説明

感光性組成物

本発明は、少なくとも0.5 mg/mlの水溶性を有する両親媒性の感光剤の薬学的に許容し得る塩および光化学的内部移行の方法におけるその使用に関する。このような塩は、例えばアミノアルコールのような有機アミンなどの薬学的に許容し得る塩基、または、例えばスルホン酸やスルホン酸誘導体などの薬学的に許容し得る酸から形成されていてもよい。このような塩は、その水溶性が増しているために、非経口の医薬製剤の調製における使用(例えば溶液として注射や点滴などへの使用)に特に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物および光化学的内部移行(「PCI」)による薬物分子の細胞内への送達のための方法におけるその使用に関する。より詳細には、本発明は、両親媒性の感光剤の水溶性の塩を含み、よって非経口投与に好適である、そのような方法に使用される組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光化学療法または光線力学的療法(PDT)は、様々な異常や障害に対する治療のための技術である。PDTは、皮膚や他の上皮性の器官または粘膜の障害、特に癌や前癌性病変の治療に使用され得る。PDTはまた、例えば座瘡や加齢性黄斑変性症などのような非癌性疾患の治療における使用にも見出されている。PDTには、身体の患部に感光剤を塗布すること、それに続いて、感光剤を活性化するために光活性化する光で該患部を曝露することが含まれる。感光剤は活性化することによって、病的細胞を死滅させるか、さもなければ病的細胞の増殖能を弱める細胞毒性の形態に変換される。
【0003】
PDTに使用される感光剤として様々なものが知られている。臨床用途で知られているものとしては、5-アミノレブリン酸(5-ALA)、5-ALAメチルエステル、5-ALAヘキシルエステル、ベルテポルフィン、ソラレンおよびポルフィマーが挙げられる。5-ALA(Levulan(登録商標))および5-ALAメチルエステル(Metvix(登録商標))は、様々な皮膚の疾患に対する治療に使用され;5-ALAヘキシルエステル(Hexvix(登録商標))は、膀胱癌の診断に使用され;ベルテポルフィン(Visudyne(登録商標))は、目の黄斑変性症の治療に使用され;ならびに、ポルフィマー(Photofrin(登録商標))は、肺癌の治療および閉塞性食道癌の緩和療法に使用される。
【0004】
光化学的内部移行(単に「PCI」としても知られている)は、膜を透過しない感光剤以外の薬物を細胞のサイトゾル内に導入するための感光剤および光の使用を含むが、必ずしも細胞破壊や細胞死をもたらさない薬物送達方法である。この方法において、内在化または移行される分子が、感光剤とともに細胞に塗布される。好適な波長の光で細胞を曝露することによって、感光剤が活性化し、細胞内区画の膜の崩壊が次々に引き起こされ、続いてサイトゾル内に上記分子が放出される。これは、PDTにおいて、直接病気に影響を及ぼす細胞毒性物質を形成する感光剤に対する光の効果である。対して、PCIでは、感光剤と光との相互作用は、薬物の細胞内取り込みが向上するよう細胞に影響を及ぼすために使用される。両者のメカニズムは、一重項酸素種を含む経路を経由する。一重項酸素は、細胞膜中に存在する分子を含む様々な生体分子を酸化することができる反応性の高い形態の酸素である。PDTでは通常、直接作用する治療薬は使用されないが、PCIでは、直接作用する薬物(またはそのプロドラッグ)が感光剤とともに常に使用されている。「直接作用する」と考えられてもよい薬物とは、(治療または予防のいずれにせよ)固有の生物活性を有するものである。このような薬物は、インビボで所望の標的部位に存在するとき、活性化される光を必要としない。PCIに使用してもよい感光剤はPDTにも使用してもよいだろうが、PDTに活性のある感光剤のすべてをPCIに使用できるわけではない。
【0005】
PCIは、以下の特許文献に記載されている:国際公開第96/07432号、国際公開第00/54708号、国際公開第02/44396号、国際公開第02/44395号、国際公開第03/020309号、米国特許第6,680,301号明細書および米国特許第5,876,989号明細書。この技術はさらに、以下の刊行物に記載されている:Berg, K.ら, Cancer Res. (1999年) 59巻, 1180〜1183頁、Hogset, A.ら, Hum. Gene Ther. (2000年) 11巻, 869〜880頁、Prasmickaite, L.ら, J. Gene Med. (2000年) 2巻, 477〜488頁、Selbo, P.K.ら, Biochim. Biophys. Acta (2000年) 1475巻, 307〜313頁、Selbo, P.K.ら, Int. J. Cancer (2000年) 87巻, 853〜859頁、Selbo, P.K.ら, Int. J. Cancer (2001年) 92巻, 761〜766頁、Berg, K.ら, Photodynamics News (2001年) 4巻, 2〜5頁、Prasmickaite, L.ら, Photochem. Photobiol. (2001年) 73巻, 388〜395頁、Selbo, P.K.ら, Photochem. Photobiol. (2001年) 74巻, 303〜310頁、Selbo, P.K.ら, Tumor Biol. (2002年) 23巻, 103〜112頁、Hogset, A.ら, Adv. Drug Deliv. Rev. (2004年) 56巻, 95〜115頁、Berg, K.ら, Curr. Opin. Mol. Ther. (2004年) 6巻, 279〜287頁、Prasmickaite, L.ら, Expert Opin. Mol. Ther. (2004年) 4巻, 1403〜1402頁、Berg, K.ら, Clin. Cancer. Res. (2005年) 11巻, 8476〜8485頁、Berg, K.ら, Curr. Pharmacol. Biotech. (2006年) 8巻, 362〜372頁、および、Weyergang, A.ら, Photochem. Photobiol. Sci. (2008年) 7巻, 1032〜1040頁。
【0006】
