説明

悪臭の抑制

【課題】汚染した衛生製品から放たれる悪臭の抑制。
【解決手段】本発明は汚染した衛生製品から放たれる悪臭を抑制するためのハロペルオキシダーゼと過酸化水素起源との組合せの利用に関する。本発明は更に汚染状態において悪臭の抑制された衛生製品にも関連する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は汚染した衛生製品から放たれる悪臭を抑制するためのハロペルオキシダーゼと過酸化水素起源との組合せの利用に関する。本発明は更に汚染状態において悪臭の抑制された衛生製品に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
悪臭は揮発性硫化化合物(VSC)、窒素含有化合物及び短鎖脂肪酸等の数多くの化合物により生じうることが確立されている。
【0003】
窒素含有化合物、例えばアンモニアの起源は尿、糞及び血液であり、汚染したおむつ又はその他の衛生製品、例えば成人失禁用製品、トレーニングパンツ、婦人用ナプキン、タンポン等からほとんどの人々により認識される悪臭を供与する。
【0004】
おむつ等から発生する悪臭は少なくともある程度は会陰(肛門と外部性殖器官との間の領域)における皮膚の上に載っている細菌、特に大腸菌(Escherichia coli)、エンテロコッカス(Enterococcus)種及びプロテウス(Proteus )種の増殖の結果である。プロテウス種の株全てがその代謝中に酵素ウレアーゼを生成する。ウレアーゼは尿素(ヒト尿の約2%を占める)を嫌な臭いのアンモニアに急速分解する能力を有する。
【0005】
衛生製品中の悪臭の除去又は抑制
論文の中には数多くの臭気抑制剤及び系が発表されている。例えば、活性炭形態における炭素等が悪臭分子を吸着する能力についてよく知られている。
【0006】
米国特許第5,593,398号は悪臭抑制剤として活性炭を含んで成る悪臭放屁フィルターの付いた保護下着を開示する。
【0007】
ゼオライト材料は体液に関わる悪臭に対して有効であることが示されている。
【0008】
日本国特許出願平成2年068117号はゼオライト、銅及び活性チャーコールを含む例えばおむつ用の脱臭手段に関する。
【0009】
米国特許第3,903,259号はおむつ及びヒト排泄物を脱臭するための方法であって、おむつ又は排泄物に、最も単純な形態において酸性物質、抗生物質及び溶媒から成る化学組成物を適用することを含んで成る方法に関する。この含浸組成物は更に錯形成剤及び湿潤剤を含みうる。おむつの処理は排泄物から嫌な臭いのめざましい低下をもたらし、それ故汚染したおむつの交換の負担は軽減される。
【0010】
米国特許第3,935,862号は少なくとも0.001g/in2 の量でアミノポリカルボン酸化合物を中に含むアンモニア形成を阻害するための手段を含んで成る使い捨ておむつを開示する。
【0011】
米国特許第4,385,632号は血液、糞及び尿を回収するための殺菌吸収体に関連し、それは細菌増殖を防ぎ、尿素のアンモニアへの分解を防ぎ、そしてアンモニアと錯体形成し、悪臭の発生を防ぐ水溶性銅塩を含む。
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は汚染状態において悪臭の抑制された衛生製品の提供にある。
【0013】
第一の観点において、本発明は衛生製品の悪臭を抑制するためのハロペルオキシダーゼと過酸化水素起源との組合せの利用に関する。
【0014】
第二の観点において、本発明は例えば吸収材料の中にハロペルオキシダーゼ及び過酸化水素起源を有する衛生製品に関する。特に考慮されるのは、おむつ、成人失禁用製品、トレーニングパンツ、婦人用ナプキン、タンポン等の衛生製品である。
【0015】
発明の詳細な説明
本発明の目的は汚染状態において悪臭の抑制された衛生製品の提供にある。
【0016】
「衛生製品」なる語は尿、糞、血液等を吸収又は回収するために適当な任意の製品を包括する。考えられる衛生製品の例はおむつ、成人失禁用製品、トレーニングパンツ、婦人用ナプキン及びタンポンである。
【0017】
衛生製品は典型的には体液等を回収するための吸収材を含んで成る。今日ポリアクリル酸超吸収材がよく利用される。このような超吸収材は自重の何倍もの液体、例えば尿を吸収でき、流体が漏れるまで大量の液体を保持できる薄く且つかさ高くない衛生製品の提供が可能となる。衛生製品における液体の量のかかる増大は悪臭の問題を大きくし、かかる課題の解決をより必須なものとする。
