患者の体温を調節する装置
患者の体温を変更する装置は、患者身体の少なくとも一部を覆うカバー922と、下に敷かれ、患者の身体部分の近傍に熱伝導液体を蓄積するためのくぼみを形成するために患者身体の上記部分の形状に概ね一致するようにしてある対応支持部材24とを含む。カバーと対応支持部材は、患者身体の上記部分を収容するためのエンクロージャを協働して形成し、患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために患者身体の上記部分に直接接触するように熱伝導液体を導くように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略、患者の体温を調節する医療装置に関し、特に、低体温を誘発するように患者の体温を有効且つ迅速に調節できる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
急性心停止は、重要な公衆衛生上の問題である。米国では毎年約350,000人がその病気に罹っており、全生存率は約5%である。心肺機能蘇生法(CPR)・薬・換気器具・自動式体外式除細動器を含む、現在利用可能な最先端の治療を即座に利用した場合でも、25%の生存率が予想し得る最善のシナリオである。この状況に対処するために、新たな治療が求められている。
【0003】
偶発性低体温後又心停止後に回復した多くの事例が報告されている。その観察結果から、研究者たちは、循環停止による悪影響を減らすために、低体温治療が有効な手段であると考えるに至った。適度な全身低体温治療(約3〜5℃(5.4〜9.0°F))が脳を含む重要な器官の損傷を軽減し得ることを、種々の研究によって示されている。心停止中及び心停止後に起こる低体温がその有効性を示している。心肺バイパスを使用することも、その目的を迅速に達成するうえで有効であった。動脈系へ冷却された流体を直接流すことも首尾よく利用されている。しかしながら、これら両方の侵襲的手段は、大径の血管内カテーテルを必要とし、患者体内へ殺菌した溶液を迅速に入れる必要がある。そのような侵襲的な方法は、病院外の緊急事態に対処するうえで明らかに不利である。
【0004】
十分に効果的であり携帯可能であれば、非侵襲的な冷却が好ましい。頭部のみを直接冷却すれば様々な結果を生じる。しかしながら、非侵襲的な処置により蘇生後に全身を約33℃(91.4°F)まで冷却することが驚くほど有効であると、最近の臨床研究で示されている。冷たいジェルおよびアイスパックの使用により、1時間当たりおよそ0.9℃冷却され、結果的に、神経学的に無傷な生存状態でほぼ100%の改善が見られた(バーナードなど、Treatment of Comatose Survivors of Out−of−Hospital Cardiac Arrest with Induced Hypothermia,346 NEW ENG.J.MED.557−563(2002))。別の研究では、冷気を用いて1時間当たり約0.25℃(0.45°F)の割合で患者を冷却できることが分かり、これにより同じ評価項目について40%の改善が見られた(ステルツなど、Mild Therapeutic Hypothermia to improve the Neurologic Outcome after Cardiac Arrest,346 New ENG.J.MED.549−556(2002))。更に別の研究では、水を充填した冷却ブラケットとアイスパックを組み合わせることによって、1時間当たり0.8℃(1.4°F)の割合で冷却できた(フェルベルグなど、Hypothermia After Cardiac Arrest − Feasibility and Safty of an External Cooling Protocol,104 CIRCULATION 1799−1804(2001))。これらの研究で示された冷却率を向上することが、より高い確率で患者を救命できることにつながるものと考えられる。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、患者の体温を調節する装置に関する。上記装置は、概略、患者の体の少なくとも一部を覆うカバーと、対応支持部材とを含む。カバーと対応支持部材とは、患者の体部分を収容するためのエンクロージャを協働して形成し、患者身体と上記熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために上記エンクロージャに収容された患者の体部分に直接接触するように熱伝導液体を導くように構成されている。対応支持部材は、下に敷かれ、患者の体部分の形状に概ね一致して、熱伝導液体を蓄積するために、患者の身体部分の近傍にくぼみを形成する。
【0006】
別の形態では、装置は、概略、患者の少なくとも胴体と脚を収容するエンクロージャを含む。エンクロージャは、患者の体の形状と大きさに一致させることができ、これにより、様々な体型と大きさの患者に適応できる。液体搬送システムは、患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するためにエンクロージャに収容された胴体の少なくとも一部に直接接触するように熱伝導液体をエンクロージャに運ぶことができる。
【0007】
さらに別の形態では、装置は、概略、患者の体の少なくとも一部を収容する内部空間が形成され、内部空間に収容された患者の身体部分に直接接触するように熱伝導液体を導くように構成されたエンクロージャを含む。エンクロージャは、少なくとも一部が柔軟な素材で形成される。エンクロージャ内の流体の通路は、熱伝導液体をエンクロージャへ導くように構成され且つ配置されている。流体の通路の少なくとも一部は、柔軟な素材により形成されている。開状態保持材は、通路を開いた状態に保持し、開状態保持材を通過して流体の通路を通る熱伝導液体の流れを許容するように、柔軟な素材により形成された流体の通路の部分に収容されている。
【0008】
さらに別の形態では、装置は、概略、患者の身体部分を収容するための内部空間が形成されたエンクロージャを含む。少なくとも1つの注入口が、患者の身体部分の上側に流れるように熱伝導液体を上記内部空間に導くように、患者身体の上記部分の上方に配置され、少なくとも1つの注入口が、患者の身体部分の下側に流れるように熱伝導液体を上記内部空間に導くように、上記内部空間に収容された患者身体の上記部分の下方に配置されている。
【0009】
また別の形態では、装置は、概略、患者身体の少なくとも一部を中に収容するためのエンクロージャを含む。エンクロージャの注入口は、患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために、エンクロージャに収容された患者身体の上記部分に直接接触するように熱伝導液体がエンクロージャへ流れることができるようにする。エンクロージャの排出口は、熱伝導液体をエンクロージャから排出できるようにする。流量制限器は、エンクロージャ内の熱伝導液体を所定量に維持するように排出口と連通する。
【0010】
また更に別の形態では、システムは、患者の体温を調節するために、液体冷却モードと空気冷却モードとにおいて操作可能である。システムは、概略、患者身体の少なくとも一部を中に収容するための内部空間が形成されたエンクロージャを含む。液体搬送システムは、液体の温度を制御し、液体冷却モードにおいて、エンクロージャに収容された患者の身体部分に直接接触するように液体をエンクロージャへ運ぶ。空気冷却モードは、空気の温度を制御し、空気冷却モードにおいて、エンクロージャに収容された患者の身体部分に直接接触するように空気をエンクロージャへ運ぶ。
【0011】
さらに別の形態では、装置は、概略、患者身体の少なくとも一部を中に収容するための内部空間が形成されたエンクロージャを含む。エンクロージャは、エンクロージャの内部空間に収容された患者身体の上記部分に概ね接触する。エンクロージャはまた、患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するためにエンクロージャに収容された患者身体の上記部分に熱伝導流体が直接接触できるようにしてある。ろ過システムは、熱伝導流体をろ過する。
【0012】
また更に別の形態では、装置は、概略、患者身体の少なくとも一部を中に収容するための内部空間が形成されたエンクロージャを含む。エンクロージャは、患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために、内部空間に収容された患者身体の上記部分に熱伝導液体が直接接触できるようにしてある。エンクロージャは、エンクロージャに対して患者身体の一部を相対的に位置決めするように配置された目印を含む。
【0013】
また別の形態では、本発明は、患者の体温を調節するための方法に関する。方法は、概略、患者身体の少なくとも一部をエンクロージャの内部空間の中に収めることを含む。エンクロージャは、熱伝導液体を内部空間に収容するための注入口と、熱伝導液体がエンクロージャから排出されるようにエンクロージャの内部空間と連通する排出口とを有する。加えて、方法は、熱伝導液体を、患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために直接接触して患者身体の上に流れるようにエンクロージャの注入口を通って内部空間へ導き、エンクロージャの排出口へ導くことを含む。方法は、患者身体と熱伝導ガスとの間の熱伝導を促進するために、直接接触して患者身体の上に流れるように熱伝導ガスを内部空間へ導くことを含む。
【0014】
更に別の形態では、方法は、概略、患者身体の一部を支持し実質的に下に敷かれるように、空気入りの支持部材に流体を満たすことを含む。加えて、方法は、空気入りの支持部材の上に横たわる位置の内部空間内に患者身体の少なくとも一部を収めることを含む。また、方法は、患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために、直接触して患者身体の上に流れるように熱伝導液体をエンクロージャの内部空間へ導くことを含む。
【0015】
また別の形態では、方法は、概略、患者身体の少なくとも一部をエンクロージャの内部空間内に収めることを含む。エンクロージャは、熱伝導液体を内部空間に収容するための注入口と、熱伝導液体をエンクロージャから排出するためにエンクロージャの内部空間と連通する排出口とを有する。加えて、方法は、熱伝導液体を、患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために直接接触して患者身体の上に流れるようにエンクロージャの注入口を通って内部空間へ未IT引き、エンクロージャの排出口へ導くことを含む。また、方法は、エンクロージャ内の熱伝導液体を所定高さに維持することを含む。
【0016】
その他の目的および特徴は、一部は明白であり、一部は以下に指摘する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図面、特に図1および図2を参照すると、符号10は概略、患者12の体温を調節する装置を示している。装置10は概略、符号14で示すエンクロージャ(筐体、囲い)を含み、エンクロージャ14は、患者の身体の少なくとも一部を収容するための内部空間16(図5)を形成している。患者の身体の任意の部分(全身を含む。)がエンクロージャ14の内側に配置され得ることは当然であるが、典型的な目的として、エンクロージャ14の内部空間16に収容された患者の身体の図示部分は、胴体、腕および脚を含む首から下の部分である。様々な体型および大きさの患者に対応するために、エンクロージャ14は、その内部に収容された患者の身体の形状に概ね合致するようにしてある。例えば、エンクロージャ14は、1つの実施形態では、100人の成人男性の大きさのうち5番目と95番目との間の大きさの人にとって適当なものである。また、もっと小さな人(例えば、赤ちゃん、子供、小柄な成人)、または、もっと大きな人を収容するように適合するエンクロージャも考えられる。
【0018】
また、エンクロージャ14は、水、生理食塩水またはその他の適当な液体といった熱伝導液体18(図12)、あるいは熱伝導ガス116(図14)が患者の身体に直接接触するように内部空間16に流入可能なようにしてあり、これにより、患者12と熱伝導流体との間の熱伝導が促進される。患者12の体温を上昇させるために、熱伝導流体は、患者の身体の該当部分の体温よりも高温で内部空間16に導かれる。例えば、熱伝導流体の温度は、約43℃(109°F)〜約47℃(117°F)の範囲であり、例えば約45℃(113°F)である。このようにエンクロージャを温めることの1つの目的は、意図的でない低体温症を患う患者12を温めることである。
【0019】
患者12の体温を低下させるためには、熱伝導流体が、エンクロージャの内部空間16に収容された患者の身体部分の温度よりも低温でエンクロージャ14に導かれ、これにより、流体が患者の身体部分を冷却する。例えば、熱伝導流体の温度は、約0.5℃(34°F)〜約4℃(36°F)の範囲である。そのような温度でエンクロージャ14に導入された熱伝導流体は、患者の皮膚へのいかなる悪影響をも最小限に抑えつつ、低体温を促すのに十分な速度で身体を冷却する。エンクロージャ14の内部空間16に収容された患者12の体温を調節するために、上記の温度以外の温度を使用できることは当然である。
【0020】
上述のように、低体温は、心停止により起こる、脳を含む重要な器官の損傷を最小限に抑えるか、または防止するために利用できる。器官の損傷は、一般的には、心停止の後すぐに起こり得ることがよく知られている。結果として、器官の損傷を最小限に抑えるか又は防止するために迅速且つ有効に低体温を促すことが、しばしば被害者にとって最も有効なことになる。心停止の犠牲者の多くは、初期対応者(すなわち、警察官、消防士、救命士)により最初に処置されるため、1つの実施形態では、装置10は、医療施設から離れた場所での使用を目的として携帯可能となっている。さらに、エンクロージャ内に載置された患者を医療施設へ通常の方法で容易に搬送できるようにするために、エンクロージャ14は、ストレッチャー、例えば救急車または応急の移動ベッド(全体符号20で示す)の上に載置可能な大きさと形状を有する(図1)。したがって、エンクロージャ14は、標準的な救急車または応急の移動ベッド20の寸法のおおよその範囲、すなわち、約66センチメートル(26インチ)と約76センチメートル(30インチ)との間の幅と、203センチメートル(80インチ)と210センチメートル(83インチ)との間の長さとを有する。エンクロージャ14は、本発明の範囲から離れなければ別の形態を有してもよい。また、エンクロージャ14は、他の治療に利用したり、他の医療処置(例えば、温熱療法、外傷、脳卒中、心臓麻痺、抗ガン治療の強化、手術の補助手段、さらには一般的な体温管理)の用途に利用したりすることも考えられる。さらに、患者12は通常はヒトであるが、装置10は、他の動物用に使用することも可能である。
【0021】
患者12の低体温を促すために必要な時間の合計は、エンクロージャ14の内部空間16に収容された患者の身体部分と、熱伝導流体の温度と、熱伝導流体が患者の身体部分に接触する時間の合計とを含む、多数の要因に依存する。結果として、1つの実施形態では、エンクロージャ14は、患者の身体の首から下の部分を取り囲むようになっており、これによって、熱伝導を受ける患者の表面領域全体の大部分に熱伝導流体が供給される。図3に示すように、エンクロージャ14は、患者12の首から下の部分を覆うための、符号22で示されるカバーと、患者12の全身の下に敷くための、符号24で示される対応支持部材とを含む。
【0022】
図2と図3に示すように、カバー22は、カバー22により覆われた患者12の体型に自重により概ね一致するようにしてある柔軟なシート状部材26を含む。シート状部材26は、好ましくは、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、ポリウレタン等の透明な素材からなり、これにより、エンクロージャの中に収容された患者の身体を見えるようになる。シート状部材(図示せず)は、不透明素材で構成したり、透明な部分を不透明な残りの部分とともに有したりしてもよいことは当然である。その他の実施形態(図示せず)では、カバー22は、さらに、シート状部材26と患者の身体との間に配置される浸透性の層を有する。浸透性の層、例えば綿または連続気泡構造の発泡体などは、患者の身体から間隔を空けた位置でシート状部材26を支持し、これにより、熱伝導流体がシート状部材と患者の身体との間を通ることを可能にするための流体の通路が提供される。
【0023】