種々の感光剤の多くがPCI用に提案されている。これらの例として、ジスルホン化されたアルミニウムフタロシアニン(例えばAlPcS2およびAlPcS2a等)などのフタロシアニン;スルホン化されたテトラフェニルポルフィリン(例えばTPPS2a、TPPS4、TPPS1およびTPPS2o等);ナイルブルー;クロリンならびにバクテリオクロリンおよびケトクロリンを含むクロリン誘導体;ウロポルフィリンI;フィロエリスリン;ヘマトポルフィリンおよびベンゾポルフィリンを含む天然のおよび合成のポルフィリン;メチレンブルー;カチオン染料;テトラサイクリン、ナフタロシアニン;テキサフィリン;フェオフォルビド;プルプリン;ローダミン;フルオレセイン;リソソーム作用性[lysosomotropic]弱塩基;ならびに、ポルフィセンが挙げられる。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、一以上の荷電した基を含み、両親媒性特性を示すこれら感光剤が、PCIに使用するのに特に好適であることを確認している。そのような剤として、特に、スルホン化されたテトラフェニルポルフィリンおよびスルホン化されたテトラフェニルクロリンが挙げられる。しかしながら、インビトロの研究においてPCIに両親媒性の感光剤を使用した際、得られた結果が有望なものであったにもかかわらず、このような化合物はまだ、広範囲にわたる臨床用途を獲得していない。
【0008】
本発明者らは、PCIに公知の両親媒性の感光剤を使用したとき、該剤が溶液、特に水性溶液(例えば非経口投与に使用してもよい)にほとんど溶けない(このような剤の水溶性は0.5 mg/mlよりはるかに小さい)ことに関して深刻な問題があることを認識していた。この問題はこれまでに、従来技術の文献のいずれにも特定されていなかった。当然のことながら、極めて水溶性の小さい感光剤は溶液から凝結する傾向があることから、特にこの感光剤が血管系に投与されると、インビボで重篤な副作用を引き起こす可能性がある。このような副作用として、熱や様々な免疫反応を挙げることができ、時として、致命的な場合がある。結果的に最も効能のある両親媒性の感光剤でさえ、現在でも非経口の医薬調製剤(例えば溶液として注射や点滴への使用)に好適とは言えない。
【0009】
そこで、本発明者らは、インビボでPCIを実施する代わりの(例えば改善された)方法を開発した。該方法は、水に容易に溶解する両親媒性の感光剤の使用を含み、よって上述した副作用が実質的にないものである。
【0010】
本発明は、一態様から見ると、光化学的内部移行の方法に使用される両親媒性の感光剤の薬学的に許容し得る塩であって、少なくとも0.5 mg/mlの水溶性を有する塩を提供する。該塩は、水への溶解度が、好ましくは1 mg/mlを超え、より好ましくは3 mg/ml以上または5 mg/ml以上である。最も好ましくは、該塩は、10 mg/ml以上の溶解度を有するであろう。
【0011】
本発明で使用する塩は、少なくとも20 mg/ml、より好ましくは少なくとも25 mg/ml、例えば少なくとも30 mg/mlの溶解度を有していてもよい。
【0012】
本発明で使用する感光剤は両親媒性と言えるだろう。本明細書で用いる「両親媒性」とは、親水性および疎水性の及ぶ範囲が分子全体にわたって一定ではなく、親水性のより高い領域(例えば極性領域)が分子のその他の領域と比べて存在している分子全体の特徴をいうことを意図する。感光剤は、典型的には一以上の荷電した基を有し、全体で陽性の(カチオン性の)電荷または陰性の(アニオン性の)電荷のいずれかを有する分子を含むだろう。
【0013】
本発明の目的上、「水溶性」とは、室温(例えば約20℃)における水への溶解度をいう。秤量した固体状の感光剤を、この固体が完全には溶解しない程度の少量の20℃の水中で撹拌し、この固体の上の溶液(すなわち上清溶液)における感光剤の濃度を測定することによって、水溶性を測定してもよい。
【0014】
「薬学的に許容し得る塩」という用語は、感光剤の生物学的効能および特性を保持し、好適な無毒性の酸または塩基から形成される塩をいう。
【0015】
「光化学的内部移行」および「PCI」という用語は、細胞内/膜結合区画から対象[patient]の細胞のサイトゾルに分子を放出する手順を含む、分子(例えば薬物分子)のサイトゾルへの送達をいうために、本願明細書において用いられる。
【0016】
本発明は、さらなる態様において、光化学的内部移行の方法に使用される治療薬を調製するための、少なくとも0.5 mg/mlの水溶性を有する両親媒性の感光剤の薬学的に許容し得る塩を提供する。
【0017】
本発明は、さらなる態様において、対象の細胞のサイトゾルに薬物分子を導入する方法を提供し、該方法が下記の手順を含む:
(a) 少なくとも0.5 mg/mlの水溶性を有する両親媒性の感光剤の薬学的に許容し得る塩を該細胞に接触させること;
(b) 該薬物分子を該細胞に接触させること;および
(c) 該感光剤を活性化するのに有効な波長の光で該細胞を照射すること。
【0018】
本発明に従って使用される感光剤は、必要な両親媒性特性を有し、細胞内区画(特にエンドソームまたはリソソーム)に局在する公知の感光剤のいずれであってもよい。様々な好適な剤は当該分野において公知であり、PCIでの使用に関する文献にも記載されている。文献としては、例えば、国際公開第96/07432号、国際公開第03/020309号および英国特許第2420784号明細書が挙げられる。これらとしては、特に、ジスルホン化されたアルミニウムフタロシアニン(特にスルホン化[sulphonation]が近接しているもの)などのフタロシアニン;スルホン化されたテトラフェニルポルフィリン(TPPSn、例えばTPPS2aおよびTPPS1);クロリンならびにバクテリオクロリンおよびケトクロリンを含むクロリン誘導体;ならびに、ヘマトポルフィリンおよびベンゾポルフィリンを含む天然のおよび合成のポルフィリンが挙げられる。
【0019】
以下は、これらのうち、本発明で使用する最も好ましい感光剤である:TPCS2a、TPPS2a、AlPcS2aおよびポルフィマー(Photofrin(登録商標))。ポルフィマー(Photofrin(登録商標))は、不均一な混合物質であり、少なくともこれらのうちいくつかは両親媒性である。
【0020】
