情報処理装置、方法及びプログラム
【課題】カラー画像に色弱者のための色識別情報を付加しても、色覚健常者が違和感を覚えることがないようにする。
【解決手段】画像データ取得部41により画像レイヤー31からカラー画像データを取り込み、対応情報取得部42により、画像レイヤー31おける画像の指定位置の色情報を取得し、その色情報をカラーパレット44内の色名称に変換し、挿入態様決定部43によって、先に得られた色名称を情報挿入レイヤー32の指定位置に配置する。つまり、画像レイヤー31の画像データから色情報を抽出し、色情報から色名に変換した後、画像レイヤー31の画像は変化させず、抽出した色名を情報挿入レイヤー32に挿入する。
【解決手段】画像データ取得部41により画像レイヤー31からカラー画像データを取り込み、対応情報取得部42により、画像レイヤー31おける画像の指定位置の色情報を取得し、その色情報をカラーパレット44内の色名称に変換し、挿入態様決定部43によって、先に得られた色名称を情報挿入レイヤー32の指定位置に配置する。つまり、画像レイヤー31の画像データから色情報を抽出し、色情報から色名に変換した後、画像レイヤー31の画像は変化させず、抽出した色名を情報挿入レイヤー32に挿入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像に対し、色弱者のための色識別情報を付加する情報処理装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近ではカラー印刷が容易になり、個人の作成する文書においても、図14Aに示すように、色によって図の意図を表現するものが増大している。なお、この図において、グラフ21a及び凡例21bに記載されている色名は、その色でカラー印刷或いは表示されていることを説明するために便宜上付したものであって、印刷画像や表示画像に色名が付加されているわけではない。また、「山」、「萌」、「レ」はそれぞれ山吹色、萌黄色、レモンイエローである。
【0003】
しかしながら、色覚健常者にとっては容易に識別可能な色であっても、色覚に障害を持つ人々(いわゆる色弱者)にとっては、他の色との識別が困難な色もあり、色のみに頼った表現の文書を正しく理解できない場合も少なくない。例えば、赤色の知覚が困難であり、緑と赤の区別がつきにくい色弱者は、緑と赤によって塗り分けられたグラフなどを解釈することが難しい。
【0004】
またカラー文書であって、データ量削減のためにグレイモードでスキャンし、画像ファイル化した場合、例えば図14Aは図14Bのように記録されてしまい、グラフ中および凡例において、China、Bangladesh、Other が同じように最も濃い灰色になってしまい、グラフを解釈することができない。
【0005】
つまり、色覚健常者、色弱者に関わらず、色のみに頼った表現を用いた文書は理解されない場合があることに留意すべきである。
【0006】
色弱者の色識別を補助するための発明としては、原文書の色情報を抽出し、それを色名に変換し、原文書の上に重ねて印刷/表示するものがある(特許文献1参照)。しかし、色領域に色名を明示的に記入する方法は、原文書の改変を意味し、色覚健常者が通常、目にする文書とは大きく異なり、奇異な印象を与え、色覚健常者の使用感を著しく損なうおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、カラー画像に色弱者のための色識別情報を付加しても、色覚健常者が違和感を覚えることがないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の情報処理装置は、マルチレイヤー機能を有するファイルのあるレイヤーに書き込まれたカラー画像データを取得する画像データ取得部と、そのカラー画像データにより形成されるカラー画像の領域と色との対応関係を取得する領域/色対応情報取得部と、前記領域の色に対応する色識別情報を決定する色識別情報決定部と、その色識別情報を前記レイヤーと別のレイヤーにおける前記領域と対応する位置に書き込む色識別情報付加部とを有することを特徴とする情報処理装置である。
本発明の情報処理方法は、マルチレイヤー機能を有するファイルのあるレイヤーに書き込まれたカラー画像データを取得する画像データ取得工程と、そのカラー画像データにより形成されるカラー画像の領域と色との対応関係を取得する領域/色対応情報取得工程と、前記領域の色に対応する色識別情報を決定する色識別情報決定工程と、その色識別情報を前記レイヤーと別のレイヤーにおける前記領域と対応する位置に書き込む色識別情報付加工程とを有することを特徴とする情報処理方法である。
本発明のプログラムは、コンピュータを、本発明の情報処理装置として機能させるためのプログラムである。
【0009】
[作用]
本発明によれば、マルチレイヤー機能を有するファイルのあるレイヤーに書き込まれたカラー画像データから、カラー画像の領域毎の色情報を抽出し、別レイヤー上の前記領域と同じ位置に、抽出した色情報に対応する色識別情報(色名等)を書き込むことによって、原画像の原本性を担保しつつ、情報を付加する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、付加された色識別情報を使用者自身で可視/不可視を切り替えることができるから、色覚健常者用文書と色弱者用文書とを個々に準備する必要がなく、使用者自身が用途を選択し、表示/印刷することが可能となる。従って、色覚健常者は、色弱者向けに作成されたカラー画像に対して違和感を覚えることない一方、色弱者は色識別情報を得ることができるので、両者の使用感を著しく改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の情報処理装置のハードウェアブロック図である。
【図2】透明テキスト付きPDFの一例を示す図である。
【図3】透明テキスト付きPDFにおいて、OCR結果のテキストの代わりに色識別情報を配置する様子を示す図である。
【図4】透明テキスト付きPDFの情報挿入レイヤーに色識別情報を付与する処理の概略のフローを示す図である。
【図5】図4に対応する機能ブロックを示す図である。
【図6】領域分割のサイズと画像の解像度との関係を示す図である。
【図7】領域ラベリング処理の流れの一例を示す図である。
【図8】領域ラベリング処理のフローを示す図である。
【図9】同一色の連続領域に内接する最大円及びその中心を求める処理を示す図である。
【図10】図9で求めた最大円の中心にラベリング結果の数値を配置する処理を示す図である。
【図11】各領域の色名を図9で求めた最大円の中心に配置する処理を示す図である。
【図12】図9に示す同一色の連続領域に内接する最大円及びその中心を求める処理のフローである。
【図13】分散処理により本発明の処理が可能なシステムを示す図である。
【図14】従来のカラー文書を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
[情報処理装置]
図1は、本発明の実施形態の情報処理装置のハードウェアブロック図である。
この情報処理装置は、バス1と、それぞれがバス1に接続されたCPU(Central Processing Unit)2、メモリ3、通信装置4、表示装置5、HDD(Hard Disk Drive)6、入力装置7、光学ドライブ8、及びFDドライブ9を備えている。
【0013】
CPU2は、この情報処理装置の動作制御を行うものである。メモリ3は、CPU2が起動時に実行するプログラムや必要なデータ等を記憶するためのROM(Read Only Memory)、CPU2のワークエリア等を構成するためのRAM(Random Access Memory)などからなる。通信装置4は、この情報処理装置をインターネットなどのネットワークに接続するための装置である。
【0014】
表示装置5は、液晶ディスプレイなどからなり、この情報処理装置を操作するための画面や動作状態を表示する。入力装置7は、キーボードやマウスなどからなり、この情報処理装置に対する種々のキー操作や指示を行うためのものである。
【0015】
HDD6は種々のアプリケーションプログラム、ワークデータ、及びファイルデータなどを記憶する。光学ドライブ8は、CD−ROMやDVD−ROMなどの記録媒体の読み出しを行うための装置である。FDドライブ9は、フレキシブルディスクに対する書き込み及び読み出しを行うための装置である。
【0016】
[マルチレイヤー機能を有するファイル]
