説明

心電波形計測センサ

【課題】 心電波形を高感度で容易にかつ簡単な操作で測定可能なセンサを実現する。
【解決手段】 心電波形を測定する複数の電極部を本体ケースから延出するアームに配置し、電極部の配置は標準モニタ誘導の電極配置を縮小配置し、電極部を収容する少なくとも一つのアーム部が、測定時に電極部が受ける応力に応じて弾性変位を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は心電波形測定デバイスであって、生体に装着可能であり、ユーザが必要な時に簡単な操作で測定を可能とする心電波形計測センサの構造に係る技術である。
【背景技術】
【0002】
モバイルセンサデバイスの技術進歩により、生体の健康状態や生理学的情報を計測し、モニタするためのボディエリアネットワーク(BAN)が注目されている。常時長時間生体をモニタ可能な小型無線生体センサがBAN実用化のキーデバイスであり、そのようなセンサが実現すれば、医療分野に新しい知見をもたらすものとして、期待されている(非特許文献1参照)。さらに、BANは患者の医療用モニタに止まらず、フィットネスクラブでの運動状態のモニタ等にも今後使用されることにより、予防医療においても多大の効果をもたらすことが期待されている。将来は、BANネットワークがインターネット等の広域のネットワークに接続され多種多様のヘルスケアモニタサービスが可能となることが予想されるが、このようなヘルスケアモニタサービスを実現するためには、使いやすい小型の多機能無線生体センサを実現することが望まれている。
【0003】
このような多機能無線生体センサは、簡単な操作で心電図や体温、血圧や加速度等を精度良く自動測定することが必要とされるが、特に心電図の測定は重要である。しかしながら、小型の心電波形測定デバイスを実現するには未だ多くの課題がある。第一に従来診断用に普及している12誘導の電位検出を簡便にするために小型で少数の電極で測定可能とする必要がある。第二の課題は、ヘルスケア分野では利用者が使用する環境を制限しない、いわゆるユビキタス環境で測定できる必要がある。このため、測定電極と信号処理部、および信号無線伝送部が一体化していることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−299712
【特許文献2】特願2008−223601
【0005】
このような観点から、電極の配置が容易で、かつ小型で装着可能な心電計測センサを実現するため、装着帯に複数の電極を配置する方法が従来から提案されているが(特許文献1参照)、必要なときにいつでも測定可能にするということにおいては、充分ではなかった。
【0006】
一方、本願発明者は電極部と本体ケースを一体化し、標準モニタ誘導の第二誘導を測定可能とする構造のセンサを提案している(特許文献2参照)。図3は特許文献2の実施形態の心電計の一例が示される。この心電計測センサは、首から位置決め固定部材7によって吊り下げられ、被験者の胸部に保持される本体ケース4とこの本体ケース4の上部に、双極モニタ誘導を計測するための、人体に向かって、その人体側側面の右側側面に左から心電波形検出電極1(負極)とコモン電極2を有するアーム部5によって構成される。この人体側側面のアーム部の中央から垂直方向にのびた本体ケース4の人体側側面下部に第二の心電波形検出電極3(正極)が設けられる。前記第一の電極と第二の電極と第三の電極の極性は、標準四肢誘導の第II誘導の極性に従い、前記第一の電極と第二の電極と第三の電極の位置は、標準四肢誘導の第II誘導の電極配置を縮小配置している。
ユーザはあらかじめ位置決め具で本体を胸部中央に本体を配置し、スイッチを押すだけで必要な時に心電波形を測定することができる。測定データは無線送信されてアクセスポイントに送信され、パソコン等に取り込まれてユーザの心電データがモニタされ、波形データとして表示あるいは記憶される。
【0007】
特許文献2で提案された心電波形計測センサは比較的簡単な操作で心電波形の測定が可能であるが、アーム部に収容された3つの電極がほぼ同一平面上にあるので、スイッチを押すだけの操作では、測定位置が想定した人体の胸部に対して電極全てを均一に皮膚に接触させることは容易ではない。この要因は結果として信号ノイズの混入を許し、測定波形の再現性に悪影響を及ぼす。したがって、ユーザが容易に、かつ正確な心電波形を測定可能とするためには、電極全てを均一に皮膚に接触させることにおいて改良の余地があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来技術の有する問題点に鑑みて創出されたものであり、心電波形を安定して測定可能な心電波形測定センサを実現する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、本発明の心電波形計測センサは、
心電波形測定デバイスであって、
(A)本体ケース(4)から延出する複数のアーム部(5)と、
(B)前記複数のアーム部それぞれは、心電波形検出用の電極部(1,2,3)を有し、
(C)前記複数の心電波形検出用の電極部(1,2,3)の電極(16)の位置は、標準四肢誘導の少なくとも一つのモニタ誘導の電極配置を縮小配置し、
(E)前記複数の電極(16)の極性は、前記モニタ誘導の極性に従い、
(F)前記複数のアーム部の少なくとも一つは、電極部が受ける応力に応じて弾性変位する弾性変位部(10)を有す
ことを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記弾性変位部(10)は、フレキシブルな嵌合部を有する。
好ましくは、前記アーム部の嵌合部は、軟質プラスチックの外側部材と、硬質プラスチックの内側部材からなる。また、前記アーム部の嵌合部は、導電性の板ばねをアーム部の嵌合部に挟み込むことも可能である。さらに、好ましくは、複数の心電波形検出用の電極部の少なくとも一つは、電極(16)が受ける応力に応じて変位する可動性の継ぎ手(14)を有すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明はユビキタス型としての小型のアクセサリー型心電計とそのシステムで、アクセサリーとして装着し易いデバイスで、被験者が少し異常を感じたときに、センサを押し付けることにより、高感度の多様な心電波形測定を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の心電波形計測センサの全体構成図である。
【図2】本願発明の心電波計計測センサの嵌合部の第一の実施例である。
【図3】本願発明の心電波計計測センサの嵌合部の第二の実施例である。
【図4】本願発明の心電波計計測センサの電極部の実施例である。
【図5】先願の実施例を示す図である。
【図6】標準四肢誘導の第II誘導を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記に限定されるものではない。
【0014】
本願発明の心電波計計測センサは、図1に示すように、電極の配置は標準四肢誘導の第II誘導の電極配置を縮小配置している。また、電極の極性は、前記モニタ誘導の極性に従う。少なくとも一つのアーム部5は、電極部が受ける応力に応じて、主に紙面に垂直な方向に弾性変位を行う。図1では、水平アームにフレキシブルな弾性変位部10を設けている。本弾性変位部は、被険者がセンサ本体のスイッチを押し付けたとき、電極部が被検者の胸部表面に沿うように、主に皮膚の垂直方向に撓むことを可能とする。結果、人体の凹凸に対してすべての電極が均一に皮膚表面に追従する。なお、標準四肢誘導の第II誘導において、電極極性と電極配置は図6のように規定されている。
【0015】
図2は、本願発明の心電波計計測センサの弾性変位部10の第一の実施例であり、アーム部におけるフレキシブルな弾性変位部10の断面図を示す。弾性変位部10は、硬質プラスチックの内側部材12を軟質プラスチックの外側部材11で挟み込むことにより、アーム部の保持と弾性変位を可能としている。
【0016】
図3は、本願発明の心電波計計測センサの弾性変位部10の第二の実施例であり、アーム部におけるフレキシブルな弾性変位部10の断面図を示す。弾性変位部10は、導電性の板ばね13を外側部材11で挟み込むことにより、アーム部の保持と弾性変位を可能としている。板ばね13は電極16の配線の一部として、用いることができる。
【0017】
図4は、本願発明の心電波計計測センサの別の観点の実施例であり、アーム部の断面図を示す。本実施例において、電極部継ぎ手14はアーム部に嵌め込まれており、嵌め込み部においてボールジョイント15を用いることにより、電極部継ぎ手の可動性を確保している。
【0018】
以上の説明で本発明からなる心電波形計測センサにより、ユーザが必要な時に容易に心電波形の測定が可能となる。

