説明

情報表示媒体及びこの媒体の情報読み取り装置

【課題】電子透かしの情報内容を後から容易に変更することができる情報表示媒体及びこの媒体の情報読み取り装置を提供する。
【解決手段】情報表示媒体10は、所定の情報(例えば、商品名、商品管理番号、管理期限、製造日及び価格)が埋め込まれた電子透かし部12と、この電子透かし部の上に重ねて形成されており、電子透かし部に埋め込まれた所定の情報(例えば、価格)を変更可能な情報内容変更部18とを具備する。そして、情報読み取り装置では、電子透かし部や情報内容変更部の各情報内容を読み取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子透かしが埋め込まれた情報表示媒体及びこの媒体の情報を読み取る情報読み取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、市場ではバーコードの付された商品が流通している。このバーコードは、商品の種類や価格等の情報が識別可能な模様で構成されており、主として商品の製造者側にて印刷される。なお、このバーコードにはQRコード等の2次元バーコードも使用されている。
【0003】
ここで、所定のバーコードの表示内容を変更する場合には、他のバーコードを改めて印刷する必要があり、不便である。そこで、当初の表示内容を別の表示内容に変更可能な装置が開示されている(特許文献1参照)。
また、当初の表示内容は空欄である一方、その空欄部分に必要事項を記入して別の表示内容に変更可能な情報表示媒体も開示されている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平7−152848号公報
【特許文献2】特開2002−52875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この種の情報表示媒体には、URL(Uniform Resource Locator)の情報が予め印刷されているものがある。詳しくは、当該媒体には電子透かしが印刷されており、この透かしにはURLの情報が埋め込まれている。そして、例えば、媒体を携帯情報端末のカメラ機能で撮影すると、電子透かしが解析され、その画像データからURLが抽出される。これにより、この端末のユーザは、URLの入力作業を行うことなく商品の購入サイト等にアクセスすることができ、その商品の情報を容易、且つ、速やかに取得可能となる。
【0006】
しかしながら、この電子透かしの情報内容を別の情報内容に変更するには、やはり他の電子透かしを改めて印刷する必要があり、不便である。そして、仮に上述した技術を組み合わせたとしても、上記特許文献1に記載の装置では大掛かりであり、上記携帯情報端末のユーザにとっては利用し難いとの問題がある。また、上記特許文献2に記載の媒体では変更箇所が散在しており、これでは、1度の変更作業では終了しないし、さらに、変更を忘れてしまうとの懸念もある。また、紙面スペースを必要とするとの懸念もある。
【0007】
このように、上記従来の技術では、電子透かしの情報内容をユーザが後から容易に変更する点については依然として課題が残されている。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解消し、電子透かしの情報内容を後から容易に変更することができる情報表示媒体及びこの媒体の情報読み取り装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1の発明は、所定の情報が埋め込まれた電子透かし部と、電子透かし部の上に重ねて形成されており、電子透かし部に埋め込まれた所定の情報を変更可能な情報内容変更部とを具備する。
【0009】
第1の発明によれば、電子透かし部に埋め込まれている情報は変更しなくても良いが、仮に電子透かし部の情報内容を変更する場合には、この電子透かし部の範囲内に重ねて形成された情報内容変更部にて実行されるので、電子透かし部の情報内容が容易、且つ、速やかに、しかも、確実に変更可能となる。この結果、ユーザフレンドリな情報表示媒体が構成され、広範囲の利用が可能な情報表示媒体を得ることができる。
【0010】
第2の発明は、商品名、商品管理番号、管理期限、製造日及び価格の各情報のうち少なくとも1つの情報が埋め込まれた電子透かし部と、電子透かし部の上に重ねて形成されており、この情報を変更可能な情報内容変更部とを具備する。
【0011】
