説明

情報処理装置、及びその制御方法

【課題】 導体の電気伝導、気中放電、物体の運動、トナー粒子の運動、トナー粒子への放電、転写媒体の変形といった転写特性に影響を与えるすべての因子を正確に考慮して、電子写真プロセスの解析を行うための技術を提供すること。
【解決手段】 力学モデルを作成した後、媒体受力計算部192がその力学モデルに作用する力を算出し、媒体変形計算部193が力学モデルと作用する力とから媒体の変形形状を計算し、電界計算モデル更新部194が、得られた媒体の変形結果を分割メッシュの媒体部分の分割に反映させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真プロセスにおける物理現象をシミュレートすべく、計算処理を行うための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、ファクシミリ等の電子写真技術を用いた画像形成装置は、帯電、露光、現像、転写、クリーニングという5つのプロセスから構成される。このうち転写プロセスでは、像担持体上に形成されるトナー像を転写媒体に転写する。高解像度の画像を得るためには、トナー像を転写媒体に転写する際のトナーの飛び散りを抑えながら転写効率を上げることが重要課題である。そのためには、像担持体(感光体ドラム)、転写媒体、トナー、転写条件といった各種パラメータを最適化することが重要となる。
【0003】
図10は、転写装置を感光体の軸方向から見たときの模式図である。転写領域において転写用紙273と感光体ドラム272が左から右に移動している。270は負に帯電したトナーである。感光体ドラム272の基板を接地して、転写ローラ271の芯金50に正の電圧を印加する。これによって感光体ドラム272と転写ローラ271との間に電界が形成され、トナー270は転写用紙に転写される。
【0004】
転写プロセスにおける各種パラメータを最適化するため、近年では、試作機等による実験だけではなく、計算機を用いた解析も行われるようになっている。例えば、導体中を流れる電流、放電、及び物体の運動を考慮して、転写装置の電位分布を求める方法及び装置が開示されている(特許文献1を参照)。
【0005】
これによれば、2次元の解析領域をまず複数の小さなセルに分割する。そしてポアソンの方程式を基に差分法を用いて各セルの電位を算出する。得られた電位分布から感光体ドラム、中間転写ベルト等の表面移動に伴う電荷の移動を、またオームの法則に基づいて抵抗による電荷の移動を算出する。次に電荷が移動した後の各セルの電位を算出して、その電位分布からパッシェンの放電則及びコンデンサの理論から放電による電荷の移動を算出する。以上の工程のうち、セル分割から後の工程を、電位分布が安定するまで繰り返すことにより転写電界を求めるというものである。
【0006】
一方、転写性能を評価するために、個々のトナー粒子の挙動の様子を知ることは極めて重要である。転写部分ではないが、紙搬送転写ベルト上の紙の上のトナーに関して、剥離放電による電界の乱れに起因するトナーの飛び散りを計算したものが報告されている(非特許文献1)。
【0007】
また転写時における転写用紙の変形が転写特性に大きく影響を与えることが知られている。転写用紙の物性と紙搬送ガイドの配置から構造解析を行うことで用紙の変形を求め、それを上記発明のセル分割モデルに反映させて転写電界を求めたものが報告されている(非特許文献2)。
【特許文献1】特開2003−262617号公報
【非特許文献1】「門永他、”電子写真方式での紙搬送転写ベルトシステムにおける剥離放電の研究”、日本機会学会[No01-251]、第13回電磁力関連のダイナミクスシンポジウム講演論文集、pp469(2001)」
【非特許文献2】「羽山他、”紙搬送姿勢を考慮した転写部電界シミュレーション”、日本画像学会 Japan Hardcopy2000論文集、B23,pp261(2000)」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
転写時における転写用紙の変形は、転写用紙の物性、紙搬送ガイドの配置のみならず、転写電界の影響を大きく受けることが知られている。しかし上記従来技術では、転写電界の影響を考慮できないため、実際の用紙の変形と大きく食い違っていた。また更に実際には転写用紙にトナーが乗った状態での用紙の変形を評価する必要があるが、トナーの挙動と転写用紙の変形とを同時に考慮することはできなかった。
【0009】
場と物質の変形を計算で求めたものとしては、例えば電磁モータ解析がある。正確には物質の変形ではないが、モータの回転と場の変化を連成させて解くことで、モータの回転挙動を計算によって求めている。また流体の分野でも、流れ場に柔軟体があるときの、柔軟体の挙動が計算で求められている。しかしこれらの分野における場には、ここでいう電荷のように、湧き出し部が場によって移動するということはない。従ってこれらの技術を応用して本問題を解決することはできない。
【0010】
本発明は、以上の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、導体の電気伝導、気中放電、物体の運動、トナー粒子の運動、トナー粒子への放電、転写媒体の変形といった転写特性に影響を与えるすべての因子を正確に考慮して、電子写真プロセスの解析を行うための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的を達成するために、例えば、本発明の情報処理装置は以下の構成を備える。
【0012】
即ち、電子写真プロセスにおける転写プロセスの物理現象をシミュレーションすべく、計算処理を行う情報処理装置であって、
分割メッシュ中の転写媒体の形状と連動する力学モデルを生成する媒体力学モデル作成手段と、
電界強度分布と、転写媒体中の電荷量を基に算出した静電気力を含む、媒体に作用する力を求める媒体受力計算手段と、
前記力学モデルと媒体に作用する力とを用いて、転写媒体の変形を計算する媒体変形計算手段と、
計算された媒体の変形結果を用いて電界計算用の分割メッシュを変更する、電界計算モデル更新手段を備え、