本発明で使用する塩は、有機アミン、特にアミノアルコール(またはアルカノールアミン)のような薬学的に許容し得る塩基から形成されていてもよい。これらの化合物は、アニオン性の感光剤と塩を形成することができる。本明細書で用いられる「アミノアルコール」という用語は、少なくとも一つのアミン官能基と少なくとも一つのアルコール官能基との両方を含む任意の有機化合物を包含することを意図する。
【0021】
あるいは、本発明で使用する塩は、薬学的に許容し得る酸付加塩であってもよい。塩を形成する好適な酸は、カチオン性の感光剤と塩を形成することができるスルホン酸およびこのような酸の誘導体である。
【0022】
本発明に従って塩を形成するのに好適な塩基として、アミノアルコールが挙げられる。このような化合物は、直線状であっても、分岐していても、環状であってもよい。アミノアルコールのうち、本明細書に記載された塩の調製に特に好適なものは、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよび2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオールなどのような低級脂肪族アミノアルコールである。他の好適なアミノアルコールとしては、例えば4-(2-ヒドロキシエチル)-モルホリンおよび1-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジンなどのような環式化合物が挙げられる。本発明で使用するのに特に好ましいものは、アミノ糖であるグルカミンおよびN-メチルグルカミン(メグルミン)との塩基性塩である。本発明で使用するのに特に好ましい塩は、N-メチルグルカミン塩およびエタノールアミン塩である。
【0023】
本明細書で用いる「スルホン酸」という用語は、少なくとも1個の−SO3H基を含む任意の有機化合物を包含することを意図する。これは、1個,2個または3個、最も好ましくは1個または2個(例えば1個)の−SO3H基を含んでもいてもよい。「誘導体」という用語は、スルホン酸に関連して用いられる場合、少なくとも1個(好ましくは1個,2個または3個、最も好ましくは1個または2個、例えば1個)の−SO3X基(ここでXは、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウムまたはメグルミンのカチオンなどのような生理的に許容できるカチオンである。)を含むこのような任意の化合物を包含することを意図する。
【0024】
本発明による酸付加塩は、典型的には、カチオン性の感光剤と、メタンスルホン酸などのようなモノ-プロトン性[mono-protic]のスルホン酸とに由来するだろう。それによって、1:1の塩が形成される。あるいは、塩は、その感光剤とジ-またはトリ-プロトン性[di- or tri-protic]のスルホン酸(例えばエタン-1,2-二スルホン酸)とから形成されてもよい。一以上の酸性のプロトンを有する酸が用いられる場合、得られる塩は、例えば2:1(感光剤:酸)や3:1(感光剤:酸)などの、1:1以外の理論混合比を有してもよい。
【0025】
本発明による塩を形成する際、使用に好適なスルホン酸およびスルホン酸誘導体としては、R−SO3H(I)およびR−SO3X(II)の式のものが挙げられる。式中、Rは、水素原子または任意に置換されたアルキル(例えばC1-20アルキル基)またはアリール基(例えば20個までの炭素原子のアリール基)、好ましくは任意に置換されたアルキル基またはアリール基であってもよい。
【0026】
本明細書で用いられる用語「アルキル」としては、任意の長鎖もしくは短鎖の、直鎖、分岐または環状の脂肪族の、飽和あるいは不飽和の炭化水素基が挙げられる。この基は、例えばヒドロキシ、アルコキシ、アシロキシ、ニトロ、アルコキシカルボニルオキシ、アミノ、アリール、オキソまたはハロ(例えばフルオロやクロロ)の基などによって、任意に置換(例えば一置換または多置換)されていてもよい。不飽和アルキル基は、モノ不飽和であってもポリ不飽和であってもよく、アルケニル基およびアルキニル基を含む。
【0027】
本発明による使用に好ましい塩は、式(I)または(II)の酸から形成されるものであり、式中、Rは、任意に置換(例えば一置換または多置換)された直鎖状、分岐または環状(例えば単環もしくは二環、架橋もしくは非架橋)のアルキル基(20個までの炭素原子を含んでもよい)、あるいは、任意に置換(例えば一置換または多置換)されたアリール基(好ましくは20個までの炭素原子を含む)である。Rの基に存在してもよい好ましい置換基としては、C1-6アルキル(例えばメチル)、ヒドロキシ、アルコキシ、アシロキシ、ニトロ、アルコキシカルボニルオキシ、アミノ、アリール、オキソおよびハロ(例えばフルオロまたはクロロ)が挙げられる。
【0028】
感光剤とスルホン酸化合物とから形成される、本発明による塩は、通常、単一のスルホン酸部分(すなわちモノ-プロトン性の酸)を含む。しかしながら、上述したように、一以上のスルホン酸部分(例えば2個または3個のそのような基)を有する酸から形成される塩も用いてもよい。従って、Rの基に存在してもよい他の置換基としては、1個以上の(好ましくは1個の)−SO2OH基、−SO2OX基(ここで、Xは、上記で定義されているとおりである。)または−SO2-基が挙げられる。本発明による塩を調製するために用いてもよい二スルホン酸の代表例としては、エタン-1,2-二スルホン酸およびナフタレン-1,5-二スルホン酸が挙げられる。
【0029】
R基として好ましいアルキル基は、20個までの炭素原子を含んでもよいが、好ましくは15個まで、例えば12個までの炭素原子を含んでもよい。しかしながら、好ましくは10個まで(例えば5個まで)、より好ましくは1個,2個または3個の炭素原子を含むアルキル基が好ましい。特に、10個までの炭素原子を有する直鎖状アルキル基が好ましい(例えばメチル基、エチル基またはプロピル基)。これらの基は置換されていても置換されていなくてもよいが、好ましくはこれらの基は置換されていないだろう。
【0030】