対応支持部材24は、空気の入った支持部材であり、カバー22と同様、身体が支持部材に載置されているとき患者の体型に概ね一致する。さらに、対応支持部材24は、患者の真下に熱伝導流体を流れやすくするように患者の真下の圧力の集中を最小限に抑え、患者の皮膚に生じる床ずれの可能性を最小限に抑える。対応支持部材24は、図4に示すように、2つの通常は細長い、ガス入りチューブ28を含み、チューブ28は、支持部材の右側と左側に配置されている。図11に示すように、ガス入りチューブ28は、空気ポンプ30を用いることにより(または手作業により)選択的に膨らませることができ、チューブから空気を流出させることにより収縮させることができる。図6を参照すると、各チューブ28は、上面32と底面34と内側面36と外側面38とを有する。内側面36は、概ね患者12の側部の外形に一致する形状となっている。したがって、チューブ28は、膨らんでいるとき、協働して支持部材24の中央部(すなわち、ガス入りチューブ28の間)において患者の身体を収容するための凹所40を形成する(図4)。さらに具体的に、チューブ28は、膨らんでいるとき患者12の両方の側部に概ね一致し、これにより、患者の頭部と首を収容するための大きさと形状を備えたポケット42と、患者の胴体を収容するためのより広い領域44と、患者の脚と足を収容するためのテーパー状のポケット46とが形成される。ポケット42は、患者12の頭部と首を収容するようになっており、前向きの方向において首を支持するように構成され、これにより、患者の呼吸の通路(すなわち、鼻と口)がエンクロージャ14の内部空間16内の熱伝導流体に接触しないように維持される。ポケット42は、患者の頭部が側方へ動くことを防止する。チューブ28は、(支持部材の外周を形成する)対向外側面38が、硬質樹脂などの比較的硬質の素材によって捕らえられ、これにより、チューブの外側への膨張が制限される。対応支持部材24は、異なる形状と大きさを有してもよく、ここに記載された方法と異なる方法で患者の身体に一致するようにしてもよいことは当然である。
【0024】
図4と図6を参照すると、液体不浸透性のシート状部材48は、チューブ28の概ね対向部間に伸び、浸透性の層50がシート状部材を覆っている。不浸透性部材48は、不浸透性部材がエンクロージャ14の頭部ポケット42からテーパー状の足ポケット46へ傾斜するように、チューブ28に取り付けられている。十分な厚みのポリエステル綿または連続気泡構造の発泡体などの浸透性の層50は、熱伝導流体がエンクロージャの至るところにおいて皮膚全体にわたって流れるように患者の身体部分に接触するように通過することを可能にする一方、不浸透性部材48は、熱伝導流体をエンクロージャ14の内部に保持する。不浸透性部材48は、PVC、ポリエチレン、ポリウレタンなどの透明素材を含む。当然ながら、不浸透性部材48は、その全体を透明素材で構成したり、不透明な残りの部分とともに透明な部分を有していたりしてもよい。また、当然ながら、不浸透性部材48は、不浸透性部材が概ね水平な面に位置したり、足ポケット46から頭部ポケット42へ傾斜したりするように取り付けるようにしてもよい。
【0025】
再び図4を参照すると、前方端部パネル52と後方端部パネル54がチューブ28間に伸び、前方および後方の範囲を画定している。端部パネル52,54は、半硬質樹脂、樹脂発泡体、弾塑性シート、膨張可能な素材、または強制的に膨らませることができる素材(例えば、お互いに固着された一連の膨らませることができるチューブ)などの様々な素材で構成できる。
【0026】
対応支持部材24は、さらに、ヘッドレスト、前面ストラップ、または支持部材にプリントされた目印などのポジショナー56(図5)を含み、ポジショナー56は、対応支持部材24上において患者12をセットする適正な位置をユーザーに示す。目印は、文字列(例えば、文書による指示)、身体または身体部分の外形、顔画像などの画像であってもよい。ポジショナー56は、エンクロージャの上または中の任意の位置に配置してもよい。
【0027】
図3に示すように、対応支持部材24は、さらに、選択的に膨らませることができるヘッドレスト55を含み、ヘッドレスト55は、患者12をどこに位置させるかの指示をユーザーに提供するだけでなく、患者の呼吸の通路(すなわち鼻と口)を、エンクロージャ14の内部空間16内の熱伝導性流体と間隔を空けた関係に維持する。さらに、ヘッドレスト55は患者の頭部を後方へ曲げ、これにより、患者の呼吸の通路が広がる。このようにして、ヘッドレスト55は、心肺機能蘇生を実行する際の1つのステップであるマウス・ツー・マウス呼吸法に適した位置に患者の頭部を位置させる。その他の実施形態では(図示せず)、ヘッドレスト55は、患者の頭部を休息させるための枕を提供する。結果的に、患者の頭部は前方へ曲げられ、患者が呼吸するのを助ける呼吸チューブを使用する必要がある。結果的に、患者の頭部は、概ね水平に配置されるか、前方に曲げられるか、または後方に曲げられ、これにより、特定の患者12に最適な位置を選択する選択肢をユーザーに提供する。当然ながら、ヘッドレスト55は、膨らませることができない構成要素で形成してもよい。また、当然ながら、ヘッドレスト55は、対応支持部材24と一体であっても、別々の構成要素として形成してもよい。
【0028】
対応支持部材24の端部パネル52,54、不浸透性部材48およびガス入りチューブ28は、患者12の全身を収容する対応支持部材の中央部において、符号58で全体的に示される防水性のくぼみを形成するように、トータルで構成されている。患者12は、チューブ28が収縮した状態で不浸透性部材48の上に仰向けの状態で置かれる。チューブ28は、チューブの内面壁36を、そこに並列された患者の身体部分に一致させるように膨らまされる。チューブ28は、熱伝導流体18が横方向に漏れるのを防ぐための縦方向に伸びる壁を提供する。端部パネル52,54は、熱伝導流体18が縦方向に漏れるのを防止し、不浸透性部材は、熱伝導流体が下方へ漏れるのを防止する。当然ながら、不浸透性部材は、チューブおよび端部パネルの上方へ拡張されるようにしてもよく、これにより、あらゆる方向の漏れを防止できる。
【0029】
結果的に、くぼみ58は、エンクロージャ14の内部空間16に収容された患者の身体に概ね一致するような大きさと間隔を有する。したがって、患者12の体温を有効に変化させるのに必要な熱伝導流体の量も、患者の大きさと体型に依存する。例えば、同じ熱伝導の速度を達成するためには、より大きな患者は、より小さな患者よりも多くの熱伝導流体を必要とする。さらに、エンクロージャ14の内部空間16内の熱伝導性流体は、比較的薄い層において、くぼみ58に配置された患者の身体に近接または接触するように維持される。結果的に、患者12の体温を有効に変化させるために必要な熱伝導流体18の総量は、最小限に抑えることができる。このことは、重くなり得る大量の熱伝導流体を自分で運ぶ必要がある離れた地域でますます重要となる。例えば、約12リットルの熱伝導性流体が約12キログラム(27ポンド)の重さであるところ、約16リットル(4.2ガロン)の熱伝導流体18は16キログラム(35ポンド)の重さとなる。
【0030】
くぼみ58は、熱伝導性流体18を患者の身体の下側および付近に蓄積できるようにすることと、熱伝導流体が患者12の真下の位置から患者の身体に届けられるのを可能にすることとにより、患者の身体の下面と側面との間の熱伝導を可能にする。くぼみ58の深さDは、エンクロージャの縦方向の軸に沿って異なる(図3)。患者の体重の大部分が胴体の中に含まれるため、くぼみ58は、患者12の胴体を収容する領域において、頭部、脚および足を収容する領域よりも深くなっている。胴体を収容する領域において、くぼみ58の深さDは、約2.5センチメートル(1インチ)と約20センチメートル(8インチ)との間であり、好ましくは、約12.7センチメートル(5インチ)と約15センチメートル(6インチ)との間である。これらの深さは、100人の成人男性の胸高のうち5番目と95番目との間の高さの約2分の1に概ね対応している。このくぼみ58の深さの相違により、熱伝導の影響を受けやすい身体領域である患者の胴体の周辺に、患者12の頭部、脚および足よりも多くの熱伝導流体を蓄積できる。患者の頭部を収容する領域において熱伝導流体18の深さを管理する理由は明白である。例えば、エンクロージャ14が比較的小さな又は比較的大きな成人、子供あるいは赤ちゃんに使用するために設計された場合など、くぼみ58の深さは、本発明の範囲から外れなければ、概ね一定の深さDであったり、上記と異なる深さであったりしてもよいことは当然である。
【0031】
図2と図5に描かれているように、カバー22と対応支持部材24は、止水された状態で互いに係合するようになっている。カバー22は、支持部材24の縁60に沿って支持部材にヒンジされており、カバーと支持部材が取り付けられた状態を維持すると共に使用に際して相互に適正に整列されることが保証されている。別の実施形態では(図示せず)、シール部62,64が端部60に沿って連結され、これにより、カバー22が対応支持部材24から選択的に除去される。図示するように、カバー22は、2つの第1シール部62を含み、支持部材24は、2つの第2シール部64を含む。シール部62,64は、例えば、米国、ニューヨーク州、オレンジバーグにあるITW社のMiniGrip/ZIP−PAK(商標)により製造されたFLXIGRIP(商標)7など、選択的に且つ止水性をもってお互いに係合できるスライドファスナー部材を含む。別の実施形態では(図示せず)、シール部62,64は、面ファスナーシステムを含む。例えば、フック素材の細長部材が対応支持部材24に接着され、ループ素材の細長部材が対応支持部材上に配置されたフック素材に係合するようにカバー22に接着されている。
【0032】
カバーと対応支持部材の両方のシール部62,64が、支持部材の両側面の上で且つ支持部材の両側面よりも横方向の内側に位置するように、カバー22は、支持部材24よりも少し小さい。結果的に、シール部62,64は、エンクロージャ14の内部空間16に収容された患者12の中心線から離れて配置され、これにより、シール部から支障を受けることなく患者に心肺機能蘇生法を施すことができる。さらに、シール部62,64は、概ね水平に維持されるエンクロージャの部分に配置されている。結果的に、シール部62,64が湾曲するか又は別の態様で変形する可能性を最小限に抑えることができる。シール部62,64の湾曲および変形は、防水または開閉の性能を損なう恐れがある。さらに、シール部62,64は、対応支持部材24のくぼみ58の中で熱伝導流体18が蓄積する深さDよりも上の位置に配置され、これにより、シール部への要求が低減される(すなわち、シール部は水密シールを形成しなくてもよい。)。最後に、シール部62,64は、ユーザーにとって都合のよい位置に配置され、これにより、ユーザーが患者12に容易に接近できる。
【0033】
図6〜図8を参照すると、カバー22の不浸透性部材26と対応支持部材24の不浸透性部材48は両者とも、互いに対面して係合する柔軟なシート状のボディ対向コンポーネント66と柔軟なシート状の外側コンポーネント67とを含む。ボディ対向コンポーネント66および外側コンポーネント67は、液体不浸透性を有し、それらの間に熱伝導流体用の通路68を少なくとも1つ形成するように、それらの対向面に沿って互いに接合されている(図2と図5)。追加の原料を必要とすることなく十分な強度を供給するため、通路68を形成するための継目69に沿ったコンポーネントのシールには熱融着が用いられる。また、例えば接着剤の使用など、通路68を形成するか又はコンポーネント66,67を互いにシールする別の方法も、本発明の範囲内で考えられる。通路68は、カバー22の長さとおよそ等しい長さ、およそ25mmの幅、およそ3mmの高さを有する。当然ながら、通路68の上記寸法は典型例にすぎず、通路を異なる寸法で形成することができる。
【0034】
通路68は、患者の身体の表面領域の大部分の上に流体を分配するように構成されている。図2と図5に示すように、通路68は、カバー22の不浸透性部材26と対応支持部材24の不浸透性部材48とのそれぞれにおいて、エンクロージャの概ね縦方向に伸びる3つの通路を含む。したがって、合計6つの通路68のうち3つの通路が、患者の身体の上に並べられ、他の3つの通路が患者の身体の真下に並べられている。少なくとも2つの通路68は、患者の身体の中心線からオフセットした位置で患者の身体に係わるように配置されている。この特徴は、胸部圧迫が概ね患者の中心線に沿って起こるため、患者12に心肺機能蘇生法が施される場所で特に有益である。患者12がエンクロージャ14に入れられて、通路68が患者の中心線にほぼ一致すると、胸部圧迫は、通路を通る熱伝導流体の流れを繰り返し遮り、これによりエンクロージャ14を通る流体の流れが減少する恐れがある。少なくとも一部の通路68が患者の中心線からオフセットしている場合、心肺機能蘇生法の措置の際に施される胸部圧迫は、エンクロージャ14を通る流体の流れをほとんど遮ることがない。他の実施形態に係る通路68も本発明の範囲内において考えられる。当然ながら、カバー22と対応支持部材24は、本発明の範囲から外れなければ、もっと多くの又はもっと少ない通路68を有してもよい。また、当然ながら、カバー22が対応支持部材24と異なる個数の通路を有してもよい。
【0035】
図8を参照すると、対応支持部材24の不浸透性部材48に形成された通路68は、開状態保持材(開けたままに維持する部材)70によりそれぞれ支持され、開状態保持材70は、通路を開いた状態に維持し、開状態保持材を過ぎて通路を通る熱伝導流体の流れを許容する。開状態保持材70は、例えば支持部材24の不浸透性部材48に形成される通路68の上に位置する患者の体重などの負荷にさらされているときでも、通路68が開いた状態を維持するのに必要な剛性を供給する。開状態保持材70は、例えば連続気泡構造の発泡体、粒子状物質(例えばポリスチレンビーズ、綿、不織布材料、またはコイルバネ等の機械素子などの浸透性素材であってもよい。1つの適切な連続気泡構造の発泡体は、米国、ペンシルバニア州、エディスタウンにあるFoamexにより製造された概ね25個/インチの微細孔を有する網状のポリウレタン発泡体である。
【0036】
カバー22の不浸透性部材26に形成された通路68は、開状態保持材70を有さない(図7)。結果的に、通路68が熱伝導流体で満たされる前において、通路のシート状のボディ対向コンポーネント66とシート状の外側コンポーネント67が、お互いに対してぴったりと接する。いったん熱伝導流体が通路68の内側に流れると、コンポーネント間に流体が流れることができるように通路の断面積が増大する。当然ながら、対応支持部材24の不浸透性部材48に形成された通路68が、開状態保持材70を実質的に含まなくてもよく、カバー22に形成された通路68が、開状態保持材を有してもよい。
【0037】
図5と図6を参照すると、熱伝導流体が通路から、ボディ対向コンポーネント66と患者の身体部分との間に位置する浸透性の層50へ通過できるようにするために、カバー22および対応支持部材24の両者のボディ対向コンポーネント66は、通路68に対応して少なくとも1つの開口部72(すなわち注入口)を有する。各注入口72は、概ね円形であり、好ましくは約1ミリメートル(0.04インチ)の直径を有する。小径の注入口72は、熱伝導流体が通路68からエンクロージャ14へ流れるのを制限し、これにより、通路の全長が熱伝導流体で満たされる。したがって、熱伝導流体は、通路68を通って注入口72へ均一に分配される。カバー22の不浸透性部材26および対応支持部材24の不浸透性部材48のボディ対向コンポーネント66は、患者の身体の上側および下側にそれぞれ配置され、これにより、注入口72は患者の両側に配置される。図5に示すように、支持部材24の不浸透性部材48のボディ対向コンポーネント66は、複数の注入口72を有する。カバー22の不浸透性部材26のボディ対向コンポーネント66も、対応支持部材24の注入口72と同様に配置された複数の注入口(図示せず)を有する。
【0038】
エンクロージャ14の様々な部分に位置する注入口72の個数は、エンクロージャの至る所への熱伝導流体の分配を管理するように変更される。図5に示すように、注入口72は、エンクロージャ14の至る所に熱伝導流体を均一に分配するように配置される。しかし、当然ながら、注入口72は、熱伝導流体をエンクロージャ14へ不均一に分配するように配置してもよい。不均一な流れの分配を形成することにより、熱伝導流体を、熱伝導の影響を受けやすい患者の身体部分(すなわち、頭部、首、胴体)などの患者身体の選択された部分に導くことができる。
【0039】
図5に示すように、カバー22の不浸透性部材26および対応支持部材24の不浸透性部材48の通路68は、エンクロージャ14の底部付近に位置する後方端部パネル54を通り抜けて伸びている。結果的に、通路68を通して導かれる熱伝導流体は、エンクロージャ14の底部B(すなわち、下側3分の1の部分)から、中間部M(すなわち、中間部3分の1の部分)を通って、頂部T(すなわち、上側3分の1の部分)へ流れる。流れの分配を均一化するために、注入口72の個数は、通路68に沿ってエンクロージャ14の底部Bから離間する方向において徐々に増加する。したがって、中間部Mは底部Bよりも多数の注入口72を有し、頂部Tは中間部Mよりも多数の注入口72を有する。図示された実施形態では、各通路68は、底部Bにおいて4個の注入口72と連通し、中間部Mにおいて6個の注入口72と連通し、頂部Tにおいて16個の注入口72と連通している。他の形態では(図示せず)、注入口72の直径が通路68に沿ってエンクロージャの底部Bから離間する方向において変化する。この方法を利用することにより、比較的小さな直径を有する注入口72が底部Bの近くに配置され、徐々に大きくなる直径を有する注入口72が、中間部Mと頂部Tに配置される。当然ながら、注入口72の大きさ、形状および分配を異ならせることで、患者12の身体へ熱伝導流体を適正に分配することを可能にする注入口72の形態は多数ある。
