説明

情報処理プログラム、情報処理装置、情報処理システム及び情報処理方法

【課題】楽曲の拍子を変えることが可能な新規な情報処理プログラム等を提供し、また、楽曲の小節の途中を再生中であってもリアルタイムに楽曲の拍子を変化させることが可能な情報処理プログラム等を提供すること。
【解決手段】情報処理プログラムは、1又は複数のトラックからなる楽曲を再生する情報処理装置のコンピュータを、楽曲を再生する再生手段と、再生手段で楽曲を再生中に拍子を変更する拍子変更手段と、変更された拍子に基づいて、現在再生中の楽曲の小節内で次に再生する拍を再生手段に再生させるか否かを繰り返し判定する判定手段として機能させる。そして、再生手段は、判定手段による判定結果に基づいて楽曲を再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理プログラム、情報処理装置、情報処理システム及び情報処理方法に関し、より特定的には、楽曲の再生を行う情報処理プログラム、情報処理装置、情報処理システム及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のトラックで構成された楽曲データを再生する楽曲演奏装置や、当該楽曲演奏装置における楽曲演奏プログラムがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−210917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の楽曲演奏プログラムでは、楽曲データを処理(再生)中に再生中の楽曲の拍子を切り替えることはできなかった。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、楽曲の拍子を変えることが可能な新規な、情報処理プログラム、情報処理装置、情報処理システム及び情報処理方法を提供することである。また、この発明の他の目的は、楽曲の小節の途中を再生中であってもリアルタイムに楽曲の拍子を変化させることが可能な情報処理プログラム、情報処理装置、情報処理システム及び情報処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するために、以下の構成を採用した。
【0007】
本発明に係る情報処理プログラムは、1又は複数のトラックからなる楽曲を再生する情報処理装置のコンピュータを、楽曲を再生する再生手段と、再生手段で楽曲を再生中に拍子を変更する拍子変更手段と、変更された拍子に基づいて、現在再生中の楽曲の小節内で次に再生する拍を再生手段に再生させるか否かを繰り返し判定する判定手段として機能させる。そして、再生手段は、判定手段による判定結果に基づいて楽曲を再生する。
【0008】
本構成によれば、拍子変更手段によって、楽曲が再生される際の拍子が変更され、判定手段によって、この拍子に基づいて小節内で次に再生する予定の拍(直後の拍)が再生されるか否かが判定される。すなわち、変更された拍子に応じて、楽曲は、小節内の拍単位で次に再生されるか否かが決定される。このことにより、楽曲の小節の途中が再生中であっても、リアルタイムに、変更された拍子に応じて、拍単位で楽曲の再生を調整することができる。
【0009】
楽曲には、第1の拍子用トラックと第2の拍子用トラックとが含まれ、再生手段は、以下のように再生するものとしてもよい。すなわち、再生手段は、拍子変更手段によって変更された拍子が第1の拍子であるとき、第1の拍子用トラックを有音で再生するとともに、第2の拍子用トラックを無音で再生し、拍子変更手段によって変更された拍子が第1の拍子とは異なる第2の拍子であるとき、第1の拍子用トラックを無音で再生するとともに、第2の拍子用トラックを有音で再生する。
【0010】
本構成によれば、第1の拍子用トラックと第2の拍子用トラックが並行して再生されており、楽曲が再生される際の拍子が第1の拍子である場合には、第2の拍子用トラックは無音で再生され、楽曲が再生される際の拍子が第2の拍子である場合には、第1の拍子用トラックは無音で再生される。このことにより、ユーザには、楽曲が再生される際の拍子に応じたトラックの音だけが聞こえる。また、2つのトラックは並行して再生されているので、小節や拍の順序がずれることがない。このため、拍子を切り替えたタイミングで、再生中のトラックの再生を停止し、停止中のトラックの再生を開始する場合に比べて、切り替えるタイミングのずれによって楽曲が不自然に聞こえてしまうということがなく、また、拍子を切り替えるタイミングを合わせるための調整が必要ない。
【0011】
第2の拍子用トラックは、第1の拍子用トラックと同一の旋律を、第2の拍子向けに調整することによって生成されたトラックであってもよい。
【0012】
本構成によれば、第2の拍子用トラックは、第1の拍子用トラックと同一の旋律が調整されたものであるので、楽曲が再生される際の拍子に合わせて、ユーザに違和感のない楽曲を提供することができる。
【0013】
第1の拍子は、第2の拍子よりも大きくてもよい。
【0014】
本構成によれば、第2の拍子用トラックは、第1の拍子よりも小さな第2の拍子向けに調整されたトラックである。すなわち、第1の拍子を、変更される可能性がある複数の拍子のうちの最大の拍子とすることで、それよりも小さな第2の拍子向けのトラックは、第1の拍子用トラックに基づいて生成することができる。
【0015】
再生手段は、判定手段による判定結果が否定である場合には、次に再生する拍を再生せず、判定手段による判定結果が肯定である場合には、次に再生する拍をそのまま再生するものとしてもよい。
【0016】
本構成によれば、判定結果に応じて、次に再生する予定の拍が再生されるか否かが決定される。このことにより、楽曲の小節の途中が再生中であっても、拍単位で楽曲の再生を調整することができる。
【0017】
判定手段は、以下のように判定するものとしてもよい。すなわち、判定手段は、小節内での次に再生する拍の順番が、拍子変更手段によって変更された拍子の数以下である場合には、当該次に再生する拍を再生手段にそのまま再生させる、と判定し、小節内での次に再生する拍の順番が、拍子変更手段によって変更された拍子の数よりも大きい場合には、当該次に再生する拍を再生手段に再生させない、と判定する。
【0018】
本構成によれば、小節内での次に再生する予定の拍の順番と、拍子変更手段によって変更された楽曲が再生される際の拍子の数との大きさを比較した結果に応じて、当該次に再生する予定の拍が再生されるか、再生されないかが決定される。具体的には、例えば、変更された楽曲が再生される際の拍子の数が3拍子である場合には、小節内での次に再生する予定の第3拍目は再生されるが、次に再生する予定の第4拍目は再生されない。このことにより、楽曲の小節の途中が再生中であっても、リアルタイムに、変更された拍子に応じて、拍単位で楽曲の再生を調整することができる。
【0019】
再生手段は、判定手段による判定結果が否定である場合には、次の小節の第1拍目の再生を開始するものとしてもよい。
【0020】
