説明

急速冷凍可能な発酵生地およびその製造方法

本発明は、急速冷凍に耐えるブリオッシュタイプの発酵生地の構成に関する。この生地は、小麦粉に対する重量比で、7〜40%、好ましくは7〜15%のイースト、80%以下、好ましくは26〜60%の甘味料を含み、甘味料の10〜30%はハチミツであることが好ましい。本発明に係る製造方法は、練り器に、甘味料の一部、小麦粉、イースト、卵、牛乳、少なくとも1種類の香料および塩を入れ;生地を混ぜ合わせてから、最初の捏ね上げを行い;残りの甘味料を入れ、2度目の捏ね上げを行い;脂肪分を入れ、3度目の捏ね上げを行い;第1次発酵させる、というステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリオッシュ(丸形パン)タイプのパンまたはケーキ製品の生産に適した発酵生地の準備に関する。
【0002】
本発明の対象は、冷凍状態で保存することの可能な生地を準備するための、急速冷凍に耐える発酵生地の調合、該生地の生産方法、および、これにより得られるブリオッシュタイプのパンまたはケーキ製品である。
【背景技術】
【0003】
練り器で捏ねた生地を成形し、発酵膨張させて焼き上げるというブリオッシュの製造方法は、周知である。このように製造されたブリオッシュは、その場で販売されるか、製造所の近隣で販売される。
【0004】
この種のパンまたはケーキの製造における不都合は、生産量を正確に予測しなければならないということにある。消費者は、ふんわりした口当たりのよいブリオッシュを好むため、保存上の問題から、ブリオッシュは、早急に販売しなければならない。一方で、この種の製品の中には、非常に季節性の強いものがある。代表的なものとして、たとえば「ガレット・デ・ロワ」と呼ばれるブリオッシュは、1月中に膨大な需要が見込まれる。こうしたことは、職人達にとっては非常な負担であり、通常の生産リズムにうまく立ち戻ることが要望される。したがって、システムの柔軟性を改善して、生産を調整できるようにする必要がある。
【0005】
さらに、製造および流通事情は、変化してきており、生産業者が半製品を小売商に納め、小売商が最終的に加熱調理を行って、消費者に焼きたての製品を販売するということが、ますます頻繁に行われるようになっている。小売商は、完全な製造工程システムも、製造において最も繊細な部分である生地の練り上げを行う熟練職人も有してはおらず、加熱調理用のオーブンを所有しているに過ぎない。したがって、この種の半製品の納入は、製品の良好な保存を保証できる条件および期間において、なされなければならない。
【0006】
急速冷凍は、発酵させ、加熱調理すればよいよう準備された、発酵生地のベースとなる製品の製造を可能とするため、上記の問題に対する1つの解決策である。生地を入手し、冷凍状態で保存するだけでよいのである。あとは、必要に応じて、解凍した生地を発酵膨張室に置き、次に加熱調理用オーブンに入れればよい。これにより、販売前の作業に必要とされる時間は、非常に短縮される。また、冷凍製品生産者の指示どおりに、発酵膨張室およびオーブンをプログラムすれば事足りるため、発酵膨張および加熱調理作業を行う際の困難さは、軽減される。
【0007】
急速冷凍は、生地の変化、とりわけ生地の発酵を停止させるため、長期間にわたって生地を保存することを可能とする。しかしながら、生地を急速冷凍して、後で加熱調理するということに由来する様々な不都合が、依然として残っている。直接焼き上げた製品に比べて、急速冷凍後に得られる製品は、嵩が少なくなり、外見的魅力、とりわけ色彩的魅力に乏しくなる。しかしながら、何よりも問題なのは、ブリオッシュタイプのパンまたはケーキに求められている味わい、ふんわりとした柔らかな食感が損なわれてしまうことである。
【0008】
