説明

心電図データの圧縮方法および心電図テレメータ装置

【課題】それぞれのデータの出現頻度に応じてデータを取り扱うことにより、必要最小限度のデータを選択するようにして心電図データを圧縮し、または心電図データ等の生体情報データに対しウェーブレット変換による分割を行い、生体情報として必要のないデータ、および生体情報の特性に影響を与えないデータを削除し、データを圧縮することで、送信可能な心電図データの多重化を可能とし、適正かつ効率の良い心電図データの圧縮を実現すると共に、テレメータ能力の拡大を達成することができるように構成した心電図データの圧縮方法および心電図テレメータ装置を提供する。
【解決手段】心電図データをウェーブレット変換、ハフマン符号化、または算術符号化により圧縮処理するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の患者の心電図等の生体信号のモニタリングデータを、それぞれ効率的にデータ圧縮して送信することができると共に、これらの圧縮データを受信して適正な心電図データとして復元することができるように構成した心電図データの圧縮方法および心電図テレメータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
心電図テレメータ装置は、複数の患者に対して、それぞれの患者の日常生活中の不整脈や狭心症などの異常心電図の診断、抗不整脈剤や抗狭心症剤などの薬効の評価、ペースメーカ治療の評価、虚血性心疾患の予後の予測などの医用目的のために、総合的かつ効率的に管理することができる装置として使用されている。
【0003】
しかるに、従来において、データ量の多い心電図データを処理する装置として、24時間の心電図データのデジタルデータを記録するため、データ圧縮を必要とすることが知られている。例えば、従来における心電図のデータ圧縮法として、心電図が比較的似た形状の心拍の繰り返しであることと、この心拍の部分に必要とする情報量が多いことに着目して、心電図の心拍の波形にテンプレートを心電図波形から引き算し、残差データ(信号)を算出し、これによってデータの冗長性を無くし、さらにこの信号を周知の直線近似法や符号化などの手法によって圧縮する方法が知られている。
【0004】
しかし、前述した従来のデータ圧縮法では、圧縮効率が悪化する欠点があることから、本出願人は、学習機能などによって作成した正常拍および異常拍、またはST計測を行う際の一定時間の正常拍の加算平均波形に適合するマルチテンプレートを用い、心拍除去を行った残差データの情報量が低減して、圧縮率が高くかつ高精度のデータ圧縮が可能になるように構成した心電図データ処理装置を提案した(特許文献1参照)。
【0005】
また、ホルタ心電計に赤外線通信装置を備えて、予め決められた手順に従って、高能率圧縮したデータを外部機器に通信するように構成したホルタ心電計装置が提案されている(特許文献2参照)。この特許文献2に記載のホルタ心電計装置においては、ホルタ心電計が電極より入力された心電図をAMPで増幅し、A/D変換器で量子化し、デジタル信号プロセッサに入力する。次いで、デジタル信号プロセッサに入力されたデジタル化された心電図は、ウエイブレット変換され、高能率圧縮してフラッシュメモリに心電図データが貯えられる。そして、前記ホルタ心電計に貯えられた心電図データは、赤外線インタフェース手段を介して外部機器に入力するようにした構成からなるものである。
【0006】
【特許文献1】特開平6−237909号公報
【特許文献2】特開平9−224917号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の医用テレメータ装置においては、送信ができる心電図データが少ないという難点があった。そこで、例えば送信できるベクタ数よりも多いベクタ数の心電図データが必要な場合は、受信側で受信した心電図データを基にして、必要なベクタの心電図データを数値計算等により推測していた。このように、送信可能の心電図のベクタ数が少ないため、患者の生体情報を的確に捕らえるために、必要な心電図情報が送信できないという問題がある。また、送信可能な心電図データを基にして、必要なベクタの心電図を推測すると、実際の生体情報とは異なる結果が得られるという危険がある。
【0008】
