある。さらに、EPCの機能不全は、糖尿病動物由来の細胞を組換えOPNの存在下で培養した場合に逆転することが実証されている。EPC機能に対するOPNの効果は、細管形成の増加が観察された非糖尿病動物由来の細胞においても見られた。このように、本発明は、末梢血管疾患、潰瘍、虚血性心疾患および脳血管疾患、ならびに脳動脈瘤に対して二次的なくも膜下出血および糖尿病網膜症を含む、細管形成の不良、または血管形成に関する問題点に関連する疾患の治療を可能にできる。EPC機能に対するOPNの効果は、RGDによって逆転されたがRADでは逆転されず、このことは、OPNの効果がRGD依存的であることを示す。
【0058】
次に、血管形成におけるOPNの役割を、OPNノックアウトマウスを使用して検討した。虚血後肢における灌流の回復は、OPN−KOマウスにおいて有意に損なわれることが実証された。手術後7日目、OPN−KOマウスにおけるLDPF比は、WTマウスの約半分であった。血流回復におけるこの障害は、手術後28日目まで持続し、このことは、OPNの非存在が、片側後肢虚血のマウスモデルにおいて血管新生を損なうことを示唆している。この欠陥は、動員の低下および虚血部位における新たな血管へのEPCの取り込みの障害に起因し得る。この結果は、OPNノックアウトにおける後肢虚血後のEPCの循環レベルの増加が、損なわれた動員がこの機構でないことを示唆することを示す。この仮説は、糖尿病マウスにおける背側中部の皮膚創傷の誘導後7日目まで、OPNの発現がベースラインと異ならなかったことを示した、Ballardらからのデータによって支持される。OPNレベルは引き続いて、7日目に増加し、さらに4日間にわたり構成的により高いままであった。著者らは、糖尿病マウスにおけるOPNの低発現が、一部、糖尿病マウスにおける創傷治癒の遅延の原因である可能性があることを示唆した33。したがって、糖尿病EPCにおける減少したOPN発現は、糖尿病被験体の大血管合併症への傾向を説明し得る。
【0059】
オステオポンチンは、健康な心筋において構成的に発現される分泌サイトカインまたは接着分子として存在する。その発現は、心筋梗塞後の非筋細胞において増加して、細胞生存率を保護し、適応リモデリングを助ける。オステオポンチンの喪失は、代償的な線維症および肥大化を損なって、心臓の性能を低下させる。オステオポンチン発現はまた、心筋梗塞および心不全によって、心筋細胞において顕著に増加する。オステオポンチン心臓保護の機構は、大部分未知である。オステオポンチンは、サイトカイン誘導される一酸化窒素シンターゼ発現を抑制して、一酸化窒素産生および収縮障害を防止する。細胞シグナル伝達は、細胞表面インテグリンレセプター結合を介して媒介される。インテグリンレセプターは、細胞外マトリックスにおける変化を細胞骨格に連絡する。オステオポンチンの発現増加には、肥大化の間の心臓レセプターβ1インテグリンの発現増加が伴う。抗インテグリン抗体は、抗オステオポンチン抗体によっても遮断される効果である、アンギオテンシンII誘導された心臓リモデリングを遮断し、このことは、アンギオテンシンIIのシグナル伝達がオステオポンチンを介して進行することを示唆している。
【0060】
オステオポンチン欠損心臓線維芽細胞において、酸化ストレスは、アポトーシスが優勢である野生型細胞とは異なり、壊死を誘導した。この壊死は、オステオポンチンの内因性の再発現に際して減少した。しかし、心筋梗塞したマウス心臓のin vivo研究により、オステオポンチン欠損心臓が、野生型心臓と同じ数のアポトーシス筋細胞を有することが示されている。
【0061】
結論
糖尿病におけるEPCの機能不全は、OPN発現の減少と関連し、OPN補充によって逆転でき、これは、糖尿病被験体が血管合併症になる傾向がより高い理由を説明し得る。さらに、OPNノックアウト動物における研究は、血管形成におけるOPNの重要な役割を確認している。この結果は、この効果が、EPCにおけるより低いOPN発現に関連する可能性があることを示唆している。糖尿病におけるEPCの機能不全は、この障害のための新たな治療標的を同定する、OPN発現の減少に起因する。
【0062】
単語「含む(comprises/comprising)」および単語「有する/含む(having/including)」は、本発明に関して本明細書中で使用する場合、記述された特徴、整数、工程または成分の存在を特定するために使用されるが、1以上の他の特徴、整数、工程、成分またはそれらの群の存在または付加を排除するものではない。
【0063】
明確にするために、別個の実施形態に関して記載されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態で組み合わせて提供することもできることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態に関して記載されている本発明の種々の特徴は、別個にまたは任意の適切なサブコンビネーションで提供してもよい。
【0064】
参考文献
【0065】
【化1】
