説明

患者結果の指標として有用なプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター‐1(PAI−1)ハプロタイプ

【課題】 本発明は、炎症状態を有する又はその発症リスクがある患者の予測のための方法及びキットを提供することを目的とする。
【解決手段】 患者のプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター−1遺伝子(PAI‐1)における1以上の遺伝子多型について、該患者のPAI‐1遺伝子型を判定し、該判定した遺伝子型と患者が炎症状態から回復する能力ないし可能性に対応する遺伝子多型について既知の遺伝子型とを比較することにより患者結果を予測し、そして、それらの予測に基づいて患者を識別(分類)する。また本発明は、該患者が炎症状態から回復する能力に対応するその他の遺伝子多型を識別(分類)する方法をも提供する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2003年3月19日に出願されたアメリカ合衆国仮出願 第60/455,550と関連があり、該仮出願は参照により本書に組み込む。
【技術分野】
【0002】
本発明は、患者の評価及び治療の分野に関し、より詳細には、患者の予後ないし医学上の見通しの判定及び治療の決定を行うための、一つ以上の遺伝子多型についての該患者の遺伝子型の判定に関する。
【背景技術】
【0003】
全身性炎症反応症候群(SIRS)は、上昇した炎症(抗炎症過程)、上昇した凝固(抗凝固過程)、及び、低下した線維素溶解によって特徴付けられる(SUFFREDINI AF et al. New England Journal of Medicine (1989) 320 (18) : 1165-72 ; HESSELVIK JF et al. Critical Care Mbedicine (1989) 17 (8) : 724-33 ; PHILIPPE J et al. Thrombosis & Haeniostasis (1991) 65 (3): 291-5; LORENTE JA et al. Chest (1993) 103 (5) : 1536- 42; FOURRIER F et al. Chest (1992) 101 (3): 816-23; MESTERS RM et al. (1996) 88 (3): 881-6.)。細菌内毒素及び人工心肺(CPB)のような感染性及び非感染性刺激は、凝固系の活性化及び全身性炎症反応症候群(SIRS)の引き金と関係している。プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI‐1)は、低下した線維素溶解と関係している(BINDER BR et al. News in Physiological Sciences (2002) 17: 56-61)。PAI-1濃度は、敗血症の患者(MESTERS RM et al. Thrombosis & Haemostasis. (1996) 75 (6): 902-7; PRALONG G et al. Thrombosis & Haemostasis. (1989) 61 (3): 459-62)、髄膜炎菌の患者(HERMANS PW et al. Lancet. (1999) 354 (9178): 556-60)、及び、外傷の患者(MENGES T et al. Lancet (2001) 357 (9262): 1096-7)、において増加していると報告されている。更に、PAI−1濃度の増加は、生存率の低下及び臓器不全と関係している(MESTERS RM et al. (1996); PRALONG G et al. (1989))。
【0004】
ヒトPAI−1遺伝子は染色体7q21−q22に位置し、凡そ12kbに及ぶ。代表的なヒトPAI−1遺伝子配列が、アクセッション番号AF386492としてGenBankのリストに組み込まれている(本書の配列番号1を参照)。DAWSONらは(Journal of Biological Chemistry (1993) 268 (15) : 10739-45)、PAI−1プロモーター配列の位置 −675に挿入/欠失多型(4G/5G)を同定した(該多型は、配列番号1の位置837に相当する)。4Gアレルは、PAI−1遺伝子の1塩基対欠失のプロモーター遺伝子多型 であり、PAI−1の上昇したタンパク質濃度と関連がある(DAWSON SJ et al. (1993); DAWSON SJ et al. Arteriosclerosis & Thrombosis (1991) 11 (1) : 183-90)。4Gアレルのこの1塩基変異多型(SNP)は、深部静脈血栓症(SEGUI R et al. British Journal of Haematology (2000) 111 (1) : 122-8)、脳卒中 (HINDORFF LA et al. Journal of Cardiovascular Risk (2002) 9 (2): 131-7)、急性心筋梗塞 (BOEKHOLDT SM et al. Circulation (2001) 104 (25): 3063-8; ERIKSSON P et al. PNAS (1995) 92 (6): 1851-5. )、冠動脈ステント留置後の遅発性管腔損失 (ORTLEPPG JR et al. Clinical Cardiology (2001) 24 (9): 585-91)、及び、突然心臓死 (ANVARI A et al. Thrombosis Research (2001) 103 (2): 103-7; MIKKELSSON J et al. Thromboses & Haemostasis (2000) 84 (1): 78-82)のリスク増加と関連がある。重病の場合において、4Gアレルは、重度の外傷(MENGES T et al. Lancet (2001) 357 (9262): 1096-7)及び髄膜炎菌血症(HERMANS PW et al. Lancet. (1999) 354 (9178) : 556-60)の患者における生存率の低下、並びに、髄膜炎菌血症の患者におけるショック状態のリスク増加(WESTENDORP RG et al. Lancet (1999) 354 (9178) : 561-3)とも関連がある。PAI−1 4G遺伝子型は、有害な患者結果とも関連がある((MENGES et al. (2001) ; HERMANS et al. (1999); WESTENDORP RG et al. (1999); ENDLER G et al. British Journal of Haematology (2000) 110 (2): 469-71; GARDEMANN A et al. Thrombosis & Haemostasis (1999) 82 (3): 1121-6 ; HOOPER WC et al. Thrombosis Research (2000) 99 (3): 223-30; JONES K et al. European Journal of Vasclar & Endovascular Surgery (2002) 23 (5): 421-5; HARALAMBOUS E. et al. Crit Care Med (2003) 31 (12): 2788-93 ; 及び、ROEST M et al. Circulation (2000) 101 (1) : 67-70)。PAI−1の4G/4G遺伝子型は、急性肺障害に罹患した患者におけるPAI−1濃度と関連がある(RUSSELL JA Crit Care Med. (2003) 31 (4): S243-S247)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター‐1(PAI−1)遺伝子内の4G/5G多型以外の遺伝子多型を利用して、炎症状態にある患者結果を正確に予測する方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(PAI−1) 4G/5Gプロモーター多型が、配列番号1の位置12580におけるSNPのようには正確に患者結果を予測しないという、意外な発見に、部分的には基づくものである。さらに、SNP 12580と連鎖不平衡(LD)にある他の種々のPAI−1多型を、患者結果の指標として患者スクリーニングに、又は、炎症状態からの回復の予測に、又は、炎症状態にある患者のテーラーメード医療に、又は、PAI−1 12580遺伝子型及びハプロタイプに基づく患者に対する治療法の選択に、有用であるものとして同定した。驚くべきことに、患者結果の予測因子としてここで同定されたSNPsは、低いPAI−1血中濃度とも対応していた。
【0007】
本発明の一側面によれば、炎症状態を有するかその発症の危険がある患者に関する予後ないし医学上の見通しを得るための方法であって、該患者のPAI−1遺伝子の1以上の多型部位を含む遺伝子型(但し、該遺伝子型は該患者が炎症状態から回復する能力の指標をなし、選択された遺伝子型は配列番号1の位置837のみに対応するものではない)を判定することを含む方法である。
【0008】
本発明のもう一つの側面によれば、炎症状態を有するかその発症の危険がある患者に関する予後ないし医学上の見通しを得るための方法であって、該患者のPAI−1遺伝子の、位置664、2037、2362、2852、5834、5878、7343、13605、7365、7729、7771、12750、4588、5404、5686、5984、11312、2846、6821、9759、10381、7365、7729、7771、12750、4588、5404、5686、5984、11312、5645、7121、7437、8070、8406、9463、9466、12219、12580、13889、14440から選択される1以上の多型部位の遺伝子型を判別することを含む(但し、該遺伝子型は該患者が炎症状態から回復する能力の指標をなす)。
【0009】
本発明の一側面によれば、炎症状態を有するかその発症の危険がある患者に関する予後ないし医学上の見通しを得るための方法であって、該患者のPAI−1遺伝子の1以上の多型部位を含む遺伝子型(但し、該遺伝子型は該患者が炎症状態から回復する能力の指標をなし、該多型が配列番号1の位置1581から14544によって規定される領域から選択される)を判定することを含む方法である。
【0010】
多型部位は配列番号1の位置12580に対応するか又はそれと連鎖する多型部位に対応してもよい。或いは、多型部位は配列番号1の位置5645、7121、7437、8070、8406、9463、9466、12219、13889又は14440に対応していてもよい。
【0011】
遺伝子型は複数の多型部位の組み合わせで判定されてもよく、組み合わせは、以下の配列番号1の対応する位置から成る群から選択される:
664及び2037;
664及び2362;
664及び2852;
664及び5834;
837及び2037;
837及び2362;
837及び2852;
837及び5834;
5878、7343、13605のうち一つ及び7365、7729、7771、12750のうち一つ及び4588、5404、5686、5984、11312のうち一つ; 並びに、
2846、6821、9759のうち一つ及び10381及び7365、7729、7771、12750のうち一つ及び4588、5404、5686、5984、11312のうち一つ。
【0012】
或いは、遺伝子型は、配列番号1の1581−14544の中に存在する多型(プロモーター領域にある多型は除外する)について判定してもよい。好ましくは、遺伝子型は、配列番号1の5645、7121、7437、8070、8406、9463、9466、12219、12580、13889又は14440より成る群から選択される多型について判定される。
【0013】
本発明のもう一つの側面によれば、該患者が同一の炎症状態から回復する又は別の炎症状態から回復する予後ないし医学上の見通しの指標をなす既知の遺伝子型で判定されるような遺伝子型を、更に含む方法が提供される。
【0014】
患者の遺伝子型は、炎症状態からの回復の可能性減少の指標、又は、重度の疾病の患者における心血管若しくは呼吸器の機能障害の重篤度の指標であってもよい。更に、そのような遺伝子型は、以下から成る一塩基多型部位及び組み合わされた多型部位の群から選択されてもよい:
5645 T;
7121 G;
7437 T;
8070 A;
8406 C;
9463 G;
9466 T;
12219 C;
12580 G;
13889 C;
14440 A;
664 A及び2037 T;
664 A及び2362 −;
664 A及び2852 A;
664 A及び5834 A;
837 −及び 2037 T;
837 −及び 2362 −;
837 −及び 2852 A; 並びに、
837 −及び 5834 A。
【0015】
患者の遺伝子型は、炎症状態からの回復の可能性の増加の指標、又は、重度の疾病の患者における心血管若しくは呼吸器の機能障害の重篤度が小さくなる指標であってもよい。更に、そのような遺伝子型は、以下から成る一塩基多型部位及び組み合わされた多型部位の群から選択されてもよい:
5645 C;
7121 A;
7437 C;
8070 G;
8406 T;
9463 A;
9466 C;
12219 T;
12580 T;
13889 T;
14440 G;
5878 G、7343 G、13605 Aのうち1つ及び7365 T、7729+、7771 A、12750 Aのうち1つ及び4588 T、5404 G、5686 A、5984 A、11312 Aのうち一つ; 並びに、
2846 A、6821 T、9759 Gのうち1つ及び10381 T及び7365 T、7729 +、7771 A、12750 Aのうち一つ及び4588 T、5404 G、5686 A、5984 A、11312 Aのうち1つ。
【0016】
本発明の他の一側面によれば、患者の予後と関連するPAI‐1遺伝子配列中の多型を同定する方法が提供される。この方法は、患者群からPAI‐1遺伝子配列情報を得ること、該PAI‐1遺伝子中の少なくとも1つの多型の部位を同定すること、該患者群内の個々の患者に関する該部位における遺伝子型を決定すること、該患者群内の個々の患者の炎症状態から回復する能力(ないし可能性)を決定すること、及び決定された遺伝子型と患者の治療可能性との相関性を求めることを含む。
【0017】
上記相関性決定方法は、十分に有意な相関性を達成するために、十分な大きさの患者母集団に対して繰り返し実行することも可能である。
【0018】
本発明の方法は、更に、患者のPAI‐1遺伝子配列を得るステップ又は患者から核酸試料を得るステップを含む。遺伝子型の決定は、患者からの核酸試料に対して実行してもよい。
【0019】
位置12580のヌクレオチドに対応する患者の遺伝子型がGである場合、予後は、炎症状態から回復する見込みないし可能性の減少、又は重病患者の重篤な心血管又は呼吸器障害を示し得る。
【0020】
位置12580のヌクレオチドに対応する患者の遺伝子型がTである場合、予後は、炎症状態から回復する見込みないし可能性の増加、又は重病患者の重篤度の低い心血管又は呼吸器障害を示し得る。
【0021】
炎症状態は、腐敗症、敗血症、肺炎、敗血症ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺障害、感染、膵炎、菌血症、腹膜炎、腹部膿瘍、外傷に起因する炎症、手術に起因する炎症、慢性炎症疾患、虚血、臓器若しくは組織の虚血‐再灌流損傷、疾患に起因する組織傷害、化学療法若しくは放射線療法に起因する組織傷害、及び、経口摂取された、吸入された、注入された、注射された若しくは送達された物質に対する反応、糸球体腎炎、腸感染、日和見感染、及び、大手術若しくは透析を受ける患者、免疫無防備状態の患者、免疫抑制剤を投与された患者、HIV/エイズの患者、疑わしい心内膜炎の患者、発熱した患者、未知の原因で発熱した患者、嚢胞性線維症の患者、糖尿病の患者、慢性腎不全の患者、気管支拡張の患者、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫若しくは喘息の患者、熱性好中球減少の患者、髄膜炎の患者、敗血性関節炎の患者、尿路感染の患者、壊死性筋膜炎の患者、他の疑わしいグループA連鎖球菌感染の患者、脾臓摘出を受けた患者、再発性若しくは疑わしい腸球菌感染の患者に対して、感染リスクの増大と関係するその他の内科的及び外科的状態、グラム陽性敗血症、グラム陰性敗血症、培養陰性敗血症、真菌敗血症、髄膜炎菌血症、ポスト-ポンプ症候群、心臓機能不全症候群、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、肝炎、喉頭蓋炎、大腸菌0157:H7、マラリア、ガス壊疸、毒素ショック症候群、放線菌の結核、カリニ肺炎、肺炎、レーシュマニア症、溶血性尿毒症候群/血栓性血小板減少性紫斑病、デング熱、骨盤炎症性疾病、レジオネラ、ライム病、インフルエンザA、EBウイルス、脳炎、 関節リウマチ、骨関節炎、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾病、特発性肺線維症、サルコイドーシス、過感受性間質性肺炎、全身性血管炎、ウェゲナー肉芽腫症を含む炎症性及び自己免疫性の疾病、 心臓、肝臓、肺、腎臓及び骨髄を含む移植、 移植片対宿主疾病、移植(片)拒絶反応、鎌形赤血球貧血、ネフローゼ性症候群、OKT3のような有毒性薬剤、サイトカイン療法、及び、肝硬変 からなる群から選択され得る。
【0022】
遺伝子型の決定は、制限酵素断片長多型分析;シークエンシング;ハイブリダイゼーション;オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ;ライゲーションローリングサークル増幅;5’ヌクレアーゼアッセイ;ポリメラーゼプルーフリーディング法;アレル特異的PCR、及び配列データの読み取り、の1又はそれ以上を含み得る。
【0023】
本発明の他の一側面によれば、患者が炎症状態から回復する能力(ないし可能性)の予後を提供するために、該患者のPAI‐1遺伝子配列の多型部位内の所定のヌクレオチド位置において遺伝子型を決定するためのキットであって、該多型部位において入れ替わった(alternate)ヌクレオチドを識別可能な制限酵素、又は該多型部位に対する十分な相補性を有しかつ該入れ替わったヌクレオチドを識別可能な標識されたオリゴヌクレオチドを、パッケージ内に含むキットが提供される。
【0024】
前記入れ替わったヌクレオチドは、配列番号1の位置12580、配列番号2の位置10、又はそれ(ら)と連鎖した多型に対応し得る。また、該入れ替わったヌクレオチドは、配列番号1の位置5645、7121、7437、8070、8406、9463、9466、12219、13889又は14440の1又はそれ以上に対応し得る。
【0025】
制限酵素を有するキットは、多型部位を包囲する領域の増幅に好適な1つのオリゴヌクレオチド又は複数のオリゴヌクレオチドのセット、重合剤、及び遺伝子型を決定するためのキットの使用説明書も含み得る。
【0026】
本発明の他の一側面によれば、炎症状態を有するかその発症の危険がある患者における患者予後を決定するための方法であって、PAI‐1プロモーター領域中の1又はそれ以上の多型の個性(identity)であって、該患者の該炎症状態から回復する能力ないし可能性を示す1又はそれ以上の多型の個性を検出することを含む方法が提供される。
【0027】
本発明の他の一側面によれば、(a)患者からPAI‐1遺伝子配列情報を得るステップ、及び(b)プロモーター領域中の1又はそれ以上の多型であって、患者が炎症状態から回復する能力ないし可能性を示し得る1又はそれ以上の多型の個性を決定するステップを含む患者スクリーニングを実行する方法が提供される。
【0028】
本発明の他の一側面によれば、(a)炎症状態を発症する危険又は炎症状態を現に有していることに基づき患者を選択するステップ、(b)当該患者からPAI‐1遺伝子配列情報を得るステップ、及び(c)該PAI‐1遺伝子中の1又はそれ以上の多型であって、患者が炎症状態から回復する能力ないし可能性を示す多型を検出するステップを含む患者スクリーニングを実行する方法が提供される。
【0029】
本発明の他の一側面によれば、炎症状態の治療に有用であることが既知又は推測される候補薬物の効果を判定するために患者群を選択するための方法が提供され、該方法は、各患者のプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター‐1遺伝子内の1以上の多型についての遺伝子型を判定すること(ここで該遺伝子型は炎症状態から該患者が回復する能力を示す)及びそれらの遺伝子型に基づいて患者を識別(分類)することを含む(但し、該多型部位は配列番号1の位置837に対応する部位の多型のみではない)。
【0030】
前記方法は、患者の遺伝子型に基づいて候補薬物と該患者の反応ステップを付加的に含んでいても良い。候補薬物への反応は、各患者が炎症状態から回復する能力を測定することによって判定する。
【0031】
上記の配列位置は、PAI‐1遺伝子のセンス鎖に関する。分析は患者結果を決定するためにアンチセンス鎖に対しても実行可能であることは当業者には明らかである。
【0032】
より重篤な患者結果又は予後は、より少ないPAI‐1発現と関係付けることができ、又は逆にいえば重篤度がより小さい患者結果又は予後の指標は、より多いPAI‐1発現と関係付けることができるが、これは、予期されたことと反対である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
1. 定義
本明細書中において、広範に使用される多くの用語があるが、以下の定義は本発明の理解を促進する目的で提供されるものである。
【0034】
「遺伝物質(Genetic material)」は、任意の核酸を含み、一本鎖又は2本鎖型のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドで有り得る。
【0035】
「プリン」は、融合ピリミジン及びイミダゾール環を含む複素環の有機化合物であり、プリン塩基のアデニン(A)及びグアニン(G)の親化合物として機能する。「ヌクレオチド」は、一般に、ペントース、通常、リボース又はデオキシリボースと共有結合したプリン(R)又はピリミジン(Y)塩基である。なお、この糖は、1又はそれ以上のリン酸基を担持する。核酸は、一般に、3’5’リン酸ジエステル結合により結合したヌクレオチドのポリマーである。本書で使用する場合、「プリン」は、プリン塩基、即ちA及びGを指称するために使用するが、広義では、ポリヌクレオチド鎖の成分としての、ヌクレオチドモノマー、即ち、デオキシアデノシン−5’−リン酸及びデオキシグアノシン−5’−リン酸をも意味するものとする。
【0036】
「ピリミジン」は、ヌクレオチド塩基、即ちシトシン(C)、チミン(T)及びウラシル(U)を構成する単環式有機塩基である。本書で使用する場合、「ピリミジン」は、ピリミジン塩基、即ちC、T及びUを指称するために使用されるが、広義では、プリンヌクレオチドと共にポリヌクレオチド鎖の成分をなすピリミジンヌクレオチドモノマーをも意味するものとする。
【0037】
「多型性部位(polymorphic site)」又は「多型部位(polymorphism site)」又は「多型(polymorphism)」又は「一塩基多型部位」(SNP部位)は、本書で使用される場合、所定の配列内において相違が生じている座位ないし位置である。「多型」は、集団内で、2以上の遺伝子の型又は遺伝子内の位置の型(アレル)が、最も稀な型の存在が突然変異だけで説明できない程度の頻度で生じていることである。多型性アレルは、宿主において、いくらかの選択的な利点を授与している可能性がある。好ましい多型性部位は、選択された母集団において1%以上の頻度、好ましくは10%又は20%の頻度でそれぞれ現れる少なくとも2つのアレルを有する。多型部位は、ある核酸配列内の既知の位置であってもよく、本書に記載した方法によって存在が特定されてもよい。多型は、コーディング領域及び非コーディング領域(例えば、上流のプロモーター)の両者において、出現してよい。
【0038】
「クレード(clade)」は、系統学的に近い関係にあるハプロタイプの群である。例えば、ハプロタイプが系統(進化的な)樹で表される場合、一つのクレードは同じ枝内に含まれる全てのハプロタイプを含む。
【0039】
本書では、「ハプロタイプ」とは、染色体上の密接に連鎖する遺伝子座位のアレルのセット(それらは一緒に遺伝する傾向にある)を言い;一般に、主要組織適合遺伝子複合体の連鎖した遺伝子との関係で使用される。
【0040】
本書において、「連鎖不均衡(linkage disequilibrium)」とは、遺伝子座位におけるアレル頻度から予想されるよりも大きな割合で、連鎖したアレルの確実な結合が、集団内で生じていることを言う。
【0041】
PAI‐1遺伝子における多型として、その他の多数の多型部位が同定されており、それらの多型は配列番号1の位置12580の多型と連鎖しており、また、そのため患者予後の指標となるかもしれない。以下の1塩基多型部位及び多型部位の組み合わせは、配列番号1の位置12580と連鎖している:5645; 7121; 7437; 8070; 8406; 9463; 9466; 12219; 13889; 14440; 664及び2037; 664及び2362; 664及び2852 ; 664及び5834; 837及び2037; 837及び2362; 837及び2852; 並びに、837及び5834。
【0042】
位置12580と更に連鎖する単独の多型部位及び複数の多型部位の組み合わせが決定可能であることは当業者であれば認識できる。PAI−1のハプロタイプは、期待最大化(expectation maximization)アルゴリズムを有するプログラム(即ち、PHASE)を用いて正常な被検体におけるPAI−1のスニップスを評価することにより生成することができる。構築されたPAI−1のハプロタイプは、12580に関し総(total)連鎖不平衡(LD)にあるスニップスの組み合わせを発見するために使用することも可能である。従って、1つの個体のハプロタイプは、12580に関し総LDにある他のスニップスの遺伝子型を求めることにより決定することも可能である。結合された単独の多型部位又は複数の多型部位の組み合わせは、患者の予後を評価するために、遺伝子型を同定することも可能である。
【0043】
単独の多型部位及び複数の多型部位の組み合わせに関する以下の遺伝子型は、炎症状態からの回復の見込みないし可能性の低下を示すことができ、又は重病患者の重篤な心血管又は呼吸器障害を示すことができる:
5645 T;
7121 G;
7437 T;
8070 A;
8406 C;
9463 G;
9466 T;
12219 C;
12580 G;
13889 C;
14440 A;
664 A及び2037 T;
664 A及び2362 −;
664 A及び2852 A;
664 A及び5834 A;
837 −及び2037 T;
837 −及び2362 −;
837 −及び2852 A; 並びに、
837 −及び5834 A。
【0044】
単独の多型部位及び複数の多型部位の組み合わせに関する以下の遺伝子型は、炎症状態からの回復の見込みないし可能性の上昇を示すことができ、又は重病患者の重篤度の低い心血管又は呼吸器障害を示すことができる:
8070 G;
8406 T;
9463 A;
9466 C;
12219 T;
12580 T;
13889 T;
14440 G;
5878 G、7343 G、13605 Aのうち1つ及び7365 T、7729 +、7771 A、12750 Aのうち1つ及び4588 T、5404 G、5686 A、5984 A、11312 Aのうち一つ;
並びに、
2846 A、6821 T、9759 Gのうち1つ及び10381 T及び7365 T、7729 +、7771 A、12750 Aのうち一つ及び4588 T、5404 G、5686 A、5984 A、11312 Aのうち1つ。
(但し、「+」は1つの挿入を、「−」は一つの欠失を表す)
【0045】
(1つの)配列内の(複数の)多型の位置の数値名称が特定の配列に対して相対的なものであることは、当業者であれば認識できる。上掲DAWSON et al. (1993)における対応する多型の異なるナンバリング法によって説明されたように、同じ位置同士が、配列がナンバリングされ及び配列が選択される態様に応じて異なる数値名称を付与されこともまたあり得る。更に、挿入又は削除のような、母集団内での配列変化により、多型部位における及びその周囲における特定のヌクレオチドの相対位置に従って数値名称が変化し得る。
【0046】
後掲 表1Aは、ヒト プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター‐1(PAI−1)又はセリン‐システインプロテイナーゼインヒビター クレードE メンバー1(SERPINE1)遺伝子配列の代表例であり、GenBankにアクセッション番号AF386492で登録された配列を含む。PAI−1の4G/5G多型は、DAWSON et al.のナンバリングシステムを用いて−675G/−、として記述されるスニップスに対応し、表1A(配列番号1)の位置837に対応する。後掲表1A中において示す多型部位は、太字かつ下線の字である。多型はメジャーのアレルによって表している(図1の暗色のセル)。PAI−1遺伝子の主要な多型部位のメジャー及びマイナーのアレルを以下の通りである:
位置5445で最も一般的なヌクレオチド(メジャーアレル)はであり、マイナーアレルはである;
位置837で最も一般的なヌクレオチド(メジャーアレル)はであり、マイナーアレルはである;
位置5445で最も一般的なヌクレオチド(メジャーアレル)はであり、マイナーアレルはである;
位置7121で最も一般的なヌクレオチド(メジャーアレル)はであり、マイナーアレルはである;
位置7437で最も一般的なヌクレオチド(メジャーアレル)はであり、マイナーアレルはである;
位置8070で最も一般的なヌクレオチド(メジャーアレル)はであり、マイナーアレルはである;
位置8406で最も一般的なヌクレオチド(メジャーアレル)はであり、マイナーアレルはである;
位置9463で最も一般的なヌクレオチド(メジャーアレル)はであり、マイナーアレルはである;
位置9466で最も一般的なヌクレオチド(メジャーアレル)はであり、マイナーアレルはである;
位置12219で最も一般的なヌクレオチド(メジャーアレル)はであり、マイナーアレルはである;
位置12580で最も一般的なヌクレオチド(メジャーアレル)はであり、マイナーアレルはである;
位置13889で最も一般的なヌクレオチド(メジャーアレル)はであり、マイナーアレルはである;
位置14440で最も一般的なヌクレオチド(メジャーアレル)はであり、マイナーアレルはである。
【0047】
【表1−A】













