説明

情報処理装置および省電力制御方法

【課題】パワーダウン信号の出力をサポートするコントローラを用いることなく、パワーダウン信号の発生タイミングを制御することができる情報処理装置を実現する。
【解決手段】EC120には、パワーダウン信号LPCPD#発生機能が設けられている。省電力ステートへの移行時には、BIOSの制御の下、周辺デバイス119がサウスブリッジ115によってリセットされる前にEC120によってパワーダウン信号LPCPD#がアクティブ状態に設定される。動作ステートへの復帰時には、EC120の制御により、パワーダウン信号LPCPD#がインアクティブ状態に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパーソナルコンピュータのような情報処理装置および同装置に適用される省電力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータのような情報処理装置においては、PCI(Peripheral Component Interconnect)バス、LPC(Low Pin Count)バスといった様々な種類のバスが使用されている。バスの規格によっては、標準サポートすることが必要な信号群のみならず、必要な場合にのみサポートすればよい幾つかのオプション信号も規定されている。例えば、LPCバスの規格においては、オプション信号の一つとしてパワーダウン信号が規定されている。パワーダウン信号は、LPCバス上の周辺デバイスに対して電源オフに備えるべきことを指示するために使用される信号である。例えば、電源オフされる前に所定の処理を実行することが必要な周辺デバイスは、パワーダウン信号の入力を必要とする。
【0003】
通常、LPCバスは、コントローラ(チップセット)と周辺デバイスとの間の相互接続のために使用される。しかし、パワーダウン信号のようなオプション信号の出力機能を有するコントローラは一部の製品のみに限られているのが現状であり、パワーダウン信号の出力をサポートしないコントローラも多い。
【0004】
パワーダウン信号の出力をサポートしないコントローラを使用するシステム構成においては、パワーダウン信号の入力を必要とする周辺デバイスの機能を正常に動作させることは困難である。このため、パワーダウン信号の出力をサポートしないコントローラが搭載されたコンピュータにおいては、このような周辺デバイスは非サポート扱いとすることが必要となる。
【0005】
特許文献1には、省電力制御のためのピンを持たないグラフィクスコントローラに対して省電力制御を実行するためのシステムが開示されている。このシステムにおいては、システムBIOSは、グラフィクスコントローラのI/Oレジスタを直接的にアクセスして、グラフィクスコントローラ内のハードウェアコンポーネントの動作を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−236529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1では、パワーダウン信号のようなオプション信号の入力を必要とする周辺デバイスをサポートするための仕組みについては何等考慮されてない。
【0008】
パワーダウン信号の出力をサポートしないコントローラを使用するシステム構成において、パワーダウン信号の入力を必要とする周辺デバイスをサポートできるようにするためには、コントローラを用いずにパワーダウン信号の発生タイミングを制御するための新たな機能の実現が必要である。
【0009】
本発明は上述の事情を考慮してなされたものであり、パワーダウン信号の出力をサポートするコントローラを用いることなく、パワーダウン信号の発生タイミングを制御することができる情報処理装置および省電力制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本発明の情報処理装置は、オペレーティングシステムからの省電力ステート移行要求の受信に応答してパワーダウン信号発生コマンドを発生し、前記パワーダウン信号発生コマンドの発生後に省電力ステート移行コマンドを発生するシステムプログラムを格納する不揮発性メモリと、前記オペレーティングシステムおよび前記システムプログラムを実行するプロセッサと、少なくともデータ線とリセット信号線とを含むバスを介して周辺デバイスに接続され、前記省電力ステート移行コマンドの受信に応答して前記周辺デバイスをリセットし、前記周辺デバイスがリセットされた後に省電力ステート移行要求信号を出力するコントローラと、前記パワーダウン信号発生コマンドの受信に応答して前記周辺デバイスに対するパワーダウン信号をアクティブ状態に設定する処理と、前記コントローラからの前記省電力ステート移行要求信号の受信に応答して前記情報処理装置を前記省電力ステートに設定する処理とを実行する電力管理手段とを具備する。
