説明

情報処理装置と情報処理方法と情報処理プログラム及び情報記録媒体

【課題】異なる暗号化レベルが混在した符号を正常に復号可能な符号とする。
【解決手段】コンピュータ401のMPU402は画像データを読み込み符号化処理して暗号化する符号データに変換する。次に、MPU402は暗号化する符号データをブロックに分割し、分割された符号データを暗号化鍵1と暗号化鍵2で暗号化し、暗号化した暗号化データ701を生成する。その後、MPU402は暗号化鍵1と暗号化鍵2で暗号化した不規則に変化する符号列の暗号化データを読み込み、読み込んだ暗号化データを暗号化鍵1と暗号化鍵2毎に整列した暗号化データ702を生成し、異なる暗号化鍵で復元可能な符号データが交互に発生しないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像データの暗号化処理、特に異なる暗号化鍵を用いて復元可能な暗号化データを生成する情報処理装置と情報処理方法と情報処理プログラム及び情報記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータとそのネットワークの急速な発達及び普及により、文字データ、画像データ、音声データなど、多種の情報がデジタル化されている。デジタル情報は、経年変化などによる劣化がなく、いつまでも完全な状態で保存できる一方、容易に複製が可能であり、著作権の保護が大きな問題となっている。そのため著作権保護のためのセキュリティ技術は急速に重要性を増している。
【0003】
著作権を保護する技術の一つに暗号技術がある。特に、画像データなどのデジタルコンテンツの暗号化方式として、送信者と受信者で同一の暗号鍵を秘密に共有する共通鍵暗号方式(秘密鍵暗号方式、対称暗号方式、慣用暗号方式とも呼ばれる)がある。共通鍵暗号方式は、例えば非特許文献1に示すように、適当な長さの文字列(ブロック)ごとに同じ鍵で暗号化するブロック暗号と、文字列またはビットごとに鍵を変えていくストリーム暗号に分けることができる。ブロック暗号の中ではDES(Date Encryption Standard)やAES(Advanced Encryption Standard)などが良く知られている。ストリーム暗号には、例えば非特許文献1に示すように、多表を用いるビジネル暗号や1回限りの使い捨ての鍵を用いるバーナム暗号等が知られている。
【0004】
そこで画像データ全体の暗号化による著作権保護は前記の共通鍵暗号方式のうちの一つを用いることにより容易に実現できる。すなわち、送信者と受信者で暗号鍵を共有し、送信者が暗号化した画像データを受信者がその鍵を用いて復号すればよい。
【0005】
一方、画像データを圧縮する高能率符号化の1方式としては、静止画像の国際標準符号化方式としてISOとITU−Tにより勧告されたJPEG方式が広く用いられている。このJPEG方式は離散コサイン変換を基本とした方式であるが、圧縮率を高めるとブロック状の歪みが生じるという問題点があった。そこで、非特許文献2に示すように、画像のさらなる高解像度化要求と、より高い圧縮率を実現するために先の離散コサイン変換とは異なる変換方式として離散ウェーブレット変換を利用した符号化方式が提案され、現在JPEG2000として標準化が進んでいる。
【0006】
図1はJPEG2000エンコーダのブロック図である。入力画像は、まず離散ウェーブレット変換(DWT)により解像度レベルに対応したサブバンドに分解され(101)、その後量子化される(102)。図2は分解レベルが2のとき(解像度レベル数3)のサブバンド分解の例であり、レベル0からレベル2までの解像度レベルが存在する。このとき、小さい解像度レベルに属する係数ほど低い周波数の情報を含むことになる。量子化されたウェーブレット係数は、EBCOTアルゴリズムにより符号化される。以下ではこのアルゴリズムを、コードプロック分割(103)、係数モデリング(104)、算術符号化(105)とレート制御(106)、レイヤ形成(107)、パケット生成(108)の五つの部分に分けて説明する。
【0007】
(1) コードプロック分割
各サブバンドは、コードプロックと呼ばれる正方形のブロック(例えば64x64など)に分割される。これらのコードブロックは、それぞれ独立に符号化される。
(2) 係数モデリング
