説明

患者において可溶性TNFR1、可溶性TNFR2、および可溶性IL2を除去する方法およびシステム

sTNFおよびインターロイキン2の過剰な産生によって特徴付けられる疾患の寛解を誘導する方法、およびシステムが、開発された。最も好ましい実施形態において、このシステムは、SEPHAROSETMのような材料を含むカラムに固定化された、sTNFR1、sTNFR2およびsIL2Rに対する抗体から構成される。患者は、血液を血漿および赤血球に分離し、そしてこの血漿が、sTNFR1、sTNFR2およびsIL2Rのレベルの所望の減少(好ましくは、正常レベルより低く)が達成されるまで、カラムを通して循環されるフェレーシス機器に接続される。好ましい方法において、患者は、4週間にわたって、1週間に3回処置される。このプロセスは、一定期間の後に繰り返され得る。臨床研究は、慣習的な化学療法および放射線治療に失敗した患者における腫瘍の負荷の減少を示した。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
本願は、米国特許出願番号第60/566,741号(2004年4月30日出願)に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、免疫応答を増強する分野にあり、そして特に、患者(例えば、癌患者)において炎症を促進し、それにより癌の寛解を誘導するための、可溶性腫瘍壊死因子レセプター(「sTNFR1」、「sTNFR2」)および可溶性インターロイキン2レセプター(「sIL2」)の除去に関する。
【0003】
従来の癌治療は、望ましくは、患者の正常細胞を殺傷する因子よりも早く、複製細胞を殺傷する、薬物および/または放射線の使用に基づく。腫瘍体積を減少させるために外科手術が使用されるが、外科手術は、一旦癌が転移すれば、ほとんど影響力を有さない。放射線は、局所的な領域でのみ有効である。
【0004】
これらの処置は、維持治療をしないと患者を殺傷し得る。例えば、いくつかの型の癌について、あるいは致死量の化学療法剤を用いる処置の後に患者を維持するために骨髄移植が使用されてきた。しかし、有効性は、固形腫瘍の処置については証明されていない。異なる化学療法剤の「カクテル」、ならびに非常に高用量の化学療法と血小板レベルおよび白血球レベルを回復させるための回復因子(例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、エリスロポイエチン、トロンボポイエチン(thrombopoetin)、顆粒球刺激因子(「G−SCF」)、マクロファージコロニー刺激因子(「M−CSF」)および幹細胞因子(「SCF」))との組み合わせは、攻撃的な癌を処置するために使用されてきた。補助的治療または制限治療でさえ、副作用が深刻である。
【0005】
他の処置が、死亡率および罹病率を改善するための試みにおいて試験されてきた。患者の免疫系を刺激するワクチンが試されたが、大きな成功は収めなかった。腫瘍壊死因子、インターフェロンγ、およびインターロイキン−2(「IL−2」)のような種々のサイトカインを(単独または組み合わせて)使用して癌を殺傷してきたが、有効な臨床上の応答を生じることはなかった。より最近では、サリドマイドのような抗脈管形成化合物が、特別な(compassionate)用途の場合において試され、そして腫瘍寛解を引き起こすことが示された。動物研究において、凝血促進性状態を誘導する化合物(例えば、プロテインCのインヒビター)を使用して、腫瘍寛解が引き起こされた。
【0006】
Lentzに対する特許文献1は、癌を処置するための代替方法を記載する。この方法は、分子量に基づいて化合物を除去するウルトラフェレーシス(ultrapheresis)を包含する。この方法は、患者自身の白血球による腫瘍に対する免疫攻撃を促進する。Lentzに対する特許文献2は、寛解を誘導する免疫応答を引き起こす120,000ダルトン未満の分子を除去する方法を記載する。分子は、血漿が循環することにより120,000ダルトン以下の分子量カットオフを有するフィルター、またはsTNFR抗体もしくは他のサイトカインインヒビターに対する抗体を含む免疫グロブリンカラムのいずれかを使用して除去される。ウルトラフェレーシスおよび可溶性サイトカインの選択的除去の両方は、癌患者における腫瘍塊の減少を実証した。
【特許文献1】米国特許第4,708,713号明細書
【特許文献2】米国特許第6,620,382号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、より大きい腫瘍減少を生じる、可溶性サイトカインレセプター分子の選択的除去による固形腫瘍処置のための方法およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
sTNFRおよびインターロイキン2Rの過剰な産生によって特徴付けられる、疾患の寛解を誘導する方法およびシステムが開発された。このシステムは、血液を血漿および血球に分離し、次いで血漿は、可溶性サイトカインレセプターのレベルが正常を下回って減少するまで、結合パートナー(例えば、sTNFR1、sTNFR2およびsIL2Rに対する抗体、またはこれらのレセプターに結合するサイトカインもしくはその部分)を有するカラムまたはフィルターを使用して処理され、そしてこの処理された血漿が、患者に戻されるための手段(例えば、血漿フェレーシス機器)を備える。この結合パートナーの選択は、sTNFR結合パートナーのみを備えた初期のシステムを上回る顕著な改良を示し、そして、除去することが望まれる他の広範な物質に関してこれまでに議論された選択肢を著しく狭める。好ましい実施形態において、本システムは、フィルターを備える。このフィルターは、血漿から血液成分を分離するか、または濾過する。次いでこの血漿は、選択したサイトカインの可溶性レセプターに対するポリクローナル抗体を含むカラムに通される。このポリクローナル抗体は、物質(例えば、SEPHAROSETM)を含むカラムに固定化される。この血漿は、sTNFR1、sTNFR2、およびIL2のレベルの望ましい減少が達成されるまで、カラムを通して循環される。好ましい方法において、患者は、4週間にわたって1週間に3回〜5回処置される。最も好ましくは4週間の間毎日処置される。このプロセスは、単独または他の治療(放射線、化学療法(局所的または全身的であり、例えば、アルキル化剤、ドキソルビシン、カルボプラチン、シスプラチン、およびタキソールを使用する処置)が挙げられる)と組み合わせて実施され得る。
【0009】
好ましい実施形態において、上記血漿は、循環する可溶性サイトカインレセプター(本明細書中で「インヒビター」と称される)の正常レベルが処置の最初の1時間以内に達成されるように処理される。次いで処置は、レベルが正常を下回って減少され、そして少なくとも4時間〜5時間の間、正常レベル未満に維持されるように継続される。臨床研究は、カラムを通る血漿の流速を制御することが重要であることを実証した。このカラムを通る血漿の代表的な流速は10ml/分と100ml/分との間であり、好ましくは50ml/分と100ml/分との間である。これは、300ml/分〜500ml/分の速度で血漿フェレーシスシステムを通過する血液からの、1分間あたり100mlの血漿の分離(濾過)に基づく。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
(I.システム)
、循環する可溶性腫瘍壊死因子レセプター(sTNFR)1、可溶性sTNFR2、および可溶性インターロイキン2レセプター(sIL−2)のレベルを減少させるための患者を処置するためのシステムは、以下を備える:
患者から血液を取り出すための血漿フェレーシスシステムのようなデバイス;
血液を血漿と細胞エレメント(例えば、赤血球および白血球)に分離するための、フィルターまたは遠心機のような手段;
可溶性サイトカインレセプターであるsTNFR1、sTNFR2、およびsIL−2についての固定化された結合パートナーを含む手段(これはカラムまたはフィルターのいずれかであり得る);
血漿および分離され処理された血漿をこの患者に戻すための手段(これは、通常はチュービングセット(tubing set)からなる)。
【0011】
(A.血漿フェレーシスシステム)
全血を処理して可溶性サイトカインレセプターであるインヒビターを除去することは可能であるが、最初に生物学的特徴を備えたエレメント(formed element)と血漿とを分離し、そしてこの血漿を処理することが好ましくあり得る。このことは、赤血球に対する損傷または白血球の活性化に起因する潜在的な問題をより少なくする。なぜなら赤血球および白血球が、このインヒビターを除去するためのカラムまたはフィルターを通過するときに起こるからである。血液を細胞エレメントと血漿とに分離するためのシステムは、市販されている。適切なシステムは、血漿プロフュージョン(profusion)チューブを備えるB.Braun Diapact CCRT血漿交換/血漿プロフュージョンコントローラーである。他の体外血液処理システムとしては、Fresenius Hemocare Apheresis system、Gambo Prisma SystemおよびAsahi and Kurray blood filtration controllerならびにExorim Immuoadsorption Systemsが挙げられる。