本構成によれば、小節内での次に再生する予定の拍が再生されない場合には、次小節の第1拍目が再生される。具体的には、例えば、変更された楽曲が再生される際の拍子の数が3(3拍子)である場合には、小節内での次に再生する予定の第3拍目は再生されるが、次に再生する予定の第4拍目は再生されずに、次の小節の第1拍目の再生が開始される。すなわち、同一の楽曲でありながら、3拍子の楽曲として再生される。このことにより、1小節の拍数(例えば、4拍)を変化の最大値とする1つの楽曲データを準備することで、複数の拍子(4拍子以下の拍子)の楽曲を再生することができる。なお、所定の拍子用に調整されたトラックを準備しておく場合には、これらのトラックは並行して再生され、変更された拍子に合わせて有音、無音が切り替わるので、拍子の切り替えに対して滑らかな切り替えが行われると同時に、楽曲が不自然に聞こえてしまうおそれが無い。
【0021】
判定手段は、所定の間隔で繰り返し判定するものとしてもよい。
【0022】
本構成によれば、次に再生する予定の拍(直後の拍)を再生するか否かを適切なタイミングで定期的に判定することができる。
【0023】
所定の間隔は、拍の間隔もしくは当該拍の間隔よりも短い間隔であるとしてもよい。
【0024】
本構成によれば、判定処理は、例えば、楽曲が再生される際の拍子が4拍子から3拍子に切り替わる場合には、4拍ごとに、小節内の第4拍を再生する直前に、第4拍目(直後の拍)を再生するか否かの判定処理が行われる。このことにより、切り替わる拍子の数に応じて、適切なタイミングで、直後の拍を次に再生するか否かを判定する効率的な判定処理を行うことができる。
【0025】
再生手段は、拍子変更手段によって拍子が第1の拍子と第2の拍子との間で切り替えられると、第1の拍子用トラックと第2の拍子用トラックの有音/無音の切り替えをクロスフェードで切り替えてもよい。
【0026】
本構成によれば、第1の拍子用トラックと、第2の拍子用トラックの有音/無音はクロスフェードで切り替えられる。このことにより、ユーザには、トラックが切り替えられて有音再生されていることに対する違和感を覚えることがより少なくなる。
【0027】
コンピュータを、ユーザからの入力を受け付ける入力受付手段としてさらに機能させ、
拍子変更手段は、入力受付手段が受け付けたユーザからの入力に基づいて、楽曲データを再生させる際の拍子を変更してもよい。
【0028】
本構成によれば、楽曲が再生される際の拍子は、ユーザからの入力指示に応じて変更可能となる。
【0029】
入力受付手段が受け付けたユーザからの入力は、楽曲データを再生する際の拍子を変更する処理以外の処理に用いられてもよい。
【0030】
本構成によれば、例えば、ユーザ(ゲームプレイヤ)が、ゲームキャラクタを操作する処理(楽曲データの再生の拍子を変更する処理以外の処理)を行うことによって、ゲームの状況や場面を変化させ、これに応じて楽曲の拍子を変更させることができる。
【0031】
以上では、情報処理プログラムとして本発明を構成する場合について記載した。しかし、本発明は、情報処理装置、情報処理システム、又は情報処理方法として構成されてもよい。更には、本発明は、上記情報処理プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体として構成されてもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、楽曲の拍子を変えることが可能な新規な、情報処理プログラム等を提供することができる。また、楽曲の小節の途中を再生中であってもリアルタイムに楽曲の拍子を変化させることが可能な情報処理プログラム等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】情報処理システム10の構成の一例を示すブロック図
【図2】楽曲データの一例を示す模式図
【図3】拍子が変更される場合の楽曲データの一例を示す模式図
【図4】複数のトラックで構成された楽曲データの一例を示す模式図
【図5】メインメモリ22のメモリマップの一例
【図6】拍子設定処理のフローチャートの一例
【図7】判定処理のフローチャートの一例
【図8】通常再生用トラックと切り替え再生用トラックが再生されたときの譜例を示す図
【図9】拍子が変更される場合の通常再生用トラックと切り替え再生用トラックの一例を示す模式図
【図10】拍子設定処理のフローチャートの変形例
【発明を実施するための形態】
【0034】
(一実施形態)
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。ここでは、本発明を情報処理システムに適用した例について説明するが、本発明は、このような情報処理システムに限定されるものではなく、このような情報処理システムの機能を実現する情報処理装置であってもよく、このような情報処理装置における情報処理方法であってもよく、このような情報処理装置において実行される情報処理プログラムであってもよい。更には、本発明は、このような情報処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体であってもよい。
【0035】
(情報処理システムのハードウェア構成)
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る情報処理システム10について説明する。図1は、情報処理システム10の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、情報処理システム10は、操作装置12、情報処理装置14、表示装置16、スピーカ17、及び外部記憶装置24を備えている。
【0036】
操作装置12は、自装置に対して行われた操作の内容を示す操作データを情報処理装置14に与える入力装置である。操作装置12と情報処理装置14とは、無線通信の技術が用いられて接続されてもよいし、接続コード等を用いて有線で接続されてもよい。
【0037】
情報処理装置14は、プロセッサ18、内部記憶装置20、及びメインメモリ22を備えている。内部記憶装置20には、プロセッサ18によって実行されるコンピュータプログラムが格納されている。内部記憶装置20は、典型的には、ハードディスクやROM(Read Only Memory)である。メインメモリ22は、コンピュータプログラムやその他のデータを一時的に記憶する。
【0038】
表示装置16は、情報処理装置14によって生成された画像を画面に表示する。なお、表示装置16は、情報処理装置14と一体に構成されてもよい。
【0039】
スピーカ17は、情報処理装置14によって生成された音声を出力する。なお、スピーカ17は、表示装置16と一体に構成されてもよい。
【0040】
外部記憶装置24には、プロセッサ18によって実行されるコンピュータプログラムが格納されている。外部記憶装置24は、典型的には、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)や半導体記憶装置である。
【0041】
