説明

応力−ひずみ曲線式を出力するためのプログラム及びその装置

【課題】 粘弾性だけでなく、ゴム弾性を併せて弾性材料の物性を評価できるモデルを提供する。
【解決手段】 弾性要素及び粘性要素を直列に配置したMaxwellモデルに基づいて求められる、応力、ひずみ、弾性係数及び緩和時間の相関式と、物性に応じて異なる係数を含む、ひずみ及び弾性係数の相関式と、から求められる、前記物性に応じて異なる係数をパラメータとして含む、応力及びひずみの相関式を、応力−ひずみ曲線式として出力する。ひずみと弾性係数との間に相関性があることを見出した点が一つの特徴であり、これにより、ゴム弾性と粘弾性とを併せ持つ物性を示す弾性材料の大変形挙動をシミュレーション上で定量性よく表現することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム弾性と粘弾性とを併せ持つ物性を示す弾性材料の大変形挙動をシミュレーション上で定量性よく表現するために必要となる応力−ひずみ曲線式を出力するためのプログラム及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、弾性材料の物性を評価する指標として粘弾性があり、その粘弾性を表現するモデルとしては、弾性要素及び粘性要素を直列に配置した一般化Maxwellモデルが用いられる。一般化Maxwellモデルでは、実際の応力−時間曲線(応力緩和曲線)(図1(a)参照)、即ち、弾性材料の粘弾性を、以下の式(1)に示す応力及び時間の相関式(図1(b)参照)で表現することができるため、以下の式(1)に示す応力及び時間の相関式は、応力−時間曲線式(応力緩和曲線式)として用いられる。
【数1】

ここで、σは応力、tは時間、Eは一般化Maxwellモデルにおける弾性要素の引張り弾性係数、τは緩和時間、を表す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、近年は、弾性材料(例えば、粘着剤)の高品質化乃至高付加価値化に伴い、粘弾性だけでは弾性材料の物性を十分に評価できなくなってきている。具体的に言えば、非線形で且つ大変形を起こすような弾性材料であれば、その物性を評価するためには、粘弾性だけでなく、ゴム弾性を指標に加える必要がある。
【0004】
ところが、一般化Maxwellモデルでは、ゴム弾性に関する相関式として、式(1)から以下の式(2)に示す応力及びひずみの相関式を導き出すことができるものの、以下の式(2)に示す応力及びひずみの相関式(図1(d)参照)では、実際の応力−ひずみ曲線(図1(c)参照)、即ち、弾性材料のゴム弾性を表現することができない。
【数2】

ここで、ηは一般化Maxwellモデルにおける粘性要素の粘性係数、εはひずみ、を表す。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、粘弾性モデルである一般化Maxwellモデルを発展させ、粘弾性−ゴム弾性両方の物性を評価できるモデル(以下、「一般化Maxwell発展モデル」という)を作成し、その定式化を行った上で、それを活用できるツールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく構成されたもので、ツールとしての本発明に係るプログラムは、弾性要素及び粘性要素を直列に配置したMaxwellモデルに基づいて求められる、応力、ひずみ、弾性係数及び緩和時間の相関式と、物性に応じて異なる係数を含む、ひずみ及び弾性係数の相関式と、から求められる、前記物性に応じて異なる係数をパラメータとして含む、応力及びひずみの相関式を、応力−ひずみ曲線式として出力するためのプログラムであって、コンピュータを、前記パラメータを入力する入力手段、該入力されたパラメータによって前記応力及びひずみの相関式を特定する特定手段、及び、該特定された応力及びひずみの相関式を、応力−ひずみ曲線式として出力する出力手段、として機能させることを特徴とする。
【0007】
かかる構成によれば、物性に応じて異なるパラメータ(必要に応じてその他のパラメータも含む)を入力することで、弾性材料の物性に応じた応力−ひずみ曲線式が出力される。例えば、適宜、パラメータを変更して入力することで、所望の応力−ひずみ曲線式を追求し、また、それに合うような材料設計を行うといったアプリケーションが期待できる。
【0008】
また、本発明に係るプログラムにおいては、一例として、前記ひずみ及び弾性係数の相関式は、弾性係数をひずみの指数関数で表したものであり、前記パラメータは、指数関数に乗じられる第一パラメータと、指数においてひずみに乗じられる第二パラメータとからなる。
【0009】
その場合、さらなる一例として、応力及びひずみの相関式は、Cauchy応力テンソルを太字σ、Jaumann速度であることを右下付き(J)、弾性係数をG、ひずみ速度テンソルを太字D、前記第一パラメータをA、前記第二パラメータをB、ひずみのスカラー量をハット付きε、弾性要素の偏差応力テンソルを太字σ’、緩和時間をτ、対象を圧縮性線形弾性体とした場合の圧力をp、体積弾性係数をKv、演算子traceをtr、単位テンソルを太字Iで表した場合、以下の式で規定される。
【数3】