R基として好ましいアリール基としては、任意に置換されたフェニル基またはナフチル基が挙げられる。好ましくは、該アリール基が例えば一以上(例えば1個,2個または3個)の置換基で置換されており、該置換基として、C1-6アルキル基(好ましくはC1-4アルキル、例えばメチル)、アルコキシ(例えばメトキシ)、ニトロ、ハロ(例えばフルオロまたはクロロ)、−SO3H、−SO3X(ここで、Xは、上記で定義されているとおりである。)、−SO2-またはトリフルオロメチルの基を挙げてもよい。アリール基の代表例としては、トルエン(例えばp-トルエン)、ベンゼン、ナフタレンおよびナフタレンスルホナート(例えば2-ナフタレンスルホナート)が挙げられる。
【0031】
本発明に使用される酸を形成するのに好適なスルホン酸の例としては、エタン-1,2-二スルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸、メタンスルホン酸およびナフタレン-1,5-二スルホン酸が挙げられる。
【0032】
薬物のPCI送達のために本発明で使用するのに好適な塩の例としては、以下のものが挙げられる:
TPCS2aのジエタノールアミン塩、
TPCS2aのエタノールアミン塩、
TPCS2aのN-メチル-グルカミン塩、
TPCS2aのトリエタノールアミン塩、
TPCS2aの1-(2-ヒドロキシメチル)-ピロリジン塩、
TPCS2aの2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール塩、
TPPS2aのジエタノールアミン塩、
TPPS2aのエタノールアミン塩、
TPPS2aのN-メチル-グルカミン塩、
TPPS2aのトリエタノールアミン塩、
TPPS2aの1-(2-ヒドロキシメチル)-ピロリジン塩、
TPPS2aの2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール塩、
ポルフィマーのジエタノールアミン塩、
ポルフィマーのエタノールアミン塩、
ポルフィマーのN-メチル-グルカミン塩、
ポルフィマーのトリエタノールアミン塩、
ポルフィマーの1-(2-ヒドロキシメチル)-ピロリジン塩、
ポリフィマーの2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール塩。
【0033】
本明細書に記載の様々な塩は、それ自体が新規であり、本発明のさらなる態様を形成する。このような塩は、固体(例えば粉末状または粒状)の状態であっても溶解した形態であっても液状(すなわちすぐに使える形態)であってもよい。
【0034】
本発明で使用する塩は、当該分野において公知の標準的な方法および手順を用いて調製してもよい。例えば、該塩は、好適な溶媒の存在下、適切な酸または塩基と所望する両親媒性の感光剤とを反応させることよって調製してもよい。このような溶媒は、当業者が容易に選択することができ、典型的には、水または水性溶液であってもよい。あるいは、上記成分が溶解できる有機溶媒(例えばDMSO、DMF、アルコールおよびアセトニトリルなど)中で、該反応を実施してもよい。
【0035】
本発明による塩の調製において、感光剤を、酸または塩基の水性または有機性の溶媒溶液と混合してもよい。典型的には、酸または塩基は、該反応に必要な等モル量に対して過剰に(例えば少なくとも10%の過剰に)存在するだろう。その後、この混合物を加熱してもよく、冷却中に感光剤の所望する塩が沈殿し、例えば濾過などのような好適な技術によって固体の状態で回収してもよい。さらなる塩の精製が必要または望ましいならば、それは、好適な有機溶媒による洗浄などのような公知の方法によって遂行してもよい。好適な溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジエチルエーテル、THF、酢酸エチルおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0036】
本発明はさらに、少なくとも一つの医薬担体または賦形剤とともに、本明細書に記載されたような塩を含む医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物には、単位剤形の他に、例えば粉末や濃縮溶液などのような中間製剤[intermediate formulation]も含まれる。典型的には、該組成物は、最終(すなわちすぐに使える)剤形の形態で提供されるだろう。これらは、例えば注射可能な溶液や点滴用溶液などのような非経口の剤形を含む。注射可能な溶液の単位投与量は、通常、1バイアルであろう。非経口溶液中の該塩の好ましい濃度は、0.1〜100 mg/ml、好ましくは0.5〜50 mg/mlであろう。
【0037】
好ましくは、上記のすぐに使える組成物は、溶液(例えば水性溶液)の形態で提供されるだろう。例えば、該塩は、水、エタノールまたは水とエタノールとの混合物から選択される溶媒中に溶解してもよい。典型的には、該溶媒は、実質的には滅菌水からなるだろう。投与の準備ができている最終溶液は、好ましくは、血液と比較して等浸透圧であるか、またはわずかに高浸透圧でなければならない(例えば300 mOsm/kgかそれより高いオスモル濃度を有する)。
【0038】
液体剤形は、当該分野において公知の従来技術で作製することができる。例えば、本明細書に記載の水溶性の塩は、他の任意の賦形剤の添加前または添加後に、通常、撹拌しながら、任意に温度を上昇させて、水性溶媒に溶解してもよい。必要に応じて、この組成物を、濃縮溶液または濃縮懸濁液として最初に作製してもよく、さらに使用前に必要な濃度に希釈してもよい。
【0039】
本明細書に記載の感光剤は主に非経口投与を意図しているが、該剤は、例えば局所投与や経口投与などの他の経路を介して投与してもよい。局所投与のための好適な製剤として、クリームおよびエマルジョンが挙げられる。経口投与のための好適な製剤として、錠剤およびカプセルが挙げられる。
【0040】
上記組成物はさらに、当該分野において周知の賦形剤(例えば担体、希釈液、充填剤など)を含んでもよい。このような賦形剤は、典型的には、Martindale’s Extra Pharmacopoeia(第36版、2009年)およびThe Merck Index(第14版、2006年)に記載されている。PCI用の感光剤の溶液に用いられるための最も好ましい賦形剤は、等浸透圧溶液を形成するためにオスモル濃度を調整することができる薬学的に許容し得る化合物、抗酸化剤、緩衝液、界面活性剤、溶媒および可溶化剤を含む。非経口投与には、該溶液のpHが好ましくは2〜10でなければならない。