第2の発明によれば、電子透かし部に埋め込まれている商品名、商品管理番号、管理期限、製造日及び価格の各商品情報は電子透かし部の情報のみで機能する。そして、仮に電子透かし部の情報内容を変更する場合には、この電子透かし部の範囲内に重ねて形成された情報内容変更部にて実行されることから、従来に比して大掛かりな装置を用いることなく、その価格変更の容易性、迅速性及び確実性が向上する。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明の構成において、情報表示媒体には、光学機器に読み取られる電子透かし部の拡大縮小率や回転角度を演算装置に認識させる検出用パターンが挿入されていることを特徴とする。
第3の発明によれば、第1又は第2の発明の作用に加えてさらに、電子透かし部は、光学機器にて読み取られ、演算装置にて解析される。ここで、情報表示媒体には、電子透かし部の拡大縮小率や回転角度を演算装置に認識させる検出用パターンを有していることから、電子透かし部の解析精度の向上に寄与する。
【0013】
第4の発明は、第3の発明の構成において、情報内容変更部の拡大縮小率や回転角度は、検出用パターンによる検出結果に基づいて演算装置に認識されることを特徴とする。
第4の発明によれば、第3の発明の作用に加えてさらに、情報内容変更部の拡大縮小率や回転角度は、電子透かし部に挿入されている検出用パターンに基づいて演算装置に認識されており、情報内容変更部が速やかに解析可能となる。
【0014】
第5の発明は、第1から第4の発明に係る情報表示媒体の情報読み取り装置であって、電子透かし部の情報を解析するとともに、情報内容変更部の情報を解析する演算装置を備え、演算装置は、情報表示媒体の画像から電子透かし部を抜き出し、抜き出された電子透かし部に基づいて電子透かし部の情報を解析する解析部を有することを特徴とする。
第5の発明によれば、第1から第4の発明の作用に加えてさらに、演算装置は解析部を有し、情報表示媒体の画像から電子透かし部を抜き出しており、この透かし部の上に重ねて形成された情報内容変更部と切り離されている。よって、画像に情報内容変更部分が残ることによるノイズが排除され、電子透かし部分の解析精度が向上する。
【0015】
第6の発明は、第5の発明に係る情報表示媒体の情報読み取り装置であって、演算装置は、情報表示媒体の画像から情報内容変更部を抜き出し、抜き出された情報内容変更部に基づいて情報内容変更部の情報を解析する解析部をさらに有することを特徴とする。
第6の発明によれば、第5の発明の作用に加えてさらに、演算装置は解析部をさらに有しており、情報表示媒体の画像から情報内容変更部を抜き出し、下地の電子透かし部と切り離されている。よって、画像に電子透かし部分が残ることによるノイズが排除されるので、情報内容変更部分の解析精度が向上する。
【0016】
第7の発明は、アンケートやクイズの応募先のURL及びアンケートやクイズの関連情報が埋め込まれた電子透かし部と、電子透かし部の上に重ねて形成されており、電子透かし部に埋め込まれた所定の情報を変更可能な情報内容変更部とを具備する。
第7の発明によれば、アンケート或いはクイズの主催者側からは一定の質問形式で表された質問等が提供され、これらは情報表示媒体上に表示されている。また応募先のURLのうちの共通部分が電子透かし部に埋め込まれている。そして、アンケートやクイズの応募者が回答する場合には、この電子透かし部の範囲内に重ねて形成された情報内容変更部(回答欄)にて実行される。つまり電子透かし部に埋め込まれたURLの一部が変更されて、応募者は回答に応じた所定のサイトに誘導される。よって、従来の如くの大掛かりな装置を用いることがなく、応募者の意見が調査、或いは回答が集計可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電子透かしの情報内容を容易、且つ、確実に変更可能な情報表示媒体及びこの媒体の情報読み取り装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施例に係る情報表示媒体を用いた商品の斜視図であり、この商品2はその上方から透明な蓋4で覆われており、この蓋4にはラベル(情報表示媒体)10が貼付されている。このラベル10は商品2の製造者側や商店の販売者側にて印刷される。
【0019】
このラベル10は、図2に示されるように、長方形にて形成され、その下地には電子透かし部12が印刷されている。透かし部12には商品2の情報が埋め込まれており、この透かし部12は光学的に読み取り可能であって、一般には人間の眼には不可視のパターンで構成されている。
