説明

急性骨髄性白血病に対する三重特異性治療剤

本発明は、(a)CD123;(b)CD16及び(c)CD33に対する結合特異性を有する分子に関する。本発明はさらに、Vドメインに連結されたVドメインを含む第1の免疫グロブリンドメイン(この免疫グロブリンドメインはCD123に特異的に結合する);Vドメインに連結されたVドメインを含む第2の免疫グロブリンドメイン(この免疫グロブリンドメインはCD16に特異的に結合する);及びVドメインに連結されたVドメインを含む第3の免疫グロブリンドメイン(この免疫グロブリンドメインはCD33に特異的に結合する)を含む、本発明の分子に関する。本発明はさらに、本発明の分子をコードする核酸分子に関する。さらに、本発明は、急性骨髄性白血病及び/又は骨髄異形成症候群の治療における、本発明の分子又は核酸分子の診断組成物及び医薬組成物並びに使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)CD123;(b)CD16及び(c)CD33に対する結合特異性を有する分子に関する。本発明はさらに、Vドメインに連結されたVドメインを含む第1の免疫グロブリンドメイン(この免疫グロブリンドメインはCD123に特異的に結合する);Vドメインに連結されたVドメインを含む第2の免疫グロブリンドメイン(この免疫グロブリンドメインはCD16に特異的に結合する);及びVドメインに連結されたVドメインを含む第3の免疫グロブリンドメイン(この免疫グロブリンドメインはCD33に特異的に結合する)を含む、本発明の分子に関する。本発明はさらに、本発明の分子をコードする核酸分子に関する。さらに、本発明は、急性骨髄性白血病及び/又は骨髄異形成症候群の治療における、本発明の分子又は核酸分子の診断組成物及び医薬組成物並びに使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書では、特許出願及び製造業者の取り扱い説明書を含む多数の文献を引用する。これらの文献の開示は、本発明の特許性に関連するとはみなされないものの、参照によってその全体が本明細書中に組み込まれる。より具体的には、全ての参考文献は、各個々の文献が参照によって組み込まれると具体的かつ個々に示されるのと同程度まで、参照により組み込まれる。
【0003】
急性骨髄性白血病(AML)は、米国で1年間に約13,300の新規症例があり、年間8,800人が死亡する、2番目に高頻度の急性白血病である(Jemal et al,2008)。一般に適用される白血病治療としては、照射及び/又は化学療法が挙げられる。さらに、特定の状況下では、骨髄移植のさらなる可能性が適切とみなされる。しかし、これらの治療は患者にとって比較的毒性が高く、疾患からの完全な治癒につながらない場合が非常に多い。このように、化学療法を受ける全ての患者の65〜80%で完全寛解が達成できるが(Cros et al,2004、Kern and Estey 2006)、これらの患者のほとんどは再発する(Cros et al,2004)。従来の化学療法の初期過程後の寛解期には、患者の骨髄中の芽細胞数は総骨髄白血球の約5%以下にまで減少し、化学療法を生き延びた細胞は、「微小残存病変」(MRD)細胞と呼ばれる。これらの細胞は、化学療法に対して特に抵抗性であるAML白血病幹細胞(AML−LSC)中に豊富であり、再増殖が可能で再発を引き起こすことが可能な細胞の特に危険な貯蔵所を構成する。白血病幹細胞は、急性骨髄性白血病に関して特によく特徴付けられている(Lapidot et al,1994、Bonnet and Dick 1997、Hope et al,2004)。AML−LSCは、とりわけCD123、C型レクチン様分子−1(CLL−1)、CD44、CD33、及びAML症例のサブセットに関してはCD96を含む、細胞表面抗原の特徴的なセットを発現する(Jordan et al,2000、Bakker et al,2004、Jin et al,2006、Hauswirth et al,2007、Hosen et al,2007、Misaghian et al,2009)。これらの際立った細胞は、細胞周期への進入がまれであること、自己再生能、並びに化学療法剤及びDNA損傷に対する抵抗性の増強を含む、独自の生物学的特性を示す。従ってこれらは、微小残存病変(MRD)細胞の集団に顕著に寄与する可能性が高く、従来の方法で治療されたAML患者における再発の原因である(Ravandi and Estrov 2006)。標準的な化学療法を受ける60歳未満の患者の4年無病生存率は、約40%に達するに過ぎない。さらに、60歳より高齢の患者は予後が不良であり、4年無病生存率は10%〜15%にすぎない(Mayer et al,1994、Gardin et al,2007)。AML患者の高い再発率及び高齢患者の予後不良は、AML−LSCを優先的に標的化する新規治療の喫急の必要性を強調している。
【0004】
AML治療のためにFDAが承認した薬物は、CD33特異的薬物であるゲムツズマブオゾガマイシン(GO,MylotargTM,Wyeth,Madison,NJ,USA)である。この薬剤の使用は、最初の再発における60歳より高齢の患者と、標準的な化学療法に対して抵抗性の患者とに制限される(Bross et al,2001、Sievers 2001)。GOは、細胞傷害剤カリチアマイシンに化学的にカップリングされたヒト化抗CD33 IgG抗体からなる(Hamann et al,2002)。第2相臨床試験では、再発したAML患者の30%がGOに応答した(Sievers 2001、Larson et al,2002)。しかし、肝静脈閉塞症、肺毒性及び重篤な過敏症反応を含む副作用が見出された。さらに、in vitro研究により、CD33陰性細胞株に対する抗原非依存的細胞傷害性が明らかになった(Bross et al,2001、Jedema et al,2004、Schwemmlein et al,2006)。
【0005】
過去、改善された抗腫瘍活性を有する非コンジュゲート化モノクローナル抗体を開発するために、異なるアプローチが使用されてきた。これらのアプローチの1つは、種々の方法で二重特異性抗体を生成することであった。一般に、これらの分子は、腫瘍細胞上の標的抗原に対する1つの結合部位と、エフェクター細胞上の活性化トリガー分子(例えば、T細胞上のCD3、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球及びマクロファージ上のCD16(FcγRIII)、好中球及び単球/マクロファージ上のCD89(FcαRI)及びCD64(FcγRI)、並びに樹状細胞上のDEC−205)に対する第2の結合部位とからなる(Peipp and Valerius 2002、Wang et al,2005)。好ましいエフェクター細胞集団の特異的動員とは別に、エフェクター細胞上のトリガー分子に対する選択された結合部位がFc結合エピトープと重複しない場合、二重特異性抗体は、内在性免疫グロブリンG(IgG)との競合を回避する。さらに、全長免疫グロブリンの代わりに単鎖Fv断片を使用することによって、非細胞傷害性細胞上のFcレセプター(例えば、血小板及びB細胞上のFcγRII)、細胞傷害性細胞を活性化しないFcレセプター(多形核白血球(PMN)上のFcγRIIIbが含まれる)及び抑制性Fcレセプター(例えば、単球/マクロファージ上のFcγRIIb)へのこれらの分子の結合が妨げられる(Daeron 1997)。
【0006】
CD19及びCD16に対する二重特異性ディアボディ(diabody)(Kipriyanov et al,2002)、CD19及びCD16に対するタンデムbsscFv(Bruenke et al,2005)並びにヒト白血球抗原クラスII及びCD16に対するタンデムbsscFv(Bruenke et al,2004)を含む、白血病由来細胞に対する細胞溶解活性を有する、多数の二重特異性単鎖Fv(bsscFv)融合タンパク質が当該分野で公知である。これらのタンパク質は、エフェクター細胞として、CD16陽性NK細胞及び単球/マクロファージ(これらは共に、in vivoの重要なエフェクター細胞集団である)を動員する(Uchida et al,2004)。MCSP(Melanoma−associated Chondroitin Sulfate Proteoglycan)×CD28(Otz et al,2009)並びにCD19×CD3(Bargou et al,2008)コンストラクトを含む別の群の分子は、エフェクターとして細胞傷害性T細胞を動員する。このCD19×CD3分子は、第1相臨床試験及び進行中の第2相臨床試験において有望な結果を生じた、最初の組換え二重特異性単鎖Fvである(Nagorsen et al,2009)。
【0007】
bsscFv及びいくつかの代替的形態は、特徴的な利点を提供するが、さらなる改善がいまだに必要である。二重特異性タンパク質の治療効力を決定する重要なパラメータは、親和性、結合価、安定性及びサイズである。多くのscFv断片は、組換えscFv形態への変換の間に被った損失に起因して、対応する親モノクローナル抗体(mAb)よりも低い親和性を示す(Huston et al,1988)。また、scFvは、アンフォールドになり凝集する傾向に起因して、薬物承認及び臨床適用のための懸案事項である、特徴的に低下した熱安定性を示すことが多い(Willuda et al,1999)。さらに、約10〜20アミノ酸の可動性リンカーによって接続された2つのscFvからなる最も単純な形態のbsscFvは、たった約50〜60kDaの相対分子量(Mr)を有し、65kDa以下のMrを有するタンパク質は、腎臓によって血流から迅速に除去される(Kipriyanov et al,1999、Huhalov and Chester 2004)。最後に、bsscFvはFc部分を欠くので、Fcドメイン中に埋め込まれた新生児型FcRに対する相互作用ドメインも欠いている。新生児型FcRは、インタクトなIgGの再循環を促進する(Raghavan et al,1994)。血液からの迅速なクリアランスにより、腫瘍部位での保持が不十分になる(Hu et al,1996)。
【0008】
これらの問題を克服するために多数の改善がなされている。1つは、in vitro変異誘発によるscFvのV鎖とV鎖との間への人工的な分子内ジスルフィド結合の追加(「ジスルフィド安定化」という)であった(Reiter et al,1994、Bruenke et al,2005)。余分な結合により、scFvのアンフォールディング及び変性が防止され、安定性の顕著な向上が生じる(Reiter et al,1994)。二重特異性タンパク質のサイズは、PEG化(Kubetzko et al,2006);さらなるタンパク質ドメイン(例えば、ヒト血清アルブミン)の追加(Huhalov and Chester 2004、Muller et al,2007);又は余分なscFv構成要素の追加(Schoonjans et al,2000)を含む種々の修飾によって、増大されてきた。これらの修飾は、in vivoにおける血漿及び身体での保持時間の改善をもたらした(Kontermann 2005)。さらなる改善は、二重特異性タンパク質のscFv構成要素のin vitro親和性成熟によって達成された(McCall et al,2001)。親和性の増加は、インタクトな抗体及び二重特異性抗体のin vitroでの細胞傷害能を増加させることができ(McCall et al,2001、Tang et al,2007)、in vivoでのscFvの特異的腫瘍保持に有利に働く(Adams et al,1998)。最後に、二重特異性タンパク質の細胞傷害能における重要な改善が、腫瘍細胞上の標的抗原に対する第2の又はさらなる結合部位を含めることでそれらの結合価を増加させることによって、達成されている(Shahied et al,2004)。結合価が増加し、質量が増加した抗体由来タンパク質の多数の異なる形態が記載されており、これには、抗体−scFv融合物(Coloma and Morrison 1997)、ミニボディ(minibody)(Hu et al,1996、Shahied et al,2004)、Fab−scFv融合物(Schoonjans et al,2000)、トリアボディ(triabody)及びテトラボディ(tetrabody)などのマルチマーscFv(Todorovska et al,2001)、タンデムscFvディアボディ(Kipriyanov et al,1999)及びジ−ディアボディ(di−diabody)(Lu et al,2003、Muller and Kontermann 2007)が含まれる。
【0009】
WO 2009/007124は、新規単鎖コンストラクトを提供することによってbsscFvの制限を克服するためのさらなる形態を記載している。この分子は、タンデムに共有結合された3つのscFvからなり、そのうち2つは腫瘍細胞上の標的抗原に特異的であり、そのうち1つはエフェクター細胞上のトリガー分子に特異的である。この形態(単鎖Fvトリプルボディ(triplebody)(sctb)と称する)は、単鎖ポリペプチドである点で、多鎖コンストラクトであるマルチマーscFv、トリアボディ及びテトラボディとは異なる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
