説明

情報処理装置

【課題】画像データの立体視の適否を判定し、不要なデータを削除してデータ容量を最適化するとともに、ユーザの眼精疲労発生等を防止する。
【解決手段】多眼画像データのそれぞれに含まれる対象物の領域を検出する領域検出部111と、対象物の特徴量を抽出する特徴量抽出部112と、対象物の視差ベクトルを検出する視差ベクトル検出部121と、対象物のサイズ差を検出するサイズ差検出部122と、対象物の特徴量により各画像データの対象物が一致するか、視差ベクトルが所定の範囲内であるか、サイズ差が所定の範囲内であるの判定結果の少なくとも1つを利用して、立体画像の表示に適している画像データであるかを判定する立体視判定部131と、立体視判定部の判定結果に基いて、立体画像の表示に適していないと判定された画像データを削除する立体画像変換部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像を表す多眼画像データを扱う情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる角度から撮像された画像を立体画像にして表示する表示装置としては、2箇所から撮像した画像を右眼用画像と左眼用画像として双方の表示画面上に表示し、視認者に専用の眼鏡を掛けさせその眼鏡によりそれらの画像を切り分けて視認させて視認者に立体視させるものや、表示画面にレンチキュラーレンズを並べて貼り付けてそれらのレンズにより右眼と左眼とにそれぞれ右眼用画像と左眼用画像とを識別させて視認者に立体視させるもの等が一般的に知られている。
【0003】
また、画像から顔の特徴を抽出して人の顔を検出する技術を活用し、複数の撮像部を駆動させ輻輳角を調整することによって視認者に立体視を行なわせるのに適した画像データを生成することができる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−22150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1の技術の場合、立体画像の近景やテレ端では、視差が過大になりやすく、撮像装置と被写体(以後の説明において、対象物ともいう)との距離が撮影中に変化した場合、複数の撮像部の輻輳が追従しきれないことがある。また、立体動画の撮影においては、輻輳変化が視聴者にとって追従できないほど速いことがある。
【0006】
さらに、複数の撮像部の位置や方向が調整可能で、撮影方向の中心に被写体がいないとき、複数の撮像部間の距離、あるいは、輻輳状態によって生じる、各撮像部から被写体までの距離の差によって、立体視が困難な画像となる、あるいは見難い画像となる等の問題が発生することがある。
【0007】
また、2つの撮像部により右眼用画像と左眼用画像を撮像して1つの立体画像とする場合、各撮像部から被写体までの距離が同一であるとは限らない。そのため、同一の被写体であっても、各撮像部の画像では被写体の大きさが異なることもある。さらに、撮像中に被写体が動いた場合、被写体での左右の視差が大きすぎて立体視できないこともある。
【0008】
また、複数の撮像部の輻輳角が小さい場合、右眼用画像と左眼用画像の撮像領域はほぼ一致する。しかし、複数の撮像部の輻輳角が大きい場合、右眼用画像と左眼用画像の撮像領域は、立体視の許容範囲外の差が生じ、大きく異なることがある。
【0009】
さらに、2回撮りや時差撮りで別々に撮像された画像を用いて立体視画像とする場合、例えば1回目の撮像後、およその画角調整を行って、視差量と視差の方向を示す視差ベクトルをもとに、自動調整することは可能であるが、輻輳角が大きい場合、飛び出し側の被写体と引き込み側の風景との位置関係によっては調整範囲を超える領域が生じる。また、飛び出し側からニュートラルまでに位置する被写体が、画面に対する比率が大きい場合、引き込み方向に位置する領域では一方の撮像部にしか映らない場合がある。これは、複数の撮像部の位置や方向の調整が可能な場合でも同様である。
【0010】