なお、上記のようなハードウェア構成は単なる一例に過ぎず、本発明は任意の情報処理システムに適用可能である。
【0042】
以下では、本発明の一実施形態として、情報処理システム10がゲームシステムである場合について説明する。本実施形態における情報処理システム10では、操作装置12(例えば、ゲームコントローラ)を用いた操作に基づいて、情報処理装置14(例えば、ゲーム装置)がゲーム処理や楽曲再生処理を実行する。
【0043】
まず、情報処理システム10において実行されるゲーム楽曲(楽曲の一例)の楽曲再生処理について説明する。本実施形態では、外部記憶装置24等からメインメモリ22にロードされたゲーム楽曲の楽曲再生プログラム(コンピュータプログラムの一例)をプロセッサ18が実行することによって、ゲームの進行に応じたゲーム楽曲が再生される。
【0044】
(楽曲再生処理)
本実施形態では、楽曲再生プログラムによって再生されるゲーム楽曲の楽曲データは、MIDI(Musical Instruments Digital Interface)規格に則ったデータ(ここでは単にMIDIデータと称す)であり、外部記憶装置24等からメインメモリ22にロードされる。また、MIDIデータでは、楽曲に含まれる複数の音が1以上のトラック(譜面に相当する)で管理されている。つまり、楽曲に含まれる各音は、いずれかのトラックに所属する。
【0045】
MIDIデータは、複数のMIDIイベントの集合体として表現される。MIDIイベントには、音を鳴らすための「ノートイベント」や、トラック単位で音のボリュームや音色を変えたりするための「コントロールチェンジイベント」をはじめ、「ピッチベンドイベント」、「プログラムチェンジイベント」など、種々のMIDIイベントが存在する。そして、各MIDIイベント間の時間間隔を表す時間情報とイベント情報との組がイベントの発生順に格納されて、MIDIデータが構成される。
【0046】
ノートイベントには、「所属トラック」、「再生タイミング」、「ノート長(デュレーション)」、「音高(ノートナンバー)」、「ベロシティ」等の情報が含まれる。「所属トラック」は、そのノートイベントによって鳴らされる音が、どのトラックに含まれる音かを示す情報である。「再生タイミング」は、音を鳴らすタイミングを示す情報であって、ティック(tick)という単位で表される。「ノート長(デュレーション)」は、音の長さを示す情報であり、ティックで表される。「音高(ノートナンバー)」は、音の高さである音高を示す情報である。「ベロシティ」は、音を鳴らす強さを示す情報である。
【0047】
楽曲再生プログラムは、楽曲のMIDIデータに基づいて、ノートイベントを含む各種MIDIイベントを、先頭から順番に処理することにより、楽曲を小節、拍の順番で順次再生する。より具体的には、情報処理装置14において楽曲再生プログラムが実行されることにより生成された音声データが、スピーカ17を通して出力される。なお、楽曲再生プログラムには、MIDIプレーヤーとしての機能を有する既存のプログラムライブラリ等を利用すればよい。
【0048】
なお、拍の順番(第3拍目など)とは、小節内の再生位置を示すものである。また、本明細書において、「拍の再生」と記載することがあるが、これは、特に断りのない限り、当該拍に含まれる音符の再生を意味するものとする。
【0049】
ところで、ゲーム楽曲は、ゲームの進行に応じてゲームの興趣性や臨場感を高めるためにゲームの音響効果のための演出音として用いられることが多いため、ゲームの場面や状況の変化に合わせてゲーム楽曲の拍子を変化させることで、ゲームの臨場感をより高めたいという要望がある。具体的には、所定の拍子(例えば、4拍子)でゲーム楽曲が再生されているときに、ゲームのプレイヤキャラクタ(主人公)の状況(場面)が変化した場合(例えば、プレイヤキャラクタが休憩所に移動した場合)、ゲーム楽曲の旋律はそのままに拍子を変える(例えば3拍子に変える)ことで、プレイヤキャラクタの状況の変化を、ゲームプレイヤに臨場感をもって体感させたいという要望がある。また、このような状況の変化は、ゲームプレイヤが操作装置12によってプレイヤキャラクタを操作することによって生ずることであるため、どのようなタイミングであっても(すなわち、ゲーム楽曲の小節の途中が再生中であっても)リアルタイムに変化できることが求められる。本実施形態では、この要望に応えるために、上記したMIDIイベントが再生処理プログラムによって実行される際に、MIDIイベントにより小節中の拍の再生が開始される直前に定期的に判定処理が実行される。以下に、本実施形態におけるこの判定処理について説明する。
【0050】
(判定処理)
本実施形態における判定処理は、ゲーム楽曲を再生する際の拍子の数と、直後に再生する小節中の拍の順番とを定期的に比較して、比較結果に応じて次の処理を決定する(次に再生処理プログラムによって実行されるMIDIイベントを指定する)処理である。この判定処理は、内部記憶装置20等からメインメモリ22にロードされた判定プログラムをプロセッサ18が実行することによって実行される。
【0051】
以下、図2、図3を参照しつつ、この判定処理について具体的に説明する。図2は、4拍子の1トラックからなる楽曲データを説明するための模式図であり、図3の(1)は、4拍子の1トラックからなる楽曲データが3拍子で再生される様子を示す模式図であり、図3の(2)は、4拍子の1トラックからなる楽曲データが2拍子で再生される様子を示す模式図である。
【0052】
楽曲再生プログラムによってMIDIデータに含まれる各種MIDIイベントが先頭から順番に実行されると、ゲーム楽曲が小節、拍順に順次再生される。具体的には、楽曲データが4拍子の1トラックからなる場合、図2に示すように、第1小節の第1拍、…、第1小節の第4拍、第2小節の第1拍、…第2小節の第4拍、…というように、ゲーム楽曲の小節、拍順に楽曲データが処理(再生)される。ここで、判定処理(判定プログラム)は、楽曲再生プログラムによる楽曲データの処理に対して、定期的に実行される。そして、判定プログラムが実行されることにより、直後に再生される拍(すなわち、これから再生しようとする拍)の順番n(つまり、第n拍)と、ゲーム楽曲が再生される際の拍子の数Rとが比較され、この結果に基づいて後続の処理が決定される。詳細には、判定プログラムによって、n≦Rであると判定されると、次の処理として、楽曲再生プログラムによって後続のMIDIイベントがそのまま実行されることが決定される。一方、判定プログラムによって、n>Rであると判定されると、次の処理として、後続のMIDIイベントではなく(すなわち、現在再生中の小節に含まれている残りのMIDIイベントの処理が省略されて)、次小節の第1拍目を再生させるMIDIイベントが楽曲再生プログラムによって実行されることが決定される。
【0053】
上述した判定プログラムが実行される例について、図2、図3を参照しつつ、具体的に説明する。図2および図3に示すように、4拍子の1トラックの楽曲データを4拍子(R=4)または3拍子(R=3)または2拍子(R=2)で再生するときには、判定プログラムは、第3拍目(n=3)の再生の直前と、第4拍目(n=4)の再生の直前に、定期的に実行される。