【0048】
以下の表1Bに示した配列は、上掲表1Aに示したPAI−1配列から抜き出した配列フラグメントである。更に、配列番号2は、上掲表1Aにおいて位置12571−12590に対応する。配列番号2の位置10のヌクレオチドは、配列番号1の位置12580に見出されるヌクレオチドに対応する。後掲表2Bに記載した配列のすべてにおいて、太字でかつ下線のtで表される多型は、で置換されてもよい。更に、表2Bの配列番号3〜11においてで表した太字のかつ下線を引いたヌクレオチドは、すべて、配列番号1の位置12580に見出されるヌクレオチドに対応する。PAI−1配列における変化ないし変異が可能であるため、以下の配列モチーフは、遺伝子型決定に好適な患者からのPAI−1配列の同定に有用であり得る。例えば、以下のモチーフ(配列番号3〜11)と整列(一致)する患者配列は、当該患者配列がPAI−1配列であること、及び、太字のかつ下線を引いたtにより占められる位置で見出されるヌクレオチドが配列番号1の位置12580における多型に対応し、そのため遺伝子型決定に好適であること、を示し得る。本書で同定された他の多型部位に同様のストラテジーを適用することも可能である。
【0049】
【表1−B】

【0050】
「アレル(対立遺伝子)」は、所与の遺伝子の1又はそれ以上の変わり得る任意の型として定義される。二倍体細胞又は生物においては、アレル対のメンバー(即ち、所与の遺伝子の2つのアレル)は、一対の相同染色体において対応する位置(座位ないし遺伝子座)を占有する。特定の遺伝子に関し、これらアレルが遺伝的に同一であれば、当該(二倍体)細胞又は生物は「ホモ接合体」と指称され、遺伝的に異なる場合は、当該(二倍体)細胞又は生物は「ヘテロ接合体」と指称される。
【0051】
「遺伝子」は、特定の機能性産物をコードする特定の染色体の特定の位置に位置するヌクレオチドの規則正しい配列であるが、当該コード領域に近接する非翻訳・非転写配列も含み得る。そのような非コード配列は、コード配列の転写・翻訳に必要な制御配列又はイントロン等を含み得る。
【0052】
「遺伝子型」は、生物の遺伝的構成として定義されるが、通常特定の状況に関連する1つの遺伝子又は2〜3の遺伝子又は1つの遺伝子の1つの領域(即ち、特定の表現型の原因をなす遺伝子座)に関する。
【0053】
「表現型」は、生物の観察可能な性質として定義される。
【0054】
「一塩基多型」(SNP:スニップ)は、1つの塩基によって占有される多型性部位において生起するが、これは、複数のアレル配列間の相違の部位に相当する。この部位の前後には、通常、アレルの高保存配列(例えば、母集団の1/100ないし1/1000未満の構成員において変化する配列。)が存在する。一塩基多型は、通常、多型性部位における1つの塩基の他の塩基による置換によって生起する。「トランジション」は、1つのプリンの他の1つのプリンによる置換又は1つのピリミジンの他の1つのピリミジンによる置換である。「トランスバージョン」は、1つのプリンの1つのピリミジンによる置換又は1つのピリミジンの1つのプリンによる置換である。また、一塩基多型は、基準アレル(reference allele)に関連する1つのヌクレオチドの削除(「−」又は「del」によって表す)又は1つのヌクレオチドの挿入(「+」又は「ins」によって表す)からも生起し得る。更に、所与の配列内における挿入又は削除により、相対的な位置関係が変化され、従って当該配列内における他の多型の位置番号も変化され得ることは、当業者であれば認識できるであろう。
【0055】
「全身性炎症反応症候群」ないし(SIRS)は、敗血性全身性炎症反応(即ち、腐敗症ないし敗血症又は敗血性ショック)及び非敗血性全身性炎症反応(即ち、術後の反応)の両者を含むものとして定義される。「SIRS」は、更に、ACCP(アメリカ胸部内科学会:American College of Chest Physicians)ガイドラインに応じ、A)温度>38℃又は<36℃、B)心拍数>90拍/分、C)呼吸数>20息/分、及びD)白血球数>12,000/mm又は<4,000/mmの条件のうちの2又は3以上が存在として定義される。以下の記載においては、「SIRS」基準のうちの2つ、3つ又は4つの存在が、28日間の観察期間の間毎日記録された。
【0056】
「腐敗症ないし敗血症(sepsis)」は、少なくとも2つの「SIRS」基準の存在として定義され、既知の又は疑いのある感染源である。敗血症ショックは、腐敗症と、ブラッセル基準による1つの更なる臓器の機能不全と、昇圧剤投与の必要性との3つによって定義されている。
【0057】
本書で使用する場合の患者の結果又は予後とは、炎症状態から回復する患者の能力ないし可能性をいうものとする。炎症状態は、腐敗症、敗血症、肺炎、敗血症ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺障害、感染、膵炎、菌血症、腹膜炎、腹部膿瘍、外傷に起因する炎症、手術に起因する炎症、慢性炎症疾患、虚血、臓器若しくは組織の虚血‐再灌流損傷、疾患に起因する組織傷害、化学療法若しくは放射線療法に起因する組織傷害、及び、経口摂取された、吸入された、注入された、注射された若しくは送達された物質に対する反応、糸球体腎炎、腸感染、日和見感染、及び、大手術若しくは透析を受ける患者、免疫無防備状態の患者、免疫抑制剤を投与された患者、HIV/エイズの患者、疑わしい心内膜炎の患者、発熱した患者、未知の原因で発熱した患者、嚢胞性線維症の患者、糖尿病の患者、慢性腎不全の患者、気管支拡張の患者、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫若しくは喘息の患者、熱性好中球減少の患者、髄膜炎の患者、敗血性関節炎の患者、尿路感染の患者、壊死性筋膜炎の患者、他の疑わしいグループA連鎖球菌感染の患者、脾臓摘出を受けた患者、再発性若しくは疑わしい腸球菌感染の患者に対して、感染リスクの増大と関係するその他の内科的及び外科的状態、グラム陽性敗血症、グラム陰性敗血症、培養陰性敗血症、真菌敗血症、髄膜炎菌血症、ポスト-ポンプ症候群、心臓機能不全症候群、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、肝炎、喉頭蓋炎、大腸菌0157:H7、マラリア、ガス壊疸、毒素ショック症候群、放線菌の結核、カリニ肺炎、肺炎、レーシュマニア症、溶血性尿毒症候群/血栓性血小板減少性紫斑病、デング熱、骨盤炎症性疾病、レジオネラ、ライム病、インフルエンザA、EBウイルス、脳炎、 関節リウマチ、骨関節炎、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾病、特発性肺線維症、サルコイドーシス、過感受性間質性肺炎、全身性血管炎、ウェゲナー肉芽腫症を含む炎症性及び自己免疫性の疾病、 心臓、肝臓、肺、腎臓及び骨髄を含む移植、 移植片対宿主疾病、移植(片)拒絶反応、鎌形赤血球貧血、ネフローゼ性症候群、OKT3のような有毒性薬剤、サイトカイン療法、及び、肝硬変 からなる群から選択され得る。
【0058】
患者結果又は予後の評価は、種々の方法で実行することができる。例えば、“APACHE II”スコアは、cute hysiology nd hronic ealth valuation(急性生理機能及び慢性健康評価)として定義され、本書においては、生の臨床及び実験変数(データ)から毎日計算した。ヴィンセント(Vincent et al.. Scoring systems for assessing organ dysfunction and survival. Critical Care Clinics. 16:353-366, 2000)は、APACHEスコアについて以下のように要約している:「(APACHEスコアは)1981年、クナウス(Knaus)et al.によって初めて開発された。APACHEスコアは、世界中で最も一般的に使用されるICU生存予測モデルとなった。APACHE IIスコアは、オリジナルのプロトタイプを修正・簡略化したバージョンであるが、12の常用生理学的尺度の初期値、年齢及び以前の健康状態に基づいたポイントスコアを使用して、疾患の重症度の一般的尺度を提供する。記録される値(複数)は、ICUにおける患者の最初の24時間の間に得られる最悪の値(複数)である。スコアは、疾患特異的死亡率(APACHE II予測致死リスク)を評価するために、34の入院患者診断の1つに適用される。APACHE IIスコアの可能な最大値は71であり、大きなスコアは、死亡との関連性が大きかった。APACHE IIスコアは、臨床試験に入る際の疾患の重症度により、腐敗症の患者を含む重病患者の種々のグループ間での等級分類及び比較のために広く使用された」。
【0059】
「ブラッセルスコア」スコアは、ベースラインと比較した臓器の機能障害を評価するための方法である。ブラッセルスコアが2以上の場合(即ち、中度、重度、又は極重度)、臓器不全が、その特定の日に存在するものとして記録された(後掲 表1C参照)。以下の記載では、観察期間中の死亡を補正するために、生存しており且つ臓器不全から免れている日数(DAF)が、以前に記載した方法で計算された。例えば、急性肺障害は、以下のようにして計算された。急性肺障害は、患者が以下の4つの基準を全て充足した場合に存在するものとして定義される。この4つの基準とは、1)機械による人工呼吸の必要、2)急性肺障害と一致する胸部X線写真における両側の肺の浸潤(の存在)、3)PaO/FiO比が300未満、4)鬱血性心不全の臨床的証拠の不存在又は肺動脈カテーテルが臨床目的のために適用される場合、肺毛細管楔入圧が18mmHg(1)未満、である。急性肺障害の重症度は、28日間の観察期間にわたって生存しており且つ急性肺障害から免れている日数を測定することによって評価される。急性肺障害は、患者がブラッセルスコアで定義されるような中度、重度又は極重度の機能障害を有する日毎に存在するものとして記録される。生存しており且つ急性肺障害から免れている日数は、所定の観察期間(28日間)の間に急性肺障害が発症した後で患者が生存しており且つ急性肺障害を免れている日数として計算される。従って、生存しており且つ急性肺障害から免れている日数のより低いスコアは、急性肺障害がより深刻であることを示す。生存しており且つ急性肺障害から免れている日数が、急性肺障害の単なる存在又は不存在よりも好まれる理由は、急性肺障害は急性死亡率が大きく、(28日以内の)早期の死亡は死亡した患者における急性肺障害の存在又は不存在の計算を妨げることである。心血管系、腎臓、神経系、肝臓及び凝固の機能障害は、患者がブラッセルスコアによって定義されるような中度、重度又は極重度の機能障害を有する日毎に存在するものとして同様に定義された。生存しており且つステロイドから免れている日数は、患者が生存し且つ外因性副腎皮質ステロイド(例えば、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン)で治療されていない日数である。生存しており且つ昇圧剤から免れている日数は、患者が生存し且つ静脈内昇圧剤(例えば、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン、フェニレフリン)で治療されていない日数である。生存しており且つ国際標準化比(INR:International Normalized Ratio)>1.5から免れている日数は、患者が生存し且つINR>1.5ではない日数である。
【0060】
【表1−C】