前記媒体力学モデル作成手段が転写媒体の変形計算を行うための力学モデルを作成した後、前記媒体受力計算手段が、その力学モデルに作用する力を算出し、前記媒体変形計算手段が、力学モデルと作用する力とから媒体の変形形状を計算し、前記電界計算モデル更新手段が、得られた媒体の変形結果を分割メッシュの媒体部分の分割に反映させることを特徴とする。
【0013】
本発明の目的を達成するために、例えば、本発明の情報処理装置の制御方法は以下の構成を備える。
【0014】
即ち、電子写真プロセスにおける転写プロセスの物理現象をシミュレーションすべく、計算処理を行う情報処理装置の制御方法であって、
分割メッシュ中の転写媒体の形状と連動する力学モデルを生成する媒体力学モデル作成工程と、
電界強度分布と、転写媒体中の電荷量を基に算出した静電気力を含む、媒体に作用する力を求める媒体受力計算工程と、
前記力学モデルと媒体に作用する力とを用いて、転写媒体の変形を計算する媒体変形計算工程と、
計算された媒体の変形結果を用いて電界計算用の分割メッシュを変更する、電界計算モデル更新工程を備え、
前記媒体力学モデル作成工程で転写媒体の変形計算を行うための力学モデルを作成した後、前記媒体受力計算工程で、その力学モデルに作用する力を算出し、前記媒体変形計算工程で、力学モデルと作用する力とから媒体の変形形状を計算し、前記電界計算モデル更新工程で、得られた媒体の変形結果を分割メッシュの媒体部分の分割に反映させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の構成により、導体の電気伝導、気中放電、物体の運動、トナー粒子の運動、トナー粒子への放電、転写媒体の変形といった転写特性に影響を与えるすべての因子を正確に考慮して、電子写真プロセスの解析を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下添付図面を参照して、本発明を好適な実施形態に従って詳細に説明する。
【0017】
先ず、以下の各実施形態に共通する部分について説明する。。
【0018】
図2は、以下説明する解析処理を実行する情報処理装置として機能するコンピュータを含むシステムの機能構成を示すブロック図である。同図に示す如く、システムは、入力データ作成部11、転写計算部12、結果表示部13を備える。
【0019】
入力データ作成部11は、以下の実施形態で行う解析に必要なメッシュデータ、及び各種パラメータのデータファイルを作成するためのものである。
【0020】
メッシュデータは、差分メッシュ、有限要素メッシュ等、電界計算を行う手法に応じて、誘電体もしくは抵抗体からなる転写装置の解析領域を微小領域に分割したデータである。
【0021】
各種パラメータには、材料の誘電率、導電率、電荷分布、境界条件としての電位、移動する物体の速度、電荷の蓄積する可能性のある面(電荷面と呼ぶ)の指定、放電の起こる面の指定、トナーの径、トナーの初期配置、トナーの帯電量、トナーの誘電率、転写媒体の比重、転写媒体のヤング率、転写媒体のガイド位置、転写媒体の両端部における張力、更に計算刻み時間、計算終了時刻がある。
【0022】
転写計算部12は、オームの法則、ポアソンの方程式、パッシェンの放電則、ニュートンの運動方程式を基に、計算領域の電位分布、電荷量分布、トナーの挙動、トナーの電荷分布、放電分布、転写媒体の変形を算出し、その結果データをファイルに出力するものである。
【0023】
結果表示部13は、電界計算部12で出力した結果ファイルを読み込んで、画像や文字などでもって表示するものである。結果表示部13は例えばCRTや液晶画面などにより構成されている。
【0024】
図3は、上記転写計算部12として機能するコンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。なお、このような構成を備えるコンピュータであれば、例えば、一般のPC(パーソナルコンピュータ)やWS(ワークステーション)等を用いても良い。同図に示す如く、コンピュータ20はCPU21、RAM23、ROM22、I/O24でもって構成されている。
【0025】
CPU21は本コンピュータ20全体の制御を行うと共に、コンピュータ20が行う後述の各処理を実行する。ROM22にはコンピュータ20の設定データやブートプログラムなどが格納されている。RAM23は、I/O24を介して入力される入力データ30を一時的に記憶するためのエリア、CPU21が各種の処理を実行する際に用いるワークエリアを備える。また、CPU21による処理結果は、出力データ31としてRAM23上に生成され、I/O24を介して外部に出力する。
【0026】
コンピュータ20は、I/O24を介して入力データを受けると、CPU21はこれを検知してRAM23に一時的に記憶させる。そしてこのデータを用いて後述する解析処理を行い、処理結果を出力データ31としてRAM23に一時的に記憶させる。そしてこれをI/O24を介して外部の装置に出力する。
【0027】
図1は、CPU21の機能構成を示すブロック図である。
100は転写プロセスの解析を行うために全体を制御する全体制御部であり、これから説明する入力データ入力部110、導体中電荷移動考慮部150、放電考慮部160、トナー挙動考慮部170、物体運動考慮部180、媒体変形考慮部190、計算結果出力部200を制御する。
【0028】
入力データ入力部110は、上述の入力データ作成部11にて作成されたメッシュデータ、及び各種パラメータを読み込んでRAM23に格納する。なお、これらのデータをRAM23に取得する方法については特に限定しないが、例えば、ハードディスクにこれらのデータが保存されている場合には、入力データ入力部110はこれらのデータをI/O24を介してRAM23に取得するし、ネットワークに接続された装置内にこれらのデータが保存されている場合には、この装置からこれらのデータをRAM23にダウンロードする。
【0029】
導体中電荷移動考慮部150は、導体中の電荷移動をオームの法則に従って算出する。より詳しくは先ず、電荷分布、電位の境界条件を用いて以下の式(1)に示すポアソン方程式を解いて電位分布を求める。
【0030】
【数1】