【0010】
また、上記課題を解決すべく構成されたもので、ツールとしての本発明に係る装置は、弾性要素及び粘性要素を直列に配置したMaxwellモデルに基づいて求められる、応力、ひずみ、弾性係数及び緩和時間の相関式と、物性に応じて異なる係数を含む、ひずみ及び弾性係数の相関式と、から求められる、前記物性に応じて異なる係数をパラメータとして含む、応力及びひずみの相関式を、応力−ひずみ曲線式として出力する装置であって、前記パラメータを入力する入力手段と、該入力されたパラメータによって前記応力及びひずみの相関式を特定する特定手段と、及び、該特定された応力及びひずみの相関式を、応力−ひずみ曲線式として出力する出力手段とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の如く、本発明によれば、粘弾性モデルである一般化Maxwellモデルを発展させ、粘弾性−ゴム弾性両方の物性を評価できる一般化Maxwell発展モデルを作成し、その定式化を行った上で、それを活用できるツールを提供することができる。また、そのツールを用いて、ゴム弾性と粘弾性とを併せ持つ物性を示す弾性材料の大変形挙動をシミュレーション上で定量性よく表現することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は、実際の応力−時間曲線図、(b)は、一般化Maxwellモデルに基づく計算解によって表現される応力−時間曲線図、(c)は、実際の応力−ひずみ曲線図、(d)は、一般化Maxwellモデルに基づく計算解によって表現される応力−ひずみ曲線図、を示す。
【図2】一般化Maxwell発展モデルの概念図を示す。
【図3】1要素モデルの概念図を示す。
【図4】三次元モードでの一般化Maxwell発展モデルの概念図を示す。
【図5】一般化Maxwell発展モデルを検証するための1要素解析モデルの概念図を示す。
【図6】引張り速度50mm/minにて実測した実際の応力−ひずみ曲線図と、一般化Maxwell発展モデルに基づく計算解によって表現される応力−ひずみ曲線図とを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参酌しつつ説明する。
【0014】
本実施形態は、弾性要素及び粘性要素を直列に配置したMaxwellモデルに基づいて求められる、応力、ひずみ、弾性係数及び緩和時間の相関式と、物性に応じて異なる係数を含む、ひずみ及び弾性係数の相関式と、から求められる、前記物性に応じて異なる係数をパラメータとして含む、応力及びひずみの相関式を、応力−ひずみ曲線式として出力するためのプログラムに言及する。そこで、以下においては、その応力及びひずみの相関式を導出するまでの流れを説明する。
【0015】
上記式(1)で表される一般化Maxwellモデルではゴム弾性を表現できないことは上述の如くである。そこで、ゴム弾性も表現できるよう、一般化Maxwellモデルにおける弾性要素の引張り弾性係数E(並びに、一般化Maxwellモデルにおける粘性要素の粘性係数η)をひずみの関数とするモデル(一般化Maxwell発展モデル)を想定した(図2参照)。尚、緩和時間τ(=η(ε)/E(ε))は、便宜上、一定とする。
【0016】
その上で、まず始めに、粘弾性を表現する上記式(1)に対し、実測の応力緩和試験の値から回帰分析を行い、各ひずみにおける弾性係数Eと緩和時間τの組を求めた。より詳しくは、アクリル系ポリマーをシート状にして作製した粘着剤シートから断面積2mm2の円柱状の試験片を作成し、チャック間10mm、速度1000mm/minにて、所定のひずみになるまで伸張し、次に、ひずみを一定の状態に保持し、応力緩和試験を行い、上記式(1)を用いて回帰分析を行い、各ひずみにおける計五組の弾性係数E、緩和時間τの組を求めた。その結果を以下の表1に表す。
【表1】