【0018】
本発明との関連で、「悪臭」とは例えば窒素含有化合物、例えばアンモニアにより生ずる嫌な臭いを意味する。
【0019】
「吸収材」とは液体を保持できるあらゆる材料を包括する。
【0020】
本発明者はハロペルオキシダーゼと過酸化水素起源との組合せが汚染された衛生製品の悪臭の抑制のために利用出ることを発見した。
【0021】
「悪臭の抑制」又は「抑制された悪臭」とはテストパネルにより決定された悪臭が対応の目かくしサンプルと比べて弱まったものと評価されたことを意味する。
【0022】
汚染した衛生製品から放たれる悪臭は典型的には窒素含有化合物の結果物である。尿、糞、血液等は衛生製品により包まれる皮膚の上で生育する細菌により生成される酵素により分解される。例えば、尿をアンモニアへと変換することのできる酵素ウレアーゼは会陰(肛門と外部性殖器官との間にある領域)における皮膚の上で生育するプロテウス種由来の細菌により生成される。
【0023】
第一の観点において、本発明は衛生製品の悪臭を抑制するためのハロペルオキシダーゼと過酸化水素起源との組合せの利用に関する。
【0024】
下記の実施例に示す通り、ハロペルオキシダーゼと過酸化水素起源との組合せは、ウレアーゼ活性の阻害を介して、又は尿素等の悪臭化合物への分解を司る化合物、特に酵素を産生する微生物、例えば細菌を殺傷もしくは少なくともその増殖を阻害することを介して、汚染された衛生製品において生ずる悪臭を有意に抑制するために利用できる。
【0025】
ハロペルオキシダーゼが尿中のハライドイオン(特にCl- )と接触すると、このハライドイオンは次ハロゲン化酸(例えば次亜塩素酸(即ち、ClO- ))(そしておそらくは更にその他の酸化性化合物)へと酸化され、それがウレアーゼの活性を阻害するか、又は微生物細胞、例えば細菌細胞を殺傷するもしくは少なくともその増殖を阻害できる。
【0026】
ハロペルオキシダーゼは衛生製品の吸収材の中に組込んでよい。衛生製品の当業者はハロペルオキシダーゼ及び過酸化水素起源をどこに、且つどうやって組込むかを知る。唯一の必須基準はハロペルオキシダーゼ及び過酸化水素起源が例えば尿の中に存在するハライドイオンと接触して反応できるように組込むことである。
【0027】
ハロペルオキシダーゼ
ハロペルオキシダーゼは過酸化水素又は過酸化水素生成系の存在下でハライド(Cl- ,Br- ,I- )を次式に従って対応の次ハロゲン化酸へと酸化できる酵素クラスを構成する:
22 +X−+H+ → H2 O+HOX
【0028】
慣用の求核受容体が存在するなら、HOXとの反応が起こり、そしてハロゲン化化合物が生成されるであろう。
【0029】
ハライドイオンに対するその特異性に従って分類される3タイプのハロペルオキシダーゼがある:化合物の塩素化、臭素化及びヨウ素化を触媒するクロロペルオキシダーゼ(E.C.1.11.1.10);臭化物及びヨウ化物イオンに対して特異性を示すブロモペルオキシダーゼ;並びにヨウ化物イオンの酸化のみを触媒するヨードペルオキシダーゼ(E.C.1.11.1.8)。
【0030】
ハロペルオキシダーゼは様々な生物から単離されている:哺乳動物、海洋動物、植物、藻類、地衣類、菌類及び細菌(Biochimica et Biophysica Acta 1161, 1993, pp.249-256参照)。ハロペルオキシダーゼは自然におけるハロゲン化化合物の形成を司る酵素であると一般に認識されているが、その他の酵素も関与しうる。
【0031】
ハロペルオキシダーゼは様々な菌類、特に菌類グループデマチウスヒフォマイセテス(dematiaceous hyphomyctes)、例えばカルダリオマイセス、例えばC.フマゴ(C. fumago )、アルテルナリア、カーブラリア、例えばC.ベルクロサ及びC.イネクアリス(C. inaequalis )、ドレヒスラ、ウロクラジウム及びボツリチスから単離されうる(米国特許第4,937,192号参照)。
【0032】
本発明に従うと、カーブラリア、特にC.ベルクロサ、例えばC.ベルクロサCBS147.63又はC.ベルクロサCBS444.70から得られるハロペルオキシダーゼ、が好ましい。カーブラリアハロペルオキシダーゼ及びその組換産物はWO97/04102に記載されている。
【0033】
