説明

応答確率計算方法及び応答確率計算装置並びにそれを用いた通信システム

【課題】 複数の端末に応答確率を送信し、各端末は応答確率に応じて端末情報を報告する通信システムにおいて、応答確率を適切に更新して、応答数を許容値以下に抑制することで、応答による輻輳や衝突を回避しかつ短い時間で所定数以上の応答数を得る。
【解決手段】 応答数が少ない場合(ステップS111,YES)、短い更新回数で応答確率を単調増加させる第1の計算方法で応答確率を更新し(ステップS114)、応答数がある程度多い場合(ステップS104,NO)、前回の応答確率と前回の応答数とを用いて、応答数の期待値が目標値となるような応答確率を計算する第2の計算方法で応答確率を更新する(ステップS117)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は応答確率計算方法及び応答確率計算装置並びにそれを用いた通信システムに関し、特に複数の端末に同一の応答確率を送信して端末が当該応答確率で端末情報を報告するようにした通信システムにおける応答確率計算方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
W−CDMAシステムにおける、Broadcast (プロードキャスト)機能及びMulticast (マルチキャスト)機能として、3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、MBMS(Multimedia Broadcast Multicast Service)がRelease.6 で仕様化されている。
【0003】
このMBMSでは、全てのセルに同時に同一のデータ送信を行なうものであり、このデータ伝送のモードとしては、PTM(ポイントツーマルチポイント:Point-to-Multipoint )と、PTP(ポイントツーポイント:Point-to-Point)とがある。PTMは、1つのRL(Radio Link:無線回線)でセル内の全端末にデータ送信する伝送モードであり、物理チャネルとして、各セルに設定した共通チャネルSCCPCH(Secondary Common Control Physical Channel )が用いられる。このPTMは、1つのRLでデータ送信できるので、無線リソースを節約することができるが、セル全体をカバーできるようにするために、十分高い送信電力にする必要がある。従って、セル端(セル境界)付近以外の端末にとっては、過剰な電力レベルでデータ送信が行われることになる。
【0004】
一方、PTPは、1RLで1つの端末にデータ送信する伝送モードであり、物理チャネルとして、高速物理下り共用チャネルHS−PDSCH(high Speed - Pyhsical Downlink Shared Channel )、あるいは個別物理チャネルDPCH(Downlink Pyhsical Channel )が用いられる。HS−PDSCHはHSDPA(High Speed Downlink Packet Access )方式のデータチャネルであり、受信品質に応じて、送信レートを変更するAMCS(Adaptive Modulete and Coding Schemes)が適用され、DPCHと比較して、高速でデータを送信することができる。
【0005】
DPCHは、受信品質に応じて、送信電力を変更する、周知のインナーループ制御(Inner loop Power Control)が適用される。従って、PTPは、受信品質に応じて、1RL当たりの無線リソースを節約することができるが、全送信データ量がMBMS受信ユーザ数に従って増加するため、MBMSデータ受信ユーザ数が多い場合、送信電力が大きくなってしまう。
【0006】
RNC(基地局制御装置)は、MBMSを実施する場合、セル毎のMBMS受信ユーザ数(N_count)を測定する。この処理をcountingと呼ぶ。このCountingでは、全ユーザに対して、等しい値の応答確率AP(Access Probability)を送信する。MBMSデータの受信を希望するユーザは、各々、応答確率APに応じて応答する。例えば、AP=10%の時、各MBMS受信ユーザは、確率10%で応答する。
【0007】
RNCは、あるAPに対して同時に応答したユーザ数(以下、応答数)を用いて、N_countを測定し、この測定したN_countに基づいて、MBMSデータ送信の実施の有無や、PTM伝送とPTP伝送の選択や、PTM伝送チャネルとPTP伝送チャネルの切り替えなどを決定できる。
【0008】
N_countを2回の応答数の相加平均で測定する例を示す。1回目はAP=10%、同時応答数=9人とし、2回目はAP=20%、応答数=22人とすると、以下のように、N_countは100人と測定できる。
N_count=1/2*{(9/10%)+(22/20%)}=100人
なお、*は乗算を示す(以下同じ)。
【0009】