治療的に適切な抗体コンストラクトの開発における上記進歩にもかかわらず、急性骨髄性白血病並びに骨髄異形成症候群の治療に利用可能な満足できる治療剤は、現時点では存在しない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この必要性は、特許請求の範囲で特徴付けた実施形態の提供によって対処される。
【0012】
従って、本発明は、第1の実施形態において、(a)CD123;(b)CD16;及び(c)CD33に対する結合特異性を有する分子に関する。
【0013】
本発明によれば、結合特異性は、分子の異なる部分(好ましくは、モジュラー形態である)によって付与されると理解すべきである。好ましい実施形態では、CD123、CD16及びCD33に対する結合特異性を有する分子のそれらの部分は、タンパク質性の性質のもの、例えば、ポリペプチド又はかかるポリペプチド内のアミノ酸配列である。これらのアミノ酸配列は、ポリペプチド内の連続するアミノ酸配列であり得る。或いは、ポリペプチドの異なる部分由来のアミノ酸又はアミノ酸鎖が、分子に結合特異性を付与し得る。より好ましくは、本発明の分子全体がポリペプチドである。
【0014】
用語「ポリペプチド」は、本明細書中で使用する場合、30アミノ酸より多くを含む、アミノ酸の直鎖分子鎖(単鎖タンパク質又はその断片を含む)を記述する。従って、用語「ペプチド」は、本発明で使用する場合、最大30アミノ酸を含むアミノ酸の直線状の鎖を記述する。用語「(ポリ)ペプチド」とは、本発明に従って使用する場合、最大30アミノ酸からなるペプチドの群と、30より多いアミノ酸からなるポリペプチドの群とを含む、一群の分子をいう。
【0015】
さらに、かかるタンパク質/ポリペプチドのペプチド模倣物も本発明によって包含され、この模倣物では、アミノ酸(複数可)及び/又はペプチド結合(複数可)は、機能的アナログによって置換されている。かかる機能的アナログには、遺伝子がコードする20種のアミノ酸以外の全ての公知のアミノ酸(例えば、セレノシステイン)が含まれる。相互交換可能に使用される用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、天然に修飾されたポリペプチド/タンパク質のことも指し、この修飾は、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、及び当該分野で周知の同様の修飾によってもたらされる。
【0016】
本発明に従う用語「結合特異性を有する」とは、本発明の分子の部分(即ち、その結合部分)が、そのそれぞれの標的(即ち、抗原CD123、CD16及びCD33)に結合することを意味する。これらがそのそれぞれの標的に特異的に結合することが特に好ましい。用語「特異的に結合する(specifically binds及びspecifically binding)」(「特異的に相互作用する」と同じ意味を有する)は、本発明に従って使用する場合、これらの結合部分が、標的抗原のエピトープと類似した構造を有するエピトープとは交差反応しない又は本質的に交差反応しないことを意味する。調査中の分子パネルの交差反応性は、例えば、従来の条件下で、目的のエピトープ、並びに程度の差はあれ(構造的に及び/又は機能的に)密接に関連した多数のエピトープに対する、この分子パネルの結合を評価することによって、試験され得る。その関連する文脈において目的のエピトープ(例えば、タンパク質の構造中の特定のモチーフ)には結合するが、他のエピトープのいずれにも結合しない又は本質的に結合しない分子のみが、目的のエピトープに対して特異的であるとみなされ、従って、本発明に従う分子であるとみなされる。対応する方法は、例えば、Harlow and Lane「Antibodies,A Laboratory Manual」,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988及びHarlow and Lane「Using Antibodies:A Laboratory Manual」Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999に記載されている。本発明に従う1つの例示的分子は、CD16に結合し、CD123及びCD33に特異的に結合する分子である。従って、この好ましい分子は、他の標的抗原との交差反応性なしにCD123及びCD33と結合するが、この分子は、他の標的抗原と結合可能なCD16結合部分を含み得る。かかるCD16結合部分は、例えば、他の標的抗原(例えば、CD32、CD64又は新生児型FcレセプターFcRnなど)に結合することが公知の免疫グロブリンGのFc部分であり得る。本発明に従うより好ましい分子は、CD16、CD123及びCD33の全てに特異的に結合するが、他の抗原のいずれとも交差反応しない分子である。CD16に対しても特異的な結合を達成するための方法は、当該分野で周知であり、例えば、以下の実施例に記載される。
【0017】
本発明の分子の(a)〜(c)に挙げられた抗原に対する結合特異性を有する本発明の分子の結合部分は、この分子内に任意の順序で、例えば、(a)−(b)−(c)、(b)−(c)−(a)、(c)−(a)−(b)、(b)−(a)−(c)などで配置され得る。より好ましくは、(a)〜(c)の結合部分は、N末端からC末端の方向で、或いはC末端からN末端の方向で、列挙した順序で配置される(例えば、タンパク質性の配列について、(a)−(b)−(c)の順で配置される)。
【0018】
上で詳述したように、従来の化学療法の初期過程後の寛解期には、患者の骨髄中の芽細胞数は総骨髄白血球の約5%以下にまで減少する。化学療法を生き延びた細胞である「微小残存病変」細胞は、AML白血病幹細胞(AML−LSC)中に豊富である。これらの重要な腫瘍前駆細胞の効果のない排除は、化学療法後のAML患者で見られる高い再発数の原因であると考えられる。従って、それらの特異的な排除が、AML治療を改善するための最も有利な機会を提供する見込みがあるので、これらの腫瘍再増殖細胞の発見は、重要な臨床的意味を持つ。AML幹細胞は、とりわけCD123、C型レクチン様分子−1(CLL−1)、CD44、CD33、及びAML症例のサブセットに関してはCD96を含む、細胞表面抗原の特徴的なセットを発現する(Jordan et al,2000、Bakker et al,2004,Jin et al,2006、Hauswirth et al,2007、Hosen et al,2007、Misaghian et al,2009)。AML−LSCの約60%はCD33を発現し、約70%はCD123を発現する(Taussig et al,2005、Hauswirth et al,2007)。
【0019】
インターロイキン−3レセプターのαサブユニット(IL−3Rα)であるCD123は、種々の造血細胞(主に骨髄細胞を含む)上で発現されるが、Bリンパ球の部分集団上でも発現される。CD123は、末梢T細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、血小板及び赤血球上では発現されない(Moretti et al,2001)。CD123は、造血器悪性腫瘍において広く発現され、AML−LSC上でも検出されているが(Jordan et al,2000、Munoz et al,2001、Testa et al,2004、Taussig et al,2005、Jin et al,2009)、正常な造血幹細胞上では低密度でしか存在しない(Huang et al,1999、Jin et al,2009)。従って、CD123は、正常HSCと比較してAML−LSC上で4倍の発現増加を示し、そのため、治療剤の特に興味深い標的になっている(Jin et al,2009)。
【0020】
CD33は、80%を超えるAML患者の芽細胞上及び正常骨髄細胞上に存在する67kDaの細胞表面糖タンパク質である。この抗原は、造血系以外の組織では見出されないが、正常な造血幹細胞(HSC)のサブセット上で発現されると考察されている(Dinndorf et al,1986、Grossbard et al,1992、Legrand et al,2000、Sievers 2001、Taussig et al,2005)。
【0021】
CD16は、IgGに対する低親和性レセプター(FcγRIII)であり、NK細胞及びマクロファージの表面上では膜貫通アイソフォームとして構成的に発現され(CD16a)、好中球の表面上ではグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー分子として構成的に発現される(CD16b)(Ravetch and Kinet,1991;van deWinkel and Anderson,1991)。細胞内シグナル伝達に関して、CD16aは、下流のシグナル伝達を誘発する免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含むFcRγ鎖との会合を必要とする。CD16を介してNK細胞を再指示する(redirect)、従来の方法でカップリングされた二重特異性抗体を用いた研究により、培養悪性細胞の及び動物モデルにおける強力な細胞溶解が実証された(de Palazzo et al,1992;Hombach et al,1993;Kipriyanov et al,2002)。その結果、CD16に対する二重特異性抗体を用いた臨床研究が開始された(Weiner et al,1995;Hartmann et al,1997)。しかし、ハイブリッド−ハイブリドーマ抗体の免疫原性、並びにFcドメインの存在によって引き起こされる望ましくない副作用、及び臨床等級の物質を十分量で製造することの困難性が、これらの臨床試験を制限した。
【0022】
本発明の分子は、メインの標的としてのCD123と、AML治療のための立証されたさらなる標的抗原として機能するCD33とを用いた二重標的化アプローチを使用することによって、AML−LSCの優先的な標的化を可能にする。さらに、CD16に対する本発明の分子の特異的結合は、本発明の分子によって標的化されるAML白血病幹細胞を排除可能なエフェクター細胞の動員を可能にする。達成された治療効果は、抗体依存性細胞傷害(ADCC、「再指示された溶解(redirected lysis)」ともいう)による腫瘍細胞の直接的排除の結果、並びにAML細胞の溶解から生じるAML細胞のアポトーシス断片の生成である。これらの断片は、食細胞によってその後取り込まれ、プロセシングされて、CD4Tリンパ球及びCD8Tリンパ球によって再度提示される。両方の機構が、体液性抗腫瘍抗体の二次的力価及びCD8細胞傷害性Tリンパ球による細胞性抗腫瘍応答を構築する助けとなる。
【0023】
WO 2009/007124は、トリプルボディを提供する一般的概念を記載している。しかし、この文献は、AML及び骨髄異形成症候群の治療のためにAML−LSCの標的化された排除を達成するための、CD123、CD33及びCD16の特定の組合せを開示していない。本発明者らの最良の知識によれば、AML細胞上のCD123及びCD33並びにエフェクター細胞上のCD16を接続する三重特異性(trispecific)抗体も組換え三重特異性抗体誘導体もこれまで報告されておらず、この特定の組合せが、AML及び骨髄異形成症候群の治療においてAML−LSCの首尾よい標的化を生じることは、予測できなかった。それにもかかわらず、本発明のトリプルボディは、以下の実施例6に示すように、標的細胞の優れた排除を提供する。
【0024】
AML腫瘍細胞上に発現された抗原(即ち、CD123及びCD33)に対する結合特異性とエフェクター細胞抗原(即ち、CD16)に対する結合特異性との、少なくとも2:1の比が、本発明の有利な特徴である。白血病腫瘍細胞上に発現された抗原に対する結合特異性の率がより高いことは、腫瘍細胞に対する親和性が増加するという効果を有する。従って、白血病腫瘍細胞上に発現された抗原に対して標的化された抗原結合部分の数がより多いことにより、本発明の分子が、エフェクター細胞に結合する前に、白血病腫瘍細胞に結合する確率が増大する。エフェクター細胞の前に白血病腫瘍細胞を動員することは、以下の理由によって有利である:治療に関して、免疫応答は一般に、免疫応答を媒介するエフェクター細胞の表面上に発現されたそれぞれの抗原に対する、1若しくは2の特異性を有する免疫グロブリンの結合又は天然のトリガー分子の結合に際して誘導される。それにより、エフェクター細胞は、抗体分子が腫瘍細胞に結合したか否かを識別できず、従って、抗体誘導体が白血病腫瘍細胞に結合していない場合には、非特異的免疫応答につながる。対照的に、白血病腫瘍抗原に特異的な抗原結合部位とエフェクター細胞に特異的な抗原結合部位との2:1の比は、本発明の分子が、エフェクター細胞の抗原に結合する前に、白血病腫瘍細胞に結合する確率を増大させる。白血病腫瘍細胞への結合力の増大の結果として、腫瘍細胞上での細胞表面保持時間が延長され、従って、標的化能が改善される。これは、非特異的免疫応答の量を大きく低下させ、従って、以前に知られた分子の有害な副作用を減少させ得る。