発酵は、温度が充分であることを条件として、小麦粉と水の混合物にイーストを加えると直ちに始まる生物学的プロセスであり、一般的には、パンまたはケーキ製造者の調理室で行われる。発酵は、生地を捏ねている間も寝かせている間も、続行する。これら各々の作業に要する時間は、生地を構成する原料によって異なり、発酵の始まった生地をベースとした様々なタイプのパンまたはケーキについて、当業者の間では、多様なレシピが知られている。急速冷凍は、この発酵プロセスの進行を妨害するものであり、その結果、上述したような不具合が生じることとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の第一の目的は、以下のような急速冷凍可能な生地の製造および成形方法を提供することである。すなわち、いかなる製造補助剤も必要とせず、加熱調理するだけで、満足できる形状および外観で、伝統的な技術によって作られた同じタイプの製品と比べて、味も食感も遜色のない、むしろ、味も食感も改善された製品をもたらす、急速冷凍可能な生地の製造および成形方法である。
【0010】
本発明のもう一つの目的は、急速冷凍可能なブリオッシュタイプの発酵生地の製造方法を提供することである。この製造方法は、請求項に記載の製造方法によって可能となるものであり、伝統的な製造方法によって作られた同じタイプの製品と比べて、外観も味も遜色のない、むしろ、外観も味も改善された製品を作ることを可能とする。本発明の製造方法の特に有益な点は、この製造方法によって用意される生地は、需要に合わせて後から加熱調理するために急速冷凍することもできるし、そのまま発酵膨張室で寝かせて、直接焼き上げあげることもできるということであり、いずれの場合も、得られる製品の特徴は損なわれることがない。また、この製造方法により得られる製品は、いかなる人工添加物も含まない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるブリオッシュタイプの発酵生地の製造方法、とりわけ、加熱調理すればよいよう準備して急速冷凍される生地の製造方法は、小麦粉、脂肪分、卵、牛乳、少なくとも1種類の香料、少なくとも1種類の甘味料、イーストおよび塩を混合することにより構成され、以下のステップを含むことを特徴とする。すなわち:
−練り器に、甘味料の一部、小麦粉、イースト、卵、牛乳、少なくとも1種類の香料および塩を入れ、
−フラッサージュ(最初の混ぜ合わせ)を行ってから、最初の捏ね上げを行い、
−残りの甘味料を入れ、2度目の捏ね上げを行い、
−脂肪分を入れ、3度目の捏ね上げを行い、
−第1次発酵させる。
【0012】
練り器は、ブリオッシュ生地を準備する際に通常使用され、当業者には操作方法の知られた、回転アームのついた大桶である。ここに、最初の段階で、残りの甘味料と脂肪分とを除いた、生地に必要な材料のすべてを投入する。
【0013】
本発明の特徴の1つは、甘味料の総量、すなわち最初に投入する甘味料と残りの甘味料の総量は、発酵生地に通常使用される量よりもかなり多いということである。一般的には、このような量の甘味料を使用すると、製品の出来は悪くなる。こうした多めの甘味料を使用できるのは、これに伴い、使用するイーストの分量も通常の使用量よりも多くしているためである。すなわち、練り器には、小麦粉に対する重量比で、総量で80%以下、好ましくは26〜60%の甘味料、7〜40%、好ましくは7〜15%のイーストが投入される。
【0014】
一方、本発明の方法によれば、甘味料は、2回に分けて投入される。この製造方法では、最初の分量は、フラッサージュの際に投入され、第2の分量、すなわち残りの甘味料は、生地の最初の捏ね上げの後で投入される。最初の分量は、甘味料総量のおよそ半分であるが、この割合は、かなり変化させることができる。好ましい方法としては、練り器に最初に投入する甘味料の分量は、小麦粉に対する重量比で、10〜30%、好ましくは15〜20%、より好ましくは18%とし、これに、小麦粉に対する重量比で、8〜12%、好ましくは9%のイーストを加える。
【0015】
甘味料には、様々な種類のものが使用できる。たとえば、蔗糖、転化糖、ハチミツ、および、ケーキ作りに使用されるその他すべての材料を使用することができ、また、これらを混合して使用することも可能である。また、最初に投入する甘味料と、後から投入するする甘味料とを異ならせることもできる。特に好ましい実施方法の一つによれば、最初に投入する甘味料は、ハチミツである。ハチミツは、現行の品質規格および純度規格に則したものであれば、どのような種類であってもよい。また、品質が損なわれないことを条件に、室温でペースト状または液状にしておくことが好ましい。
【0016】
残りの甘味料に関しては、所望の時点で、通常のもの、たとえば転化糖または蔗糖を投入する。その他の材料は、当業者に周知の割合で投入する。これらの含有量は、小麦粉に対する重量比で示される。
