説明

情報記録装置及び情報再生装置

【課題】3次元記録再生方式を用いて高密度化を達成する。
【解決手段】基板3上に複数の記録層1を積層した記録媒体4と、複数の記録層1のそれぞれに基板3側から光を収束させて情報を3次元的に記録または再生する光学系を有する3次元記録再生装置において、 層間移動手段は、極性の異なる一対のパルスによって駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は光ディスク,光テープ,光カードなどの光学的情報記録装置及び情報再生装
置に係り、特に高記録密度を目的とした情報記録装置及び情報再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学的情報記録再生装置の記録高密度化の方法は、従来2次元的な記録媒体平面上の記
録面密度を向上させることであった。しかし、装置の小型化からディスクなどの情報記録
媒体の大きさは限定され、平面上での高密度化では限界が生じる。
【0003】
【特許文献1】特開昭59-127237号
【0004】
【特許文献2】特開昭60-202545号
【特許文献3】特開昭60-202554号
【特許文献4】特開昭63-231738号
【特許文献5】特開平1-19535号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、さらに高密度化を達成させる方法として、深さ方向を含めた3次元記録再生方
法が必須である。3次元記録再生では、公知例「特開昭59−127237号」に示すように、多
層膜構造のディスクを設け、各層に光スポットを絞り込み、データの記録再生する手段が
ある。しかし、この公知例では、具体的ディスク構造,光学定数の規定、さらには、記録
条件の設定方法は述べられておらず、信頼性のある記録が困難である。また、データの読
みだし方法についても、受光光学系の構成が不明瞭であり、信頼性のある再生が困難であ
る。
【0006】
一方、公知例「特開昭60−202545号」,「特開昭60−202554号」では
、各層に回折限界の光スポットを形成するためのディスク膜厚,焦点あわせの方法につい
て述べている。しかし、前者については、明瞭な規定が与えられていない。また、後者に
ついては、焦点あわせの原理について述べているが、実際に目標の層に焦点を合わせるた
めのアクセス方法については述べられていない。さらに、ディスク作成法として、トラッ
キングのための案内溝を公知例では不可能としており、各層ごとにレーザ露光する方法を
示しているが、この方法では、生産性がない。
【0007】
本発明の目的は、記録過程,再生過程において安定に記録再生できる光スポット絞り込
み光学系,ディスク構造,光検出光学系を検討し、さらに、特に問題となる隣接層間のク
ロストークを抑制する符号化方式,クロストークキャンセル方式、さらに、3次元データ
フォーマット、それに伴うディスク作成方法,3次元アクセス方法を検討することである

【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、
局所的な光照射によって、光学的性質が局所的に変化する記録膜層と、記録膜層の働き
の補助として反射防止,多重反射,光吸収,記録膜層の光学的局所変化の転写,断熱,吸
熱,発熱または補強を目的とした層、または層の重ねあわせである中間層膜を光学的に透
明な基板の上に多層に積み重ねたディスクを有し、各層に絞り込まれた光スポット照射に
よって各層の局所的光学的性質を2次元的に(独立に)変化させることで、変調後のデー
タ“1”,“0”に対応した記録を行う。さらに、上記局所的光学的性質の変化を各層へ
の光スポット照射によって反射光量(または透過光量)の変化として検出し、データを再
生する3次元記録再生装置において、
1.ディスクの構造を、光学的に透明な基板の屈折率をNB、厚さをd0とする。さらに
、中間層と記録膜層を一つの層として区ぎり、上層から順に1からN層割り当てる。各層
間の距離は隣あう記録膜層k番目と(k−1)番目の膜厚中心間の距離dkで示す。また
、任意のk番目の記録層と中間層の膜厚をdFk,dMkさらに屈折率の実数部をそれぞれ、
NFk,NMkとする。また、各層の平面上での局所的光学的性質の変化の周期b[μm
]とする。絞り込み光学系は、光源として、例えば波長λ[μm]の半導体レーザを用い
、コリメートレンズによって、平行光に変換し、偏向ビームスプリッタを介して、絞り込
みレンズに入射させる。ここで、絞り込みレンズの開口数をNAF,有効半径をa[mm]
,焦点距離をfF(≒a/NAF)とする。また、ディスクからの反射光は、絞りレンズ
を通り、ビームスプリッタによって受光用の像レンズに導かれる。像レンズの焦点付近に
位置する光検出器によって、反射光量の変化を電気信号に変換する。像レンズの開口数を
NAI,焦点距離をfI(≒a/NAI)とする。光検出器の受光面直径をDとした場合
、k番目の層を目標層とし、焦点を合わせたときの目標層からの反射光は、像レンズの焦
点位置に結像され、この焦平面上のスポット径Uk′は、
Uk′=λ/NAI=λ×(fI/a)
m;受光光学系の横倍率
次に、k番目の目標層から層間距離d離れた隣接層(k±1)番目の層からの焦平面
でのスポット径U(k±1)′は、
U(k±1)′≒a×md/fI
=NAI・m2
上式より光検出器の直径Dを、
D=Uk′=λ/NAIとし、
検出される他の層からの反射光量は、目標k層と他のj層の間の透過率δjk、及び反
射率の比αjkとして
光検出器での、n層からの反射受光量をInとすると
【0009】
【数1】

【0010】
(数17)≒I(k−1)/Ik
=δ2(k−1),k×α(k−1),k×(D/U(k−1)′)2
(数17.5)
上式が成り立つように、ディスク構造,光学系を設定する。
2.さらに、2次元周期bの最小値bminを(λ/NAF)とし、2次元周期 bの最
大値bmaxを(d×NAF)よりも小さくする。
【0011】
さらに、図1に示す受光光学系において、記録再生を行う目標層面内と、光学的距離
d[μm]離れた隣接層面内のそれぞれの光学的特性関数(OTF)H0(S),H1(S
)を図4にそれぞれ、直線13,直線14で示す。
【0012】
ただし、S:規格化空間周波数
ここで、層間距離dの値で焦点ずれが生じた場合の光学的特性関数H1(S)について
、H1(S)=0となるSより、上記周期bの最大繰返しbmaxを規定する。このように
、層面上の局所的光学的性質の変化の周期bとディスク構造、及び受光光学系の関係を規
定することで、層間クロストークの成分を局所的光学的性質の変化の周期bよりも、長く
する。
3.さらに、隣接層におけるスポット径(2d×NAF)の領域に含まれる局所的光学変
化(マーク)の領域の総面積が常に一定値である符号を用いる。
4.さらに、
dk=dF(k−1)+dMk+dFk
≒dMk (数1)
かつ、中間層の実効的屈折率NMkを基板と同じ屈折率NBであるとする。多層ディス
クのN層番目までの厚さdが
【0013】
【数2】

【0014】
であるディスク構造において、球面収差量W40について
W40=|(1/(8×NB))×((1/NB2)−1)×NAF4×Δd|
(数3)
【0015】
【数3】

【0016】
W40≦λ/4となるように、各層の中間層の厚さdk,総数Nを組み合わせる。なお、
W40の右辺の絶対値の中は通常は負となる(NB≧1の場合)。
5.さらに、k番目の記録膜層1の光学定数は、透過率Tk,反射率Rk,吸収率Akと
する。ここで、Tk+Rk+Ak=1の関係が成り立つ。記録によって、局所的光学的性
質が変化した場合の光学定数には、以下、ダッシュ記号「′」で表わす。一般に、熱記録
における、熱構造変化が生じるためには、必ずエネルギーしきい値Eth[nJ]が存在
する。記録目標層に回折限界に絞り込まれた光スポットが線速度V[m/s]でディスク
上を走査している。
【0017】
変調後の2値化信号に対応して熱構造変化を局所的に生じさせるために、ディスクに
入射する光強度P(記録パワー)[mW]、ここで、線速度Vと照射時間tが与えられた
場合、各層の記録膜についての光強度密度しきい値Ith[mW/μm2]とする。
【0018】
k層に焦点をあわせた場合でのk層での光強度密度Ikについて、スポット径はλ/N
AFであるから、
Sk;k層に焦点をあわせた場合での1/e2スポット面積
Sk=π(0.5×λ/NAF)2 k層における光強度Pk[mW]は
【0019】
【数4】

【0020】
δkは、ディスク上の光入射面とk番目の記録層の間の透過率である。
【0021】
ただし、Tn;n層の透過率(n=0の時は1層までの透過率)
(数6)式より、k層で記録できるために必要な最小の記録パワーPminは、
Pmin≧Ikth×Sk/δk (数7)
また、k層に記録を行うため、k層に焦点を合わせた時の、j層での光強度密度Ijk
[mW]は
【0022】
【数5】

【0023】
である。
【0024】
k層に記録を行う場合、j層を記録破壊しないため記録パワーの上限Pmaxは次式で
与えられる。
【0025】
Pmax=Ijth×Sjk/δj (数10)
Sjkは、k層に焦点を合わせた時の、j層での光スポット面積であり、
【0026】
【数6】

