説明

情報記録再生装置、制御装置および情報記録再生方法

【課題】トラックピッチの変動を原因とした読出しエラーを防止するとともに、あるトラックに書き込まれるべきデータが隣接するトラックに上書きされてしまう危険性を低減することを課題とする。
【解決手段】位置決め制御部152は、ディスク120からデータを読み取る際に、ディスク120のトラックピッチ変動を原因として、いわゆるコアずれ補正量に生じる補正誤差を加味し、ヘッドの位置決めを制御する。位置決め制御部152は、トラックピッチ変動を加味しない場合のコアずれ補正量dに、補正誤差Δdを足し合わせた値d=「d+Δd」を求めることで、トラックピッチ変動を加味した時のコアずれ補正量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報記録再生装置、制御装置および情報記録再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、データを記録媒体に記録する情報記録再生装置が存在する。この情報記録再生装置の一つである磁気ディスク装置(例えば、図9参照)のヘッドには、物理的に離れた位置にリード素子とライト素子とが設置されている(例えば、図10参照)。そして、ディスクからのデータ読み取りの際に、ヘッドに備えられたリード素子とライト素子との間の相対的な距離、いわゆる「コアずれ」を加味する技術が提案されている。例えば、特許文献1では、データ読み取りの際に、ヘッドと、トラック方向(半径方向)とがなす相対角度(いわゆる「yaw角」、図11に示す「θ」参照)を用いて、「コアずれ」分に相当するコアずれ補正量を算出し、算出したコアずれ分をオフセットした位置にリード素子を位置決めする技術が提案されている。なお、図9は、磁気ディスク装置の内部構造を示す図である。図10は、ライト素子とリード素子との位置関係を示す図である。図11は、ヘッドとトラック方向(半径方向)とがなす角度を示す図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−134905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1に提案の技術は、読出しエラーが発生したり、書き込み対象トラックとは異なるトラックへの誤ったデータの上書きが発生したりする場合が考えられるという問題点があった。
【0005】
すなわち、ディスクにサーボパターンを描画するときの描画装置の位置決め精度の問題で、例えば、図12に示すように、トラックピッチの広い箇所とトラックピッチの狭い箇所が混在した周期的なトラックピッチの変動が発生する場合が多い。この場合、サーボパターンの縮尺が場所により異なることになり、この縮尺に応じてヘッドをオフセットさせると、実際のコアずれ補正量が場所により変化してしまう。このため、書き込み時と読み出し時のヘッドの停止位置にずれが生じてしまい、読み出しエラーの発生が考えられる。なお、図12は、トラックピッチ変動を示す図である。
【0006】
また、トラックピッチの変動を原因として、トラックピッチが特に狭い箇所では、書き込み時に、例えば、あるトラックに書き込まれるべきデータが隣接するトラックに上書きされてしまう危険性がある。
【0007】
そこで、開示の装置は、上述した従来技術の課題を解決するためになされたものであり、トラックピッチの変動を原因とした読出しエラーを防止するとともに、あるトラックに書き込まれるべきデータが隣接するトラックに上書きされてしまう危険性を低減することが可能な情報記録再生装置、制御装置および情報記録再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、開示の装置は、記録媒体へのデータ書込み時にライト素子が記録媒体上に復調される実際の位置と、ライト素子によって記録媒体に記録されたデータの読み取り時にリード素子が記録媒体上に復調される実際の位置との位置的な誤差を加味して、記録媒体からのデータ読み取り時におけるリード素子の位置決めを行う位置決め制御部を有する。
【発明の効果】
【0009】
開示の装置によれば、トラックピッチの変動を原因とした読出しエラーを防止できるとともに、あるトラックに書き込まれるべきデータが隣接するトラックに上書きされてしまう危険性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例1に係る磁気ディスク装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、コマンドに応じたライトヘッドおよびリードヘッドの復調位置と絶対位置を表す図である。
【図3】図3は、実施例1に係る磁気ディスク装置を説明するための図である。
【図4】図4は、実施例1に係る磁気ディスク装置を説明するための図である。
【図5】図5は、実施例1に係る磁気ディスク装置を説明するための図である。
【図6】図6は、実施例1に係る磁気ディスク装置による処理の流れを説明するための図である。
【図7】図7は、実施例2に係る磁気ディスク装置を説明するための図である。
【図8】図8は、実施例2に係る磁気ディスク装置を説明するための図である。
【図9】図9は、磁気ディスク装置の内部構造を示す図である。
【図10】図10は、ライト素子とリード素子との位置関係を示す図である。
【図11】図11は、ヘッドとトラック方向(半径方向)とがなす角度を示す図である。
