説明

患者結果の指標として有用なプロテインC多型

【課題】炎症状態を有するか炎症状態の発症の危険がある患者に関する予後を得る方法及びキット。
【解決手段】炎症状態を有するか炎症状態の発症の危険がある患者に関する予後を得る方法であって、前記患者のプロテインC遺伝子の1又は2以上の多型部位を含む遺伝子型であって、前記患者が炎症状態から回復する能力を示す遺伝子型を決定することを含む方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2002年5月28に出願した米国仮出願第60/383,128号に関連する。この仮出願の開示内容は引用を以って本書に繰り込み本書に記載されているものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明の技術分野は、炎症状態を有する患者の評価又は処置に関する。
【背景技術】
【0003】
プロテインCは、活性化されて活性プロテインC(APC)を形成するが、3つの生物学的プロセスないし状態、即ち凝血、線溶及び炎症において重要な役割を演じる。急性炎症状態は、遊離型のプロテインSのレベルを減じるが、遊離型プロテインSは、APCの重要な補因子なので、APCの機能も減じられる。腐敗症(ないし敗血症)、急性炎症及びサイトカインは、内皮細胞におけるトロンボモジュリン発現を減じるため、APCの活性ないしレベルも減じられる。敗血症ショックは、トロンボモジュリンの循環レベルを増加するが、これは、内皮細胞トロンボモジュリンの切断増加と関連する。腐敗症におけるAPCの機能低下の他の機構としては、TNF−αのようなエンドトキシン及びサイトカインが内皮細胞プロテインCレセプター(EPCR)の発現を下方制御することによりAPCの作用を低下することがある。髄膜炎菌血症のような重篤な腐敗症状態もまたプロテインCの消耗に繋がる。プロテインCレベルの抑制は、紫斑病、指状梗塞(digital infarction)及び髄膜炎菌血症における死に関わる。
【0004】
プロテインCは、心肺バイパス形成手術(CPB)後の非敗血症患者において改変される。プロテインC、APC及びプロテインSは、トータルで、CPB中に減少する。大動脈のクランプ解除(CPB終了時の再灌流)後、プロテインCはさらに活性化されるため、残余の非活性プロテインCの割合は著しく減じる。CPB中及び後のプロテインCの減少は、術中及び術後の血栓症、播種性血管内凝固症候群(DIC)、器官虚血及び炎症の危険を増大する。活性プロテインCが少ない患者では、一般的に、心機能の回復に障害が見られたが、このことは、低レベルのプロテインCは微小血管血栓及び心筋虚血の危険を増大するという考えと一致する。アプロチニンは、APCの競合的阻害剤であり、心臓手術及びCPBにおいて使用されることが時折ある。アプロチニンは、極低体温循環停止後の術後血栓性合併症の原因として意味付けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
細菌内毒素及び心肺バイパス形成手術(CPB)のような腐敗症性及び非腐敗症性刺激は、凝血システムを活性化し、全身性炎症反応症候群(SIRS)を誘発する。プロテインCレベルの減少は、敗血症ショックの患者(グリフィン(GRIFFIN)JH. et al. (1982) Blood 60: 261-264; テイラー(TAYLOR)FB. et al. (1987) J. Clin. Invest. 79: 918-925; ヘッセルヴィク(HESSELVIK)JF. et al. (1991) Thromb. Haemost. 65: 126-129; フィジンヴァンドラート(FIJNVANDRAAT)K. et al. (1995) Thromb. Haemost. 73(1): 15-20)、重篤な感染を有する患者(ヘッセルヴィク JF. et al.(1991) Thromb. Haemost. 65: 126-129)及び大手術後の患者(ブレーミー(BLAMEY)SL. et al. (1985) Thromb. Haemost. 54: 622-625)において示されている。この減少は、プロテインCの転写の減少に起因することが提案されている(スペック(SPEK)CA. et al. J. Biological Chemistry (1995) 270(41): 24216-21 at 24221)。また、プロテインC活性化に要求される内皮経路は重篤な髄膜炎菌性敗血症において損なわれることも示されている(ファウスト(FAUST)SN. et al. New Eng. J. Med. (2001) 345: 408-416)。腐敗症患者における低レベルのプロテインCは予後不良と関連する(ヤン(YAN)SB.及び ダイノート(DHAINAUT)J-F. Critical Care Medicine (2001) 29 (7): S69-S74; フィシャー(FISHER)CJ.及びヤン SB. Critical Care Medicine (2000) 28 (9 Suppl): S49-S56; ヴァーヴレート(VERVLOET)MG. et al. Semin Thromb Hemost. (1998) 24(1): 33-44; ローレンテ(LORENTE)JA. et al. Chest (1993) 103 (5): 1536-42)。組換えヒト活性プロテインCは、重篤な腐敗症又は敗血症ショックを有する患者における死亡率を低下する(バーナード(BERNARD)GR. et al. New Eng. J. Med. (2001) 344: 699-709)。従って、プロテインCは、全身性炎症反応症候群において重要で有益な役割を演ずるように思われる。
【0006】
ヒトプロテインC遺伝子は、染色体2q13−q14に位置し、11kbにわたる。代表的なホモ・サピエンスプロテインC遺伝子配列は、ジーンバンクにアクセッション番号AF378903で登録されている。3つの一塩基多型(SNPs)がプロテインC遺伝子の5’非翻訳プロモーター領域において同定されており、(フォスター(FOSTER)DC. et al. Proc Natl Acad Sci U S A (1985) 82 (14): 4673-4677の番号付与体系によれば)−1654C/T、−1641A/G及び−1476A/Tとして特徴付けられ、また(ミラー(MILLAR)DS. et al. Hum. Genet. (2000) 106: 646-653 at 651によれば)−153C/T、−140A/G及び−26A/Tとして特徴付けられる。
【0007】
−1654C/−1641G/−1476Tに対しホモ接合性の遺伝子型は、−1654T/−1641A/−1476Aホモ接合性遺伝子型と比べると、プロテインC遺伝子の転写速度の低下と関連付けられている(スコープス(SCOPES)D.et al. Blood Coagul. Fibrinolysis (1995) 6 (4): 317-321)。−1654C/−1641G/−1476T遺伝子型に対しホモ接合性の患者は、−1654T/−1641A/−1476A遺伝子型に対しホモ接合性の患者と比べると、血漿プロテインCレベル及びプロテインC活性レベルに関し22%の減少を示す(スペック(SPEK)CA. et al. Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology (1995) 15: 214-218)。−1654C/−1641Gハプロタイプは、−1654T/−1641Aと比べると、ホモ接合体及びヘテロ接合体の両者において低濃度のプロテインCと関連付けられている(アイアック(AIACH)M. et al. Arterioscler Thromb Vasc Biol. (1999) 19 (6): 1573-1576)。
【0008】
本発明は、部分的に、プロテインCの減少に関連する科学文献において特徴付けられたプロテインCプロモーター多型の2つが、炎症状態を有する患者における予後ないし患者結果の改善と関連するという驚くべき発見に基づく。更に、種々のプロテインC多型は、患者結果の指標として、患者のスクリーニングに対して有用であり、また炎症状態からの回復に対する予後に対して有用である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、炎症状態を有するかその発症の危険がある患者に関する予後ないし医学上の見通しを得るための方法であって、該患者のプロテインC遺伝子の1又は2以上の多型部位を含む遺伝子型であって、該患者が炎症状態から回復する能力(ないし可能性)の指標をなす遺伝子型を決定することを含む方法が提供される。
【0010】
多型部位は、配列番号1の位置2418又はそれとリンクした多型部位に対応し得る。また、多型部位は、配列番号1の位置2418、1386、2583又は3920に対応する。
【0011】
遺伝子型は、2又は3以上の多型部位の組合せであって、配列番号1の以下の複数の位置の群から選択される組合せにおいて決定され得る:
5867及び2405;
5867及び4919;
5867及び4956;
5867及び6187;
5867及び9534;
5867及び12109;
4800及び2405;
4800及び4919;
4800及び4956;
4800及び6187;
4800及び9534;
4800及び12109;
9198及び6379及び2405;
9198及び6379及び4919;
9198及び6379及び4956;
9198及び6379及び6187;
9198及び6379及び9534;及び
9198及び6379及び12109。
【0012】
本発明の他の一側面によれば、上記のように決定された遺伝子型と、当該患者と同じ炎症状態又は他の炎症状態からの回復に関する予後の指標をなす既知の遺伝子型とを比較することを更に含む方法が提供される。
【0013】
患者の遺伝子型は、炎症状態からの回復の可能性ないし見込みの減少を示すか、又は重病患者の重篤な心血管又は呼吸器障害の予後を示し得る。更に、そのような遺伝子型は、以下の単独の多型部位及び複数の多型部位の組合せの群から選択することも可能である:
1386T;
2418A;
2583A;
3920T;
5867A及び2405T;
5867A及び4919A;
5867A及び4956T;
5867A及び6187C;
5867A及び9534T;
5867A及び12109T;
4800G及び2405T;