【0027】
dn;n層番目の膜厚
TANφ=a/fF≒NAF
(数6,7)(数9,10,11)式が同時に成り立つように絞り込み光学系,ディス
ク構造,記録条件を設定する。
6.各層の役割として、ユーザデータを記録再生する層と共に、ROM(Read Only Memo
ry)層またはWOM(Write Once Memory)を設ける。
7.層データの管理層として、各層のデータ状態、例えば、データの有無,エラー管理,
有効なデータ領域,書替え(オーバーライト)回数を随時、記録しておく。
8.項1において、交替層として、記録誤りを検出した層のかわりに情報を入れる。
9.項1において、ディスクの各層面内における管理フォーマットとして、セクタとトラ
ックを設け、1→k→N層と上層から順に記録を行う。ただし、各層ではすべてのユーザ
セクタとトラックに情報を記録してから次の層に記録する。
10.N→k→1層と下層から順に記録を行う。ただし、各層ではすべてのユーザセクタ
とトラックに情報を記録してから次の層に記録する。
11.各層ではすべてのユーザセクタとトラックに情報を記録してから次の層に記録する
が、記録する層の順番はランダムアクセスとする。
12.記録する層の順番はランダムアクセスとするが、ひとつの層においてある当該セク
タ内にすべてデータ記録してから、次の層の当該セクタを埋めていき、すべての層の当該
セクタを埋めてから、次のセクタのデータを記録する。
13.当該トラックにおいて、層方向にランダムアクセスを行う。この場合、セクタによ
る固定ブロック管理ではなく、可変長ブロックを適用する。
14.項1において、光スポット位置決め機構として、絞り込みレンズを層方向とディス
ク半径方向に駆動する2次元アクチゥエータ、または、絞り込みレンズを層方向だけに駆
動する1次元アクチゥエータと絞り込みレンズに入射させる光束をディスク半径方向に偏
向するガルバノミラーを組み合わせたものにおいて、レイヤー番号検出回路において、プ
リフォーマット部にある層アドレスを読み取るとることで現在いる層の番号を認識し、現
在焦点を結んでいるj番目の層から上位コントローラからの指令であるk番目の目標層ま
で、上下どちらの(sign(k−j))方向に、どれだけの(|k−j|)層数をスポ
ット移動させれば良いかを認識し、レイヤージャンプ信号発生回路にジャンプ強制信号を
発生させ、AFアクチゥエータドライバに入力させる。
15.項14において、ジャンプ信号は、1層間の移動にたいし、+−極性のパルスの1
対のパルスで構成され、上下の移動方向によって、+−のパルスを入れ替わる。先頭のパ
ルスはスポットを移動方向におよそ移動距離分だけ駆動させるために用い、次の極性反転
パルスはスポットが行き過ぎないように静定するためのものである。また、移動する層数
の対のパルスをドライバ回路に入力する。次に、レイヤー番号を検出し、j=kとなるこ
とを確認する。
16.項14において、上記AF誤差信号のゼロクロスパルスと、総光量パルスをゲート
として用い、各記録層についての合焦点検出を検出するクロスレイヤー信号検出回路を設
ける。
17.項16において、上記ゼロクロスパルスと総光量パルス、2種のパルスからアップ
パルスとダウンパルスを生成しカウントすることで、常にレンズがどの層に位置づけられ
ているかを認識し、ディスクに対してレンズが移動する方向を認識する。
18.項14において、焦点位置がディスク最上層から、最下層まで少なくとも移動する
ように、AFアクチゥエータ移動信号発生回路からのこぎり波を発生させ、AFアクチゥ
エータを駆動する場合において、上記クロスレイヤー信号検出回路により、N個の層の合
焦点をカウントし、レンズを上側に移動させたときのアップパルスの上限から、最上層(
n=1)または、レンズを下側に移動させたときのダウンパルスの下限から、最下層(n
=N)を認識し、ディスク層方向における焦点位置を常に認識する。
19.項5において、記録目標であるk層に安定に記録する場合、k層までの透過率(Σ
Tn(n=0,1,2,…k−1))を考慮して記録パワーP(光強度)を設定する。
20.項5において、k層までの透過率を、層アドレス認識に対して設定する。
21.アドレス認識によって、ディスク出荷時(または設計値)のk層までの透過率ΣT
n(n=0,1,2…k−1)と、記録直前のk層までの透過率ΣT′n (n=0,1
,2,…k−1)の比、すなわち透過率の変化分Gを考慮して記録パワーを設定する。
22.項6,21において、層データの管理層を設け、どの層が記録されているのかを記
録し、目標層記録前に管理層を再生して、記録直前のk層までの透過率 ΣT′(k−1
)を認識し、透過率の変化分Gを認識する。
23.項21において、目標層に記録する前に、あらかじめ記録すべき領域を再生し、透
過率の変化Gを求める。
24.項23において、あらかじめ記録すべき領域を再生する方法としては、記録モード
で初めのディスク1回転で再生チェックを行ってから、次の回転で記録を行い、次の回転
で記録エラーチェックを行う。
25.項23において、複数スポットを用い、先行スポットで上記再生チェックを行う。
26.項25において、再生チェックでは、先行スポットについての受光した再生信号C
′k(t−τ)を用いる。ここで、τは、先行スポットと記録用スポットのスポット間距
離を時間換算したものである。ここで、透過率変化分Gを、記録目標層であるk層に焦点
を合わせた状態での再生信号Ck′とディスク出荷時での設計上の再生信号Ckとの比の
平方根として求める。
27.項25において、再生チェックでは、再生信号Ckの値は、ディスクフォーマット
として、あらかじめチェック領域として、層方向に対して記録しない領域をディスク面内
に設けておく。
28.項23において、再生信号を得る光検出器については、請求項1の形状にする。
29.項1において、再生制御回路として、目標層からの反射光成分の検出に加え、特に
層間クロストークの大部分を占める隣接層からの反射光成分も検出し、両者が互いに含ん
でいる成分を演算によって取り除く。
30.項29において、3つの光検出器を、k層に焦点を合わせたときの受光面側での目
標層k,隣接層(k+1),(k−1)の結像面に位置づける。光検出器の形状は、直径
D=(λ/NAI)とする、または、ピンホールによる受光面積の制限を行い、k層の光
検出器についての再生信号Ck,(k−1)層の光検出器についての再生信号C(k−1
)と(k+1)層の光検出器についての再生信号C(k+1)について、次式の演算を行
う。
【0028】
演算 F≡Ck−γ×C(k−1)−γ×C(k+1)
≒CkR+β×C(k−1)R+β×C(k+1)R
−γ×{C(k−1)R+β×CkR+β×C(k−2)R}
−γ×{C(k+1)R+β×CkR+β×C(k+2)R}
β:各信号に含まれるクロストーク成分の必要信号成分に対する比C(k−2)R
,C(k+2)Rは、十分小さく、周波数成分も低いので無視できる。よって、
F≒(1−2γβ)×CkR+(β−γ)×C(k−1)R
+(β−γ)×C(k+1)R
ここで、演算係数γ≡β<1とすると、
F≒(1−β2)×CkR
上式の演算機能を用いたことによって、目標層の信号成分だけを求める。
31.項29において、複数スポットを用いる。k層に焦点づけた時の隣接層上の焦点ず
れスポットと同じスポット径のスポットを2つの隣接層に、スポットに先行させて走査し
、再生信号を求め、項30の演算を行う。
32.項31において、図18に示すように、絞りを挿入して、絞り込みレンズについて
の実効的開口を小さくする。すなわち、有効径a′を[λ/(2d×NAF2)×a]に
する。
33.項31において、3つの光軸に分けて、先行する2つの光学系の絞り込みレンズの
開口数を小さくする、すなわち、NAF′=λ/(2d×NAF)とする。
34.項31において、先行スポットからの再生信号にスポットの強度分布であるガウシ
アン分布を三角分布に近似して得られる重み関数を掛けて積分を行う。35.項30にお
いて、各演算係数γ(≡β)を設定する重み設定回路において、ディスクフォーマットと
して、少なくても上下3層間でマーク記録領域が、同一光束に含まれないように配置し、
h(k−1)/hk,h(k+1)/hをβ(−1),β(+1)とする。
36.項1において、複数スポットを用い、各々の層について焦点を合わせることで、2
つ以上の層について同時に記録再生を行う、すなわち、並列記録再生を行う。
37.項9において、記録後に透過率が増加する記録媒体を用いる。
38.項1において、多層ディスクにおける各層面内の案内溝,アドレス等のプリピット
は、各層ごとに紫外線硬化樹脂層に設け、各層ごとに透明な型を用いて型の面から光を入
射させる2P法によって形成する。
39.項1において、中間層に、1/4波長板層を設ける。
【0029】
上記手段は以下に示すように作用する。
【0030】
局所的な光照射によって、光学的性質が局所的に変化する記録膜層と、記録膜層の働き
の補助として反射防止,多重反射,光吸収,記録膜層の光学的局所変化の転写,断熱,吸
熱,発熱または補強を目的とした層、または層の重ねあわせである中間層膜を光学的に透
明な基板の上に多層に積み重ねたディスクを有し、各層に絞り込まれた光スポット照射に
よって各層の局所的光学的性質を2次元的に(独立に)変化させることで、変調後のデー
タ“1”,“0”に対応した記録を行い、さらに、上記局所的光学的性質の変化を各層へ
の光スポット照射によって反射光量(または透過光量)の変化として検出し、データを再
生する3次元記録再生装置において、
1.ディスクの構造を、光学的に透明な基板の屈折率をNB、厚さをd0とする。さらに
、中間層と記録膜層を一つの層として区ぎり、上層から順に1からN層割り当てる。各層
間の距離は隣あう記録膜層k番目と(k−1)番目の膜厚中心間の距離dkで示す。また
、任意のk番目の記録層と中間層の膜厚をdFk,dMkさらに屈折率の実数部をそれぞれ、
NFk,NMkとする。また、各層の平面上での局所的光学的性質の変化の周期b[μm
]とする。絞り込み光学系は、光源として、例えば波長λ[μm]の半導体レーザを用い
、コリメートレンズによって、平行光に変換し、偏向ビームスプリッタを介して、絞り込
みレンズに入射させる。ここで、絞り込みレンズの開口数をNAF,有効半径をa[mm]
,焦点距離をfF(≒a/NAF)とする。また、ディスクからの反射光は、絞りレンズ
を通り、ビームスプリッタによって受光用の像レンズに導かれる。像レンズの焦点付近に
位置する光検出器によって、反射光量の変化を電気信号に変換する。像レンズの開口数を
NAI,焦点距離をfI(≒a/NAI)とする。光検出器の受光面直径をDとした場合
、k番目の層を目標層とし、焦点を合わせたときの目標層からの反射光は、像レンズの焦
点位置に結像され、この焦平面上のスポット径Uk′は、
Uk′=λ/NAI=λ×(fI/a) (数14)
m;受光光学系の横倍率
次に、k番目の目標層から層間距離d離れた隣接層(k±1)番目の層からの焦平面で
のスポット径U(k±1)′は、
U(k±1)′≒a×m2d/fI
=NAI・m2d (数16)
上式より光検出器の直径Dを、D=Uk′=λ/NAIとし、検出される他の層からの
反射光量は、目標k層と他のj層の間の透過率δjk、及び反射率の比αjkとして光検出
器での、n層からの反射受光量をInとすると
【0031】
【数7】

【0032】
(数17)≒I(k−1)/Ik
=δ2(k−1),k×α(k−1),k×(D/U(k−1)′)2
(数17.5)
上式が成り立つように、ディスク構造,光学系を設定することによって、他の層からの
反射光の漏れ込みを低減する。
2.項1において、2次元周期bの最小値bminを(λ/NAF)とし、2次元周期b
の最大値bmaxを(d×NAF)よりも小さくする。
【0033】
さらに、図1に示す受光光学系において、記録再生を行う目標層面内と、光学的距離
d[μm]離れた隣接層面内のそれぞれの光学的特性関数(OTF)H0(S),H1(
S)を図4にそれぞれ、直線13,直線14で示す。
【0034】
ただし、S:規格化空間周波数
ここで、層間距離dの値で焦点ずれが生じた場合の光学的特性関数H1(S)について
、H1(S)=0となるSより、上記周期bの最大繰返しbmaxを規定する。このように、
層面上の局所的光学的性質の変化の周期bとディスク構造、及び受光光学系の関係を規定
することで、層間クロストークの成分を局所的光学的性質の変化の周期bよりも、長くす
ることで、目標層の信号成分だけを検出することができる。
3.項1において、隣接層におけるスポット径(2d×NAF)の領域に含まれる局所的
光学変化(マーク)の領域の総面積が常に一定値である符号を用いることによって、目標
層を再生しているときに含まれる隣接層からのクロストーク成分を直流成分一定値にし、
直流分を取り除くことで目標層の信号成分だけを抽出する。
4.項1において、
dk=dF(k−1)+dMk+dFk
≒dMk (数1)
かつ、中間層の実効的屈折率NMkを基板と同じ屈折率NBであるとする。多層ディス
クのN層番目までの厚さdが
【0035】
【数8】

【0036】
であるディスク構造において、球面収差量W40について
W40=|(1/(8×NB))×((1/NB2)−1)×NAF4×Δd|
(数3)
【0037】
【数9】

【0038】
W40≦λ/4となるように、各層の中間層の厚さdk,総数Nを組み合わせることによ
って、各層間での光学的距離が変化することによって生じる球面収差を許容値内に押さえ
、各層において回折限界の光スポットを形成する。なお、W40の右辺の絶対値の中は通
常は負となる(NB≧1の場合)。
5.項1において、k番目の記録膜層1の光学定数は、透過率Tk,反射率Rk,吸収率
Akとする。ここで、Tk+Rk+Ak=1の関係が成り立つ。記録によって、局所的光
学的性質が変化した場合の光学定数には、以下、ダッシュ記号「′」で表わす。一般に、
熱記録における、熱構造変化が生じるためには、必ずエネルギーしきい値Eth[nJ]
が存在する。記録目標層に回折限界に絞り込まれた光スポットが線速度V[m/s]でデ
ィスク上を走査している。
【0039】
変調後の2値化信号に対応して熱構造変化を局所的に生じさせるために、ディスクに
入射する光強度P(記録パワー)[mW]、
ここで、線速度Vと照射時間tが与えられた場合、各層の記録膜についての光強度密度
しきい値Ith[mW/μm2]とする。
【0040】
k層に焦点をあわせた場合でのk層での光強度密度Ikについて、スポット径はλ/N
AFであるから、
Sk;k層に焦点をあわせた場合での1/e2スポット面積
Sk=π(0.5×λ/NAF)2 k層における光強度Pk[mW]は
【0041】
【数10】

【0042】
δkは、ディスク上の光入射面とk番目の記録層の間の透過率である。
【0043】
ただし、Tn;n層の透過率(n=0の時は1層までの透過率)
上式より、k層で記録できるために必要な最小の記録パワーPminは、
Pmin≧Ikth×Sk/δk (数7)
また、k層に記録を行うため、k層に焦点を合わせた時の、j層での光強度密度Ijk
[mW]は
Pjk=Pk×δjk
=P×δj (数9)
δjk=Π/Π(=(j番目の層までの透過率/k番目の層までの透過率))である。
【0044】
k層に記録を行う場合,j層を記録破壊しないため記録パワーの上限Pmaxは次式で
与えられる。
【0045】
Pmax=Ijth×Sjk/δj (数10)
Sjkは、k層に焦点を合わせた時の、j層での光スポット面積であり、
【0046】
【数11】

