説明

心身状態通知システムおよび心身状態通知方法

【課題】対象者を意識させることなく、対象者の通常業務の過程からうつ病など心身の異常の兆候を検知し、通知する心身状態通知システムを提供する。
【解決手段】操作者が利用する操作端末10と、操作者の心身状態を検知および通知する心身状態通知サーバ20とを備えた心身状態通知システム1であって、心身状態通知サーバ1は、操作履歴に基づいて、操作頻度を算出する操作頻度算出部と、操作者識別情報と、基準操作頻度とを予め対応付けて格納する基準情報格納部と、操作頻度算出部が算出した操作頻度と、基準操作頻度の差分値を算出する差分値算出部と、差分値が所定の基準差分値よりも大きい場合に、健常時と異なる不調状態であると判定する不調状態判定部と、不調状態が判定期間継続する場合に、心身の異常の兆候があると判定する兆候判定部と、異常の兆候があることを示す情報を出力する出力部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作端末の操作者の通常と異なる心身状態を検知および通知する心身状態通知サーバを備えた心身状態通知システムおよび心身状態通知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、うつ病などの精神疾患が増加している。このような状態に対し、IT業界をはじめとする多くの企業がEAP(Employee Assistance Program)を導入するなど、メンタルヘルスへの関心が高まっている。EAPにおいては、アンケートに回答することにより、うつ病か否かの判断を支援することができる。また、精神状態を判断する技術としては、例えば特許文献1には、オペレータの瞳の動きや誤入力の頻度に基づいて精神状態を検知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−32624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、EAPにおいては、アンケートに回答することにより、うつ病か否かを判断することができる。しかしながら、アンケートは自記式であるため、回答者が健常者を装った回答を行うことが可能であり、正確な判定を行うのが困難であることや日々のアンケート集計は非現実的であり、発見が遅れるという問題がある。
【0005】
うつ病に関しては、早期発見、早期治療が重要であると言われている。うつ病は、何の兆候もなく突然発症することはないと言われており、日常の仕事でストレスが少しずつ蓄積する過程で、何らかの兆候が現れる。すなわち、うつ病を早期に発見するには、いつもと異なる状態を早期に発見することが重要となる。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、対象者に意識させることなく、対象者の通常業務の過程からうつ病など心身の異常の兆候を検知し、通知することのできる心身状態通知システムおよび心身状態通知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、操作者が利用する操作端末と、前記操作端末とネットワークを介して接続され、前記操作者の心身状態を検知および通知する心身状態通知サーバとを備えた心身状態通知システムであって、前記操作端末は、前記操作者からの操作を受け付けるユーザインターフェースと、前記操作者による前記ユーザインターフェースの操作内容と、操作が行われた操作時刻とを対応付けて操作履歴として操作履歴格納部に格納する操作履歴管理部と、前記操作履歴を、前記操作者を識別する操作者識別情報と対応付けて前記心身状態通知サーバに送信する第1通信部とを有し、前記心身状態通知サーバは、前記操作者識別情報と、前記操作者識別情報により識別される前記操作者の健常時の前記ユーザインターフェースの健常時操作履歴に基づいて決定された基準操作頻度とを予め対応付けて格納する基準情報格納部と、前記操作端末から前記操作履歴と前記操作者識別情報とを受信する第2通信部と、前記第2通信部が受信した前記操作履歴に基づいて、前記操作者の所定の測定時間における操作頻度を算出する操作頻度算出部と、前記基準情報格納部において、前記第2通信部が受信した前記操作者識別情報に対応付けられている前記基準操作頻度を特定する特定部と、前記操作頻度算出部が
