説明

情報処理装置、電子機器及び画像処理システム

【課題】秘密情報を暗号化してセキュリティレベルの異なる画像を混在させて印刷物として印刷することで、閲覧を許可されたユーザや装置のみが秘密情報を閲覧できるようにする。
【解決手段】情報処理装置のテキスト・エディタで入力・編集した文書の一部を選択し、暗号化を指示する操作を行うことにより、その選択部分を暗号化することができる。この画像データを紙媒体等に印刷させると、印刷物200のように、暗号化部分201、202が暗号化される。暗号化部分には、ユーザや装置を認証する認証情報を暗号化して含めておき、この印刷物200をカメラ付の携帯端末装置で撮影し、認証情報を入力すると、携帯端末装置では暗号化部分を復号して、その表示部に暗号化前の元の画像を表示させる。これにより、正しく認証されたユーザや装置に限って、暗号化情報を復号させることができ、セキュリティを高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、電子機器及び画像処理システムに関し、より詳細には、紙媒体に印刷する画像データを暗号化する情報処理装置と、暗号化した画像データを読み取って復号して出力する電子機器と、これら情報処理装置及び電子機器からなる画像処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば会議の参加者に配布するための会議資料などは、紙媒体に印刷した印刷物として配布されることが一般的に行われている。また、会議資料などには、外部へ漏洩すべきでない秘密情報が含まれることが多い。しかしながら、紙媒体の印刷物により会議資料等を作成した場合、その印刷物が外部に流出し、秘密情報が外部に漏洩する危険性がある。従って、秘密情報については、紙媒体に印刷して配布することは敬遠される。
【0003】
紙媒体等に印刷するデータの保護技術に関し、例えば特許文献1には、印刷処理のパフォーマンスを維持しつつドライバとプリンタとの間のデータを保護するようにした暗号化印刷処理技術が開示されている。
この暗号化印刷処理では、印刷データの一部について暗号化が指定されている場合、クライアントはプリンタがサポートする機能を判定する。そして、プリンタが部分暗号化に対応していれば、指定部分を暗号化し、PDLコマンドまたはXMLタグによりその部分を特定してプリンタに送信する。プリンタはそれを復号して印刷出力する。部分暗号化をサポートしないプリンタに対しては、印刷を中止するか、あるいは暗号化を指定された部分について、他の文字列に置換してからプリンタに印刷データを送信する。
【0004】
また、特許文献2には、電子メールを公開鍵方式により暗号化して送信する場合に、発信者が送信相手の公開鍵を誤りなく容易に取得できるようにする技術が開示されている。この技術は、名刺に氏名、住所、電子メールアドレスなどの個人情報をコード化した第1のQRコード(登録商標)、公開鍵をコード化した第2のQRコード、氏名、住所、電子メールアドレスなどの個人情報と共に公開鍵をコード化した第3のQRコードを記録しておく。そして、携帯電話機のカメラ部によって第1ないし第3のQRコードを撮影すると、制御部がその撮影したQRコードに記録されている名刺の名義人本人の個人情報および公開鍵を解読して記憶部のアドレス帳用記憶領域に登録する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−107459号公報
【特許文献2】特開2007−168099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
秘密情報を含む会議資料などにおいて、秘密情報のみを暗号化し、その秘密情報の閲覧を許可された特定のユーザだけが閲覧できるようにし、もしくは閲覧を許可された特定の装置だけで閲覧を可能とすることにより、秘密情報の漏洩の危険性に係る課題を解決することができるが、そのようなシステムはこれまで実現されていない。
秘密情報の漏洩に関するセキュリティ意識の高まりにより、印刷物として文書化する情報に対する取り扱いの慎重さが求められているなかで、柔軟な暗号化を行うことができるシステムが求められる。
【0007】
特許文献1には、文書の一部分の暗号化について記載されているが、限定されたユーザのみがカメラやスキャナなどを通して文書を閲覧するような用途を想定していない。