RNCは、MBMSサービス開始時、MBMS受信ユーザ数を効率よく測定したい。また、応答による回線の輻輳や衝突を回避するために、応答数をある上限値以下にしたい。また、測定誤差を小さくするため、応答数をある下限値以上(例えば、1人以上)確保したい。
【0010】
応答数が上限値を超えて回線の輻輳や衝突が発生するのを避けるために、最初は小さいAPを送信し、応答数が0、あいは少なければ、APを増やしていく。APを増やす方法としては、例えば、以下の式(1)に示すような一次関数的に増やす方法が考えられる。nはAPの更新回数を、aは初期値を、Sは増加ステップを、それぞれ表すものとする。
AP(n)=a+S*(n−1) ……(1)
【0011】
その他にも、以下の式(2)に示す指数関数的に増やす方法も考えられる。Bは指数の底であり、他のパラメータの定義は式(1)と同じであるものとする。
AP(n)=a*B^(n−1) ……(2)
【0012】
なお、関連する技術として、特許文献1〜5がある。
【特許文献1】特開2005−252506号公報
【特許文献2】特表2006−505979号公報
【特許文献3】特表2006−515496号公報
【特許文献4】特表2006−515737号公報
【特許文献5】特表2006−526316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
APを送信の度に大きく増加させると、応答数が直ぐに下限値を超えるので、短いAP送信回数で、MBMS受信ユーザ数を測定することができる。しかしながら、特に、MBMS受信ユーザ数が多い場合には、応答数が上限値を超えやすいことが問題となる。
【0014】
一方、APを少しずつ増加させると、応答数を上限値以下に抑えることができる。しかしながら、特に、MBMS受信ユーザ数が少ない場合には、応答数が少ないために、測定に時間がかかることが問題となる。
【0015】
従って、従来のAPの計算方法では以下のような問題がある。APを1次関数的に増やす方法では、増加ステップが大きいと、直ぐに、応答数が上限値を超えやすくなる。一方、増加ステップが小さいと、測定に非常に時間がかかりやすくなる。APを指数関数的に増やす方法は、短い時間での測定を期待できるが、APの更新回数に応じて、APが急増するので、途中で応答数も急増して上限値を超えやすくなる。
【0016】
上記のように、APを適切に更新して、応答数を許容値以下に抑制することにより、応答による輻輳や衝突を回避し、かつ短い時間で所定数以上の応答数を得るという課題は、無線、有線に関わらず、複数の端末にAPを送信し、各端末がAPに応じて端末情報を報告する通信システムにおいて共通の課題となっている。
【0017】
例えば、無線通信システムでは、APに応じて、無線チャネルの受信品質を報告させ、この受信品質を用いて送信電力を制御することが考えられる。また、有線通信システムでは、端末のステータス情報の収集などが考えられる。
【0018】
そこで、本発明は上述した課題を解決すべくなされたものであって、その目的とするところは、応答による回線の輻輳や衝突の発生を抑制しつつ所定数以上の応答数を短い時間で確保することが可能な応答確率計算方法及び応答確率計算装置並びにそれを用いた通信システム、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明による応答確率計算方法は、通信網側から複数の端末に応答確率を送信し、前記端末は前記応答確率に応じて端末情報を前記通信網側に報告する通信システムにおける応答確率計算方法であって、前記応答確率を単調増加させる第1の計算方法と、前記応答確率を前回送信した応答確率と前回の応答数とを用いて計算する第2の計算方法とのいずれかを、前記端末の応答数に応じて選択するステップと、この選択した計算方法により前記応答確率を計算するステップとを含むことを特徴とする。
【0020】
本発明による応答確率計算装置は、通信網側から複数の端末に応答確率を送信し、前記端末は前記応答確率に応じて端末情報を前記通信網側に報告する通信システムにおける応答確率計算装置であって、前記応答確率を単調増加させる第1の計算方法と、前記応答確率を前回送信した応答確率と前回の応答数とを用いて計算する第2の計算方法とのいずれかを、前記端末の応答数に応じて選択する手段と、この選択した計算方法により前記応答確率を計算する手段とを含むことを特徴とする。
【0021】
本発明による通信システムは、上記の応答確率計算装置を有する基地局制御装置を含むことを特徴とする移動通信システムである。
【0022】
本発明によるプログラムは、通信網側から複数の端末に応答確率を送信し、前記端末は前記応答確率に応じて端末情報を前記通信網側に報告する通信システムにおける応答確率計算方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記応答確率を単調増加させる第1の計算方法と、前記応答確率を前回送信した応答確率と前回の応答数とを用いて計算する第2の計算方法とのいずれかを、前記端末の応答数に応じて選択する処理と、この選択した計算方法により前記応答確率を計算する処理とを含むことを特徴とする。