【0061】
分散分析(ANOVA)は、測定のセット間の統計的有意差を試験するための標準的な統計的手法である。
【0062】
フィッシャー正確検定は、異なるグループで測定された特徴の比率及び割合の間の統計的有意差を試験するための標準的な統計的手法である。
【0063】
2.一般的方法
本発明の一側面は、炎症状態の発症の危険を有するか又は既に炎症状態を有する患者の同定ないし患者の選択を含み得る。例えば、大手術を受けた又は大手術の予定ないし計画のある患者は、炎症状態の発症の危険があるとみなすことができる。更に、患者は、医療分野で既知の診断方法及び臨床評価を用いて炎症状態を有すると決定されてもよい。炎症状態は、腐敗症、敗血症、肺炎、敗血症ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺障害、感染、膵炎、菌血症、腹膜炎、腹部膿瘍、外傷に起因する炎症、手術に起因する炎症、慢性炎症疾患、虚血、臓器若しくは組織の虚血‐再灌流損傷、疾患に起因する組織傷害、化学療法若しくは放射線療法に起因する組織傷害、及び、経口摂取された、吸入された、注入された、注射された若しくは送達された物質に対する反応、糸球体腎炎、腸感染、日和見感染、及び、大手術若しくは透析を受ける患者、免疫無防備状態の患者、免疫抑制剤を投与された患者、HIV/エイズの患者、疑わしい心内膜炎の患者、発熱した患者、未知の原因で発熱した患者、嚢胞性線維症の患者、糖尿病の患者、慢性腎不全の患者、気管支拡張の患者、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫若しくは喘息の患者、熱性好中球減少の患者、髄膜炎の患者、敗血性関節炎の患者、尿路感染の患者、壊死性筋膜炎の患者、他の疑わしいグループA連鎖球菌感染の患者、脾臓摘出を受けた患者、再発性若しくは疑わしい腸球菌感染の患者に対して、感染リスクの増大と関係するその他の内科的及び外科的状態、グラム陽性敗血症、グラム陰性敗血症、培養陰性敗血症、真菌敗血症、髄膜炎菌血症、ポスト-ポンプ症候群、心臓機能不全症候群、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、肝炎、喉頭蓋炎、大腸菌0157:H7、マラリア、ガス壊疸、毒素ショック症候群、放線菌の結核、カリニ肺炎、肺炎、レーシュマニア症、溶血性尿毒症候群/血栓性血小板減少性紫斑病、デング熱、骨盤炎症性疾病、レジオネラ、ライム病、インフルエンザA、EBウイルス、脳炎、 関節リウマチ、骨関節炎、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾病、特発性肺線維症、サルコイドーシス、過感受性間質性肺炎、全身性血管炎、ウェゲナー肉芽腫症を含む炎症性及び自己免疫性の疾病、 心臓、肝臓、肺、腎臓及び骨髄を含む移植、 移植片対宿主疾病、移植(片)拒絶反応、鎌形赤血球貧血、ネフローゼ性症候群、OKT3のような有毒性薬剤、サイトカイン療法、及び、肝硬変 からなる群から選択され得る。
【0064】
患者が炎症状態を発症する危険を有するか又は既に有していると同定されると、遺伝子配列情報は、当該患者から得ることができる。或いは、遺伝子配列情報は、当該患者から既に(上記同定前に)得られたものであってもよい。例えば、患者は、他の目的のための生物学的試料を既に提供していてもよく、全部又は一部が決定されかつ将来の使用のために保存された遺伝子配列を有していてもよい。遺伝子配列情報は、種々の異なる方法で得ることができ、遺伝物質を含有する生物学的試料の採取を伴ってもよい。とりわけ、遺伝物質は、1又はそれ以上の目的の配列を含み得る。身体試料を採取するための及び当該試料から遺伝物質を抽出するための多くの方法が当業者には知られている。遺伝物質は、血液、組織及び毛髪及びその他の試料から抽出することができる。生物物質からDNA及びRNAを分離単離するための方法は多数知られている。典型的には、DNAは生物試料から単離され得る。この場合、まず生物試料が溶解され、次いで時間の長さが変化可能な種々の多段階プロトコールの何れか1つに応じてライセートからDNAが単離される。DNA単離法は、フェノールの使用を伴い得る(サンブルック(Sambrook J.)et al., "Molecular Cloning", Vol.2, pp.9.14-9.23, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)及びオースベル(Ausubel)et al., "Current Protocols in Molecular Biology", Vol.1, pp. 2.2.1-2.4.5, John Wiley & Sons, Inc. (1994))。典型的には、生物試料を界面活性剤溶液で溶解し、ライセートのタンパク質成分を12〜18時間タンパク質分解酵素で消化する。次に、ライセートをフェノールで抽出して細胞成分の大部分を除去し、残余の水相を更に処理してDNAを単離する。ヴァンネス(Van Ness)et al.(米国特許第5,130,423号)に記載されたような他の方法では、非腐食性フェノール誘導体を用いて核酸を単離する。得られた調製物は、RNAとDNAの混合物である。
【0065】
DNA単離の他の方法では、非腐食性カオトロピック試薬を用いる。この方法は、グアニジン塩、尿素及びヨウ化ナトリウムの使用を基礎とするのであるが、カオトロピック水溶液中での生物試料の溶解及びそれに続く低級アルコールによる未精製DNAフラクションの沈殿を伴う。沈殿された未精製DNAフラクションの最終精製は、カラムクロマトグラフィー(アナレクツ(Analects), (1994) Vol. 22, No.4, ファルマシア・バイオテック社)又はコーラー(Koller)(米国特許第5,128,247号)に記載されたような未精製DNAのポリアニオン含有タンパク質への曝露を含む幾つかある方法のうち何れか1つによって達成することができる。
【0066】
ボットウェル(Botwell), D.D.L.(Anal. Biochem. (1987) 162: 463-465)に記載されているDNA単離の更なる方法は、6M塩酸グアニジン中における細胞の溶解、2.5倍量のエタノールの添加による酸性pHでのライセートからのDNAの沈殿、及びエタノールでのDNAの洗浄を伴う。
【0067】
チョムジンスキー(Chomezynski)(米国特許第5,945,515号)によって記載された方法のような、RNAとDNAの両方を単離するための他の方法も当業者には数多く知られている。チョムジンスキーの方法では、僅かに20分程度で遺伝物質を効率的に抽出することができる。エバンズ(Evans)とヒュー(Hugh)(米国特許第5,989,431号)は、中空膜フィルターを用いたDNAの単離方法を記載している。
【0068】
患者の遺伝子配列情報が当該患者から得られたら、当該情報に対し、PAI−1遺伝子中の1又はそれ以上の多型の個性又は遺伝子型を検出ないし決定するために更に評価を行うことができる。得られた遺伝物質が目的の配列を含有するとすれば、とりわけ、目的の患者のPAI−1プロモーター遺伝子型であって、配列番号の位置12580又は配列番号2の位置8に対応する(1つの)ヌクレオチドを含む遺伝子型の決定に関心がもたれるであろう。また、この目的の配列は、更に、他のPAI−1遺伝子多型を含み又は目的の多型を包囲する配列の一部を含み得る。(1又は複数の)一塩基多型又は他の多型の塩基個性又は遺伝子型の検出又は決定は、以下に列挙するものを含むがそれらに限定されない当業者には既知の多数の方法ないしアッセイの任意の1つによって達成することができる:
【0069】
制限酵素断片長多型(RFLP)ストラテジー ―RFLPゲル解析は、1つの遺伝子の複数の多型部位における複数のアレル間の識別に使用することができる。要約すれば、DNAの短セグメント(典型的には数百塩基対)をPCRで増幅する。可能であれば、一方の変異体アレルが存在すれば該短DNAセグメントを切断し、他方の変異体アレルが存在すれば該短DNAセグメントを切断しない特異的な制限酵素が選択される。この制限酵素で、PCR増幅したDNAをインキュベートした後、反応生成物をゲル電気泳動法を用いて分離する。そのため、このゲルを検査したとき現れる2つのより低分子量のバンド(電気泳動中、分子は、分子量がより小さいほど、より下方にゲル内を進行する)は、元のDNA試料が選択された制限酵素によって切断可能なアレルを有していたことを示す。これに対し、(PCR産物の分子量に関し)より大きい分子量のバンドが1つしか観察されない場合は、もとのDNA試料は、選択された制限酵素によっては切断不能なアレル変異体を有していたことを示す。最後に、より大きい分子量の1つのバンドとより小さい分子量の2つのバンドの両方が観察される場合は、元のDNA試料は、両方のアレルを含んでいた、従って患者はこの一塩基多型に対しヘテロ接合体であったことを示す;
【0070】
シークエンシング(塩基配列決定法) ―例えばシークエンシングのためのマクサム−ギルバート法(マクサムAM及びギルバートW. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1977) 74(4): 560-564)は、末端で標識されたDNAの特異的化学的切断を伴う。この方法では、標識された同じDNAの4つの試料が、それぞれ異なる化学反応にかけられて、特異的な塩基個性の1又はそれ以上のヌクレオチドにおいてDNA分子の優先的な切断が実行される。部分的切断のみが得られるように条件ないし状態が調節されるため、DNAフラグメントは各試料において生成されるが、その長さは、当該切断にかけられる(1又は複数の)ヌクレオチドのDNA塩基配列内での位置に依存する。部分的切断が行われた後、各試料は、異なる長さのDNAフラグメントを含むが、各フラグメントは、4つのヌクレオチドのうちの同じ1又は2のフラグメントで終端する。とりわけ、第1の試料では、個々のフラグメントはCで終端し、第2の試料では、個々のフラグメントはC又はTで終端し、第3の試料では、それぞれGで終端し、第4の試料では、それぞれA又はGで終端する。これら4つの反応の産物が、ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動によりサイズによって分離されるならば、DNA配列は、放射性バンドのパターンから読み取ることができる。この方法により、標識部位から少なくとも100塩基のシークエンシングが可能となる。他の方法としては、サンガー等によって刊行されたシークエンシングのジデオキシ法(Sanger et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1977) 74(12): 5463-5467)がある。サンガー法は、DNAポリメラーゼの酵素活性に基づいて種々の長さの配列依存性フラグメントを合成する。フラグメントの長さは、ジデオキシヌクレオチド塩基特異的ターミネーターのランダム導入によって決定される。次に、これらのフラグメントは、マクサム−ギルバート法の場合のようにゲルで分離され、視覚化され、配列が決定される。これらの方法を洗練しシークエンシング手順を自動化するために様々な改良が試みられた。また、RNAシークエンシング法も知られている。例えば、脳心筋炎ウイルスRNAのシークエンシングのためにジデオキシヌクレオチドと共に逆転写酵素が使用された(ツィンメルン(Zimmern)D.及びケースベルク(kaesberg)P. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1978) 75(9): 4257-4261)。ミルズ(Mills)DR.及びクラーマー(Kramer)FR.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1979) 76(5): 2232-2235)は、連鎖停止反応機構においてRNAのシークエンシングを行うためのQβレプリカーゼ及びヌクレオチドアナログイノシンの使用を記載している。RNAシークエンシングのための直接的化学的方法も知られている(ピアッティ(Peattie)DA. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1979) 76(4): 1760-1764)。その他の方法としては、例えば、ドニス(Donis)−ケラー(Keller)et al.(1977, Nucl. Acids Res. 4: 2527-2538)、シモンクシッツ(Simoncsits)A. et al.(Nature (1977) 269(5631): 833-836)、アクセルロッド(Axelrod)VD. et al.(Nucl. Acids Res. (1978) 5(10): 3549-3563)、及びクラーマーFR.及びミルズDR.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1978) 75(11): 5334-5338)等がある。これらの文献は、引用を以って本書に繰り込み、ここに記載されているものとする。核酸配列は、レーザーによって切断されたヌクレオチドの自然蛍光の刺激によって読み取ることもできるが、このシングルヌクレオチドは蛍光増強マトリックスに含有されている(米国特許第5,674,743号);
【0071】
ハイブリダイゼーション技術を用いたスニップスの同定のためのハイブリダイゼーション法については、米国特許第6,270,961号及び同第6,025,136号に記載されている;
【0072】
鋳型指向性色素ターミネーター取込蛍光分極検出(template-directed dye-terminator incorporation with fluorscent polarization-detection)(TDI-FP)法は、FREEMAN BD. et al. (J Mol Diagnostics (2002) 4 (4): 209-215)によって、大規模スクリーニングについて記載されている;
【0073】
オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)は、ポリメラーゼ連鎖反応単位複製配列ストランドにアニールしたプローブと検出用オリゴヌクレオチドのライゲーションに基づき、酵素免疫法により検出される(ビヤエルモサ(Villahermosa)ML. J Hum Virol (2001) 4(5): 238-48; ロンパネン(Romppanen)EL. Scand J Clin Lab Invest (2001) 61(2): 123-9; イアノネ(Iannone)MA. et al. Cytometry (2000) 39(2): 131-40);
【0074】
ライゲーション−ローリングサークル増幅法(L−RCA)もまた、チー(Qi)X. et al. Nucleic Acids Res (2001) 29(22): E116に記載されているように、一塩基多型の遺伝子型決定に首尾よく使用することができた;
【0075】
5’ヌクレアーゼアッセイもまた、一塩基多型の遺伝子型決定に首尾よく使用することができた(アイディン(Aydin)A. et al. Biotechniques (2001) (4): 920-2, 924, 926-8);