【0041】
本明細書に記載の水溶性の塩は、非経口投与用の液体医薬組成物を作製するのに特に好適である。好ましくはこのような溶液が水性であり、このことは、水がこの溶媒の一部を含むことを意味する。通常、水は、該溶媒の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、例えば実質的に該溶媒の100%を含むだろう。水以外に他の溶媒が存在する場合、これは典型的にはエタノールであろう。
【0042】
本発明による組成物は、無菌または非無菌であり得る。しかしながら、外用を除くほとんどの使用にとって、そして口腔を含む胃腸系での使用では、該組成物は、無菌でなければならない。滅菌法としては、高圧蒸気殺菌法、乾熱滅菌法、ガンマ線滅菌およびエチレンオキシドによる処理が挙げられる。
【0043】
本明細書に記載の組成物は、感光剤が塩の形態で水性溶液に既に溶解しているという「すぐに使える」形態で提供されていてもよい。あるいは、該組成物は、使用前にこれを水性溶液に撹拌して溶解させるための使用説明書とともに乾燥(例えば粉末状)形態で提供されていてもよい。
【0044】
PCIへの使用において、本明細書に記載の組成物は、治療薬(本明細書では「薬物分子」ともいう。)とともに投与されるだろう。治療されるべき健康状態や該組成物の性質などに応じて、感光剤は薬物分子とともに投与されてもよく(例えば単一の組成物で)、または、感光剤は順にもしくは別個に投与されてもよい。
【0045】
本発明は、さらなる態様から見ると、上述したように、光化学的内部移行の方法において、同時に、別個に、または、順に使用される治療薬とともに、本明細書に記載の両親媒性の感光剤の薬学的に許容し得る塩を含む製品を提供する。
【0046】
本発明のこの態様は、別の見方をすると、下記の(a)〜(c)を含む、光化学的内部移行の方法に使用されるキットも提供する:
(a) 本明細書に記載されるような両親媒性の感光剤の薬学的に許容し得る塩を含む第一の容器;
(b) 治療薬を含む第二の容器;および
(c) 該塩が固形状である場合、使用前に該塩を溶解させるための水性溶液を含む第三の容器。
【0047】
治療薬を感光剤の塩とともに投与することを意図する場合、治療薬を使用前に同じ溶液(例えば水性溶液)に溶解または懸濁してもよい。
【0048】
対象の細胞の細胞内区画に移行されるべき薬物分子および感光剤は、ともに、または、順に、細胞に適用してもよく、この感光性化合物および該分子は、該細胞に取り込まれるか、または、他の経路により、エンドソーム、リソソームや他の膜で制限された細胞内区画に移行される。細胞内に内在化されるべき分子は、感光性化合物を活性化するのに好適な波長の光で細胞を曝露することによって放出され、次々に細胞内区画の膜を破壊し、続いてサイトゾルに該分子を放出する。
【0049】
移送されるべき分子(すなわち薬物分子)と感光剤とを添加する正確なタイミングおよび上記の効果を達成するための照射のタイミングは、治療されるべき細胞、薬物分子の性質、細胞の環境、標的組織に直接投与するか、遠位部位に投与するかなどの様々な要因を考慮する必要がある。これらを考慮することによって、適切なタイミングは当業者により容易に決めることができる。薬物分子および感光剤は、典型的には、照射前に細胞に接触されるだろう。光照射は、感光剤の投与後、いつでも行ってよい。薬物分子および感光剤は、通常、照射の1〜72時間前、好ましくは照射の4〜48時間前、例えば照射の4〜24時間前に、同時または別個のいずれかで適用されてもよい。
【0050】
また一方、薬物分子が感光剤と同じ細胞の細胞内区画に吸収される前に照射を実施してもよく(これをどのように達成してもよいかがより詳細に記載されている国際公開第02/44396号を参照)、例えば、薬物分子を投与する前に照射してもよく、例えば、照射して5分〜24時間後(例えば30分〜2時間後)に薬物分子を添加してもよい。
【0051】
薬物分子は感光剤と同時に投与される場合もあるだろう。このように本発明は、さらなる態様において、治療薬とともに、本明細書に記載された両親媒性の感光剤の薬学的に許容し得る塩を含む医薬組成物を提供する。さらに、薬学的に許容し得る担体または賦形剤が存在していてもよい。
【0052】
あるいは、そして、より典型的には、感光剤は、薬物分子の投与前に投与してもよい。
【0053】
本発明は、さらなる態様において、治療(例えば癌治療、遺伝子治療またはオリゴヌクレオチド(例えばsiRNA)治療)に使用される治療薬とともに、本明細書に記載の両親媒性の感光剤の薬学的に許容し得る塩を含む医薬組成物を提供する。
【0054】
本発明は、さらなる態様において、治療(例えば癌治療、遺伝子治療またはオリゴヌクレオチド(例えばsiRNA)治療)に使用される薬剤の調製における、治療薬および/または本明細書に記載の両親媒性の感光剤の薬学的に許容し得る塩の使用であって、該治療において、その感光剤の該塩および該治療薬は、対象の細胞または組織に(別個に、同時に、または、順に、のいずれかで)接触され、かつ、該細胞または該組織が、該感光剤を活性化するのに有効な波長の光で照射される、使用を提供する。このような方法を含む治療法は、本発明のさらなる態様を形成する。
【0055】
本明細書に記載の感光剤は、インビボで任意の薬物分子を生細胞のサイトゾル内に輸送または移入するために使用されてもよい。これらは、分子(またはその部分もしくは断片)を細胞の内部に移送するのみならず、ある特定の状況において、それを細胞表面上に存在または発現させるために使用してもよい。このように、問題としている細胞が例えば抗原提示細胞などの分化した細胞である場合、細胞のサイトゾルに薬物分子を輸送または放出した後、該分子または断片は細胞の表面に輸送されてもよく、この場合、それは細胞の外側(すなわち細胞表面上)に存在してもよい。このような方法はワクチン接種の分野において特に有用であり、この場合、免疫反応を誘発、促進または増強するために、ワクチンの成分(すなわち抗原や免疫原)をその細胞の表面上に提示させるために細胞内に導入してもよい。細胞表面上に分子を発現することの有用性に関するさらなる詳細は、国際公開第00/54802号に記載されている。
【0056】