ハロペルオキシダーゼは細菌、例えばシュードモナス、例えばP.ピロシニア(P. pyrrocinia)(The Journal of Biological Chemistry 263, 1988, pp.13725〜13732 参照)及びストレプトマイセス、例えばS.オーレオファシエンス(S. aureofaciens)(Structural Biology 1, 1994, pp.532-537 参照)からも単離されうる。
【0034】
ブロミドペルオキシダーゼは藻類から単離される(米国特許第4,937,192号参照のこと)。
【0035】
使用の際、ハロペルオキシダーゼの濃度を所望の効果が所望の時間枠内で達成されるようにするために変えてよい。しかしながら、本発明に従うと、ハロペルオキシダーゼはリッター当り0.01〜100mgの酵素タンパク質の濃度、好ましくはリッター当り0.1〜50mgの酵素タンパク質の濃度、より好ましくはリッター当り0.2〜10mgの酵素タンパク質の濃度で添加するのが通常であろう。
【0036】
好適な態様において、ハロペルオキシダーゼはカーブラリア種、特にC.ベルクロサ及びC.イネクアリスに由来する。
【0037】
過酸化水素起源
本発明に従うと、ハロペルオキシダーゼとの反応に必要とされる過酸化水素は様々な方法で得られうる:それは過酸化水素又は過酸化水素前駆体、例えば過炭酸塩又は過硼酸塩、又はペルオキシカルボン酸又はその塩、又は過酸化水素生成系、例えばオキシダーゼとその基質であってよい。有用なオキシダーゼは例えばグルコースオキシダーゼ、グリセロールオキシダーゼ又はアミノ酸オキシダーゼでありうる。アミノ酸オキシダーゼの例がWO94/25574号に示されている。
【0038】
酵素的に生成された過酸化水素を使用することが有利であり、なぜならこの起源は生物学的に関連する条件下で比較的低濃度の過酸化水素をもたらすからである。低濃度の過酸化水素はハロペルオキシダーゼ触媒反応の速度の上昇をもたらす。
【0039】
本発明に従うと、ハロペルオキシダーゼとの反応に必要とされる過酸化水素起源は0.01〜500mMの範囲、好ましくは0.1〜100mMの範囲の過酸化水素濃度に担当する濃度で加えてよい。
【0040】
本発明は例えば吸収材の中にハロペルオキシダーゼ及び過酸化水素起源の組込まれた衛生製品にも関連する。
【0041】
材料及び方法
材料:
酵素
WO97/04102(Novo Nordisk)に記載のカーブラリア・ベルクロサCBS147.63に由来する組換ハロペルオキシダーゼ(rHP)
コプリヌス・シネレウス(Coprinus cinereus )に由来する組換ペルオキシダーゼ(rCIP)
ジャック・ビーン(Jack Beans)由来のIII 型ウレアーゼ(Sigma No. U1500)
【0042】
人工尿A
尿素(300mM)、硫酸カルシウム(2mM)、硫酸マグネシウム(3.5mM)、塩化カリウム(60mM)及び塩化ナトリウム(130mM)
【0043】
人工尿B
尿素(300mM)、塩化ナトリウム(130mM)、塩化カリウム(60mM)、硫酸マグネシウム(3mM)、硫酸カルシウム(2.5mM)、トリトンX−100(1g/l)。この人工尿は10mMのリン酸バッファーの中で調製し、そしてpH6.0に調整してある。
【0044】
人工尿C:
ヒト尿の中に一般に見い出せる一定のアミノ酸を更に加えた人工尿B:リジン(0.5mM)、グリシン(2mM)、アラニン(0.5mM)及びセリン(0.5mM)。
【0045】
微生物:
大腸菌(DSM1576)
エンテロコッカス・フェカリス(E. faecalis )(DSM2570)
プロテウス・ミラビリス(P. mirabilis)(DSM788)
【0046】
超吸収材:
下記の実施例において使用した超吸収材はSCA Molnlycke, Sweden から入手した顆粒状架橋ポリアクリル酸ナトリウムポリマーとした(バッチNo. 227131)。
【0047】
装置:
Malthus Flexi M2060 (Malthus Instrument Limited )
【0048】
方法
POXUの決定
1POXUは1分当り1μmol の過酸化水素の変換を触媒する酵素量と規定する。この活性は下記の条件で418nmにて吸収を追跡することによる2,2′−アジノビス〔3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホネート〕(ABTS)の酸化として測定する:pH7.0、30℃、0.88Mの水素ペルオキシダーゼ、1.67mMのABTS及び60sの反応時間。
【0049】
Malthus法