【0017】
本発明の方法を実施するための特殊な態様の一つによれば、最初に投入する甘味料、牛乳、少なくとも1種類の香料を含んだ生地を準備し、これを冷却室で何時間か、たとえば一晩(二日間まで)寝かせる。そして、最初に投入する甘味料、牛乳、少なくとも1種類の香料を、予め溶かして、20時間以上冷却された混合生地の状態で、練り器に投入する。
【0018】
フラッサージュ、すなわち材料の最初の混合は、緩やかな速度で行うことが好ましい。緩やかな速度とは、通常の混ぜ合わせ速度よりも遅い速度、たとえば、斜軸練り器の第2速である。
【0019】
本発明の方法の重要な特徴の一つは、最初の捏ね上げを、ブリオッシュ生地を準備する場合に従来行われている捏ね上げよりも、長い時間(約10分間)行うということである。実際、生地のコシの強さは、10分まで向上し続け、次に行われるグルテンの引き延ばしを、ギリギリの限界まで行うことが可能となり、したがって、上質なパンまたはケーキを製造するのに必要な生地を得ることができる。好ましくは、最初の捏ね上げ時間を、20分まで延長する。
【0020】
次に、甘味料の残りを投入し、公知の方法で捏ね上げを行う。たとえば、第2の捏ね上げを10分間続行してから、脂肪分を加えて第3の捏ね上げを4分間行う。用いる脂肪分が、製パン室の室温で固体のバターまたは固形脂肪である場合は、ポマード状にして投入することが好ましい。
【0021】
次に、生地を3〜4時間の第1次発酵段階に置く。第1次発酵の温度は、通常の第1次発酵温度よりも高い方が有益であり、28〜35℃の間であると好ましい。
【0022】
最後に、生地のガス抜きを行い、冷却する。たとえば、2分間ガス抜きを行った後、0〜5℃の温度で16〜22時間冷却する。本発明の方法の1つの態様によれば、冷却後、生地を小分けにして、生地に成形する。この生地は、必要に応じて、直ちに焼き上げてもよいし、後で加熱調理するために急速冷凍してもよい。
【0023】
本発明のもう1つの態様によれば、大きな塊のまま、数キログラム用の容器に入れて、生地を急速冷凍する。この場合、生地の小分けおよび成形は、解凍後に行う。
【0024】
また、本発明は、小麦粉、卵、脂肪分、牛乳、少なくとも1種類の甘味料、少なくとも1種類の香料および塩を含んだ、ブリオッシュタイプの製品を製造するための発酵生地に係り、この発酵生地は、小麦粉に対する重量比で、80%以下、好ましくは26〜60%の甘味料、7〜40%、好ましくは7〜15%のイーストを含む。
【0025】
この生地は、上述した方法(該方法は、とりわけ、このような生地を準備するのに適している)により実現される。実際、数多くの実験を試みたところ、2つの因果関係が明らかになった。1つは、生地内に存在する、甘味料の量とイーストの量との関係であり、もう1つは、甘味料の混入方法と、急速冷凍後における発酵膨張の質との関係である。したがって、本発明の成分構成と、上述した方法とを組み合わせることにより、最良の結果を得ることができる。すなわち、外見的および味覚的特徴において、伝統的な方法およびレシピによって製造された製品に優るとも劣らないブリオッシュ製品を得ることができる。さらに、このように製造された生地は、急速冷凍に対して極めて高い耐性を有しており、冷凍状態で数週間保存した後でも、さらには数ヶ月保存した後でも、優れた特性を維持することが可能である。
【0026】
このような結果に至る理由を説明する明白な理論は不明であるが、多量の甘味料の使用、とりわけ、フラッサージュの際にかなりの分量の甘味料を投入することにより、イーストの活動が緩和されるためと推測される。したがって、かなりの量のイーストを投入しても、捏ね上げを行う間の発酵が、加速促進されることはなく、急速冷凍をした後でも、発酵を再開するために充分なイーストが残る。他方、緩やかで漸進的な発酵の再開は、通常よりも長い間行われる捏ね上げ作業による、生地の酸化促進(発酵抑制)も関連している。
【0027】
本発明の発酵生地のレシピによれば、甘味料として、小麦粉に対する重量比で、10〜30%のハチミツを含むことが有益である。好ましくは、生地は、15〜20%のハチミツと8〜12%のイーストを含む。さらに好ましい実施形態においては、18%のハチミツと9%のイーストを使用する。なお、含有量は、小麦粉に対する重量比で示される。