【0076】
ポリメラーゼプルーフリーディング法は、WO 0181631に記載されているように、スニップスの個性の決定に使用される;
【0077】
酵素増幅電子伝達による1塩基対DNA変異の検出は、PATOLSKY F et al. Nat Biotech. (2001) 19 (3): 253-257で、記載されている;又は
【0078】
アレル特異的PCR法もまた一塩基多型の遺伝子型決定に首尾よく使用することができた(ホーキンス(Hawkins)JR. et al. Hum Mutat (2002) 19(5): 543-553)。
【0079】
また、患者の配列データが既に分かっている場合は、(遺伝情報の)獲得は、当該患者の核酸配列データをデータベースから検索し、多型部位における当該患者の核酸配列を読み取ることにより当該多型部位における核酸又は遺伝子型の個性の決定ないし検出をすることを含んでもよい。
【0080】
(1又は複数の)多型の個性が決定ないし検出されると、当該目的の多型の遺伝子型(一つの位置におけるヌクレオチド)に基づき患者結果ないし予後に関する指標が得られ得る。本発明では、PAI−1遺伝子における多型が、予後を得るため又は患者結果若しくは治療選択を決定するために使用される。患者結果ないし予後を得るための又は患者スクリーニングのための方法は、炎症状態から回復する患者の能力(ないし可能性)を決定するために有用であり得る。また、単独の多型部位又は複数の多型部位の組み合わせは、それらが炎症状態から回復する患者の能力を示すものとして決定された多型と連鎖しているならば、炎症状態から回復する患者の能力の指標として使用することも可能である。
【0081】
患者結果ないし予後が決定されると、そのような情報は、可能な治療方針の選択を支援し、患者をモニターすべき程度及び当該モニターの頻度の決定に役立つので、内科医及び外科医によって関心が持たれ得る。究極的には、治療の決定は、特定の患者に特異的な要因及び患者の治療に携わる内科医又は外科医の経験に基づく要因の両方に応じてなされ得る。内科医又は外科医が炎症状態を有する患者の治療に考慮に入れ得る治療方針の選択肢としては、以下のものがあるが、これらに限定されない:
(a)抗炎症療法の使用;
(b)ステロイドの使用;
(c)活性化型プロテインC(ドロトレコギシα又はイーライリリー社のザイグリス(商標))の使用;
(d)凝固因子モジュレーター(例えば、種々の型のペパリン)の使用、組織因子に対する抗体の使用;
(e)坑トロンビン又は坑トロンビンIIIの使用;
(f)ストレプトキナーゼ;
(g)クロピドグレルのような血小板凝集阻害剤の使用;及び
(h)界面活性剤
【0082】
現在開発中の及び部分的に有用な、炎症状態の代替的な治療法は、以下のものを含むがこれらに限定されるものではない: 腫瘍壊死因子(TNF)の抗体又はエンドトキシン(すなわち、リポ多糖;LPS)の抗体;腫瘍壊死因子(TNF)受容体;組織因子経路阻害剤(Chironのtifacogin(商標)アルファ);血小板活性化因子加水分解酵素(ICOSのPAFase);IL−6の抗体;高移動度郡ボックス1(HMGB−1又はHMG−1)の抗体、アンタゴニスト又は阻害剤;組織プラスミノーゲンアクチベーター;ブラジキニン アンタゴニスト;CD−14の抗体;インターロイキン−10;組換え型可溶性腫瘍壊死因子受容体‐イムノグロブリンG1(ロッシュ);プロシステイン;エラスターゼ阻害剤;及び、ヒト組換え型インターロイキン1受容体アンタゴニスト(IL−1 RA)。
【0083】
また、患者結果ないし予後と関係するPAI−1配列における新たな多型を同定するために類似の方法を採用することも可能である。
【0084】
上述のように、遺伝子配列情報ないし遺伝子型情報は(一人の)患者から獲得可能であるが、該配列情報は、PAI−1遺伝子中の1又はそれ以上の一塩基多型部位を含む。同様に、上述したように、1又はそれ以上の患者のPAI−1遺伝子における1又はそれ以上の一塩基多型の配列の個性も検出ないし決定することができる。更に、患者結果ないし予後は、上述のように、評価することができる。例えば、APACHE IIスコアリングシステム又はブラッセルスコアを使用して、治療前後における患者のスコアを比較することにより、患者結果ないし予後を評価することができる。患者結果ないし予後が評価されたら、患者結果ないし予後は、(1又は複数の)一塩基多型の配列の個性と関連付けることができる。患者結果ないし予後の関連付けは、更に、複数の患者の患者結果スコア及び多型(1又は複数)の統計的分析を含むことができる。
【実施例】
【0085】
臨床上の表現型
第一次結果(outcome)変数は、病院を退院するまでの生存であった。第二次結果(outcome)変数は、生存していて且つ心血管(cardiovascular)、呼吸器(respiratory)、腎臓(renal)、肝臓(hepatic)、血液学的(hematologic)、及び、神経学的(neurologic) 器官系の障害から免れている日数、並びに、生存していて且つSIRS、敗血症の発生、及び、敗血性ショックの発生から免れている日数であった。4つのSIRS診断基準のうち少なくとも2つに患者が合致した場合、SIRSであるとみなした。SIRS診断基準は、1)高熱(>38℃)又は低体温(<36℃)、2)頻脈(β遮断薬非存在下で心拍数>100拍/分)、3)頻呼吸(呼吸数>20呼吸/分)又は機械換気の必要、及び、4)白血球数>11,000/μL (Anonymous. Critical Care Medicine (1992) 20 (6): 864-74)。SIRS診断基準に合致した暦上の日より、患者を、このコホートに含めた。
【0086】
記録した患者の基礎統計には、年齢、性別、入院のための内科若しくは外科的診断(APACHE III診断コードdiagnostic codes (KNAUS WA et al. Chest(1991) 100 (6): 1619-36)に従った)、及び、入院時APACHE IIスコアを含めた。以下の付加的データを、臓器不全、SIRS、敗血症、及び、敗血性ショックを評価するために、28日間における各24時間(午前8時から午前8時)について記録した。
【0087】
各器官系における臨床的に重要な臓器不全は、Brussels診断基準(表1C)(RUSSELL JA et al. Critical Care Medicine (2000) 28 (10): 3405-11)を用いて少なくとも中等度の臓器不全の証拠がある場合に、24時間の間に存在するものと規定した。各臓器不全変数について各24時間の間、必ずしもデータが有効であるわけではないので、我々は、以前に定義(Anonymous. New England Journal of Medicine (2000) 342 (18): 1301-8)したように、「進展(carry forward)」仮定を用いた。
簡潔に述べると、変数の測定がなされなかった任意の24時間、我々は、その前の24時間の「存在」又は「不存在」を進展(carried forward)した。任意の変数が、決して測定できなかった場合は、正常であるものと仮定した。
【0088】
更に、心血管、呼吸器、及び、腎臓 機能を評価するために、我々は各24時間の、昇圧剤のサポート、機械換気、及び、腎臓のサポートの各々についても記録した。昇圧剤の使用は、ド−パミン>5μg/kg/min又は任意の用量のノルエピネフリン、エピネフリン、バソプレッシン、若しくはフェニレフリンとして規定した。機械換気は、挿管及び陽性気道内圧(すなわち、T-piece及びマスク 換気は、換気とはみなさない)の必要性として規定した。腎臓のサポートは、血液透析、腹膜透析、又は、任意の連続的な腎臓サポート様式(例えば、veno‐静脈血液透析)として規定した。
【0089】
以前に報告(BERNARD GR et al. New England Journal ofmedicine (1997) 336 (13): 912-8)したように、28日観察期間における死亡にかかわる臓器不全を評価し臓器不全スコアを補正するため、生存していて且つ臓器不全から免れている日数(DAF)から、計算がなされた。簡潔に説明すると、各変数について各24時間の間、患者が生きていて臓器不全を免れている場合(正常か弱い臓器不全、表1)は、DAFを1とスコアリングした。24時間の間、患者が臓器不全(中程度、重度、又は、極度)を起こすか又は生存していない場合は、DAFが0であるとスコアリングした。ICU入院した後の各28日、各患者において、このようにスコアリングをおこなった。ゆえに、各変数について有り得る最も低いスコアは0であり、また、有り得る最も高いスコアは28であった。より低いスコアは、生存及び臓器不全から免れたのがより少ない日数であるために、より重い臓器不全を示している。
【0090】
同様に、生存していて且つSIRSから免れている日数(DAF SIRS)を計算した。各24時間の間、4つのSIRS診断基準の各々の存在又は非存在を記録した。各24時間のSIRSの存在は、4つのSIRS診断基準のうち少なくとも2つを有することによって規定した。敗血症は、24時間の間、4つのSIRS診断基準のうち少なくとも2つを有すること、且つ、既知の若しくは疑わしい感染を有することによって、存在するものと規定した(Anonymous. Critical Care Medicine (1992) 20 (6): 864-74)。コンタミネーション又はコロニー形成のために陽性であると判断される培養物は、除外した。敗血性ショックは、同一の24時間の間に、敗血症の存在と低血圧(収縮期血圧<90mmHg又は昇圧剤の必要性)の存在の併存として規定した。
【0091】
ハプロタイプ及びhtSNPsの選択
白人の遺伝子型データ(pga.mbt.washington.edu (RIEDER MJ et al. ACCESSION AF386492. Vol. 2001: SeattleSNPs. NHLBI Program for Genomic Applications, UW-FHCRC, Seattle, WA (2001) )を用いて、PHASE softwareによりハプロタイプを推測した(図1)。そして、主要なハプロタイプ クレードを同定するために、MEGA2を用いて系統樹を推測した(図2)。系統樹に従ってハプロタイプを分類し、ハプロタイプ標識SNPs(htSNPs)を選択するためにハプロタイプ構造を調べた。4つのhtSNPsが唯一ハプロタイプ クレードを同定することが判明した(図1及び2)。そして、4G/5G多型(DAWSON et al.(1993)の−675及び配列番号1(NCBI番号rsl799889)の位置837に相当する)及び4つのhtSNPs:11312(9732)G/A、12580(11000)T/G、12750(11170)G/A、13985(12405)C/T)(括弧で括られていない位置番号はPAI−1タンパク質コード領域の開始点(1581)に基づく―括弧で括られた位置番号はアクセッション番号AF386492によって示される配列に基づく)について、患者コホートにおいて遺伝子型の決定がなされた。最後に、重度SIRS疾患コホートの各々の患者において遺伝子型を決定したhtSNPsからハプロタイプを推定するためにPHASEを使用した。
【0092】
遺伝子型の決定
QIAamp DNA Blood Maxi Kit(キアゲン)を用いて、末梢血サンプルから、DNAを抽出した。4G/5G多型の遺伝子型は、制限酵素断片長ストラテジーを用いて、決定した。htSNPsの遺伝子型は、Masscode tagging(キアゲン ジェノミクス)(KOKORIS M et al Molecular Diagnosis (2000) 5 (4): 329-40)を用いて決定した。遺伝子型決定の成功率は全てのSNPsについて99%以上であった。
【0093】
実施例1及び2のための患者コホート
データを、St.Paul病院の集中治療室(ICU)に入院した235人の連続した患者から収集した。このICUは、第3級ケアの内科‐外科混合ICUであり、ブリティッシュコロンビア大学の大学関連教育病院である。人種の相違による集団混合の2次的な混同の影響の可能性を下げるため、遺伝子型の決定が成功した白人患者(全入院患者の78.6%)についての結果(n=223)のみを報告する。これらの235人の患者から本研究のコホートを形成する。
【0094】
実施例1−ハプロタイプ クレード推論(deduction)
まず、PAI−1遺伝子のハプロタイプ(図1)を推論し、主要なハプロタイプ クレードを同定し(図1及び2)、そして、主要ハプロタイプ クレードを規定する最小限のhtSNPs(図1)を選択した。htSNPs及び4G/5G多型は、ハーデン‐ワインベルグ平衡にあった(表2)。さらに、4Gアレルを含むハプロタイプは、位置13985のT/G多型のマイナーTアレルを含むアレル及び位置12580のT/G多型のマイナーGアレルを含むアレルの中にグループ化されることが判明した(図1及び2)。図1のハプロタイプマップは、白人におけるPAI−1遺伝子ハプロタイプを示している。有効なデータからPHASEを用いてハプロタイプを推測し、そして、PATIL et al. (Science (2001) 294 (5547): 1669-70)の様式で表した。縦列は多型性の遺伝子座を示しており、横方向の行は白人個体から推測される明確なハプロタイプを示している。明るいセルは稀なアレルを示しており、暗いセルは頻度の高いアレルを示している。Coriell記載の患者23人の無関係な白人の遺伝子型決定されたデータ(http://pga.mbt.washington.edu/で公開され利用可能)から、マップを作成した。統計プログラムPHASE 2.0(STEPHENS M and DONNELLY P Am J Human Genet. (2003) 73 (6): 1162-1169)を用いてハプロタイプを推測した。12580Gアレルと同じ情報を提供する多型を、このハプロタイプマップに基づいて選択した。これらの多型は12580Gアレルと同じ情報を提供する。一つの方法では、12580Gアレル(セクションA)を直接又は組み合わせにおいて、陽性に同定する。もう一つの方法では、12580Tアレル(セクションB)を直接又は組み合わせにおいて、陽性に同定し、そして、それにより12580Gアレルを陰性に同定する。各クレードのハプロタイプが互いに異なっている一方で、各クレード内のハプロタイプは非常に似ている。太い線で区分けしているクレード内のハプロタイプを分類するためMEGA IIを使用した。
【0095】
図1で同定したツリー構造でないPAI−1ハプロタイプクレードの系統樹を、図2において示した。図2はMEGA IIを用いて描いたものであるが、線の長さは相対的進化距離を反映している。円で示した各クレードは、特異的クレードの代表であるハプロタイプ標識SNPs(htSNPs)によって同定した。4Gアレルのその祖先クレード(htSNPアレル 12580G)からの組換えは、進化的に非常に遠いクレード(htSNPアレル 12580T)で生じたように見える。
【0096】
【表2】

