説明

患者監視システムおよび方法

【課題】患者監視システムおよび方法を提供すること。
【解決手段】システム(10)は、複数の監視対象患者(20a〜20n)から患者データを得るように構成された患者監視システム(22a〜22n)と、警報装置(14)と、処理装置(12)とを含む。処理装置(12)は、患者監視システム(20a〜20n)および警報装置(14)に結合される。処理装置(12)は、監視対象患者(20a〜20n)ごとにカスタム警報トリガを生成し、カスタム警報トリガおよび患者データの分析に基づいて警報装置(14)を選択的に作動させるように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する内容は患者監視システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者監視システムは、1人の技術者が1人または数人の患者を監視することを可能にする。それぞれの患者の異なるいくつかの身体的特性を監視するため、患者監視システムは例えば、心電計、血圧モニタ、体温計および/または脈拍酸素濃度計を備える。患者監視システムは一般に、選択可能な1つまたは複数の基準が満たされた場合に病院職員に対して警報を発するように適合された可聴および/または可視警報装置を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の患者監視システムの1つの課題は、警報基準を選択するプロセスが誤警報を生み出すことがあることである。誤警報は、病院資源に不要の負担を課し、労働環境を害する。
【0004】
本明細書では、以下の明細を読み、理解することによって理解されるであろう上記の短所、欠点および課題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、システムが、複数の監視対象患者から患者データを得るように構成された患者監視システムと、警報装置と、処理装置とを含む。処理装置は、患者監視システムおよび警報装置に結合される。処理装置は、監視対象患者ごとにカスタム警報トリガを生成し、カスタム警報トリガおよび患者データの分析に基づいて警報装置を選択的に作動させるように構成される。
【0006】
他の実施形態では、方法が、複数の監視対象患者のそれぞれの監視対象患者に対してカスタム警報トリガを生成するステップと、前記複数の監視対象患者のそれぞれの監視対象患者の患者データを得るステップと、カスタム警報トリガおよび患者データの分析に基づいて警報装置を選択的に作動させるステップとを含む。
【0007】
他の実施形態では、方法が、複数の監視対象患者のそれぞれの監視対象患者の医療履歴を得るステップと、前記複数の監視対象患者のそれぞれの監視対象患者に対してカスタム警報トリガを生成するステップとを含む。カスタム警報トリガはそれぞれ前記医療履歴の1つに基づき、トリガリング基準を含む。この方法はさらに、それぞれの監視対象患者の患者データを得るステップと、患者データがトリガリング基準の1つを満たしている場合にのみ、警報装置を作動させるステップとを含む。
【0008】
添付図面およびその詳細な説明から、当業者には、本発明のさまざまな他の特徴、目的および利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態に基づく集中型患者監視システムの概略図である。
【図2】一実施形態に基づく方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を構成し、実施することができる特定の実施形態を例示的に示す添付図面を参照する。当業者がこれらの実施形態を実施することを可能にするため、これらの実施形態は十分に詳細に説明される。他の実施形態を利用することができること、ならびに実施形態の範囲から逸脱することなく論理的、機械的、電気的な変更およびその他の変更を加えることができることを理解されたい。したがって、以下の詳細な説明を本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【0011】
図1を参照すると、一実施形態に基づく集中型患者監視システム10が示されている。集中型患者監視システム10は、1人の技術者18が複数の患者20a〜20nを概ね同時に監視することができるように適合された処理装置12、警報装置14、入力装置15および表示装置16を含む。集中型患者監視システム10の構成要素として示し、説明するが、処理装置12、警報装置14、入力装置15および/または表示装置16は、例えば単一患者ベッドサイド監視システムなどの他の患者監視システムとともに実現することもできることを理解されたい。
【0012】
処理装置12は、例えば導線、無線接続などによって複数の離散型患者監視システム22a〜22nに結合される。離散型患者監視システム22a〜22nはそれぞれ患者20a〜20nのうちの1人の患者を監視して、監視対象の特定の特性に基づく患者データを生成し、その患者データを処理装置12に送信するように構成される。限定はされないが、離散型患者監視システム22a〜22nは、心電計、血圧モニタ、体温計および/または脈拍酸素濃度計を備えることができる。これに対応して、患者監視システム22a〜22nが生成する患者データは、心電図(ECG)データ、血圧データ、体温データおよび/または脈拍データを含むことができる。