このような観点から、前述したように、心電図データを圧縮処理することが種々提案されているが、いずれも心電図データに適したデータの圧縮処理として具体的な提案がなされていないため、実用に適さないばかりでなく、装置構成も煩雑になる可能性がある等の難点がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、それぞれのデータの出現頻度に応じてデータを取り扱うことにより、必要最小限度のデータを選択するようにして心電図データを圧縮し、または心電図データ等の生体情報データに対しウェーブレット変換による分割を行い、生体情報として必要のないデータ、および生体情報の特性に影響を与えないデータを削除し、データを圧縮することで、送信可能な心電図データの多重化を可能とし、適正かつ効率の良い心電図データの圧縮を実現すると共に、テレメータ能力の拡大を達成することができるように構成した心電図データの圧縮方法および心電図テレメータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の心電図データの圧縮方法は、心電図データをウェーブレット変換、ハフマン符号化、または算術符号化により圧縮することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に記載の心電図データの圧縮方法は、心電図データをウェーブレット変換により圧縮する方法において、
周波数分割した心電図データのうち心電図の周波数成分として重要でないデータを削除し、または
周波数分割した心電図データで心電図に重畳するノイズのうち波高の小さい値を削除し、または
周波数分割した心電図データで心電図に重畳するノイズのうち波高の大きい値を削除し、または
これらを組み合わせることにより心電図データを圧縮することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3に記載の心電図テレメータ装置は、生体から検出される心電図信号を入力する心電図データ入力手段と、前記入力手段に入力された心電図データをフィルタリング処理するフィルタ手段と、前記フィルタ手段によりフィルタリング処理された心電図データを圧縮処理するデータ圧縮手段と、前記データ圧縮手段により圧縮処理された心電図データを送信するデータ送信手段と、
前記データ送信手段により送信される心電図データを受信する受信手段と、圧縮された心電図データを復元する復元手段と、復元された心電図データを表示するデータ表示手段とから構成した心電図テレメータ装置からなり、
前記データ圧縮手段において、心電図データを、ウェーブレット変換、ハフマン符号化、または算術符号化により圧縮する構成としたことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項4に記載の心電図テレメータ装置は、前記データ圧縮手段において、心電図データをウェーブレット変換により圧縮するに際し、周波数分割した心電図データのうち心電図の周波数成分として重要でないデータを削除し、または周波数分割した心電図データで心電図に重畳するノイズのうち波高の小さい値を削除し、または周波数分割した心電図データで心電図に重畳するノイズのうち波高の大きい値を削除し、またはこれらを組み合わせることにより心電図データを圧縮する構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載の心電図データの圧縮方法によれば、それぞれのデータの出現頻度に応じてデータを取り扱うことにより、必要最小限度のデータを選択するようにして心電図データを圧縮し、または心電図データ等の生体情報データに対しウェーブレット変換による分割を行い、生体情報として必要のないデータ、および生体情報の特性に影響を与えないデータを削除し、データを圧縮することで、送信可能な心電図データの多重化を可能とし、適正かつ効率の良い心電図データの圧縮を実現することができる。
【0015】
本発明の請求項2に記載の心電図データの圧縮方法によれば、特にデータの圧縮方法として、ウェーブレット変換を適用することにより、心電図データの成分を周波数的に高い側と低い側に分け、心電図データの特徴を表すのに必要でない周波数成分のデータや、軽微な影響しか与えないデータを除去して、データ数を減らすことにより心電図データの圧縮を行うことにより、適正かつ効率の良い心電図データの圧縮を実現することができる。
【0016】
本発明の請求項3に記載の心電図テレメータ装置によれば、それぞれのデータの出現頻度に応じてデータを取り扱うことにより、必要最小限度のデータを選択するようにして心電図データを圧縮し、または心電図データ等の生体情報データに対しウェーブレット変換による分割を行い、生体情報として必要のないデータ、および生体情報の特性に影響を与えないデータを削除し、データを圧縮することで、送信可能な心電図データの多重化を可能とし、適正かつ効率の良い心電図データの圧縮を行って、テレメータ能力の拡大を達成することができる心電図テレメータ装置を得ることができる。
