説明

情報処理装置

【課題】真の物体に対する標本データと真偽判定に用いられる標本データとの相関をとったときの相関データに基づいた真偽判定の精度を高めることができる情報処理装置を提供すること。
【解決手段】物体の表面の組成状態から変換された標本データを処理する情報処理装置10において、真の物体に対する標本データと真偽判定に用いられる標本データとの相関による相関データを生成する相関データ生成部12と、標本データに変換するときの直流成分を相関データから除去する直流成分除去部13と、直流成分除去部13によって除去されて得られた相関データから相関値の平均的な値を算出する平均値算出部14と、相関データから相関値の最大値を抽出する最大値抽出部15と、最大値抽出部15によって抽出された最大値と平均値算出部14によって算出された平均的な値との比に基づいて物体が真か偽か判定する判定部16とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読み取り対象物の真偽を判定する情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム、およびその記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
紙は、木材パルプを原料とした細かい繊維が絡み合って作られている。この繊維の組成状態はランダムであるため、全く同じ繊維の組成状態をもつ紙が存在する可能性は非常に低い。この紙がもつ繊維の組成状態は、人間の「指紋」のように全ての紙1枚1枚を識別するために用いることができる。このような紙がもつ繊維の組成状態を以下「紙紋」という。
【0003】
紙紋を読み取る技術としては、スポット状のレーザ光を紙の表面に照射すると共に紙を40mm掃引して、散乱する光を4つの近接するフォトダイオードで検出しながら紙紋を読み取ることによって、この紙が真の紙か否かを判定する真偽判定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来の真偽判定装置は、4つのフォトダイオードで検出して得られた光の強度を表す波形データを取り込むものであり、波形データで表現される波形は、その紙特有の散乱光の波形となる。
【0004】
また、従来の真偽判定装置で取り込まれた同一の紙の波形データで表現される波形は、類似するので、それぞれの波形データ同士で相関をとると鋭いピーク(他の値と突出した値)が検出される。一方、従来の真偽判定装置で取り込まれた異なる紙の波形データで表現される波形は、類似しないため、それぞれの波形データで相関をとってもピークは検出されない。
【特許文献1】国際公開第2005/088533号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の真偽判定装置では、波形データ同士の相関をとるために通常の相互相関で計算した場合、計算して得られた相関データに、紙紋をデータ変換するときに発生する直流成分のノイズや相互相関のとり方に不都合などがある状態で、真偽判定を行うと、真偽判定の精度が落ちてしまうという課題が残されていた。
【0006】
そこで、本発明は、真の物体に対する標本データと真偽判定に用いられる標本データとの相関をとったときの相関データに基づいた真偽判定の精度を高めることができる情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム、およびその記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の情報処理装置は、物体の表面の組成状態から変換された標本データを処理する情報処理装置において、真の物体に対する標本データと真偽判定に用いられる標本データとの相関による相関データを生成する相関データ生成部と、前記標本データに変換するときの直流成分を前記相関データから除去する直流成分除去部と、前記直流成分除去部によって除去されて得られた相関データから相関値の平均的な値を算出する平均値算出部と、前記相関データから前記相関値の最大値を抽出する最大値抽出部と、前記最大値抽出部によって抽出された最大値と前記平均値算出部によって算出された平均的な値との比に基づいて物体が真か偽か判定する判定部とを備えた構成を有している。
この構成により、標本データに変換するときの直流成分を相関データから除去してから真偽判定を行うため、真の物体に対する標本データと真偽判定に用いられる標本データとの相関をとったときの相関データに基づいた真偽判定の精度を高めることができる。
【0008】
また、本発明の情報処理装置は、前記直流成分除去部が前記相関値の平均値を前記直流成分とする構成を有している。
この構成により、相関値の平均値を直流成分とするため、相関データに基づいた真偽判定の精度を高めることができる。
【0009】
また、本発明の情報処理装置は、前記相関データが、前記真の物体に対する標本データと前記真偽判定に用いられる標本データとのシフト相関をとる際のシフト数に対応する相関値によって構成される構成を有している。