【0025】
本発明の分子の好ましい実施形態において、結合特異性は、Vドメイン及びVドメインによって付与される。
【0026】
用語「Vドメイン」及び「Vドメイン」は、当該分野で提供される定義に従って使用される。従って、これらの用語は、免疫グロブリンの重鎖可変領域(V)及び軽鎖可変領域(V)をそれぞれ指す。一般に、Vドメイン及びVドメインは、それぞれ3つの相補性決定領域(CDR)を含み、このCDRは、抗原の結合を主に担う高度に可変性の領域である。本発明によれば、Vドメイン又はVドメインは、得られた免疫グロブリンドメインが所望の機能を発揮する限り、即ち、標的抗原に特異的に結合する限り、ドメイン1つあたり少なくとも1つのCDR、好ましくは少なくとも2つのCDR又は好ましくは3つ全てのCDRからなり得る。好ましくは、標的抗原はヒト抗原、即ち、ヒトCD123、ヒトCD33及びヒトCD16である。
【0027】
結合特異性は、(a)、(b)及び(c)に対するそれぞれの結合特異性について、Vドメインのみ若しくはVドメインのみによって、又はVドメイン及びVドメインの両方の組合わせによって、独立して付与され得ることが理解されよう。好ましくは、Vドメイン及びVドメインによって付与される結合特異性は、(a)、(b)及び(c)に対するそれぞれの結合特異性について、組合わせ(即ち、Vドメイン及びVドメインの両方)によって付与される。
【0028】
本発明の分子の別の好ましい実施形態において、結合特異性は、リガンド、アンチカリン(anticalin)、アドネクチン(adnectin)、アフィボディ(affibody)又はDARPinによって付与される。
【0029】
本発明によれば、用語「リガンド」とは、それぞれの標的(即ち、CD123、CD16又はCD33)に結合しそれと複合体を形成できる分子をいう。この用語は、その断片及び/誘導体も指す。CD123の天然に存在するリガンドはインターロイキン−3(IL−3)であるが、CD16の天然に存在するリガンドは免疫グロブリンGのFc部分であり、CD33の天然に存在するリガンドは、シアル酸、好ましくはN−アセチルノイラミン酸−α6−ガラクトース−β4−N−アセチルグルコサミンである。
【0030】
本発明に関連して用語「その断片及び/又は誘導体」とは、全長分子の生物学的機能の1以上をなおも有する、分子の断片及び/又は分子の修飾バージョンをいう。特に、この実施形態で想定されるリガンドの断片及び/又は誘導体は、それぞれの抗原CD123、CD16又はCD33に結合可能である。より好ましくは、リガンドの断片及び/又は誘導体は、それぞれの抗原CD123、CD16又はCD33に特異的に結合可能である。
【0031】
機能的分子(例えば、(ポリ)ペプチド又は糖類)は、変更されていない又は実質的に変更されていない機能を有する断片を得るために切断され得ることが当該分野で周知である。かかる切断には、(ポリ)ペプチドからの所与の数のN末端及び/又はC末端アミノ酸の除去が含まれ得る。さらに又は或いは、得られた(ポリ)ペプチドが全長(ポリ)ペプチドの機能を有することを条件として、多数の内部(非末端)アミノ酸が除去され得る。末端及び/又は内部領域から除去されるアミノ酸の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50であり得、又は50より多くてもよい。1と50との間の任意の他の数も、本発明に従って意識的に想定される。同様に、糖類の断片には、その末端に欠失を有するもの並びに内部欠失を有するものが含まれる。
【0032】
(ポリ)ペプチド又は糖類のかかる機能的ドメインを決定するための手段及び方法は、当該分野で周知であり、実験的手段及びバイオインフォマティクス手段が挙げられる。実験的手段には、欠失変異体の体系的生成、及び当該分野で公知の上記所望の機能に関するアッセイでのそれらの評価が挙げられる。バイオインフォマティクス手段には、データベース検索が挙げられる。適切なデータベースには、タンパク質配列データベース並びにvon der Lieth(2003)に記載されるような糖鎖生物学用のデータベースが挙げられた。この場合、有意なヒットの複数の配列アラインメントがドメイン境界を示し、このドメイン(複数可)は、その配列の残部と比較して高いレベルの配列保存を示す、その/それらの部分配列からなる。さらに適切なデータベースには、保存されたタンパク質ドメインの統計的モデルのデータベース、例えば、Sanger Institute,UKが維持するPfam(www.sanger.ac.uk/Software/Pfam)が挙げられる。
【0033】
誘導体を得るために分子が修飾され得ることが、当該分野でさらに公知である。かかる修飾としては、限定ではなく以下が挙げられる:(i)カルボキシル基のエステル化、又は(ii)カルボン酸によるヒドロキシル基のエステル化、又は(iii)例えば、ホスフェート、ピロホスフェート若しくはスルフェート又はヘミスクシネートへの、ヒドロキシル基のエステル化、又は(iv)医薬上許容される塩の形成、又は(v)親水性部分の導入、又は(vi)芳香族(aromate)又は側鎖上の置換基の導入/交換、置換基パターンの変更、又は(vii)同配体(isosteric)部分若しくは生物学的等価(bioisosteric)部分の導入による修飾、又は(viii)同族化合物の合成、又は(ix)分岐側鎖の導入、又は(x)環式アナログへのアルキル置換基の変換、又は(xi)ケタール、アセタールへのヒドロキシル基の誘導体化、又は(xii)アミド、フェニルカルバメートへのN−アセチル化、又は(xiii)Mannich塩基、イミンの合成、又は(xiv)Schiff塩基、オキシム、アセタール、ケタール、エノールエステル、オキサゾリジン、チアゾリジンへのケトン若しくはアルデヒドの転換、又はそれらの組合わせ。
【0034】
上記種々の工程は、当該分野で一般に公知である。これらの工程は、定量的構造活性相関(QSAR)分析(Kubinyi,「Hausch−Analysis and Related Approaches」,VCH Verlag,Weinheim,1992)、コンビナトリアルバイオケミストリ、古典的化学など(例えば、Holzgrabe and Bechtold,Deutsche Apotheker Zeitung 140(8),813−823,2000を参照)を含むか又はこれらに依存する。
【0035】
用語「アンチカリン」とは、本明細書中で使用する場合、リポカリンから誘導された操作されたタンパク質をいう(Beste et al.1999;Gebauer and Skerra,2009)。アンチカリンは、リポカリン間で高度に保存されたコアユニットを形成し、4つの構造的に可変性のループによってリガンドに対する結合部位を開口端に天然に形成する、8本鎖のβバレルを有する。アンチカリンは、IgGスーパーファミリーに対しては相同でないものの、抗体の結合部位に典型的であるとこれまで考えられてきた以下の特徴を示す:(i)配列多様性の結果としての高い構造的柔軟性、及び(ii)異なる形状を有する標的への誘導された適合を可能にする、コンフォメーション可動性の上昇。
【0036】
本発明に従う「アドネクチン」(モノボディ(monobody)とも呼ぶ)は、2〜3の露出したループを有する94残基のIg様bサンドイッチフォールドをとるが、中心的ジスルフィド結合を欠く、ヒトフィブロネクチンIIIの10番目の細胞外ドメイン(10Fn3)に基づく(Gebauer and Skerra,2009)。
【0037】
本発明に従う「アフィボディ」は、その2つのaヘリックス上に界面を提供する約58残基の3ヘリックスバンドルである、ブドウ球菌プロテインAのZドメインに基づく(Gebauer and Skerra,2009)。
【0038】
本発明によれば、用語「DARPin」とは、典型的には3つの繰り返しbターンから生じる柔軟性のない界面を提供する、設計されたアンキリンリピートドメイン(166残基)をいう。DARPinは通常、人工的コンセンサス配列に対応する3つのリピートを保有し、それにより、リピート当たり6つの位置がランダム化されている。結果として、DARPinは構造的可動性を欠く(Gebauer and Skerra,2009)。
【0039】
上記結合分子は全て当業者に周知であり、先行技術及び当業者の一般的知識に従って定義される。
【0040】
本発明の分子の好ましい実施形態では、(a)、(b)及び(c)に対する特異性を付与する結合部分は、ポリペプチドである。
【0041】
より好ましい実施形態において、本発明の分子は単一のポリペプチド鎖である。
【0042】
本発明の分子の別の好ましい実施形態において、(a)、(b)及び(c)に対する特異性を付与する分子の結合部分は、リンカーによって連結されている。
【0043】
用語「リンカー」は、本発明に従って使用する場合、(a)CD123、(b)CD16及び(c)CD33に対する特異性を付与する本発明の分子の結合部分を分離する、アミノ酸の連続(sequel)(即ち、ペプチドリンカー)並びに非ペプチドリンカーに関する。
【0044】
本発明が想定するペプチドリンカーは、少なくとも1アミノ酸長の(ポリ)ペプチドリンカーである。好ましくは、リンカーは、1〜100アミノ酸長である。より好ましくは、リンカーは5〜50アミノ酸長であり、なおより好ましくは、リンカーは10〜20アミノ酸長である。本発明の分子の3つの結合部分を分離するリンカーは、同じ長さでも異なる長さでもよく、同じ又は異なるアミノ酸配列を含み得る。1つの好ましい実施形態において、リンカーは、同じ長さ及び同じアミノ酸配列を有する。
【0045】
別の好ましい実施形態において、本発明の分子の3つの結合部分を分離するリンカーは、長さ及び/又はアミノ酸配列が互いに異なる。さらに、リンカーの性質、即ち、長さ及び/又はアミノ酸配列は、分子の安定性及び/又は溶解性を改変又は増強し得る。リンカーの長さ及び配列は、本発明の分子のそれぞれの結合部分の組成に依存する。
【0046】
当業者は、種々のリンカーの適切さを試験するための方法をよく認識している。例えば、分子の特性は、本発明の分子の結合部分の結合親和性を比較することによって、容易に試験できる。本発明の三重特異性分子の場合、各結合部分についてのそれぞれの測定が実施され得る。得られた分子の安定性は、数回の期間にわたって37℃でヒト血清中でインキュベートした後の分子の残存結合能を決定するための、フローサイトメトリーベースの方法を使用して測定できる。他の適切な試験は、例えばBruenke et al.(2005)中に見出され得る。
【0047】
好ましい実施形態において、リンカーは、例えばアミノ酸アラニン及びセリン、又はグリシン及びセリンを使用する、可動性(flexible)リンカーである。好ましくは、リンカー配列は、(GlySer)又は(GlySer)である。
【0048】
本発明の分子が単一のポリペプチド鎖である場合、リンカーはペプチドリンカーであることが当業者に理解されよう。
【0049】
用語「非ペプチドリンカー」とは、本発明に従って使用する場合、2つ以上の反応性基を有する連結基をいうが、上記ペプチドリンカーは除かれる。例えば、非ペプチドリンカーは、両端に反応性基(これらは、本発明の分子の結合部分の反応性基に個々に結合する)(例えば、アミノ末端、リジン残基、ヒスチジン残基又はシステイン残基)を有するポリマーであり得る。ポリマーの反応性基には、アルデヒド基、プロピオン(propionic)アルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド基、ケトン基、ビニルスルホン基、チオール基、ヒドラジド基、カルボニルジイミダゾール(carbonyldimidazole)(CDI)基、ニトロフェニルカーボネート(NPC)基、トリシレート(trysylate)基、イソシアネート基及びスクシインイミド誘導体が挙げられる。スクシインイミド誘導体の例としては、スクシンイミジルプロピオネート(SPA)、スクシンイミジルブタン酸(SBA)、スクシンイミジルカルボキシメチラート(SCM)、スクシンイミジルスクシンアミド(SSA)、スクシンイミジルスクシネート(SS)、スクシンイミジルカーボネート及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)が挙げられる。非ペプチドポリマーの両端の反応性基は、同じでも異なってもよい。例えば、非ペプチドポリマーは、一方の末端にマレイミド基を有し、他方の末端にアルデヒド基を有していてもよい。
【0050】
さらに好ましい実施形態において、リンカーはペプチドリンカーである。
【0051】
さらに好ましい実施形態において、本発明は本発明の分子に関し、この分子は、Vドメインに連結されたVドメインを含む第1の免疫グロブリンドメイン(この免疫グロブリンドメインはCD123に特異的に結合する);Vドメインに連結されたVドメインを含む第2の免疫グロブリンドメイン(この免疫グロブリンドメインはCD16に特異的に結合する);及びVドメインに連結されたVドメインを含む第3の免疫グロブリンドメイン(この免疫グロブリンドメインはCD33に特異的に結合する)を含む。