また、特許文献2に記載の技術は、QRコードをカメラで読み取り、個人情報を復号化し、その個人情報をアドレス帳に登録する内容が示されているが、秘密情報を含む文書を暗号化して漏洩の危険性から保護するものではない。
【0008】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、秘密情報を暗号化してセキュリティレベルの異なる画像を混在させて印刷物として印刷することで、閲覧を許可されたユーザや装置のみが秘密情報を閲覧できるようにした情報処理装置、電子機器、および画像処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、ユーザの操作入力を受け付ける操作部と、該操作部に対する操作入力に従って文書の作成を行う文章作成ソフトウェアを記憶する記憶部と、該記憶部に記憶した文書作成ソフトウェアを実行する制御部と、を有する情報処理装置であって、前記制御部は、前記操作部に対する操作入力に従って、前記文書作成ソフトウェアが作成した文書の特定の範囲を選択して所定の方式で暗号化し、暗号化前の文書を暗号化した文書に置き換えた画像データを生成し、該画像データには、前記操作部に入力された認証情報を暗号化して付加することを特徴としたものである。
【0010】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記文書作成ソフトウェアが作成する文書を表示する表示部を有し、前記制御部が、前記文書作成ソフトウェアが作成する文書を前記表示部に表示し、該表示部が、前記文書を選択する操作入力に従って、選択された範囲を明示的に表示することを特徴としたものである。
【0011】
第3の技術手段は、第1または第2の技術手段において、前記記憶部が、印刷装置で画像データの印刷動作を行わせるソフトウェアであるプリンタドライバを記憶し、前記制御部が、前記プリンタドライバを実行し、前記暗号化前の文書を暗号化した文書に置き換えて前記認証情報を付加した画像データを、印刷用画像データとして印刷装置に出力することを特徴としたものである。
【0012】
第4の技術手段は、第1〜第3のいずれか1の技術手段の情報処理装置から出力され印刷装置で記録媒体に記録した印刷物の画像データを入力する画像入力部と、ユーザの操作入力を受け付ける操作部と、前記画像入力部が入力した画像データの画像処理を行う画像処理部と、該画像処理部が画像処理した画像データを出力する画像出力部とを有し、前記画像処理部は、前記画像入力部が入力した画像データを解析して所定の方式で暗号化された部分の画像データを抽出し、暗号化部分を復号して非暗号化部分の画像データと統合し、前記画像出力部に出力する電子機器であって、前記操作部に入力された認証情報と、前記暗号化部分に暗号化されて付加されている認証情報とを比較して認証を行い、認証が成功した場合に前記画像処理部による復号を許可する制御部を有することを特徴としたものである。
【0013】
第5の技術手段は、第4のいずれか1の技術手段において、前記画像入力部が、画像を撮影するカメラ部であって、前記出力部が、前記暗号化部分を復号して非暗号化部分の画像データと統合した画像データを表示する表示部であることを特徴としたものである。
【0014】
第6の技術手段は、第4の技術手段において、前記画像入力部が、記録媒体に記録した画像を読み取る画像読取部であって、前記画像出力部が、前記暗号化部分を復号して非暗号化部分の画像データと統合した画像データを記録媒体に画像形成する画像形成部であることを特徴としたものである。
【0015】
第7の技術手段は、第1〜第3のいずれか1の技術手段の情報処理装置と、第4〜第6のいずれか1の技術手段電子機器とからなる画像処理システムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、秘密情報を暗号化してセキュリティレベルの異なる画像を混在させて印刷物として印刷することで、閲覧を許可されたユーザや装置のみが秘密情報を閲覧できるようになり、秘密情報を印刷物にする際に高いセキュリティが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による情報処理装置を含むシステムの構成例を示す図である。
【図2】本発明に適用される文書データの一部を暗号化する際に用いられるテキスト・エディタの画面の一例を示す図である。
【図3】選択部分が暗号化された文書の印刷結果の一例を示す図である。
【図4】暗号化された文書の復号を行うための携帯端末装置の構成例を示す図である。
