説明

情報杭

【課題】杭から離れた場所からであっても、様々な方向からICタグの情報を読み出すことができる上に、扱いが容易な情報杭を提供する。
【解決手段】収納部14を有する杭本体10と、この杭本体10の頭部に被せられて収納部14を閉塞するキャップ20とを備え、地盤に一部または全部が埋め込まれる杭1であって、収納部14には、指向性アンテナ44を有するICタグ40が複数収納され、これらICタグ40は同一情報を記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグを収納して、このICタグが記憶する情報の非接触読み取りが可能な情報杭に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信機能を有するICタグにとって、通信範囲は重要なファクタである。特に、地盤に打ち込まれる杭では、杭が位置情報などを格納するICタグを収納しておくことで、外部から非接触で読取られるが、杭に近接せずに、かついかなる方向からでも、このような情報を読取ることが望まれる。すなわち、長い通信距離と、高い指向性が求められる。
【0003】
ここで、例えば、UHF帯(952〜954MHz)やマイクロ波帯(2.45GHz)のICタグの場合、最大通信距離は長いが、指向性は低い。逆に低周波数(たとえば、125〜134KHz)のICタグの場合、指向性は高いが、最大通信距離は短い。
【0004】
このように、2つの相反する条件をいずれも満たすことができるICタグとして、例えば特許文献1に記載されたものがある。このICタグは、第1アンテナおよび第2アンテナを設けたもので、第2アンテナによって第1アンテナに電磁誘導が生じるようになっている。これにより、読取り/書込みの指向性が広く、かつ読取り/書込みの距離は長いICタグを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−310453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1のICタグの場合、第1アンテナおよび第2アンテナが設けられたICタグは一体に構成されているため、部品に不具合が生じた場合には、このICタグごと取り換えなければならず、扱いが困難である。
【0007】
そこで、本発明は、杭から離れた場所からであっても、様々な方向からICタグの情報を読み出すことができる上に、扱いが容易な情報杭を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明にかかる情報杭は、収納部を有する杭本体と、この杭本体の頭部に被せられて前記収納部を閉塞するキャップとを備え、地盤に一部または全部が埋め込まれる杭であって、前記収納部には、指向性アンテナを有するICタグが複数収納され、これらICタグは同一情報を記憶する。
【0009】
本発明によれば、収納部に収納されるICタグは指向性アンテナを有するが、複数のICタグが同一情報を記憶しているため、複数のICタグのいずれか一つから情報を読み出すことができれば十分である。したがって、単一のICタグのみの場合に比べて、情報を読み出すことができる可能性が高い。つまり、ICタグの数および配置方向に応じて、様々な方向からの情報の読み取りが可能となる。また、指向性アンテナは最大通信距離が大きい傾向にあるため、このように指向性アンテナを有するICタグを複数設けることで、様々な方向からの情報の読み取りが可能である上に、杭から離れた場所からでもICタグの情報を読み出すことができる。さらに、杭の収納部にICタグを複数収納するだけでよいため、ICタグが故障した場合にはそのICタグのみを交換すればよく、扱いが容易である。
【0010】
なお、「同一情報」は、必ずしも各ICタグが記憶する情報全てが完全に同一でなくてもよく、一部の情報が同一であればよい。例えば、各ICタグに記憶されているタグID(識別情報)はそれぞれ異なるが、収納される杭に関連した情報、(杭の設置位置を示す情報など)が同一であればよい。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記ICタグは棒形状であり、各ICタグの長手方向の中心部がほぼ一致するように、これらICタグは前記収納部の深さ方向に積み重ねて配置され、前記複数のICタグがそれぞれ異なる方向に延びている。この構成によれば、ICタグは単に積み重ねられるだけであるため、構造が簡易である。また、複数のICタグがそれぞれ異なる方向に延びているため、各アンテナの指向性パターンはずれて、複数のICタグ全体としては、単一のICタグの場合に比べて指向性が広くなる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記複数のICタグの数が任意の整数nの場合、これらICタグはほぼ(180/n)°の角度をなしている。この構成によれば、ICタグが(180/n)°の角度をなしているので、収納部の横断面方向つまり杭の設置状態における水平方向において、複数のICタグが放射状に延びている。したがって、各ICタグのアンテナは指向性を有していても、ICタグ全体としてはほぼ無指向性となる。
【0013】
ここで、複数のICタグの数は、好ましくは4以上であり、さらに好ましくは4である。
【0014】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、深さ方向に隣接するICタグの間には、磁性体が介装されている。この構成によれば、各ICタグの電磁波の干渉を防止することができる。
【0015】
本発明のさらに好ましい実施形態によれば、前記ICタグが通信周波数としてUHF帯を利用する。この構成によれば、UHF帯を利用するICタグは電波の指向性は高いが、最大通信距離は長い。そこで、複数のICタグを設けることで、様々な方向からの情報の読み取りが可能でありながら、最大通信距離を大きくすることができる。
【0016】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、前記ICタグが通信周波数としてマイクロ波帯を利用するものである。この構成によれば、マイクロ波帯を利用するICタグは電波の指向性は高いが、最大通信距離は長い。そこで、複数のICタグを設けることで、様々な方向からの情報の読み取りが可能でありながら、最大通信距離を大きくすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の情報杭によれば、指向性アンテナを有するICタグを複数設けることで、杭から離れた場所からであっても、様々な方向からICタグの情報を読み出すことができる上に、扱いが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態にかかる情報杭の斜視図である。