【0066】
【化2】
【0067】
【化3】
【0068】
【表1】
表1:リアルタイムPCRのためのプライマー配列
【0069】
【表2】
表2:被験体の特徴
【0070】
【表3】
表3:マイクロアレイ結果とリアルタイムPCR結果との間のオステオポンチン遺伝子発現(変化倍率)の比較
【0071】
【表4】
表4:オリゴヌクレオチドプライマー
【0072】
【表5】
表5−灌流した心臓と比較した場合の、I/Rに応答して変更された遺伝子発現
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬的に許容される担体または賦形剤と共に、活性化された内皮前駆細胞または間葉系幹細胞を含む医薬組成物。
【請求項2】
医薬的に許容される担体または賦形剤と共に、オステオポンチンを発現または過剰発現する内皮前駆細胞または間葉系幹細胞を含む医薬組成物。
【請求項3】
医薬的に許容される担体または賦形剤と共にオステオポンチンを含む医薬組成物。
【請求項4】
医薬的に許容される担体または賦形剤と共に、オステオポンチンをコードする遺伝子または機能的オステオポンチンもコードするその変異体を含む医薬組成物。
【請求項5】
活性化された内皮前駆細胞または活性化された間葉系幹細胞を含む医薬組成物。
【請求項6】
オステオポンチンをさらに含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
心血管疾患、および糖尿病関連血管合併症を含む関連合併症の治療のための医薬の調製における、オステオポンチンを発現または過剰発現する内皮前駆細胞または間葉系幹細胞の使用。
【請求項8】
心血管疾患、および糖尿病関連血管合併症を含む関連合併症の治療のための医薬の調製におけるオステオポンチンの使用。
【請求項9】
心血管疾患、および糖尿病関連血管合併症を含む関連合併症の治療のための医薬の調製における、オステオポンチンをコードする遺伝子の使用。
【請求項10】
心血管疾患、および糖尿病関連血管合併症を含む関連合併症の治療のための医薬の調製における、活性化された内皮前駆細胞または活性化された間葉系幹細胞の使用。
【請求項11】
前記心血管疾患および糖尿病関連血管合併症が、心筋梗塞、冠血管疾患、末梢血管疾患、虚血、脳血管疾患、心不全から選択される、請求項7から10に記載の使用。
【請求項12】
オステオポンチンを発現または過剰発現する、活性化された内皮前駆細胞または活性化された間葉系幹細胞。
【請求項13】
オステオポンチン遺伝子発現を増大させるように遺伝子改変された、請求項12に記載の活性化された内皮前駆細胞または活性化された間葉系幹細胞。
【請求項14】
オステオポンチンによって活性化された、請求項12に記載の活性化された内皮前駆細胞または活性化された間葉系幹細胞。
【請求項15】
糖尿病を有する被験体が、糖尿病関係血管合併症を有するかどうか、または糖尿病関係血管合併症を発症する危険性があるかどうかを決定するための方法であって、該被験体におけるオステオポンチン発現レベルを測定する工程、該オステオポンチン発現レベルを、糖尿病を有さないコントロール被験体に関連するオステオポンチン発現レベルと比較する工程とを含み、より低いオステオポンチン発現レベルが、該被験体における糖尿病関連血管合併症または糖尿病関係血管合併症を発症する危険性の増加のいずれかと相関する、方法。
【請求項16】
被験体が、心血管疾患を有するかどうか、または心血管疾患を発症する危険性があるかどうかを決定するための方法であって、該被験体におけるオステオポンチン発現レベルを測定する工程と、該オステオポンチン発現レベルを、心血管疾患を有さないコントロール被験体に関連するオステオポンチン発現レベルと比較する工程とを含み、より低いオステオポンチン発現レベルが、該被験体における心血管疾患または心血管疾患を発症する危険性の増加のいずれかと相関する方法。
【請求項17】
前記オステオポンチン発現レベルが、血液、血清、組織または細胞において測定される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
遺伝子治療による心血管疾患または糖尿病関連血管合併症の治療のための医薬の製造における、オステオポンチンをコードする遺伝子の使用。
【請求項19】
医薬的有効量のオステオポンチンを患者に投与する工程を含む、心血管疾患および糖尿病関連血管合併症を治療する方法。
【請求項20】
医薬的有効量の、オステオポンチンをコードするポリヌクレオチドを患者に投与する工程を含む、心血管疾患および糖尿病関連血管合併症を治療する方法。
【請求項21】
オステオポンチンを発現または過剰発現する内皮前駆細胞または間葉系幹細胞を患者に投与する工程を含む、心血管疾患および糖尿病関連血管合併症を治療する方法。
【請求項22】
オステオポンチンによって活性化された内皮前駆細胞または間葉系幹細胞を患者に投与する工程を含む、心血管疾患および糖尿病関連血管合併症を治療する方法。
【請求項23】