以上のような状況下で、立体視に適さない右眼用画像と左眼用画像の画像データが撮像されると、記憶部に不要な画像データが記録され、多くの記録容量が必要となる。また、立体視に不適切な画像をユーザが観ることによって眼精疲労発生等の危険もある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑み、画像データの立体視の適否を判定し、不要なデータを削除や圧縮して記憶部のデータ容量を最適化するとともに、ユーザの眼精疲労発生等を防止する情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の特徴に係る情報処理装置は、撮像された複数の多眼画像データから、各画像データに含まれる対象物の領域を検出する領域検出部(111)と、前記領域検出部で検出された対象物の特徴量を抽出する特徴量抽出部(112)と、前記領域検出部で検出された各画像データで対応する対象物の視差ベクトルを検出する視差ベクトル検出部(121)と、前記領域検出部で検出された各対象物のサイズ差を検出するサイズ差検出部(122)と、前記特徴量抽出部で抽出された対象物の特徴量により、各画像データに含まれるそれぞれの対象物が一致するか否かの判定結果と、前記視差ベクトル検出部で検出された視差ベクトルが所定の範囲内であるか否かの判定結果と、前記サイズ差検出部で検出されたサイズ差が所定の範囲内であるか否かの判定結果との少なくともいずれかの判定結果を利用して、立体画像の表示に適している画像データであるか否かを判定する立体視判定部(131)と、前記立体視判定部の判定結果を利用して、立体画像の表示に適していないと判定された場合、前記同時に撮像された複数の多眼画像データのうち、少なくとも1つの画像データを削除する立体画像変換部(14)とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の情報装置によれば、画像データの立体視の適否を判定し、不要な画像データの削除や圧縮を行ってデータ容量を最適化するとともに、ユーザの眼精疲労発生等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る情報処理装置の立体画像最適化部の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】図1に示す立体画像最適化部を有する情報処理装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図3】図2に示す立体画像撮像装置の構成を説明する概略図である。
【図4】図3に示す立体画像撮像装置で撮像された画像データの一例である。
【図5】図4に示す画像データから検出された対象物の領域を説明する図である。
【図6】画像データの対象物の領域の特徴量を抽出する一例である。
【図7】対象領域が検出された右眼用画像と左眼用画像とを重ね合わせた画像図である。
【図8】重ね合わせた画像のサイズと、対象領域のサイズと位置について説明する図である。
【図9】右眼用画像及び左眼用画像から検出された対象領域の数の比較について説明する一例である。
【図10】右眼用画像及び左眼用画像から検出された対象領域のサイズの比較について説明する一例である。
【図11】視差について説明する概略図である。
【図12】図1に示す立体画像最適化部の立体視判定の処理の一例を説明するフローチャートである。
【図13】図1に示す立体画像最適化部の処理一例を説明するフローチャートである。
【図14】画像データの一部の削除を促がす表示画面の一例である。
【図15】画像データの一部の削除を促がす表示画面の他の例である。
【図16】画像データの一部が削除されてデータ量が削減された画像データの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る情報処理装置1の立体画像最適化部の構成を示すブロック図である。本発明に係る立体画像最適化部10は、画像データを立体画像として表示する際、画像データが立体視に適しているか否かを判定し、適していない場合には、立体視しないようにデータ処理を行い、データ容量を最適化する。
【0017】
図1の立体画像最適化部10は、図2に示す情報処理装置1で利用される。情報処理装置1は、立体画像最適化部10の他、立体画像として表示するための画像を撮像する立体画像撮像装置20と、画像データを処理する画像処理部30と、撮像された画像データや処理される画像データを記憶する半導体メモリ、ハードディスクドライブ又は光ディスク等で構成される記憶部40と、各部の処理を制御する制御部50と、制御部50を介して情報処理装置1を操作するスイッチやボタン等を有する操作部60と、画像処理部30で処理された画像データを表示する表示部70と、操作部60によって入力された情報に基いて、表示部70にグラフィック表示を表示させるグラフィック部80を備えている。
