説明

情報板抽出装置及び情報板抽出方法

【課題】事故等の事象が発生した場合で、複数の情報板の中から事象が影響を及ぼす影響範囲内に存在しているものを自動で抽出することができる情報板抽出装置及び情報板抽出方法を提供する。
【解決手段】事故等の事象が発生した事象登録位置に車両が至るまでの容易さを示すコストに基づいて事象が影響を及ぼす影響範囲を算出する影響範囲算出部8と、複数の情報板の中から影響範囲算出部8で算出された影響範囲内に存在している情報板を抽出する処理を行う情報板抽出処理部9とを備える。これにより、影響範囲内に存在している情報板を自動的に抽出することができ、これによりオペレータが手動で1つ1つ抽出していた従来の交通管制システムに比べて作業性が改善され、該当する情報板に対する表示を迅速に行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般道路沿いに複数設置され、“通行止め”や“渋滞”等の交通状況を文字にして電光表示する情報板を有する交通管制システムに用いて好適な情報板抽出装置及び情報板抽出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般道路には上述した情報板が設置されており、車両の運転者に“通行止め”や“渋滞”等の交通状況を知らせるようにしている。この情報板は交通管制システムに含まれる端末の1つであり、同システムの上位装置によって制御される。
【0003】
従来の交通管制システムでは、管轄地で事故などの事象が発生した場合、オペレータによる手動操作によって管轄地内の全ての情報板をリスト表示し、さらにリスト表示された中から当該事象が影響を及ぼす影響範囲内に含まれる情報板を抽出する。
【0004】
交通管制システムでは“コスト”と呼ばれる用語が使用される。“コスト”は、ナビゲーション装置では一般的に用いられている用語であり、ある地点に到達する容易性を意味する。事故等の事象が発生してその現場まで簡単に行ける場合は“コストの値が小さい”と呼び、何回も迂回したりしてなかなか現場まで行けない場合は“コストの値が大きい”と呼ぶ。因みに、特許文献1で開示されたナビゲーション装置では、リンクコスト及びノードコストの少なくとも1つが所定地域毎に個別に設定されたコストテーブルを備え、制御回路が、当該コストテーブルを用いて目的地までの経路コストを算出し、そして、出発地から目的地まで経路コストが最小となる経路を探索する技術が開示されている。また、特許文献2で開示されたナビゲーション装置では、過去に収集された交通情報を基に統計処理して求め、収集条件毎に分類した分岐点のコストを有し、経路探索において、分岐点通過時の状況に対応する収集条件の分岐点のコストを用いて、総コストが最小となる経路を探索する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−181063号公報
【特許文献2】特開2006−047246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の交通管制システムでは、事故等の事象が発生した場合に、複数の情報板の中から事象が影響を及ぼす影響範囲内に存在しているものをオペレータが手動で1つ1つ抽出するようにしているため、作業性が悪く、該当する情報板に対する表示(例えば“1km先に事故”という表示)が遅れるという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、事故等の事象が発生した場合で、複数の情報板の中から事象が影響を及ぼす影響範囲内に存在しているものを自動で抽出することができる情報板抽出装置及び情報板抽出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明の情報板抽出装置は、事象が発生した事象登録位置に車両が至るまでの容易さを示すコストに基づいて前記事象が影響を及ぼす影響範囲を算出する影響範囲算出手段と、複数の情報板の中から前記影響範囲算出手段で算出された前記影響範囲内に存在している情報板を抽出する処理を行う情報板抽出処理手段と、を備えた。
【0009】
この構成によれば、事故等の事象が発生した場合に、事象登録位置に車両が至るまでの容易さを示すコストに基づいて事象が影響を及ぼす影響範囲を算出し、複数の情報板の中から影響範囲内に存在しているものを抽出するので、当該影響範囲内に存在している情報板をオペレータが手動で1つ1つ抽出する必要が無くなる。これにより、作業性が改善されて、該当する情報板に対する表示を迅速に行うことができる。