4800G及び4919A;
4800G及び4956T;
4800G及び6187C;
4800G及び9534T;
4800G及び12109T;
9198A及び6379G及び2405T;
9198A及び6379G及び4919A;
9198A及び6379G及び4956T;
9198A及び6379G及び6187C;
9198A及び6379G及び9534T;及び
9198A及び6379G及び12109T。
【0014】
患者の遺伝子型は、炎症状態からの回復の見込みないし可能性の上昇を示すか、又は重病患者の重篤度が低い心血管又は呼吸器障害の予後を示すことができる。更に、そのような遺伝子型は、以下の単独の多型部位及び複数の多型部位の組合せの群から選択することも可能である:
1386C;
2418G;
2583T;
3920C;
5867G及び2405C;
5867G及び4919G;
5867G及び4956C;
5867G及び6187T;
5867G及び9534C;
5867G及び12109C;
4800C及び2405C;
4800C及び4919G;
4800C及び4956C;
4800C及び6187T;
4800C及び9534C;及び
4800C及び12109C。
【0015】
本発明の他の一側面によれば、患者の予後と関連するプロテインC遺伝子配列中の多型を同定する方法が提供される。この方法は、患者群からプロテインC遺伝子配列情報を得ること、該プロテインC遺伝子中の少なくとも1つの多型の部位を同定すること、該患者群内の個々の患者に関する該部位における遺伝子型を決定すること、該患者群内の個々の患者の炎症状態から回復する能力(ないし可能性)を決定すること、及び決定された遺伝子型と患者の能力(ないし可能性)との相関性を求めることを含む。
【0016】
上記相関性決定方法は、十分に有意な相関性を達成するために、十分な大きさの患者母集団に対して繰り返し実行することも可能である。
【0017】
本発明の方法は、更に、患者のプロテインC遺伝子配列を得るステップ又は患者から核酸試料を得るステップを含む。遺伝子型の決定は、患者からの核酸試料に対して実行してもよい。
【0018】
位置2418のヌクレオチドに対応する患者の遺伝子型がアデニン(A)である場合、予後は、炎症状態から回復する見込みないし可能性の減少、又は重病患者の重篤な心血管又は呼吸器障害を示し得る。
【0019】
位置2418のヌクレオチドに対応する患者の遺伝子型がグアニン(G)である場合、予後は、炎症状態から回復する見込みないし可能性の増加、又は重病患者の重篤度の低い心血管又は呼吸器障害を示し得る。
【0020】
炎症状態は、腐敗症、敗血症、肺炎、敗血症ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺損傷、感染、膵炎、菌血症、腹膜炎、腹部膿瘍、外傷に起因する炎症、手術に起因する炎症、慢性炎症疾患、虚血、器官又は組織の虚血−再灌流損傷、疾患に起因する組織傷害、化学療法又は放射線療法に起因する組織傷害、及び経口摂取された、吸入された、注入された、注射された又は送達された物質に対する反応からなる群から選択される。
【0021】
遺伝子型の決定は、制限フラグメント長分析;シークエンシング;ハイブリダイゼーション;オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ;ライゲーションローリングサークル増幅;5’ヌクレアーゼアッセイ;ポリメラーゼプルーフリーディング法;アレル特異的PCR、及びリーディング配列データ、の1又は2以上を含み得る。
【0022】
本発明の他の一側面によれば、患者が炎症状態から回復する能力(ないし可能性)の予後を提供するために、該患者のプロテインC遺伝子配列の多型部位内の所定のヌクレオチド位置において遺伝子型を決定するためのキットであって、該多型部位において交代ヌクレオチドを識別可能な制限酵素、又は該多型部位に対する十分な相補性を有しかつ該交代ヌクレオチドを識別可能な標識されたオリゴヌクレオチドを、パッケージ内に含むキットが提供される。
【0023】
交代ヌクレオチドは、配列番号1の位置2418、配列番号2の位置8、又はそれ(ら)とリンクした多型に対応し得る。また、交代ヌクレオチドは、配列番号1の位置2418、1386、2583及び3920の1又は2以上に対応し得る。
【0024】
制限酵素を有するキットは、多型部位を包囲する領域の増幅に好適な1つのオリゴヌクレオチド又は複数のオリゴヌクレオチドのセット、重合剤、及び遺伝子型を決定するためのキットの使用説明書も含み得る。
【0025】
本発明の他の一側面によれば、炎症状態を有するかその発症の危険がある患者における患者予後を決定するための方法であって、プロテインCプロモーター領域中の1又は2以上の多型の同一性であって、該患者の該炎症状態から回復する能力ないし可能性を示す1又は2以上の多型の同一性を検出することを含む方法が提供される。
【0026】
本発明の他の一側面によれば、(a)患者からプロテインC遺伝子配列情報を得るステップ、及び(b)プロモーター領域中の1又は2以上の多型であって、患者が炎症状態から回復する能力ないし可能性を示し得る1又は2以上の多型の同一性を決定するステップを含む患者スクリーニングを実行する方法が提供される。
【0027】
本発明の他の一側面によれば、(a)炎症状態を発症する危険又は炎症状態を現に有していることに基づき患者を選択するステップ、(b)当該患者からプロテインC遺伝子配列情報を得るステップ、及び(c)該プロテインC遺伝子中の1又は2以上の多型であって、患者が炎症状態から回復する能力ないし可能性を示す多型を検出するステップを含む患者スクリーニングを実行する方法が提供される。
【0028】
上記の配列位置は、プロテインC遺伝子プロモーター領域の有意鎖に関する。分析は患者の結果を決定するために反意鎖に対して実行可能であることは当業者には明らかである。
【0029】
より重篤な患者結果又は予後は、より大きいプロテインC発現と関係付けることができ、又は逆にいえば重篤度がより小さい患者結果又は予後の指標は、より小さいプロテインC発現と関係付けることができるが、これは、予期されたことと反対である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
1.定義
【0031】
以下の記載においては、幾つかの用語は頻繁に使用されるが、本発明の理解の容易化のため以下のような定義づけを行う。
【0032】
「遺伝物質」は、任意の核酸を含み、一本鎖又は二本鎖の何れかの形態のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマーであり得る。
【0033】
「プリン」は、融合したピリミジン及びイミダゾール環を含む複素環式有機化合物であり、プリン塩基、即ちアデニン(A)及びグアニン(G)の親化合物として作用する。「ヌクレオチド」は、一般に、ペントース、通常、リボース又はデオキシリボースと共有結合したプリン(R)又はピリミジン(Y)塩基である。なお、この糖は、1又は2以上のリン酸基を担持する。核酸は、一般に、3’5’リン酸ジエステル結合により結合したヌクレオチドのポリマーである。本書で使用する場合、「プリン」は、プリン塩基、即ちA及びGを指称するために使用するが、広義では、ポリヌクレオチド鎖の成分としての、ヌクレオチドモノマー、即ち、デオキシアデノシン−5’−リン酸及びデオキシグアノシン−5’−リン酸をも意味するものとする。
【0034】
「ピリミジン」は、ヌクレオチド塩基、即ちシトシン(C)、チミン(T)及びウラシル(U)を構成する単環式有機塩基である。本書で使用する場合、「ピリミジン」は、ピリミジン塩基、即ちC、T及びUを指称するために使用されるが、広義では、プリンヌクレオチドと共にポリヌクレオチド鎖の成分をなすピリミジンヌクレオチドモノマーをも意味するものとする。
【0035】
「多型性部位(polymorphic site)」又は「多型部位(polymorphism site)」又は「一塩基多型部位」(SNP部位)は、本書で使用される場合、所定の配列内において相違が生じている座位ないし位置である。好ましい多型性部位は、選択された母集団において1%以上の頻度、好ましくは10%又は20%の頻度でそれぞれ現れる少なくとも2つのアレルを有する。多型部位は、ある核酸配列内の既知の位置であってもよく、本書に記載した方法によって存在が特定されてもよい。
【0036】
「プロモーター」領域は、翻訳開始部位の5’又は上流であるが、この場合、翻訳開始部位は、表1A(配列番号1)の位置4062に位置し、転写開始部位は、表1A(配列番号1)の位置2559に位置する。
【0037】
多数の他の部位がプロテインC遺伝子の多型として同定されているが、これら多型は、配列番号1の位置2418における多型とリンクしており、従って患者の予後を示し得る。以下の単独の多型部位及び複数の多型部位の組合せは、配列番号1の位置2418とリンクしている:
1386;
2583;
3920;
5867及び2405;
5867及び4919;
5867及び4956;
5867及び6187;
5867及び9534;
5867及び12109;
4800及び2405;
4800及び4919;
4800及び4956;
4800及び6187;
4800及び9534;
4800及び12109;
9198及び6379及び2405;
9198及び6379及び4919;
9198及び6379及び4956;
9198及び6379及び6187;
9198及び6379及び9534;及び
9198及び6379及び12109。
【0038】
位置2418と更にリンクする単独の多型部位及び複数の多型部位の組合せが決定可能であることは当業者であれば認識できる。ハプロタイプのプロテインCは、期待最大化(expectation maximization)アルゴリズムを有するプログラム(即ち、PHASE)を用いて正常な被検体におけるプロテインCのスニップスを評価することにより生成することができる。構築されたハプロタイプのプロテインCは、2418に関し総(total)連鎖不平衡(LD)にあるスニップスの組合せを発見するために使用することも可能である。従って、1つの個体のハプロタイプは、2418に関し総LDにある他のスニップスの遺伝子型を求めることにより決定することも可能である。結合された単独の多型部位又は複数の多型部位の組合せは、患者の予後を評価するために遺伝子型を求められることも可能である。
【0039】