【0013】
処理装置12は、後に詳述するカスタム警報トリガ(custom alarm trigger)24を生成し、カスタム警報トリガ24および離散型監視システム2a〜22nからの患者データに基づいて警報装置14を選択的に作動させ、または鳴らすように構成される。警報装置14は、可聴装置(例えばスピーカ)および/または視覚装置(例えば点滅灯)を備えることができる。
【0014】
カスタム警報トリガ24は、警報装置14を鳴らすために満たされなければならないトリガリング基準を規定する。この開示では、「カスタム」警報トリガは、特定の患者のニーズに基づいてカスタマイズされ、かつ/または特定の患者に関する情報に基づいて生成される警報トリガである。したがって、患者20a〜20nはそれぞれ、個々の患者のニーズに対して個別的に適合した固有のトリガリング基準を規定するカスタム警報トリガを有することができる。本明細書の記載に従ってカスタム警報トリガを規定することにより、誤警報の可能性が、全ての患者に共通の警報トリガが適用されるシステムに比べて低減されることを理解されたい。
【0015】
入力装置15は、例えば導線、無線接続などによって処理装置12に結合される。限定はされないが、入力装置15は、キーボード、マウス、ジョイスティック、タッチパッドなどを含むことができる。入力装置15は、処理装置12へのデータの手動送信を容易にするように構成される。
【0016】
表示装置16は、例えば導線、無線接続などによって処理装置12に結合される。表示装置16は、技術者18がそれぞれの患者20a〜20nを概ね同時に監視することができるように、離散型監視システム22a〜22nからの患者データを視覚的に伝達するように構成される。単一の装置として示されているが、表示装置16は複数の表示装置を含むことができることを理解されたい。あるいは、表示装置16が、複数の区画に分割された単一の表示装置を含むこともできる。
【0017】
次に、図2を参照して、一実施形態に基づく方法100を説明する。方法100は複数のステップ102〜112を含む。処理装置12(図1)は、ステップ102〜112のうちの1つまたは複数のステップを実行することができる。方法100の技術的効果は、誤警報を低減するように適合された仕方で1人または数人の患者を監視するプロセスを容易にすることである。
【0018】
次に、図1および2を参照すると、ステップ102で、方法100は、特定の患者(例えば患者20a〜20nのうちの1人)の医療履歴を得る。限定はされないが、この医療履歴は、以前の診断または医学的状態、投薬、アレルギー、症状、治療などを含むことができる。この医療履歴はさらに、患者の年齢、性別、体重、体力レベルなどに関するより一般的な情報を含むことができる。この医療履歴は、ステップ102で、患者がその病院に入院するときにこれらの関連情報を入力装置15を介して処理装置12上に手動でダウンロードすることによって得ることができる。
【0019】
一実施形態によれば、ステップ102で得た医療履歴をデータベースの形態で保存し、編集することができる。方法100がますます多くの患者に対して実施されると、関連する医療履歴の数は、健康指標(health index)を生成するのに十分に大きなものとなる。この健康指標は、人種、年齢、体重、前提条件、現在の健康状態などの基準に基づいて所与の患者を分類するように適合された文字数字を含むことができる。このようにして、新しく入院した患者に、データベースに含まれる以前の患者との類似点に基づいて、健康指標を割り当てることができる。次いで、(後に詳述する)カスタム警報トリガを生成し、患者を診断し、かつ/または患者を治療するために新しく入院した患者のプロフィールを記述する目的で、この健康指標を利用することができる。
【0020】
ステップ104で、方法100は、ステップ102で得た医療履歴に基づいてカスタム警報トリガ24を生成する。以前に指摘したとおり、カスタム警報トリガ24は、警報装置14を鳴らすために満たされなければならないトリガリング基準を規定する。一般に、カスタム警報トリガ24は、警報装置14をトリガする条件を指定する患者データの範囲又は限界を含むことができる。他の実施形態によれば、カスタム警報トリガ24は、警報装置14をトリガする条件を規定する、特定のタイプの監視対象患者データに適用可能な最小または最大許容変化率を含むことができる。他の実施形態によれば、カスタム警報トリガ24は、警報装置14をトリガする条件を指定する、監視対象患者データによって規定される傾向、パターンまたは形態を含むことができる。以下に、所与の患者の医療履歴に基づいてカスタム警報トリガを生成することができる、より具体的でかつ非限定的ないくつかの例を示す。
【0021】
