説明

恒久的な耐指紋コーティングとしての、ポリシラザンの使用

発明は、ポリシラザンが、溶媒中の一般式 1:
-(SiR’R‘‘-NR‘‘‘)n- (1)
(式中、R‘, R‘‘, R‘‘‘は、独立にH、場合により置換されたアルキル−, アリール−, ビニルもしくは(トリアルコキシシリル)アルキルラジカルであり、n=ポリシラザンが数平均分子量150〜150,000 g/モルを有する整数である)のポリシラザンまたはポリシラザンの混合物の溶液の形態であることを特徴とする、指紋の影響の受けやすさを防ぐための金属表面上の恒久的コーティングとしての、ポリシラザンの使用に関する。発明は、更に、コーティングを製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、恒久的な耐指紋コーティングとしての、ポリシラザンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
金属表面, 例えばステインレス・スティール, アルミニウムまたはクロム-めっきした表面の金属表面を有する物は、広く普及している。これらの表面は、日用品,家庭,自動車または建築部門および家具におけるように、装飾的な目的を果たすことができる。その上に、これらの金属表面は、良好な清浄性, 低い防汚性または耐食性のような特別な使用特性を有することができる。これらの使用特性は、商業部門, 例えば商売,調理法, 臨床部門または食品加工業もしくは化学工業/医薬産業のような産業においてに関連する。
【0003】
これらの金属表面は、特別な視覚的効果または使用特性を達成するために、表面処理され、すなわち、ブラシをかけ, 磨きまたは別な方法で表面構造が付与され、そして更にコーティングしないで使用されることがよくある。
【0004】
そのような金属表面は、有機性, 例えば食物, 油脂の残りや特に指紋によって非常に汚れる傾向がある。そのような汚れは、金属表面上で極めて容易に認知され、見る者にとって、表面が汚くかつ非衛生に見えると言う装飾的な効果または信号に影響を与える。更なる要因は、指紋が、特に、それらの組成が、グリース, タンパク質, 汗および有機酸を含む物質からなることにより、それらが, ちょうどよい時に除かれない場合には、金属表面に損傷を引き起こし得ることである。これは、指紋の構成成分と金属表面との化学反応に起因し得、表面の外観を恒久的に変える。構造化された表面, 例えばブラッシュドステインレス・スティールで構成されたものの場合には、清浄は、表面のプロフィールによって更に妨げられる。
【0005】
指紋による汚れをコーティングによって防ぐために、文献に種々の方法が記載されている。そのようなコーティングは、耐指紋コーティングと呼ばれる。理想的な耐指紋コーティングは、適用して硬化させるのが容易であるべきであり、かつ永続性および金属表面上での極めて良好な付着力を示すべきである。その上に,コーティングは、 視覚的に認知できずそして表面の初めの質の高い外観を損なわないことが望ましい。
【0006】
耐指紋コーティングの効果は、指紋を知覚することができる度合いを一層小さくすることができるために、被覆表面上で指紋の付着力を低減させることに在る。金属表面の清浄は、簡単な様式で、理想的には洗剤の助けによらずに可能であるべきである。その上に、コーティングは、下にある金属表面を指紋の構成成分による化学反応から保護すべきであり、それで、存在する指紋は、長期間の後でさえ、金属表面に残留する変化が認知できないくらいに再び除くことができるようになる。
【0007】
WO 02/40604A2は、水性ベースの透明な暫定的耐指紋コーティングについて記載している。そのようなコーティングは、短期間の後に再び表面から引き離すことができ、従って恒久的な保護をもたらさない。
【0008】
WO 03/22495A1は、アクリレートをベースにし、紫外線によって硬化させなければならない金属性表面用コーティング組成物について記載している。対応するコーティングは、視覚的に認知できるように、相対的に厚い層で適用される。その上に、紫外線硬化は、高いレベルの装置複雑性に関連し、従って適切な機器が入手できる場合だけに実行するすることができ、従って対応して費用がかかる。
【0009】
WO 03/46090A2は、耐指紋コーティングとしての、水性ワックスエマルジョンの使用について記載している。そのようなコーティングは、表面への化学結合が存在しないので、同様に恒久的なものではない