【0017】
本発明の請求項4に記載の心電図テレメータ装置によれば、特にデータの圧縮方法として、ウェーブレット変換を適用することにより、心電図データの成分を周波数的に高い側と低い側に分け、心電図データの特徴を表すのに必要でない周波数成分のデータや、軽微な影響しか与えないデータを除去して、データ数を減らすことにより心電図データの圧縮を行って、テレメータ能力の拡大を達成することができる心電図テレメータ装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明に係る心電図データの圧縮方法および心電図テレメータ装置の実施例につき、添付図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0019】
心電図テレメータ装置の基本構成
図1は、本発明に係る心電図テレメータ装置の一実施例を示す概略ブロック系統図を示すものである。すなわち、図1は、本発明に係る心電図データの圧縮方法を実施する心電図テレメータ装置のシステム構成であって、参照符号10は送信機を示し、この送信機10は、生体から検出される心電図信号を入力する心電図データ入力手段12と、前記入力手段12に入力された心電図データをフィルタリング処理するフィルタ手段14と、前記フィルタ手段14によりフィルタリング処理された心電図データを後述する圧縮方法により圧縮処理するデータ圧縮手段16と、前記データ圧縮手段16により圧縮処理された心電図データを送信するデータ送信手段18とから構成される。
【0020】
また、参照符号20は心電図データ受信手段としての受信機を示し、この受信機20は、前記送信機10のデータ送信手段18により送信される心電図データを受信するデータ受信部22と、受信された圧縮処理されている心電図データを復元するデータ復元部24とから構成される。そして、受信機20により受信された心電図データは、データ記憶手段26により記憶され、データ復元部24により復元されデータ表示手段28により表示される。また、データ記憶手段26により記憶されることなく受信機20により受信された心電図データを、データ復元部24により復元しデータ表示手段28で表示することも可能である。このように、データ記憶手段26に心電図データを記憶することなく復元し、データ表示することもあるため、データ記憶手段26は、心電図テレメータ装置の構成において必須というわけではない。
【0021】
心電図データの圧縮方法
次に、前記心電図テレメータ装置のデータ圧縮手段16における心電図データの圧縮方法について説明する。
図2は、前記データ圧縮手段16における心電図データの圧縮プログラムのフローチャートを示すものである。まず、本実施例においては、データ圧縮手段16において、フィルタ手段14によりフィルタリング処理された心電図データを取得する(STEP−1)。なお、前記フィルタ手段14においては、データ圧縮手段16においてデータ圧縮処理がし易いデータにするため、心電図の生データにローパスフィルタ処理を行う。すなわち、この場合の処理方法としては、例えば150Hzのアナログローパスフィルタ処理を行ったデータに、40Hzのデジタルローパスフィルタ処理を行うように設定することができる。また、心電図差分データとして、このようにフィルタリング処理を行ったデータを元のデータとすることができる。
【0022】
このようにしてフィルタリング処理された心電図データを圧縮処理する(STEP−2)。なお、この場合における心電図データの圧縮方法については後述する。心電図データについて、ハフマン符号化または算術符号化を用いてデータ圧縮を行う場合、それぞれのデータの出現頻度に応じてデータを取り扱うことにより、必要最小限度のデータを選択するようにして心電図データを圧縮処理する。ウェーブレット変換を用いてデータ圧縮を行う場合、生体情報データに対しウェーブレット変換による分割を行い、生体情報として必要のないデータ、および生体情報の特性に影響を与えないデータを削除し、データを圧縮する。そして、圧縮処理されたデータが所望のデータ圧縮率に圧縮されたかを判定し(STEP−3)、所望のデータ圧縮率に圧縮された場合には、圧縮処理を終了して、得られた心電図データをデータ送信手段18に送出する。しかし、所望のデータ圧縮率に圧縮されていない場合には、削除するデータの条件を変更し、これによりデータを削除して心電図データをさらに圧縮処理する(STEP−4)。そして、この圧縮処理されたデータについて、前記STEP−3の処理を繰り返し、所望のデータ圧縮率に圧縮して、得られた心電図データをデータ送信手段18に送出するようにする。
【0023】