【図5】文書の一部を暗号化して印刷する際の他の例を示す図である。
【図6】文書の一部が暗号化された印刷物から、暗号化データを復号して閲覧するときの様子の一例を説明する図である。
【図7】本発明に係る電子機器の処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明による情報処理装置を含むシステムの構成例を示す図で、図中、1は情報処理装置、2は画像形成装置である。この例では、情報処理装置1は、PC(パーソナルコンピュータ)であり、情報処理装置1と画像形成装置2は、ネットワーク4を介して相互に接続され、画像形成装置2は、情報処理装置1からの指示に基づいて印刷等の画像形成処理を実行する印刷装置である。ネットワークには、複数の情報処理装置2が接続可能であり、また、複数の画像形成装置2が接続可能である。画像形成装置2は、MFPを例示するが、この他、情報処理装置1にインストールされたプリンタドライバにより制御可能な単機能のプリンタ装置であってもよい。
【0019】
情報処理装置1は、例えば汎用的なコンピュータで構成され、情報処理装置1の動作を制御するCPU11と、制御プログラムなどの実行領域となるRAM12と、制御プログラムやデータなどを格納するROM13と、HDDなどで構成される記憶部14と、マウスやキーボードなどのポインティングデバイスで構成される入力部15と、LCDなどの表示部16と、ネットワーク4に接続する通信インタフェースである通信部17と、画像形成装置2などの外部機器にデータを出力する出力部18と、これら各部を相互に接続するシステムバス19とを有している。
【0020】
また、記憶部14には、画像形成装置2で印刷処理を実行させるためのプリンタドライバ14aがインストールされている。印刷実行時には、CPU11がプリンタドライバ14aをRAM12に読み出して印刷処理を実行する。
また、記憶部14には、情報処理装置で動作可能な各種のアプリケーションがインストール可能で、例えば、文書を入力・編集するために用いる文書作成ソフトウェアであるテキスト・エディタ14bが記憶されている。
【0021】
画像形成装置2は、プリンタ機能、コピー機能、ファクシミリ機能、スキャナ機能などの複数の機能を備えた複合機(MFP(Multifunction Peripheral))として構成される。
画像形成装置2は、画像データを紙媒体等に印刷する処理を行う画像形成部21と、画像形成装置2が備える各機能を制御する機器制御部22と、画像形成装置2の制御情報や設定情報などを記憶するメモリである管理部23と、ネットワーク4を介して情報処理装置1と通信する通信部24と、各種データを記憶するための記憶手段の一例であるHDD(ハードディスクドライブ)25と、HDD25に記憶されたデータを消去する消去部26と、データに対して各種画像処理を施すための画像処理部27と、ユーザによる操作入力を受け付ける操作部28と、原稿画像を電子的に読み取る画像読取部29とを備える。
【0022】
画像形成部21は、LSU(Laser Scanning Unit:レーザ走査ユニット)などの印字部21aと、画像処理部27で画像処理されたデータを一時的に保持する揮発性メモリ21bとを備えている。
また、操作部28は、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)などの表示部28aと、タッチパネルを介してユーザからの操作入力を受け付けるタッチパネル部28bと、各種操作キーやテンキーなどの入力キー群で構成される入力キー28cとを備えており、ユーザは操作部28を操作することにより、画像形成装置2に対する操作入力や各種設定の入力を行うことができる。
【0023】
画像形成装置2をプリンタとして利用する場合、画像形成装置2では、通信部24が受信した画像データを揮発性メモリ21bに保持し、画像形成部21によって紙媒体等に印刷出力する。画像形成装置2の通信部24は、有線あるいは無線を利用してネットワーク4と接続され、ネットワーク4上に接続された情報処理装置1から画像データを受信する。受信した画像データは、ページ単位に揮発性メモリ21bに送られ、必要に応じて一旦HDD25へ記憶される。そして、画像データは、再びHDD25から揮発性メモリ21bに送られ、印字部21aへと転送され、印字部21aによって紙媒体等に印刷される。
【0024】