【0047】
dn;n層番目の膜厚
TANφ=a/fF≒NAF
上式が同時に成り立つように絞り込み光学系,ディスク構造,記録条件を設定すること
によって、目標層に安定に記録でき、かつ、その時に他の層を破壊しないための入射記録
パワーを設定する。
6.各層の役割として、ユーザデータを記録再生する層と共に、ROM(Read Only Memo
ry)層またはWOM(Write Once Memory)を設けることによって、ユーザデータ以外の情
報を扱う。
7.層データの管理層として、各層のデータ状態、例えば、データの有無,エラー管理,
有効なデータ領域,書替え(オーバーライト)回数を随時、記録しておくことをによって
、データの更新及び、アクセスを敏速に行う。
8.項1において、交替層として、記録誤りを検出した層のかわりに情報を入れることに
よって、データの信頼性を保証する。
9.項1において、ディスクの各層面内における管理フォーマットとして、セクタとトラ
ックを設け、1→k→N層と上層から順に記録を行う。ただし、各層ではすべてのユーザ
セクタとトラックに情報を記録してから次の層に記録することによって、ユーザデータ記
録再生の管理を行う。
10.N→k→1層と下層から順に記録を行う。ただし、各層ではすべてのユーザセクタ
とトラックに情報を記録してから次の層に記録することによって、ユーザデータ記録再生
の管理を行う。
11.各層ではすべてのユーザセクタとトラックに情報を記録してから次の層に記録する
が、記録する層の順番はランダムアクセスとすることによって、ユーザデータ記録再生の
管理を行う。
12.記録する層の順番はランダムアクセスとするが、ひとつの層においてある当該セク
タ内にすべてデータ記録してから、次の層の当該セクタを埋めていき、すべての層の当該
セクタを埋めてから、次のセクタのデータを記録することによってユーザデータ記録再生
の管理を行う。
13.当該トラックにおいて、層方向にランダムアクセスを行う。この場合、セクタによ
る固定ブロック管理ではなく、可変長ブロックを適用することよってユーザデータ記録再
生の管理を行う。
14.項1において、光スポット位置決め機構として、絞り込みレンズを層方向とディス
ク半径方向に駆動する2次元アクチゥエータ、または、絞り込みレンズを層方向だけに駆
動する1次元アクチゥエータと絞り込みレンズに入射させる光束をディスク半径方向に偏
向するガルバノミラーを組み合わせたものにおいて、レイヤー番号検出回路において、プ
リフォーマット部にある層アドレスを読み取るとることで現在いる層の番号を認識し、現
在焦点を結んでいるj番目の層から上位コントローラからの指令であるk番目の目標層ま
で、上下どちらの(sign(k−j))方向に、どれだけの(|k−j|)層数をスポ
ット移動させれば良いかを認識し、レイヤージャンプ信号発生回路にジャンプ強制信号を
発生させ、AFアクチゥエータドライバに入力させることによって、目標層に焦点を合わ
せる。
15.項14において、ジャンプ信号は、1層間の移動にたいし、+−極性のパルスの1
対のパルスで構成され、上下の移動方向によって、+−のパルスを入れ替わる。先頭のパ
ルスはスポットを移動方向におよそ移動距離分だけ駆動させるために用い、次の極性反転
パルスはスポットが行き過ぎないように静定するためのものである。また、移動する層数
の対のパルスをドライバ回路に入力する。次に、レイヤー番号を検出し、j=kとなるこ
とを確認することによって、目標層kにスポットを位置ずける。
16.項14において、上記AF誤差信号のゼロクロスパルスと、総光量パルスをゲート
として用い、各記録層についての合焦点検出を検出するクロスレイヤー信号検出回路を設
けることによって、レンズを層方向に移動したときに焦点位置が各層を横切る信号を得る

17.項16において、上記ゼロクロスパルスと総光量パルス、2種のパルスからアップ
パルスとダウンパルスを生成しカウントすることで、常にレンズがどの層に位置づけられ
ているかを認識し、ディスクに対してレンズが移動する方向を認識する。
18.項14において、焦点位置がディスク最上層から、最下層まで少なくとも移動する
ように、AFアクチゥエータ移動信号発生回路からのこぎり波を発生させ、AFアクチゥ
エータを駆動する場合において、上記クロスレイヤー信号検出回路により、N個の層の合
焦点をカウントし、レンズを上側に移動させたときのアップパルスの上限から、最上層(
n=1)または、レンズを下側に移動させたときのダウンパルスの下限から、最下層(n
=N)を認識し、ディスク層方向における焦点位置を常に認識することによって、層アド
レスを設けなくても、層アクセスを可能とする。
19.項5において、記録目標であるk層に安定に記録する場合、k層までの透過率(Σ
Tn(n=0,1,2,…k−1))を考慮して記録パワーP(光強度)を設定すること
によって、目標層に最適な記録パワー条件で記録する。
20.項5において、k層までの透過率を、層アドレス認識に対して設定することによっ
て、目標層に最適な記録パワー条件で記録する。
21.アドレス認識によって、ディスク出荷時(または設計値)のk層までの透過率ΣT
n(n=0,1,2…k−1)と、記録直前のk層までの透過率ΣTn(n=0,1,2
,…k−1)の比、すなわち透過率の変化分Gを考慮して記録パワーを設定することによ
って、目標層までの層に記録された層があることによって透過率が変化していてもそれを
考慮して、目標層に最適な記録パワー条件で記録する。
22.項6,21において、層データの管理層を設け、どの層が記録されているのかを記
録し、目標層記録前に管理層を再生して、記録直前のk層までの透過率ΣT′(k−1)
を認識し、透過率の変化分Gを認識することによって、目標層までの層に記録された層が
あることによって透過率が変化していてもそれを考慮して、目標層に最適な記録パワー条
件で記録する。
23.項21において、目標層に記録する前に、あらかじめ記録すべき領域を再生し、透
過率の変化Gを求めることによって、目標層までの層に記録された層があることによって
透過率が変化していてもそれを考慮して、目標層に最適な記録パワー条件で記録する。
24.項23において、あらかじめ記録すべき領域を再生する方法としては、記録モード
で初めのディスク1回転で再生チェックを行ってから、次の回転で記録を行い、次の回転
で記録エラーチェックを行う。
25.項23において、複数スポットを用い、先行スポットで上記再生チェックを行うこ
とによって、回転待ちを行わなくても良い。
26.請求項25において、再生チェックでは、先行スポットについての受光した再生信
号C′k(t−τ)を用いる。ここで、τは、先行スポットと記録用スポットのスポット
間距離を時間換算したものである。ここで、透過率変化分Gを、記録目標層であるk層に
焦点を合わせた状態での再生信号Ck′とディスク出荷時での設計上の再生信号Ckとの
比の平方根として求めることによって、反射光学系において、透過率の変化を求める。
27.項25において、再生チェックでは、再生信号Ckの値は、ディスクフォーマット
として、あらかじめチェック領域として、層方向に対して記録しない領域をディスク面内
に設けておくことによって、ディスク間,ディスク内の透過率バラツキの影響を低減する

28.項23において、再生信号を得る光検出器については、請求項1の形状にすること
によって、目標層からの反射成分を特定して検出し、より高精度な透過率変化Gを求める

29.項1において、再生制御回路として、目標層からの反射光成分の検出に加え、特に
層間クロストークの大部分を占める隣接層からの反射光成分も検出し、両者が互いに含ん
でいる成分を演算によって取り除くことによって、目標層の反射光成分を抽出する。
30.項29において、3つの光検出器を、k層に焦点を合わせたときの受光面側での目
標層k,隣接層(k+1),(k−1)の結像面に位置づける。光検出器の形状は、直径
D=(λ/NAI)とする、または、ピンホールによる受光面積の制限を行い、k層の光
検出器についての再生信号Ck,(k−1)層の光検出器についての再生信号C(k−1
)と(k+1)層の光検出器についての再生信号C(k+1)について、次式の演算を行
う。
【0048】
演算 F≡Ck−γ×C(k−1)−γ×C(k+1)
≒CkR+β×C(k−1)R+β×C(k+1)R
−γ×{C(k−1)R+β×CkR+β×C(k−2)R}
−γ×{C(k+1)R+β×CkR+β×C(k+2)R}
β:各信号に含まれるクロストーク成分の必要信号成分
に対する比C(k−2)R,C(k+2)Rは、十分小さく、周波数成分も低いので無視
できる。よって、
F≒(1−2γβ)×CkR+(β−γ)×C(k−1)R
+(β−γ)×C(k+1)R
ここで、演算係数γ≡β<1とすると、
F≒(1−β2)×CkR
上式の演算機能を用いたことによって、目標層の信号成分だけを求める。
31.項29において、複数スポットを用いる。k層に焦点づけた時の隣接層上の焦点ず
れスポットと同じスポット径のスポットを2つの隣接層に、スポットに先行させて走査し
、再生信号を求め、項30の演算を行うことによって、目標層の信号成分だけを求める。
32.項31において、図18に示すように、絞りを挿入して、絞り込みレンズについて
の実効的開口を小さくする。すなわち、有効径a′を[λ/(2d×NAF2)×a]に
することによって、隣接層に焦点を結ぶ先行スポットのスポット径を(2d×NAF)に
する。
33.項31において、3つの光軸に分けて、先行する2つの光学系の絞り込みレンズの
開口数を小さくする、すなわち、NAF′=λ/(2d×NAF)とすることによって、
隣接層に焦点を結ぶ先行スポットのスポット径を(2d×NAF)にする。
34.項31において、先行スポットからの再生信号にスポットの強度分布であるガウシ
アン分布を三角分布に近似して得られる重み関数を掛けて積分を行うことによって、実効
的に焦点ずれスポットがマーク列を走査している場合の再生信号を得る。
35.項30において、各演算係数γ(≡β)を設定する重み設定回路において、ディス
クフォーマットとして、少なくても上下3層間でマーク記録領域が、同一光束に含まれな
いように配置し、h(k−1)/hk,h(k+1)/hをβ(−1),β(+1)とす
ることによって、上下層についての、重みをそれぞれ求める。
36.項1において、複数スポットを用い、各々の層について焦点を合わせることで、2
つ以上の層について同時に記録再生を行う、すなわち、並列記録再生を行うことによって
、転送速度を大きくする。
37.項9において、記録後に透過率が増加する記録媒体を用いることによって、下層に
記録するときに与える光強度を低減し、さらに、下層からの反射光を大きくすることで、
高効率記録,高SN比再生を行う。
38.項1において、多層ディスクにおける各層面内の案内溝,アドレス等のプリピット
は、各層ごとに紫外線硬化樹脂層に設け、各層ごとに透明な型を用いて型の面から光を入
射させる2P法によって形成することで、各層ごとに、トラッキングのための案内溝,層
の位置を示す層アドレスなどのプリピットを形成し、データの記録再生を行う。
39.項1おいて、中間層に、1/4波長板層を設けることにより、隣接層からの反射光
の偏光方向が異なるため、干渉がなくなり、隣接層間のクロストークを低減できる。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、記録過程,再生過程において安定に記録再生できる光スポット絞り込
み光学系,ディスク構造,光検出光学系、さらに、特に問題となる隣接層間のクロストー
クを抑制する符号化方法,クロストークキャンセル方法、さらに、3次元データフォーマ
ット、それに伴うディスク作成方法,3次元アクセス方法を提供できるので、多層膜構造
のディスクの各層に光スポットを絞り込み、高い信頼性を持って、データの記録再生でき
る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、
(1)本発明の3次元記録再生方法の原理
(2)3次元ディスクフォーマット,データ管理
(3)装置構成
(4)アクセス方法
(5)記録制御方法
(6)再生制御方法
(7)ディスク構造実施例と、ディスク作成方法
の順で実施例を説明する。
【0051】
(1)3次元記録再生の基本原理
図1に本発明の3次元記録再生装置の記録再生の原理図を示す。局所的な光照射によっ
て、光学的性質が局所的に変化する記録膜層1と、記録膜層の働きの補助として反射防止
,多重反射,光吸収,記録膜層の光学的局所変化の転写,断熱,吸熱,発熱または補強を
目的とした層、またはこれらの層の重ねあわせである中間層膜2を光学的に透明な基板3
の上に多層に積み重ねたディスク4を有し、各層に絞り込まれた光スポット照射によって
各層の局所的光学的性質を2次元的に、かつ各層間で独立に変化させることで、変調後の
データ“1”,“0”に対応した記録を行い、さらに、上記局所的光学的性質の変化を各
層への光スポット照射によって反射光量(または透過光量)の変化として検出し、データ
を再生する。
【0052】
図1において、ディスク4の構造を、光学的に透明な基板3の屈折率をNB,厚さをd
0とする。さらに、中間層2と記録膜層1を一組の層として区切り、上層(光入射側)から
順に1からNまで番号を層割り当てる。各層間の距離は隣あう記録膜層k番目と(k−1
)番目の膜厚中心間の距離dkで示す。また、任意のk番目の記録層と中間層の膜厚をd
Fk,dMkさらに屈折率の実数部をそれぞれ、NFk,NMkとする。また、各層の平
面上での局所的光学的性質の変化の周期b[μm]とする。絞り込み光学系は、光源とし
て、例えば波長λ[μm]の半導体レーザ5を用い、コリメートレンズ6によって、平行
光に変換し、偏向ビームスプリッタ7を介して、絞り込みレンズ8に入射させる。ここで
、レンズ8の開口数をNAF、有効半径をa[mm]、焦点距離をfF(≒a/NAF)と
する。各層に焦点を結ばせることで回折限界の光スポット11を各層に照射する。
【0053】
また、受光光学系については、反射受光系を例として示す。ディスク4からの反射光は
、レンズ8を通り、ビームスプリッタ7によって受光用の像レンズ9に導かれる。レンズ
9の焦点付近に位置する光検出器10によって、反射光量の変化を電気信号に変換する。
像レンズ9の開口数をNAI、焦点距離をfI(≒a/NAI)とする。光検出器10の
受光面直径をDとする。本発明では、光学系として、図2aに示す平行光学系を例に示し
たが、図2bに示す拡散光学系でも同様に効果を得ることができる。また、受光光学系と
して、透過光検出系でも本発明と同様の効果を得ることができる。
【0054】
3次元記録再生において、記録再生を行うための第1の課題は、各層において、光スポ
ットを回折限界まで絞り込むことである。従来の光ディスクでは、一般に記録膜保護のた
め、基板3越しの1層記録面に光スポットを回折限界で絞り込む。そこで、球面収差が生
じて光スポットがひずまないように、基板3の屈折率と膜厚を考慮して、絞り込みレンズ
8の設計仕様を行う。ところが、多層ディスク4では、各層の膜厚の影響が無視できず、
たとえば公知例「久保田 他:光学、14(1985)、光ディスクにおけるアイパター
ンのジッタ解析I〜V」に示してあるように、層の数が増えるほど球面収差が増加し、回
折限界まで絞れない。そこで、本発明では、記録再生に十分な範囲の光スポットが得られ
るための絞り込みレンズの設計,ディスク構造を示す。設計方法を簡単にするため、記録
膜層1の膜厚dFkは、中間層2の膜厚dMkに対して十分薄く無視できるとする。すな
わち、
dk=dF(k−1)+dMk+dFk≒dMk (数1)
かつ、中間層2は各層とも、基板3と同じ屈折率NBであるとする。この場合、多層ディ
スクのN層番目までの厚さdは
【0055】
【数12】

