説明

情報処理装置およびソフトウェア更新方法

【課題】AV機能をユーザの誤操作に起因する破壊から保護することができ、且つそのAV機能を容易に更新することが可能な情報処理装置を実現する。
【解決手段】HDD121は、主OSがインストールされた主OS領域と、副OS、TVアプリケーションプログラム、およびビデオ再生アプリケーションプログラムから構成される映像データ処理ソフトウェアがインストールされた副OS領域とを有する。副OS領域は主OSから隠されている。主OS上で動作する更新ツール201は、副OS領域の隠蔽を一時的に解除する処理と、更新パッケージ300を副OS領域に書き込む処理と、副OS領域を主OSから再度隠蔽する処理とを実行する。副OSは副OS領域に存在する更新パッケージ300を用いて映像データ処理ソフトウェアをアップデートする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパーソナルコンピュータのような情報処理装置および同装置で用いられるソフトウェア更新方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、DVD(Digital Versatile Disc)プレーヤ、TV装置のようなオーディオ・ビデオ(AV)機器と同様のAV機能を備えたパーソナルコンピュータが開発されている。
【0003】
このようなパーソナルコンピュータにおいては、汎用の主オペレーティングシステムの他に、AV機能専用の副オペレーティングシステムが利用される。AV機能は、主オペレーティングシステムを起動することなく、副オペレーティングシステムを起動するだけで利用することが出来る。
【0004】
もし副オペレーティングシステムのシステム環境がユーザによる誤操作によって破壊されると、AV機能は正常に機能しなくなる。このため、副オペレーティングシステムは、主オペレーティングシステムから隠された記憶領域に格納することが必要である。
【0005】
特許文献1には、主オペレーティングシステム(OS)と、この主OSから隠された領域にインストールされたスペシャルOSとを利用するシステムが開示されている。特許文献1のシステムにおいては、ディスク記憶装置(HDD)上に主OSから隠された領域を作成するために、”SETMAX”というコマンドが用いられている。“SETMAX”は、ATA(AT Attachment)-5コマンドセットで定義されたコマンドである。このコマンドは、HDDの実際の記憶容量の範囲内に擬似的な最大領域(maximum address)を特定することが出来る。擬似的な最大領域以降の記憶領域は、主OSから隠される。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0229768A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、パーソナルコンピュータのAV機能をアップグレードするためには、副オペレーティングシステムまたはその副オペレーティングシステム上で動作するAVアプリケーションプログラムを更新することが必要となる。ソフトウェアの更新は、通常、インターネット上のWebサイトから更新パッケージと呼ばれるソフトウェアプログラムをダウンロードすることによって行われる。しかしながら、副オペレーティングシステムの機能はその高速起動を実現するために大幅に制限されている。このため、副オペレーティングシステムの動作環境下でインターネット上のWebサイトをアクセスすることは困難である。よって、副オペレーティングシステムによって提供される、AV機能のような機能を更新するための新たな機能を実現することが必要である。
【0007】
本発明は上述の事情を考慮してなされたものであり、副オペレーティングシステムによって提供される機能をユーザの誤操作に起因する破壊から保護することができ、且つその機能を容易に更新することが可能な情報処理装置およびソフトウェア更新方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、本発明の情報処理装置は、第1のオペレーティングシステムが管理する第1の記憶領域と、前記第1のオペレーティングシステムと異なる第2のオペレーティングシステムが管理することによって、前記第1のオペレーティングシステムから隠蔽されている第2の記憶領域とを含む記憶装置と、前記第2の記憶領域の隠蔽を解除して前記第1のオペレーティングシステムから前記第2の記憶領域をアクセス可能な状態に設定する手段と、前記第2の記憶領域に記憶されているソフトウェアを