この構成により、相関データは、真の物体に対する標本データと真偽判定に用いられる標本データとのシフト相関をとる際のシフト数に対応する相関値によって構成されるため、相関データに基づいた真偽判定の処理を容易に行うことができる。
【0010】
また、本発明の情報処理装置は、前記直流成分除去部が、前記相関値の最大値にある前記シフト数付近を除く各前記シフト数に対応する前記相関値の平均値を前記直流成分とする構成を有している。
この構成により、相関値の最大値にある前記シフト数付近を除く各シフト数に対応する相関値の平均値を前記直流成分とするため、相関データに基づいた真偽判定の精度を高めることができる。
【0011】
また、本発明の情報処理装置は、前記最大値抽出部が抽出する最大値が、前記相関値の最大値にある前記シフト数付近を除く各前記シフト数に対応する前記相関値の平均値を、前記相関値の最大値から引いた値である構成を有している。
この構成により、相関値の最大値にあるシフト数付近を除く各シフト数に対応する相関値の平均値を、相関値の最大値から引いた値を最大値とするため、相関データに基づいた真偽判定の精度を高めることができる。
【0012】
また、本発明の情報処理装置は、前記平均的な値が、平均自乗根である構成を有している。
この構成により、相関値の平均的な値は、平均自乗根であるため、相関データに基づいた真偽判定の処理を容易に行うことができる。
【0013】
また、本発明の情報処理装置は、前記相関データ生成部が、前記真の物体に対する標本データ、前記真偽判定に用いられる標本データのどちらかをシフト対象とし、前記シフト対象となる標本データの標本を1つシフトするときには、前記シフト数を1つ加算すると共に、前記シフト対象となる標本データの端に設定されている標本を他の端に設定しながら各標本を1つシフトした状態で前記シフト相関をとる構成を有している。
この構成により、ダミー値などを用いず常に標本データの標本の値を用いてシフト相関をとるため、通常のシフト相関をとる際に発生するノイズを低減することができる。
【0014】
また、本発明の情報処理装置は、前記物体に対して相対的に移動しながら該物体の表面にレーザ光を照射するレーザ光照射部と、前記レーザ光照射部と共に該物体に対して相対的に移動しながら該物体の表面で前記レーザ光が散乱された散乱光を受光する受光部とを備え、前記標本データが、前記受光部によって受光された散乱光の強度を表す構成を有している。
この構成により、物体の表面の組成形状を読み取ることができ、相関データに基づいた真偽判定の精度を高めることができる。
【0015】
また、本発明の情報処理装置は、前記物体が紙であり、前記レーザ光照射部が、前記紙を組成する繊維の絡み具合に応じて前記標本データが変化する程度の波長のレーザ光を照射する構成を有している。
この構成により、紙の組成形状を読み取ることができ、相関データに基づいた真偽判定の精度を高めることができる。
【0016】
また、本発明の情報処理装置は、前記レーザ光照射部が、レーザダイオードによって構成され、前記受光部が、フォトダイオードによって構成される。
【0017】
また、本発明の情報処理装置は、前記物体が紙であり、前記標本データが、前記紙を組成する繊維の絡み具合に応じた情報である構成を有している。
【0018】
本発明の情報処理方法は、物体の表面の組成状態から変換された標本データを処理する情報処理方法において、真の物体に対する標本データと真偽判定に用いられる標本データとの相関による相関データを生成する相関データ生成ステップと、前記標本データに変換するときの直流成分を前記相関データから除去する直流成分除去ステップと、前記直流成分除去ステップで除去されて得られた相関データから相関値の平均的な値を算出する平均値算出ステップと、前記相関データ生成ステップで生成された相関データから前記相関値の最大値を抽出する最大値抽出ステップと、前記最大値抽出ステップで抽出された最大値と前記平均値算出部によって算出された平均的な値との比に基づいて物体が真か偽か判定するステップとを有している。
この方法により、標本データに変換するときの直流成分を相関データから除去してから真偽判定を行うため、相関データに基づいた真偽判定の精度を高めることができる。
【0019】
本発明の情報処理プログラムは、物体の表面の組成状態から変換された標本データを処理する情報処理プログラムにおいて、真の物体に対する標本データと真偽判定に用いられる標本データとの相関による相関データを生成する相関データ生成ステップと、前記標本データに変換するときの直流成分を前記相関データから除去する直流成分除去ステップと、前記直流成分除去ステップで除去されて得られた相関データから相関値の平均的な値を算出する平均値算出ステップと、前記相関データ生成ステップで生成された相関データから前記相関値の最大値を抽出する最大値抽出ステップと、前記最大値抽出ステップで抽出された最大値と前記平均値算出部によって算出された平均的な値との比に基づいて物体が真か偽か判定するステップとをコンピュータに実行させる。