【0040】
また、エンクロージャ14は、少なくとも1つの大径(例えば2.5センチメートル(1インチ))の排出口80を含み、排出口80は、熱伝導流体18をエンクロージャ14から排出するように、対応支持部材24の後方端部パネル54を通り抜けて伸びている(図3)。大径の排出口80は、2.5センチメートルよりも大きくしたり小さくしたりすることも考えられる。排出口80は、熱伝導液体18をエンクロージャ14の内部空間16に送られる速度と同じか又は大きい速度で重力によりエンクロージャ14から排出できるのに十分な大きさであり、これにより、エンクロージャからあふれることを防止できる。エンクロージャ14は、1つよりも多くの排出口80を有してもよく、排出口は、エンクロージャの別の場所に配置してもよく、排出口は、他の大きさ及び形状を有してもよい。
【0041】
図3に示すように、逆U字形チューブ82(広く「流量制限器」)は、エンクロージャ14の中の熱伝導流体18の深さDを予め決定されたレベルに維持するように、排出口80と連通し、これにより、患者12の付近および真下において対応支持部材24のくぼみ58に熱伝導流体が蓄積できる。逆U字形チューブ82は、予め決定された高さを有し、これにより、熱伝導流体がエンクロージャから排出される前に熱伝導流体が流れる放水路が作られる(図9参照)。例えば、熱伝導流体18が、エンクロージャ14内において約7センチメートル(2.8インチ)と約15センチメートル(6インチ)との間の深さに維持されていれば、チューブ82は、選択された高さの下側の熱伝導流体が排出口80を通ってエンクロージャから流れ出ることを防止する。チューブ82は、エンクロージャ14の排出口80で流体を所定の高さに維持するため、チューブ82は、エンクロージャの排出口で正のゲージ圧を作り、熱伝導流体の深さが7センチメートル(2.8インチ)と約15センチメートル(6インチ)との間であるエンクロージャでは、約0.69キロパスカル(1平方インチ当たり0.1ポンド)と約1.47キロパスカル(1平方パスカル当たり0.2ポンド)との間のゲージ圧となる。通気孔84が、空気の流れを壊すように配置され、これにより、熱伝導流体18のエンクロージャ14からのサイホン現象を防止できる。通気孔84は、サイホン現象を促すために選択的に閉じることができ、このことが、熱伝導流体18をエンクロージャ14から排出しているときに有益となる。エンクロージャ14内部に含まれる熱伝導流体18のレベルが見えるようにするために、チューブ82は透明であってもよい。当然ながら、本発明の範囲から外れない限り、流量制限器は、例えば調整バルブなど、逆U字形チューブ82に加えた機器であってもよい。
【0042】
図10を参照すると、装置10の操作を制御するために、装置はさらに、符号86で全体的に示される制御システムを含む。制御システム86は、ユーザーインターフェース90と搬送システム92とを有する制御ユニット88を含む。ユーザーインターフェース90は、制御システム86の特定のパラメータを視覚的に示すためのディスプレイ94と、システムのユーザーが特定のシステム機能を選択的に制御できるようにする制御部96と、患者の体温を測定するための1つ又は複数の温度センサ98とを含む。例えば、制御部96は、ユーザーが、患者の体温の設定値または目標値を入力できるようにしてもよい。ディスプレイ94は、例えば、とりわけ、患者12の実際の体温、熱伝導流体18の温度、および熱伝導流体の流速とともに、上記設定温度を表示できる。
【0043】
制御システム86の搬送システム92は、排出口80から排出された熱伝導流体18が注入口72を通ってエンクロージャの内部空間16へ流れるようにエンクロージャ14の通路68へ戻されるように導かれる、概ね閉ざされた連続的なフローシステム(図12)と、対応支持部材24のチューブ28を膨らませ(図11)、患者の身体に直接接触するようにエンクロージャ14へ流れる(図14)加圧空気を搬送する空気搬送システム102とを含む。図12と図13を参照すると、搬送システム92は、液体熱交換器104と、空気熱交換器118と、流体貯蔵部106と、3つのポンプ(2つの液体ポンプ108と1つの空気ポンプ30)と、複数のバルブ110と、ろ過システム112とを含む。当然ながら、搬送システム92は、本発明の範囲から外れない限り、これより少ないか又は多い構成部材を有してもよい。
【0044】
液体搬送システム100の熱交換器104は、熱伝導液体18の温度を、液体がエンクロージャ14に入る前に測定される注入口の温度Tiに変えるために用いられる。エンクロージャ14から排出される熱伝導液体18は、熱交換器104を通過後に上述のようにエンクロージャへ再導入される。熱交換器104は、排出された熱伝導液体18の温度を、液体がエンクロージャ14から出た後に測定される排出口の温度Toから、注入口の温度Tiに変える。これにより、同じ熱伝導液体18を、エンクロージャ14と液体搬送システム100との間で繰り返し使用できる。本発明の範囲内のものとして、様々なタイプの熱交換器104が考えられる。例えば、本発明の熱交換器104は、エンクロージャ14を通過して患者の体温により変えられた後の熱伝導液体18を注入口の温度Tiに戻すことを容易にするために、ペルチェ素子および/または相変化物質であってもよい。当然ながら、熱交換器104は、熱伝導液体18を温めるか又は冷却するために用いることができる。図示した実施形態では、熱交換器104は、貯蔵部の中で熱伝導液体18に直接接触させるために貯蔵部106に配置された、およそ10ポンドの相変化物質(例えば氷)である。ただし、より多くの又はより少ない相変化物質を使用したり、液体分配システムの他の場所に熱交換器104を配置したりしてもよい。
【0045】
貯蔵部106は、熱交換器104により促された温度で熱伝導液体18を保持し、注入ポンプ108がエンクロージャ14へ送り込む前の液体を貯蔵する。貯蔵部106は、熱伝導液体18がエンクロージャ14へポンプで送り込まれる前において、熱伝導液体18の温度を維持するのを助けるための断熱材(図示せず)を有してもよい。様々な大きさの貯蔵部を用いることができるが、図示した実施形態の貯蔵部106は、約16リットル(4.2ガロン)の容量を有する。当然ながら、異なる容量を有する貯蔵部を用いることもできる。例えば、子供用または赤ちゃん用の大きさのエンクロージャ14に用いる熱伝導液体18を保持する貯蔵部106は、比較的小さな容量を有してもよく、比較的大きなエンクロージャに用いる熱伝導流体を保持する貯蔵部は、比較的大きな容量を有してもよい。
【0046】
図12に示すように、2つのポンプは、熱伝導液体18を約5リットル/分(1.3ガロン/分)の流速で貯蔵部106からエンクロージャ14へ送り込むように、貯蔵部106とエンクロージャ14の通路68との間で連通する注入ポンプ108である。図示のように、一方の注入ポンプ108は、熱伝導液体18を患者の上に導くためにカバー22の不浸透性部材26の通路68に熱伝導液体を導き、他方の注入ポンプは、対応支持部材24の不浸透性部材48の通路に熱伝導液体を導き、これにより熱伝導液体を患者の下に導く。これらのポンプ108はそれぞれ、もう一方のポンプと独立して操作できる。したがって、熱伝導液体18を、患者の上、患者の下またはその両者(すなわち、患者の上および患者の下)に選択的に流れるように導くことができる。
【0047】
ポンプ108は、例えば米国、イリノイ州、ハントリーにあるB&D Pumps,Inc.により製造されたUGP−2000シリーズなどの歯車ポンプ、または、例えば米国、ニュージャージー州、パラマスにあるWatson−Marlow OEMにより製造された500シリーズprocess pumpなどの、モーター駆動付のローラタイプのポンプヘッドであってもよい。さらに、ポンプは、次の患者への二次汚染の可能性を最小限に抑えるために使い捨てできる取り外し可能なポンプヘッド114を有してもよい。ポンプヘッド114は、熱伝導液体18に接触するポンプ108の一部にすぎない。例えば、ポンプヘッド114は、比較的安価なプラスチック素材からなり、ボルトを用いてポンプ108に取り付けられる。したがって、使用後、ポンプヘッド114は、ポンプ108から取り外して、適正に廃棄することができ、他の患者に使用するために新しいポンプヘッドがポンプに取り付けられる。より高い流速または他の条件が必要であれば、本発明の範囲から逸脱しない限り、例えば高容量ギアポンプまたは渦巻きポンプなど、代わりのポンプを使用してもよい。
【0048】
ろ過システム112は、排出される際の熱伝導液体18をろ過するためにエンクロージャ14の排出口80と連通し、これにより、液体搬送システム100の他の部材(すなわち、注入ポンプ108および貯蔵部106)の汚染可能性を避けることができる。ろ過システム112は、特殊なフィルターと、活性炭と、バクテリアおよびウイルスを殺すための紫外線とを含む。その一例に係るろ過システムは、米国、ネバダ州、ミンデンにあるAqua Sun Internationalにより製造されたAqua Sun Model SWP−V2である。ろ過システム112は、本発明の範囲から逸脱しない限り、液体搬送システム112の中の任意の位置に配置でき、より高いか又はより低いろ過性能を有してもよい。
【0049】
空気搬送システム102は、例えば従来の往復式またはスクロール型のコンプレッサーなどの空気ポンプ30を含み、空気ポンプ30は、チューブ28を膨らませるために対応支持部材24と連通し(図11)、エンクロージャに空気(広く「熱伝導ガス」)を導くためにエンクロージャ14と連通する(図14)。熱伝導ガス116を供給する機能とは別に、空気ポンプ30は、対応支持部材24のチューブ28に空気を充填するようになっている。例えば、ポンプ30は、500リットル/分の速度で約2キロパスカル(0.3ポンド/平方インチ)の正のゲージ圧になるまで対応支持部材24のチューブ28に空気を充填する性能を有する。当然ながら、他のタイプのポンプを使用することもでき、空気ポンプは、上記と異なる流速を有してもよい。
【0050】
空気ポンプ30はまた、熱伝導の目的でエンクロージャへ空気を送り込むためにも用いられる(図14)。例えば直列の空気加熱器または空気冷却器などの空気熱交換器118は、空気の温度を、エンクロージャへ送り込まれる前の温度に変えるために用いることができる。したがって、温度が変えられた空気116は、エンクロージャに収容された患者の体温を調節するようにエンクロージャに導かれる。この特徴は、熱伝導液体18または相変化素材を利用できないときに特に有益である。さらに、温度が変えられた空気116は、患者の体温を目標温度に維持するために使用できる。例えば、熱伝導液体18が、患者の体温を目標温度またはその付近に迅速に調節するようにエンクロージャ14へ導かれ、その後、温度が変えられた空気116を、患者の体温を選択された目標温度に維持するために使用できる。加えて、温かい空気を、体温が低下した患者がときどき経験する震えを抑えるために使用できる。
【0051】
図11〜図14に示すように、バルブ110は、搬送システム92を通る熱伝導液体18と熱伝導ガス116の両者の流路を制御する。例えばピンチ弁などのバルブ110は、熱伝導液体18(または熱伝導ガス116)がバルブを通過して流れることを妨げる閉じた位置から、熱伝導液体(または熱伝導ガス)がバルブを通過して流れることを制約しない開いた位置へ移動可能となっている。例えば、バルブ110の1つは、対応支持部材24の不浸透性部材48に形成された通路68と貯蔵部106との間の流路に沿った位置に配置される。閉じた位置において、このバルブ110は、バルブを通過して貯蔵部106へ流れることを妨げ、これにより、熱伝導液体18を、注入ポンプ108によりエンクロージャ14の内部空間16の底部に送り込むことができる。バルブが開いた位置にあり注入ポンプ108が遮断された状態において、バルブ110は、熱伝導液体18が重力により対応支持部材24の不浸透性部材48の通路68を通ってバルブを通過して貯蔵部106へ流れることができるようにする。装置10の別のバルブ110は、搬送システム92の別の区分で同様の態様で流れを制御する。ただし、本発明の範囲を外れなければ、その他のタイプのバルブおよび他のバルブの実施形態も考えられる。
【0052】
操作の際、エンクロージャ14は、救急車の移動ベッドなどの概ね平坦な表面に置かれる。対応支持部材24は、対応支持部材の下面を移動ベッドの上に載置できるように十分に伸ばされる。必要であれば、カバー22が対応支持部材24から開放され、端部60の周囲でエンクロージャ14の後方端部パネル54へ向かって移動して、これにより、対応支持部材24の中央部が露出する。患者12は、対応支持部材24の中央部において、不浸透性部材48の上の浸透性層50の上に注意深く載置され、正確な患者の配置を確保するポジショナー56により位置決めされる(すなわち、患者12の顔が、顔の画像に位置を合わせられる。)。空気ポンプ30は、チューブ28を所望の圧力になるまで膨らませるように駆動され(図11)、これにより、チューブ28の内側面36が、これに並列された患者の身体部分に一致する。空気ポンプ30は、チューブ28を所望の圧力に維持するために使用中いつでも駆動できる。カバー22は、患者の身体の首から下の部分を覆うように配置される。カバー22のシール部62,64と対応支持部材24とは係合し、これにより、患者12がエンクロージャ14の中に封じ込まれる。
【0053】
制御ユニット88を使用する際、搬送システム92は、患者12の体温を選択された温度に調節するために、熱伝導液体18または熱伝導ガスのいずれかを搬送するように作動する。例えば、心停止を患った患者12の体温は、約37℃(98.6°F)から約28℃(82.4°F)へ迅速に低下させることが望ましい。この例では、およそ16リットル(4.2ガロン)の熱伝導液体18(例えば、水)と、およそ4.5キログラム(10ポンド)の相変化物質(例えば、氷)とが貯蔵部106に加えられる。予め冷却された熱伝導液体18を用いることが望ましい。約0.5℃(32.9°F)と約4℃(39.2°F)との間に冷却された熱伝導液体18は、2つの注入ポンプ108により、通路68と注入口72を通ってエンクロージャ14の上部と底部に送り込まれ、これにより、約5リットル/分(1.3ガロン/分)の流速で患者の身体に直接接触する。患者の身体の下側の熱伝導液体18は、浸透性層50によって作られた通路を通って流れる。エンクロージャ14の上部と底部の両方に同時に熱伝導液体18を送り込むことができることに加えて、注入ポンプ108は、エンクロージャ14の上部のみ又はエンクロージャ14の底部のみに熱伝導液体18を送り込むように選択的に操作できる。
【0054】
熱伝導液体18は、対応支持部材24内の患者12により作られるくぼみ58に蓄積し、胴体を受ける対応支持部材の領域において、頭部、脚、足を受ける対応支持部材の領域よりも多くの熱伝導液体が蓄積する。熱伝導液体は、排出口80と連通する排水チューブ82により作られた放水路よりも高い高さに達するまで、エンクロージャ14の内部空間16に蓄積される。排水チューブ82は、熱伝導液体18を、約14センチメートル(5.5インチ)の目標深さに維持し、このことが、エンクロージャ14の排出口80において約1.4キロパスカル(0.2psi)の正のゲージ圧を作り出す。排水チューブ82により作られた放水路よりも高い高さに達した全ての熱伝導液体18は、注入ポンプ108により、エンクロージャ14の内部空間16に送り込まれる熱伝導液体の流速と比べて同じか又は速い流速でエンクロージャから排出される。
【0055】
エンクロージャ14から排出された熱伝導液体18は、例えば粒子状物質、ウイルス、バクテリアなどの汚染物を患者12から取り除くために、ろ過システム112を通過する。ろ過された熱伝導液体18は貯蔵部106に戻され、貯蔵部106で、熱伝導液体は、エンクロージャ14の内部空間16へ再循環される前に、相変化物質により再び冷却される。熱伝導液体18は、患者の体温が選択された温度に達するか又は近づくまで、連続的にエンクロージャ14を通って再循環される。患者12の体温は、熱伝導液体18が停止した後でも僅かに低下し、結果として、過剰な体温の変化(すなわち、選択された温度よりも低く患者の体温を低下させること)を防止するため、選択された温度に達する前に、熱伝導液体の流れを停止することが望ましい。この時点で、注入ポンプ108は遮断され、熱伝導液体18は重力によりエンクロージャ14から排出される。いったん注入ポンプ108が遮断されると、バルブ110は、対応支持部材24の通路68と連絡する注入口72を通ってエンクロージャ14の内部空間16から熱伝導液体18を排出できるように調節される(図13)。空気ポンプ30は、エンクロージャ14から熱伝導液体18をより迅速に排出するようにエンクロージャ14の上部へ空気を送り込むために使用できる。さらに、エンクロージャ14の底部に連通する注入ポンプ108は、熱伝導液体18をエンクロージャの内部空間16から貯蔵部106へ送り込む排出ポンプとして使用できる。
