説明

情報入力用ペン

【課題】筆圧によって検知位置がずれず、スライド動作時のすべりがよく、パネル表面を傷つけることがないような入力が可能である。そしてペン先尖端部に、ある程度柔軟な平面部を持つため、いわゆる電子書籍の文字列のデータに対して、アンダーラインを引くような入力が可能な入力ペンを提供すること。
【解決手段】入力用タッチペンのペン先尖端を構成する繊維束を、合成繊維または天然繊維を束ね、導電性材料を混合した合成樹脂接着剤により多孔質に結着し、軸本体先端に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パソコン、携帯端末などの情報処理装置に接続された静電容量型座標入力装置あるいは表示一体型静電容量型入力装置に座標情報を入力するための静電容量型入力パッド用のタッチペンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピューターの静電容量型座標入力装置あるいは表示一体型静電容量型入力装置に情報を入力する際には、直接指をあてて入力していた。
しかしながら、指では力加減により入力するパネルとの接触状態が変化して位置がずれたり、汗などで指のすべりが悪くなった場合に操作性が劣ったりするという欠点があった。
このような欠点に対しては、既に様々な提案がなされている。これらは、主に導電性のペン先と導電性の軸体から構成され、入力パネルから手指までの導通を確保しつつ、安定した書き味や位置検出を可能とするための提案である。
【0003】
まず、吸水性材料からなるペン先と軸体内部に設けた保水部に水を含浸させ、さらに導通性の軸体を通して入力パネルから手指までの導通を確保するものが提案されている(特許文献1)。この場合、パネルには水の筆跡が残るため、連続で使用するとパネル表面の水の影響で正確な位置情報が入力できないことがあった。更には、精密極まりない電子機器に対して、水を付着させるという、致命的な事故を起こしかねないものでもあった。
【0004】
次に、ペン先に導電性繊維の筆や導電性のフェルトを用い、さらに導通性の軸体を通して入力パネルから手指までの導通を確保するものが、本出願人により提案されている(特許文献2)。この場合、筆やフェルトの先端は柔らかく、入力時の感触は柔和で入力パネルを傷めないものであったが、変形しやすいため、正確な位置情報が入力できないという欠点があった。
【0005】
また、ペン先に導電性ゴムを用い、さらに導通性の軸体を通して入力パネルから手指までの導通を確保するものが本出願人により提案されている(特許文献3)。この場合、ポインティング動作では問題は無く、入力時の感触は柔和で入力パネルを傷めないものであったが、ゴムの滑りが悪く、スライドさせるような動作では抵抗が強く、快適にスライドさせる動作ができなかった。
【0006】
更には、ペン先に導電性炭素繊維と樹脂繊維をブレンドし、これを樹脂バインダーや樹脂繊維の熱溶着で結着させた繊維束を用い、さらに導通性の軸体を通して入力パネルから手指までの導通を確保するものが本出願人により提案されている(特許文献4)。この場合、すべりが適度なペン先が得られ、ポインティング動作でもスライド動作でも、好適な動作が可能であったが、樹脂バインダーが導電性繊維の外側を覆うために導電性に障害が生じることがあり、また、炭素繊維が硬いため、パネル表面を傷めてしまうこともあるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−44484号公報(実施例等)
【特許文献2】特開平10−39989号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献3】特開平10−161795号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献4】特開平10−161796号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述した欠点を除去、即ち、水などの導電性液体を入力装置に付着することなく、筆圧による検知位置のズレが少なく、スライド動作時のすべりがよく、かつ、パネル表面を傷つけるような材料を用いずに製造できるペン先を備えた静電容量型入力パッド用のタッチペンの提供にある。
【0009】
即ち、本発明は次の(1)〜(7)に存する。
(1)静電容量型座標入力装置または表示一体型静電容量型入力装置に情報を入力する入力用タッチペンであって、前記入力用タッチペンは軸体、および、繊維束を含むペン先尖端から成り、前記軸体の把持部は導電性を有し、かつ、前記ペン先尖端を構成する前記繊維束は、合成繊維または天然繊維を束ね、導電性材料を混合した合成樹脂接着剤により多孔質に結着されていることを特徴とする入力用タッチペン。
(2)前記軸体の把持部と前記繊維束は電気的に導通していることを特徴とする上記(1)に記載の入力用タッチペン。
