説明

情報記録装置

【課題】 情報記録装置に関し、ランプと光学系との干渉を解消して、ランプと光照射用の光学系とを両立する。
【解決手段】 記録媒体に情報を記録するとともに光照射機構を備えたヘッド2が設置されたアーム1を制御して記録媒体に対する情報の記録を行い、記録時以外にはヘッド2を記録媒体外へ退避する退避機構6を有する情報記録装置に、ヘッド2に光を入射する光入射手段4と、ヘッド2を有するアーム1の退避機構6を一体化した光入射・退避機構3を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報記録装置に関するものであり、特に、磁気ディスク装置における高密度化に対する熱揺らぎの問題を解決し、記録媒体に情報を高速記録・再生する熱アシスト構成を小型磁気ディスク装置で実現するための構成に特徴のある情報記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ機器における情報記録装置としての磁気ディスク装置等の容量増加に伴い、情報を記録する記録媒体の記録密度が増加している。磁気ディスク装置では、記録媒体に対する情報の読み書きは、磁気ヘッドによって行われているので、ここで、図7及び図8を参照して、従来の磁気ディスク装置を説明する。
【0003】
図7参照
図7は、従来の磁気ディスク装置の概略的平面図であり、スピンドルモータ41に回転自在に固定された磁気ディスク42、磁気ヘッドを備えたスライダ50を支持固定するヘッドサスペンション(スイングアーム)43、及び、ヘッドサスペンション43を駆動する電磁アクチュエータ44によって構成されている。
【0004】
この場合、電磁アクチュエータ44によってスライダ50を支持固定したヘッドサスペンション43を回転させて、磁気ヘッドを構成する書込ヘッドにより磁気ディスク42に情報を記録したり、或いは、磁気ヘッドを構成する再生ヘッドによって磁気ディスク42に記録された情報の再生を行っている。
このヘッドサスペンション43は、軽量、小型であるため、高速シーク、高速記録・再生が可能であるという利点を持っている。
【0005】
図8参照
図8は、従来のスライダの概略的斜視図であり、ここでは、単磁極型垂直記録ヘッドと呼ばれるヘッドの主磁極の長軸方向の中央において分断した斜視断面図として示している。
まず、スライダ50の本体部を構成する1mm角程度のAlTiC基板51に下部磁気シールド膜52、磁気抵抗素子53、及び、上部磁気シールド層54とからなる再生用磁気ヘッドと、補助磁極55、ライトコイル56、及び、主磁極57からなる書込用磁気ヘッドを積層し、AlTiC基板51のABS面側に突起(パッド)を設けることによって、スライダ50の基本構成が得られる。
【0006】
各磁気ヘッドはリソグラフィーを併用し、薄膜の作製技術を用いて作製され、再生用磁気ヘッドを構成する磁気抵抗素子53としては、例えば、MR素子、GMR素子、TMR素子等を用いている。
【0007】
また、書込用磁気ヘッドを構成する補助磁極55は、主磁極57からの磁束を磁気ディスク42に設けた裏打層を介してフィードバックする機能を有している。
また、主磁極57の先端を細くすることで、磁界を集中させ、記録磁界を発生させている。
【0008】
この場合、主磁極57は、磁石のN極またはS極に相当する独立した極(単磁極)となって情報を記録媒体に記録するため、このヘッドは単磁極ヘッドまたは単磁極型垂直記録ヘッドと呼ばれている。
この単磁極ヘッドを用いて情報を記録する場合には、主磁極57から磁界を発生させて、記録膜を付した磁気ディスク42に情報を記録する。
【0009】
磁気ディスク材料としては、CoPt等が従来から使われているが、CoPtに限られず、TeFeCoのような硬磁性金属の薄膜も、記録膜として利用することができ、この記録膜が磁気記録層となる。
そして、この磁気記録層を裏打層となるパーマロイなどの軟磁性薄膜上に重ね合わせることで、垂直記録用の記録媒体となる。
【0010】
ところで、磁気ディスク等の記録媒体にかかる単位面積当たりの記録容量を多くするためには、面記録密度を高くする必要があるが、この記録密度を高くするにしたがって、記録媒体上で1ビットあたりの占める記録面積(ビットサイズ)が小さくなってくる。
このビットサイズが小さくなると、1ビットの情報が持つエネルギーが、室温の熱エネルギーに近くなり、記録した磁化による情報が、熱揺らぎのため反転または消えてしまうという、いわゆる熱減磁の問題が発生する。
【0011】