【0056】
である。
【0057】
一方、レーレーリミットとして、絞り込みスポットのピーク強度が無収差時の80%が
保証される球面収差量W40=λ/4を許容値として与える。
【0058】
1番目からN番目の層までの膜厚の変化Δdによって生じる球面収差量W40は以下の
ように表わされる。
【0059】
W40=|(1/(8×NB))×((1/NB2)−1)×NAF4×Δd|
(数3)
そこで、W40≦λ/4となるように、絞り込みレンズの設計,ディスク構造を決定す
る。なお、W40の右辺の絶対値の中は通常は負となる(NB≧1の場合)。一例として
、基板3として屈折率NB=1.5 のガラス基板を用い、中間層として、ガラスとほぼ屈
折率の等しい紫外線硬化樹脂を用い、絞り込みレンズ8のNAF=0.55 とした場合、
(数3)式より、Δd≦50μmである。ここで、
d0=1.2mm−Δd=(1.15〜1.2mm),
【0060】
【数13】

【0061】
Δd≦50μmとなるように、各層の中間層の厚さdk,総数Nを組み合わせることで、
従来の光ディスクに使用していた基板厚さ1.2mm 用の絞り込みレンズをそのまま適用し
て、1番目からN番目の各層に記録再生に十分な光スポットを形成することができる。一
つの組合せ解として、中間層の厚さdMk=10μm,記録層の厚さdFk=200Åで
は、d0=1.15mm,Σdk=100.4μm≒100μm,総数N=10が可能である

【0062】
(数4)では、5層番目で、球面収差はゼロであり、最上層と最下層で許容値内で最大
の球面収差が生じる。これをさらに補正することもできる。波動光学によれば、球面収差
は焦点位置をずらすことで補正することができる。その条件は、W40=−W20=−0
.5×NAF2Δz,Δz=−2/NAF2×W40。ここで、W20は焦点ずれによる収
差、Δzは焦点ずれである。上記の例では、5層目からの層間距離Δdk=(k−5)×
dでのk層番目で生じる球面収差Wk40は、(数式3)より得られ、この収差を補正す
る焦点ずれ量Δzkは、 Δzk=−2/NAF2×Wk40となる。
【0063】
最下層(k=10)では、1.4μmであり、最上層(k=1)では−1.4μmの焦点
ずれをオフセットとして与えればよい。
【0064】
次に、記録再生を行うための第2の課題は、熱記録過程にある。記録での規定条件は次
の2つの項である。
(A) 記録目標層に記録に十分でかつ安定な記録パワー密度を与えることができること

(B) 任意のk層に記録した場合、他の層のデータを破壊しないこと。
【0065】
要因として、光強度によるもの、層間を伝わってくる熱伝導によるものに分けられるが
、ここでは、前者について述べる。後者については、中間層2に断熱効果を持たせること
で対処できるがこの方法については記録媒体実施例の項で示す。
【0066】
本発明では、この2つの項を満足する方法として、第1に、ディスク構造と絞り込み光
学系を最適化する。
【0067】
図1において、設計の簡易化のため、一例として、基板3及び中間層2は透過率100
%とする。また、k番目の記録膜層1の光学定数は、透過率Tk,反射率Rk,吸収率A
kとする。ここで、Tk+Rk+Ak=1の関係が成り立つ。また、記録によって、局所
的光学的性質が変化した場合の光学定数には、以下、ダッシュ記号「′」で表わす。一般
に、熱記録では、記録膜の光吸収による発熱、及びこれを熱源とした熱拡散現象に支配さ
れる温度上昇によって、記録膜の熱構造変化が生じる。穴あけ形記録媒体では溶融による
記録膜の移動,相変化形記録媒体では結晶化と非晶質化,光磁気記録媒体では垂直磁化の
反転に対応する。この熱構造変化が生じて、局所的光学的特性変化となる。記録膜の種類
にかかわらずに、熱構造変化が生じるためには、必ずエネルギーしきい値Eth[nJ]
が存在する。記録過程では、記録目標層に回折限界に絞り込まれた光スポット11が線速
度V[m/s]でディスク上を走査している。変調後の2値化信号に対応して熱構造変化
を局所的に生じさせるために、ディスク面に照射する光強度P(記録パワー)[mW]を
時間t[s]で変調する。ここで、線速度Vと照射時間tが与えられれば、エネルギーし
きい値Ethを光強度密度しきい値Ith[mW/μm2]で議論できる。
【0068】
(A)項を満足させるためには、k層に焦点をあわせた場合でのk層での光強度密度I
kについて、(数5)式が成り立つとよい。
【0069】
Ik=Pk/Sk≧Ikth (数5)
Ikth;記録層kでの光強度密度しきい値(mW/μm2
Sk;k層に焦点をあわせた場合での1/e2スポット面積
Sk=Π(0.5×λ/NAF)2 ただし、回折限界に絞り込まれた光スポット径をλ/NAFとする。
ここでk層における光強度Pk[mW]は
【0070】
【数14】

【0071】
δkは、ディスク上の光入射面とk番目の記録層の間の透過率、Tnは、n層の透過率
である(n=0の時は1層までの透過率)。Pkは図3aに示すようになる。(数5)(
数6)式より、k層で記録できるために必要な最小の記録パワーPminは、
Pmin≧Ikth×Sk/δk (数7)
一般に、光強度が最も小さくなるのは、最下層Nで、n=1〜N−1が記録され、透過
率Tnがすべて低下する媒体を用いた場合→Tn′(記録後の透過率)である。
【0072】
(B)項が成り立つには、k層に記録を行うため、k層に焦点を合わせた時のj層での
光強度密度Ijk[mW/μm2]は、(数8)が成り立てば良い。
【0073】
Ijk=Pjk/Sjk《Ijth (数8)
【0074】
【数15】

【0075】
である。
【0076】
k層に記録を行う場合、j層を記録破壊しないため記録パワーの上限Pmaxは次式で
与えられる。
【0077】
Pmax=Ijth×Sjk/δj (数10)
Sjkは、k層に焦点を合わせた時のj層での光スポット面積であり、層間距離dが波
長λ以上なら幾何光学的に求めることができる。
【0078】
【数16】

【0079】
dn;n層番目の膜厚
TANφ=a/fF≒NAF
ここで、1/Sjk[μm2 ]は面密度を表わし、図3bのようになる。図3aと図3
bから光強度密度Ijk[mW/μm2 ]が得られ、図3cのようになる。
【0080】
(数5)(数8)式が同時に成り立つように絞り込み光学系,ディスク構造,記録条件
を設定することで、各層で信頼性の高い記録が可能となる。一例として、図10aに示す
3層ディスクについて、記録可能な層間距離dを求める。ただし、絞り込み光学系は、波
長λ=0.78μm,NAF=0.55とし、各層の光学定数は、R1=R2=R3=0.
1,T1=T2=T3=0.8,A1=A2=A3=0.1とする。また、線速度v=7m
/s,照射時間t=100ns〜500nsとし、この時の記録層の光強度密度しきい値は
、I1th=I2th=I3th=2.53(mW/μm2)とする。ここで、記録可能な層間
間隔d=d1=d2=d3と、記録パワーの範囲を求める。
【0081】
図10bに、目標記録層以外に記録していない場合について、各層にスポットを絞り込
んだ場合について、ディスクに照射する記録パワーと各パワーに対応していられる再生信
号の変調度を示している。ここで、変調度は、各層面に形成された局所的光学的性質変化
(マーク)の大きさの目安を示し、絞り込みスポット径ほどの十分大きなマークになると
変調度は飽和の傾向を示す。縦軸は各層について変調度の飽和値を1として規格化したも
のを示している。図において、第1層にマークを形成できるしきい値パワーは、4mW(
=Ith×S1)、第2層では、5mW(=Ith×S2/δ2)、第3層(k=3)で
は、これが最小パワーPminを決定し、(数5)(数6)(数7)式より
【0082】
【数17】

【0083】
となる。
(数8)(数9)(数11)式より
【0084】
【数18】

【0085】
例えば、d=2.5μm では、Pmax=16mW(P3max=10mW)となり、
図10bに示すように、信号が十分なマークを記録することができる。このように、設計
することで他の層を破壊しないで、かつ目標層に信頼性高く記録できる。
【0086】
次に、記録再生を行うための第3の課題は、再生過程にある。再生での規定条件は次の
項である。
(C) ノイズ成分を最小とする。ここでは、層間クロストークノイズの低減である 。
(D) 目標層からの信号成分を最大にする。
【0087】
(C)項を達成するための第1の方法を示す。
【0088】
第1の方法は、図1において、受光光学系を最適化することで、目標層以外からの反射
光量を十分小さくすることで、層間クロストークを低減し、SN比の大きい再生を行うも
のである。図1において、実線で示すように、再生しようとする層からの反射光量は像レ
ンズ9の焦点上に置かれた光検出器10によってすべて検出される。一方、隣接層からの
反射光は、点線で示すように像レンズの焦平面12で拡がっている。そこで、光検出器9
の大きさを図1のように制限することで隣接層からの反射光を低減することができる。
【0089】
k番目の層を目標層とし、焦点を合わせたときの光スポット11のピーク強度値の1/
2の強度となる直径、すなわちスポット径はUk=(λ/NAF)である。そして、目
標層からの反射光は、像レンズ9の焦点位置に結像される。この焦平面12上のスポット
径Uk′は、
Uk′=mUk=m×(λ/NAF)=(NAF/NAI)×(λ/NAF)
=λ/NAI=λ×(fI/a) (数14)
m;受光光学系の横倍率
次に、k番目の目標層から層間距離d離れた(k±1)番目の層からの焦平面でのスポ
ット径U(k±1)′を求める。(k±1)層からの反射光が像レンズ9で焦点を結ぶ位
置と焦平面との距離d′は、
d′=Y×d=m2×d (数15)
Y:縦倍率
U(k±1)′=d′×tanφI=d′×a/(fI+d′)
=m2d×a/(fI+m2d)
ここで、fI》m2dならば
U(k±1)′≒a×m2d/fI=NAI・m2d (数16)
上式より光検出器の直径Dを、D=Uk′=λ/NAIとすれば、光検出器の径を制限
しない場合と比較して、面積比ε=(D/U(k±1)′)2で、隣接層からの反射光量を低
減できるので、目標層からの反射光量の変化を高いSN比で検出できる。
【0090】
実際に、検出される他の層からの反射光量は、目標k層と他のj層の間の透過率δjk
、及び反射率の比αjkを考慮にいれる。ここで、信頼性の高い信号検出のために必要な
層間クロストークノイズ量を−20dB(1/10)とすると、一般に次式が成り立てば
良い。
【0091】
光検出器10での、n層からの反射受光量をInとすると
【0092】
【数19】

【0093】
ただし、以下では、目標層k層に対する隣接層(k−1)層だけについて考慮する。他
の層からの影響も同様に考慮できるがその値は、十分小さい。
【0094】
(数17)≒I(k−1)/Ik
=δ2(k−1),k×α(k−1),k×(D/U(k−1)′)2
(数17.5)
例えば、λ=0.78μm,NAF=0.55,fI=30mmとして(NAI=0.07
5,m=7.33,m2=53.8)において、D=Uk′≒10.4μm
図10を例にとると、δ23=1.25 ,α23=1より、反射光量の抑制率は、ε×δ
223×α23となる。
【0095】
I2/I3=δ223×α23×ε=δ223×α23×(D/U2′)2 =δ223×α23×(λ/NAI)2/(NAI×m2d)2 =δ223×α23×(λ/NAF2/d)2 (数18)
(I2/I3)≦1/10上式の成り立つdを求めると、
【0096】
【数20】