【0018】
立体画像撮像装置20は、図3に示すように、それぞれ不図示の撮像光学系と撮像素子とを有する2つの撮像部21a,21bを備え、撮像部21a,21bで撮像した画像データを画像処理部30に出力する。各撮像部21a,21bは、一方の撮像部が撮像する画像を右眼用画像(以後の説明において、右画像ともいう)Rchとし、他方の撮像部が撮像する画像が左眼用画像(以後の説明において、左画像ともいう)Lchとなるように輻輳角が調節されている。
【0019】
画像処理部30は、図4に示すように、撮像部21aと撮像部21bでそれぞれ撮像された右画像Rchと左画像Lchの画像データを1コマとしてサイドバイサイド形式で符号化する。また、画像処理部30は、制御部50の制御に基いて、符号化された画像データを、記憶部40に供給して保存させる。
【0020】
再び図1に戻って説明する。立体画像最適化部10は、図1に示すように、画像処理部30から供給される画像データから対象物を抽出する対象物抽出部11と、対象物抽出部11から供給される画像データの比較処理を行って視差量と視差の方向を示す視差ベクトルを検出する視差検出部12と、視差検出部12から供給される画像データのデータ変換のための処理を実行する画像変換制御部13と、画像処理部30から供給される立体画像データを変換する立体画像変換部14とを備えている。
【0021】
具体的には、対象物抽出部11は、画像データから対象物の領域を検出する領域検出部111と画像データから領域検出部111で検出された領域内の対象物の特徴量を抽出する特徴量抽出部112を有している。
【0022】
図5は、領域検出部111によって対象物として人物の顔の領域が検出された画像データの一例である。また、特徴量抽出部112は、図5に示すように対象物として人物の顔の領域を検出した場合、図6に示すように、右画像Rchの人物の顔の領域A,Bから各顔の特徴量と、左画像Lchの人物の顔の領域A’,B’から各顔の特徴量とを求める。そして、右画像Rchの各顔の特徴量と対応する左画像Lchの各顔の特徴量を比較して相関度を求めて、その相関度から右画像Rchと左画像Lchにおいて同一の人物であるか否かを特定する。なお、例えば特許文献1等に記載の公知技術により、対象物(例えば、人物の顔)の領域検出や対象物(例えば、人物の顔)の特徴量の抽出をすることができる。
【0023】
なお、領域検出部111は、検出した対象物の大きさ、輝度、合焦点位置からの距離等に基いて、対象物の重要度を判断し、重要でないと判断した対象物を領域検出結果から除外してもよい。また、記憶部40は、予め対象物(例えば、人物の顔)の特徴量やその対象物の重要度を含めて記憶しておいてもよい。その場合、特徴量抽出部112は、新たに検出した対象物の特徴量と予め記憶部40で記憶されている対象物の特徴量との相関度を求め、記憶部40で記憶されている重要度に基いて新たに検出した対象物の重要度を判断し、重要でないと判断した対象物を領域検出部111の領域検出結果から除外することもできる。なお、記憶部40で対象物の重要度を記憶せずに、単に対象物の特徴量のみで対象物が重要であるか否かを判断してもよい。
【0024】
視差検出部12は、立体画像を構成する右画像Rchと左画像Lchの画像データから、対象物抽出部11で抽出された対象物同士から視差ベクトルを求める視差ベクトル検出部121と対象物のサイズ差を求めるサイズ差検出部122を有している。
【0025】
図7は、図5で対象物の領域を抽出した右画像Rchと左画像Lchを重ねた画像である。図8(a)は、図7で重ねられた1つの対象物の範囲(検出範囲)A,A’の人物の顔の検出位置を示している。図8に示すように、右画像Rchの検出範囲Aの中心座標を(x0、y0)とし、左画像Lchの検出範囲A’の中心の座標を(x1、y1)としたとき、視差ベクトル検出部121は、この中心座標の差から平均視差ベクトル((x1−x0)、(y1−y0))を求める。
【0026】
また、サイズ差検出部122は、各対象物について、右画像Rchの検出範囲と左画像Lchの検出範囲のサイズ差を検出する。例えば、サイズ差検出部122は、対象物が人物の顔であるとき、右画像Rchと左画像Lchとからそれぞれ図8(b)に示すように人物の顔の検出範囲の高さKhと幅Kwを求め、求めた高さKhと幅Kwの値の差をサイズ差として求める。
【0027】