更新するための更新プログラムを前記アクセス可能な状態に設定された第2の記憶領域に書き込む手段と、前記更新プログラムが書き込まれた第2の記憶領域を前記第1のオペレーティングシステムから再度隠蔽する手段と、前記再度隠蔽した後に、前記更新プログラムを実行する手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、映像データを処理する機能を有する情報処理装置において、外部から映像データを受信する受信部と、第1のオペレーティングシステムによって管理される第1の記憶領域と、第1のオペレーティングシステムと異なる第2のオペレーティングシステムが管理することによって、前記第1のオペレーティングシステムから隠蔽されている第2の記憶領域とを含む記憶装置と、前記情報処理装置に設けられた第1ボタンおよび第2ボタンと、前記第1ボタンが操作された場合、前記第1のオペレーティングシステムを起動し、前記第2ボタンが操作された場合、前記第2のオペレーティングシステムを起動する手段と、前記第2の記憶領域の隠蔽を解除して前記第1のオペレーティングシステムから前記第2の記憶領域をアクセス可能な状態に設定する手段と、前記第2の記憶領域に記憶され、前記受信部によって受信された映像データを再生および記録するソフトウェアを更新するための更新プログラムを前記アクセス可能な状態に設定された第2の記憶領域に書き込む手段と、前記更新プログラムが書き込まれた第2の記憶領域を前記第1のオペレーティングシステムから再度隠蔽する手段と、前記再度隠蔽した後に、前記更新プログラムを実行する手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、副オペレーティングシステムによって提供される機能をユーザの誤操作に起因する破壊から保護することができ、且つその機能を容易に更新することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
まず、図1および図2を参照して、本発明の一実施形態に係る情報処理装置の構成について説明する。この情報処理装置は、例えば、ノートブック型パーソナルコンピュータ10として実現されている。
【0012】
図1はノートブック型パーソナルコンピュータ10のディスプレイユニットを開いた状態における正面図である。本コンピュータ10は、コンピュータ本体11と、ディスプレイユニット12とから構成されている。ディスプレイユニット12には、LCD(Liquid Crystal Display)17から構成される表示装置が組み込まれており、そのLCD17の表示画面はディスプレイユニット12のほぼ中央に位置されている。
【0013】
ディスプレイユニット12は、コンピュータ本体11に対して開放位置と閉塞位置との間を回動自在に取り付けられている。コンピュータ本体11は薄い箱形の筐体を有しており、その上面にはキーボード13、本コンピュータ1を電源オン/オフするためのパワーボタン14、入力操作パネル15、およびタッチパッド16などが配置されている。
【0014】
入力操作パネル15は、押されたボタンに対応するイベントを入力する入力装置であり、複数の機能をそれぞれ起動するための複数のボタンを備えている。これらボタン群には、TV起動ボタン15A、DVD/CD起動ボタン15Bも含まれている。TV起動ボタン15Aは、TV放送番組データの再生及び記録を行うためのTV機能を起動するためのボタンである。TV起動ボタン15Aがユーザによって押下された時、TV機能を実行するためのTVアプリケーションプログラムが自動的に起動される。
【0015】
本コンピュータにおいては、汎用の主オペレーティングシステムの他に、AV(オーディオ・ビデオ)データを処理するための専用の副オペレーティングシステムがインストールされている。TVアプリケーションプログラムは、副オペレーティングシステム上で動作するプログラムである。
【0016】
パワーボタン14がユーザによって押下された時、主オペレーティングシステムが起動される。一方、TV起動ボタン15Aがユーザによって押下された時は、主オペレーティングシステムではなく、副オペレーティングシステムが起動され、そしてTVアプリケーションプログラムが自動的に実行される。副オペレーティングシステムはAV機能を実行するための最小限の機能のみを有している。このため、副オペレーティングシステムのブートアップに要する時間は、主オペレーティングシステムのブートアップに要する時間に比べて遙かに短い。よって、ユーザは、TV起動ボタン15Aを押すだけで、TV視聴/録画を即座に行うことが出来る。