【0056】
患者12の体温は、空気ポンプ30を作動させて、空気ポンプにより直列の熱交換器118を通して送り込む空気を導くことで、選択された体温に維持できる(図14)。冷却された熱交換ガス116は、患者の身体に直接接触させるためにエンクロージャ14の注入口72を通して通路68へ流れるように導かれる。患者の体温は、熱伝導ガス116を使用することで、最大で12〜24時間までの所望の時間だけ維持できると考えられる。熱伝導ガス116は、患者の首および/または排出口80の近くのエンクロージャの非シール部を通って、エンクロージャ14の内部空間16から排出される。
【0057】
熱伝導ガス116は、熱伝導液体18よりもゆっくりとした患者12の体温変化を促すため、または、震えを抑えるために使用できる。加えて、熱伝導ガス116は、熱伝導ガス116は、救急車または熱伝導液体18の貯蔵部106から離れた場所で使用できる。このことは、患者の処置を遅らせないように重い熱伝導液体18と相変化物質を患者の所へ搬送する必要がある場合、ユーザーを安心させる。熱伝導液体18は、患者を適切な場所(例えば、救急車、病院)へ搬送した後、エンクロージャ14の内部空間16へ導入できる。
【0058】
当然ながら、上述の操作を行う間、透明なカバー22を通して患者12の身体を視覚的に観察し続けることができる。さらなる医療処置が必要な場合、患者の身体を露出するために、搬送システム92を操作して、カバー22を引き戻す(または完全に取り外す)ことができる。搬送システム92は、熱伝導液体18または熱伝導ガス116を患者の身体の下側に導き続ける。液体搬送システム100を使用する場合、熱伝導液体18が装置10からあふれることを防止するために、熱伝導液体18をカバー22の通路68へ導く注入ポンプ108は、カバー22が引き戻される前に遮断できる。さらに、装置の全ての操作は、医療の便宜を図るために救急車の中で行うことができ、これにより、後に続く全ての医療の治療を遅らせないようにすることができる。
【0059】
図15と図16は、対応支持部材24のその他の実施形態を示す。図15に示す対応支持部材24は、概略長方形の空気入りマットレス120を含む。空気入りマットレス120は、部分的にのみ膨らまされており、これにより、マットレス上に配置された患者(図示せず)の体重によってくぼみを形成できる。上記と実質的に同じ構造の長方形の不浸透性部材122が、マットレス120を覆い、マットレス120に貼り付けられている。綿層123は不浸透性部材122の上に配置されている。綿層123の一部は、下側にある不浸透性部材122が見えるように切り取られて示されている。排出口124は、くぼみ121と、熱伝導液体をエンクロージャの内部空間から排出するためにマットレス120の後方端部パネル126を通り抜けて伸びる導管とに連通する。
【0060】
図16に示す実施形態では、対応支持部材24は、膨らませることができる長円のチューブ128を含み、長円チューブ128は、支持部材の外周全体をひとまわりして伸びている。実質的に上記と同じ構造を有する不浸透性部材130が、長円チューブ128の中心部に配置され、全周に亘って長円チューブの下面へ接着され、これにより、患者の身体を受けるための防水のくぼみ132が形成されている。
【0061】
以上のことから、本発明のいくつかの目的が達せられ、他の有利な結果が達成されることが分かる。
【0062】
本発明の構成要素またはその好ましい実施形態の紹介に際して、「一つの」、「一つの」、「その」および「上記の」という用語は、一つまたはそれ以上の構成要素があることを意味する意図である。「含む」、「包含する」および「有する」という用語は、包括的であり、列挙された要素以外の追加の要素もあり得ることを意味する意図である。
【0063】
本発明の範囲から外れない限り、上記の内容に種々の変更を加えることができるため、上記の説明に含まれ添付の図面に示される全ての事象は例示として解釈され限定する意味で解釈されない、ということを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】移動ベッドの上に載置された状態の本発明に係る患者の体温を変更するための装置の斜視図。
【図2】移動ベッドから取り外された装置の平面図。
【図3】図2の3−3線における装置の断面図。
【図4】装置の分解斜視図。
【図5】カバーが引き戻され、浸透性層を部分的に切り取ることにより通路が見えるようにした装置の平面図。
【図6】患者を除いた図2の6−6線の断面図。
【図7】図6に示すカバーに形成された通路の拡大図。
【図8】図7に示す対応支持部材の通路の拡大図。
【図9】流量制限器を示す装置の端面図。
【図10】本発明に係る装置の制御システムの概略図。
【図11】対応支持部材に空気を送り込む空気ポンプを示す本発明の装置の概略図。
【図12】底部と上部から装置の内部空間へ熱伝導液体を送り込む2つの注入ポンプを示す本発明の装置の概略図。
【図13】装置の内部空間から排出されている熱伝導液体を示す本発明の装置の概略図。
【図14】装置の内部空間へ熱伝導ガスを送り込む空気ポンプを示す本発明の装置の概略図。
【図15】対応支持部材の別の実施形態を示すためにカバーを引き戻した装置の平面図。
【図16】対応支持部材の更に別の実施形態を示すためにカバーを引き戻した装置の平面図。
【符号の説明】
【0065】
10:装置、12:患者、14:エンクロージャ、18:熱伝導液体、22:カバー、24:対応支持部材、26:シート状部材、28:チューブ、32:チューブの上面、34:チューブの底面、36:チューブの内側面、38:チューブの外側面、40:収納部、42:頭部ポケット、44:領域、46:足ポケット、48:不浸透性部材、50:浸透性層、52:前方端部パネル、54:後方端部パネル、56:ポジショナー、58:くぼみ、60:端部、62:シール部、64:シール部、66:ボディ対向コンポーネント、67:外側コンポーネント、68:通路、70:開状態保持材、72:注入口、80:排出口、82:逆U字形チューブ、84:通気孔、86:制御システム、88:制御ユニット、90:ユーザーインターフェース、92:搬送システム、94:ディスプレイ、96:制御部、98:温度センサ、100:液体搬送システム、102:空気搬送システム、104:液体熱交換器、106:貯蔵部、108:注入ポンプ、110:バルブ、112:ろ過システム、114:ポンプヘッド、116:熱伝導ガス、118:空気熱交換器、120:マットレス、122:不浸透性部材、124:排出口、126:後方端部パネル、128:チューブ、130:不浸透性部材、132:くぼみ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略、患者の体温を調節する医療装置に関し、特に、低体温を誘発するように患者の体温を有効且つ迅速に調節できる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
急性心停止は、重要な公衆衛生上の問題である。米国では毎年約350,000人がその病気に罹っており、全生存率は約5%である。心肺機能蘇生法(CPR)・薬・換気器具・自動式体外式除細動器を含む、現在利用可能な最先端の治療を即座に利用した場合でも、25%の生存率が予想し得る最善のシナリオである。この状況に対処するために、新たな治療が求められている。
【0003】
偶発性低体温後又心停止後に回復した多くの事例が報告されている。その観察結果から、研究者たちは、循環停止による悪影響を減らすために、低体温治療が有効な手段であると考えるに至った。適度な全身低体温治療(約3〜5℃(5.4〜9.0°F))が脳を含む重要な器官の損傷を軽減し得ることを、種々の研究によって示されている。心停止中及び心停止後に起こる低体温がその有効性を示している。心肺バイパスを使用することも、その目的を迅速に達成するうえで有効であった。動脈系へ冷却された流体を直接流すことも首尾よく利用されている。しかしながら、これら両方の侵襲的手段は、大径の血管内カテーテルを必要とし、患者体内へ殺菌した溶液を迅速に入れる必要がある。そのような侵襲的な方法は、病院外の緊急事態に対処するうえで明らかに不利である。
【0004】
十分に効果的であり携帯可能であれば、非侵襲的な冷却が好ましい。頭部のみを直接冷却すれば様々な結果を生じる。しかしながら、非侵襲的な処置により蘇生後に全身を約33℃(91.4°F)まで冷却することが驚くほど有効であると、最近の臨床研究で示されている。冷たいジェルおよびアイスパックの使用により、1時間当たりおよそ0.9℃冷却され、結果的に、神経学的に無傷な生存状態でほぼ100%の改善が見られた(バーナードなど、Treatment of Comatose Survivors of Out−of−Hospital Cardiac Arrest with Induced Hypothermia,346 NEW ENG.J.MED.557−563(2002))。別の研究では、冷気を用いて1時間当たり約0.25℃(0.45°F)の割合で患者を冷却できることが分かり、これにより同じ評価項目について40%の改善が見られた(ステルツなど、Mild Therapeutic Hypothermia to improve the Neurologic Outcome after Cardiac Arrest,346 New ENG.J.MED.549−556(2002))。更に別の研究では、水を充填した冷却ブラケットとアイスパックを組み合わせることによって、1時間当たり0.8℃(1.4°F)の割合で冷却できた(フェルベルグなど、Hypothermia After Cardiac Arrest − Feasibility and Safty of an External Cooling Protocol,104 CIRCULATION 1799−1804(2001))。これらの研究で示された冷却率を向上することが、より高い確率で患者を救命できることにつながるものと考えられる。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、患者の体温を調節する装置に関する。上記装置は、概略、患者の体の少なくとも一部を覆うカバーと、対応支持部材とを含む。カバーと対応支持部材とは、患者の体部分を収容するためのエンクロージャを協働して形成し、患者身体と上記熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために上記エンクロージャに収容された患者の体部分に直接接触するように熱伝導液体を導くように構成されている。対応支持部材は、下に敷かれ、患者の体部分の形状に概ね一致して、熱伝導液体を蓄積するために、患者の身体部分の近傍にくぼみを形成する。
【0006】
別の形態では、装置は、概略、患者の少なくとも胴体と脚を収容するエンクロージャを含む。エンクロージャは、患者の体の形状と大きさに一致させることができ、これにより、様々な体型と大きさの患者に適応できる。液体搬送システムは、患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するためにエンクロージャに収容された胴体の少なくとも一部に直接接触するように熱伝導液体をエンクロージャに運ぶことができる。
【0007】
さらに別の形態では、装置は、概略、患者の体の少なくとも一部を収容する内部空間が形成され、内部空間に収容された患者の身体部分に直接接触するように熱伝導液体を導くように構成されたエンクロージャを含む。エンクロージャは、少なくとも一部が柔軟な素材で形成される。エンクロージャ内の流体の通路は、熱伝導液体をエンクロージャへ導くように構成され且つ配置されている。流体の通路の少なくとも一部は、柔軟な素材により形成されている。開状態保持材は、通路を開いた状態に保持し、開状態保持材を通過して流体の通路を通る熱伝導液体の流れを許容するように、柔軟な素材により形成された流体の通路の部分に収容されている。
【0008】
さらに別の形態では、装置は、概略、患者の身体部分を収容するための内部空間が形成されたエンクロージャを含む。少なくとも1つの注入口が、患者の身体部分の上側に流れるように熱伝導液体を上記内部空間に導くように、患者身体の上記部分の上方に配置され、少なくとも1つの注入口が、患者の身体部分の下側に流れるように熱伝導液体を上記内部空間に導くように、上記内部空間に収容された患者身体の上記部分の下方に配置されている。
【0009】
また別の形態では、装置は、概略、患者身体の少なくとも一部を中に収容するためのエンクロージャを含む。エンクロージャの注入口は、患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために、エンクロージャに収容された患者身体の上記部分に直接接触するように熱伝導液体がエンクロージャへ流れることができるようにする。エンクロージャの排出口は、熱伝導液体をエンクロージャから排出できるようにする。流量制限器は、エンクロージャ内の熱伝導液体を所定量に維持するように排出口と連通する。
【0010】
また更に別の形態では、システムは、患者の体温を調節するために、液体冷却モードと空気冷却モードとにおいて操作可能である。システムは、概略、患者身体の少なくとも一部を中に収容するための内部空間が形成されたエンクロージャを含む。液体搬送システムは、液体の温度を制御し、液体冷却モードにおいて、エンクロージャに収容された患者の身体部分に直接接触するように液体をエンクロージャへ運ぶ。空気冷却モードは、空気の温度を制御し、空気冷却モードにおいて、エンクロージャに収容された患者の身体部分に直接接触するように空気をエンクロージャへ運ぶ。
【0011】
さらに別の形態では、装置は、概略、患者身体の少なくとも一部を中に収容するための内部空間が形成されたエンクロージャを含む。エンクロージャは、エンクロージャの内部空間に収容された患者身体の上記部分に概ね接触する。エンクロージャはまた、患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するためにエンクロージャに収容された患者身体の上記部分に熱伝導流体が直接接触できるようにしてある。ろ過システムは、熱伝導流体をろ過する。
【0012】
また更に別の形態では、装置は、概略、患者身体の少なくとも一部を中に収容するための内部空間が形成されたエンクロージャを含む。エンクロージャは、患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために、内部空間に収容された患者身体の上記部分に熱伝導液体が直接接触できるようにしてある。エンクロージャは、エンクロージャに対して患者身体の一部を相対的に位置決めするように配置された目印を含む。
【0013】
また別の形態では、本発明は、患者の体温を調節するための方法に関する。方法は、概略、患者身体の少なくとも一部をエンクロージャの内部空間の中に収めることを含む。エンクロージャは、熱伝導液体を内部空間に収容するための注入口と、熱伝導液体がエンクロージャから排出されるようにエンクロージャの内部空間と連通する排出口とを有する。加えて、方法は、熱伝導液体を、患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために直接接触して患者身体の上に流れるようにエンクロージャの注入口を通って内部空間へ導き、エンクロージャの排出口へ導くことを含む。方法は、患者身体と熱伝導ガスとの間の熱伝導を促進するために、直接接触して患者身体の上に流れるように熱伝導ガスを内部空間へ導くことを含む。
【0014】
更に別の形態では、方法は、概略、患者身体の一部を支持し実質的に下に敷かれるように、空気入りの支持部材に流体を満たすことを含む。加えて、方法は、空気入りの支持部材の上に横たわる位置の内部空間内に患者身体の少なくとも一部を収めることを含む。また、方法は、患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために、直接触して患者身体の上に流れるように熱伝導液体をエンクロージャの内部空間へ導くことを含む。
【0015】
また別の形態では、方法は、概略、患者身体の少なくとも一部をエンクロージャの内部空間内に収めることを含む。エンクロージャは、熱伝導液体を内部空間に収容するための注入口と、熱伝導液体をエンクロージャから排出するためにエンクロージャの内部空間と連通する排出口とを有する。加えて、方法は、熱伝導液体を、患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために直接接触して患者身体の上に流れるようにエンクロージャの注入口を通って内部空間へ未IT引き、エンクロージャの排出口へ導くことを含む。また、方法は、エンクロージャ内の熱伝導液体を所定高さに維持することを含む。