このプログラムにより、標本データに変換するときの直流成分を相関データから除去してから真偽判定を行うため、相関データに基づいた真偽判定の精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明は、真の物体に対する標本データと真偽判定に用いられる標本データとの相関をとったときの相関データに基づいた真偽判定の精度を高めることができる情報処理装置を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、本発明に係る情報処理装置には、紙、プラスチック等の物体を適用することができるが、以下に説明する本発明の実施の形態においては、本発明に係る情報処理装置に適用する物体を紙とした例について説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係る情報処理装置の構成図の一例である。
【0023】
図1に示した情報処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、およびハードディスクなどを有し、紙紋読込部20、標本データ格納部11、相関データ生成部12、直流成分除去部13、平均値算出部14、最大値抽出部15、判定部16、表示部17、入力部18、および切替部19によって構成されている。
【0024】
紙紋読込部20は、紙を組成する繊維の絡み具合を表す紙紋を読み込むようになっている。例えば、図2(a)に示すように、紙紋読込部20は、レーザダイオード22、シリンドリカルレンズ23a、23b、およびフォトダイオード24a乃至24dを有している。以下、レーザダイオードを単に「LD」と記載し、フォトダイオードを単に「PD」と記載する。
【0025】
LD22は、図示しない掃引機構によって掃引される紙21の表面にレーザ光を照射するようになっている。また、LD22は、紙21の紙紋が読み取れる程度の波長、例えば635nmのレーザ光を照射するようになっている。
【0026】
シリンドリカルレンズ23a、23bは、LD22がレーザ光を紙21に照射しているとき、紙21の表面における照射形状を図2(b)に示すように、例えば長さ7mmのスポット状に変化させるようになっている。
【0027】
PD24a乃至24dは、紙21の表面でレーザ光が散乱された散乱光を受光するようになっており、紙21の表面におけるレーザ光の照射面の中心を受光軸が通るよう、互いに異なる位置でLD22に対して固定に設けられている。例えば、紙を40mm程度掃引しながら、PD24a乃至24dが、散乱光を検出して紙紋を読み取るようになっている。
【0028】
図3に示すように、PD24aには、PDアンプ30、ハイパスフィルタ31、アンプ32、およびアナログデジタルコンバータ33が設けられている。以下、ハイパスフィルタを単に「HPF」と記載し、アナログデジタルコンバータを単に「A/D」と記載する。
【0029】
PDアンプ30は、PD24aによって光電変換された電気信号を増幅するようになっている。HPF31は、PDアンプ30によって増幅された電気信号の低周波成分を抑制するようになっている。
【0030】
アンプ32は、低周波成分が抑制された電気信号を増幅するようになっている。A/D33は、アンプ32によって増幅された電気信号をデジタル信号に変換するようになっている。
【0031】
また、各PD24b乃至24dにも、PDアンプ30、HPF31、アンプ32およびA/D33がそれぞれ同様に設けられているが、図示を省略する。なお、本実施の形態においては、HPF31として遮断周波数が20Hzのものを用い、アンプ32として利得が20のものを用いている。
【0032】
なお、A/D33によって変換されるデジタル信号は、光の強度を表している。例えば、A/D33は、紙を40mm掃引して得られた電気信号から1000個の標本を抽出し、1000個の標本それぞれに対応する光の強度を表した標本データに変換し、切替部19に出力するようになっている。
【0033】
なお、本発明の実施の形態を理解しやすくするために、以下の説明では、PD24aからのチャンネルを用い、他のPD24b乃至24dからのチャンネルを未使用とした場合について説明する。
【0034】
図1に示したように、標本データ格納部11は、切替部19から出力された標本データを格納するようになっており、例えば、ハードディスク等の不揮発性の記憶媒体によって構成されている。なお、本発明の実施の形態では、標本データ格納部11に格納される標本データは、真(オリジナル)の紙の紙紋に対する標本データとする。
【0035】
相関データ生成部12は、標本データ格納部11に格納される真の標本データと、紙の真偽判定に用いられる標本データとの相関による相関データを生成するようになっている。例えば、相関データ生成部12が生成する相関データは、真の紙の紙紋に対する標本データになる基準データと、真偽判定に用いられる被判定データとのシフト相関をとる際のシフト数に対応する相関値であってもよい。なお、被判定データは、すなわち真の紙の紙紋と同じ紙紋か否かを判定する際の紙紋に対する標本データである。