【0017】
DVD/CD起動ボタン15Bは、DVDまたはCDに記録されたビデオコンテンツを再生するためのボタンである。DVD/CD起動ボタン15Bがユーザによって押下された時、ビデオコンテンツを再生するためのビデオ再生アプリケーションプログラムが自動的に起動される。このビデオ再生アプリケーションプログラムも、副オペレーティングシステム上で動作するアプリケーションプログラムである。DVD/CD起動ボタン15Bがユーザによって押下された時は、主オペレーティングシステムではなく、副オペレーティングシステムが起動され、そしてビデオ再生アプリケーションプログラムが自動的に実行される。
【0018】
次に、図2を参照して、本コンピュータ10のシステム構成について説明する。
【0019】
本コンピュータ10は、図2に示されているように、CPU111、ノースブリッジ112、主メモリ113、グラフィクスコントローラ114、サウスブリッジ119、BIOS−ROM120、ハードディスクドライブ(HDD)121、光ディスクドライブ(ODD)122、TVチューナ123、エンベデッドコントローラ/キーボードコントローラIC(EC/KBC)124、およびネットワークコントローラ125等を備えている。
【0020】
CPU111は本コンピュータ10の動作を制御するために設けられたプロセッサであり、ハードディスクドライブ(HDD)121から主メモリ113にロードされる、主オペレーティングシステム(主OS)/副オペレーティングシステム(副OS)、および各種アプリケーションプログラムを実行する。
【0021】
また、CPU111は、BIOS−ROM120に格納されたシステムBIOS(Basic Input Output System)も実行する。システムBIOSはハードウェア制御のためのプログラムである。
【0022】
ノースブリッジ112はCPU111のローカルバスとサウスブリッジ119との間を接続するブリッジデバイスである。ノースブリッジ112には、主メモリ113をアクセス制御するメモリコントローラも内蔵されている。また、ノースブリッジ112は、AGP(Accelerated Graphics Port)バスなどを介してグラフィクスコントローラ114との通信を実行する機能も有している。
【0023】
グラフィクスコントローラ114は本コンピュータ10のディスプレイモニタとして使用されるLCD17を制御する表示コントローラである。このグラフィクスコントローラ114はビデオメモリ(VRAM)114Aを有しており、OS/アプリケーションプログラムによってビデオメモリに書き込まれた表示データから、LCD17に表示すべき表示イメージを形成する映像信号を生成する。
【0024】
サウスブリッジ119は、LPC(Low Pin Count)バス上の各デバイス、およびPCI(Peripheral Component Interconnect)バス上の各デバイスを制御する。また、サウスブリッジ119は、HDD121、ODD122を制御するためのIDE(Integrated Drive Electronics)コントローラを内蔵している。さらに、サウスブリッジ119は、TVチューナ123を制御する機能、およびBIOS−ROM120をアクセス制御するための機能も有している。
【0025】
HDD121は、各種ソフトウェア及びデータを格納する記憶装置である。このHDD121はATAコマンドに従って動作するように構成されており、ATA−5コマンドセットをサポートする。HDD121は、主OS領域121Aと副OS領域121Bとを有している。主OS領域121Aには、上述の主OSおよびその主OS上で動作するアプリケーションプログラム群がインストールされている。主OS領域121Aは、主OSによって管理されている。副OS領域121Bには、上述の副OS、TVアプリケーションプログラム、およびビデオ再生アプリケーションプログラムがインストールされている。副OS領域121Bは副OSによって管理されている。副OS領域121Bは副OSによって管理されることによって、主OSからは隠蔽されている。この隠蔽領域は、例えばSETMAXコマンド等を用いて作成されている。
【0026】
光ディスクドライブ(ODD)123は、ビデオコンテンツが格納されたDVD、CDなどの記憶メディアを駆動するためのドライブユニットである。TVチューナ123は、TV放送番組のような放送番組データを外部から受信するための受信装置である。
【0027】