即ち、記録密度を多くするためにビットサイズを小さくすると、磁性粒子を微細化する必要があり、一方、上述の熱揺らぎの問題を解決するためには、微細化した磁性粒子の体積をV、異方性定数をKuとし、熱揺らぎの問題が生じる温度のエネルギーをkTとすると、kTに対するKu×Vの比を60以上にする必要がある。
【0012】
ここで、kTに対するKu×Vの比を60以上にするためには、Kuの値を大きくする必要があるが、Kuの値を大きくすると情報を記録媒体に記録する際に用いる磁場を大きくする必要があり、そのような大きな磁場を発生させる記録用磁気ヘッドが実現できないため、記録媒体の大容量化が難しくなってきている。
【0013】
このため、磁気記録方式と熱アシスト記録方式を組み合わせる方法が提唱されている。
ここで、熱アシストとは、光を照射することで媒体の加熱を行って磁気記録層の保磁力を低下させて、低い記録磁界での書込を可能にする方法である。
【0014】
これは、高いKu、即ち、高い保磁力を持つ記録媒体を使う場合に、記録場所の近傍に局所的に光ビームを照射して加熱し、加熱部の保磁力を実現できる記録磁界以下に低下させて、これにより記録用磁気ヘッドにより磁気記録を可能にする。
【0015】
このような熱アシストの光学系としては、スイングアーム上にミラーおよびレンズなどを配置し空芯コイルによる磁場を用いて、半導体レーザ等から出力されるレーザ光を補助的に記録媒体の情報記録位置に照射して記録するものが提案されており(例えば、特許文献1参照)、この例では、MO(Magneto−Optic)などの光磁気ディスクに適用されている。
【0016】
また、スイングアーム上に半導体レーザを含んだ光学系を配置したものや(例えば、特許文献2参照)、或いは、光ファイバを用いて記録媒体にレーザ光を照射して熱アシストを行い磁気記録を行う技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0017】
さらには、光磁気ディスク装置の例ではあるが、リニアアクチュエータを利用して記録媒体にレーザ光を照射し、磁気記録を実行するという技術も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特願平09−326939号公報
【特許文献2】特開2001−034982号公報
【特許文献3】特開2002−298302号公報
【特許文献4】特開平06−131738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上述した従来技術では、熱アシスト用のレーザ光を記録媒体に照射すべく、光学系または光ファイバ等をスイングアーム上に配置していたため、スイングアームが重くなるという問題があった。
このように、スイングアームが重くなることによって、磁気ディスク装置の利点、すなわち、スイングアームの高速シークによる情報の高速記録または高速再生が行えなくなってしまうという問題があった。
【0019】
また、磁気ディスク装置に設置されたスイングアームの代わりに光ディスク装置で採用されているリニアアクチュエータを設置することも考えられるが、リニアアクチュエータを利用した磁気ディスク装置を新たに設計することは非常に困難であり、設計時間や設計コストなどの点において現実的ではないという問題がある。
また、アクセス速度などはきわめて遅くなり、磁気ディスクの持つ高速アクセス性能が損なわれてしまう。
【0020】
即ち、従来の磁気ディスク装置の利点を損なうことなく、磁気ディスクなどの記録媒体にレーザ光を照射して熱アシストを行い、情報の記録を行うことによって、当該記録媒体に発生する熱揺らぎの問題を解決することが極めて重要な課題となっている。
【0021】
そこで、上記の問題点に鑑みて、本出願人らは、磁気ディスク装置のスライダに対し、現状の構成を変えることなく、容易に、熱(光)アシストによる超高密度化を実現するために、外部からレーザ光をスライダの側面に垂直に入射させることで、効率良く光を照射することを提案している(必要ならば、特願2005−999527参照)。
【0022】
この提案において、半導体レーザの光を、所望の球面収差が発生できるレンズを通すことによって、スライダを通して記録媒体に微細なビームを均一に照射することができるので、ここで、図9乃至図11を参照して本出願人の提案による磁気ディスク装置を説明する。
【0023】
図9参照
図9は、本出願人の提案による磁気ディスク装置の概略的平面図であり、従来のスライダ50の代わりに磁気ヘッド部に光照射部材を備えたスライダ60を用いるとともに、外部からレーザ光をこのスライダの側面に垂直に入射させる照射光学系を設けたものである。
【0024】