【0016】
その他の目的および特徴は、一部は明白であり、一部は以下に指摘する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図面、特に図1および図2を参照すると、符号10は概略、患者12の体温を調節する装置を示している。装置10は概略、符号14で示すエンクロージャ(筐体、囲い)を含み、エンクロージャ14は、患者の身体の少なくとも一部を収容するための内部空間16(図5)を形成している。患者の身体の任意の部分(全身を含む。)がエンクロージャ14の内側に配置され得ることは当然であるが、典型的な目的として、エンクロージャ14の内部空間16に収容された患者の身体の図示部分は、胴体、腕および脚を含む首から下の部分である。様々な体型および大きさの患者に対応するために、エンクロージャ14は、その内部に収容された患者の身体の形状に概ね合致するようにしてある。例えば、エンクロージャ14は、1つの実施形態では、100人の成人男性の大きさのうち5番目と95番目との間の大きさの人にとって適当なものである。また、もっと小さな人(例えば、赤ちゃん、子供、小柄な成人)、または、もっと大きな人を収容するように適合するエンクロージャも考えられる。
【0018】
また、エンクロージャ14は、水、生理食塩水またはその他の適当な液体といった熱伝導液体18(図12)、あるいは熱伝導ガス116(図14)が患者の身体に直接接触するように内部空間16に流入可能なようにしてあり、これにより、患者12と熱伝導流体との間の熱伝導が促進される。患者12の体温を上昇させるために、熱伝導流体は、患者の身体の該当部分の体温よりも高温で内部空間16に導かれる。例えば、熱伝導流体の温度は、約43℃(109°F)〜約47℃(117°F)の範囲であり、例えば約45℃(113°F)である。このようにエンクロージャを温めることの1つの目的は、意図的でない低体温症を患う患者12を温めることである。
【0019】
患者12の体温を低下させるためには、熱伝導流体が、エンクロージャの内部空間16に収容された患者の身体部分の温度よりも低温でエンクロージャ14に導かれ、これにより、流体が患者の身体部分を冷却する。例えば、熱伝導流体の温度は、約0.5℃(34°F)〜約4℃(36°F)の範囲である。そのような温度でエンクロージャ14に導入された熱伝導流体は、患者の皮膚へのいかなる悪影響をも最小限に抑えつつ、低体温を促すのに十分な速度で身体を冷却する。エンクロージャ14の内部空間16に収容された患者12の体温を調節するために、上記の温度以外の温度を使用できることは当然である。
【0020】
上述のように、低体温は、心停止により起こる、脳を含む重要な器官の損傷を最小限に抑えるか、または防止するために利用できる。器官の損傷は、一般的には、心停止の後すぐに起こり得ることがよく知られている。結果として、器官の損傷を最小限に抑えるか又は防止するために迅速且つ有効に低体温を促すことが、しばしば被害者にとって最も有効なことになる。心停止の犠牲者の多くは、初期対応者(すなわち、警察官、消防士、救命士)により最初に処置されるため、1つの実施形態では、装置10は、医療施設から離れた場所での使用を目的として携帯可能となっている。さらに、エンクロージャ内に載置された患者を医療施設へ通常の方法で容易に搬送できるようにするために、エンクロージャ14は、ストレッチャー、例えば救急車または応急の移動ベッド(全体符号20で示す)の上に載置可能な大きさと形状を有する(図1)。したがって、エンクロージャ14は、標準的な救急車または応急の移動ベッド20の寸法のおおよその範囲、すなわち、約66センチメートル(26インチ)と約76センチメートル(30インチ)との間の幅と、203センチメートル(80インチ)と210センチメートル(83インチ)との間の長さとを有する。エンクロージャ14は、本発明の範囲から離れなければ別の形態を有してもよい。また、エンクロージャ14は、他の治療に利用したり、他の医療処置(例えば、温熱療法、外傷、脳卒中、心臓麻痺、抗ガン治療の強化、手術の補助手段、さらには一般的な体温管理)の用途に利用したりすることも考えられる。さらに、患者12は通常はヒトであるが、装置10は、他の動物用に使用することも可能である。
【0021】
患者12の低体温を促すために必要な時間の合計は、エンクロージャ14の内部空間16に収容された患者の身体部分と、熱伝導流体の温度と、熱伝導流体が患者の身体部分に接触する時間の合計とを含む、多数の要因に依存する。結果として、1つの実施形態では、エンクロージャ14は、患者の身体の首から下の部分を取り囲むようになっており、これによって、熱伝導を受ける患者の表面領域全体の大部分に熱伝導流体が供給される。図3に示すように、エンクロージャ14は、患者12の首から下の部分を覆うための、符号22で示されるカバーと、患者12の全身の下に敷くための、符号24で示される対応支持部材とを含む。
【0022】
図2と図3に示すように、カバー22は、カバー22により覆われた患者12の体型に自重により概ね一致するようにしてある柔軟なシート状部材26を含む。シート状部材26は、好ましくは、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、ポリウレタン等の透明な素材からなり、これにより、エンクロージャの中に収容された患者の身体を見えるようになる。シート状部材(図示せず)は、不透明素材で構成したり、透明な部分を不透明な残りの部分とともに有したりしてもよいことは当然である。その他の実施形態(図示せず)では、カバー22は、さらに、シート状部材26と患者の身体との間に配置される浸透性の層を有する。浸透性の層、例えば綿または連続気泡構造の発泡体などは、患者の身体から間隔を空けた位置でシート状部材26を支持し、これにより、熱伝導流体がシート状部材と患者の身体との間を通ることを可能にするための流体の通路が提供される。
【0023】
対応支持部材24は、空気の入った支持部材であり、カバー22と同様、身体が支持部材に載置されているとき患者の体型に概ね一致する。さらに、対応支持部材24は、患者の真下に熱伝導流体を流れやすくするように患者の真下の圧力の集中を最小限に抑え、患者の皮膚に生じる床ずれの可能性を最小限に抑える。対応支持部材24は、図4に示すように、2つの通常は細長い、ガス入りチューブ28を含み、チューブ28は、支持部材の右側と左側に配置されている。図11に示すように、ガス入りチューブ28は、空気ポンプ30を用いることにより(または手作業により)選択的に膨らませることができ、チューブから空気を流出させることにより収縮させることができる。図6を参照すると、各チューブ28は、上面32と底面34と内側面36と外側面38とを有する。内側面36は、概ね患者12の側部の外形に一致する形状となっている。したがって、チューブ28は、膨らんでいるとき、協働して支持部材24の中央部(すなわち、ガス入りチューブ28の間)において患者の身体を収容するための凹所40を形成する(図4)。さらに具体的に、チューブ28は、膨らんでいるとき患者12の両方の側部に概ね一致し、これにより、患者の頭部と首を収容するための大きさと形状を備えたポケット42と、患者の胴体を収容するためのより広い領域44と、患者の脚と足を収容するためのテーパー状のポケット46とが形成される。ポケット42は、患者12の頭部と首を収容するようになっており、前向きの方向において首を支持するように構成され、これにより、患者の呼吸の通路(すなわち、鼻と口)がエンクロージャ14の内部空間16内の熱伝導流体に接触しないように維持される。ポケット42は、患者の頭部が側方へ動くことを防止する。チューブ28は、(支持部材の外周を形成する)対向外側面38が、硬質樹脂などの比較的硬質の素材によって捕らえられ、これにより、チューブの外側への膨張が制限される。対応支持部材24は、異なる形状と大きさを有してもよく、ここに記載された方法と異なる方法で患者の身体に一致するようにしてもよいことは当然である。
【0024】
図4と図6を参照すると、液体不浸透性のシート状部材48は、チューブ28の概ね対向部間に伸び、浸透性の層50がシート状部材を覆っている。不浸透性部材48は、不浸透性部材がエンクロージャ14の頭部ポケット42からテーパー状の足ポケット46へ傾斜するように、チューブ28に取り付けられている。十分な厚みのポリエステル綿または連続気泡構造の発泡体などの浸透性の層50は、熱伝導流体がエンクロージャの至るところにおいて皮膚全体にわたって流れるように患者の身体部分に接触するように通過することを可能にする一方、不浸透性部材48は、熱伝導流体をエンクロージャ14の内部に保持する。不浸透性部材48は、PVC、ポリエチレン、ポリウレタンなどの透明素材を含む。当然ながら、不浸透性部材48は、その全体を透明素材で構成したり、不透明な残りの部分とともに透明な部分を有していたりしてもよい。また、当然ながら、不浸透性部材48は、不浸透性部材が概ね水平な面に位置したり、足ポケット46から頭部ポケット42へ傾斜したりするように取り付けるようにしてもよい。
【0025】
再び図4を参照すると、前方端部パネル52と後方端部パネル54がチューブ28間に伸び、前方および後方の範囲を画定している。端部パネル52,54は、半硬質樹脂、樹脂発泡体、弾塑性シート、膨張可能な素材、または強制的に膨らませることができる素材(例えば、お互いに固着された一連の膨らませることができるチューブ)などの様々な素材で構成できる。
【0026】
対応支持部材24は、さらに、ヘッドレスト、前面ストラップ、または支持部材にプリントされた目印などのポジショナー56(図5)を含み、ポジショナー56は、対応支持部材24上において患者12をセットする適正な位置をユーザーに示す。目印は、文字列(例えば、文書による指示)、身体または身体部分の外形、顔画像などの画像であってもよい。ポジショナー56は、エンクロージャの上または中の任意の位置に配置してもよい。
【0027】
図3に示すように、対応支持部材24は、さらに、選択的に膨らませることができるヘッドレスト55を含み、ヘッドレスト55は、患者12をどこに位置させるかの指示をユーザーに提供するだけでなく、患者の呼吸の通路(すなわち鼻と口)を、エンクロージャ14の内部空間16内の熱伝導性流体と間隔を空けた関係に維持する。さらに、ヘッドレスト55は患者の頭部を後方へ曲げ、これにより、患者の呼吸の通路が広がる。このようにして、ヘッドレスト55は、心肺機能蘇生を実行する際の1つのステップであるマウス・ツー・マウス呼吸法に適した位置に患者の頭部を位置させる。その他の実施形態では(図示せず)、ヘッドレスト55は、患者の頭部を休息させるための枕を提供する。結果的に、患者の頭部は前方へ曲げられ、患者が呼吸するのを助ける呼吸チューブを使用する必要がある。結果的に、患者の頭部は、概ね水平に配置されるか、前方に曲げられるか、または後方に曲げられ、これにより、特定の患者12に最適な位置を選択する選択肢をユーザーに提供する。当然ながら、ヘッドレスト55は、膨らませることができない構成要素で形成してもよい。また、当然ながら、ヘッドレスト55は、対応支持部材24と一体であっても、別々の構成要素として形成してもよい。
【0028】
対応支持部材24の端部パネル52,54、不浸透性部材48およびガス入りチューブ28は、患者12の全身を収容する対応支持部材の中央部において、符号58で全体的に示される防水性のくぼみを形成するように、トータルで構成されている。患者12は、チューブ28が収縮した状態で不浸透性部材48の上に仰向けの状態で置かれる。チューブ28は、チューブの内面壁36を、そこに並列された患者の身体部分に一致させるように膨らまされる。チューブ28は、熱伝導流体18が横方向に漏れるのを防ぐための縦方向に伸びる壁を提供する。端部パネル52,54は、熱伝導流体18が縦方向に漏れるのを防止し、不浸透性部材は、熱伝導流体が下方へ漏れるのを防止する。当然ながら、不浸透性部材は、チューブおよび端部パネルの上方へ拡張されるようにしてもよく、これにより、あらゆる方向の漏れを防止できる。
【0029】
結果的に、くぼみ58は、エンクロージャ14の内部空間16に収容された患者の身体に概ね一致するような大きさと間隔を有する。したがって、患者12の体温を有効に変化させるのに必要な熱伝導流体の量も、患者の大きさと体型に依存する。例えば、同じ熱伝導の速度を達成するためには、より大きな患者は、より小さな患者よりも多くの熱伝導流体を必要とする。さらに、エンクロージャ14の内部空間16内の熱伝導性流体は、比較的薄い層において、くぼみ58に配置された患者の身体に近接または接触するように維持される。結果的に、患者12の体温を有効に変化させるために必要な熱伝導流体18の総量は、最小限に抑えることができる。このことは、重くなり得る大量の熱伝導流体を自分で運ぶ必要がある離れた地域でますます重要となる。例えば、約12リットルの熱伝導性流体が約12キログラム(27ポンド)の重さであるところ、約16リットル(4.2ガロン)の熱伝導流体18は16キログラム(35ポンド)の重さとなる。
【0030】
くぼみ58は、熱伝導性流体18を患者の身体の下側および付近に蓄積できるようにすることと、熱伝導流体が患者12の真下の位置から患者の身体に届けられるのを可能にすることとにより、患者の身体の下面と側面との間の熱伝導を可能にする。くぼみ58の深さDは、エンクロージャの縦方向の軸に沿って異なる(図3)。患者の体重の大部分が胴体の中に含まれるため、くぼみ58は、患者12の胴体を収容する領域において、頭部、脚および足を収容する領域よりも深くなっている。胴体を収容する領域において、くぼみ58の深さDは、約2.5センチメートル(1インチ)と約20センチメートル(8インチ)との間であり、好ましくは、約12.7センチメートル(5インチ)と約15センチメートル(6インチ)との間である。これらの深さは、100人の成人男性の胸高のうち5番目と95番目との間の高さの約2分の1に概ね対応している。このくぼみ58の深さの相違により、熱伝導の影響を受けやすい身体領域である患者の胴体の周辺に、患者12の頭部、脚および足よりも多くの熱伝導流体を蓄積できる。患者の頭部を収容する領域において熱伝導流体18の深さを管理する理由は明白である。例えば、エンクロージャ14が比較的小さな又は比較的大きな成人、子供あるいは赤ちゃんに使用するために設計された場合など、くぼみ58の深さは、本発明の範囲から外れなければ、概ね一定の深さDであったり、上記と異なる深さであったりしてもよいことは当然である。
【0031】
図2と図5に描かれているように、カバー22と対応支持部材24は、止水された状態で互いに係合するようになっている。カバー22は、支持部材24の縁60に沿って支持部材にヒンジされており、カバーと支持部材が取り付けられた状態を維持すると共に使用に際して相互に適正に整列されることが保証されている。別の実施形態では(図示せず)、シール部62,64が端部60に沿って連結され、これにより、カバー22が対応支持部材24から選択的に除去される。図示するように、カバー22は、2つの第1シール部62を含み、支持部材24は、2つの第2シール部64を含む。シール部62,64は、例えば、米国、ニューヨーク州、オレンジバーグにあるITW社のMiniGrip/ZIP−PAK(商標)により製造されたFLXIGRIP(商標)7など、選択的に且つ止水性をもってお互いに係合できるスライドファスナー部材を含む。別の実施形態では(図示せず)、シール部62,64は、面ファスナーシステムを含む。例えば、フック素材の細長部材が対応支持部材24に接着され、ループ素材の細長部材が対応支持部材上に配置されたフック素材に係合するようにカバー22に接着されている。
【0032】
カバーと対応支持部材の両方のシール部62,64が、支持部材の両側面の上で且つ支持部材の両側面よりも横方向の内側に位置するように、カバー22は、支持部材24よりも少し小さい。結果的に、シール部62,64は、エンクロージャ14の内部空間16に収容された患者12の中心線から離れて配置され、これにより、シール部から支障を受けることなく患者に心肺機能蘇生法を施すことができる。さらに、シール部62,64は、概ね水平に維持されるエンクロージャの部分に配置されている。結果的に、シール部62,64が湾曲するか又は別の態様で変形する可能性を最小限に抑えることができる。シール部62,64の湾曲および変形は、防水または開閉の性能を損なう恐れがある。さらに、シール部62,64は、対応支持部材24のくぼみ58の中で熱伝導流体18が蓄積する深さDよりも上の位置に配置され、これにより、シール部への要求が低減される(すなわち、シール部は水密シールを形成しなくてもよい。)。最後に、シール部62,64は、ユーザーにとって都合のよい位置に配置され、これにより、ユーザーが患者12に容易に接近できる。
【0033】