本実施形態の情報処理装置はマルチレイヤー機能(複数のレイヤーを定義可能であり、レイヤー毎にデータの書き込み/読み出しが可能なファイル)を有するファイルを扱うので、まずマルチレイヤー機能を有するファイルの一例として透明テキスト付きPDF(Portable Document Format)について説明する。なお、以降、PDFを例に説明するが、PDFに代表されるマルチレイヤー機能をもつ電子文書において、一般的に具備している要素のみに言及するものであり、本発明はPDFに限らず、マルチレイヤー機能をもつ電子文書全般に適用できることは言うまでもない。
【0017】
図2に、透明テキスト付きPDFの一例を示す。ここで、図2Aは透明テキスト付きPDFを示し、図2Bはそのレイヤーを示す。図2Bのように、原画像中の文字画像11aのOCR結果であるテキスト12aを、原画像のレイヤー111とは別のレイヤー112において文字画像11aの直上に不可視色、つまり透明で配置し、画像の見栄えを変更することなく、OCR結果と統合したものが、図2Aに示す透明テキスト付きPDF11である。PDFファイルの編集ツールであるAcrobat(登録商標)を用いることによって、透明テキストに任意の色を着色できる。当然、元の不可視色に戻すことも可能である。
【0018】
そこで、本実施形態では、透明テキスト付きPDFにおいて、OCR結果のテキストの代わりに色情報を配置する。
図3に説明図を示す。画像レイヤー31に書き込まれている各画素(或いは矩形領域)の画像データは色情報を持っており、情報挿入レイヤー32において、各画素(或いは矩形領域)の直上の位置に色識別情報を不可視色のテキストにより挿入する。なお、この図を含めて、以下に示す図5、図6A〜C、図9〜図11に記載されているグラフの画像は、実際は図14Aに示す色を持つが、便宜上、濃淡で表示している。
【0019】
色識別情報については、RGB値、色相(色名)、彩度、明度など、テキスト化できる情報であれば、所望のものを挿入してよい。画素(或いは矩形領域)の色識別情報を参照したい場合には、PDFファイル専用ツールを用いて不可視テキストを着色し、印刷や表示をする。或いは、文書作成時に可視色テキストにより情報を挿入し、文書の使用者が当該情報を不要の場合に不可視色に変更することも可能である。
【0020】
色弱者は、自身の色弱を他人に知られることに心理的な負担を感じる場合が多く、色弱者向けの特別な文書が配付されることには抵抗を感じることが予想される。この点からも、健常者と色弱者との両方に同一文書を配布し、使用者側にて色弱用に変更可能な文書を実現できる本実施形態は好適である。
【0021】
また、従来からある透明テキスト付きPDFでは情報挿入レイヤーには、図2に示したように、原文書中の文字をOCRした結果が貼付されているが、このテキストと、本実施形態による色識別情報のテキストとを区別するために、色識別情報のテキストには区別用の接頭辞或いは接尾辞などを付加してもよい。これによって、本文中のテキストを検索キーで文書検索する場合においても、色識別情報のテキストが誤ってヒットすることを避けることができる。区別用の接頭辞は、“#F000”など、原文書に登場する確率が低い文字列を使用すればよい。
【0022】
なお、透明テキスト付きPDFの場合、検索が主目的であり、原画像の上に配置された透明テキストを使用者が明示的に可視色に変更することは稀である。なぜなら使用者は原画像の文字を見ることで原文書を読むことが出来るので、あえてOCR結果を読む必要がないからである。しかも、OCR結果が誤っていても、原画像の文字は変わりなく読むことができるので、OCR結果の誤りが原文書の読解に対して致命的な問題になりにくい利点もある。
【0023】
一方、本実施形態では、マルチレイヤー文書フォーマットを用い、原画像の上に配置された色識別情報のテキストを、使用者が明示的に可視色に、或いは不可視色に変更可能な点に注目したものであり、透明テキスト付きPDFとは目的が異なる。しかも、透明テキスト付きPDFにおける付加情報は、使用者が原文書にて可読なものであるのに対し、本実施形態における付加情報は、使用者(色弱者)が知覚できないものである点も、透明テキスト付きPDFと本実施形態との大きな相違点である。
【0024】
[情報処理装置の処理の概要]
図4に、情報挿入レイヤーに画像データの色識別情報を付与する処理の概略フローを示す。また、それに対応する機能ブロックを図5に示す。この機能ブロックは、図1におけるCPU2が、メモリ3及びHDD6に記憶されているプログラムを実行することによる実現される。以下、図4、図5の順に説明する。
【0025】
ステップS1:色情報を抽出する領域を設定する。その最小単位は画素になる。
ステップS2:ステップS1で設定された領域の色情報を抽出する。複数画素から成る領域の場合は代表色を求める。
【0026】
ステップS3:ステップS2で抽出した各領域の色情報から近似色を決定する。
ステップS4:当該領域の色情報を、情報挿入レイヤーにおける当該領域と同一の位置に配置する。
なお、各ステップの詳細については後述する。
【0027】
画像データ取得部41により画像レイヤー31からカラー画像データを取り込み、対応情報取得部42により、画像レイヤー31おける画像の指定位置の色情報を取得し、その色情報をカラーパレット(カラー情報データベース)44内の色名称に変換し、挿入態様決定部43によって、先に得られた色名(色識別情報)を情報挿入レイヤー32の指定位置に配置する。つまり、画像レイヤー31の画像データから色情報を抽出し、色情報から色名に変換した後、画像レイヤー31の画像は変化させず、抽出した色名を情報挿入レイヤー32に挿入する。ここで、対応情報取得部42が本発明における領域/色対応情報取得部及び色識別情報決定部に対応し、挿入態様決定部43が色識別情報付加部に対応する。
【0028】
[減色処理]
この処理は、図4のステップS1、図5の対応情報取得部42で実行される処理の一例である。
【0029】
連続する色変化から、人間が知覚しやすい、離散的な代表値を抽出したものが色名である。カラー文書を作成する際には、色間の差異を人間が知覚しやすい配色にするよう配慮される場合が多い。
【0030】
よって、自然画像の微妙な配色を除いて、グラフや、強調、警告など、文書作成者の意図を伝えるために用いた色は、各々容易に識別できる程度の色数に抑えられている。言い換えると、慣用色名のある色パレットに用意されている全ての色を同一文書内で区別する必要はない場合が多い。これは、スキャン条件や、印刷条件の微妙な変化が画像ファイルにおけるRGB値の微妙な変化を生じさせたとしても、その変化を考慮して色名を求める必要はないことを意味する。
【0031】
そこで慣用色名を決める前に、処理対象の原稿内に含まれる代表的な色に量子化(減色)し、識別の容易な、安定した色集合に変換する。加えて、減色すると各色間のコントラストが強調される傾向になり、より識別容易になる点も色弱者の色識別問題の解決にとって好ましい。
【0032】
減色処理後は、微妙な色変化は代表色に統合されることによって、色数が減じられ、色数の少ない色パレットを用いて色名称を求めることができる。色数の少ない色パレットほど、短い色名称が用いられているのは明らかであるから、情報挿入レイヤーに色名称を挿入するに必要なスペースが小さくて済む。これにより、色名記載に要する面積が狭くてよく、原画像への影響が小さくなり好都合である。
【0033】
減色手段としては、代表的なものにメディアンカット方法があり、一般的な画像処理機能分野として確立されている。
【0034】
以上をまとめると、画像レイヤー31の画像データに減色処理を施し、減色処理済みの画像データに対して色情報抽出処理を実施し、画像レイヤー31の画像データは変化させず、抽出した色情報に対応する色識別情報を情報挿入レイヤー32に付加するということになる。
【0035】
[微小な同一色連続領域の無視]
この処理は、図4のステップS1、図5の対応情報取得部42で実行される処理の一例である。
【0036】
同一色連続領域が微小な場合、原文書の印刷条件の変化、或いはスキャン条件の変化に起因する、本来は不要な色変化である可能性がある。また、微小な同一色連続領域は、そもそも原文書において重要でない場合もある。
【0037】
よって、同一色連続領域の画素数を計数し、画素数が多い(所定の閾値を越える)領域のみ、色情報を取得し、情報挿入レイヤー32に色識別情報を配置すれば、処理及び記憶容量も減ぜられ、好都合である。加えて、微小領域の限られたスペースに色識別情報を付与し、隣接領域の色識別情報と重複してしまう過剰さを避けることがきる。