【0012】
(1.フィルター)
好ましい実施形態において、血漿は、フィルターによって分離される。このフィルターは、生体適合性であり、そして血小板または凝固因子の過剰な活性化を引き起こすことなく血液と接触するのに適していなければならない。デバイスは、代表的に、平面板フィルター(prallel plate filter)または毛細管膜フィルター(capillary membrane filter)のいずれかである。これらは、現在、腎臓透析のために使用されるデバイスから適応され得る。この毛細管膜フィルターは、代表的に、子供に対する使用のために約0.25mと1mとの間の表面積を有し、成人に対する使用のために約1mと3mとの間の表面積を有する。この平面板フィルターは、代表的に、濾過される血液1mlあたり0.1cm〜2cmの範囲の表面積を有する。
【0013】
フィルターのメンブレンは、代表的に、生体適合性であるか、または不活性な熱可撓性である(例えば、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluorethylene)(Teflon)、ポリプロピレン、エチレンポリビニルアルコールまたはポリスルホン)。多くの場合、血漿の低分子量画分のタンパク質が豊富であり(profuse)、そして非常に高分子のタンパク質(例えば、フィブリノーゲン、α2マクログロブリン、およびクリオグロブリンのようなマクログロブリン)が吸着器上に豊富にあることを回避することが望ましい。従って、これらの分子サイズにおいて、分子ふるいによる分別を有するメンブレンが望ましい。理想的には、このようなメンブレンは、代表的に、毛細管膜フィルターにおいて0.02ミクロンと0.05ミクロンとの間の孔径を有し、そして平面板フィルターにおいて0.04ミクロンと0.08ミクロンとの間の孔径を有する。ポリスルホンは、エチレンビニルアセテートよりも好ましい。なぜなら、ポリスルホンは、血球に対して、より穏やかだからである。所望のカットオフを与える実際の孔径は、流体の流れのジオメトリー(fluid flow geometry)、ずり応力、流速、および表面積に基づいて決定される。0.03ミクロンの孔径を有する毛細管膜フィルターについての有効カットオフは、150,000ダルトンであり、この有効カットオフは、10%と30%との間のふるい係数を伴う。このフィルターのメンブレンは、約25ミクロン未満の厚さであり、好ましくは約10ミクロン未満の厚さであるべきである、これら透過性のメンブレンは、血液凝固または血液との他の反応を生じるべきではない。
【0014】
約120,000〜150,000ダルトン以下の分子量を有する分子のみが血液から除去される好ましい実施形態において、上記フィルターは、0%のフィブリノーゲン;10〜50%のIgG;80〜100%のSGOTおよびLDH(100,000mw)、ならびに100%のsTNFR1(これが二量体または凝集体として循環する場合に74,000)を除去するふるい係数を有する。
【0015】
適切なデバイスは、Asahi Chemical Company,JapanおよびKuraray Co.,Ltd,1−12−39,Umeda,ite−ku,Osaka 530,Japanから入手され得る。Kuraray 4A血漿分離器またはKuraray 5A血漿分離器が、最も好ましい血漿分離器である。他の好ましいフィルターとしては、FrezeniusポリスルホンフィルターおよびKuraray 3AフィルターおよびKuraray 2Aフィルターが挙げられる。段階的なフィルターは、異なる孔径および/もしくはジオメトリーまたは表面積を有し、これはまた、血液からの物質の「時差的な(staggerd)」除去を提供するために使用され得る。
【0016】
これらのシステムによる血漿の流速は、血液の流速およびフィルターに依存する。1分間あたり血液300ml(150ml/分と500ml/分との間の範囲で)の流速において、上記血漿フェレーシスシステムは、代表的に、1分間あたり濾過物(血漿)100mlという血漿の流速を生じる。流速の好ましい範囲は、10ml/分と100ml/分との間であり、より好ましくはこの範囲は、50ml/分と100ml/分との間である。
【0017】
(2.他の分離手段)
あるいは、この時点で好ましくないが、血液成分の適切な分離を提供するために種々の遠心分離を使用し得る。
【0018】
(3.他の血液処理システム)
あるいは、吸着カラムのマトリックスは、ビーズの表面上の微視的なくぼみにおいてインヒビターと結合リガンドとが結合できるようなジオメトリー(geomtetry)において構築される。この結果血漿タンパク質と結合リガンド(抗体またはペプチド)との接触を起こさせるが、血球と結合リガンドとが接触するのを妨げるためである。このシステムは、全血からの所望のインヒビターの除去を可能にし、そして不必要なフィルターの使用(use of filter unnessary)をなくす。
【0019】
(B.プロセスの制御および流体の取扱い)
患者は、代表的に、静脈配置カテーテルおよび標準的な静脈内チュービングを用いて血液処理デバイスに接続され(他の体外血液処理システムに用いられるのと同様に接続され)、その結果、血液は、この患者から取り出され得、そしてこの患者に戻され得る。このチュービングは、流速を制御するポンプに接続され、その結果、好ましい実施態様では、1血液容量(総体重の約7%に基づく)は、約15分間〜20分間の時間をかけて処理される。この血液フィルターを通過した後、この血漿濾過物は、インヒビター除去カラムまたはインヒビター除去フィルターに指向され、次いで単一のカテーテル部位または第2の部位のいずれかにおいてこれらのデバイスから患者に戻される。標準的なマイクロプロセッサー制御を用い、例えば、流速モニターおよびポンプ速度と組み合わせて、取り出される血液産物の容量をモニタリングすることにより血流を調節し得る。
【0020】
このシステム全体は、第1に、生理食塩水を用いてフラッシュされ、次いで抗凝固薬剤または抗凝血剤(anticlotting agent)(例えば、ヘパリンナトリウムまたは抗凝固薬剤クエン酸シクロデキストロース(「ACD」))を用いて処理されて、このシステム内に血液凝固が生じ得る場所が存在しないことが確実にされるべきである。さらに、少量の抗凝固薬剤が、濾液フィルターに指向される血流中に連続的に導入されて、濾過プロセスの間に凝固が生じないことを確実にすべきである。患者に注入される血液および流体と接触する、このシステムの表面全ては、処理を始める前に滅菌されるか、または無菌的に調製されなければならない。
【0021】
(C.インヒビター除去のためのカラムまたはフィルター)
(1.結合パートナー)
インヒビターは、このインヒビターに対する抗体またはレセプターに対して正常に結合するサイトカインのいずれかに結合することによって除去され得る。可溶性サイトカインレセプター(サイトカインのインヒビターとして機能する)の選択的除去または中和が使用されて、形質転換細胞、疾患細胞または自己免疫細胞に対して、選択的であり、安全な炎症反応を促進する。
【0022】
上記レセプターは、固定化されたサイトカイン、可溶性サイトカインレセプターエピトープまたはそれらのフラグメントに対して選択的に結合する、もしくはこのレセプターに対する抗体、に結合することによって除去され得る。本明細書中で使用される場合、用語「選択的に結合する」は、分子が、1つの型の標的分子に結合するが、他の型の分子に対して実質的に結合しないことを意味する。用語「特異的に結合する」は、本明細書中で「選択的に結合する」と交換可能に使用される。本明細書中で使用される場合、用語「結合パートナー」は、標的化された免疫系のインヒビターに対して選択的に結合する能力に起因して選択される、任意の分子を包含することを意図する。これらの結合パートナーは、標的化された免疫系インヒビターを自然に結合するものであり得る。例えば、腫瘍壊死因子αまたは腫瘍壊死因子βは、sTNFR1に対する結合パートナーとして使用され得る。あるいは、標的化された免疫系インヒビターに対して選択的に結合する能力に起因して選択される他の結合パートナーが、使用され得る。これらとしては、天然の結合パートナーのフラグメント、ポリクローナル抗体もしくはモノクローナル抗体の調製物またはそれらのフラグメント、あるいは合成ペプチドが挙げられる。
【0023】
抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え、合成またはヒト化であり得る。除去されるべきインヒビターに結合する抗体フラグメントまたは単鎖抗体もまた、使用され得る。ポリクローナル抗体は、これらが広範な反応性を有することおよびヒト抗体を有する必要がない(なぜなら抗体は)固定化されて、患者に投与されないので)ので、好ましい。代表的に、観察される少量の浸出は、重大なリスクを生じない。以下の臨床研究において記載された抗体は、sTNFR1、sTNFR2またはsIL2Rでウサギの免疫によって得られた。これらの抗体は、代表的に、レセプター、つまり可溶性腫瘍壊死因子レセプター(「sTNF−R」)1および可溶性腫瘍壊死因子レセプター2および可溶性インターロイキン−2レセプター(「sIL−2R」)の、可溶性形態ならびに固定化形態の両方と反応性である。
【0024】
上記レセプターに対する抗体は、フィルターまたはカラムに固定化されても、患者の血液または血漿からタンパク質を除去する結合反応についての他の標準的な技術を使用して固定化されても、適切な薬学的に受容可能なキャリア(例えば、生理食塩水)において患者に直接投与されてもよい。本明細書中で使用される場合、抗体とは、レセプター分子と免疫反応性である抗体、または抗体フラグメント(単鎖、組換え、またはヒト化)をいう。
【0025】
抗体は、種々の商業的供給源(例えば、Genzyme Pharmaceuticals)から入手され得る。これらは、好ましくはヒトに対して直接投与するためにヒト化されているが、体外デバイスに固定化される場合には動物由来であってもよい。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得る。これらの抗体およびデバイスは、エンドトキシンまたは患者への投与に対して受容可能ではない他の物質を含まないように、無菌的に調製されるべきである。
【0026】
上記レセプタータンパク質に対する抗体は、ヒトレセプタータンパク質またはその抗原性フラグメントを使用する標準的な技術によって産生され得る。抗体は、代表的に、動物の免疫化によって産生され、次いでその血清から単離されるか、または培養物中にこの抗体を発現するハイブリドーマを作製するために使用される。動物を免疫するための方法は、ヒト起源ではない抗体を生じるので、この抗体は、ヒトに投与された場合に不都合な効果を誘発し得る。抗体を「ヒト化する」ための方法、または非ヒト抗体のより低い抗原性のフラグメントを生成する方法、は周知である。ヒト化抗体は、抗原認識部位または相補性を決定する超可変領域(CDR)のみが非ヒト起源のものである一方で、可変ドメインの全てのフレームワーク領域(FR)は、ヒト遺伝子の産物である。これら「ヒト化」抗体は、ヒトレシピエントに導入される場合により少ない異種移植片拒絶刺激を提示する。
【0027】
選択されたマウスモノクローナルのヒト化を達成するために、Daughertyら(1991)、Nucl.Acids Res.19:2471−2476(これは、本明細書中に参考として援用される)によって記載されたCDRグラフティング(CDR grafting)法が使用され得る。簡潔には、選択された動物の組換え抗イディオタイプScFvの可変領域DNAを、Clackson,T.ら(1991)Nature 352:624−688(これは、本明細書中に参考として援用される)の方法によって配列決定する。この配列を使用して、動物の可変遺伝子の既知配列におけるCDRの位置に基づいて、動物のCDRを、動物のフレームワーク領域(FR)と識別する。Kabat,H.A.ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,第4版(U.S.Dept.Health and Human Services,Bethesda,MD,1987)。一旦、動物のCDRおよびFRが同定されると、合成オリゴヌクレオチドおよびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による組換えを使用することによって、このCDRは、ヒト重鎖可変領域フレームワークに移植される。動物重鎖CDRについてのコドン、ならびに利用可能なヒト重鎖可変領域フレームワークは、4つ(各々100塩基長)のオリゴヌクレオチドにおいて組み立てられる。PCRを使用して、組換え動物CDR/ヒト重鎖FR保護をコードする400塩基の移植DNA配列を形成する。
【0028】
このようにして産生されたモノクローナル抗体によって提示される免疫原性刺激は、Pharmacia’s(Pharmacia LKB Biotechnology、Sweden)の「Recombinant Phage Antibody System」(RPAS)(これは、抗体の完全な抗原結合ドメインを組み込んだ単鎖Fvフラグメント(ScFv)を生成する)を使用することによってさらに減少され得る。RPASにおいて、抗体の可変重鎖および軽鎖遺伝子は、ハイブリドーマmRNAから別個に増幅され、そして発現ベクター中にクローニングされる。重鎖および軽鎖のドメインは、可撓性ペプチドをコードする短いリンカーDNAと連結した後で、同じポリペプチド鎖において同時発現される。このアセンブリは、単鎖Fvフラグメント(ScFv)(これは、抗体の完全な抗原結合ドメインを組み込む)を生成した。インタクトなモノクローナル抗体と比較して、この組換えscFvは、かなり少数のエピトープを含み、それによって、ヒトに注射される場合に、はるかに弱い免疫原性刺激を提示する。
【0029】
サイトカイン(例えば、TNFまたはIL−2)は、固定化され得、そしてsTNFRおよびsIL−2を除去するために使用され得る。上記サイトカイン、これらのレセプターに対する天然の結合パートナーである。レセプターを結合するサイトカインのフラグメントまたは「エピトープ」(インタクトなタンパク質に対する抗体を惹起し得、そしてそれに結合し得る、少なくとも4アミノ酸長〜7アミノ酸長のペプチドフラグメント)もまた、使用され得る。これらは、天然の供給源から単離され得るか、より好ましくは組換え技術を使用して調製され得る。短いペプチドまたはフラグメントもまた、標準的な合成技術を使用して調製され得る。これらのタンパク質をコードするアミノ酸配列および遺伝子配列は、周知である。
【0030】
(2.固定化基質)
好ましい実施形態において、血漿は、図1に示されるような、Tacoma Plasticsによって供給される医療用等級のポリカーボネートハウジング(約325mlの容量)内で、不活性なポリマーマトリックス(例えば、Amersham−Biosciences、Upsala、Swedenによって市販されるSEPHAROSETM)を通して循環される。他の等価な材料は、使用され得る。これらは、滅菌可能であるか、または無菌的に生産されるべきであり、そして標準的なアフェレーシスチュービングセットを使用する接続に適する必要がある。代表的な材料としては、アクリルアミドおよびアガロースの粒子またはビーズが挙げられる。
【0031】
他の適切なマトリックスが、利用可能であり、そしてこのマトリックスは、抗体が結合され得る他の不活性なポリマー物質の形態をとり得る。ゲル物質に抗体を結合するための標準的な技術が、使用される。
【0032】
別の実施形態において、この結合パートナーが結合されるメンブレンに隣接するか、またはそれを通って血漿が通過する場合に、上記結合パートナーは、フィルターのメンブレンまたは毛細管透析チューブに固定化される。適切なフィルターとしては、血液成分の分離に関して上記で考察されるものが挙げられる。これらは、同じフィルターつまり、そこに結合された固定化された結合パートナーを有するフィルターであってもよく、最初のフィルターが血液成分を分離し、次のフィルターが上記インヒビターを除去するように順番に配列されていてもよい。
【0033】
さらに第3の実施形態において、上記固定化された結合パートナーは、保持する手段を有するメッシュまたは反応器で血液または血漿に曝される粒子に結合される。特定の好ましい実施形態において、これらの粒子は、非常に凹凸(irregular)があり、その結果、結合パートナーは、臭化シアンカップリング(cynanogen bromide coupling)のような技術を使用して直接的にか、リンカー(例えば、ポリエチレングリコール)または結合ペア(例えば、アビジンおよびストレプトアビジン)によって間接的にこの陥入(微視的なくぼみ)内に取り付けられる。このことにより、結合された結合パートナーとの反応のリスクを伴わずに細胞はこれらの粒子上を通過し得る。
【0034】
(3.カラムおよびフィルター)
インヒビターの選択的除去のためのデバイスに関して、以下の3つの実施形態の原理的が存在する:カラム、フィルター、または反応器(これらの全ては、このインヒビターに対する固定化された結合パートナーを含む)。このカラムまたはフィルターは、医療用等級の不活性な材料(好ましくは、ポリカーボネート、ポリエチレンまたはポリプロピレンのような熱可撓性の材料)から構成される。フィルターは、血液成分の分離に関して上記で考察されるものと同じである。
【0035】
この結合パートナーは、マトリックス物質(例えば、カラムの充填についてのビーズ)に結合されても、このフィルターのメンブレン(メンブレンの片側または両側のいずれか)に結合されてもよい。