【0054】
図2に示すように、4拍子の1トラックの楽曲データを4拍子(R=4)で再生する場合には、第3拍目(n=3)の再生の直前では、直後に再生される拍の順番(すなわち、n=3)と、ゲーム楽曲の再生の拍子(すなわち、R=4)とが比較され、n≦Rであると判定されるため、次の処理として、楽曲再生プログラムによって後続のMIDIイベントがそのまま実行される。そして、第4拍目(n=4)の再生の直前では、直後に再生される拍の順番(すなわち、n=4)と、ゲーム楽曲の再生の拍子(すなわち、R=4)とが比較され、n≦Rであると判定されるため、次の処理として、楽曲再生プログラムによって後続のMIDIイベントがそのまま実行される。すなわち、MIDIイベントは順序どおりに実行され、楽曲データは、そのままの順序で再生される(4拍子の楽曲として再生される)。
【0055】
一方、図3(1)に示すように、上記4拍子の1トラックの楽曲データを3拍子(R=3)で再生する場合には、第3拍目(n=3)の再生の直前では、直後に再生される拍の順番(すなわち、n=3)と、ゲーム楽曲の再生の拍子(すなわち、R=3)とが比較され、n≦Rであると判定されるため、次の処理として、楽曲再生プログラムによって後続のMIDIイベントがそのまま実行される。そして、第4拍目(n=4)の再生の直前では、直後に再生される拍の順番(すなわち、n=4)と、ゲーム楽曲の再生の拍子の数(すなわち、R=3)とが比較され、n>Rであると判定されるため、次の処理として、楽曲再生プログラムによって次小節の第1拍目を再生させるMIDIイベントが実行されることが決定される。このことにより、後続のMIDIイベントが実行されず(すなわち、第4拍目が再生されず)、次小節の第1拍目が再生される。すなわち、図3の(1)に示すように、4拍子の1トラックの楽曲データの斜線部の拍(第4拍目)が飛ばされて再生されることにより、ゲーム楽曲の旋律はそのままに3拍子の楽曲が再生される。
【0056】
ところで、上述したように、上記した4拍子の楽曲データを再生する際の拍子は、ゲームプレイヤによるプレイヤキャラクタの操作によって生ずる状況の変化に応じて変化するものであるから、リアルタイムに変更可能であることが求められる。本実施形態では、フレーム毎(1拍の間隔よりもはるかに短い間隔であり、例えば1/60s)に、楽曲データを何拍子で再生させるかという情報が取得される。そのため、楽曲再生プログラムによって小節の第3拍目を再生させるMIDIイベントが実行されているとき、楽曲が再生される際の拍子が4拍子から3拍子に切り替わると、当該小節の第4拍目が再生される直前には、Rの値が4から3に切り替わっている。したがって、上述した判定プログラムが実行されると、後続の第4拍目を再生させるMIDIイベントが実行されなくなる(飛ばされる)。このことにより、楽曲データの小節の途中が再生中であっても、リアルタイムにゲーム楽曲の拍子を切り替えることができる。
【0057】
次に、図3(2)に示すように、上記4拍子の1トラックの楽曲データを2拍子で再生する場合について説明する。この場合、判定プログラムは、第3拍目(n=3)の再生の直前と、第4拍目(n=4)の再生の直前に定期的に実行される。したがって、楽曲再生プログラムによって第1拍目又は第2拍目を再生させるMIDIイベントが実行されているときに、楽曲データの再生の拍子が4拍子から2拍子に切り替わった場合には、判定処理プログラムが実行されることにより、第3拍目の再生の直前に、直後に再生される拍の順番(すなわち、n=3)と、ゲーム楽曲の再生の拍子の数(すなわち、R=2)とが比較される。この結果、n>Rであると判定されるため、次の処理として、楽曲再生プログラムによって次小節の第1拍目を再生させるMIDIイベントが実行されることが決定される。このことにより、後続のMIDIイベントが実行されず(すなわち、第3拍目と第4拍目が再生されず)、次小節の第1拍目が再生される。すなわち、図3の(2)に示すように、4拍子の1トラックの楽曲データの斜線部の拍(第3拍目と第4拍目)が飛ばされて再生されることにより、ゲーム楽曲の旋律はそのままに2拍子の楽曲が再生される。
【0058】
また、楽曲再生プログラムによって第3拍目を再生させるMIDIイベントが実行されているときに、楽曲データの再生の拍子が2拍子に切り替わった場合には、判定処理プログラムが実行されることにより、第4拍目の再生の直前に、直後に再生される拍の順番(すなわち、n=4)と、ゲーム楽曲の再生の拍子の数(すなわち、R=2)とが比較される。この結果、n>Rであると判定されるため、次の処理として、楽曲再生プログラムによって次小節の第1拍目を再生させるMIDIイベントが実行されることが決定される。このことにより、後続のMIDIイベントが実行されず(すなわち、第4拍目が再生されず)、次小節の第1拍目が再生される。このように、楽曲データの再生の拍子を4拍子から2拍子に切り替えるときには、第3拍目と第4拍目の再生の直前に判定プログラムを実行させることで、楽曲データの小節の途中が再生中であっても、リアルタイムに拍子の切り替えを行うことができる。
【0059】
なお、上記した判定プログラムが実行されるタイミングについては、上記例に限らず、例えば、小節中の各拍の再生の直前に毎回実行されるものとしてもよい。このようにすれば、より柔軟に、拍子の変更にリアルタイムに対応することができる。また、楽曲のデータとしては、小節の拍数が、変更される可能性がある複数の拍子のうちの最大の拍子に対応する拍数であるような楽曲データさえ準備しておけば、変更される可能性がある全ての拍子に対応可能となり、各拍子用の楽曲のデータを個別に準備する必要がない。
【0060】
また、上記では、楽曲データが1つのトラックで構成されている場合について説明したが、複数のトラックで構成されていてもよい。この場合、上記した判定プログラムは、全てのトラックにおいて同じタイミングで実行される。具体的には、図4に示すように、複数のトラックで構成される4拍子の楽曲データが、3拍子(R=3)で再生される際には、それぞれのトラックにおいて、少なくとも第4拍目(n=4)の再生の直前に判定プログラムが実行される。そして、この結果、各トラックにおいてn>Rと判定されるので、トラックごとに、次小節の第1拍目が再生されることが決定され、各トラックの次小節の第1拍目が同じタイミングで再生される。このことにより、楽曲データが複数のトラックで構成されていても1つのトラックで構成されているときと同様に、楽曲データの小節の途中が再生中であっても、リアルタイムに拍子の切り替えを行うことができる。なお、判定プログラムは、上記複数のトラックのいずれか1つのトラックにおいて実行され、この判定結果に基づいて、全てのトラックにおいて、例えば第4拍目が再生されない(飛ばされる)ようにしてもよい。
【0061】
