説明

情報集配信装置の対向試験装置および対向試験方法

【課題】 作業員などが現地に行くことなく、情報集配信装置の対向試験を行うことを可能にする。
【解決手段】 シミュレーション装置2と模擬子局装置3とを制御所Sに配設し、シミュレーション装置2によって制御され、情報中継装置Taの所定の遠隔監視制御装置H1a〜H5aに該当する通信ポートP1〜P5と模擬子局装置3とを通信可能に接続する切替スイッチ装置4を制御中継所Tに配設し、シミュレーション装置2からの制御情報が、制御所側監視制御システムSaから情報中継装置Taおよび切替スイッチ装置4を介して模擬子局装置3に送信され、模擬子局装置3からの模擬情報が、切替スイッチ装置4から情報中継装置Taおよび制御所側監視制御システムSaを介してシミュレーション装置2に送信されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の装置・システムが接続された情報集配信装置の対向試験を行うための情報集配信装置の対向試験装置および対向試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、遠方の各装置・設備を遠隔で集中的に監視、制御する監視制御設備では、各変電所に、各装置・設備を監視、制御する遠隔監視制御装置が設置され、制御中継所には、複数の遠隔監視制御装置と通信可能な情報中継装置(情報集配信装置)が設置され、さらに、制御所に、情報中継装置と通信可能な監視制御システムが設置されている。このような監視制御設備においては、情報中継装置を基準にして各情報配信先の装置(遠隔監視制御装置や監視制御システム)と対向試験を行う場合がある。
【0003】
すなわち、対向先の遠隔監視制御装置が交換・リプレース、増設された場合や、情報中継装置自体を交換した場合などに、適正な通信、監視等が行えるか否かを確認するために、対向試験を行っている。そして、この対向試験においては、電力会社の立会者や運転責任者、工事会社の現場代理人や作業員などが制御中継所に赴き、制御所にいる作業員などと連絡をとりながら、接続変更やその動作確認などを行っている。
【0004】
また、シーケンス制御装置のメモリ要素へ付与されるデータに応じて制御対象を制御する監視制御システムにおいて、メモリ要素から指令信号の受付有無を検知して保持するフラグ生成手段をシーケンス制御装置に設け、このフラグ生成手段による検知結果により重複指令ミスを検出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。さらに、集中監視制御装置での表示状態と全く同一の表示状態を、被監視制御所内に実現することで、被監視制御所内だけで能率的にかつ正確に試験を行うことができる、という技術が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−233404号公報
【特許文献2】特開2006−230141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような対向試験を行う場合、電力会社の運転責任者や工事会社の作業員などの多くの人が、制御中継所に赴いて長時間にわたって作業や立会などを行わなければならず、移動、作業等に多大な労力、時間および費用を要する。特に、電気所のように多数の回線を試験対象とする場合には、さらに時間や費用などを要する。また、制御中継所の作業員などと制御所の作業員などとの連絡は、電話による場合が多いため、相手方の状況を適正に把握することが困難であり、正確性が低く、作業や動作確認に時間を要していた。同様に、特許文献1、2に記載の技術においても、作業員などが制御中継所などの現地に赴いて作業や立会などを行わなければならず、上記のような対向試験を行うには不向きである。
【0007】