この照射光学系は、従来の磁気ディスク装置に備えられていたエアフィルタの設置場所を利用して設けたものであり、半導体レーザ81、集束レンズ82、MEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラー83、シリンドリカルレンズ84、ミラー85、及び、球面収差レンズ86から構成される。
なお、MEMSミラー83は、磁気ディスクの積層枚数に応じて多段に組み立てた各スイングアームへの光路の切替えのために設けられている。
【0025】
半導体レーザ81からのレーザ光は、集束レンズ82でMEMSミラー83のミラー面に集束し、反射され、反射されたレーザ光は、シリンドリカルレンズ84で一方向(紙面と直交方向)は平行光になり、ミラー85に入射する。
入射したレーザ光はミラー85によって反射させたのち、球面収差レンズ86を介してスライダ60の側面の光入射口に全面的に照射され、これにより、スライダを通して記録媒体に微細なビームを均一に照射することができる。
【0026】
図10参照
図10は、レーザ光のスライダ60の側面への照射状態の説明図であり、球面収差レンズ86によってレーザ光を各方向に拡散させているので、スイングアームの各回転角度でスライダ側面の光入射口にレーザ光を垂直に入射することができる。
【0027】
この場合、スイングアームの回転中心からスライダの光入射口までの距離を32mm、スライダのスイングは磁気ディスクの回転中心からの半径が17mmから30mmまで間をスイングするとし、スライダが最内周にあるときの垂直のレーザ光の光入射口からディスク外周に向かう距離を25mmとしている。
なお、ディスク半径は35mmを想定している。
【0028】
スライダに光を入射させる角度は種々の角度が考えられるが、上記の提案においては、スライダの側面に垂直に入射させるように構成しているので、磁気ディスク装置内のスペースや、光学系の設計、スライダ作製が容易になる。
【0029】
図11参照
図11は、本出願人の提案による磁気ディスク装置に搭載するスライダのヘッド部の構成説明図であり、通常の磁気ディスク装置で利用されるヘッドと同様に、ウェーハ処理で記録用・再生用磁気ヘッドと同時に作製することによって、ヘッド作製コストなどを抑えている。
【0030】
具体的には、スライダ60の本体部を構成するAlTiC基板61の端面に下部磁気シールド膜62、磁気抵抗素子63、及び、上部磁気シールド層64とからなる再生ヘッドを形成したのち、バルクガラスをプリズム加工して形成した厚さが、例えば、200μmの反射ミラー65を貼り付ける。
なお、反射ミラー65によって反射されたレーザ光は、ビーム径が80μmになるように設計されている。
【0031】
次いで、反射ミラー65上に例えばSiO2 からなるクラッド66,68と例えばTa2 5 からなるコア67とからなる光照射部材が設けられる。
なお、クラッド66の欠落部にはコア部材からなる光入射口69が設けられており、また、光照射口70側にはSiO2 からなる一対の絞り部材71が設けられており、この絞り部材71によって光照射口70の開口長は例えば、1μmになる。
【0032】
次いで、この光照射部材をAl2 3 膜72で覆って平坦化したのち、再び、従来と同様の成膜工程を用いて主磁極73、ライトコイル74、及び、補助磁極75からなる書込用磁気ヘッドを形成し、最後に全体を再びAl2 3 膜76で被覆したものである。
なお、図から明らかなように、光照射による熱アシストをより効果的にするために、AlTiC基板61に近い側、即ち、光照射部材側を主磁極73としている。
【0033】
このように、本出願人の提案による磁気ディスク装置のヘッド部は、通常の磁気ディスク装置で利用されるヘッドと同様に、ウェーハ処理で、記録用・再生用磁気ヘッドと同時に作製し、スライダに搭載可能であるためヘッド作製コストなどを抑えることができる。
【0034】
また、スライダ60の側面にレーザ光を入射させるための光学系は、3.5インチ程度の磁気ディスクの場合には、エアフィルタの設置場所を利用して設置しているので、現状の構成を変えることなく、容易に熱(光)アシストによる超高密度化が可能になる。
【0035】
しかしながら、上述の提案に係る構成を、2.5インチ以下などの小型磁気ディスク装置に適用するときに、現在使用されている磁気ディスクヘッドを退避するランプ部分と干渉し、小型化が難しいという課題があった。
【0036】
即ち、3.5インチ小型磁気ディスク装置では、ヘッドは媒体面に置かれていたが、2.5インチ以下の小型磁気ディスク装置では、モバイル用途などで衝撃が加わっても媒体面で傷が付かないように、記録或いは読み取りで使用しないアンロード時に、ヘッドはランプという退避機構に退避する構成がとられている。