エンベデッドコントローラ/キーボードコントローラIC(EC/KBC)124は、電力管理のためのエンベデッドコントローラと、キーボード(KB)13およびタッチパッド16を制御するためのキーボードコントローラとが集積された1チップマイクロコンピュータである。このエンベデッドコントローラ/キーボードコントローラIC(EC/KBC)124は、ユーザによるパワーボタン14の操作に応じて本コンピュータ10をパワーオン/パワーオフする機能を有している。さらに、エンベデッドコントローラ/キーボードコントローラIC(EC/KBC)124は、ユーザによるTV起動ボタン15A、DVD/CD起動ボタン15Bの操作に応じて、本コンピュータ10をパワーオンすることもできる。
【0028】
ネットワークコントローラ125は、例えばインターネットなどの外部ネットワークとの通信を実行する通信装置である。
【0029】
図3は、HDD121の記憶イメージ(HDDイメージ)を示している。
【0030】
主OS領域121Aは、HDD121の記憶領域の先頭から、SETMAXコマンドで指定された擬似的な最大アドレス(maximum address)までの範囲の記憶領域である。主OS領域121Aは、例えば、1以上のプライマリーパーティションから構成されている。この主OS領域121Aには、主OSを起動(ブートアップ)するためのマスターブートレコード(MBR)と、副OS領域121Bの副OSを起動するための第2のマスターブートレコード(MBR2)が定義されている。
【0031】
BIOSは、本コンピュータ10がパワーオンされた時、EC/KBC124との通信によって、パワーボタン114およびTV起動ボタン15A(またはDVD/CD起動ボタン15B)のいずれが押されたかを判断する。パワーボタン114が押下されたならば、BIOSは、マスターブートレコード(MBR)を参照して主OSを起動する。一方、TV起動ボタン15A(またはDVD/CD起動ボタン15B)が押下されたならば、BIOSは、第2のマスターブートレコード(MBR2)を参照して副OSを起動する。
【0032】
副OS領域121Bは、SETMAXコマンドによって設定された最大アドレス(maximum address)から、HDD121の実際の最終アドレスまでの範囲の記憶領域である。副OS領域121Bには、録画領域とシステム領域とが定義されている。また、副OS領域121Bには、副OSを起動するためのブートローダも格納されている。録画領域は、TVチューナ123によって受信された放送番組データを保存するためのデータ記憶領域である。システム領域には、図4に示すように、副OS、TVアプリケーションプログラム、およびビデオ再生アプリケーションプログラム(DVDアプリケーションプログラム、CDアプリケーションプログラム)がインストールされている。これら副OS、TVアプリケーションプログラム、およびビデオ再生アプリケーションプログラムは、AV機能専用の映像データ処理ソフトウェアとして動作する。録画領域およびシステム領域は、例えば、互いに異なるプライマリーパーティションによって実現されている。
【0033】
本実施形態においては、副OS領域121Bの映像データ処理ソフトウェア(副OS、TVアプリケーションプログラム、およびビデオ再生アプリケーションプログラム)を更新するためのツールとして、更新ツールが用意されている。この更新ツールは、主OS上で動作するように構成されたソフトウェアモジュールであり、主OS領域121Aに予めインストールされている。更新ツールは、副OS領域121Bにインストールされた映像データ処理ソフトウェアを最新バージョンに更新するためのアップデート処理を実行する。
【0034】
この更新ツールは、映像データ処理ソフトウェアのアップデートを行う為に、以下の処理を実行する。
【0035】
1. 更新ツールは、副OS領域121Bの隠蔽を解除して主OSから副OS領域121Bをアクセス可能な状態に設定する処理を実行する。この場合、更新ツールは、SETMAXの設定を解除(無効化)するためのパラメータを含むコマンドをHDDドライバを介してHDD121に発行して、副OS領域121Bの隠蔽を解除する。HDDドライバはHDD121を制御する制御プログラムであり、主OSを構成するソフトウェアモジュールの一つとして機能する。SETMAXの設定が解除されると、主OSは、HDD121の実際の記憶領域のサイズを認識することが出来、これによって副OS領域121Bをアクセスすることが可能となる。
【0036】
