説明

感光性樹脂積層体およびそれを用いたスクリーン印刷原版

【課題】感光性樹脂版の表裏判別の容易性に優れた感光性樹脂積層体を得ること。
【解決手段】少なくとも支持体、感光性樹脂層およびカバーフィルムを有する感光性樹脂積層体であって、前記支持体が、空洞含有ポリエステル系フィルムであることを特徴とする感光性樹脂積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空洞含有ポリエステル系フィルムを支持体として用いた感光性樹脂積層体に関する。さらに詳しくは、感光性樹脂版の軽量化および表裏判別の容易性に優れた感光性樹脂積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、感光性樹脂積層体を得る方法としては、少なくとも支持体上に感光性樹脂層、粘着防止層およびカバーフィルムから構成されており、その製造方法としては、カバーフィルムに予め粘着防止層を塗布してから感光性樹脂層を中心に両層材料を熱プレス、キャスト成形、カレンダー加工、コーティング方法等により所望の厚み、幅に積層して得る方法が一般的に採用されている。
【0003】
これ等感光性樹脂積層体の支持体としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムが使用され、特にその中でも寸法安定性や耐熱性、機械的特性等からポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたものが多く使用されている。これ等の材料を支持体として用いた場合の課題として特に平坦なポリエチレンテレフタレートフィルムを使用した時、支持体として好ましく使用されるポリエチレンテレフタレートフィルムとの表裏判別が困難で多々製版時に支持体の剥離作業ミスを犯し感光性樹脂原版を無駄にすること等の問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明は、感光性樹脂版の軽量化および表裏判別の容易性に優れた感光性樹脂積層体を得ることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは感光性樹脂積層体について、前記課題を解決するために鋭意、研究、検討した結果、遂に本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、
(1)少なくとも支持体、感光性樹脂層およびカバーフィルムを有する感光性樹脂積層体であって、前記支持体が、空洞含有ポリエステル系フィルムであることを特徴とする感光性樹脂積層体。(2)支持体と感光性樹脂との間に接着剥離層が、感光性樹脂層とカバーフィルムの間に粘着防止層がそれぞれ存在し、感光性樹脂層と、接着剥離層との間の剥離力が、粘着防止層とカバーフィルムとの間の剥離力より小さいことを特徴とする前記(1)記載の感光性樹脂積層体。(3)感光性樹脂層と接着剥離層との間の剥離力が1g/cm〜50g/cmである前記(1)記載の感光性樹脂積層体。(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の感光性樹脂積層体を用いたスクリーン印刷原版である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の空洞含有ポリエステル系フィルムからなる支持体を有する感光性樹脂積層体は、支持体フィルムとカバーフィルムとの判別がし易く、更には製版時に支持体の剥離がし易いので、特にスクリーン印刷原版として適しており、産業界に寄与すること大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の感光性樹脂積層体は少なくとも支持体、感光性樹脂層、およびカバーフィルムを有する感光性樹脂積層体であって、前記支持体が、空洞含有ポリエステル系フィルムであることを特徴とする
本発明で用いられる空洞含有ポリエステル系フィルムとしては、特開平5―194773号公報、特開平6―179765号公報、特開平7―173313号公報等に開示されているものが挙げられ、支持体として使用できるものである。該空洞含有ポリエステル系フィルムとしての特徴は、実質的に空洞率が8体積%以上の微細な空洞を有することから通常のポリエチレンテレフタレートフィルムの比重1.40に比べ小さいこと、光透過率が15〜45%で通常のポリエチレンテレフタレートフィルムより隠蔽性が高く、識別がし易いこと、表面の粗さが0.1〜0.25μmで通常の粗面化ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面粗さ0.5〜0.6μm又はそれ以上のものより小さく、露光時の光照射による光散乱を低減できる等である。ここで使用される空洞含有ポリエステル系フィルムの厚みは50〜250μm、好ましくは100〜180μmが機械的特性、形状安定化あるいは感光性樹脂印刷版の製版時の取扱い性等から好ましい。
【0008】