【0036】
ここで、紙紋読込部20で読み取って得られた、真の紙の紙紋の標本からなる基準データを図4に示し、紙紋読込部20で読み取って得られた、被判定用の紙紋の標本からなる被判定データを図5に示す。
【0037】
また、基準データの光の強度をO、被判定データの光の強度をTとして表し(nは標本の数)、要素(標本)の数が1000個であった場合、基準データと被判定データとの相関値は、例えば式1で表される。
×T+O×T+O×T+・・・+O1000×T1000=相関値・・・(式1)
【0038】
また、基準データと被判定データとのシフト相関をとる方法について説明するための図を図6に示す。シフト数=0のとき、図6(a)に示すように、基準データOと被判定データTとの要素が重ならないため、ダミー用のデータをDとして表し、相関値は式2で表される。なお、それぞれのDには、例えば0などのダミー用の値が設定されている。
×D+O×D+O×D+・・・+O1000×D1000=相関値・・・(式2)
【0039】
また、被判定データを矢印の方向に1つシフトしたシフト数=1のとき、図6(b)に示すように、基準データOと被判定データT1000との要素だけが重なるため、相関値は式3で表される。
×T1000+O×D+O×D+・・・+O1000×D999=相関値・・・(式3)
【0040】
引き続き、相関データ生成部12は、被判定データを矢印の方向に順次1つずつシフトしていき、シフト数毎に対応した相関値を求める。なお、シフト数が2000になるまで被判定データはシフトされる。なお、被判定データを矢印の方向に1000シフトしたシフト数=1000のとき、図6(c)に示すように、基準データOと被判定データT1000との要素が全て重なるため、相関値は式1で表される。
【0041】
なお、被判定データを矢印の方向に2000シフトしたシフト数=2000のとき、図6(d)に示すように、基準データOと被判定データTとの要素が重ならないため、ダミー用のデータをDとして表し、相関値は式2で表される。
【0042】
ここで、シフト数と相関値との関係を表すグラフを図7に示す。図7に示したようにシフト数の中心付近(シフト数=1000付近)のときに相関値が最大となる。なお、図7に示した相関データは、同じ紙紋が紙紋読込部20で読み込まれたときの基準データと被判定データから生成された相関データである。情報処理装置10は、相関値の最大が他の値と比較して突出する場合に、真偽を判定する際の紙が真であると見なす。
【0043】
しかしながら、図7に示したグラフでは、相関データ生成部12は、基準データと被判定データとの要素が重なっていない要素にはダミー値で補って相関値を算出しているため、図7に示したように中心が盛り上がったノイズのある波形となる。情報処理装置10は、図7に示したように中心が盛り上がったときの相関データで真偽判定を行ってもよいが、同じ紙紋同士であっても、相関値の最大が他の値と比較して突出しているのか否かを判別しづらく、真偽を判定する際のエラー率が高くなる場合がある。そこで、次に説明するシフト相関をとることが好ましい。
【0044】
シフト数=1のとき、図8(a)に示すように、基準データOと被判定データTとの要素が重なるように配置し、相関データ生成部12は、相関値を式4で求める。
×T501+O×T502+O×T503+・・・+O1000×T500=相関値・・・(式4)
【0045】
シフト数=2のとき、図8(b)に示すように、被判定データを矢印の方向に1つシフトするが、右端に設定されていたT500があふれてしまうので、図8(c)に示すように、ダミー用のデータを用いずにT500を左端に設定してOに対応させて、相関データ生成部12は、相関値を式5で求める。
×T500+O×T501+O×T502+・・・+O1000×T499=相関値・・・(式5)
【0046】
引き続き、相関データ生成部12は、被判定データを矢印の方向に1つシフトしてシフト数が1つ増える毎に、順次、シフト数毎に対応した相関値を求める。なお、シフト数が要素数になるまで、すなわちシフト数が1000になるまで被判定データはシフトされる。なお、被判定データを矢印の方向に500シフトしたシフト数=500のとき、図8(d)に示すように、相関値は式1で表される。また、シフト数=0のとき、相関値を0等とする。
【0047】
図8で説明したシフト相関をとる方法では、ダミー値で補うことがないため、同じ紙紋同士であった場合、図7に示したように中心が盛り上がった波形にならず、相関値の最大が他の値と比較して突出している相関データが生成される。従って、真偽を判定する際のエラー率を低くすることができる。なお、シフト対象を被判定データとして説明したが、シフト対象を基準データにしてもよい。
【0048】