2. 更新ツールは、インターネット上のWebサイト等から主OS領域121Aにダウンロードされた更新パッケージ(更新プログラム)を、副OS領域121Bに書き込む。更新パッケージは、副OS領域121Bの映像データ処理ソフトウェア(副OS、TVアプリケーションプログラム、およびビデオ再生アプリケーションプログラム)を更新するためのソフトウェアイメージ(更新イメージ)を含む。また、更新パッケージには、更新処理の手順を記述したシェルスクリプトも含まれている。副OS領域121Bのファイルシステムの種類は、主OS領域121Aのファイルシステムとは異なる。更新ツールは、副OS領域121Bのファイルシステムをアクセスする機能を有している。更新ツールは、副OS領域121Bのファイルシステム上の所定のディレクトリに、更新パッケージを書き込む。
【0037】
3. 更新ツールは、副OS領域121Bに更新パッケージを書き込んだ後、副OS領域121Bを主OSから再度隠蔽する処理を実行する。この場合、更新ツールは、SETMAXコマンドをHDDドライバを介してHDD121に発行して、主OS領域121Aと副OS領域121Bとの境界位置に擬似的な最大アドレス(maximum address)を設定する。これにより、副OS領域121Bは、主OSから再び隠される。
【0038】
映像データ処理ソフトウェアの実際の更新は、副OSの起動処理の中で実行される。すなわち、副OSは、その起動処理の中で、副OS領域121Bに更新パッケージが存在するか否かを判断する。もし存在するならば、副OSは、更新パッケージを用いて、映像データ処理ソフトウェア(副OS、TVアプリケーションプログラム、またはビデオ再生アプリケーションプログラム)を更新する。
【0039】
図5は、更新パッケージ300が、更新ツール201を介して副OS領域121Bに保存される一連の動作を示す図である。
【0040】
更新パッケージ300は、主OSによって制御されるネットワークコントローラ125を介してインターネット上の特定のWebサイトからダウンロードされる。すなわち、ユーザは、主OS領域121AにインストールされているWWWブラウザを用いてインターネット上の特定のWebサイトをアクセスすることにより、更新パッケージ300がWebサイトにアップロードされているかどうかを判断することができる。もし更新パッケージ300がWebサイトに存在するならば、ユーザは、WWWブラウザまたはFTP(File Transfer Protocol)を利用して更新パッケージ300をダウンロードすることができる。
【0041】
ダウンロードされた更新パッケージ300は、一旦主OS領域121Aに保存される。主OS領域121Aに保存された更新パッケージ300は、更新ツール201によって副OS領域121Bにコピーされる。
【0042】
この場合、更新ツール201は、まず、SETMAXの設定を一時的に解除して副OS領域121Bを主OSからアクセス可能にする。この後、更新ツール201は、主OS領域121Aから副OS領域121Bに更新パッケージ300をコピーする。更新ツール201は、副OS領域121Bへの更新パッケージ300のコピーを終了したら、SETMAXコマンドをHDD121に発行して、主OSから副OS領域121Bへのアクセスを不可能にする隠蔽処理を実行する。
【0043】
ここで、HDD121の全容量が80GB、副OS領域121Bとして使用される領域が5GBである場合を想定して、更新ツール201によって実行される処理を具体的に説明する。
【0044】
1. 本コンピュータ10は、SETMAXコマンドによって副OS領域121Bが主OSから隠された状態で出荷される。このため、75GBが主OS領域121Aとして利用される。
【0045】
2. 更新パッケージ300を副OS領域121Bに書き込むために、更新ツール201は、副OS領域121Bの隠蔽を一時的に解除する。これにより、HDD121の全容量80GBが更新ツール201からアクセス可能となる。
【0046】
3. 更新ツール201は、更新パッケージ300を副OS領域121Bに書き込む。
【0047】
4. 更新ツール201は、アップデートイメージ(更新パッケージ300)の書き込みを終了した時点で、SETMAXコマンドをHDD121に発行して副OS領域121Bを主OSから再び隠す。これにより、主OSがアクセス可能な領域は出荷時と同じ75GBになり、副OS領域121Bを保護することができる。
【0048】
なお、更新パッケージ300は、インターネットから取得するのではなく、例えばCD−ROMなどの記録媒体から取得することもできる。
【0049】
図6は、主OSの動作環境下において更新パッケージ300をダウンロードする動作を示すフローチャートである。
【0050】