オステオポンチンをコードする遺伝子または機能的オステオポンチンもコードするその変異体を患者に投与する工程を含む、心血管疾患および糖尿病関連血管合併症を治療する方法。
【請求項24】
前記オステオポンチンをコードするポリヌクレオチドが、遺伝子治療技術の一部として内皮前駆細胞中で投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記心血管疾患または糖尿病関係血管合併症が、冠血管疾患、末梢血管疾患、虚血、脳血管疾患、心不全および心筋梗塞から選択される、請求項18から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
冠血管疾患、末梢血管疾患、虚血、脳血管疾患、心不全、心筋梗塞および糖尿病関連血管合併症などの心血管疾患の治療のための化合物を同定するための方法であって、試験化合物をオステオポンチン発現が下方調節される細胞と接触させる工程と、オステオポンチン発現に対する該候補化合物の効果を決定する工程とを含む方法。
【請求項27】
冠血管疾患、末梢血管疾患、虚血、脳血管疾患、心不全、心筋梗塞および糖尿病関連血管合併症などの心血管疾患を治療するための血管形成因子としてのオステオポンチンの使用。
【請求項28】
組換えオステオポンチンタンパク質、オステオポンチンの直接投与、またはオステオポンチンを過剰発現するように遺伝子改変されたEPCもしくはMSCなどの細胞、またはオステオポンチン処理によって活性化されたEPCもしくはMSCの使用である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
オステオポンチンに対して惹起された抗体。
【請求項30】
オステオポンチンに対して惹起された抗体で被覆され、活性化された内皮前駆細胞もしくは活性化された間葉系幹細胞で被覆され、またはオステオポンチンを過剰発現する内皮前駆細胞もしくは間葉系で被覆された医療用デバイス。
【請求項31】
ステント、縫合糸、絆創膏もしくは包帯、またはプロテーゼから選択される、請求項30に記載の医療用デバイス。
【請求項1】
医薬的に許容される担体または賦形剤と共に、活性化された内皮前駆細胞または間葉系幹細胞を含む医薬組成物。
【請求項2】
医薬的に許容される担体または賦形剤と共に、オステオポンチンを発現または過剰発現する内皮前駆細胞または間葉系幹細胞を含む医薬組成物。
【請求項3】
医薬的に許容される担体または賦形剤と共にオステオポンチンを含む医薬組成物。
【請求項4】
医薬的に許容される担体または賦形剤と共に、オステオポンチンをコードする遺伝子または機能的オステオポンチンもコードするその変異体を含む医薬組成物。
【請求項5】
活性化された内皮前駆細胞または活性化された間葉系幹細胞を含む医薬組成物。
【請求項6】
オステオポンチンをさらに含む、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
心血管疾患、および糖尿病関連血管合併症を含む関連合併症の治療のための医薬の調製における、オステオポンチンを発現または過剰発現する内皮前駆細胞または間葉系幹細胞の使用。
【請求項8】
心血管疾患、および糖尿病関連血管合併症を含む関連合併症の治療のための医薬の調製におけるオステオポンチンの使用。
【請求項9】
心血管疾患、および糖尿病関連血管合併症を含む関連合併症の治療のための医薬の調製における、オステオポンチンをコードする遺伝子の使用。
【請求項10】
心血管疾患、および糖尿病関連血管合併症を含む関連合併症の治療のための医薬の調製における、活性化された内皮前駆細胞または活性化された間葉系幹細胞の使用。
【請求項11】
前記心血管疾患および糖尿病関連血管合併症が、心筋梗塞、冠血管疾患、末梢血管疾患、虚血、脳血管疾患、心不全から選択される、請求項7から10に記載の使用。
【請求項12】
オステオポンチンを発現または過剰発現する、活性化された内皮前駆細胞または活性化された間葉系幹細胞。
【請求項13】
オステオポンチン遺伝子発現を増大させるように遺伝子改変された、請求項12に記載の活性化された内皮前駆細胞または活性化された間葉系幹細胞。
【請求項14】
オステオポンチンによって活性化された、請求項12に記載の活性化された内皮前駆細胞または活性化された間葉系幹細胞。
【請求項15】
糖尿病を有する被験体が、糖尿病関係血管合併症を有するかどうか、または糖尿病関係血管合併症を発症する危険性があるかどうかを決定するための方法であって、該被験体におけるオステオポンチン発現レベルを測定する工程、該オステオポンチン発現レベルを、糖尿病を有さないコントロール被験体に関連するオステオポンチン発現レベルと比較する工程とを含み、より低いオステオポンチン発現レベルが、該被験体における糖尿病関連血管合併症または糖尿病関係血管合併症を発症する危険性の増加のいずれかと相関する、方法。
【請求項16】
