説明

感光性組成物、及び電極形成用印刷原版

【課題】高精度を保持しつつロングラン印刷を行うことができる印刷原版を製造できる感光性組成物等を提供すること。
【解決手段】感光性組成物は、親水性ポリマー(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、可塑剤(D)と、を含有する。この感光性組成物を含む樹脂層を、可撓性の支持体上に形成することで、印刷原版が製造される。この印刷原版は、適宜加工されて、立体的な電子部品の互いに隣接する複数の面に亘って連続する電極の形成に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物、及び電極形成用印刷原版に関し、特に、立体的な電子部品の互いに隣接する複数の面に亘って連続する電極の形成に関与する感光性組成物、及び電極形成用印刷原版に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミック、積層チップインダクタ等の立体的な電子部品は、外部に電極が形成された後、基板に装着される。ここで、基板への接続不良を回避するためには、電極が、電子部品の互いに隣接する複数の面に亘り連続して形成されている(断面が略コ字状)ことが重要である(例えば、特許文献1参照)。電子部品の複数面に亘って電極を形成するためには、そのような模様に導電性ペースト(例えば、銅ペースト、銀ペースト)を印刷する必要がある。
【0003】
従来、電子部品への導電性ペーストの印刷は、例えば、以下のようなロール転写方式、スクリーン印刷法等で行われる。
【0004】
ロール転写方式では、まず円周に沿って溝が形成されたローラ状の印刷版を、僅かな距離を離して互いに対向配置する。続いて、溝に導電性ペーストを補給しながら、両印刷版を互いに反対方向へと回転させ、印刷版の間に電子部品を通過させる。すると、印刷版が電子部品に押圧され、溝に充填されていた導電性ペーストが電子部品の表面に転写され、印刷されることになる。
【0005】
スクリーン印刷法では、まず印刷版に相当するスクリーンと呼ばれる網目状の絹、合成樹脂、ステンレス等を枠に張り、スクリーンの面に導電性ペーストの通過する部分と、通過しない部分(孔)とを作る。次いでその孔に充填された導電性ペーストをスキージで電子部品の表面へと押し出す。すると、導電性ペーストが電子部品の表面に転写され、印刷されることになる。
【0006】
また、表面に溝が形成されシリコンゴム等からなる平板状弾性体の上に、導電性ペーストを流し、溝以外の部分に付着した導電性ペーストをスキージで掻き落とすことで得られる凹版を電子部品の表面にスタンプする要領で、電子部品の表面に導電性ペーストを転写する方法も知られている。
【特許文献1】特開平2−33908号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前述した各方法において従来使用されている印刷版には、導電性ペーストに含有される有機溶剤に対する耐侵食性が不十分であるという問題がある。溶剤に対する耐侵食性が不十分であると、印刷の過程において経時的に、溝の形状が変化し、電子部品に印刷される導電性ペースト膜の膜厚や寸法の精度が損なわれる。このため、高精度を保持しつつロングラン印刷を行うことが困難であった。
【0008】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、高精度を保持しつつロングラン印刷を行うことができる印刷原版を製造できる感光性組成物、及びこの感光性組成物を用いた電極形成用印刷原版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、親水性ポリマー(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、可塑剤(D)と、を含有させることによって、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の感光性組成物は、立体的な電子部品の互いに隣接する複数の面に亘って連続する電極を形成するための印刷原版の製造に用いられる感光性組成物であって、親水性ポリマー(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、可塑剤(D)と、を含有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の電極形成用印刷原版は、立体的な電子部品の互いに隣接する複数の面に亘って連続する電極を形成するための印刷原版であって、可撓性の支持体と、この支持体上に位置し前述した感光性組成物からなる層と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、親水性ポリマー(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、可塑剤(D)とを併せて含有させたので、高精度を保持しつつロングラン印刷を行うことができる印刷原版を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0014】