各コードブロックのウェーブレット係数列に対し、ピットプレーンに基づく係数モデリングを行う。これにより、係数ビットが重要度順に並んだエンペデッド符号列を生成する。MSBからLSBまでのすべてのビットプレーンは、それぞれ文脈に応じて三つのサブビットプレーン(パス)分解される。各サブビットブレーンの境界は打切り点(Truncation point)と呼ばれ、後でデータを切り捨てる際の最小の分割単位となる。
(3) 算術符号化とレート制御
係数モデリングにより生成されたエンベデッド符号列に対して、適応算術符号化を施す。その後、サブビットブレーンの境界である打切り点を単位として、算術符号列を適宜打ち切ることにより目的のビットレートを得る。
(4) レイヤ形成
複数の画質で順次表示する必要がある場合、すなわちSNRスケーラブルが必要であるとき、次に符号のレイヤ形成を行う。各レイヤはそれぞれ、各コードブロックのエンベデノド符号の一部を含む。高いレイヤほど画像の再生にあたって重要な成分を含むことになる。
(5) パケット生成
各レイヤを複数のボディと呼ばれる単位に分解し、それぞれにヘッダ情報を付加してパケットを生成する。ここで各ボディは、それぞれ対応する解像度レベルの情報をもつ。したがって生成されるパケットの総数は、レイヤ数と解像度レベル数の積となる。ヘッダ情報には、各コードブロックの算術符号列の長さ、サブビットブレーンの個数などの情報が含まれる。図3に示すように、すべてのパケット0からパケットKをまとめ、グローバルヘッダ情報を付加したものが、最終的なJPEG2000の符号列となる。但し、以上のような各種ヘッダ情報やデータ分割の最小単位であるサブビットプレーンは、1バイトの整数倍のサイズとすることをJPEG2000では規定している。
【非特許文献1】池野、小山著「現代暗号理論」電子情報通信学会、1986.第2章及び第4章
【非特許文献2】Final version of JPSEC FDIS、ISO IEC/JTC 1/SC 29/WG 1/wg1n3853、2006.B章のB.5.4節
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上説明したように、デジタル画像データにはセキュリティの問題があり、画像データを暗号化することが要求されている。さらに、1つの画像データを複数の閲覧者に開示する場合に、全体を開示、非開示の2段階のみではなく、ユーザーごとに、開示する画像を変化させたいという要求も高まっている。
【0009】
JPEG2000は、パケットごとに独立に復号可能であるため、アクセスできるレベルに応じて、段階的に暗号化し、アクセスレベルごとに開示可能な符号データの構成が可能であり、先の要求にこたえることが可能である。例えば、あるユーザには図2のレベル0のみ開示、あるユーザにはレベル1まで開示する等が可能である。
【0010】
しかし、CBC(Cipher Block Chaining)やCFB(Cipher Feedback)やOFB(Output Feedback)など、連鎖的に暗号化を行う方式で暗号化された符号を用いた場合には、期待したとおりの表示結果とならない状況が発生する。
【0011】
JPEG2000符号は、画像の位置、解像度、色成分、レイヤなどのパラメータで分類されたパケットの順序配置の自由度が高く、符号の形成状況では、符号中に異なる暗号化鍵で復元可能な符号が交互に発生することとなる。
【0012】
しかしながら、特定の暗号化鍵にて復元可能な暗号化符号のみの処理が可能な復号処理装置は、処理できない符号に遭遇した時点で、以降の符号の処理が困難となり、以降の処理可能な符号の処理ができず、期待したとおりの結果を得ることができない。
【0013】
この発明は、このような問題を解消し、異なる暗号化レベルが混在した符号を正常に復号可能な符号とする情報処理装置と情報処理方法と情報処理プログラム及び情報記録媒体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明の情報処理装置は、画像データを矩形領域に分割し、分割した矩形領域ごとに独立に圧縮処理された符号データを暗号化する情報処理装置であって、前記符号データを分割する分割手段と、少なくとも2種類の暗号化鍵を設定する暗号化鍵設定手段と、前記分割手段で分割された符号データを、前記暗号化鍵設定手段で設定された少なくとも2種類の暗号化鍵で復号可能な暗号化データに変換する暗号化手段と、前記暗号化手段で暗号化された同一矩形領域の符号データの暗号化データを暗号化鍵毎に整列する整列手段とを有することを特徴とする。