算出した前記操作頻度と、前記特定部が特定した前記基準操作頻度の差分値を算出する差分値算出部と、前記差分値算出部により算出された前記差分値が所定の基準差分値よりも大きい場合に、健常時と異なる不調状態であると判定する不調状態判定部と、前記不調状態が所定の判定期間継続する場合に、前記操作者に心身の異常の兆候があると判定する兆候判定部と、前記兆候判定部が心身の異常の兆候があると判定した場合に、異常の兆候があることを示す情報を出力する出力部とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の形態は、操作者が利用する操作端末と、前記操作端末とネットワークを介して接続され、前記操作者の心身状態を検知および通知する心身状態通知サーバとを備えた心身状態通知システムにおける心身状態通知方法であって、前記心身状態通知サーバは、前記操作者を識別する操作者識別情報と、前記操作者識別情報により識別される前記操作者の健常時のユーザインターフェースの操作内容と操作が行われた操作時刻とを対応付けた健常時操作履歴に基づいて決定された基準操作頻度とを予め対応付けて格納する基準情報格納部を備え、前記操作端末の操作履歴管理部が、前記操作者によるユーザインターフェースの操作内容と、操作が行われた操作時刻とを対応付けて操作履歴として操作履歴格納部に格納する操作履歴管理ステップと、前記操作端末の第1通信部が、前記操作履歴を、前記操作者識別情報と対応付けて前記心身状態通知サーバに送信する第1通信ステップと、前記心身状態通知サーバの第2通信部が、前記操作端末から前記操作履歴と前記操作者識別情報とを受信する第2通信ステップと、前記心身状態通知サーバの操作頻度算出部が、前記第2通信ステップで受信した前記操作履歴に基づいて、前記操作者の所定の測定時間における操作頻度を算出する操作頻度算出ステップと、前記心身状態通知サーバの特定部が、前記基準情報格納部において、前記第2通信ステップで受信した前記操作者識別情報に対応付けられている前記基準操作頻度を特定する特定ステップと、前記心身状態通知サーバの差分値算出部が、前記操作頻度算出ステップで算出された前記操作頻度と、前記特定ステップで特定された前記基準操作頻度の差分値を算出する差分値算出ステップと、前記心身状態通知サーバの不調状態判定部が、前記差分値算出ステップにおいて算出された前記差分値が所定の基準差分値よりも大きい場合に、健常時と異なる不調状態であると判定する不調状態判定ステップと、前記心身状態通知サーバの兆候判定部が、前記不調状態が所定の判定期間継続する場合に、前記操作者に心身の異常の兆候があると判定する兆候判定ステップと、前記心身状態通知サーバの出力部が、前記兆候判定ステップで心身の異常の兆候があると判定された場合に、異常の兆候があることを示す情報を出力する出力ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、対象者を意識させることなく、対象者の通常業務の過程からうつ病など心身の異常の兆候を検知し、通知することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、第1の実施の形態にかかる心身状態通知システム1の全体構成を示す図である。
【図2】図2は、操作端末10の機能構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、心身状態通知サーバ20の機能構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、基準情報格納部23のデータ構成を模式的に示す図である。
【図5】図5は、操作端末10の処理を示すフローチャートである。
【図6】図6は、心身状態通知サーバ20の処理を示すフローチャートである。
【図7】図7は、第2の実施の形態にかかる心身状態通知サーバ40の機能構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、第2の実施の形態にかかる基準情報格納部41のデータ構成を模式的に示す図である。