図6〜図8を参照すると、カバー22の不浸透性部材26と対応支持部材24の不浸透性部材48は両者とも、互いに対面して係合する柔軟なシート状のボディ対向コンポーネント66と柔軟なシート状の外側コンポーネント67とを含む。ボディ対向コンポーネント66および外側コンポーネント67は、液体不浸透性を有し、それらの間に熱伝導流体用の通路68を少なくとも1つ形成するように、それらの対向面に沿って互いに接合されている(図2と図5)。追加の原料を必要とすることなく十分な強度を供給するため、通路68を形成するための継目69に沿ったコンポーネントのシールには熱融着が用いられる。また、例えば接着剤の使用など、通路68を形成するか又はコンポーネント66,67を互いにシールする別の方法も、本発明の範囲内で考えられる。通路68は、カバー22の長さとおよそ等しい長さ、およそ25mmの幅、およそ3mmの高さを有する。当然ながら、通路68の上記寸法は典型例にすぎず、通路を異なる寸法で形成することができる。
【0034】
通路68は、患者の身体の表面領域の大部分の上に流体を分配するように構成されている。図2と図5に示すように、通路68は、カバー22の不浸透性部材26と対応支持部材24の不浸透性部材48とのそれぞれにおいて、エンクロージャの概ね縦方向に伸びる3つの通路を含む。したがって、合計6つの通路68のうち3つの通路が、患者の身体の上に並べられ、他の3つの通路が患者の身体の真下に並べられている。少なくとも2つの通路68は、患者の身体の中心線からオフセットした位置で患者の身体に係わるように配置されている。この特徴は、胸部圧迫が概ね患者の中心線に沿って起こるため、患者12に心肺機能蘇生法が施される場所で特に有益である。患者12がエンクロージャ14に入れられて、通路68が患者の中心線にほぼ一致すると、胸部圧迫は、通路を通る熱伝導流体の流れを繰り返し遮り、これによりエンクロージャ14を通る流体の流れが減少する恐れがある。少なくとも一部の通路68が患者の中心線からオフセットしている場合、心肺機能蘇生法の措置の際に施される胸部圧迫は、エンクロージャ14を通る流体の流れをほとんど遮ることがない。他の実施形態に係る通路68も本発明の範囲内において考えられる。当然ながら、カバー22と対応支持部材24は、本発明の範囲から外れなければ、もっと多くの又はもっと少ない通路68を有してもよい。また、当然ながら、カバー22が対応支持部材24と異なる個数の通路を有してもよい。
【0035】
図8を参照すると、対応支持部材24の不浸透性部材48に形成された通路68は、開状態保持材(開けたままに維持する部材)70によりそれぞれ支持され、開状態保持材70は、通路を開いた状態に維持し、開状態保持材を過ぎて通路を通る熱伝導流体の流れを許容する。開状態保持材70は、例えば支持部材24の不浸透性部材48に形成される通路68の上に位置する患者の体重などの負荷にさらされているときでも、通路68が開いた状態を維持するのに必要な剛性を供給する。開状態保持材70は、例えば連続気泡構造の発泡体、粒子状物質(例えばポリスチレンビーズ、綿、不織布材料、またはコイルバネ等の機械素子などの浸透性素材であってもよい。1つの適切な連続気泡構造の発泡体は、米国、ペンシルバニア州、エディスタウンにあるFoamexにより製造された概ね25個/インチの微細孔を有する網状のポリウレタン発泡体である。
【0036】
カバー22の不浸透性部材26に形成された通路68は、開状態保持材70を有さない(図7)。結果的に、通路68が熱伝導流体で満たされる前において、通路のシート状のボディ対向コンポーネント66とシート状の外側コンポーネント67が、お互いに対してぴったりと接する。いったん熱伝導流体が通路68の内側に流れると、コンポーネント間に流体が流れることができるように通路の断面積が増大する。当然ながら、対応支持部材24の不浸透性部材48に形成された通路68が、開状態保持材70を実質的に含まなくてもよく、カバー22に形成された通路68が、開状態保持材を有してもよい。
【0037】
図5と図6を参照すると、熱伝導流体が通路から、ボディ対向コンポーネント66と患者の身体部分との間に位置する浸透性の層50へ通過できるようにするために、カバー22および対応支持部材24の両者のボディ対向コンポーネント66は、通路68に対応して少なくとも1つの開口部72(すなわち注入口)を有する。各注入口72は、概ね円形であり、好ましくは約1ミリメートル(0.04インチ)の直径を有する。小径の注入口72は、熱伝導流体が通路68からエンクロージャ14へ流れるのを制限し、これにより、通路の全長が熱伝導流体で満たされる。したがって、熱伝導流体は、通路68を通って注入口72へ均一に分配される。カバー22の不浸透性部材26および対応支持部材24の不浸透性部材48のボディ対向コンポーネント66は、患者の身体の上側および下側にそれぞれ配置され、これにより、注入口72は患者の両側に配置される。図5に示すように、支持部材24の不浸透性部材48のボディ対向コンポーネント66は、複数の注入口72を有する。カバー22の不浸透性部材26のボディ対向コンポーネント66も、対応支持部材24の注入口72と同様に配置された複数の注入口(図示せず)を有する。
【0038】
エンクロージャ14の様々な部分に位置する注入口72の個数は、エンクロージャの至る所への熱伝導流体の分配を管理するように変更される。図5に示すように、注入口72は、エンクロージャ14の至る所に熱伝導流体を均一に分配するように配置される。しかし、当然ながら、注入口72は、熱伝導流体をエンクロージャ14へ不均一に分配するように配置してもよい。不均一な流れの分配を形成することにより、熱伝導流体を、熱伝導の影響を受けやすい患者の身体部分(すなわち、頭部、首、胴体)などの患者身体の選択された部分に導くことができる。
【0039】
図5に示すように、カバー22の不浸透性部材26および対応支持部材24の不浸透性部材48の通路68は、エンクロージャ14の底部付近に位置する後方端部パネル54を通り抜けて伸びている。結果的に、通路68を通して導かれる熱伝導流体は、エンクロージャ14の底部B(すなわち、下側3分の1の部分)から、中間部M(すなわち、中間部3分の1の部分)を通って、頂部T(すなわち、上側3分の1の部分)へ流れる。流れの分配を均一化するために、注入口72の個数は、通路68に沿ってエンクロージャ14の底部Bから離間する方向において徐々に増加する。したがって、中間部Mは底部Bよりも多数の注入口72を有し、頂部Tは中間部Mよりも多数の注入口72を有する。図示された実施形態では、各通路68は、底部Bにおいて4個の注入口72と連通し、中間部Mにおいて6個の注入口72と連通し、頂部Tにおいて16個の注入口72と連通している。他の形態では(図示せず)、注入口72の直径が通路68に沿ってエンクロージャの底部Bから離間する方向において変化する。この方法を利用することにより、比較的小さな直径を有する注入口72が底部Bの近くに配置され、徐々に大きくなる直径を有する注入口72が、中間部Mと頂部Tに配置される。当然ながら、注入口72の大きさ、形状および分配を異ならせることで、患者12の身体へ熱伝導流体を適正に分配することを可能にする注入口72の形態は多数ある。
【0040】
また、エンクロージャ14は、少なくとも1つの大径(例えば2.5センチメートル(1インチ))の排出口80を含み、排出口80は、熱伝導流体18をエンクロージャ14から排出するように、対応支持部材24の後方端部パネル54を通り抜けて伸びている(図3)。大径の排出口80は、2.5センチメートルよりも大きくしたり小さくしたりすることも考えられる。排出口80は、熱伝導液体18をエンクロージャ14の内部空間16に送られる速度と同じか又は大きい速度で重力によりエンクロージャ14から排出できるのに十分な大きさであり、これにより、エンクロージャからあふれることを防止できる。エンクロージャ14は、1つよりも多くの排出口80を有してもよく、排出口は、エンクロージャの別の場所に配置してもよく、排出口は、他の大きさ及び形状を有してもよい。
【0041】
図3に示すように、逆U字形チューブ82(広く「流量制限器」)は、エンクロージャ14の中の熱伝導流体18の深さDを予め決定されたレベルに維持するように、排出口80と連通し、これにより、患者12の付近および真下において対応支持部材24のくぼみ58に熱伝導流体が蓄積できる。逆U字形チューブ82は、予め決定された高さを有し、これにより、熱伝導流体がエンクロージャから排出される前に熱伝導流体が流れる放水路が作られる(図9参照)。例えば、熱伝導流体18が、エンクロージャ14内において約7センチメートル(2.8インチ)と約15センチメートル(6インチ)との間の深さに維持されていれば、チューブ82は、選択された高さの下側の熱伝導流体が排出口80を通ってエンクロージャから流れ出ることを防止する。チューブ82は、エンクロージャ14の排出口80で流体を所定の高さに維持するため、チューブ82は、エンクロージャの排出口で正のゲージ圧を作り、熱伝導流体の深さが7センチメートル(2.8インチ)と約15センチメートル(6インチ)との間であるエンクロージャでは、約0.69キロパスカル(1平方インチ当たり0.1ポンド)と約1.47キロパスカル(1平方パスカル当たり0.2ポンド)との間のゲージ圧となる。通気孔84が、空気の流れを壊すように配置され、これにより、熱伝導流体18のエンクロージャ14からのサイホン現象を防止できる。通気孔84は、サイホン現象を促すために選択的に閉じることができ、このことが、熱伝導流体18をエンクロージャ14から排出しているときに有益となる。エンクロージャ14内部に含まれる熱伝導流体18のレベルが見えるようにするために、チューブ82は透明であってもよい。当然ながら、本発明の範囲から外れない限り、流量制限器は、例えば調整バルブなど、逆U字形チューブ82に加えた機器であってもよい。
【0042】
図10を参照すると、装置10の操作を制御するために、装置はさらに、符号86で全体的に示される制御システムを含む。制御システム86は、ユーザーインターフェース90と搬送システム92とを有する制御ユニット88を含む。ユーザーインターフェース90は、制御システム86の特定のパラメータを視覚的に示すためのディスプレイ94と、システムのユーザーが特定のシステム機能を選択的に制御できるようにする制御部96と、患者の体温を測定するための1つ又は複数の温度センサ98とを含む。例えば、制御部96は、ユーザーが、患者の体温の設定値または目標値を入力できるようにしてもよい。ディスプレイ94は、例えば、とりわけ、患者12の実際の体温、熱伝導流体18の温度、および熱伝導流体の流速とともに、上記設定温度を表示できる。
【0043】
制御システム86の搬送システム92は、排出口80から排出された熱伝導流体18が注入口72を通ってエンクロージャの内部空間16へ流れるようにエンクロージャ14の通路68へ戻されるように導かれる、概ね閉ざされた連続的なフローシステム(図12)と、対応支持部材24のチューブ28を膨らませ(図11)、患者の身体に直接接触するようにエンクロージャ14へ流れる(図14)加圧空気を搬送する空気搬送システム102とを含む。図12と図13を参照すると、搬送システム92は、液体熱交換器104と、空気熱交換器118と、流体貯蔵部106と、3つのポンプ(2つの液体ポンプ108と1つの空気ポンプ30)と、複数のバルブ110と、ろ過システム112とを含む。当然ながら、搬送システム92は、本発明の範囲から外れない限り、これより少ないか又は多い構成部材を有してもよい。
【0044】
液体搬送システム100の熱交換器104は、熱伝導液体18の温度を、液体がエンクロージャ14に入る前に測定される注入口の温度Tiに変えるために用いられる。エンクロージャ14から排出される熱伝導液体18は、熱交換器104を通過後に上述のようにエンクロージャへ再導入される。熱交換器104は、排出された熱伝導液体18の温度を、液体がエンクロージャ14から出た後に測定される排出口の温度Toから、注入口の温度Tiに変える。これにより、同じ熱伝導液体18を、エンクロージャ14と液体搬送システム100との間で繰り返し使用できる。本発明の範囲内のものとして、様々なタイプの熱交換器104が考えられる。例えば、本発明の熱交換器104は、エンクロージャ14を通過して患者の体温により変えられた後の熱伝導液体18を注入口の温度Tiに戻すことを容易にするために、ペルチェ素子および/または相変化物質であってもよい。当然ながら、熱交換器104は、熱伝導液体18を温めるか又は冷却するために用いることができる。図示した実施形態では、熱交換器104は、貯蔵部の中で熱伝導液体18に直接接触させるために貯蔵部106に配置された、およそ10ポンドの相変化物質(例えば氷)である。ただし、より多くの又はより少ない相変化物質を使用したり、液体分配システムの他の場所に熱交換器104を配置したりしてもよい。
【0045】
貯蔵部106は、熱交換器104により促された温度で熱伝導液体18を保持し、注入ポンプ108がエンクロージャ14へ送り込む前の液体を貯蔵する。貯蔵部106は、熱伝導液体18がエンクロージャ14へポンプで送り込まれる前において、熱伝導液体18の温度を維持するのを助けるための断熱材(図示せず)を有してもよい。様々な大きさの貯蔵部を用いることができるが、図示した実施形態の貯蔵部106は、約16リットル(4.2ガロン)の容量を有する。当然ながら、異なる容量を有する貯蔵部を用いることもできる。例えば、子供用または赤ちゃん用の大きさのエンクロージャ14に用いる熱伝導液体18を保持する貯蔵部106は、比較的小さな容量を有してもよく、比較的大きなエンクロージャに用いる熱伝導流体を保持する貯蔵部は、比較的大きな容量を有してもよい。
【0046】
図12に示すように、2つのポンプは、熱伝導液体18を約5リットル/分(1.3ガロン/分)の流速で貯蔵部106からエンクロージャ14へ送り込むように、貯蔵部106とエンクロージャ14の通路68との間で連通する注入ポンプ108である。図示のように、一方の注入ポンプ108は、熱伝導液体18を患者の上に導くためにカバー22の不浸透性部材26の通路68に熱伝導液体を導き、他方の注入ポンプは、対応支持部材24の不浸透性部材48の通路に熱伝導液体を導き、これにより熱伝導液体を患者の下に導く。これらのポンプ108はそれぞれ、もう一方のポンプと独立して操作できる。したがって、熱伝導液体18を、患者の上、患者の下またはその両者(すなわち、患者の上および患者の下)に選択的に流れるように導くことができる。
【0047】
ポンプ108は、例えば米国、イリノイ州、ハントリーにあるB&D Pumps,Inc.により製造されたUGP−2000シリーズなどの歯車ポンプ、または、例えば米国、ニュージャージー州、パラマスにあるWatson−Marlow OEMにより製造された500シリーズprocess pumpなどの、モーター駆動付のローラタイプのポンプヘッドであってもよい。さらに、ポンプは、次の患者への二次汚染の可能性を最小限に抑えるために使い捨てできる取り外し可能なポンプヘッド114を有してもよい。ポンプヘッド114は、熱伝導液体18に接触するポンプ108の一部にすぎない。例えば、ポンプヘッド114は、比較的安価なプラスチック素材からなり、ボルトを用いてポンプ108に取り付けられる。したがって、使用後、ポンプヘッド114は、ポンプ108から取り外して、適正に廃棄することができ、他の患者に使用するために新しいポンプヘッドがポンプに取り付けられる。より高い流速または他の条件が必要であれば、本発明の範囲から逸脱しない限り、例えば高容量ギアポンプまたは渦巻きポンプなど、代わりのポンプを使用してもよい。
【0048】
ろ過システム112は、排出される際の熱伝導液体18をろ過するためにエンクロージャ14の排出口80と連通し、これにより、液体搬送システム100の他の部材(すなわち、注入ポンプ108および貯蔵部106)の汚染可能性を避けることができる。ろ過システム112は、特殊なフィルターと、活性炭と、バクテリアおよびウイルスを殺すための紫外線とを含む。その一例に係るろ過システムは、米国、ネバダ州、ミンデンにあるAqua Sun Internationalにより製造されたAqua Sun Model SWP−V2である。ろ過システム112は、本発明の範囲から逸脱しない限り、液体搬送システム112の中の任意の位置に配置でき、より高いか又はより低いろ過性能を有してもよい。
【0049】
空気搬送システム102は、例えば従来の往復式またはスクロール型のコンプレッサーなどの空気ポンプ30を含み、空気ポンプ30は、チューブ28を膨らませるために対応支持部材24と連通し(図11)、エンクロージャに空気(広く「熱伝導ガス」)を導くためにエンクロージャ14と連通する(図14)。熱伝導ガス116を供給する機能とは別に、空気ポンプ30は、対応支持部材24のチューブ28に空気を充填するようになっている。例えば、ポンプ30は、500リットル/分の速度で約2キロパスカル(0.3ポンド/平方インチ)の正のゲージ圧になるまで対応支持部材24のチューブ28に空気を充填する性能を有する。当然ながら、他のタイプのポンプを使用することもでき、空気ポンプは、上記と異なる流速を有してもよい。