【0015】
この発明の第2の情報処理装置は、画像データを暗号化する情報処理装置であって、前記画像データを矩形領域に分割し、分割した矩形領域ごとに独立に圧縮処理して符号データを生成する符号化手段と、前記符号化手段で生成した符号データを分割する分割手段と、少なくとも2種類の暗号化鍵を設定する暗号化鍵設定手段と、前記分割手段で分割された符号データを、前記暗号化鍵設定手段で設定された少なくとも2種類の暗号化鍵で復号可能な暗号化データに変換する暗号化手段と、前記暗号化手段で暗号化された同一矩形領域の符号データの暗号化データを暗号化鍵毎に整列する整列手段とを有することを特徴とする。
【0016】
前記整列手段は、前記暗号化手段で暗号化された暗号化データを暗号化鍵毎に整列しても良い。
【0017】
また、前記整列手段は、前記暗号化手段で異なる暗号化鍵で暗号化された暗号化データを独立にアクセス可能な配置に整列しても良い。
【0018】
さらに、前記整列手段は、前記暗号化手段で暗号化された、異なる矩形領域の符号データの暗号化データを暗号化鍵毎に整列しても良い。
【0019】
また、前記整列手段は、前記暗号化手段で暗号化された暗号化データを暗号化のレベル順に整列しても良い。
【0020】
前記情報処理装置で暗号化する符号データは、JPEG2000の符号データであることを特徴とする。
【0021】
この発明の情報処理方法は、画像データを矩形領域に分割し、分割した矩形領域ごとに独立に圧縮処理された符号データを暗号化する情報処理方法であって、前記符号データを分割する工程と、少なくとも2種類の暗号化鍵を設定する工程と、前記分割された符号データを、設定された少なくとも2種類の暗号化鍵で復号可能な暗号化データに変換する工程と、前記暗号化された同一矩形領域の符号データの暗号化データを暗号化鍵毎に整列する工程とを有することを特徴とする。
【0022】
この発明の第2の情報処理方法は、画像データを矩形領域に分割し、分割した矩形領域ごとに独立に圧縮処理して符号データを生成する工程と、生成した符号データを分割する工程と、少なくとも2種類の暗号化鍵を設定する工程と、分割された符号データを、設定された少なくとも2種類の暗号化鍵で復号可能な暗号化データに変換する工程と、暗号化された同一矩形領域の符号データの暗号化データを暗号化鍵毎に整列する工程とを有することを特徴とする。
【0023】
前記整列する工程では、暗号化された暗号化データを暗号化鍵毎に整列しても良い。
【0024】
また、前記整列する工程では、異なる暗号化鍵で暗号化された暗号化データを独立にアクセス可能な配置に整列しても良い。
【0025】
さらに、前記整列する工程では、異なる矩形領域の符号データの暗号化データを暗号化鍵毎に整列しても良い。
【0026】
また、前記整列する工程では、暗号化された暗号化データを暗号化のレベル順に整列しても良い。
【0027】
前記情報処理方法で暗号化する符号データは、JPEG2000の符号データであることを特徴とする。
【0028】
この発明の情報処理プログラムは、前記各情報処理方法を、画像データを処理するコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0029】
この発明の情報記録媒体は、画像データを処理するコンピュータに、前記各情報処理方法を実行させるためにコンピュータで読み取り可能なプログラムを記録したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
この発明は、画像データを矩形領域に分割し、分割した矩形領域ごとに独立に圧縮処理して生成した符号データを分割して、少なくとも2種類の暗号化鍵で暗号化して暗号化データに変換し、変換した暗号化データを暗号化鍵毎に整列することにより、異なる暗号化鍵で復元可能な符号データが交互に発生しないようにしたから、ある暗号化鍵で復元可能な暗号化した符号データのみを処理可能な復号処理装置でも確実に画像データを復元して所望の画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図4は、この発明の情報処理装置(コンピュータ)の基本構成を示すブロック図である。コンピュータ401は、スキャナ417から読み取られた画像を入力し、編集や保管を行うことが可能である。また、スキャナ417で得られた画像をプリンタ416によって印刷させることができる。なお、ユーザからの各種指示等は、マウス413、キーボード14の入力操作により行われる。コンピュータ401の内部では、バス407により各ブロックが接続され、種々のデータの受け渡しが可能である。
