説明

忍び返し具

【課題】外部からの侵入者に対し、前方、上方、側方等のあらゆる方向からの侵入経路を完全に阻止する。
【解決手段】フェンス、塀、門扉、門塀等の包囲部材Bの上端に取付される忍び返し具Aであって、前記包囲部材Bに取付可能な基台部1と、この基台部1の上方に所定間隔をあけて設けた複数の忍び返し部2と、より構成してなり、前記忍び返し部2は、上方及び斜め前方に向けて突出させた忍び返し片21、22にて形成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、フェンス、塀、門扉、門塀等の包囲部材を乗り越えることを防止するための忍び返し具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フェンス、塀、門扉、門塀等の包囲部材の上端には、この包囲部材を侵入者等が乗り越えることを防止するための忍び返し具を設けている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この忍び返し具は、包囲部材に応じて様々な構造のものが知られているが、例えば、前記包囲部材の上端に固定する基台部と、この基台部に所定間隔をあけて、上端を鋭利な釘状に形成した金属棒を鉛直方向に向けて複数固定すると共に、この金属棒の適所には、更に先端を鋭利な釘状に形成した忍び返し枝部を外側(包囲部材が設置される敷地境界の外側)に向けて突出させて溶接してなる。
【特許文献1】特開2003−301629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の忍び返し具は、侵入者等が乗り越えることを防止するために設けた金属棒及び忍び返し枝部が、鉛直方向及び前方に向けてのみ形成されているに過ぎないものである。
【0005】
そのため、外部からの侵入者が、例えば、忍び返し具の斜め方向から侵入しようとすれば、その侵入経路を阻止できないという問題があった。
【0006】
また、これら金属棒及び忍び返し枝部は、何れも金属製棒材を溶接して形成された構造であり、また、前記金属棒の下端を固定する前記基台部にも金属棒が使用されている。
【0007】
そのため、従来の忍び返し具は、全体の重量が重いため、作業性が悪いうえ、デザイン的な見栄えも悪いという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするもので、外部からの侵入者が、忍び返し部の前方、上方、側方等のあらゆる方向から侵入しようとしても、その侵入経路を完全に阻止することができ、全体の重量を軽量化して作業性が良いうえ見栄えも良く、しかも、必要な強度を備えた忍び返し具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る忍び返し具は、フェンス、塀、門扉、門塀等の包囲部材の上端に取付される忍び返し具であって、前記包囲部材に取付可能な基台部と、この基台部の上方に所定間隔をあけて設けた複数の忍び返し部と、より構成してなり、前記忍び返し部は、上方及び斜め前方に向けて突出させた忍び返し片にて形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る忍び返し具は、請求項1において、斜め前方に向けて突出させた忍び返し片は、上方に向けて突出させた忍び返し片の左、右に分岐して形成してなり、前記斜め前方に向けて突出させた忍び返し片の一片の先端近傍を、隣設される他の斜め前方に向けて突出された忍び返し片の他片の先端近傍と交差して固着してなることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る忍び返し具は、請求項1又は2の何れかにおいて、上方に向けて突出させた忍び返し片の左、右に、側方に向けて突出させた忍び返し片を更に形成したことを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る忍び返し具は、請求項1〜3の何れかにおいて、基台部は、取付穴を設けた平板材で形成され、忍び返し部は、平板材を横断面略V状に折り曲げて形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、次のような効果がある。
請求項1に係る忍び返し具によれば、忍び返し片を、上方及び斜め前方に突出させているので、外部からの侵入者が、忍び返し部の前方、上方、側方等、全方向から侵入しようとしても、その侵入経路を完全に阻止できる。