直流成分除去部13は、紙紋読込部20がデジタルの標本データに変換するときの直流成分を、相関データ生成部12によって生成された相関データから除去するようになっている。なお、直流成分は、相関値の相加平均の値を直流成分とするようにしてもよい。
【0049】
なお、相関データの相関値をC(mはシフト数)、直流成分をIとして表した場合、相関データから直流成分を除去する方法は、例えば式6で表される。
− I ・・・(式6)
【0050】
また、直流成分除去部13は、相関データ生成部12によって生成された相関データにおいて相関値の最大値にあるシフト数の付近を除く各シフト数に対応する相関値の相加平均の値を直流成分とするようにしてもよい。例えば、相関値の最大値にあるシフト数の付近は、相関値の最大値にあるシフト数から前後の範囲でシフト数全体の10%とする。勿論、10%に限定することはない。
【0051】
図7であれば、相関値の最大値にあるシフト数の付近は、相関値の最大値がシフト数=1000、10%分が200個であるため、1000から前後の200個の範囲となる900〜1100となる。
【0052】
ここで、直流成分除去部13は、図8で説明したシフト相関において相関値の最大値にあるシフト数の付近を除く各シフト数に対応する相関値の相加平均の値を直流成分とし、この直流成分を相関データから除去したときのグラフを図9に示す。
【0053】
なお、図9であれば、相関値の最大値にあるシフト数の付近は、相関値の最大値がシフト数=500であるため、450〜550となる。図9のグラフのように、同じ紙紋を紙紋読込部20で読み込んだ場合には、鋭いピーク(他の値と突出した値)が明確になるが、異なる紙紋を紙紋読込部20で読み込んだ場合には、鋭いピークが判明できない。
【0054】
平均値算出部14は、直流成分除去部13によって除去されて得られた相関データから相関値の平均的な値を算出するようになっている。例えば、平均値算出部14は、直流成分除去部13によって除去されて得られた相関データからRMS(Root Mean Square)、すなわち平均自乗根を算出するようになっている。
【0055】
最大値抽出部15は、例えば、相関データ生成部12によって生成された相関データから相関値の最大値を抽出するようになっている。また、最大値抽出部15は、相関値の最大値にあるシフト数付近を除く各シフト数に対応する相関値の平均値を、相関値の最大値から引いた値を最大値とするようにしてもよい。なお、相関値の平均値は、直流成分除去部13が求めたものでもよい。
【0056】
判定部16は、最大値抽出部15によって抽出された最大値と平均値算出部14によって算出された平均的な値との比に基づいて紙が真か偽か判定するようになっている。例えば、判定部16は、最大値と平均的な値との比が判定値以上であった場合に、紙紋読込部20で読み取った紙が真であり、判定値未満であった場合に紙紋読込部20で読み取った紙が偽であると判定するようになっている。
【0057】
表示部17は、ディスプレイによって構成され、情報処理装置10が情報を画面に表示するようになっている。例えば、表示部17が表示する情報としては、判定部16が判定した結果等である。
【0058】
入力部18は、ボタン、キーボード、マウス等の装置で構成され、例えば、表示部17の画面に入力を促す画像を表示している状態で、利用者が紙の読み取りを実行する命令の入力を受け付けるようになっている。例えば、入力部18は、基準データを読み取る命令の入力を受け付けたり、被判定データを読み取る命令の入力と共に1つ以上の基準データから特定の基準データを指定する命令の入力を受け付けたりする。
【0059】
切替部19は、入力部18が基準データを読み取る命令の入力を受け付けた場合、紙紋読込部20で読み取って得られた基準データを標本データ格納部11に格納させるようになっている。
【0060】
また、切替部19は、被判定データを読み取る命令の入力と共に基準データを指定する命令の入力を受け付けた場合、指定された基準データと、紙紋読込部20で紙紋を読み取って得られた被判定データとを相関データ生成部12に出力するようになっている。
【0061】
なお、相関データ生成部12、直流成分除去部13、平均値算出部14、最大値抽出部15、および判定部16は、情報処理装置10のCPU(Central Processing Unit)によって実行されるプログラムのモジュールでもよい。
【0062】
以上のように構成された情報処理装置10の動作について図面を用いて説明する。図10は、紙の真偽を判定する場合のプログラムのフローチャートである。なお、本フローチャートでは、利用者が、入力部18を介して、情報処理装置10内にある基準データを指定する共に、真偽を判定する際の紙の紙紋から標本データを読み取る際の操作を行った後の動作について説明している。
【0063】