【0023】
本発明の作用を述べる。第1の計算方法と第2の計算方法とを予め準備しておき、応答確率に対する応答数に応じて、第1の計算方法と第2の計算方法とを択一的に選択し、選択した計算方法で応答確率を更新する。第1の計算方法は、短い更新回数で、応答確率を単調増加させる計算方法である。第2の計算方法は、前回の応答確率と前回の応答数とを用いて、応答数の期待値が目標値となる応答確率を計算する方法である。
【0024】
これにより、応答数が少ない場合、第1の計算方法で応答確率を更新するので、応答数を短い更新回数で増加させることができる。また、応答数がある程度多い場合、第2の計算方法で応答確率を更新するので、応答数を許容値以下に抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、応答数が少ない場合には、短い更新回数で応答確率を単調増加させる第1の計算方法で応答確率を更新し、応答数がある程度多い場合には、前回の応答確率と前回の応答数とを用いて、応答数の期待値が目標値となるような応答確率を計算する第2の計算方法で応答確率を更新するようにすることにより、応答による回線の輻輳や衝突の発生を抑制しつつ所定数以上の応答数を短い時間で確保できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
<第1の実施の形態>
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。先ず、本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、本発明が適用される無線通信システムの例を示す図である。本発明が適用されるシステムは、基地局制御装置(RNC)100、基地局110〜112、これら各基地局が管轄するセル120〜122を含む通信網と、これら通信網に収容されて通信が可能な端末130〜135とを有して構成されている。この無線通信システムはW−CDMAシステムであり、当該システムにおいてMBMSを実施する形態を想定するものとする。
【0027】
基地局制御装置100は、基地局110〜112と接続されている。また、基地局と端末とは、上りと下りの無線チャネルによって接続可能である。各端末は、受信品質が良いセルを送信セル(以下、サービングセルとする)とし、このサービングセルからMBMSデータを受信するようになっている。本実施の形態では、MBMSデータを受信する場合、端末130はセル120をMBMS開始時のサービングセルとする。同様に、端末131〜133はセル121を、端末134,135はセル122を、それぞれサービングセルとする。
【0028】
MBMSを実施する場合、基地局制御装置100は、MBMS受信ユーザ数を測定するために、基地局120〜122を介して、端末130〜135に応答確率(以下、AP:Access Probability)を送信する。端末130〜135の中で、MBMSデータの受信を希望する端末は、基地局制御装置100に対して、APの確率で応答する。基地局制御装置100は、端末の応答数から、セル毎のMBMS受信ユーザ数を測定する。例えば、図1において、端末131〜133の全てがMBMSデータの受信を希望する場合、AP=100%を送信すると、セル121で同時に応答する端末数は3となる。
【0029】
図2は、本発明が適用される無線通信システムの基地局制御装置100の基本構成の例を示す図である。図2を参照すると、基地局制御装置100は、基地局制御部101と応答制御部102とを有している。基地局制御部101は、W−CDMAシステムにおいて用いられる基地局制御装置と同様の機能を有しており、その構成及び動作については周知であるので、その説明を省略する。応答制御部102は、適宜APを更新して、全端末にAPを送信し、このAPに応じた端末の応答数から、セル毎のMBMS受信ユーザ数を測定するものである。
【0030】
次に、本実施の形態の動作について図面を参照して説明する。図3は、応答制御部102がMBMSを実施する場合に、APを送信して端末からの応答数からMBMS受信ユーザ数を測定するための動作手順を示すフローチャートである。本実施の形態では、直近L回の応答数の平均値が、所定の下限値(=N_low≧1)よりも大きい場合に、MBMS受信ユーザ数の測定計算をする。ここで、N_lowは、MBMS受信ユーザ数の測定誤差を小さくするための下限値である。
【0031】
先ず、応答制御部102は、APを初めて送信する場合、以下の第1の計算式である式(3)で、AP(k)を計算する(ステップS101)。
AP(k)=a*B^(n−1) ……(3) (第1の計算式)