【0028】
パン用の生イーストを用いることが好ましく、使用量は、生イーストを用いる場合をベースに計算されている。しかしながら、生産者によって定められた再活性化の方法を遵守することを条件に、活性ドライイーストまたは脱水イーストを使用することも可能である。また、レザッフル社(Lesaffre社;フランス、マルカンバルル(Marcq en Bareul))が供給しているような、薄片冷凍イーストを用いることもできる。この場合、使用量を、同等の生イーストを使用する場合の3分の1に減らす。
【0029】
その他の材料は、当業者に周知の割合で用いるが、砂糖の量は、ハチミツを用いる量に応じて減らす。より詳細には、本発明の発酵生地は、以下の材料を含む:
−小麦粉 1000〜1200g
−卵 3〜7個
−脂肪分 150〜250g
−牛乳 50〜150g
−香料 150〜250g
−ハチミツ 100〜300g
−砂糖 100〜300g
−イースト 75〜125g
−塩 15〜25g
【0030】
小麦粉、卵、牛乳、塩は、ケーキ作りに頻繁に使用される周知の材料であり、当業者はこれらをどう選択すれば適切かを熟知している。砂糖は、ケーキ作りに使用されるものであれば、任意のものを用いうる。好ましくは、転化糖または蔗糖を使用する。脂肪分は、通常ブリオッシュ生地に用いられるものから選択する。ブリオッシュ生地の場合は、バターが特に好ましい。1種類以上の香料は、度数の高いアルコール類、植物性エッセンスおよびエキスのような、よく知られた食用香料の中から選択する。これらの香料は、一般的に、液状のものが使用され、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよく、その使用量は、150〜250gまでと、比較的幅広く変化させることが可能であるが、200gが好ましい。濃縮タイプ、乾燥タイプの香料を使用する場合は、牛乳または水を加えて液体の総量を調整するよう留意し、牛乳+水+香料の総量が、約300gになるようにする。
【0031】
したがって、本発明の発酵生地は、好ましくは以下の材料を含む:
−小麦粉 1100g
−卵 5個
−脂肪分 200g
−牛乳 100g
−香料 200g
−砂糖 200g
−ハチミツ 200g
−イースト 100g
−塩 21g
【0032】
上記のレシピに従って準備された発酵生地を、小分けにして成形し、後は加熱調理するだけの生地とすることことができ、この生地は、加熱調理するまで保存するために急速冷凍してもよいし、その場で焼き上げてもよい。また、発酵生地を、塊のまま急速冷凍することも可能であり、たとえば数キログラム入りの容器に入れて冷凍する。この場合、小分けは、室温で解凍した後に行う。本発明の対象は、後日ブリオッシュタイプの製品を焼き上げるため、塊のまま、あるいは小分けにして急速冷凍された、上記発酵生地から得られる生地である。
【0033】
同様に、本発明の対象は、後日ブリオッシュタイプの製品を焼き上げるため、塊のまま、あるいは小分けにして急速冷凍された、上記製造方法から得られる生地である。
【0034】
現実的要求において、急速冷凍という用語は、食料品の保存に関する基準に則して用いられる場合、0℃未満の温度で製品を保存するすべての作用を意味する。一般的に、この基準に従い、製品はまず最初に、−20℃未満の温度に少なくとも数時間置かれ(正式には、これを急速冷凍という)、その後、保存のため−15℃未満の温度に置かれる(これは、冷凍である)。
【0035】
本発明の急速冷凍生地からブリオッシュタイプのケーキを作る場合、請求項に記載された以下の方法により行う。すなわち、本発明の急速冷凍生地を、2〜4時間、30〜40℃の温度に置き、次に、通常の温度のオーブンでこの生地を焼き上げる。
【0036】
最後に請求項に記載されるのは、本発明に従って、塊のまま、または小分けにして急速冷凍生地された生地から得られる、ブリオッシュタイプのケーキ製品である。これらの製品は、急速冷凍段階を経ることなく得られる製品と、外見も味も同一の特徴を有する。
【実施例】
【0037】
以下の実施例は、本発明を例証するものである。
【0038】
[実施例1]
「ガレット・デ・ロワ」タイプのブリオッシュを作るための発酵生地の材料:
−小麦粉 1100g