画像変換制御部13は、画像データが立体視に適しているか否かを判定する立体視判定部131と立体視判定部131での判定結果を利用して変換内容を特定する変換内容特定部132を有している。立体視判定部131は、例えば、下記の(1)〜(6)の項目を判定して判定結果を出力する。また、変換内容特定部132は、立体視判定部131の項目の判定結果を利用して、ユーザに立体画像の表示に関する操作を促がすため、立体視に適さない理由等を表示部70に表示させて、立体画像の表示に必要な画像データを特定する。このとき、変換内容特定部132は、表示部70にて表示する対象物の検出範囲を表わす枠を点滅させたり、色や輝度を変化させたり、グラフフィックを重畳させる等でユーザに判定結果を知らせるように画像処理部30を制御する。また、変換内容特定部132は、操作部60を介してユーザからの対象物の選択や削除等の操作信号や立体画像の表示中止の操作信号等が入力された場合には、これに応じて立体画像の表示に必要な画像データを特定してから、立体視判定部131での判定や変換内容特定部132での処理を行ってもよい。
【0028】
(1)右画像Rchと左画像Lchとで検出された対象物の数
立体視判定部131は、右画像Rchと左画像Lchからそれぞれ検出される対象物の数を比較して判定結果を出力する。例えば、図9(a)に示すように、右画像Rchでは2つの対象物(画像中四角の枠部分)が抽出されたにも関わらず、左画像Lchでは1つの対象物(画像中四角の枠部分)が抽出されたとする。このように領域検出部111により右画像Rchから検出された対象物の数と左画像Lchから検出された対象物の数が異なる場合、立体視判定手段131は、対象物の数が異なるため、画像データが立体画像の表示に適さない判定結果を出力する。また、右画像Rchと左画像Lchとで、対象物の数のみだけでなく、立体視判定部131は、対象物として認識された物(例えば、人物の顔)が一致するか否かを判定してもよい。
【0029】
変換内容特定部132は、立体視判定部131によって検出された対象物の数が異なると判定された場合、例えば図9(b)に示すような左画像Lchで検出されなかった対象物の検出範囲を右画像Rch中で特定する画像を表示部70に表示するように制御し、ユーザに立体画像の表示に不適切な画像データであることを通知するように画像処理部30を制御する。
【0030】
(2)重要な対象物の検出の有無
記憶部40は、対象物の特徴量とその対象物の重要度に関するリストを予め記憶する。その場合、立体視判定部131は、リストに含まれる重要度が高い対象物(例えば、特定人物の顔など)が右画像Rchと左画像Lchとからそれぞれ検出されるか否かを判定し、それぞれから検出された場合には、右画像Rchと左画像Lchとで重要度が高い対象物が含まれているため、画像データが立体画像の表示に適しているか否か他の判定項目における判定に入る。すなわち、全ての検出された対象物に対して全て一律に立体判定をすることなく、重要でない対象物については立体判定しないとすることにより、重要でない対象物の立体視破綻の判定を簡略化することもできる。
【0031】
また、変換内容特定部132は、判定項目(1)と同様に、立体視判定部131によって重要度が高い対象物が右画像Rchと左画像Lchで検出されないと判定された場合、例えば図9(b)に示す、他方の画像で検出されていない検出物を特定する画像を表示部70に表示し、ユーザに立体画像の表示に不適切な画像データであることを通知するように画像処理部30を制御する。
【0032】
(3)右画像Rchと左画像Lchとの対象物のサイズのずれ
立体視判定部131は、右画像Rchと左画像Lchとで同一と確認できた対象物のサイズの差が所定の範囲内であるか否かを判定し、所定の範囲外である場合には、右画像Rchと左画像Lchとから検出された対象物の差が所定範囲外であるため、画像データが立体画像の表示に適さない判定結果を出力する。
【0033】
例えば、図3に示すような2眼式の立体画像撮像装置20によって得られた画像や、2回の撮像によって得られた画像の場合、機器の特性、設定、撮像状態等により、図10に示すように、右画像と左画像とにサイズ差が生じることがある。同一の対象物のサイズのズレが右画像Rchと左画像Lchとで大きい場合、右画像Rchと左画像Lchは融合しにくくなり、表示される立体画像は見難くなる。実験によると、同一の対象物のサイズ差の比率が1.2%以上程度になると表示した立体画像は見難くなるという結果が得られている。したがって、立体視判定部131は、サイズ差検出部122によって得られた右画像Rchと左画像Lchとで同一の対象物の検出範囲のサイズを示す高さKh及び幅Kw差の比率が(1),(2)式を満たすか否かを判定する。