尚、表1において、ひずみ(strain)は、対数ひずみである。公称ひずみで表せば、左から、100%、200%、300%、400%、500%、600%、となっている。
【0017】
次に、弾性係数Eのひずみ依存性データをプロットし、カーブフィッティングを行うと、以下の表2に示す如く、弾性係数はひずみに対し、以下の式(3)に示す指数関数で近似することで、高い相関係数(表2中のR2値が1.000に近いほど近似していることを示す)を持つことがわかった。即ち、ひずみ及び弾性係数の相関式は、弾性係数Eをひずみεの指数関数で表した以下の式(3)が妥当であることが確認できた。
【表2】

【数4】

ここで、Aは指数関数に乗じられる第一パラメータ、Bは指数においてひずみεに乗じられる第二パラメータ、を表す。
従って、一般化Maxwellモデルでは、取得すべき物性値は、τi、Eiである(上記式(1)参照)のに対し、一般化Maxwell発展モデルでは、取得すべき物性値は、τi、Ai、Biである。
【0018】
次に、Maxwell要素が一つしかない場合を考える。図3に示すように、応力σ、ひずみε、弾性要素の弾性係数E、粘性要素の粘性係数ηとすると、
【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

となる。そして、上記式(6)を時間で微分すると、以下の式(8)が得られる。
【数9】

また、上記式(5)を時間で微分した式と上記式(7)、上記式(8)を用いて、εa、εbを消去して整理すると、以下の式(9)が得られる。
【数10】

【0019】
ここで、上記式(3)において、A,Bを定数とし、
【数11】

とおいて整理すると、以下の式(10)が得られる。
【数12】

これが図3に示す1要素モデルの構成式である。
【0020】
次に、図2に示すような一般型の構成式を誘導する。一般型になっても、各要素では、上記式(10)が成立するため、以下の式(11)が成立する。
【数13】

本モデルでは、各要素のひずみは一定であるため、ひずみに対して添え字iは付かない。そこで、一般型モデルの全体の応力σは各要素のσiの和であるから、以下の式(12)が成立し、
【数14】

一般化Maxwell発展モデルの応力及びひずみの相関式が得られる。
【0021】
ところで、上記式(12)は、一次元モードの式であり、応力及びひずみの相関式を概念として表すためのものであるが、シミュレーションを行うためには、三次元モードでの定式化を行わなければならない。そこで、以下においては、三次元モードでの式を導出するまでの流れを説明する。
【0022】
まず、一次元モードの場合と同様、三次元の観点で一般化Maxwell発展モデルを図4のように設定すると、(弾性材料の物性に応じて異なる係数を含む、)ひずみ及び弾性係数の相関式は、以下の式(13)のようになる。
【数15】

ここで、Gはせん断弾性係数、ハット付きεはひずみのスカラー量、を表す。
尚、一次元モードの場合は、添え字iを右下付きで記載していたが、以下の三次元モードにおいては、添え字Kを右上付きで記載している。
【0023】
ひずみのスカラー量(ハット付きε)を微小ひずみテンソル(太字ε)を用いて以下の式(14)のように置くこととする。
【数16】

今、K番目ユニットの弾性要素の変位応力テンソル(太字σ’)は、以下の式(15)となる。
【数17】

ここで、添え字がspKのεはK番目ユニットの弾性要素の微小ひずみテンソル、を表す。
【0024】
上記式(15)の両辺を物質時間微分すれば、以下の式(16)となる。
【数18】

ここで、太字Dはひずみ速度テンソル、添え字がspKの太字DはK番目ユニットの弾性要素のひずみ速度テンソル、を表す。
上記式(16)の左辺は客観性のないテンソルであるため、客観応力速度を導入すると、以下の式(17)を弾性要素の構成方程式として用いることができる。
【数19】

ここで、右下付きの(*)は任意の客観応力速度を表す。
【0025】
一方、K番目ユニットの粘性要素における偏差成分の構成方程式は、以下の式(18)で与えられる。
【数20】

