説明

情報処理装置及び情報処理プログラム

【課題】情報処理用のルックアップデーブルを圧縮した状態で保持し、且つ使用する情報処理装置及び情報処理プログラムを提供する。
【解決手段】処理データ受付部34が演算処理の対象である処理データを受け付けると、選択指示部32が管理データ保持部30を参照し、処理データの入力値に応じていずれの圧縮パラメータ(始点値、終点値、傾き値)を取得すべきかを圧縮パラメータ取得部26に指示する。圧縮パラメータ取得部26は、上記選択指示部32の指示に基づき、圧縮データ保持部24に保持された圧縮パラメータを取得し、演算部28は、入力値及び圧縮パラメータ取得部26が取得した圧縮パラメータに基づき、始点値+入力値×傾き値の演算処理を行い、演算結果を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像処理その他の情報処理にはルックアップテーブル(LUT)が使用されている。例えば、下記特許文献1には、変換テーブルに基づく補間演算処理により画像データに変換処理を施す画像処理装置が開示されている。
【0003】
このようなLUTのデータサイズは目的とする情報処理に応じて決まるが、画像処理等の場合には通常大きなデータサイズとなり、これを保持するためのメモリサイズも大きくなる。また、LUTから情報処理部へのデータの転送時間が処理時間に大きく影響する。
【特許文献1】特開2006−81209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、情報処理用のルックアップデーブルを圧縮した状態で保持し、且つ使用する情報処理装置及び情報処理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1記載の情報処理装置の発明は、情報処理に使用するデータを、圧縮された状態で保持する圧縮データ保持手段と、前記圧縮データから圧縮パラメータを取得する圧縮パラメータ取得手段と、前記圧縮パラメータを使用して所定の演算処理を実行する演算手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記圧縮データが、前記圧縮パラメータとして始点、終点及び傾きの情報を含むことを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記圧縮データ保持手段が、始点、終点及び傾きの情報の組合せを複数保持し、前記圧縮パラメータ取得手段が、選択指示手段の指示に基づいて、前記演算処理の対象である入力データに対して、前記複数の組合せから使用すべき組合せを選択することを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の情報処理プログラムの発明は、コンピュータを、圧縮された状態で保持された情報処理に使用する圧縮データから圧縮パラメータを取得する圧縮パラメータ取得手段、前記圧縮パラメータを使用して所定の演算処理を実行する演算手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1及び請求項2の発明によれば、情報処理用のルックアップテーブルを圧縮して保持し、演算時に伸張して使用する構成に比べて、ルックアップデーブルを圧縮した状態で保持し、且つ圧縮した状態で演算処理に使用することができる。
【0010】
請求項3の発明によれば、本構成を有していない場合に比べて、圧縮パラメータを容易に選択することができる。
【0011】
請求項4の発明によれば、情報処理用のルックアップテーブルを圧縮して保持し、演算時に伸張して使用する構成に比べて、ルックアップデーブルを圧縮した状態で保持し、且つ圧縮した状態で演算処理に使用することができる情報処理プログラムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0013】
図1には、本発明にかかる情報処理装置の一実施形態のハードウェア構成が示される。図1において、情報処理装置は、中央処理装置(例えばCPUを用いることができる)10、ランダムアクセスメモリ(RAM)12、読み出し専用メモリ(ROM)14、入力装置16、表示装置18、通信インターフェース20及びハードディスク装置(HDD)22を含んで構成されている。また、これらの構成要素は、バス23により互いに接続されている。
【0014】
CPU10は、RAM12またはROM14に格納されている制御プログラムに基づいて、後述する各部の動作を制御する。RAM12は主としてCPU10の作業領域として機能する。
【0015】
また、入力装置16は、キーボード、ポインティングデバイス等により構成され、使用者が動作指示等を入力するために使用する。
【0016】
また、表示装置18は、液晶ディスプレイ等により構成され、情報処理装置の処理結果等を表示する。
【0017】
また、通信インターフェース20は、USB(ユニバーサルシリアルバス)ポート、ネットワークポート等の適宜なインターフェースにより構成され、CPU10がネットワーク等の通信手段を介して外部の装置とデータのやり取りを行うために使用する。
【0018】
また、ハードディスク装置22は、大容量の記憶装置であり、後述する処理に必要となる種々のデータを記憶することができる。