【図12】図12は、トラックピッチ変動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、情報記録再生装置、制御装置および情報記録再生方法の一実施形態を詳細に説明する。なお、情報記録再生装置として磁気ディスク装置を例に挙げる。
【実施例1】
【0012】
実施例1に係る磁気ディスク装置は、ディスクからのデータ読み取りの際に、ヘッドに備えられたリード素子とライト素子との間の相対的な距離、いわゆる「コアずれ」分を補正した位置にヘッドをオフセットすることを概要とする。そして、実施例1に係る磁気ディスク装置の骨子は、「コアずれ」分をオフセットする場合に、トラックピッチの変動を原因とする補正誤差を加味して、ディスクからのデータ読み取り時におけるリード素子の位置決めを行う点にある。以下、実施例1に係る磁気ディスク装置について具体的に説明する。
【0013】
[磁気ディスク装置の構成(実施例1)]
図1は、実施例1に係る磁気ディスク装置の構成を示す図である。同図に示すように、実施例1に係る磁気ディスク装置100は、インタフェース110と、ディスク120と、ヘッド130と、リードチャネル140と、制御部150と、位置決め制御データ記憶部160と、モータドライバ170と、スピンドルモータ180と、ボイスコイルモータ190を有する。
【0014】
インタフェース110は、所定のプロトコルを利用して、磁気ディスク装置100に接続されたホストコンピュータ200とデータ通信を実行する。
【0015】
ディスク120は、樹脂製の薄い円盤に磁性体を塗った記録媒体である。このディスク120にデータの記録を行う場合には、ディスク120のデータ記録領域に、ヘッド130から磁界を照射して、ディスク120の磁性体の磁化状態を変化させることにより、データを書き込む。また、ディスク120からデータの読み取りを行う場合には、読み取り対象となるディスク120上の記録領域にヘッド130を移動させ、ディスク120の磁性体の磁化状態を読み取り、データを読み取る。
【0016】
ヘッド130は、制御部150による制御の元で、ディスク120に対するデータの読み取りおよび書込みを行う。また、このヘッド130は、ディスク120からトラック位置などを制御するためのサーボ信号を読み出し、このサーボ信号をディスク120から読み取った再生データと共にリードチャネル140に送出する。
【0017】
リードチャネル140は、ヘッド130から再生データおよびサーボ信号を取得し、取得した再生データおよびサーボ信号を制御部150に送出する。
【0018】
位置決め制御データ記憶部160は、後述する制御部150により用いられる各種パラメータ(例えば、サーボパターンの変動周期N、およびサーボパターンの変動振幅A)を記憶する。
【0019】
モータドライバ170は、制御部150から受け付ける制御信号に基づいて、スピンドルモータ180およびボイスコイルモータ190を動作させるための制御電圧を算出して、算出した制御電圧で制御する。スピンドルモータ180は、モータドライバ170からの制御電圧に応じてディスク120を回転させる。ボイスコイルモータ190は、モータドライバ170からの制御電圧に応じてアームに設置されたヘッド130を移動させる。
【0020】
制御部150は、ホストコンピュータ200から、インタフェース110を介して、データの書き込み要求または読み取り要求を取得した場合に、モータドライバ170を制御して、ディスク120に対するデータの書込みまたは読み取りを実行する。制御部150は、リードライト処理部151および位置決め制御部152を有する。なお、位置決め制御部152は、特許請求の範囲に記載の「位置決め制御部」ともいう。
【0021】
リードライト処理部151は、ホストコンピュータ200からのコマンドの種別の情報等を位置決め制御部152に送出する。具体的には、リードライト処理部151は、ホストコンピュータ200からのコマンドの種別が、リード(読み取り)あるいはライト(書き込み)のいずれかであるかを判定する。判定の結果、コマンド種別がリードであった場合には、読み取り対象となるデータが記録されたディスク120上の記録領域のアドレスを特定し、特定したアドレス情報およびコマンド種別の情報(「リード」)を位置決め制御部152に送出する。
【0022】
また、リードライト処理部151は、コマンド種別の判定の結果、コマンド種別がライトであった場合には、データを書き込むディスク120上のアドレスを特定し、特定したアドレスの情報およびコマンド種別の情報(「ライト」)を位置決め制御部152に送出する。
【0023】
位置決め制御部152は、ディスク120からデータを読み取る際に、ディスク120のトラックピッチ変動を原因として、いわゆるコアずれ補正量に生じる補正誤差を加味し、ヘッドの位置決めを制御する。なお、コアずれ補正量は、特許請求の範囲に記載の「位置決め補正量」ともいう。
【0024】
具体的には、トラックピッチ変動がある場合において、ヘッド130を復調すべき位置である復調位置Xと、ヘッド130が実際に復調される絶対位置Xとの関係は、以下の定義式(4)により定義される。なお、トラックピッチ(サーボパターン)の変動周期N、およびトラックピッチ(サーボパターン)の変動振幅Aについては、予め測定して位置決め制御データ記憶部160に格納してあるものとする。
【数4】