【0032】
MPU402はコンピュータ401内部の各ブロックとバス407により接続され、各ブロックの動作を制御し、あるいは内部に記憶されたプログラムを実行する。主記憶装置403はMPU402において行われる処理のために、一時的にプログラムや処理対象の画像データを格納する。ハードディスク(HDD)404は主記憶装置403等に転送されるプログラムや画像データをあらかじめ格納したり、処理後の画像データを保存する。スキャナインタフェース(I/F)415はスキャナ417と接続され、スキャナ417で得られた画像データを入力する。プリンタインタフェース408はプリンタ416と接続され、印刷画像データをプリンタ416に送信する。CDドライブ409は外部記憶媒体の一つであるCD(CD−R/CD−RW)に記憶されたデータを読み込みあるいは書き出す。DVDドライブ410は外部記憶媒体の一つであるDVDからの読み込みやDVDへの書き出しをする。FDDドライブ411は外部記憶媒体の一つであるFDDからの読み込みやFDDへの書き出しをする。なお、CD、DVD、FDD等の外部記憶媒体に画像編集用のプログラムや暗号化処理プログラムあるいはプリンタドライバが記憶されている場合には、これらプログラムをHDD404上にインストールし、必要に応じて主記憶装置403に転送されるようになっている。インタフェース(I/F)412はマウス413やキーボード414からの入力指示を受け付ける。ビデオコントローラ405は表示データをモニタ406に送信する。モニタ406は各種情報や処理過程等を表示する。ビデオコントローラ405は、表示データをモニタ406に送信する。
【0033】
このコンピュータ401は、画像データ又は圧縮符号データを異なる暗号化鍵により復元可能な暗号化データに変換するものであり、図5の処理の流れを示すフローチャートに示すように、MPU402の命令によりHDD404に記憶されたオリジナルの符号データ等を主記憶装置403に書き込む(ステップS501)。次にMPU402は主記憶装置403から符号データ等を読み込み暗号化する(ステップS502)。MPU402は暗号化したデータを主記憶装置403のオリジナルの符号データ等とは別の領域に書き込む(ステップS503)。その後、MPU402からの命令により主記憶装置403に記憶した暗号化後のデータをHDD404のオリジナルの符号データ等とは別の領域に書き込む(ステップS504)。
【0034】
このコンピュータ401で処理する暗号化には任意の暗号化方式を適用することができるが、暗号化側と解読側とで同一の暗号鍵を秘密に共有する共通鍵暗号方式を例に説明する。共通鍵暗号方式は、適当な長さの文字列(ブロック)ごとに同じ鍵で暗号化を行うDES(Date Encryption Standard)やAES(Advanced Encryption Standard)等の周知の方式である。
【0035】
DESの基本的な動作は、(1)データを64ビット長のブロックに分割するのと、(2)各ブロックを56ビット長の鍵で暗号化するの2つであるが、ブロックと鍵の使い方によってECB、CB、CFB、OFBの4つのモードがある。
【0036】
ECB(Electronic Code Block)はDESの基本型と言えるモードであり、前記基本動作がそのまま行われる。すなわち、データをブロックに分割した後、各ブロックを秘密鍵で暗号化し、それらのブロックを元の順番でつなぎ合わせる。
CBC(Cipher Block Chaining)は,暗号化された前ブロックと、まだ暗号化されていない現在のブロックとのXOR(排他的論理和)をとり、これを秘密鍵で暗号化する。Chaining(連鎖)という言葉が使われているように,各ブロックの暗号化が連鎖的に進められる。
CFB(Cipher Feedback)は、前ブロックの暗号化結果の一部(mビット)が次ブロックのmビットと排他的論理和をとる値としてフィードバックされるモードである。