そこでこの発明は、情報集配信装置の対向試験を行う際に、作業員などが現地に行くのを削減することが可能な情報集配信装置の対向試験装置および対向試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、制御中継所に設置され、制御所に設置されている制御所装置と通信可能で、かつ遠方の複数の遠方装置と通信可能な情報集配信装置に対する、対向試験を行うための情報集配信装置の対向試験装置であって、前記制御所に配設されるシミュレーション装置と、模擬遠方装置と、前記制御中継所に配設され、前記シミュレーション装置によって制御されて、前記情報集配信装置の所定の前記遠方装置に該当する通信ポートと前記模擬遠方装置とを通信可能に接続する接続手段と、を備え、前記シミュレーション装置からの制御情報が、前記制御所装置から前記情報集配信装置および前記接続手段を介して前記模擬遠方装置に送信され、前記模擬遠方装置からの模擬情報が、前記接続手段から前記情報集配信装置および前記制御所装置を介して前記シミュレーション装置に送信されるようになっている、ことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、制御所のシミュレーション装置からの制御情報が制御所装置から、制御中継所の情報集配信装置の所定の遠方装置に該当する通信ポートおよび接続手段を介して、制御所の模擬遠方装置に送信される。また、制御所の模擬遠方装置からの模擬情報が、制御中継所の接続手段から情報集配信装置および、制御所の制御所装置を介してシミュレーション装置に送信される。このようにして、制御所からの制御情報や模擬情報が、制御中継所の情報集配信装置の所定の遠方装置に該当する通信ポートを介して、制御所に送信(還流)される。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の対向試験装置において、前記接続手段の接続状況を撮影し、撮影した画像を前記シミュレーション装置に送信する撮影手段を備える、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の対向試験装置において、前記情報集配信装置の状態や前記各遠方装置の状態などを表示する表示手段が前記制御中継所に配設され、前記表示手段の画面を前記シミュレーション装置に送信するモニタリング手段を備える、ことを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3に記載の対向試験装置において、前記シミュレーション装置からの制御情報と前記模擬遠方装置で受信された制御情報とを比較する制御情報比較手段を、前記制御所に備える、ことを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4に記載の対向試験装置において、前記模擬遠方装置からの模擬情報と前記シミュレーション装置で受信された模擬情報とを比較する模擬情報比較手段を、前記制御所に備える、ことを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、制御中継所に設置され、制御所に設置されている制御所装置と通信可能で、かつ遠方の複数の遠方装置と通信可能な情報集配信装置に対して対向試験を行う情報集配信装置の対向試験方法であって、前記制御所に、シミュレーション装置と模擬遠方装置とを配設し、前記制御中継所に、前記シミュレーション装置によって制御され、前記情報集配信装置の所定の前記遠方装置に該当する通信ポートと前記模擬遠方装置とを通信可能に接続する接続手段を配設し、前記シミュレーション装置からの制御情報を、前記制御所装置から前記情報集配信装置および前記接続手段を介して前記模擬遠方装置に送信し、前記模擬遠方装置からの模擬情報を、前記接続手段から前記情報集配信装置および前記制御所装置を介して前記シミュレーション装置に送信する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1および6に記載の発明によれば、制御所からの制御情報や模擬情報が、制御中継所の情報集配信装置の所定の遠方装置に該当する通信ポートを介して、制御所に送信されるため、所定の遠方装置に対する通信が適正に行われているか否かを、制御所にて確認することができる。しかも、制御所のシミュレーション装置から制御中継所の接続手段を制御可能なため、情報集配信装置の所定の通信ポートと模擬遠方装置との接続を切り替えるために、作業員などが制御中継所に行く必要がない。このように、作業員などが現地・制御中継所に行くことなく、情報集配信装置の対向試験を行うことが可能となり、対向試験に要する時間や労力、費用を著しく軽減することができる。