詳しくは、この透かし部12には離散フーリエ変換の如く周波数領域を利用した電子透かしが用いられている。デジタル画像のコピーとは異なり、印刷された電子透かしの画像データを読み込むとノイズが乗るし、また、この透かしに書き込みがある場合にはこの書き込み自体もノイズとなり、ノイズへの耐性を備えた方式が好ましいからである。なお、電子透かしはノイズへの耐性を考慮した画像マッチング方式であっても良い。なお、当該出願人は特願2002−165628号、特願2003−275398号、特願2004−191407号にて離散フーリエ変換を利用した0度以上180度未満の回転角度検出可能な電子透かしを出願し、さらに特願2006−264734号、特願2006−286236号にて0度以上360度未満の回転角度検出可能な電子透かしを出願しており、本発明でこれらを利用することも当然可能である。
【0020】
そして、本実施例の透かし部12には、所定の情報として商品名、消費期限及び価格の情報が予め埋め込まれており、例えば携帯情報端末のカメラ機能の如くのスキャナ(光学機器)で読み込まれる。この画像は後述するコンピュータ(演算装置)で解析され、商品2の情報内容が抽出される。
また、この透かし部12に埋め込まれた情報は、透かし部12の上にそれぞれ形成された内容表示欄14や価格表示欄16にも印刷されており、商品2の購入者等が理解することができる。
【0021】
なお、本実施例の透かし部12上には、食品品質表示の規定に沿った記載欄20、具体的には、名称、原材料名、内容量、消費期限、保存方法及び製造者等の記載も印刷されている。
ところで、このラベル10には、上述した透かし部12の情報内容を変更させる情報内容変更部も印刷されている。
【0022】
具体的には、本実施例では、マークシート部18が価格表示欄16の下側の位置にて透かし部12の上から印刷されており、このシート部18には白抜きの楕円形からなる3つのマークが印字されている。そして、本実施例のマークは、塗り潰されることにより、上述した透かし部12の情報内容の変更情報を表示する機能を有している。より詳しくは、このマークが、透かし部12に埋め込まれている商品2の商品名、消費期限や価格のうち、例えば商品2の価格を表示する場合には、マークの塗り潰しは当初の価格からの値引き率や値引き額を示すことができる。
【0023】
一例として3つのマークのうち、左側のマークを塗り潰すことは、ラベル10の画像が解析されることにより、価格表示欄16に印字された当初の価格から20%値引きされるとの意義を有することができる。また、中央のマークを塗り潰すことは当初の価格から50%値引きされ、さらに、右側のマークを塗り潰すことは当初の価格から200円値引きされるとの意義を有することが可能である。なお、マークの塗り潰しに替えて、このマーク部分にシールを貼付しても良い。
【0024】
また、本実施例のマークに替えて、レ点によるチェックや数字を記入しても良い。詳しくは、電子透かし部には、上述した商品名、消費期限及び価格の情報の他、商品管理番号(例えば、製造番号、商店が適宜付与する番号等)、管理期限(例えば、当初の期限よりも短くするための上記消費期限の他、賞味期限、返却期限等)、及び製造日の如くの種々の情報も埋め込むことができ、これらの各情報のうち少なくとも1つの情報を要求に応じて変更可能である。
【0025】
そして、この値引き後の価格はレジに送信される。詳しくは、図3に示されるように、本実施例の情報読み取り装置30では、店員側が所持する上記スキャナ32にてラベル10を読み取り、その画像データが店内のサーバ34に向けて送信され、次いで、店内のコンピュータ36に送信されている。
このコンピュータ36は、透かしデータ解析部(解析部)38と、シートデータ解析部(解析部)40とを有しており、解析部38は、ラベル10の画像データから透かし部12を抜き出し可能に構成され、この抜き出された内容に基づいて透かし部12の情報内容を解析している。
【0026】
一方、解析部40は、ラベル10の画像データからシート部18を抜き出し可能に構成されており、この抜き出された内容に基づいてシート部18の情報内容を解析している。
続いて、透かし部12による当初の情報内容や、この当初の内容を変更した場合にはシート部18の情報内容は、コンピュータ36のメモリにいずれも記憶されるとともに、サーバ34を介して店内のレジ42に向けて出力され、商品2の会計時に利用される。
【0027】
図4から図7を参照すると、情報読み取り装置30によるフローチャートが示されている。以下、上記の如く構成されたラベル10や装置30の本発明に係る作用について説明する。