【0037】
また、従来の3.5インチの磁気ディスク装置においてはアンロード時にヘッドを停止させて置く媒体面は非記録領域としていたが、ランプ構造を採用することにより、媒体面に非記録領域を設けることが不要になり、それによって、小さい磁気ディスクの容量の低下も防がれているので、ここで、図12乃至図14を参照してランプ構造を説明する。
【0038】
図12参照
図12は、小型磁気ディスク装置におけるアンロード時のヘッドサスペンションの退避状態の説明図であり、アンロード時にはヘッドサスペンション43はランプ90に退避して固定された状態となる。
なお、ロード時にはランプ90から離れて、従来と同様に磁気ディスク42上でシーク動作を行うことになる。
【0039】
図13参照
図13は、小型磁気ディスク装置に搭載されるヘッドサスペンションの斜視図であり、2.5インチ以下の小型磁気ディスク装置では、一般にスライダ50を支持する位置より先端部にタブ77と称される部位が設けられている。
【0040】
図14参照
図14は、ランプへの退避状態の説明図であり、傾斜面92、平坦面93、窪み部94を備えた第1押さえ部材91と第2押さえ部材95によって構成され、各プラッタごとに、ヘッドサスペンションの先端部のタブ77は傾斜面92から入って、平坦面93を通過し、窪み部94において第2押さえ部材95によって押さえられて固定される。
【0041】
しかし、このようなランプ構造を採用した磁気ディスク装置において、スライダの側面に外部からレーザ光を垂直に入射させるために、本出願人の提案による光照射用の光学系を組み込もうとすると、ランプと光学系が機械的に干渉するため、光照射用の光学系を設置することができないという問題がある。
【0042】
したがって、本発明は、ランプと光学系との干渉を解消して、ランプと光照射用の光学系とを両立することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0043】
図1は本発明の原理的構成図であり、ここで図1を参照して、本発明における課題を解決するための手段を説明する。
図1参照
上記課題を解決するために、本発明は、記録媒体に情報を記録するとともに光照射機構を備えたヘッド2が設置されたアーム1を制御して記録媒体に対する情報の記録を行い、記録時以外にはヘッド2を記録媒体外へ退避する退避機構6を有する情報記録装置であって、ヘッド2に光を入射する光入射手段4と、ヘッド2を有するアーム1の退避機構6を一体化した光入射・退避機構3を備えたことを特徴とする。
【0044】
このように、ヘッド2に光を入射する光入射手段4とヘッド2を有するアーム1の退避機構6を一体化することによって、退避機構6と光入射手段4との干渉が回避されて省スペース化が可能になり、現状の構成を変えることなく退避機構6を有する情報記録装置における熱アシスト法の採用が可能になる。
【0045】
この場合の記録媒体としては、相変化型媒体、例えば、光ディスクも含まれるが磁気記録媒体が典型的なものであり、光照射機構によって光が照射された磁気記録媒体の光照射位置に、磁気によって情報を記録することによって、高密度記録化が可能になる。
なお、相変化型媒体の場合には、光照射のみによって情報を記録することになる。
【0046】
また、光入射手段4は光をヘッド2に対して一定の入射角度で、典型的は垂直に入射させることが望ましく、それによって、ヘッド2に備えられた光照射機構において光を効率的に取り込むことができる。
【0047】
また、光入射手段4は収差を発生させる収差発生手段5を備えているとともに、退避機構6が収差発生手段5からの反射光をヘッド2に向けて照射する光通過用間隙7を有していることが望ましく、それによって、アーム1がスイング状態にあっても常に安定に光入射を行うことができる。
【0048】
この場合の収差発生手段5としては、記録媒体面と平行な方向で曲率を有し、球面収差を発生する柱状凹面ミラー、特に、表面に誘電体多層反射膜が設けられた柱状凹面ミラーが典型的なものであり、透明なレンズ等を用いる場合に比べて光の透過率等が全く問題にならない利点がある。
【0049】
この場合、収差発生手段5として、複数の曲率面を媒体の厚み方向に有し、記録媒体の表裏面と同数で、複数の曲率面が互いに同じ曲率を有するように構成しても良いものであり、それによって、複数プラッタに同時にレーザ光を照射することが可能になる。
【0050】
また、収差発生手段5は、光入射・退避機構3と同じ材質で一体構成されていること、例えば、液晶ポリマーによって一体モールド成形されていることが望ましく、それによって、光入射・退避機構3の低コスト化が可能になる。