【0031】
そして、得られた電位分布をオームの法則及び電荷保存則である式(2)に代入して、各位置における電荷の変化量を算出し、その値を更新する。更に得られた電荷分布を用いて再び数(1)のポアソン方程式を解いて、導体中を電荷が移動した後の電位分布を求める。
【0032】
【数2】

【0033】
放電考慮部160は、放電の発生を判定して、放電による電荷の移動、及び放電後の電位分布を算出するものである。ここでトナーに放電が発生した場合は、トナーの電荷量の変化させる。
【0034】
トナー挙動考慮部170であり、静電気力、重力、付着力、空気抵抗力等のトナーに働く力を基に、ニュートンの運動方程式を解いて、トナー位置を計算刻み時間後の位置に更新するものである。
【0035】
物体運動考慮部180は、物体の運動を模擬するために、運動物体の電荷を移動させる。
【0036】
媒体変形考慮部190は、静電気力、重力、物体との接触力等、転写媒体に働く力を考慮して、その変形を算出するものである。同図に示す如く、媒体変形考慮部190は、媒体力学モデル作成部191、媒体受力計算部192、媒体変形計算部193、電界計算モデル更新部194、トナー位置更新部195を備える。
【0037】
媒体力学モデル作成部191は、メッシュデータ及び媒体のヤング率、比重、厚みデータから媒体変形に関する構造解析を行うための媒体力学モデルを作成し、RAM23に登録する。
【0038】
媒体受力計算部192は、媒体力学モデル作成部191が作成した媒体力学モデルに対して働く静電気力、重力を算出し、RAM23に登録する。なお転写媒体がトナーを担持している場合には、そのトナーの電荷も媒体の持つ電荷の一部とみなし、静電気力を計算する。
【0039】
媒体変形計算部193は、RAM23に登録された媒体力学モデル、媒体力学モデルに働く力、及び、ガイド位置、両端部における張力を基に媒体の変形を算出する。
【0040】
電界計算モデル更新部194は、メッシュデータの媒体部分を、得られた媒体力学モデルの変形結果に合うように更新する。
【0041】
トナー位置更新部195は、媒体力学モデルの変形に従って、トナーの位置を更新する。
【0042】
計算結果出力部200は、得られた計算領域の電位分布、電荷量分布、トナーの挙動、トナーの電荷分布、放電分布、転写媒体の変形等の結果を出力データ31として出力する。
【0043】
上記各部は実際にはプログラムの形態でもってRAM23に格納されており、CPU21がこのプログラムを実行することで、上記各部の機能が実現される。
【0044】
次に、コンピュータ20が行う計算処理について、同処理のフローチャートを示す図4を用いて説明する。
【0045】
先ず、CPU21は、入力データ入力部110として機能し、I/O24を介して入力された入力データ30をRAM23に取得する(ステップS100)。なお、本ステップでは、感光体ドラムにおける潜像等、初期電荷分布の設定や、トナーの初期位置配置も同時に行う。
【0046】
次に、CPU21は、媒体力学モデル作成部191として機能し、媒体変形構造解析用の媒体力学モデルを作成する(ステップS101)。
【0047】
次に、CPU21は、導体中電荷移動考慮部150として機能し、ステップS100でRAM23に取得したデータのうち、誘電率分布、電荷分布を用いて、導体中電荷移動考慮を行う(ステップS302)。
【0048】
次に、CPU21は、放電考慮部160として機能し、放電発生後の電位、電荷分布を求めるとともに、各トナーの電荷分布を更新する(ステップS402)。
【0049】
次に、CPU21は、トナー挙動考慮部170として機能し、トナーの位置を計算刻み時間後のものに更新する(ステップS500)。
【0050】
次に、CPU21は、物体運動考慮部180として機能し、物体運動考慮を行い、物体の運動に伴う電荷の移動を行う(ステップS600)。
【0051】
そして以降の処理は、転写媒体の変形の計算に関する一連の処理である。先ず、CPU21は、媒体受力計算部192として機能し、媒体受力計算を行い(ステップS700)、その後、CPU21は媒体変形計算部193として機能し、媒体変形計算を行う(ステップS701)。
【0052】
そしてCPU21は電界計算モデル更新部194として機能し、得られた転写媒体の変形結果を基に、電界計算モデル更新を行い(ステップS702)、更に今度はCPU21はトナー位置更新部195として機能し、トナー位置更新を行う(ステップS703)。
【0053】
ここで、時間が計算終了時間に満たない場合は処理をステップS800を介してステップS801に進め、時間を更新してステップS302以降の処理を繰り返す。一方、計算終了時間であれば(変数tが示す値が、予め決められた計算終了時間に一致する場合には)、処理をステップS800を介してステップS900に進め、CPU21は計算結果出力部200として機能し、上記計算結果を結果表示部13に出力する(ステップS900)。
【0054】
なお、ここで説明した処理の流れは、一例を示したものであり、その順序に厳格にこだわる必要はない。
【0055】
[第1の実施形態]
本実施形態では、電界計算を行う手法として有限要素法を採用した際の一例について説明する。上記式(1)に示したポアソン方程式を有限要素法で解く場合、電位Φ、及び電荷Qは節点の値として、また誘電率ε、導電率σは要素の値として定義される。なおここでは2次元解析に限定して説明を行う。
【0056】
次に、図1に示した各部に本実施形態に係る計算処理を行わせた場合の各部の動作について説明する。
【0057】
先ず、導体中電荷移動考慮部150について説明する。以下の式(3)は上記式(1)に示したポアソン方程式を有限要素法により離散化して得られる、全解析領域で成立する連立一次方程式である。本方程式は全体節点第1方程式と呼ばれるものであり、nは節点数、左辺の[K]は係数行列、右辺の{Q}は各節点の電荷ベクトルである。まずは与えられた境界条件の基で式(3)の方程式を解くことにより、各節点の電位{Φ}を得る。
【0058】
【数3】