図4のステップS401では、スキャナ32にてラベル10全体、つまり、電子透かし部12、内容表示欄14、価格表示欄16、及びマークシート部18、並びに食品品質表示の規定に沿った記載欄20が読み込まれ、ステップS402では画像データがサーバ34を介してコンピュータ36に転送される。なお、このサーバを用いることなく、画像データはコンピュータに直接に転送可能である。
【0028】
ステップS403では、ラベル10に挿入された検出用パターンを解析する。
すなわち、ラベル10の周縁に枠を設け、その左上の角近傍にのみ斜線を入れたパターン20Aがラベル10に予め構成されていれば(図8(a))、枠の比較によって画像データの大きさ及び0〜90°の傾きが分かる。また、左上の斜線の比較によってデータの上下左右が分かり、回転角度が判明する。
ここで、上述した0度以上180度未満の回転角度検出可能な電子透かしを用いる場合には、図8の如く、人間の眼に可視の検出用パターン20A等を併用して透かし部12およびマークシート部18の拡大縮小率や回転角度を認識しても良い。
【0029】
これに対し、上述した0度以上360度未満の回転角度検出可能な電子透かしのように、元画像と画像データとの対応座標が分かる場合には当該ステップは不要である。透かし部12に透かし部12の座標や角度を認識可能な不可視の検出用パターンが埋め込まれているからである。
【0030】
また、特定の印をパターンとして予め挿入しておいても良い。具体的には、同図(b)の如くのパターン20Bによれば、3つの点の比較によってデータの大きさ、傾きや上下左右が分かる。さらに、同図(c)のイラストのパターン20Cでは、イラストの輪郭部分の半径を求め、2つの眼部分と1つの口部分との位置関係を求めれば良く、さらにまた、同図(d)のパターン20Dによれば、上部分の線の比較によってデータの天地方向と長さが分かる。
【0031】
そして、仮にパターン20Aを用いた場合には、図5に示されるように、ステップS501では、パターン20Aの有無を判別し、このパターン20Aが有ると判定した場合、すなわちYESのときにはステップS502に進む。
このステップS502では、パターン20Aの抜き出しが必要であるか否かを判別し、抜き出しが必要であると判定した場合、すなわちYESのときにはステップS503にて画像データからパターン20Aを抜き出し、ノイズとなり得る内容表示欄14、価格表示欄16、及びマークシート部18、並びに食品品質表示の規定に沿った記載欄20を消去してステップS504に進む。なお、ノイズの影響が少ないときには、ステップS502にてパターン20Aの抜き出しが不要と判定してステップS504に進む。
【0032】
ステップS504では、透かし部12の座標や角度を認識してステップS404に進む。一方、ステップS501にて、例えば上述した不可視の検出用パターンを有している場合には、直ちに図4のステップS404に進む。
次いで、このステップS404では、解析部38にて透かし部12が解析される。
具体的には、図6に示されるように、ステップS601では、解析の前処理として透かし部12の抜き出しが必要であるか否かを判別し、抜き出しが必要であると判定した場合、すなわちYESのときにはステップS602にて画像データから透かし部12を抜き出し、ノイズとなり得る記載を消去してステップS603に進む。
【0033】
一方、ステップS601にて透かし部12の抜き出しが不要である場合には、直ちにステップS603に進む。
このステップS603からは、透かし部12の解析になる。まず、離散フーリエ変換を用いて透かし部12を検出する。また、これにより、0〜180°の角度が判明するので、仮に検出用パターン20Aを有している場合には、このパターン20Aによる検出結果を合わせれば元画像と画像データとの対応座標が分かり、透かし部12の拡大縮小率や回転角度が認識可能となる。
【0034】
続いて、ステップS604にて透かし部12に埋め込まれた情報内容を取得してステップS605に進む。
ところで、このステップS605では、透かし部12の座標や角度の認識が必要であるか否かを判別する。そして、例えば、上述した不可視の検出用パターンを有している場合には、YESと判定してステップS606に進み、透かし部12の座標や角度を認識してステップS607に進む。そして、透かし画像やフォーマット等を特定して図4のステップS405に進む。
【0035】
これに対し、ステップS605にて、仮に検出用パターン20Aを有しており、上記ステップS603までに透かし部12の座標や角度が既に認識されている場合には、直ちにステップS607に進み、透かし画像やフォーマット等を特定して図4のステップS405に進む。