本明細書に記載の感光剤を使用して細胞のサイトゾルに導入することができる薬物分子は、細胞膜を容易に透過しない分子を含む。加えて、本明細書に記載の該剤は、細胞の膜や細胞内小胞の膜を部分的にしか透過できない薬物分子の、サイトゾルへの送達およびサイトゾルでの活性を増強させることができる。薬物分子は、有機化合物、タンパク質あるいは、例えばペプチド、抗体もしくは抗原またはそれらの断片などのようなタンパク質の断片であってもよい。本明細書に記載の該剤を使用して導入してもよい薬物分子の他の種類は、例えばタンパク毒素や細胞毒性有機化合物などのような細胞毒性薬である。癌治療において臨床的な興味をもたれる可能性のある分子ではあるが、サイトゾルの取り込みが少ないかまったくないことによって制限されている分子も、本明細書に記載の方法を使用すれば、サイトゾルに取り込むことができ、特定の細胞を標的にすることができる。ゲロニンはこのような分子の例である。本明細書に記載の感光剤に関連して使用してもよい細胞毒性剤のさらなる例は、ブレオマイシンである。
【0057】
本明細書に記載の方法に従って治療してもよい癌の特定の形態としては、頭頚部癌(例えば扁平上皮細胞癌)、骨肉腫および皮膚転移、特に乳癌に由来するものが挙げられる。
【0058】
薬物分子の性質に応じて、本明細書に記載の方法は、例えばリウマチ性関節炎、アテローム性動脈硬化症および他の循環器病、ウイルスおよび他の感染症、乾癬、日光性角化症、創傷治癒、骨折治癒、疣および遺伝的な遺伝的障害(例えば嚢胞性線維症、ゴーリン症候群および血管拡張性失調症)などのような様々な障害を治療するのに使用してもよい。
【0059】
適切な薬物分子の他の種類は核酸である。核酸は、例えば治療用タンパク質、アンチセンスRNA分子、リボザイム、RNAアプタマー、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNAまたは三重鎖形成オリゴヌクレオチドをコードする遺伝子の形態で用いられてもよい。あるいは、核酸は、例えば合成DNAもしくは合成RNAのアンチセンス分子、リボザイム、siRNA、マイクロRNA、アプタマー、三重鎖形成オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、転写制御因子「デコイ」DNAまたは対象の特定の突然変異を修復するキメラオリゴヌクレオチドなどのような非コード分子の形態で用いられてもよい。必要に応じて、この核酸分子は、ベクター分子(例えばプラスミドやウイルスベクター等)に任意に組み込まれた遺伝子全部または核酸の断片の形態であってもよい。この移送分子が遺伝子治療の方法(治療で遺伝子が対象の細胞に移送される)に使用される場合、後者の形態は特に適用性を有する。これは、例えば癌、循環器病、ウイルス感染、および単一遺伝子病(例えば嚢胞性線維症)などの多くの病気を治療する際に使用してもよい。
【0060】
感光剤の薬学的に許容し得る塩および細胞内に導入される薬物分子のうちのいずれかまたは両方が、担体分子、標的化分子またはベクター(感光剤もしくは薬物分子の取り込みを促進または増大するように作用することができるか、あるいは、特定の細胞型、組織もしくは細胞内区画に対してこれらの実体を標的化または送達するように作用することができる)に、任意に、付着、付随または接合されていてもよい。担体系の例としては、ポリリジン、キトサン、ポリエチレンイミンもしくは他のポリカチオン、硫酸デキストラン、種々のカチオン脂質、リポソーム、再構成されたLDL粒子[reconstituted LDL-particle]または立体的に安定したリポソーム[sterically stabilized liposome]が挙げられる。これらの担体系は通常、薬物動態を向上させ、薬物分子および/または感光剤の細胞取り込みを増加させることができ、薬物分子および/または感光剤を細胞内区画(光化学的内部移行を受けるために特に有益である)に差向かわせてもよいが、それらは通常、薬物分子および/または感光剤に特定の細胞(例えば癌細胞)または組織を標的とさせる能力は有さない。しかしながら、このような特定のまたは選択的な標的化を達成するためには、担体分子、薬物分子および/または感光剤は、特定の標的細胞に付随、結合または接合していてもよい。こうすることによって、所望の細胞または組織への薬物分子の特定の細胞取り込みが促進されるだろうこのような標的化分子も、薬物分子を、光化学的内部移行を受けるために特に有益な細胞内区画に差向かわせてもよい。
【0061】
例えば、Curiel, D.T., (1999年), Ann. New York Acad. Sci., 886巻, 158〜171頁;Bilbao, G.ら, (1998), Gene Therapy of Cancer(ヴァルデンら, 編集, Plenum Press, New York);Peng, K.W.およびRussell, S.J., (1999年), Curr. Opin. Biotechnol., 10巻, 454〜457頁;ならびに、Wickham, T.J., (2000年), Gene Ther., 7巻, 110〜114頁に記載されているように、多くの種々の標的化分子を用いることができる。
【0062】
担体分子および/または標的化分子は、薬物分子に、感光剤に、または両方に、付随、結合または接合してもよく、同じもしくは異なる担体または標的化分子を使用してもよい。このような標的化分子または担体は、特定の細胞内区画(PCIの使用に特に有益であり、例えばリソソームやエンドソーム等)に薬物分子を差向かわせるためにも用いられてもよい。
【0063】
本発明の組成物は、当該分野において周知の技術に従って、一以上の生理的に許容し得る担体または賦形剤とともに、従来のやり方で処方してもよい。組成物および担体の性質または賦形剤の材料、投与量などは、選択および投与の所望の経路、治療の目的などに従って、所定のやり方で選択してもよい。投与量も同様に所定のやり方で決定してもよく、薬物分子の性質、治療の目的、対象の年齢、投与の様式などに依存してもよい。
【0064】
組成物は通常、局所的または全身的に投与されるだろう。局所用組成物としては、ゲル、クリーム、軟膏、スプレー、ローション剤、ペッサリー、エアロゾル、ドロップ、溶液および当該分野における他の従来の剤形のいずれかが挙げられる。手の届かない部位への局所投与は、例えばカテーテルや他の適切な薬物送達系の使用によって、当該分野において公知の技術によって達成されてもよい。