Malthus法はJohnson and Jones (1995) Journal of Microbiological Methods 21, p.15-26 及びJohansenら(1995) Journal of Applied Bacteriology 78, p.297-303 に記載の方法に基づく。
【0050】
ハロペルオキシダーゼ活性の決定
発色剤:
2.98gの臭化カリウムを96%のEtOH中の2mlの0.2%のフェノールレッドと48mlの0.3MのトリスバッファーpH7.0との混合物に溶かす。
【0051】
バナジン酸塩溶液:
18.4gのオルトバナジン酸ナトリウムを10mlの脱イオン水に溶かす。
過酸化水素溶液:
0.1mlの30%の過酸化水素を9.9mlの脱イオン水に加える。
【0052】
このアッセイを実施するとき、酵素サンプルを所定量のバナジン酸塩溶液と特定時間プレインキュベーションしておき、次いで特定の量の過酸化水素及び発色剤を加え、そしてその活性を595nmでの吸収を測定することにより追跡する(色は赤から青味がかった紫色へと変色する)。
【0053】
臭いの決定
臭いの評価は3人の熟練者のテストパネルにより実施した。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】CMPに付着したE.フェカリス、大腸菌及びP.ミラビリスの混合培養物に対するカーブラリア・ハロペルオキシダーゼ(rHP)の人工尿における抗菌活性についての応答面プロット。
【図2】プロテウス・ミラビリス(プランクトン状細胞)に対するrCIP及びKI(H22 =0.5mM)の抗菌活性についての応答面プロット。
【図3】人工尿中のP.ミラビリスに対するrCIP/KI,rCIP/NaSCN及びハロペルオキシダーゼ(rHP)の殺菌活性。細胞は人工尿の中で懸濁させるか(プランクトン状)、又はCTMPに付着させた。
【実施例】
【0055】
実施例1
パルプ材料に付着させた大腸菌、エンテロコッカス・フェカリス及びプロテウス・ミラビリスに対するペルオキシダーゼの抗菌活性
カーブラリア・ベルクロサハロペルオキシダーゼの抗微生物活性を人工尿Aの中で、パルプ材料に付着させた大腸菌(DSM1576)、エンテロコッカス・フェカリス(DSM2570)及びプロテウス・ミウビリス(DSM788)に対して評価した。
【0056】
抗微生物活性はインピダンス測定(Malthus)の利用により、生存細菌細胞の減少(殺菌活性)として決定した。
【0057】
Malthus装置により測定される検出時間を検量曲線によりcfu /mlへと変換した。総生存細胞を数える場合、直接又は間接Malthus測定のいずれかを利用した(Malthus Flexi M2060, Malthus Instrument Limited )。直接測定では、細胞代謝は増殖支持体における電導度測定により決定した。
【0058】
間接測定では、3mlの増殖培地を間接Malthusセルの外部チャンバーに移し、そして0.5mlの無菌KOH(0.1M)を内部チャンバーに移す。この細胞懸濁物を酵素処理の後にMalthusセルの外部チャンバーに移す。細胞が外部チャンバーの中で増殖するに従い、それらはCO2 を生成し、それは内部チャンバー内のKOHに溶け、それ故KOHの電導度を変える。酵素処理を経て生存する吸収細胞により生成されるCO2 の量を生存細胞数の評価のために用いた。電導度変化がMalthusにより測定可能なら、検出時間(dt)を記録する。dtを、cfu /mlをdtに対応させる検量曲線の利用によりコロニーカウント数へと変換した。
【0059】
株をBrain Heart Infusion (BHI)(Oxoid CM225)の中で定常増殖期となるまで増殖し(30℃、20時間)、ペプトン水に希釈し、そして化学−熱−機械パルプCTMPに対して約104cfu/0.01g CTMPの最終細胞濃度で接種した。CTMPは単一培養物又は3種の株の混合培養物のいずれかで接種を施した。
【0060】
ハロペルオキシダーゼの抗微生物活性は35℃にて30分かけて、ハロペルオキシダーゼを過酸化水素(0.5mM)及び人工尿と一緒にCTMPに付着させた細菌細胞に添加することにより決定した。生存細胞の数はCTMPのMalthusセルへの移動により決定した。
【0061】
ハロペルオキシダーゼ(0〜2mgの酵素タンパク質/lの尿)の活性を人工尿の中で、電子供与体抜きで評価し、かくして酵素活性は尿中のCl- により開始されるものとした。
【0062】