【0025】
また、ライト時およびリード時のそれぞれについて、トラックピッチ変動を考えずに、コアずれ分に相当するコアずれ補正量dを加味した時のリードヘッド(リード素子)の復調位置、リードヘッド(リード素子)の絶対位置およびライトヘッド(ライト素子)の絶対位置の値は、上記定義式(4)により、図2に示すように定義される。図2は、コマンドに応じたライトヘッドおよびリードヘッドの復調位置と絶対位置を表す図である。
【0026】
まず、位置決め制御部152は、リードライト処理部151から受け付けたコマンド種別の情報に基づいてコマンド種別を判定する。判定の結果、コマンド種別が「リード」であった場合には、トラックピッチ(サーボパターン)の変動周期、およびトラックピッチ(サーボパターン)の変動振幅を位置決め制御データ記憶部160から読込む。そして、リードライト処理部151から受け付けた読み取り対象となるデータのアドレスに基づいて、リード時のリードヘッドの絶対位置を算出する。例えば、位置決め制御データ記憶部160から読込んだ変動周期がN、変動振幅がAであった場合には、位置決め制御部152により算出されるリードヘッドの絶対位置の値は、図2の(2)に示すように、f(X+d)で表すことができる。
【0027】
さらに、位置決め制御部152は、読み取り対象となるデータがディスク120に書き込まれたライト時のライトヘッドの絶対位置を算出する。位置決め制御部152により算出されるライトヘッドの絶対位置は、図2の(1)に示すように、f(X)+dで表すことができる。
【0028】
リードヘッドの絶対位置およびライトヘッドの絶対位置を算出後、位置決め制御部152は、トラックピッチ変動を加味した場合に生じるコアずれ補正量dの補正誤差Δdを算出する。具体的には、位置決め制御部152は、下記の数式(5)に示すように、リードヘッドの絶対位置f(X+d)と、ライトヘッドの絶対位置f(X)+dとの差を求めることにより、補正誤差Δdを算出する。
【数5】

【0029】
そして、位置決め制御部152は、下記の数式(1)に示すように、トラックピッチ変動を加味しない場合のコアずれ補正量dに、補正誤差Δdを足し合わせた値d=「d+Δd」を求めることで、トラックピッチ変動を加味した時のコアずれ補正量を算出する。なお、算出されたコアずれ補正量d=「d+Δd」は、例えば、トラックピッチ(サーボパターン)の変動周期がN、トラックピッチ(サーボパターン)の変動振幅Aである場合の補正量を表す。
【数1】