【0038】
以上をまとめると、画像レイヤー31の画像データにおいて、同一色の連続領域の画素数を計数し、計数結果から微小領域か否かを判断し、微小領域でないなら、その領域の色情報を抽出し、画像レイヤー31の画像データは変化させず、抽出した色情報に対応する色識別情報を情報挿入レイヤー32に付加するということになる。
【0039】
[代表色の決定]
この処理は、図4のステップS1、図5の対応情報取得部42で実行される処理の一例である。
【0040】
個々の画素に色情報は存在するが、減色処理の説明において述べたように、自然画像部分を除けば、一般的なカラー文書においては微妙な色変化が用いられることは少なく、同一色領域は、人間が容易に知覚できる大きさを持つ。よって、いたずらに微小範囲の色情報を取得し、表示、印刷する必要はなく、寧ろ色情報の過剰な表示は煩わしく、使用感を大きく損ねる。
【0041】
よって、画像を格子状に分割し、その分割された矩形範囲において、代表色を求め、その代表色の色情報を当該矩形領域の直上の情報挿入レイヤー32に配置する。代表色を決定するための手段としては、色空間として、RGB/HSV/Hの重みが大きいHSVを採用し、「単純に平均して代表色にする」、「一番画素数の多い色を代表色にする」など、各種方法が考えられ、所望する結果が得られるものを採用すればよい。
【0042】
以上をまとめると、画像レイヤー31の画像データにおいて格子状に領域分割し、その領域に対する代表色を求め、画像レイヤー31の画像データは変化させず、抽出した色情報に対応する色識別情報を情報挿入レイヤー32に付加するということになる。
【0043】
[領域分割のサイズ]
この処理は、図4のステップS1、図5の対応情報取得部42で実行される処理の一例である。
【0044】
図6に格子状に分割(量子化)するサイズを変更した例を示す。ここで、図6A、B、Cは、それぞれ画像レイヤー31上のカラー画像領域31aを分割するサイズが小さい(高解像度)場合、中程度(高解像度)の場合、大きい(低解像度)の場合である。なお、図6Dは、濃淡領域を分割した場合を示している。
【0045】
図6A〜Cより、格子が大きくなる程、大まかに原文書の色分布を把握できることがわかる。原文書について微細領域の色を識別する必要がないのであれば、格子サイズを大きくした方が、情報挿入レイヤー32に挿入される色識別情報のテキストが少なくなるので、処理量及び記憶容量も減ぜられ、好都合である。よって目的に応じて、格子状分割のサイズを調整できるようにしておくことが有用である。
【0046】
以上をまとめると、画像レイヤー31の画像データに対して、使用者がサイズ変更可能な格子状に領域分割し、その領域に対する代表色を求め、画像レイヤー31の画像データは変化させず、抽出した色情報に対応する色識別情報を情報挿入レイヤー32に付加するということになる。
【0047】
[近似色の決定]
この処理は、図4のステップS3、図5の対応情報取得部42で実行される処理の一例である。
【0048】
実用的な可視文字サイズには限界があるので(参考:JIS S 0032:2003 『高齢者・障害者配慮設計指針‐視覚表示物‐日本語文字の最小可読文字サイズ推定方法』)、情報付与に用いるフォントの最小サイズも決まり、色情報をすべてテキスト形式で付与することは困難である。
【0049】
限りのあるテキスト数でもって色識別を補助するために、色固有の識別子を付与する。特に、色固有の識別子として、慣用的な色名前を利用すると、原画像の配色の印象を容易に想像することができるから好都合である。
【0050】
さらに、色弱者自身が文書を理解するためだけでなく、色覚健常者と色弱者とがコミュニケーションするに際しては、色覚健常者と共通な色識別手段を用いる必要があり、この目的からも慣用的な色名を用いることが望まれる。
【0051】
両者のコミュニケーションを円滑に進めるためには、両者ともが理解可能で、かつ共通の識別手段を提供可能であることが必須であり、本実施形態はそれを満たす。つまり、同一文書を健常者と色弱者との両方が理解可能な形態にすることは、色弱者の抱える問題を解決するにあたり、本質的に要求されることである。
【0052】
色の名前を取得する基本的な原理を以下に示す。
まず、カラーパレット44(図5)として、慣用色名とそのRGB値との対応表(いわゆる色見本、色パレット)を用意する。
【0053】
例えば、Web技術分野においてはHTML3.2/4.0にて16色について、RGB値と名前の対応表が規定されている。他にも、色名とRGB値が規定されている各種色パレットが存在する。X Window System の色名とRGB値の対応関係は、例えばXFree86ならばX11R6/lib/X11/rgb.txt というテキストファイルに定義されている。また、JIS色名帳[第2版(JIS Z 8102:2001準拠]「物体色の色名」においては慣用色名とそのRGB値が規定されている。名前を取得したい色が、使用する色見本のどの色に近似できるのかがわかれば、当該色は、近似色の名前であると判断できる。
【0054】
色を近似する場合は、色をRGB3次元空間にある点と考えて、近似したい色と固定パレットとの3次元空間での距離を総当りで調べて、その距離が最小になるものを近似色とする。3次元空間での色と色との距離は、色A(Ra,Ga,Ba)と色B(Rb,Gb,Bb)の場合、以下の式で求める(ユークリッド距離の場合)。
【0055】
各色のRGB差
ΔR=Ra−Rb
ΔG=Ga−Gb
ΔB=Ba−Bb
2色間の距離(L)={(ΔR)2+(ΔG)2+(ΔB)2}1/2
【0056】
他の方法としては、Binary Space Partitioning(空間分割法)という二分木を使い、空間をツリー構造を用いて定義していく方法がある。この方法の方が上述した総当り法よりも高速処理が可能である。なお、色の名前を取得する手段に関する従来技術には、特許文献2、3に開示されたものがあり、上述の基本的な原理を効率化、精緻化している。本実施形態では、公知或いは周知のどのような取得手段を用いてもよい。
【0057】
[領域ラベリング処理]
この処理は、図4のステップS1、図5の対応情報取得部42で実行される処理の一例である。
【0058】
色情報を取得する領域を矩形領域に限定すると、原文書を効率よく、かつ精緻に分割することができないことがある。よって、画素単位に同一色連続領域を求め、色情報を抽出する。同一色連続領域は、領域ラベリング処理によって求める。
【0059】
ラベリング処理とは、連結している画素で同じ色情報を持った集合にラベル番号を付加する処理のことである。手順は、まず画像上でラベルが付加されていない画素に対し新しいラベル番号を付加する。そして、新しいラベル番号を付加した画素と連結していて同じ色情報を持っている画素に対し同じラベル番号を付加する。次に、同じラベル番号を付加した画素と連結していて同じ色情報を持っている画素に対して同じラベル番号を付加する。この操作を連結していて同じ色情報を持っている画素がなくなるまで続ける。これで、一つの連結成分に同じラベル番号が付加される。その後,最初に戻りラベル番号が付加されていない画素に対して同様の処理を行う。全ての画素にラベル番号が付加されたとき、ラベリング処理は終了する。ラベリング処理の流れの一例を図7に示す。
【0060】
図8に領域ラベリング処理のフローを示す。
ステップS11:領域に付与するラベル番号のカウンタ0にクリアする。
ステップS12:ラベル無し画素(ラベルの付与されていない画素)があるか否か判定し、あればステップS13に進む。全ての画素にラベルが付与されたならばフローを終了する。
【0061】
ステップS13:ラベル無し画素に現ラベル番号(ラベル番号カウンタの値)を付与する。
ステップS14:ステップS13にてラベルが付与された画素の近傍(上下左右の4方向或いは上下左右斜めの8方向)を探索する。
【0062】
ステップS15:ラベルが付与された画素の近傍に、同色のラベル無し画素があるか否か判定し、あれば当該画素を処理対象画素に設定し、ステップS13に戻る。近傍画素の全てがラベル付与済みであれば、ステップS16に進む。
【0063】
ステップS16:ラベル番号カウンタをインクリメントし、ステップS12に戻る。
以上をまとめると、画像レイヤー31の画像データに対して、ラベリング処理によって同一色の連続領域を求めた後、その領域の色情報を抽出し、画像レイヤー31の画像データは変化させず、抽出した色情報に対応する色識別情報を情報挿入レイヤー32に付加するということになる。