K番目ユニットの系全体の微小ひずみテンソルを太字ε、K番目ユニットの微小ひずみテンソルを添え字がKの太字ε、で表すと、以下の式(19)となり、
【数21】

これを物質時間微分すると、以下の式(20)となる。
【数22】

【0026】
上記式(17)、(18)、(20)より、K番目ユニットの偏差成分の構成方程式は、以下の式(21)のように導出される。
【数23】

ここで、上記式(13)は、以下の式(22)となることから、
【数24】

上記式(21)は、以下の式(23)となる。
【数25】

モデルの性質から、モデル全体の応力はユニットK個の応力の総和であることから、偏差成分の応力は、以下の式(24)となる。
【数26】

【0027】
次に、体積成分を考える。ここで、対象を圧縮性線形弾性体と仮定すると、圧力pは以下の式(25)となる。
【数27】

ここで、Kvは体積弾性係数、trは演算子trace、を表し、体積弾性係数Kvは、以下の式(26)となる。
【数28】

ここで、νはポアソン比を表す。
【0028】
上記式(25)を物質時間微分すると、以下の式(27)となる。
【数29】

また、以下の式(28)であり、
【数30】

さらに上記式(22)を代入することにより、以下の式(29)となる。
【数31】

従って、体積成分の構成方程式は以下の式(30)となる。
【数32】

【0029】
客観応力速度としてJaumann速度を用いることを考えると、Cauchy応力(太字σ)の物質時間導関数とそのJaumann速度の間には、以下の式(31)の関係が成り立つ。
【数33】

ここで、太字Wはスピンテンソル、右下付き(J)はJaumann速度であることを表す。
【0030】
Cauchy応力(太字σ)を偏差成分と体積成分に分離すると、以下の式(32)となる。
【数34】

即ち、右辺の第一項が偏差成分であり、第二項が体積成分である。尚、Iは単位テンソルを表す。
ここで、上記式(32)を上記式(31)の右辺に代入すると、以下の式(33)が得られる。
【数35】

従って、客観応力速度としてJaumann速度を採用した場合の全成分の構成方程式は、偏差成分の構成式(上記式(24))と、体積成分の構成式(上記式(30))とから、以下の式(34)が成立し、
【数36】

ここに、一般化Maxwell発展モデルの三次元モードでの応力及びひずみの相関式が得られる。
【0031】
以下に、上記式(34)の検証を行った。まず、アクリル系ポリマーをシート状にして作製した粘着剤シートから断面積2mm2の円柱状の試験片を作成し、チャック間10mm、引張り速度5,50,500mm/minの三条件で、応力−ひずみ測定を行った。上記式(34)の一次元モード式は、以下の式(35)であり(上記式(12)参照)、
【数37】

この式(35)を用いて非線形最小二乗法により、AK,BK,τKを決定した。
【0032】
そして、モデルの妥当性を検証するため、ラグランジェ型解法によって検討を行った。解析モデルは、一辺が10mmの立方体とした。実際の粘着剤は非圧縮に近いポアソン比を示すが、ポアソン比を0.49などとすると、ロッキングと思われる現象が生じ、解析が進まず、また、要素分割数を増やしても同様に解析が進まないので、まずはモデルの妥当性を検証することを目的として、1要素、ポアソン比:0.3である図5のような解析モデルを設定して検証実験を行った。
【0033】
その結果、以下の表3及び図6から明らかなように、実測とシミュレーションの値はよい相関性を示すことがわかった。
【表3】