【0030】
そして、位置決め制御部152は、読み取り対象となるデータがディスク120に書き込まれた時のリードヘッドの復調位置から、「d+Δd」だけオフセットされた位置にリードヘッドを位置決めするための制御信号をモータドライバ170へ送出する。
【0031】
上述してきた位置決め制御部152が実行する動作内容について、図を参照しつつ、以下に概念的に整理して説明する。図3に示すように、リードヘッド(リード素子)とライトヘッド(ライト素子)との間には、トラック方向(ディスク120の半径方向)に相対的な距離(「コアずれ」)を有する。そして、リードヘッドの中心がトラック1の中心に合うような復調位置Xを設定した状態で、ライトヘッドでディスク120にデータを書き込んだケースを考える。
【0032】
上記のケースで、ライトヘッドにより書き込まれたデータをリードヘッドで読み取る場合には、通常、復調位置Xから、コアずれ分に相当するコアずれ補正量だけオフセットした位置にリードヘッドを位置決めする。しかしながら、このコアずれ補正量には、図4に示すように、トラックピッチ変動により生ずる補正誤差Δdが加味されていない。したがって、リードヘッドをオフセットした時に、リードヘッドの中心と、読み取り対象のデータの中心とを合わせることができず、読み取りエラー等が発生し得る。
【0033】
そこで、位置決め制御部152は、コアずれ補正量dに、補正誤差Δdを加味した値d=「d+Δd」を、トラックピッチ変動を加味した時のコアずれ補正量として決定し、リードヘッドの位置決めを行う。このようにすることで、図5に示すように、ディスク120にトラックピッチ変動がある場合であっても、リードヘッドを復調位置からdだけオフセットすることで、リードヘッドの中心と、読み取り対象のデータの中心とを合わせることができる。なお、図3〜図5は、実施例1に係る磁気ディスク装置を説明するための図である。
【0034】
なお、位置決め制御部152は、リードライト処理部151から受け付けたコマンド種別の情報に基づいてコマンド種別を判定する。判定の結果、コマンド種別が「ライト」であった場合には、特に、上述してきたようなトラックピッチ変動を加味した処理を実行することなく、データの書き込み先となるディスク120上のアドレスの情報に基づいて、ライトヘッドを位置決めするための制御信号をモータドライバ170に送出する。
【0035】
[磁気ディスク装置による処理(実施例1)]
図6は、実施例1に係る磁気ディスク装置による処理の流れを説明するための図である。同図に示すように、位置決め制御部152は、リードライト処理部151から受け付けたコマンド種別の情報に基づいてコマンド種別を判定する(ステップS1)。
【0036】
そして、位置決め制御部152は、コマンド種別が「リード」であった場合には、トラックピッチ変動を加味したコアずれ補正量を算出する(ステップS2)。具体的には、まず、リードライト処理部151から受け付けた読み取り対象となるデータのアドレスに基づいて、リードヘッドの絶対位置を算出する。さらに、位置決め制御部152は、読み取り対象となるデータがディスク120に書き込まれた時のライトヘッドの絶対位置を算出する。リードヘッドの絶対位置およびライトヘッドの絶対位置を算出後、位置決め制御部152は、トラックピッチ変動を加味した場合に生じるコアずれ補正量dの補正誤差Δdを算出する。そして、トラックピッチ変動を加味しない場合のコアずれ補正量dに、補正誤差Δdを足し合わせて、トラックピッチ変動を加味した時のコアずれ補正量「d+Δd」を算出する。
【0037】
コアずれ補正量の算出後、位置決め制御部152は、読み取り対象となるデータがディスク120に書き込まれた時のライトヘッドの絶対位置から、コアずれ補正量「d+Δd」だけオフセットされた位置にリードヘッドを位置決めするための制御信号をモータドライバ170へ送出する(ステップS3)。
【0038】
[実施例1による効果]
上述してきたように、実施例1によれば、コアずれ補正量dに、補正誤差Δdを加味した値「d+Δd」を、トラックピッチ変動を加味した時のコアずれ補正量として決定し、リードヘッドの位置決めを行う。このようなことから、トラックピッチの変動を原因とした読出しエラーを防止でき、磁気ディスク装置100の読出し性能を向上させることができる。
【0039】
また、上記の実施例1では、トラックピッチ(サーボパターン)の変動周期がN、トラックピッチ(サーボパターン)の変動振幅Aである場合のコアずれ補正量dを算出する場合を説明した。しかしながら、これに限定されるものではなく、下記の数式(6)に示すように、例えば、複数の異なるトラックピッチの変動周期Nおよび変動振幅A(i=1〜n、単位トラック)に対する補正を合算した値を、コアずれ補正量として採用してもよい。
【数6】