【図9】図9は、基準相関値を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる心身状態通知システムおよび心身状態通知方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかる心身状態通知システム1の全体構成を示す図である。心身状態通知システム1は、操作者の利用する操作端末10と、操作端末10の操作者の心身状態を検知し、これを所定の通知先に通知する心身状態通知サーバ20と、心身状態通知サーバ20による心身状態の通知先としての通知先端末30とを備えている。なお、本実施の形態にかかる心身状態通知サーバ20は、操作者にうつ病などの心身の異常の兆候が見られた場合に、心身状態に異常が見られるとして通知先への通知を行う。操作端末10、心身状態通知サーバ20および通知先端末30はネットワーク2を介して接続されている。本実施の形態においては、心身状態通知システム1が1つの操作端末10を備える例について説明するが、心身状態通知システム1は複数の操作端末10を備えてもよい。
【0013】
操作端末10は、ユーザインターフェースとして、キーボード11およびマウス12を有している。なお、ユーザインターフェースは、これ以外にも例えば操作パネルなどユーザからの入力を受け付けるものであればよく実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
操作端末10は、操作者によるキーボード11やマウス12の操作履歴を蓄積し、心身状態通知サーバ20に送信する。ここで、操作履歴とは、例えば、キーボード11の押下、マウス12の左クリックなどの操作内容と操作が行われた操作時刻とを対応付けた情報である。心身状態通知サーバ20は、操作履歴に基づいて、操作者の心身状態を判定し、これを通知先端末30に通知する。
【0015】
図2は、操作端末10の機能構成を示すブロック図である。操作端末10は、キーボード11、マウス12の他、操作履歴管理部13と、操作履歴格納部14と、第1通信部15とを有している。操作履歴管理部13は、キーボード11およびマウス12の操作内容と、操作が行われた操作時刻とを対応付けて操作履歴として操作履歴格納部14に格納する。操作内容としては、キーボード11の押下、Deleteキー、BackSpaceキーの押下、マウス12のクリック、マウス12のカーソルの移動距離などがある。さらに、操作履歴には、ログイン、ログアウトの時刻、アイドル状態が発生した時刻などが含まれている。なお、操作者による操作が行われていない時間が例えば10秒など所定時間以上継続した場合に、アイドル状態が発生したと判断される。
【0016】
第1通信部15は、操作履歴格納部14に格納されている操作履歴を、操作端末10の操作者を識別する操作者IDと対応付けて、定期的に心身状態通知サーバ20に送信する。第1通信部15による操作履歴の送信は、例えば1時間毎、1日毎など定期的に行うこととする。なお、操作履歴の送信タイミングは、実施の形態に限定されるものではなく、他の例としては、例えば心身状態通知サーバ20から要求された場合に、操作履歴を送信することとしてもよい。
【0017】
図3は、心身状態通知サーバ20の機能構成を示すブロック図である。心身状態通知サーバ20は、第2通信部21と、操作頻度算出部22と、基準情報格納部23と、特定部24と、差分値算出部25と、不調状態判定部26と、兆候判定部27とを有している。第2通信部21は、操作端末10から操作履歴を受信する。
【0018】
操作頻度算出部22は、第2通信部21が受信した操作履歴に基づいて、操作端末10がアイドル状態ではなく、稼働状態にある稼働時間を特定する。そして、稼働時間内における操作頻度を算出する。操作頻度とは、所定の測定時間における操作回数である。測定時間は、例えば1時間など操作が継続する時間である。測定時間としては、任意の長さを設定可能であり、操作者の業務内容等に応じて適切な値を設定することができる。例えば、一旦操作端末10の操作を開始したら少なくとも1時間は操作を継続することが多いような業務の場合には、測定時間を1時間と設定するのが好ましい。一方、通常の操作継続時間が2、3時間である場合に、測定時間を5時間とした場合には、操作端末10による作業が完了し、操作者が他の作業をしている間も操作端末10への入力がない状態と判断されるため好ましくない。
【0019】
操作頻度算出部22は、具体的にはキータッチ回数、クリック回数など操作内容の異なる複数の操作頻度を算出する。キータッチ回数は、測定時間中にキーボード11が押下された総回数である。クリック回数は、測定時間中のマウス12のクリックの総回数である。
【0020】