【0064】
[領域の代表位置の決定]
この処理は、図4のステップS1、図5の対応情報取得部42で実行される処理の一例である。
【0065】
ラベリング処理によって求められる領域は画素単位に変化する不定形である。よって、その領域を代表するにふさわしい位置を求めることが必要である。不定形領域内の、その領域を代表する一点としてふさわしい、ひとつの条件としては、領域内の中心であること、つまり、領域周辺から等距離にあることである。
【0066】
不定形な領域の中心には厳密な定義はないが、当該領域の最大内接円を求め、その中心によって代替すれば、所期の目的は達成できる。本実施形態では、当該領域の最大内接円を求めた後、その中心の直上に位置する情報挿入レイヤーに当該領域の色情報を配置することによって、不定形領域の色情報を使用者に提示することができる。
【0067】
まず図9に示すように、画像レイヤー31の画像データから、同一色の連続領域に内接する最大円の中心P1〜P3などの位置を求め、情報挿入レイヤー32の同じ位置に配置する。
【0068】
次に図10に示すように、同一色の連続領域のラベリング結果の数値321〜328を、情報挿入レイヤー32における中心P1〜P3などと同じ位置に上書きする。ここで、色間の区別さえつけば十分であるなら、色名を付与する必要は無く、当該領域のラベリング結果のみ配置する。同一色の領域は同じラベルとなるから、色間の区別はつき、かつ同一色の判断もできる。
【0069】
最後に図11に示すように、各領域の色名3211〜3281を先にラベリング結果の数値321〜328を配置した位置に上書きする。
【0070】
図12は、図9に示す同一色の連続領域に内接する最大円の中心P1〜P3などを求める処理のフローである。
ステップS21:最大半径値を0、中心座標を(0,0)にクリアする。
ステップS22:未検討画素があるか否か判定し、あれば当該画素を選択してステップS13に進む。なければ、即ち全ての画素の最大内接半径を求めたなら、フローを終了する。
【0071】
ステップS23:最大半径値をインクリメントする。
ステップS24:現注目画素の現半径内に含まれる画素を探索し、現領域のラベルと異なるラベルを持つ画素の有無を検査する。
【0072】
ステップS25:ラベルの異なる画素があるか否か判定し、あればステップS26に進み、なければステップS23に戻る。
ステップS26:現半径値が最大半径値を越えているか否か判定し、越えているならばステップS27に進み、越えていないならばステップS22に戻る。
【0073】
ステップS27:最大半径値を現半径値で更新し、現画素の座標値を中心座標値に設定した後にステップS22に戻る。
【0074】
図9〜図11の処理をまとめると、画像レイヤー31の画像データにおいて、ラベリング処理によって同一色の連続領域を求めた後、その領域の色情報を抽出し、さらに当該領域の最大半径内接円を求め、画像レイヤー31の画像データは変化させず、最大半径内接円の中心に対応する情報挿入レイヤー32の位置に、抽出した色情報に対応する色識別情報を付加するということになる。
【0075】
[グレイ原稿の処理]
グレイ原稿においては、濃淡によって文書作成者の意図を表現する場合があるが、2値モードにてスキャンした場合には、得られる画像ファイルにおいては濃淡の情報は欠落してしまう。そこで、先述したカラー画像と同様に濃淡の情報も情報挿入レイヤーに配置することによって、グレイ画像からの情報欠落を補完することができる。
【0076】
上記の処理をまとめると、画像レイヤーの画像データにおいて格子状に領域分割し、その領域に対する濃淡情報を求め、画像レイヤーの画像データは変化させず、抽出した濃淡情報を情報挿入レイヤーに付加するということになる。
【0077】
[分散処理]
本実施形態の情報処理装置を図13に示すシステム上で実現することもできる。このシステムでは、ネットワーク101を介して、MFP(Multi Function Peripheral)102、サーバ103、スキャナ104が接続されており、MFP102或いはスキャナ104から入力したカラー原稿に対し、図5に示す処理を施す場合に、MFP102或いはスキャナ104とサーバ103とで、処理を分担するように構成してもよい。
【0078】
以上のように、本実施形態によれば、透明テキスト付きPDFファイルを用いて、画像レイヤー31とは別の情報挿入レイヤー32上に、画像レイヤー31の画像データの色識別情報を追加することによって、原画像データの原本性を担保しつつ、色識別情報を付加することができる。
また、付加された色識別情報を使用者自身で可視/不可視を切り替えることができるから、色覚健常者用文書と色弱者用文書とを個々に準備する必要がなく、使用者自身が用途を選択し、表示/印刷することが可能となる。
この結果、色覚健常者は、色弱者向けに作成されたカラー画像に対して違和感を覚えることない一方、色弱者は色識別情報を得ることができるので、両者の使用感を著しく改善することができる。
【符号の説明】
【0079】
31・・・画像レイヤー、32・・・情報挿入レイヤー、41・・・画像データ取得部、42・・・対応情報取得部、43・・・挿入態様決定部、44・・・カラーパレット。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】特開2001−257867号公報
【特許文献2】特開2002−22537号公報
【特許文献3】特許第3208961号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー画像に対し、色弱者のための色識別情報を付加する情報処理装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近ではカラー印刷が容易になり、個人の作成する文書においても、図14Aに示すように、色によって図の意図を表現するものが増大している。なお、この図において、グラフ21a及び凡例21bに記載されている色名は、その色でカラー印刷或いは表示されていることを説明するために便宜上付したものであって、印刷画像や表示画像に色名が付加されているわけではない。また、「山」、「萌」、「レ」はそれぞれ山吹色、萌黄色、レモンイエローである。
【0003】
しかしながら、色覚健常者にとっては容易に識別可能な色であっても、色覚に障害を持つ人々(いわゆる色弱者)にとっては、他の色との識別が困難な色もあり、色のみに頼った表現の文書を正しく理解できない場合も少なくない。例えば、赤色の知覚が困難であり、緑と赤の区別がつきにくい色弱者は、緑と赤によって塗り分けられたグラフなどを解釈することが難しい。
【0004】
またカラー文書であって、データ量削減のためにグレイモードでスキャンし、画像ファイル化した場合、例えば図14Aは図14Bのように記録されてしまい、グラフ中および凡例において、China、Bangladesh、Other が同じように最も濃い灰色になってしまい、グラフを解釈することができない。
【0005】
つまり、色覚健常者、色弱者に関わらず、色のみに頼った表現を用いた文書は理解されない場合があることに留意すべきである。
【0006】
色弱者の色識別を補助するための発明としては、原文書の色情報を抽出し、それを色名に変換し、原文書の上に重ねて印刷/表示するものがある(特許文献1参照)。しかし、色領域に色名を明示的に記入する方法は、原文書の改変を意味し、色覚健常者が通常、目にする文書とは大きく異なり、奇異な印象を与え、色覚健常者の使用感を著しく損なうおそれがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、カラー画像に色弱者のための色識別情報を付加しても、色覚健常者が違和感を覚えることがないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の情報処理装置は、マルチレイヤー機能を有するファイルのあるレイヤーに書き込まれたカラー画像データを取得する画像データ取得部と、そのカラー画像データにより形成されるカラー画像の領域と色との対応関係を取得する領域/色対応情報取得部と、前記領域の色に対応する色識別情報を決定する色識別情報決定部と、その色識別情報を前記レイヤーと別のレイヤーにおける前記領域と対応する位置に書き込む色識別情報付加部とを有することを特徴とする情報処理装置である。