単独の多型部位及び複数の多型部位の組合せに関する以下の遺伝子型は、炎症状態からの回復の見込みないし可能性の低下を示すことができ、又は重病患者の重篤な心血管又は呼吸器障害を示すことができる:
1386T;
2583A;
3920T;
5867A及び2405T;
5867A及び4919A;
5867A及び4956T;
5867A及び6187C;
5867A及び9534T;
5867A及び12109T;
4800G及び2405T;
4800G及び4919A;
4800G及び4956T;
4800G及び6187C;
4800G及び9534T;
4800G及び12109T;
9198A及び6379G及び2405T;
9198A及び6379G及び4919A;
9198A及び6379G及び4956T;
9198A及び6379G及び6187C;
9198A及び6379G及び9534T;及び
9198A及び6379G及び12109T。
【0040】
単独の多型部位及び複数の多型部位の組合せに関する以下の遺伝子型は、炎症状態からの回復の見込みないし可能性の上昇を示すことができ、又は重病患者の重篤度の低い心血管又は呼吸器障害を示すことができる:
1386C;
2583T;
3920C;
5867G及び2405C;
5867G及び4919G;
5867G及び4956C;
5867G及び6187T;
5867G及び9534C;
5867G及び12109C;
4800C及び2405C;
4800C及び4919G;
4800C及び4956C;
4800C及び6187T;
4800C及び9534C;及び
4800C及び12109C。
【0041】
(1つの)配列内の(複数の)多型の位置の数値名称が特定の配列に対して相対的なものであることは、当業者であれば認識できる。上掲フォスターet al.及びミラーet al.における対応する多型の異なるナンバリング法によって説明されたように、同じ位置同士が、配列がナンバリングされ及び配列が選択される態様に応じて異なる数値名称を付与されこともまたあり得る。更に、挿入又は削除のような、母集団内での配列変化により、多型部位における及びその周囲における特定のヌクレオチドの相対位置従って数値名称が変化し得る。
【0042】
後掲表1Aは、ホモ・サピエンスプロテインC遺伝子配列の代表例であり、ジーンバンクにアクセッション番号AF378903で登録された配列を含む。フォスターet al.のナンバリングシステムを用いて−1654C/T、−1641A/G及び−1476A/Tとして記述されるスニップスは、それぞれ、表1A(配列番号1)の2045、2418及び2583に対応する。後掲表1Aに示す多型部位は、白三角印の頂点に位置する大文字Nによって表されている。大文字Nは、遺伝子型における変化が(1つの)母集団内のそれらの位置において可能であることを示すために使用される。2418多型は、その位置におけるヌクレオチドがa、t、u、g又はcであり得ることを示す(1つの)Nによって示されている。しかしながら、位置2418における遺伝子型は、最も一般的にはa又はg(プリン)ヌクレオチドである。
【0043】
表1A











【0044】
表1Bに示した配列は、上掲表1Aに示したプロテインC配列から抜き出した配列フラグメントである。更に、配列番号2は、上掲表1Aにおいて下線を引いた配列に対応する。配列番号2の位置8のヌクレオチドは、配列番号1の位置2418に見出されるヌクレオチドに対応する。後掲表2Bに記載した配列のすべてにおいて、大文字Nで表した多型は、a、t、u、g又はcで置換されてもよい。更に、表2Bの配列番号3〜11においてで表した太字のかつ下線を引いたヌクレオチドは、すべて、配列番号1の位置2418に見出されるヌクレオチドに対応する。プロテインC配列においては変化ないし変異が可能であるため、以下の配列モチーフは、(一人の)患者からの遺伝子型決定に好適なプロテインC配列の同定に有用であり得る。例えば、以下のモチーフ(配列番号3〜11)と整列(一致)する患者配列は、当該患者配列はプロテインC配列であること、及び太字のかつ下線を引いたNは、配列番号1の位置2418における多型に対応するため遺伝子型決定に好適であることを示し得る。本書で同定された他の多型部位に同様のストラテジーを適用することも可能である。
【0045】
表1B

【0046】
「アレル(対立遺伝子)」は、所与の遺伝子の1又は2以上の他の任意の型として定義される。二倍体細胞又は生物においては、アレル対のメンバー(即ち、所与の遺伝子の2つのアレル)は、一対の相同染色体において対応する位置(座位ないし遺伝子座)を占有する。特定の遺伝子に関し、これらアレルが遺伝的に同一であれば、当該(二倍体)細胞又は生物は「ホモ接合体」と指称され、遺伝的に異なる場合は、当該(二倍体)細胞又は生物は「ヘテロ接合体」と指称される。
【0047】
「遺伝子」は、特定の機能性産物をコードする特定の染色体の特定の位置に位置するヌクレオチドの規則正しい配列であるが、当該コード領域に近接する非翻訳・非転写配列も含み得る。そのような非コード配列は、コード配列の転写・翻訳に必要な制御配列又はイントロン等を含み得る。
【0048】
「遺伝子型」は、生物の遺伝的構成として定義されるが、通常特定の状況に関連する1つの遺伝子又は2〜3の遺伝子又は1つの遺伝子の1つの領域(即ち、特定の表現型の原因をなす遺伝子座)に関する。
【0049】
「表現型」は、生物の観察可能な性質として定義される。
【0050】
「一塩基多型」(SNP:スニップ)は、1つの塩基によって占有される多型性部位において生起するが、これは、複数のアレル配列間の相違の部位に相当する。この部位の前後には、通常、アレルの高保存配列(例えば、母集団の1/100ないし1/1000未満の構成員において変化する配列。)が存在する。一塩基多型は、通常、多型性部位における1つの塩基の他の塩基による置換によって生起する。「トランジション」は、1つのプリンの他の1つのプリンによる置換又は1つのピリミジンの他の1つのピリミジンによる置換である。「トランスバージョン」は、1つのプリンの1つのピリミジンによる置換又は1つのピリミジンの1つのプリンによる置換である。また、一塩基多型は、基準アレル(reference allele)に関連する1つのヌクレオチドの削除又は1つのヌクレオチドの挿入からも生起し得る。更に、所与の配列内における挿入又は削除により、相対的な位置関係が変化され、従って当該配列内における他の多型の位置番号も変化され得ることは、当業者であれば認識できるであろう。
【0051】
「全身性炎症反応症候群」ないし(SIRS)は、敗血性全身性炎症反応(即ち、腐敗症ないし敗血症又は敗血性ショック)及び非敗血性全身性炎症反応(即ち、術後の反応)の両者を含むものとして定義される。「SIRS」は、更に、ACCP(アメリカ胸部外科大学:American College of Chest Physicians)ガイドラインに応じ、A)温度>38℃又は<36℃、B)心拍数>90拍/分、C)呼吸数>20息/分、及びD)白血球数>12,000/mm又は<4,000/mmの条件のうちの2又は3以上が存在として定義される。以下の記載においては、「SIRS」基準のうちの2つ、3つ又は4つの存在が、28日間の観察期間の間毎日記録された。
【0052】
「腐敗症ないし敗血症(sepsis)」は、少なくとも2つの「SIRS」基準の存在として定義され、既知の又は疑いのある感染源である。敗血症ショックは、腐敗症と、ブラッセル基準による1つの更なる器官の機能不全と、昇圧剤投与の必要性との3つによって定義されている。
【0053】
本書で使用する場合の患者の結果又は予後とは、炎症状態から回復する患者の能力ないし可能性をいうものとする。炎症状態は、腐敗症(sepsis)、敗血症(septicemia)、肺炎、敗血症ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺損傷、感染、膵炎、菌血症、腹膜炎、腹部膿瘍、外傷に起因する炎症、手術に起因する炎症、慢性炎症疾患、虚血、器官又は組織の虚血−再灌流損傷、疾患に起因する組織傷害、化学療法又は放射線療法に起因する組織傷害、及び経口摂取された、吸入された、注入された、注射された又は送達された物質に対する反応からなる群から選択され得る。
【0054】
患者結果又は予後の評価は、種々の方法で実行することができる。例えば、“APACHE II”スコアは、cute hysiology nd hronic ealth valuation(急性生理機能及び慢性健康評価)として定義され、本書においては、生の臨床及び実験変量(データ)から毎日計算した。ヴィンセント(Vincent)et al.(ヴィンセントJL. フェレイラ(Ferreira)F. モレノ(Moreno)R. Scoring systems for assessing organ dysfunction and survival. Critical Care Clinics. 16:353-366, 2000)は、APACHEスコアについて以下のように要約している:「(APACHEスコアは)1981年、クナウス(Knaus)et al.によって初めて開発された。APACHEスコアは、世界中で最も一般的に使用されるICU生存予測モデルとなった。APACHE IIスコアは、オリジナルのプロトタイプの修正・簡略化したバージョンであるが、12の常用生理学的尺度の初期値、年齢及び以前の健康状態に基づいたポイントスコアを使用して、疾患の重症度の一般的尺度を提供する。記録される値(複数)は、ICUにおける患者の最初の24時間の間に得られる最悪の値(複数)である。スコアは、疾患特異的死亡率(APACHE II予測致死リスク)を評価するために、34の入院患者診断の1つに適用される。APACHE IIスコアの可能な最大値は71であり、大きなスコアは、死亡との関連性が大きかった。APACHE IIスコアは、臨床試験に入る際の疾患の重症度により、腐敗症の患者を含む重病患者の種々のグループ間での等級分類及び比較のために広く使用された。」
【0055】