【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明からなる生体センサとそれを用いた生体センサネットウェアークシステムは、ユビキタス環境で使用可能なヘルスケアモニタとして医療現場や介護施設、あるいは個人単位でのケーブルレスでの体調管理や医療分野でのさまざまな利用形態への適用が考えられる。
【符号の説明】
【0020】
1 第一の心電波形検出用の電極部
2 第三の心電波形検出用の電極部
3 第二の心電波形検出用の電極部
5 アーム部
7 位置決め部材
8 起動スイッチ
10 弾性変位部
14 継ぎ手
16 電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電波形測定デバイスであって、
(A)本体ケース(4)から延出する複数のアーム部(5)と、
(B)前記複数のアーム部それぞれは、心電波形検出用の電極部(1,2,3)を有し、
(C)前記複数の心電波形検出用の電極部(1,2,3)の電極(16)の位置は、標準四肢誘導の少なくとも一つのモニタ誘導の電極配置を縮小配置し、
(E)前記複数の電極(16)の極性は、前記モニタ誘導の極性に従い、
(F)前記複数のアーム部の少なくとも一つは、電極部が受ける応力に応じて弾性変位する弾性変位部(10)を有す
ことを特徴とする心電波形計測センサ。
【請求項2】
前記弾性変位部(10)は、弾性部材で構成される
ことを特徴とする請求項1記載の心電波形計測センサ。
【請求項3】
前記弾性変位部(10)は、フレキシブルな嵌合部を有する
ことを特徴とする請求項1記載の心電波形計測センサ。
【請求項4】
前記フレキシブル嵌合部は、軟質プラスチックの外側部材(11)と、硬質プラスチックの内側部材(12)からなる
ことを特徴とする請求項3記載の心電波形計測センサ。
【請求項5】
前記嵌合部は、導電性の板ばね(13)を嵌合部に挟み込む
ことを特徴とする請求項3記載の心電波形計測センサ。
【請求項6】
心電波形測定デバイスであって、
(A)本体ケース(4)から延出する複数のアーム部(5)と、
(B)前記複数のアーム部それぞれは、心電波形検出用の電極部(1,2,3)を有し、
(C)前記複数の心電波形検出用の電極部(1,2,3)の電極(16)の位置は、標準四肢誘導の少なくとも一つのモニタ誘導の電極配置を縮小配置し、
(E)前記複数の電極(16)の極性は、前記モニタ誘導の極性に従い、
(F)前記複数の心電波形検出用の電極部の少なくとも一つは、電極(16)が受ける応力に応じて変位する可動性の継ぎ手(14)を有す
ことを特徴とする心電波形計測センサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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