(3)前記導電性材料が導電性樹脂であることを特徴とする上記(1)に記載の入力用タッチペン。
(4)前記繊維束外周側面に樹脂被膜を設けたことを特徴とする上記(1)に記載の入力用タッチペン。
(5)前記繊維束は前記ペン先尖端に対して着脱自在であることを特徴とする上記(1)に記載の入力用タッチペン。
(6)前記ペン先を含む先軸部は、前記軸体に対して着脱自在であることを特徴とする上記(1)に記載の入力用タッチペン。
(7)前記繊維束先端部は、前記軸体の中心軸と交差する平面を含むことを特徴とする上記(1)から(6)の何れか一つに記載の入力用タッチペン。
【発明の効果】
【0010】
本発明のタッチペンは、前記した通り、ペン先尖端が導電性材料を混合した合成樹脂接着剤により多孔質に結着された繊維束からなるため、筆圧による検知位置のズレが少なく、スライド動作時のすべりがよく、かつ、入力パネルを傷つけにくい静電容量型入力パネル用タッチペンとなる。また、前記導電性材料を導電性樹脂とすることによって、更に入力パネルを傷つけにくい静電容量型入力パネル用タッチペンとすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態の入力ペンの断面模式図である。
【図2】本発明の入力ペンの尖端が正しい角度で入力パネルに接触した場合の模式図である。
【図3】本発明の入力ペンの尖端が正しい角度より、ややずれた角度で入力パネルに接触した場合の模式図である。
【図4】本発明の入力ペンの尖端が正しい角度より、ややずれた角度で入力パネルに接触し、更に弱い力で入力パネルに押し付けた場合の模式図である。
【図5】本発明の第2実施形態の入力ペンの断面模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で用いる繊維としては、天然繊維、獣毛繊維、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリフェニレン系樹脂などの1種又は2種以上の組み合わせからなる繊維体からなるものが挙げられる。これらの樹脂等に導電性の炭素材等を混練して繊維自体に導電性を持たせる、あるいは、樹脂自体を導電性樹脂とすることによって導電性を持たせることも可能であるが、高価となるうえ、前記列挙したような、ごく普通の繊維を導電性樹脂によって結着させ、導電性を持たせる方が、安価に製造出来る。
【0013】
前記繊維を結着させる導電性材料は、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリンなどの導電性樹脂を分散または可溶化させた樹脂溶液が挙げられる。これらの導電性材料を用いる際に、導電性を適宜調整するために、2,3,7,8−テトラシアノ−1,4,6,9−テトラアザナフタレン、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などのドーパントを添加した導電性樹脂を使用することができる。
【0014】
ところで、導電性材料として一般的な、カーボンブラック、黒鉛、および、金属粒子等を分散させた樹脂溶液あるいは溶融した樹脂を用いたとしても大きな問題とはならない。なぜなら、本発明の製品の場合、入力パネルに接触するペン先尖端の内、繊維束先端に突出する僅かな繊維のみであるため、繊維束体内で繊維を結着させている導電性材料は入力パネルに触れる機会は殆ど無いからである。しかしながら、この繊維束体が使用等により磨耗して繊維束体の内部が露出して来るような場合には、カーボンブラック、黒鉛、および、金属粒子等が入力パネルに触れて傷を付ける可能性が出てくる。このため、本願における導電性材料としては、導電性樹脂が好ましい。
【0015】
前記繊維を結着させ、導電性を持つ繊維束とするには、繊維を引き揃えて束ね、この繊維の束を加熱し結着させる工程において、前記した導電性材料を分散または可溶化させた樹脂溶液を、繊維の束に含浸させる等の工程を加え、さらにこの導電性樹脂を固化または加熱硬化させることにより得ることができる。
【0016】
前記したような繊維束の側面あるいは後端に、被係止部を設けることができる。被係止部は、繊維束後端に設ける場合にはフランジ状の被係止部等、繊維束側面の場合には、フランジ状であっても、全周に亘る溝状であっても設けることが出来る。
【0017】
また、前記繊維束は、繊維束の外周を被覆する外皮部を設けても良い。外皮部を設けることにより、繊維束から繊維が脱落することを防ぎ、繊維束の曲げ強度等の機械的強度を大幅に向上させることが出来る。この外皮部には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、塩化ビニール、アクリル、ポリカーボネート等の合成樹脂を用いることができる。
【0018】