被験体が、心血管疾患を有するかどうか、または心血管疾患を発症する危険性があるかどうかを決定するための方法であって、該被験体におけるオステオポンチン発現レベルを測定する工程と、該オステオポンチン発現レベルを、心血管疾患を有さないコントロール被験体に関連するオステオポンチン発現レベルと比較する工程とを含み、より低いオステオポンチン発現レベルが、該被験体における心血管疾患または心血管疾患を発症する危険性の増加のいずれかと相関する方法。
【請求項17】
前記オステオポンチン発現レベルが、血液、血清、組織または細胞において測定される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
遺伝子治療による心血管疾患または糖尿病関連血管合併症の治療のための医薬の製造における、オステオポンチンをコードする遺伝子の使用。
【請求項19】
医薬的有効量のオステオポンチンを患者に投与する工程を含む、心血管疾患および糖尿病関連血管合併症を治療する方法。
【請求項20】
医薬的有効量の、オステオポンチンをコードするポリヌクレオチドを患者に投与する工程を含む、心血管疾患および糖尿病関連血管合併症を治療する方法。
【請求項21】
オステオポンチンを発現または過剰発現する内皮前駆細胞または間葉系幹細胞を患者に投与する工程を含む、心血管疾患および糖尿病関連血管合併症を治療する方法。
【請求項22】
オステオポンチンによって活性化された内皮前駆細胞または間葉系幹細胞を患者に投与する工程を含む、心血管疾患および糖尿病関連血管合併症を治療する方法。
【請求項23】
オステオポンチンをコードする遺伝子または機能的オステオポンチンもコードするその変異体を患者に投与する工程を含む、心血管疾患および糖尿病関連血管合併症を治療する方法。
【請求項24】
前記オステオポンチンをコードするポリヌクレオチドが、遺伝子治療技術の一部として内皮前駆細胞中で投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記心血管疾患または糖尿病関係血管合併症が、冠血管疾患、末梢血管疾患、虚血、脳血管疾患、心不全および心筋梗塞から選択される、請求項18から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
冠血管疾患、末梢血管疾患、虚血、脳血管疾患、心不全、心筋梗塞および糖尿病関連血管合併症などの心血管疾患の治療のための化合物を同定するための方法であって、試験化合物をオステオポンチン発現が下方調節される細胞と接触させる工程と、オステオポンチン発現に対する該候補化合物の効果を決定する工程とを含む方法。
【請求項27】
冠血管疾患、末梢血管疾患、虚血、脳血管疾患、心不全、心筋梗塞および糖尿病関連血管合併症などの心血管疾患を治療するための血管形成因子としてのオステオポンチンの使用。
【請求項28】
組換えオステオポンチンタンパク質、オステオポンチンの直接投与、またはオステオポンチンを過剰発現するように遺伝子改変されたEPCもしくはMSCなどの細胞、またはオステオポンチン処理によって活性化されたEPCもしくはMSCの使用である、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
オステオポンチンに対して惹起された抗体。
【請求項30】
オステオポンチンに対して惹起された抗体で被覆され、活性化された内皮前駆細胞もしくは活性化された間葉系幹細胞で被覆され、またはオステオポンチンを過剰発現する内皮前駆細胞もしくは間葉系で被覆された医療用デバイス。
【請求項31】
ステント、縫合糸、絆創膏もしくは包帯、またはプロテーゼから選択される、請求項30に記載の医療用デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2010−520181(P2010−520181A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551228(P2009−551228)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052578
【国際公開番号】WO2008/107422
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(506333923)ナショナル・ユニバーシティ・オブ・アイルランド・ゴルウェイ (5)
【氏名又は名称原語表記】National University of Ireland Galway
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052578
【国際公開番号】WO2008/107422
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(506333923)ナショナル・ユニバーシティ・オブ・アイルランド・ゴルウェイ (5)
【氏名又は名称原語表記】National University of Ireland Galway
【Fターム(参考)】
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