図2は、本発明に適用される文書データの一部を暗号化する際に用いられるテキスト・エディタの画面の一例を示す図である。図1の構成を参照しながら説明する。
例えば、Microsoft WORD(登録商標)のようなテキスト・エディタ14bは、PC等の情報処理装置1で動作し、文書の入力・編集等を実行する文書作成ソフトウェアである。
テキスト・エディタ14bの動作によって例えば図2に示すような画面が表示される。この画面には、ツールバーが設定されるが、本発明に係る実施形態では、テキスト・エディタのツールバーに暗号化アイコン101を設ける。ユーザは、マウスやキーボードなどの操作部28使用してこの暗号化アイコン101を操作することにより、選択範囲のテキストを暗号化することができる。
【0025】
例えば、ユーザが情報処理装置1で上記のようなテキスト・エディタ14bを起動させ、表示部28aに図2のような画面を表示させる。そして、ユーザは、テキストやイメージ等による文書を入力・編集した後に、ツールバーに表示されている暗号化アイコン101を操作する。そして、暗号化を行なう文書領域や図形を選択する。例えば、暗号化部分102のように、マウスのドラッグ操作により暗号化する領域を選択する。選択した暗号化部分102は、画面上で色が変化する等により、選択されていることを明示的に表示する。
【0026】
あるいは、暗号化部分103のように、ユーザが選択領域の開始点と終了点を指定することにより、所望の範囲を選択することができる。もしくは暗号化部分104のように、マウスのドラッグ操作により矩形の暗号化領域を選択することができる。そして、選択が終了した後に暗号化アイコン101を操作する。これにより、文書中の選択領域を暗号化する指示を行なうことができる。なお、図2の矢印やカッコ、点線等は、選択の方法を説明するために示すものであり実際に画面表示されるものではない。
【0027】
暗号化部分が選択され、暗号化アイコン101が操作されると、テキスト・エディタ14bは、選択された暗号化部分を暗号化する処理を行う。
また、情報処理装置1で動作するプリンタドライバ14aによって、対象の文書を印刷する際に、テキスト・エディタ14bは、暗号化部分をプリンタドライバ14aに指示し、プリンタドライバ14aでその暗号化部分の領域を暗号化するようにしてもよい。
【0028】
図3は、選択部分が暗号化された文書の印刷結果の一例を示す図である。上記のように情報処理装置1のテキスト・エディタ14bで入力・編集され、一部が暗号化された文書を画像形成装置2で紙媒体等に印刷すると、図3に示すような印刷物200が得られる。この印刷物200では、例えば、ユーザにより選択された文書の暗号化部分201と写真の暗号化部分202とが暗号化され、そのままでは暗号化前の元の情報を理解できないようになっている。このように、文書の一部を暗号化することにより、セキュリティの度合いが異なる情報を混在させて電子データ化し、印刷物200として提供することができる。
【0029】
この例では、暗号化はQRコード(登録商標)の規格に従って実行され、印刷物200には暗号化後のQRコードが印刷される。QRコードは縦横に情報を持つため格納できる情報量が多く、数字だけでなく英字や漢字など多言語のデータ、バイナリ・制御コード等あらゆるデータを扱うことができる。
【0030】
QRコードは、暗号化前の元の情報の内容を単に隠蔽するために利用することも可能であるが、QRコードには、そのQRコードに格納した文書情報等を復号化するための認証情報を付加情報として付加する。認証情報は、暗号化文書等の復号を許可する利用者の識別情報とすることができ、あるいは、復号する携帯端末やデジタル複写機の機種名、シリアル番号、マックアドレスのように装置を特定する情報としてもよい。
【0031】
QRコード化された暗号化部分が印刷された印刷物200の復号は、カメラ付の携帯端末装置や、スキャナ(画像読取)機能を備えた画像形成装置により実行できる。これらは本発明の電子機器の実施形態に該当する。
例えば、画像形成装置の画像読取部で印刷物200を読み込み、暗号化部分を復号して紙媒体に印刷出力する。もしくは携帯端末装置のカメラ部によって印刷物を撮影し、暗号化部分を復号して携帯端末装置の表示部に表示させることができる。
【0032】