操作頻度算出部22は、さらに測定時間中にキーボード11またはマウス12による操作が行われた稼働時間の累計、測定時間中にキーボード11またはマウス12による操作が行われなかったアイドル時間の累計、測定時間中のアイドル状態の継続時間などを算出する。
【0021】
図4は、基準情報格納部23のデータ構成を模式的に示す図である。基準情報格納部23は、操作者IDと、基準操作頻度と、基準差分値とを対応付けて格納している。基準操作頻度とは、操作者IDにより識別される操作者の健常時の健常時操作履歴に基づいて算出された操作頻度である。具体的には、健常時の操作頻度の平均値である。例えば、健常時の数日間、または数ヶ月間の操作履歴から各日の操作頻度を算出する。そして、得られた操作頻度の平均値を基準操作頻度として基準情報格納部23に格納しておく。なお、基準操作頻度は、健常時の操作頻度の標準偏差など健常時の操作頻度に基づいて決定されればよく、実施の形態に限定されるものではない。
【0022】
基準情報格納部23は、上述の操作頻度と同様に、キータッチ回数、クリック回数など操作内容の異なる複数の基準操作頻度を格納している。
【0023】
基準差分値は、操作者毎に設定された閾値であり、操作頻度算出部22により操作履歴から算出された操作頻度と基準情報格納部23に格納されている基準操作頻度の差分値と比較される値である。差分値が閾値としての基準差分値以上である場合には、操作者が健常時と異なる心身状態、すなわち不調状態であると判定される。基準情報格納部23は、複数の操作頻度それぞれに対する複数の基準差分値を格納している。
【0024】
特定部24は、基準情報格納部23において、第2通信部21が受信した操作者IDに対応付けられている基準操作頻度および基準差分値を特定する。差分値算出部25は、操作頻度算出部22により算出された操作頻度と、特定部24により特定された基準操作頻度の差分値を算出する。例えば、操作頻度算出部22により算出されたキータッチ回数と、基準操作頻度としてのキータッチ回数の差分値を算出する。このように、同じ種類の操作内容に対する操作頻度の差分値を算出する。操作頻度算出部22は、複数の操作頻度それぞれに対する差分値を算出する。
【0025】
不調状態判定部26は、差分値算出部25が算出した差分値と、特定部24により特定された基準差分値とを比較し、差分値が基準差分値よりも大きい場合に、健常時と異なる状態、すなわち不調状態であると判定する。具体的には、不調状態判定部26は、得られ
た複数の差分値の過半数が対応する基準差分値よりも大きい場合に、不調状態であると判定する。なお、得られた複数の差分値の所定数が基準差分値よりも大きい場合に、不調状態であると判定すればよく、その数は過半数に限定されるものではない。
【0026】
なお、不調状態判定部26は、差分値と基準差分値との比較結果に基づいて不調状態か否かを判定すればよく、例えば、複数の差分値のうち重要な操作頻度に対する差分値が基準差分値よりも大きい場合には2点、それ以外の差分値が基準差分値よりも大きい場合には1点として総合点を算出し、総合点が所定点以上である場合に不調状態であると判定するなど、重み付けを行って判定することとしてもよい。
【0027】
兆候判定部27は、不調状態判定部26により不調状態と判定される期間が所定の判定期間継続する場合に、例えばうつ病などの心身の異常の兆候があると判定する。判定期間は予め設定された期間であり、例えば7日間など日単位の長さの期間である。具体的には、ある日の操作履歴から不調状態と判定され、次の日の操作履歴からも不調状態と判定され、というように連続して7日間の操作履歴それぞれから不調状態と判定された場合に、兆候判定部27は、心身の異常の兆候があると判定する。なお、各日の操作履歴の得られた時刻は同一である必要はなく、例えば1日目の10時から11時の操作履歴、2日目の15時から16時の操作履歴から得られた操作頻度を用いることができる。また、操作者による操作端末10の操作時間は、例えば1日目は4時間、2日目は8時間といったように、日毎に異なることが予想されるが、例えば上述の測定時間などある程度の時間連続して操作が行われれば、その日の操作者の心身状態を反映した操作履歴を得ることができる。
【0028】