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、適用するのが容易でありかつ恒久的でありそして結局指紋が表面に容易には付着せず、故に、視的外観に影響を与える度合いが小さくなる、金属表面用の高度に透明な耐指紋コーティングを開発することであった。その上に、指紋の除去は、容易にされるべきである。更に、コーティングは、長期間の後でさえ、指紋の残留物を再び残留物を残さ無いで除くことができるように、指紋の構成成分と金属表面との化学反応を防ぐべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
今、驚くべきことに、ポリシラザンをベースにしたコーティングがこれらの要件を満足することを見出した。
【0012】
従って、本発明は、溶媒中の一般式 1のポリシラザンまたはポリシラザンの混合物の溶液を含む、金属表面をコーティングするためのポリシラザンの使用を提供する:
-(SiR’R‘‘-NR‘‘‘)n- (1)
式中、R‘, R‘‘, R‘‘‘は、同じであるかまたは異なり、各々独立に水素であるかまたは場合により、置換されたアルキル, アリール, ビニルもしくは(トリアルコキシシリル)アルキルラジカルであり、nは、整数でありそしてnは、ポリシラザンが数平均分子量150〜150,000 g/モルを有するものである。
【0013】
特に適したポリシラザンは、この場合、式中、R‘, R‘‘, R‘‘‘が、各々独立に水素, メチル, エチル, プロピル, イソプロピル, ブチル, イソブチル, tert-ブチル, フェニル, トリル, ビニルまたは3-(トリエトキシシリル)プロピル, 3-(トリメトキシシリルプロピル)の群からのラジカルである、それらのポリシラザンである。
【0014】
好適な実施態様では、式 2のペルヒドロポリシラザンを発明のコーティング用に使用する:
【0015】
【化1】

【0016】
式中、nは、整数でありそしてnは、ポリシラザンが数平均分子量150〜150,000 g/モルを有するものであり、溶媒を含む。
【0017】
更に好適な実施態様では、発明のコーティングは、式 (3)のポリシラザンの少なくとも一種を含む:
-(SiR’R‘‘-NR‘‘‘)n-(SiR*R**-NR***)p - (3)
式中、R’, R’’, R’’’, R*, R** およびR***は、各々独立に水素であるかまたは場合により、置換されたアルキル, アリール, ビニルもしくは (トリアルコキシシリル)アルキルラジカルであり、nおよび pは、各々整数でありそしてnは、ポリシラザンが数平均分子量150〜150,000 g/モルを有するものである。
【0018】
特に好適なものは、式中、
R’, R’’’ およびR***が各々水素であり、そしてR’’, R*およびR** が各々メチルであり;
R’, R’’’およびR*** が各々水素であり、そして R’’, R* が各々メチルであり、そしてR**がビニルであり;
または
R’, R’’’, R*およびR***が各々水素であり、そしてR’’およびR**が各々メチルである;
化合物である。
【0019】
好ましいのは、同様に式 (4)のポリシラザンの少なくとも一種を含む溶液である:
-(SiR’R‘‘-NR‘‘‘)n-(SiR*R**-NR***)p -(SiR1, R2-NR3)q- (4)
式中、R’, R’’, R’’’, R*, R**, R***, R1, R2およびR3 は、各々独立に水素であるかまたは場合により、置換されたアルキル, アリール, ビニルもしくは (トリアルコキシシリル)アルキルラジカルであり、n, pおよびqは、各々整数でありそしてnは、ポリシラザンが数平均分子量150〜150,000 g/モルを有するものである。
【0020】
特に 好適ななものは、式中、
R’, R’’’および R*** が各々水素であり、R’’, R*, R**およびR2 が各々メチルであり、R3 が(トリエトキシシリル)プロピルであり、そして R1 がアルキルまたは水素である;
化合物である。
【0021】
一般に、溶媒中のポリシラザンの割合は、ポリシラザン1〜80重量%であり、 好ましくは5〜50重量%であり、一層好ましくは10〜40重量%である。
【0022】
ポリシラザン配合物用に適した溶媒は、特に水または 反応性基 (例えば、ヒドロキシルもしくはアミン基)を何ら含まない有機溶媒である。それらは、例えば、 脂肪族もしくは芳香族炭化水素, ハロ炭化水素、エチルアセタートもしくはブチルアセタートのようなエステル、アセトンもしくはメチルエチルケトンのようなケトン、テトラヒドロフランもしくはジブチルエーテルのようなエーテル、モノ- および ポリアルキレングリコールジアルキルエーテル (グリム), またはこれらの溶媒の混合物である。
【0023】