【0097】
実施例2−ハプロタイプ クレード患者結果 4Gアレル v. PAI−1クレード
図3に示すように、6つのハプロタイプクレードのうち二つ、すなわちD及びFは、4Gアレル、及び、13985 Tと12580 Gマイナーアレルの各々との組み合わせから成る。両者の4Gハプロタイプクレードを有する患者は院内生存率の低下が証明されないことが分かった(図3)。事実、報告されていた結果(HERMANS (1999);MENGES (2001);及び WESTENDORP (1999))とは対照的に、13985 Tアレルを含むクレードは、全てのクレードの中で最も高い。同様に、4G(875)アレルは、生存の変化、臓器不全、SIRS,敗血症、又は、敗血性ショックと関連が無い。これとは対照的に、12580 Gアレルを有する患者は13985 Tアレルとの比較において顕著に院内生存率が低下しており(p<0.01)、全ての他のハプロタイプクレードとの比較でも減少している(p<0.03)。
【0098】
実施例3−G4/G5遺伝子型についての患者結果
4G/5G多型のみを調べた結果、13985 Tアレルを含むハプロタイプクレードは生存が増加し、12580 Gアレルを含むハプロタイプクレードは生存が減少する付加的な影響が中間結果として分かった。4G/4G、4G/5G及び5G/5G遺伝子型の頻度分布は、26.6%、52.1%及び20.1%であり、これは他の重度疾患の白人で報告されている頻度(MENGES T et al. Lancet (2001) 357 (9262): 1096-7)に似ている。院内生存率は、54%(4G/4G群)、61%(4G/5G群)、及び74%(5G/5G群)であり、統計学的な有意差は無かった(p=0.09)。しかし、4Gアレルは、生存且つ以下の機能不全を免れた日数の少なさとの間で有意な関連があった:呼吸不全(p<0.05)、肝不全(p<0.05)、及び、神経学的不全(p<0.05)(表3)。心血管、腎臓、及び、血液凝固 DAFスコアは、4G/5G遺伝子型間で有意差は見られなかった(表3)。DAF昇圧剤(付加的な心血管機能の測定)においても差が見られなかったという知見からもこれらの結果は支持されたが、4Gアレルを有する患者のDAF機械換気(付加的な呼吸機能の測定)が有意に少なくなっていた(表3)。これらの4Gアレルを有する患者は、28日の研究期間中、SIRS期間の有意な増加(DAF SIRS:4G/4G‐28中19.8、4G/5G‐同20.8、5G/5G‐同23.4)、敗血症発症の増加傾向(4G/4G‐94%、4G/5G‐99%、5G/5G‐74%、p=0.08)、及び、敗血性ショック発生の有意な増加(4G/4G‐94%、4G/5G‐99%、5G/5G‐74%、p=0.04)があることが分かった。
【0099】
【表3】

【0100】
実施例4−12580遺伝子型 v. G4/G5遺伝子型についての患者結果
28日観察期間における死亡にかかわる臓器不全を評価し臓器不全スコアを補正するため、生存していて且つ臓器不全から免れている日数(DAF)から、計算がなされた。簡潔に説明すると、各変数について各24時間の間、患者が生きていて臓器不全を免れている場合(正常か軽い臓器不全、表1C)は、DAFを「1」とスコアリングした。24時間の間、患者が臓器不全(中程度、重度、又は、極度)を起こすか又は生存していない場合は、DAFが「0」であるとスコアリングした(表1C)。ICU入院した後の各28日、各患者において、このようにスコアリングをおこなった。ゆえに、各変数について有り得る最も低いスコアは0であり、また、有り得る最も高いスコアは28であった。より低いスコアは、生存及び臓器不全から免れたのがより少ない日数であるため、より重い臓器不全を示している。PAI‐1 12580遺伝子型における、年齢、性別、APACHE IIスコア、及び、外科的診断で入院した患者の割合について、群(GG、GT及びTT、又は、GG/GT vs TTについて各々別々に表4Aと表4Bに示す)間の有意差は認められなかった。同様に、PAI−1 4G/5G遺伝子型について、群(5G/5G vs 5G/4G及び4G/4G、又は、5G/5G vs 何らかの4G)間の有意差はなかった。
【0101】
【表4−A】