第1の例では、激しい胸の痛みを含むいくつかの症状を有する80才の患者が入院したとする。さらに、その患者は以前に心筋症と診断されていたとする。ステップ102で得る関連医療履歴は、患者の年齢、症状および以前の診断を含むことができる。この医療履歴に基づいて、ステップ104で、心臓の不安定性と相関する監視対象患者データ(例えば心拍数、血圧、ECGデータ)に専らまたは主に焦点を合わせたカスタム警報トリガを生成することに決めることができる。したがって、より焦点を絞ったカスタム警報トリガを生成することにより、患者の心臓の活動に無関係な問題が誤警報を生じさせる可能性はより低くなるであろう。
【0022】
第2の例では、体調の悪い体重過大の50才の患者が入院したとする。ステップ102で得る関連医療履歴は、患者の年齢、体重および体力レベルを含むことができる。この医療履歴に基づいて、ステップ104で、より寛容な患者データトリガリング基準(例えばより幅広い患者データ範囲および/またはより高い許容変化率)を有するカスタム警報トリガを生成することに決めることができる。これらのより寛容な患者データトリガリング基準は、この例の患者による身体的活動がおそらくは、測定される患者データ(例えば生命徴候)を、より体力のある患者に比べてより大きく変化させるとの想定に基づき、正当化することができる。したがって、より寛容なカスタム警報トリガを生成することにより、この例の患者による正常な身体活動が誤警報を生じさせる可能性はより低くなるであろう。
【0023】
ステップ106で、方法100は、選択された患者(例えば患者20a〜20nのうちの1人)から患者データを得る。このステップは例えば、患者監視システム(例えば離散型患者監視システム22a〜22nのうちの1つ)で患者データを取得し、取得した患者データを処理装置12に転送することによって実行することができる。他の例によれば、この患者データは、入力装置15を介して処理装置12に手動で入力された医師による診断、医療計画および/または評価を含むことができる。
【0024】
ステップ108で、方法100は、(ステップ104で生成した)カスタム警報トリガを、(ステップ106で得た)患者データに基づいて更新して、動的カスタム警報トリガを生成する。この開示では、「動的」警報トリガは、新情報(例えば離散型患者監視システム22a〜22nのうちの1つからの患者データ)を考慮して更新または修正することができる警報トリガである。以下に、患者データに基づいてカスタム警報トリガを更新することができる非限定的ないくつかの例を示す。
【0025】
一例として、医師が判定した患者の現在の健康状態に依拠してカスタム警報トリガを更新することができる。所与の患者の健康状態が悪化している場合には、追加の監視を提供するため、より厳しくなるようにカスタム警報トリガを更新することができる。反対に、所与の患者の健康状態が改善している場合には、誤警報の発生を低減するため、より寛容になるようにカスタム警報トリガを更新し、かつ/またはカスタム警報トリガの焦点を修正することができる。
【0026】
他の例として、患者データの傾向に依拠してカスタム警報トリガを更新することができる。所与の患者が、ある医学的状態(例えば高血圧)に対処するように適合された投薬を受けており、その後に取得した患者データが、その結果として改善を示している場合には、誤警報の発生を低減するため、より寛容になるようにカスタム警報トリガを更新し、かつ/またはカスタム警報トリガの焦点を修正することができる。
【0027】
ステップ110で、方法100は、患者データおよびステップ104で生成したカスタム警報トリガまたはステップ108で生成した動的カスタム警報トリガの分析に基づいて、警報装置14を選択的に作動させるように適合される。一実施形態によれば、ステップ110で、方法100は、患者データがカスタム警報トリガの基準を満たしているかどうかを判定する。ステップ110で、カスタム警報トリガの基準を満たしていると判定された場合、方法100はステップ112に進み、警報装置14を鳴らし、または他の方法で警報装置14を作動させる。ステップ110で、カスタム警報トリガの基準を満たしていないと判定された場合、方法100はステップ106に戻る。上記のようにステップ106に戻ることにより、警報装置14を作動させることが必要になるまで、最新の情報に基づいてカスタム警報トリガを絶えず更新し、更新されたカスタム警報トリガの基準に基づいて患者の状態を監視するように、ステップ106〜110を繰返し実行することができる。
【0028】
特定の患者のニーズを最もよく満たすように選択された警報基準のタイプによって、患者データがカスタム警報トリガの基準を満たしているか否かをステップ110で判定するプロセスが異なることがある。例えば、カスタム警報トリガが、所与の患者の血圧に対して許容される範囲を含む場合、ステップ110で規定されるプロセスは、該当する患者の測定血圧値が、確立された許容範囲外にあるか否かの判定を含む。同様に、カスタム警報トリガが、所与の患者の心拍数に対する所定の最大許容変化率を含む場合、ステップ110で規定されるプロセスは、該当する患者の測定心拍数が所定の最大許容心拍数を超える量だけ増加または減少したか否かの判定を含む。