【0097】
ここでは、第2層からのクロストークの影響を考慮したが、第1層からのクロストーク
の影響も同様に計算でき、その値(I1/I3)=0.024(=−32dB)と十分小さく無視
できる。
【0098】
以上の例では光検出器の径D=Uk′=λ/NAIとしたが、光検出器の位置ずれも含
めて、層間のクロストークがある値になるように設計の自由度がある。次に、(C)項を
達成するための第2の方法を示す。
【0099】
第2の方法は、層面上の局所的光学的性質の変化(マーク)の周期bとディスク構造、
及び受光光学系の関係を規定することで、層間クロストークの成分を局所的光学的性質の
変化の周期bよりも、長くする。すなわち、データの信号帯域よりも層間クロストークの
周波数成分小さくすることで、目標層面上のデータを高いSN比で再生するものである。
この方法の原理について図1と図4を用いて説明する。第1の方法と区別するために光検
出器の径に制限をいれないが、併用することで、より高いSNが得られる。
【0100】
目標層には、回折限界の光スポットが形成されているため、2次元周期bがスポット径
(λ/NAF)程度あれば、十分分解できる。すなわち、2次元周期bの最小値bmin
を(λ/NAF)とすれば、信号成分が十分大きくとれる。これが、(D)項の成り立つ
条件である。なお、図4でH0(S)=0の時には分解不可能となり、このときのbの値
はスポット径λ/NAFの1/2の時である。一方、隣接層でのスポット径は、焦点がず
れているために、層間距離dとすると、(2d×NAF)となり、光学的分解能が低下す
る。そこで、この特性を利用して、2次元周期bの最大値bmaxを隣接層におけるスポ
ット径(2d×NAF)の1/2すなわち(d×NAF)よりも小さくすれば、隣接層から
の信号成分の漏れ込みすなわち層間クロストークの周波数成分は、信号帯域(1/bma
x〜1/bmin)よりも小さくなり、フィルタまたはAGC(オートゲインコントロー
ル)を用いて、取り除くことができる。
【0101】
ここで、焦点ずれによる光学的分解能の低下すなわち、信号変調度の低下を光学的理論
から求める。
【0102】
図1に示す受光光学系において,記録再生を行う目標層面内と、光学的距離d[μm]
離れた隣接層面内のそれぞれの光学的特性関数(OTF)H0(S),H1(S)を図4
にそれぞれ、直線13,直線14で示す。横軸は、物体の繰返し周波数に対応し、縦軸は
その変調度に対応する。ここで、Sは規格化空間周波数である。
【0103】
S=λ×fF/(2Πa)=λ/NAF×b (数20)
焦点ずれもなく、無収差の場合、光学的特性関数H0(S)は、直線13のようになる。
この場合、光学的分解能がゼロとなる遮断周波数は、S=2となる。実際の記録再生装置
では、レーザノイズ,アンプノイズなどのノイズ成分が含まれ、さらに、焦点ずれ以外の
収差を光学系自体が持っているために、遮断周波数S=2に対応する周期bまでは、検出
が困難である。そこで、変調度が半分(−6dB)を変調度の許容値とする。その時、S
=1となり、上記周期bの最小繰返しbminを規定する。
【0104】
bmin=λ/NAF (数21)
一方、層間距離dの値で焦点ずれが生じた場合の光学的特性関数H1(S)について、
H1(S)=0となるSより、上記周期bの最大繰返しbmaxを規定する。
【0105】
焦点ずれdの増加と共に、光学的特性関数H1(S)は、矢印15の方向に変化し、b
maxも大きくできる。
【0106】
このように、隣接層からのクロストークの周波数成分はfmin(=1/bmax)以
下であり、図4に示すような追従特性16を持つオートゲインコントロール回路を用いれ
ば、隣接クロストーク成分を吸収できる。
【0107】
(数値例)
焦点ずれdと波面収差量B1の関係は次式で表わせられる。
【0108】
B1=−d/2×(NAF)2 数値例として、焦点ずれdに対する遮断周波数Sを求め、bmaxを求めた。
【0109】
d=6.7μmの場合→bmax=4.7μm
B1=−λ
d=10μmの場合→bmax=7.9μm
B1=−1.5λ
また、bmin=(λ/NAF)=1.42μm
例えば、図20のように、スポット走査方向に、可変長の符号である2−7符号を用い
、トラックピッチ1.5μm 一定のディスクについて、公知例「特開昭63−53722 号」に
示すピットエッジ記録方式を用いた場合、再生可能な最小ビットピッチq(μm)と層間
距離dを求めると、図4に示すように、最短パターン繰返し周期は、
3q=bmin=1.42μm
q=0.47μm
ここで、最長パターン繰返しは8qであり、
8q=3.76μm≦bmax
また、ディスク半径方向のマーク周期は、トラックピッチ1.5μm 一定であり、1.5
μm≦bmaxである必要がある。よって、d≧5μmで十分である。
【0110】
次に、(C)項を達成するための第3の方法を示す。第2の方法では、層間クロストー
クノイズの周波数成分は、fmin以下であるが、変調方式のよっては、局所的光学的性
質の変化の粗密によって、目標層からの信号が変動してしまう。上記例で用いた2−7変
調符号もそのひとつであり、その変調信号のパワースペクトル特性86を図4に示す。f
min以下に、わずかに成分を持つ。これは、先に述べたようにフィルター,AGCで抑
圧できるが、このような回路を用いなくても、粗密の変動をなくし、直流成分一定値にす
ることで、層間クロストークノイズを抑圧することができる。第3の方法の原理は、隣接
層におけるスポット径(2d×NAF)の領域に含まれる局所的光学変化(マーク)の領
域の総面積が常に一定値である符号を用いる。このようにすることで、スポットを走査し
たときの再生信号への層間クロストーク量は常に直流一定値なる。第3の方法と第1の方
法を併用することもできる。
【0111】
一例を示す。公知例「土井 利忠、伊賀 章:ディジタル・オーディオ」にあるEFM変
調方式を用いた場合についての変調信号のパワースペクトル87は、図4に示すように低
域成分のスペクトルが急激に低下する特徴を持つ。よって、スペクトルの急激に低下する
折れ点88が、隣接層の光学的特性関数H1(S)について、H1(S)=0となる遮断
周波数と一致するように層間間隔dを設定すれば良い。
【0112】
例えば、q=0.6μmとすると、2.82q=1.7μm≧bmin=1.42μm,1
0.36q=6.2μm≦bmax,折れ点88での繰返し周期は24μmであり、層間距
離d=22μmとする。この時、隣接層におけるスポット径(2d×NAF=24μm)
に含まれるマークの占有率はほぼ50%一定であり、検出される再生信号に含まれる隣接
層からの反射光量の成分は常に一定値となる

【0113】
次に、図21,22では、層面内で2次元記録を行う場合について、本発明を適用した
ものである。2次元記録再生方式は、先願特願平3−11916号「情報記録再生方法及
び装置」に示してある。先願では、図21に示すように、例えば、2×2の4格子点を一
つのブロックとして用い、格子点にマークを記録する組み合わせで、24=16 、4ビッ
トのデータを表わし、高密度化を行う。この場合、第1,第2の本方式を適用できる。ま
た、図22に示すように、4×4の格子ブロック内の格子点に必ず同数個のマークが含ま
れるように(図では1個)する。さらに、隣接層でのスポット径(2d×NAF)に格子
ブロックが多く含まれれば、スポット内に含まれるマークの数、さらにはマークの占有面
積はほとんど一定値であり、第3の方法が適用できる。
【0114】
ところで、光ディスクでは、回折限界の光スポットを各記録層面に形成するが、図2に
示した各光学系では、ある値dmの焦点ずれが生じると、顕微鏡の結像系の条件が満たさ
れ、受光面上に記録膜面の像が形成され場合がある。例えば、目標層に回折限界のスポッ
トを形成し受光している場合、他の層までの距離がdmである場合、受光面上にこの層上
のマーク列パターンが形成され、目標層上の情報信号に信号帯域のクロストークノイズが
乗る可能性がある。そこで、層間距離がdmにならないように、ディスク構造を設計する
のが望ましい。
【0115】
また、各層から反射してくる光は、照射光が同一のため、層間の距離が可干渉距離程度
に小さくなると、反射光同士が干渉する。その結果、層間のクロストークノイズを受光面
上での目標層と他の層からの受光量比で表わせなくなる。すなわち、干渉が生じるために
、最悪、層間クロストークノイズが、受光量比の平方根で現われてしまう。この影響が実
際に問題になるのは、隣接層間の場合である

【0116】
そこで、この問題を解決する実施例を図27に示す。この実施例の原理は、隣接層から
反射してくる光の偏光方向を替えることで、干渉を起こさせないことにある。偏光方向を
変える手段のひとつとして、図27では、各中間層2に1/4波長板層201を備える。
1/4波長板層201は、層の深さ方向に向かって、進行する光の電場の波について、層
面の2次元方向について、位相差を90度異なる、すなわち2つ方向についての光学的厚
みの差を1/4波長分だけ変えるものである。このようなディスク構造にすることで、例
えば図に示すように、照射光の偏光方向をE偏光とした場合、互いに隣あう層からの反射
光は、1/4波長板層201を往復する差、すなわち1/2波長,180度位相差分だけ
異なるため、偏光方向が交互にE偏光、H偏光と直交する。そのため、隣接層間の反射光
成分は干渉しないため、単純な受光面上での受光量比で表わせ、層間のクロストークを低
減することができる。さらに、受光系において、図27に示すように、偏光ビームビーム
スプリッタ202を挿入し、反射光の偏光方向によって、検出する光検出器203,20
4を分離する。このようにすることで、少なくても隣接層からの反射光は検出されないた
め、前述の第1の再生方式において、光検出器の大きさのバラツキの許容値を大きくする
ことができる。
【0117】
次に、(1)節で示した本発明の3次元記録再生方法の原理を達成する装置について示
す。
(2)3次元ディスクフォーマット,データ管理
図5に、多層ディスク4のフォーマットの一例を示す。光を入射させる基板3から、光
の進行方向に向かって、1〜n層とする。k層でのデータフォーマットはディスクを放射
線上に区切ったセクタm,半径方向のデータ位置を管理するトラックl、以上、3個のア
ドレス(l,m,n)でデータを管理する。ある任意のトラックl,セクタmにおけるフ
ォーマットは、図に示すように、記録再生のタイミングや、アドレス情報をあらかじめ作
りつけたプリフォーマット領域と、ユーザデータを記録再生し、さらに、データの有無、
読みだしの禁止などを記録し管理するデータ領域からなる。また、各層の役割として、図
に示すように、ユーザデータを記録再生する層と共に、ROM(Read Only Memorey)層
またはWOM(Write Once Memorey)を設け、上位コントローラのOS(Operating Syste
m)、または、後述するように、各層での記録または再生の条件などを、ディスク作成時
にプリフォーマット化しておくか、出荷時に記録することもできる。また、層データの管
理層として、各層のデータ状態、例えば、データの有無,エラー管理,有効なデータ領域
,書替え(オーバーライト)回数を随時、記録しておくこともできる。また、交替層とし
て、記録誤りを検出した層のかわりに情報を入れ直すこともできる。
【0118】
次に、データを記録する順番は、例えば次のような組み合わせがある。
(a)1→k→N層と上層から順に記録を行う。ただし、各層ではすべてのユーザセクタと
トラックに情報を記録してから次の層に記録する。
【0119】
上記データ記録を行う場合、記録媒体として、記録後の透過率が増加する特性を持つも
のを用いることでさらに信頼性の高い記録再生を行うことができる。すなわち、下層の記
録層までの透過率が増加するので、上層に記録するのに必要な光強度とほぼ等しい光強度
照射で下層の目標層に十分記録に必要な光強度を与えることができる。また、再生におい
ても、目標層からの反射光成分がほとんど減衰されずに検出器に戻ってくるので、SN比
の高い再生信号が得られる。上記と特性を持つ記録媒体のとして、例えば、穴あけ形記録
媒体がある。この媒体は記録することによって、反射膜に穴があき、反射率が低下、すな
わち透過率が増加する。
(b)N→k→1層と下層から順に記録を行う。後は(a)と同じ。
(c)各層ではすべてのユーザセクタとトラックに情報を記録してから次の層に記録するが
、記録する層の順番はランダムアクセスとする。
(d)記録する層の順番はランダムアクセスとするが、ひとつの層においてある当該セクタ
内にすべてデータ記録してから、次の層の当該セクタを埋めていき、すべての層の当該セ
クタを埋めてから、次のセクタのデータを記録する。
(e)当該トラックにおいて、層方向にランダムアクセスを行う。この場合、セクタによる
固定ブロック管理ではなく、磁気ディスクのデータ管理である可変長ブロックを適用する
ことで、磁気ディスクのシリンダを層に対応させ、磁気ディスクのデータフォーマットを
そのまま適用することができる。
【0120】
上記ランダムアクセスでは、例えば誤って記録時に記録した領域にアクセスしないよう
に、上位コントローラによって情報記録領域の管理を行っても良いし、前述した管理領域
によって管理してもよい。
(3)装置全体構成
図6に、3次元記録再生装置の全体構成を示す。記録する場合は、ユーザデータ17を
変調回路18通して、変調後の2値化データ19を得る。変調後の2値化データは、記録
条件設定回路20を通り、光スポットが位置づけられている位置での最適な記録条件で、
強度変調されるように、レーザ駆動回路21が駆動され、光ヘッド22内の半導体レーザ
の光強度が変調され、ディスク4への記録を行う。
【0121】
一方、再生する場合は、ディスク上の目標の層,トラック位置に光スポットを位置づけ
、微弱光を照射し、反射光の強度変化を光検出器10で電気信号に変換し、再生信号23
,24を得る。再生信号23,24は、再生制御回路25を通して、層間クロストークを
抑制したのち、AGC(オートゲインコントロール)回路26を通り、データ帯域よりも
低周波数の変動を吸収し、後の回路で動作する絶対レベルに信号を合わせる。
【0122】
その後再生信号は、波形等化器27を通り、データパターンによる波形歪み(振幅の劣
化,位相のずれ)の改善を行い、整形器28で2値化信号に変換する。整形器28には、
振幅スライスによって2値化するもの、微分によるゼロクロス検出するものがある。
【0123】
次に2値化信号は、位相同期回路29に通り、データからのクロック抽出を行う。位相
同期回路29は、位相比較器30,ローパスフィルタ(LPF)31,電圧制御発振器3
2からなる。位相同期回路29で生成されたクロックによって、2値化信号から、データ
の‘1’,‘0’の判定する弁別器33を通り、復号器34によって、ユーザデータ17
に変換される。以上の記録再生のため、上位コントローラからの指令で、目標の層及び層
面内の目標位置に光スポットを位置づけるためには、光ヘッド22からの焦点ずれ、トラ
ックずれ信号検出35を行い、補償回路36によって、サーボ制御に最適な信号に補償し
、駆動回路37を通して、光スポット位置決め機構を駆動する。
(4)アクセス方法
光スポット位置決め機構としては、絞り込みレンズ8を層方向とディスク半径方向に駆
動する2次元アクチゥエータ、または、絞り込みレンズ8を層方向だけに駆動する1次元
アクチゥエータと絞り込みレンズ8に入射させる光束をディスク半径方向に偏向するガル
バノミラーを組み合わせたものがある。
【0124】
ここで、(2)で述べたデータ記録再生のためにランダムアクセスを行う場合について
、第1に目標層kに焦点を結ばせる方法について述べる。焦点ずれ信号検出のためには、
目標層からの反射光スポットの大きさが、焦点ずれによって変化するので、公知例「特開
昭63−231738号,特開平1−19535号」に示す前後差動焦点ずれ検出法を用いることができ
る。図24aに、ディスク面に対して絞り込みレンズの位置を層方向Zに走査させたとき
に得られるAF誤差信号35を示す。各層についての焦点ずれ誤差信号及び合焦点位置で
あるゼロクロス点105が順に得られるのがわかる。
【0125】
ここで、目標層kにアクセスする場合の第1の実施例のブロック図を図23に示す。回
転するディスク4に対し、AF(オートフォーカス)アクチゥエータ移動信号発生回路9
3でのこぎり波106を発生させ、AFアクチゥエータドライバ91を駆動させ、絞り込
みレンズ8をディスク面に対し+Z方向(ディスクにレンズを近づける方向)に動かす。
この時、AF検出回路89ではAF誤差信号35が得られる。この信号は引込み点判定回
路92でゼロクロス点105を検出され、ある層面に合焦点であることをAFサーボ系コ
ントローラ94に伝える。判定回路92では図24aに示すように、ゼロスライスレベル
より少しずれたスライスレベル103によって、図24bに示すAFパルス37を作り、
その立ち下がり104を検出することでレンズ8が合焦点を通り過ぎる直前のタイミング
をコントローラ94に送る。
【0126】
コントローラ94では、上位コントローラからの指令で焦点引込み状態であることを認
識し、上記タイミングの入力と共にスイッチ97を切り替え、AFサーボ回路90をAF
アクチゥエータドライバ91につなげサーボループを閉じさせる。この状態では、AFサ
ーボ回路90は、AF信号検出回路89でえられるAF誤差信号が常にゼロになるように
AFアクチゥエータを駆動させる。よって、ディスク4が回転時に上下振れしてもある層
に回折限界のスポットを安定に形成させることができる。
【0127】
次に、レイヤー番号検出回路95において、図5で示したプリフォーマット部にある層
アドレスを読み取るとることで現在いる層の番号を認識し、コントローラ94に送る。コ
ントローラ94では、現在焦点を結んでいるj番目の層から上位コントローラからの指令
であるk番目の目標層まで、上下どちらの(sign(k−j))方向に,どれだけの(
|k−j|)層数をスポット移動させれば良いかを認識し、レイヤージャンプ信号発生回
路96にジャンプ強制信号107を発生させ、AFアクチゥエータドライバに入力させる