ハロペルオキシダーゼは3種類の試験生物、E.フェカリス、大腸菌及びP.ミラビリスの総合的な殺傷を及ぼした。
【0063】
更に、ハロペルオキシダーゼの抗微生物活性はバッファー系と比べ、人工尿の中では一定であった(pH6)。混合培養物の総合的な殺傷は1.5mg/l超のハロペルオキシダーゼ濃度及び0.75mM超の過酸化水素濃度で認められた(図1)。
【0064】
実施例2
ペルオキシダーゼ及び電子供与体としてのチオシアネート又はヨージドの利用と、ハロペルオキシダーゼ系の利用との差
電気供与体としての人工尿A由来の塩化物及び電子受容体としての過酸化水素を伴うハロペルオキシダーゼ系(実施例1)の抗菌活性を、電子供与体としてのチオシアネート(20mM)又はヨージド(1mM)のいずれかと電子受容体としての過酸化水素(0.5mM)を伴うペルオキシダーゼ系の抗菌活性と比較した。
【0065】
コプリヌス・ペルオキシダーゼはヨージド又はチオシアネートのいずれかの酸化を介する抗菌活性を有する。抗菌活性は実施例1に記載の通りMalthusにより測定し、活性は人工尿に懸濁したプランクトン状細胞及びCTMP材料上の細胞の双方に対して決定した。周知のラクトペルオキシダーゼ系と同等の抗菌活性を有するコプリヌス・ペルオキシダーゼ(Novo Nordisk A/S)(rCIP)を0〜4POXU/mlの濃度で使用した。
【0066】
rCIP/チオシアネート系は人工尿中の高塩濃度により阻害され、一方rCIP/ヨージド系は人工尿で活性が認められた(図2)。
【0067】
しかしながら、チオシアネート及びヨージド系の双方はCTMPが人工尿の中に入っているとき有意に阻害され(図3)、その理由はパルプ材料とチオシアネート及びヨージドのそれぞれの相互作用にあり、従ってこれらの系はおむつに使用されるCTMP材料において強まった活性を有していた。
【0068】
ハロペルオキシダーゼ系はCTMP材料により阻害されず(図1及び3)、なぜならCTMP上の細菌の総合的な殺傷が測定されたからである。
【0069】
実施例3
ハロペルオキシダーゼを利用してウレアーゼを阻害することによる悪臭生成の阻害
10mlの人工尿Bを利用して実験を行った。まず、過酸化水素を1mMの最終濃度にまで加え、次いで組換カーブラリア・ベルクロサハロペルオキシダーゼを所望の濃度にまで加えた。
【0070】
実験はウレアーゼの添加により開始した。サンプルを振盪湯浴上で25℃で密閉槽の中でインキュベーションした。
【0071】
サンプルのウレアーゼ活性は所定の時間間隔でpHを追跡し(Radiometer PHM85プレジションpHメーターを使用)、そしてアンモニアの生成を特徴的な悪臭の発生により追跡することにより評価した。
【0072】
【表1】

【0073】
本実施例はハロペルオキシダーゼ/H22 系が、用量依存式に、ウレアーゼを完全に失活させ、それ故サンプルからの悪臭の発生を防ぐことを示した。
【0074】
実施例4
超吸収性ポリマーに対するハロペルオキシダーゼの固定
2mlの組換カーブラリア・ベルクロサハロペルオキシダーゼ(0.375mg/ml)の溶液をガラスビーカー中の20gの強力に撹拌した超吸収性ポリマーに滴下した。次いで、この材料の真空オーブン中での25℃での一夜の乾燥により水を除去した。
【0075】
固定化ハロペルオキシダーゼの活性は80μlのバナジン酸塩溶液を100mgの超吸収材に加え、次いでWhirlミキサー上で強力に混合することにより追跡した。
【0076】
1分後、800μlの発色溶液及び80μlの過酸化水素溶液を加え、そしてこのサンプルを再び混合した。未処理の超吸収性ポリマーのブランクサンプルにおいては、色は明るい黄色のままであり、一方固定化ハロペルオキシダーゼを含むサンプルではすばやく暗い紫色へと変色した。
【0077】
固定化ハロペルオキシダーゼ製剤を2本の当量サンプルに分け、そして一方は5℃で保存し、他方は室温で保存した。
【0078】
10日後、2本のサンプルの活性を上記の通りにしてアッセイし、そして固定化直後にアッセイをサンプルに対してこれらのサンプルとの間で有意な差は認められなかった。
【0079】
活性は、若干改良したアッセイ、即ち、発色剤を0.3MのトリスバッファーpH7の代わりに人工尿Cを利用して調製するアッセイを利用して追跡した。この場合、発色剤は明るい黄色であるが、このアッセイを実施すると固定化ハロペルオキシダーゼサンプルに添加した場合に同じ暗い紫色が発色した。
【0080】