この復号は、QRコード化された暗号化部分の閲覧を許可されたユーザや、閲覧可能な装置によって行うことができる。この場合、ユーザは、画像形成装置や携帯端末装置に、復号を許可された利用者の識別番号や装置を特定する情報からなる認証情報を入力する。画像形成装置や携帯端末装置では、入力された認証情報と、QRコードに付加された認証情報とを比較し、これらが一致する場合に限って、暗号化部分の復号を実行する。これにより閲覧が許可された特定の利用者や装置でのみ、暗号化部分を復号することができ、セキュリティを高めることができる。
【0033】
そして、印刷物のセキュリティが高まるため、会議資料等として配布した印刷物が外部に流出したり、紛失したりすることがあっても暗号化部分の情報は漏洩することはなく、安心して印刷物を配布することができる。また、秘密情報等を暗号化して印刷できるため、秘密情報の部分を欠落させて文書を作成する等の煩雑な作業を行う必要がなくなる。
【0034】
図4は、暗号化された文書の復号を行うための携帯端末装置の構成例を示す図である。携帯端末装置5は、カメラ部51、画像解析部52、復号部53、画像統合部54、操作部55、制御部56、表示部57、無線部58、及びアンテナ59を備えている。
制御部56は、携帯端末装置5の各部を制御する。操作部55は、ユーザによる操作入力を受け付ける。操作部55は例えば複数のキーを含む。また、カメラ部51は、ユーザの操作により画像を撮影する。ここでは暗号化された文書を撮影してその画像データを画像解析部52に出力する。画像解析部52は、カメラ部51により撮影された画像を解析し、所定の暗号化された画像があるか否かを判断する。
【0035】
復号部53は、画像解析部52が解析した結果、暗号化された画像があればその復号を行う。この場合、暗号化部分の元の文書情報に付加されている認証情報を復号し、操作部55に対して入力されたユーザの識別情報もしくは装置を特定する情報からなる認証情報と比較して、一致すれば、暗号化されている元の文書情報を復号する。
画像統合部54は、復号された文書情報の画像データと、暗号化部分以外の文書の画像データとを統合して暗号化前の文書に相当する画像データを生成する。表示部57は、画像統合部54から出力された画像データを表示する。無線部58は、アンテナ59と接続され、外部機器との通信を行う。上記の画像解析部52,復号部53、画像統合部54が本発明の画像処理部に該当する。
【0036】
暗号化された文書の復号は、上記の携帯端末装置5によっても可能であるが、この他、スキャナ機能を備えた画像形成装置で実行させることもできる。この場合、暗号化文書を復号する画像形成装置として、図1に示すMFPとして構成された画像形成装置2を適用することができる。図1を参照して説明すると、暗号化された部分を含む文書を画像読取部29にて読み取り、画像処理部27によって、読み取った画像を解析し、所定の暗号化された画像があるか否かを判断する。
【0037】
そして画像処理部27は、暗号化された画像があればその復号を行う。この場合、暗号化部分の元の文書情報に付加されている認証情報を復号し、操作部28に対して入力されたユーザの識別情報もしくは装置を特定する情報からなる認証情報と比較して、これらが一致すれば、暗号化されている元の文書情報を復号する。その後画像処理部27は、復号された文書情報の画像データと、暗号化部分以外の文書の画像データとを統合して暗号化前の文書に相当する画像データを生成する。画像形成部21は、画像処理部27で生成された画像データを紙媒体に印刷することができる。また、画像処理部27で生成された画像データを表示部28aに表示させるようにしてもよい。画像処理部27は、図2の携帯情報端末5の画像解析部52、復号部53、及び画像統合部54の一連の処理を行っていることになる。
【0038】
図5は、文書の一部を暗号化して印刷する際の他の例を示す図で、画像形成装置2に備えられている表示部28aの表示画面の一例を示すものである。画像形成装置2では、画像読取部29によって原稿を読み取って、その画像データを紙媒体等に印刷することができる。また、PC等の外部機器から送信された画像データを紙媒体等に印刷するプリンタとしても機能する。
この場合、画像形成装置2では、読み取った原稿の画像データや外部機器から送信された画像データを印刷する前に、表示部28aにプレビュー表示を行う機能を持つものがある。図5は、このような印刷ジョブを実行する際のプレビュー表示画面の一例を示すものである。
【0039】