ここに、kはAPの送信回数を、nは第1の計算式でのAPの更新回数を、aは初期値を、Bは指数の底を、それぞれ表す。なお、nの初期値は1とする。APを初めて送信する場合、AP(k=1)=a*B^(1−1)=aとなる。
【0032】
次に、応答制御部102は、APを各端末に送信する(ステップS102)。そして、MBMSデータの受信を希望する端末がAPの確率で応答するので、その応答数N_res(k)を測定する(ステップS103)。次に、今回の応答数N_res(k)も含め、直近L回の応答数N_res(i)(i=k−L+1〜k)の平均値N_res,ave(下記の式(4)参照)がN_low以上の場合(ステップS104,Yes)、MBMS受信ユーザ数N_countを以下の式(5)で計算して、処理を終了する(ステップS105)。
【0033】
N_res,aveがN_lowよりも小さいか、あるいはAPの送信回数がL回に達してない場合、APの更新計算を実施し(ステップA)、再びAPを送信する。
【数1】

【数2】

【0034】
APの更新計算(ステップA)については、図4のAPの更新計算の動作手順を示すフローチャートを使って、詳しく説明する。本実施の形態では、APを第1の計算式で更新する場合、APの送信毎に更新する。その理由は、応答数を早く増加させるためである。また、APを第2の計算式で更新する場合、直近のM−1回のAPの送信において、APを更新していない場合とする。その理由は、前回のAPでも、ある程度の応答数が期待できるためである。
【0035】
先ず、前回の応答数N_res(k−1)と第1しきい値N_thr1 を比較する(ステップS111)。N_res(k-1)<N_thr1 であり(ステップS111,Yes)、かつ前回のAPの更新で第1の計算式を使用した場合(ステップS112,Yes)、第1の計算式によるAPの更新回数nを1増やして(ステップS113)、AP(k)を第1の計算式で更新する(ステップS114)。
【0036】
一方、N_res(k−1)<N_thr1 でないか(ステップS111,No)、あるいは、前回のAPの更新で第1の計算式を使用していない(ステップS112,No)、第2の計算式で更新するためのカウンタjを1増やし(ステップS115)、jをMで割った余りが0であれば(ステップS116,Yes)、AP(k)を、下記の式(6)で示す第2の計算式で更新する(ステップS117)。なお、ステップS116におけるMOD(x,y)はxをyで割った余りを表す式である。
AP(k)=N_target /N_res(k−1)*AP(k−1)
……(6) (第2の計算式)
【0037】
上記により、直近のM−1回のAPの送信において、APを更新していなければ、APを更新できる。N_target は応答数の目標値である。次に、APを第2の計算式で更新した場合、jを初期化する(ステップS118)。なお、jの初期値は0とする。
【0038】
上記第1の計算式及び第2の計算式について説明する。先ず、第1の計算式は、APを指数関数的に増やす式であり、短い時間で応答数が増加することが期待できる。また、第2の計算式は、前回送信した応答確率と前回の応答数とから、応答数の期待値が目標値(N_target )となるAPを計算する式である。本実施の形態では、応答数が急増して所定の上限値よりも大きくなることを避けるために、応答数が第1のしきい値以上になった後は、第2の計算式でAPを更新する。応答数が許容値以上に急増する前に、第2の計算式で更新できるようにするために、Nthr_1 <N_target となるよう設定する。また、jをMで割った余りが0でなければ(ステップS116,No)、APを更新しない。
【0039】
<第1の実施の形態に対応する実施例>
次に、上述した第1の実施の形態に対応した実施例について説明する。本実施例では、今回送信するAPの送信回数が6回目(k=6)と仮定して説明する。先ず、図4の動作例を説明する。各パラメータは以下のとおりとする。
a=0.01,B=2(第1の計算式)
M=2,N_thr1 =5,N_target =15(>N_thr1 ),
n=4,N_res(5)=5(前回),N_res(4)=7,j=1
【0040】
AP(4)は第1の計算式で計算し、前回のAPであるAP(5)は、AP(4)から更新していないとする。
AP(k−2)=AP(4)=a*B^(n−1)=0.01*2^(4−1)=0.08 (第1の計算式)
AP(k−1)=AP(5)=AP(4)=0.08
【0041】
最初に、応答制御部102は、前回の応答数N_res(5)と第1しきい値N_thr1を比較し、N_res(5)=8<N_thr1 1=5とならないので(ステップS111、No)、第2の計算式で更新するためのカウンタj=0を1増やして、j=2とする(ステップS115)。次に、以下の式より、APを更新すると判定し(ステップS116)、第2の更新式で更新する(ステップS117)。
【0042】