【実施例2】
【0040】
上記の実施例1では、トラックピッチ変動を加味して、データ読み取り時のコアずれ補正量の補正誤差を算出して、リードヘッドの位置決めを行う場合を説明した。以下の実施例2では、トラックピッチ変動を加味した位置に、ライトヘッドを位置決めしてデータを書き込むとともに、このようにして書き込まれたデータをリードヘッドで読み取る場合について説明する。
【0041】
[磁気ディスク装置の構成(実施例2)]
実施例2に係る磁気ディスク装置は、図1に示す磁気ディスク装置100と基本的には同様の構成であるが、以下に説明する点が異なる。
【0042】
[トラックピッチ変動を加味したデータ書込み]
すなわち、位置決め制御部152は、リードライト処理部151から受け付けたコマンド種別の情報に基づいてコマンド種別を判定する。判定の結果、コマンド種別が「ライト」であった場合には、トラックピッチ(サーボパターン)の変動周期、およびトラックピッチ(サーボパターン)の変動振幅を位置決め制御データ記憶部160から読込む。
【0043】
そして、位置決め制御部152は、リードライト処理部151から受け付けたデータの書き込み先となるディスク120上のアドレスの情報に基づいて、ライト時のリードヘッドの復調位置を求める。例えば、位置決め制御データ記憶部160から読込んだ変動周期がN、変動振幅がAであった場合には、リードヘッドの復調位置Xとなる。さらに、位置決め制御部152は、ライト時のリードヘッドの絶対位置f(X)を求める。
【0044】
リードヘッドの復調位置Xおよび絶対位置f(X)の算出後、位置決め制御部152は、トラックピッチ変動を加味したデータ書き込み時のコアずれ補正量dを算出する。具体的には、下記の数式(2)に示すように、リードヘッドの復調位置Xと絶対位置f(X)との差を求めることにより、データ書き込み時のコアずれ補正量dを算出する。なお、算出されたコアずれ補正量dは、例えば、トラックピッチ(サーボパターン)の変動周期がN、トラックピッチ(サーボパターン)の変動振幅Aである場合の補正量を表す。
【数2】

【0045】
そして、位置決め制御部152は、データ書き込み時のリードヘッドの復調位置から、コアずれ補正量dだけリードヘッドをオフセットした位置で、ライトヘッドを位置決めするための制御信号をモータドライバ170へ送出する。
【0046】
[トラックピッチ変動を加味して書き込んだデータの読み取り]
上記のように、トラックピッチ変動を加味して書き込んだデータを読み取る場合には、以下のようにデータ読み取り時のコアずれ補正量を算出する。具体的には、下記の数式(3)に示すように、上記の実施例1で算出したコアずれ補正量dから、上記で算出したdを差し引くことにより、トラックピッチ変動を加味して書き込んだデータの読み取り時におけるコアずれ補正量d’を算出する。
【数3】

【0047】
そして、位置決め制御部152は、読み取り対象となるデータがディスク120に書き込まれた時のリードヘッドの復調位置から、d’だけオフセットされた位置にリードヘッドを位置決めするための制御信号をモータドライバ170へ送出する。
【0048】
上述してきた位置決め制御部152が実行する動作内容について、図を参照しつつ、以下に概念的に整理して説明する。図7に示すように、リードヘッドの中心がトラック1の中心に合うような復調位置Xから、コアずれ補正量dだけリードヘッドをオフセットした位置で、ライトヘッドを位置決めしてデータの書込みを行う。このようにすることで、トラックピッチ変動がある場合であっても、書き込むデータのピッチを均一にすることができるとともに、例えば、トラック1に書き込まれるべきデータが隣接するトラック2に上書きされてしまう危険性を低減できる。
【0049】
そして、図8に示すように、トラックピッチ変動を加味して書き込んだデータを読み取る場合であっても、リードヘッドを復調位置からd’だけオフセットすることで、リードヘッドの中心と、読み取り対象のデータの中心とを合わせることができる。なお、図7および図8は、実施例2に係る磁気ディスク装置を説明するための図である。
【0050】
[実施例2による効果]
上述してきたように、実施例2によれば、トラックピッチ変動がある場合であっても、書き込むデータのピッチを均一にすることができるとともに、例えば、トラック1に書き込まれるべきデータが隣接するトラック2に上書きされてしまう危険性を低減されることも防止することができる。
【0051】
また、上記の実施例1では、トラックピッチ(サーボパターン)の変動周期がN、トラックピッチ(サーボパターン)の変動振幅Aである場合のコアずれ補正量dを算出する場合を説明した。しかしながら、これに限定されるものではなく、下記の数式(7)に示すように、例えば、複数の異なるトラックピッチの変動周期Nおよび変動振幅A(i=1〜n、単位トラック)に対する補正を合算した値を、トラックピッチ変動を加味したデータ書込み時のコアずれ補正量dとして採用してもよい。
【数7】