更新パッケージ300がダウンロードされる命令がなされると、インターネット上の所定のURLで指定されるWebサイトに対するアクセスが実行される(ステップS101)。このWebサイトに映像処理ソフトウェアの更新パッケージ300がアップロードされている場合(ステップS102のYES)、更新パッケージ300のダウンロードが開始される(ステップS103)。Webサイトへのアクセスは、主OSの実行環境下で実行される。このため、更新パッケージ300は主OS領域121Aにダウンロードされる。
【0051】
なお、更新パッケージのダウンロード処理は、例えば予め設定された時間間隔ごとにインターネットを介して当該URLに自動的にアクセスして更新パッケージがアップロードされているか否かを判定するように設定されていてもよい。
【0052】
次に、図7のフローチャートを参照して、更新ツール201によって実行される更新パッケージ保存処理の手順を説明する。
【0053】
ユーザは、主OSが提供するユーザインタフェースを通じて更新ツール201を実行する。更新ツール201は、以下の処理を実行する。
【0054】
更新ツール201は、まず、副OS領域121Bの隠蔽を解除する為に、SETMAXの設定を解除する(ステップS201)。このステップS201では、更新ツールは、SETMAXの設定を解除(無効化)するためのパラメータを含むコマンドをHDD121に発行する。更新ツール201は、SETMAXの解除に成功したら(ステップS202のYES)、副OS領域121B内のバージョンファイルの読み込みを実行する(ステップS203)。このバージョンファイルは、副OS領域121Bに保存されている副OSあるいはアプリケーションプログラムのバージョンを示すファイルである。
【0055】
更新ツール201は、副OS領域121B上のバージョンファイルが読み込めたら(ステップS204のYES)、そのバージョンファイルをチェックして、本コンピュータ10が副OS領域121Bのアップデートに対応したモデル(アップデート対象モデル)であるかどうかを判別する(ステップS205,ステップS206)。アップデート対象モデルであるならば(ステップS206のYES)、更新ツール201は、仕向地が正しいかどうか、つまり更新パッケージの仕向地と副OS領域121B上の映像処理ソフトウェアの仕向地とが一致するかどうかを判断する(ステップS207)。仕向地が正しい場合(ステップS207のYES)、更新ツール201は、副OS領域121Bに格納されている現在の映像処理ソフトウェアのバージョンと、更新パッケージ300のバージョンをそれぞれ示す図8のバージョン確認ウインドウをLCD17の画面上に表示する(ステップS208)。
【0056】
更新ツール201は、副OS領域121Bの現在のバージョンファイルを削除し(ステップS209)、アップデートを実行するか否かの確認をユーザに促す(ステップS210)。更新ツール201は、図8のバージョン確認ウインドウ上のアップデートボタンが押下されると(ステップS211のYES)、アップデートイメージの書き込みを行う(ステップS212)。更新ツール201は、アップデートイメージが正常に書き込めたことを判断すると(ステップS213のYES)、副OS領域121Bの領域を再び主OSから隠蔽するために、SETMAXの設定を行う(ステップS214)。
【0057】
次に、図9のフローチャートを参照して、副OSによって実行される更新処理の手順を説明する。副OSは、その起動処理の中で以下の処理を実行する。
【0058】
副OSは、まず、ドライバ群をロードする処理、およびシステム領域および録画領域それぞれのパーティションをファイルシステム上にマウントする処理を実行する(ステップS301)。次いで、副OSは、アップデートイメージのリストを作成する(ステップS302)。このステップS302においては、もし副OS領域121B上に主OSによって複数のアップデートイメージが保存されていたならば、複数のアップデートイメージを更新時刻の新しい順に並べたリストが作成される。このリストは、更新時刻が最も新しいアップデートイメージを用いた更新処理を実行するために用いられる。
【0059】
副OSは、そのリスト中に最新の更新時刻のアップデートイメージが存在する場合(ステップS303)、アップデートを実行するか否かをユーザに問う(ステップS304)。一方、アップデートイメージが存在しない場合(ステップS303のNO)、副OSは起動処理の続きを実行する。
【0060】