<感光性組成物>
本発明の感光性組成物は、親水性ポリマー(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、可塑剤(D)と、を含有する。以下、各成分について詳細に説明する。
【0015】
[親水性ポリマー(A)]
親水性ポリマー(A)としては、例えば、ポリビニルアルコール、N−メチロール基を有するアクリル系化合物とポリビニルアルコールとの反応生成物、変性ポリビニルアルコール(ポリビニルアルコール・ポリアクリレートブロック共重合体、無水アクリル酸を反応させた変性ポリビニルアルコール、グラフト化ポリビニルアルコール等)、カルボキシアルキルセルロース、スルホン酸ナトリウム基を有するポリアミド、エーテル結合を有するポリアミド、塩基性窒素またはアンモニウム塩型窒素を有するポリアミド、ポリビニルピロリドン、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0016】
これら具体例の中において、親水性ポリマー(A)は、有機溶剤に対する耐侵食性に優れる点で、エチレン性二重結合及び極性基(例えば、水酸基)を有するものが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコールを含むことが好ましい。ポリビニルアルコールの含有量は、少なすぎると耐侵食性が十分には得られず、多すぎても不経済である点で、全固形成分に対して30質量%以上90質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、全固形成分に対して40質量%以上60質量%以下である。
【0017】
また、親水性ポリマー(A)は、N−メチロール基を有するアクリル系化合物と、ポリビニルアルコールとの反応生成物を含むことも好ましい。この反応生成物の含有量は、少なすぎると耐侵食性が十分には得られず、多すぎても不経済である点で、全固形成分に対して30質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
【0018】
N−メチロール基を有するアクリル系化合物としては、例えば、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メチル−N−メチロールアクリルアミド、N−メチル−N−メチロールメタクリルアミド、N−エチル−N−メチロールアクリルアミド、N−エチル−N−メチロールメタクリルアミドが挙げられ、これらは1種単独で又は複数種組み合わせて使用される。これらの中でも、N−メチロールアクリルアミド及びN−メチロールメタクリルアミドが好ましい。
【0019】
ポリビニルアルコールの平均重合度は、現像性を向上できる点で、200以上2000以下であることが好ましい。
【0020】
また、親水性ポリマー(A)は、柔軟性に優れ且つ耐侵食性を向上できる点で、平均ケン化度30mol%以上、好ましくは平均ケン化度60mol%以上のポリビニルアルコールで構成される。ここで、親水性ポリマー(A)は、ケン化度が略等しいポリビニルアルコールで構成されてもよく、ケン化度が異なる複数のポリビニルアルコールで構成されてもよい。
【0021】
[光重合性モノマー(B)]
光重合性モノマー(B)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸のような不飽和カルボン酸;メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、エチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、プロピレングリコールモノアクリレート、分子量200〜1000のポリエチレングリコールモノアクリレート、分子量200〜1000のポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメトキシモノアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、N,N’−ジメチルアミノエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、及びこれらに対応するメタクリレートのような不飽和カルボン酸エステル;アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチロールアクリルアミド、N−プロピロールアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ジアクリルアミドジメチレンエーテル、メチレンビスアクリルアミド、及びこれらに対応するメタクリルアミドのような不飽和カルボン酸アミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリルのような不飽和ニトリル;アリルスルホン酸ナトリウム、メタクリルスルホン酸ナトリウム、トリメチロールプロパントリアリルスルホンアクリレートのような不飽和スルホン酸及びその誘導体が挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよく、複数種で組み合わせて使用されてもよい。