心身の異常の兆候が現れている場合には、健常時と異なる不調状態が継続して現れる。これに対し、例えば、風邪や二日酔いなどの単なる体調不良の場合には不調状態が現れるものの、このような状態は、1、2日など比較的短い期間で消失する。そこで、兆候判定部27は、例えば7日間など所定の期間、不調状態が継続する場合に、心身の異常の兆候が現れていると判断する。すなわち、判定期間は、3日以上の期間であることが好ましい。これにより、単なる体調不良を心身の異常の兆候と誤判定するのを防ぐことができる。
【0029】
また、うつ病の診断においては、うつ状態が2週間継続するとうつ病と診断される。よって、2週間継続する前にうつ病の兆候が現れていることを発見し、対処することが有効である。そこで、判定期間は、14日間よりも短い期間であることが好ましい。これにより、うつ病の発症前に対処することが可能となる。
【0030】
そして、兆候判定部27により心身の異常の兆候ありと判定された場合には、第2通信部21は予め登録されている通知先端末30に対し、操作者IDにより特定される操作者の名前と、心身の異常の兆候があることを示す情報とを送信する。なお、通知先端末30は、例えば操作者の上司や管理者などが利用する端末であることが好ましい。これにより、早期に操作者の心身状態の異常を管理者などに通知することができる。
【0031】
図5は、操作端末10の処理を示すフローチャートである。操作端末10においては、まず操作端末10の電源がオンされ(ステップS100)、キーボード11またはマウス12の操作が行われると(ステップS102,Yes)、操作履歴管理部13は、操作内容と操作時刻とを対応付けて操作履歴として操作履歴格納部14に蓄積する(ステップS104)。そして、一定期間が経過すると(ステップS106,Yes)、第1通信部15は、操作履歴格納部14に格納されている操作履歴を操作端末10の操作者の操作IDに対応付けて心身状態通知サーバ20に送信する(ステップS108)。電源がオフされるまでステップS102からステップS108までの処理を繰り返し(ステップS110,No)、電源がオフされると(ステップS110,Yes)、操作端末10による処理
が完了する。
【0032】
図6は、心身状態通知サーバ20の処理を示すフローチャートである。第2通信部21は、操作端末10から操作履歴と操作者IDとを受信する(ステップS200)。次に、操作頻度算出部22は、操作履歴から各操作内容に対する操作頻度を算出する(ステップS202)。次に、特定部24は、基準情報格納部23において、第2通信部21が受信した操作者IDに対応付けられている、基準操作頻度および基準差分値を特定する(ステップS204)。なお、操作頻度算出部22による操作頻度の算出と、特定部24による基準操作頻度および基準差分値の特定は独立した処理であり、いずれが先に行われてもよく、また同時に行われてもよい。
【0033】
次に、差分値算出部25は、操作頻度算出部22により算出された操作頻度と、特定部24により特定された基準操作頻度の差分値を算出する(ステップS206)。さらに、不調状態判定部26は差分値と、特定部24により特定された基準差分値とを比較し、差分値が基準差分値よりも大きい場合に(ステップS208,Yes)、不調状態であると判定する(ステップS210)。差分値が基準差分値以下である場合には(ステップS208,No)、健常時と変わらないので、特に処理を行わず処理を終了する。
【0034】
さらに、兆候判定部27は、不調状態が判定期間継続した場合には(ステップS212,Yes)、心身の異常の兆候があると判定する(ステップS214)。次に、第2通信部21は、予め登録された通知先端末30に操作者IDにより識別される操作者に心身の異常の兆候がみられることを通知する(ステップS216)。一方、不調状態が判定期間継続しない場合には(ステップS212,No)、心身の異常と判断できない為、特に処理を行わず処理を終了する。以上で、心身状態通知サーバ20の処理が完了する。
【0035】
以上のように、実施の形態にかかる心身状態通知システム1においては、うつ病などの心身の異常の兆候を早期に発見し、所定の通知先に通知することができるので、操作者の管理者は早期に心身の異常への対応を行うことができる。したがって、心身状態通知システム1により心身の異常の兆候があると判定された場合に、操作者に対してより専門的な処置を行うべく対処することが可能となる。これにより、精神疾患患者の発生を未然に防止することができる。また、日常業務を行う過程での操作者の操作履歴に基づいて判断を行うことができるので、操作者による自記式での判定に比べて信憑性の高い判定結果を得ることができる。