「ブラッセルスコア」スコアは、ベースラインと比較した器官の機能障害を評価するための方法である。ブラッセルスコアが2以上の場合(即ち、中度、重度、又は極重度)、器官障害は、その特定の日に存在するものとして記録された(後掲表1C参照)。以下の記載では、観察期間中の死亡(数)を補正するために、生存及び器官障害解放日数(DAF)が、以前に記載されたようにして計算された。例えば、急性肺損傷は、以下のようにして計算された。急性肺損傷は、患者が以下の4つの基準を全て充足した場合に存在するものとして定義される。この4つの基準とは、1)機械による人工呼吸の必要、2)急性肺損傷と一致する胸部X線写真における両側の肺の浸潤(の存在)、3)PaO/FiO比が300未満、4)鬱血性心不全の臨床的証拠の不存在又は肺動脈カテーテルが臨床目的のために適用される場合、肺毛細管楔入圧が18mmHg(1)未満、である。急性肺損傷の重症度は、28日間の観察期間にわたって生存及び急性肺損傷解放日数を測定することによって評価される。急性肺損傷は、患者がブラッセルスコアで定義されるような中度、重度又は極重度の機能障害を有する日毎に存在するものとして記録される。生存及び急逝肺損傷解放日数は、所定の観察期間(28日間)の間に急性肺損傷が発症した後で患者が生存しておりかつ急性肺損傷から解放されている日数として計算される。従って、生存及び急逝肺損傷解放日数のより低いスコアは、急性肺損傷がより深刻であることを示す。生存及び急逝肺損傷解放日数が、急性肺損傷の単なる存在又は不存在よりも好まれる理由は、急性肺損傷は急性死亡率が大きく、(28日以内の)早期の死亡は死亡した患者における急性肺損傷の存在又は不存在の計算を妨げることである。心血管系、腎臓、神経系、肝臓及び凝固の機能障害は、患者がブラッセルスコアによって定義されるような中度、重度又は極重度の機能障害を有する日毎に存在するものとして同様に定義された。生存及びステロイド解放日数は、患者が生存しかつ外因性副腎皮質ステロイド(例えば、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン)で治療されていない日数である。生存及び昇圧剤解放日数は、患者が生存しかつ静脈内昇圧剤(例えば、ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン、フェニレフリン)で治療されていない日数である。生存及び国際標準化比(INR:International Normalized Ratio)>1.5解放日数は、患者が生存しかつINR>1.5を有しない日数である。
【0056】
表1C
ブラッセル多器官機能障害(MOD)スコア

【0057】
分散分析(ANOVA)は、測定のセット間の統計的有意差を試験するための標準的な統計的手法である。
【0058】
フィッシャーの正確確率検定は、異なるグループで測定された要因のレート及びプロポーション速度間の統計的有意差を試験するための標準的な統計的手法である。
【0059】
2.一般的方法
【0060】
本発明の一側面は、炎症状態の発症の危険を有するか又は既に炎症状態を有する患者の同定ないし患者の選択を含み得る。例えば、大手術を受けた又は大手術の予定ないし計画のある患者は、炎症状態の発症の危険があるとみなすことができる。更に、患者は、医療分野で既知の診断方法及び臨床評価を用いて炎症状態を有すると決定されてもよい。炎症状態は、腐敗症(sepsis)、敗血症(septicemia)、肺炎、敗血症ショック、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺損傷、感染、膵炎、菌血症、腹膜炎、腹部膿瘍、外傷に起因する炎症、手術に起因する炎症、慢性炎症疾患、虚血、器官又は組織の虚血−再灌流損傷、疾患に起因する組織傷害、化学療法又は放射線療法に起因する組織傷害、及び経口摂取された、吸入された、注入された、注射された又は送達された物質に対する反応からなる群から選択することができる。
【0061】
患者が炎症状態を発症する危険を有するか又は既に有していると同定されると、遺伝子配列情報は、当該患者から得ることができる。或いは、遺伝子配列情報は、当該患者から既に(上記同定前に)得られたものであってもよい。例えば、患者は、他の目的のための生物学的試料を既に提供していてもよく、全部又は一部が決定されかつ将来の使用のために保存された遺伝子配列を有していてもよい。遺伝子配列情報は、種々の異なる方法で得ることができ、遺伝物質を含有する生物学的試料の採取を伴ってもよい。とりわけ、遺伝物質は、1又は2以上の目的の配列を含み得る。
【0062】
身体試料を採取するための及び当該試料から遺伝物質を抽出するための多くの方法が当業者には知られている。遺伝物質は、血液、組織及び毛髪及びその他の試料から抽出することができる。生物物質からDNA及びRNAを分離単離するための方法は多数知られている。典型的には、DNAは生物試料から単離され得る。この場合、まず生物試料が溶解され、次いで時間の長さが変化可能な種々の多段階プロトコールの何れか1つに応じてライセートからDNAが単離される。DNA単離法は、フェノールの使用を伴い得る(サンブルック(Sambrook)J. et al., "Molecular Cloning", Vol.2, pp.9.14-9.23, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)及びオースベル(Ausubel),フレデリック(Frederick)M. et al., "Current Protocols in Molecular Biology", Vol.1, pp. 2.2.1-2.4.5, John Wiley & Sons, Inc. (1994))。典型的には、生物試料を界面活性剤溶液で溶解し、ライセートのタンパク質成分を12〜18時間タンパク質分解酵素で消化する。次に、ライセートをフェノールで抽出して細胞成分の大部分を除去し、残余の水相を更に処理してDNAを単離する。ヴァンネス(Van Ness)et al.(米国特許第5,130,423号)に記載されたような他の方法では、非腐食性フェノール誘導体を用いて核酸を単離する。得られた調製物は、RNAとDNAの混合物である。
【0063】
DNA単離の他の方法では、非腐食性カオトロピック試薬を用いる。この方法は、グアニジン塩、尿素及びヨウ化ナトリウムの使用を基礎とするのであるが、カオトロピック水溶液中での生物試料の溶解及びそれに続く低アルコールによる未精製DNAフラクションの沈殿を伴う。沈殿された未精製DNAフラクションの最終精製は、カラムクロマトグラフィー(アナレクツ(Analects), (1994) Vol. 22, No.4, ファルマシア・バイオテック社)又はコーラー(Koller)(米国特許第5,128,247号)に記載されたような未精製DNAのポリアニオン含有タンパク質への曝露を含む幾つかある方法のうち何れか1つによって達成することができる。
【0064】
ボットウェル(Botwell), D.D.L.(Anal. Biochem. (1987) 162: 463-465)に記載されているDNA単離の更なる方法は、6M塩酸グアニジン中における細胞の溶解、2.5倍量のエタノールの添加による酸性pHでのライセートからのDNAの沈殿、及びエタノールでのDNAの洗浄を伴う。
【0065】
チョムジンスキー(Chomezynski)(米国特許第5,945,515号)によって記載された方法のような、RNAとDNAの両方を単離するための他の方法も当業者には数多く知られている。チョムジンスキーの方法では、僅かに20分程度で遺伝物質を効率的に抽出することができる。エバンズ(Evans)とヒュー(Hugh)(米国特許第5,989,431号)は、中空膜フィルターを用いたDNAの単離方法を記載している。
【0066】
患者の遺伝子配列情報が当該患者から得られたら、当該情報に対し、プロテインC遺伝子中の1又は2以上の多型の同一性又は遺伝子型を検出ないし決定するために更に評価を行うことができる。得られた遺伝物質が目的の配列を含有するとすれば、とりわけ、目的の患者のプロテインCプロモーター遺伝子型であって、配列番号の位置2418又は配列番号2の位置8に対応する(1つの)ヌクレオチドを含む遺伝子型の決定に関心がもたれるであろう。また、この目的の配列は、更に、他のプロテインC遺伝子多型を含み又は目的の多型を包囲する配列の一部を含み得る。(1又は複数の)一塩基多型又は他の多型の塩基同一性又は遺伝子型の検出又は決定は、以下に列挙するものを含むがそれらに限定されない当業者には既知の多数の方法ないしアッセイの任意の1つによって達成することができる:
【0067】
制限フラグメント長多型(RFLP)ストラテジー−RFLPゲル利用分析は、1つの遺伝子の複数の多型部位における複数のアレル間の識別に使用することができる。要約すれば、DNAの短セグメント(典型的には数百塩基対)をPCRで増幅する。可能であれば、一方の変異体アレルが存在すれば該短DNAセグメントを切断し、他方の変異体アレルが存在すれば該短DNAセグメントを切断しない特殊な制限エンドヌクレアーゼが選択される。この制限エンドヌクレアーゼによるPCR増幅したDNAをインキュベートした後、反応生成物をゲル電気泳動法を用いて分離する。そのため、このゲルを検査したとき現れる2つのより低分子量のバンド(電気泳動中、分子は、分子量がより小さいほど一層下方にゲル内を進行する。)は、元のDNA試料は選択された制限エンドヌクレアーゼによって切断可能なアレルを有していたことを示す。これに対し、(PCR産物の分子量に関し)より大きい分子量のバンドが1つしか観察されない場合は、もとのDNA試料は、選択された制限エンドヌクレアーゼによっては切断不能なアレル変異体を有していたことを示す。最後に、より大きい分子量の1つのバンドとより小さい分子量の2つのバンドの両方が観察される場合は、元のDNA試料は、両方のアレルを含んでいた、従って患者はこの一塩基多型に対しヘテロ接合体であったことを示す;
【0068】