【0010】
また、上記構成において、前記コストとして、交差点での車両の分岐率に応じたコスト、車両の交通量に応じたコスト、前記事象登録位置からの距離に応じたコスト、及び車両が右折又は左折する回数を示す右左折コストに応じたコストのうち少なくとも1つのコストを用いる。
【0011】
この構成によれば、事象が影響を及ぼす影響範囲の算出にコストを用いるので、事象が影響を及ぼす影響範囲を的確に且つ短時間で求めることができる。
【0012】
また、本発明の情報板抽出方法は、事象が発生した事象登録位置を設定する工程と、前記事象の内容に基づいて前記事象登録位置からの距離を算出する工程と、前記事象が影響を及ぼす影響範囲を算出する工程と、複数の情報板の中から前記影響範囲内に存在している情報板を抽出する工程と、を備えた。
【0013】
この方法によれば、事故等の事象が発生した場合に、事象登録位置に車両が至るまでの容易さを示すコストに基づいて事象が影響を及ぼす影響範囲を算出し、複数の情報板の中から影響範囲内に存在しているものを抽出するので、当該影響範囲内に存在している情報板をオペレータが手動で1つ1つ抽出する必要が無くなる。これにより、作業性が改善されて、該当する情報板に対する表示を迅速に行うことができる。
【0014】
また、上記方法において、前記影響範囲を算出する工程は、現在の時間帯が夜間であるか否かを判定する工程と、前記現在の時間帯が夜間である場合、前記事象登録位置からの距離に応じたコストを算出する工程と、前記現在の時間帯が夜間でない場合、車両の交通量に応じたコストを算出し、時間帯がピーク時間であるか否かを判定する工程と、前記時間帯がピーク時間である場合、前記車両の交通量が平均値以下であるか否かを判定する工程と、前記車両の交通量が平均値以下でない場合、交差点での車両の分岐率に応じたコストを算出する工程と、車両が右折又は左折する回数を示す右左折コストに応じたコストを算出する工程と、前記事象登録位置からの距離に応じたコスト、前記車両の交通量に応じたコスト、前記交差点での車両の分岐率に応じたコスト、及び前記車両が右折又は左折する回数を示す右左折コストに応じたコストに基づいて車両が前記事象登録位置に到達するまでの到達コストを算出し前記影響範囲を決定する工程と、を有し、前記現在の時間帯が夜間でない場合且つ前記時間帯がピーク時間でない場合、前記事象登録位置からの距離に応じたコストを算出する工程を実行し、前記車両の交通量が平均値以下である場合、前記車両が右折又は左折する回数を示す右左折コストに応じたコストを算出する工程を実行する。
【0015】
この方法によれば、事象が影響を及ぼす影響範囲の算出にコストを用いるので、事象が影響を及ぼす影響範囲を的確に且つ短時間で求めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、事故等の事象が発生した場合で、複数の情報板の中から事象が影響を及ぼす影響範囲内に存在している情報板を自動で抽出するので、当該影響範囲内に存在している情報板をオペレータが手動で1つ1つ抽出する必要が無くなり、作業性を改善できて、該当する情報板に対する表示を迅速に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る情報板抽出装置の概略構成を示すブロック図である。同図において、本実施の形態の情報板抽出装置1は、情報板データ取得部2と、交通状況検出部3と、事象判別部4と、閾値取得部5と、影響距離取得部6と、到達コスト判定部7と、影響範囲算出部8と、情報板抽出処理部9と、情報板表示部10とを備えて構成される。
【0019】
情報板データ取得部2は、種別、設置場所、名称等の情報板に関するデータを管理する。情報板データ取得部2は、図2に示す「情報板データテーブル」を有し、この情報板データテーブルから種別、設置場所、名称等の情報板に関するデータを取得する。交通状況検出部3は、各路線に対する交通量や平均速度(時間帯毎)に対するパラメータを管理する。交通状況検出部3は、図3に示す「平均速度テーブル」と図4に示す「交通量パラメータテーブル」を有し、平均速度テーブルから時間帯毎の平均速度を取得し、また交通量パラメータテーブルから交通量毎のパラメータを取得する。
【0020】