−卵 5個
−バター 200g
−牛乳 100g
−砂糖 200g
−塩 21g
−ハチミツ 200g
−イースト 100g
−ラム酒 50g
−グラン・マニエ 25g
−燈花水 150g
−レモン香料 12g
−オレンジ香料 12g
【0039】
[実施例2]
「ガレット・デ・ロワ」タイプのブリオッシュを作るための発酵生地の製造方法:
用いる材料は実施例1と同じであり、分量も同じである。まず最初に、砂糖とバターを除き、生地の準備に必要なすべての材料を、斜軸の練り器に投入する。フラッサージュを、緩やかな速度(第2速)で3分間行う。次に、第1の捏ね上げを第2速で20分間行う。その後、砂糖を加え、10分間捏ね上げを続ける。次に、ポマード状のバターを加えて、第3の捏ね上げを第2速で4分間続行する。次に、28〜35℃の温度で、第1次発酵を4時間行う。最後に、2分間ガス抜きを行ってから、3〜5℃の温度で4時間、生地を冷却する。その後、生地を小分けして、様々な寸法の冠型に成形する。
【0040】
[実施例3]
急速冷凍した生地からの、「ガレット・デ・ロワ」タイプのブリオッシュの製造:
実施例2に示した条件で、ブリオッシュ生地を準備する。小分けして冠型に成形した後、これらを−22℃以下の急速冷凍室に入れ、その後、−16℃以下の冷凍室に移して、必要な期間保存する。
【0041】
ガレットを焼くことにした場合、急速冷凍した冠型の生地を板の上にのせ、30〜40℃の温度で放置する。すると解凍が始まり、漸進的な発酵が再開される。発酵膨張は2〜4時間続くが、その所要時間は、職人の目で判断できる。次に、通気をよくした140℃のオーブン内で、冠型のガレットを10分間焼き、さらに120℃で10分間焼く。
【0042】
[実施例4]
比較試験:
1)サンプルの準備:
イースト、ハチミツおよび砂糖(これらの分量を表1に示す)以外は、実施例1と同一の材料で、3つのレシピを準備した。
【0043】
[表1]
レシピ1 レシピ2 レシピ3
イースト 20g 90g 90g
ハチミツ(第1分量) 0 0 200g
砂糖(第2分量) 200g 200g 200g
【0044】
レシピ1は、伝統的な生地である。レシピ2は、イーストの量だけを増やした。レシピ3は、本発明に従って構成した。3つのレシピによる生地を、実施例2に示した方法で準備し、460gの冠型に成形し、これを急速冷凍した。なお、急速冷凍の実施日を、0日目とした。
【0045】
異なる期間で急速冷凍を行った後、各レシピの生地を取り出し、実施例3に示したように、製パン室の室温に置いて発酵を再開させ、次に40℃で発酵膨張させた。試験上の都合から、加熱調理を行う前に、以下のケースを除き、3時間30分間生地を発酵膨張させた。
【0046】
−急速冷凍後1日目におけるレシピ2の生地は、発酵膨張が活発だったため、1時間50分とした。
【0047】
−レシピ1の生地は、急速冷凍後21日目の結果が悪かったため、試験を中止した。
【0048】
加熱調理は、実施例3に従って行った。
【0049】
2)発酵膨張における生地の展開の測定:
各冠型生地の展開を、円周(Cで示す)および高さ(Hで示す)において測定した。測定結果を、表2に示す。
【0050】
[表2]
急速冷凍期間 レシピ1 レシピ2 レシピ3
C(cm) H(cm) C(cm) H(cm) C(cm) H(cm)
1日目 24.5 6.0 24.5 6.5 24.5 6.0
21日目 19.0 4.5 23.5 5.5 24.3 6.2
28日目 − 21.0 5.5 23.5 6.4
35日目 − 20.0 5.0 23.5 6.0
42日目 − 20.2 5.0 22.9 6.2
【0051】
急速冷凍後1日目において、3つのレシピとも、良好な発酵膨張を見せた。すなわち、短期間の保存において、本発明の生地構成は、伝統的な生地構成と同等の特徴を示した。
【0052】
レシピ1は、21日目以前に、発酵の再開能力を失った。当業者の肉眼により、このような不良生地は、販売品として焼く価値がないことが確認された。レシピ2は、急速冷凍期間が長くなるにつれ、その発酵能力を減少させた。すなわち、急速冷凍後1日目に24.5cmであった円周は、42日目に20.2cmにまで減少した。同様に、高さは、6.5cmから5.0cmに変化した。すなわち、おおよそ、円周で17%、高さで23%の減少が見られた。これに対して、レシピ3は非常に安定しており、円周で6%、高さで3%の減少に留まった。