【0011】
また、本発明の情報処理装置は、少なくともデータ線とリセット信号線とを含むバスを介して周辺デバイスに接続され、前記情報処理装置が省電力ステートから動作ステートに復帰してから所定時間後に前記周辺デバイスのリセットを解除するコントローラと、パワーダウン信号線を介して前記周辺デバイスに接続され、所定のウェイクアップイベントの発生に応答して前記情報処理装置を前記動作ステートに復帰する処理と、前記情報処理装置が前記動作ステートに復帰してから前記所定時間経過する前に前記周辺デバイスに対するパワーダウン信号をインアクティブ状態に設定する処理とを実行する電力管理手段とを具備する。
【0012】
また、本発明の情報処理装置は、オペレーティングシステムからの省電力ステート移行要求の受信に応答してパワーダウン信号発生コマンドを発生し、前記パワーダウン信号発生コマンドの発生後に省電力ステート移行コマンドを発生するシステムプログラムを格納する不揮発性メモリと、前記オペレーティングシステムおよび前記システムプログラムを実行するプロセッサと、少なくともデータ線とリセット信号線とを含むバスを介して周辺デバイスに接続され、前記省電力ステート移行コマンドの受信に応答して前記周辺デバイスをリセットし、前記周辺デバイスがリセットされた後に省電力ステート移行要求信号を出力し、前記情報処理装置が省電力ステートから動作ステートに復帰してから所定時間後に前記周辺デバイスのリセットを解除するコントローラと、前記パワーダウン信号発生コマンドの受信に応答して前記周辺デバイスに対するパワーダウン信号をアクティブ状態に設定する処理と、前記コントローラからの前記省電力ステート移行要求信号の受信に応答して前記情報処理装置を前記省電力ステートに設定する処理と、所定のウェイクアップイベントの発生に応答して前記情報処理装置を前記動作ステートに復帰する処理と、前記情報処理装置が前記動作ステートに復帰してから前記所定時間経過する前に前記パワーダウン信号をインアクティブ状態に設定する処理とを実行する電力管理手段とを具備する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パワーダウン信号の出力をサポートするコントローラを用いることなく、パワーダウン信号の発生タイミングを制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の外観を示す斜視図。
【図2】同実施形態の情報処理装置のシステム構成を示すブロック図。
【図3】同実施形態の情報処理装置のシステムステートの遷移を説明するための図。
【図4】同実施形態の情報処理装置によって実行されるパワーダウン信号制御動作を説明するタイミングチャート。
【図5】同実施形態の情報処理装置によって実行される省電力ステート移行処理の手順を説明するフローチャート。
【図6】同実施形態の情報処理装置によって実行される動作ステート移行処理の手順を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る情報処理装置の構成について説明する。この情報処理装置は、例えば、バッテリ駆動可能な携帯型のノートブック型パーソナルコンピュータ10として実現されている。図1は、ディスプレイユニットを開いた状態におけるコンピュータ10を正面側から見た斜視図である。本コンピュータ10は、コンピュータ本体11と、ディスプレイユニット12とから構成される。ディスプレイユニット12には、LCD16(Liquid Crystal Display)から構成される表示装置が組み込まれている。
【0016】
ディスプレイユニット12は、コンピュータ本体11に支持され、そのコンピュータ本体11に対してコンピュータ本体11の上面が露出される開放位置とコンピュータ本体11の上面がディスプレイユニット12によって覆れる閉塞位置との間を回動自由に取り付けられている。コンピュータ本体11は薄い箱形の筐体を有しており、その上面にはキーボード13、本コンピュータ10をパワーオン/オフするためのパワーボタン14およびタッチパッド15が配置されている。
【0017】
本コンピュータ10は動作ステートと省電力ステートとを有している。省電力ステートは、例えば、主メモリのような特定の幾つかのデバイスを除く他のほとんど全てのデバイスを電源オフするステートである。
【0018】
図2は、本コンピュータ10のシステム構成を示している。本コンピュータ10は、CPU111、ノースブリッジ112、主メモリ113、グラフィクスコントローラ114、サウスブリッジ115、ハードディスクドライブ(HDD)116、PCIバスに接続されるI/Oデバイス117、BIOS−ROM118、LPCバスに接続される周辺デバイス119、エンベデッドコントローラ(EC)120、電源回路121等を備えている。