【0052】
同様に、下記の数式(8)に示すように、複数の異なるトラックピッチの変動周期Nおよび変動振幅A(i=1〜n、単位トラック)に対する補正を合算した値を、トラックピッチ変動を加味して書き込んだデータ読み取り時のコアずれ補正量d’として採用してもよい。
【数8】

【実施例3】
【0053】
以下、情報記録再生装置、制御装置および情報記録再生方法の他の実施形態について説明する。
【0054】
(1)装置構成等
図1に示した磁気ディスク装置100の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、磁気ディスク装置100の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、例えば、リードライト処理部151と位置決め制御部152とを統合する。このように、磁気ディスク装置100の全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。さらに、磁気ディスク装置100にて行なわれる各処理機能(図6等参照)は、その全部または任意の一部が、MPUやMCUにて解析実行されるファームウェアなどのプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0055】
(2)情報記録再生方法
上記の実施例で説明した磁気ディスク装置により、以下のような情報記録再生方法が実現される。
【0056】
すなわち、ディスク120へのデータ書込み時にライト素子が記録媒体上に復調された絶対位置と、ライト素子によって記録媒体に記録されたデータの読み取り時にリード素子が記録媒体上に復調された絶対位置との位置的な誤差Δdを加味して、ディスク120からのデータ読み取り時におけるリード素子の位置決めを行う位置決め制御ステップを含んだ情報記録再生方法が実現される。
【0057】
以上の実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0058】
(付記1)記録媒体へのデータ書込み時にライト素子が記録媒体上に復調される実際の位置と、ライト素子によって記録媒体に記録されたデータの読み取り時にリード素子が記録媒体上に復調される実際の位置との位置的な誤差を加味して、記録媒体からのデータ読み取り時におけるリード素子の位置決めを行う位置決め制御部を有することを特徴とする情報記録再生装置。
【0059】
(付記2)前記位置決め制御部は、記録媒体上に設けられたトラックピッチが、周期Nトラックおよび振幅Aで変動している場合に、ライト素子が復調された実際の位置とリード素子が復調された実際の位置との位置的な誤差を加味して、復調位置Xでライト素子により書き込みが行われたデータ読み取り時のリード素子の位置決め補正量dを下記の式(1)を用いて算出することを特徴とする付記1に記載の情報記録再生装置。
【数1】

【0060】
(付記3)記録媒体へのデータ書込み時にライト素子が記録媒体上に復調される実際の位置と、ライト素子によって記録媒体に記録されたデータの読み取り時にリード素子が記録媒体上に復調される実際の位置との位置的な誤差を加味して、記録媒体へのデータ書き込み時におけるライト素子の位置決めを行う位置決め制御部を有することを特徴とする情報記録再生装置。
【0061】
(付記4)前記位置決め制御部は、記録媒体上に設けられたトラックピッチが、周期Nトラックおよび振幅Aで変動している場合に、ライト素子が復調される実際の位置とリード素子が復調される実際の位置との位置的な誤差を加味して、復調位置Xにおけるデータの書き込み時のライト素子を位置決めする場合の位置決め補正量dを下記の式(2)を用いて算出することを特徴とする付記3に記載の情報記録再生装置。
【数2】

【0062】
(付記5)前記位置決め制御部は、記録媒体へのデータ書込み時にライト素子が記録媒体上に復調される実際の位置と、ライト素子によって記録媒体に記録されたデータの読み取り時にリード素子が記録媒体上に復調される実際の位置との位置的な誤差を加味した時にリード素子が復調される実際の位置から、前記ライト素子が実際に復調される位置と前記リード素子が実際に復調される位置との位置的な誤差を加味した時にライト素子が復調される実際の位置を差し引いて、リード素子を位置決めすることを特徴とする付記3に記載の情報記録再生装置。
【0063】
(付記6)前記位置決め制御部は、上記の式(2)により算出された位置決め補正量dを用いて位置決めされたライト素子により書き込まれたデータを読み取る場合に、リード素子位置の位置決め補正量d’を下記の式(3)を用いて算出することを特徴とする付記5に記載の情報記録再生装置。
【数3】