ペンの軸体は、導電性繊維の繊維束芯が十分に大きければ、導電性のない材料からなる軸体でも静電容量型座標入力装置または表示一体型静電容量型入力装置に入力が可能である。ただし、繊維束芯が小さい場合や、静電容量型座標入力装置または表示一体型静電容量型入力装置の応答性能が劣る場合、カーボンブラックや金属微粒子などを配合した合成樹脂軸や、合成樹脂軸表面にめっきをほどこした軸や、導電性金属からなる軸を用いることにより、軸体の把持部とペン先が導電性を有するような軸体を得ることができる。また、軸体は、軸体の把持部とペン先が導電性を有していれば、1部品単体で構成、または、先軸、軸筒、尾栓などの複数部品により構成してもよいし、あるいは、先軸、軸筒などの部材の外周部にカーボンブラックや金属微粒子などを配合した合成樹脂を被覆したり、めっきをほどこしたり、導電性金属からなる被覆を施したり、又は、前記の導電性材料の被覆を施してもよい。更には、軸体内部に、ペン先と導通するように、導電性繊維、導電性スポンジ、金属、グラファイト焼結体などの導電体を収納しておくことで、導電体の体積を増大させ、静電容量型座標入力装置または表示一体型静電容量型入力装置の応答性を適宜調整することができる。
【0019】
また、本発明に係わるペンのペン先の、静電容量型座標入力装置または表示一体型静電容量型入力装置に接触する先端部は、そのまま用いても問題ないが、ペン先をより小さくする場合は、ペン先全面を接触させなければ応答性に劣る場合がある。この場合は、ペン先の先端の結着を解きほぐし、先端に柔軟なタッチを持たせることにより、接触角度によらず好適な応答性を得ることができる。解きほぐす長さが長いと、前記した通り、特許文献2に開示されるような製品同様の欠点が生じることとなる。即ち、ペン先に導電性繊維の筆や導電性のフェルトを用いた時に起こる筆やフェルトの先端の変形による位置情報ずれが発生する。そのため、解きほぐす長さは3mmを超えない範囲、好ましくは2mmを超えない範囲にすることが望ましい。
【0020】
更には、本発明に係わるペンのペン先の、静電容量型座標入力装置または表示一体型静電容量型入力装置に接触する先端部は、ペン体の中心軸と交差する平面を含むことが出来、前記中心軸との角度は45°〜90°が好ましい。45°を下回ると先端部の尖りが鋭くなり過ぎ、繊維束がバラバラの状態になりやすい。その平面の面積は10mm〜80mm好ましく、更には20mm〜40mmであることが望ましい。10mm未満の接触面積では、使用感等において、従来のタッチペンと何ら変わらず、80mmを超える接触面積は大きすぎて入力パネル上の目標とする箇所以外に接触する可能性が高くなってしまう。
【0021】
そして、本発明に係わるペンのペン先から、軸体の把持部までの抵抗値は、特に限定はされない。この抵抗値が10MΩ以下であれば、より反応性の高いタッチペンとすることができるが、一般の測定機器により測定不能な程度に高い抵抗値であっても、軸体の下部、即ち、先端部(ペン先)に近い方を使用者が把持することによって、使用上問題の無い反応性とすることができる。
【0022】
本発明に係わるペンによれば、ペン先は、軸体を介して使用者の手と、たとえ微小であっても、電気的に導通される。したがって、ペン先が、軸体を把持する使用者の手と同電位に維持されるとともに、静電容量型座標入力装置または表示一体型静電容量型入力装置とペン先の接触状態で、静電容量が形成される。
【0023】
このように構成されたペンを用いて静電容量型座標入力装置または表示一体型静電容量型入力装置に座標を入力する場合、使用者は、軸体を適切な位置で把持し、ペン先を静電容量型座標入力装置または表示一体型静電容量型入力装置に押し当てることで入力する。
この結果、使用者の手と、静電容量型座標入力装置または表示一体型静電容量型入力装置の間に、接触面積に依存した静電容量が形成され、入力が可能となる。
【0024】
また、ペン先を、合成繊維または天然繊維を束ねた繊維束を、導電性材料を混合した合成樹脂接着剤により多孔質に結着することで、水などの導電性液体を入力装置に付着することがなく、筆圧によって検知位置がずれず、スライド動作時のすべりがよく、パネル表面を傷つけることのない入力が可能となる。
【実施例】
【0025】
(第1の実施形態)以下、図を参照しながら、本発明の実施の形態に係わるペンについて説明する。
まず、図1は第1の実施形態であり、導電性の軸体1と導電性を付与した繊維束よりなるペン先2と尾栓3により構成されている。ペン先2は外径5mmで、その先端を70°に切断して、より自然な筆記角度を持たせるとともに、接触面22を楕円にすることにより接触面積を20.9mmとしている。軸体1は導電性材料のみから構成されている。ここでは、軸体1の接続部11とペン先2の接触部21とが、接触・導通している。ペン先2から、接触部21、接続部11を通じて、軸体1の把持部12まで、導電性材料で繋がっている構成となっている。