【0052】
CD123に特異的に結合する第1の免疫グロブリンドメインが、上記本発明の分子の(a)に挙げた結合特異性に関することは、当業者に理解されるであろう。同様に、CD16に特異的に結合する第2の免疫グロブリンドメインは、上記本発明の分子の(b)に挙げた結合特異性に関し、CD33に特異的に結合する第3の免疫グロブリンドメインは、上記本発明の分子の(c)に挙げた結合特異性に関する。
【0053】
用語「Vドメインに連結されたVドメインを含む免疫グロブリンドメイン」とは、本発明に従って使用する場合、それらの抗原に結合するのに必要かつ十分であると示された、免疫グロブリンの単鎖断片可変ドメイン(scFv)をいう。VドメインはVドメインに連結される。即ち、これらは、直接的又はリンカーを介して互いに接続される。
【0054】
本発明によれば、本発明の分子は、単一種由来の免疫グロブリンドメインを含んでもよいが、キメラ分子又はヒト化分子であってもよい。
【0055】
本発明の分子の(a)〜(c)の免疫グロブリンドメインは、任意の順序で、例えば、(a)−(b)−(c)、(b)−(c)−(a)、(c)−(a)−(b)、(b)−(a)−(c)などで配置され得る。より好ましくは、(a)〜(c)の免疫グロブリンドメインは、N末端からC末端の方向で、或いはC末端からN末端の方向で、列挙した順序(即ち、(a)−(b)−(c))で配置される。好ましくは、(a)〜(c)の免疫グロブリンドメインは、N末端からC末端の方向で、列挙した順序で配置される。Vドメイン及びVドメインは、VドメインがVドメインのN末端側又はC末端側に位置するように、免疫グロブリンドメイン内に配置され得る。従って、本発明の分子をコードする核酸分子において、Vドメインをコードする核酸配列は、Vドメインをコードする核酸配列の5’側又は3’側に位置し得る。当業者は、Vドメイン及びVドメインのどの配置が特定のscFvにより適しているかを、決定できる。好ましくは、Vドメインは、VドメインのN末端側に位置する。
【0056】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1つの免疫グロブリンドメインは、分子内ジスルフィド結合を形成可能な少なくとも2つのシステイン残基を含む。
【0057】
本発明によれば、目的の抗原に結合する免疫グロブリンドメインは、少なくとも1つの分子内ジスルフィド結合の形成によって安定化され得る。適切なシステイン残基は、免疫グロブリンドメイン中に天然に存在するものであってもよく、適切なアミノ酸をシステインに変異させることによって免疫グロブリンドメイン中に導入されてもよい。人工的なシステイン架橋を持つ修飾抗体を設計する際には、以下の必要条件を満たす必要がある。第1に、ジスルフィド結合は、免疫グロブリンのFvの構造的に保存された領域中(即ち、V及びV領域中)のアミノ酸を接続すべきである。言い換えると、本発明の方法に従う免疫グロブリンドメイン(a)〜(c)の1つ内のV中のシステインとV中のシステインとの間で、ジスルフィド結合が形成する。ジスルフィド結合は、異なる免疫グロブリンドメイン間ではなく、1より多いこれらの免疫グロブリンドメイン中に形成され得る。さらに、VドメインとVドメインとの間の距離は、Fv分子中の不都合な歪みの発生なしにジスルフィド結合を形成できる程度に十分小さくなければならない。最後に、ジスルフィド結合は、抗原結合を妨害しないように、CDRから十分離れているべきである。結果として、ジスルフィド結合を形成するために導入されるシステインは、ほとんどの抗体中で構造的に保存された位置でV領域及びV領域のCDRを接続する、Fvのフレームワーク領域中に存在すべきである。Glockshuber et al.(1990)、Brinkmann et al.(1993)及びReiter et al.(1994)は、これらの基準を示しており、最初のジスルフィド安定化Fv抗体を成功裏に樹立した。本発明の分子のアミノ酸配列中の変異は、Vドメイン中の100位又はVドメイン中の44位の塩基トリプレットにおいて、それらがシステイン残基をコードするように、本発明の分子をコードする核酸分子中に、例えばReiter et al.(1994)に従って導入され得る。全ての位置はKabatの番号付けに従う(Kabat et al.,1991)。核酸分子中に変異を導入するための手段は当業者に公知であり、例えば、Sambrook and Russell「Molecular Cloning,A Laboratory Manual」,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.(2001)及びAusubel,Current Protocols in Molecular Biology,Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.(2001)から得ることができる。好ましくは、ジスルフィド結合は、本発明の分子に従う(b)の免疫グロブリンドメインのV領域中のシステインとV領域中のシステインとの間で形成する。
【0058】
WO 2009/007124に開示されているように、scFvの免疫グロブリンドメイン中へのジスルフィド結合の導入は、それらの特異性に影響を与えることもそれらの親和性及び機能性を低下させることもなく、また分子の可溶性を失うことなく、これらの分子の安定性を大いに増強することが以前に示されている。
【0059】
さらに好ましい実施形態において、本発明の分子は、Vドメインから少なくとも1つのVを分離する又はVドメインから少なくとも1つのVを分離する、少なくとも1つのリンカーを含む。
【0060】
1つの免疫グロブリンドメインのVドメイン及びVドメインを分離するリンカー並びに異なる免疫グロブリンドメインを分離するリンカーは、同じ又は異なる長さを有し得、同じ又は異なる組成を含むように選択され得る。例えば、これらのリンカーは、同じ又は異なるアミノ酸配列又は非ペプチドポリマーを含み得る。1つの好ましい実施形態において、リンカーは、同じ長さ及び同じ組成を有する。
【0061】
別の好ましい実施形態において、異なる免疫グロブリンドメインを分離するリンカーは、1つの免疫グロブリンドメインのV領域及びV領域を分離するリンカーとは、長さ及び/又は組成が異なる。例えば、前者は、より長くてもよく、互いに対する免疫グロブリンドメインの可動性を促進するため、又は分子の正確な折り畳みを促進するため及び/又はその標的抗原に対する1つの免疫グロブリンドメインの親和性を増強するために、設計され得る。さらに、リンカーの性質(即ち、長さ及び/又は組成)は、分子の安定性及び/又は可溶性を改変又は増強し得る。
【0062】
上述のように、リンカーの長さ及び配列は、免疫グロブリンドメインを形成するそれぞれのVドメイン及びVドメインの組成に依存する。例えば、本発明のポリペプチドのN末端から開始する場合、Vドメインの後にVドメインが来るのであれば、1つの免疫グロブリンドメインのV領域を分離する20アミノ酸のリンカーが最適であり得る。対照的に、Vドメインの後にVドメインが来るのであれば、それぞれのリンカーは、15アミノ酸の最適な長さを有し得る。いずれの科学理論に束縛されることも望まないが、これらの差異は、異なる配置のVドメインを有する免疫グロブリンドメインの正確な折り畳みを促進する異なる長さのリンカーを導く立体上の理由に起因し得ると考えられる。
【0063】
当業者は、例えば上記方法のいずれかを使用することによって、免疫グロブリンドメイン内又は免疫グロブリンドメイン間の異なるリンカーの適切性を試験するための方法を、十分認識している。
【0064】
好ましい実施形態において、少なくとも2つの可変ドメインが、例えばアミノ酸アラニン及びセリン、又はグリシン及びセリンを使用する可動性リンカーによって、融合される。好ましくは、リンカー配列は、(GlySer)又は(GlySer)である。
【0065】
別の好ましい実施形態において、少なくとも1つのVドメインとVドメインとの間、又は免疫グロブリンドメイン内若しくは免疫グロブリンドメイン間のVドメインとVドメインとの間には、リンカーは存在しない。
【0066】
別の好ましい実施形態において、全ての可変ドメインはリンカーによって融合される。
【0067】
別の好ましい実施形態において、本発明の分子はさらに、少なくとも1つのさらなる(ポリ)ペプチドを含む。
【0068】
好ましくは、さらなる(ポリ)ペプチドは、免疫グロブリンドメインとは無関係であり、例えば、本発明のポリペプチドの性能を改善するのに適したタグ又は機能的(ポリ)ペプチドであり得る。タグは、例えば、Strepタグ、Hisタグ、Mycタグ又はFlagタグであり得る。機能的(ポリ)ペプチドは、例えば、κ分泌リーダー、ヒト血清アルブミン(hsa)若しくはその断片、hsa若しくは他の血清タンパク質に結合可能な(ポリ)ペプチド;新生児型Fcレセプター(FcRn)に結合可能な(ポリ)ペプチド、ヒト筋アルドラーゼ(hma)若しくはその断片、CD8ヒンジ領域、免疫グロブリン定常領域、インターロイキン−2、インターロイキン−15及びインターロイキン−18、顆粒球−マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球刺激因子(G−CSF)又は少なくとも1つのN−グリコシル化部位を提供する(ポリ)ペプチドである。
【0069】
用語「その断片」は、上に規定したとおりである。特に、この実施形態で想定される(ポリ)ペプチドの断片は、本発明の抗体誘導体の安定性及び/又は血清半減期を増加させることが可能である。
【0070】
本発明の核酸分子にさらにコードされる(ポリ)ペプチドのいくつかは、組換え発現されたポリペプチドの精製を促進し得る(例えば、種々のタグ)。本発明の核酸分子にコードされるポリペプチドにタグ及び/又は他の(ポリ)ペプチドを付加する方法は、当業者に周知であり、例えば、Sambrook,2001の前記箇所に記載されている。
【0071】
本発明の好ましい実施形態において、第1の免疫グロブリンドメインは、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24及び26からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0072】
本発明のさらに好ましい実施形態において、第1の免疫グロブリンドメインは、CD123特異的scFvの好ましい形態を示す、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
【0073】
本発明の別の好ましい実施形態において、本発明の分子は、配列番号28に示されるアミノ酸配列を有する。
【0074】
本発明はさらに、本発明の分子をコードする核酸分子に関する。
【0075】
核酸分子は、分子全体をコードし得る(即ち、分子が単鎖ポリペプチドである場合)か、或いは、本発明の分子の個々の結合部分をコードし得る(これらの結合部分がタンパク質性の性質である場合)。これらの結合部分は、発現すると、非共有結合(例えば、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力又は疎水性相互作用)を介して、又は共有結合(例えば、ジスルフィド結合)を介して、本発明の分子を形成し得る。
【0076】
好ましくは、本発明の核酸分子にコードされるポリペプチドは、単鎖ポリペプチドである。
【0077】
本発明によれば、用語「核酸分子」は、30ヌクレオチドより多いヌクレオチドからなる直鎖分子鎖を規定する。本明細書中で「核酸分子」と称される分子群は、完全遺伝子も含む。
【0078】
本発明に従う「核酸分子」には、DNA(例えば、cDNA又はゲノムDNA)及びRNA(例えばmRNA)が含まれる。さらに、当該分野で公知の核酸模倣分子(例えば、DNA又はRNAの合成又は半合成誘導体及び混合ポリマー)が含まれる。本発明に従うかかる核酸模倣分子又は核酸誘導体には、ホスホロチオエート核酸、ホスホロアミダイト(phosphoramidate)核酸、2’−O−メトキシエチルリボ核酸、モルホリノ核酸、ヘキシトール(hexitol)核酸(HNA)及びロックド核酸(LNA)(Braasch and Corey,Chem Biol 2001,8:1を参照)が含まれる。LNAは、リボース環が、2’−酸素と4’−炭素との間のメチレン結合によって拘束されたRNA誘導体である。当業者に容易に理解されるように、これらは、さらなる非天然ヌクレオチド塩基又は誘導体ヌクレオチド塩基を含み得る。
【0079】
本発明はさらに、上記定義の核酸分子に相補的な核酸分子並びにストリンジェントな条件下でそれにハイブリダイズする核酸分子を企図する。
【0080】