ポリシラザン配合物の更なる構成成分は、更に、コーティングを製造するために典型的に使用されるようなバインダーにすることができる。それらは、例えば、セルロースエーテルおよびエステル、例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース、セルロースアセタートまたはセルロースアセトブチラート, 天然樹脂、例えばゴムもしくはロジンまたは合成樹脂、例えば、重合樹脂もしくは縮合樹脂、例えばアミノ樹脂、特に尿素-およびメラミン-ホルムアルデヒド樹脂, アルキド樹脂, アクリル樹脂, ポリエステルもしくは修飾ポリエステル, エポキシド, ポリイソシアナートもしくはブロックトポリイソシアナートまたはポリシロキサンにすることができる。
【0024】
ポリシラザン配合物の更なる構成成分は、例えば、配合物の粘度、基材湿潤, フィルム形成, 滑り作用または通気挙動に影響を与える添加剤、あるいは無機ナノ粒子、例えば、SiO2, TiO2, ZnO, ZrO2もしくはAl2O3にすることができる。
【0025】
ポリシラザン形成の更なる構成成分は、触媒、例えば、有機アミン、酸および金属もしくは金属塩, またはこれらの化合物の混合物にすることができる。
【0026】
触媒は、好ましくは、 ポリシラザンの重量を基準にして、0.001〜10%、特に0.01〜6%、一層好ましくは0.1〜3%の量で使用する。
【0027】
アミン触媒の例は、アンモニア, メチルアミン, ジメチルアミン, トリメチルアミン, エチルアミン, ジエチルアミン, トリエチルアミン, n-プロピルアミン, イソプロピルアミン, ジ-n-プロピルアミン, ジイソプロピルアミン, トリ-n-プロピルアミン, n-ブチルアミン, イソブチルアミン, ジ-n-ブチルアミン, ジイソブチルアミン, トリ-n-ブチルアミン, n-ペンチルアミン, ジ-n-ペンチルアミン, トリ-n-ペンチルアミン, ジシクロヘキシルアミン, アニリン, 2,4-ジメチルピリジン, 4,4-トリメチレンビス(1-メチルピペリジン), 1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン, N,N-ジメチルピペラジン, シス-2,6-ジメチルピペラジン, トランス-2,5-ジメチルピペラジン, 4,4-メチレンビス(シクロヘキシルアミン), ステアリルアミン, 1,3-ジ(4-ピペリジル)プロパン, N,N-ジメチルプロパノールアミン, N,N-ジメチルヘキサノールアミン, N,N-ジメチルオクタノールアミン, N,N-ジエチルエタノールアミン, 1-ピペリジンエタノール, 4-ピペリジノールである。
【0028】
有機酸の例は、酢酸, プロピオン酸, 酪酸, バレリアン酸, カプロン酸である。
【0029】
触媒としての金属および金属化合物の例は、パラジウム, パラジウムアセタート, パラジウムアセチルアセトナート, パラジウムプロピオナート, ニッケル, ニッケルアセチルアセトナート, 銀粉, 銀アセチルアセトナート, 白金, 白金アセチルアセトナート, ルテニウム, ルテニウムアセチルアセトナート, ルテニウムカルボニル, 金, 銅, 銅アセチルアセトナート, アルミニウムアセチルアセトナート, アルミニウムトリス(エチルアセトアセタート) である。
【0030】
使用する触媒系に応じて、水分または酸素の存在は、コーティングの硬化において役割を果たし得る。 例えば、適した触媒系を選定することにより、高いまたは低い空気湿度および高いまたは低い 酸素含量において急速な硬化を達成することを可能にする。撓業者ならば、これらの影響について承知しており、適した最適化方法によって対応して雰囲気条件を調節することになる。
【0031】
本発明は、 更に金属表面にポリシラザン溶液を塗布するプロセスを提供する。
【0032】
最後に、本発明は、本発明に従って塗被された完成品を提供する。
【0033】
耐指紋コーティングは、通例のコーティング方法により、例えば、吹付, 浸漬, 流し-コーティング, ナイフ-コーティング, コイル-コーティング, 等によって適用することができる。
【0034】