なお、本実施例では、心電図データについて説明したが、呼吸、血圧、脈波等の生体情報データに適用してもよく、単独または複数の生体情報データを圧縮して所望のデータ圧縮率を達成した場合、得られた生体情報データを送出することも可能である。
【0024】
以下に、前記データ圧縮手段16における心電図データの圧縮方法の具体例について説明する。
【0025】
(a)ハフマン符号化による心電図データの圧縮方法
ハフマン符号化によるデータの圧縮処理においては、入力された心電図データの出現頻度が高い順に、ビット数の短い符号を割り当て、元のデータよりも少ないデータ量としてデータを表現することにより、心電図データの圧縮を行うように設定する。
【0026】
(b)算術符号化による心電図データの圧縮方法
算術符号化によるデータの圧縮処理においては、入力された心電図データの出現頻度に応じて、データに重みをつけ、ある一定区間の複数の値とデータの重みから、1つの数値を算出することにより、心電図データの圧縮を行うように設定する。
【0027】
(c)ウェーブレット変換による心電図データの圧縮方法
ウェーブレット変換によるデータの圧縮処理においては、元になるデータをフィルタリングし、データの成分を周波数的に高い側と低い側に分け、この時に生成されるデータの内、心電図データとして特徴を表すのに必要のない周波数成分のデータや、軽微な影響しか与えないデータを取り除き、データ数を減らすことにより、心電図データの圧縮を行うように設定する。なお、この場合におけるデータのフィルタリング処理に際しては、例えばハール関数、ドベシー関数、bior4.4関数、bior6.8関数等のウェーブレット関数を使用することができる。
【0028】
図3および図4は、ウェーブレット変換によるデータの圧縮処理と、圧縮処理されたデータから元のデータを再構成する処理の概要を示す説明図である。
すなわち、ウェーブレット変換によるデータの圧縮処理は、図3に示すように、順次変換回数が増えることにより、データ数が半分になることが確認される。
次いで、ウェーブレット変換により生成されるデータから元のデータを再構成するに必要なデータは、sn−1、wn−1、wn−2、wn−3、……、w1、w0である。これらのデータを全部使って再構成したデータは、ウェーブレット変換前のデータと完全に一致する(図4参照)。この場合において、データ数に関しては、元のデータのデータ数と同じだけのデータ数が必要となる。
しかし、ウェーブレット変換で生成されたデータについて、周波数に関して分割されていることに着目すれば、必要のない周波数領域のデータを削除したり、必要な周波数領域のデータについても、波形を損なわないように考慮し、データの一部を削除することでデータを減らして、データ圧縮を実現することができる。なお、この場合、再構成においては、削除したデータの値は、特定の値(例えば、0)とみなして再構成する。
【0029】
そこで、ウェーブレット変換により生成されるデータの変換回数と周波数範囲の関係を図5に示す。そして、元のデータが64個のデータについて、ウェーブレット変換を5回行った時の周波数範囲とデータ数の関係を図6に示す。
図6に示されるように、元のデータは広い周波数成分を持つが、ウェーブレット変換を行うことで、w0〜w4までの6つの周波数領域に分割される。この場合に、もしw0の周波数成分が削除可能であるとすると、再構成に必要なデータ数が32個減り、64−32=32個となる。この時点で、50%のデータ圧縮率が達成される。
さらに、w1〜w4についても、波形の特性を損なわないようにデータを削除した場合、例えばそれぞれのデータ数を半分にできるとすると、データ数は、w1:16/2=8個、w2:8/2=4個、w3:4/2=2個、w4:2/2=1個となる。この場合に、w0〜s4まで合計したデータ数は、0+8+4+2+1+2=17個となり、17/64=27%のデータ圧縮率が達成される。
以上の操作を、種々の波形の特性に応じてそれぞれ行うことにより、必要とされるデータ数までデータ圧縮を行うことが可能となる。
【0030】
前述した構成からなる心電図テレメータ装置を構築し、ウェーブレット変換によるデータ圧縮方法を使用して、心電図データの圧縮を行った場合の復元波形を得る方法について説明する。
まず、心電図のQRS波以外の部分を基準に、ノイズ波高の大小によって削除する値を判断するテストを行った。図7の(a)は、ノイズが重畳している心電図波形を示す。この心電図には、前半部分に心電図のQRS波以外の部分が判別し難い程度のノイズが重畳しており、後半部分にQRS波以外の部分が判別できない程度のノイズが重畳している。 そこで、この場合、QRS波以外の波形が判別できるか否かを基準として、前半部分は波高の小さいノイズと判断し、後半部分は波高の大きいノイズと判断する。