【0065】
好ましくは、組成物は、例えば皮内、皮下、腹腔内もしくは静脈内の注射または点滴によって、非経口投与に採用される形態で提供してもよい。他の剤型としては、このように、任意に一以上の不活性な従来の担体および/または希釈剤とともに、感光剤の塩を含む懸濁液および溶液が挙げられる。非経口投与用の製剤は、水性または非水性の、等浸透圧性の、滅菌注射溶液または懸濁液の形態であってもよい。これらの溶液は、一以上の担体または賦形剤(例えば、好適な分散剤、湿潤剤または懸濁剤)を使用して滅菌された粉末または顆粒から調製されてもよい。注射用の溶液を調製するのに好適な担体には、水、生理食塩水およびブドウ糖が含まれる。他の無毒性な非経口的に許容し得る希釈剤または溶媒が用いられ、例えばGlavamin(登録商標)(フレゼニウス カービ)などのアミノ酸溶液、例えばGlucos(登録商標)(ブラウン)などの糖液、例えば塩化ナトリウム溶液などの電解質、リンゲル液、トロメタモール溶液または上述のいずれかの混合物が挙げられる。
【0066】
感光剤および薬物の総投与量、濃度ならびに投与量は、いくつかの要因に応じて、広範囲にわたって変化するだろう。主な要因は以下の通りである:兆候(病気の性質)、病期、器官系統ならびに感光剤と薬物の選択。
【0067】
組成物における先に記載の化合物の濃度は、該化合物の使用目的、組成物の性質、投与様式、治療される疾患および対象に依存し、選択に従って変化または調整してもよい。PCIへの使用における感光剤の濃度としては、細胞内(例えば、一以上のその細胞内区画内または付随して)に一旦取り込まれ、照射によって活性化され、一以上の細胞構造が破壊される(例えば、一以上の細胞内区画が溶解または破壊される)となるようにすることが重要である。感光剤は、例えば0.5〜100 mg/mlの濃度で使用されてもよい。インビボのヒトの治療において、感光剤は、全身的に投与する場合0.05〜20 mg/kg体重の範囲で、または局所塗布の場合溶媒中0.1〜20%の範囲で使用してもよい。感光剤と細胞とのインキュベーション時間(すなわち「接触」時間)は、数分から数時間まで(例えば、実に48時間まで、またはそれ以上)で変化させることができる。インキュベーション時間は、感光剤が適切な細胞に取り込まれるような時間でなければならない。感光剤と細胞とのインキュベーションの後に続けて、任意に、細胞が光に曝露される前および/または薬物分子が投与される前に感光剤のない培地でインキュベーションしてもよい。
【0068】
本発明に従って使用される薬物分子の適切な用量を決定することは、当業者が通常実施できることである。薬物分子がタンパク質またはペプチドである場合、薬物分子は通常、5 mg/kg未満(例えば0.1〜5 mg/kg)の用量で使用されたであろう。薬物分子が核酸である場合、注射1回あたり約10-6〜1gの核酸をヒトに使用してもよい。
【0069】
本明細書に記載の化合物または組成物の投与後、所望の効果を発揮するために、治療する領域が光に曝露される。感光剤を活性化する光照射手順は、当該分野において周知の技術および手順に従って遂行されてもよい。所望の波長および光の強度を提供できる好適な光源も、当該分野において周知である。本発明の方法において体表または細胞が光に曝露される時間は変化させてもよい。例えば、薬物分子のサイトゾルに内部移行する効率は、露光の増加に伴い高くなるように見える。照射手順の時間の長さは通常、ほぼ数分〜数時間程度であり、例えば好ましくは60分間まで、例えば1〜30分間、例えば0.5〜3分間または1〜5分間または1〜10分間、例えば3〜7分間、好ましくは約3分間、例えば2.5〜3.5分間である。適切な光の照射量は当業者に選択されることができ、標的細胞または組織に蓄積された感光剤の量に依存するだろう。その照射は通常、40〜200ジュール/cm2の照射量レベルで、例えば200mW/cm2未満のフルエンス範囲で100ジュール/cm2で、適用されるだろう。500〜750nm(例えば550〜700nm)の範囲の光の波長で照射すると、本明細書に記載の方法におけるインビボの使用に特に好適である。
【0070】
例えばランプやレーザー等による体の種々の領域への照射の方法は当該分野において周知である(例えばVan den Bergh, Chemistry in Britain, 1986年5月, 430〜439頁を参照)。手の届かない部位においては、該方法は、光ファイバーを用いて都合よく達成されてもよい。ある使用では、例えばカテーテルのような様々な器具を、関心領域に光を送達するのに必要としてもよい。
【実施例】
【0071】
以下、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。
【0072】
[実施例1]メソ-テトラフェニルポルフィリン二スルホン酸ビス(モノエタノールアミン)の調製
((MEA)2-TPPS2a
遊離酸から調製したメソ-テトラフェニルポルフィリン二スルホン酸ビス(トリエチルアミン)をメタノールに溶解し、過剰量のエタノールアミンを添加した。この溶液を15分間撹拌した後、ロータリーエバポレーターにより30℃で溶媒を真空除去した。この手順をさらに二回繰り返した。
【0073】
[実施例2]メソ-テトラフェニルポルフィリン二スルホン酸ビス(メグルメート)の調製
((Megl)2-TPPS2a
メソ-テトラフェニルポルフィリン二スルホナート(200 mg、0.26 mmol)を、室温で、N-メチル-D-グルカミン(102 mg、0.52 mmol)の脱イオン水の溶液(5 ml)に加えた。この混合物を15分間撹拌し、得られた混合物を終夜凍結乾燥した。標記化合物を、暗赤色の固形物として単離した。収率:310 mg(100%)。
【0074】
[実施例3]メソ-テトラフェニルポルフィリン二スルホン酸ビス(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン)の調製
((TRIS)2-TPPS2a
メソ-テトラフェニルポルフィリン二スルホナート(200 mg、0.26 mmol)を、室温で、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(63 mg、0.52 mmol)の脱イオン水の溶液(5 ml)に加えた。この混合物を15分間撹拌し、得られた混合物を終夜凍結乾燥した。標記化合物を、暗赤色の固形物として単離した。収率:260 mg(100%)。