コーティングを適用する前に、初めに一次層を適用することが可能であり、一次層は、金属表面上のポリシラザン層の付着力の向上に寄与することができる。代表的な一次層は、シラン、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン, 3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン, 3-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン, ビニルトリエトキシシラン, 3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン, N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン, ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン, N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン, N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル-メチルジメトキシシラン, 3-(トリメトキシシリル)-1-プロパンチオール, ビス(3-(トリメトキシシリル)-1-プロピル) ジスルフィド, ビス(3-(トリメトキシシリル)-1-プロピル) テトラスルフィドをベースにしたそれらである。
【0035】
使用するポリシラザン溶液および触媒に応じて、硬化は、実際は、室温 (もしくはそれ以下)でまたは高温でのいずれかにおいて生じさせるが、通常加熱することによって促進させることができる。
【0036】
好ましいのは、コーティングを温度10〜300°C、好ましくは25 〜200°Cで硬化させることである。ポリシラザンは、極めて高い熱安定性を有するので、硬化させるための最大可能な温度は、コーティングを適用する基材に本質的に依存する。
【0037】
金属、例えばステインレス・スティールまたはアルミニウムの場合には、これらは、相対的に高い温度になり得、そして金属化プラスチック表面の場合には、そられの性質により、相対的に低い温度になり得る。
【0038】
従来の乾燥による硬化だけでなく、IRまたはNIR技術をベースにした乾燥加熱器の使用もまた可能である。この場合に、波長帯12〜1.2 マイクロメータまたは1.2〜0.8マイクロメータを採用する。代表的な線強度は、5〜1000 kW/m2の範囲である。
【0039】
ポリシラザン配合物によるコーティングの後に、表面エネルギーをコーティングに適合させる更なる後処理を続けることができる。これは、汚れ傾向に影響を与える親水性, 疎水性または疎油性表面を得ることを可能にする。
【0040】
耐指紋コーティングは、すべての金属表面上に使用することができる。「金属表面」とは、本明細書中、少なくとも表面上が金属からなる品目の表面を意味するものと理解される。表面は、完全な金属品目から成ってもあるいは金属で被覆されたまたは金属のジャケットを着せた品目、例えば金属化プラスチックもしくは複合材料の表面から成ってもよい。金属表面は、厚さほんの数マイクロメータを有すればよい。
【0041】
原則として, すべての貴金属または卑金属および金属の合金、例えば鉄, スチール, 亜鉛-めっきスチール, アルミニウム, クロム, ニッケル, 亜鉛, チタン, バナジウム, モリブデン, マグネシウム, 銅がコーティング用に適している。
【0042】
金属は、通例の様式で, 例えば、クロマチゼーション(chromatization), クロメート-フリー前処理, 陽極酸化によるかまたは金属酸化物層を蒸着することによって前処理してよい。
【0043】
本発明のコーティングにより、薄い層厚さで極めて良好な耐指紋効果を達成することが可能である。硬化されたポリシラザンコーティングは、層厚さ0.1〜10 マイクロメータを有するのが典型的であり、0.5〜5 マイクロメータを有するのが好ましく, 1〜3 マイクロメータを有するのが一層好ましい。これより、コーティングは、ほとんど認知できず、金属表面の視覚外観に影響を与えない。
【0044】
コーティングは、広範囲の異なる金属および合金への極めて良好な付着力を有しそして従って極めて恒久的である。加えて、コーティングは、無機特性により、食品や飲料, 薬品, 紫外線および風化作用の影響に対して格別に安定である。
【0045】
本発明に従って塗被された金属表面は、広範囲の異なる部門において使用することができる。これらの用途の例は、ケース, カバー, 食器類, 調理器具, 電化製品, 家庭用品のような日用品である。更なる例は、自動車構造物, 家具表面における,建築上の用途, 内部仕上げ面用,衛生および調理場部門における,商業部門, 例えば調理法, 食品や飲料小売業における, 並びに産業部門, 例えば食品加工産業または化学/医薬産業における装飾表面である。
【実施例】
【0046】
使用したペルヒドロポリシラザンは、Clariant Japan K.K.からの製品である。使用した溶媒は、ジ-n-ブチル エーテル (表示 NL) である。