【0059】
一方、上記式(2)の左辺は、上記式(1)の左辺の誘電率εを導電率σにおきかえたものに他ならない。そこで次に、式(3)を作成する際のεの代わりにσを用いて得られる以下に示す式(4)に、式(3)で得られた電位分布{Φ}を代入することにより、各節点の電荷の変化量を求める。
【0060】
【数4】

【0061】
なお式(4)の行列[L]は式(3)の行列[K]の作成過程で、εの代わりにσを用いて得られる行列である。各節点の電荷を式(4)で得られた{∂Q/∂t}で更新し、それを使用して再び式(3)を解くことで、導体を電荷が移動した後の電位分布を得る。
【0062】
次に、放電考慮部160について説明する。放電考慮部160は、ステップS302で得られた各節点の電位を基に、解析者から指定された放電の起こる可能性のある2つの面の節点に対して、その節点間での電位差と距離からパッシェンの放電則に基づいて放電発生の有無を判定する。
【0063】
そして、放電が発生すると判定された節点の組に対して、パッシェン電圧を上回っている分だけ電荷を移動させる。例えば2つの面上の節点をそれぞれi、jとし、両者間で放電が発生すると判定されたとする。放電節点の組i、jについて、放電前の電荷量をそれぞれQi、Qjとし、放電により節点iから節点jに電荷がΔQijだけ移動することで2節点間の電位差がパッシェン電圧Vpa(ij)になるものとする。
【0064】
放電後の節点i、jの電位Φi’、Φj’が以下の式(5)、電荷量Qi’、Qj’が以下の式(6)を満たすように、式(3)と連立させて解くことで、放電後の電位分布、及び両節点間での電荷の移動量を求める。
【0065】
【数5】

【0066】
【数6】

【0067】
次に、トナー挙動考慮部170について説明する。トナーとしては、上記電界計算に使用した有限要素法の分割モデルとは独立な、球状の物体を想定する。トナー挙動考慮部170は、トナーに働く静電気力、重力、付着力、空気抵抗力を考慮することにより、トナー位置を、計算刻み時間後の位置に更新する。
【0068】
時間tにおいてトナーが受ける静電気力Fe(t)は、以下の式(7)で求まる。
【0069】
【数7】

【0070】
ここでQ(t)、E(t)はそれぞれ、時間tにおけるトナーの電荷量、トナー中心位置における電界強度である。ここで電界強度は放電計算で得られた、放電後の電位分布から算出されるもの(−gradΦ)である。
【0071】
トナーが受ける静電気力Fe(t)に重力、付着力、空気抵抗力等を加えた、トナーに働く力の総和をF(t)とする。時間tにおけるトナーの速度をv(t)とするとき、ニュートンの運動方程式から、計算刻み時間(dt)後のトナーの位置x(t+dt)は以下の式(8)で求まる。
【0072】
【数8】