【0051】
また、収差発生手段5に、透過型レンズも設け、この透過型レンズを光入射・退避機構3に一体化して良い。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、光入射手段とアーム退避機構とを一体化しているので、省スペース化が可能になり、現状の構成を実質的に変えることなく退避機構を有する情報記録装置における熱アシスト法の採用が可能になり、それによって、熱揺らぎの問題を解決して高密度記録が可能になるとともに、高速シークによる高速記録化可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
本発明の情報記録装置は、熱アシストを行うためのレーザ光を出力する半導体レーザからのレーザ光をスイングアーム(ヘッドサスペンション)の先端部に取り付けられた光照射機構を有する磁気ヘッドの側面に一定の入射角度で、典型的に垂直に入射させるための収差発生手段を備えた光入射手段と磁気ヘッドの退避機構とを、例えば、液晶ポリマーによって一体モールド成形することによって一体構成したものである。
【実施例1】
【0054】
ここで、図2乃至図4を参照して、本発明の実施例1の磁気ディスク装置を説明する。
図2参照
図2は、本発明の実施例1の磁気ディスク装置の概略的平面図であり、スピンドルモータ11に回転自在に固定された磁気ディスク12、磁気ヘッドを備えたスライダ13を支持固定するヘッドサスペンション(スイングアーム)14、及び、ヘッドサスペンション14を駆動する電磁アクチュエータ15によって構成されている。
なお、スライダ13の構成は、図9に示した本発明者の提案に係る熱アシスト用スライダと全く同様である。
【0055】
また、筐体内には、半導体レーザ16、集束レンズ17、MEMSミラー18、シリンドリカルレンズ19、及び、光反射機構を一体化したランプ20が設けられており、半導体レーザ16からのレーザ光は、集束レンズ17でMEMSミラー18のミラー面に集束し、反射されたレーザ光は、シリンドリカルレンズ19で一方向(紙面に直交方向)は平行光になり、ランプ20に一体化された光反射機構に入射する。
入射したレーザ光は光反射機構によって反射されてスライダ13の側面の光入射口に全面的に照射される。
【0056】
図3参照
図3は、本発明の実施例1の磁気ディスク装置に設けるランプの概念的構成図であり、 傾斜面22、平坦面23、及び、窪み部24を備えた第1押さえ部材21と第2押さえ部材27とによって構成されるランプ部と表面には誘電体多層膜からなる反射膜30が設けられた円筒状凹面29を有する光反射部28とが液晶ポリマーによって一体成形されている。
【0057】
なお、円筒状凹面29の凹形状は、上述の球面収差レンズと同様に球面収差によってレーザ光を各方向に拡散させ、スイングアームの各回転角度でスライダ側面の光入射口にレーザ光を垂直に入射することができる形状としている。
【0058】
図4参照
図4は、本発明の実施例1の磁気ディスク装置に設けるランプの作用の説明図であり、ランプ部における動作としては、従来のランプ機構と全く同様に、各プラッタごとに、ヘッドサスペンションの先端部のタブ31は傾斜面22から入って、平坦面23を通過し、窪み部24において押さえ部材27によって押さえられて固定され、従来の磁気ディスクの退避と同様に高い信頼性が確保される。
【0059】
一方、光反射機構の作用としては、上述のようにシリンドリカルレンズ19で一方向(紙面と直交方向)は平行光になったレーザ光が円筒状凹面29の表面に設けた反射膜30によって反射され、反射されたレーザ光は第1押さえ部材21の先端部に設けた光通過部25或いは隣接する第1押さえ部材21同士の間隙26を介してスライダ13に向けて照射される。
【0060】
スライダ13の側面に垂直に入射したレーザ光は、上述の熱アシスト用スライダと全く同様に、バルクガラスをプリズム加工して形成した反射ミラーを介してSiO2 /Ta2 5 /SiO2 構造の光照射部材に導入され、導入されたレーザ光は光照射部材の先端部に設けられた光照射口から磁気記録媒体に向けて照射され、照射箇所を加熱して保磁力を低下させて磁気記録を行う。
【0061】
このように、本発明においては、半導体レーザからの光に対して所望の球面収差が発生できる光学素子と、磁気ヘッド退避用ランプを一体化させているので、小型で、かつ、容易に、均一に、スライダを通して、記録媒体に微細なビームを照射することができる。
また、光学系はランプ構造も含めて、モールド技術で作製しているので低価格で製造可能である。
【0062】