まず、切替部19は、指定された基準データと紙紋読込部20で紙紋を読み取って得られた被判定データとを相関データ生成部12に出力する。相関データ生成部12には、切替部19によって出力された基準データと被判定データとが入力され(S1)、図4に示したような基準データと図5に示したような被判定データとのシフト相関をとる(S2)。シフト相関の動作の詳細については、図11を用いて説明する。
【0064】
図11では、相関データ生成部12は、基準データの各要素と被判定データの各要素とをそれぞれかけ算して得られた値の和を算出する(S21)。例えば、相関データ生成部12は、図8に示すように、ダミー用のデータを用いずに、基準データOと被判定データTとの要素をそれぞれかけ算して得られた値の和を相関値として求める。
【0065】
相関データ生成部12は、算出した相関値を相関データの1つとしてメモリなどに記憶し(S22)、次に、図8に示すように、被判定データを矢印の方向に1つシフトする(S23)。ここで、相関データ生成部12は、n番目にあった被判定データのあふれた要素を1番目に設定することで基準データの1番目、Oに対応させる(S24)。なお、1つシフトした場合には、シフト数が1つ加算される。
【0066】
相関データ生成部12は、基準データおよび被判定データの要素数分の相関値を算出したか否かを判定し(S25)、要素数分の相関値を算出していた場合、ステップS3へ進み、要素数分の相関値を算出していない場合、再度ステップS21から繰返す。
【0067】
図10に示すように、相関データ生成部12は、シフト相関をとって得られた相関データから最大の相関値を抽出し(S3)、抽出した最大の相関値に対応するシフト数がシフト数の中心付近であるか否かを判定し(S4)、シフト数の中心付近であった場合、ステップS5へ進み、シフト数の中心付近にない場合、被判定データが基準データに類似しないものとして動作が終了する。
【0068】
例えば、シフト数の中心付近は、シフト数の中心の値から前後の範囲でシフト数全体の10%とする。勿論、10%に限定することはない。具体的には、シフト数全体が1000であれば、シフト数の中心の値が500であり、10%分が100個であるため、500から前後の100個の範囲となる450〜550となる。仮に、最大の相関値に対応するシフト数が501であった場合、相関データ生成部12は、450〜550の間にあるため、シフト数の中心付近であると判定する。
【0069】
直流成分除去部13は、相関データ生成部12によって生成された相関データから、相関値の最大値にあるシフト数の付近を除く各シフト数に対応する相関値を抽出する(S5)。例えば、シフト数全体が1000で、相関値の最大値にあるシフト数の付近が450〜550であれば、直流成分除去部13は、シフト数1〜449、551〜1000に対応するそれぞれの相関値を抽出する。
【0070】
直流成分除去部13は、抽出したそれぞれのシフト数に対応する相関値の相加平均の値を算出し(S6)、相加平均の値を直流成分とし、例えば式6を用いる等して相関データから直流成分を除去する(S7)。引き続き、平均値算出部14は、直流成分除去部13によって除去されて得られた相関データからRMSを算出する(S8)。
【0071】
また、最大値抽出部15は、相関データ生成部12によって生成された相関データから相関値の最大値を抽出し(S9)、抽出した相関値の最大値から、ステップS5で算出された相関値の相加平均の値を引いた値PEAKを算出する(S10)。
【0072】
ここで、判定部16は、ステップS7で算出されたRMSとステップS9で算出されたPEAKとの比をとる(S11)。例えば、判定部16は、PEAK/RMSを計算する。また、判定部16は、比が判定値以上か否か判定し(S12)、判定値以上であった場合に紙紋読込部20で読み取った紙が真であるとし、判定値未満であった場合に紙紋読込部20で読み取った紙が偽であるとする。また、判定部16は、真偽判定の結果を表示部17に表示させてもよい。
【0073】
以上、情報処理装置10の動作として、紙の真偽を判定する場合のプログラムついて説明したが、このプログラムを記録媒体に記録しておき、パソコンなどのコンピュータが、記録媒体に記録したプログラムを読み取って実行するようにしてもよい。
【0074】
ところで、情報処理装置10を用いて、判定部16が使用する判定値の適正な値を検証するために、PPC用紙(Plain Paper Copy用紙)についての真偽判定の評価実験を行った。
【0075】
評価実験の方法は、次のように行った。まず、1000枚のPPC用紙を情報処理装置10にスキャンさせて1000枚分の基準データを情報処理装置10に全て記録しておく。次に、情報処理装置10は、先程スキャンした1000枚のPPC用紙を再度スキャンし、1000枚分の基準データと同じ1000枚の被判定データとを総当たりで真偽判定した。
【0076】
ここで、上述したPEAK/RMSで表現されるピーク率は、1000枚の基準データと1000枚の被判定データとの総当たりで計算されるため、ピーク率を表すデータが1000000個生成される。また、ピーク率の値(階級)とこのピーク率に対応したデータの数となる頻度(度数)との関係を表す度数分布表を図12に示す。なお、ピーク率は小数点を切り上げた値とする。勿論、全ての頻度の合計数は、総当たり分の1000000である。