【0031】
次に、データ圧縮処理を行った結果、それぞれの復元波形は、図7の(b)および(c)に示す通りであった。
すなわち、図7の(b)に示すように、ノイズの小さい値を削除してデータを圧縮した場合には、波高の小さいノイズが混入している部分を特徴的に改善することができる。また、図7の(c)に示すように、ノイズの大きい値を削除してデータを圧縮した場合には、波高の大きいノイズが混入している部分を特徴的に改善することができる。しかし、それぞれの結果において、心電図の波形の特徴を示す部分については、影響が少なく、元の特徴を残している。
【0032】
従って、前述したウェーブレット変換による心電図データの圧縮方法において、データ圧縮処理を行うための条件は、例えば次の通りである。
(1)ウェーブレット変換により生成された周波数分割データの内、心電図の周波数成分として重要でない数10Hzを超えるデータを削除し、データ数を減らすことでデータ圧縮を行う。
(2)心電図について、ある周波数範囲の周波数データ全てを削除もしくは周波数分割データの値の内、重畳するノイズも含めて小さい値を削除またはこれらを組み合わせることにより、元の波形の特徴を残しつつデータ圧縮が可能となる。
(3)心電図について、ある周波数範囲の周波数データ全てを削除もしくは周波数分割データの値の内、重畳するノイズも含めて大きい値を削除またはこれらを組み合わせることにより、元の波形の特徴を残しつつデータ圧縮が可能となる。
なお、前記(1)〜(3)の条件を変え、またはこれらを組み合わせてデータ量をコントロールすることにより、データ圧縮率を可変に設定することができる。このように、データ圧縮率を可変にすることにより、送信する心電図データ等の生体情報データやそのデータ量に応じて、最適なデータ圧縮を行うことができる。
【0033】
以上説明した本発明における心電図データの圧縮方法およびこの方法を実施する心電図テレメータ装置により、以下の効果を期待することができる。
【0034】
一定の通信帯域幅(データ量)で、本来送信すべきデータ(生体情報等)と、生体情報を補間するためのデータを同時に送信する場合、これらのデータ全てが一定のデータ量に収まるまでデータ圧縮を行うことができる。その後、受信機がこれらのデータを受信し、生体情報等のデータが正常であるか否かを確認した時に、正常でないと判定した場合は、受信したデータ内の補間データを使用して、正常でない生体情報等のデータを再生することで、正常なデータに戻すことが可能となる。これにより、データ欠損を回避することができる心電図テレメータ装置を得ることができる。
【0035】
一定の通信帯域幅(データ量)で、本来送信すべきデータ(生体情報等)を重複して送信する場合、これらのデータ全てが一定のデータ量に収まるまでデータ圧縮を行うことができる。その後、受信機がこれらのデータを受信し、1つ目の生体情報等のデータが正常であるか否かを確認した時に、正常でないと判定した場合は、そのデータ以外の重複して受信した生体情報等のデータを使用して、正常なデータに戻すことが可能となる。これにより、データ欠損を回避することができる心電図テレメータ装置を得ることができる。
【0036】
一定の通信帯域幅(データ量)で、複数の生体情報等のデータを同時に送信する場合、これらのデータ全てが一定のデータ量に収まるまでデータ圧縮を行うことができる。これにより、受信機が、複数の生体情報等のデータを受信可能な心電図テレメータ装置を得ることができる。
【0037】
一定の通信帯域幅(データ量)で、生体情報等のデータと通信経路におけるデータ誤りを検出・訂正するためのデータを同時に送信する場合、これらのデータ全てが一定のデータ量に収まるまでデータ圧縮を行うことができる。その後、受信機がこれらのデータを受信し、生体情報等のデータが正常であるか否かを確認した時に、正常でないと判定した場合は、データ誤りを検出・訂正データを使用して、生体情報等のデータの誤りを検出し訂正を行うことにより、正常なデータに戻すことが可能な心電図テレメータ装置を得ることができる。
【0038】
そして、前述した本発明に係る心電図データの圧縮方法および心電図テレメータ装置は、呼吸、血圧、脳波、脈波等の他の生体情報についても適用して、それらの特性に応じてそれぞれデータを削除し、データの圧縮処理を行うことができる。
【0039】