事象判別部4は、事故等の各事象に対するパラメータを管理する。事象判別部4は、図5に示す「事象登録時間テーブル」を有し、この事象登録時間テーブルから事故等の各事象に対するパラメータを取得する。閾値取得部5は、各交差点での到達コストと比較するための閾値を管理する。閾値取得部5は、図6に示す「到達コストテーブル」を有し、この到達コストテーブルから各路線における閾値を取得する。影響距離取得部6は、各事象から影響を受ける影響距離を管理する。影響距離取得部6は、図7に示す「抽出範囲テーブル」を有し、この抽出範囲テーブルから影響距離を取得する。
【0021】
到達コスト判定部7は、各交差点において到達コスト(事故等の事象が発生した事象登録位置から各交差点までのコスト)を、“分岐率”、“交通量”、“距離”、“右左折コスト”から算出する。到達コストCaは以下の式(1)により求まる。
Ca=Cb+Ct+Cd+Cs …(1)
Cb=α´×(1/b
Ct=β´×(1/t
Cd=a´×d
Cs=b´×s
【0022】
b:分岐率(A=3、B=2、C=1)
t:交通量(A=3、B=2、C=1)
d:事象登録位置からの距離
s:右左折コスト(0、1、2、3、…)
α´、β´、a´、b´:ユーザパラメータ
【0023】
分岐率bは、交差点に流入した車両が、直進する台数と、右折する台数と、左折する台数の割合を表すものである。例えば、100台の車両が流入して、直進が50台、右折が20台、左折が30台であった場合、直進の分岐率は50%、右折の分岐率は20%、左折の分岐率は30%となる。交通量tは、単位時間当たりの車両の台数である。事象登録位置からの距離dは、事象登録位置からある車両までの距離である。右左折コストsは、右左折の回数である。図8に分岐率bによるコストCb、交通量tによるコストCt、事象登録位置からの距離によるコストCd、右左折コストsによるコストCsのグラフを示す。
【0024】
到達コスト判定部7は、各交差点での到達コストCaを算出した後、算出した各交差点での到達コストCaを所定の閾値Zと比較し、該閾値Zを超えているか否かを判定する。到達コストCaと比較する閾値Zは、閾値取得部5の「到達コストテーブル」(図6参照)より得られる。例えば「県道○」で「通行止」の場合、この到達コストテーブルより“1.0”の閾値Zが得られる。
【0025】
ここで、分岐率:A=3、交通量:A=3、距離:60km、右左折コスト:2のリンク(α´=β´=1)、ユーザパラメータ:a´=1/100、b´=1/10とし、閾値:Z=1とした場合、到達コストCaは、
1/9 + 1/9 + 6/10 + 2/10 = 46/45
となる。この場合、到達コストCa=46/45は閾値Z=1を超える。
【0026】
また、分岐率:A=3、交通量:A=3、距離:60km、右左折コスト:1のリンク(α´=β´=1)、ユーザパラメータ:a´=1/100、b´=1/10とし、閾値:Z=1とした場合、到達コストCaは、
1/9 + 1/9 + 6/10 + 1/10 = 81/90
となる。この場合、Ca=81/90は閾値Z=1未満である。
【0027】
図1に戻り、影響範囲算出部8は、事故等の事象が影響を及ぼす影響範囲を得るための影響距離を算出し、算出した影響距離内で且つ到達コストCaが閾値Z未満の交差点を基に影響範囲を算出する。この場合、影響距離は、例えば図7に示す「抽出範囲テーブル」、又は、図3に示す「平均速度テーブル」及び図5に示す「事情登録時間テーブル」より得られる。影響距離を抽出範囲テーブルより得る場合、例えば「県道○」で「通行止」に対して“10km”が得られる。また、平均速度テーブルと事象登録時間テーブルより得る場合、例えば「事故」、「通行止」、「12−18時」に対して、3h×20km=“60km”となる。
【0028】
このようにして影響距離を算出した後、影響距離内で且つ到達コストCaが閾値Z未満の交差点を基に影響範囲を算出する。図9は、影響距離“Y”を半径とする円内の影響範囲20を示す図である。P1は事故等の事象登録位置である。また、20は閾値Z未満(Ca<Z)となっている影響範囲である。すなわち、三重線で示している部分(道路)が影響範囲20である。閾値を超える(Ca>Z)道路は影響範囲20に入らない。つまり、情報板抽出の対象とはならない。
【0029】
図1に戻り、情報板抽出処理部9は、複数の情報板(図示略)の中から影響範囲算出部8で算出された影響範囲20内に存在している情報板を抽出する。情報板表示部10は、情報板抽出処理部9で抽出された情報板に対して表示を行う。