【0128】
ジャンプ信号107は、1層間の移動にたいし、+−極性のパルスの1対のパルスで構
成され、上下の移動方向によって、+−のパルスを入れ替わる。先頭のパルスはスポット
を移動方向におよそ移動距離分だけ駆動させるために用い、次の極性反転パルスはスポッ
トが行き過ぎないように制定するためのものである。また、移動する層数の対のパルスを
ドライバ91に入力する。次に、レイヤー番号を検出し、j=kとなったところで、目標
層kにスポットが位置づけられる。ランダムアクセスのために他の層にアクセスするとき
も、上記と同様に、レイヤージャンプを行えば良い。
【0129】
目標層kにアクセスする場合の第2の実施例のブロック図を図25に示す。
【0130】
回転するディスク4に対し絞り込みレンズ8をディスク面に対し上下させる。この時に
上記AF誤差信号35が得られ、さらに、光検出器(ディテクタ)10で検出され、総光
量検出回路102から出力された総光量36は図24aに示すように、各記録層に合焦点
時にピークを持つ。そこで、図24cに示すクロスレイヤー信号検出回路101の中のパ
ルス化回路98でスライスレベル103,108によって、AFパルス37と総光量パル
ス38を検出する総光量パルス38をゲートとして用い、AFパルスの立ち下がりを検出
することでさらに確実な合焦点検出が可能である。さらに、ディスクに対してレンズが移
動する方向を認識するために、これらの2種のパルスからクロスレイヤーパルス発生器9
9によってアップパルス109とダウンパルス110を生成しカウントすることで、常に
レンズがどの層に位置づけられているかを認識することができる。
【0131】
図25において、焦点位置がディスク最上層から、最下層まで少なくとも移動するよう
に、AFアクチゥエータ移動信号発生回路93からのこぎり波を発生させ、AFアクチゥ
エータを駆動する。この時、回転するディスクの上下振れ量よりも十分大きければ確実で
ある。クロスレイヤー信号検出回路101より、N個の層の合焦点をカウントし、レンズ
を上側に移動させたときのアップパルス109の上限から、最上層(n=1)または、レン
ズを下側に移動させたときのダウンパルス110の下限から、最下層(n=N)を認識す
る。上位コントローラからの指令で、目標とする順番の層にスポットの焦点が結ぶ直前に
スイッチ100を切り替え、サーボループを閉じれば良い。このように制御することで、
層アドレスを設けなくても、層アクセスを可能とすることができる。
【0132】
ところで、記録することで透過率,反射率の変化する媒体を用いた場合、AF誤差信号
及び、総光量は、記録された層付近では、図26aに示すように、図25とは異なる信号
123,124が得られる。これは、マークの存在する部分をスポットが走査したときに
光量が変化し、マークの存在しない部分にスポットがかかると光量が正規の値に戻ること
示している。このように、信号が変動するために、サーボ帯域での信号についても、信号
の低下が生じ、AFサーボ系のゲインの変動,AFオフセットが発生し、記録された層で
焦点ずれが生じる。このような場合、光検出器上で検出された信号成分中、常に、マーク
の記録されていない部分の信号をホールドすることで、図26に示す理想のAF誤差信号
、及び、総光量が得られる。
【0133】
この方法の一例を図26bに示す。この図は、図23,25におけるAF検出回路89
,総光量検出回路102を示したものである。前後差動型AF誤差信号検出光学系の原理
図における前後の光検出器111,112は、受光面119,120または121,12
2からなる。前後光検出器面111,112での光スポット113,114の大きさが同
じくなれば合焦点である。各検出器についての和信号は、マーク列をスポットが走査する
帯域、すなわちデータ記録再生周波数帯域を持つ前置増幅器115,116で得る。次に
、サンプルホールド回路117,118によって、マーク上走査部分での信号を検出し、
サーボ帯域の期間ホールドする。このように得られた信号の差信号をAF誤差信号35,
和信号を総光量36として得る。サンプルホールド回路117,118は、光量の最大点
をサンプルするピークホールドでもよいし、あらかじめサンプル領域として、マークが記
録されない領域をフォーマットとして設けておき、サンプルタイミング用ピットなどによ
り、サンプル領域を認識し、その領域での信号をホールドしても良い。
【0134】
ここでは、焦点ずれ検出方法として、前後差動方式を示したが、他の焦点ずれ検出方法
である非点収差法,像回転法を用いてもよい。
【0135】
一方、目標層に層アクセスした後、当該層面でディスク半径方向の位置決めすなわちト
ラック位置決めを行う。トラックずれ信号検出は、図20に示すように、各層に案内溝3
9を設けることで公知例であるプッシュプル法を適用できる。この方法では、目標層以外
の層の溝からの回折光は、焦点がずれているために、溝にあたる光の波の位相が乱れてい
るので、光検出器上では一様な光量分布になり、目標層についてのトラックずれ信号に影
響は与えない。また、図22に示すように、各層にあらかじめウォーブルピット40をト
ラック方向に作りつけておくことで、公知例であるサンプルサーボ法を適用できる。以上
説明したスポット位置決めの技術は、公知例「特開昭63−231738号,特開平1−19535号,
特開平4−228112号」に示してある。ディスク上の案内溝,ウォーブルピットの作成法に
ついては後述する。
(5)記録制御方法
次に、(1)節で示した本発明の3次元記録方式の原理を達成する記録制御方法につい
て述べる。(1)で述べたように、記録目標であるk層に安定に記録するためには、k層
までの透過率42を考慮して記録パワーP(光強度)を設定しなければならない。そこで
、図6に示すように、記録条件設定回路20はアドレス認識41と記録目標であるk層ま
での透過率42を用いる。これを詳細に示した回路ブロック例を図7に示し、信号例を図
9に示す。
【0136】
図9において、2値化信号19をディスク上のマーク43として記録する場合、記録位
置による記録条件の違い、データパターンによる記録状態を考慮して、アドレス認識41
(l,m,k)に対して記録条件、例えば記録パルス幅設定,記録パワー設定条件をRO
M44,45に入力しておくことでD/A変換器46の出力に対応した光強度変調信号P
(t)47が得られ、理想の記録状態47のマークが記録できる。このような図7aの実
線で示した回路構成は次の場合に適用できる。
【0137】
データを記録する順番として、(2)(b)の場合、または、(1)(C)項を達成す
るための第3の方法を用い、かつ(2)(a)の場合において、目標層までの透過率42
(ΣTn(n=0,1,2…k−1))は、ディスク作成時で決まっているので、層アド
レスkが入力されば、既知として扱うことができる。
【0138】
上記以外の場合、記録時における層までの透過率42は、既知ではない。このような場
合、図7aの回路に点線で示した回路を付加する。パワー設定ROM45にはすべての層が
未記録状態におけるk層までの透過率を考慮した記録パワー設定値を入力しておく。
【0139】
アドレス認識41によって、ディスク出荷時(または設計値)のk層までの透過率ΣT
n(n=0,1,2…k−1)と、後述する方法で検出した記録直前のk層までの透過率
ΣTn′(n=0,1,2…k−1)42を割算回路47に入力し、透過率の変化分Gを
ゲインコントロール回路48に入力し、最適な記録パワーに設定されるようにする。
【0140】
この回路構成を適用できる一つの例を示す。(2)節で述べた「層データの管理層」を
設け、その内容をあらかじめ記録前に再生して認識しておき、かつ(1)(C)項を達成す
るための第3の方法を適用し、(2)節(c),(d)のデータ管理を行った場合、どの
層が記録されているのがわかれば、各層での光スポット内の記録後の透過率一定値で既知
であるので、k層までの透過率ΣTn′(n=0,1,2…k−1)42を求めることが
できる。
【0141】
もう一つの例は、記録する前に、あらかじめスポットを走査して透過率の変化Gを求め
る方法である。
【0142】
あらかじめ記録すべき領域を再生する方法としては、記録モードで初めのディスク1回
転で再生チェックを行ってから、次の回転で記録を行い、次の回転で記録エラーチェック
を行う。もう一つの方法は、図8に示すように複数スポットを用い、先行スポット49で
再生チェックを行う方法である。ここでは、後者を例にとって、説明する。再生チェック
では、先行スポット49についての受光した再生信号C′k(t−τ)を用いる。ここで
、τは、先行スポット49と記録用スポット51のスポット間距離を時間換算したもので
ある。ここで、透過率変化分Gを、図7bに示すように、記録目標層であるk層に焦点を
合わせた状態での再生信号Ck′とディスク出荷時での設計上の再生信号Ckとの比の平
方根として、演算器52を用いて求める。これは、再生信号は、反射光を用いているので
、k層までの透過率変化は2乗で再生信号に現われるからである。
【0143】
ただし、再生信号Ckの値は、ディスクフォーマットとして、あらかじめチェック領域
として、層方向に対して記録しない領域をディスク面内に設けておくことで、ディスク間
のバラツキ,ディスク内での光学的バラツキを吸収して検出できる。よって、精度の高い
記録パワー制御が可能となる。また、再生信号を得る光検出器10については、(1)節
(C)項を達成する第1の方法で述べたように、図1の形状にすることで、他の層からの
反射光の影響を低減でき、目標層からの反射成分を再生信号として検出できるので、より
高精度な透過率変化分Gを求めることができる。図9に示すように、ゲインコントロール
を行わない場合の記録状態53は理想の記録状態47と異なるが、記録パワーのゲインコ
ントロールを行いG×P(t)で記録をおこなうことで、理想記録状態47を得ることが
できた。
(6)再生制御方法
次に、本発明の再生方式を達成する図6に示した再生制御回路25を詳細に説明する。
ここでは、(1)節で示したような第1から第3の方法である層間クロストークを低減す
る再生の原理に加え、さらに層間の距離を縮めて高密度化を図る場合に生じるデータ信号
帯域の層間クロストーク成分または、光学系の理想状態からのずれが生じた場合に生じる
層間クロストーク成分を抑圧する第4の方法について示す。第4の方法は、第1の方法で
示したような目標層からの反射光成分の検出に加え、特に層間クロストークの大部分を占
める隣接層からの反射光成分も検出し、両者が互いに含んでいる成分を演算によって取り
除くことで、目標層の反射光成分を抽出する。
【0144】
ここで、図17aに光学系を示す。基本構成は、図1と同じであるが、さらに、光検出
器54と55をk層に焦点を合わせたときの受光面側での隣接層(k+1),(k−1)
の結像面に位置づける。ただし、図17aの配置では、お互いに遮光してしまうので、図
17bに示すように、結像系にハーフミラーまたは、ビームスプリッタ56,57を挿入
する。光検出器10,54,55の形状は直径D=(λ/NAI)とするが、図17Cの
ように、ピンホールを用いてもよい。この場合の各光検出器で検出される再生信号を図1
4に示す。
【0145】
ここでは、光検出器10についての再生信号Ck,光検出器55についての再生信号C
(k−1)と光検出器54についての再生信号C(k+1)を示す。再生信号を得るため
の回路を図13に示す。ただし、図17の系では、積分回路59,60,遅延回路61,
62は必要ない。図14に示すように、第1〜第3の方法を満足する隣接層と目標層との
間隔よりも小さくなった場合、k層面のマーク配列71をスポット69が走査したときに
得られる層間クロストークのない再生信号73が、再生信号72のように変動する。これ
は、k層面でのスポット69の走査とともに、隣接層に焦点がずれて照射されているスポ
ット70が隣接上のマーク配列74を走査してために検出される再生信号64ともう一方
の隣接層についての再生信号63の成分が、再生信号73に対して無視できないくらい含
まれるためである。そこで、図13に示すように、演算回路66で次式の演算を行う。