【0019】
図2には、本発明にかかる情報処理装置の一実施形態の機能ブロックが示される。図2において、情報処理装置は、圧縮データ保持部24、圧縮パラメータ取得部26、演算部28、管理データ保持部30、選択指示部32及び処理データ受付部34を含んで構成されている。
【0020】
圧縮データ保持部24は、例えば、RAM12及びハードディスク装置22並びにこれらをCPU10により制御するためのプログラムにより構成され、情報処理に使用するLUT(ルックアップテーブル)データを、圧縮された状態で保持する。ここで、上記LUTの圧縮データは、例えば圧縮パラメータとして始点、終点及び傾きの情報を含む。なお、圧縮データ保持部24に保持されるLUTの圧縮データは小容量であるので、レジスタ等の小容量の記憶素子上に圧縮データ保持部24を構成することもできる。
【0021】
圧縮パラメータ取得部26は、例えばCPUとCPUの処理動作を制御するプログラムとを含んで構成され、上記圧縮データ保持部24に保持されたLUTの圧縮データから、情報処理に使用する圧縮パラメータを取得する。なお、圧縮データ保持部24と圧縮パラメータ取得部26とを別の装置上に形成し、圧縮パラメータ取得部26が通信インターフェース20を介して圧縮パラメータを取得する構成としてもよい。
【0022】
演算部28は、例えばCPUとCPUの処理動作を制御するプログラムとを含んで構成され、上記圧縮パラメータを使用して、情報処理のための所定の演算処理を実行する。
【0023】
管理データ保持部30は、例えば、RAM12及びハードディスク装置22並びにこれらをCPU10により制御するためのプログラムにより構成され、入力データと当該入力データの処理に使用するLUTの圧縮パラメータとの関係情報を保持する。この関係情報は、圧縮パラメータとして圧縮データ保持部24に複数保持された始点、終点及び傾きの情報の組合せと入力データとを対応付ける情報である。なお、管理データ保持部30に保持される関係情報は小容量であるので、レジスタ等の小容量の記憶素子上に管理データ保持部30を構成することもできる。
【0024】
選択指示部32は、例えばCPUとCPUの処理動作を制御するプログラムとを含んで構成され、演算処理の対象である入力データに対して、上記管理データ保持部30が保持する関係情報に基づき、演算処理に使用すべき始点、終点及び傾きの情報の組合せを圧縮パラメータ取得部26に指示する。
【0025】
処理データ受付部34は、例えば入力装置16及びこれをCPU10により制御するためのプログラムにより構成され、演算部28により演算処理する対象となる処理データを受け付ける。また、処理データ受付部34は、通信インターフェース20を介して処理データを受け付ける構成としてもよい。
【0026】
なお、図2に示された実施形態は、コンピュータ上で動作するソフトウエアにより情報処理装置の各機能を構成する例であるが、これに限定されるものではない。例えば、上記情報処理装置の一部または全部の構成を専用のハードウェア(例えばASIC等)で構成してもよい。また、各構成は複数の装置に分散配置され、互いに通信手段で接続されている形態でもよい。また、情報処理装置が複数互いに通信手段によって接続されていて互いに協調動作する構成としてもよい。さらに、複写機、ファックス、スキャナ、印刷装置、複合機(多機能複写機とも呼ばれ、スキャナ、印刷装置、複写機、ファックス等の機能を有している)などに組み込まれていてもよい。
【0027】
図3(a)〜(e)には、圧縮データ保持部24に保持されたLUTの圧縮データの例の説明図が示される。図3(a)は、圧縮前のLUTデータの例であり、図3(b)は、図3(a)のLUTデータのアドレス(入力値)と出力データとの関係を表す図である。図3(b)では、LUTデータが直線で表されており、LUTデータの範囲に応じてアドレスの始点α、終点βが指定されている。
【0028】
また、図3(c)は、図3(a),(b)に示されたLUTデータを圧縮した結果の圧縮パラメータであり、圧縮データ保持部24に保持されるデータである。図3(c)では、圧縮パラメータとしてアドレスの始点値、傾き値、アドレスの終点値により図3(b)に示される直線のデータを圧縮している。また、圧縮パラメータの最後には、エンドマーカを付加して圧縮LUTデータの区切りを示している。上記LUTのアドレスすなわち入力値から出力値を算出するには、上記圧縮パラメータを使用し、
出力=始点値に対応する出力値+傾き値×入力値
により演算する。この場合、入力値が始点値と終点値との間にあることが前提となる。
【0029】
また、図3(d)は、LUTデータを示す直線の途中に折れ点(傾き値が変化する点)がある場合の例であり、傾き値の異なる第1の直線Aと第2の直線BとでLUTが形成されている。このようなLUTデータを圧縮して得た圧縮パラメータの例が図3(e)に示される。この圧縮パラメータが圧縮データ保持部24に保持される。図3(e)では、第1の直線Aの始点値が0、傾き値が1、終点値が200となっている。また、第2の直線Bは、第1の直線Aの終点値が始点値となり、始点値が200、傾き値が3、終点値が255となっている。
【0030】