【0019】
CPU111は、本コンピュータ10の各コンポーネントの動作を制御するプロセッサである。このCPU111は、HDD116から主メモリ113にロードされる各種ソフトウェア、例えば、オペレーティングシステム(OS)、アプリケーションプログラム等を実行する。また、CPU111は、不揮発性メモリであるBIOS−ROM118に格納されたBIOS(基本入出力システム:Basic Input Output System)も実行する。BIOSはハードウェア制御のためのシステムプログラムである。このBIOSは、本コンピュータ10の電力管理を実行するための機能を有しており、エンベデッドコントローラ(EC)120と協同して、本コンピュータ10のシステムステートを、動作ステートと、この動作ステートよりも電力消費が少ない省電力ステートとの間で遷移させる処理を実行する。省電力ステートとしては、サスペンドステート(スタンバイ状態と称されることもある)、またはハイバネーションステート(休止状態と称されることもある)を用いることができる。また、BIOSは、周辺デバイス119が必要とするパワーダウン信号LPCPD#の発生タイミングを制御する機能も有している。パワーダウン信号LPCPD#は、周辺デバイス119が電源オフに備えるべきことを示す。このパワーダウン信号LPCPD#はlowアクティブ信号である。
【0020】
ノースブリッジ112は、CPU111のローカルバスとサウスブリッジ115との間を接続するブリッジデバイスである。また、ノースブリッジ112はグラフィクスコントローラ114との通信を実行する機能も有している。さらに、ノースブリッジ112には、主メモリ113を制御するメモリコントローラも内蔵されている。グラフィクスコントローラ114は、本コンピュータ10のディスプレイモニタとして使用されるLCD16を制御する表示コントローラである。
【0021】
サウスブリッジ115は、PCI(Peripheral Component Interconnect)バスおよびLPC(Low Pin Count)バスにそれぞれ接続されている。LPCバスは、少なくともデータ線とリセット信号線とを含む。データ線は、4ビット幅のコマンド/アドレス/データ信号線から構成されている。LPCバスは、さらに、フレーム信号線も含む。コマンド/アドレス/データ信号線は、多重化されたコマンド、アドレスおよびデータを伝送するためのバスである。フレーム信号線は、バスサイクルの開始および終了を示すためのフレーム信号の伝送に使用される。リセット信号線は周辺デバイス119をリセットするためのリセット信号LPC Reset#の伝送に使用される。リセット信号LPC Reset#は、lowアクティブ信号である。
【0022】
サウスブリッジ115はLPCバス上の周辺デバイス119を制御するためのコントローラとして機能する。サウスブリッジ115内には、LPCホストコントローラ201が設けられている。このLPCホストコントローラ201はLPCバスを介して周辺デバイス119との通信を実行するように構成されている。上述のパワーダウン信号LPCPD#はLPCバスのオプション信号である。本実施形態では、サウスブリッジ115として、パワーダウン信号LPCPD#の出力をサポートしていないコントローラが用いられる。すなわち、LPCホストコントローラ201はパワーダウン信号LPCPD#を出力する機能を有していない。したがって、サウスブリッジ115と周辺デバイス119との間を接続するLPCバスには、パワーダウン信号LPCPD#は含まれていない。
【0023】
周辺デバイス119は、パワーダウン信号LPCPD#の入力を必要とするデバイスであり、パワーダウン信号LPCPD#がアクティブ状態に設定された時、電源オフに備えるために所定の準備処理を実行することが出来る。周辺デバイス119としては、例えば、セキュリティー機能を実行するためのTPM(Trusted Platform Module)デバイスが用いられる。この場合、周辺デバイス119は、所定のデータを暗号化する処理、およびデータの暗号化に使用した鍵を管理する処理等を実行する。パワーダウン信号LPCPD#がアクティブ状態に設定された時、周辺デバイス119は、電源オフに備えるための所定の準備処理を実行する。準備処理の中では、周辺デバイス119の内部動作を停止するための処理等が実行させる。また、準備処理の中では、例えば内部データを例えば周辺デバイス119内に設けられた不揮発性メモリ等に保存する処理等を実行してもよい。これにより、システムステートがサスペンドステートのような省電力ステートに入った場合でも必要な内部データ(例えば、鍵等)の消失を防止することができる。もちろん、パワーダウン信号LPCPD#の入力を必要とする周辺デバイス119は、TPMデバイスに限られるものではなく、ホストからのパワーダウン信号LPCPD#に応答して何らかの処理を実行するように構成された任意のデバイスを使用し得る。