【0073】
なお、v(t+dt)は計算刻み時間後の速度であり、mはトナーの重量である。
【0074】
式(7)、(8)を用いてトナーの挙動を計算できるが、その具体的な手法としては、運動量保存則と跳ね返りの関係式を用いた剛体球モデルと呼ばれている方法と、個別要素法に代表される軟体球モデルと呼ばれている方法がある、ここではそのどちらを採用してもよい。
【0075】
次に、物体運動考慮部180について説明する。電荷は、一般に物体の表面にのみ存在する。そこでここでは、このように電荷が蓄積される可能性のある物体の表面を電荷面と呼ぶ。物体の運動を考える場合、電荷面を構成する節点の間で、物体の運動方向に電荷を移動させればよい。
【0076】
図5(a)は解析物の電荷面の一例を示す図である。51a、51bはローラであり、50a、50bはそれぞれの芯金、52はシート材である。2つのローラ51a、51bがシート52材を挟んで回転しており、両ローラには電圧が印加されている。本解析物の物体の表面として、図5(b)の53a〜53fで示した6つの電荷面を定義する。
【0077】
図5(b)は図5(a)に示した解析物の計算モデルとしての電荷面の一例を示す図である。ローラとシートの間は実際には密着しているが、微小なギャップ54があるものとしている。物体運動考慮部180ではこの電荷面上の電荷を物体が計算刻み時間に移動する分だけ、物体の運動方向に移動させる。
【0078】
次に媒体変形考慮部190について説明する。ここでは、媒体に関する構造解析を行うための離散化モデルとして、ばね・質点モデルを用いた例を説明する。
【0079】
媒体力学モデル作成部191は、要素分割データ及び媒体の厚みデータからばね・質点モデルを作成する。
【0080】
図6は、モデル作成の前後におけるモデルの一例を示す図である。同図(a)は変形前の要素分割モデルを示す図で、170は転写媒体、172a、172bは空気、173a、173bは転写媒体の対向面を示す。本分割モデルの転写媒体の位置から、図6(b)に示すようにその中心線174を算出し、その上に質点444を設ける。なおここでは要素分割図上に質点を表示しているが、これはイメージを示すために表示したもので、実際には分割モデルを変化させる訳ではない。
【0081】
媒体受力計算部192は、以下の式(9)で示した各質点に働く力F(i)を算出する。
【0082】
【数9】

【0083】
ここでiは質点の番号であり、f(i)は曲げにより働く力、f(i)は張力により働く力、f(i)は重力、f(i)は静電気力、f(i)は媒体の振動に対する減衰力である。
【0084】
なおここで、静電気力f(i)は、まず以下の式(10)により転写媒体を構成する各節点に働く静電気力を算出し、それを最寄りの質点に、質点との媒体面方向の距離に応じて振り分けることによって得られるものである。
【0085】
【数10】

【0086】
<j>は節点jに働く力であり、Q<j>は節点jでの電荷量である。またE<j>は節点での電界強度であり、放電考慮部160によって得られた電位分布から算出されるものである。ここで転写媒体が担持するトナーに対しては、近接する転写媒体の節点にその電荷を加算しているものとする。 一方、f(i)、f(i)、f(i)、f(i)は一般的なばね・質点モデルを用いて構造問題を解く方法で使用されるものなのでその説明を省略する。
【0087】
媒体変形計算部193は、媒体力学モデル作成部191で作成したばね・質点モデル、媒体受力計算部192で求めた各質点に働く力、及びガイド位置、両端部における張力を基に、以下の式(11)〜(13)に示したニュートンの運動方程式により各質点の計算刻み時間後の位置を計算する。
【0088】
【数11】