【0036】
図1は、以下の実施例で考察されるように、癌患者を処置する臨床研究において使用されるカラムを示す。カラム10は、ハウジング12、入口ポート16および出口ポート18の両方におけるフィルター14、ならびにこれら両方のポートにおいてカラムハウジング12上にキャップ22をシールするためのo−リングシール20を備える。プラグ24は、このカラムのいずれかの端で、このポートをシールする。
【0037】
上記固定化結合パートナーは、材料の滅菌または無菌的処理の後に上記カラム中に充填される。臭化シアンのような技術を使用する上記マトリックスに対する抗体の結合は、洗浄の間の結合していないウイルスの除去、またはこのマトリックス物質へのウイルスの結合(結合は、結合したウイルスを不活化する)のいずれかに起因して、ウイルスを顕著に減少させる。ポリクローナル抗体を作製するために使用される動物(例えば、以下の実施例において抗体を作製するために使用されるウサギ)からのウイルスについての可能性に関する最近の関心に起因して、これらの抗体は、マトリックス物質に結合される。このマトリックス物質は、バッグ中に配置される。次いでこのバッグは展開されて、最大の曝露表面積を提供し、そして定常電子ビーム照射(24センチ(centi))によって処理される。これは、25%までの活性の喪失を引き起こし得、従って、抗体量は、増加されなければならないかもしれない。単独かまたは組み合わせて使用され得る他の公知である滅菌技術としては、以下が挙げられる:エンベローブで包まれたウイルスを破壊(2log〜3logの減少)する2.8のpHにて、グリシンを使用して固定化された結合パートナーを含むマトリックス物質を洗浄する工程;約5%の抗体活性の喪失のみを伴って全てのウイルスの4log〜5logの減少を生じる紫外線照射。滅菌されたマトリックス物質または無菌的に調製されたマトリックス物質は、このバッグから、このバッグ中の滅菌ポートを通して滅菌されたカラムポート中に直接移される。
【0038】
カラムハウジングは、固定化された抗体によって充填される前に滅菌され、この充填は、無菌状態を使用して行われる。カラムは、防腐剤として、リン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)中の0.1%アジ化ナトリウムによって満たされるが、医療的に等価な緩衝液は、使用され得る。これらは、使用するまで冷蔵保存される。
【0039】
カラムは、通常の滅菌生理食塩水での洗浄、200mM グリシン−HCl pH2.8による溶出、通常の滅菌生理食塩水による洗浄、次いでPBSで洗浄することによって再生される。他の等価な洗浄溶液は、使用され得る。このカラムは、使用する前に、複数の容量の滅菌生理食塩水によってフラッシュされる。
【0040】
(C.処理システム)
図2は、カラムを備えるウルトラフェレーシスシステムの概略図である。血液は、最初に血漿フィルター30に通され;血漿は、結合パートナー32を含むカラムに通され、次いでこの処理された血漿は、患者中に戻す投与のために34にて血球と再度合わせられる。ポンプ36およびポンプ38は、それぞれ、カラム32および血漿分離フィルター30を通る流速を調節する。ヒーター40は、温度制御を維持する。
【0041】
(II.処理の方法)
処置されるべき患者は、癌性腫瘍、またはsTNFR1、sTNFR2およびsIL2Rの過剰産生ならびに上昇したレベルによって特徴付けられる他の疾患によって特徴付けられる成人患者である。この他の疾患によって特徴付けられる患者としては、自己免疫疾患、ウイルス疾患、寄生虫病、または他の疾患を有する個体が挙げられる。処置サイクルは、代表的に、5週間までの期間にわたる、1週間あたり3つ以上の処置および/または合計で12以上の処置からなる。処置サイクルは、必要に応じて繰り返され得る。
【0042】
上記患者は、代表的に、処置のために適切な血管へのアクセスを可能にする、透析カテーテルまたは他のデバイスを必要とする。このカテーテルは、アフェレーシス装置に接続され、このアフェレーシス装置は、生物学的特徴を備えたエレメントから血漿を分離する。次いでこの血漿はフィルターに通され、そして患者に戻される。このシステムおよびプロセスは、図2に示される。好ましい実施形態において、血漿は、フィルターを通して分離される。
【0043】
上記患者は、循環するsTNFR1、sTNFR2、およびsIL2Rのレベルを下げるのに十分な時間処置される。臨床上の目的は、これらのレセプターついての低い正常レベルの範囲にある。この範囲は、sTNFR1については約750pg/ml、sTNFR2については1250pg/ml、そしてsIL−2については約190pg/mL未満である
一実施形態において、上記レベルは、正常値より少なくとも5%低くなるまで減少され;別の実施形態において、このレベルは、正常値より少なくとも10%低くなるまで減少される。これらのインヒビターの循環レベルは、処置後、しばしば著しく上昇し、この上昇は、腫瘍からのインヒビター抜けおちに起因し得る。
【0044】
好ましい実施形態において、血漿は、循環するインヒビターの正常レベルが、処置の最初の1時間以内に達成されるように処置される。次いで処置は、レベルを正常より下に減少させ、そして少なくとも4時間〜5時間、正常レベル未満に維持するように継続される。しかし、これらのインヒビターレベルの減少の程度は、処置される腫瘍の型および腫瘍の負荷(burden)とのバランスが保たれなければならない。
【0045】
これらのレセプターの濃度を下げることは、腫瘍細胞に対して炎症反応を誘導する。炎症反応の証明としては、発熱、腫瘍特異的な炎症性疼痛、腫瘍の膨潤および腫瘍の壊死が挙げられる。起こりうる他の問題としては、腫瘍崩壊症候群が挙げられ、腫瘍崩壊症候群は、主治医による標準的な医療上の管理によって処置され得る。
【0046】
患者は、併用療法によって処置され得る。1つの好ましい実施形態において、インヒビターの選択的除去は、免疫刺激因子(immunostimulant)(例えば、腫瘍抗原に対するワクチン、免疫系または活性化樹状細胞を刺激するサイトカイン、または線維芽細胞成長因子(FDGF)、TGFβ、またはEGRFのような因子をブロックする化合物)と組合される。免疫系の活性化はまた、細胞の機構を駆動するIL−4および/またはIL−10の、選択的除去によって達成され得る。他の処置としては、温熱療法の実施、放射線の実施または化学療法剤の投与が挙げられるが、後者の2つは、これらが代表的に、腫瘍細胞を殺傷する免疫系の能力を減少させるので好ましくない。
【0047】
本発明は、以下の臨床研究報告を参照することによって、さらに理解される。
【実施例】
【0048】
(実施例1:カラム中の抗TNFR1固定化抗体、抗TNFR2固定化抗体、および抗IL−2R固定化抗体を使用する血漿フェレーシスによる癌患者の処置に関する臨床研究)
特異的レセプターを介して腫瘍細胞に結合し、そしてアポトーシスによる細胞死を誘導するTNFαおよびインターロイキン−2の分泌は、癌の増殖に対する絶え間ない戦いにおける免疫系の正常な応答である。しかし、腫瘍壊死因子αに対するレセプター(sTNFR1およびsTNFR2)およびインターロイキン−2に対するレセプター(sIL2R)に対するレセプターの高レベルの局所分泌は、この免疫系による攻撃および破壊を局所的にブロックするための、腫瘍細胞による有効な機構であると考えられる。従って、局所的なインヒビター濃度を腫瘍保護の閾値より下に減少させるという目的を有する、体外アフェレーシス手段によるこれらのインヒビターの全身性の除去は、癌の処置に関する強力な治療手段であると見なされてきた。
【0049】
このアプローチは、過去において主に、「ウルトラフェレーシス」といわれる方法に関する手段に基づく、分子量の範囲によって定義されるようなタンパク質の非特異的な除去に従ってきた一方で、より特異的なアプローチは、アフェレーシス手順における、TNFR1、sTNFR2、およびsIL2Rに対する固定化された抗体の使用である。ポリマーマトリックスに結合される特異的抗体を含むアフェレーシス吸着カラムが、このアプローチのために開発された。このようなデバイスは、レセプターの結合において有効性を実証する必要があり、そしてまた、受容可能なリスクと利益のプロフィールを示すべきである。
【0050】
この研究の目的は、アフェレーシス手順の間に、癌患者の血漿中で循環するsTNFR1、sTNFR2、およびsIL2Rを減少させる新規のBiopheresisカラムの有効性および安全性に評価することであった
(カラムIAC122)