また、制御所だけで接続手段の制御や通信の確認などを行えるため、現地・制御中継所の作業員などと電話で連絡をとる必要が削減され、適正・正確な対向試験を行うことが可能となる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、接続手段の接続状況が撮影手段によってシミュレーション装置に送信されるため、制御所において接続手段の接続状況を確認することができ、対向試験をより適正・正確に行うことが可能となる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、情報集配信装置の状態などを表示する表示手段の画面が、モニタリング手段によって制御所のシミュレーション装置に送信されるため、制御所において情報集配信装置の状態などを確認しながら、対向試験をより適正・正確に行うことが可能となる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、制御情報比較手段によって、シミュレーション装置からの制御情報が適正に模擬遠方装置に送信されたか否かが比較、確認されるため、制御情報による対向試験を容易かつ迅速に行うことが可能となる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、模擬情報比較手段によって、模擬遠方装置からの模擬情報が適正にシミュレーション装置に送信されたか否かが比較、確認されるため、模擬情報による対向試験を容易かつ迅速に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態に係る情報集配信装置の対向試験装置の適用例を示す概略構成図である。
【図2】図1の対向試験装置の切替スイッチ装置を示す構成図である。
【図3】図1の対向試験装置によって制御情報の流れを試験している状態を示す図である。
【図4】図1の対向試験装置によって模擬情報の流れを試験している状態を示す図である。
【図5】図1の対向試験装置の他の適用例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0022】
図1は、この発明の実施の形態に係る情報集配信装置の対向試験装置(以下、「対向試験装置」という)1の適用例を示す概略構成図である。この対向試験装置1は、情報集配信装置に対する対向試験を行うための装置であり、この実施の形態では、情報集配信装置が制御中継所Tに設置された情報中継装置Taであり、この情報中継装置Taを交換・リプレースする場合を例にして説明する。
【0023】
ここで、各制御所Sに制御所側監視制御システム(制御所装置)Saが設置され、制御中継所Tには、各制御所側監視制御システムSaと通信可能に接続された情報中継装置Taと、中継所側監視制御システムTbとが設置されている。また、各変電所H1〜H5には、遠隔地の各装置・設備を監視、制御する遠隔監視制御装置(遠方装置)H1a〜H5aが設置され、各遠隔監視制御装置H1a〜H5aは、情報中継装置Taと通信可能に接続されている。すなわち、情報中継装置Taの各通信ポートP1〜P5に対応して、各遠隔監視制御装置H1a〜H5aが接続され、例えば、第1の通信ポートP1には、第1の変電所H1の遠隔監視制御装置H1aが接続され、第5の通信ポートP5には、第5の変電所H5の遠隔監視制御装置H5aが接続されている。
【0024】
また、情報中継装置Taの交換に際して、制御中継所Tには、交換・撤去対象である旧情報中継装置Taおよび旧中継所側監視制御システムTbと、新設する新情報中継装置Taおよび新中継所側監視制御システムTbとが設置され、それぞれに各制御所Sの制御所側監視制御システムSaが接続されている。これにより、交換・試験時においても、システムの運用(監視、制御)を継続できるものである。また、この実施の形態では、旧情報中継装置Taに各遠隔監視制御装置H1a〜H5aが接続されている。
【0025】
対向試験装置1は、主として、制御所Sに配設されるシミュレーション装置2および模擬子局装置(模擬遠方装置)3と、制御中継所Tに配設される切替スイッチ装置(接続手段)4およびカメラ(撮影手段)5を備えている。
【0026】
シミュレーション装置2は、切替スイッチ装置4を制御したり、各種の制御情報や模擬情報を送受信したりして、対向試験を行う装置であり、主として、主コンピュータ(制御情報比較手段、模擬情報比較手段)21と、試験プログラム22と、中継所テーブル23と、良否判定データベース24と、試験系監視装置(モニタリング手段)25とを備えている。主コンピュータ21は、新情報中継装置Taおよび切替スイッチ装置4と通信可能に接続され、試験プログラム22を起動し、試験プログラム22に従って切替スイッチ装置4の制御、各種情報の送受信、送受信情報の比較などを行う。
【0027】
