説明

感光体ブラケット及びそれを備えた感光体ユニット

【課題】本発明は、その複数の当て部材の最外表面が、いずれも高い真直度を有し、それらから並んでなる転写面が設計上の平滑面と高い精度で合致し、従来に比して転写品質が非常に良い上、その組立ても極めて簡単である感光体ブラケットを提供する。また、本発明は、前記感光体ブラケットを備えていて転写品質の良い感光体ユニットも提供する。
【解決手段】本発明は、各々の最外表面が同一の平滑面に位置するように並んでいて、該平滑面で後ろから光学転写機械の感光体に当てる複数の長尺形の当て部材と、前記複数の当て部材を、前記長尺形の長手方向にある両端側から保持している一対の保持部材と、から成っている感光体ブラケットにおいて、前記複数の当て部材と前記一対の保持部材とは、一体成形されることを特徴とする感光体ブラケット、及びそれを備えた感光体ユニットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、感光体ブラケット及びそれを備えた感光体ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
感光体ユニットは光学転写機械における主要部品の一つであって、光学転写機械が光学転写を行う時、その感光ドラムや感光ベルトなどの感光体が転写体や紙などの記録媒体と密着し、記録媒体に感光体に映された被写体像を転写する、転写機構全体のことを言う。また、感光体ブラケットは、前記感光体ユニットが被写体像の転写を行う時、前記感光体を後ろから支持することで、その最外表面に位置する記録媒体への転写を確実に行わせる為の支持機構を言う。
【0003】
例を挙げれば、図1は、従来の感光体ブラケット9の構成を説明する分解斜視図であり、図2は、前記感光体ブラケット9を備えた従来の感光体ユニット90の斜視図である(非特許文献1参照)。因みに、図2において番号93で示されるのは、感光体としての感光ベルトである。
【0004】
図から分かるように、従来の感光体ユニット90における感光体ブラケット9は、通常、それらの最外表面がなるべく同一の平滑面(図示せず)を形成するように並べられている複数の長尺形の当て部材91と、前記複数の当て部材91を、前記長尺形の長手方向の両端側から保持している一対の保持部材92とからなり、また、前記一対の保持部材92は、それぞれ、前記複数の当て部材91を端縁から挟んでいるクランプ部材921と、前記クランプ部材921と前記複数の当て部材91の端縁との間に介在しているスペーサ922とから構成されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Aetas System Inc.製、商品名:Samantha
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この従来の感光体ブラケット9は、その複数の長尺形の当て部材91の最外表面が同一の平滑面を形成するように並べられているため、光学転写機械において、当該平滑面で、感光体としての感光ベルト93を後ろから支持しながら、その最外表面に位置する記録媒体(図示せず)に密着させて、感光ベルト93に映された被写体像を記録媒体に転写することができた。しかしながら、数少ない部材である複数の当て部材91と、一対のクランプ部材921と、一対のスペーサ922とは、逐一組立てられたものである為、かなりの手間がかかっていた。更に、部材の製造に公差が生じ、組立て時、例えばネジ付け時の力加減が適当でない場合があり、適切な位置からずれる場合もあり、並びに余計な応力が掛かる場合もあった。したがって、複数の当て部材91の最外表面が必ずしも平滑面となっておらず、感光ベルト93を介して記録媒体にかかる力が均一にならなく、その転写品質がまだまだ理想とは言えない。
【0007】
前記従来の感光体ブラケットの欠点に鑑みて、本発明は、その複数の当て部材の最外表面がいずれも高い真直度を有し、それらから並んでなる転写面が設計通りの平滑面と高い精度で合致し、従来に比して転写品質が非常に良い上、その組立ても極めて簡単である感光体ブラケットの提供を目的とする。
【0008】
また、本発明は、前記感光体ブラケットを備えていて、転写品質の良い感光体ユニットの提供をも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、それらの最外表面が同一の平滑面に位置するように並んでいて、該平滑面で後ろから光学転写機械の感光体に当てられる複数の長尺形の当て部材と、前記複数の当て部材を、前記長尺形の長手方向の両端側から保持している一対の保持部材と、から成る感光体ブラケットにおいて、前記複数の当て部材と前記一対の保持部材とは、一体成形なされていることを特徴とする感光体ブラケット、及びそれを備えた感光体ユニットを提供する。
【0010】
前記本発明の感光体ユニット又は感光体ブラケットの実施例としては、前記複数の当て部材同士間も、互いに一体的に連続している例が挙げられる。
【0011】
また、発明者の実験によると、前記一体成型時に発生する応力を分散させ、前記複数の当て部材、特にそれらの最外表面に高い真直度を持たせるために、前記複数の当て部材同士間で互いに連続している形態を、それぞれそこから後方へ窪んだ窪み部材を介する形態にすることが好ましい。取分け、前記一対の保持部材を、更に、それぞれ、前記平滑面の端縁から後外方へ延びてその外面が斜面となった本体部と、前記本体部における外面上の前記各窪みに対応する各部分に形成される上、それぞれ、前記平滑面の端縁近くから後ろの方へ先細りになるように延びている複数のブロック体部と、から成る形態とすることが好ましい。
【0012】