【0034】
|Kh1−Kh0| / Kh0 < 1.012 ・・・(1)
|Kw1−Kw0| / Kw0 < 1.012 ・・・(2)
Kh0:右画像Rchでの検出範囲の高さ
Kw0:右画像Rchでの検出範囲の幅
Kh1:左画像Lchでの検出範囲の高さ
Kw1:左画像Lchでの検出範囲の幅
変換内容特定部132は、立体視判定部131によって(1),(2)式を満たさないと判定された場合、この判定結果を表示部70に表示し、ユーザに立体画像の表示に不適切な画像データであることを通知するように画像処理部30を制御する。
【0035】
なお、この判定結果の出力により、変換内容特定部132は、画像処理部30に、右画像Rchと左画像Lchでの対象物の検出範囲のサイズ差が許容の範囲内に収まるように一方の画像を拡大または縮小調整させてもよい。
【0036】
(4)右画像Rchと左画像Lchとの対象物の位置のずれ
立体視判定部131は、右画像Rchと左画像Lchとで同一と確認できた対象物の位置のずれが所定の範囲内であるか否かを判定し、所定の範囲外である場合には、右画像Rchと左画像Lchとで対象物の位置が大きくずれているため、画像データが立体画像の表示に適さない判定結果を出力する。
【0037】
例えば、図3に示すような2眼式の立体画像撮像装置20によって得られた画像や、2回の撮像によって得られた画像の場合、機器の特性、設定、撮像状態等により、同一の対象物であっても右画像と左画像とでの検出位置が垂直方向で異なることがある。同一の対象物の検出位置のズレが大きい場合、右画像Rchと左画像Lchは融合しにくくなり、表示される立体画像は見難くなる。実験によると、垂直方向のずれは画面高さに対する比率が0.7%以上程度であるとき、表示した立体画像は見難くなるという結果が得られている。したがって、立体視判定部131は、視差ベクトル検出部121の検出結果を利用して右画像Rchと左画像Lchとで同一の対象物の検出範囲の中心の垂直座標の差により垂直方向のずれを求め、垂直方向のずれが(3)式を満たすか否かを判定する。
【0038】
|y0−y1| / Fh < 0.007 ・・・(3)
Fh:右画像Rchまたは左画像Lchのどちらかまたは平均の高さ
y0:右画像Rchの対象物の検出範囲の中心のy座標
y1:左画像Lchの対象物の検出範囲の中心のy座標
変換内容特定部132は、立体視判定部131によって(3)式を満たさないと判定された場合、この判定結果を表示部70に表示し、ユーザに立体画像の表示に不適切な画像データであることを通知するように画像処理部30を制御する。
【0039】
また、この判定結果の出力により、変換内容特定部132は、画像処理部30に、右画像Rchと左画像Lchでの対象物の垂直方向のずれが許容範囲内に収まるように画素位置のシフトにより補正させてもよい。
【0040】
(5)複数ある検出物の視差
立体視判定部131は、視差ベクトル検出部121で検出された視差の分布範囲が所定の範囲内であるか否かを判定し、分布範囲が所定の範囲外である場合には、画像データが立体画像の表示に適さない判定結果を出力する。具体的には、立体視判定部131は、図11に示すように、一番手前の検出物Aの視差a°と一番奥の検出物Bの視差b°との差を判定する。
【0041】
実験によると、視差の分布範囲が狭い方が左右の画像が融合しやすく、手前の検出物と奥の検出物の視差の分布が、1.0°以下程度の映像が見易いという結果が得られている。したがって、立体視判定部131は、一番手前の検出物の視差と一番奥の検出物の視差の分布が(4)式を満たすか否かを判定する。
【0042】
|a−b| < 1.0 ・・・(4)
a°:検出物Aの視差
b°:検出物Bの視差
変換内容特定部132は、立体視判定部131によって(4)式を満たさないと判定された場合、この判定結果を表示部70に表示し、ユーザに立体画像の表示に不適切な画像データであることを通知するように画像処理部30を制御する。
【0043】
(6)右画像Rchと左画像Lchとの検出範囲の中心のx座標の差分