MOD(j,M)=MOD(2,2)=0
AP(k=6)=N_target /N_res(5)*AP(5)=15/5*0.08=0.24 (第2の計算式)
最後に、第2の計算式で更新するためのカウンタjを初期化し、j=0とする(ステップS118)。
【0043】
次に、図4のフローチャートでAPを更新した後の図3の動作例を説明する。各パラメータは以下のとおりとする。
L=3,N_low=3
応答制御部102は、更新したAP(=AP(6))を端末に送信し(ステップS102)、その応答数N_res(6)を測定する(ステップS103)。その結果、N_res(6)=16と測定したとする。次に、以下のように、直近のL=3回の平均応答数が、N_low以上か判定する(ステップS104)。
N_res,ave=1/3*(N_res(4)+N_res(5)+N_res(6))=1/3*(7+5+16)=9.3>N_low=3
【0044】
上記のように、平均応答数がN_low以上なので、以下の式(7)のように、MBMS受信ユーザ数N_countを72と測定し、処理を終了する(ステップS105)。
【数3】

【0045】
<第2の実施の形態>
以下に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態の構成は、図1,2に示された第1の実施の形態のそれと同じである。次に、本実施の形態の動作について図面を参照して説明する。本実施の形態は、APの更新計算の動作手順を示すフローチャートが、図4の第1の実施の形態とは異なる。図5は、本実施の形態のAPの更新計算の動作手順を示すフローチャートである。
【0046】
図5を参照すると、図4のステップS112が削除された点と、ステップS118が削除され、代わりにステップS121が追加された点で、第1の実施の形態と異なる。即ち、N_res(k−1)<N_thr1 である場合(ステップS111,Yes)、第1の計算式によるAPの更新回数nを1増やして(ステップS113)、AP(k)を第1の計算式で更新する(ステップS114)。
【0047】
また、APを第1,2の何れかの計算式で更新した場合、第2の計算式で更新するためのカウンタjを初期化する(ステップS121)。APを第1の計算式で更新した場合も、jを初期化するのは、本実施の形態では、APを第2の計算式で更新した後でも、APを第1の計算式で更新できるためである。本変更によって、第1の実施の形態と同様に、直近のM−1回のAPの送信において、APを更新していない場合に、APを第2の計算式で更新できる。
【0048】
本実施の形態によって、応答数がたまたま大きいことがあったために、第2の計算式でしかAPを更新できず、その結果、APの増加に時間がかかり、応答数が第1のしきい値と比較して、非常に小さい状態が継続することを抑制できる。
【0049】
<第3の実施の形態>
次に本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態の構成は、図1,2に示された第1の実施の形態と同じである。次に本実施の形態の動作について図面を参照して説明する。
【0050】
本実施の形態は、APの更新計算の動作手順を示すフローチャートが、図4の第1の実施の形態とは異なる。図6はAPの更新計算の動作手順を示すフローチャートである。図6を参照すると、本実施の形態の動作は、図4のステップS117が、ステップS131〜S133に入れ替わっている点であり、この点が第1の実施の形態と異なる。
【0051】
すなわち、第2の計算式で更新するためのカウンタjをMで割った余りが0であれば(ステップS116,Yes)、N_res(k−1)と第2しきい値N_thr2を比較する(ステップS131)。N_thr2 は応答数の目標値となるので、第1の実施の形態と同様、Nthr_1 <N_thr2 となるよう設定する。N_res(k−1)が、N_thr2 よりも小さかった場合、AP(k)を以下の第3の計算式で更新する(ステップS132)。N_thr2 以上だった場合、AP(k)を以下の第4の計算式で更新する(ステップS133)。Sは増減のステップサイズを示す。
【0052】
AP(k)=AP(k−1)+S (N_res(k−1)<N_thr2 の場合) ……(8) (第3の計算式)
AP(k)=AP(k−1)−S (N_res(k−1)≧N_thr2 の場合) ……(9) (第4の計算式)
【0053】
上記の第3及び第4の計算式について説明する。第3及び第4の計算式も、第1の実施の形態の第2の計算式と同様に、応答数の期待値が目標値となるAPを計算する式である。第3及び第4の計算式により、第2の計算式の懸念点の改善が期待できる。すなわち、第2の計算式は、前回の応答数N_res(k−1)が、たまたま小さかった場合、AP(k)を過剰に大きな値にしてしまい、その結果、応答数N_res(k)が急増する懸念である。従って、Sをある程度小さな値に設定すれば、AP(k)が過剰に大きくならず、N_res(k)の急増が抑制できる。