本発明の情報処理方法は、マルチレイヤー機能を有するファイルのあるレイヤーに書き込まれたカラー画像データを取得する画像データ取得工程と、そのカラー画像データにより形成されるカラー画像の領域と色との対応関係を取得する領域/色対応情報取得工程と、前記領域の色に対応する色識別情報を決定する色識別情報決定工程と、その色識別情報を前記レイヤーと別のレイヤーにおける前記領域と対応する位置に書き込む色識別情報付加工程とを有することを特徴とする情報処理方法である。
本発明のプログラムは、コンピュータを、本発明の情報処理装置として機能させるためのプログラムである。
【0009】
[作用]
本発明によれば、マルチレイヤー機能を有するファイルのあるレイヤーに書き込まれたカラー画像データから、カラー画像の領域毎の色情報を抽出し、別レイヤー上の前記領域と同じ位置に、抽出した色情報に対応する色識別情報(色名等)を書き込むことによって、原画像の原本性を担保しつつ、情報を付加する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、付加された色識別情報を使用者自身で可視/不可視を切り替えることができるから、色覚健常者用文書と色弱者用文書とを個々に準備する必要がなく、使用者自身が用途を選択し、表示/印刷することが可能となる。従って、色覚健常者は、色弱者向けに作成されたカラー画像に対して違和感を覚えることない一方、色弱者は色識別情報を得ることができるので、両者の使用感を著しく改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の情報処理装置のハードウェアブロック図である。
【図2】透明テキスト付きPDFの一例を示す図である。
【図3】透明テキスト付きPDFにおいて、OCR結果のテキストの代わりに色識別情報を配置する様子を示す図である。
【図4】透明テキスト付きPDFの情報挿入レイヤーに色識別情報を付与する処理の概略のフローを示す図である。
【図5】図4に対応する機能ブロックを示す図である。
【図6】領域分割のサイズと画像の解像度との関係を示す図である。
【図7】領域ラベリング処理の流れの一例を示す図である。
【図8】領域ラベリング処理のフローを示す図である。
【図9】同一色の連続領域に内接する最大円及びその中心を求める処理を示す図である。
【図10】図9で求めた最大円の中心にラベリング結果の数値を配置する処理を示す図である。
【図11】各領域の色名を図9で求めた最大円の中心に配置する処理を示す図である。
【図12】図9に示す同一色の連続領域に内接する最大円及びその中心を求める処理のフローである。
【図13】分散処理により本発明の処理が可能なシステムを示す図である。
【図14】従来のカラー文書を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。
[情報処理装置]
図1は、本発明の実施形態の情報処理装置のハードウェアブロック図である。
この情報処理装置は、バス1と、それぞれがバス1に接続されたCPU(Central Processing Unit)2、メモリ3、通信装置4、表示装置5、HDD(Hard Disk Drive)6、入力装置7、光学ドライブ8、及びFDドライブ9を備えている。
【0013】
CPU2は、この情報処理装置の動作制御を行うものである。メモリ3は、CPU2が起動時に実行するプログラムや必要なデータ等を記憶するためのROM(Read Only Memory)、CPU2のワークエリア等を構成するためのRAM(Random Access Memory)などからなる。通信装置4は、この情報処理装置をインターネットなどのネットワークに接続するための装置である。
【0014】
表示装置5は、液晶ディスプレイなどからなり、この情報処理装置を操作するための画面や動作状態を表示する。入力装置7は、キーボードやマウスなどからなり、この情報処理装置に対する種々のキー操作や指示を行うためのものである。
【0015】
HDD6は種々のアプリケーションプログラム、ワークデータ、及びファイルデータなどを記憶する。光学ドライブ8は、CD−ROMやDVD−ROMなどの記録媒体の読み出しを行うための装置である。FDドライブ9は、フレキシブルディスクに対する書き込み及び読み出しを行うための装置である。
【0016】
[マルチレイヤー機能を有するファイル]
本実施形態の情報処理装置はマルチレイヤー機能(複数のレイヤーを定義可能であり、レイヤー毎にデータの書き込み/読み出しが可能なファイル)を有するファイルを扱うので、まずマルチレイヤー機能を有するファイルの一例として透明テキスト付きPDF(Portable Document Format)について説明する。なお、以降、PDFを例に説明するが、PDFに代表されるマルチレイヤー機能をもつ電子文書において、一般的に具備している要素のみに言及するものであり、本発明はPDFに限らず、マルチレイヤー機能をもつ電子文書全般に適用できることは言うまでもない。
【0017】
図2に、透明テキスト付きPDFの一例を示す。ここで、図2Aは透明テキスト付きPDFを示し、図2Bはそのレイヤーを示す。図2Bのように、原画像中の文字画像11aのOCR結果であるテキスト12aを、原画像のレイヤー111とは別のレイヤー112において文字画像11aの直上に不可視色、つまり透明で配置し、画像の見栄えを変更することなく、OCR結果と統合したものが、図2Aに示す透明テキスト付きPDF11である。PDFファイルの編集ツールであるAcrobat(登録商標)を用いることによって、透明テキストに任意の色を着色できる。当然、元の不可視色に戻すことも可能である。
【0018】
そこで、本実施形態では、透明テキスト付きPDFにおいて、OCR結果のテキストの代わりに色情報を配置する。
図3に説明図を示す。画像レイヤー31に書き込まれている各画素(或いは矩形領域)の画像データは色情報を持っており、情報挿入レイヤー32において、各画素(或いは矩形領域)の直上の位置に色識別情報を不可視色のテキストにより挿入する。なお、この図を含めて、以下に示す図5、図6A〜C、図9〜図11に記載されているグラフの画像は、実際は図14Aに示す色を持つが、便宜上、濃淡で表示している。
【0019】
色識別情報については、RGB値、色相(色名)、彩度、明度など、テキスト化できる情報であれば、所望のものを挿入してよい。画素(或いは矩形領域)の色識別情報を参照したい場合には、PDFファイル専用ツールを用いて不可視テキストを着色し、印刷や表示をする。或いは、文書作成時に可視色テキストにより情報を挿入し、文書の使用者が当該情報を不要の場合に不可視色に変更することも可能である。
【0020】
色弱者は、自身の色弱を他人に知られることに心理的な負担を感じる場合が多く、色弱者向けの特別な文書が配付されることには抵抗を感じることが予想される。この点からも、健常者と色弱者との両方に同一文書を配布し、使用者側にて色弱用に変更可能な文書を実現できる本実施形態は好適である。
【0021】
また、従来からある透明テキスト付きPDFでは情報挿入レイヤーには、図2に示したように、原文書中の文字をOCRした結果が貼付されているが、このテキストと、本実施形態による色識別情報のテキストとを区別するために、色識別情報のテキストには区別用の接頭辞或いは接尾辞などを付加してもよい。これによって、本文中のテキストを検索キーで文書検索する場合においても、色識別情報のテキストが誤ってヒットすることを避けることができる。区別用の接頭辞は、“#F000”など、原文書に登場する確率が低い文字列を使用すればよい。
【0022】
なお、透明テキスト付きPDFの場合、検索が主目的であり、原画像の上に配置された透明テキストを使用者が明示的に可視色に変更することは稀である。なぜなら使用者は原画像の文字を見ることで原文書を読むことが出来るので、あえてOCR結果を読む必要がないからである。しかも、OCR結果が誤っていても、原画像の文字は変わりなく読むことができるので、OCR結果の誤りが原文書の読解に対して致命的な問題になりにくい利点もある。
【0023】
一方、本実施形態では、マルチレイヤー文書フォーマットを用い、原画像の上に配置された色識別情報のテキストを、使用者が明示的に可視色に、或いは不可視色に変更可能な点に注目したものであり、透明テキスト付きPDFとは目的が異なる。しかも、透明テキスト付きPDFにおける付加情報は、使用者が原文書にて可読なものであるのに対し、本実施形態における付加情報は、使用者(色弱者)が知覚できないものである点も、透明テキスト付きPDFと本実施形態との大きな相違点である。
【0024】
[情報処理装置の処理の概要]