核酸分子を用いてハイブリダイゼーション実験を実施する方法は、当該分野で周知である。それに対応して、当業者は、首尾よいハイブリダイゼーションをもたらすために使用しなければならないハイブリダイゼーション条件を認識している。適切なハイブリダイゼーション条件の確立は、以下のような標準的教科書で言及されている:Sambrook,Russell「Molecular Cloning,A Laboratory Manual」,Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.(2001);Ausubel,「Current Protocols in Molecular Biology」,Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.(1989)、又はHiggins and Hames(Eds.)「Nucleic acid hybridization,a practical approach」IRL Press Oxford,Washington DC,(1985)。
【0081】
「ストリンジェントな条件」とは、本発明の核酸分子にハイブリダイズすることが可能な核酸分子又はその一部を、他の配列に対してよりも検出可能に高い程度(例えば、バックグラウンドの少なくとも2倍)までこれらの標的配列にハイブリダイズさせるハイブリダイゼーション条件をいう。ストリンジェントな条件は、配列依存的であり、状況に応じて異なるであろう。ハイブリダイゼーション条件及び/又は洗浄条件のストリンジェンシーを制御することによって、それぞれのプローブ(即ち、本発明の核酸分子)に対して少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは95%、例えば98%、及びより好ましくは100%の配列同一性を有する標的配列が、同定され得る(高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件)。或いは、ストリンジェンシー条件は、より高い程度の配列中のミスマッチを許容するように調整され得る(低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件)。かかる高度にストリンジェントな及び低いストリンジェントのハイブリダイゼーション条件は、当業者に周知である。本発明中で上記した実施形態は、好ましくは、高度にストリンジェントな条件を指す。例えば、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、例えば、4×SSC(600mM NaCl、60mMクエン酸ナトリウム)中65℃での一晩インキュベーションと、その後の0.1×SSC中65℃での1時間の洗浄を含む。或いは、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mMクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×Denhardt溶液、10%硫酸デキストラン及び20μg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中で42℃で一晩インキュベーションと、その後の例えば0.1〜0.5×SSC中での、約55〜65℃で約5〜20分間の洗浄を含み得る。
【0082】
ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーにおける変化は、ホルムアミド濃度(低いパーセンテージのホルムアミドはストリンジェンシーの低下をまねく)、塩濃度又は温度の操作によって、主に達成される。例えば、より低いストリンジェンシーの条件は、4×SSC中50℃での一晩インキュベーション又は6×SSPE(20×SSPE=3M NaCl;0.2M NaHPO;0.02M EDTA、pH7.4)、0.5%SDS、30%ホルムアミド、100mg/mlサケ精子ブロッキングDNAを含む溶液中37℃での一晩インキュベーション;その後の1×SSPE、0.1%SDSで50℃での洗浄を含む。さらに、なお低いストリンジェンシーを達成するために、ストリンジェントなハイブリダイゼーションの後に実施する洗浄は、より高い塩濃度(例えば5×SSC)で実施できる。上記条件におけるバリエーションは、代替のブロッキング試薬を含めること及び/又は置換することによって、達成され得る。典型的なブロッキング試薬には、Denhardt試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性サケ精子DNA及び市販の占有製剤が含まれる。特定のブロッキング試薬を含めることは、適合性の問題に起因して、上記ハイブリダイゼーション条件の改変を必要とし得る。かかる改変は一般に、さらなる面倒なしに、当業者により達成され得る。ハイブリダイゼーション複合体は、溶液中(例えば、Cot又はRot分析)で、又は溶液中に存在する1つの核酸配列と固体支持体(例えば細胞が固定された、メンブレン、フィルター、チップ、ピン又はガラススライドなど)上に固定化された別の核酸配列との間で、形成され得る。
【0083】
本発明の核酸分子の好ましい実施形態において、核酸分子は、(i)配列番号27に示される核酸配列;(ii)配列番号28に示されるアミノ酸配列をコードする核酸配列;又は(iii)(i)若しくは(ii)の核酸分子に関して縮重した核酸配列、を含む。
【0084】
本発明は、本発明の核酸分子を含むベクターにも関する。
【0085】
好ましくは、ベクターは、プラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージ、又は例えば遺伝子操作において従来使用されている別のベクターである。
【0086】
本発明の核酸分子は、いくつかの市販のベクター中に挿入され得る。非限定的な例としては、原核生物プラスミドベクター(例えば、pUCシリーズ、pBluescript(Stratagene)、pETシリーズの発現ベクター(Novagen)又はpCRTOPO(Invitrogen))及び哺乳動物細胞での発現に適合したベクター(例えば、pREP(Invitrogen)、pSecTag2HygroC(Invitrogen)、pcDNA3(Invitrogen)、pCEP4(Invitrogen)、pMC1neo(Stratagene)、pXT1(Stratagene)、pSG5(Stratagene)、EBO−pSV2neo、pBPV−1、pdBPVMMTneo、pRSVgpt、pRSVneo、pSV2−dhfr、pIZD35、pLXIN、pSIR(Clontech)、pIRES−EGFP(Clontech)、pEAK−10(Edge Biosystems)pTriEx−Hygro(Novagen)及びpCINeo(Promega))が挙げられる。Pichia pastorisに適したプラスミドベクターの例は、例えば、プラスミドpAO815、pPIC9K及びpPIC3.5K(全てIntvitrogen)を含む。
【0087】
上記した本発明の核酸分子は、別の核酸分子との翻訳融合物が生成されるようにベクター中に挿入されてもよい。他の核酸分子は、例えば、本発明の核酸分子にコードされるタンパク質の溶解性を増加できる及び/又は精製を促進できる(ポリ)ペプチドをコードし得る。非限定的な例としては、pET32、pET41、pET43(Novagen)が挙げられる。ベクターはまた、タンパク質の正確な折り畳みを促進する1以上のシャペロンをコードするさらなる発現可能なポリヌクレオチドを含み得る。適切な細菌発現宿主は、例えば、BL21由来の株(例えば、BL21(DE3)、BL21(DE3)PlysS、BL21(DE3)RIL、BL21(DE3)PRARE)又はRosetta(登録商標)を含む。
【0088】
ベクター改変技術については、Sambrook and Russel,2001の前記箇所を参照。一般に、ベクターは、1以上の複製起点(ori)及びクローニング又は発現のための遺伝システム、宿主における選択のための1以上のマーカー(例えば、抗生物質耐性)、及び1以上の発現カセットを含み得る。適切な複製起点(ori)には、例えば、Col E1、SV40ウイルス及びM13の複製起点が挙げられる。
【0089】
典型的な哺乳動物発現ベクターは、mRNAの転写開始を媒介するプロモーターエレメント、タンパク質コード配列、並びに転写の終結及び転写物のポリアデニル化に必要なシグナルを含む。さらに、複製起点、薬物耐性遺伝子、レギュレーター(誘導性プロモーターの一部として)などのエレメントも含まれ得る。lacプロモーターは、原核生物細胞に有用な典型的な誘導性プロモーターであり、ラクトースアナログであるイソプロピルチオール−b−D−ガラクトシド(isopropylthiol−b−D−galactoside)(「IPTG」)を使用して誘導できる。組換え体発現のために、抗体断片は、例えばPelBリーダーシグナル(ペリプラズム中の組換えタンパク質を指示する)と、pHEN4と称するファージミド中の遺伝子IIIとの間にライゲーションされ得る(Ghahroudi et al,1997中に記載される)。さらなるエレメントには、エンハンサー、Kozak配列、並びにRNAスプライシングのドナー部位及びアクセプター部位が隣接する介在配列が含まれ得る。高効率の転写は、SV40由来の初期及び後期プロモーター、レトロウイルス(例えば、RSV、HTLVI、HIVI)由来の末端反復配列(LTR)、並びにサイトメガロウイルス(CMV)の初期プロモーターを用いて達成され得る。しかし、細胞性のエレメントもまた使用され得る(例えば、ヒトアクチンプロモーター)。本発明の実施に使用するのに適切な発現ベクターには、例えば、pSVL及びpMSG(Pharmacia,Uppsala,Sweden)、pRSVcat(ATCC 37152)、pSV2dhfr(ATCC 37146)並びにpBC12MI(ATCC 67109)などのベクターが挙げられる。選択マーカー(例えば、真核生物細胞の場合にはdhfr、gpt、ネオマイシン、ハイグロマイシンの遺伝子、又はE.coli及び他の細菌中で培養するためのテトラサイクリン、カナマイシン若しくはアンピシリン耐性遺伝子)との同時トランスフェクションは、トランスフェクトされた細胞の同定及び単離を可能にする。トランスフェクトされた核酸はまた、コードされた(ポリ)ペプチドを多量に発現するために、増幅され得る。DHFR(ジヒドロ葉酸レダクターゼ)マーカーは、数百又は数千コピーもの目的の遺伝子を保有する細胞株を得るために有用である。別の有用な選択マーカーは、酵素グルタミンシンターゼ(GS)である(Murphy et al.1991;Bebbington et al.1992)。これらのマーカーを使用して、哺乳動物細胞が選択培地中で増殖され、最も高い耐性を有する細胞が選択される。
【0090】
原核生物宿主細胞での発現を可能にする可能な調節エレメントは、例えばlac、trp若しくはtacプロモーター、E.coliにおけるlacUV5若しくはtrpプロモーターを含み、真核生物宿主細胞での発現を可能にする調節エレメントの例(より好ましい実施形態)は、酵母におけるAOX1若しくはGAL1プロモーター、又は哺乳動物及び他の動物細胞におけるCMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、SV40プロモーター、RSV(ラウス肉腫ウイルス)プロモーター、gai10プロモーター、ヒト伸長因子1aプロモーター、CMVエンハンサー、CaMキナーゼプロモーター、Autographa californica核多角体病ウイルス(multiple nuclear polyhedrosis virus)(AcMNPV)多角体プロモーター若しくはグロビンイントロンである。好ましいプロモーターは、天然の免疫グロブリンプロモーターである。加えて、転写開始を担うエレメント(調節エレメントなど)は、ポリヌクレオチドの下流の転写終結シグナル(例えば、SV40−ポリA部位若しくはtk−ポリA部位、又はSV40、lacZ及びAcMNPV多角体ポリアデニル化シグナル)も含み得る。
【0091】
ベクターに挿入されるコード配列は、例えば、標準的な方法によって合成され得るか、或いは天然供給源から単離され得るか又は半合成で(即ち、化学合成及び組換え技術を組合わせることによって)生成され得る。転写調節エレメント及び/又は他のアミノ酸コード配列へのコード配列のライゲーションは、確立された方法を使用して実施できる。原核生物又は真核生物細胞での発現を確実にする転写調節エレメント(発現カセットの一部)は、当業者に周知である。これらのエレメントは、転写開始を確実にする調節配列(例えば、翻訳開始コドン、プロモーター、エンハンサー及び/又はインスレーター)、配列内リボソーム進入部位(IRES)(Owens et al.,2001)並びに任意選択で、転写の終結及び転写物の安定化を確実にするポリAシグナルを含む。さらなる調節エレメントには、転写エンハンサー並びに翻訳エンハンサー、及び/又は天然に関連する若しくは異種のプロモーター領域が含まれ得る。好ましくは、本発明の核酸分子は、原核生物又は真核生物細胞での発現を可能にするかかる発現制御配列に作動可能に連結される。ベクターはさらに、さらなる調節エレメントとして、分泌シグナルをコードするヌクレオチド配列を含み得る。かかる配列は当業者に周知である。さらに、使用する発現系に依存して、発現されたポリペプチドを細胞区画へ指示することが可能なリーダー配列が、本発明のポリヌクレオチドのコード配列に付加され得る。かかるリーダー配列は当該分野で周知である。
【0092】