【0024】
本実施形態では、パワーダウン信号LPCPD#を入力するための入力ピンを有する周辺デバイス119、つまりパワーダウン信号LPCPD#の入力を必要とする周辺デバイス119をサポートできるようにするために、エンベデッドコントローラ(EC)120内にパワーダウン信号LPCPD#の発生を制御する機能が設けられている。周辺デバイス119は、コマンド/アドレス/データ信号を時分割で入出力するための4つの入出力ピン、フレーム信号を入力するための入力ピン、リセット信号LPC Reset#を入力するための入力ピン、パワーダウン信号LPCPD#を入力するための入力ピンを有している。4つの入出力ピン、フレーム信号を入力するための入力ピン、リセット信号LPC Reset#を入力するための入力ピンは、それぞれLPCバスを介してサウスブリッジ115に接続されている。一方、パワーダウン信号LPCPD#を入力するための入力ピンは、パワーダウン信号LPCPD#線を介してエンベデッドコントローラ(EC)120に接続されている。
【0025】
エンベデッドコントローラ(EC)120は本コンピュータの電力管理を実行するための電源管理コントローラであり、例えば、キーボード(KB)13およびタッチパッド15などを制御するキーボードコントローラを内蔵した1チップマイクロコンピュータとして実現されている。EC120は、電源回路121と協働して、ユーザによるパワーボタンスイッチ14の操作に応じて本コンピュータ10を電源オン/電源オフする。電源回路121は、コンピュータ本体11に内蔵されたバッテリ122、又はACアダプタ123を介して供給される外部電源を用いて、本コンピュータ10の各コンポーネントに供給すべきシステム電源を生成する。
【0026】
EC120は、例えば上述のLPCバスを介して、サウスブリッジ115に接続されている。このEC120は、パワーダウン信号発生部301を備えている。パワーダウン信号発生部301はパワーダウン信号LPCPD#線を駆動してパワーダウン信号LPCPD#をアクティブ状態/インアクティブ状態に設定する回路である。EC120は、CPU111がアクセス可能なレジスタ群を有しており、このレジスタ群を介してBIOSとの通信を実行することができる。また、EC120は、システム電源が安定していることを示す信号PWROKを用いてサウスブリッジ115にシステム電源の状態を通知する機能を有している。さらに、EC120は、サウスブリッジ115から送信される省電力ステート移行要求信号SLP_S3#を受信する機能も有している。
【0027】
図3は、本コンピュータ10のシステムステートの遷移を示している。本コンピュータ10は、S0,S3,S4,S5の4つのシステムステートをサポートしている。S0は、本コンピュータ10が電源オンされている動作ステートである。S3(サスペンド),S4(ハイバネーション)は省電力ステートである。S5はオフステートである。
【0028】
S3(サスペンド)においては、主メモリ113およびEC120を除く他のほとんど全てのデバイスが電源オフされる。なお、サウスブリッジ115はウェイクアップ要求を検知するための機能を有し得る。この場合、S3(サスペンド)においては、サウスブリッジ115内の一部または全てのモジュールも電源オン状態に維持し得る。S4(ハイバネーション)においては、システムコンテクストはHDD116に保存され、EC120を除く他のほとんど全てのデバイスが電源オフされる。S4(ハイバネーション)においても、サウスブリッジ115内の一部または全てのモジュールを電源オン状態に維持してもよい。
【0029】
ここで、本コンピュータ10の電力管理機能の概要について説明する。まず、システムステートが動作ステートから省電力ステートに移行する時に実行される動作の概要を説明する。
【0030】
OSから送信される省電力ステート移行要求を受信した場合、BIOSは、サウスブリッジ115に省電力ステート移行コマンドを送信して、サウスブリッジ115に省電力ステートへの移行に備えさせる。サウスブリッジ115は所定の準備処理を実行する。準備処理においては、例えば、サウスブリッジ115は、周辺デバイス21を安全に電源オフできるようにするために、LPCバス内のリセット信号LPC Reset#をアクティブ状態に設定することによって周辺デバイス21をリセットする。リセット信号LPC Reset#はロウレベルに設定され、周辺デバイス21の動作は停止される。この状態で周辺デバイス21に対する電源の供給を停止することにより、周辺デバイス21を安全に電源オフすることができる。
【0031】