【0022】
光重合性モノマー(B)の含有量は、パターン形成能を向上でき且つ印刷原版からの感光性組成物の滲出を抑制できる点で、全固形成分に対して5質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
【0023】
[光重合開始剤(C)]
光重合開始剤(C)としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ、4−アルコキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;ベンゾイン、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体;ベンジルジメチルケタールが挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよく、複数種で組み合わせて使用されてもよい。
【0024】
光重合開始剤(C)の含有量は、十分な光硬化性を付与でき且つ経済的である点で、全固形成分に対して0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
【0025】
[可塑剤(D)]
可塑剤(D)としては、ゴム弾性を付与できるものであれば特に限定されないが、水酸基を有する化合物であることが好ましい。具体的には、トリメチロールプロパン、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリグリセリン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよく、複数種で組み合わせて使用されてもよい。
【0026】
可塑剤(D)の含有量は、十分なゴム弾性を付与でき且つ光重合反応後におけるレリーフのパターン寸法の耐湿度性を向上できる点で、全固形成分に対して1質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0027】
本発明の感光性組成物は、前述した親水性ポリマー(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合性開始剤(C)と、可塑剤(D)とを、水及び/又は水との相溶性が高い有機溶媒(例えば、アルコール系溶剤)等の溶剤に溶解し、感光性樹脂溶液として調製して使用されることが好ましい。
【0028】
(任意成分)
本発明の感光性組成物は、前述した成分に加え任意成分として、他の溶剤、感光性組成物の調製において慣用的に用いられる熱重合禁止剤、安定化剤、染料等を更に含有してもよい。また、本発明の目的を達成できる範囲において、他の樹脂成分を含有してもよい。
【0029】
熱重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、p−ベンゾキノン等のキノン系化合物;2,6−ジ−tertブチル−p−クレゾール等のフェノール系化合物;N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム等のニトロソアミン系化合物、ニトロベンゼン又はその誘導体が挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよく、複数種で組み合わせて使用されてもよい。
【0030】
本発明の感光性組成物は、立体的(例えば、略直方体状)な電子部品の互いに隣接する複数の面に亘って連続する電極を形成するための印刷原版の製造に用いられる。
【0031】
<電極形成用印刷原版>
本発明の電極形成用印刷原版は、可撓性の支持体と、この支持体上に位置し感光性組成物からなる層とを備えるものである。
【0032】
支持体としては、従来公知の構成でよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、スチール、アルミニウム等の素材で形成されてよい。
【0033】
本発明の印刷原版は、例えば、前述した本発明の感光性組成物からなる感光性樹脂溶液を支持体上に常用されている塗布手段により塗布し、乾燥して感光性樹脂層を形成することで製造される。この感光性樹脂層は、通常0.01〜100mmの厚さに形成されることが好ましい。
【0034】
また、本発明の印刷原版は、立体的(例えば、略直方体状)な電子部品の互いに隣接する複数の面に亘って連続する電極を形成するために用いられる。
【0035】
この印刷原版を用いた電極形成用印刷版の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、以下の2通りの方法が挙げられる。