そしてまた、本発明における感光体ブラケットは、13〜15重量%の不飽和ポリエステル樹脂と、10〜13重量%の低収縮剤と、51〜55重量%の充填材と、19〜21重量%のガラス繊維材とからなる塊状成形材で、一体成形されて成った形態が好ましい。
【発明の効果】
【0013】
前記構成による感光体ブラケットは、まず、一体成型されたので、組立ての必要がなく、更に、組立てに生じる誤差もないことから、製造工程及びコストを大幅に削減できる。
【0014】
また、前記構成による感光体ブラケットは、前記一対の保持部材の構成と前記複数の窪み部材とで、一体成形の際に生じる応力を分散させ、それら応力による変形を最小限に抑え、即ち形成した複数の当て部材いずれもが、高い真直度を有し得る。
【0015】
最後に、前記構成による感光体ブラケットを備えた感光体ユニットは、その感光体ブラケットに前記利点があるため、安定した転写が可能である上、従来に比して品質がかなり良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来の感光体ブラケットの分解斜視図である。
【図2】前記従来の感光体ブラケットが取り付けられた、感光体ユニットの斜視図である。
【図3】本発明の実施例の感光体ブラケットの斜視図である。
【図4】図3の線III-IIIに沿って裁断した断面図である。
【図5】本実施例の感光体ブラケットの側視図である。
【図6】本実施例の感光体ブラケットの、下から見た斜視図である。
【図7】本実施例の表1〜表3に示す当て部材を説明する斜視図である。
【図8】本実施例の感光体ブラケットが取り付けられた感光体ユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図3から図8を参照しながら、本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0018】
図3は、本実施例の感光体ブラケット1の斜視図であり、図4は、図3の線III-IIIに沿う断面図である。
【0019】
図3及び図4から分かるように、本実施例の感光体ブラケット1は、それらの最外表面が同一の平滑面100に内接するように並んでいる複数の長尺形の当て部材2と、該複数の当て部材2を、前記長尺形の長手方向の両端側から保持している一対の保持部材4と、から成っている。
【0020】
また、図示されるように、複数の当て部材2と一対の保持部材4とは、プレス成形、又は射出成形などによって一体成形される上、複数の当て部材2同士間も、それぞれ後方(図3及び図4においては、下方)へ窪んで断面U字形となった窪み部材3を介して互いに一体的に連続して形成される。この実施例における当て部材2は四つあり、断面U字形の窪み部材3は三つあるが、この限りではなく、そのサイズや用途により変更することができる。
【0021】
また、この実施例における平滑面100は、少々アーク形な円滑面であるが、この限りではなく、完全に平らな平面でも良い。
【0022】
前記構成による感光体ブラケット1は、一体成型なされるので、組立ての必要がない。そして、組立ての必要がないので、組立て時の誤差も生じない。
【0023】
そして、図3、図5及び図6に示すように、一対の保持部材4は、それぞれ、平滑面100の端縁から後外方へ延在して、その外面411が斜面である本体部41と、該本体部41の外面411上の各窪み部材3に対応する各部分に形成され、且つ、それぞれ、平滑面100の端縁近くから後方へ先細りになるように延在している複数のブロック体部42と、から成る。
【0024】
さらに、図示されるように、各ブロック体部42はいずれも、その外表面421が本体部41の外面411と交差するまで延びた斜面を有する(図3及び図6参照)。
【0025】
前記構成による本実施例の感光体ブラケット1は、その一対の保持部材4の構成と複数の窪み部材3とによって、一体成形の際に生じる応力を分散し、それら応力による変形を最小限に抑えることができ、即ち形成した複数の当て部材2いずれもが、高い真直度を有することができる。
【0026】
また、本発明における感光体ブラケット1の材料としては、塊状成形材(Bulk Molding Compound、BMC)、シート状成形材(Sheet Molding Compound、SMC)、又は熱可塑性の複合成形材などが好適に用いられるが、そのうち、塊状成形材の使用が特に好ましい。
【0027】
本実施例の感光体ブラケット1は、13〜15重量%の不飽和ポリエステル樹脂と、10〜13重量%の低収縮剤と、51〜55重量%の充填材と、19〜21重量%のガラス繊維材とからなる塊状成形材で一体成形されたものである。
【0028】
また、前記低収縮剤としては、ポリスチレンが使用される。
【0029】
さらに、前記充填材としては、炭酸カルシウム及び水酸化アルミニウムが使用されるが、そのどちらか一種だけを使用しても良い。
【0030】
前記塊状成形材で一体成形された感光体ブラケット1は、その重量が約200gなので、従来の感光体ブラケット9(約970g)より遥かに軽くなっている。
【0031】
ここで、前記配合で作られた塊状成形材を使用し、前記構成の感光体ブラケットを三種類作製した後、図7に示すように、作成された各感光体ブラケットにおける四つの当て部材21,22,23,24の最外表面に、それぞれ前記長尺形の長手方向に沿って七つのポイントを一定の間隔をあけて選び、左から数える二番目と六番目のポイントを基準点(ゼロ)として、各当て部材の真直度の測定を行い、その結果を表1〜表3に示した。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
表1〜表3に示されるように、本実施例の感光体ブラケット1における複数の当て部材は、いずれも最外表面が非常に高い真直度を有している。
【0036】