具体的には、対向試験を開始する際に、新情報中継装置Taに「試験」信号を送信して、新情報中継装置Taを対向試験モードにし、対向試験を終了して通常運用する際に、新情報中継装置Taに「常用」信号を送信して、新情報中継装置Taを運用モードにする。また、対向試験において、切替スイッチ装置4に切替指令を送信することで、後述するようにして、切替スイッチ装置4の各スイッチ41〜45が切り替わる。さらに、制御情報を試験系監視装置25に送信することで、後述するように、制御情報が制御所側監視制御システムSaから新情報中継装置Taおよび切替スイッチ装置4を介して、模擬子局装置3に送信され、主コンピュータ21に還流される。そして、主コンピュータ21から送信した制御情報と、模擬子局装置3側から受信した制御情報とを比較し、一致しているか否かなどの比較結果を良否判定データベース24に記憶する。
【0028】
同様に、表示計測情報などの模擬出力情報(模擬情報)を模擬子局装置3に送信することで、後述するように、模擬出力情報が切替スイッチ装置4から新情報中継装置Taおよび制御所側監視制御システムSaを介して試験系監視装置25に送信され、主コンピュータ21に還流される。そして、主コンピュータ21から送信した模擬出力情報と、試験系監視装置25側から受信した模擬出力情報とを比較し、その結果を良否判定データベース24に記憶するものである。
【0029】
さらに、主コンピュータ21には、後述するようにしてカメラ5で撮影された画像、つまり切替スイッチ装置4の接続状況がリアルタイムに送信され、主コンピュータ21のディスプレイに任意に表示されるようになっている。
【0030】
中継所テーブル23は、各制御中継所Tに設置されている情報中継装置Taや中継所側監視制御システムTbに関する情報や各制御中継所Tの監視エリア(変電所H1〜H5)などを記憶するメモリである。また、良否判定データベース24には、上記のように、制御情報や模擬出力情報の比較結果が記憶され、主コンピュータ21などから任意に読み出せるようになっている。
【0031】
試験系監視装置25は、中継所側監視制御システムTbに相当する模擬・試験用の監視装置であり、複数のモニタを備え、制御中継所Tのモニタ画面を表示できるようになっている。すなわち、中継所側監視制御システムTbには、情報中継装置Taの状態や各遠隔監視制御装置H1a〜H5aの状態などを表示するモニタ(表示手段)が設けられ、このモニタに表示される画像データが、分配器やIP網端局装置などを介して、試験系監視装置25に送信される。これを受けて、試験系監視装置25のモニタに、情報中継装置Taの状態や各遠隔監視制御装置H1a〜H5aの状態などが表示されるようになっている。
【0032】
ここで、中継所側監視制御システムTbには、設定や制御に関する情報を表示するモニタも設けられているが、このモニタの画像データは、試験系監視装置25に送信されないようになっている。つまり、設定や制御に関する情報は、セキュリティを考慮して、制御所Sでは見られないようになっている。
【0033】
模擬子局装置3は、各遠隔監視制御装置H1a〜H5aに相当する模擬的な遠隔監視制御装置であり、遠隔監視制御装置H1a〜H5aと同等な構成で、後述するように、切替スイッチ装置4を介して、情報中継装置Taの各通信ポートP1〜P5と接続されるようになっている。そして、上記のようにして、制御情報を切替スイッチ装置4側から受信すると、制御情報を主コンピュータ21に送信し、主コンピュータ21から模擬出力情報を受信すると、模擬出力情報を切替スイッチ装置4側に送信するものである。
【0034】
切替スイッチ装置4は、主コンピュータ21によって制御され、情報中継装置Taの所定の遠隔監視制御装置H1a〜H5aに該当する通信ポートP1〜P5と模擬子局装置3とを通信可能に接続する装置である。具体的には、通信ポートP1〜P5は、それぞれ遠隔監視制御装置H1a〜H5aが接続されるべきポートであり、切替スイッチ装置4は、図2に示すように、通信ポートP1〜P5つまり遠隔監視制御装置H1a〜H5aに対応したスイッチ41〜45を有し、各スイッチ41〜45の中央端子41a〜45aがそれぞれ通信ポートP1〜P5に接続されている。また、各スイッチ41〜45のオン端子41b〜45bが直列的に接続され、さらに、第1のスイッチ41のオン端子41bが、模擬子局装置3と通信可能に接続されている。
【0035】