図4に、情報挿入レイヤーに画像データの色識別情報を付与する処理の概略フローを示す。また、それに対応する機能ブロックを図5に示す。この機能ブロックは、図1におけるCPU2が、メモリ3及びHDD6に記憶されているプログラムを実行することによる実現される。以下、図4、図5の順に説明する。
【0025】
ステップS1:色情報を抽出する領域を設定する。その最小単位は画素になる。
ステップS2:ステップS1で設定された領域の色情報を抽出する。複数画素から成る領域の場合は代表色を求める。
【0026】
ステップS3:ステップS2で抽出した各領域の色情報から近似色を決定する。
ステップS4:当該領域の色情報を、情報挿入レイヤーにおける当該領域と同一の位置に配置する。
なお、各ステップの詳細については後述する。
【0027】
画像データ取得部41により画像レイヤー31からカラー画像データを取り込み、対応情報取得部42により、画像レイヤー31おける画像の指定位置の色情報を取得し、その色情報をカラーパレット(カラー情報データベース)44内の色名称に変換し、挿入態様決定部43によって、先に得られた色名(色識別情報)を情報挿入レイヤー32の指定位置に配置する。つまり、画像レイヤー31の画像データから色情報を抽出し、色情報から色名に変換した後、画像レイヤー31の画像は変化させず、抽出した色名を情報挿入レイヤー32に挿入する。ここで、対応情報取得部42が本発明における領域/色対応情報取得部及び色識別情報決定部に対応し、挿入態様決定部43が色識別情報付加部に対応する。
【0028】
[減色処理]
この処理は、図4のステップS1、図5の対応情報取得部42で実行される処理の一例である。
【0029】
連続する色変化から、人間が知覚しやすい、離散的な代表値を抽出したものが色名である。カラー文書を作成する際には、色間の差異を人間が知覚しやすい配色にするよう配慮される場合が多い。
【0030】
よって、自然画像の微妙な配色を除いて、グラフや、強調、警告など、文書作成者の意図を伝えるために用いた色は、各々容易に識別できる程度の色数に抑えられている。言い換えると、慣用色名のある色パレットに用意されている全ての色を同一文書内で区別する必要はない場合が多い。これは、スキャン条件や、印刷条件の微妙な変化が画像ファイルにおけるRGB値の微妙な変化を生じさせたとしても、その変化を考慮して色名を求める必要はないことを意味する。
【0031】
そこで慣用色名を決める前に、処理対象の原稿内に含まれる代表的な色に量子化(減色)し、識別の容易な、安定した色集合に変換する。加えて、減色すると各色間のコントラストが強調される傾向になり、より識別容易になる点も色弱者の色識別問題の解決にとって好ましい。
【0032】
減色処理後は、微妙な色変化は代表色に統合されることによって、色数が減じられ、色数の少ない色パレットを用いて色名称を求めることができる。色数の少ない色パレットほど、短い色名称が用いられているのは明らかであるから、情報挿入レイヤーに色名称を挿入するに必要なスペースが小さくて済む。これにより、色名記載に要する面積が狭くてよく、原画像への影響が小さくなり好都合である。
【0033】
減色手段としては、代表的なものにメディアンカット方法があり、一般的な画像処理機能分野として確立されている。
【0034】
以上をまとめると、画像レイヤー31の画像データに減色処理を施し、減色処理済みの画像データに対して色情報抽出処理を実施し、画像レイヤー31の画像データは変化させず、抽出した色情報に対応する色識別情報を情報挿入レイヤー32に付加するということになる。
【0035】
[微小な同一色連続領域の無視]
この処理は、図4のステップS1、図5の対応情報取得部42で実行される処理の一例である。
【0036】
同一色連続領域が微小な場合、原文書の印刷条件の変化、或いはスキャン条件の変化に起因する、本来は不要な色変化である可能性がある。また、微小な同一色連続領域は、そもそも原文書において重要でない場合もある。
【0037】
よって、同一色連続領域の画素数を計数し、画素数が多い(所定の閾値を越える)領域のみ、色情報を取得し、情報挿入レイヤー32に色識別情報を配置すれば、処理及び記憶容量も減ぜられ、好都合である。加えて、微小領域の限られたスペースに色識別情報を付与し、隣接領域の色識別情報と重複してしまう過剰さを避けることがきる。
【0038】
以上をまとめると、画像レイヤー31の画像データにおいて、同一色の連続領域の画素数を計数し、計数結果から微小領域か否かを判断し、微小領域でないなら、その領域の色情報を抽出し、画像レイヤー31の画像データは変化させず、抽出した色情報に対応する色識別情報を情報挿入レイヤー32に付加するということになる。
【0039】
[代表色の決定]
この処理は、図4のステップS1、図5の対応情報取得部42で実行される処理の一例である。
【0040】
個々の画素に色情報は存在するが、減色処理の説明において述べたように、自然画像部分を除けば、一般的なカラー文書においては微妙な色変化が用いられることは少なく、同一色領域は、人間が容易に知覚できる大きさを持つ。よって、いたずらに微小範囲の色情報を取得し、表示、印刷する必要はなく、寧ろ色情報の過剰な表示は煩わしく、使用感を大きく損ねる。
【0041】
よって、画像を格子状に分割し、その分割された矩形範囲において、代表色を求め、その代表色の色情報を当該矩形領域の直上の情報挿入レイヤー32に配置する。代表色を決定するための手段としては、色空間として、RGB/HSV/Hの重みが大きいHSVを採用し、「単純に平均して代表色にする」、「一番画素数の多い色を代表色にする」など、各種方法が考えられ、所望する結果が得られるものを採用すればよい。
【0042】
以上をまとめると、画像レイヤー31の画像データにおいて格子状に領域分割し、その領域に対する代表色を求め、画像レイヤー31の画像データは変化させず、抽出した色情報に対応する色識別情報を情報挿入レイヤー32に付加するということになる。
【0043】
[領域分割のサイズ]
この処理は、図4のステップS1、図5の対応情報取得部42で実行される処理の一例である。
【0044】
図6に格子状に分割(量子化)するサイズを変更した例を示す。ここで、図6A、B、Cは、それぞれ画像レイヤー31上のカラー画像領域31aを分割するサイズが小さい(高解像度)場合、中程度(高解像度)の場合、大きい(低解像度)の場合である。なお、図6Dは、濃淡領域を分割した場合を示している。
【0045】
図6A〜Cより、格子が大きくなる程、大まかに原文書の色分布を把握できることがわかる。原文書について微細領域の色を識別する必要がないのであれば、格子サイズを大きくした方が、情報挿入レイヤー32に挿入される色識別情報のテキストが少なくなるので、処理量及び記憶容量も減ぜられ、好都合である。よって目的に応じて、格子状分割のサイズを調整できるようにしておくことが有用である。
【0046】
以上をまとめると、画像レイヤー31の画像データに対して、使用者がサイズ変更可能な格子状に領域分割し、その領域に対する代表色を求め、画像レイヤー31の画像データは変化させず、抽出した色情報に対応する色識別情報を情報挿入レイヤー32に付加するということになる。
【0047】
[近似色の決定]
この処理は、図4のステップS3、図5の対応情報取得部42で実行される処理の一例である。
【0048】
実用的な可視文字サイズには限界があるので(参考:JIS S 0032:2003 『高齢者・障害者配慮設計指針‐視覚表示物‐日本語文字の最小可読文字サイズ推定方法』)、情報付与に用いるフォントの最小サイズも決まり、色情報をすべてテキスト形式で付与することは困難である。
【0049】
限りのあるテキスト数でもって色識別を補助するために、色固有の識別子を付与する。特に、色固有の識別子として、慣用的な色名前を利用すると、原画像の配色の印象を容易に想像することができるから好都合である。
【0050】
さらに、色弱者自身が文書を理解するためだけでなく、色覚健常者と色弱者とがコミュニケーションするに際しては、色覚健常者と共通な色識別手段を用いる必要があり、この目的からも慣用的な色名を用いることが望まれる。
【0051】
両者のコミュニケーションを円滑に進めるためには、両者ともが理解可能で、かつ共通の識別手段を提供可能であることが必須であり、本実施形態はそれを満たす。つまり、同一文書を健常者と色弱者との両方が理解可能な形態にすることは、色弱者の抱える問題を解決するにあたり、本質的に要求されることである。
【0052】
色の名前を取得する基本的な原理を以下に示す。