シークエンシング(塩基配列決定法)−例えばシークエンシングのためのマクサム−ギルバート法(マクサムAM及びギルバートW. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1977) 74(4): 560-564)は、末端で標識されたDNAの特異的化学的切断を伴う。この方法では、標識された同じDNAの4つの試料が、それぞれ異なる化学反応にかけられて、特異的な塩基同一性の1又は2以上のヌクレオチドにおいてDNA分子の優先的な切断が実行される。部分的切断のみが得られるように条件ないし状態が調節されるため、DNAフラグメントは各試料において生成されるが、その長さは、当該切断にかけられる(1又は複数の)ヌクレオチドのDNA塩基配列内での位置に依存する。部分的切断が行われた後、各試料は、異なる長さのDNAフラグメントを含むが、各フラグメントは、4つのヌクレオチドのうちの同じ1又は2のフラグメントで終端する。とりわけ、第1の試料では、個々のフラグメントはCで終端し、第2の試料では、個々のフラグメントはC又はTで終端し、第3の試料では、それぞれGで終端し、第4の試料では、それぞれA又はGで終端する。これら4つの反応の産物が、ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動によりサイズによって分離されるならば、DNA配列は、放射性バンドのパターンから読み取ることができる。この方法により、標識部位から少なくとも100塩基のシークエンシングが可能となる。他の方法としては、サンガー等によって刊行されたシークエンシングのジデオキシ法(Sanger et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1977) 74(12): 5463-5467)がある。サンガー法は、DNAポリメラーゼの酵素活性に基づいて種々の長さの配列依存性フラグメントを合成する。フラグメントの長さは、ジデオキシヌクレオチド塩基特異的ターミネーターのランダム導入によって決定される。次に、これらのフラグメントは、マクサム−ギルバート法の場合のようにゲルで分離され、視覚化され、配列が決定される。これらの方法を洗練しシークエンシング手順を自動化するために様々な改良が試みられた。また、RNAシークエンシング法も知られている。例えば、脳心筋炎ウイルスRNAのシークエンシングのためにジデオキシヌクレオチドと共に逆転写酵素が使用された(ツィンメルン(Zimmern)D.及びケースベルク(kaesberg)P. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1978) 75(9): 4257-4261)。ミルズ(Mills)DR.及びクラーマー(Kramer)FR.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1979) 76(5): 2232-2235)は、連鎖停止反応機構においてRNAのシークエンシングを行うためのQβレプリカーゼ及びヌクレオチドアナログイノシンの使用を記載している。RNAシークエンシングのための直接的化学的方法も知られている(ピアッティ(Peattie)DA. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1979) 76(4): 1760-1764)。その他の方法としては、例えば、ドニス(Donis)−ケラー(Keller)et al.(1977, Nucl. Acids Res. 4: 2527-2538)、シモンクシッツ(Simoncsits)A. et al.(Nature (1977) 269(5631): 833-836)、アクセルロッド(Axelrod)VD. et al.(Nucl. Acids Res. (1978) 5(10): 3549-3563)、及びクラーマーFR.及びミルズDR.(Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1978) 75(11): 5334-5338)等がある。これらの文献は、引用を以って本書に繰り込み、ここに記載されているものとする。核酸配列は、レーザーによって切断されたヌクレオチドの自然蛍光の刺激によって読み取ることもできるが、このシングルヌクレオチドは蛍光増強マトリックスに含有されている(米国特許第5,674,743号);
【0069】
ハイブリダイゼーション技術を用いたスニップスの同定のためのハイブリダイゼーション法は、米国特許第6,270,961号及び同第6,025,136号に記載されている;
【0070】
オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)−は、ポリメラーゼ連鎖反応単位複製配列ストランドにアニールしたプローブと検出用オリゴヌクレオチドのライゲーションに基づき、酵素免疫法により検出される。(ビヤエルモサ(Villahermosa)ML. J Hum Virol (2001) 4(5): 238-48; ロンパネン(Romppanen)EL. Scand J Clin Lab Invest (2001) 61(2): 123-9; イアノネ(Iannone)MA. et al. Cytometry (2000) 39(2): 131-40);
【0071】
ライゲーション−ローリングサークル増幅法(L−RCA)もまた、チー(Qi)X. et al. Nucleic Acids Res (2001) 29(22): E116に記載されているように、一塩基多型の遺伝子型決定に首尾よく使用することができた;
【0072】
5’ヌクレアーゼアッセイもまた、一塩基多型の遺伝子型決定に首尾よく使用することができた(アイディン(Aydin)A. et al. Biotechniques (2001) (4): 920-2, 924, 926-8);
【0073】
ポリメラーゼプルーフリーディング法は、WO 0181631に記載されているように、スニップスの同一性の決定に使用される;又は
【0074】
アレル特異的PCR法もまた一塩基多型の遺伝子型決定に首尾よく使用することができた(ホーキンス(Hawkins)JR. et al. Hum Mutat (2002) 19(5): 543-553)。
【0075】
また、患者の配列データが既に分かっている場合は、(遺伝情報の)獲得は、当該患者の核酸配列データをデータベースから検索し、多型部位における当該患者の核酸配列を読み取ることにより当該多型部位における核酸又は遺伝子型の同一性の決定ないし検出をすることを含んでもよい。
【0076】
(1又は複数の)多型の同一性が決定ないし検出されると、当該目的の多型の(位置における)遺伝子型(ヌクレオチド)に基づき患者結果ないし予後に関する指標が得られ得る。本発明では、プロテインCプロモーター領域における多型又は他のプロテインC遺伝子多型が、予後を得るため又は患者結果を決定するために使用される。患者結果ないし予後を得るための又は患者スクリーニングのための方法は、炎症状態から回復する患者の能力(ないし可能性)を決定するために有用であり得る。また、単独の多型部位又は複数の多型部位の組合せは、それらが炎症状態から回復する患者の能力を示すものとして決定された多型とリンクしているならば、炎症状態から回復する患者の能力の指標として使用することも可能である。
【0077】
患者結果ないし予後が決定されると、そのような情報は、可能な治療方針の選択を支援し、患者をモニターすべき程度及び当該モニターの頻度の決定に役立つので、内科医及び外科医によって関心が持たれ得る。究極的には、治療の決定は、特定の患者に特異的な要因及び患者の治療に携わる内科医又は外科医の経験に基づく要因の両方に応じてなされ得る。内科医又は外科医が炎症状態を有する患者の治療に考慮に入れ得る治療方針としては、以下のものがあるが、これらに限定されない:
(a)抗炎症療法の使用;
(b)ステロイドの使用;
(c)腫瘍壊死因子(TNF)に対する抗体又はエンドトキシンに対する抗体の使用;
(d)腫瘍壊死因子(TNF)レセプターの使用;
(e)活性プロテインC(LillyからのXigris)の使用;
(f)組織因子経路阻害剤(Chironからのtifacogin alpha)の使用;
(g)血小板活性化因子ヒドラーゼ(ICOSからのPAFase)の使用;及び
(h)(種々のタイプのヘパリンのような)凝固カスケードの修飾因子の使用。
【0078】
また、患者結果ないし予後と関係するプロテインC配列における新たな多型を同定するために類似の方法を採用することも可能である。
【0079】
上述のように、遺伝子配列情報ないし遺伝子型情報は(一人の)患者から獲得可能であるが、該配列情報は、プロテインC遺伝子中の1又は2以上の一塩基多型部位を含む。同様に、上述したように、1又は2以上の患者のプロテインC遺伝子における1又は2以上の一塩基多型の配列同一性も検出ないし決定することができる。更に、患者結果ないし予後は、上述のように、評価することができる。例えば、APACHE IIスコアリングシステム又はブラッセルスコアを使用して、治療前後における患者のスコアを比較することにより、患者結果ないし予後を評価することができる。患者結果ないし予後が評価されたら、患者結果ないし予後は、(1又は複数の)一塩基多型の配列同一性と関連付けることができる。患者結果ないし予後の関連付けは、更に、複数の患者の患者結果スコア及び多型(1又は複数)の統計的分析を含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】プロテインC2418の遺伝子型によるショック状態にある患者とショック状態にない患者との間の生存率の比較
【図2】心肺バイパス手術前後における平均動脈圧(mmHg)対時間、心肺バイパス手術前後における心指数(L/m)対時間、心肺バイパス手術前後における全身血管耐性指数対時間、及び心肺バイパス手術前後における昇圧剤使用対時間をプロットした一連のグラフ。これらのグラフでは、それぞれ、プロテインC2418のAAホモ接合体と、AGヘテロ接合体及びGGホモ接合体とを比較している。
【図3】心肺バイパス手術前後におけるパーセント動脈血酸素飽和度対時間をプロットしたグラフ。このグラフでは、プロテインC2418のAAホモ接合体と、AGヘテロ接合体及びGGホモ接合体とを比較している。
【実施例】
【0081】
3.実施例1:2418多型を用いた2つの母集団における患者結果ないし予後
【0082】
(a)第1母集団、敗血性SIRS
【0083】
選択基準
【0084】
2000年11月から2001年5月の間に集中治療室(ICU)に収容された患者は全てこの研究の対象として適格性を有していた。遺伝子型分析のために血液を採取できない患者は除外した。
【0085】
データ収集
【0086】
データは28日間又は退院するまで記録した。生の臨床及び実験変量(データ)は、24時間毎に最悪ないし最も異常な変量(データ)を用いて記録したが、グラスゴー・コーマ・スコア(Glasgow Coma Score)については、24時間毎に可能な最も良好なスコアを記録した。入院日における欠測データには正常値が割り当てられ、入院日後における欠測データには前日の値で代用した。個体群統計学データ及び微生物学的データを記録した。患者毎のデータ収集が完了したとき、患者識別名は全て記録全部から除去し、患者ファイルには、ランダムに、血液試料と相互参照される独自の番号を割り当てた。完成した生データファイルは、標準的な定義(即ち、APACHE II、及びブラッセル基準を用いて計算した生存及び器官障害解放日数)を用いて、疾患スコアの計算された記述及び重症度に変換した。