【0054】
<第4の実施の形態>
次に本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態の構成は、図1,2に示された第1の実施の形態と同じである。次に、本実施の形態の動作について図面を参照して説明する。本実施の形態は、APの更新計算の動作手順を示すフローチャートが、図6の第3の実施の形態とは異なる。図7はAPの更新計算の動作手順を示すフローチャートである。
【0055】
図7を参照すると、図6のステップS112が削除された点と、ステップS118が削除され、代わりにステップS141が追加された点であり、この点で第1の実施の形態と異なる。第2の実施の形態と第1の実施の形態の違いと同じであるので、動作の説明は省略する。
【0056】
本実施の形態によって、第2の実施の形態と同じく、応答数がたまたま大きいことがあったために、第3,4の計算式でしかAPを更新できず、その結果、APの増加に時間がかかり、応答数が第1のしきい値と比較して、非常に小さい状態が継続することを抑制できる。
【0057】
<その他の実施の形態>
その他の実施の形態として、APは全端末同一であっても、端末を複数のグループに分け、そのグループ毎に設定してもよい。例えば、セル当たりの端末密度を考慮して、繁華街のセルではAPを小さく設定し、郊外のセルではAPを大きく設定する、などが考えられる。
【0058】
以上の各実施の形態では、W−CDMAシステムにおけるMBMS受信ユーザ数の測定を例に説明したが、本発明は、他の制御にも適用できる。例えば、本発明は、W−CDMAのMBMSにおける、チャネルの受信品質の測定の報告にも適用できる。チャネル品質が所定のレベルよりも悪い端末がいれば、その端末に合わせて、PTM伝送の共通チャネルSCCPCHの送信電力を増加させることで、MBMSのカバー率を維持するなどの制御が考えられる。この時、上り回線のトラヒック量に応じてAPを更新すれば、輻輳を回避して、チャネル品質情報を受信できる。
【0059】
また、本発明は、例えば、図8に示すような、有線の通信システムにも適用できる。図8に示すような、サーバ200が、ネットワーク210を介して、各端末220〜222と接続されている通信システムである。サーバ200が、APに応じて、端末にステータス情報の報告を要求する処理などが考えられる。この時、サーバ200は、サーバ自身の負荷状況や、回線の込み具合に応じて、逐次、APを更新すれば、平均的に期待する応答数のステータス情報を受信できる。
【0060】
上述した各実施の形態における動作は、その動作手順を予めプログラムとしてROMなどの記録媒体に記録しておき、これをコンピュータにより読み取らせて実行させるように構成できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第1の実施の形態の通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の基地局制御の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態のMBMS受信ユーザ数を測定するための動作手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施の形態のAPの更新計算するための動作手順を示すフローチャート図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態のAPの更新計算するための動作手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第3の実施の形態のAPの更新計算するための動作手順を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第4の実施の形態のAPの更新計算するための動作手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明のその他の実施の形態の通信システムの構成の例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0062】
100 基地局制御装置
101 基地局制御部
102 応答制御部
110〜112 基地局
120〜122 セル
130〜135,220〜222 端末
200 サーバ
210 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信網側から複数の端末に応答確率を送信し、前記端末は前記応答確率に応じて端末情報を前記通信網側に報告する通信システムにおける応答確率計算方法であって、
前記応答確率を単調増加させる第1の計算方法と、前記応答確率を前回送信した応答確率と前回の応答数とを用いて計算する第2の計算方法とのいずれかを、前記端末の応答数に応じて選択するステップと、