【0064】
(付記7)情報記録再生装置に適用され、
記録媒体へのデータ書込み時にライト素子が記録媒体上に復調される実際の位置と、ライト素子によって記録媒体に記録されたデータの読み取り時にリード素子が記録媒体上に復調される実際の位置との位置的な誤差を加味して、記録媒体からのデータ読み取り時におけるリード素子の位置決めを行う位置決め制御部を有することを特徴とする制御装置。
【0065】
(付記8)情報記録再生装置に適用され、
記録媒体へのデータ書込み時にライト素子が記録媒体上に復調される実際の位置と、ライト素子によって記録媒体に記録されたデータの読み取り時にリード素子が記録媒体上に復調される実際の位置との位置的な誤差を加味して、記録媒体へのデータ書き込み時におけるライト素子の位置決めを行う位置決め制御部を有することを特徴とする制御装置。
【0066】
(付記9)前記位置決め制御部は、記録媒体へのデータ書込み時にライト素子が記録媒体上に復調される実際の位置と、ライト素子によって記録媒体に記録されたデータの読み取り時にリード素子が記録媒体上に復調される実際の位置との位置的な誤差を加味した時にリード素子が復調される実際の位置から、前記ライト素子が実際に復調される位置と前記リード素子が実際に復調される位置との位置的な誤差を加味した時にライト素子が復調される実際の位置を差し引いて、リード素子の位置決めを行うことを特徴とする付記8に記載の制御装置。
【0067】
(付記10)情報記録再生装置に適用され、
記録媒体へのデータ書込み時にライト素子が記録媒体上に復調される実際の位置と、ライト素子によって記録媒体に記録されたデータの読み取り時にリード素子が記録媒体上に復調される実際の位置との位置的な誤差を加味して、記録媒体からのデータ読み取り時におけるリード素子の位置決めを行う位置決め制御ステップを含んだことを特徴とする情報記録再生方法。
【0068】
(付記11)情報記録再生装置に適用され、
記録媒体へのデータ書込み時にライト素子が記録媒体上に復調される実際の位置と、ライト素子によって記録媒体に記録されたデータの読み取り時にリード素子が記録媒体上に復調される実際の位置との位置的な誤差を加味して、記録媒体へのデータ書き込み時におけるライト素子の位置決めを行う位置決め制御ステップを含んだことを特徴とする情報記録再生方法。
【0069】
(付記12)前記位置決め制御ステップは、記録媒体へのデータ書込み時にライト素子が記録媒体上に復調される実際の位置と、ライト素子によって記録媒体に記録されたデータの読み取り時にリード素子が記録媒体上に復調される実際の位置との位置的な誤差を加味した時にリード素子が復調される実際の位置から、前記ライト素子が実際に復調される位置と前記リード素子が実際に復調される位置との位置的な誤差を加味した時にライト素子が復調される実際の位置を差し引いて、リード素子の位置決めを行うことを特徴とする付記11に記載の情報記録再生方法。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、開示の情報記録再生装置、制御装置および情報記録再生方法は、ディスクからのデータ読み取りの際に、ヘッドに備えられたリード素子とライト素子との間の相対的な距離、いわゆる「コアずれ」分を補正した位置にヘッドをオフセットすることに有用であり、特に、トラックピッチの変動を原因とした読出しエラーを防止するとともに、あるトラックに書き込まれるべきデータが隣接するトラックに上書きされてしまう危険性を低減することに適する。
【符号の説明】
【0071】
100 磁気ディスク装置
110 インタフェース
120 ディスク
130 ヘッド
140 リードチャネル
150 制御部
151 リードライト処理部
152 位置決め制御部
160 位置決め制御データ記憶部
170 モータドライバ
180 スピンドルモータ
190 ボイスコイルモータ
200 ホストコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体へのデータ書込み時にライト素子が記録媒体上に復調される実際の位置と、ライト素子によって記録媒体に記録されたデータの読み取り時にリード素子が記録媒体上に復調される実際の位置との位置的な誤差を加味して、記録媒体からのデータ読み取り時におけるリード素子の位置決めを行う位置決め制御部を有することを特徴とする情報記録再生装置。
【請求項2】
前記位置決め制御部は、記録媒体上に設けられたトラックピッチが、周期Nトラックおよび振幅Aで変動している場合に、ライト素子が復調された実際の位置とリード素子が復調された実際の位置との位置的な誤差を加味して、復調位置Xでライト素子により書き込みが行われたデータ読み取り時のリード素子の位置決め補正量dを下記の式(1)を用いて算出することを特徴とする請求項1に記載の情報記録再生装置。
【数1】