【0087】
(b)第2母集団、非敗血性SIRS
【0088】
選択基準
【0089】
心肺バイパス(CPB)を要する新たに選択された冠動脈バイパス移植に登録された白人の患者が含められた。緊急ないし応急CPB手術を受ける患者は選択しなかった。というのは、このような患者は、ショックのような他の誘因に対する炎症反応を既に呈し得たからである。弁手術又は繰り返し心臓手術を受けている患者も選択しなかった。というのは、このような患者は異なる術前病態生理を有し、しばしばより長い総手術及びCPB時間を有するからである。
【0090】
麻酔の導入及び全身及び肺動脈カテーテル(これらは通常我々の研究所では臨床目的のために挿入される。)の設置後、CPB以前に、遺伝子型決定のために及びベースラインTNF−α、IL−6、IL−8及びIL−10測定のために採血した。更に、平均動脈圧、サーモダイリュエーション心臓結果(thermodiluation cardiac outcome)及び右動脈圧並びに身長及び体重を含む血行動態測定値を記録して、全身血管耐性指数を計算した。全身血管耐性指数(SVRI:Systemic Vascular Resistance Index)は、平均動脈圧と右動脈圧との差を心指数で割ることにより計算した。採血は、術後4時間(ピーク応答を示す)及び24時間(該応答が持続しているか否かの決定)に(繰り返し)行った。SVRIを計算するための血行動態は、術後0、4及び24時間に測定した。
【0091】
一般的方法−第1及び第2母集団
【0092】
採血及び処理
【0093】
上記2つの母集団からの廃棄された全血液試料は、4℃で保存されていたが、病院実験室から収集した。バフィーコートを抽出し、該試料を1.5mlクライオチューブに移し、バーコードを付着し、独自の患者番号で相互参照を可能とし、−80℃で保存した。DNAは、商品名QIA amp DNA maxiキット(キアゲン)を用いてバフィーコートから抽出した。患者は、スペック(Spek)et al.(Blood Coagulation and Fibrinolysis, 5: 309-311, 1994)によって記載されたようなRFLPストラテジーを用いて−1645(2405)及び−1641(2418)において遺伝子型決定を行った。ここで使用した第1のPCRストラテジーは、BstXI制限酵素切断部位をPCR産物中に導入する。この場合、Tは位置−1654(2405)に存在するため、246bpのPCR産物はBstXIによって切断されて205bp及び41bpの2つのフラグメントが生成する。第2のPCRストラテジーもBstXI制限酵素切断部位をPCR産物に導入するが、この場合は、Gが位置−1641(2418)に存在するため、233bpのPCR産物はBstXIによって切断されて、193bp及び40bpの2つのフラグメントが生成する。PCR増幅DNAをBstXIと共にインキュベートした後、ゲル電気泳動法を用いて反応産物を分離した。
【0094】
統計分析
【0095】
優性モデル及び共優性モデルを用いて疾患重症度の測定値を比較した。連続データのためのANOVAと離散データのためのフィッシャー正確確率検定とを用いて遺伝子型群間の差を検査した。
【0096】
第1母集団、敗血性SIRS−結果
【0097】
この研究では、ICUに収容されたSIRSを有する81人の白人患者が対象とされた。患者の46.9%がAAホモ接合体であり、38.3%がAGヘテロ接合体であり、14.8%がGGホモ接合体であった。Aアレルの出現頻度は66%であり、Gアレルの出現頻度は34%であり、これらのアレルは、この母集団においてはハーディ−ワインベルクの平衡状態にあった。表2は、AA、AG及びGG群間のベースライン特性に有意差がなかったことを示している。(これらの群の)患者は、ほぼ同じ年齢構成、ほぼ同じ性別構成を有し、類似の認容(admitting)APACHE IIを有した。これら患者のほぼ40%は入院時に腐敗症ないし敗血症を有し、これら患者の10%は入院時に敗血症ショックを有していた。これらの患者の8%はICUに収容されている間のある時点において腐敗症ないし敗血症を発症し、これら患者の45%は病院に収容されている間のある時点において敗血症ショックを発症した。
【0098】
表2
敗血性SIRS患者のベースライン特性

【0099】
生存及びSIRS及び器官機能障害解放日数の測定によって、アレルAの共優性効果が示唆された。Aアレルを有する患者は、より小さい生存及びSIRS解放日数、より小さいDAF(days alive and free of)急性肺損傷及びより小さいDAF心血管障害を示した(表3)。興味深いことに、ステロイドを使用した場合のDAFにも有意差があった。ステロイドの使用は、一般的には、我々の集中治療室では、内科医の判断によりケースバイケースで実施されるが、重篤な腐敗症及び敗血症ショックを有すると推定される患者に対してより頻繁に実施される。更に、Aアレルは、有意により小さいDAF昇圧剤と関連することも確認した。更に、Aアレルに関して結果ないし予後が不良となる傾向が、DAF肝臓障害、DAF腎臓障害、DAF CNS障害、及びDAF国際標準化比(INR)>1.5についても存在することがわかった(表4)。
【0100】
表3
敗血性SIRS母集団:DAF SIRS及び主要器官機能障害

【0101】
表4
敗血性SIRS母集団:DAF他の器官機能障害

【0102】
最も重要なのは、Aアレルは、生存率の減少と関連したことである(図1)。AA遺伝子型の患者の生存率は58%であり、AG遺伝子型の患者の生存率は74%であり、GG遺伝子型の患者の生存率は100%であった(P<0.017)。従って、プロテインC−1641(2418)Aアレルは、生存率の減少、より多いSIRS、より重い心血管及び呼吸器障害、及び他の器官系におけるより重い障害への傾向と関連した。
【0103】
第2母集団非敗血性SIRS−結果
【0104】
上記の観察を確認するため及びプロテインC−1641(2418)Aアレルはより重いSIRSと関係するという仮説の生物学的確からしさの証拠を検査するために、独立ないし別個の母集団に取り組んだ。そこで、心肺バイパス(CPB)手術後の61人の白人の患者を研究することにした。CPBは、SIRSの定義を充足する炎症反応と関係しており、CPB手術後炎症性サイトカイン発現の増加と関連している。この61人の白人の母集団では、24人の患者がAA遺伝子型であり、28人がAG遺伝子型、及び9人がGG遺伝子型であった。このため、Aアレルの出現頻度は62%であり、Gアレルの出現頻度は38%であった。この母集団もハーディ−ワインベルクの平衡状態にあった。術前ベースラインにおいては、年齢、性別、喫煙者、糖尿病、高血圧の存在、術前駆出率、バイパス時間、クロスクランプ時間及びアプロチニン使用については有意差はなかった(表5)。
【0105】
表5
CPB SIRS:ベースライン特性

【0106】
術後、AA遺伝子型の患者の64%が最初の24時間中に少なくとも一回は1500未満のSVRIを生じたのに対し、他の患者では50%しか1500未満のSVRIを生じなかった。最初の24時間以内の1500未満の2つの連続SVRI測定の存在は、AA遺伝子型の患者ではその32%にみられ、他の患者ではその19%にしか見られなかった(P<0.03)。CPB後1時間における平均動脈圧のより大きな減少(p<0.05)及び心指数のより大きな上昇のために、CPB後1時間におけるSVRIはAA遺伝子型の患者では減少した(図2)。CPB後1時間におけるAA遺伝子型の患者の昇圧剤の極めて大きい使用量についての更なる観察は、更に、CPB後のAA遺伝子型の患者に対する過剰な血管拡張の臨床的重要性を大きくする。更に、動脈酸素飽和度は、CPB後の最初の24時間の間に、AA遺伝子型の患者では大きく減少した(図3)。
【0107】
AA遺伝子型の患者は、CPB後4時間及び24時間において著しくより大きい血清IL−6濃度を有した(表6)。これは、CPB後4時間及び24時間におけるTNF−α、IL−8及びとりわけIL−10が増加する傾向と関連がみられた。従って、プロテインC−1641(2418)Aアレルは、より低いSVRIにより示されるようなより重いSIRS、炎症促進サイトカイン反応の上昇、及びCPB後の心血管及び呼吸器障害の悪化との関連が見られたが、重病SIRS患者においてみられるものと同様であった。
【0108】
表6
CPB SIRS:CPB後サイトカイン発現

【0109】
実施例のまとめ
【0110】
プロテインC−1641(2418)Aアレルは、重病SIRS母集団及びCPB後SIRS母集団におけるSIRS及び重篤な心血管及び呼吸器機能障害のよりはっきりした証拠と関係する。重病SIRS母集団は、AA遺伝子型の患者の重篤なSIRSはより重篤なSIRS及びより重い心血管及び呼吸器障害(より重い急性肺損傷、昇圧剤のより多い使用、ステロイドのより多い使用を含む)と関連するが、更なる器官系の機能障害の発生及び重要なことに、生存率の低下に至る傾向もあったことを示している。このような観察結果は、重病患者の類似するが完全に独立したSIRS母集団において確認された。CPB母集団では、SIRSは心臓手術及び心肺バイパス過程自体によって誘発されたが、感染の形跡はみられなかった。この母集団におけるAA遺伝子型の患者におけるSIRSの悪化の証拠は、CPB後1時間におけるSVRI及び平均動脈圧におけるより大きな減少及び昇圧剤の使用量の増加並びに炎症性サイトカイン発現の増加の観察によって提供される。増加した炎症性サイトカイン発現は、当該サイトカインが、急性炎症反応、TNF−α、及び集積(integrated)炎症反応(IL−6)、肺損傷と関連するケモカイン発現(IL−8)、及び対抗制御的抗炎症反応(IL−10)の代表として選択されたことの生物学的な確からしさの証拠も提供する。
【0111】
−1641(2418)Aアレルの重病患者は、より低い生存率、より重いSIRS、より重篤な心血管及び呼吸器障害、及びより深刻な肝臓、腎臓(P=0.056)、神経系、及び凝固機能障害への傾向によって示されるような著しくより悪い結果を有した。−1641(2418)Aアレルを有した患者の低臨床表現型は、コルチコステロイドの使用量の増加とも関係した。コルチコステロイドの使用量の増加の理由は、重篤なショック及び呼吸障害の長期化の見込みに対しステロイド治療の必要性が高まったと医師が判断したことにあると思われる。−1641(2418)Aアレルを有した患者の生存率の著しい低下は、重病状態に関し現在まで研究されている他の殆どの多型についての関連する生存率関係よりも一層明確である。