所定の準備処理を実行した後、サウスブリッジ115は、エンベデッドコントローラ(EC)120に対して省電力ステート移行要求信号を送信して、エンベデッドコントローラ(EC)120がシステムステートを省電力ステートに設定することを許可する。省電力ステートとしてS3が使用される場合には、省電力ステート移行要求信号SLP_S3#がサウスブリッジ115からエンベデッドコントローラ(EC)120に送られる。エンベデッドコントローラ(EC)120は、主メモリ113以外のほとんど全てのデバイス(例えば、CPU111、ノースブリッジ112、グラフィクスコントローラ115、周辺デバイス119、等)を電源オフし、システムステートを省電力ステートS0に設定する。
【0032】
周辺デバイス21がリセットされた後は、周辺デバイス21は、入力信号の受信等を含む一切の動作を実行することができない。このため、周辺デバイス21がリセットされる前に、パワーダウン信号LPCPD#をアクティブにして周辺デバイス21が電源オフされることを周辺デバイス21に通知することが必要となる。そのために、本実施形態では、BIOSは、サウスブリッジ115に省電力ステート移行コマンドを送信する前に、パワーダウン信号発生コマンドをEC120に送信する。すなわち、BIOSは、OSから送信される省電力ステート移行要求を受信した場合、まず、パワーダウン信号発生コマンドをEC120に送信し、パワーダウン信号発生コマンドを送信した後に、サウスブリッジ115に省電力ステート移行コマンドを送信する。この場合、パワーダウン信号発生コマンドを送信してからシステム構成に依存する所定の待ち時間だけ待った後に、省電力ステート移行コマンドを発生するようにしてもよい。BIOSから送信されるパワーダウン信号発生コマンドを受信した時、EC120は、パワーダウン信号発生部301を制御して、パワーダウン信号LPCPD#をアクティブ状態に設定する。これにより、周辺デバイス21がサウスブリッジ115からのリセット信号LPC Reset#によってリセットされる前に、電源オフに備えるべきことを周辺デバイス21に正常に通知することができる。
【0033】
次に、システムステートが省電力ステートから動作ステートに復帰する時に実行される動作の概要を説明する。
【0034】
システムが省電力ステートである期間中にパワーボタンスイッチ14の操作のようなウェイクアップイベントが発生した時、EC120は、システムをパワーオンしてシステムステートを省電力ステートから動作ステートに復帰する。CPU111、ノースブリッジ112、グラフィクスコントローラ115、周辺デバイス119等のデバイスは電源オンされる。なお、サウスブリッジ115がウェイクアップ要求の発生を検知した場合には、サウスブリッジ115によって省電力ステート移行要求信号SLP_S3#がインアクティブ状態に設定される。省電力ステート移行要求信号SLP_S3#がインアクティブ状態に設定されることも、ウェイクアップイベントの一つとして使用し得る。システムステートが動作ステートに復帰してから所定時間T後に、サウスブリッジ115は、周辺デバイス119の動作を再開させるためにリセット信号LPC Reset#をインアクティブ状態に設定して周辺デバイス119のリセットを解除する。所定時間Tの値は、サウスブリッジ115の仕様で予め規定されている。
【0035】
もし、周辺デバイス119のリセットが解除された時に、パワーダウン信号LPCPD#がアクティブ状態のままであったならば、周辺デバイス119は誤って電源オフに備えるための処理を再度開始してしまう可能性がある。このため、パワーダウン信号LPCPD#は、周辺デバイス119のリセットが解除される前にインアクティブ状態に設定することが必要である。また、周辺デバイス119の電源オフ期間中は全ての入力信号はロウレベルであることが好ましい。このため、パワーダウン信号LPCPD#は、周辺デバイス119の電源オンから周辺デバイス119のリセットが解除されるまでの間に、インアクティブ状態に設定することが必要である。システムステートが動作ステートに復帰した直後は、CPU111は、まだ、動作を開始していない。このため、BIOSがパワーダウン信号LPCPD#を制御することはできない。そこで、本実施形態では、パワーダウン信号LPCPD#をインアクティブ状態に設定する処理は、EC120自身で実行する。すなわち、ウェイクアップイベントが発生した時、EC120は、システムをパワーオンしてシステムステートを省電力ステートから動作ステートに復帰する処理と、動作ステートに復帰してから上述の所定時間T経過する前にパワーダウン信号LPCPD#をインアクティブ状態に設定する処理とを実行する。
【0036】
次に、図4のタイミングチャートを参照して、本コンピュータ10によって実行されるパワーダウン信号制御動作について説明する。
【0037】