立体視判定部131は、視差ベクトル検出部121が検出した水平方向の視差量、すなわち、対象物の検出範囲の中心のx座標の差分が所定の範囲内であるか否かを判定し、所定の範囲外である場合には、対象物が水平方向に大きくずれているため、画像データが立体画像の表示に適さない判定結果を出力する。
【0044】
実験によると、飛出し側の視差量の画面横幅に対する比率が10%程度、あるいは、横幅221cmである100インチのスクリーンに映したときに引っ込み側の視差量が7cm、すなわち画面横幅に対する比率が約3%程度を超えると、立体画像が立体に見難くかったり、観察者の気分が悪くなったりする場合があるという結果が得られている。したがって、立体視判定部131は、(5)式を満たすか否かを判定する。
【0045】

-0.03 <(x1−x0) / Fw < 0.1 ・・・(5)
視差ベクトル(x1−x0)> 0
d > 0 →飛び出し方向
d < 0 →引き込み方向
とすると
x0:右画像Rchの対象物の検出範囲の中心のx座標
x1:左画像Lchの対象物の検出範囲の中心のx座標
Fw:画面横幅
なお、視差ベクトル(x1−x0)は視差量に相当し、(x1−x0)> 0は飛出し側を示し、(x1−x0)< 0は引っ込み側を示す。
【0046】
変換内容特定部132は、立体視判定部131によって(5)式を満たさないと判定された場合、この判定結果を表示部70に表示し、ユーザに立体画像の表示に不適切な画像データであることを通知するように画像処理部30を制御する。
【0047】
また、対象物が輻輳点付近の人物の顔だけではなく背景を含む場合で、かつ視差ベクトル検出部121が検出した視差ベクトルのスカラー量が極めて0に近い場合、左右の画像が極めて同一であるといえる。したがって、視差ベクトルを含まない多眼画像は立体視の効果が見込めないので、変換内容特定部132は、画像データが立体画像の表示に不適切な画像データであることを通知するように画像処理部30を制御する。
【0048】
なお、視差量が飛び出し方向に所定範囲を超えた場合は、変換内容特定部132は、検出領域を白トビなどの効果を加えた立体画像を表示部70にて表示するように、画像処理部30を制御する。逆に視差量が引き込み方向に所定範囲を超えた場合は、変換内容特定部132は、対象領域を黒しずみさせるなど飛び出し方向と異なる効果を加えた立体画像を表示部70にて表示するように、画像処理部30を制御する。
【0049】
上記の立体視判定部131の(1)〜(6)の判定のすべてにおいて、画像データが立体画像の表示に適さない判定結果を出力しなかった場合、変換内容特定部132は、画像データが立体画像の表示に適するとの判定結果を立体画像変換部14へ出力する。なお、上記の立体視判定部131の(1)〜(6)の判定はすべて行うことに限定されず、一部の判定のみを行ってもよく、一部の判定結果によって、変換内容特定部132は、画像データが立体画像の表示の適否を特定してもよい。
【0050】
図12に示すフローチャートを用いて、人物の顔が対象物である場合の立体視判定部131における処理の一例について説明する。なお、図12での処理は、上記の立体視判定部131の(1)〜(6)の判定のうち、一部の判定を行うものである。まず、立体視判定部131は、領域検出部111が右画像Rchと左画像Lchとから検出した人物の数が一致するか否かを判定する(S01)。
【0051】
右画像Rchと左画像Lchとに含まれる人物の人数が同一のとき(S01でYES)、立体視判定部131は、右画像Rchと左画像Lchとで顔が認識された人物が一致するか否かを判定する(S02)。立体視判定部131は、例えば、特徴量抽出部112が抽出した特徴量を利用して対象物(例えば、人物の顔)が一致するか否かを判定する他、検出した人物の顔の大きさ、画像内での人物の位置、フォーカス状態、コントラスト、輝度等を利用して判定してもよい。
【0052】
右画像Rchと左画像Lchとで、顔が認識された人物が一致するとき(S02でYES)、立体視判定部131は、右画像Rchと左画像Lchにおいて、サイズ差検出部122で検出された人物のサイズの差が立体画像の表示に許容される範囲であるか否かを判定する(S03)。
【0053】
検出された人物のサイズの差が立体画像の表示に許容されるサイズであるとき(S03でYES)、立体視判定部131は、視差ベクトル検出部121で検出された視差ベクトルが立体画像の表示に許容される範囲であるか否かを判定する(S04)。
【0054】