【0102】
【表4−B】

【0103】
【表5−A】

【0104】
【表5−B】

【0105】
12580Gアレルを含むハプロタイプを有する患者は、28日の観察期間の間に、呼吸器(p<0.05)、腎臓(p<0.05)、肝臓(p<0.05)、及び、神経学的(p<0.05)器官についての臓器不全が表れた(図4)。生存しており且つ全ての臓器不全が無い日数は、12580GGで、1.8、GTで4.6、TTで8.2(p<0.01)であった。ゆえに、12580Gアレルは、全般的な臓器不全の顕著な悪化と関連があった。更に、12580Gアレルは、SIRS(p<0.05)、敗血症(p<0.05)、及び、敗血性ショック(p<0.05)とも関連があった(図5及び6)。よって、12580Gアレルは、生存率の減少、臓器不全の悪化、及び、SIRSの悪化で表されるような有害な臨床上の表現型と、明らかに関連があった。
【0106】
PAI−1 4G/5G(837)遺伝子型によって患者をグループ分けした場合には、統計学的な有意差又は傾向は認められなかった(図8A、8B、10A、10B、12A、及び、12B)。しかしながら、PAI−1 12580遺伝子型によって患者をグループ分けした場合には、DAFにおける明瞭な傾向が、12580Gアレル数の増加との関連で認められた。
【0107】
図7Aでは、重度の全身性炎症反応症候群(SIRS)に罹患した白人587人における、PAI−1 12580遺伝子型(GG、GT及びTTを別々に)による、生存しており且つ呼吸器不全及び機械換気から免れた日数を示している。12580Gアレルを有するこれらの患者では、保持する12580Gアレルのコピー数に依存して、生存しており且つ呼吸器不全及び機械換気から免れた日数の減少傾向が強く表れていた。12580Gアレルを2コピー保持するこれらの患者(N=98)では、生存しており且つ呼吸器不全(13日)及び機械換気(12日)から免れた日数が最も少なかった。12580Gアレルを1コピーのみ保持する患者(N=284)では、生存しており且つ呼吸器不全(13日)及び機械換気(13日)から免れた日数は中間的な値であった。12580Gアレルが0コピーの患者(すなわちTTホモ接合体;N=205)では、生存しており且つ呼吸器不全(15日)及び機械換気(14日)から免れた日数は最も大きな数値であった。
【0108】
同様に、図7Bは、重度の全身性炎症反応症候群(SIRS)に罹患した白人587人における、PAI−1 12580遺伝子型(GG/GT vs TT)による、生存しており且つ呼吸器不全及び機械換気から免れた日数を示している。12580Gアレルが1又は2コピーの患者(GG又はGT、N=382)では、Gアレルが0コピーの患者(すなわちTTホモ接合体;N=205)と比較して、生存しており且つ呼吸器不全(p=0.057)及び機械換気(p=0.077)から免れた日数が少なくなる傾向を強く示していた。
【0109】
図8A及びBでは、重度の全身性炎症反応症候群(SIRS)に罹患した白人314人における、PAI−1 4G/5G(837)遺伝子型(4G/4G、4G/5G及び5G/5Gを別々に、並びに、何らかの4G vs 5G/5Gを示す)による、生存しており且つ呼吸器不全及び機械換気から免れた日数を示している。PAI−1 4G/5G遺伝子型に基づく観察では、DAF呼吸器不全又はDAF機械換気において、統計学的な有意差又は傾向は認められなかった。
【0110】
図9Aでは、重度の全身性炎症反応症候群(SIRS)に罹患した白人587人における、PAI−1 12580遺伝子型(GG、GT及びTTを別々に)による、生存しており且つ急性肺障害(ALI)から免れた及び300 mmHgより高いP/F(P/F)比率の日数を示している。12580Gアレルを有するこれらの患者では、保持する12580Gアレルのコピー数に依存して、生存しており且つALI及びP/F<300から免れた日数の減少傾向が表れていた。12580Gアレルを2コピー保持するこれらの患者(N=98)では、生存しており且つALI(16日)及びP/F<300(5日)から免れた日数が最も少なかった。12580Gアレルを1コピーのみ保持する患者(N=284)では、生存しており且つALI(16日)及びP/F<300(5日)から免れた日数は中間的な値であった。12580Gアレルが0コピーの患者(すなわちTTホモ接合体;N=205)では、生存しており且つALI(17日)及びP/F<300(7日)から免れた日数は最も大きな数値であった。
【0111】
図9Bでは、重度のSIRSに罹患した白人587人における、PAI−1 12580遺伝子型(GG/GT vs TT)による、生存しており且つ急性肺障害(ALI)及びP/F<300mmHgから免れた日数を示している。12580Gアレルが1又は2コピーの患者(GG又はGT、N=382)では、Gアレルが0コピーの患者(各々17日と7日;N=205)と比較して、生存しており且つ急性肺障害(16日)及びP/F<300mmHg(5日)から免れた日数が少なくなる傾向を示していた。
【0112】
図10Aでは、重度のSIRSに罹患した白人314人における、PAI−1 4G/5G(837)遺伝子型(4G/4G、4G/5G及び5G/5Gを別々に示す)による、生存しており且つ急性肺障害(ALI)から免れた及び300 mmHgより高いP/F(P/F)比率の日数を示している。PAI−1 4G/5G遺伝子型に基づく観察では、DAF ALI又はDAF P/F<300において、統計学的な有意差又は傾向は認められなかった。同様に、図10Bは、SIRSに罹患した白人314人における、PAI−1 4G/5Gアレル(何らかの4G vs 5G/5Gを示す)による、生存しており且つ急性肺障害及びP/F<300mmHgから免れた日数を示している。PAI−1 4G/5Gアレルに基づく観察では、DAF ALIにおける有意差又は傾向は見られなかった。「何らかの4G」群においてDAF P/F<300が少なくなる傾向が観察されたが、この傾向はPAI−1 12580アレルに基づく観察(図9B)同様に有意ではなかった。
【0113】
図11Aでは、重度のSIRSに罹患した白人587人における、PAI−1 12580遺伝子型による、生存しており且つステロイド使用から免れた日数を示している。12580Gアレルを2コピー保持する患者(N=98)では、生存しており且つステロイド使用から免れた日数(15日)が最も少なかった。12580Gアレルを1コピーのみ保持する患者(N=284)で、生存しており且つから免れた日数(15日)は同様な値であった。12580Gアレルが0コピーの患者(N=205)では、生存しており且つステロイド使用から免れた日数(17日)は最も大きな数値であった。同様に図11Bは、重度のSIRSに罹患した白人587人における、PAI−1 12580遺伝子型(GG/GT vs TT)による、生存しており且つステロイド使用から免れた日数を示している。12580Gアレルが1又は2コピーの患者(すなわちGG又はGT、N=382)では、Gアレルが0コピーの患者(17日;N=205)と比較して、生存しており且つステロイド使用(15日)から免れた日数が少なくなる傾向を示していた。
【0114】
図12Aでは、重度のSIRSに罹患した白人における、PAI−1 4G/5G(837)遺伝子型(4G/4G、4G/5G及び5G/5Gを別々に示す)による、生存しておりステロイド使用から免れた日数を示している。PAI−1 4G/5G遺伝子型に基づく観察では、DAF ステロイド使用において、統計学的な有意差又は傾向は認められなかった。同様に、図12Bは、同一の患者について、何らかの4G vs 5G/5Gとしてグループ分けして、PAI−1 4G/5G遺伝子型に基づいて、生存しておりステロイド使用から免れた日数を示している。ここでも、PAI−1 4G/5Gアレルに基づく観察では、DAF ステロイド使用において、統計学的な有意差又は傾向は認められなかった。
【0115】
実施例5−外科患者におけるPAI−1 12580遺伝子型 v. G4/G5遺伝子型についての患者結果
人工心肺の心血管手術の白人患者67人のプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター‐1(PAI−1)濃度を測定した。血清中濃度を、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)(Immulyse PAI−1、バイオプールインターナショナル)によって測定し、PAI−1 12580遺伝子型に基づいて表わした(図13A/B、15A/B、16、及び、17A/B)。PAI−1 12580遺伝子型群間で、年齢又は性別における有意差は見られなかった(以下、表6A及びBに示す)。
【0116】
【表6−A】

【0117】
【表6−B】

【0118】
同様に、人工心肺の心血管手術の白人患者55人のPAI−1濃度も測定し、比較のために血清濃度をPAI−1 4G/5G(837)遺伝子型に基づいて表わした(図14A/B及び18A/B)。女性の割合において有意差が観察され(以下の表7A及びBに示す)、そして、この原因については、後の解析により説明をおこなった。
【0119】
【表7−A】