【0029】
本発明をその最良の形態を含めて開示するため、ならびに任意の装置またはシステムを製作し、使用すること、および組み込まれた任意の方法を実行することを含め、当業者が本発明を実施することを可能にするために、本明細書はいくつかの例を使用する。本発明の特許を受けられる範囲は下記の特許請求の範囲によって規定され、この範囲が、当業者が思いつくその他の例を含むことがある。このようなその他の例は、それらが特許請求の範囲の文字表現と異ならない構造要素を有する場合、またはそれらが特許請求の範囲の文字表現との差異が実質的にない等価の構造要素を含む場合に、特許請求の範囲に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0030】
10 集中型患者監視システム
12 処理装置
14 警報装置
15 入力装置
16 表示装置
18 技術者
20a〜20n 患者
22a〜22n 離散型患者監視システム
24 カスタム警報トリガ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の監視対象患者(20a〜20n)から患者データを得るように構成された患者監視システム(22a〜22n)と、
警報装置(14)と、
前記患者監視システム(22a〜22n)および前記警報装置(14)に結合された処理装置(12)であって、前記複数の監視対象患者(20a〜20n)のそれぞれの監視対象患者に対してカスタム警報トリガを生成し、前記カスタム警報トリガおよび前記患者データの分析に基づいて前記警報装置(14)を選択的に作動させるように構成された処理装置(12)と
を備えるシステム(10)。
【請求項2】
前記処理装置(12)が、前記複数の監視対象患者(20a〜20n)の医療履歴に基づいてカスタム警報トリガを生成するように構成されたことを特徴とする請求項1記載のシステム(10)。
【請求項3】
前記カスタム警報トリガのうちの1つまたは複数のカスタム警報トリガが動的カスタム警報トリガを含むことを特徴とする請求項1記載のシステム(10)。
【請求項4】
前記カスタム警報トリガのうちの1つまたは複数のカスタム警報トリガが、トリガリング基準を規定する患者データの範囲を含むことを特徴とする請求項1記載のシステム(10)。
【請求項5】
前記カスタム警報トリガのうちの1つまたは複数のカスタム警報トリガが、前記トリガリング基準を規定する前記患者データの変化率を含むことを特徴とする請求項1記載のシステム(10)。
【請求項6】
前記処理装置(12)による前記カスタム警報トリガおよび前記患者データの前記分析が、前記患者データが前記カスタム警報トリガのいずれかのトリガリング基準を満たしているかどうかの判定を含むことを特徴とする請求項1記載のシステム(10)。
【請求項7】
前記複数の監視対象患者のうちの1人または数人の監視対象患者の前記患者データを概ね同時に伝達するように構成された表示装置(16)をさらに備えることを特徴とする請求項1記載のシステム(10)。
【請求項8】
前記患者監視システム(22a〜22n)が、心電計、血圧モニタ、体温計および/または脈拍酸素濃度計を備えることを特徴とする請求項1記載のシステム(10)。
【請求項9】
複数の監視対象患者(20a〜20n)のそれぞれの監視対象患者に対してカスタム警報トリガを生成するステップ(104)と、
前記複数の監視対象患者(20a〜20n)のそれぞれの監視対象患者の患者データを得るステップ(106)と、
前記カスタム警報トリガおよび前記患者データの分析(110)に基づいて警報装置を選択的に作動させるステップ(112)と
を含む方法(100)。
【請求項10】
前記複数の監視対象患者(20a〜20n)のそれぞれの監視対象患者の医療履歴を得るステップ(102)をさらに含み、カスタム警報トリガを生成する前記ステップ(104)が、前記医療履歴のうちの1つの医療履歴に基づいてカスタム警報トリガを生成するステップを含むことを特徴とする請求項9記載の方法(100)。
【請求項11】
前記カスタム警報トリガのうちの1つのカスタム警報トリガを前記患者データに基づいて更新して、動的カスタム警報トリガを生成するステップ(108)をさらに含むことを特徴とする請求項9記載の方法(100)。
【請求項12】
前記カスタム警報トリガおよび前記患者データの分析(110)に基づいて警報装置を選択的に作動させる前記ステップ(112)が、前記カスタム警報トリガ、前記動的カスタム警報トリガおよび前記患者データの分析に基づいて警報装置を選択的に作動させるステップ(112)を含むことを特徴とする請求項11記載の方法(100)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−240438(P2010−240438A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89087(P2010−89087)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】