【0014】
請求項2に係る忍び返し具によれば、斜め前方に突出させた忍び返し片の先端近傍を、隣設された忍び返し片の先端近傍と交差して固着しているので、外部からの侵入者に対する侵入経路を完全に阻止できるうえ、忍び返し具全体の剛性を高めることができる。
【0015】
請求項3に係る忍び返し具によれば、側方に向けて突出させた忍び返し片を更に形成しているので、外部からの侵入者に対する侵入経路を更に完全に阻止できる。
【0016】
請求項4に係る忍び返し具によれば、基台部及び忍び返し部は、何れも平板材を基材としているので、必要な剛性を備えると共に、軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る忍び返し具を図面とともに説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明に係る忍び返し具Aの一実施例が連結された使用状態の斜視図、図2は、図1で示された本発明に係る忍び返し具Aの斜視図、図3(a)、(b)は、図2で示された本発明に係る忍び返し具Aの正面図及び平面図である。以下、図1〜図3に基づき説明する。
【0019】
この忍び返し具Aは、フェンス、塀、門扉、門塀等の包囲部材Bの上端に取付されるものであって、包囲部材Bに取付可能な基台部1と、この基台部1の上方に所定間隔をあけて設けた複数の忍び返し部2と、よりなる。
【0020】
基台部1は、金属製の板片11を横方向に上、下に併設し、これら2つの板片11を連結するようにして、横断面略V状に折り曲げた金属製の連結材12を、板片11の等間隔の位置に複数固着してなる。
【0021】
ここでは、板片11の長さを略5等分するように、5つの連結材12がスポット溶接で固着されたものを示しているが、連結材12の数は、包囲部材Bの長さ、又は板片11の長さに応じて適宜変更することが可能である。
【0022】
板片11の両端には、連設される他の忍び返し具の板片(不図示)と連結される連結部13を形成している。
【0023】
具体的には、板片11の一端に、その板厚が重合される程度の段部13aを上方に向けて形成している。
【0024】
また、連結部13には、連結される他の連結部(不図示)と着脱可能な取付穴13bを開設しており、この取付穴13bを通じてボルト、ナット等の取付具で固定すれば、忍び返し具Aと他の忍び返し具Aを横方向に向けてズレることなく真っ直ぐに連結することができる。
【0025】
本実施例では、上段の連結部13には、連結される他の連結部(不図示)と、ボルト・ナット等の取付具〈不図示〉で連結させるが、下段の連結部13には、連結される他の連結部(不図示)と、アンカーボルト・コンクリートビス・ネジ・釘等の連結具(不図示)で連結させると共に、当該連結具(不図示)を包囲部材Bに固定させて、基台部1を固定するようにしている。なお、忍び返し具Aの連結は、当該忍び返し具Aの横長さ及び取り付けられる包囲部材Bの長さに応じて適宜決定される。
【0026】
このように形成した基台部1の上端には、適宜間隔をあけて複数の忍び返し部2が配設されてなる。
【0027】
また、忍び返し部2には、上方及び斜め前方に向けて突出させた忍び返し片21、22を形成してなる。
【0028】
ここでは、上方に向けて忍び返し片21を形成すると共に、斜め前方に向けて突出させた忍び返し片22を、上方に向けて突出させた忍び返し片21の左、右に分岐して形成してなる。
【0029】
また、本実施例では、斜め前方に向けて突出させた忍び返し片22の一片の先端近傍を、隣設される他の斜め前方に向けて突出させた忍び返し片22の他片の先端近傍と交差してスポット溶接等で固着しており、斜め前方に向けて突出させた忍び返し片22の強度を高めると同時に、忍び返し具A全体の剛性を高めることができる。
【0030】
また、ここでの忍び返し部2は、金属製の板片を折り曲げた横断面略V状に形成することで、その強度を高めたものを例示しているが、必要な強度に応じて、例えば、金属製の板片を折り曲げてV状を連設した横断面N状、W状、或いはそれ以上に形成しても良い。
【0031】
このように構成した本発明の忍び返し具Aは、例えば、以下の要領で施工する。
【0032】
先ず、図1に示すように、フェンス、塀、門扉、門塀等の包囲部材Bの上端に基台部1を載置して、下段の取付穴13bにアンカーボルト・コンクリートビス・ネジ・釘等の連結具(不図示)を打ち込んで、他の下段の取付穴(不図示)と連結させると共に、基台部1を包囲部材Bに固定する。