【0120】
【表7−B】

【0121】
驚くべきことに、PAI−1 4G/5G(837)遺伝子型でグループ分けした場合に、人工心肺手術終了4時間後の患者におけるPAI−1血清濃度及び全身性血管抵抗指数(SVRI)には有意差を見出せなかった。しかしながら、PAI−1 12580遺伝子型でグループ分けした場合、血清PAI−1濃度の減少は手術前及び後の双方において12580Gアレル数の増加と有意に関連していた。同様に、12580遺伝子型は、手術後のSVRIにおける減少は12580Gアレルと有意に関連していた。よって、PAI−1 12580Gアレルは12580Tとの比較において、心臓手術後の、より高い血管拡張(低いSVRIによって示される)、及びより低いPAI−1濃度と関連している。この事は、心臓手術を受けた独立した患者コホートにおいて、PAI−1 12580GがICUコホートにおける生存の悪化及び臓器不全並びに心臓手術コホートにおける低PAI−1濃度と関連があるという知見を、他に依存せずに確認するものである。
【0122】
図13Aでは、オンポンプ人工心肺手術を受けた白人24人の術前PAI−1血清濃度の平均値について12580遺伝子型(GG、GT及びTTを別々に)でグループ分けして示している。術前PAI−1血清濃度の平均値は、12580TTホモ接合体(N=3)が146.9ng/mLであり、GTヘテロ接合体(N=14)が102.2ng/mLであり、GGホモ接合体(N=7)が84.5ng/mLであった。12580Gのアレル数が増加するにつれ、PAI−1血清濃度が有意に低下する傾向が見られた(p=0.044)。濃度分布が標準的ではなかったので、データをログ変換して統計処理を行った。
【0123】
図13Bでは、オンポンプ人工心肺手術を受けた白人24人の術前PAI−1血清濃度の平均値について12580遺伝子型(GG/GT vs TT)でグループ分けして示している。ここでも前述のように、TTホモ接合体患者(N=3)の術前PAI−1血清濃度の平均値154.4ng/mLは、GG又はGTの何れかの遺伝子型の患者(N=21、平均 前PAI−1血清濃度94.5ng/mL)よりも高くなっていた。統計的有意は得られなかったが(p=0.077)、傾向を示す値が観察された。データはログ変換して統計処理を行った。
【0124】
図14Aでは、人工心肺の心血管手術の白人患者55人の術後4時間後に測定したPAI−1濃度を示している。PAI−1 4G/5G(837)遺伝子型に基づく、PAI−1血清濃度における有意差は観察されず、また、何らの傾向も存在しなかった。性別による差異は直線回帰モデルに含まれており、統計的有意差の欠如には影響していなかった。同様に、図14Bは、人工心肺の心血管手術の白人患者55人の術後4時間後に測定したPAI−1濃度を、何らかの4G vs 5G/5Gに基づいて示している。ここでも、PAI−1 4G/5G(837)アレル(何らかの4G vs 5G/5G)に基づく、PAI−1血清濃度における有意差は観察されず、また、何らの傾向も存在しなかった。データはログ変換して統計処理を行った。
【0125】
図15A及びBでは、オンポンプ人工心肺手術を受けた白人67人の術後4時間後に収集したPAI−1血清濃度の平均値について12580遺伝子型(GG、GT及びTTを別々に、並びに、GG/GT vs TT)によってグループ化して示している。このグループは、下位集合として術前の時点で収集されたデータの患者(N=24)を含み、そのため、より大きなサンプルサイズのグループにおいて、前述のグループ(すなわち、より低濃度の血清PAI−1と関連する12580G 群)において観察された傾向の確証を示す。12580 TTホモ接合体(N=21)は最も高い血清PAI−1平均濃度 195.1ng/mLで、続いて、GTヘテロ接合体130.3ng/mL、GGホモ接合体111.3ng/mLとなっていた。図15Bでは、術後の血清PAI−1平均濃度において、12580 TTホモ接合体(195.1ng/mL)は、GG又はGTの何れかの遺伝子型の患者(126.0ng/mL;p=0.042)と比較して、有意に高かった。ここでも、12580Gのアレル数増加と関連してPAI−1血清濃度が低くなる明瞭な傾向が現れた。データはログ変換して統計処理を行った。
【0126】
図16では、人工心肺手術の白人患者24人の術後4時間後と術前に測定したPAI−1濃度平均値の差を示している。これらの12580Tアレルホモ接合体患者は最も高い術前から術後へのPAI−1濃度増加(208.0ng/mL)を示した。ヘテロ接合体患者におけるPAI−1濃度の増加(158.9ng/mL)は中間的なものであり、そして、12580Gアレルホモ接合体患者におけるPAI−1濃度の増加(43.6ng/mL)は最も低かった。統計学的な有意は見られなかったものの、PAI−1 12580Gアレル数の増加と共に人工心肺手術後のPAI−1濃度の増加が少なくなることを示す明瞭な傾向が見られた。
【0127】
図17Aでは、オンポンプ人工心肺手術を受けた白人66人の術後4時間後の全身性血管抵抗指数(SVRI)についてPAI−1 12580遺伝子型(GG、GT及びTTを別々に)によってグループ化して示している。SVRIの算出は、SVRI=(平均動脈圧−中心静脈圧)/心臓指数 として行い、dynes/s・cm−5で表した。PAI−1 12580 Gアレルは、アレルのコピー数の増加と共に、術後4時間後のSVRI平均値が低くなる傾向について、統計学的に有意な関連があった:GGホモ接合体は最も低いSVRI値(1493.9±144.8 dynes/s・cm−5)であり、GTヘテロ接合体は中間的なSVRI値(1629.7±61.5 dynes/s・cm−5)であり、そして、TTホモ接合体は最も高いSVRI値(1780.4±64.6 dynes/s・cm−5)であった。この傾向はαレベル0.05において、有意であった(p=0.028)。
【0128】
同様に、図17Bでは、オンポンプ人工心肺手術を受けた白人66人の術後4時間後の全身性血管抵抗指数(SVRI)についてPAI−1 12580遺伝子型(GG/GT vs TT)によってグループ化して示している。SVRIの算出は、上記 図17Aの算出法に従った。PAI−1 12580Gアレル(ここではGGホモ接合体又はGTヘテロ接合体)は、Tアレルよりも、術後4時間後のSVRI平均値において有意に低くなる関連が示されている(各々1604.4±57.8 dynes/s・cm−5 vs 1780.4±64.6 dynes/s・cm−5; p=0.050)。
【0129】
図18Aでは、オンポンプ人工心肺手術を受けた白人364人の術後4時間後の全身性血管抵抗指数(SVRI)についてPAI−1 4G/5G(837)遺伝子型(4G/4G、4G/5G及び5G/5Gを別々に)によってグループ化して示している。SVRIの算出は、SVRI=(平均動脈圧−中心静脈圧)/心臓指数 として行い、dynes/s・cm−5で表した。PAI−1 4G/5G遺伝子型に基づく観察では、術後4時間後のSVRIにおいて、統計学的な有意差又は傾向は認められなかった。同様に、図18Bでは患者を、PAI−1 4G/5G(837)アレル(何らかの4G vs 5G/5G)に基づいてグループ分けした。SVRIは上記 図18Aのように計算したが、ここでも、PAI−1 4G/5Gアレルに基づく観察では、術後4時間後のSVRIにおいて、統計学的な有意差又は傾向は認められなかった。
【0130】
統計解析
我々は、ドミナント モデル及び共ドミナント モデルを用いて、疾病重度の基準を比較した。我々は、遺伝子型間の差異について、連続したデータはANOVAを用い、不連続データはFisher正確検定を用いて、検定した。適当な場合には、Student's t−検定及び直線回帰モデルも用いた。ここで使用したサンプルサイズ(260)は、外傷における61 (MENGES T et al. Lancet (2001) 357 (9262): 1096-7)、小児髄膜炎菌血症における175 (DAWSON et al. (1993))、及び、成人髄膜炎菌性敗血性ショックにおける50 (WESTENDORP RG et al. Lancet (1999) 354 (9178): 561-3) に匹敵する。関連解析における誤りの原因となり得るもう一つは、人種の混合である(CARDON LR and BELL JI Nature Reviews Genetics (2001) 2: 91-9)。研究に有効な我々の患者の大多数が白人のグループに含まれていたため、本書では白人に限定して解析を行った。
【0131】
実施例の要約
PAI−1 12580 Gアレルが、SIRS集団及び人工心肺後(CPB)のSIRS集団における心血管及び呼吸器障害の重篤度と関連することがより大きな証拠で示された。GG遺伝子型の重度SIRS患者はより重篤なSIRS及びより重篤な心血管及び呼吸器障害(急性肺障害の増加、昇圧剤の多用、ステロイドの多用を含む)と関連するだけでなく、その他の器官系の不全、及び、重要なことに生存率の減少とも関連傾向があるということが、重度SIRS集団において証明された。これらの知見は、類似しているが独立した、CPBの重度SIRS患者集団において確認された。CPB集団において、SIRSは、感染の証拠が無い心臓手術及び人工心肺手術それ自体によって誘発された。この集団のGG遺伝子型を有するこれらの患者におけるSIRSの増加の証拠は、全身性血管抵抗指数(SVRI)の大きな減弱が観察されたことにより得られた。
【0132】
12580 Gアレルの重度患者において、より低い生存率、SIRSの増加、より重篤な心血管及び呼吸器障害によって示されるような悪い(患者)結果について有意であり、並びに、より重篤な肝臓、腎臓、神経、及び、凝血 の障害について強い傾向を有していた。12580 Gアレルを有する患者の悪い臨床的表現型は、コルチコステロイドの多用とも関連していた。コルチコステロイドの使用が増加(図11A及びBを参照)した理由としては、臨床家が、重度のショックや恐らく長期の呼吸器不全へのステロイド治療を強く必要としたためと予想される。
【0133】
本書で記述されたハプロタイプは、炎症による患者結果を予測する能力において新規であり、また、以前に記述された4G/5G多型よりも、患者リスクの予測に関してより機能的である。結果的に、本書において、有害な患者結果のより大きなリスクのある患者を予測する、より好ましい戦略が提供されている。
【0134】
遠い組み換えの結果として、PAI−1 4Gアレルは、二つの別個のハプロタイプに分割されたことが、ここで示された。調べた結果から、プロモーター領域の4G/5G部位(位置837)と位置4588との間で組み換えが起こったことが示される(図1を参照)。実際には「天然の実験」が起こったのであり、そこでは、問題の4Gアレルを含むプロモーター領域は、完全に異なるハプロタイプクレードと組み換えられていた(図2)。Pan troglodytes(チンパンジー)の遺伝子型は、PAI−1遺伝子の4Gが祖先クレード F(12580 Gアレルによって規定される)に由来し、進化的に最も遠いハプロタイプクレード D(13985 Tアレルによって規定される)と組み換えられたことを示唆している(図2)。この「天然の実験デザイン」は、4Gアレルが異なる二つのハプロタイプに分布していており、それらを比較し得るため、4Gを含むプロモーター領域が原因だとする仮説を直接テストする。二つの4Gハプロタイプクレード(F及びD)は、非常に異なる結果と関連していることが判明した。12580 Gハプロタイプが院内生存率の低下と臓器不全と有意に関連していたのに対し、13985ハプロタイプは関連していなかった。よって、この「天然の実験」から、4Gは患者結果と関連していないか又はそれほど強くは関連していないことが、導き出された。
【0135】
我々の結果より、PAI−1 4Gアレルは悪い予後とは関連していない。本書で記述したように、12580 Gハプロタイプクレード(クレード F)が有害な患者結果と強く関連しているため、12580 Gハプロタイプクレード内にあるSNPは、患者結果を予測するためのより良い候補である。ハプロタイプマップ(図1)において、PAI−1 4Gアレル(837−)と12580 Gアレルは、完全なLDでは無いものの、連鎖不平衡の幾らかの基準により連鎖している(Visual Genotype 2プログラム(http://droog. gs. washington. edu/pga /VG2.html)を用い、凡そr≒0.2で算出した)。結果として、4Gアレルよりも、12580Gアレルを、患者結果の優れた予測因子として提唱する。
【0136】
重度患者コホート、その95%がSIRSである、において、PAI−1遺伝子のハプロタイプ構造に基づいた解析により、4G/5G多型が有害な結果と関連していないことが示唆された。むしろ、12580 T/G多型のマイナーGアレルによって規定されるハプロタイプクレード内に含まれる多型が、より良い候補であった。12580 Gハプロタイプクレードは、生存率の低下、臓器不全の増加、SIRSの重篤度、並びに、敗血症及び敗血性ショックの発生と関連していた。非常によく報告されてきた4G/5G SNPが患者結果の予測因子でないことが示されたことから、12580 Gハプロタイプクレードと有害な結果との関連は重要である。この事は、重度のSIRS患者及び恐らく他の疾病(例えば、脳卒中、心筋梗塞)の患者との関係で、これらの疾病患者において4G/5Gが有害結果と関連があると報告されてきたことから、意味のあることである。
【0137】
PAI−1 12580 Gアレルは、より低い血清PAI−1濃度(図13A/B及び15A/B)、及び、生存しており且つ臓器不全から免れた日数の低下(呼吸器、急性肺障害)、支持(機械換気及びステロイド使用)と関連があり、並びに、心臓手術患者における全身性血管抵抗指数の低下と有意な関連がある。ゆえに、12580 Gアレルは、悪い患者結果(上述したような、生存率、及び、生存しており且つ臓器不全から免れた日数)及び血清PAI−1濃度の低下の新規な指標である。
【0138】
結論としては、PAI−1の4G/5G多型はSIRS患者の結果の予測因子としては良くなく、むしろ、12580 T/G多型のマイナーGアレルによって規定されるハプロタイプクレード内に含まれる多型がより良い候補である。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】白人におけるPAI−1遺伝子ハプロタイプマップを示している。縦列は多型性の遺伝子座を示しており、横方向の行は明確なハプロタイプを示している。明るいセルは稀なアレルを示しており、暗いセルは頻度の高いアレルを示している。12580Gアレルと同じ情報を提供する多型を、このハプロタイプマップに基づいて選択した。これらの多型は12580Gアレルと同じ情報を提供する。
【図2】図1のハプロタイプの位置を示すツリー構造でない系統樹における、PAI−1ハプロタイプクレードを示した。図2はMEGA IIを用いて描いたものであるが、線の長さは相対的進化距離を反映しており、各クレードは丸で囲っている。
【図3】PAI−1遺伝子の各ハプロタイプクレ−ドの院内生存率を示している。エラーバーは95%信頼区間を示している。4Gアレルを含むハプロタイプは、13985 Tアレル及び12580 Gアレルによって規定される2つに分けられるハプロタイプクレードから成る。12580 Gアレルを含む4Gハプロタイプクレードを除くグループ平均を横線によって示している。12580 Gアレルによって規定されるハプロタイプクレードに関する平均値及び95%信頼区間は前記グループの平均値より低くなっている。それとは対照的に、13985 Tアレルを含む4Gハプロタイプクレードは、ハプロタイプの中で最も高い生存率である。ハプロタイプ数は総患者数(235)の2倍まで加算されるので、患者が有する各ハプロタイプについて(ハプロタイプについてホモ接合体はそのハプロタイプについて2倍含まれていた)、患者からのデータは、2倍含まれていた。
【図4】28日の研究期間にわたる、生存しており且つ臓器不全から免れた日数(DAF)を、PAI−1遺伝子型ごとに、示している。
【図5】PAI−1 12580遺伝子型によって、生存しており、且つ、4つの全身性炎症反応症候群(SIRS)診断基準のうち2、3又は4つを満たすことから免れている(2/4、3/4又は4/4)日数を示す。SIRS診断基準は:アメリカ胸部内科学会/重体患者医療コンセンサス会議で確立されたガイドライン(敗血症および臓器不全のための定義、並びに敗血症の革新的治療に使用するためのガイドライン(Critical Care Medicine (1992) 20 (6): 864-74))を使用し、 1)頻脈(β遮断薬非存在下で心拍数>100拍/分)、2)頻呼吸(呼吸数>20呼吸/分)又は機械換気の必要、3)高熱(>38℃)又は低体温(<35.5℃)、及び、4)白血球(総白血球数>11,000/μL)。一人の患者がICUにいる各日について、各SIRS診断基準の存在又は非存在を記録し、そのICU内の各日においてSIRS診断基準を満たした総数を記録した。SIRS診断基準が満たされた場合は芳しくない患者結果を示すことになる一方、生存していて且つSIRS診断基準から免れている場合はより良好な患者結果を示している。
【図6】PAI−1 12580アレルの遺伝子型による、敗血症及び敗血性ショックの発生を示した。
【図7】重度の全身性炎症反応症候群(SIRS)に罹患した白人587人における、PAI−1 12580遺伝子型(GG、GT及びTTを別々に)(A)、又は、(GG/GT vs TT)(B)による、生存しており且つ呼吸器不全及び機械換気から免れた日数を示している。
【図8】重度の全身性炎症反応症候群(SIRS)に罹患した白人314人における、PAI−1 4G/5G(837)遺伝子型(4G/4G、4G/5G及び5G/5Gを別々に)(A)、又は、(何らかの4G vs 5G/5G)(B)による、生存しており且つ呼吸器不全及び機械換気から免れた日数を示している。