【0030】
次に、図10及び図11に示すフローチャートを参照して、本実施の形態の情報板抽出装置1の動作を説明する。図10において、まずユーザパラメータα´、β´、a´、b´等のパラメータの設定を行う(ステップST10)。次いで、事故等が起きた位置すなわち事象登録位置をデジタル地図上に設定する(ステップST11)。次いで、事象登録位置からの距離すなわち影響距離を算出する(ステップST12)。例えば、抽出範囲テーブル(図7参照)より影響距離を得る場合、事象が「県道○」で発生し、それによって「通行止」とすると、“10km”の値が得られる。事象登録位置からの影響距離を算出した後、事象内容から閾値を設定する(ステップST13)。例えば、「県道○」、「通行止」に対して“1.0”を設定する。閾値を設定した後、影響範囲を決定する(ステップST14)。影響範囲の決定の詳細は図11で説明する。影響範囲の決定後、複数の情報板の中から影響範囲内にあるものを抽出する(ステップST15)。そして、抽出した全ての情報板の表示を行う(ステップST16)。
【0031】
図11において、影響範囲決定処理を開始すると、まず時間帯は夜間かどうか判定する(ステップST20)。夜間であれば、事象登録位置からの距離dによるコストCdを算出する(ステップST21)。次いで、交通量は1日の平均以下かどうか判定する(ステップST22)。交通量が1日の平均以下でなければ(「NO」の場合)、分岐率bによるコストCbを算出し(ステップST23)、さらに右左折コストsによるコストCsを算出する(ステップST24)。一方、ステップST22において、交通量が1日の平均以下であれば(「YES」の場合)、分岐率bによるコストCbの算出をせず、右左折コストsによるコストCsを算出する。分岐率コストCbと右左折コストCsを算出した後、又は、右左折コストCsのみを算出した後、到達コストCaを算出し、影響範囲を決定する(ステップST25)。分岐率コストCbと右左折コストCsを算出した場合の到達コストCaは、Cb、Cd、Csを加算した値となり、右左折コストCsのみを算出した場合の到達コストCaは、Cd、Csを加算した値となる。
【0032】
一方、ステップST20において、時間帯が夜間でなければ、交通量tによるコストCtを算出する(ステップST26)。次いで、ピーク時間かどうか判定し(ステップST27)、ピーク時間でなければステップST21に進み、ピーク時間であればステップST22に進む。ピーク時間以外の場合の到達コストCaは、Ct、Cd、Cb、Csを加算した値又はCt、Cd、Csを加算した値となる。これに対し、ピーク時間の場合の到達コストCaは、Ct、Cb、Csを加算した値又はCt、Csを加算した値となる。なお、ピーク時間には、朝のピーク時間と夜のピーク時間がある。
【0033】
このように本実施の形態の情報板抽出装置1によれば、事故等の事象が発生した事象登録位置に車両が至るまでの容易さを示すコストに基づいて事象が影響を及ぼす影響範囲を算出する影響範囲算出部8と、複数の情報板の中から影響範囲算出部8で算出された影響範囲内に存在している情報板を抽出する処理を行う情報板抽出処理部9とを備えたので、影響範囲内に存在している情報板を自動的に抽出することができ、これによりオペレータが手動で1つ1つ抽出していた従来の交通管制システムに比べて作業性が改善され、該当する情報板に対する表示を迅速に行うことが可能となる。
【0034】
(実施の形態2)
上記実施の形態1は、事故等の事象が影響を及ぼす影響範囲を、分岐率コスト、交通量コスト、距離コスト、右左折コストの4つのコストからなる到達コストに基づいて算出するようにしたが、本実施の形態は、交通量コストのみで影響範囲を算出するものである。本実施の形態の情報板抽出装置の構成は、実施の形態1の情報板抽出装置1と同様であるので、図1をそのまま援用することとする。なお、装置に付ける符号は“1A”とする。
【0035】
本実施の形態では、事故等の事象が発生した場合、影響範囲算出部8が、影響距離取得部6で管理されている抽出範囲テーブル(図7参照)より得られる影響距離と、交通状況検出部3で管理されている交通量パラメータテーブル(図4参照)より得られる交通量によるパラメータとから影響範囲の距離を算出する。例えば、県道○号●●で通行止が発生した場合、抽出範囲テーブルより影響距離“10km”が得られ、また交通量パラメータテーブルより交通量パラメータが得られる。例えば、交通量が1k−1.5k台(kは1000の単位)であれば、“0.80”のパラメータが得られる。そして、以下に示す式(2)に従って影響範囲の距離を求める。