まず、カラーパレット44(図5)として、慣用色名とそのRGB値との対応表(いわゆる色見本、色パレット)を用意する。
【0053】
例えば、Web技術分野においてはHTML3.2/4.0にて16色について、RGB値と名前の対応表が規定されている。他にも、色名とRGB値が規定されている各種色パレットが存在する。X Window System の色名とRGB値の対応関係は、例えばXFree86ならばX11R6/lib/X11/rgb.txt というテキストファイルに定義されている。また、JIS色名帳[第2版(JIS Z 8102:2001準拠]「物体色の色名」においては慣用色名とそのRGB値が規定されている。名前を取得したい色が、使用する色見本のどの色に近似できるのかがわかれば、当該色は、近似色の名前であると判断できる。
【0054】
色を近似する場合は、色をRGB3次元空間にある点と考えて、近似したい色と固定パレットとの3次元空間での距離を総当りで調べて、その距離が最小になるものを近似色とする。3次元空間での色と色との距離は、色A(Ra,Ga,Ba)と色B(Rb,Gb,Bb)の場合、以下の式で求める(ユークリッド距離の場合)。
【0055】
各色のRGB差
ΔR=Ra−Rb
ΔG=Ga−Gb
ΔB=Ba−Bb
2色間の距離(L)={(ΔR)2+(ΔG)2+(ΔB)2}1/2
【0056】
他の方法としては、Binary Space Partitioning(空間分割法)という二分木を使い、空間をツリー構造を用いて定義していく方法がある。この方法の方が上述した総当り法よりも高速処理が可能である。なお、色の名前を取得する手段に関する従来技術には、特許文献2、3に開示されたものがあり、上述の基本的な原理を効率化、精緻化している。本実施形態では、公知或いは周知のどのような取得手段を用いてもよい。
【0057】
[領域ラベリング処理]
この処理は、図4のステップS1、図5の対応情報取得部42で実行される処理の一例である。
【0058】
色情報を取得する領域を矩形領域に限定すると、原文書を効率よく、かつ精緻に分割することができないことがある。よって、画素単位に同一色連続領域を求め、色情報を抽出する。同一色連続領域は、領域ラベリング処理によって求める。
【0059】
ラベリング処理とは、連結している画素で同じ色情報を持った集合にラベル番号を付加する処理のことである。手順は、まず画像上でラベルが付加されていない画素に対し新しいラベル番号を付加する。そして、新しいラベル番号を付加した画素と連結していて同じ色情報を持っている画素に対し同じラベル番号を付加する。次に、同じラベル番号を付加した画素と連結していて同じ色情報を持っている画素に対して同じラベル番号を付加する。この操作を連結していて同じ色情報を持っている画素がなくなるまで続ける。これで、一つの連結成分に同じラベル番号が付加される。その後,最初に戻りラベル番号が付加されていない画素に対して同様の処理を行う。全ての画素にラベル番号が付加されたとき、ラベリング処理は終了する。ラベリング処理の流れの一例を図7に示す。
【0060】
図8に領域ラベリング処理のフローを示す。
ステップS11:領域に付与するラベル番号のカウンタ0にクリアする。
ステップS12:ラベル無し画素(ラベルの付与されていない画素)があるか否か判定し、あればステップS13に進む。全ての画素にラベルが付与されたならばフローを終了する。
【0061】
ステップS13:ラベル無し画素に現ラベル番号(ラベル番号カウンタの値)を付与する。
ステップS14:ステップS13にてラベルが付与された画素の近傍(上下左右の4方向或いは上下左右斜めの8方向)を探索する。
【0062】
ステップS15:ラベルが付与された画素の近傍に、同色のラベル無し画素があるか否か判定し、あれば当該画素を処理対象画素に設定し、ステップS13に戻る。近傍画素の全てがラベル付与済みであれば、ステップS16に進む。
【0063】
ステップS16:ラベル番号カウンタをインクリメントし、ステップS12に戻る。
以上をまとめると、画像レイヤー31の画像データに対して、ラベリング処理によって同一色の連続領域を求めた後、その領域の色情報を抽出し、画像レイヤー31の画像データは変化させず、抽出した色情報に対応する色識別情報を情報挿入レイヤー32に付加するということになる。
【0064】
[領域の代表位置の決定]
この処理は、図4のステップS1、図5の対応情報取得部42で実行される処理の一例である。
【0065】
ラベリング処理によって求められる領域は画素単位に変化する不定形である。よって、その領域を代表するにふさわしい位置を求めることが必要である。不定形領域内の、その領域を代表する一点としてふさわしい、ひとつの条件としては、領域内の中心であること、つまり、領域周辺から等距離にあることである。
【0066】
不定形な領域の中心には厳密な定義はないが、当該領域の最大内接円を求め、その中心によって代替すれば、所期の目的は達成できる。本実施形態では、当該領域の最大内接円を求めた後、その中心の直上に位置する情報挿入レイヤーに当該領域の色情報を配置することによって、不定形領域の色情報を使用者に提示することができる。
【0067】
まず図9に示すように、画像レイヤー31の画像データから、同一色の連続領域に内接する最大円の中心P1〜P3などの位置を求め、情報挿入レイヤー32の同じ位置に配置する。
【0068】
次に図10に示すように、同一色の連続領域のラベリング結果の数値321〜328を、情報挿入レイヤー32における中心P1〜P3などと同じ位置に上書きする。ここで、色間の区別さえつけば十分であるなら、色名を付与する必要は無く、当該領域のラベリング結果のみ配置する。同一色の領域は同じラベルとなるから、色間の区別はつき、かつ同一色の判断もできる。
【0069】
最後に図11に示すように、各領域の色名3211〜3281を先にラベリング結果の数値321〜328を配置した位置に上書きする。
【0070】
図12は、図9に示す同一色の連続領域に内接する最大円の中心P1〜P3などを求める処理のフローである。
ステップS21:最大半径値を0、中心座標を(0,0)にクリアする。
ステップS22:未検討画素があるか否か判定し、あれば当該画素を選択してステップS13に進む。なければ、即ち全ての画素の最大内接半径を求めたなら、フローを終了する。
【0071】
ステップS23:最大半径値をインクリメントする。
ステップS24:現注目画素の現半径内に含まれる画素を探索し、現領域のラベルと異なるラベルを持つ画素の有無を検査する。
【0072】
ステップS25:ラベルの異なる画素があるか否か判定し、あればステップS26に進み、なければステップS23に戻る。
ステップS26:現半径値が最大半径値を越えているか否か判定し、越えているならばステップS27に進み、越えていないならばステップS22に戻る。
【0073】
ステップS27:最大半径値を現半径値で更新し、現画素の座標値を中心座標値に設定した後にステップS22に戻る。
【0074】
図9〜図11の処理をまとめると、画像レイヤー31の画像データにおいて、ラベリング処理によって同一色の連続領域を求めた後、その領域の色情報を抽出し、さらに当該領域の最大半径内接円を求め、画像レイヤー31の画像データは変化させず、最大半径内接円の中心に対応する情報挿入レイヤー32の位置に、抽出した色情報に対応する色識別情報を付加するということになる。
【0075】
[グレイ原稿の処理]
グレイ原稿においては、濃淡によって文書作成者の意図を表現する場合があるが、2値モードにてスキャンした場合には、得られる画像ファイルにおいては濃淡の情報は欠落してしまう。そこで、先述したカラー画像と同様に濃淡の情報も情報挿入レイヤーに配置することによって、グレイ画像からの情報欠落を補完することができる。
【0076】
上記の処理をまとめると、画像レイヤーの画像データにおいて格子状に領域分割し、その領域に対する濃淡情報を求め、画像レイヤーの画像データは変化させず、抽出した濃淡情報を情報挿入レイヤーに付加するということになる。
【0077】
[分散処理]
本実施形態の情報処理装置を図13に示すシステム上で実現することもできる。このシステムでは、ネットワーク101を介して、MFP(Multi Function Peripheral)102、サーバ103、スキャナ104が接続されており、MFP102或いはスキャナ104から入力したカラー原稿に対し、図5に示す処理を施す場合に、MFP102或いはスキャナ104とサーバ103とで、処理を分担するように構成してもよい。
【0078】