【0112】
要約すると、−1641(2418)Aアレルは、−1641(2418)Gアレルと比べると、第1母集団−敗血性SIRS及び第2母集団−非敗血性SIRSの両方に関し重病状態におけるより深刻な結果と関係する。−1641(2418)Aアレルを有する患者は、−1641(2418)Gアレルの患者と比べると、より低い生存率、より深刻なSIRS、及びより深刻な心血管及び呼吸器障害、より深刻な(その他の)器官機能障害を通常示した。従って、−1641(2418)プロテインCプロモーター多型は、重病状態及び選択CPB及び他の大手術のために選択される患者に関する診断及び予後的使用(価値)ないし有用性を有する。
【0113】
4.実施例2:2405多型を用いた2つの母集団における患者結果ないし予後
【0114】
同様に、上記2つの母集団に属する患者は、上述したRFLPストラテジーを用いて、位置−1654(2405)における遺伝子型の決定も行った。−1654(2405)C及びTアレルは、−1641(2418)Aアレルと比べると、第1母集団−敗血性SIRSの重病患者についても第2母集団−非敗血性SIRSの重病患者についても患者予後ないし結果と関連するものとは見出されなかった。CC遺伝子型の生存率は63%、CT遺伝子型の生存率は71%、TT遺伝子型の生存率は61%であった(P<NS)。従って、−1654(2405)プロテインCプロモーター多型は、重病状態及び選択CPB及び他の大手術のために選択される患者に関する診断及び予後的使用(価値)ないし有用性を有するとは考えられない。
【0115】
5.実施例3:2583及び2322多型
【0116】
同様に、2322多型も検査され、遺伝子型の生存率との関連性がないことが見出された;AA遺伝子型の28日生存率は64%、AG遺伝子型の28日生存率は72%、及びGG遺伝子型の28日生存率は63%(p NS)であった。更に、2583多型は上述のように検査されなかったが、この多型は、2418並びに1386、3920の多型及び他のスニップの組合せに関して総連鎖不平衡の状態にある。例えば、5867+2405における多型と5867+4956における多型との組合せも、2418とリンクしている。これらの多型は、2418に関して連鎖不平衡にあるので、遺伝子型と、生存率、器官機能障害及び例えばステロイド又は昇圧剤による爾後の治療に応答する患者の能力との関連を示す。
【0117】
本発明については、理解の容易化のために、実施例を用いてある程度詳細に説明してきたが、本発明の教示に鑑みれば、特許請求の範囲の思想ないし範囲から逸脱しない限りにおいて本発明に対し変更・修正をなし得ることは、当業者であれば容易に理解できるであろう。本書で引用した特許、特許出願及び刊行物は全て引用を以って本書に繰り込み本書に記載されているものとする。
最後に、本発明の実施の形態をまとめると以下のとおりとなる:
(形態1) 本発明の課題を解決するために、第1の視点により、炎症状態を有するか炎症状態の発症の危険がある患者に関する予後を得るために遺伝子型を決定する方法であって、
前記患者のプロテインC遺伝子の1又は2以上の多型部位を含む遺伝子型を決定することを含み、前記遺伝子型は、前記患者が炎症状態から回復する能力を示し、前記多型部位は、配列番号1の位置2418又は該位置2418と連鎖不平衡にある多型部位に対応し、前記炎症状態は敗血症又は全身性炎症反応症候群(SIRS)である、ことを特徴とする方法が提供される(第1基本構成)。
(形態2) 上記形態1の方法において、前記多型部位は、配列番号1の位置2418、1386、2583又は3920に対応することが好ましい。
(形態3) 上記形態1の方法において、遺伝子型は、2又は3以上の多型部位の組合せにおいて決定され、該組合せは、配列番号1の以下の位置(複数)の群から選択されることが好ましい:
5867及び2405;
5867及び4919;
5867及び4956;
5867及び6187;
5867及び9534;
5867及び12109;
4800及び2405;
4800及び4919;
4800及び4956;
4800及び6187;
4800及び9534;
4800及び12109;
9198及び6379及び2405;
9198及び6379及び4919;
9198及び6379及び4956;
9198及び6379及び6187;
9198及び6379及び9534;及び
9198及び6379及び12109。
(形態4) 上記形態1〜3の何れかの方法において、前記決定された遺伝子型と、前記患者と同様の炎症状態又は他の炎症状態からの回復に関する予後を示す既知の遺伝子型とを比較することを更に含むことが好ましい。
(形態5) 上記形態1〜4の何れかの方法において、前記患者のプロテインC遺伝子配列を得ることを更に含むことが好ましい。
(形態6) 上記形態1〜4の何れかの方法において、遺伝子型の前記決定は、前記患者からの核酸試料に対して実行されることが好ましい。
(形態7) 上記形態1〜6の何れかの方法において、遺伝子型の前記決定は、
(a)制限フラグメント長分析
(b)シークエンシング
(c)ハイブリダイゼーション
(d)オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ
(e)ライゲーションローリングサークル増幅
(f)5’ヌクレアーゼアッセイ
(g)ポリメラーゼプルーフリーディング法
(h)アレル特異的PCR、及び
(i)リーディング配列データ
の1又は2以上を含むことが好ましい。
(形態8) 上記形態1〜7の何れかの方法において、前記患者の前記遺伝子型は、炎症状態からの回復の可能性の低下を示すことが好ましい。
(形態9) 上記形態8の方法において、前記予後は、重病患者の重篤な心血管又は呼吸器障害を示すことが好ましい。
(形態10) 上記形態8又は9の方法において、前記遺伝子型は、以下の単独の多型部位及び多型部位の組合せの群から選択されることが好ましい:
1386T;
2418A;
2583A;
3920T;
5867A及び2405T;
5867A及び4919A;
5867A及び4956T;
5867A及び6187C;
5867A及び9534T;
5867A及び12109T;
4800G及び2405T;
4800G及び4919A;
4800G及び4956T;
4800G及び6187C;
4800G及び9534T;
4800G及び12109T;
9198A及び6379G及び2405T;
9198A及び6379G及び4919A;
9198A及び6379G及び4956T;
9198A及び6379G及び6187C;
9198A及び6379G及び9534T;及び
9198A及び6379G及び12109T。
(形態11) 上記形態1〜7の何れかの方法において、前記患者の前記遺伝子型は、炎症状態からの回復の可能性の上昇を示すことが好ましい。
(形態12) 上記形態11の方法において、前記予後は、重病患者の重篤度が低い心血管又は呼吸器障害を示すことが好ましい。
(形態13) 上記形態11又は12の方法において、前記遺伝子型は、以下の単独の多型部位及び多型部位の組合せの群から選択されることが好ましい:
1386C;
2418G;
2583T;
3920C;
5867G及び2405C;
5867G及び4919G;
5867G及び4956C;
5867G及び6187T;
5867G及び9534C;
5867G及び12109C;
4800C及び2405C;
4800C及び4919G;
4800C及び4956C;
4800C及び6187T;
4800C及び9534C;及び
4800C及び12109C。
(形態14) 上記形態1〜13の何れかの方法において、前記炎症状態は、全身性炎症反応症候群であることが好ましい。
(形態15) 本発明の課題を解決するために、第2の視点において、患者の予後と関連するプロテインC遺伝子配列中の多型を同定する方法であって、
a)患者群から得た核酸試料からプロテインC遺伝子配列情報を得ること
b)前記プロテインC遺伝子中の少なくとも1つの多型の部位を同定すること
c)前記患者群内の個々の患者に関する前記部位における遺伝子型を決定すること
d)前記患者群内の個々の患者の炎症状態から回復する能力を決定すること、及び
e)ステップc)で決定された遺伝子型と、ステップd)で決定された患者の能力(ないし可能性)との相関性を求めること、
前記炎症状態は敗血症又は全身性炎症反応症候群(SIRS)であること、
を含む方法が提供される(第2基本構成)。
(形態16) 本発明の課題を解決するために、第3の視点において、患者が炎症状態から回復する能力の予後を提供するために、該患者のプロテインC遺伝子配列の多型部位内の所定のヌクレオチド位置において遺伝子型を決定するためのキットであって、
前記多型部位において交代ヌクレオチドを識別可能な制限酵素、又は前記多型部位に対する十分な相補性を有しかつ該交代ヌクレオチドを識別可能な標識されたオリゴヌクレオチドを、パッケージ内に含み、前記交代ヌクレオチドは、配列番号1の位置2418及び該位置2418と連鎖不平衡にある多型部位内のヌクレオチド位置の1又は2以上に対応し、前記炎症状態は敗血症又は全身性炎症反応症候群(SIRS)である、キットが提供される(第3基本構成)。
(形態17) 上記形態16のキットにおいて、前記交代ヌクレオチドは、配列番号1の位置2418、1386、2583及び3920の1又は2以上に対応することが好ましい。
(形態18) 上記形態17のキットにおいて、前記交代ヌクレオチドは、位置2418に対応することが好ましい。
(形態19) 上記形態16、17又は18のキットにおいて、前記制限酵素と、前記多型部位を包囲する領域の増幅に好適な1つのオリゴヌクレオチド又は複数のオリゴヌクレオチドのセットとを含むことが好ましい。
(形態20) 上記形態19のキットにおいて、重合剤を更に含むことが好ましい。
(形態21) 上記形態16〜20の何れかのキットにおいて、遺伝子型を決定するための前記キットの使用説明書を更に含むことが好ましい。
(形態22) 本発明の課題を解決するために、第4の視点により、炎症状態を有するか炎症状態の発症の危険がある被検体に関する予後を得るために遺伝子型を決定する方法であって、