なお、検出用パターン20Aを有している場合であっても、ステップS605からステップS606に進み、透かし部12の座標や角度を再度認識しても良く(ダブルチェック)、この場合には透かし部12の解析精度がさらに向上する。なお、上述した不可視の検出用パターンや可視の検出用パターン20A等を挿入せず、透かし自体のパターンでその座標や角度が認識できる場合もあるが、この場合にもステップS605からステップS606に進む。
【0036】
図4のステップS405では、解析部40にてマークシート部18が解析される。詳しくは、まず、これまでに判明している拡大縮小・回転角度情報が用いられ、シート部18の拡大縮小率や回転角度が認識されている。
そして、図7に示されるように、ステップS701では、シート部18の抜き出しが必要であるか否かを判別し、抜き出しが必要であると判定した場合、すなわちYESのときにはステップS702にて画像データからシート部18を抜き出してステップS703に進み、シート部18の内容を解析して図4のステップS406に進む。なお、ステップS701にて抜き出しが不要である場合には、直ちにステップS703に進む。そして、シート部18のうち塗り潰されたマークがある場合には、当該マークの位置を認識する。
【0037】
次いで、ステップS406では、上述の各解析の結果をコンピュータ36のメモリに保存し、ステップS407では、サーバ34を介してレジ42に送信して一連のルーチンを抜ける。
本実施例の場合では、シート部18のいずれのマークも塗り潰されていないときには、会計時の商品2は透かし部12の情報内容に基づいて当初の価格が表示される。これに対し、シート部18のマークが塗り潰されていたときには、会計時の商品2は、シート部18の情報内容に基づき、マークの塗り潰し位置に応じた変更後の価格が表示される。
【0038】
以上のように、本発明は、既に印刷された電子透かしの情報内容を後からユーザが容易・確実に変更できる点に着目したものである。
【0039】
そして、本実施例によれば、透かし部12の上にはマークシート部18が重ねて印刷され、これら透かし部12の情報とシート部18の情報とは、同じ意義の情報内容で構成されている。つまり、透かし部12に埋め込まれた商品名、消費期限及び価格の各情報は、この透かし部12の情報のみで機能するし、また、シート部18に記載された情報も当該情報のみで機能し、変更の前後において同一目的の情報源として機能する。
【0040】
ここで、仮に消費期限を考慮して商品の当初の価格を他の価格に変更する場合には、この透かし部12の範囲内に重ねて形成されたシート部18のマークの塗り潰しで行われる。よって、従来に比して大掛かりな装置を用いることなく、透かし部12の情報内容が容易、且つ、速やかに変更できる。しかも、マークシート部18が透かし部12の範囲内に形成されているので、情報内容の変更を忘れ難くなり、確実に変更できる。この結果、ユーザフレンドリな情報表示媒体が構成され、広範囲の利用が可能な情報表示媒体を得ることができる。
【0041】
ところで、一般にマークシートは、紙に書き込まれた情報をコンピュータに取り込む場合に用いられている。このコンピュータへの取り込みには、シートの種類、連番等を識別するコード、位置や順番の如く、紙のフォーマット情報を利用している。なぜならば、マーク単体は特定の文字や数値を表現するだけにすぎず、コードや位置等の情報と組み合わせることにより、有用な情報となるからである。なお、コードを有しないマークシートもあるが、これは人間がマークシートの種類を確認する、或いは、シートが1つのパターンのみで構成され、用途が非常に限定されており、当該フォーマット情報を利用する対象からは除いて説明する。
【0042】
また、帳票等に記入された文字をコンピュータに取り込む場合も、マークシートの場合と同様に考えることができる。帳票は記入欄によって文字を区別しており、仮に、住所と氏名とを互いに違う欄に書き込むと、意図しない動作になる。帳票の解析にも、欄というフォーマット情報を利用しているからである。
このように、これらマークシートや帳票は、専用フォーマットの紙、光学式読み取り装置、専用のソフトウェアを予め準備しておき、一括して処理する必要がある。さらに、コンピュータが紙に書き込まれた情報を読み込むときには、画像データ、コード、位置のうち、画像データ及びコードが最低限必要となる。特に、コードは書き込みの種類やフォーマットの特定に用いられる。よって、この読み込みの場合には、画像データとコードとを同時に読み込む、或いは、1回の撮影で収まらない場合には、画像データとコードとを別に撮影しなければならない。これでは余計な手間となるし、読み込みのミスも懸念される。
【0043】