【0050】
空気ポンプ30はまた、熱伝導の目的でエンクロージャへ空気を送り込むためにも用いられる(図14)。例えば直列の空気加熱器または空気冷却器などの空気熱交換器118は、空気の温度を、エンクロージャへ送り込まれる前の温度に変えるために用いることができる。したがって、温度が変えられた空気116は、エンクロージャに収容された患者の体温を調節するようにエンクロージャに導かれる。この特徴は、熱伝導液体18または相変化素材を利用できないときに特に有益である。さらに、温度が変えられた空気116は、患者の体温を目標温度に維持するために使用できる。例えば、熱伝導液体18が、患者の体温を目標温度またはその付近に迅速に調節するようにエンクロージャ14へ導かれ、その後、温度が変えられた空気116を、患者の体温を選択された目標温度に維持するために使用できる。加えて、温かい空気を、体温が低下した患者がときどき経験する震えを抑えるために使用できる。
【0051】
図11〜図14に示すように、バルブ110は、搬送システム92を通る熱伝導液体18と熱伝導ガス116の両者の流路を制御する。例えばピンチ弁などのバルブ110は、熱伝導液体18(または熱伝導ガス116)がバルブを通過して流れることを妨げる閉じた位置から、熱伝導液体(または熱伝導ガス)がバルブを通過して流れることを制約しない開いた位置へ移動可能となっている。例えば、バルブ110の1つは、対応支持部材24の不浸透性部材48に形成された通路68と貯蔵部106との間の流路に沿った位置に配置される。閉じた位置において、このバルブ110は、バルブを通過して貯蔵部106へ流れることを妨げ、これにより、熱伝導液体18を、注入ポンプ108によりエンクロージャ14の内部空間16の底部に送り込むことができる。バルブが開いた位置にあり注入ポンプ108が遮断された状態において、バルブ110は、熱伝導液体18が重力により対応支持部材24の不浸透性部材48の通路68を通ってバルブを通過して貯蔵部106へ流れることができるようにする。装置10の別のバルブ110は、搬送システム92の別の区分で同様の態様で流れを制御する。ただし、本発明の範囲を外れなければ、その他のタイプのバルブおよび他のバルブの実施形態も考えられる。
【0052】
操作の際、エンクロージャ14は、救急車の移動ベッドなどの概ね平坦な表面に置かれる。対応支持部材24は、対応支持部材の下面を移動ベッドの上に載置できるように十分に伸ばされる。必要であれば、カバー22が対応支持部材24から開放され、端部60の周囲でエンクロージャ14の後方端部パネル54へ向かって移動して、これにより、対応支持部材24の中央部が露出する。患者12は、対応支持部材24の中央部において、不浸透性部材48の上の浸透性層50の上に注意深く載置され、正確な患者の配置を確保するポジショナー56により位置決めされる(すなわち、患者12の顔が、顔の画像に位置を合わせられる。)。空気ポンプ30は、チューブ28を所望の圧力になるまで膨らませるように駆動され(図11)、これにより、チューブ28の内側面36が、これに並列された患者の身体部分に一致する。空気ポンプ30は、チューブ28を所望の圧力に維持するために使用中いつでも駆動できる。カバー22は、患者の身体の首から下の部分を覆うように配置される。カバー22のシール部62,64と対応支持部材24とは係合し、これにより、患者12がエンクロージャ14の中に封じ込まれる。
【0053】
制御ユニット88を使用する際、搬送システム92は、患者12の体温を選択された温度に調節するために、熱伝導液体18または熱伝導ガスのいずれかを搬送するように作動する。例えば、心停止を患った患者12の体温は、約37℃(98.6°F)から約28℃(82.4°F)へ迅速に低下させることが望ましい。この例では、およそ16リットル(4.2ガロン)の熱伝導液体18(例えば、水)と、およそ4.5キログラム(10ポンド)の相変化物質(例えば、氷)とが貯蔵部106に加えられる。予め冷却された熱伝導液体18を用いることが望ましい。約0.5℃(32.9°F)と約4℃(39.2°F)との間に冷却された熱伝導液体18は、2つの注入ポンプ108により、通路68と注入口72を通ってエンクロージャ14の上部と底部に送り込まれ、これにより、約5リットル/分(1.3ガロン/分)の流速で患者の身体に直接接触する。患者の身体の下側の熱伝導液体18は、浸透性層50によって作られた通路を通って流れる。エンクロージャ14の上部と底部の両方に同時に熱伝導液体18を送り込むことができることに加えて、注入ポンプ108は、エンクロージャ14の上部のみ又はエンクロージャ14の底部のみに熱伝導液体18を送り込むように選択的に操作できる。
【0054】
熱伝導液体18は、対応支持部材24内の患者12により作られるくぼみ58に蓄積し、胴体を受ける対応支持部材の領域において、頭部、脚、足を受ける対応支持部材の領域よりも多くの熱伝導液体が蓄積する。熱伝導液体は、排出口80と連通する排水チューブ82により作られた放水路よりも高い高さに達するまで、エンクロージャ14の内部空間16に蓄積される。排水チューブ82は、熱伝導液体18を、約14センチメートル(5.5インチ)の目標深さに維持し、このことが、エンクロージャ14の排出口80において約1.4キロパスカル(0.2psi)の正のゲージ圧を作り出す。排水チューブ82により作られた放水路よりも高い高さに達した全ての熱伝導液体18は、注入ポンプ108により、エンクロージャ14の内部空間16に送り込まれる熱伝導液体の流速と比べて同じか又は速い流速でエンクロージャから排出される。
【0055】
エンクロージャ14から排出された熱伝導液体18は、例えば粒子状物質、ウイルス、バクテリアなどの汚染物を患者12から取り除くために、ろ過システム112を通過する。ろ過された熱伝導液体18は貯蔵部106に戻され、貯蔵部106で、熱伝導液体は、エンクロージャ14の内部空間16へ再循環される前に、相変化物質により再び冷却される。熱伝導液体18は、患者の体温が選択された温度に達するか又は近づくまで、連続的にエンクロージャ14を通って再循環される。患者12の体温は、熱伝導液体18が停止した後でも僅かに低下し、結果として、過剰な体温の変化(すなわち、選択された温度よりも低く患者の体温を低下させること)を防止するため、選択された温度に達する前に、熱伝導液体の流れを停止することが望ましい。この時点で、注入ポンプ108は遮断され、熱伝導液体18は重力によりエンクロージャ14から排出される。いったん注入ポンプ108が遮断されると、バルブ110は、対応支持部材24の通路68と連絡する注入口72を通ってエンクロージャ14の内部空間16から熱伝導液体18を排出できるように調節される(図13)。空気ポンプ30は、エンクロージャ14から熱伝導液体18をより迅速に排出するようにエンクロージャ14の上部へ空気を送り込むために使用できる。さらに、エンクロージャ14の底部に連通する注入ポンプ108は、熱伝導液体18をエンクロージャの内部空間16から貯蔵部106へ送り込む排出ポンプとして使用できる。
【0056】
患者12の体温は、空気ポンプ30を作動させて、空気ポンプにより直列の熱交換器118を通して送り込む空気を導くことで、選択された体温に維持できる(図14)。冷却された熱交換ガス116は、患者の身体に直接接触させるためにエンクロージャ14の注入口72を通して通路68へ流れるように導かれる。患者の体温は、熱伝導ガス116を使用することで、最大で12〜24時間までの所望の時間だけ維持できると考えられる。熱伝導ガス116は、患者の首および/または排出口80の近くのエンクロージャの非シール部を通って、エンクロージャ14の内部空間16から排出される。
【0057】
熱伝導ガス116は、熱伝導液体18よりもゆっくりとした患者12の体温変化を促すため、または、震えを抑えるために使用できる。加えて、熱伝導ガス116は、熱伝導ガス116は、救急車または熱伝導液体18の貯蔵部106から離れた場所で使用できる。このことは、患者の処置を遅らせないように重い熱伝導液体18と相変化物質を患者の所へ搬送する必要がある場合、ユーザーを安心させる。熱伝導液体18は、患者を適切な場所(例えば、救急車、病院)へ搬送した後、エンクロージャ14の内部空間16へ導入できる。
【0058】
当然ながら、上述の操作を行う間、透明なカバー22を通して患者12の身体を視覚的に観察し続けることができる。さらなる医療処置が必要な場合、患者の身体を露出するために、搬送システム92を操作して、カバー22を引き戻す(または完全に取り外す)ことができる。搬送システム92は、熱伝導液体18または熱伝導ガス116を患者の身体の下側に導き続ける。液体搬送システム100を使用する場合、熱伝導液体18が装置10からあふれることを防止するために、熱伝導液体18をカバー22の通路68へ導く注入ポンプ108は、カバー22が引き戻される前に遮断できる。さらに、装置の全ての操作は、医療の便宜を図るために救急車の中で行うことができ、これにより、後に続く全ての医療の治療を遅らせないようにすることができる。
【0059】
図15と図16は、対応支持部材24のその他の実施形態を示す。図15に示す対応支持部材24は、概略長方形の空気入りマットレス120を含む。空気入りマットレス120は、部分的にのみ膨らまされており、これにより、マットレス上に配置された患者(図示せず)の体重によってくぼみを形成できる。上記と実質的に同じ構造の長方形の不浸透性部材122が、マットレス120を覆い、マットレス120に貼り付けられている。綿層123は不浸透性部材122の上に配置されている。綿層123の一部は、下側にある不浸透性部材122が見えるように切り取られて示されている。排出口124は、くぼみ121と、熱伝導液体をエンクロージャの内部空間から排出するためにマットレス120の後方端部パネル126を通り抜けて伸びる導管とに連通する。
【0060】
図16に示す実施形態では、対応支持部材24は、膨らませることができる長円のチューブ128を含み、長円チューブ128は、支持部材の外周全体をひとまわりして伸びている。実質的に上記と同じ構造を有する不浸透性部材130が、長円チューブ128の中心部に配置され、全周に亘って長円チューブの下面へ接着され、これにより、患者の身体を受けるための防水のくぼみ132が形成されている。
【0061】
以上のことから、本発明のいくつかの目的が達せられ、他の有利な結果が達成されることが分かる。
【0062】
本発明の構成要素またはその好ましい実施形態の紹介に際して、「一つの」、「一つの」、「その」および「上記の」という用語は、一つまたはそれ以上の構成要素があることを意味する意図である。「含む」、「包含する」および「有する」という用語は、包括的であり、列挙された要素以外の追加の要素もあり得ることを意味する意図である。
【0063】
本発明の範囲から外れない限り、上記の内容に種々の変更を加えることができるため、上記の説明に含まれ添付の図面に示される全ての事象は例示として解釈され限定する意味で解釈されない、ということを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】移動ベッドの上に載置された状態の本発明に係る患者の体温を変更するための装置の斜視図。
【図2】移動ベッドから取り外された装置の平面図。
【図3】図2の3−3線における装置の断面図。
【図4】装置の分解斜視図。
【図5】カバーが引き戻され、浸透性層を部分的に切り取ることにより通路が見えるようにした装置の平面図。
【図6】患者を除いた図2の6−6線の断面図。
【図7】図6に示すカバーに形成された通路の拡大図。
【図8】図7に示す対応支持部材の通路の拡大図。
【図9】流量制限器を示す装置の端面図。
【図10】本発明に係る装置の制御システムの概略図。
【図11】対応支持部材に空気を送り込む空気ポンプを示す本発明の装置の概略図。
【図12】底部と上部から装置の内部空間へ熱伝導液体を送り込む2つの注入ポンプを示す本発明の装置の概略図。
【図13】装置の内部空間から排出されている熱伝導液体を示す本発明の装置の概略図。
【図14】装置の内部空間へ熱伝導ガスを送り込む空気ポンプを示す本発明の装置の概略図。
【図15】対応支持部材の別の実施形態を示すためにカバーを引き戻した装置の平面図。
【図16】対応支持部材の更に別の実施形態を示すためにカバーを引き戻した装置の平面図。
【符号の説明】
【0065】
10:装置、12:患者、14:エンクロージャ、18:熱伝導液体、22:カバー、24:対応支持部材、26:シート状部材、28:チューブ、32:チューブの上面、34:チューブの底面、36:チューブの内側面、38:チューブの外側面、40:収納部、42:頭部ポケット、44:領域、46:足ポケット、48:不浸透性部材、50:浸透性層、52:前方端部パネル、54:後方端部パネル、56:ポジショナー、58:くぼみ、60:端部、62:シール部、64:シール部、66:ボディ対向コンポーネント、67:外側コンポーネント、68:通路、70:開状態保持材、72:注入口、80:排出口、82:逆U字形チューブ、84:通気孔、86:制御システム、88:制御ユニット、90:ユーザーインターフェース、92:搬送システム、94:ディスプレイ、96:制御部、98:温度センサ、100:液体搬送システム、102:空気搬送システム、104:液体熱交換器、106:貯蔵部、108:注入ポンプ、110:バルブ、112:ろ過システム、114:ポンプヘッド、116:熱伝導ガス、118:空気熱交換器、120:マットレス、122:不浸透性部材、124:排出口、126:後方端部パネル、128:チューブ、130:不浸透性部材、132:くぼみ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者身体の少なくとも一部を覆うカバーと、
下に敷かれ、患者の身体部分の近傍に熱伝導液体を蓄積するためのくぼみを形成するようにして患者の身体部分の形状に概ね一致するようにしてある対応支持部材とを含み、
上記カバーと上記対応支持部材とは、患者の身体部分を収容するためのエンクロージャを協働して形成し、患者身体と上記熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために上記エンクロージャに収容された患者の身体部分に直接接触するように熱伝導液体を導くように構成されていることを特徴とする患者の体温を調節するための装置。
【請求項2】
患者身体の少なくとも一部を収容するための内部空間が中に形成され、中に収容した患者の身体部分に直接接触するようにして熱伝導液体を導くように構成され、少なくとも一部が柔軟な素材で形成されているエンクロージャと、
熱伝導液体を上記エンクロージャへ導くように構成され且つ配置され、少なくとも一部が柔軟な素材により形成された上記エンクロージャ内の流体通路と、
上記通路を開いた状態に保持し、上記熱伝導液体が開状態保持材を通過し上記流体通路を通って流れることができるように、上記柔軟な素材により形成された上記流体通路の部分に受けられた開状態保持材と、を含むことを特徴とする患者の体温を調節するための装置。
【請求項3】
上記開状態保持材が浸透性の素材であることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
患者の身体部分を収容するための内部空間が形成されたエンクロージャと、
患者の身体部分の上に流れるように熱伝導液体を上記内部空間へ導くために患者身体の上記部分の上方に配置された少なくとも1つの注入口と、
患者の身体部分の下に流れるように熱伝導液体を上記内部空間へ導くために上記内部空間に収容されたときの患者身体の上記部分の下方に配置された少なくとも1つの注入口と、を含むことを特徴とする仰向けになった患者の体温を調節するための装置。
【請求項5】
上記エンクロージャが、上記患者の身体部分の上方および下方に配置された複数の上記注入口を含むことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
患者身体の少なくとも一部を中に収容するための内部空間が形成されたエンクロージャと、
患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために、上記エンクロージャに収容された患者の身体部分に直接接触するように、熱伝導液体が上記エンクロージャへ流れることができるようにするための上記エンクロージャの注入口と、
上記熱伝導液体を上記エンクロージャから排出できるようにするための上記エンクロージャの排出口と
上記エンクロージャ内の熱伝導液体を所定量に維持するように上記排出口と連通する流量制限器と、を含むことを特徴とする患者の体温を調節するための装置。
【請求項7】
上記流量制限器は、上記エンクロージャの上記排出口で約1.4キロパスカル(0.2ポンド/平方インチ)の正のゲージ圧に維持するように操作可能であることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
患者の身体の少なくとも一部を収容するための内部空間が中に形成されたエンクロージャと、