OFB(Output Feedback)は、ある初期値を第1ブロックとして暗号文を生成し、その暗号文又は一部を次の暗号文の入力として用いると同時に、その一部(mビット)を乱数として対応するmビットのデータと排他的論理和をとるモードである。上記モードにおいてmビットを適切に選択することにより、任意のビット長毎の暗号化を実現することができる。
【0037】
この共通鍵暗号方式によりコンピュータ401で、画像データを矩形領域に分割し、分割した矩形領域ごとに独立に圧縮処理された符号データを異なる暗号化鍵により復元可能な暗号化データに変換するときの処理を図6のフローチャートを参照して説明する。
【0038】
コンピュータ401のMPU402は画像データを読み込み(ステップS601)、読み込んだ画像データを符号化処理して暗号化する符号データを主記憶装置403に記憶させる(ステップS602)。この暗号化する符号データは、JPEG2000のストリームで構成されており、例えば解像度レベルが3レベル、領域(プレシンクト)分割が4、色成分1、画質(レイヤ)分割1の符号で構成している。次に、MPU402は主記憶装置403から暗号化する符号データを読み込み、読み込んだ符号データをブロックに分割し(ステップS603)、2種類の暗号化鍵を設定して分割された符号データを2種類の暗号化鍵で暗号化し、暗号化した暗号化データを主記憶装置403に記憶させる(ステップS604,S605)。この2種類の暗号化鍵で符号データを暗号化するとき、JPEG2000のストリームのプレシンクト0とプレシンク1が暗号化鍵1、プレシンクト2とプレシンク3が暗号化鍵2で暗号化して、図7(a)に示す暗号化データ701を生成したとする。コードストリーム中に検出されるパケットの順番を示すプログレッションオーダーはRPCL(Resolution Level-Position- Component-Layer Progression)を例とする。
【0039】
この場合、暗号化データ701の解読可能な暗号化鍵は、図7(a)に示すように、不規則に変化した符号列となる。図7において、MHはメインヘッダ、TPH0はタイルパートヘッダ、RiP0とRiP1(i=0〜2)は暗号化鍵1で暗号化したパケットデータを示し、RiP2とRiP3(i=0〜2)は暗号化鍵2で暗号化したパケットデータを示す。
【0040】
MPU402は暗号化鍵1と暗号化鍵2で暗号化した不規則に変化する符号列の暗号化データを読み込み、読み込んだ暗号化データのメインヘッダを読み込む(ステップS606)。次に暗号化データを暗号化鍵1と暗号化鍵2の境界位置まで読み込み、同一暗号化鍵の暗号化データを一時記憶する(ステップS607、S608、S609)。例えば図7(a)においてパケットデータR0P0とR0P1を読み込んだ後、パケットデータR0P2とR0P3を読み込む。このパケットデータを読み込むときの境界位置は、暗号化された符号の場合はJPSECマーカーにより示されている。また、暗号化されていない符号の場合は、メインヘッダ、タイルパートヘッダ、パケットヘッダなどから解読する。
【0041】
この処理を繰り返して、全ての暗号化データまでの読み込みが完了すると(ステップS610)、暗号化鍵1と暗号化鍵2の暗号化データをそれぞれまとめて、図7(b)に示すように、同一の暗号化鍵毎に整列した暗号化データ702を生成する(ステップS611)。このように暗号化鍵1の符号データと暗号化鍵2の符号データを連続することにより、暗号化鍵1と暗号化鍵2で復元可能な符号データが交互に発生しないから、例えば暗号化鍵1で復元可能な暗号化した符号データのみを処理可能な復号処理装置でも確実に復元して期待通りの画像データを得ることができる。
【0042】
この暗号化鍵1と暗号化鍵2毎の暗号化データの整列は、所望のデータ順序にするために符号全体のプログレッションオーダーをPCRL(Position-Component-Resolution Level-Layer Progression)に変更して実現する。
【0043】
また、暗号化鍵1と暗号化鍵2毎の暗号化データを整列するとき、符号データ全体のプログレッションオーダーを変更しないで、図8の暗号化データ702aに示すように、パケットの順序を変更したい位置でのみプログレッションオーダーを一時的に変更してもよい。この場合、JPEG2000のPOC(Progression order change)マーカセグメントが使用できる。
【0044】