これに対し、本実施例では、携帯情報端末のカメラ機能等の如くの汎用的な光学機器を使用しており、この機器の使用者本人が容易に処理可能である。また、上述したマークシートや帳票の他、葉書や雑誌の一部のような種々の印刷物からの情報の取得も可能であり、上述した余計な手間がないし、ミスも少なくて済むのである。
【0044】
さらに、透かし部12やシート部18は、スキャナ32にて読み取られ、コンピュータ36にて解析される。ここで、ラベル10が、透かし部12の拡大縮小率や回転角度をコンピュータ36に認識させる不可視の検出用パターン、或いは可視の検出用パターン20A等を有していれば、透かし部12の解析精度の向上に寄与する。また、各検出用パターンの検出結果を用いれば、シート部18の解析速度の向上にも寄与する。
【0045】
さらにまた、コンピュータ36は解析部38を有し、ラベル10の画像から透かし部12を抜き出しており、この透かし部12の上に重ねて形成されたシート部18と切り離されている。よって、画像にシート部18のマーク部分や他の印字部分が残ることによるノイズが排除され、電子透かしの解析精度が向上する。
また、コンピュータ36は解析部40も有しており、ラベル10の画像からシート部18を抜き出し、下地の透かし部12と切り離されている。よって、画像に電子透かし部分が残ることによるノイズが排除されるので、内容変更部分の解析精度が向上する。
【0046】
このように、POSシステムの場合には、従来のバーコードを用いると、商品の一部分のデータを変えるためには新たなコードを割り振る必要があり、これでは、別のコードの発行、貼り替えの手間が生ずるし、システムの設計によってはデータベースに新規データを登録する必要も生ずる。さらに、会計時には手入力の手間が生ずるし、手入力に依存すると、入力ミスや入力忘れの可能性も生ずるのである。
【0047】
これに対し、本実施例では電子透かしが印刷されているので、特別な場合(タイムセールや展示品など)については、ラベル等に上述したマークの塗り潰し、或いは特定の文字の記入や、特定のシールの貼付を行うとの決まりごとを設けておけば、この決まりごとに沿った記入や貼付等のみで変更が可能になり、低コストの作業のみで済み、上記発行、貼り替えや手入力が全く不要になるのである。また、仮に、当該決まりごとも電子透かしに予め埋め込まれていれば、変更内容の解析速度がより一層向上するし、その解析精度の向上にも寄与する。
【0048】
本発明は、上記実施の形態に限定されず、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことができる。
例えば、本発明は、上記POSシステムの他、変更前の内容であっても変更後の内容と同様の意義を有している限り、雑誌のアンケートにも適用可能である。
【0049】
詳しくは、この場合には、従来ではアンケート葉書を送るか、雑誌のWEBサイトにアクセスし、ブラウザ上でアンケートの答えを記入している。ここで、葉書の場合には、購読者が記入してポストに投函し、発行者がアンケート結果を集計する等の手間がかかる。さらに、郵送費用も発生する。一方、ブラウザ上で記入すれば、集計する手間は省かれる。集計は計算機で行われるからである。しかし、この場合の購読者には、パーソナルコンピュータでURLの入力や、検索サイトへのキーワード入力との手間が生じ、また、携帯情報端末ではさらにQRコード等のコードを付属のカメラで撮影するとの手間が生ずるし、住所や氏名等の文字を入力するためのキー操作が必要になるとの手間も生ずる他、イラスト等の入力も困難である。
【0050】
これに対し、本発明の表示媒体や読み取り装置によれば、アンケート回答欄のマークの塗り潰し等を行い、1度撮影すれば、マークの下地にURLを埋め込んだ電子透かしの解析によって、WEBサイトへのアクセス等の総ての作業が終わり、上記投函、URLやキーワード等の入力が一切不要になるとの効果を奏する。
【0051】
さらに、雑誌のクイズへの適用も可能である。例えば、このクイズの主催者側からは、質問、その応募先のURLや回答欄が提供され、電子透かしにその応募先のURLの共通部分が埋め込まれている。また、クイズの主催者側からは、正解の場合に接続されるURL(正解時URL)と、不正解の場合に接続されるURL(不正解時URL)とがそれぞれ用意されている。
そして、クイズの応募者が当初空欄の回答欄に応募者の回答内容を反映させる場合には、この透かしの範囲内に重ねて形成された回答欄の記入やマークの塗り潰し等を行う。回答欄の記入やマークの塗りつぶしの箇所や内容によって、透かしに埋め込まれていたURLが変更されて、所定の接続先(正解時URLか不正解時URL)に誘導される。よって、この場合にも1度撮影すれば、透かしの解析によってWEBサイトへのアクセス等の総ての作業が終わり、応募者側の入力作業が省略できる。