イムノフェレーシス(immunopheresis)カラムIAC122は、血液から炎症誘発性サイトカインに対する可溶性インヒビター除去するために設計された滅菌免疫吸着剤の製品である。これは、市販されている認可された体外血液処理システムと組み合わせて使用されるように設計される(例えば、Diapact CRRTデバイス,B.Braun,Fresenius Hemocare Apheresis,Exorim Immuoadsorption Systems)である。このデバイスは、免疫吸着技術の使用における経験を有する医師による要求に応じてのみ販売され、そしてこれらの医師によってのみ使用されることが意図される。免疫吸着カラムは、癌のような特定の疾患状態において過剰生産されることが公知であり、腫瘍に関連性した新抗原の免疫寛容の主要な原因である、可溶性の炎症誘発性サイトカインを除去することが意図される。癌患者における臨床適用では、これらのインヒビター/シェッド(shed)レセプターの除去は、腫瘍の破壊をもたらし得る腫瘍特異的な炎症を生じ得る。
【0051】
このカラムハウジングは、325ml容量である医療用等級のポリカーボネートデバイス(PNS−400146−Fresenius HemoCare,INC)である。このカラムマトリックスは、Sephrose 4Bビーズおよび炎症誘発性サイトカインインヒビター(腫瘍壊死因子α(TNF)およびインターロイキン2(IL2)に対する可溶性レセプター)に対するポリクローナルウサギ抗体から構成される。従って、これらの製造のために必須の構成要素は、Sepharose(Amersham−Biosciences(Upsala、Sweden)から滅菌製品として購入される)、TNFレセプターおよびIL2レセプターに対する濾過滅菌された抗体(Eurogentec,Liege,Belgium)、およびポリカーボネートハウジング(Fresenius,St.Walin)であり、(これは、オートクレーブによって滅菌される)である。生産の間の滅菌した構成要素および無菌技術、ならびに各カラムまたはカラム製品のロットの最終的な製品試験は、この医療用デバイス製品の安全性の中心となる。各カラムは、GMPに従う無菌状態下において構築される。各カラムは、製造後の滅菌性およびエンドトキシンレベルについて個々に試験される。各カラムは、PBS中の0.1%アジ化ナトリウム(NaAzide)によって満たされ、そしてこれらのカラムは、臨床使用の前に、4℃〜8℃の間で維持される。デバイスの図は、図1に示される。
【0052】
上記デバイスの意図される目的は、臨床的なアフェレーシス手順において吸着カラムとして機能することである。このカラムは、連続的につながるシステムにおいて、患者から血液を取り出し、濾過によって血漿を分離し、この濾過された血漿を吸着カラムに通し、次いでこの血漿と細胞画分とを合わせてこの患者に戻す、標準的な血漿灌流機器を使用する体外循環の部分である(図2もまた参照のこと)。カラム中の吸着性材料は、腫瘍壊死因子αに対する2種類の可溶性レセプター(sTNFR1およびsTNFR2)を特異的に結合し、そしてまた、インターロイキン2に対する可溶性レセプター(sIL2R)を結合するように構築される。アフェレーシス手順において、これらのカラムを使用する目的は、宿主免疫系による破壊に対して腫瘍細胞を保護することが公知あるインヒビターを血液から除去することである。
【0053】
上記デバイスの使用のための指標は、患者がsTNFR1、sTNFR2、およびsIL2Rの除去による臨床上の利益を有し得る疾患の状態(例えば、転移性の癌)である。
【0054】
使用についての指示書に従って使用される場合、本デバイスの使用に対する禁忌はない。
【0055】
上記デバイスは、濾過された血漿からsTNFR1、sTNFR2およびsIL2Rを効率的に除去するための臨床研究および実験室の研究において示された。アフェレーシス手順の間にこれらのレセプターの濃度を下げることは、腫瘍細胞に対する炎症反応の誘導を生じるべきである。従って、腫瘍の炎症に関する徴候および症状は、この臨床研究によって報告された(例えば、発熱、腫瘍特異的な炎症性疼痛、腫瘍の膨潤、および腫瘍の壊死、5.5.安全性解析もまた参照のこと)。このデバイスの延長された使用または大きな腫瘍(>500g)の処置は、炎症反応の良好な誘導の場合において、腫瘍の破壊から生じるタンパク質の過剰なオーバーロード(overload)をもたらし、腎不全、急性毛細管壊死症候群、播種性血管内凝固症候群、および死亡のリスクを伴う腫瘍崩壊症候群を生じ得る。
【0056】
(研究目的)
本研究の主要な目的は、上記手順の間にsTNF−R1およびsTNF−R2の血漿レベルを正常範囲(クエン酸血漿において、R1レセプターについては750pg/mlおよびR2レセプターについては1250pg/ml)より下まで下げることであった。このレベルの減少を達成するために処理される血漿の量は、各患者から経験的に導かなければなかったが、大まかに一人の細胞外の水分容量に相当する血漿の量として見積もった。これを、体重を使用して計算した(キログラムにおける体重(kg)の約20%をリットルで表す)。
【0057】
二次的な目的は、血漿回路中に挿入される免疫親和性カラムを有するB.Braun Diapact血漿プロフュージョンシステムを使用して、転移性の癌を有する患者における免疫吸着(IA)から生じる臨床上の全効果を記載することであった。別の二次的な目的は、CATスキャン、NMR、および/または骨のスキャンもしくは内臓腫瘍の骨転移性(osseus metastatic)病変のX線、または表面の腫瘍の直接測定によって測定されるような、腫瘍の炎症ならびに腫瘍の壊死および/または分解の主観的な証拠ならびに客観的な証拠を具体的に収集することであった。
【0058】
可溶性sIL2−レセプターの血清レベルを、アフェレーシス処置後のこれらのレベルの可能性のある変化を文書に記録した。
【0059】
別の二次的な目的は、この処置手順に関する全ての不都合事象を文書にすることによって、デバイスの使用の安全性を評価することであった。
【0060】
(方法論)
これは、sTNFR−1およびsTNFR−2の血漿濃度の低下および転移性の癌を有する患者における腫瘍塊への可能性のある影響を観察し、そして文書にするための、単一の場所における、開放的な無作為でない研究であった。この研究は、5週間以内に行った合計で12回の処置からなる。約1〜10日間後、ベースラインの訪問(V1)、カテーテル配置の訪問(V2)を行った。この訪問の後、4週間、1週間に3回訪問して12回の処置の訪問(V3−V14)を行った。最終的な訪問(V15)を、最後訪問の翌日行った。
【0061】
最終的な訪問後、全ての実験室データおよび腫瘍判定のデータを評価し、そして医学的な助言が、本研究者らによって患者に与えられた。腫瘍に対して正の変化が観察されたアフェレーシス手順の場合、この患者に、3サイクルまで処置を繰り返す機会を提供した。1ヶ月間〜3ヶ月間の期間を、2つの処置手順の間に許容した。
【0062】
研究設計:
【0063】
【化1】

(適格および登録)
本研究に参加することに適していると見なされるために、患者は、以下の患者基準および除外基準を満たす必要があった:
(患者基準)
1.標準的な全身的な化学療法および/またはホルモン療法に応答しないことが生検で証明された転移性の癌または再発性の癌を有する患者。
【0064】
2.1次元測定可能である腫瘍を有する患者。
【0065】
3.70%以上のKarnofsky Statusを有する患者。(添付物Aを参照のこと)
4.3ヶ月より長い平均余命を有する患者。
【0066】
5.18歳を超える患者。
【0067】
6.測定可能な血漿sTNF−R1の血漿濃度および/または測定可能であるsTNFR−2血漿濃度を有する患者。
【0068】
7.任意の研究手順の前に治験の調査の性質を理解し、そしてインフォームドコンセントに署名する能力を有する患者。
【0069】
8.慣習的な治療を受けた後に疾患が進行したか、または再発した患者、またはインフォームドコンセントの下でこれらの治療を拒否した患者。
【0070】
9.患者は、全4週間の処置サイクルにおける各訪問の間、その患者に付添う付添い人(友人または家族)を有さなければならない。
【0071】
書面によるインフォームドコンセントは、全ての患者について得られなければならない。
【0072】
(除外基準)
1.腫瘍崩壊症候群のリスクを減少させるために、本研究者の裁量で、CATスキャンまたは健康診断によって見積もられた1000gmsより大きな、概算の蓄積性腫瘍塊を有する患者。
【0073】
2.正常値より高い血清カルニチンまたは正常値より高い血清ビリルビンによって証明されるような、不十分な腎機能および肝機能を有する患者。
【0074】
3.A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、およびHIVの感染についてスクリーニングしたときに正の結果を有する患者。
【0075】
4.プロトコールへの参加前30日以内に、放射線、化学療法、ホルモン療法または免疫療法を受けた患者。
【0076】
5.妊娠中または授乳中の女性。さらに、出産調節の適切な方法を使用することに同意しない、出産する可能性のある女性。出産調節の適切な方法としては、禁欲、経口、避妊薬、移植可能なホルモン性避妊薬(Norplant)、または二重障壁法(double barrier method)(例えば、ペッサリーに加えてコンドーム)が挙げられる。