【0036】
U=(α+β)V+γW …(2)
0≦α≦1
0≦β≦1
0≦γ≦1
U:事象登録位置からの距離
V:事象により変化する範囲(半径)
W:平均速度と事象解除までに掛かる時間で算出される距離
α:ユーザパラメータ
β:交通量により変化するパラメータ
γ:ユーザパラメータ
ユーザパラメータα、γを“0”にした場合、U=βVとなり、影響範囲の距離は8km(10×0.8)となる。
【0037】
この8kmの影響範囲内に設置されて情報板を情報板データ取得部2の情報板データテーブル(図2参照)から抽出する。図12は本実施の形態の情報板抽出装置1Aの処理を模式的に示す図である。図12において、県道○号●●で通行止が発生した場合、デジタル地図上に事象登録位置P1を×マークで指定し、半径8kmの影響範囲30を点線で示す。また、影響範囲30内に設置された情報板を丸で囲んだ数字の1〜3で示す。
【0038】
このように本実施の形態の情報板抽出装置1Aによれば、影響範囲内に存在している情報板を自動的に抽出することができ、これによりオペレータが手動で1つ1つ抽出していた従来の交通管制システムに比べて作業性が改善され、該当する情報板に対する表示を迅速に行うことが可能となる。また、交通量コストのみで影響範囲の算出を行うので、事象が影響を及ぼす影響範囲を短時間で求めることができる。
【0039】
(実施の形態3)
本実施の形態は、右左折コストのみで影響範囲を算出するものである。本実施の形態の情報板抽出装置の構成は、実施の形態1の情報板抽出装置1と同様であるので、図1をそのまま援用することとする。なお、装置に付ける符号は“1B”とする。
【0040】
本実施の形態では、事故等の事象が発生した場合、影響範囲算出部8が、事象判別部4で管理されている事象登録時間テーブル(図5参照)より得られる事象の解消までに必要な時間と、交通状況検出部3で管理されている平均速度テーブル(図3参照)より得られる発生時間帯の平均速度とから影響範囲の距離を算出する。例えば、県道○号●●で事故による通行止が発生した場合、事象登録時間テーブルより“3h”が得られ、また平均速度テーブルより平均速度が得られる。例えば、発生時間帯が12−18時であれば、“20km”の平均速度が得られる。これにより影響範囲の距離は、上述した式(2)より20×3=60kmとなる。すなわち、ユーザパラメータα、γと、交通量により変化するパラメータβを“0”にした場合、式(2)はU=Wとなり、Wは平均速度と事象解除までに掛かる時間で算出される距離であることから、U=W=20×3=60kmとなる。
【0041】
この60kmの影響範囲内に設置された情報板を情報板データ取得部2の情報板データテーブル(図2参照)から抽出する。図13は本実施の形態の情報板抽出装置1Bの処理を模式的に示す図である。図13において、県道○号●●で通行止が発生した場合、デジタル地図上に事象登録位置P1を×マークで指定し、また影響範囲40を二重の実線で示す。さらに、右左折コスト:1として算出した影響範囲をドットを付けた領域で示す。なお、影響範囲は図13に示すように楕円であっても構わない。
【0042】
このように本実施の形態の情報板抽出装置1Bによれば、影響範囲内に存在している情報板を自動的に抽出することができ、これによりオペレータが手動で1つ1つ抽出していた従来の交通管制システムに比べて作業性が改善され、該当する情報板に対する表示を迅速に行うことが可能となる。また、右左折コストのみで影響範囲の算出を行うので、事象が影響を及ぼす影響範囲を短時間で求めることができる。
【0043】
(実施の形態4)
本実施の形態は、右左折コストと分岐率とから影響範囲を算出するものである。本実施の形態の情報板抽出装置の構成は、実施の形態1の情報板抽出装置1と同様であるので、図1をそのまま援用することとする。なお、装置に付ける符号は“1C”とする。
【0044】