本例はハロペルオキシダーゼが衛生製品に使用される超吸収性ポリマー上に効率的に固定されることを示す。更に、この固定化酵素は人工尿の存在下でも活性を有し、そして室温でさえも高い安定性を発揮する。
【0081】
実施例5
固定化ハロペルオキシダーゼを利用する悪臭生成の阻害
ウレアーゼを失活させ、それ故悪臭生成を阻害する固定化ハロペルオキシダーゼの能力を、100mg超吸収材をそのまま又は固定化ペルオキシダーゼ(実施例4の通りに調製)と共に用いることにより追跡した。
【0082】
サンプルは、5mgの過硼酸三水和物(Merck, Art. 1.06560)と強く混合し、次いで100μlの人工尿Cに加えるか、又はサンプルに125μlの0.3%の過酸化水素の混合された1000μlの人工尿Cを加えた。
【0083】
Whirlミキサーで強く混合後、500μlのウレアーゼ溶液(10U/ml)を直ちに加え、次いで再び混合した。
【0084】
サンプルを振盪湯浴上で25℃で密閉槽の中でインキュベーションし、そしてウレアーゼ活性を、所定の時間間隔においてサンプル中のpHを、そのサンプルの一部をpH指示紙(Merck Neutralit pH5〜10;Art.1−09533)に接触させることにより追跡することを介して、及び特徴的な悪臭を追跡することによりアンモニアの生成を評価することを介して、追跡した。
【0085】
【表2】

【0086】
本例は超吸収性ポリマー上に固定されたハロペルオキシダーゼが過酸化水素との組合せにおいて、通常尿に対するウレアーゼ作用の結果物である悪臭の生成を完全に防ぐことができることを明確に示す。
【0087】
本例は更に、過酸化水素が固定過硼酸塩の生成においてこの系に好適に添加できることも示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生製品の悪臭を抑制させるためのハロペルオキシダーゼと過酸化水素起源との組合せの利用。
【請求項2】
前記ハロペルオキシダーゼが菌類、細菌又は藻類から得られたものである、請求項1記載の利用。
【請求項3】
前記ハロペルオキシダーゼがカルダリオマイセス(Caldariomyces )、アルテルナリア(Alternalia)、カーブラリア(Curvularia)、ドレヒスレラ(Drechslera)、ウロクラジウム(Ulocladium)及びボツリチス(Botrytis)から成る群から選ばれる菌類から得られたものである、請求項2記載の利用。
【請求項4】
前記ハロペルオキシダーゼがカーブラリア・ベルクロサ(C. verruculosa)、例えばカーブラリア・ベルクロサCBS147.63から得られたものであるか、又は前記ハロペルオキシダーゼがカーブラリア・ベルクロサCBS147.63から得られるハロペルオキシダーゼと免疫学的に交差反応性である、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記ハロペルオキシダーゼがシュードモナス(Pseudomonas )及びストレプトマイセス(Streptomyces)から成る群から選ばれる細菌から得られたものである、請求項2記載の利用。
【請求項6】
前記過酸化水素起源が過酸化水素又は過酸化水素前駆体である、請求項1〜5のいずれか1項記載の利用。
【請求項7】
前記衛生製品がおむつ、又は成人失禁用製品、又は一組のトレーニングパンツ、又は婦人用ナプキンもしくはタンポンである、請求項1〜6のいずれか1項記載の利用。
【請求項8】
ハロペルオキシダーゼと過酸化水素起源とが組込まれている、衛生製品。
【請求項9】
前記ハロペルオキシダーゼ及び過酸化水素起源が吸収材料の中に組込まれている、請求項8記載の製品。
【請求項10】
おむつ、又は成人失禁用製品、又は一組のトレーニングパンツ、又は婦人用ナプキンもしくはタンポンである、請求項8又は9記載の製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−449(P2011−449A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175741(P2010−175741)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【分割の表示】特願2000−509462(P2000−509462)の分割
【原出願日】平成10年8月14日(1998.8.14)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【Fターム(参考)】