特に設計されたベクターにより、異なる宿主間(例えば、細菌−真菌細胞又は細菌−動物細胞)でのDNAのシャッフリングが可能なる。
【0093】
本発明に従う発現ベクターは、複製、並びに本発明のポリヌクレオチド及びコードされた酵素の発現を指示することが可能である。記載された調節エレメントを含む適切な発現ベクターは、当該分野で公知であり、例えば、Okayama−Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3、pSecTag2HygroC(Invitrogen、とりわけ添付の実施例で使用される)、pSPORT1(GIBCO BRL)若しくはpGEMHE(Promega)、又は原核生物発現ベクター(例えば、λgt11、pJOE、pBBR1−MCSシリーズ、pJB861、pBSMuL、pBC2、pUCPKS、pTACT1又は好ましくはpETベクター(Novagen))である。
【0094】
本明細書中に上記した本発明の核酸分子は、細胞中への直接的導入のため、又はリポソーム、ファージベクター若しくはウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、レトロウイルス)を介した導入のために設計され得る。さらに、バキュロウイルスの系又はワクシニアウイルス若しくはセムリキ森林ウイルスに基づく系が、本発明の核酸分子のための真核生物発現系として使用され得る。レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス又はウシパピローマウイルスなどのウイルス由来の発現ベクターは、標的化された細胞集団へのポリヌクレオチド又はベクターの送達に使用され得る。当業者に周知の方法を使用して、組換えウイルスベクターを構築することができる;例えば、Sambrook,2001及びAusubel,2001の前記箇所に記載された技術を参照。
【0095】
別の好ましい実施形態において、本発明は、本発明のベクターで形質転換された非ヒト宿主に関する。
【0096】
この宿主は、本発明のベクターを宿主中に導入することによって生成され得、その存在が、ベクターによりコードされるポリペプチドの発現を媒介する。
【0097】
本発明によれば、宿主は、本発明のベクターでトランスフェクトされた及び/又は本発明のベクターを発現する、トランスジェニック非ヒト動物であり得る。好ましい実施形態において、トランスジェニック動物は、哺乳動物、例えば、ハムスター、ウシ、ネコ、ブタ、イヌ又はウマである。
【0098】
好ましい実施形態において、宿主は、細胞、例えば、細胞培養物の一部であり得る単離された細胞である。
【0099】
適切な原核生物宿主細胞は、例えば、種Escherichia、Bacillus、Streptomyces及びSalmonella typhimuriumの細菌を含む。適切な真核生物宿主細胞は、例えば、真菌細胞、とりわけ、Saccharomyces cerevisiae若しくはPichia pastorisなどの酵母、又はDrosophila S2及びSpodoptera Sf9細胞などの昆虫細胞、及び植物細胞並びに哺乳動物細胞である。上記宿主細胞に適した培養培地及び条件は、当該分野で公知である。
【0100】
哺乳動物宿主細胞には以下が挙げられるがこれらに限定されない:ヒトHela、HEK293、H9及びJurkat細胞、マウスNIH3T3及びC127細胞、COS1、COS7及びCV1、quail QC1−3細胞、マウスL細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞及びBowes黒色腫細胞。或いは、本発明の組換えポリペプチドは、染色体中に組み込まれた本発明の核酸分子又はベクターを含む遺伝子コンストラクトを含む安定な細胞株中で発現され得る。
【0101】
より好ましい実施形態において、この細胞は初代細胞又は初代細胞株である。初代細胞は、生物から直接得られた細胞である。適切な初代細胞は、例えば、マウス胚繊維芽細胞、マウス初代肝細胞、心筋細胞及び神経細胞、並びにマウス筋幹細胞(サテライト細胞)、及びそれらに由来する安定な不死化細胞株である。
【0102】
本発明は、適切な条件下での本発明の宿主細胞の培養及び産生された組換えポリペプチドの単離を含む、ポリペプチドの産生方法にも関する。
【0103】
原核生物又は真核生物宿主の培養に適した条件は、当業者に周知である。例えば、細菌の培養に適した条件は、Luria Bertani(LB)培地中での通気下でそれらを増殖させることである。発現産物の収率及び可溶性を増加させるために、培地は、緩衝化され得るか、それら両方を増強又は促進することが知られている適切な添加剤を補充され得る。E.coliは、4〜約37℃の温度で培養でき、正確な温度又は温度系列は、過剰発現される分子に依存する。一般に、当業者は、これらの条件が、宿主の要求及び発現されるポリペプチドの要件に適合すべき場合があることも認識している。宿主細胞中に存在するベクター中の本発明の核酸分子を誘導性プロモーターが制御する場合、ポリペプチドの発現は、適切な誘導剤の添加によって誘導され得る。適切な発現プロトコル及びストラテジーは、当業者に公知である。
【0104】
細胞型及びその具体的要件に依存して、哺乳動物細胞の培養は、例えば、10%(v/v)FCS、2mM L−グルタミン及び100U/mlペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI培地又はDMEM培地中で実施され得る。細胞は、5%COの水分飽和雰囲気中で、37℃で維持され得る。
【0105】
昆虫細胞の培養に適した培地は、例えば、TNM+10%FCS又はSF900培地である。昆虫細胞は、通常、接着培養物又は浮遊培養物として、27℃で増殖させる。
【0106】
真核生物細胞に適した発現プロトコルは、当業者に周知であり、例えば、Sambrook,2001の前記箇所から得ることができる。
【0107】
産生されたポリペプチドを単離する方法は、当該分野で周知であり、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー(サイズ排除クロマトグラフィー)、アフィニティクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、逆相HPLC、ディスクゲル電気泳動又は免疫沈降などの方法工程を含むが、これらに限定されない。例えば、Sambrook,2001の前記箇所を参照。
【0108】
本発明はまた、本発明の分子(好ましくはポリペプチド)、本発明の核酸分子又は本発明のベクターのうち少なくとも1つを含む、診断組成物にも関する。
【0109】
本発明の分子の親和性及び/又は結合力の増強により、診断アッセイにおけるその使用が可能になる。例えば、AML−LSCは細胞表面上にCD123及びCD33を発現するので、この分子は、AML−LSCの検出のための高感度の検出剤として使用できる。特に、ジスルフィドの高い安定性が、CD16特異的scFv(本明細書中でds16ともいう)を安定化し、天然に高い安定性のCD123特異的scFv及びCD33特異的scFv(これらは、この形態で組み込まれている)が、診断剤に望まれる長時間の保存を可能にする。
【0110】
さらに、本発明は、本発明の分子(好ましくはポリペプチド)、本発明の核酸分子又は本発明のベクターのうち少なくとも1つを含む、医薬組成物に関する。
【0111】
本発明によれば、用語「医薬組成物」は、患者、好ましくはヒト患者への投与のための組成物に関する。本発明の医薬組成物は、上記化合物(ここで、用語「化合物」とは、言及した分子、核酸分子及びベクター、並びにそれらの断片又は誘導体又は修飾物をいう)を、単独で又は組合わせて含む。任意選択で、医薬組成物は、本発明の化合物の特徴を変更可能なさらなる分子を含み、それにより、本発明の化合物の機能を例えば安定化、調節及び/又は活性化し得る。組成物は、固体、液体又は気体の形態であり得、とりわけ、粉末(複数可)、錠剤(複数可)、溶液(複数可)又はエアロゾル(複数可)の形態であり得る。本発明の医薬組成物は、任意選択で及びさらに、医薬上許容される担体を含み得る。「医薬上許容される担体」とは、非毒性の固体、半固体又は液体のフィラー、希釈剤、カプセル化物質又は任意の型の製剤補助物質を意味する。適切な医薬上許容される担体の例は当該分野で周知であり、リン酸緩衝化生理食塩水溶液、水、エマルジョン(例えば、油/水エマルジョン)、種々の型の湿潤剤、無菌溶液、DMSOを含む有機溶媒などが挙げられる。かかる担体を含む組成物は、周知の従来法によって製剤化され得る。用語「非経口」とは、本明細書中で使用する場合、静脈内、筋内、腹腔内、胸骨内(intrasternal)、皮下及び関節内の注射及び注入を含む投与様式をいう。これらの医薬組成物は、適切な用量で対象に投与され得る。投薬レジメンは、主治医及び臨床的因子によって決定されよう。医薬の分野で周知のように、任意の1人の患者に対する投薬量は、多くの因子(患者の大きさ、体表面積、年齢、投与する特定の化合物、性別、投与の時間及び経路、一般的健康状態、並びに同時に投与される他の薬物、を含む)に依存する。所与の状況のための治療有効量は、慣用的な実験によって容易に決定され、一般の臨床医又は医師の技術及び判断の範囲内である。一般に、医薬組成物の通常の投与としてのレジメンは、1日当たり1μg〜5gの単位の範囲であるべきである。しかし、より好ましい投薬量は、1日当たり0.01mg〜100mg、さらにより好ましくは0.01mg〜50mg、最も好ましくは0.01mg〜10mgの範囲であり得る。
【0112】
上述のように、本発明の核酸分子は、医薬組成物へと製剤化され得る。核酸分子は、最終的に所望の細胞中に導入されることになる。適切な製剤には、有利には適切なベクター中に含まれたDNA分子10〜1012コピーが1用量当たり投与される製剤が挙げられる。ベクターは、例えば、ファージ、プラスミド、ウイルス又はレトロウイルスベクターであり得る。レトロウイルスベクターは、複製能があっても複製欠損であってもよい。後者の場合、ウイルスの増幅は、一般に、補完的な宿主/細胞中でのみ生じるであろう。
【0113】
本発明はまた、急性骨髄性白血病及び/又は骨髄異形成症候群の治療において使用するための、本発明の分子(好ましくはポリペプチド)、本発明の核酸分子又は本発明のベクターにも関する。
【0114】
用語「急性骨髄性白血病」(AML)は、当該分野で提供される定義に従って使用される。従って、この語は、骨髄系列の血液細胞の癌をいい、骨髄中に蓄積して正常な血液細胞の産生を妨害する異常な白血球の迅速な増殖を特徴とする。後期段階では、異常な白血球は血流中にも蓄積する。
【0115】
用語「骨髄異形成症候群」(MDS)は、当該分野で提供される定義に従って使用される。従って、この語は、造血細胞における定量的かつ定性的な不可逆的欠損が認められる無秩序で無効な造血を生じる、骨髄幹細胞障害をいう。大多数の症例では、疾患の過程は慢性であり、進行性の骨髄機能不全に起因して、徐々に悪化する血球減少を伴う。数ヶ月から数年以内に、約3分の1のMDS患者がAMLに進行する。
【0116】
本発明の分子、本発明の核酸分子又は本発明のベクターは、急性骨髄性白血病及び/又は骨髄異形成症候群の治療のために使用され得る。従って、本発明は、それを必要とする患者への、所望の効果を発揮するのに効果的な量の本発明の分子(好ましくはポリペプチド)、本発明の核酸分子又は本発明のベクターの投与を含む、急性骨髄性白血病及び/又は骨髄異形成症候群の治療方法にも関する。治療方法に関して望まれる効果は、CD123抗原及びCD33抗原を発現する細胞、特にAML白血病幹細胞(AML−LSC)に対する免疫応答を誘導することである。
【0117】
本発明はさらに、急性骨髄性白血病及び/又は骨髄異形成症候群の治療において使用するための、本発明の分子(好ましくはポリペプチド)、本発明の核酸分子又は本発明のベクターに関し、この核酸分子、ベクター又はポリペプチドは、急性骨髄性白血病の寛解期において又は骨髄異形成症候群の診断後に投与される。
【0118】
用語「寛解」は、当該分野で提供される定義に従って使用される。従って、この語は、その疾病が将来再び顕在化すると予測され得るときの、慢性疾病を有する患者における疾患活動の不在状態をいう。本発明によれば、この語は、その治療後の急性骨髄性白血病の不在をいうために使用される。
【0119】
上述のように、従来の化学療法の初期過程後の寛解では、患者の骨髄中の芽細胞数は総骨髄白血球の約5%以下にまで減少し、化学療法を生き延びた細胞は、「微小残存病変」(MRD)細胞と呼ばれる。これらの細胞は、上述のように、化学療法に対して特に抵抗性であるAML白血病幹細胞(AML−LSC)中に豊富であり、再増殖が可能で再発を引き起こすことが可能な細胞の特に危険な貯蔵所を構成する。寛解期では、化学療法によってほとんどが排除されているので、正常な健康な白血球の数は最初は少ない。しかし、数週間後、正常な骨髄造血が再開し、生存した健康な造血幹細胞(HSC)から再構成されることになる最初の正常な白血球は顆粒球(PMN、多形核顆粒球)であり、その後ナチュラルキラー(NK)細胞、単球/マクロファージ、Bリンパ球が続き、最後に再出現するのはTリンパ球である。患者が有意に増加した細菌感染の危険性を典型的に示すわけではないことで明らかなように、顆粒球は直ぐに十分な数で入手できるようになる。顆粒球生成及び他の骨髄エフェクター細胞の再構成は用量−時間(dose−temporal)相関で生じるので、NK細胞、単球及びマクロファージが入手可能になる。従って、CD16陽性エフェクター細胞は、AML−MRD(即ち、AML−LSC)細胞の排除のために、本発明の分子(sctb[123×ジスルフィド安定化ds16×33]によって動員されるのに十分な数で、この段階で入手可能である。