【0026】
ペン先(繊維束)2は以下のような製造方法により得られる。
仮撚り加工されたポリエチレンテレフタレート繊維(太さ5デニール)をトータル繊度が42,000デニールとなるよう長手方向に引き揃え、これを内径約5mmのフッ素樹脂パイプに引き込み、加熱して繊維束を形成した。このときの加熱温度は、繊維の材質、仮撚りの程度により、適宜調整した。次に、得られた繊維束をフッ素樹脂パイプから引き抜き、有機溶剤で固形分1%に希釈したポリウレタン樹脂溶液と、日本カーリット製CDP−310M(ポリピロール分散液)を1:1にて配合した接着剤溶液を含浸した。これを加熱乾燥することで、この実施例におけるペン先に好適に使用される繊維束芯体を得た。
得られた導電性繊維束を長さ30mmに切断し、さらにその先端を70°の角度で切断して、導電性ペン先とした場合、このペン先の先端面22の面積は30mmであった。本実施例において、先端面22から把持部12までの電気抵抗の測定を行ったが、相当に高い値で測定値が変動し、明確な値を示すことが出来ないが、入力動作に対する反応は全く問題が無く正確な入力を行うことができた。
【0027】
図2乃至図4は第1の実施形態における、ペン先と静電容量型座標入力装置または表示一体型静電容量型入力装置6との接触状態である。本実施例においては、前記した通り、ペン体の中心軸Aとペン先の先端面中心軸Tの角度は70°である。図2のように、適正な断面積を有するペン先を、ペン先の先端面方向Tと入力装置の面6が並行となるような適正な筆記角度で接触させれば問題はない。ペン先の素材に硬い材質を用いる、あるいは、結着後のペン先が硬い場合は、筆記角度、即ち、ペン体の中心軸Aと入力装置の面6の角度が変わると、図3のように、接触面が少なくなり、応答性が悪くなる場合がある。
【0028】
このような場合の対応として、第1の実施形態において、図4のように、ペン先先端を2mm程度解きほぐしたペン先により、軽い筆圧においても、ペン先の解きほぐした部分が容易に変形し、ペン先と静電容量型座標入力装置または表示一体型静電容量型入力装置の接触面積は十分にとれ、応答性も問題なかった。
【0029】
(第2の実施形態)第2の実施形態は、軸体を導電性のない軸体1’(図示せず)としたこと以外は第1の実施形態と同様にして構成した。この実施形態においては、この導電性のない軸体1’と導電性を付与した繊維束よりなるペン先2と尾栓3により構成されている。本実施例において、ペン先2から把持部12までの電気抵抗を測定したが、測定器の上限(10MΩ)を超えて測定不能であったが、問題なく正確な入力を行うことができた。
【0030】
(第3の実施形態)以下、図5を参照しながら、本発明の実施の形態に係わるペンについて説明する。
図5は第3の実施形態であり、導電性の軸体1と導電性を付与した繊維束よりなり最外部に樹脂被膜23を設けたペン先2と、軸体1の中に導電性スポンジ4と、ペン先と導電性スポンジを直接導通させるためのグラファイト焼結体5と尾栓3により構成されている。
この実施形態では、樹脂被膜23が設けられているため、軸体1の接続部11とペン先2の接触部21とは、導通していない。ペン先2から、接触部21、導電性スポンジの接続部41、および、グラファイト焼結体5を通じて、軸体1の把持部12まで、導電性材料で繋がっている構成となっている。
【0031】
前記の内径約5mmのフッ素樹脂パイプを内径約6mmのものに変えた以外は、同様に繊維束芯体を得た。次に、この繊維束に、前記の有機溶剤で固形分1%に希釈したポリウレタン樹脂溶液を、自然に吸い込む程度に含浸させ、100℃で30分乾燥させることで、樹脂被膜23を外側に設けた導電性繊維束2を得ることができる。得られた導電性繊維束を長さ30mmに切断し、さらにその先端を70°の角度で切断して、導電性ペン先とした場合、このペン先の先端面22の面積は30mmであった。本実施例において、導電性繊維束2から把持部12までの電気抵抗の測定を行った。しかし相当に高い値で測定値が変動し、明確な値を示すことが出来ないが、入力動作に対する反応は全く問題が無く正確な入力を行うことができた。
【0032】
この樹脂被膜23を外側に設けた導電性繊維束2は、先端面22近傍には樹脂被膜23を設けず、導電性繊維束を僅かに突出させる。このことによって、前記第1の実施形態同様の効果を得ることが出来る。即ち、入力装置の面6との接触の際に、ペン先先端を2mm以内で解きほぐしたペン先により、軽い筆圧においても、ペン先の解きほぐした部分が容易に変形し、ペン先と静電容量型座標入力装置または表示一体型静電容量型入力装置の接触面積は十分にとれ、応答性も問題ない状態となる。この導電性繊維の僅かな突出は0.1mm以上あれば先端面22の柔軟性が発揮される。これが3mmを超えるとペン先の広がりが大きすぎ、検知位置のずれ等が生じる。
【0033】