【0047】
溶液は、パラジウムプロピオナートを触媒としてペルヒドロポリシラザンを基礎にして0.75重量%含有した。
【0048】
例 2からのポリシラザンコポリマーは、US 6,652,978 B2の例 1と同じようにして、ジメチルジクロロシランをメチルジクロロシランとアンモニア中で反応させ、次いで、3-アミノプロピルトリエトキシシランと反応させることによって調製した。
【0049】
下記の例において、部および パーセンテージは、重量を基準にした。
【0050】
例 1 (ペルヒドロポリシラザンを用いたステインレス・スティール基材のコーティング)
ブラッシュドステインレス・スティールの棒 (3 cm x 30 cm)に、表示 NL (上記参照)の20% ペルヒドロポリシラザン溶液をスプレーピストルの助けによりスプレー塗布した。室温で10 分間ガス抜きをした後に、コーティングを硬化させる目的で、基材を乾燥キャビネット中で熱的に後処理した (130°C 1時間) 。層厚さを求めて、値2.1 mmを得た。
【0051】
例 2 (ポリシラザンコポリマーを用いた、クロム-めっきしたプラスチック基材のコーティング)
ポリシラザンコポリマー (上記参照) 36.7 部, Rohm & HaasからのParaloid B-48 S 3.0 部, Tego ChemieからのTego Glide 410 0.2 部およびn-ブチルアセタート60.0 部からなる溶液中に、クロム-めっきしたプラスチック基材 (5 cm x 15 cm)を浸漬した。基材を取り出しそして過剰の溶液をしたたらせて除いた後に, 室温で5分間ガス抜きをし、次いで、乾燥キャビネット中で80°Cにおいて1時間熱的に後処理した。
【0052】
例 3 (付着力)
DIN EN ISO 2409への碁盤目試験(crosscut testing)に続いて接着テープ剥離することによって, コーティングの付着力を求め、付着力を、0 (最良値) から5 (最悪値)までのスケールで等級付けした。例 1および 2 からの両方の塗被金属表面は、極めて良好な基材への付着力を示した(碁盤目特性0)。
【0053】
例 4 (耐指紋特性)
例 1および 2 からの塗被基材並びに各々の場合における3つの被験体による対応する未塗被基材に、指紋を適用し, そして塗被および未塗被基材上の指紋の外観を比較しかつ視覚的に評価した。
【0054】
強さ, すなわち、塗被基材上の指紋跡の視覚認知可能性は、未塗被基材上に比べて相当に低いことが観測された。次いで、指紋を綿布で取り除こうとする試みを行い、そして、別の視覚評価を企てた。塗被基材の場合には、綿布によって、指紋跡は、容易にかつ完全に取り除くことができ、もはや視覚的に認知できなかった。未塗被基材の場合には、塗被基材の場合に比べて清浄労力が一層大きかったにもかかわらずに、指紋跡は、完全には除去することができなかった。
【0055】
例 5 (長期試験)
例 1および 2 からの塗被基材並びに各々の場合における3つの被験体による対応する未塗被基材 に、指紋を適用した。次いで、基材を室温で2週間保存した。その後で、塗被基材および未塗被基材上の指紋跡をイソプロパノールで取り除こうとする試みを行った。塗被基材の場合には、指紋跡は、容易にかつ完全に取り除くことができた。未塗被基材上の場合には、塗被基材の場合に比べて清浄労力が一層大きかったにもかかわらずに、指紋跡は、依然視覚的に認知できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシラザンが、溶媒中の一般式 1のポリシラザンまたはポリシラザンの混合物の溶液である、指紋の影響の受けやすさを低減させるための金属表面上の恒久的コーティングとしての、ポリシラザンの使用:
-(SiR’R‘‘-NR‘‘‘)n- (1)
式中、R‘, R‘‘, R‘‘‘は、同じであるかまたは異なり、各々独立に水素であるかまたは場合により、置換されたアルキル, アリール, ビニルもしくは(トリアルコキシシリル)アルキルラジカルであり、nは、整数でありそしてnは、ポリシラザンが数平均分子量150〜150,000 g/モルを有するものである。
【請求項2】
R‘, R‘‘, R‘‘‘が、各々独立に水素, メチル, エチル, プロピル, イソプロピル, ブチル, イソブチル, tert-ブチル, フェニル,ビニルまたは3-(トリエトキシシリル)プロピル, 3-(トリメトキシシリルプロピル)の群からのラジカルである、請求項1記載の使用。
【請求項3】
溶液が、式 2:
【化1】