前記説明では、全ての暗号化データの読み込みが完了した後、暗号化鍵1と暗号化鍵2の暗号化データをそれぞれまとめて同一の暗号化鍵毎に整列した暗号化データを生成した場合について説明したが、図9(a)に示すように、暗号化鍵1と暗号化鍵2で暗号化されて解読可能な暗号化鍵が不規則に変化した符号列の暗号化データ701を、図9(b)に示すように、同一の暗号化鍵毎にタイルパートに分割して暗号化データ702bを生成しても良い。この場合タイルパートヘッダTPH0,TPH1,TPH2に記載されたタイルパートの符号長から、処理できない暗号化鍵のデータ符号を読み飛ばすことが可能になり、暗号化鍵1と暗号化鍵2のいずれかで復元可能な暗号化した符号データのみを処理可能な復号処理装置でも確実に暗号化データを復元して期待通りの画像データを得ることができる。
【0045】
前記各説明ではタイル内のパケット順序の変換を行う場合について説明したが、タイル間における符号データの暗号化データも同様に同一の暗号化鍵毎に分割した暗号化データを生成することができる。また、暗号化データを暗号化レベルに応じて同一の暗号化鍵毎に整列して分割した暗号化データを生成することもできる。
【0046】
すなわち、図10(a)に示すように、タイル間における符号データを異なる2種類の暗号化レベル0と暗号化レベル1で暗号化した暗号化データ801を、図10(b)に示すように、暗号化レベル0と暗号化レベル1毎の暗号化データにそれぞれまとめて、タイル間で並べ替えを行った暗号化データ802を生成することにより、暗号化レベル0と暗号化レベル1のいずれかで復元可能な暗号化した符号データのみを処理可能な復号処理装置でも確実に暗号化データを復元することができる。
【0047】
前記説明では符号化処理と暗号化処理と暗号化データの変換処理をコンピュータ401のMPU402で同時に連続して行った場合について説明したが、これらの処理を必要に応じて別々に行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】JPEG2000エンコーダの構成を示すブロック図である。
【図2】JPEG2000のおける離散ウェーブレット変換によりサブバンドを示す図である。
【図3】JPEG2000のストリームの構成を示す模式図である。
【図4】この発明の情報処理装置の基本構成を示すブロック図である。
【図5】情報処理装置による暗号化処理を示すフローチャートである。
【図6】この発明の符号化処理と暗号化処理と暗号化データの変換処理を示すフローチャートである。
【図7】暗号化処理した暗号化データと変換処理した暗号化データを示す模式図である。
【図8】暗号化データに第2の変換処理をした暗号化データを示す模式図である。
【図9】暗号化データに第3の変換処理をした暗号化データを示す模式図である。
【図10】他の暗号化処理した暗号化データと変換処理した暗号化データを示す模式図である。
【符号の説明】
【0049】
401;コンピュータ、402;MPU,403;主記憶装置、404;HDD、
405;ビデオコントローラ、406;モニタ、407;バス、
408;プリンタI/F、409;CDドライブ、410;DVDドライブ、
411;FDDドライブ、412;I/F、413;マウス、414;キーボード、
415;スキャナI/F、416;プリンタ、417;スキャナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを矩形領域に分割し、分割した矩形領域ごとに独立に圧縮処理された符号データを暗号化する情報処理装置であって、
前記符号データを分割する分割手段と、
少なくとも2種類の暗号化鍵を設定する暗号化鍵設定手段と、
前記分割手段で分割された符号データを、前記暗号化鍵設定手段で設定された少なくとも2種類の暗号化鍵で復号可能な暗号化データに変換する暗号化手段と、
前記暗号化手段で暗号化された同一矩形領域の符号データの暗号化データを暗号化鍵毎に整列する整列手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
画像データを暗号化する情報処理装置であって、
前記画像データを矩形領域に分割し、分割した矩形領域ごとに独立に圧縮処理して符号データを生成する符号化手段と、
前記符号化手段で生成した符号データを分割する分割手段と、
少なくとも2種類の暗号化鍵を設定する暗号化鍵設定手段と、
前記分割手段で分割された符号データを、前記暗号化鍵設定手段で設定された少なくとも2種類の暗号化鍵で復号可能な暗号化データに変換する暗号化手段と、