【0146】
Ck≒CkR+β×C(k−1)R+β×C(k+1)R
C(k−1)≒C(k−1)R+β×CkR+β×C(k−2)R
C(k+1)≒C(k+1)R+β×CkR+β×C(k+2)R (数22)
ただし、CnRは、n層からだけの反射光についての再生信号成分を表わす。ここでβ
<1が成り立っている。上式より、
演算 F≡Ck−γ×C(k−1)−γ×C(k+1)
≒CkR+β×C(k−1)R+β×C(k+1)R
−γ×{C(k−1)R+β×CkR+β×C(k−2)R}
−γ×{C(k+1)R+β×CkR+β×C(k+2)R}
(数23)
C(k−2)R,C(k+2)Rは、十分小さく、周波数成分も低いので無視できる。
よって、
F≒(1−2γβ)×CkR+(β−γ)×C(k−1)R
+(β−γ)×C(k+1)R (数24)
ここで、γ≡β<1とすると、
F≒(1−β2)×CkR (数25)
となり、層間クロストークを抑制でき、演算後の再生信号68は、図14に示すように、
再生信号73と一致する。以上の第4の方法を達成する別の構成として複数スポットを用
いた例を以下に示す。図14において、焦点ずれスポット70と同じスポット径のスポッ
ト75を2つの隣接層に、スポット69に先行させて走査し、再生信号を得る。ただし、
図13に示すように、スポット間隔に相当した遅延回路61,62を挿入して、上記と同
様の演算を行う。この構成に用いる光学系の一例を図18に示す。図では、光学系の原理
を示すため光軸を3つに分けて示してあるが、絞り込みレンズ8を共用した場合も可能で
ある。先行する隣接層に焦点を結ぶスポット75,82のスポット径を(2d×NAF)
にするための手段として、一つは、図に示すように、絞り83を挿入して、絞り込みレン
ズ8についての実効的開口を小さくする。すなわち、有効径a′をλ/(2d×NAF2)
×aにすればよい。もちろん、3つの光軸に分けて、先行する2つの光学系の絞り込みレ
ンズの開口数を小さくしても同様の効果が得られる。すなわち、NAF′=λ/(2d×
NAF)とする。
【0147】
これまでは、先行するスポットを図14に示すスポット形状75に限定したが、例えば
、図15に示すスポット形状76、または、図16に示す3個のスポット77,78,7
9でも同様の効果が得られる。そのために、図13の回路に積分回路59,60を挿入す
る。図15において、先行スポットからの再生信号にスポットの強度分布であるガウシア
ン分布を例えば、三角分布に近似して得られる重み関数80を掛けて積分を行うことで、
実効的にスポット75がマーク列74を走査している場合の再生信号を得ることができる
。図16についても、2次元方向のスポット強度分布を考慮して重み関数81を用いれば
よい。
【0148】
ここで、演算回路で用いる重み設定回路67において、βを求める方法を述べる。図1
9に示すように、ディスクフォーマットとして、少なくても上下3層間でマーク記録領域
84が、同一光束に含まれないように配置することで、図14に示すように、h(k−1
)/hk,h(k+1)/hをβ(−1),β(+1)とすることで上下層についての、重
みをそれぞれ求めることができる。
【0149】
これまでの実施例では、基本的に1つの層について、記録再生を行う場合について述べ
たが、複数スポットを用い、各々の層について焦点を合わせることで、2つ以上の層につ
いて同時に記録再生できる、すなわち、並列記録再生が可能となり、データの転送レート
を高くすることができる。複数スポットを形成するための手段は、複数の光ヘッド22を
同一ディスク上に位置づけても良いし、複数の光源をひとつの光ヘッドに組み込んでも良
い。また、異なる波長の光源を複数光源とすることで、波長による記録層の選択記録が可
能であり、さらに、波長フィルタによる再生分離が可能である。
(7)ディスク構造実施例とディスク作成法
図11に示すように、直径130mm,厚さ1.1mm のディスク状化学強化ガラス板の表
面に、フォトポリメリゼーション法(2P法)によって、1.5μm ピッチのトラッキン
グ用の案内溝と、一周を17セクターに分割し各セクターの始まりで溝と溝の中間の山の
部分に凹凸ピットの形で層ののアドレス,トラックアドレスやセクターアドレスなどのプ
リピット(この部分をヘッダー部と呼ぶ)とを有する紫外線硬化樹脂層を形成したレプリ
カ基板を作製した。
【0150】
上記レプリカ基板401上に膜厚の均一性,再現性のよいスパッタリング装置を用いて
、窒化シリコンの反射防止層402を約50nmの厚さに形成した。次に、同一スパッタ
リング装置内でIn54Se43Tl3 の組成の記録膜403を10nmの厚さに形成した
。この上に、透明な型を用いて型の側から光を入射させる2P法によって、トラッキング
用の案内溝と、層のアドレス,セクターアドレス,トラックアドレスなどのプリピットを
有する紫外線硬化樹脂層404を、多層との断熱効果を考慮して、30μmの厚さに形成
した。
【0151】
さらに続いて、上記スパッタリング装置内で窒化シリコンの反射防止層405を約50
nmの厚さに形成した上にIn54Se43Tl3 の組成の記録膜406を10nmの厚さ
に形成し、この上に2P法によって、トラッキング用の案内溝と層のアドレス,トラック
アドレスやセクターアドレスなどのプリピットとを有する紫外線硬化樹脂層407を30
μmの厚さに形成した。さらにこの上に、上記スパッタリング装置内で窒化シリコンの反
射防止層408を約50nmの厚さに形成した上にIn54Se43Tl3 の組成の記録膜
409を10nmの厚さに形成した。
【0152】
同様にしてもう一枚の同様なレプリカ基板401′上に、窒化シリコン反射防止層40
2′,In54Se43Tl3記録膜403′,紫外線硬化樹脂層404′,窒化シリコン反射
防止層405′,In54Se43Tl3 記録膜406′,紫外線硬化樹脂層407′,窒
化シリコン反射防止層408′,In54Se43Tl3 記録膜409′、を順次形成した
。このようにして得た2枚のディスクを層409及び409′側を内側にして接着剤層4
10によって貼り合わせを行った。接着剤層410の厚さは、50μm程度である。この
ようにディスクを作成することで、1枚のディスクで、両面からそれぞれ記録再生が可能
となる。
【0153】
以上のディスク作成例では、プッシュップルトラッキング用の案内溝39について説明
したが、サンプルサーボ法に用いるウォーブルピット40についても、上述のプリピット
と同様の方法で作成できる。
【0154】
本実施例で作製したディスクはレーザ光照射によって記録膜構成原子の原子配列変化を
生じさせることにより、光学定数を変化させ反射率の違いを利用して読み出しを行なうも
のである。ここでの原子配列変化は結晶,非晶質間の相変化である。
【0155】
上記ディスクにおいて記録膜製膜直後は記録膜構成元素がまだ十分に反応しておらず、
また、非晶質状態である。本ディスクを追記型として用いる場合には、ここに記録用レー
ザ光を照射して結晶化記録を行なうか、または、予めArレーザ光照射またはフラッシュ
アニール等で記録膜を加熱し、各元素を十分反応,結晶化させた後、パワー密度の高い記
録用レーザ光を照射して非晶質化記録を行なう。ここで、結晶化記録するのに適当なレー
ザパワーの範囲は、結晶化が起こる温度より高く、非晶質化が起こる温度より低くなる範
囲である。また、非晶質化記録するのに適当なレーザパワーの範囲は、結晶化する温度よ
り高く、強い変形を生じたり穴があく温度よりも低い範囲である。また、本ディスクを書
き換え可能型として用いるには、予めArレーザ照射またはフラッシュアニール等で記録
膜を加熱し、各元素を十分反応、結晶化させた後、結晶化するのに適当なレーザパワーと
非晶質化するのに適当なレーザパワーとの間で変調した記録用レーザ光を照射してオーバ
ーライトを行なう。
【0156】
上記ディスクを1800rpmで回転させ、半導体レーザ光(波長780nm)を記録が
行われないパワーレベル(1mW)に保って、記録ヘッド中のレンズ(NA=0.55)で
集光して基板を通して一層の記録膜に照射し、反射光を検出することによって、トラッキ
ング用の溝と溝の中間に光スポットの中心が常に一致するようにヘッドを駆動した。溝と
溝の中間を記録トラックとすることによって溝から発生するノイズの影響を避けることが
できる。このようにトラッキングを行いながら、さらに記録膜上に焦点が来るように自動
焦点合わせをして、記録・再生を行う。記録を行う部分を通り過ぎれば、レーザパワーを
1mWに下げてトラッキング及び自動焦点合わせを続けた。なお、記録中もトラッキング
及び自動焦点合わせは継続される。この焦点合わせは上記ディスク中の記録膜403,記
録膜406,409それぞれ独立に合わせることができる。
【0157】
上記構成のディスクを線速度8m/s(回転数1800rpm,半径42.5 mm)とし
て、基板側から順に下層に向かって記録する場合を示す。まず、記録膜403に焦点を合
わせ、記録周波数5.5MHz で90nsの記録パルスを照射して記録した。この時の再
生信号強度の記録パワー依存性を以下に示す。
【0158】
記録パワー(mW) 再生信号強度(mV)
6 30
7 100
8 160
9 210
10 250
11 280
12 300
14 310
記録膜403に記録した後にさらに記録膜406に焦点を合わせて記録した。この時の
再生信号強度の記録パワー依存性を以下に示す。
【0159】
記録パワー(mW) 再生信号強度(mV)
7 25
8 95
9 155
10 205
11 245
12 275
13 295
15 305
記録膜403および記録膜406に記録した後にさらに記録膜409に焦点を合わせて
記録した。この時の再生信号強度の記録パワー依存性を以下に示す。
【0160】
記録パワー(mW) 再生信号強度(mV)
8 20
9 90
10 150
11 200
12 240
13 270
14 290
16 300
また、記録膜403に3MHz、記録膜406に4MHz、および記録膜409に5MH
zの信号をそれぞれ記録した後、記録膜403,406および409に焦点を合わせて再
生信号を読み出した結果を以下に示す。
【0161】
再生信号は、スペクトルアナライザーを用い、測定条件として、分解周波数幅30kH
zとした各キャリア周波数におけるCN比(ノイズ成分対キャリア成分比)の測定結果で
示す。
【0162】
3MHz 4MHz 5MHz
記録膜403 55dB 23dB 6dB
記録膜406 25dB 53dB 21dB
記録膜409 10dB 23dB 51dB
上記の様に、各層について、CN比が50dB以上、隣接記録膜からの層間クロストー
クが−25dBより小さく、信頼性の高い再生が可能な信号を得ることができた。
【0163】
次に、記録膜403,406および、409としてGe14Sb29Te57の組成の薄膜を
2nmの厚さに形成し、反射防止層402,405および、408としてZnSの薄膜を
50nmの厚さに形成し、その他の構成は上記ディスクと全く同じディスクを作製した。
このディスクでは、記録した後の層の透過率が低下する特徴を持つ。そのため、基板側の
層から記録していくことで、上記構成のディスクを線速度8m/s(回転数1800rp
m,半径42.5 mm)として、下層から、基板側の上層に順に記録する場合について示す
。まず、記録膜409に焦点を合わせ、記録周波数5.5MHz で90nsの記録パルス
を照射して記録した。この時の再生信号強度の記録パワー依存性を以下に示す。
【0164】
記録パワー(mW) 再生信号強度(mV)
7 15
8 85
9 145
10 195
11 235
12 265
13 285
15 295
記録膜409に記録した後にさらに記録膜406に焦点を合わせて記録した。この時の
再生信号強度の記録パワー依存性を以下に示す。
【0165】
記録パワー(mW) 再生信号強度(mV)
7.5 20
8.5 90
9.5 150
10.5 200
11.5 240
12.5 270
13.5 290
15.5 300