また、図8は、前記実施例の感光体ブラケット1が取り付けられている感光体ユニット5の斜視図である。
【0037】
感光体ユニット5は、その感光ベルト51に後ろから当てる、複数の当て部材2の最外表面がすべて高い真直度を有しているので、感光ベルト51を介して記録媒体(図示せず)にかかる力を均一にすることができる。
【0038】
そして、図2及び図8から分かるように、本実施例の感光体ブラケット1を、感光体ユニット5へ取付ける方法は、従来の感光体ブラケット91を感光体ユニット90へ取付ける方法とまったく同じなので、本実施例の感光体ユニット5を製造する際、従来の感光体ブラケット91に代えて本実施例の感光体ブラケット1を採用するだけでよく、従来の感光体ユニット90の他の部品、及び感光体ユニット全体の設計をそのまま使用することができ、別途開発する必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明の感光体ブラケットは一体成形されるので、組立てる必要がなく、組立て時の誤差も生じないことから、製造工程の一部を省略してコストダウンを図ることができる上、その加工精度の向上にも有利である。
【0040】
また、本発明の感光体ブラケットは、塊状成形材、特に実施例に記載のような所定配合で作られた塊状成形材が使用されることによって、品質の向上及び軽量化を実現できる。
【0041】
さらに、本発明の感光体ブラケットを備えた感光体ユニットは、感光体を介して記録媒体にかかる力が均一であるので、感光体に映る被写体像の転写が安定する上、従来に比して品質がかなり良くなる。
【符号の説明】
【0042】
1、9 感光体ブラケット
100 平滑面
2、21、22、23、24、91 当て部材
3 窪み部材
4、92 保持部材
41 本体部
411 外面
42 ブロック体部
421 外表面
5、90 感光体ユニット
51、93 感光ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々の最外表面が同一の平滑面に位置するように並んでいて、該平滑面で後ろから光学転写機械の感光体に当てられる複数の長尺形の当て部材と、
前記複数の当て部材を、前記長尺形の長手方向の両端側から保持している一対の保持部材と、から成っている感光体ブラケットにおいて、
前記複数の当て部材と前記一対の保持部材とは、一体成形されることを特徴とする感光体ブラケット。
【請求項2】
の各々の最外表面が同一の平滑面に位置するように並んでいて、該平滑面で後ろから光学転写機械の感光体に当てられる複数の長尺形の当て部材と、
前記複数の当て部材を、前記長尺形の長手方向の両端側から保持している一対の保持部材と、から成っている感光体ブラケットにおいて、
前記複数の当て部材と前記一対の保持部材とは、一体成形される上、前記複数の当て部材同士間も互いに一体的に連続して形成されることを特徴とする感光体ブラケット。
【請求項3】
各々の最外表面が同一の平滑面に位置するように並んでいて、該平滑面で後ろから光学転写機械の感光体に当てられる複数の長尺形の当て部材と、
前記複数の当て部材を、前記長尺形の長手方向の両端側から保持している一対の保持部材と、から成っている感光体ブラケットにおいて、
前記複数の当て部材と前記一対の保持部材とは、一体成形される上、前記複数の当て部材同士間も、それぞれ後方へ窪む窪み部材を介して互いに一体的に連続して形成されることを特徴とする感光体ブラケット。
【請求項4】
前記各窪み部材は、いずれも断面U字形であることを特徴とする請求項3に記載の感光体ブラケット。
【請求項5】
前記一対の保持部材は、それぞれ、
前記平滑面の端縁から後外方へ延在して、その外面が斜面である本体部と、
前記本体部の外面上の前記各窪み部材に対応する各部分に形成され、且つ、それぞれ、前記平滑面の端縁近くから後方へ先細りになるように延在している複数のブロック体部と、から成ることを特徴とする請求項4に記載の感光体ブラケット。
【請求項6】
前記各ブロック体部はいずれも、その外表面が前記本体部の外面と交差するまで延びた斜面を有することを特徴とする請求項5に記載の感光体ブラケット。
【請求項7】
前記当て部材は四つあり、断面U字形の窪み部材は三つあることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の感光体ブラケット。
【請求項8】
13〜15重量%の不飽和ポリエステル樹脂と、10〜13重量%の低収縮剤と、51〜55重量%の充填材と、19〜21重量%のガラス繊維材とからなる塊状成形材で一体成形されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の感光体ブラケット。
【請求項9】
前記低収縮剤としてポリスチレンが使用されることを特徴とする請求項8に記載の感光体ブラケット。
【請求項10】
前記充填材として炭酸カルシウム及び/または水酸化アルミニウムが使用されることを特徴とする請求項8に記載の感光体ブラケット。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の感光体ブラケットを備えることを特徴とする感光体ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−20293(P2010−20293A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135404(P2009−135404)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(508107788)旭麗電子(廣州)有限公司 (21)
【出願人】(503443599)光寶科技股▲ふん▼有限公司 (20)
【Fターム(参考)】