本実施の形態では、事故等の事象が発生した場合、影響範囲算出部8が、事象判別部4で管理されている事象登録時間テーブル(図5参照)より得られる事象の解消までに必要な時間と、交通状況検出部3で管理されている平均速度テーブル(図3参照)より得られる発生時間帯の平均速度とから影響範囲の距離を算出する。例えば、県道○号●●で事故による通行止が発生した場合、事象登録時間テーブルより“3h”が得られ、また平均速度テーブルより平均速度が得られる。例えば、発生時間帯が12−18時であれば、“20km”の平均速度が得られる。これにより、影響範囲の距離は、上述した式(2)より20×3=60kmとなる。
【0045】
影響範囲算出部8は、影響範囲の距離を求めた後、右左折コストと分岐率とから影響範囲を算出する。図14は、右左折コストを“2”、分岐率を“A”として得られた影響範囲の一例を示す図である。図14において、三重の実線で示す部分が影響範囲50を示す道路である。分岐率は、A>B>Cとしている。この影響範囲50を示す道路は、事象登録位置P1に対して右左折コストが“2”以内で、分岐率が“A”となっている道路である。因みに、分岐率Aは、他の分岐率B、Cよりもコストが小さい。また、右左折コストが“2”以内とは、2回までしか右左折できないという意味である。このようにして得られた影響範囲50内に設置された情報板を情報板データ取得部2の情報板データテーブル(図2参照)から抽出する。
【0046】
このように本実施の形態の情報板抽出装置1Cによれば、影響範囲内に存在している情報板を自動的に抽出することができ、これによりオペレータが手動で1つ1つ抽出していた従来の交通管制システムに比べて作業性が改善され、該当する情報板に対する表示を迅速に行うことが可能となる。また、右左折コストと分岐率とから影響範囲の算出を行うので、事象が影響を及ぼす影響範囲を的確且つ短時間で求めることができる。
【0047】
(実施の形態5)
本実施の形態は、右左折コストと各交差点の交通量とから影響範囲を算出するものである。本実施の形態の情報板抽出装置の構成は、実施の形態1の情報板抽出装置1と同様であるので、図1をそのまま援用することとする。なお、装置に付ける符号は“1D”とする。
【0048】
本実施の形態では、事故等の事象が発生した場合、影響範囲算出部8が、事象判別部4で管理されている事象登録時間テーブル(図5参照)より得られる事象の解消までに必要な時間と、交通状況検出部3で管理されている平均速度テーブル(図3参照)より得られる発生時間帯の平均速度とから影響範囲の距離を算出する。例えば、県道○号●●で事故による通行止が発生した場合、事象登録時間テーブルより“3h”が得られ、また平均速度テーブルより平均速度が得られる。例えば、発生時間帯が12−18時であれば、“20km”の平均速度が得られる。これにより、影響範囲の距離は、上述した式(2)より20×3=60kmとなる。
【0049】
影響範囲算出部8は、影響範囲の距離を求めた後、右左折コストと各交差点の交通量とから影響範囲を算出する。図15は、右左折コストを“2”、交通量を“B”として得られた影響範囲の一例を示す図である。図15において、三重の実線で示す部分が影響範囲60を示す道路である。交通量は、A:1000台以上、B:500台以上1000台未満、C:500台未満としている。この影響範囲60を示す道路は、事象登録位置P1に対して右左折コストが“2”以内で、交通量が“B”となっている道路である。このようにして得られた影響範囲60内に設置された情報板を情報板データ取得部2の情報板データテーブル(図2参照)から抽出する。
【0050】
このように本実施の形態の情報板抽出装置1Dによれば、影響範囲内に存在している情報板を自動的に抽出することができ、これによりオペレータが手動で1つ1つ抽出していた従来の交通管制システムに比べて作業性が改善され、該当する情報板に対する表示を迅速に行うことが可能となる。また、右左折コストと各交差点の交通量とから影響範囲の算出を行うので、事象が影響を及ぼす影響範囲を的確且つ短時間で求めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、事故等の事象が発生した場合で、複数の情報板の中から事象が影響を及ぼす影響範囲内に存在しているものを自動で抽出することができるといった効果を有し、交通管制システムへの適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1に係る情報板抽出装置の概略構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施の形態1に係る情報板抽出装置の情報板データ取得部で管理される情報板データテーブルを示す図