【図2】図1の情報杭のキャップを外した杭本体側の図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のb−b線に沿った断面図である。
【図3】ICタグの指向性パターンを示す図であり、(a)は図2の最上に位置するICタグ、(b)は図2の最下に位置するICタグについての図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に、本発明の一実施形態にかかる情報杭1を示す。
杭1は、地盤にほぼ垂直に打ち込まれて一部または全部が埋め込まれる杭であって、杭本体10を有し、その頭部12は防護用キャップ20によって覆われている。
【0020】
図1の杭1のキャップ20を取り外した状態の杭本体10の上面図を図2(a)に示す。杭本体10は、その中心軸に沿って上方が開口した直方体形状の収納空間(収納部)14を有する。この収納部14の底面および壁面には、ゴム30が貼付されている。これにより、後述するICタグが、杭本体10と接触するのを防止できる。
【0021】
この収納部14には、ほぼ同一寸法の棒形状のICタグ40が複数(本実施形態では4本)収納されている。具体的には、図2(a)のb−b線に沿う断面図である図2(b)に示すように、第1のICタグ40A,第2のICタグ40B,第3のICタグ40C,第4のICタグ40D(ICタグは総称して符号40で示す)が、各ICタグの長手方向の中心部40Ab,40Bb,40Cb,40Db(中心部は総称して符号40bで示す)が杭本体10の中心軸Cに一致するように、収納部14の深さ方向14aに積み重ねられている。また、各ICタグ40は、隣接するICタグ40に対して水平面内において角度θ回転している。つまり、第1のICタグ40Aに対して第2のICタグ40Bはθ回転しており、第1のICタグ40Aに対して第3のICタグ40Cもθ回転しており、第3のICタグ40Cに対して第4のICタグ40Dはθ回転している。この角度θは、ICタグの数がnの場合(180/n)°であり、本実施形態では45°である。これにより、図2(a)に示すように、ICタグ40はそれらの中心部40bの中心回りに等角間隔で配置されている。
【0022】
各ICタグ40は、その内部にタグ情報などを記憶するICチップ42と、ダイポールアンテナからなる指向性アンテナ44とを有する。ここで、全てのICチップ42は同一の情報を記憶している。ただし、ICチップ42が記憶するタグIDはそれぞれ異なり、本実施形態においては、杭の設置位置を示す情報が全てのICチップ42において同一情報で記憶されている。指向性アンテナ44は、通信周波数として例えばマイクロ波帯を利用するものである。
【0023】
収納部14の深さ方向14aに隣接するICタグ40の間、つまり第1のICタグ40Aと第2のICタグ40Bの間、第2のICタグ40Bと第3のICタグ40Cの間、第3のICタグ40Cと第4のICタグ40Dの間には、収納部14の開口とほぼ同一寸法で平板状の磁性体50が、それぞれ介装されている。これら磁性体50によって、各ICタグ40の電磁波の干渉を防止することができる。
【0024】
次に、この情報杭1の作用について説明する。
図3(a)および(b)に示すように、各ICタグ40は、そのダイポールアンテナ44によって、8の字形状の指向性パターンを有する。したがって、棒形状のICタグ40は、周方向の指向性を示し、その長手方向46の中心部分において最も感度が強く、ICタグ40の長手方向46の延長線上に対する感度はゼロである。例えば、図2(b)に示すICタグのうち、最上段に位置する第4のICタグ40Dは、図3(a)に示す指向性パターン45Dであり、第4のICタグ40Dの長手方向の延長線の方向であるX方向の通信は行うことができない。一方、図2(b)に示すICタグのうち、最下段に位置する第1のICタグ40Aは、図3(b)に示す指向性パターン45Aであり、第1のICタグ40Aの長手方向に直交するX方向の通信が可能である。このようにして、水平方向の通信は、4つのICタグ40A,40B,40C,40Dが互いに補い合うことで、全方向を網羅することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 情報杭
10 杭本体
14 収納部
20 キャップ
40(40A,40B,40C,40D) ICタグ
44 指向性アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納部を有する杭本体と、
この杭本体の頭部に被せられて前記収納部を閉塞するキャップとを備え、地盤に一部または全部が埋め込まれる杭であって、
前記収納部には、指向性アンテナを有するICタグが複数収納され、これらICタグは同一情報を記憶する情報杭。
【請求項2】
請求項1において、前記ICタグは棒形状であり、各ICタグの長手方向の中心部がほぼ一致するように、これらICタグは前記収納部の深さ方向に積み重ねて配置され、前記複数のICタグがそれぞれ異なる方向に延びている情報杭。
【請求項3】
請求項2において、前記複数のICタグの数が任意の整数nの場合、これらICタグはほぼ(180/n)°の角度をなしている情報杭。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項において、深さ方向に隣接するICタグの間には、磁性体が介装されている情報杭。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項において、前記ICタグが通信周波数としてUHF帯を利用する情報杭。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項において、前記ICタグが通信周波数としてマイクロ波帯を利用する情報杭。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−180960(P2011−180960A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46366(P2010−46366)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(591034017)株式会社リプロ (15)
【Fターム(参考)】