【請求項3】
記録媒体へのデータ書込み時にライト素子が記録媒体上に復調される実際の位置と、ライト素子によって記録媒体に記録されたデータの読み取り時にリード素子が記録媒体上に復調される実際の位置との位置的な誤差を加味して、記録媒体へのデータ書き込み時におけるライト素子の位置決めを行う位置決め制御部を有することを特徴とする情報記録再生装置。
【請求項4】
前記位置決め制御部は、記録媒体上に設けられたトラックピッチが、周期Nトラックおよび振幅Aで変動している場合に、ライト素子が復調される実際の位置とリード素子が復調される実際の位置との位置的な誤差を加味して、復調位置Xにおけるデータの書き込み時のライト素子を位置決めする場合の位置決め補正量dを下記の式(2)を用いて算出することを特徴とする請求項3に記載の情報記録再生装置。
【数2】

【請求項5】
前記位置決め制御部は、記録媒体へのデータ書込み時にライト素子が記録媒体上に復調される実際の位置と、ライト素子によって記録媒体に記録されたデータの読み取り時にリード素子が記録媒体上に復調される実際の位置との位置的な誤差を加味した時にリード素子が復調される実際の位置から、前記ライト素子が実際に復調される位置と前記リード素子が実際に復調される位置との位置的な誤差を加味した時にライト素子が復調される実際の位置を差し引いて、リード素子を位置決めすることを特徴とする請求項3に記載の情報記録再生装置。
【請求項6】
前記位置決め制御部は、上記の式(2)により算出された位置決め補正量dを用いて位置決めされたライト素子により書き込まれたデータを読み取る場合に、リード素子位置の位置決め補正量d’を下記の式(3)を用いて算出することを特徴とする請求項5に記載の情報記録再生装置。
【数3】

【請求項7】
情報記録再生装置に適用され、
記録媒体へのデータ書込み時にライト素子が記録媒体上に復調される実際の位置と、ライト素子によって記録媒体に記録されたデータの読み取り時にリード素子が記録媒体上に復調される実際の位置との位置的な誤差を加味して、記録媒体からのデータ読み取り時におけるリード素子の位置決めを行う位置決め制御部を有することを特徴とする制御装置。
【請求項8】
情報記録再生装置に適用され、
記録媒体へのデータ書込み時にライト素子が記録媒体上に復調される実際の位置と、ライト素子によって記録媒体に記録されたデータの読み取り時にリード素子が記録媒体上に復調される実際の位置との位置的な誤差を加味して、記録媒体へのデータ書き込み時におけるライト素子の位置決めを行う位置決め制御部を有することを特徴とする制御装置。
【請求項9】
前記位置決め制御部は、記録媒体へのデータ書込み時にライト素子が記録媒体上に復調される実際の位置と、ライト素子によって記録媒体に記録されたデータの読み取り時にリード素子が記録媒体上に復調される実際の位置との位置的な誤差を加味した時にリード素子が復調される実際の位置から、前記ライト素子が実際に復調される位置と前記リード素子が実際に復調される位置との位置的な誤差を加味した時にライト素子が復調される実際の位置を差し引いて、リード素子の位置決めを行うことを特徴とする請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
情報記録再生装置に適用され、
記録媒体へのデータ書込み時にライト素子が記録媒体上に復調される実際の位置と、ライト素子によって記録媒体に記録されたデータの読み取り時にリード素子が記録媒体上に復調される実際の位置との位置的な誤差を加味して、記録媒体からのデータ読み取り時におけるリード素子の位置決めを行う位置決め制御ステップを含んだことを特徴とする情報記録再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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