【0036】
第1の製造方法は、印刷原版の全面に活性線を照射した後、レーザー光を照射することで、所定パターンを描画し、所定形状の溝を形成する方法である。ここで使用されるレーザー光の波長は、通常150nm以上であり、好ましくは200nm以上15000nm以下である。また、レーザー光の照射後、必要に応じて、印刷版を水で洗浄してもよく、更に活性線を全面照射してもよい。
【0037】
第2の製造方法は、ネガマスクを介して印刷原版に活性線を選択露光し、現像処理を施すことで活性線の未露光部分を除去した後、乾燥し、後露光処理を行うことで、所定形状の溝を形成する方法である。後露光処理の後、必要に応じて、表面をめっきする処理を行ってもよい。活性線の照射に用いられる光源としては、450nm以下の波長、特に300〜400nmの波長領域のものが有用であり、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、紫外線蛍光灯、ケミカルランプ、キセノンランプが挙げられる。
【0038】
これらの製造方法により得られる電極形成用印刷版は、電子部品の印刷版に対向する面から、この面の隣接面に亘って連続的に導電性ペーストを転写するために、適当な柔軟性を有することが好ましく、具体的には、JIS6253型規格に準拠したショアA硬度が、40°〜90°の範囲であることが好ましい。ショアA硬度は、低すぎると、隣接面への導電性ペーストの転写が不十分になる場合があり、高すぎると、導電性ペーストを所望の形状に転写するのが困難になる場合がある。
【0039】
次に、この電極形成用印刷版の溝に導電性ペーストを充填し、印刷版の表面を電子部品に押圧することで、導電性ペーストが電子部品へと転写される。ここで、柔軟性を有する印刷版は、電子部品の対向する面に押圧されて凹むとともに、電子部品の対向する面に隣接する面に回りこんで当接する。これにより、印刷版に対向する面と、この面に隣接する複数の面に導電性ペーストが転写される。
【0040】
更に、導電性ペーストを焼成することにより、電子部品の複数面に亘って連続する電極が形成されることになる。
【0041】
導電性ペーストは、通常、導電性金属の粉末と、有機バインダとを含有し、これらが有機溶剤に溶解又は分散されたものである。導電性金属は、銅や銀が一般的であるが、その他、ニッケル、コバルト等の強磁性金属を主成分又は副成分として含んでよい。
【0042】
有機溶剤としては、α−ターピネオール、ジヒドロターピネオール、高級アルコール(例えば、デカノール)、ブチルカルビトール等が一般的に使用される。本発明の印刷原版から製造される電極形成用印刷版によれば、これらの有機溶剤に対する耐侵食性に優れるため、高精度の溝形状を保持しつつロングラン印刷を行うことができる。
【実施例】
【0043】
感光性樹脂溶液の調製
溶液1〜5の調製における各成分の配合割合については、表1に示される通りとした。具体的には、以下のような手順で各溶液を調整した。
【0044】
<溶液1>
親水性ポリマー(A)として、(A−1)ケン化度35mol%、重合度800のポリビニルアルコールを用い、光重合性モノマー(B)として、(B−1)ポリエチレングリコールジアクリレート「A−400」(新中村化学社製)を用い、光重合開始剤(C)として、(C−1)ベンジルジメチルケタールを用い、可塑剤(D)として、(D−1)ポリグリセリンを用いた。これら各成分と、溶剤である水/メタノール(質量比4/1)とを混合し、固形分濃度50質量%の感光性樹脂溶液を調製した。
【0045】
<溶液2>
親水性ポリマー(A)として、(A−2)ケン化度73mol%のポリビニルアルコールを使用した点を除き、溶液1の調製と同様の手順で、感光性樹脂溶液を調製した。
【0046】
<溶液3>
親水性ポリマー(A)として、(A−5)ケン化度73mol%、重合度500のポリビニルアルコールに、(A−6)N−メチロールアクリルアミドを添加し、酸触媒の存在下、100℃で2時間撹拌することで得られる反応生成物を用い、光重合性モノマー(B)として、(B−2)ポリエチレングリコール#200ジアクリレート「A−200(商品名)」(新中村化学社製)を用い、可塑剤(D)として、(D−3)トリメチロールプロパンを用い、更に熱重合禁止剤であるN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム(和光純薬工業製)を用いた点を除き、溶液1の調製と同様の手順で、感光性樹脂溶液を調製した。
【0047】
<溶液4>
親水性ポリマー(A)として、(A−7)ケン化度82mol%、重合度1700のポリビニルアルコール、及び(A−8)ケン化度60mol%、重合度250のポリビニルアルコールと、(A−6)N−メチロールアクリルアミドとの反応生成物を用い、光重合性モノマー(B)として、(B−2)ポリエチレングリコール#200ジアクリレート「A−200(商品名)」(新中村化学社製)を用い、可塑剤(D)として、(D−3)トリメチロールプロパンを用い、更に熱重合禁止剤であるN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム(和光純薬工業製)を用いた点を除き、溶液1の調製と同様の手順で、感光性樹脂溶液を調製した。