この選択した計算方法により前記応答確率を計算するステップとを含むことを特徴とする応答確率計算方法。
【請求項2】
前記選択するステップは、
前記応答数が第1のしきい値を超えるまで前記第1の計算方法を選択するステップと、
前記応答数が前記第1のしきい値を超えた後は前記第2の計算方法を選択するステップとを有するこを特徴とする請求項1記載の応答確率計算方法。
【請求項3】
前記選択するステップは、
前記前回の応答数が第1のしきい値よりも小さい場合は前記第1の計算方法を選択するステップと、
前記前回応答数が前記第1のしきい値以上の場合は、前記第2の計算方法を選択するステップとを有することを特徴とする請求項1記載の応答確率計算方法。
【請求項4】
前記第1の計算方法は、指数関数を用いた計算方法であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の応答確率計算方法。
【請求項5】
前記第2の計算方法は、前記応答数の期待値が目標値となる応答確率を計算する計算方法であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の応答確率計算方法。
【請求項6】
前記複数の端末に同一データ送信を行なうステップを更に含み、
前記端末情報は、前記端末が前記同一データ送信を受信することを示す情報であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の応答確率計算方法。
【請求項7】
前記端末情報は、前記端末の受信品質を示す情報であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の応答確率計算方法。
【請求項8】
前記端末情報は、前記端末のステータス情報であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の応答確率計算方法。
【請求項9】
通信網側から複数の端末に応答確率を送信し、前記端末は前記応答確率に応じて端末情報を前記通信網側に報告する通信システムにおける応答確率計算装置であって、
前記応答確率を単調増加させる第1の計算方法と、前記応答確率を前回送信した応答確率と前回の応答数とを用いて計算する第2の計算方法とのいずれかを、前記端末の応答数に応じて選択する手段と、
この選択した計算方法により前記応答確率を計算する手段とを含むことを特徴とする応答確率計算装置。
【請求項10】
前記選択する手段は、
前記応答数が第1のしきい値を超えるまで前記第1の計算装置を選択する手段と、
前記応答数が前記第1のしきい値を超えた後は前記第2の計算装置を選択する手段とを有するこを特徴とする請求項9記載の応答確率計算装置。
【請求項11】
前記選択する手段は、
前記前回の応答数が第1のしきい値よりも小さい場合は前記第1の計算方法を選択する手段と、
前記前回応答数が前記第1のしきい値以上の場合は、前記第2の計算方法を選択する手段とを有することを特徴とする請求項9記載の応答確率計算装置。
【請求項12】
前記第1の計算方法は、指数関数を用いた計算方法であることを特徴とする請求項9〜11いずれか記載の応答確率計算装置。
【請求項13】
前記第2の計算方法は、前記応答数の期待値が目標値となる応答確率を計算する計算方法であることを特徴とする請求項9〜11いずれか記載の応答確率計算装置。
【請求項14】
前記複数の端末に同一データ送信を行なう手段を更に含み、
前記端末情報は、前記端末が前記同一データ送信を受信することを示す情報であることを特徴とする請求項9〜13いずれか記載の応答確率計算装置。
【請求項15】
前記端末情報は、前記端末の受信品質を示す情報であることを特徴とする請求項9〜13いずれか記載の応答確率計算装置。
【請求項16】
前記端末情報は、前記端末のステータス情報であることを特徴とする請求項9〜13いずれか記載の応答確率計算装置。
【請求項17】
請求項9〜16いずれか記載の応答確率計算装置を有する基地局制御装置を含むことを特徴とする移動通信システム。
【請求項18】
通信網側から複数の端末に応答確率を送信し、前記端末は前記応答確率に応じて端末情報を前記通信網側に報告する通信システムにおける応答確率計算方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記応答確率を単調増加させる第1の計算方法と、前記応答確率を前回送信した応答確率と前回の応答数とを用いて計算する第2の計算方法とのいずれかを、前記端末の応答数に応じて選択する処理と、
この選択した計算方法により前記応答確率を計算する処理とを含むことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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