【0089】
【数12】

【0090】
【数13】

【0091】
ここでa(i)、F(i)、m(i)、Vold(i)、vnew(i)、xold(i)、xnew(i)はそれぞれ質点iの加速度、受力、質量、旧速さ、新速さ、旧位置、新位置、またΔtは計算刻み時間を示す。
【0092】
なお、ニップ、ガイドによる位置の規制、感光体ドラム等との接触による位置の規制を考慮する必要があるが、これらは一般的なばね・質点モデルの方法で容易に対処可能である。
【0093】
上記では、図4に示したように、電界、トナーの運動、及び媒体の変形の時間による進展を、同じ時間進行内で行い、すべてを忠実に再現する方法を説明した。しかし一般に媒体の変形を検討する計算と、電界及びトナー挙動を検討する計算では、前者の方が数十倍長い期間の計算時間を必要とする。というのは、前者は用紙をほぼ一枚分通すだけの計算を行わなくてはならないのに対して、後者では用紙を数センチメートル動かすだけの計算で検討を行えるからである。そこで後者の場合は、各計算時間ステップにおいて、その電界条件における、ばね・質点モデルの形状の定常解を求めて使用してもよい。
【0094】
本定常解は、図4のステップS801に示した時間反復とは独立に、電界一定の条件で、ステップS700〜S703を媒体の変形が一定になるまで繰り返す、仮想的な時間反復を行うことで、容易に得ることができる。これにより、転写媒体の慣性力が無視されることになるが、比較的短時間の計算で、実用的な結果を得ることができることがわかっている。
【0095】
次に、電界計算モデル更新部194は、要素分割モデルにおける転写媒体の部分を、バネ・質点モデルの変形に合うように更新する。電界計算モデル更新部194は、先ず、転写媒体を構成する節点の位置を、媒体の変形に合わせて更新する。これは転写媒体を構成する節点と、ばね・質点の相対位置関係、例えば各節点のばね・質点モデルの端点からの距離とその中心線からの距離を、ばね・質点モデルを作成する段階で求めておき、各計算時間ステップにおいて、その関係は変化しないものとして媒体構成節点の位置を変更することによって容易に実現できる。
【0096】
次に、転写媒体と隣接した材料の要素分割を伸縮させることによって、正常な分割モデルを保つ。本処理は、例えば図6における空気の層172a(172b)を構成する各節点を、媒体の変形に対して、節点と転写媒体170の表面との距離a、及び節点と対向面173a(173b)との距離bの比a/bが、常に一定に保たれるように移動すればよい。
【0097】
このようにして図6の要素分割モデルを更新した例を図7に示す。同図において図6と同じ部分には同じ番号を付けている。質点444はイメージを示すために表示したものである。ばね・質点モデルの変形に合わせて、要素分割モデルの媒体部分とその空気の層の要素が更新されている。
【0098】
次に、トナー位置更新部195は、電界計算モデル更新部194によって更新された要素分割に従って、各トナーの位置を更新する。図8を用いてその方法を説明する。
【0099】
図8は、各トナーの位置を更新する処理を説明する図である。同図において90、91は電荷面であり、△印で示した190は電荷面を構成する節点、191は電荷面90の端部の点、72はトナーを示す。
【0100】
先ず、トナーは最寄りの電荷面に帰属させる。同図のトナー72は電荷面90に帰属されることになる。そしてそのトナーの位置を、帰属する電荷面を基準とした座標系で表現する。例えば、トナー72の位置を、帰属する電荷面90の端部の点191からの距離Lと電荷面からの垂直距離hで表現した。
【0101】
そして、本電界計算モデル更新部194は、要素分割モデルが更新されても、本電荷面を基準とした座標位置(L、h)は変化しないものとして、トナーのモデル座標系での座標位置を更新する。これによって、トナー位置は、転写媒体の変形に追従した位置に更新されることになる。
【0102】
ここでは媒体変形考慮部190として、ばね・質点モデルを用いた例について説明したが、勿論有限要素法等、他の方法を採用してもよい。そのとき、媒体力学モデル作成部191は、構造解析用有限要素分割モデルを作成し、媒体受力計算部192は、その分割モデルの節点に働く力を算出することになる。
【0103】
媒体変形考慮部190によって、転写時における転写用紙の変形も考慮できるようになる。これによってより正確にトナーの挙動を予測できるようになる。
【0104】
本実施形態では、以上説明した図1の各部が、図4に示したフローチャートに従った計算処理を行うことで、導体中を流れる電流、放電、トナーの挙動、転写媒体の変形等を考慮した転写解析を行うことができる。
【0105】
図10に示した1次転写部分を、上記計算処理を行うことで得られる計算結果を図9に示す。図9においてAは要素分割モデルにて電界計算を行った解析領域を表し、241は転写ローラ、242は感光体ドラム、243は転写用紙である。
【0106】
電界計算を行った領域はローラ、ドラム、及び用紙の一部だけとしている。転写用紙は図の左から右に搬送され、トナーが転写される。244〜247は転写用紙の変形を規制するためのガイドである。転写入り側ではガイド244で上限規制、ガイド245では下限規制を、転写出側ではガイド246、247ともに下限規制を行っている。
【0107】
本転写用紙の変形は転写電界による静電気力を考慮して求めたものであり、実験とよく一致していることを確認している。なお図から見ることはできないが、本計算はトナーを考慮している。本計算によりガイド位置による転写用紙の変形がトナーの飛び散りに与える影響も、試作することなくシミュレーションによって予期できるようになった。
【0108】
なおここでは、図1における、導体中電荷移動考慮部、放電考慮部、トナー挙動考慮部、媒体変形考慮部、物体運動考慮部のすべてが揃った場合について説明した。しかしこれらは目的によっては必ずしも必要ないものが含まれる。基本的には、導体中電荷移動考慮部、放電考慮部、物体運動考慮部があれば、導体を含む電界の計算が行えるので、後は必要に応じて盛り込めばよい。
【0109】
以上の説明により、本実施形態によって、転写電界の影響も考慮した転写媒体の変形を求められるようになった。またトナーの挙動も同時に考慮可能なことから、紙のガイド位置によるトナーの転写特性の変化等、実験を行うことなく正確にその性能を予測できるようになった。
【0110】
以上、転写プロセス解析について説明した。しかし、以上の説明の本質は、電子写真の転写プロセスのみならず、抵抗と放電、物体の移動、微小粒子の運動、可撓性物体の変形を含む一般的な問題を、電位分布、微小粒子の挙動、可撓性物体の変形を合わせてシミュレーションする方法として、電子写真プロセス以外にも適用することが可能である。
【0111】
すなわち、上記トナー挙動考慮部170において、トナーに代えて微粒子を設定し、また媒体変形考慮部190において、転写媒体に代えて可撓性物体をモデル化すればよい。
【0112】
またここでは、2次元解析の場合について例示したが、3次元解析に対しても容易に適用できることも明白である。
【0113】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、電界計算に有限要素法を使用した場合について説明した。本実施形態では、電界計算に差分法を使用した例を説明する。なおここでは有限要素分割モデルと区別するために、差分メッシュのうち、有限要素法の要素に当たる部分をセルと呼び、セルの中心に電位、電荷量を、セルの間の境界に誘電率、導電率を定義する差分法について説明する。また特に有限要素法と異なる点に絞って説明し、同じ部分は省略する。
【0114】
なお、本実施形態で用いるコンピュータの構成、及びCPU21の機能構成については第1の実施形態と同じであるとする。
【0115】
先ず、導体中電荷移動考慮部150について説明する。
【0116】
静電界計算部151は、デカルト座標系(xy座標系)で直交メッシュを生成し、以下の式(15)、(16)を用いて、それを一般座標系(ξη座標系)に座標変換する。そして本一般座標系にて式(14)のポアソン方程式を解き、電位分布を求める。
【0117】
【数14】