【図3】本発明の実施の形態1に係る情報板抽出装置の交通状況検出部で管理される平均速度テーブルを示す図
【図4】本発明の実施の形態1に係る情報板抽出装置の交通状況検出部で管理される交通量パラメータを示す図
【図5】本発明の実施の形態1に係る情報板抽出装置の事情判別部で管理される事象登録時間テーブルを示す図
【図6】本発明の実施の形態1に係る情報板抽出装置の閾値取得部で管理される到達コストテーブルを示す図
【図7】本発明の実施の形態1に係る情報板抽出装置の影響距離取得部で管理される抽出範囲テーブルを示す図
【図8】本発明の実施の形態1に係る情報板抽出装置で用いられる分岐率、交通量、事象登録位置からの距離、右左折コストに対する各コストを示す図
【図9】本発明の実施の形態1に係る情報板抽出装置で算出された影響範囲を示す図
【図10】本発明の実施の形態1に係る情報板抽出装置の動作を示すフローチャート
【図11】本発明の実施の形態1に係る情報板抽出装置の動作を示すフローチャート
【図12】本発明の実施の形態2に係る情報板抽出装置の処理を模式的に示す図
【図13】本発明の実施の形態3に係る情報板抽出装置の処理を模式的に示す図
【図14】本発明の実施の形態4に係る情報板抽出装置で算出された影響範囲を示す図
【図15】本発明の実施の形態5に係る情報板抽出装置で算出された影響範囲を示す図
【符号の説明】
【0053】
1、1A、1B、1C、1D 情報板抽出装置
2 情報板データ取得部
3 交通状況検出部
4 事象判別部
5 閾値取得部
6 影響距離取得部
7 到達コスト判定部
8 影響範囲算出部
9 情報板抽出処理部
10 情報板表示部
20、30、40、50、60 影響範囲
P1 事象登録位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
事象が発生した事象登録位置に車両が至るまでの容易さを示すコストに基づいて前記事象が影響を及ぼす影響範囲を算出する影響範囲算出手段と、
複数の情報板の中から前記影響範囲算出手段で算出された前記影響範囲内に存在している情報板を抽出する処理を行う情報板抽出処理手段と、
を備えた情報板抽出装置。
【請求項2】
前記コストとして、交差点での車両の分岐率に応じたコスト、車両の交通量に応じたコスト、前記事象登録位置からの距離に応じたコスト、及び車両が右折又は左折する回数を示す右左折コストに応じたコストのうち少なくとも1つのコストを用いる請求項1に記載の情報板抽出装置。
【請求項3】
事象が発生した事象登録位置を設定する工程と、
前記事象の内容に基づいて前記事象登録位置からの距離を算出する工程と、
前記事象が影響を及ぼす影響範囲を算出する工程と、
複数の情報板の中から前記影響範囲内に存在している情報板を抽出する工程と、
を備えた情報板抽出方法。
【請求項4】
前記影響範囲を算出する工程は、
現在の時間帯が夜間であるか否かを判定する工程と、
前記現在の時間帯が夜間である場合、前記事象登録位置からの距離に応じたコストを算出する工程と、
前記現在の時間帯が夜間でない場合、車両の交通量に応じたコストを算出し、時間帯がピーク時間であるか否かを判定する工程と、
前記時間帯がピーク時間である場合、前記車両の交通量が平均値以下であるか否かを判定する工程と、
前記車両の交通量が平均値以下でない場合、交差点での車両の分岐率に応じたコストを算出する工程と、
車両が右折又は左折する回数を示す右左折コストに応じたコストを算出する工程と、
前記事象登録位置からの距離に応じたコスト、前記車両の交通量に応じたコスト、前記交差点での車両の分岐率に応じたコスト、及び前記車両が右折又は左折する回数を示す右左折コストに応じたコストに基づいて車両が前記事象登録位置に到達するまでの到達コストを算出し前記影響範囲を決定する工程と、を有し、
前記現在の時間帯が夜間でない場合且つ前記時間帯がピーク時間でない場合、前記事象登録位置からの距離に応じたコストを算出する工程を実行し、
前記車両の交通量が平均値以下である場合、前記車両が右折又は左折する回数を示す右左折コストに応じたコストを算出する工程を実行する請求項3に記載の情報板抽出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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