このように、一般化Maxwell発展モデルは、ゴム弾性−粘弾性の物性を示す粘着剤(弾性材料))の変形を表現するモデルとして、妥当性があるモデルであることが確認できたわけである。そして、以上により、粘弾性については従来と同じようにして評価をし、ゴム弾性については、今回提案する方法で評価をすることで、ゴム弾性と粘弾性とを併せ持つ物性を示す弾性材料の大変形挙動をシミュレーション上で定量性よく表現することができるようになる。
【0034】
ここで、本実施形態に係るソフトウェアは、弾性要素及び粘性要素を直列に配置したMaxwellモデルに基づいて求められる、応力、ひずみ、弾性係数及び緩和時間の相関式(一次元モードにおける上記式(9)、三次元モードにおける上記式(21))と、物性に応じて異なる係数を含む、ひずみ及び弾性係数の相関式(一次元モードにおける上記式(3)、三次元モードにおける上記式(13))と、から求められる、上記物性に応じて異なる係数をパラメータ(一次元モードにおけるAi,Bi,τi、三次元モードにおけるAK,BK,τK)して含む、応力及びひずみの相関式(一次元モードにおける上記式(12)及び式(35)、三次元モードにおける式(34))を、応力−ひずみ曲線式として出力するためのプログラムであって、コンピュータを、上記パラメータ(一次元モードにおけるAi,Bi,τi、三次元モードにおけるAK,BK,τK)を入力する入力手段、該入力されたパラメータによって上記応力及びひずみの相関式を特定する特定手段、及び、該特定された応力及びひずみの相関式を、応力−ひずみ曲線式として出力する出力手段、として機能させるものである。尚、三次元モードにおいては、上記式(34)に挙がっているパラメータAK,BK,τK以外のパラメータも必要に応じて入力可能とするか、予め、コンピュータの記憶部(後述するROMあるいはメモリ)に記憶されるようになっている。
【0035】
本実施形態に係る装置は、コンピュータによって構成され、それぞれバス7に接続されたCPU、ROM、ワーキングメモリ、フレームメモリ、データ入出力装置、ハードディスク及びディスプレイを備える。ROMは、上記プログラムや各種パラメータを記憶し、ワーキングメモリは、CPUが制御を行うために必要なメモリであり、バッファやレジスタ等を含む。CPUは、ROMに記憶されたコンピュータプログラムに従って各種演算や処理を行う。データ入出力装置が上記入力手段、CPU及びROMやメモリからなる制御部が上記特定手段を構成する。出力手段については、応力−ひずみ曲線式によって表現される応力−ひずみ曲線をディスプレイに表示させるならば、ディスプレイが出力手段を構成し、また、応力−ひずみ曲線式を外部に送信するならば、入出力装置が出力手段を構成し、また、応力−ひずみ曲線式を制御部内で保有しておくならば(それを用いるアプリケーションが制御部内にインストールされていて、当該パソコン内でアプリケーションを起動させるケースなど)、制御部自体が出力手段を構成する。
【0036】
また、粘弾性も一緒に評価する観点から、それに関するものもプログラミングされ、装置に保有させる(コンピュータにインストールする)ようにするのが好ましい。
【0037】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0038】
例えば、応力−ひずみ曲線式並びにそれの前提となる各種の相関式は、以上に挙げられたものに限定されるものではなく、その他の適切な近似式に基づいて各種の相関式及びそれに基づいて導出される応力−ひずみ曲線式であってもよい。
【0039】
また、上記実施形態においては、一次元モードでは、弾性係数として、引張り弾性係数Eを用い、三次元モードでは、弾性係数として、せん断弾性係数を用いていたが、一次元モードでも、引張り弾性係数の代わりにせん断弾性係数を用いるようにしてもよい。この場合、各式におけるEはGに置き換えられる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、ゴム弾性と粘弾性とを併せ持つ性質を示す高品質乃至高付加価値な弾性材料を設計するために利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性要素及び粘性要素を直列に配置したMaxwellモデルに基づいて求められる、応力、ひずみ、弾性係数及び緩和時間の相関式と、物性に応じて異なる係数を含む、ひずみ及び弾性係数の相関式と、から求められる、前記物性に応じて異なる係数をパラメータとして含む、応力及びひずみの相関式を、応力−ひずみ曲線式として出力するためのプログラムであって、
コンピュータを、
前記パラメータを入力する入力手段、
該入力されたパラメータによって前記応力及びひずみの相関式を特定する特定手段、
及び、該特定された応力及びひずみの相関式を、応力−ひずみ曲線式として出力する出力手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項2】
前記ひずみ及び弾性係数の相関式は、弾性係数をひずみの指数関数で表したものであり、前記パラメータは、指数関数に乗じられる第一パラメータと、指数においてひずみに乗じられる第二パラメータとからなる請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
応力及びひずみの相関式は、Cauchy応力テンソルを太字σ、Jaumann速度であることを右下付き(J)、弾性係数をG、ひずみ速度テンソルを太字D、前記第一パラメータをA、前記第二パラメータをB、ひずみのスカラー量をハット付きε、弾性要素の偏差応力テンソルを太字σ’、緩和時間をτ、対象を圧縮性線形弾性体とした場合の圧力をp、体積弾性係数をKv、演算子traceをtr、単位テンソルを太字Iで表した場合、以下の式
【数38】

で規定される請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
弾性要素及び粘性要素を直列に配置したMaxwellモデルに基づいて求められる、応力、ひずみ、弾性係数及び緩和時間の相関式と、物性に応じて異なる係数を含む、ひずみ及び弾性係数の相関式と、から求められる、前記物性に応じて異なる係数をパラメータとして含む、応力及びひずみの相関式を、応力−ひずみ曲線式として出力する装置であって、
前記パラメータを入力する入力手段と、
該入力されたパラメータによって前記応力及びひずみの相関式を特定する特定手段と、
及び、該特定された応力及びひずみの相関式を、応力−ひずみ曲線式として出力する出力手段と
を含むことを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−256293(P2010−256293A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109605(P2009−109605)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 研究集会名:日本機械学会第21回計算力学講演会 主催者名:社団法人日本機械学会 計算力学部門 開催日:2008年11月1日(土)〜3日(月)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【Fターム(参考)】