本発明における感光性樹脂積層体は、支持体と感光性樹脂との間に接着剥離層が、感光性樹脂層とカバーフィルムの間に粘着防止層がそれぞれ存在し、感光性樹脂層と、接着剥離層との間の剥離力が、粘着防止層とカバーフィルムとの間の剥離力より小さいことが好ましい。この理由は、感光性樹脂積層体を例えばスクリーン印刷原版として用いる場合、支持体を最初に剥がしてスクリーンに貼り付け、その後カバーフィルムを剥がして画像露光、現像といった製版工程に入るため、先に剥がす支持体側の剥離力が、後から剥がすカバーフィルム側の剥離力よりも小さくなるように設計する必要があるからである。
【0009】
本発明感光性樹脂積層体は、感光性樹脂層と接着剥離層との間の剥離力が1g/cm〜50g/cmであることが好ましい。この理由は、1g/cm未満であると裁断や持ち運び等の工程において、意図せずにして剥がれるおそれがあり、50g/cmを超えると支持体の剥離が困難になるからである。
【0010】
本発明の空洞含有ポリエステル系フィルムからなる支持体上に設けてなる薄層の接着剥離層としては、シリコーン離型、フッ素樹脂、ステアリン酸系樹脂、ポリエチレンワックス、流動性パラフィン等が好適であり、厚みとしては0.001〜10μm程度が好ましく、特に好ましくは0.001〜5μmである。
【0011】
本発明は公知のいずれの感光層へ適応しても良く、本発明感光性樹脂積層体を構成する感光性樹脂層としては特に限定されるものではない。感光性樹脂層を構成する成分として、ベースポリマー、光架橋剤、光増感剤、重合禁止剤、その他の添加剤等が含有され、その主成分であるベースポリマーの種類によって、例えばポリアミド系、ポリウレタン系、ポリビニルアルコール系、ポリエステル系、ポリ酢酸ビニル系などと称されている。本発明においては、水又は水性媒体で現像できる感光性樹脂層が好ましく、具体的には特開昭60−211451号公報、特開平2−175702号公報、特開平4−3162号公報、特開平2−305805号公報、特開平3−228060号公報、特開平10−339951号公報等に記載されている感光性樹脂組成物が挙げられる。
【0012】
本発明感光性樹脂積層体における粘着防止層としては、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキシド、両性インターポリマー、アルキルセルロース、セルロース系ポリマー(特にヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース)、エチレンとビニルアセテートのコポリマー、セルロースアセテートブチレート、ポリブチラール、環状ゴム等が挙げられる。これらは、いずれか1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。両性インターポリマーは米国特許第4,293,635号に記載されているものである。なお、本発明においては、ポリビニルアルコール等が好ましい。
【0013】
また、本発明感光性樹脂積層体におけるカバーフィルムとして具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリフェニレンスフィド、ポリフェニレンオキサイド等が挙げられる。これらは、いずれか1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、これらに他の有機重合体を少量共重合したり、ブレンドしたりしてもよい。カバーフィルムの厚みは10〜300μmが好ましく、特に好ましくは10〜200μmである。なお、本発明においては、可撓性を有し、かつ、寸法安定性に優れたポリエチレンテレフタレート等が好ましい。
【0014】
本発明の感光性樹脂積層体を用いてスクリーン印刷版を得る方法としては、感光性樹脂層上の空洞含有ポリエステル系フィルムからなる支持体を剥離し、感光性樹脂表面層上の粘着防止層の版面にネガ又はポジフィルムの原図フィルムを真空密着させ、活性光線を照射し感光性樹脂層の一部分を露光・硬化させ、その後原図フィルムを剥し、未露光・未硬化部分を現像液にて除去することによって印刷版を得ることができる。
【0015】
該感光性スクリーン印刷用原版の支持体を剥離してから、感光性樹脂層を型枠に張られたスクリーンに載置し、軽く押圧した状態で、裏面側より水を塗布して感光性樹脂層を軟化させて、感光性樹脂層をスクリーンに食い込ませた状態で感光性樹脂を一部溶解し、スクリーンに貼り付けるか、或いは、スクリーンに載置して、裏面側より感光性乳剤を塗布して乾燥させることにより、型枠に張られたスクリーンに感光性スクリーン印刷用原版を貼り付けることが出来る。次に、型枠に貼り付けた感光性スクリーン印刷用原版にマスクを介して化学線を全面照射する。
【0016】
上記のようにして活性光線が照射された版は、現像工程に供される。現像工程は、慣用の現像ユニットで実施することができ、版の性質に応じて、水、有機溶剤またはこれらの混合物を使用することができる。現像工程後、得られた印刷版は乾燥させる。版の乾燥条件は、例えば、60〜70℃で5分〜60分間である。乾燥後に、幾つかの後処理操作をさらに行うことができる。
【実施例】
【0017】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、本発明における剥離力は以下の方法により即手した。
剥離力:引っ張り試験機(オリエンテック(株)製RTC-1210A)を用い、カバーフィルム(または支持体)を感光性樹脂層に対して90°の角度の方向にスピード500mm/分で引っ張ったときの値であり、単位幅(cm)あたりの強度で表示した。