立体視判定部131における全ての判定から、右画像Rchと左画像Lchとから立体画像の表示が困難であるという判定結果が得られないとき(S04でYES)、変換内容特定部132は、画像データが立体視に適当(可能)であるという判定結果を立体画像変換部14へ出力する(S05)。
【0055】
一方、立体視判定部131の少なくともいずれかの判定の結果、右画像Rchと左画像Lchとから(S01〜S04のいずれかでNO)、変換内容特定部132は、画像データが立体視に不適当であるという判定結果と画像データの変換の候補を立体画像変換部14へ出力する(S06)。
【0056】
このとき、変換内容特定部132は、立体画像の表示に不適当であるとの判定結果によって、画像処理部30に判定結果を表示部70に表示するよう制御させて、ユーザに立体画像の表示が不適切(不可能)であることを通知させて、操作信号を入力させることができる。
【0057】
立体画像変換部14は、変換内容特定部132から入力される画像データの変換の候補に応じて変換方法を選択し、選択された変換方法により画像データを変換して画像処理部30に出力し、制御部50を介して記憶部40に記憶させたり、表示部70に表示させる。なお、画像データの変換候補を操作部60から供給される操作信号によって選択する方法でもよい。
【0058】
すなわち、立体画像変換部14は、画像データが立体画像の表示に適しているとの判定結果が変換内容特定部132より供給される場合、画像データの変換の候補に応じて、右画像Rchまたは左画像Lchから立体画像の画像データに変換して出力する。一方、画像データが立体画像の表示に適していないとの判定結果が変換内容特定部132より供給される場合、画像データの変換の候補に応じて、右画像Rchまたは左画像Lchのいずれか一方を削除した画像データにして出力する。
【0059】
続いて、図13に示すフローチャートを用いて、立体画像撮像装置20で図4の画像を撮像した場合の立体画像最適化部10における処理の一例について説明する。
【0060】
まず、立体画像撮像装置20で撮像された画像データが画像処理部30を介して立体画像最適化部10には、領域検出部111によって対象物の領域が検出される(S11)。また、対象物の領域が検出されると(S12でYES)、特徴量抽出部112によって領域内の対象物の特徴量が抽出され(S13)、視差ベクトル検出部121によって対象物同士の視差ベクトルが検出され(S14)、サイズ差検出部122によって各対象物のサイズ差が検出される(S15)。
【0061】
その後、ステップS11〜S15の結果を利用して、立体視判定部131は、立体視に適した画像データであるか否かを判定する(S16)。立体視判定部131が、立体視に適していない画像データであると判定するとき(S17でNO)、変換内容特定部132は、画像データの変換の候補を選択(特定)し(S18)、表示部70に表示するように画像処理部30を制御する(S19)。例えば、立体視判定部131で不適切と判断された画像が不適切とされた理由が「右画像Rchと左画像Lchでの検出人数一致」であるとき、人数の多い画像が選択され、人数の少ない画像を削除することが望ましい。例えば、図9(a)の場合、認識された人数が多い右画像Rchが選択される。
【0062】
また、変換内容特定部132は、図9(b)の斜線で示すように、表示部70により選択の理由となる対象物に所定の表示をさせて、ユーザに通知するように画像処理部30を制御してもよい。また、変換内容特定部132は、選択する画像データと削除する画像データとを区別して表示部70に表示するように画像処理部30を制御してもよい。例えば、右画像Rchと左画像Lchとを並べて表示し、図14に示すようにユーザに選択を促がす画像に対して縁取りをしたり、図15の斜線で示す削除を促がす画像に対して色付けするなどにより、ユーザに通知して右画像Rch又は左画像Lchの削除や選択を促がしてもよい。
【0063】
その後、ユーザによって削除や選択の処理の実行が操作部60を介して操作されると(S20でYES)、立体画像変換部14は、操作に従って削除が指定された画像データを削除して、画像処理部30に出力され削除されていない画像データを記憶部40で記憶させる(S21)。すなわち、立体画像変換部14は、図16に示すように右画像Rchと左画像Lchから優先された画像のみが画像データとして記憶部40で記憶させる。なお、右画像Rchまたは左画像Lchを削除した画像データで更新する他、表示する新たな画像データを生成して記憶部40に記憶してもよい。