また、本発明においては、光学系の収差を反射面による収差を利用しているので、透過型の球面収差レンズでは問題となる材料の透過率などが全く問題にならない。
また、スライダに向かうレーザ光は、ランプ部に設けた光通過部25或いは間隙26を介して取り出しており、第1押さえ部材21がレーザ光を遮断することがない。
【0063】
このように、本発明の実施例1の磁気ディスク装置においては、小型化した場合にも、半導体レーザなどをスイングアーム以外の位置に配置し、情報記録時の熱アシストを行うので、モバイル用途などでも、磁気ディスク装置の利点を失うことなく、スイングアームの高速シークによる情報の高速記録・高速再生を行うことができる。
【実施例2】
【0064】
次に、図5を参照して本発明の実施例2の磁気ディスク装置を説明するが、ランプ以外の基本的構成は上記の実施例1の磁気ディスク装置と全く同じであるので、ここでは、ランプ構造のみを説明する。
図5参照
図5は、本発明の実施例2の磁気ディスク装置に設けるランプの概念的構成図であり、球面収差発生用の反射面をスライダと同数の同じ曲率を有する球面収差面を持つ反射面となる多段反射面32としたものである。
【0065】
このように、スライダと同数の同じ曲率を有する球面収差面を持つ反射面となる多段反射面32を用いることによって、上述の先願と同様に、複数プラッタを同時にレーザ光を照射することができる。
【実施例3】
【0066】
次に、図6を参照して本発明の実施例3の磁気ディスク装置を説明するが、この場合もランプ以外の基本的構成は上記の実施例1の磁気ディスク装置と全く同じであるので、ここでは、ランプ構造のみを説明する。
図6参照
図6は、本発明の実施例3の磁気ディスク装置に設けるランプの概念的構成図であり、ランプ20の光反射面に透明体による球面収差レンズ33を貼り付けたものである。
この場合の球面収差レンズ33は、モールド成形によるガラスレンズ或いはプラスティックレンズが好適であり、これを接着等で取付ければ良い。
【0067】
以上、本発明の実施例を説明してきたが、本発明は実施例に記載した条件・構成に限られるものではなく、各種の変更が可能であり、例えば、実施例においては、複数プラッタを同時に照射するのではなく、MEMSミラーによって光路を切り替えているが、光路切り替え手段はMEMSミラーに限られるものではなく、ガルバノミラーなどの可動式ミラーを用いても良いものである。
【0068】
また、スライダに入射させる光量を一層確保したい場合には、MEMSミラーなどを回転させることによって、レーザ光をX方向またはY方向に走査させれば良い。
【0069】
また、上記の実施例1における磁気ヘッド構造は、再生磁気ヘッドを、反射ミラーより左側(AlTiC基板側)に設置してあるが、必ずしもこのような配置にする必要はなく、書込ヘッドの右側に設置しても良いものである。
【0070】
また、上記の実施例1においては書込ヘッドを単磁極ヘッドとして説明しているが、単磁極ヘッドに限られるものではなく、面内記録ヘッドを用いても良いものである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の活用例としては、磁気ディスク装置が典型的なものであるが、磁気ディスク装置以外に、相変化型の光ディスクに対しても適応されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の原理的構成の説明図である。
【図2】本発明の実施例1の磁気ディスク装置の概略的平面図である。
【図3】本発明の実施例1の磁気ディスク装置に設けるランプの概念的構成図である。
【図4】本発明の実施例1の磁気ディスク装置に設けるランプの作用の説明図である。
【図5】本発明の実施例2の磁気ディスク装置に設けるランプの概念的構成図である。
【図6】本発明の実施例3の磁気ディスク装置に設けるランプの概念的構成図である。
【図7】従来の磁気ディスク装置の概略的平面図である。
【図8】従来のスライダの概略的斜視図である。
【図9】本出願人の提案による磁気ディスク装置の概略的平面図である。
【図10】レーザ光のスライダの側面への照射状態の説明図である。
【図11】本出願人の提案による磁気ディスク装置に搭載したスライダのヘッド部の構成説明図である。
【図12】小型磁気ディスク装置におけるアンロード時のヘッドサスペンションの退避状態の説明図である。
【図13】小型磁気ディスク装置に搭載されるヘッドサスペンションの斜視図である。
【図14】ランプへの退避状態の説明図である。
【符号の説明】
【0073】
1 アーム
2 ヘッド
3 光入射・退避機構
4 光入射手段