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は前記実施例のウェーブレット変換によるデータ圧縮方法において、ノイズが重畳した波形の圧縮について説明したが、このような場合に限定されることなく、ノイズが重畳していないある周波数範囲の周波数分割データを削除する等のデータ圧縮を行うことも可能であり、その他本発明の精神を逸脱しない範囲内において、多くの設計変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る心電図テレメータ装置の一実施例を示す概略ブロック構成図である。
【図2】本発明に係る心電図テレメータ装置の心電図データのデータ圧縮手段におけるデータ圧縮処理プログラムの概略を示すフローチャート図である。
【図3】本発明に係る心電図データの圧縮方法においてウェーブレット変換によるデータの圧縮処理の概要を示す説明図である。
【図4】本発明に係る心電図データの圧縮方法においてウェーブレット変換により圧縮処理されたデータを再構成する処理の概要を示す説明図である。
【図5】本発明に係る心電図データの圧縮方法においてウェーブレット変換により生成されるデータの変換回数と周波数範囲の関係を示す説明図である。
【図6】本発明に係る心電図データの圧縮方法においてウェーブレット変換を5回行った時の周波数範囲とデータ数の関係を示す説明図である。
【図7】本発明に係る心電図データの圧縮方法によりデータ圧縮した心電図の復元特性を示す波形図であって、(a)はノイズが重畳した心電図波形図、(b)はウェーブレット変換後に波高の小さい値を削除してデータを圧縮した場合の心電図復元波形図、(c)はウェーブレット変換後に波高の大きい値を削除してデータを圧縮した場合の心電図復元波形図である。
【符号の説明】
【0041】
10 送信機
12 データ入力手段
14 フィルタ入力手段
16 データ圧縮手段
18 データ送信手段
20 受信機
22 データ受信部
24 データ復元部
26 データ記憶手段
28 データ表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電図データをウェーブレット変換、ハフマン符号化、または算術符号化により圧縮することを特徴とする心電図データの圧縮方法。
【請求項2】
心電図データをウェーブレット変換により圧縮する方法において、
周波数分割した心電図データのうち心電図の周波数成分として重要でないデータを削除し、または
周波数分割した心電図データで心電図に重畳するノイズのうち波高の小さい値を削除し、または
周波数分割した心電図データで心電図に重畳するノイズのうち波高の大きい値を削除し、または
これらを組み合わせることにより心電図データを圧縮することを特徴とする心電図データの圧縮方法。
【請求項3】
生体から検出される心電図信号を入力する心電図データ入力手段と、前記入力手段に入力された心電図データをフィルタリング処理するフィルタ手段と、前記フィルタ手段によりフィルタリング処理された心電図データを圧縮処理するデータ圧縮手段と、前記データ圧縮手段により圧縮処理された心電図データを送信するデータ送信手段と、
前記データ送信手段により送信される心電図データを受信する受信手段と、圧縮された心電図データを復元する復元手段と、復元された心電図データを表示するデータ表示手段とから構成した心電図テレメータ装置からなり、
前記データ圧縮手段において、心電図データを、ウェーブレット変換、ハフマン符号化、または算術符号化により圧縮する構成としたことを特徴とする心電図テレメータ装置。
【請求項4】
生体から検出される心電図信号を入力する心電図データ入力手段と、前記入力手段に入力された心電図データをフィルタリング処理するフィルタ手段と、前記フィルタ手段によりフィルタリング処理された心電図データを圧縮処理するデータ圧縮手段と、前記データ圧縮手段により圧縮処理された心電図データを送信するデータ送信手段と、
前記データ送信手段により送信される心電図データを受信する受信手段と、圧縮された心電図データを復元する復元手段と、復元された心電図データを表示するデータ表示手段とから構成した心電図テレメータ装置からなり、
前記データ圧縮手段において、心電図データをウェーブレット変換により圧縮するに際し、周波数分割した心電図データのうち心電図の周波数成分として重要でないデータを削除し、または周波数分割した心電図データで心電図に重畳するノイズのうち波高の小さい値を削除し、または周波数分割した心電図データで心電図に重畳するノイズのうち波高の大きい値を削除し、またはこれらを組み合わせることにより心電図データを圧縮する構成としたことを特徴とする心電図テレメータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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