前記暗号化手段で暗号化された同一矩形領域の符号データの暗号化データを暗号化鍵毎に整列する整列手段と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
前記整列手段は、前記暗号化手段で暗号化された暗号化データを暗号化鍵毎に整列することを特徴とする請求項1又は2記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記整列手段は、前記暗号化手段で異なる暗号化鍵で暗号化された暗号化データを独立にアクセス可能な配置に整列することを特徴とする請求項1又は2記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記整列手段は、前記暗号化手段で暗号化された、異なる矩形領域の符号データの暗号化データを暗号化鍵毎に整列することを特徴とする請求項1又は2記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記整列手段は、前記暗号化手段で暗号化された暗号化データを暗号化のレベル順に整列することを特徴とする請求項1又は2記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記暗号化する符号データは、JPEG2000の符号データであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の情報処理装置。
【請求項8】
画像データを矩形領域に分割し、分割した矩形領域ごとに独立に圧縮処理された符号データを暗号化する情報処理方法であって、
前記符号データを分割する工程と、
少なくとも2種類の暗号化鍵を設定する工程と、
前記分割された符号データを、設定された少なくとも2種類の暗号化鍵で復号可能な暗号化データに変換する工程と、
前記暗号化された同一矩形領域の符号データの暗号化データを暗号化鍵毎に整列する工程と、
を有することを特徴とする情報処理方法。
【請求項9】
画像データを矩形領域に分割し、分割した矩形領域ごとに独立に圧縮処理して符号データを生成する工程と、
生成した符号データを分割する工程と、
少なくとも2種類の暗号化鍵を設定する工程と、
分割された符号データを、設定された少なくとも2種類の暗号化鍵で復号可能な暗号化データに変換する工程と、
暗号化された同一矩形領域の符号データの暗号化データを暗号化鍵毎に整列する工程と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項10】
前記整列する工程では、暗号化された暗号化データを暗号化鍵毎に整列することを特徴とする請求項8又は9記載の情報処理方法。
【請求項11】
前記整列する工程では、異なる暗号化鍵で暗号化された暗号化データを独立にアクセス可能な配置に整列することを特徴とする請求項8又は9記載の情報処理方法。
【請求項12】
前記整列する工程では、異なる矩形領域の符号データの暗号化データを暗号化鍵毎に整列することを特徴とする請求項8又は9記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記整列する工程では、暗号化された暗号化データを暗号化のレベル順に整列することを特徴とする請求項8又は9記載の情報処理方法。
【請求項14】
前記暗号化する符号データは、JPEG2000の符号データであることを特徴とする請求項8乃至13のいずれかに記載の情報処理方法。
【請求項15】
請求項8乃至14のいずれかに記載の情報処理方法を、画像データを処理するコンピュータに実行させることを特徴とする情報処理プログラム。
【請求項16】
画像データを処理するコンピュータに、請求項8乃至14のいずれかに記載の情報処理方法を実行させるためにコンピュータで読み取り可能なプログラムを記録したことを特徴とする情報記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−124456(P2009−124456A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296337(P2007−296337)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】