そして、主コンピュータ21から切替指令を受信すると、各スイッチ41〜45をオン、オフ操作する。例えば、第1の通信ポートP1を接続すべき旨の切替指令を主コンピュータ21から受信すると、図1、2に示すように、第1のスイッチ41のみをオン端子41bに接続し(オンし)、他のスイッチ42〜45はオフ端子42c〜45cに接続する(オフする)。これにより、情報中継装置Taの第1の通信ポートP1と模擬子局装置3とが、第1のスイッチ41を介して通信可能に接続される。つまり、模擬子局装置3が第1の変電所H1の遠隔監視制御装置H1aとして模擬され、第1の遠隔監視制御装置H1aと情報中継装置Taとが接続された、とみなされる。同様に、第2の通信ポートP2を接続すべき旨の切替指令を主コンピュータ21から受信すると、第2のスイッチ42のみをオンし、第2の通信ポートP2と模擬子局装置3とが第2のスイッチ42を介して、通信可能に接続されるものである。
【0036】
カメラ5は、切替スイッチ装置4の接続状況を撮影し、つまり、どのスイッチ41〜45がオン、オフされているかを撮影し、撮影した画像(静止画または動画)をリアルタイムに主コンピュータ21に送信するものである。
【0037】
ここで、模擬子局装置3と切替スイッチ装置4との通信や、主コンピュータ21と新情報中継装置Ta、切替スイッチ装置4との通信など、制御所S側と制御中継所T側との通信は、IP網を介して行われ、V−LAN(仮想LAN)やID、パスワード管理などにより、セキュリティが確保されている。さらに、対向試験などの作業時間以外は、物理的に回線を切断することで、セキュリティがより確保されている。
【0038】
次に、このような構成の対向試験装置1による情報集配信装置の対向試験方法などについて、説明する。
【0039】
まず、対向試験装置1を設置する。すなわち、制御所Sにシミュレーション装置2と模擬子局装置3とを配設し、制御中継所Tに切替スイッチ装置4とカメラ5とを配設する。次に、IP網やIP網端局装置などを介して、試験系監視装置25と制御所側監視制御システムSaとを接続し、模擬子局装置3と切替スイッチ装置4とを接続するとともに、主コンピュータ21に対して新情報中継装置Ta、切替スイッチ装置4およびカメラ5を接続する。このような対向試験装置1の設置後は、作業員などが制御中継所Tに待機している必要はなく、制御所Sのみに電力会社の立会者や運転責任者、工事会社の現場代理人や作業員などがいればよい。
【0040】
続いて、主コンピュータ21から新情報中継装置Taに「試験」信号を送信して、新情報中継装置Taを対向試験モードにし、その後、試験プログラム22を起動することで、試験プログラム22に従った対向試験が行われる。具体的には、まず、第1の通信ポートP1を接続すべき旨の切替指令が、主コンピュータ21から切替スイッチ装置4に送信され、これにより、上記のように、第1のスイッチ41のみがオンされ、情報中継装置Taの第1の通信ポートP1と模擬子局装置3とが通信可能に接続される。
【0041】
次に、図3に示すように、主コンピュータ21から試験系監視装置25に所定の制御情報F1が送信され、これを受けて、制御情報F1が制御所側監視制御システムSaから新情報中継装置Taの第1の通信ポートP1、切替スイッチ装置4の第1のスイッチ41を介して、模擬子局装置3に送信され、主コンピュータ21に還流される。そして、主コンピュータ21から送信した制御情報F1と、模擬子局装置3側から受信した制御情報F1とが比較され、その結果が良否判定データベース24に記憶される。
【0042】
同様に、図4に示すように、主コンピュータ21から模擬子局装置3に表示計測情報などの模擬出力情報F2が送信され、これを受けて、模擬出力情報F2が切替スイッチ装置4の第1のスイッチ41から新情報中継装置Taの第1の通信ポートP1、制御所側監視制御システムSaを介して試験系監視装置25に送信され、主コンピュータ21に還流される。そして、主コンピュータ21から送信した模擬出力情報F2と、試験系監視装置25側から受信した模擬出力情報F2とが比較され、その結果が良否判定データベース24に記憶される。
【0043】
このような対向試験が、第1の変電所H1の遠隔監視制御装置H1aとして模擬された模擬子局装置3に対して行われる。ここで、このような制御情報F1や模擬出力情報F2の送受信は、複数の情報F1、F2を用いて行ってもよい。また、対向試験の際には、カメラ5から主コンピュータ21に切替スイッチ装置4の接続状況が送信されるとともに、上記のようにして、試験系監視装置25のモニタに情報中継装置Taの状態などが表示され、これらを確認しながら対向試験を行う。