図5に示すように、表示部28aに表示された表示画面300には、画像形成装置の条件設定を行うための各種ボタン類305、306が表示される。これらのボタン類305、306の具体的な内容はその説明を省略する。そして、表示画面300の中央部には、画像読取部29で読み取った、もしくは外部機器から送信された画像データ301がプレビュー表示される。通常ユーザは、このプレビュー表示を確認して開始ボタン304を操作することにより、プレビュー表示された画像データ301を紙媒体等に印刷させることができる。ここで本実施形態では、プレビュー表示された画像データ301に対して、ユーザ操作によってユーザが所望する範囲を暗号化して印刷出力させることができる。
【0040】
例えば、タッチパネル部28bによる操作入力が可能であれば、ユーザは、プレビュー表示されている画像データ301に対して、タッチパネル部28bに指等をタッチさせてドラッグ操作を行うことにより、暗号化部分を選択することができる。選択した部分は、画面上で色が変化する等により、選択されていることを明示的に表示する。この例では、ユーザにより選択された文書の暗号化部分302と写真の暗号化部分303とが選択されている。この状態で、開始ボタン304を操作して印刷を実行させると、選択した部分が例えばQRコードに暗号化された状態で印刷される。QRコードには、上記の例と同様に、利用者の識別情報や装置を特定する情報からなる認証情報を付加させることができる。
【0041】
図6は、文書の一部が暗号化された印刷物から、暗号化データを復号して閲覧するときの様子の一例を説明する図である。
ユーザは、カメラ付きの携帯端末装置5を使用して、暗号化部分を撮影する。携帯端末装置5は、QRコードを復号して表示する機能を備えているため、カメラ部51により撮影したQRコードを復号し、表示部57に表示させる。表示部57には、文書の暗号化部分201と写真の暗号化部分202とが復号されて、それぞれ復号文書201´、復号写真202´として表示される。
【0042】
このとき、携帯端末装置5を使用するユーザは、予め知らされている認証情報を入力する必要がある。認証情報は、ユーザの識別情報、もしくは携帯端末装置5を特定する情報である。携帯端末装置5では、入力された認証情報を認証し、暗号化文書を閲覧可能であると判定すれば、カメラ部51により撮像した暗号化情報を復号して表示部57に表示させる。認証が失敗した場合には、復号を行わない。このときに、認証が失敗したため暗号化情報を復号できない旨を表示部57に表示するようにしてもよい。
【0043】
上記の処理により、印刷物200を作成するときに、秘密性の高い情報などの所望の情報を選択して暗号化させて印刷し、暗号化情報を閲覧する権限のあるユーザや装置のみで暗号化情報を復号して表示させることができる。このとき、カメラ部51を用いて撮影した画像を復号して、表示部57により直ちに確認することができ、その場で暗号化情報の内容を確認することができる。
【0044】
図7は、本発明に係る電子機器の処理の一例を説明するためのフローチャートで、カメラ付き携帯端末装置における撮像および復号・表示処理について示すものである。
携帯端末装置5では、QRコード等の暗号化情報が印刷された印刷物を内蔵カメラ(カメラ部51)で撮影し、印刷物の画像を取得する(ステップS1)。そして取得した画像を解析し、暗号部分を検索する(ステップS2)。例えば、QRコードの矩形の角部分に配置されている暗号化範囲を示すマークを検索し、QRコードがその範囲にあることを認識する。
【0045】
暗号化部分の検索により印刷物に暗号化情報があった場合(ステップS3−Yes)、暗号化部分の暗号化情報を復号する(ステップS4)。そして復号により得られた画像データを、撮影画像内の暗号化部分のサイズに拡縮する(ステップS5)。そして、拡縮した画像データを撮影画像に統合する(ステップS6)。これにより、特定の範囲を暗号化する前の元となる文書の画像データが得られる。そして、携帯端末装置5が備える表示部57にその画像データを出力する(ステップS7)。
また、ステップS3で暗号化情報がなかった場合には、復号処理を行わず(ステップS8)、そのまま表示部57に画像データを出力する(ステップS7)。
【符号の説明】
【0046】