アップデートを実行しないことがユーザによって指示された場合(ステップS305のNO)、副OSは、更新処理をキャンセルする(ステップS313)。そして、副OSは、アップデートイメージを削除するか否かをユーザに問い合わせる(ステップS314)。アップデートイメージの削除がユーザによって指定されたならば(ステップS314のYES)、副OSは、アップデートイメージを削除し(ステップS315)、そして起動処理の続きを実行する。
【0061】
アップデートを実行すべきことがユーザによって指示された場合(ステップS305のYES)、副OSは、アップデートイメージが正しいものであるか否かを確認するためのチェック処理を実行する(ステップS306)。アップデートイメージのチェックが成功した場合、つまりアップデートイメージが正しいものであることが確認された場合(ステップS307のYES)、副OSは、アップデートイメージからアップデートシェルスクリプトを取り出して実行し、これによって映像データ処理ソフトウェア(副OS、TVアプリケーションプログラム、またはビデオ再生アプリケーションプログラム)を更新するアップデート処理を実行する(ステップS308,S309)。
【0062】
アップデート処理が終了すると、副OSは、アップデートイメージを削除する(ステップS310)。アップデートイメージを削除することにより、次回の副OSの起動時に更新処理が再び実行されることを防止することができる。
【0063】
副OSは、システム領域および録画領域それぞれのパーティションをファイルシステムからアンマウントした後(ステップS311)、シャットダウンあるいは再起動を行う(ステップS312)。
【0064】
以上のように、本実施形態においては、更新パッケージ300(アップデートイメージ)のダウンロードおよび副OS領域121Bへの更新パッケージ300の書き込みは主OS側によって実行され、また副OS領域121Bに格納された映像データ処理ソフトウェアを実際に更新する処理は副OSの起動処理の中で自動的に実行される。したがって、ユーザは、副OSを何ら操作することなく、映像データ処理ソフトウェアをアップデートすることができる。また、副OS領域121Bは主OSから隠蔽されており、その隠蔽の解除は副OS領域121Bに更新パッケージ300に書き込む場合にのみ一時的に解除され、書き込み後には副OS領域121Bは主OSから再び隠蔽される。したがって、映像データ処理ソフトウェアによって提供されるAV機能をユーザの誤操作に起因する破壊から保護することができ、且つそのAV機能を容易に更新することが可能となる。
【0065】
また、映像データ処理ソフトウェアの更新処理の手順はコンピュータプログラムによって実現されているので、当該コンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を通じて通常のコンピュータに導入するだけで、本実施形態と同様の効果を容易に実現することが出来る。
【0066】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態に係るコンピュータの概観を示す斜視図。
【図2】図1のコンピュータのシステム構成を示すブロック図。
【図3】図1のコンピュータで用いられるHDDイメージを示す図。
【図4】図2のHDDの副OS領域にインストールされた映像データ処理ソフトウェアの構成を示す図。
【図5】図2のHDDの副OS領域に更新パッケージを保存する動作を説明する図。
【図6】図1のコンピュータによって実行される更新パッケージダウンロード処理の手順を示すフローチャート。
【図7】図1のコンピュータによって実行される更新パッケージ保存処理の手順を示すフローチャート。
【図8】図1のコンピュータによって表示されるバージョン確認ウインドウの例を示す図。
【図9】図1のコンピュータによって実行される更新処理の手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0068】
10…コンピュータ、111…CPU、121…HDD、121A…主OS領域、121B…副OS領域、123…TVチューナ、201…更新ツール、300…更新パッケージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のオペレーティングシステムが管理する第1の記憶領域と、前記第1のオペレーティングシステムと異なる第2のオペレーティングシステムが管理することによって、前記第1のオペレーティングシステムから隠蔽されている第2の記憶領域とを含む記憶装置と、
前記第2の記憶領域の隠蔽を解除して前記第1のオペレーティングシステムから前記第2の記憶領域をアクセス可能な状態に設定する手段と、