記録膜409および記録膜406に記録した後にさらに記録膜403に焦点を合わせて
記録した。この時の再生信号強度の記録パワー依存性を以下に示す。
【0166】
記録パワー(mW) 再生信号強度(mV)
8 25
9 95
10 155
11 205
12 245
13 275
14 295
16 305
また、記録膜409に5MHz、記録膜406に4MHz、および記録膜403に3MH
zの信号をそれぞれ記録した後、記録膜403,406および409に焦点を合わせて読
み出した再生信号の各キャリア周波数におけるCN比の測定結果を以下に示す。
【0167】
3MHz 4MHz 5MHz
記録膜403 54dB 24dB 7dB
記録膜406 26dB 52dB 22dB
記録膜409 11dB 24dB 50dB
上記の様に、各層について、CN比が50dB以上、隣接記録膜からの層間クロストー
クが−25dBより小さく、信頼性の高い再生が可能な信号を得ることができた。
【0168】
基板としては、上記実施例で用いた化学強化ガラス円板の他に、射出成形で作製したポ
リカーボネート,アクリル樹脂等のプラスチック円板を用いても同様な結果が得られた。
【0169】
記録膜組成としては上記のIn−Se−Tl系の他に、Ge−Sb−Te系,Ge−S
b−Te−M(Mは金属元素)系,In−Sb−Te系,In−Sb−Se系,In−S
e系,In−Se−M(Mは金属元素)系,Ga−Sb系,Sn−Sb−Se系,Sn−
Sb−Se−Te系等を用いても、同様な結果が得られる。
【0170】
記録膜として、上記の結晶,非晶質間相変化を利用したものの他に結晶,結晶間相変化
を利用したIn−Sb系等を用いても、同様な結果が得られる。
【0171】
図11と同様な基板上に、記録膜として、直径20nmのBi置換ガーネット(YIG
(Y3Bi3Fe1024))粒子を有機バインダーに分散させたものをスピンコートして作
製した。直径20nmのBi置換ガーネットは共沈法で作製し、その後600から800
℃で熱処理して結晶化させた。有機バインダーは屈折率が25のものを用いた。スピンコ
ートした記録膜の膜厚は約1.5μm で、反射率,透過率,吸収率は、波長530nmで
それぞれ、R=8%,T=12%,K=80%であった。Bi置換ガーネットのバインダ
ー中での体積比率が約60%であるため、このときの反射光の偏光面の回転角は、約0.
8 度であった。紫外線硬化樹脂層を間に設けて多層に積み上げる方法,二枚のディスク
を張り合わせる方法,記録再生方法は前述の実施例と同様にした。ただし、光源の波長は
λ=530nmとする。
【0172】
図12に示す構成の情報記録媒体を用いて、記録再生実験を行った例について述べる。
図12(a)は情報記録媒体の断面図の一部分を示す図であり、図12(b)は記録層の
部分の断面図を示す図である。
【0173】
直径13cm,厚さ1.2mm のディスク状ガラス基板(411)上に、トラックピッチ1.
5μm のレーザ光案内溝を厚さ50μmの紫外線硬化樹脂層(412)で形成した。次に
、記録層(413)を真空蒸着法で積層した。記録層は図10(b)に示すように、厚さ8μ
mのSb2Se3層(414)で厚さ3μmのBi層(415)をサンドイッチした構成とした。
さらにその上に、レーザ光案内溝を設けた厚さ30μmの紫外線硬化樹脂層(412)と、
記録層(413)の組を2層積層した。すなわち記録層を3層設けた。最上部には記録層を
保護する目的で厚さ100μmの紫外線硬化樹脂層を設けた。記録層は基板に近い側から
順に、第1記録層,第2記録層,第3記録層と呼ぶことにする。
【0174】
ここでトラック溝はU字型とし、ランド部とグルーブ部の幅はそれぞれ0.75μmとした
。記録はランド部またはグルーブ部のいずれに行っても良いが、本実施例の場合には、グ
ルーブ部に記録を行った。
【0175】
2.0mW のレーザ光を各記録層に焦点を合わせて照射し、反射率を測定したところ、
記録前の第1記録層,第2記録層,第3記録層の反射率はそれぞれ、8.5%,5.8%,
4.4%であった。記録は各記録層に6.0mW以上のレーザ光を照射することによって行
った。第1記録層,第2記録層,第3記録層の記録レーザ光を照射した部分の反射率はそ
れぞれ、18.5%,13.0%,9.4%であった。
【0176】
このように記録前後で記録層の反射率が変化する理由は、記録層の合金化によるもので
ある。すなわち記録レーザ光の照射によって、Sb2Se3とBiの3層からなる記録層の
一部分が昇温されると、SeとBiの拡散反応が生じ合金化する。この結果、記録層に光
学定数の異なった領域、すなわち記録点が形成される。なお、本実施例で用いたSb2
3とBiからなる記録層の場合には、合金化のよって反射率と透過率の両方が増加し、
吸収率が減少する。
【0177】
本実施例では行わなかったが、記録前に、ランド部に連続レーザ光を照射しておけば、
ランド部が合金化し、記録層一層当たりの平均の光透過率が10%上昇する。したがって
、上で述べた記録前後の反射率がそれぞれ増加するので、トラッキング等を行う際都合が
良い。また、ランド部とグルーブ部の両方に記録を行っても同様に、記録層一層当たりの
平均の光透過率を上昇させることができる。記録層はSb2Se3とBiの組合せに限られ
るものではなく、昇温により合金を生じる組合せであれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】本発明の記録再生方式の原理を示す図(第1の再生方式の原理図)。
【図2】本発明に適用する基本光学系構成図でaは平行光学系の例、bは拡散光学系の例。
【図3】本発明の記録方式の原理図で、aは各層における光強度を示す図、bはk層に焦点を合わせた場合についての他の層でのスポット面密度を示す図、cはk層に焦点を合わせた場合についての他の層でのパワー密度を示す図。
【図4】本発明第2,3の再生方式の原理図。
【図5】本発明のディスクフォーマットの一例を示す図。
【図6】本発明の3次元記録再生装置の全体構成図。
【図7】本発明の記録制御方法を示すブロック図。
【図8】先行ビームによるRBW(Read Before Write)を示す図。
【図9】本発明の記録制御方法を説明する図。
【図10】3層膜構造の一例と記録特性を示す図、aは3層膜構造の一例、bは記録特性。
【図11】本発明の実施例に用いた相変化型の情報記録用媒体の構造を示す断面図。
【図12】本発明に用いた第3の情報記録用媒体の部分断面図。
【図13】本発明の再生制御方法を示すブロック図。
【図14】本発明の再生制御方法を説明する図。
【図15】本発明の再生制御方法を説明する図。
【図16】本発明の再生制御方法を説明する図。
【図17】本発明の再生制御方法を実現するための光学系の一例、aは光学系の原理図、bは実際の光学系。
【図18】本発明の再生制御方法を実現するための光学系の一例。
【図19】演算係数γ(≡β)チェック領域及び原理図。
【図20】本発明の第3の再生方法を実現するディスク構造。
【図21】2次元記録再生方式を適用した例。
【図22】2次元記録再生方式を適用した例。
【図23】本発明における層アクセスを説明するブロック図。
【図24】各層における焦点ずれ検出を示す図。
【図25】本発明における層アクセスを説明するブロック図。
【図26】記録された層における焦点ずれ検出を示す図、aは記録された層における焦点ずれ信号、bは本発明の焦点ずれ検出を示す図。
【図27】本発明の隣接層間の反射光の干渉を低減する方法の説明図。
【符号の説明】
【0179】
1…記録層、2…中間層、3…基板、4…ディスク、5…半導体レーザ、8…絞り込み
レンズ、9…像レンズ、10…光検出器、11…光スポット、12…焦平面、13…目標
層についての無収差時光学的特性関数、14…隣接層についての光学的特性関数、15…
焦点ずれが増加した場合の特性関数の変化する方向、16…AGCの周波数特性、20…
記録条件設定回路、23,24…再生信号、25…再瀬制御回路、26…AGC回路、3
5…AF誤差信号、36…総光量、39…案内溝、40…ウォーブルピット、41…アド
レス認識、42…k層までの透過率、43…マーク、44,45…ROM、46…D/A
変換器、47…理想の記録状態のマーク、49…先行スポット、51…記録用スポット、
52…演算器、53…ゲインコントロールを行わない場合の記録状態、54,55…光検
出器、56,57…ビームスプリッタ、59,60…積分回路、61,62…遅廷回路、
63,64,68…再生信号、67…重み設定回路、69…k層面に焦点ずけられたスポ
ット、71…k層面のマーク配列、72,73…再生信号、74…マーク列、75,76
,77,78,79,82…隣接層に焦点を結んだスポット、80,81…重み関数、8
3…絞り、84…マーク記録領域、86…2−7変調方式を用いた場合の変調信号のパワ
ースペクトル、87…EFM変調方式を用いた場合の変調信号のパワースペクトル、88
…スペクトルの折れ点、91…AFアクチゥエータ移動信号発生回路、92…引込み点判
定回路、95…レイヤー番号検出回路、100…スイッチ、101…クロスレイヤー信号
検出回路、103…スライスレベル、105…ゼロクロス点、109…アップパルス、1
10…ダウンパルス、111,112…光検出器、113,114…前後光検出器面での
光スポット、115,116…前置増幅器、117,118…サンプルホールド回路、1
19,120,121,122…受光面、123…記録された層付近でのAF誤差信号、
124…記録された層付近での総光量、401,401′…レプリカ基板、402,40
2′,405,405′,408,408′…反射防止層、403,403′,406,
406′,409,409′…記録膜、404,404′,407,407′…紫外線硬
化樹脂層、410…接着剤層、411…ガラス基板、412…紫外線硬化樹脂層、413
…記録層、414…Sb2Se3層、415…Bi層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報が記録されている複数の記録層を有する媒体の、第1の記録層に光スポットを収束
させる工程と、
前記光をスポットを収束させている第1の層のアドレスを読取る工程と、
前記第1の層とは異なる第2の層を指定する工程と、
前記第1の層から前記第2の層までの光スポット移動層数及び移動方向を認識して信号
を発生する工程と、
前記信号を光スポットを移動させる手段に入力する工程と、
前記入力された信号に基づいて、前記光スポットを移動させる工程とを有し、
前記信号は、前記光スポットの前記複数の記録層の1層間の移動に対し、極性の異なる1
対のパルスで構成され、移動方向によって前記極性を入れ替えることを特徴とする層アク
セス方法。
【請求項2】
情報が記録されている複数の記録層を有する媒体の、第1の層に光スポットを収束させ
る層アクセス方法において、
前記光スポットの焦点位置が、前記記録媒体の最上層から最下層まで移動するように、
光スポット移動手段の移動信号発生回路からのこぎり波を発生させ、前記光スポット移動
手段を駆動させる工程を有することを特徴とする層アクセス方法。
【請求項3】
複数の記録層を積層した媒体の第1の記録層に光スポットを照射することにより情報を
記録する情報記録方法において、前記複数の記録層の最上層から最下層の順又は最下層か
ら最上層の順で光スポットを移動させ、情報を記録することを特徴とする情報記録方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2007−200541(P2007−200541A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44859(P2007−44859)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【分割の表示】特願2004−52697(P2004−52697)の分割
【原出願日】平成3年10月11日(1991.10.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】