【0120】
CD20抗体及びCD19抗体で治療したヒト非ホジキンリンパ腫(NHL)のマウスモデルにおいて、単球は、エフェクター細胞の最も適切な集団であると報告された(Tedder et al,2006)。さらに、以下の実施例で提供するin vitro研究により、本発明のポリペプチドがNK細胞を活性化してAML細胞を排除するという明らかな証拠が提供される。それにもかかわらず、ヒト患者では、上記エフェクター細胞集団の全てが全体的治療効果に寄与するであろうことが予測される。この全体的効果は、抗体依存性細胞傷害(ADCC、「再指示された溶解」ともいう)による腫瘍細胞の直接的排除の結果だけではないが、AML細胞の溶解から生じるAML細胞のアポトーシス断片が食細胞によって取り込まれ、プロセシングされて、CD4Tリンパ球及びCD8Tリンパ球によって再度提示される。両方の機構が、体液性抗腫瘍抗体の二次的力価及びCD8細胞傷害性Tリンパ球による細胞性抗腫瘍応答を構築する助けとなる。
【0121】
従って、本発明の分子、核酸分子又はベクターは、Mylotargなどの以前の化合物及び従来の化学療法によって可能な効果を大きく超えた顕著な治療効果に貢献するとみなされ、同時に、化学物質性、細菌性又は植物性の毒素が関与しないため、かなり少ない副作用を伴う。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】単鎖トリプルボディ(sctb)[123×ds16×33]の構築及び発現。(A)sctb[123×ds16×33]の設計。2つの末端scFvは、腫瘍抗原CD123及びCD33に対して特異的であり、中心のscFvは活性化トリガー分子CD16に対するものである。Igκ,マウスIgκL鎖由来の分泌リーダー配列;V、V,IgのL鎖又はH鎖のV領域をコードするcDNA配列;L,20アミノ酸の可動性リンカー、例えば(GlySer)をコードするcDNA;S、H、M,STREPタグ、ヘキサヒスチジンタグ及びmycタグ;S−S,安定化ジスルフィド結合。Ni−NTAアガロースビーズでのアフィニティクロマトグラフィー後のsctb[123×ds16×33]の完全性及び純度は、還元SDS−PAGE及びクマシーブルーでの染色(B)並びに検出のための抗His抗体を使用したウエスタンブロット分析(C)によって評価される。
【図2】sctb[123×ds16×33]の特異的抗原結合。U937細胞(I)、CD123トランスフェクトした293細胞(II)、トランスフェクトしていない293細胞(III)、CD16トランスフェクトしたCHO細胞(IV)及びトランスフェクトしていないCHO細胞(V)に対するsctbの特異的結合のFACS分析。白:コントロールsctb;黒:sctb[123×ds16×33]。
【図3】sctb[123×ds16×33]の同時抗原結合。U937細胞をsctbと共にインキュベートし、CD16の細胞外ドメイン及びGFPからなる可溶性タンパク質(CD16ex−GFP)(I、FL1チャネルで測定)並びにCD123の細胞外ドメイン及びRFPからなる可溶性タンパク質(CD123ex−RFP)(II、FL2チャネルで測定)の添加によって、同時結合を明らかにした。
【図4】sctb[123×ds16×33]による種々の腫瘍細胞株のADCCの用量依存的誘導。CD123/CD33二重陽性腫瘍細胞株MOLM−13(A)及びTHP−1(B)を、40:1の一定のE:T細胞比でsctbの効力を比較するために、標的として使用した。sctb[123×ds16×33](黒三角)は、用量依存的様式でADCCを誘発した。無関係のコントロールsctb(白抜きの三角)は、有意な殺傷を誘導しなかった。データポイントは、少なくとも4人の異なる健康なドナーから単離したMNCで得た、溶解の平均%+SEMを示す。コントロールsctbと比較した、ADCCにおける統計的に有意な差異。
【図5】sctb[123×ds16×33]、sctb[123×ds16×123]及びsctb[33×ds16×33]による初代AML細胞の溶解。sctb[123×ds16×33](黒三角)、sctb[123×ds16×123](白丸)及びsctb[33×ds16×33](白三角)は、初代AML細胞の用量依存的ADCCを媒介したが、コントロールsctb(黒四角)は、細胞溶解を誘導できなかった。(A及びB)末梢血から単離された精製初代AML細胞の、sctbによるADCC誘導(患者1及び2)。(C及びD)骨髄から単離された精製初代AML細胞の、sctbによるADCC誘導(患者6及び7)。データポイントは、40:1のE:T比で1人の健康なドナーから単離されたMNCで得られた特異的溶解の%を示す。(E)6人の異なる患者(患者1〜6)の末梢血由来の精製AML細胞の、sctbによるADCC誘導、合わせたデータ。データポイントは、40:1のE:T比で患者サンプル当たり1人の健康なドナーから単離されたMNCで得られた、6人の患者を平均した特異的溶解の平均%を示す。特異的溶解は、総溶解−自発的溶解である。
【実施例】
【0123】
実施例が本発明を説明する:
実施例1:細胞株及びハイブリドーマ
ヒトCD16 cDNA発現ベクターで安定にトランスフェクトしたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、J.van de Winkel博士(University Medical Centre,Utrecht,Netherlands)により提供された。ハイブリドーマ3G8;FcγRIII、CD16;IgG1(Fleit et al,1982)及びヒト293T細胞は、American Type Cell Culture Collection(ATCC,Manassas,VA,USA)から得た。ヒトAML細胞株MOLM−13、THP−1(t(9;11)(p22;q23)、MLL−AF9を発現)及びU937は、German Collection of Microorganisms and Cell Cultures(DSMZ,Braunschweig,Germany)から得た。CHO、THP−1、U937及び3G8 ハイブリドーマ細胞は、10%胎仔ウシ血清(FCS;Invitrogen)、100単位/mlペニシリン(Invitrogen)及び100μg/mlストレプトマイシン(Invitrogen)を含むRoswell Park Memorial Institute(RPMI)1640 Glutamax−I培地(Invitrogen,Karlsruhe,Germany)中で培養した。MOLM−13は、20%FCS、100単位/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシン(Invitrogen)を含むRPMI 1640 Glutamax−I培地中で培養した。CD123で安定にトランスフェクトしたヒト293、293T(ATCC)及び293細胞は、10%FCS、100単位/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシン(Invitrogen)を含むDMEM(Invitrogen)Glutamax−I培地中で維持した。CD123発現細胞用の培地は、400μg/mlのGeneticin(Invitrogen)をさらに含んだ。
【0124】
実施例2:CD123特異的scFvの生成及び特徴づけ
4つの新たなCD123特異的scFv抗体断片を、ヒトCD123の細胞外部分及びヒトIgG1のFc部分からなる組換え融合タンパク質によるBALB/cマウスの免疫によって生成した。これは、CD33特異的scFvを生成するための手順に従って実施した(Schwemmlein et al,2006)。Fc部分を使用して、この融合タンパク質の可溶性及びネイティブのコンフォメーション、並びに新生児型Fcレセプター(FcRn)を介したリサイクルに起因した血清半減期の延長を保証した。免疫したマウスの脾臓RNAを調製し、ファージディスプレイライブラリーの生成に使用した。このライブラリーを、インタクトなCD123細胞を用いてCD123結合ファージについてパニングした。反応性ファージ由来のcDNAを、原核生物発現ベクターpAK400中にサブクローニングした。4つの異なるクローンをE.coli中で発現させ、アフィニティクロマトグラフィーによって未変性条件下でペリプラズム抽出物から精製した。4つ全てのscFvが、E.coli培養物1l当たり0.65mgと2.75mgとの間の収率で、強く富化されており(表1)、ヘキサヒスチジンタグに対して特異的な抗体を用いたウエスタンブロット実験において反応した。フローサイトメトリーによって可視化したように、4つ全てのscFvが、CD123ヒト急性骨髄性白血病由来のMOLM−13細胞及びCD123トランスフェクトした293細胞に結合した。これらのscFvはCD123293細胞とは反応できず、結合がCD123特異的であることが示された。較正フローサイトメトリー分析において、scFvの平衡結合定数(K)を決定したところ、4.5nMと101nMとの間の範囲であった(表1)。親和性が最も高いscFv、クローン43(配列番号1及び2)を、sctb[123×ds16×33]の生成に使用した。最近、5番目のscFv(クローン52;配列番号9及び10)が単離され、これを現在特徴付けている。
【0125】
【表1】

【0126】
実施例3:sctb[123×ds16×33]の構築、発現及び結合特徴
sctb[123×ds16×33]発現ベクターの構築のために、既存のベクターpSecTag2HygroC−STREP−His−CD33×dsCD16×CD33を使用した。sctb[33×ds16×33]の発現ベクターを生成するために、CD33特異的scFvのコード配列をベクターpet27b(+)−Strep−His−CD33−ETA−KDEL(Schwemmlein et al,2006)から切り出し、ベクターpSecTag2HygroC−STREP−His−dsCD19×dsCD16×dsCD19(Kellner et al,2008)中にSfiIカセットとしてクローニングして、N末端のdsCD19特異的scFvのコード配列を置換することによって、pSecTag2HygroC−STREP−His−CD33×dsCD16×dsCD19を生成した。ベクターpSecTag2HygroC−STREP−His−CD33×dsCD16×CD33を生成するために、CD33特異的scFvのコード配列を、PCRによってpet27b(+)−Strep−His−CD33−ETA−KDELから増幅し、XhoI/EcoRV制限部位を使用してpSecTag2HygroC−STREP−His−CD33×dsCD16×dsCD19中にライゲーションし、C末端のdsCD19特異的scFvのコード配列を置換した。CD123特異的scFvのコード配列をpAK400−CD123scFv発現コンストラクトから切り出し、ベクターpSecTag2HygroC−STREP−His−CD33×dsCD16×CD33中にSfiIカセットとしてクローニングした。それにより、ベクターpSecTag2HygroC−STREP−His−CD123×dsCD16×CD33(配列番号27に示す核酸配列を含む)を生成した。最終コンストラクトの正確な構築は、AppliedBiosystems自動DNAシーケンサー(ABI Prism 310 Genetic Analyzer;Perkin−Elmer,Ueberlingen,Germany)でのDNA配列分析によって確認した。
【0127】
組換えsctb[123×ds16×33]の発現のために、293T細胞を、クロロキンを含むリン酸カルシウム技術を使用してそれぞれの発現ベクターでトランスフェクトした。10時間後、トランスフェクション培地を、新たな培養培地で置き換えた。上清を毎日5日間収集して合わせた。上清を、フローサイトメトリーによって抗体断片の存在について分析した。細胞表面抗原CD19に特異的なコントロールsctb ds[19×16×19]の発現のために、293T細胞をそれぞれの発現ベクターで安定にトランスフェクトし、製造業者の指示に従って12.5kDaの透析膜を備えたmini−PERMバイオリアクタ(Greiner Bio−One,Frickenhausen,Germany)中で、ハイグロマイシンCによる持続的な選択下で培養した。組換えタンパク質を含む培地を、2週間の期間に通常4回収集した。組換えHisタグタンパク質を、ニッケル−ニトリロ三酢酸アガロース(NTA)ビーズ(Qiagen,Hilden,Germany)でのアフィニティクロマトグラフィーによって富化し、最後にリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に対して透析した。精製sctb[123×ds16×33]の平均収率は、培養培地1リットル当たり0.1mgであった。