【0118】
【数15】

【0119】
【数16】

【0120】
なおここで、ξ=ξ、ξ=η、gijは計量テンソル、√gは座標変換のヤコビアン、qは体積電荷密度、εは誘電率、Φは電位を示す。
【0121】
次に、移動電荷計算部152は、得られた各セルの電位を、上記式(2)に相当する以下の式(17)に代入することにより、各セルの電荷の変化量を算出し、電荷分布を更新する。ここでσは導電率を示す。
【0122】
【数17】

【0123】
次に、放電考慮部160について説明する。第1の実施形態では、節点に電位が定義されたのに対して、ここで説明する差分法ではセル中心で電位が定義される。そこでここでは、解析者から指定された放電の起こる可能性のある2つの面のセルに対して、そのセル間での電位差と距離からパッシェンの放電則に基づいて放電発生の有無を判定する。そして放電が発生すると判定されたセルの組に対して、パッシェン電圧を上回っている分だけ電荷を移動させる。
【0124】
例えば、2つの面上のセルをそれぞれi、jとし、両者間で放電が発生すると判定されたとする。放電セルの組i、jについて、放電前の電荷量をそれぞれQi、Qjとし、放電によりセルiからセルjに電荷がΔQijだけ移動することで2つのセル間の電位差がパッシェン電圧Vpa<ij>になるものとする。
【0125】
放電後のセルi、jの電位Φi’、Φj’が式(5)、電荷量Qi’、Qj’が式(6)を満たすように、式(14)と連立させて解くことで、放電後の電位分布、及び両セル間での電荷の移動量を求める。
【0126】
トナー挙動考慮部170については、式(7)においてトナー中心位置における電界強度の算出に上記差分法で得た電界結果を使用する以外は、第1の実施形態で説明したものと同様である。
【0127】
次に、物体運動考慮部180について説明する。ここでは、電荷が蓄積される可能性のある物体の表面上のセルの集合を電荷面と呼ぶ。物体運動考慮部180は、第1の実施形態と同様に、毎計算時間ステップにおいて、電荷面を構成するセルの間で、計算刻み時間にその物体の移動する量だけ、電荷を移動させる。
【0128】
次に媒体変形考慮部190について説明する。
【0129】
先ず、媒体力学モデル作成部191についてであるが、差分メッシュ及び媒体の厚みデータからばね・質点モデルを作成する方法は第1の実施形態における有限要素分割モデルの場合と同じである。
【0130】
媒体受力計算部192における、各質点に働く力F(i)は式(9)に示す通りである。なおここで質点iに働く静電気力f(i)は、まず式(10)により転写媒体を構成する各セルに働く力を算出し、それを最寄りの質点に、質点との媒体面方向の距離に応じて振り分けることによって求める。なおここでは、式(10)のf<j>はセルjに働く力であり、Q<j>はセルjの電荷量、E<j>はセルjにおける電界強度ということになる。
【0131】
媒体変形計算部193は第1の実施形態と同様である。
【0132】
電界計算モデル更新部194は、差分メッシュの転写媒体部分を、バネ・質点モデルの変形に合うように更新するために、上記デカルト座標系(xy座標系)における直交メッシュを、一般座標系(ξη座標系)に座標変換する式(15)、(16)を変化させる。
【0133】
トナー位置更新部195は、第1の実施形態と同様である。すなわち、各トナーを最寄りの電荷面に帰属させ、その位置をその電荷面を基準とした座標系で表現する。すなわち最寄りの電荷面の始点からの距離Lと電荷面からの垂直距離hで表現する。そして電界計算モデル更新部194で差分メッシュが更新されても、本電荷面を基準とした座標位置(L、h)は変化しないものとして、トナーの座標位置を更新する。
【0134】
本実施形態のように、電界計算に差分法を用いた方法によっても、以上説明した図1の各部が、図4に示したフローチャートに従った計算処理を行うことで、導体中を流れる電流、放電、トナーの挙動、転写媒体の変形等を考慮した転写解析を行うことができる。本実施形態は差分法を基にしていることから、第1の実施形態に比べて計算内容の物理的意味が分かり易く、計算も高速にできるという特長と持つ。
【0135】
なおここでは、セルの中心に電位、電荷量を、セルの間の境界に誘電率、導電率を定義する差分法について説明したが、本定義の位置を変えた場合についても容易に適用可能である。
【0136】
以上の説明により、本実施形態によって、第1の実施形態に加えて、計算内容の物理的意味が分かり易く、高速に計算できるようになった。
【0137】
その結果、導体の電気伝導、気中放電、物体の運動、トナー粒子の運動、トナー粒子への放電、転写媒体の変形といった転写特性に影響を与えるすべての因子を正確に考慮できる。
【0138】
更に、上記各実施形態は、転写プロセス解析に留まらず、抵抗と放電、物体の移動、微小粒子の運動、可撓性物体の変形を含む領域の、電位分布、微小粒子の挙動、可撓性物体の変形を合わせてシミュレーションする一般的な方法として様々な問題に適用可能である。
【0139】
[その他の実施形態]
また、本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体(または記憶媒体)を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。この場合、記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した記録媒体は本発明を構成することになる。
【0140】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているオペレーティングシステム(OS)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0141】
さらに、記録媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張カードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張カードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0142】