1…情報処理装置、2…画像形成装置、4…ネットワーク、5…携帯端末装置、11…CPU、12…RAM、13…ROM、14…記憶部、14a…プリンタドライバ、14b…テキスト・エディタ、15…入力部、16…表示部、17…通信部、18…出力部、19…システムバス、21…画像形成部、21a…印字部、21b…揮発性メモリ、22…機器制御部、23…管理部、24…通信部、25…HDD、26…消去部、27…画像処理部、28…操作部、28a…表示部、28b…タッチパネル部、28c…入力キー、29…画像読取部、51…カメラ部、52…画像解析部、53…復号部、54…画像統合部、55…操作部、56…制御部、57…表示部、58…無線部、59…アンテナ、101…暗号化アイコン、102…暗号化部分、103…暗号化部分、104…暗号化部分、200…印刷物、201…暗号化部分、201’…復号文書、202…暗号化部分、202’…復号写真、300…表示画面、301…画像データ、302…暗号化部分、303…暗号化部分、304…開始ボタン、305…ボタン類。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの操作入力を受け付ける操作部と、
該操作部に対する操作入力に従って文書の作成を行う文章作成ソフトウェアを記憶する記憶部と、
該記憶部に記憶した文書作成ソフトウェアを実行する制御部と、を有する情報処理装置であって、
前記制御部は、前記操作部に対する操作入力に従って、前記文書作成ソフトウェアが作成した文書の特定の範囲を選択して所定の方式で暗号化し、暗号化前の文書を暗号化した文書に置き換えた画像データを生成し、
該画像データには、前記操作部に入力された認証情報を暗号化して付加することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置において、
前記文書作成ソフトウェアが作成する文書を表示する表示部を有し、
前記制御部は、前記文書作成ソフトウェアが作成する文書を前記表示部に表示し、
該表示部は、前記文書を選択する操作入力に従って、選択された範囲を明示的に表示することを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の情報処理装置において、
前記記憶部は、印刷装置で画像データの印刷動作を行わせるソフトウェアであるプリンタドライバを記憶し、
前記制御部は、前記プリンタドライバを実行し、前記暗号化前の文書を暗号化した文書に置き換えて前記認証情報を付加した画像データを、印刷用画像データとして印刷装置に出力することを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1の情報処理装置から出力され印刷装置で記録媒体に記録した印刷物の画像データを入力する画像入力部と、
ユーザの操作入力を受け付ける操作部と、
前記画像入力部が入力した画像データの画像処理を行う画像処理部と、
該画像処理部が画像処理した画像データを出力する画像出力部とを有し、前記画像処理部は、前記画像入力部が入力した画像データを解析して所定の方式で暗号化された部分の画像データを抽出し、暗号化部分を復号して非暗号化部分の画像データと統合し、前記画像出力部に出力する電子機器であって、
前記操作部に入力された認証情報と、前記暗号化部分に暗号化されて付加されている認証情報とを比較して認証を行い、認証が成功した場合に前記画像処理部による復号を許可する制御部を有することを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項4に記載の電子機器において、
前記画像入力部は、画像を撮影するカメラ部であって、
前記画像出力部は、前記暗号化部分を復号して非暗号化部分の画像データと統合した画像データを表示する表示部であることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
請求項4に記載の電子機器において、
前記画像入力部は、記録媒体に記録した画像を読み取る画像読取部であって、
前記出力部は、前記暗号化部分を復号して非暗号化部分の画像データと統合した画像データを記録媒体に画像形成する画像形成部であることを特徴とする電子機器。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか1に記載の情報処理装置と、請求項4〜6のいずれか1に記載の電子機器とからなる画像処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−221210(P2012−221210A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86224(P2011−86224)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】