該方法は、配列番号1の位置2418、1386、2583及び3920又はこれらと連鎖不平衡にある位置から選択される前記被検体のプロテインC遺伝子の1又は2以上の多型部位を含む遺伝子型を決定することを含み、前記遺伝子型は、前記被検体が前記炎症状態から回復する能力を示し、前記位置2418、1386、2583及び3920におけるヌクレオチドと前記予後と間の関連は、以下の(1)〜(8):
(1)センス鎖2418A又はアンチセンス鎖2418Tは前記炎症状態から回復する能力の低下の予後を示す;
(2)センス鎖2418G又はアンチセンス鎖2418Cは前記炎症状態から回復する能力の上昇の予後を示す;
(3)センス鎖2583A又はアンチセンス鎖2583Tは前記炎症状態から回復する能力の低下の予後を示す;
(4)センス鎖2583T又はアンチセンス鎖2583Aは前記炎症状態から回復する能力の上昇の予後を示す;
(5)センス鎖1386T又はアンチセンス鎖1386Aは前記炎症状態から回復する能力の低下の予後を示す;
(6)センス鎖1386C又はアンチセンス鎖1386Gは前記炎症状態から回復する能力の上昇の予後を示す;
(7)センス鎖3920T又はアンチセンス鎖3920Aは前記炎症状態から回復する能力の低下の予後を示す;
(8)センス鎖3920C又はアンチセンス鎖3920Gは前記炎症状態から回復する能力の上昇の予後を示す、
であり、
前記炎症状態は敗血症又は全身性炎症反応症候群(SIRS)である、方法が提供される(第4基本構成)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症状態を有するか炎症状態の発症の危険がある患者に関する予後を得るために遺伝子型を決定する方法であって、
前記患者のプロテインC遺伝子の1又は2以上の多型部位を含む遺伝子型を決定することを含み、前記遺伝子型は、前記患者が炎症状態から回復する能力を示し、前記多型部位は、配列番号1の位置2418又は該位置2418と連鎖不平衡にある多型部位に対応し、前記炎症状態は敗血症又は全身性炎症反応症候群(SIRS)である、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記多型部位は、配列番号1の位置2418、1386、2583又は3920に対応する請求項1の方法。
【請求項3】
遺伝子型は、2又は3以上の多型部位の組合せにおいて決定され、該組合せは、配列番号1の以下の位置(複数)の群から選択される請求項1の方法:
5867及び2405;
5867及び4919;
5867及び4956;
5867及び6187;
5867及び9534;
5867及び12109;
4800及び2405;
4800及び4919;
4800及び4956;
4800及び6187;
4800及び9534;
4800及び12109;
9198及び6379及び2405;
9198及び6379及び4919;
9198及び6379及び4956;
9198及び6379及び6187;
9198及び6379及び9534;及び
9198及び6379及び12109。
【請求項4】
前記決定された遺伝子型と、前記患者と同様の炎症状態又は他の炎症状態からの回復に関する予後を示す既知の遺伝子型とを比較することを更に含む請求項1〜3の何れか一の方法。
【請求項5】
前記患者のプロテインC遺伝子配列を得ることを更に含む請求項1〜4の何れか一の方法。
【請求項6】
遺伝子型の前記決定は、前記患者からの核酸試料に対して実行される請求項1〜4の何れか一の方法。
【請求項7】
遺伝子型の前記決定は、
(a)制限フラグメント長分析
(b)シークエンシング
(c)ハイブリダイゼーション
(d)オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ
(e)ライゲーションローリングサークル増幅
(f)5’ヌクレアーゼアッセイ
(g)ポリメラーゼプルーフリーディング法
(h)アレル特異的PCR、及び
(i)リーディング配列データ
の1又は2以上を含む請求項1〜6の何れか一の方法。
【請求項8】
前記患者の前記遺伝子型は、炎症状態からの回復の可能性の低下を示す請求項1〜7の何れか一の方法。
【請求項9】
前記予後は、重病患者の重篤な心血管又は呼吸器障害を示す請求項8の方法。
【請求項10】
前記遺伝子型は、以下の単独の多型部位及び多型部位の組合せの群から選択される請求項8又は9の方法:
1386T;
2418A;
2583A;
3920T;
5867A及び2405T;
5867A及び4919A;
5867A及び4956T;
5867A及び6187C;
5867A及び9534T;
5867A及び12109T;
4800G及び2405T;
4800G及び4919A;
4800G及び4956T;
4800G及び6187C;
4800G及び9534T;
4800G及び12109T;
9198A及び6379G及び2405T;
9198A及び6379G及び4919A;
9198A及び6379G及び4956T;
9198A及び6379G及び6187C;
9198A及び6379G及び9534T;及び
9198A及び6379G及び12109T。
【請求項11】
前記患者の前記遺伝子型は、炎症状態からの回復の可能性の上昇を示す請求項1〜7の何れか一の方法。
【請求項12】
前記予後は、重病患者の重篤度が低い心血管又は呼吸器障害を示す請求項11の方法。
【請求項13】
前記遺伝子型は、以下の単独の多型部位及び多型部位の組合せの群から選択される請求項11又は12の方法:
1386C;
2418G;
2583T;
3920C;
5867G及び2405C;
5867G及び4919G;
5867G及び4956C;
5867G及び6187T;
5867G及び9534C;
5867G及び12109C;
4800C及び2405C;
4800C及び4919G;
4800C及び4956C;
4800C及び6187T;
4800C及び9534C;及び
4800C及び12109C。
【請求項14】
前記炎症状態は、全身性炎症反応症候群である請求項1〜13の何れか一の方法。
【請求項15】
患者の予後と関連するプロテインC遺伝子配列中の多型を同定する方法であって、
a)患者群から得た核酸試料からプロテインC遺伝子配列情報を得ること
b)前記プロテインC遺伝子中の少なくとも1つの多型の部位を同定すること
c)前記患者群内の個々の患者に関する前記部位における遺伝子型を決定すること
d)前記患者群内の個々の患者の炎症状態から回復する能力を決定すること、及び
e)ステップc)で決定された遺伝子型と、ステップd)で決定された患者の能力(ないし可能性)との相関性を求めること、
前記炎症状態は敗血症又は全身性炎症反応症候群(SIRS)であること、
を含む方法。
【請求項16】
患者が炎症状態から回復する能力の予後を提供するために、該患者のプロテインC遺伝子配列の多型部位内の所定のヌクレオチド位置において遺伝子型を決定するためのキットであって、
前記多型部位において交代ヌクレオチドを識別可能な制限酵素、又は前記多型部位に対する十分な相補性を有しかつ該交代ヌクレオチドを識別可能な標識されたオリゴヌクレオチドを、パッケージ内に含み、前記交代ヌクレオチドは、配列番号1の位置2418及び該位置2418と連鎖不平衡にある多型部位内のヌクレオチド位置の1又は2以上に対応し、前記炎症状態は敗血症又は全身性炎症反応症候群(SIRS)である、キット。
【請求項17】
前記交代ヌクレオチドは、配列番号1の位置2418、1386、2583及び3920の1又は2以上に対応する請求項16のキット。
【請求項18】
前記交代ヌクレオチドは、位置2418に対応する請求項17のキット。
【請求項19】
前記制限酵素と、前記多型部位を包囲する領域の増幅に好適な1つのオリゴヌクレオチド又は複数のオリゴヌクレオチドのセットとを含む請求項16、17又は18のキット。
【請求項20】
重合剤を更に含む請求項19のキット。
【請求項21】
遺伝子型を決定するための前記キットの使用説明書を更に含む請求項16〜20の何れか一のキット。
【請求項22】
炎症状態を有するか炎症状態の発症の危険がある被検体に関する予後を得るために遺伝子型を決定する方法であって、
該方法は、配列番号1の位置2418、1386、2583及び3920又はこれらと連鎖不平衡にある位置から選択される前記被検体のプロテインC遺伝子の1又は2以上の多型部位を含む遺伝子型を決定することを含み、前記遺伝子型は、前記被検体が前記炎症状態から回復する能力を示し、前記位置2418、1386、2583及び3920におけるヌクレオチドと前記予後と間の関連は、以下の(1)〜(8):
(1)センス鎖2418A又はアンチセンス鎖2418Tは前記炎症状態から回復する能力の低下の予後を示す;
(2)センス鎖2418G又はアンチセンス鎖2418Cは前記炎症状態から回復する能力の上昇の予後を示す;
(3)センス鎖2583A又はアンチセンス鎖2583Tは前記炎症状態から回復する能力の低下の予後を示す;
(4)センス鎖2583T又はアンチセンス鎖2583Aは前記炎症状態から回復する能力の上昇の予後を示す;
(5)センス鎖1386T又はアンチセンス鎖1386Aは前記炎症状態から回復する能力の低下の予後を示す;
(6)センス鎖1386C又はアンチセンス鎖1386Gは前記炎症状態から回復する能力の上昇の予後を示す;
(7)センス鎖3920T又はアンチセンス鎖3920Aは前記炎症状態から回復する能力の低下の予後を示す;
(8)センス鎖3920C又はアンチセンス鎖3920Gは前記炎症状態から回復する能力の上昇の予後を示す、
であり、
前記炎症状態は敗血症又は全身性炎症反応症候群(SIRS)である、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−142252(P2010−142252A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68029(P2010−68029)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【分割の表示】特願2004−507530(P2004−507530)の分割
【原出願日】平成15年5月28日(2003.5.28)
【出願人】(503265094)ザ ユニバーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア (17)
【Fターム(参考)】