【0036】
本実施の形態の操作端末10および心身状態通知サーバ20は、それぞれCPUなどの制御装置と、ROMやRAMなどの記憶装置と、HDDなどの外部記憶装置と、ディスプレイ装置などの表示装置と、キーボードやマウスなどの入力装置を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。なお、操作端末10は、例えば携帯電話など携帯型端末であってもよい。
【0037】
本実施形態の操作端末10および心身状態通知サーバ20で実行される各プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0038】
また、本実施形態の操作端末10および心身状態通知サーバ20で実行される各プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態の操作端末10および心身状態通知サーバ20で実行される各プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。また、本実
施形態の操作端末10および心身状態通知サーバ20で実行される各プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0039】
また、第1の実施の形態にかかる心身状態通知システム1の第1の変更例としては、心身状態通知サーバ20は、心身の異常の兆候があると判定した場合には、通知先端末30のほか、操作端末10に対しても心身の異常の兆候があることを通知することとしてもよい。これにより、操作者本人に対しても、早期に健常時と異なる状態にあることを通知することができる。さらに、心身状態通知サーバ20は、表示部等を備え、心身の異常の兆候があることを表示部等に出力してもよい。なお、実施の形態にかかる第2通信部21および表示部は出力部に相当する。
【0040】
また、第2の変更例としては、本実施の形態においては、操作者毎の差分値の閾値として基準差分値を利用したが、閾値が操作者によらない場合には、一律の値を基準差分値として利用することとしてもよい。
【0041】
また、第3の変更例としては、操作頻度の差分値に基づいて心身の異常の兆候が現れているか否かを判定するのにかえて、操作頻度から得られる心身の異常の兆候としての複数の症状それぞれが現れているか否かを判定し、これらの判定結果から総合して心身の異常の兆候が現れているか否かを判定することとしてもよい。
【0042】
また、第4の変更例としては、操作端末10は、操作履歴格納部14を有さなくてもよい。この場合には、操作履歴管理部13は、外部に設けられた操作履歴格納部に第1通信部15を介して操作履歴を格納する。また、他の例としては、操作履歴管理部13は、第1通信部15を介して直接心身状態通知サーバ20に操作履歴を送信してもよい。
【0043】
(第2の実施の形態)
図7は、第2の実施の形態にかかる心身状態通知システムの心身状態通知サーバ40の機能構成を示すブロック図である。第2の実施の形態にかかる心身状態通知サーバ40は、操作頻度だけでなく、複数の操作頻度間の相関値に基づいて不調状態か否かを判定する。心身状態通知サーバ40は、相関値算出部43を備えている。
【0044】
図8は、第2の実施の形態にかかる基準情報格納部41のデータ構成を模式的に示す図である。基準情報格納部41は、操作者IDに対応付けて、基準操作頻度、基準差分値に加えて、基準相関値および基準相関差分値を格納している。ここで、基準相関値とは、操作者IDにより識別される操作者の健常時における操作頻度に基づいて算出された相関値である。また、基準相関差分値とは、基準相関値と相関値の間の差分値との比較に利用される閾値である。基準相関差分値については後述する。
【0045】
図9は、基準相関値を説明するための図である。図9に示すグラフの縦軸および横軸は、それぞれキータッチ回数とクリック回数を示している。このような2つの操作頻度のグラフに対し健常時に得られた操作頻度をプロットする。そして、複数のプロットから近似曲線を求め、近似曲線の傾き(a)を基準相関値とする。すなわち、図9に示す近似曲線の傾きが、キータッチ回数とクリック回数に対する基準相関値として基準情報格納部41に格納される。
【0046】