前記第2の記憶領域に記憶されているソフトウェアを更新するための更新プログラムを前記アクセス可能な状態に設定された第2の記憶領域に書き込む手段と、
前記更新プログラムが書き込まれた第2の記憶領域を前記第1のオペレーティングシステムから再度隠蔽する手段と、
前記再度隠蔽した後に、前記更新プログラムを実行する手段とを具備することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
外部から受信される映像データを受信する受信部をさらに具備し、
前記第2の記憶領域に記憶されているソフトウェアは前記受信部によって受信された映像データを前記第2の記憶領域に格納する録画処理を実行する録画ソフトウェアモジュールを含むことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記更新プログラムは、前記録画ソフトウェアモジュールの更新イメージを含むことを特徴とする請求項2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記更新プログラムを実行した後、前記更新プログラムを前記第2の記憶領域から削除する手段をさらに具備ことを特徴とする請求項1記載の情報処理装置。
【請求項5】
映像データを処理する機能を有する情報処理装置において、
外部から映像データを受信する受信部と、
第1のオペレーティングシステムによって管理される第1の記憶領域と、第1のオペレーティングシステムと異なる第2のオペレーティングシステムが管理することによって、前記第1のオペレーティングシステムから隠蔽されている第2の記憶領域とを含む記憶装置と、
前記情報処理装置に設けられた第1ボタンおよび第2ボタンと、
前記第1ボタンが操作された場合、前記第1のオペレーティングシステムを起動し、前記第2ボタンが操作された場合、前記第2のオペレーティングシステムを起動する手段と、
前記第2の記憶領域の隠蔽を解除して前記第1のオペレーティングシステムから前記第2の記憶領域をアクセス可能な状態に設定する手段と、
前記第2の記憶領域に記憶され、前記受信部によって受信された映像データを再生および記録するソフトウェアを更新するための更新プログラムを前記アクセス可能な状態に設定された第2の記憶領域に書き込む手段と、
前記更新プログラムが書き込まれた第2の記憶領域を前記第1のオペレーティングシステムから再度隠蔽する手段と、
前記再度隠蔽した後に、前記更新プログラムを実行する手段とを具備することを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
前記更新プログラムは、前記ソフトウェアの更新イメージを含むことを特徴とする請求項5記載の情報処理装置。
【請求項7】
情報処理装置の記憶装置にインストールされたソフトウェアを更新するソフトウェア更新方法であって、
前記記憶装置は、第1のオペレーティングシステムが管理する第1の記憶領域と、前記第1のオペレーティングシステムと異なる第2のオペレーティングシステムが管理することによって、前記第1のオペレーティングシステムから隠蔽されている第2の記憶領域とを含み、
前記第2の記憶領域の隠蔽を解除して前記第1のオペレーティングシステムから前記第2の記憶領域をアクセス可能な状態に設定するステップと、
前記第2の記憶領域に記憶されているソフトウェアを更新するための更新プログラムを前記アクセス可能な状態に設定された第2の記憶領域に書き込むステップと、
前記更新プログラムが書き込まれた第2の記憶領域を前記第1のオペレーティングシステムから再度隠蔽するステップと、
前記再度隠蔽した後に、前記更新プログラムを実行するステップとを具備することを特徴とするソフトウェア更新方法。
【請求項8】
前記情報処理装置は外部から受信される映像データを受信する受信部を含み、
前記ソフトウェアは前記受信部によって受信された映像データを前記第2の記憶領域に格納する録画処理を実行する録画ソフトウェアモジュールを含むことを特徴とする請求項7記載のソフトウェア更新方法。
【請求項9】
前記更新プログラムは、前記録画ソフトウェアモジュールの更新イメージを含むことを特徴とする請求項8記載のソフトウェア更新方法。
【請求項10】
前記ソフトウェアを更新した後、前記更新プログラムを前記第2の記憶領域から削除するステップをさらに具備することを特徴とする請求項7記載のソフトウェア更新方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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