【0077】
6.C.N.S.における活性な腫瘍増殖の履歴を有する患者、または放射線治療にもかかわらずC.N.S.における活性な腫瘍増殖がX線撮影で証明された患者は、除外される。
【0078】
7.うっ血性心不全を有する患者は、除外される。
【0079】
8.プロトコールへの参加前30日以内に抗生物質を必要とする、活性な感染症にかかった患者は、除外される。
【0080】
9.共存する第2の悪性腫瘍が共存する患者は、除外される。
【0081】
10.以前に慣習的な処置を受けていない患者、またはインフォームドコンセントの下での慣習的な処置を拒否した患者。
【0082】
11.臨床的に著しく低血圧(安静時収縮期血圧<100mmHg)な患者は、除外される。
【0083】
12.最近6ヶ月で心筋梗塞のまたは制御できないアンギナ履歴を有する患者。
【0084】
13.ウサギ、ラテックスおよびX線造影剤に対して、公知の過敏症を有するか、またはアレルギーを有する患者。
【0085】
14.30%未満のヘマトクリット、2500/pl未満のWRC、および100,000/pI未満の血小板数の患者は、除外される。
【0086】
15.以前の放射線治療部位にのみ測定可能な腫瘍を有する患者は、除外される。
【0087】
16.中空の内臓(hollow viscera)に関連する腫瘍を有する患者は、除外される。
【0088】
17.ヘパリンに対して公知の過敏症を有する患者。
【0089】
18.この治験に3回参加した患者。
【0090】
19.重症のアレルギーまたは複数のアレルギーの履歴を有する患者。
【0091】
12人の患者を募った。これらの患者のうちの3人が、第2の処置サイクルを完了した。それによって、15回の処置サイクルは、有効性について評価され得る。これらの患者の特性は、結果の欄に与えられる。
【0092】
(データの取得)
この研究を、Helsinki宣言、全ての法律規定および倫理規定に準拠し、そしてGood Clinical Practiceの指針に従って行った。患者の履歴は、患者自身またはその患者を処置する癌専門医によって提供された。最初のデータおよび最初の実験室結果は、本研究者によって症例報告書に記入された。この中間解析に使用されたデータは、IKFE CROによる適切なモニタリングおよび訂正(clarification)の問い合わせの後に収集された。これらのデータをデータベースに入力し、そして以下に記載されるように記述的に分析した。
【0093】
(統計的手法)
IKFE CROによって提供されたデータを、記述統計学の方法よって分析した(すなわち、これらのデータは、適切な表およびグラフに示される)。この研究の1つの意図は、イムノフェレーシス手順の間に、血漿中のsTNFR1濃度、sTNFR2濃度およびsILR濃度が減少することについて、IACカラムの有効性を実証することであった。従って、この研究手順の前およびこの研究手順の直後に、正常に分布したレセプターの値の平均値を計算し、そしてステューデントのT−検定によって比較した。p値<0.05を、統計学的に有意と見なした。いくつかの場合において、さらにサンプルを採取して、これらの手順の間のレセプター低下曲線の確立を可能にした。名目上のデータ(例えば、患者の特性および不都合事象)を一覧にして、表に示す。
【0094】
(スクリーニングの訪問(V1))
任意の研究手順の前に、署名されたインフォームドコンセントを、各患者から入手し、そして固有の患者数を割り当てた。これらの患者の適格を判定するために、患者を、患者基準/除外基準について評価した;完全な病歴を取り、そして健康診断および臨床検査を行った(以下の「Clinical Variables」および「Laboratory Parameters」を参照のこと)。人口統計データ、健康診断の時点で存在するあらゆる状態の性質、既存のあらゆる状態、薬物適用と処置との組み合わせを、文書にした。
【0095】
腫瘍判定を、CATスキャン、NMRまたは表面の腫瘍の直接測定によって行った。可能であれば患者の処置医師からこのようなデータを提供することを患者に求めた。スクリーニングの訪問前10日以内に決定した実験室パラメーターまたはECGは、必要のない血液の引き出しを回避するために本研究者の裁量で可能にした。
【0096】
上記患者は、訪問の最後に、患者の身分証明書および24時間の救出電話番号を受け取った。
【0097】
(カテーテル配置の訪問(V2))
適格条件に合った患者は、鎖骨下静脈を介する血管性のアクセスを有した。使用されるカテーテルは、標準的な透析血管性のアクセスカテーテルHEMOACESS(15〜20cm、Hospal、Lyon、France)、または等価物であった。カテーテル配置によるうっ血を確保した場合および胸部X線によってこのカテーテルの正しい位置を確認した場合、理想的には配置の24時間後、最初のイムノフェレーシス手順を行った。
【0098】
(処置訪問(V3−V14))
イムノフェレーシス処置を、通常は1週間に3回行った。一人の計算された細胞外の水分容量(キログラムにおける体重(kg)の約20%をリットルで表す)までを、TNF−R1を低い正常(クエン酸血漿中に750pg/ml)まで減少させ、そしてsTNF−R2を正常範囲(クエン酸血漿中に1250pg/ml)まで減少させるために、毎日処置した。処置前および処置後のTNF−R1レベルならびにTNF−R2レベルを得た。これら2つのパラメーターのさらなる測定を、研究者の裁量で行った。この目標は、全4週間において3時間または7時間の手順の間これらのレベルを減少させることであった。sIL2−レセプターの血清レベルを、各々の2の訪問(V3、V5、V7、V9、V11、V14)の処置前および処置後に得た。週に1度、血液化学パネルを測定し、そして腫瘍判定を臨床試験によって行った。不都合事象についての全ての情報を、文書にし、そして研究日誌を、各処置日において再調査した。
【0099】
Diapact CCRT−Machine(BBraun Medizintechnik、Melsungen、Germany)およびEvaflux plasma filter(MPS Medical Product Services GmbH、Braunfels、Germany)を使用するイムノフェレーシス手順の処置設定のスキームを、図2に与える。
【0100】
以下を、患者の処置の間にモニタリングした。さらなる測定は、本研究者の裁量で行われ得た。
【0101】
a)約60分毎の心拍数
b)約60分毎の凝固時間
c)約60分毎の体温
d)処置前および処置後の呼吸数
e)約60分毎の血圧
f)体外循環内の約30分毎の圧力、流速、濾過物の容量および交換溶液の容量、ならびにアラーム状態(存在する場合)
g)インヒビター濃度のための血液サンプルは、処置の最初および処置の最後に引き出される
上記手順全体にわたって、上記カラムの再生が、ときとして必要であった。このカラムを、9リットルの血漿がこのカラムを流れた後に、イムノフェレーシス手順の間に再生した。325mLカラムを、アフェレーシス手順を再開する前に1リットルの滅菌生理食塩水によって洗浄し、1リットルの200mM グリシン−HCI(pH2.8)で溶出し、次いで1リットルの滅菌生理食塩水で再度洗浄した。全てのカラムは、毎日のアフェレーシス手順の最後の工程として再生した。この最終的な再生工程は、最初に2リットルの通常の滅菌生理食塩水による洗浄、1リットルの200mM グリシン−HGI(pH2.8)による溶出、2リットルの通常の滅菌生理食塩水による再度の洗浄、最後に1リットルのPBS+0.01%アジ化ナトリウムによる洗浄を必要とした。次いでこれらのカラムを、次に使用するまで、PBS+0.01%アジ化ナトリウム溶液において2℃〜8℃にて保存した。臨床適用の前に、PBS+0.01%アジ化ナトリウムを含むカラムを9カラム容量の通常の滅菌生理食塩水でフラッシュした。
【0102】
患者を、臨床ユニットにおけるアフェレーシス手順の終了後に1時間〜3時間(平均2時間)モニタリングした。生体反応を記録し、そしてこれらの患者を、退院前に医師に診せた。患者が1回目の処置日後に退院する前に、患者および患者の家族に、家族が緊急の場合には医師と連絡がとれることを説明した。
【0103】
その後、上記患者は、患者の付添い人と共に自宅に退院した。家族は、次の訪問まで、体温、疼痛、および身体全体の健康状態を記載した。この情報は、患者の日誌に記録し、そして次の研究の訪問のときに医師に報告される。そしてこの情報は、医師によって記録された。患者は、身体の全ての不調を当番の臨床職員に報告した。担当医は、手順後の患者の医療上の保護に関する全ての局面を担い、そしてその手順の全効果が不都合であるか否かを、医師の毎日の経過記録において文書にするためにあらゆる試みを行った。看護士、患者または患者の家族である付添い人は、患者の体温を夜の間4時間毎に患者の日記に記録した。
【0104】
最終の訪問において、患者は、ベースラインの訪問と同様に以下の検査を受けた:
−健康診断
−検査による評価