【0048】
<溶液5>
親水性ポリマー(A)として、(A−5)ケン化度73mol%、重合度500のポリビニルアルコール、(A−7)ケン化度82mol%、重合度1700のポリビニルアルコール、及び(A−8)ケン化度60mol%、重合度250のポリビニルアルコールと、(A−6)N−メチロールアクリルアミドとの反応生成物を用い、光重合性モノマー(B)として、(B−3)2−ヒドロキシエチルアクリレート「HOA(商品名)」(共栄社化学)を用い、可塑剤(D)として、(D−3)トリメチロールプロパンを用い、更に熱重合禁止剤であるN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム(和光純薬工業製)を用いた点を除き、溶液1の調製と同様の手順で、感光性樹脂溶液を調製した。
【0049】
【表1】

【0050】
(比較溶液1)
疎水性ポリマーであるスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体「KRATON D−1102」(クレイトンポリマー社製)を59質量部、光重合性モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート10質量部、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタールを1質量部、可塑剤として1,2−ポリブタジエン「ニッソーPB−1000」(日本曹達社製)を30質量部用いた。これら各成分と、溶剤であるトルエン/メチルエチルケトン(質量比4/1)とを混合し、固形分濃度50質量%の感光性樹脂溶液を調製した。
【0051】
(比較溶液2)
「KRATON D−1102」(クレイトンポリマー社製)の代わりに、疎水性ポリマーであるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体「KRATON D−1107」(クレイトンポリマー社製)を使用した点を除き、比較溶液1と同様の手順で、感光性樹脂溶液を調製した。
【0052】
<溶液6>
親水性ポリマー(A)として、ケン化度82mol%、重合度500のポリビニルアルコール45質量部、光重合モノマー(B)として、ポリエチレングリコールジアクリレート「A−400」(新中村化学社製)46質量部、光重合開始剤(C)として、ベンジルジメチルケタール0.5質量部、可塑剤(D)として、グリセリン8質量部、任意成分として、熱重合禁止剤であるN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム「Q−1300」(和光純薬工業製)0.5質量部を用いた。これら各成分と、溶剤である水/メタノール(質量比4/1)とを混合し、固形分濃度50質量%の感光性樹脂溶液を調製した。
【0053】
<溶液7>
親水性ポリマー(A)として、(A−1)ケン化度35mol%、重合度800のポリビニルアルコール60質量部を用い、光重合性モノマー(B)として、(B−1)ポリエチレングリコールジアクリレート「A−400」(新中村化学社製)12質量部を用い、光重合開始剤(C)として、(C−1)ベンジルジメチルケタール2質量部を用い、可塑剤(D)として、(D−1)ポリグリセリン26質量部を用いた。これら各成分と、溶剤である水/メタノール(質量比4/1)とを混合し、固形分濃度50質量%の感光性樹脂溶液を調製した。
【0054】
<実施例1〜7>
溶液1〜7で調製した感光性樹脂溶液の各々を、ポリエステルシート(カバーフィルム)に予め形成されているポリビニルアルコール層の上に、Tダイを用いて塗布し、ウェット状態で厚さ3mmのシートを作成した。このシートを60℃で4時間乾燥した。乾燥後、厚さ1.5mmとなったシートに、片面に予め接着層が形成されている厚さ188μmのポリエステルシート(ベースフィルム)を、接着層がシートに対向する方向で積層することで、印刷原版を製造した。溶液1〜7を用いた例をそれぞれ実施例1〜7とする。
【0055】
(比較例1〜2)
比較溶液1〜2を用いて、実施例と同様の手順で、印刷原版を製造した。比較溶液1〜2を用いた例をそれぞれ比較例1〜2とする。
【0056】
[評価]
各印刷原版に、活性線を全面照射して試験用印刷版を作製した。この試験用印刷版から3cm四方の試験片を切り取り、この試験片を、導電性ペースト(特に、銅ペースト)の代表的な有機溶剤であるα−ターピネオールに24時間浸漬した。その後の試験片を使用して、版面硬度値の変化率(JIS K 6253形規格に準拠する硬度測定機を用いて、浸漬処理の前後間の硬度差を測定した)、及び樹脂層膜厚の変化率を算出した。この結果を表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