【0077】
図12に示した度数分布表によれば、ピーク率が8から12の付近を境界にして分布が2つのグループに分かれていることが判る。ピーク率が8以上の頻度の合計数は1000であり、8以上のピーク率は、同じ用紙同士で真偽判定したときの計算結果であると推測される。よって、判定部16が使用する判定値を8に設定すれば、適正な真偽判定が情報処理装置10で行われる可能性が高い。
【0078】
以上、本発明の実施の形態に係る情報処理装置10は、紙紋読込部20を備えており、紙紋読込部20から基準データと被判定データをと取得するように説明したが、紙紋読込部20を備えていなくても、ネットワークインタフェースを取り付けて、ネットワークから基準データと被判定データを取得するようにしてもよいし、外付けの記憶媒体から基準データと被判定データを取得するようにしてもよい。
【0079】
また、本実施の形態においては、PD24aからのチャンネルを用い、他のPD24b乃至24dからのチャンネルを未使用とした場合について説明したが、各PD24を使用するようにしてもよい。
【0080】
各PD24を使用する場合、基準データと、各PD24から得られた被判定データそれぞれとの相関をとり、ピーク率が判定値以上となる被判定データの数が、閾値以上(例えば2以上)あった場合に紙が真であると判定するようにしてもよい。なお、閾値の値は、限定することはなくPD24の実装数に応じて決められてもよい。
【0081】
また、各PD24を使用する場合、基準データまたは被判定データを読み取る最中に、PD24毎に得られた4つの標本データに対してそれぞれの相関をとり、相関をとって得られたデータを基準データまたは被判定データとしてもよい。
【0082】
また、基準データと被判定データは、紙紋読込部20で読取って得られたものに限定されず、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサや他の手段で読取って得られたものでもよい。
【0083】
以上説明したように、情報処理装置10は、標本データに変換するときの直流成分を相関データから除去してから真偽判定を行うため、相関データに基づいた真偽判定の精度を高めることができる。また、ダミー値などを用いず常に標本データの標本の値を用いてシフト相関をとるため、図7に示したように中心が盛り上がったようなノイズを低減することができ、真偽を判定する際のエラー率を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施の形態に係る情報処理装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態に係る紙紋読込部の断面図
【図3】本発明の実施の形態に係る紙紋読込部の構成図
【図4】真の紙の紙紋の標本からなる基準データを表す図
【図5】被判定用の紙紋の標本からなる被判定データを表す図
【図6】基準データと被判定データとのシフト相関をとる方法について説明するための図
【図7】シフト数と相関値との関係を表すグラフを示す図
【図8】ダミー用のデータを用いないシフト相関をとる方法について説明するための図
【図9】直流成分を相関データから除去したときのグラフを示す図
【図10】紙の真偽を判定する場合のプログラムのフローチャート
【図11】シフト相関の動作の詳細のフローチャート
【図12】ピーク率の値とピーク率に対応した頻度との関係を表す度数分布表の図
【符号の説明】
【0085】
10 情報処理装置
11 標本データ格納部
12 相関データ生成部
13 直流成分除去部
14 平均値算出部
15 最大値抽出部
16 判定部
17 表示部
18 入力部
19 切替部
20 紙紋読込部
21 紙
22 レーザダイオード
23 シリンドリカルレンズ
24 フォトダイオード
30 PDアンプ
31 ハイパスフィルタ
32 アンプ
33 アナログデジタルコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の表面の組成状態から変換された標本データを処理する情報処理装置において、
真の物体に対する標本データと真偽判定に用いられる標本データとの相関による相関データを生成する相関データ生成部と、
前記標本データに変換するときの直流成分を前記相関データから除去する直流成分除去部と、
前記直流成分除去部によって除去されて得られた相関データから相関値の平均的な値を算出する平均値算出部と、
前記相関データから前記相関値の最大値を抽出する最大値抽出部と、