【図9】重度の全身性炎症反応症候群(SIRS)に罹患した白人587人における、PAI−1 12580遺伝子型(GG、GT及びTTを別々に)(A)、又は、(GG/GT vs TT)(B)による、生存しており且つ急性肺障害(ALI)から免れた及び300 mmHgより高いP/F(P/F)比率の日数を示している。
【図10】重度のSIRSに罹患した白人314人における、PAI−1 4G/5G(837)遺伝子型(4G/4G、4G/5G及び5G/5Gを別々に示す)(A)、又は、(何らかの4G vs 5G/5G)(B)による、生存しており且つ急性肺障害(ALI)から免れた及び300 mmHgより高いP/F(P/F)比率の日数を示している。
【図11】重度のSIRSに罹患した白人587人における、PAI−1 12580遺伝子型(GG、GT及びTTを別々に)(A)、又は、(GG/GT vs TT)(B)による、生存しており且つステロイド使用から免れた日数を示している。
【図12】重度のSIRSに罹患した白人314人における、PAI−1 4G/5G(837)遺伝子型(4G/4G、4G/5G及び5G/5Gを別々に示す)(A)、又は、(何らかの4G vs 5G/5G)(B)による、生存しておりステロイド使用から免れた日数を示している。
【図13】オンポンプ人工心肺手術を受けた白人24人の術前PAI−1血清濃度の平均値について、12580遺伝子型(GG、GT及びTTを別々に)(A)、又は、(GG/GT vs TT)(B)でグループ分けして示している。
【図14】図14Aでは、人工心肺の心血管手術の白人患者55人の術後4時間後に測定したPAI−1濃度について、PAI−1 4G/5G(837)遺伝子型(4G/4G、4G/5G及び5G/5Gを別々に示す)(A)、又は、(何らかの4G vs 5G/5G)(B)により、示している。
【図15】オンポンプ人工心肺手術を受けた白人67人の術後4時間後に収集したPAI−1血清濃度の平均値について、12580遺伝子型(GG、GT及びTTを別々に)(A)、又は、(GG/GT vs TT)(B)によってグループ化して示している。
【図16】人工心肺手術の白人患者24人の術後4時間後と術前に測定したPAI−1濃度平均値の差を、12580遺伝子型(GG、GT及びTTを別々に)により、示している。
【図17】図17Aでは、オンポンプ人工心肺手術を受けた白人66人の術後4時間後の全身性血管抵抗指数(SVRI)について、PAI−1 12580遺伝子型(GG、GT及びTTを別々に)(A)、又は、(GG/GT vs TT)(B)によってグループ化して示している。
【図18】オンポンプ人工心肺手術を受けた白人364人の術後4時間後の全身性血管抵抗指数(SVRI)について、PAI−1 4G/5G(837)遺伝子型(4G/4G、4G/5G及び5G/5Gを別々に)(A)、又は、(何らかの4G vs 5G/5G)(B)によってグループ化して示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症状態を有するか炎症状態の発症の危険がある患者に関する予後を得る方法であって、該患者のプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター‐1遺伝子の1又はそれ以上の多型部位を含む遺伝子型を決定することを含み、該遺伝子型は該患者が炎症状態から回復する能力を示し、該1又はそれ以上の多型部位が配列番号1の位置837に対応する部位の多型のみではないことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記1又はそれ以上の多型部位が、配列番号1の位置12580又はそれと総(total)連鎖不平衡にある多型部位を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1又はそれ以上の多型部位が、配列番号1の位置5645、7121、7437、8070、8406、9463、9466、12219、12580、13889及び14440から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記遺伝子型が2又はそれ以上の多型部位の組み合わせを含み、該組み合わせが配列番号1の以下の位置に相当する群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法:
664 A及び2037 T;
664 A及び2362 −;
664 A及び2852 A;
664 A及び5834 A;
837 −及び2037 T;
837 −及び2362 −;
837 −及び2852 A;
837 −及び5834 A;
5878 G、7343 G、13605 Aのうち1つ及び7365 T、7729+、7771 A、12750 Aのうち1つ及び4588 T、5404 G、5686 A、5984 A、11312 Aのうち1つ; 並びに、
2846 A、6821 T、9759 Gのうち1つ及び10381 T及び7365 T、7729 +、7771 A、12750 Aのうち1つ及び4588 T、5404 G、5686 A、5984 A、11312 Aのうち1つ。
【請求項5】
前記患者について同一の炎症状態又は別の炎症状態からの回復の予後の指標となる既知遺伝子型で判別されるような遺伝子型の比較を、更に含むことを特徴とする、請求項1〜4の何れか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記患者のプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター‐1遺伝子配列を得ることを、更に含むことを特徴とする、請求項1〜5の何れか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記遺伝子型の判別が前記患者からの核酸サンプルについて行われることを特徴とする、請求項1〜5の何れか1つに記載の方法。
【請求項8】
更に、前記患者から核酸サンプルを得ることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記遺伝子型の判定が以下の1又はそれ以上を含むことを特徴とする、請求項1〜8の何れか1つに記載の方法:
(a) 制限酵素断片長多型分析;
(b) シークエンシング;
(c) ハイブリダイゼーション;
(d) オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ;
(e) ライゲーションローリングサークル増幅;
(f) 5’ヌクレアーゼアッセイ;
(g) ポリメラーゼプルーフリーディング法;
(h) アレル特異的PCR;及び
(i) 配列データの読み取り。
【請求項10】
前記患者の前記遺伝子型が、炎症状態からの回復の可能性減少の指標であることを特徴とする、請求項1〜9の何れか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記予後が、重症患者における心血管又は呼吸器障害の重篤度の指標であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記遺伝子型が、以下の単独の多型部位及び多型部位の組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法:
5645 T;
7121 G;
7437 T;
8070 A;
8406 C;
9463 G;
9466 T;
12219 C;
12580 G;
13889 C;
14440 A;
664 A及び2037 T;
664 A及び2362 −;
664 A及び2852 A;
664 A及び5834 A;
837 −及び 2037 T;
837 −及び 2362 −;
837 −及び 2852 A; 並びに、
837 −及び 5834 A。
【請求項13】
前記患者の前記遺伝子型が、炎症状態からの回復の可能性増加の指標であることを特徴とする、請求項1〜9の何れか1つに記載の方法。
【請求項14】
前記予後が、重症患者における心血管又は呼吸器障害の重篤度が小さくなる指標であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記遺伝子型が、以下の単独の多型部位及び多型部位の組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項13又は14に記載の方法:
5645 C;
7121 A;
7437 C;
8070 G;
8406 T;
9463 A;
9466 C;
12219 T;
12580 T;
13889 T;
14440 G;
5878 G、7343 G、13605 Aのうち1つ及び7365 T、7729+、7771 A、12750 Aのうち1つ及び4588 T、5404 G、5686 A、5984 A、11312 Aのうち1つ; 並びに、
2846 A、6821 T、9759 Gのうち1つ及び10381 T及び7365 T、7729 +、7771 A、12750 Aのうち1つ及び4588 T、5404 G、5686 A、5984 A、11312 Aのうち1つ。
【請求項16】
前記炎症状態が以下の群から選択されることを特徴とする、請求項1〜15の何れか1つに記載の方法:
腐敗症、敗血症、肺炎、敗血症ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺障害、感染、膵炎、菌血症、腹膜炎、腹部膿瘍、外傷に起因する炎症、手術に起因する炎症、慢性炎症疾患、虚血、臓器若しくは組織の虚血‐再灌流損傷、疾患に起因する組織傷害、化学療法若しくは放射線療法に起因する組織傷害、及び、経口摂取された、吸入された、注入された、注射された若しくは送達された物質に対する反応、糸球体腎炎、腸感染、日和見感染、及び、大手術若しくは透析を受ける患者、免疫無防備状態の患者、免疫抑制剤を投与された患者、HIV/エイズの患者、疑わしい心内膜炎の患者、発熱した患者、未知の原因で発熱した患者、嚢胞性線維症の患者、糖尿病の患者、慢性腎不全の患者、気管支拡張の患者、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫若しくは喘息の患者、熱性好中球減少の患者、髄膜炎の患者、敗血性関節炎の患者、尿路感染の患者、壊死性筋膜炎の患者、他の疑わしいグループA連鎖球菌感染の患者、脾臓摘出を受けた患者、再発性若しくは疑わしい腸球菌感染の患者に対して、感染リスクの増大と関係するその他の内科的及び外科的状態、グラム陽性敗血症、グラム陰性敗血症、培養陰性敗血症、真菌敗血症、髄膜炎菌血症、ポスト-ポンプ症候群、心臓機能不全症候群、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、肝炎、喉頭蓋炎、大腸菌0157:H7、マラリア、ガス壊疸、毒素ショック症候群、放線菌の結核、カリニ肺炎、肺炎、レーシュマニア症、溶血性尿毒症候群/血栓性血小板減少性紫斑病、デング熱、骨盤炎症性疾病、レジオネラ、ライム病、インフルエンザA、EBウイルス、脳炎、 関節リウマチ、骨関節炎、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾病、特発性肺線維症、サルコイドーシス、過感受性間質性肺炎、全身性血管炎、ウェゲナー肉芽腫症を含む炎症性及び自己免疫性の疾病、 心臓、肝臓、肺、腎臓及び骨髄を含む移植、 移植片対宿主疾病、移植(片)拒絶反応、鎌形赤血球貧血、ネフローゼ性症候群、OKT3のような有毒性薬剤、サイトカイン療法、及び、肝硬変。
【請求項17】
前記炎症状態が全身性炎症反応症候群であることを特徴とする、請求項1〜16の何れか1つに記載の方法。
【請求項18】
患者の予後と関連するPAI−1遺伝子配列中の多型を同定する方法であって、
a) 患者群からPAI−1遺伝子配列情報を得ること
b) 前記PAI−1遺伝子中の少なくとも1つの多型部位を同定すること
c) 前記患者群内の個々の患者に関する前記部位における遺伝子型を決定すること
d) 前記患者群内の個々の患者が炎症状態から回復する能力(ないし可能性)を決定すること、及び
e) ステップc)で決定された遺伝子型と、ステップd)で決定された患者の能力(ないし可能性)との相関性を求めること
を含む方法。
【請求項19】
前記炎症状態が以下の群から選択されることを特徴とする、請求項18に記載の方法:
腐敗症、敗血症、肺炎、敗血症ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺障害、感染、膵炎、菌血症、腹膜炎、腹部膿瘍、外傷に起因する炎症、手術に起因する炎症、慢性炎症疾患、虚血、臓器若しくは組織の虚血‐再灌流損傷、疾患に起因する組織傷害、化学療法若しくは放射線療法に起因する組織傷害、及び、経口摂取された、吸入された、注入された、注射された若しくは送達された物質に対する反応、糸球体腎炎、腸感染、日和見感染、及び、大手術若しくは透析を受ける患者、免疫無防備状態の患者、免疫抑制剤を投与された患者、HIV/エイズの患者、疑わしい心内膜炎の患者、発熱した患者、未知の原因で発熱した患者、嚢胞性線維症の患者、糖尿病の患者、慢性腎不全の患者、気管支拡張の患者、慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、肺気腫若しくは喘息の患者、熱性好中球減少の患者、髄膜炎の患者、敗血性関節炎の患者、尿路感染の患者、壊死性筋膜炎の患者、他の疑わしいグループA連鎖球菌感染の患者、脾臓摘出を受けた患者、再発性若しくは疑わしい腸球菌感染の患者に対して、感染リスクの増大と関係するその他の内科的及び外科的状態、グラム陽性敗血症、グラム陰性敗血症、培養陰性敗血症、真菌敗血症、髄膜炎菌血症、ポスト-ポンプ症候群、心臓機能不全症候群、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、肝炎、喉頭蓋炎、大腸菌0157:H7、マラリア、ガス壊疸、毒素ショック症候群、放線菌の結核、カリニ肺炎、肺炎、レーシュマニア症、溶血性尿毒症候群/血栓性血小板減少性紫斑病、デング熱、骨盤炎症性疾病、レジオネラ、ライム病、インフルエンザA、EBウイルス、脳炎、 関節リウマチ、骨関節炎、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾病、特発性肺線維症、サルコイドーシス、過感受性間質性肺炎、全身性血管炎、ウェゲナー肉芽腫症を含む炎症性及び自己免疫性の疾病、 心臓、肝臓、肺、腎臓及び骨髄を含む移植、 移植片対宿主疾病、移植(片)拒絶反応、鎌形赤血球貧血、ネフローゼ性症候群、OKT3のような有毒性薬剤、サイトカイン療法、及び、肝硬変。
【請求項20】
前記患者が炎症状態から回復する能力の予後を提供するために、該患者のPAI−1遺伝子配列の多型部位内の所定のヌクレオチド位置における遺伝子型を決定するためのキットであって、前記多型部位において入れ替わったヌクレオチドを識別可能な制限酵素、又は、前記多型部位に隣接若しくは近い配列と十分な相補性を有しかつ該入れ替わったヌクレオチドを識別可能な標識されたオリゴヌクレオチドを、パッケージ内に含むキット(但し、該多型部位は配列番号1の位置837に対応する部位の多型のみではない)。
【請求項21】
前記多型部位が、配列番号1の位置5645、7121、7437、8070、8406、9463、9466、12219、12580、13889又は14440の1又はそれ以上に対応することを特徴とする、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
前記多型部位が、配列番号1の位置12580に対応することを特徴とする、請求項21に記載のキット。
【請求項23】
前記制限酵素と、前記多型部位を包囲する領域の増幅に好適な1つのオリゴヌクレオチド又は複数のオリゴヌクレオチドのセットとを含むことを特徴とする、請求項20、21又は22に記載のキット。
【請求項24】
更に、一つの重合剤を含むことを特徴とする、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
遺伝子型を決定するための前記キットの使用説明書を、更に含むことを特徴とする、請求項20〜24の何れか1つに記載のキット。
【請求項26】
炎症状態の治療に有用であることが既知又は推測される候補薬剤の効果を判定するために患者群を選択する方法であって、該方法は、各患者のプラスミノーゲンアクチベーターインヒビター‐1遺伝子の1又はそれ以上の多型部位を含む遺伝子型を決定すること(ここで該遺伝子型は該患者が炎症状態から回復する能力の指標となる)及びその遺伝子型に基づいて患者を識別(分類)することを含む方法(但し、該多型部位は配列番号1の位置837に対応する部位の多型のみではない)。
【請求項27】
前記患者の遺伝子型に基づいて候補薬剤への患者反応を比較することを、更に含むことを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記患者反応を、炎症状態から回復する各患者の能力(ないし可能性)によって判定することを特徴とする、請求項27に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公表番号】特表2006−520199(P2006−520199A)
【公表日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504085(P2006−504085)
【出願日】平成16年3月19日(2004.3.19)
【国際出願番号】PCT/CA2004/000424
【国際公開番号】WO2004/083457
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(503265094)ザ ユニバーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア (17)
【Fターム(参考)】