以上のように、判定処理が、定期的、より具体的には、飛ばすべきか否かの判定対象となる拍の直前に実行されることにより、リアルタイムに楽曲の拍子の切り替えを行うことができる。なお、言うまでもないが、4拍子の楽曲データが3拍子に切り替わり、その後、4拍子に戻る場合には、Rの値は、3から4に戻る。この場合、第4拍(n=4)の直前に判定処理が実行されることにより、n≦Rと判定される。したがって、楽曲再生プログラムによって後続のMIDIイベントが実行されるので、楽曲データはそのままの順序で再生されることにより、元の4拍子の楽曲として再生される。
【0062】
次に、上述した楽曲再生処理や、判定処理が実行されるために、メインメモリ22に記憶される各種データ(メモリマップ)について説明する。
【0063】
(メモリマップ)
図5は、外部記憶装置24や内部記憶装置20から読み出されたゲームプログラム等のプログラムや、各種データを記憶するメインメモリ22のメモリ構成の一例を示す図である。図5に示すように、メインメモリ22は、ゲームプログラム220、拍子設定プログラム221、楽曲再生プログラム222、判定プログラム223、MIDIデータ224、拍子データ225を有している。ゲームプログラム220、拍子設定プログラム221、楽曲再生プログラム222、判定プログラム223は、プロセッサ18が実行するプログラムである。また、MIDIデータ224、拍子データ225は、拍子設定プログラム221、楽曲再生プログラム222、判定プログラム223が実行される際に用いられるデータである。
【0064】
ゲームプログラム220は、ゲームを進行させるためのプログラムであり、ゲームプレイヤ(ユーザ)による操作装置12からの操作情報を受け付けて、操作情報に応じたゲーム進行を行うプログラムである。
【0065】
拍子設定プログラム221は、後述する楽曲再生プログラム222によって再生される楽曲(ゲーム楽曲)の拍子を設定するプログラムである。具体的には、拍子設定プログラム221が定期的に実行されることにより、ゲームの進行(状況)に応じて、拍子データ225が逐次更新される。
【0066】
楽曲再生プログラム222は、ゲームプログラム220が実行するゲームの進行に合わせて、ゲームの音響効果のために用いられる楽曲(ゲーム楽曲)を再生するプログラムである。この際、ゲームの進行に合わせた楽曲データ(MIDIデータ224)が用いられる。
【0067】
判定プログラム223は、拍子データ225を取得して、当該拍子の数と、直後に再生される拍の順番とを定期的に比較して、比較結果に応じて次の処理を決定するプログラムである。
【0068】
MIDIデータ224は、楽曲再生プログラムが実行される際に用いられるゲーム楽曲のデータであり、上述したように複数のMIDIイベントの集合体からなるデータである。
【0069】
拍子データ225は、楽曲再生プログラムによって再生される楽曲の拍子を示すデータである。具体的には、楽曲によって予め初期値が定められており、また、拍子設定プログラムが実行されることによって、ゲームの進行に合わせて更新されるデータである。なお、拍子データ225は、ゲームプレイヤの操作情報によって更新されるデータであってもよい。
【0070】
次に、上述した拍子設定プログラム221が実行されることによって行われる拍子設定処理の処理フローについて説明する。
【0071】
(拍子設定処理の処理フロー)
図6を参照しつつ、情報処理装置14のプロセッサ18が実行する拍子設定処理について説明する。図6は、本実施形態において、プロセッサ18が実行する拍子設定処理のフローチャートである。情報処理装置14の電源が投入されると、プロセッサ18は、内部記憶装置20のいわゆるブートROMに記憶されている起動プログラムを実行し、メインメモリ22を初期化する。そして、外部記憶装置24等から各種プログラムや各種データをメインメモリ22にロードした後に、拍子設定プログラム221を読み込んで図6に示すフローチャートの処理を1フレーム(例えば1/60s)毎に実行する。
【0072】
ステップS11において、プロセッサ18は、楽曲の拍子を変える(すなわち、拍子データ225を更新する)必要があるか否かを判定する。具体的には、プロセッサ18は、ゲームプログラム220を実行することにより進行させているゲームの状況に基づいて、拍子データ225を更新するか否かを判定する。例えば、ゲームの状況が変化することに伴って、ゲームの音響効果として再生しているゲーム楽曲の拍子を変化させる必要がある場合には、拍子データ225を更新する必要があると判定する。この判定の結果がYESの場合、処理はステップS12に移り、NOの場合、処理は終了し、次のフレームにおいて、再び図6に示すフローチャートの処理が繰り返される。
【0073】
ステップS12において、プロセッサ18は、拍子データ225を更新する。具体的には、プロセッサ18は、ゲームの状況に応じて楽曲の拍子を適切な値に更新する。例えば、ゲーム空間において時がゆったりと流れる状況を演出したい場合には、プロセッサ18は、音響効果のためのゲーム楽曲の拍子データ225の値を、それまでの4拍子から3拍子に更新する。そして、処理は終了し、次のフレームにおいて、再び図6に示すフローチャートの処理が繰り返される。
【0074】
以上のように、プロセッサ18によって、ゲームの状況に応じて、ゲーム楽曲の拍子が適宜(1フレーム単位で)適切な値に更新される。このことにより、後述する判定プログラムが実行されるタイミングでは、拍子データ225は、ゲームの状況にふさわしい最新の値に更新されている。
【0075】
次に、上述した判定プログラム223が実行されることによって行われる判定処理の処理フローについて説明する。
【0076】
(判定処理の処理フロー)
図7を参照しつつ、情報処理装置14のプロセッサ18が実行する判定処理について説明する。図7は、本実施形態において、プロセッサ18が実行する判定処理のフローチャートである。情報処理装置14の電源が投入されて、メインメモリ22が初期化され、外部記憶装置24等から各種プログラムや各種データがメインメモリ22にロードされた後に、プロセッサ18は、判定プログラム223を読み込んで図7に示すフローチャートの処理を予め定められた周期(例えば、小節の第4拍目が再生される直前のタイミングで)で実行する。
【0077】
ステップS21において、プロセッサ18は、拍子データ225を参照して、現在設定されている楽曲が再生される際の拍子を取得する。その後、処理はステップS22に移る。
【0078】
ステップS22において、プロセッサ18は、次に再生される楽曲の拍の順番が、設定されている楽曲が再生される際の拍子の数よりも大きいか否かを判定する。具体的には、プロセッサ18は、楽曲再生プログラム222に基づいて次に再生される楽曲データの拍の順番n(つまり第n拍)と、ステップS21で取得した楽曲が再生される際の拍子の数Rとを比較して、次に再生される拍の順番が拍子の数よりも大きい(n>Rである)か否かを判定する。この判定の結果がYESの場合、処理はステップS23に移り、NOの場合は、処理は終了し、所定の周期で、再び図7に示すフローチャートの処理が繰り返される。
【0079】