図4は、システムのステート遷移(S0→S3→S0)に対応するタイミングシーケンスを記載している。図4において、信号名の右に付加されている記号#は、その信号が負論理(lowアクティブ)であることを示してしている。
【0038】
システムがS3ステートへ遷移する際には以下の処理が実行される。なお、以下の説明で、アサートは、信号をアクティブ状態に設定することを意味し、デアサートは、信号をインアクティブ状態に設定することを意味する。
【0039】
(1)OSからのS3移行要求を受信すると、BIOSは、パワーダウン信号発生コマンドをEC120に送信する。EC120は、T1のタイミングで、周辺デバイス119に対するLPCPD#信号をアサートする(LPCPD#=ロウレベル)。周辺デバイス119は、電源オフに備えるための準備処理を開始する。
(2)BIOSは、S3へ移行することを要求する省電力ステート移行コマンドをサウスブリッジ115に送信する。T2のタイミングで、サウスブリッジ115内のLPCホストコントローラ201はLPCバス内のLPC Reset#信号をアサートする(LPC Reset#=ロウレベル)。そして、T3のタイミングで、サウスブリッジ115は、SLP_S3#信号をアサートする。
(3)SLP_S3#信号がアサートされたことをEC120が検知する。この結果、EC120は、タイミングT4で、各種デバイスに対する電源をオフすると共に、システム電源が安定していることを示すPWROK信号をデアサートする。LPC Reset#信号およびLPCPD#信号が共にロウレベルに設定されている状態で、周辺デバイス119は電源オフされる。
【0040】
システムがS3ステートからS0ステートへ遷移する際には以下の処理が実行される。
(4)S3ステートにおいてウェイクアップ要求が発生した時、サウスブリッジ115は、S0ステートへの移行をEC120に要求する。要求の仕組みとしては、SLP_S3#信号を使用し得る。サウスブリッジ115は、T5のタイミングで、SLP_S3#信号をデアサートすることで、EC120に対してS0ステートへ移行することを要求する。
(5)EC120は、各種デバイスに対する電源をオンし、T6のタイミングでPWROK信号をアサートする。サウスブリッジ115は、PWROK信号のアサートによって、システムがS3ステートに復帰したことを認識する。
(6)T6からT8までの時間は上述の所定時間Tであり、サウスブリッジ115の仕様によって予め定義されている。T6からT8までの間にLPCPD#信号をディスエーブルするために、EC120は、T7のタイミングで、LPCPD#信号をデアサートする。
(7)サウスブリッジ115は、PWROK信号がアサートされてから所定時間Tの後(T8のタイミング)で、LPC Reset#信号をデアサートする。
【0041】
本実施形態では、(1)の手順により、周辺デバイス119がリセットされる前にLPCPD#信号をアクティブ状態に設定でき、(6)の手順により、周辺デバイス119のリセット解除前にLPCPD#信号をインアクティブ状態に設定することができる。
【0042】
次に、図5のフローチャートを参照して、S3移行処理時に実行される省電力制御処理の手順について説明する。
【0043】
S3ステートにおいてユーザ操作等によって省電力ステート移行要求イベントが発生した時、OSは、省電力ステート移行要求(S3移行要求)をBIOSに送信する。S3移行要求を受信した時(ステップS11)、BIOSは、まず、パワーダウン信号発生コマンドをEC120に送信する(ステップS12)。EC120は、パワーダウン信号発生部301を制御して、パワーダウン信号LPCPD#をアサートし、周辺デバイス21に対して、電源オフに備えるべきことを通知する。BIOSは、パワーダウン信号発生コマンドの送信後に、省電力ステート移行コマンド(S3移行コマンド)をサウスブリッジ115に送信して、サウスブリッジ115に省電力ステートへの移行に備えさせる(ステップS13)。サウスブリッジ115は所定の準備処理を開始する。具体的には、サウスブリッジ115は、LPCバス内のリセット信号LPC Reset#をアサートして周辺デバイス21をリセットする。この後、サウスブリッジ115は、EC120に対するSLP_S3#信号をアサートして、EC120がシステムステートをS3に設定することを許可する。EC120は、主メモリ113以外のほとんど全てのデバイス(CPU111、ノースブリッジ112、グラフィクスコントローラ115、周辺デバイス119、等)を電源オフし、システムステートを省電力ステートS0に設定する(ステップS14)。
【0044】
次に、図6のフローチャートを参照して、S0移行処理時に実行される省電力制御処理の手順について説明する。
【0045】