−バイタルパラメーター
−カテーテルの除去。
【0105】
上記患者は、腫瘍判定(CATスキャン、またはNMRもしくは健康診断による腫瘍判定、sTNF−RlレベルおよびsTNF−R2レベル)が、4週間後に行われなければならないという指示を記述した、患者の主治医への手紙を受け取った。この患者およびこの主治医に、この腫瘍判定の所見について、出来るだけ早く本研究者に通知することを求めた。
【0106】
本研究者は、次の週に、全ての入手可能なデータ(検査値、腫瘍判定のデータ)を分析する必要があった。腫瘍活性の決定を、CATスキャン、NMR、および表面の腫瘍の直接の測定を使用して、客観的に疾患を測定することによって行った。アフェレーシス手順が、腫瘍細胞塊に対する正の効果の任意の徴候を示す場合においてこの患者に連絡を取り、患者が第2の(第3の)研究処置ではじめることを望むかどうかを、たずねた。
【0107】
上記患者が、研究手順を完了すると、経過観察が開始される:
a)腫瘍が応答しない患者は、他の治療を検討するために、患者の主治医に戻った。処置医師または医師の指定者は、患者の医師に月に1回連絡を取り、そして進行についての時間および死亡の日付を確定するために患者の研究チャートに記載を行った。
【0108】
b)少なくとも最小限の応答の評価を伴って処置プロトコールを首尾よく完了した患者を、この処置の持続性を判定するために少なくとも5ヶ月間評価した(疾患の進行および生存全体についての時間として定義される)。
【0109】
(実験室の測定)
有効性の可変性(sTNFR−l,sTNFR−2およびsIL−2)を、以下のGLP−有効性の方法によって中央検査室(ikfe Lab)において、処置手順の前後に患者の血清から決定した:
細胞培養上清(cell culture supernate)、血清、血漿、および尿中のヒト可溶性腫瘍壊死因子レセプター1およびヒト可溶性腫瘍壊死因子レセプター2(sTNFR1およびsTNFR2)の濃度の定量的決定のための、ヒトsTNFR1イムノアッセイおよびヒトsTNFR2イムノアッセイ(R&D Systems Inc.、614 McKinley Place NE、Minneapolis、MN 55413,USA)。
【0110】
ヒトsIL−2レセプターELISA(R&D Systems Inc.、614 McKinley Place NE、Minneapolis、MN 55413,USA)。このアッセイは、ヒトの血清、血漿または細胞培養上清における可溶性IL−2レセプターレベルを決定するための固相酵素増幅感受性イムノアッセイ(EASIA)である。
【0111】
(結果)
この研究を、Helsinki宣言、地域および国家の法律規定ならびに倫理規定に厳密に準拠し、そしてGood Clinical Practiceの指針に従って行った。
【0112】
全部で、12人の患者および15回の計画した処置サイクルからのデータ(計画した180の処置手順)を、この分析に含めた。有効性の分析を、全ての完了した処置手順(150の手順)からのデータによって行った。sTNFRオーバータイム(overtime)の変化の分析は、連続した処置手順の量に関連し、そしてこの分析は、1プロトコール(132の処置手順)あたり11の完了した処置サイクルによって可能であった。全ての患者からの全データを、安全性の分析およびリスクと利益の判定のために含めた。
【0113】
全患者の人口統計のデータを、表1に記載する。1人を除いた全ての患者は、重篤な末期の転移性癌に罹患し、そしてこれらの患者は、患者の履歴において化学療法、外科手術、放射線治療、またはそれらの組み合わせのいずれかによって前処置された。
【0114】
(表1:患者の特性)
【0115】
【表1】

基礎となる疾患は、7症例が乳癌であり、1症例が肺癌であり、1症例が腎臓癌であり、1症例が膵臓癌であり、1症例が扁平上皮癌であり、および1症例が悪性黒色腫であった。患者の履歴の談話の要旨は、節5.5に記載する。
期限前契約解除の理由は、死亡(患者1)であり、患者の決断(患者4)であり、そして除外基準の検出(患者7および11)である。この研究における深刻な不都合事象についての詳細な情報は節5.4に記載する。
【0116】
合わせて150の手順は、有効性の分析に含められ得る。全手順の前後における、3つ全てのレセプターの血漿濃度を表2に示す。処置数ごとのレセプター濃度は図3a〜3cに示す。連続的に適用される治療手順の回数と、sTNFR1、sTNFR2およびsIL2Rの血漿濃度を低下させる効果との間には明らかに関連があった。可溶化レセプターを低下させる積極的な試みに対する腫瘍の臨床的な応答は、処置初日の終わりに処置後レセプターレベルの顕著な増加を導くものの、このような効果は処置二日後には観察されなかった。処置三日目後の血漿濃度は、処置サイクルの終わりまで全てのレセプターについて一貫して低下した。適切な実行(処置3〜12)の期間の処置前後でのレセプター濃度の平均を、表3に示す。当然のことではあるが、処置の間に回収した腫瘍細胞のレベルと前処置のレベルは、通常、手順を通して同じであった。合計で、128回の完了した手順が、この分析について評価され得た。
【0117】
(表2.全ての手順におけるレセプター濃度(n=150))
【0118】
【表2】

(表3.処置手順3〜12におけるレセプター濃度(n=128))
【0119】
【表3】

患者の血漿から除去されたレセプターの量は、濾過された血漿の容量に依存した。医学的理由のために(対応する症状を伴う炎症反応の発症)、最初の処置を、低い血漿流速および容量で慎重に行った。後の処置段階において、18lまでの血漿容量が、達成され得た。各9lの血漿が濾過された後、カラムの再生を行った。結合した物質を、グリシン−HCI緩衝液(pH2.8)によってカラムから溶出した。それぞれの患者および手順について、これらの洗浄溶液の合わせた画分を、除去されたレセプターの全体的な量を計算するためにイムノアッセイによって、さらに分析した。各処置手順後の再生によってカラムから除去されたレセプターの量を、表4および図3A〜3Cに記載する。
【0120】
(表4:処置サイクルによって除去されたレセプターの量の計算および達成された血漿濾過容量)
【0121】
【表4】

この分析は、TNF−αおよびIL−2に対する3種のインヒビターを除去するカラムの能力が、安定したままで維持され、そして処置サイクルの間に減衰しなかったことを示した。レセプターを減少させる効果が手順の回数に依存するのに起因して、さらなる分析を、安定なレセプター除去期間の間(すなわち、手順3〜手順12の間)のカラムの有効性を判定するために行った。この免疫系が、腫瘍細胞に対する攻撃においてある種の安定化を達成することが確認される。この分析は、全ての安定な手順のデータ(sTNFR1およびsTNFR2についてはn=122、ならびにsIL2Rについてはn=51)によって行われ得た。
【0122】
免疫系の安定化の期間の間(手順3〜手順12)、このカラムは、レセプターの量を、TNFR1については44%、sTNFR2については52%、そしてsIL2Rについては77%に有意に低下させ得た。図4を参照のこと。このプロトコールに記載されるように収集されたサンプルに加えて、さらなるサンプルを、処置手順の最初の時間経過の間に患者の血漿において減少するsTNFR1およびsTNFR2の動態を評価するために、8つの手順の間に採取した。両方のレセプターについての安定した減少は、濾過された血漿容量に対する相関において示され得た。これらの結果を、図5Aに示す。
【0123】
サンプルをまた、血漿が吸着カラムに進入する前および侵入した直後に機械で濾過された血漿から採取した。これらの調査の結果を、図5Bおよび図5Cに示す。両方のsTNFRが、患者の血漿において長期にわたる一定の減少を生じるイムノフェレーシス手順の間に効率的に結合したことが示され得た。濾過された大量の血漿がこの吸着カラムを通過した後でさえ、このカラムは、レセプターの結合における顕著な有効性をなお維持した。しかし、手順の有効性を増大させるために、血漿を9lの濾過した後にカラムを再生することが推奨されることを、これらの結果から結論付けた。
【0124】
重篤な基礎となる疾患の性質によって予想され得るように、多くの不都合事象が、この研究の間に文書にされた。これらの不都合事象は、この治療と部分的に関連し、そしてこれらの事象の大部分は、免疫応答を誘導するこの研究の処置手順の臨床上の有用性の指標(例えば、発熱、震えなど)である。しかし、全体的な不都合事象の大部分は、鎮痛剤および患者の負荷を和らげるための他の薬物を必要とする内在する癌に関連する。合計して、244の不都合事象(AE)および2症例の死亡を含む3つ深刻な不都合事象(SAE)を観察した。合計して、4人の撤退者が、本研究において認められた(患者1、4、7、11)。撤退の理由は、死亡(患者1)であり、患者の決断後の急な死亡(患者4)であり、中枢神経への転移の発症(患者7)であり、そして患者基準によるノンコンブライアンス(クレアチニン>1.1mg/l、患者11)であった。