ステップS23において、プロセッサ18は、楽曲再生プログラム222に基づいて次に再生されるゲーム楽曲の拍を次小節の第1拍目に決定する。具体的には、プロセッサ18は、楽曲再生プログラム222に基づいて後続のMIDIイベントを実行するのではなく(飛ばして)、楽曲再生プログラム222に基づいて次小節の第1拍目の再生に対応するMIDIイベントを実行することを決定する。そして、処理は終了し、所定の周期で、再び図7に示すフローチャートの処理が繰り返される。
【0080】
なお、上記した所定の周期は、例えば4拍子の楽曲データを3拍子でも再生する要望がある場合には、少なくとも第4拍目の再生の直前毎に定期的に繰り返し行うものとすればよい(図3(1)参照)。また、例えば4拍子の楽曲データを2拍子でも再生する要望がある場合には、少なくとも第3拍目の再生の直前と第4拍目の再生の直前毎に定期的に繰り返し行うものとすればよい(図3(2)参照)。さらに、同一の楽曲データを様々な拍子に再生することを可能にする要望がある場合には、毎拍の再生の直前に定期的に繰り返し行うものとしてもよい。
【0081】
以上のように、プロセッサ18によって、判定処理プログラムが、所定の周期で(例えば、小節の第4拍目が再生される直前のタイミング毎に)実行されることにより、ゲーム状況にふさわしい最新のゲーム楽曲の拍子の数と、次に再生される拍の順番が比較された結果、次に再生する拍をそのまま再生するか、次小節の第1拍目を再生する(すなわち、現在再生中の小節において、次に再生する拍以降の部分を再生せずに、次小節の第1拍目を再生する)かが決定される。このことにより、楽曲データの小節の途中の拍が再生中であっても、リアルタイムに拍子の切り替えを行うことができる。
【0082】
以上に説明したように、本実施形態では、判定処理プログラムが適切なタイミングで繰り返し実行されることで、楽曲が再生される際の拍子の変化に応じて、所定の拍が飛ばされて再生されることにより、同一の楽曲データでありながら拍子の異なる楽曲が再生される。
【0083】
なお、同一の楽曲データの拍子を変える場合に、その拍子が変更される際の楽曲の変化を滑らかにするために、以下のような方法がある。例えば、4拍子の楽曲データを3拍子で再生する場合、小節内の第4拍目が飛ばされて再生されることになるが、この第4拍目が飛ばされて再生される前後において、直前(小節内の第3拍目)の音符の長さを維持して再生する方法や、直前(小節内の第3拍目)の音符の長さは、直後(次小節内の第1拍目)の音符に跨らない長さとし、直後(次小節の第1拍目)の音符を再生する方法や、直後(次小節の第1拍目)の音符は休符でない場合のみ再生する方法などがある。
【0084】
また、楽曲の拍子が変更される際に、楽曲データの小節間の繋がりをより滑らかにする方法として、上記した方法以外に、各拍子専用に小節間の繋がりが滑らかになるように予め音符が調整された拍子専用トラックを用意しておくという方法がある。以下に、この拍子専用トラックを用意しておく場合の変形例について説明する。
【0085】
(変形例)
図8、図9を参照しつつ、楽曲が再生される際の拍子が4拍子から3拍子に切り替わる際の拍子専用トラックの一例について説明する。変形例における楽曲データは、後述する通常専用トラックと切り替え再生用トラックからなる。図8は、通常再生用トラックと切り替え再生用トラックが再生されたときの譜例を示す図であり、図9は、拍子が変更される場合の通常再生用トラックと切り替え再生用トラックの一例を示す模式図である。
【0086】
ここで、通常再生用トラックとは、4拍子の1トラックの楽曲データであり、4拍子用の拍子専用トラックとして機能する。また、切り替え再生用トラックとは、4拍子の1トラックの楽曲データであり、3拍子用の拍子専用トラックとして機能する。これらのトラックの特徴を、図8を参照しつつ説明する。図8の譜例Aは、通常再生用トラックの楽曲データ(MIDIデータ)が実際に再生された場合の譜例を示し、図8の譜例Bは、切り替え再生用トラックの楽曲データ(MIDIデータ)が実際に再生された場合の譜例を示す。
【0087】
図8の譜例Bからわかるように、切り替え再生用トラックは、1小節が4拍子の楽曲データであり、4拍目の音符が休符となっている。また、切り替え再生用トラックが再生された場合の譜例Bは、通常再生用トラックが再生された場合の譜例Aと比べて、4拍目が再生されない場合の小節間の繋がりが滑らかになるように、通常再生用トラックの音符に基づいて予め音符が調整されている。例えば、図9に示すように、第1小節の第3拍目の音符の長さが、通常再生用トラックでは1.5拍(譜例A参照)であるのに対し、切り替え用再生トラックの第1小節の第3拍目の音符の長さは、1拍(譜例B参照)に調整されている。すなわち、切り替え再生用トラックは、通常再生用トラックの旋律を維持しながら、3拍子で再生された際に(4拍目が飛ばされて再生された際に)、小節間の繋がりがより滑らかになるように調整されたトラックである。このことにより、第4拍目の音符が再生されない場合には、切り替え再生用トラックは、通常再生用トラックに比べて、小節間のつながりがより滑らかになる。なお、上記では、切り替え再生用トラックにおいて、第4拍目のデータは休符データとしたが、第4拍目のデータは、飛ばされて再生されるので、休符以外の音符データであってもよい。
【0088】
通常再生用トラックと、切り替え再生用トラックは、楽曲再生プログラムによって、並行して、それぞれのMIDIデータに含まれる各種MIDIイベントが先頭から順番に実行される。このことにより、それぞれのトラックは、同じ小節、拍の順に同期を取って再生される。ただし、楽曲が再生される際の拍子が4拍子に設定されるとき、通常再生用トラックは有音で再生されるが、切り替え再生用トラックは無音で再生される。したがって、拍子が4拍子であるときには、ゲームプレイヤには、通常再生用トラックの音声しか聞こえない。そして、ゲームの状況の変化に応じて4拍子の楽曲データを3拍子で再生させる必要が生じたときには、通常再生用トラックは無音で再生され、切り替え再生用トラックが有音で再生される。
【0089】
すなわち、通常再生用トラックと、切り替え再生用トラックは、同時に並行して再生されているが、ゲームの状況の変化に応じて、一方のみが有音で再生される。
【0090】
この場合、上記した判定プログラムは、同じタイミングで通常再生用トラックと、切り替え再生用トラックに対して同時に実行される。より具体的には、前述したように、通常再生用トラックと切り替え再生用トラックは、小節、拍の順に同期が取られて再生されているので、判定プログラムが、各トラックにおいて同一の拍が再生される直前に実行されることにより、判定プログラムも両トラック間で同期を取って実行される。例えば、図9の(1)に示すように、通常再生用トラックと切り替え再生用トラックで構成される4拍子の楽曲データが、3拍子(R=3)で再生される際には、それぞれのトラックにおいて、少なくとも第4拍目(n=4)の再生の直前に判定プログラムが実行される。
【0091】