特定部42は、基準情報格納部41において、操作者IDに対応付けられている基準操作頻度、基準差分値に加えて、基準相関値および基準相関差分値を特定する。相関値算出部43は、操作頻度算出部22により得られた操作頻度に基づいて、相関値を算出する。ここで、操作頻度を図9に示すグラフ上にプロットしたプロット位置が、キータッチ回数とクリック回数の相関値である。差分値算出部45は、プロット位置と、近似曲線との距
離を差分値として算出する。不調状態判定部46は、差分値として算出された距離が、基準情報格納部41に格納されている基準相関差分値に比べて大きい場合に不調状態であると判定する。すなわち、基準相関差分値は、近似曲線との距離の閾値である。
【0047】
なお、第2の実施の形態にかかる心身状態通知システムのこれ以外の構成および動作は、第1の実施の形態にかかる心身状態通知システム1の構成および動作と同様である。
【0048】
このように、第2の実施の形態にかかる心身状態通知システムにおいては、操作頻度だけでなく、複数の操作頻度間の相関値も考慮して操作者の心身状態を判定するので、より精度が高い判定、すなわち、より正確な判定を行うことができる。
【0049】
なお、第2の実施の形態においては、2つの操作頻度をxy軸とするグラフ上の位プロット位置を相関値としたが、相関値は、2つの操作頻度の相関を示す値であればよく、その算出方法は実施の形態に限定されるものではない。また、実施の形態においては、プロットの近似曲線の傾きを基準相関値としたが、基相関値は、健常時の相関値を示す指標となる値であればよく、その算出方法は実施の形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0050】
1 心身状態通知システム
2 ネットワーク
10 操作端末
11 キーボード
12 マウス
13 操作履歴管理部
14 操作履歴格納部
15 第1通信部
20 心身状態通知サーバ
21 第2通信部
22 操作頻度算出部
23 基準情報格納部
24 特定部
25 差分値算出部
26 不調状態判定部
27 兆候判定部
30 通知先端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者が利用する操作端末と、前記操作端末とネットワークを介して接続され、前記操作者の心身状態を検知および通知する心身状態通知サーバとを備えた心身状態通知システムであって、
前記操作端末は、
前記操作者からの操作を受け付けるユーザインターフェースと、
前記操作者による前記ユーザインターフェースの操作内容と、操作が行われた操作時刻とを対応付けて操作履歴として操作履歴格納部に格納する操作履歴管理部と、
前記操作履歴を、前記操作者を識別する操作者識別情報と対応付けて前記心身状態通知サーバに送信する第1通信部と
を有し、
前記心身状態通知サーバは、
前記操作者識別情報と、前記操作者識別情報により識別される前記操作者の健常時の前記ユーザインターフェースの健常時操作履歴に基づいて決定された基準操作頻度とを予め対応付けて格納する基準情報格納部と、
前記操作端末から前記操作履歴と前記操作者識別情報とを受信する第2通信部と、
前記第2通信部が受信した前記操作履歴に基づいて、前記操作者の所定の測定時間における操作頻度を算出する操作頻度算出部と、
前記基準情報格納部において、前記第2通信部が受信した前記操作者識別情報に対応付けられている前記基準操作頻度を特定する特定部と、
前記操作頻度算出部が算出した前記操作頻度と、前記特定部が特定した前記基準操作頻度の差分値を算出する差分値算出部と、
前記差分値算出部により算出された前記差分値が所定の基準差分値よりも大きい場合に、健常時と異なる不調状態であると判定する不調状態判定部と、
前記不調状態が所定の判定期間継続する場合に、前記操作者に心身の異常の兆候があると判定する兆候判定部と、
前記兆候判定部が心身の異常の兆候があると判定した場合に、異常の兆候があることを示す情報を出力する出力部と
を有することを特徴とする心身状態通知システム。
【請求項2】
前記心身状態通知サーバの前記基準情報格納部は、前記操作者識別情報に対応付けて、前記操作者の前記基準操作頻度に基づいて決定された前記基準差分値をさらに格納し、
前記心身状態通知サーバの前記不調状態判定部は、前記差分値が前記基準情報格納部に格納されている前記基準差分値よりも大きい場合に、前記不調状態であると判定することを特徴とする請求項1に記載の心身状態通知システム。