【0044】
次に、第2の通信ポートP2を接続すべき旨の切替指令が、主コンピュータ21から切替スイッチ装置4に送信され、これにより、第2のスイッチ42のみがオンされ、情報中継装置Taの第2の通信ポートP2と模擬子局装置3とが通信可能に接続される。続いて、上記と同様にして、制御情報F1や模擬出力情報F2の送受信が行われ、第2の変電所H2の遠隔監視制御装置H2aとして模擬された模擬子局装置3に対して、対向試験が行われる。
【0045】
このような対向試験がすべての通信ポートP1〜P5、つまり、すべての変電所H1〜H5の遠隔監視制御装置H1a〜H5aに対して順次行われる。そして、良否判定データベース24に記憶された比較結果を主コンピュータ21から読み出し、新情報中継装置Taが適正に機能しているか、接続が正しいかなどを確認する。その後、対向試験を終了して新情報中継装置Taを通常運用する場合には、主コンピュータ21から新情報中継装置Taに「常用」信号を送信して、新情報中継装置Taを運用モードにする。さらに、対向試験装置1を撤去し、新情報中継装置Taの各通信ポートP1〜P5に各遠隔監視制御装置H1a〜H5aを接続して、旧情報中継装置Taを撤去するものである。
【0046】
以上のように、この対向試験装置1および対向試験方法によれば、制御所Sからの制御情報F1や模擬出力情報F2が、制御中継所Tに設置された情報中継装置Taの各通信ポートP1〜P5を介して、制御所Sに還流されるため、各遠隔監視制御装置H1a〜H5aに対する通信が適正に行われているかなどを、制御所Sにて確認することができる。しかも、制御所Sのシミュレーション装置2から制御中継所Tの切替スイッチ装置4を制御可能なため、情報中継装置Taの通信ポートP1〜P5と模擬子局装置3との接続を切り替えるために、作業員などが制御中継所Tに行く必要がない。このように、対向試験装置1の設置後は、作業員などが現地・制御中継所Tに行くことなく、情報中継装置Taの対向試験を行うことが可能となり、対向試験に要する時間や労力、費用を著しく軽減することができる。また、制御所Sだけで対向試験が行えるため、現地・制御中継所Tの作業員などと電話で連絡をとる必要が削減され、より適正・正確かつ迅速な対向試験を行うことが可能となる。
【0047】
さらに、カメラ5から主コンピュータ21に切替スイッチ装置4の接続状況が送信されるため、制御所Sにおいて切替スイッチ装置4の接続状況を確認することができ、対向試験をより適正・正確に行うことが可能となる。同様に、情報中継装置Taの状態などが試験系監視装置25のモニタに表示されるため、制御所Sにおいて情報中継装置Taの状態などを確認しながら、対向試験をより適正・正確に行うことが可能となる。また、制御情報F1や模擬出力情報F2が適正に送信されたか否かが自動的に比較、確認され、その結果が良否判定データベース24に記憶されるため、対向試験の良否判定などを適正、容易かつ迅速に行うことが可能となる。
【0048】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、情報中継装置Ta自体を交換する場合について説明し、対向試験中には新情報中継装置Taと各遠隔監視制御装置H1a〜H5aとを切り離しているが、試験対象外の遠隔監視制御装置H1a〜H5aを新情報中継装置Taと接続するようにしてもよい。例えば、図5に示すように、各スイッチ41〜45のオフ端子41c〜45cにそれぞれ遠隔監視制御装置H1a〜H5aを接続する。そして、第1の遠隔監視制御装置H1aを試験対象とする場合に、第1のスイッチ41をオンすることで第1の遠隔監視制御装置H1aのみが新情報中継装置Taと切り離される。一方、他の遠隔監視制御装置H2a〜H5aは新情報中継装置Taと接続されたままであり、通信を維持することができる。このような方法は、特定の遠隔監視制御装置H1a〜H5a(上記の例えでは、第1の装置H1a)を交換する場合などに、適用することができる。
【0049】
また、上記の実施の形態では、情報集配信装置に遠隔監視制御装置H1a〜H5aが接続されている場合について説明したが、配電自動化システムなどその他の装置、設備が接続されている場合にも適用することができる。一方、対向試験の状況を制御所S以外の営業所などで監視、確認できるようにしてもよい。例えば、カメラ5による切替スイッチ装置4の接続状況や、制御所Sの制御所側監視制御システムSaの画面情報(監視情報)などを、営業所のモニタにリアルタイムに表示するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 対向試験装置