液体の温度を制御し、上記エンクロージャに収容された患者の身体部分に直接接触するように上記液体を上記エンクロージャへ液体冷却モードで運ぶ液体搬送システムと、
空気の温度を制御し、上記エンクロージャに収容された患者の身体部分に直接接触するように上記空気を上記エンクロージャへ空気冷却モードで運ぶ空気搬送システムと、を含むことを特徴とする患者の体温を調節するために液体冷却モードおよび空気冷却モードにおいて操作可能なシステム。
【請求項9】
上記液体冷却モードと上記空気冷却モードとの間で選択するための制御部を更に含むことを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
患者の身体の少なくとも一部を中に収容するための内部空間が形成されたエンクロージャであり、上記エンクロージャの上記内部空間に収容された患者身体の上記部分に概ね接触しているエンクロージャであり、患者身体と熱伝導流体との間の熱伝導を促進するために上記エンクロージャに収容された患者身体の上記部分に熱伝導流体が直接接触することを可能にするようにしてあるエンクロージャと、
上記熱伝導流体をろ過するためのろ過システムと、を含むことを特徴とする患者の体温を調節するための装置。
【請求項11】
上記ろ過システムが、特殊なフィルターと、活性炭と、紫外線とを含むことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
患者身体の少なくとも一部を中に収容するための内部空間が形成されたエンクロージャであり、患者身体と熱伝導流体との間の熱伝導を促進するために上記内部空間に収容された患者身体の上記部分に熱伝導流体が直接接触することを可能にするようにしてあるエンクロージャを含み、
上記エンクロージャは、患者身体の一部を上記エンクロージャに対して相対的に位置決めできるように配置された目印を含むことを特徴とする患者の体温を調節するための装置。
【請求項13】
上記エンクロージャは、患者身体の上記部分を覆うためのカバーと、上記エンクロージャの上記内部空間に収容された患者身体の少なくとも上記部分の下に敷かれるようにしてある支持部材とを含み、
上記目印が上記支持部材の上に配置されていることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
患者身体の少なくとも一部を収容するようにしてあり、複数の領域を包含するエンクロージャと、
患者身体と熱伝導流体との間の熱伝導を促進するために上記エンクロージャに収容された患者身体の上記部分に熱伝導流体が直接接触するように上記熱伝導流体を上記エンクロージャへ運ぶことを可能にするポンプと、
上記熱伝導流体を上記エンクロージャの1つ又はそれ以上の領域に導くことができるように熱伝導流体の流路を選択的に調整するための少なくとも1つのバルブと、を含むことを特徴とする患者の体温を調節するための装置。
【請求項15】
上記バルブが、(a)頂部の領域、(b)底部の領域および(c)頂部と底部の領域の中から選択された1組のエンクロージャの領域へ熱伝導流体が流れることができるように調整可能であることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
患者身体の少なくとも一部を収容するようにしてある内部空間を有するエンクロージャと、
患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために上記エンクロージャに収容された患者身体の少なくとも一部に直接接触するように熱伝導液体を上記エンクロージャの上記内部空間へ運ぶことができる液体搬送システムと、
上記液体搬送システムにより運ばれる熱伝導液体が、注入口を通過して上記エンクロージャの上記内部空間へ通ることができるように上記エンクロージャの上記内部空間と連通する複数の注入口であり、患者身体の上記部分の予め選択された部分に、患者身体の上記部分の選択されていない部分よりも多い量の熱伝導液体が流れるように、上記エンクロージャの上記内部空間に収容された患者身体の上記部分の予め選択された部分に熱伝導液体を導くように配置された注入口と、を含むことを特徴とする患者の体温を調節するための装置。
【請求項17】
上記エンクロージャが、上記患者の全身を収容するための大きさと形状を備え、
上記注入口が、患者の胴体、頭部および首に直接接触して流れるように熱伝導液体を導くように配置されていることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
患者身体の少なくとも一部を中に収容するための内部空間が形成されたエンクロージャであり、患者身体と熱伝導流体との間の熱伝導を促進するために、上記エンクロージャに収容された患者身体の上記部分に熱伝導流体が直接接触できるようにしてあるエンクロージャと、
患者の呼吸の通路を開かせる角度に患者の頭部を位置決めするようにしてあるヘッドレストと、を含むことを特徴とする患者の体温を調節するための装置。
【請求項19】
前記ヘッドレストが膨張可能であることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
患者身体の一部を収容するための大きさと形状を備え、患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために、エンクロージャに収容された患者身体の部分に直接接触するようにして熱伝導液体を導くように構成された対応支持部材であり、下に敷かれ、熱伝導液体を蓄積するために患者の身体部分の近くにくぼみを形成するようにして患者身体の上記部分の形状に概ね一致するようにしてある対応支持部材と、
熱伝導液体を上記エンクロージャへ運ぶための液体搬送システムと、を含むことを特徴とする患者の体温を調節するための装置。
【請求項21】
上記対応支持部材は、右側部と左側部と中央部とを有し、
上記対応支持部材は、上記右側部と上記左側部とに沿って伸び上記中央部に収納部を概ね規定する少なくとも1つのガス入りチューブを含むことを特徴とする請求項20に記載の装置。
【請求項1】
患者身体の少なくとも一部を覆うカバーと、
下に敷かれ、患者の身体部分の近傍に熱伝導液体を蓄積するためのくぼみを形成するようにして患者の身体部分の形状に概ね一致するようにしてある対応支持部材とを含み、
上記カバーと上記対応支持部材とは、患者の身体部分を収容するためのエンクロージャを協働して形成し、患者身体と上記熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために上記エンクロージャに収容された患者の身体部分に直接接触するように熱伝導液体を導くように構成されていることを特徴とする患者の体温を調節するための装置。
【請求項2】
患者身体の少なくとも一部を収容するための内部空間が中に形成され、中に収容した患者の身体部分に直接接触するようにして熱伝導液体を導くように構成され、少なくとも一部が柔軟な素材で形成されているエンクロージャと、
熱伝導液体を上記エンクロージャへ導くように構成され且つ配置され、少なくとも一部が柔軟な素材により形成された上記エンクロージャ内の流体通路と、
上記通路を開いた状態に保持し、上記熱伝導液体が開状態保持材を通過し上記流体通路を通って流れることができるように、上記柔軟な素材により形成された上記流体通路の部分に受けられた開状態保持材と、を含むことを特徴とする患者の体温を調節するための装置。
【請求項3】
上記開状態保持材が浸透性の素材であることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
患者の身体部分を収容するための内部空間が形成されたエンクロージャと、
患者の身体部分の上に流れるように熱伝導液体を上記内部空間へ導くために患者身体の上記部分の上方に配置された少なくとも1つの注入口と、
患者の身体部分の下に流れるように熱伝導液体を上記内部空間へ導くために上記内部空間に収容されたときの患者身体の上記部分の下方に配置された少なくとも1つの注入口と、を含むことを特徴とする仰向けになった患者の体温を調節するための装置。
【請求項5】
上記エンクロージャが、上記患者の身体部分の上方および下方に配置された複数の上記注入口を含むことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
患者身体の少なくとも一部を中に収容するための内部空間が形成されたエンクロージャと、
患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために、上記エンクロージャに収容された患者の身体部分に直接接触するように、熱伝導液体が上記エンクロージャへ流れることができるようにするための上記エンクロージャの注入口と、
上記熱伝導液体を上記エンクロージャから排出できるようにするための上記エンクロージャの排出口と
上記エンクロージャ内の熱伝導液体を所定量に維持するように上記排出口と連通する流量制限器と、を含むことを特徴とする患者の体温を調節するための装置。
【請求項7】
上記流量制限器は、上記エンクロージャの上記排出口で約1.4キロパスカル(0.2ポンド/平方インチ)の正のゲージ圧に維持するように操作可能であることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
患者の身体の少なくとも一部を収容するための内部空間が中に形成されたエンクロージャと、
液体の温度を制御し、上記エンクロージャに収容された患者の身体部分に直接接触するように上記液体を上記エンクロージャへ液体冷却モードで運ぶ液体搬送システムと、
空気の温度を制御し、上記エンクロージャに収容された患者の身体部分に直接接触するように上記空気を上記エンクロージャへ空気冷却モードで運ぶ空気搬送システムと、を含むことを特徴とする患者の体温を調節するために液体冷却モードおよび空気冷却モードにおいて操作可能なシステム。
【請求項9】
上記液体冷却モードと上記空気冷却モードとの間で選択するための制御部を更に含むことを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
患者の身体の少なくとも一部を中に収容するための内部空間が形成されたエンクロージャであり、上記エンクロージャの上記内部空間に収容された患者身体の上記部分に概ね接触しているエンクロージャであり、患者身体と熱伝導流体との間の熱伝導を促進するために上記エンクロージャに収容された患者身体の上記部分に熱伝導流体が直接接触することを可能にするようにしてあるエンクロージャと、
上記熱伝導流体をろ過するためのろ過システムと、を含むことを特徴とする患者の体温を調節するための装置。
【請求項11】
上記ろ過システムが、特殊なフィルターと、活性炭と、紫外線とを含むことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
患者身体の少なくとも一部を中に収容するための内部空間が形成されたエンクロージャであり、患者身体と熱伝導流体との間の熱伝導を促進するために上記内部空間に収容された患者身体の上記部分に熱伝導流体が直接接触することを可能にするようにしてあるエンクロージャを含み、
上記エンクロージャは、患者身体の一部を上記エンクロージャに対して相対的に位置決めできるように配置された目印を含むことを特徴とする患者の体温を調節するための装置。
【請求項13】
上記エンクロージャは、患者身体の上記部分を覆うためのカバーと、上記エンクロージャの上記内部空間に収容された患者身体の少なくとも上記部分の下に敷かれるようにしてある支持部材とを含み、
上記目印が上記支持部材の上に配置されていることを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
患者身体の少なくとも一部を収容するようにしてあり、複数の領域を包含するエンクロージャと、
患者身体と熱伝導流体との間の熱伝導を促進するために上記エンクロージャに収容された患者身体の上記部分に熱伝導流体が直接接触するように上記熱伝導流体を上記エンクロージャへ運ぶことを可能にするポンプと、
上記熱伝導流体を上記エンクロージャの1つ又はそれ以上の領域に導くことができるように熱伝導流体の流路を選択的に調整するための少なくとも1つのバルブと、を含むことを特徴とする患者の体温を調節するための装置。
【請求項15】
上記バルブが、(a)頂部の領域、(b)底部の領域および(c)頂部と底部の領域の中から選択された1組のエンクロージャの領域へ熱伝導流体が流れることができるように調整可能であることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
患者身体の少なくとも一部を収容するようにしてある内部空間を有するエンクロージャと、
患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために上記エンクロージャに収容された患者身体の少なくとも一部に直接接触するように熱伝導液体を上記エンクロージャの上記内部空間へ運ぶことができる液体搬送システムと、
上記液体搬送システムにより運ばれる熱伝導液体が、注入口を通過して上記エンクロージャの上記内部空間へ通ることができるように上記エンクロージャの上記内部空間と連通する複数の注入口であり、患者身体の上記部分の予め選択された部分に、患者身体の上記部分の選択されていない部分よりも多い量の熱伝導液体が流れるように、上記エンクロージャの上記内部空間に収容された患者身体の上記部分の予め選択された部分に熱伝導液体を導くように配置された注入口と、を含むことを特徴とする患者の体温を調節するための装置。
【請求項17】
上記エンクロージャが、上記患者の全身を収容するための大きさと形状を備え、
上記注入口が、患者の胴体、頭部および首に直接接触して流れるように熱伝導液体を導くように配置されていることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
患者身体の少なくとも一部を中に収容するための内部空間が形成されたエンクロージャであり、患者身体と熱伝導流体との間の熱伝導を促進するために、上記エンクロージャに収容された患者身体の上記部分に熱伝導流体が直接接触できるようにしてあるエンクロージャと、
患者の呼吸の通路を開かせる角度に患者の頭部を位置決めするようにしてあるヘッドレストと、を含むことを特徴とする患者の体温を調節するための装置。
【請求項19】
前記ヘッドレストが膨張可能であることを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
患者身体の一部を収容するための大きさと形状を備え、患者身体と熱伝導液体との間の熱伝導を促進するために、エンクロージャに収容された患者身体の部分に直接接触するようにして熱伝導液体を導くように構成された対応支持部材であり、下に敷かれ、熱伝導液体を蓄積するために患者の身体部分の近くにくぼみを形成するようにして患者身体の上記部分の形状に概ね一致するようにしてある対応支持部材と、
熱伝導液体を上記エンクロージャへ運ぶための液体搬送システムと、を含むことを特徴とする患者の体温を調節するための装置。
【請求項21】
上記対応支持部材は、右側部と左側部と中央部とを有し、
上記対応支持部材は、上記右側部と上記左側部とに沿って伸び上記中央部に収納部を概ね規定する少なくとも1つのガス入りチューブを含むことを特徴とする請求項20に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公表番号】特表2008−514279(P2008−514279A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−533550(P2007−533550)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/033044
【国際公開番号】WO2006/036585
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(505012999)ライフ・リカバリー・システムズ・エイチディ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (3)
【氏名又は名称原語表記】LIFE RECOVERY SYSTEMS HD, LLC
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2005/033044
【国際公開番号】WO2006/036585
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(505012999)ライフ・リカバリー・システムズ・エイチディ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (3)
【氏名又は名称原語表記】LIFE RECOVERY SYSTEMS HD, LLC
【Fターム(参考)】
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