【0125】
全てのレセプター濃度(sTNFR1、sTNFR2、およびsIL2R)は、新規のイムノフェレーシス(immunpheresis)カラムIAC122を含むことによって、アフェレーシス手順の間に有意に減少された(それぞれ、44%、52%、および77%)。このカラムは、処置サイクル全体の間のそれらの性能において信頼できることが示された。処置手順間および処置手順後のカラムの頻繁な再生は、レセプター除去能力の損失を生じなかった。カラムは、無効力または他の技術的な問題を理由として取り除かれる必要はなかった。全ての患者において、レセプターの減少は、炎症の臨床症状を誘導し、そして基礎疾患の改善を導き得るいくつかの指標が集められた。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1は、固定化された抗体を含むカラムの斜視図である。
【図2】図2は、ウルトラフェレーシスプロセスの概略図である。
【図3A】図3Aは、処理サイクルの間の処理前および処理後のsTNFR1レベルおよび各手順後にカラムから溶出されたレセプターの量についてのグラフである(ng/10で示される)、(n=132)。
【図3B】図3Bは、処理サイクル間の処理前および処理後のsTNFR2レベルおよび各手順後にカラムから溶出されたレセプターの量についてのグラフである(ng/10で示される)、(n=132)。
【図3C】図3Cは、処理サイクル全体の間の処理前および処理後のsIL2Rレベルおよび各手順後にカラムから除去されたレセプターの量についてのグラフである(ng/10で示される)、(n=55)。
【図4】図4は、安定したデバイス性能による手順の間(手順3〜手順12)におけるsTNFR1除去、sTNFR2除去、およびsIL2R除去についてのグラフである。
【図5A】図5Aは、治療の間におけるsTNFR1濃度およびsTNFR2濃度のグラフである(n=8)。
【図5B】図5Bは、イムノフェレーシスカラムを通過する前、および通過した後の、濾過された血漿中のsTNFR1濃度についてのグラフである(n=59)。
【図5C】図5Cは、イムノフェレーシスカラムを通過する前、および通過した後の、濾過された血漿中のsTNFR2濃度についてのグラフである(n=59)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性腫瘍壊死因子レセプターおよび可溶性インターロイキン2レセプターの上昇したレベルを有する患者において免疫応答を誘導するための方法であって、以下:
免疫応答を誘導する必要がある患者の血液または血漿と、(a)可溶性腫瘍壊死因子レセプター1、可溶性腫瘍壊死因子レセプター2、および可溶性インターロイキン2レセプターに結合する固定化された抗体または抗体フラグメント;ならびに(b)可溶性腫瘍壊死因子レセプター1、可溶性腫瘍壊死因子レセプター2および可溶性インターロイキン2レセプターに結合する固定化された腫瘍壊死因子1、腫瘍壊死因子2およびインターロイキン2、またはそれらのペプチドフラグメントもしくは合成ペプチドからなる群より選択される有効量の結合パートナーとを接触させて、該血液または血漿中の該レセプターのレベルを減少させる工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
処置される前記患者が、1種以上の固形腫瘍を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記患者が、乳癌、前立腺癌、または黒色腫を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体または抗体フラグメントがフィルターまたはカラムに固定化され、前記患者の血液または血漿が該患者に戻される前に該フィルターまたはカラムを通って循環する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体または抗体フラグメントが、ヒト化されている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体または抗体フラグメントが、組換え体または単鎖である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記レベルが、1時間〜2時間以内に可溶性レセプターレベルの正常範囲内まで減少される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記可溶性レセプターのレベルが、レセプターレベルの正常範囲未満まで減少され、そして少なくとも1時間維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記レベルが、sTNFR1については約750pg/ml未満まで減少され、sTNFR2については1250pg/ml未満まで減少され、そして約190pg/mL未満まで減少される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記レベルが、少なくとも4時間、正常未満に維持される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、前記患者が、温熱療法、放射線、免疫刺激または化学療法によってさらに処置される、方法。
【請求項12】
患者において可溶性サイトカインレセプターを除去するための滅菌したデバイスであって、可溶性腫瘍壊死因子レセプター1、可溶性腫瘍壊死因子レセプター2、および可溶性インターロイキン2レセプターに結合する抗体または抗体フラグメント、ならびに可溶性腫瘍壊死因子レセプター1、可溶性腫瘍壊死因子レセプター2および可溶性インターロイキン2レセプターに結合する腫瘍壊死因子1、腫瘍壊死因子2およびインターロイキン2、またはそれらのペプチドフラグメントからなる群より選択される有効量の結合パートナーを備えて、該血液または血漿中の該レセプターのレベルを減少させ、ここで該結合パートナーが、カラムまたはフィルターのポリマー物質上に固定化される、デバイス。
【請求項13】
前記デバイスが、フィルターであり、そして前記結合パートナーが、該フィルターのメンブレン上に固定化される、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記デバイスが、カラムであり、そして前記結合パートナーが、マトリックス上に固定化される、請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
請求項12に記載のデバイスであって、前記血液を血漿または限外濾過液に分離するための手段をさらに備える、デバイス。
【請求項16】
固定化された結合パートナーを有する前記ポリマー物質が、生存可能なウイルスまたは感染性のウイルスを減少させるために処理されている、請求項12に記載のデバイス。
【請求項17】
前記材料が、ウイルス粒子もしくはその構成成分を不活化するか、または架橋するために電子ビーム滅菌によって処理されている、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
(a)可溶性腫瘍壊死因子レセプター1、可溶性腫瘍壊死因子レセプター2、および可溶性インターロイキン2レセプターに結合する固定化された抗体または抗体フラグメント、ならびに(b)可溶性腫瘍壊死因子レセプター1、可溶性腫瘍壊死因子レセプター2ならびに可溶性インターロイキン2レセプターに結合する固定化された腫瘍壊死因子1、腫瘍壊死因子2およびインターロイキン2、またはそれらのペプチドフラグメントもしくは合成ペプチドからなる群より選択される結合パートナーを含有する組成物であって、炎症反応を誘導するのに有効な量で血液または血漿中の該レセプターのレベルを減少させる、組成物。
【請求項19】
前記結合パートナーが、血液または血漿の処理のために、クロマトグラフィーの基材またはフィルター上に固定化される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記結合パートナーが、その必要がある患者に注入するための薬学的に受容可能なキャリア中にある、請求項18に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公表番号】特表2008−511340(P2008−511340A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511060(P2007−511060)
【出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/015037
【国際公開番号】WO2005/107802
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(505203405)バイオフェレシス テクノロジーズ, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】