【請求項3】
前記心身状態通知サーバの前記基準情報格納部は、前記操作者識別情報と、健常時の前記操作頻度の平均値に基づいて決定された前記基準操作頻度とを対応付けて格納することを特徴とする請求項1または2に記載の心身状態通知システム。
【請求項4】
前記心身状態通知サーバの前記操作頻度算出部は、操作内容の異なる種類の複数の操作頻度を算出し、
前記心身状態通知サーバは、
前記複数の操作頻度の間の相関値を算出する相関値算出部をさらに有し、
前記心身状態通知サーバの前記基準情報格納部は、前記操作者識別情報に対応付けて、前記操作者識別情報により識別される前記操作者の健常時の前記複数の操作頻度の間の基準相関値をさらに格納し、
前記心身状態通知サーバの前記特定部は、前記基準情報格納部において、前記第2通信部が受信した前記操作者識別情報に対応付けられている前記基準相関値をさらに特定し、
前記心身状態通知サーバの前記差分値算出部は、前記相関値算出部が算出した前記相関値と前記特定部が特定した前記基準相関値との差分値をさらに算出することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の心身状態通知システム。
【請求項5】
前記心身状態通知サーバの前記相関値算出部は、前記複数の操作頻度の間の相関値を算出し、
前記心身状態通知サーバの前記基準情報格納部は、前記操作者の健常時の前記複数の操作頻度の間の相関値を前記基準相関値として格納することを特徴とする請求項4に記載の心身状態通知システム。
【請求項6】
操作者が利用する操作端末と、前記操作端末とネットワークを介して接続され、前記操作者の心身状態を検知および通知する心身状態通知サーバとを備えた心身状態通知システムにおける心身状態通知方法であって、
前記心身状態通知サーバは、前記操作者を識別する操作者識別情報と、前記操作者識別情報により識別される前記操作者の健常時のユーザインターフェースの操作内容と操作が行われた操作時刻とを対応付けた健常時操作履歴に基づいて決定された基準操作頻度とを予め対応付けて格納する基準情報格納部を備え、
前記操作端末の操作履歴管理部が、前記操作者によるユーザインターフェースの操作内容と、操作が行われた操作時刻とを対応付けて操作履歴として操作履歴格納部に格納する操作履歴管理ステップと、
前記操作端末の第1通信部が、前記操作履歴を、前記操作者識別情報と対応付けて前記心身状態通知サーバに送信する第1通信ステップと、
前記心身状態通知サーバの第2通信部が、前記操作端末から前記操作履歴と前記操作者識別情報とを受信する第2通信ステップと、
前記心身状態通知サーバの操作頻度算出部が、前記第2通信ステップで受信した前記操作履歴に基づいて、前記操作者の所定の測定時間における操作頻度を算出する操作頻度算出ステップと、
前記心身状態通知サーバの特定部が、前記基準情報格納部において、前記第2通信ステップで受信した前記操作者識別情報に対応付けられている前記基準操作頻度を特定する特定ステップと、
前記心身状態通知サーバの差分値算出部が、前記操作頻度算出ステップで算出された前記操作頻度と、前記特定ステップで特定された前記基準操作頻度の差分値を算出する差分値算出ステップと、
前記心身状態通知サーバの不調状態判定部が、前記差分値算出ステップにおいて算出された前記差分値が所定の基準差分値よりも大きい場合に、健常時と異なる不調状態であると判定する不調状態判定ステップと、
前記心身状態通知サーバの兆候判定部が、前記不調状態が所定の判定期間継続する場合に、前記操作者に心身の異常の兆候があると判定する兆候判定ステップと、
前記心身状態通知サーバの出力部が、前記兆候判定ステップで心身の異常の兆候があると判定された場合に、異常の兆候があることを示す情報を出力する出力ステップと
を有することを特徴とする心身状態通知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−72644(P2011−72644A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228402(P2009−228402)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000202361)綜合警備保障株式会社 (266)
【出願人】(509273112)綜警情報システム株式会社 (4)
【Fターム(参考)】