以上のように、本実施形態によれば、透明テキスト付きPDFファイルを用いて、画像レイヤー31とは別の情報挿入レイヤー32上に、画像レイヤー31の画像データの色識別情報を追加することによって、原画像データの原本性を担保しつつ、色識別情報を付加することができる。
また、付加された色識別情報を使用者自身で可視/不可視を切り替えることができるから、色覚健常者用文書と色弱者用文書とを個々に準備する必要がなく、使用者自身が用途を選択し、表示/印刷することが可能となる。
この結果、色覚健常者は、色弱者向けに作成されたカラー画像に対して違和感を覚えることない一方、色弱者は色識別情報を得ることができるので、両者の使用感を著しく改善することができる。
【符号の説明】
【0079】
31・・・画像レイヤー、32・・・情報挿入レイヤー、41・・・画像データ取得部、42・・・対応情報取得部、43・・・挿入態様決定部、44・・・カラーパレット。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0080】
【特許文献1】特開2001−257867号公報
【特許文献2】特開2002−22537号公報
【特許文献3】特許第3208961号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチレイヤー機能を有するファイルのあるレイヤーに書き込まれたカラー画像データを取得する画像データ取得部と、
そのカラー画像データにより形成されるカラー画像の領域と色との対応関係を取得する領域/色対応情報取得部と、
前記領域の色に対応する色識別情報を決定する色識別情報決定部と、
その色識別情報を前記レイヤーと別のレイヤーにおける前記領域と対応する位置に書き込む色識別情報付加部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載された情報処理装置において、
前記色識別情報付加部は、前記色識別情報を不可視色を含む任意の色で書き込むことを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載された情報処理装置において、
前記領域/色対応情報取得部は、入力されるカラー画像データを減色する減色手段を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載された情報処理装置において、
前記領域/色対応情報取得部は、前記カラー画像の領域を格子状に分割した領域と色との対応関係を取得することを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載された情報処理装置において、
前記格子状に分割した領域のサイズが可変であることを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載された情報処理装置において、
前記領域/色対応情報取得部は、前記画像データから同一色の連続領域と色との対応関係を取得することを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載された情報処理装置において、
前記領域/色対応情報取得部は、前記画像データから同一色の連続領域の最大内接円の中心位置と色との対応関係を取得し、前記色識別情報付加部は、前記中心位置に前記色識別情報を書き込むことを特徴とする情報処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載された情報処理装置において、
前記画像データから同一色の連続領域の画素数をカウントする手段を有し、前記領域/色対応情報取得部は、前記カウント手段のカウント値が所定の閾値を越える領域についてのみ色との対応関係を取得することを特徴とする情報処理装置。
【請求項9】
マルチレイヤー機能を有するファイルのあるレイヤーに書き込まれたカラー画像データを取得する画像データ取得工程と、
そのカラー画像データにより形成されるカラー画像の領域と色との対応関係を取得する領域/色対応情報取得工程と、
色情報データベースを参照して、前記領域の色に対応する色識別情報を決定する色識別情報決定工程と、
その色識別情報を前記レイヤーと別のレイヤーにおける前記領域と対応する位置に書き込む色識別情報付加工程と、
を有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項10】
コンピュータを、本発明の情報処理装置として機能させるためのプログラム。
【請求項1】
マルチレイヤー機能を有するファイルのあるレイヤーに書き込まれたカラー画像データを取得する画像データ取得部と、
そのカラー画像データにより形成されるカラー画像の領域と色との対応関係を取得する領域/色対応情報取得部と、
前記領域の色に対応する色識別情報を決定する色識別情報決定部と、
その色識別情報を前記レイヤーと別のレイヤーにおける前記領域と対応する位置に書き込む色識別情報付加部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載された情報処理装置において、
前記色識別情報付加部は、前記色識別情報を不可視色を含む任意の色で書き込むことを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載された情報処理装置において、
前記領域/色対応情報取得部は、入力されるカラー画像データを減色する減色手段を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載された情報処理装置において、
前記領域/色対応情報取得部は、前記カラー画像の領域を格子状に分割した領域と色との対応関係を取得することを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載された情報処理装置において、
前記格子状に分割した領域のサイズが可変であることを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載された情報処理装置において、
前記領域/色対応情報取得部は、前記画像データから同一色の連続領域と色との対応関係を取得することを特徴とする情報処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載された情報処理装置において、
前記領域/色対応情報取得部は、前記画像データから同一色の連続領域の最大内接円の中心位置と色との対応関係を取得し、前記色識別情報付加部は、前記中心位置に前記色識別情報を書き込むことを特徴とする情報処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載された情報処理装置において、
前記画像データから同一色の連続領域の画素数をカウントする手段を有し、前記領域/色対応情報取得部は、前記カウント手段のカウント値が所定の閾値を越える領域についてのみ色との対応関係を取得することを特徴とする情報処理装置。
【請求項9】
マルチレイヤー機能を有するファイルのあるレイヤーに書き込まれたカラー画像データを取得する画像データ取得工程と、
そのカラー画像データにより形成されるカラー画像の領域と色との対応関係を取得する領域/色対応情報取得工程と、
色情報データベースを参照して、前記領域の色に対応する色識別情報を決定する色識別情報決定工程と、
その色識別情報を前記レイヤーと別のレイヤーにおける前記領域と対応する位置に書き込む色識別情報付加工程と、
を有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項10】
コンピュータを、本発明の情報処理装置として機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図12】
【図13】
【図14】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図12】
【図13】
【図14】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−66523(P2011−66523A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213476(P2009−213476)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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