そして、判定プログラムが実行された結果、各トラックにおいてn>Rと判定されるので、トラックごとに、次小節の第1拍目が再生されることが決定され、各トラックの次小節の第1拍目が同じタイミングで再生される。そして、4拍子の楽曲データが3拍子で再生される際には、通常再生用トラックは無音で再生され、切り替え再生用トラックが有音で再生されている(図9の(2)参照)。このため、ゲームプレイヤには、切り替え再生用トラックの第4拍目が再生されない楽曲が聞こえるので、通常再生用トラックの第4拍目が再生されない楽曲が聞こえるときよりも、小節間の繋がりが滑らかに聞こえる。また、切り替え再生専用トラックも、通常再生用トラックもどちらも、第4拍目が再生されないで(第4拍目が飛ばされて)楽曲が再生されていくので、両方のトラックの小節、拍の順番にずれが生じることがない。このため、3拍子で再生されていた楽曲が再び4拍子に戻された場合には、通常再生用トラックが有音で再生され、切り替え再生用トラックが無音で再生されるが、ずれることなく4拍子の通常再生用トラックの楽曲が聞こえる。
【0092】
(拍子設定処理の変形例)
次に、図10を参照しつつ、情報処理装置14のプロセッサ18が実行する拍子設定処理の変形例について説明する。図10において、図6を用いて説明した拍子設定処理のフローチャートの処理と同一の処理には同一の参照番号を付して、その説明は簡略化する。
【0093】
情報処理装置14の電源が投入されて、メインメモリ22が初期化され、外部記憶装置24等から各種プログラムや各種データがメインメモリ22にロードされた後に、プロセッサ18は、拍子設定プログラム221を読み込んで図10に示すフローチャートの処理を1フレーム(例えば1/60s)毎に実行する。また、同時に、プロセッサ18は、楽曲再生プログラム222を読み込んで、通常再生(例えば、4拍子再生)用のトラックを有音で再生し、切り替え再生(例えば、3拍子再生)用のトラックを無音で再生する。
【0094】
ステップS11において、プロセッサ18は、楽曲の拍子を変える必要がないと判定した場合には、処理を終了し、拍子を変える必要があると判定した場合には、処理はステップS12に移り、プロセッサ18が拍子データ225を適切な値に更新した後、処理はステップS33に移る。
【0095】
ステップS33において、プロセッサ18は、切り替え再生用のトラックを無音再生から有音再生に切り替える。その後、処理はステップS34に移る。
【0096】
ステップS34において、プロセッサ18は、不必要なトラックが有音再生中でないか否かを判定する。具体的には、通常再生用のトラックが有音再生中でないかを判定する。この判定結果がYESの場合、処理はステップS35に移り、NOの場合、処理は終了する。
【0097】
ステップS35において、プロセッサ18は、不必要なトラックを無音再生に切り替える。具体的には、通常再生用のトラックを無音再生に切り替え、処理を終了する。
【0098】
なお、上記ステップS33〜S35において行われる通常再生用トラックと、切り替え再生用トラックの有音/無音の切り替えは、再生音量をクロスフェードで切り替えることにより行われることが好ましい。
【0099】
(その他の変形例)
なお、上記実施形態では、楽曲再生プログラムと判定プログラムとは、別のプログラムであり、判定プログラムは、楽曲再生プログラムの実行中に定期的に実行されるものとしたが、判定プログラムが楽曲再生プログラムの一部として埋め込まれていてもよい。すなわち、楽曲再生プログラムが、MIDIイベントを処理すると共に、MIDIイベントの間に所定の間隔で埋め込まれた判定処理(判定コマンド)を実行するものとしてもよい。例えば、MIDIデータの各小節の第3拍目の最初のMIDIイベントの直前に「Rが3未満であれば次の小節の先頭のMIDIイベントへジャンプする」というコマンドを挿入するとともに、各小節の第4拍目の最初のMIDIイベントの直前に「Rが4未満であれば次の小節の先頭のMIDIイベントへジャンプする」というコマンドを挿入しておき、楽曲再生プログラムが当該コマンドに従ってMIDIデータを再生するようにしてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、ゲームの場面や状況の変化に合わせて、ゲーム楽曲が再生される際の拍子を変化させることで、ゲームの臨場感をより高めるものとした。しかし、これに限らず、例えば、ゲームプレイヤ(ユーザ)による操作に基づいて、ゲーム楽曲が再生される際の拍子を変化させてもよい。具体的には、ゲームプレイヤは、操作装置12を用いて、ゲーム世界におけるプレイヤキャラクタを操作する。このとき、ゲーム世界における複数のエリアに互いに異なる拍子が関連付けられており、ゲームプレイヤの操作に応じてプレイヤキャラクタがエリア間を移動するときに、再生中のゲーム楽曲の拍子が変化するものとしてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、ゲームの場面や状況の変化に応じて、ゲーム楽曲が再生される際の拍子が変化するものとしたが、これに加えてゲーム楽曲が再生される際の音色やテンポ等が変化するものとしてもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、ゲーム楽曲のデータはMIDIデータであるものとした。しかし、これに代え、あるいはこれとの組み合わせで、ゲーム楽曲のデータとして波形データを用いてもよい。この場合、波形データは、時間と周波数の関係を規定するデータであるので、楽曲の小節、拍の順序は、時間をカウントすることによって算出される。そして、この時間情報を基に、所定のタイミングで(例えば、第4拍目の再生の直前に)判定処理プログラムが実行される。
【0103】
また、上記変形例では、楽曲データは、通常再生用トラックと、切り替え再生用トラックとからなり、これらのトラックのいずれか一方が有音で再生されるものとしたが、これに加えて、拍子の変更に限らず常に再生される常時再生用トラックを有していてもよい。この場合、例えば、常時再生用トラックには、拍子の変更に左右されない単調な曲調が選択されることが好ましい。
【0104】
また、上記変形例では、楽曲データが、通常再生用トラック(4拍子用の拍子専用トラック)と、当該トラックの音符に基づいて予め音符が調整された切り替え対象トラック(3拍子用の拍子専用トラック)との1組のトラックからなる場合について説明した。しかし、楽曲データは、4拍子用の拍子専用の複数のトラックと、当該複数のそれぞれのトラックの音符に基づいて予め音符が調整された3拍子用の複数の拍子専用トラックとから構成されてもよい。
【0105】
また、上記実施形態は、本発明を情報処理システムの一例であるゲームシステムに適用したものであるが、他の情報処理システムや情報処理装置にも適用可能である。例えば、パーソナルコンピュータや、楽曲演奏装置等のように、楽曲データを扱う情報処理装置にも本発明の適用は可能である。
【0106】
また、上記実施形態では、1つの情報処理装置14で上述した処理を実行しているが、有線又は無線で通信可能な複数の装置で上記処理を分担してもよい。
【0107】