5 収差発生手段
6 退避機構
7 光通過用間隙
11 スピンドルモータ
12 磁気ディスク
13 スライダ
14 ヘッドサスペンション
15 電磁アクチュエータ
16 半導体レーザ
17 集束レンズ
18 MEMSミラー
19 シリンドリカルレンズ
20 ランプ
21 第1押さえ部材
22 傾斜面
23 平坦面
24 窪み部
25 光通過部
26 間隙
27 第2押さえ部材
28 光反射部
29 円筒状凹面
30 反射膜
31 タブ
32 多段反射面
33 球面収差レンズ
41 スピンドルモータ
42 磁気ディスク
43 ヘッドサスペンション
44 電磁アクチュエータ
50 スライダ
51 AlTiC基板
52 下部磁気シールド膜
53 磁気抵抗素子
54 上部磁気シールド層
55 補助磁極
56 ライトコイル
57 主磁極
60 スライダ
61 AlTiC基板
62 下部磁気シールド膜
63 磁気抵抗素子
64 上部磁気シールド層
65 反射ミラー
66 クラッド
67 コア
68 クラッド
69 光入射口
70 光照射口
71 絞り部材
72 Al2 3
73 主磁極
74 ライトコイル
75 補助磁極
76 Al2 3
77 タブ
81 半導体レーザ
82 集束レンズ
83 MEMSミラー
84 シリンドリカルレンズ
85 ミラー
86 球面収差レンズ
90 タブ
91 第1押さえ部材
92 傾斜面
93 平坦面
94 窪み部
95 第2押さえ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に情報を記録するとともに光照射機構を備えたヘッドが設置されたアームを制御して前記記録媒体に対する情報の記録を行い、記録時以外にはヘッドを記録媒体外へ退避する退避機構を有する情報記録装置であって、前記ヘッドに光を入射する光入射手段と、前記ヘッドを有するアームの退避機構を一体化した光入射・退避機構を備えたことを特徴とする情報記録装置。
【請求項2】
上記記録媒体は磁気記録媒体であり、上記光照射機構によって光を照射された前記磁気記録媒体の光照射位置に、磁気によって情報を記録することを特徴とする請求項1に記載の情報記録装置。
【請求項3】
上記記録媒体は相変化型媒体であり、上記光照射機構によって光を照射することのみによって情報を記録することを特徴とする請求項1に記載の情報記録装置。
【請求項4】
上記光入射手段は、光を上記ヘッドに対して一定の入射角度で入射させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報記録装置。
【請求項5】
上記光入射手段は収差を発生させる収差発生手段を備えているとともに、上記退避機構が前記収差発生手段からの反射光を上記ヘッドに向けて照射する光通過用間隙を有していることを特徴する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の情報記録装置。
【請求項6】
上記収差発生は、上記退避機構において、記録媒体面と平行な方向で曲率を有することで発生することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の情報記録装置。
【請求項7】
上記収差が、球面収差であることを特徴とする請求項5または6に記載の情報記録装置。
【請求項8】
上記収差発生手段は、複数の曲率面を媒体の厚み方向に有しており、上記記録媒体の表裏面と同数であり、前記複数の曲率面は互いに同じ曲率であることを特徴とするは請求項5乃至7のいずれか1項に記載の情報記録装置。
【請求項9】
上記収差発生手段は、上記光入射・退避機構と同じ材質で一体構成されていることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか1項に記載の情報記録装置。
【請求項10】
上記収差発生手段は、透過型レンズも備えており、前記透過型レンズが上記光入射・退避機構に一体化されていることを特徴とする請求項5乃至9のいずれか1項に記載の情報記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−10083(P2008−10083A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−180111(P2006−180111)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構、「大容量光ストレージ技術の開発」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】