本発明を上記記録媒体に適用する場合、その記録媒体には、先に説明したフローチャートに対応するプログラムコードが格納されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】CPU21の機能構成を示すブロック図である。
【図2】解析処理を実行する情報処理装置として機能するコンピュータを含むシステムの機能構成を示すブロック図である。
【図3】転写計算部12として機能するコンピュータのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図4】コンピュータ20が行う計算処理のフローチャートである。
【図5】(a)は解析物の電荷面の一例を示す図、(b)は(a)に示した解析物の計算モデルとしての電荷面の一例を示す図である。
【図6】モデル作成の前後におけるモデルの一例を示す図である。
【図7】図6の要素分割モデルを更新した例を示す図である。
【図8】各トナーの位置を更新する処理を説明する図である。
【図9】図10に示した1次転写部分を、第1の実施形態に係る計算処理を行うことで得られる計算結果を示す図である。
【図10】転写装置を感光体の軸方向から見たときの模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真プロセスにおける転写プロセスの物理現象をシミュレーションすべく、計算処理を行う情報処理装置であって、
分割メッシュ中の転写媒体の形状と連動する力学モデルを生成する媒体力学モデル作成手段と、
電界強度分布と、転写媒体中の電荷量を基に算出した静電気力を含む、媒体に作用する力を求める媒体受力計算手段と、
前記力学モデルと媒体に作用する力とを用いて、転写媒体の変形を計算する媒体変形計算手段と、
計算された媒体の変形結果を用いて電界計算用の分割メッシュを変更する、電界計算モデル更新手段を備え、
前記媒体力学モデル作成手段が転写媒体の変形計算を行うための力学モデルを作成した後、前記媒体受力計算手段が、その力学モデルに作用する力を算出し、前記媒体変形計算手段が、力学モデルと作用する力とから媒体の変形形状を計算し、前記電界計算モデル更新手段が、得られた媒体の変形結果を分割メッシュの媒体部分の分割に反映させることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記媒体受力計算手段は、
転写媒体がトナーを担持している場合には、該担持トナーの電荷を該転写媒体の電荷の一部であるとみなすことで、担持トナーも含めた媒体に作用する静電気力を求めることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
更に、各トナーの位置を転写媒体を基とした媒体座標系で表現し、転写媒体が変形しても各トナーの転写媒体座標系での位置は変化しないと仮定することで、媒体変形後のトナー位置を算出する、トナー位置更新手段を備え、
転写媒体の変形計算後には、前記トナー位置更新手段によって、各トナーの位置を更新することを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記媒体変形計算手段は、各時間ステップごとにその電界条件における媒体変形の定常解を算出し、
前記電界計算モデル更新手段は、その定常解を使用して分割メッシュの媒体部分の分割に反映させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
電子写真プロセスにおける帯電プロセス、現像プロセス、及び転写プロセスを含む物理現象を、電界、放電、トナーの挙動、及び柔軟媒体の変形状態を合わせてシミュレーションを行うべく、計算処理を行う情報処理装置であって、
オームの法則及び電流連続の式に従って導体中の電荷移動を算出するとともに、電荷が移動した後の電位分布を算出する導体中電荷移動考慮手段と、
放電による電荷の移動を算出するとともに、放電後の電位分布を計算する放電考慮手段と、
電界計算によって得られた電界強度を用いて、ニュートンの運動方程式に従ってトナー位置を計算刻み時間後の位置に更新するトナー挙動考慮手段と、
請求項1乃至4の何れか1項に記載の媒体変形計算手段と、
物体の運動に従って電荷を移動させることで、移動後の電荷分布を算出する物体運動考慮手段とを備え、
入力データに応じて、前記各手段を組み合わせて電界、放電、トナーの挙動、柔軟媒体の変形を算出することを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
抵抗と放電、物体の移動、微小粒子の運動、可撓性物体の変形を含む領域の、電位分布、微小粒子の挙動、可撓性物体の変形を合わせてシミュレーションを行う場合に、処理対象を、トナーに代えて微小粒子、転写媒体に代えて可撓性物体としたことを特徴とする請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
電子写真プロセスにおける転写プロセスの物理現象をシミュレーションすべく、計算処理を行う情報処理装置の制御方法であって、
分割メッシュ中の転写媒体の形状と連動する力学モデルを生成する媒体力学モデル作成工程と、
電界強度分布と、転写媒体中の電荷量を基に算出した静電気力を含む、媒体に作用する力を求める媒体受力計算工程と、
前記力学モデルと媒体に作用する力とを用いて、転写媒体の変形を計算する媒体変形計算工程と、
計算された媒体の変形結果を用いて電界計算用の分割メッシュを変更する、電界計算モデル更新工程を備え、
前記媒体力学モデル作成工程で転写媒体の変形計算を行うための力学モデルを作成した後、前記媒体受力計算工程で、その力学モデルに作用する力を算出し、前記媒体変形計算工程で、力学モデルと作用する力とから媒体の変形形状を計算し、前記電界計算モデル更新工程で、得られた媒体の変形結果を分割メッシュの媒体部分の分割に反映させることを特徴とする情報処理装置の制御方法。
【請求項8】
コンピュータに請求項7に記載の制御方法を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムを格納したことを特徴とする、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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