のペルヒドロポリシラザンの少なくとも一種を含む、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
溶液が、式(3):
-(SiR’R‘‘-NR‘‘‘)n-(SiR*R**-NR***)p - (3)
(式中、R’, R’’, R’’’, R*, R** およびR***は、各々独立に水素であるかまたは場合により、置換されたアルキル, アリール, ビニルもしくは (トリアルコキシシリル)アルキルラジカルであり、nおよび pは、各々整数でありそしてnは、ポリシラザンが数平均分子量150〜150,000 g/モルを有するものである)
のポリシラザンの少なくとも一種を含む、請求項1記載の使用。
【請求項5】
R’, R’’’ およびR***が各々水素であり、そしてR’’, R*およびR** が各々メチルであり;
R’, R’’’およびR*** が各々水素であり、そして R’’, R* が各々メチルであり、そしてR**がビニルであり;
または
R’, R’’’, R*およびR***が各々水素であり、そしてR’’およびR**が各々メチルである、
請求項4記載の使用。
【請求項6】
溶液が、式(4):
-(SiR’R‘‘-NR‘‘‘)n-(SiR*R**-NR***)p -(SiR1, R2-NR3)q- (4)
(式中、R’, R’’, R’’’, R*, R**, R***, R1, R2およびR3 は、各々独立に水素であるかまたは場合により、置換されたアルキル, アリール, ビニルもしくは (トリアルコキシシリル)アルキルラジカルであり、n, pおよびqは、各々整数でありそしてnは、ポリシラザンが数平均分子量150〜150,000 g/モルを有するものである)
のポリシラザンの少なくとも一種を含む、請求項1記載の使用。
【請求項7】
R’, R’’’および R*** が各々水素であり、R’’, R*, R**およびR2 が各々メチルであり、R3 が(トリエトキシシリル)プロピルであり、そして R1 がアルキルまたは水素である,
請求項6記載の使用。
【請求項8】
ポリシラザン溶液が、ポリシラザン1〜80重量%、 好ましくは5〜50重量%、一層好ましくは10〜40重量%を含む、請求項1〜7のいずれか一に記載の使用。
【請求項9】
ポリシラザン溶液が、触媒0.001〜10重量%を含む、請求項1〜8のいずれか一に記載の使用。
【請求項10】
使用する触媒が、有機アミン、酸、金属、金属塩またはこれらの化合物の混合物である、請求項9記載の使用。
【請求項11】
使用する溶媒が、反応性基を何ら含有しない無水の有機溶媒である、請求項1〜10のいずれか一に記載の使用。
【請求項12】
溶媒中の一般式 1のポリシラザンまたはポリシラザンの混合物を含む溶液を金属表面に適用しそしてコーティングを硬化させることを含む、指紋の影響の受けやすさを低減させるための金属表面上の恒久的コーティングを製造する方法:
-(SiR’R‘‘-NR‘‘‘)n- (1)
(式中、R‘, R‘‘, R‘‘‘は、同じであるかまたは異なり、各々独立に水素であるかまたは場合により、置換されたアルキル, アリールもしくは(トリアルコキシシリル)アルキルラジカルであり、nは、整数でありそしてnは、ポリシラザンが数平均分子量150〜150,000 g/モルを有するものである)。
【請求項13】
一般式 1:
-(SiR’R‘‘-NR‘‘‘)n- (1)
(式中、R‘, R‘‘, R‘‘‘は、同じであるかまたは異なり、各々独立に水素であるかまたは場合により、置換されたアルキル, アリール, ビニルもしくは(トリアルコキシシリル)アルキルラジカルであり、nは、整数でありそしてnは、ポリシラザンが数平均分子量150〜150,000 g/モルを有するものである)
のポリシラザンまたはポリシラザンの混合物を含む溶液で塗被され、そして鉄の合金, スチール, 亜鉛-めっきしたスチール, アルミニウム, クロム, ニッケル, 亜鉛, チタン, バナジウム, モリブデン, マグネシウムまたは銅である金属表面。

【公表番号】特表2008−531773(P2008−531773A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556519(P2007−556519)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【国際出願番号】PCT/EP2006/001188
【国際公開番号】WO2006/089649
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(398025878)クラリアント・インターナシヨナル・リミテッド (74)
【Fターム(参考)】