詳しく図示はしていないが、この第3の実施形態は繊維束のペン先2が樹脂被膜23で被覆されているので、ペン先2の交換が比較的容易に行える。従って、先端面22が摩滅してきた場合などには、この繊維束のペン先2を取り外し、新たなペン先2´に付け替えることの出来る構成としてもよい。使用者は「筆記抵抗」や「入力感」が長期間の使用によって、柔らかくなり気に入らなくなった場合には、ペン先2を軸体1から引っこ抜き、交換することによって、新品の「筆記抵抗」や「入力感」によって、作業を行うことができる。
【0034】
更には、この繊維束のペン先2の着脱の代わりに、軸体1先端に新たに先軸部を設け、着脱自在としてもよい。即ち、繊維束のペン先2が接続・導通する先軸部20を別途作製し、筒状の軸体1に嵌着・導通できるようにした構成としてよいものである。前記同様に繊維束のペン先2が摩滅してきた際には、新たな繊維束2´が接続・導通している先軸部20´に付け替えることの出来る構成とすることもできる。
【0035】
また、これらの実施形態のペンの後端部にボールペンなどの筆記具を結合して構成し、普通の紙面へのメモ書き、アンダーライン引きを行えるようにしてもよい。
【0036】
(第4の実施形態)第4の実施形態は、軸体を導電性のない軸体としたこと以外は第3の実施形態と同様にして構成した。この実施形態においても、繊維束芯2、中芯4および基部23は入力尖端として一体となっているため、使用者が「筆記抵抗」や「入力感」が気に入らない場合には、この入力尖端全体を交換することで、気に入った「筆記抵抗」や「入力感」とすることができる。本実施例において、穂先22から把持部12までの電気抵抗を測定したが、測定器の上限(10MΩ)を超えて測定不能であった。しかし問題なく正確な入力を行うことができた。
【0037】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、以下のような効果を得ることができる。すなわち、水などの導電性液体を入力装置に付着することがなく、筆圧によって検知位置がずれず、スライド動作時のすべりがよく、パネル表面を傷つけることがないような入力が可能である。そしてペン先尖端部に、ある程度柔軟な平面部を持つため、いわゆる電子書籍の文字列のデータに対して、アンダーラインを引くような入力が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明品は、いわゆる電子書籍へのアンダーライン引き、デジタル映像への加筆、加工、あるいは、文字、筆跡および描線の入力に利用することが出来る。
【符号の説明】
【0039】
1 軸体
11 軸体の接続部
12 把持部
13 尾栓嵌合部
2 ペン先
21 ペン先の接触部
22 先端面
23 樹脂被膜
3 尾栓
4 導電性スポンジ
41 導電性スポンジの接続部
5 グラファイト焼結体
6 入力装置の面
A ペン体の中心軸
T 先端面の中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量型座標入力装置または表示一体型静電容量型入力装置に情報を入力する入力用タッチペンであって、前記入力用タッチペンは軸体、および、繊維束を含むペン先尖端から成り、前記軸体の把持部は導電性を有し、かつ、前記ペン先尖端を構成する前記繊維束は、合成繊維または天然繊維を束ね、導電性材料を混合した合成樹脂接着剤により多孔質に結着されていることを特徴とする入力用タッチペン。
【請求項2】
前記軸体の把持部と前記繊維束は電気的に導通していることを特徴とする請求項1に記載の入力用タッチペン。
【請求項3】
前記導電性材料が導電性樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の入力用タッチペン。
【請求項4】
前記繊維束の外周側面に樹脂被膜を設けたことを特徴とする請求項1に記載の入力用タッチペン。
【請求項5】
前記繊維束は前記ペン先尖端に対して着脱自在であることを特徴とする請求項1に記載の入力用タッチペン。
【請求項6】
前記ペン先尖端を含む先軸部は、前記軸体に対して着脱自在であることを特徴とする請求項1に記載の入力用タッチペン。
【請求項7】
前記繊維束の先端部は、前記軸体の中心軸と交差する平面を含むことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の入力用タッチペン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−108895(P2012−108895A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234487(P2011−234487)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】