【0052】
しかも、クイズに正解した場合には正解時URLが抽出され、この正解側のサイトにアクセスされる一方、不正解の場合には不正解側のサイトにアクセスされるので、主催者側の集計作業も省略できるとの効果を奏する。
また、本発明の表示媒体や読み取り装置は、商品の告知、販促キャンペーン、通信販売、催事イベントや、音楽を視聴等のサンプリング等にも当然に適用可能である。さらに、上述した携帯情報端末は携帯電話機に限定されるものではなく、通信機能を有した携帯型コンピュータ、ノート型のパーソナルコンピュータ等であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施例に係る情報表示媒体を用いた商品の斜視図である。
【図2】図1の表示媒体の説明図である。
【図3】図1の表示媒体を用いた情報内容の変更に関するブロック図である。
【図4】図1の表示媒体を用いた情報内容の変更のフローチャートである。
【図5】図3の透かしデータ解析部によるフローチャートである。
【図6】図3の透かしデータ解析部によるフローチャートである。
【図7】図3のマークデータ解析部によるフローチャートである。
【図8】他の実施例に係る透かしデータ解析部の説明図である。
【符号の説明】
【0054】
10 ラベル(情報表示媒体)
12 電子透かし部
18 マークシート部(情報内容変更部)
20A,20B,20C,20D 検出用パターン
32 イメージスキャナ(光学機器)
36 コンピュータ(演算装置)
30 情報読み取り装置
38 透かしデータ解析部(解析部)
40 シートデータ解析部(解析部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の情報が埋め込まれた電子透かし部と、
該電子透かし部の上に重ねて形成されており、該電子透かし部に埋め込まれた所定の情報を変更可能な情報内容変更部と
を具備することを特徴とする情報表示媒体。
【請求項2】
商品名、商品管理番号、管理期限、製造日及び価格の各情報のうち少なくとも1つの情報が埋め込まれた電子透かし部と、
該電子透かし部の上に重ねて形成されており、前記情報を変更可能な情報内容変更部と
を具備することを特徴とする情報表示媒体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報表示媒体であって、
該情報表示媒体には、光学機器に読み取られる前記電子透かし部の拡大縮小率や回転角度を演算装置に認識させる検出用パターンが挿入されていることを特徴とする情報表示媒体。
【請求項4】
請求項3に記載の情報表示媒体であって、
前記情報内容変更部の拡大縮小率や回転角度は、前記検出用パターンによる検出結果に基づいて前記演算装置に認識されることを特徴とする情報表示媒体。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の前記電子透かし部の情報を解析するとともに、前記情報内容変更部の情報を解析する演算装置を備え、
該演算装置は、前記情報表示媒体の画像から前記電子透かし部を抜き出し、該抜き出された電子透かし部に基づいて前記電子透かし部の情報を解析する解析部を有することを特徴とする情報読み取り装置。
【請求項6】
請求項5に記載の情報読み取り装置であって、
前記演算装置は、前記情報表示媒体の画像から前記情報内容変更部を抜き出し、該抜き出された情報内容変更部に基づいて前記情報内容変更部の情報を解析する解析部をさらに有することを特徴とする情報読み取り装置。
【請求項7】
アンケートやクイズの応募先のURL(Uniform Resource Locator)及び該アンケートや該クイズの関連情報が埋め込まれた電子透かし部と、
該電子透かし部の上に重ねて形成されており、該電子透かし部に埋め込まれた所定の情報を変更可能な情報内容変更部と
を具備することを特徴とする情報表示媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−252482(P2008−252482A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−90714(P2007−90714)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000162113)共同印刷株式会社 (488)
【Fターム(参考)】