このような始点値と終点値のデータは、上述した管理データ保持部30に関係情報として保持されている。また、演算部28における演算の際には、上記始点値と終点値のデータに基づいて、選択指示部32が入力値に応じていずれの始点値、終点値、傾き値を取得すべきかを圧縮パラメータ取得部26に指示する。
【0031】
図4(a),(b)には、圧縮データ保持部24に保持されたLUTの圧縮データの他の例の説明図が示される。図4(a)では、3種類のLUTデータ(LUT1,LUT2,LUT3)が直線で表されている。また、図4(b)はその圧縮パラメータとして圧縮データ保持部24に保持されるデータである。図4(b)において、それぞれのLUTデータは、圧縮されて始点値、終点値、傾き値の圧縮パラメータとして保持されている。また、LUT2及びLUT3は、図3(d)と同様に、途中に折れ点があるLUTデータであり、図3(e)と同様に、前の直線の終点値(折れ点)が次の直線の始点値を兼ねている。また、それぞれのLUTにはスタートマーカとエンドマーカが付加されて、互いの区切りが示されている。
【0032】
図5には、選択指示部32の動作説明図が示される。図5において、横軸がLUTの入力アドレスであり、縦軸がLUTの出力値である。また、LIにより処理データの値(入力値)が示される。図5のLUTは、4つの折れ点により区切られた5つの線により構成されている。このため、図5のLUTの入力アドレスは、5つの区間D1〜D5に区切られている。図5の実施形態においては、管理データ保持部30に、上記5つの区間D1〜D5の情報が保持される。
【0033】
選択指示部32は、管理データ保持部30に保持された5つの区間D1〜D5を参照し、演算処理の対象である処理データの入力値LIが、D1〜D5の何れの区間にあるかを判定する。この判定処理によりLIが存在する区間を決定し、圧縮パラメータ取得部26に指示する。
【0034】
図6には、本発明にかかる情報処理装置の動作例のフローが示される。図6において、処理データ受付部34が演算処理の対象である処理データを受け付けると(S1)、選択指示部32が管理データ保持部30を参照し、処理データ(LUTの入力値LI)に応じていずれの圧縮パラメータ(始点値、終点値、傾き値)を取得すべきかを圧縮パラメータ取得部26に指示する(S2)。
【0035】
圧縮パラメータ取得部26は、上記選択指示部32の指示に基づき、圧縮データ保持部24に保持された圧縮パラメータを取得する(S3)。
【0036】
演算部28は、入力値LI及び圧縮パラメータ取得部26が取得した圧縮パラメータに基づき、始点値+LI×傾き値の演算処理を行い(S4)、演算結果を出力する(S5)。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明にかかる情報処理装置の一実施形態のハードウェア構成を示す図である。
【図2】本発明にかかる情報処理装置の一実施形態の機能ブロック図である。
【図3】LUTの圧縮データの例の説明図である。
【図4】LUTの圧縮データの他の例の説明図である。
【図5】選択指示部の動作説明図である。
【図6】本発明にかかる情報処理装置の動作例のフロー図である。
【符号の説明】
【0038】
10 CPU、12 RAM、14 ROM、16 入力装置、18 表示装置、20 通信インターフェース、22 ハードディスク装置、23 バス、24 圧縮データ保持部、26 圧縮パラメータ取得部、28 演算部、30 管理データ保持部、32 選択指示部、34 処理データ受付部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理に使用するデータを、圧縮された状態で保持する圧縮データ保持手段と、
前記圧縮データから圧縮パラメータを取得する圧縮パラメータ取得手段と、
前記圧縮パラメータを使用して所定の演算処理を実行する演算手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の情報処理装置において、前記圧縮データは、前記圧縮パラメータとして始点、終点及び傾きの情報を含むことを特徴とする情報処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の情報処理装置において、前記圧縮データ保持手段は、始点、終点及び傾きの情報の組合せを複数保持し、前記圧縮パラメータ取得手段は、選択指示手段の指示に基づいて、前記演算処理の対象である入力データに対して、前記複数の組合せから使用すべき組合せを選択することを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
コンピュータを、
圧縮された状態で保持された情報処理に使用する圧縮データから圧縮パラメータを取得する圧縮パラメータ取得手段、
前記圧縮パラメータを使用して所定の演算処理を実行する演算手段、
として機能させることを特徴とする情報処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−89176(P2009−89176A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258017(P2007−258017)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】