EC120は、S3期間中にウェイクアップイベントの発生を検知すると(ステップS21)、システムをパワーオンしてシステムステートをS0ステートからS0ステートに復帰する(ステップS22)。ステップS22では、EC120は、PWEOK信号によって、S0ステートに復帰したことをサウスブリッジ115に通知する処理も実行する。そして、EC120は、パワーダウン信号発生部301を制御して、パワーダウン信号LPCPD#をデアサートする(ステップS23)。システムステートがS0ステートに復帰してから所定時間T後に、サウスブリッジ115は、リセット信号LPC Reset#をデアサートして周辺デバイス119のリセットを解除する(ステップS24)。
【0046】
以上のように、本実施形態においては、電力管理部として機能するEC120にパワーダウン信号LPCPD#の発生機能が設けられている。省電力ステートへの移行時には、BIOSは省電力ステート移行コマンドを発生する前にパワーダウン信号発生コマンドを発生するので、EC120は、周辺デバイス119がサウスブリッジ115によってリセットされる前にパワーダウン信号LPCPD#をアクティブにすることができる。また、所定のウェイクアップイベントが発生した時には、動作ステートに復帰する処理と、パワーダウン信号LPCPD#をインアクティブにする処理とがEC120によって実行される。したがって、周辺デバイス119がサウスブリッジ115によってリセット解除される前に、パワーダウン信号LPCPD#をインアクティブにすることができる。よって、パワーダウン信号の出力をサポートするコントローラを用いることなく、パワーダウン信号の発生タイミングを制御することができる。
【0047】
なお、本実施形態では、LPCバスのパワーダウン信号LPCPD#の制御について説明したが、本実施形態のパワーダウン信号の発生制御機能は、パワーダウン信号がオプション信号として規定された任意のバスに対して適用することができる。
【0048】
また、本実施形態では、省電力ステートとしてS3ステートを使用する場合に対応する省電力制御処理を中心に説明したが、本実施形態の省電力制御処理の手順は、S0ステートからS4ステートへの移行およびS4ステートからS0テートへの移行にも適用することができる。
【0049】
また本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…情報処理装置、111…CPU、115…サウスブリッジ、119…周辺デバイス、120…EC。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置であって、
オペレーティングシステムからの省電力ステート移行要求の受信に応答してパワーダウン信号発生コマンドを発生し、前記パワーダウン信号発生コマンドの発生後に省電力ステート移行コマンドを発生するシステムプログラムを格納する不揮発性メモリと、
前記オペレーティングシステムおよび前記システムプログラムを実行するプロセッサと、
少なくともデータ線とリセット信号線とを含むバスを介して周辺デバイスに接続され、前記省電力ステート移行コマンドの受信に応答して前記周辺デバイスをリセットし、前記周辺デバイスがリセットされた後に省電力ステート移行要求信号を出力するコントローラと、
前記パワーダウン信号発生コマンドの受信に応答して前記周辺デバイスに対するパワーダウン信号をアクティブ状態に設定する処理と、前記コントローラからの前記省電力ステート移行要求信号の受信に応答して前記情報処理装置を前記省電力ステートに設定する処理とを実行する電力管理手段とを具備する情報処理装置。
【請求項2】
前記電力管理手段は、少なくとも前記プロセッサおよび前記周辺デバイスを電源オフすることによって前記情報処理装置を前記省電力ステートに設定する請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記パワーダウン信号は電源オフに備えるべきことを前記周辺デバイスに通知するための信号である請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記周辺デバイスは前記パワーダウン信号を入力するための入力ピンを含み、前記入力ピンは信号線を介して前記電力管理手段に接続されている請求項1記載の情報処理装置。
【請求項5】
情報処理装置であって、
少なくともデータ線とリセット信号線とを含むバスを介して周辺デバイスに接続され、前記情報処理装置が省電力ステートから動作ステートに復帰してから所定時間後に前記周辺デバイスのリセットを解除するコントローラと、
パワーダウン信号線を介して前記周辺デバイスに接続され、所定のウェイクアップイベントの発生に応答して前記情報処理装置を前記動作ステートに復帰する処理と、前記情報処理装置が前記動作ステートに復帰してから前記所定時間経過する前に前記周辺デバイスに対するパワーダウン信号をインアクティブ状態に設定する処理とを実行する電力管理手段とを具備する情報処理装置。