2 シミュレーション装置
21 主コンピュータ(制御情報比較手段、模擬情報比較手段)
22 試験プログラム
23 中継所テーブル
24 良否判定データベース
25 試験系監視装置(モニタリング手段)
3 模擬子局装置(模擬遠方装置)
4 切替スイッチ装置(接続手段)
5 カメラ(撮影手段)
S 制御所
Sa 制御所側監視制御システム(制御所装置)
T 制御中継所
Ta 情報中継装置(情報集配信装置)
Tb 中継所側監視制御システム
P1〜P5 通信ポート
H1〜H5 変電所
H1a〜H5a 遠隔監視制御装置(遠方装置)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御中継所に設置され、制御所に設置されている制御所装置と通信可能で、かつ遠方の複数の遠方装置と通信可能な情報集配信装置に対する、対向試験を行うための情報集配信装置の対向試験装置であって、
前記制御所に配設されるシミュレーション装置と、模擬遠方装置と、
前記制御中継所に配設され、前記シミュレーション装置によって制御されて、前記情報集配信装置の所定の前記遠方装置に該当する通信ポートと前記模擬遠方装置とを通信可能に接続する接続手段と、を備え、
前記シミュレーション装置からの制御情報が、前記制御所装置から前記情報集配信装置および前記接続手段を介して前記模擬遠方装置に送信され、前記模擬遠方装置からの模擬情報が、前記接続手段から前記情報集配信装置および前記制御所装置を介して前記シミュレーション装置に送信されるようになっている、
ことを特徴とする情報集配信装置の対向試験装置。
【請求項2】
前記接続手段の接続状況を撮影し、撮影した画像を前記シミュレーション装置に送信する撮影手段を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報集配信装置の対向試験装置。
【請求項3】
前記情報集配信装置の状態や前記各遠方装置の状態などを表示する表示手段が前記制御中継所に配設され、前記表示手段の画面を前記シミュレーション装置に送信するモニタリング手段を備える、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の情報集配信装置の対向試験装置。
【請求項4】
前記シミュレーション装置からの制御情報と前記模擬遠方装置で受信された制御情報とを比較する制御情報比較手段を、前記制御所に備える、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の情報集配信装置の対向試験装置。
【請求項5】
前記模擬遠方装置からの模擬情報と前記シミュレーション装置で受信された模擬情報とを比較する模擬情報比較手段を、前記制御所に備える、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の情報集配信装置の対向試験装置。
【請求項6】
制御中継所に設置され、制御所に設置されている制御所装置と通信可能で、かつ遠方の複数の遠方装置と通信可能な情報集配信装置に対して対向試験を行う情報集配信装置の対向試験方法であって、
前記制御所に、シミュレーション装置と模擬遠方装置とを配設し、
前記制御中継所に、前記シミュレーション装置によって制御され、前記情報集配信装置の所定の前記遠方装置に該当する通信ポートと前記模擬遠方装置とを通信可能に接続する接続手段を配設し、
前記シミュレーション装置からの制御情報を、前記制御所装置から前記情報集配信装置および前記接続手段を介して前記模擬遠方装置に送信し、前記模擬遠方装置からの模擬情報を、前記接続手段から前記情報集配信装置および前記制御所装置を介して前記シミュレーション装置に送信する、
ことを特徴とする情報集配信装置の対向試験方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−256212(P2012−256212A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128985(P2011−128985)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】