【0018】
実施例1
A.接着剥離層付き支持体の作製
空洞含有ポリエステル系フィルム(原反は東洋紡績(株)製 クリスパーK1212、厚さ100μm)にシリコーン離型剤(KS−774(信越シリコーン(株)製) 1.7%、トルエン49.1%、メチルエチルケトン49.1%および触媒(PL−3(信越シリコーン(株)製))0.1%からなる組成物をグラビアコーター(165メッシュロール使用)にてコート後、150℃で約30秒乾燥して得られたものであった。
【0019】
B.原版の作製
接着剥離層コート済みPETフィルムを支持体とし、感光性樹脂層、ポリビニルアルコール層およびPETカバーフィルムから構成される感光性スクリーン印刷版(コスモマスクTF20E(東洋紡績(株)製))の支持体を剥離し露出させた感光性樹脂層に上記Aで作製した接着剥離層付き支持体を重ね合わせ、ヒートプレス機を用いて100℃、100kg重/cm2でラミネートし、接着剥離層付き支持体、接着離型層、感光性樹脂、ポリビニルアルコール層(粘着防止層)およびPETカバーフィルムからなる本発明感光性樹脂積層体を得た。なお、この版の接着剥離層と感光性樹脂層との剥離力は10g/cm、粘着防止層とカバーフィルムとの剥離力は20g/cmであり、総厚みは0.45mmであった。
【0020】
C.製版の実施
上記原版の支持体を剥がし、日本特殊織物(株)製200メッシュのスクリーンに、感光性スクリーン印刷用原版の支持体PETフィルムを剥がした感光性樹脂層面を水により軟化させて貼り付け、乾燥させた。支持体を剥離する際の表裏判別がしやすく、支持体の剥離ミスも無く剥離することが出来た。
上記の紗貼りを行った感光性スクリーン印刷用原版を、(株)ムラカミ製露光機 MS PRINTER A−I型を用いて、真空密着させることなく、超高圧水銀灯:3KW/1m、40秒間露光し、感光性樹脂層に潜在画像を形成した。上記露光後に(株)ムラカミ製簡易水洗現像機を用いて約5分間スプレー洗浄して感光性樹脂層の未露光部分を水洗除去する。上記水洗後、スクリーン面の水滴を良く落とし、約30分間乾燥してスクリーン印刷用版を得た。
出来上がったスクリーン印刷原版を、(株)ムラカミ製スクリーン印刷機MS−2010HGを用いて印刷した。その結果、開口部精度(理論値300μm線幅)が、印刷線幅300μm±20μm(大日本スクリーン製造(株)製DR−550−Fの測長機にて測定)であり、スクリーン印刷用の版としては実用に耐えるものであった。
【0021】
比較例1
実施例1において、空洞含有ポリエステル系フィルム(クリスパー、東洋紡績(株)製)に代えて125μm厚みポリエチレンフタレートフィルム(E−5000,東洋紡績(株)製、表面粗さ0.02μm、光透過率80%)を用いた以外は全て実施例1と同様な方法で全厚0.45mmの感光性樹脂積層体を得、スクリーン印刷用原版を作製した。この得られたスクリーン印刷用原版は、表裏判別が困難で支持体の剥離ミスを数回やり原版のロスを生じた。
【0022】
比較例2
実施例1において、空洞含有ポリエステル系フィルム(クリスパー、東洋紡績(株)製)に接着剥離層のコートを施さずに使用し、実施例と同様な方法で全厚0.45mmの感光性樹脂積層体を得、スクリーン印刷用原版を作製した。この得られたスクリーン印刷用原版は、感光性樹脂積層体と支持体の剥離力が100g/cmであり、支持体を剥離する際、カバーフィルムが先に剥離してしまうため製版が上手くいかず原版のロスを生じた。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の空洞含有ポリエステル系フィルムからなる支持体を有する感光性樹脂積層体は、前記の実施例からも明らかなように、支持体フィルムとカバーフィルムとの判別がし易く、更には製版時に支持体の剥離がし易いので、スクリーン印刷用原版をはじめ各種印刷原版に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも支持体、感光性樹脂層およびカバーフィルムを有する感光性樹脂積層体であって、前記支持体が、空洞含有ポリエステル系フィルムであることを特徴とする感光性樹脂積層体。
【請求項2】
支持体と感光性樹脂との間に接着剥離層が、感光性樹脂層とカバーフィルムの間に粘着防止層がそれぞれ存在し、感光性樹脂層と、接着剥離層との間の剥離力が、粘着防止層とカバーフィルムとの間の剥離力より小さいことを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂積層体。
【請求項3】
感光性樹脂層と接着剥離層との間の剥離力が1g/cm〜50g/cmである請求項1記載の感光性樹脂積層体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂積層体を用いたスクリーン印刷原版。

【公開番号】特開2006−181896(P2006−181896A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378725(P2004−378725)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】