【0033】
以下、包囲部材Bの長さに応じて、同要領で忍び返し具Aを順次連結して行けば、包囲部材Bの上端に忍び返し具Aを固定して取付けできる。
【0034】
このように、本発明の忍び返し具Aによれば、忍び返し片21、22を、上方及び斜め前方に突出させているので、外部からの侵入者が、忍び返し部2の前方、上方、側方等、 全方向から侵入しようとしても、その侵入経路を完全に阻止できる。
【0035】
また、斜め前方に突出させた忍び返し片22の先端近傍を、隣設された他の忍び返し片22の先端近傍と交差して固着しているので、斜め前方に向けて突出させた忍び返し片22の強度を高めると同時に、忍び返し具A全体の剛性を高めることができる。
【0036】
更に、基台部1及び忍び返し部2は、何れも平板材を基材としているので、必要な剛性を備えると共に、軽量化を図ることができる。
【実施例2】
【0037】
図4は、本発明に係る忍び返し具Aの他の実施例を示す使用状態の斜視図である。
【0038】
なお、図1〜図3と共通する部位には、同一の番号を付して、重複する説明を省略し、ここでは、本実施例の特徴についてのみ説明する。
【0039】
この忍び返し具Aは、上方に向けて突出させた忍び返し片21の左、右に、側方に向けて突出させた忍び返し片23を更に形成したことを特徴とする。
【0040】
この側方に向けて突出させた忍び返し片23は、例えば、先端を鋭利にした金属板で形成され、その基端を上方に向けて突出させた忍び返し片21に溶接したり、或いは、上方に向けて突出させた忍び返し片21の一部を側方に向けて切り起して形成すれば容易に形成できる。
【0041】
この忍び返し具Aによれば、側方に向けて突出させた忍び返し片23を更に形成しているので、外部からの侵入者に対する侵入経路を更に完全に阻止できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る忍び返し具Aの一実施例が連結された使用状態の斜視図である。
【図2】図1で示された本発明に係る忍び返し具Aの斜視図である。
【図3】(a)、(b)は、図2で示された本発明に係る忍び返し具Aの平面図及び側面図である。
【図4】本発明に係る忍び返し具Aの他の実施例を示す使用状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0043】
A 忍び返し具
B 包囲部材
1 基台部
13b 取付穴
2 忍び返し部
21 忍び返し片(上方)
22 忍び返し片(斜め前方)
23 忍び返し片(側方)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェンス、塀、門扉、門塀等の包囲部材の上端に取付される忍び返し具であって、
前記包囲部材に取付可能な基台部と、この基台部の上方に所定間隔をあけて設けた複数の忍び返し部と、より構成してなり、
前記忍び返し部は、上方及び斜め前方に向けて突出させた忍び返し片にて形成したことを特徴とする忍び返し具。
【請求項2】
請求項1において、
斜め前方に向けて突出させた忍び返し片は、上方に向けて突出させた忍び返し片の左、右に分岐して形成してなり、前記斜め前方に向けて突出させた忍び返し片の一片の先端近傍を、隣設される他の斜め前方に向けて突出された忍び返し片の他片の先端近傍と交差して固着してなることを特徴とする忍び返し具。
【請求項3】
請求項1又は2の何れかにおいて、
上方に向けて突出させた忍び返し片の左、右に、側方に向けて突出させた忍び返し片を更に形成したことを特徴とする忍び返し具。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかにおいて、
基台部は、取付穴を設けた平板材で形成され、忍び返し部は、平板材を横断面略V状に折り曲げて形成したことを特徴とする忍び返し具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−120216(P2007−120216A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−316209(P2005−316209)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(593178409)株式会社オーティス (224)
【Fターム(参考)】