表2に示されるように、比較例1〜2の印刷原版から採取した試験用印刷版では、版面硬度値及び樹脂層膜厚のいずれもが変化(減少)しており、これらの試験用印刷版が導電性ペーストの有機溶剤により侵食されていることが確認された。これに対して、実施例1〜7の印刷原版から採取した試験用印刷版では、版面硬度値及び樹脂層膜厚の変化が見られず、これらの試験用印刷版が導電性ペーストの有機溶剤に対する優れた耐侵食性を有することが確認された。
【0059】
次に、前述した各試験用印刷版を用いて、以下の手順で電子部品に電極を取り付けた。まず試験用印刷版に対して炭酸レーザーを選択的に照射し、照射部分を融除することで、幅150μm、深さ15μmの直線状の凹溝を形成した。続いて、α−ターピネオールに銀が分散された導電性ペーストを、試験用印刷版の表面に塗布して、凹溝に導電性ペーストを充填した。次いで試験用印刷版表面から余分な導電性ペーストをスキージで掻き落として除去することで、印刷版を作製した。この印刷版に立体的な電子部品の一面を対向させ、更に押し付けることで、凹溝内の導電性ペーストを電子部品に転写した。続いて、転写された導電性ペーストを乾燥させることで、電極を形成した。転写後、凹溝に導電性ペーストを新たに充填し、上記と同様にして、新しい立体的な電子部品に導電性ペーストを転写する操作を30回繰り返して行った。各電子部品に形成された電極の形状を評価した結果を、ショアA硬度と併せて表3に示す。
【0060】
【表3】

※ ○:すべての電子部品に良好な形状(略コ字状)の電極が形成された
△:一部の電子部品にパターンずれを有するが実用上の問題はない略コ字状電極が
形成された
×:実用的な略コ字状の電極が得られなかった
【0061】
表3に示されるように、比較例1〜2の印刷原版から採取した試験用印刷版では、導電性ペーストにより印刷版が侵食されて凹溝の形状が変化したため、実用的な電極を形成できないことが確認された。これに対して、実施例1〜7の印刷原版から採取した試験用印刷版では、繰り返される転写の過程での凹溝の形状の変化が小さかったため、実用的な電極を形成できることが確認された。特に、ショアA硬度が40°〜90°の範囲である実施例1〜5の印刷原版から採取した試験用印刷版によれば、すべての電子部品に良好な形状の電極を形成できることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立体的な電子部品の互いに隣接する複数の面に亘って連続する電極を形成するための印刷原版の製造に用いられる感光性組成物であって、
親水性ポリマー(A)と、光重合性モノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、可塑剤(D)と、を含有することを特徴とする感光性組成物。
【請求項2】
前記親水性ポリマー(A)は、ポリビニルアルコールを含むことを特徴とする請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
全固形成分に対して、ポリビニルアルコールを30質量%以上90質量%以下含有することを特徴とする請求項2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記親水性ポリマー(A)は、N−メチロール基を有するアクリル系化合物と、ポリビニルアルコールとの反応生成物を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項5】
全固形成分に対して、前記反応生成物を30質量%以上70質量%以下含有することを特徴とする請求項4に記載の感光性組成物。
【請求項6】
ポリビニルアルコールは、平均重合度200以上2000以下であることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項7】
全固形成分に対して、前記光重合性モノマー(B)を5質量%以上70質量%以下、前記光重合開始剤(C)を0.01質量%以上5質量%以下、前記可塑剤(D)を1質量%以上40質量%以下含有することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項8】
立体的な電子部品の互いに隣接する複数の面に亘って連続する電極を形成するための印刷原版であって、
可撓性の支持体と、この支持体上に位置し請求項1から7のいずれか1項に記載の感光性組成物からなる層と、を備えることを特徴とする印刷原版。
【請求項9】
前記感光性組成物からなる層に対して活性線が全面照射されたものであり、且つ、ショアA硬度が40°〜90°の範囲であることを特徴とする請求項8に記載の印刷原版。

【公開番号】特開2008−200857(P2008−200857A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−35832(P2007−35832)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】