また、上記実施形態において、情報処理装置14の形状や、その構成要素等は、単なる一例に過ぎず他の形状、構成要素を有していても、本発明を実現できることは言うまでもない。また、上述した情報処理で用いられる処理順序、設定値、判定に用いられる値等は、単なる一例に過ぎず、本発明の範囲を逸脱しなければ他の順序や値であっても、本発明を実現できることは言うまでもない。
【0108】
また、上記実施形態の情報処理装置14において実行される各種情報処理プログラムは、メインメモリ22等の記憶媒体を通じて情報処理装置14に供給されるだけでなく、有線又は無線の通信回線を通じて情報処理装置14に供給されてもよい。また、上記プログラムは、情報処理装置14内部の不揮発性の記憶装置に予め記録されていてもよい。なお、上記プログラムを記憶する情報記憶媒体としては、不揮発性メモリの他に、CD−ROM、DVD、或いはそれらに類する光学式ディスク状記憶媒体、フレキシブルディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、磁気テープ等であってもよい。また、上記プログラムを記憶する情報記憶媒体としては、上記プログラムを一時的に記憶する揮発性メモリでもよい。
【0109】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、上述の説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0110】
10 ゲームシステム
12 操作装置
14 情報処理装置
16 表示装置
17 スピーカ
18 プロセッサ
20 内部記憶装置
22 メインメモリ
24 外部記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のトラックからなる楽曲を再生する情報処理装置のコンピュータにおいて実行される情報処理プログラムであって、
前記コンピュータを、
前記楽曲を再生する再生手段と、
前記再生手段で前記楽曲を再生中に拍子を変更する拍子変更手段と、
前記変更された拍子に基づいて、現在再生中の前記楽曲の小節内で次に再生する拍を前記再生手段に再生させるか否かを繰り返し判定する判定手段として機能させ、
前記再生手段は、前記判定手段による判定結果に基づいて前記楽曲を再生する、情報処理プログラム。
【請求項2】
前記楽曲には、第1の拍子用トラックと第2の拍子用トラックとが含まれ、
前記再生手段は、
前記拍子変更手段によって変更された前記拍子が第1の拍子であるとき、前記第1の拍子用トラックを有音で再生するとともに、前記第2の拍子用トラックを無音で再生し、
前記拍子変更手段によって変更された前記拍子が前記第1の拍子とは異なる第2の拍子であるとき、前記第1の拍子用トラックを無音で再生するとともに、前記第2の拍子用トラックを有音で再生する、請求項1に記載の情報処理プログラム。
【請求項3】
前記第2の拍子用トラックは、前記第1の拍子用トラックと同一の旋律を、前記第2の拍子向けに調整することによって生成されたトラックである、請求項2に記載の情報処理プログラム。
【請求項4】
前記第1の拍子は、前記第2の拍子よりも大きい、請求項2または3に記載の情報処理プログラム。
【請求項5】
前記再生手段は、
前記判定手段による判定結果が否定である場合には、前記次に再生する拍を再生せず、
前記判定手段による判定結果が肯定である場合には、前記次に再生する拍をそのまま再生する、請求項1から4のいずれかに記載の情報処理プログラム。
【請求項6】
前記判定手段は、
小節内での次に再生する拍の順番が、前記拍子変更手段によって変更された拍子の数以下である場合には、当該次に再生する拍を前記再生手段にそのまま再生させる、と判定し、
小節内での次に再生する拍の順番が、前記拍子変更手段によって変更された拍子の数よりも大きい場合には、当該次に再生する拍を前記再生手段に再生させない、と判定する、請求項1から5のいずれかに記載の情報処理プログラム。
【請求項7】
前記再生手段は、前記判定手段による判定結果が否定である場合には、次の小節の第1拍目の再生を開始する、請求項6に記載の情報処理プログラム。
【請求項8】
前記判定手段は、所定の間隔で繰り返し判定する請求項1から7のいずれかに記載の情報処理プログラム。
【請求項9】
前記所定の間隔は、拍の間隔もしくは当該拍の間隔よりも短い間隔である請求項8に記載の情報処理プログラム。
【請求項10】
前記再生手段は、前記拍子変更手段によって前記拍子が前記第1の拍子と前記第2の拍子との間で切り替えられると、前記第1の拍子用トラックと前記第2の拍子用トラックの有音/無音の切り替えをクロスフェードで切り替える、請求項2から4のいずれかに記載の情報処理プログラム。
【請求項11】
前記コンピュータを、ユーザからの入力を受け付ける入力受付手段としてさらに機能させ、
前記拍子変更手段は、前記入力受付手段が受け付けたユーザからの入力に基づいて、前記楽曲データを再生させる際の拍子を変更する、請求項1から10のいずれかに記載の情報処理プログラム。
【請求項12】
前記入力受付手段が受け付けたユーザからの入力は、前記楽曲データを再生する際の拍子を変更する処理以外の処理に用いられる、請求項11に記載の情報処理プログラム。
【請求項13】
1又は複数のトラックからなる楽曲を再生する情報処理装置であって、
前記楽曲を再生する再生手段と、
前記再生手段で前記楽曲を再生中に拍子を変更する拍子変更手段と、
前記変更された拍子に基づいて、現在再生中の前記楽曲の小節内で次に再生する拍を前記再生手段に再生させるか否かを繰り返し判定する判定手段とを備え、
前記再生手段は、前記判定手段による判定結果に基づいて前記楽曲を再生する、情報処理装置。
【請求項14】
1又は複数のトラックからなる楽曲を再生する情報処理システムであって、
前記楽曲を再生する再生手段と、
前記再生手段で前記楽曲を再生中に拍子を変更する拍子変更手段と、
前記変更された拍子に基づいて、現在再生中の前記楽曲の小節内で次に再生する拍を前記再生手段に再生させるか否かを繰り返し判定する判定手段とを備え、
前記再生手段は、前記判定手段による判定結果に基づいて前記楽曲を再生する、情報処理システム。
【請求項15】
1又は複数のトラックからなる楽曲を再生する情報処理方法であって、
前記楽曲を再生する再生ステップと、
前記再生ステップで前記楽曲を再生中に拍子を変更する拍子変更ステップと、
前記変更された拍子に基づいて、現在再生中の前記楽曲の小節内で次に再生する拍を前記再生ステップで再生するか否かを繰り返し判定する判定ステップとを備え、
前記再生ステップでは、前記判定ステップでの判定結果に基づいて前記楽曲を再生する、情報処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−105085(P2013−105085A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249778(P2011−249778)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000233778)任天堂株式会社 (1,115)
【Fターム(参考)】