前記最大値抽出部によって抽出された最大値と前記平均値算出部によって算出された平均的な値との比に基づいて物体が真か偽か判定する判定部とを備えたことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記直流成分除去部は、前記相関値の平均値を前記直流成分とすることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記相関データは、前記真の物体に対する標本データと前記真偽判定に用いられる標本データとのシフト相関をとる際のシフト数に対応する相関値によって構成されることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記直流成分除去部は、前記相関値の最大値にある前記シフト数付近を除く各前記シフト数に対応する前記相関値の平均値を前記直流成分とすることを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記最大値抽出部が抽出する最大値は、前記相関値の最大値にある前記シフト数付近を除く各前記シフト数に対応する前記相関値の平均値を、前記相関値の最大値から引いた値であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記平均的な値は、平均自乗根であることを特徴とする請求項1から請求項5までの何れかに記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記相関データ生成部は、前記真の物体に対する標本データ、前記真偽判定に用いられる標本データのどちらかをシフト対象とし、前記シフト対象となる標本データの標本を1つシフトするときには、前記シフト数を1つ加算すると共に、前記シフト対象となる標本データの端に設定されている標本を他の端に設定しながら各標本を1つシフトした状態で前記シフト相関をとることを特徴とする請求項3から請求項6までの何れかに記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記物体に対して相対的に移動しながら該物体の表面にレーザ光を照射するレーザ光照射部と、
前記レーザ光照射部と共に該物体に対して相対的に移動しながら該物体の表面で前記レーザ光が散乱された散乱光を受光する受光部とを備え、
前記標本データが、前記受光部によって受光された散乱光の強度を表すことを特徴とする請求項1から請求項7までの何れかに記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記物体が紙であり、
前記レーザ光照射部が、前記紙を組成する繊維の絡み具合に応じて前記標本データが変化する程度の波長のレーザ光を照射することを特徴とする請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記レーザ光照射部が、レーザダイオードによって構成され、
前記受光部が、フォトダイオードによって構成されることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記物体が紙であり、
前記標本データが、前記紙を組成する繊維の絡み具合に応じた情報であることを特徴とする請求項1から請求項7までの何れかに記載の情報処理装置。
【請求項12】
物体の表面の組成状態から変換された標本データを処理する情報処理方法において、
真の物体に対する標本データと真偽判定に用いられる標本データとの相関による相関データを生成する相関データ生成ステップと、
前記標本データに変換するときの直流成分を前記相関データから除去する直流成分除去ステップと、
前記直流成分除去ステップで除去されて得られた相関データから相関値の平均的な値を算出する平均値算出ステップと、
前記相関データ生成ステップで生成された相関データから前記相関値の最大値を抽出する最大値抽出ステップと、
前記最大値抽出ステップで抽出された最大値と前記平均値算出部によって算出された平均的な値との比に基づいて物体が真か偽か判定するステップとを備えたことを特徴とする情報処理方法。
【請求項13】
物体の表面の組成状態から変換された標本データを処理する情報処理プログラムにおいて、
真の物体に対する標本データと真偽判定に用いられる標本データとの相関による相関データを生成する相関データ生成ステップと、
前記標本データに変換するときの直流成分を前記相関データから除去する直流成分除去ステップと、
前記直流成分除去ステップで除去されて得られた相関データから相関値の平均的な値を算出する平均値算出ステップと、
前記相関データ生成ステップで生成された相関データから前記相関値の最大値を抽出する最大値抽出ステップと、
前記最大値抽出ステップで抽出された最大値と前記平均値算出部によって算出された平均的な値との比に基づいて物体が真か偽か判定するステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とする情報処理プログラム。
【請求項14】
請求項13に記載の情報処理プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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