【0064】
一方、ユーザによって削除や選択の実行が操作されず(S20でNO)、ユーザにより操作部60を介して、画像データの変換の中止が選択された場合(S22でYES)には、立体画像変換部14は画像データを変換せずに終了する。また、画像データの変換の中止が選択されない場合には(S22でNO)、変換内容特定部132は、変換内容を変更して(S23)、再びステップS19に戻り、画像処理部30に出力して表示部70に表示させる。
【0065】
上述したように、本発明に係る立体画像最適化部10を利用した場合、立体画像を表示する際に、予め立体視に不適切な画像データの冗長データを適切に削除することで、記憶部40に記憶させるデータ容量を低減することができるとともに、不適切な立体画像が表示されることによる視聴者の眼精疲労を防止できる。
【0066】
なお、このような撮像システムは、デジタルスティルカメラ、カメラ一体の携帯型電話機、デジタルビデオカメラ等の幅広い撮像装置に適用することができる。
【0067】
また、上述した例では、立体画像撮像装置20は、2つの撮像部21a,21bを備えているが、立体画像撮像装置が備える撮像部の数は限られず、3つ以上備えていてもよいし、1つの撮像部にミラー等で構成されるアダプタを接続した構成でもよい。
【0068】
さらに、立体画像撮像装置20が撮像し、立体画像最適化部10が処理する画像は、静止画であっても動画像であってもよい。
【0069】
また、上記の実施の形態では、立体画像最適化部10を含む情報処理装置1と立体画像撮像装置20とが別体で構成されているものとして説明したが、一体で構成されていてもよい。さらに、前記実施の形態において示した各部の具体的な形状及び構造は、何れも本発明を実施する一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならないものである。
【符号の説明】
【0070】
1…情報処理装置
10…立体画像最適化部
11…対象物抽出部
111…領域検出部
112…特徴量抽出部
12…視差検出部
121…視差ベクトル検出部
122…サイズ差検出部
13…画像変換制御部
131…立体視判定部
132…変換内容特定部
14…立体画像変換部
20…立体画像撮像装置
21(21a,21b)…撮像部
30…画像処理部
40…記憶部
50…制御部
60…操作部
70…表示部
80…グラフィック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像された複数の多眼画像データから、各画像データに含まれる対象物の領域を検出する領域検出部と、
前記領域検出部で検出された対象物の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記領域検出部で検出された各画像データで対応する対象物の視差ベクトルを検出する視差ベクトル検出部と、
前記領域検出部で検出された各対象物のサイズ差を検出するサイズ差検出部と、
前記特徴量抽出部で抽出された対象物の特徴量により、各画像データに含まれるそれぞれの対象物が一致するか否かの判定結果と、前記視差ベクトル検出部で検出された視差ベクトルが所定の範囲内であるか否かの判定結果と、前記サイズ差検出部で検出されたサイズ差が所定の範囲内であるか否かの判定結果との少なくともいずれかの判定結果を利用して、立体画像の表示に適している画像データであるか否かを判定する立体視判定部と、
前記立体視判定部の判定結果を利用して、立体画像の表示に適していないと判定された場合、前記同時に撮像された複数の多眼画像データのうち、少なくとも1つの画像データを削除する立体画像変換部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記対象領域検出部は、前記対象物の領域として各画像データに含まれる人物の顔の領域を検出し、
前記特徴量抽出部は、前記対象物の特徴量として、前記対象領域検出部で検出された人の顔の特徴量を抽出する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−221905(P2011−221905A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92288(P2010−92288)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】