【0053】
3)味試験:
各ガレットを焼き上げた後、7人の検査官による、目隠し味検査を行った。味試験は、ガレットを冷ましてから、6時間以内に実施した。評価の要素は、表皮および外見、パンの内部およびコシの強さに及んだ。また、一般的評価も行った。評価結果を、表3に示す。
【0054】
[表3]
1日目:
−レシピ1 [表皮]薄い、規則的 [中身]柔らかい、滑らか [味]美味、甘い [評価]良好、上等、優良製品
−レシピ2 [表皮]厚さが不規則 [中身]柔らかい、滑らか [味]美味、甘い [評価]若干の欠点、良製品
−レシピ3 [表皮]薄い、規則的 [中身]柔らかい、滑らか [味]美味、甘い [評価]均等、上等、優良製品
21日目:
−レシピ1 [表皮]非常に不規則 [中身]非常に圧縮 [味]風味なし [評価]並以下、販売不可
−レシピ2 [表皮]厚さが不規則 [中身]圧縮 [味]美味、甘い [評価]軽さなし、良製品
−レシピ3 [表皮]薄い、規則的 [中身]柔らかい、滑らか [味]美味、甘い [評価]完璧かつ輝かしい味、優良製品
28日目:
−レシピ2 [表皮]厚い [中身]圧縮、コンパクト [味]美味、甘い [評価]固い、並製品
−レシピ3 [表皮]薄い、規則的 [中身]柔らかい、滑らか [味]美味、甘い [評価]均等、上等、優良製品
35日目:
−レシピ2 [表皮]厚い [中身]圧縮、コンパクト [味]味わい不足、甘み不足 [評価]魅力に欠け、凡庸な製品
−レシピ3 [表皮]薄い、規則的 [中身]柔らかい、滑らか [味]美味、甘い [評価]軽い、ふんわり、優良製品
42日目:
−レシピ2 [表皮]厚い、不規則 [中身]圧縮、焼き悪し [味]味わい不足、甘み不足 [評価]変形、重い、並以下の製品
−レシピ3 [表皮]薄い、規則的 [中身]柔らかい、滑らか [味]美味、甘い [評価]軽い、上等、優良製品
【0055】
急速冷凍生地の保存期間の長さを問わず、上等で安定した品質の製品を得ることができたのは、レシピ3のみであった。
【0056】
4)硬化試験:
28日目に解凍した生地を用いて準備したガレットで、硬化試験を実施した。
【0057】
数時間前に焼いたガレットを、上述のように味わった後、翌日まで冷却室入れておいた。その後、冷却室から取り出して、3時間室温に置いた。その後、前日と同じ条件で味試験を実施した。
【0058】
検査官の評価によれば、レシピ2の製品は、柔らかさが不充分(最初の味試験でも充分ではすでに十分ではなかった)であり、さらに、内部は砕けやすくなり、味も劣化した。反対に、レシピ3の製品は、柔らかさも滑らかさも、申し分なく維持した。内部も砕けることなく、前日と同様の質感を維持した。このように、本発明に従い、28日間急速冷凍した生地から作ったレシピ3の製品は、焼き上げた後の保存においても優れた能力を有していることが判明した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリオッシュタイプの発酵生地の製造方法であって、小麦粉、脂肪分、卵、牛乳、少なくとも1種類の香料、少なくとも1種類の甘味料、イーストおよび塩を混合することにより、加熱調理用に急速冷凍される生地を製造する方法において、
−練り器に、甘味料の一部、小麦粉、イースト、卵、牛乳、少なくとも1種類の香料および塩を入れ、
−生地を混ぜ合わせてから、最初の捏ね上げを行い、
−残りの甘味料を入れ、2度目の捏ね上げを行い、
−脂肪分を入れ、3度目の捏ね上げを行い、
−第1次発酵させる、
ステップを含むことを特徴とするブリオッシュタイプの発酵生地の製造方法。
【請求項2】
小麦粉に対する重量比で、総量で80%以下、好ましくは26〜60%の甘味料、7〜40%、好ましくは7〜15%のイーストを、練り器に投入することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
小麦粉に対する重量比で、練り器に最初に投入する甘味料の分量を、10〜30%以下、好ましくは15〜20%、より好ましくは18%とし、イーストの量を、8〜12%、好ましくは9%とすることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