【0128】
溶出したタンパク質を、標準的な手順を使用して還元ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)で分析した(Laemmli,1970)。ゲルをクマシーブリリアントブルーR250(Sigma−Aldrich,Taufkirchen,Germany)で染色した。ウエスタンブロット実験において、組換えタンパク質を非コンジュゲート化ペンタHis抗体(Qiagen)及び西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgG二次抗体(Dianova,Hamburg,Germany)を用いて検出した。ウエスタンブロットは、増強化学発光試薬(Amersham Pharmacia Biotech,Freiburg,Germany)を使用して発色させた。sctb[123×ds16×33]の電気泳動移動度は、その配列から計算した89.4kDaの質量に対応した(図1A/B)。
【0129】
免疫蛍光分析を、記載されたように(Schwemmlein et al,2006)、CellQuestソフトウェア(Becton Dickinson,Heidelberg,Germany)を使用してFACSCalibur機器で実施した。簡潔に述べると、1×10の事象を各サンプルについて収集し、細胞デブリ及び凝集物を除外するために適切な散乱ゲートを使用して、細胞全体を分析した。組換えタンパク質sctb[123×ds16×33]を、ペンタHis抗体及びPEコンジュゲート化ヤギ抗マウスIgG抗体(DAKO Diagnostica GmbH,Hamburg,Germany)を使用して検出した。sctb[123×ds16×33]はCD123/CD16/CD33U937細胞、CD123トランスフェクトCD16/CD33293細胞及びCD16トランスフェクトCD123/CD33CHO細胞と特異的に反応し、トランスフェクトしていない293細胞又はCHO細胞とは反応を示さなかった(図2C)。sctb[123×ds16×33]は、U937細胞、CD123トランスフェクト293細胞及びCD16トランスフェクトCHO細胞に対し、それぞれ17.8±2.2、18.8±0.9及び21.7±1.8nMのK値で結合した(表2)。CD123及びCD33二重陽性MOLM−13細胞に対するsctb[123×ds16×33]の結合力は、13.5±0.6nMであった(表2)。K値は、記載されたように(Benedict et al,1997)、較正フローサイトメトリーで決定した。最も高い平均蛍光値を100%とし、全てのデータポイントをこの値に対して標準化した。実験は6回繰り返した。K値は、非線形回帰曲線当てはめを使用して計算した。
【0130】
3つ全ての抗原に同時に結合するsctb[123×ds16×33]の能力を、フローサイトメトリー分析で試験した。この実験設定において、CD123/CD16/CD33U937細胞をsctb[123×ds16×33]と共にインキュベートし、組換え融合タンパク質CD123ex−RFP及びCD16ex−GFPで平行して染色した。これらのタンパク質はそれぞれ、赤色蛍光タンパク質(RFP)及び緑色蛍光タンパク質(GFP)に遺伝学的に融合した細胞表面抗原CD123及びCD16の細胞外ドメイン(ex)を含む。徹底的な洗浄及び未結合sctbの除去後、CD123ex−RFP及びCD16ex−GFP、RFP及びGFP二重陽性細胞を検出した。この結果は、そのそれぞれの標的抗原への3つ全てのscFvの同時結合を証明した。
【0131】
sctb[123×ds16×33]のin vitro血清安定性を決定するために、飽和未満の濃度2μg/mlの組換えタンパク質のアリコートを、ヒト血清中で37℃でインキュベートしたか(5日目)、又は−20℃で保存して、規定の時点(0〜4日目)で解凍した。残留結合活性をフローサイトメトリー(上述のとおり)で測定した。実験を4回繰り返し、結果を単一指数関数崩壊(monoexponential decay)に当てはめた。
【0132】
【表2】

【0133】
実施例4:樹立された急性骨髄性白血病由来細胞株の、sctb[123×ds16×33]媒介性のADCC
ADCCの媒介におけるsctb[123×ds16×33]の能力を決定するために、AML由来細胞株を、sctb及び無関係の健康なドナーから新たに調製した未刺激MNCと共にインキュベートした(図4)。
【0134】
このために、健康な志願者由来のクエン酸塩緩衝化末梢血を、インフォームドコンセントを受けた後に、Ethics Committee of the University of Erlangen−Nurembergの承認下で得た。MNCを、製造業者の指示に従ってLeukosepチューブ(Greiner,Frickenhausen,Germany)中でLymphoflot(Biotest,Dreieich,Germany)Ficoll密度遠心分離によって富化し、10%FCSを含みかつペニシリン及びストレプトマイシンをそれぞれ100単位/mL及び100mg/mLで含むRPMI 1640 Glutamax−I培地中に懸濁した。生存度をトリパンブルー排除によって確認したところ、95%を超えていた。
【0135】
エフェクター細胞として健康なドナー由来のMNCを使用したADCCアッセイを、記載されたように(Elsasser et al,1996)、3時間の51Cr放出アッセイを使用して、3連で実施した。40:1のMNC対標的細胞の一定のエフェクター対標的(E:T)細胞比で、それぞれの抗体断片の等モル5段階連続希釈をいくつか使用して、用量反応曲線を記録した。MNC単独によって誘導されたバックグラウンド溶解を各データポイントから差し引き、シグモイド用量反応曲線当てはめを使用してEC50値(最大特異的溶解の50%を生じる抗体断片濃度)を計算した。実験を4回繰り返した。平均値を報告する。
【0136】
これらのADCC反応において、sctb[123×ds16×33]は、MOLM−13については13pM(図4A)及びTHP−1については201pM(図4B)の低いピコモル濃度のEC50値で有効な腫瘍細胞溶解を媒介したが、コントロールsctbは有効でなかった。3時間のアッセイにおいて、MOLM−13細胞に関して観察された最大特異的溶解は50%よりも高く、THP−1では30%よりも高かった。
【0137】
実施例5:画像分析及び統計分析
画像分析及び統計分析を、Graph Pad Prism Software(Graph Pad Software Inc,San Diego,CA)及びMicrosoft EXCELを使用して実施した。グループのデータは、平均±平均値の標準誤差(SEM)として報告した。グループ間の差異は、対応のない(unpaired)Student t検定を使用して分析した。p値<0.05を有意とみなした。
【0138】
実施例6:sctb[123×ds16×33]、sctb[123×ds16×123]及びsctb[33×ds16×33]によって媒介される、患者由来の初代白血病細胞のADCC
これらの実験のために、7人の患者の末梢血又は骨髄のいずれかから単離したMNCを、ADCC反応に使用した。全体として、6個の末梢血サンプル及び2個の骨髄サンプルを研究した。AML患者サンプル1つにつき1人の無関係の健康なドナー由来のMNCを、エフェクター細胞として使用した。ADCCアッセイは上記のように実施した(実施例4)。初代白血病細胞のADCCにおける二重標的化sctb及びモノ標的化sctbの能力を直接比較するために、以前に公開されたsctb[33×ds16×33](Singer et al,2010)及びsctb[123×ds16×123](Kugler et al.2010)も共に実施した。3つ全てのsctbが、濃度依存的様式で初代AML細胞の強力な溶解を示した(図5)。患者1及び2由来のサンプル(末梢血;図5A及びB)並びに患者6及び7由来のサンプル(骨髄;図5C及びD)の4つの代表的ADCC反応を示す。5nMの濃度で、3つ全ての組換えタンパク質が強力な特異的溶解を生じたが、4/8のサンプルでは、二重標的化sctb[123×ds16×33]は、この特定の濃度で、最も高い程度の溶解に達した。6つ全ての末梢血サンプルから得たADCCデータを合わせたときに、この知見が確認された(図5E)。このデータセットから導出されたEC50値は、sctb[123×ds16×33]、sctb[123×ds16×123]及びsctb[33×ds16×33]につき、それぞれ約250pM、約130pM及び約250pMであった。最大特異的溶解は、投入細胞のそれぞれ約25%、約19%及び約19%であった。
【0139】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)CD123;
(b)CD16;及び
(c)CD33、
に対する結合特異性を有する分子。
【請求項2】
結合特異性がVドメイン及び/又はVドメインによって付与される、請求項1に記載の分子。
【請求項3】
結合特異性が、リガンド、アンチカリン、アドネクチン、アフィボディ又はDARPinによって付与される、請求項1に記載の分子。
【請求項4】
(a)、(b)及び(c)に対する特異性を付与する分子の結合部分がポリペプチドである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分子。
【請求項5】
単一のポリペプチド鎖である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分子。
【請求項6】
(a)、(b)及び(c)に対する特異性を付与する分子の結合部分が、リンカーによって連結されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分子。
【請求項7】
以下を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の分子:
(d)Vドメインに連結されたVドメインを含む第1の免疫グロブリンドメインであって、該免疫グロブリンドメインはCD123に特異的に結合する;
(e)Vドメインに連結されたVドメインを含む第2の免疫グロブリンドメインであって、該免疫グロブリンドメインはCD16に特異的に結合する;及び
(f)Vドメインに連結されたVドメインを含む第3の免疫グロブリンドメインであって、該免疫グロブリンドメインはCD33に特異的に結合する。
【請求項8】
少なくとも1つの免疫グロブリンドメインが、分子内ジスルフィド結合を形成可能な少なくとも2つのシステイン残基を含む、請求項7に記載の分子。
【請求項9】
少なくとも1つのさらなる(ポリ)ペプチドをさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の分子。
【請求項10】
第1の免疫グロブリンドメインが、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項7〜9のいずれか1項に記載の分子。
【請求項11】
請求項4〜10のいずれか1項に記載の分子をコードする、核酸分子。
【請求項12】
(g)請求項1〜10のいずれか1項に記載の分子;又は
(h)請求項11に記載の核酸分子、
のうち少なくとも1つを含む、診断組成物。
【請求項13】
(i)請求項1〜10のいずれか1項に記載の分子;又は
(j)請求項11に記載の核酸分子、
のうち少なくとも1つを含む、医薬組成物。
【請求項14】
急性骨髄性白血病及び/又は骨髄異形成症候群の治療において使用するための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の分子又は請求項11に記載の核酸分子。
【請求項15】
核酸分子又はポリペプチドが、急性骨髄性白血病の寛解期において又は骨髄異形成症候群の診断後に投与される、急性骨髄性白血病及び/又は骨髄異形成症候群の治療において使用するための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の分子又は請求項11に記載の核酸分子。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【公表番号】特表2013−513370(P2013−513370A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542549(P2012−542549)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069271
【国際公開番号】WO2011/070109
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(507239592)フリードリヒ−アレクサンダー−ウニベルジテート・エアランゲン−ニュルンベルク (7)
【出願人】(512151207)
【Fターム(参考)】