【請求項6】
情報処理装置であって、
オペレーティングシステムからの省電力ステート移行要求の受信に応答してパワーダウン信号発生コマンドを発生し、前記パワーダウン信号発生コマンドの発生後に省電力ステート移行コマンドを発生するシステムプログラムを格納する不揮発性メモリと、
前記オペレーティングシステムおよび前記システムプログラムを実行するプロセッサと、
少なくともデータ線とリセット信号線とを含むバスを介して周辺デバイスに接続され、前記省電力ステート移行コマンドの受信に応答して前記周辺デバイスをリセットし、前記周辺デバイスがリセットされた後に省電力ステート移行要求信号を出力し、前記情報処理装置が省電力ステートから動作ステートに復帰してから所定時間後に前記周辺デバイスのリセットを解除するコントローラと、
前記パワーダウン信号発生コマンドの受信に応答して前記周辺デバイスに対するパワーダウン信号をアクティブ状態に設定する処理と、前記コントローラからの前記省電力ステート移行要求信号の受信に応答して前記情報処理装置を前記省電力ステートに設定する処理と、所定のウェイクアップイベントの発生に応答して前記情報処理装置を前記動作ステートに復帰する処理と、前記情報処理装置が前記動作ステートに復帰してから前記所定時間経過する前に前記パワーダウン信号をインアクティブ状態に設定する処理とを実行する電力管理手段とを具備する情報処理装置。
【請求項7】
前記電力管理手段は、少なくとも前記プロセッサおよび前記周辺デバイスを電源オフすることによって前記情報処理装置を前記省電力ステートに設定し、前記所定のウェイクアップイベントの発生に応答して前記プロセッサおよび前記周辺デバイスを電源オンすることによって前記情報処理装置を前記動作ステートに復帰する請求項6記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記電力管理手段は、前記情報処理装置が前記動作ステートに復帰したことを前記コントローラに通知する請求項6記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記パワーダウン信号は電源オフに備えるべきことを前記周辺デバイスに通知するための信号である請求項6記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記周辺デバイスは前記パワーダウン信号を入力するための入力ピンを含み、前記入力ピンは信号線を介して前記電力管理手段に接続されている請求項6記載の情報処理装置。
【請求項11】
少なくともデータ線とリセット信号線とを含むバスに接続された周辺デバイスと、前記バスを介して前記周辺デバイスを制御するコントローラと、電力管理部とを含む情報処理装置の動作を制御する省電力制御方法であって、
オペレーティングシステムからの省電力ステート移行要求の受信に応答してパワーダウン信号発生コマンドを前記電力管理部に送信し、前記パワーダウン信号発生コマンドの送信後に省電力ステート移行コマンドを前記コントローラに送信するステップと、
前記パワーダウン信号発生コマンドの受信に応答して、前記電力管理部によって、前記周辺デバイスに対するパワーダウン信号をアクティブ状態に設定するステップと、
前記省電力ステート移行コマンドの受信に応答して、前記コントローラによって、前記周辺デバイスをリセットし、前記周辺デバイスがリセットされた後に、前記コントローラから前記電力管理部に省電力ステート移行要求信号を送信するステップと、
前記省電力ステート移行要求信号の受信に応答して、前記電力管理部によって、前記情報処理装置を省電力ステートに設定するステップと、
所定のウェイクアップイベントの発生に応答して、前記電力管理部によって、前記情報処理装置を前記動作ステートに復帰すると共に、前記パワーダウン信号をインアクティブ状態に設定するステップと、
前記情報処理装置が省電力ステートから動作ステートに復帰してから所定時間後に、前記コントローラによって、前記周辺デバイスのリセットを解除するステップとを具備する省電力制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−262659(P2010−262659A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110374(P2010−110374)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【分割の表示】特願2009−109799(P2009−109799)の分割
【原出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】