最初に投入する甘味料を、ハチミツとすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
最初に投入する甘味料、牛乳、少なくとも1種類の香料を、予め溶かして、20時間以上冷却した混合生地の状態で、練り器に投入することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記生地の混ぜ合わせを、緩やかな速度で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記最初の捏ね上げを、従来行われている捏ね上げよりも長い時間、好ましくは20分まで延長して行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第1次発酵を、28〜35℃の温度で3〜4時間行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記第1次発酵の後、生地のガス抜きを行って冷却し、加熱調理前に、小分けにして生地を成形することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
小分けおよび成形の前、または、小分けおよび成形の後に、生地を急速冷凍することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
急速冷凍に耐えるブリオッシュタイプの発酵生地であって、小麦粉、卵、脂肪分、牛乳、少なくとも1種類の甘味料、少なくとも1種類の香料および塩を含み、小麦粉に対する重量比で、総量で80%以下、好ましくは26〜60%の甘味料、7〜40%、好ましくは7〜15%のイーストを含む、急速冷凍された発酵生地。
【請求項12】
小麦粉に対する重量比で、甘味料として、10〜30%、好ましくは15〜20%、さらに好ましくは18%のハチミツと、8〜12%のイーストを含む請求項11に記載の発酵生地。
【請求項13】
材料として、
−小麦粉 1000〜1200g
−卵 3〜7個
−脂肪分 150〜250g
−牛乳 50〜150g
−香料 150〜250g
−ハチミツ 100〜300g
−砂糖 100〜300g
−イースト 75〜125g
−塩 15〜25g
を含むことを特徴とする請求項12に記載の発酵生地。
【請求項14】
材料として、
−小麦粉 1100g
−卵 5個
−脂肪分 200g
−牛乳 100g
−香料 200g
−砂糖 200g
−ハチミツ 200g
−イースト 100g
−塩 21g
を含むことを特徴とする請求項13に記載の発酵生地。
【請求項15】
請求項10に記載された方法を用いて得られる急速冷凍生地であって、加熱調理すればよいように準備され、塊のまま、あるいは、小分けにして急速冷凍された、ブリオッシュタイプの製品を製造するための急速冷凍生地。
【請求項16】
請求項11〜14のいずれかに記載された発酵生地から得られる急速冷凍生地であって、加熱調理すればよいように準備され、塊のまま、あるいは、小分けにして急速冷凍された、ブリオッシュタイプの製品を製造するための急速冷凍生地。
【請求項17】
請求項15または16に記載された急速冷凍生地を、2〜4時間、30〜40℃の温度に置き、次に、この生地を通常の温度のオーブンで焼き上げて、ブリオッシュタイプの製品を製造する方法。
【請求項18】
請求項15または16に記載された、塊のまま、あるいは、小分けにして急速冷凍生地された生地から得られる、ブリオッシュタイプの製品であって、急速冷凍段階を経ることなく得られる製品と、外見も味も同一の特徴を有する、ブリオッシュタイプの製品。

【公表番号】特表2007−508809(P2007−508809A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526658(P2006−526658)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002298
【国際公開番号】WO2005/025318
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(506085413)
【Fターム(参考)】