【0075】
[実施例4]メソ-テトラフェニルポルフィリン二スルホン酸ビス(ジエタノールアミン)の調製
((DEA)2-TPPS2a
メソ-テトラフェニルポルフィリン二スルホナート(100 mg、0.13 mmol)を、室温で、ジエタノールアミン(27 mg、0.26 mmol)の脱イオン水の溶液(5 ml)に加えた。この混合物を15分間撹拌し、得られた混合物を終夜凍結乾燥した。標記化合物を、暗赤色の固形物として単離した。収率:103 mg(80%)。
【0076】
[実施例5]メソ-テトラフェニルポルフィリン二スルホン酸ビス(1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン)の調製
((HEP)2-TPPS2a
メソ-テトラフェニルポルフィリン二スルホナート(100 mg、0.13 mmol)を、室温で、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン(30 mg、0.26 mmol)の脱イオン水の溶液(5 ml)に加えた。この混合物を15分間撹拌し、得られた混合物を終夜凍結乾燥した。標記化合物を、暗赤色の固形物として単離した。収率:117 mg(90%)。
【0077】
[実施例6]メソ-テトラフェニルポルフィリン二スルホン酸ビス(トリエタノールアミン)の調製
((TEA)2-TPPS2a
メソ-テトラフェニルポルフィリン二スルホナート(100 mg、0.13 mmol)を、室温で、トリエタノールアミン(39 mg、0.26 mmol)の脱イオン水の溶液(5 ml)に加えた。この混合物を15分間撹拌し、得られた混合物を終夜凍結乾燥した。標記化合物を、暗赤色の固形物として単離した。収率:106 mg(79%)。
【0078】
[実施例7]メソ-テトラフェニルクロリン二スルホン酸ビス(モノエタノールアミン)の調製
((MEA)2-TPCS2a
遊離酸から調製したメソ-テトラフェニルポルフィリン二スルホン酸ビス(トリエチルアミン)を、メタノールに溶解し、過剰量のエタノールアミンを加えた。この溶液を15分間撹拌した後、ロータリーエバポレーターにより30℃で溶媒を真空除去した。この手順をさらに二回繰り返した。
【0079】
[実施例8]メソ-テトラフェニルクロリン二スルホン酸ビス(メグルメート)の調製
((Megl)2-TPCS2a
メソ-テトラフェニルクロリン二スルホナート(100 mg、0.13 mmol)を、室温で、N-メチル-D-グルカミン(51 mg、0.26 mmol)の脱イオン水の溶液(5 ml)に加えた。この混合物を15分間撹拌し、得られた混合物を終夜凍結乾燥した。標記化合物を、暗赤色の固形物として単離した。収率:157 mg(100%)。
【0080】
[実施例9]メソ-テトラフェニルクロリン二スルホン酸ビス(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン)の調製
((TRIS)2-TPCS2a
メソ-テトラフェニルクロリン二スルホナート(100 mg、0.13 mmol)を、室温で、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(31 mg、0.26 mmol)の脱イオン水の溶液(5 ml)に加えた。この混合物を15分間撹拌し、得られた混合物を終夜凍結乾燥した。標記化合物を、暗赤色の固形物として単離した。収率:157 mg(100%)。
【0081】
[実施例10]メソ-テトラフェニルポルフィリン二スルホン酸の塩(TPPS2a)の溶解度
試験管に入っている実施例1〜6に記載の様々な塩(約50 mg)に対し、水0.2 mlずつ加えた。この混合物を、固体粒子が砕け溶解するまで、撹拌した。
【0082】
【表1】

【0083】
TPPS2aの塩の高濃縮溶液は粘稠であった。
【0084】
[実施例11]メソ-テトラフェニルクロリン二スルホン酸の塩(TPCS2a)の溶解度
試験管に入っている実施例7〜9に記載の様々な塩(約50 mg)に対し、水0.2 mlずつ加えた。この混合物を、固体粒子が砕け溶解するまで、撹拌した。
【0085】
【表2】

【0086】
TPPS2aの塩の高濃縮溶液は粘稠であった。
【0087】
[実施例12]メソ-テトラフェニルポルフィリン二スルホン酸の塩(TPPS2a)の溶解度
TPPS2aの塩の水性溶液(約1重量%)を31日間40℃に保持した。この溶液をHPLC(HP1100)により分析した。HPLC条件は以下の通りであった:
カラム:Agilent Extend C-18
移動相:85%のメタノール、15%の水
流れ:1.0 ml/分
検出器:UV検出器、415nm
【0088】
【表3】

【0089】
結論:すべてのサンプルは31日間40℃で安定であった。
【0090】
[実施例13]メソ-テトラフェニルクロリン二スルホン酸の塩(TPCS2a)の溶解度
TPCS2aの塩の水性溶液(約1重量%)を31日間40℃に保持した。実施例12で用いた方法に従い、HPLC(HP1100)により分析した。
【0091】
【表4】

【0092】
結論:すべてのサンプルは31日間40℃で安定であった。
【0093】
[実施例14]経口投与用の(MEA)2-TPPS2a含有カプセル
乳鉢と乳棒を用いて、実施例1で得られた(MEA)2-TPPS2a(30 mg)を、ラクトース一水和物0.15 mm(900 mg)(アポテックプロダクション・エーエス[Apotekproduksjon AS]、オスロ、ノルウェー)とともに、容積的に[volumetricalluy]混合した。硬ゼラチンカプセルno.000(アポテックプロダクション・エーエス、オスロ、ノルウェー)にこの粉末を詰めた。
【0094】
[実施例15]界面活性剤のない(TRIS)2-TPCS2aの等浸透圧の滅菌溶液
2分間ミキサー(3M ESP CapMix)を使用して、実施例9で得られた(TRIS)2-TPCS2a(30 mg)を生理食塩水(0.9%の塩化ナトリウム)(1.0 ml)に溶解した。この茶色の溶液には微粒子がなかった(顕微鏡により観察した)。
【0095】
[実施例16](TRIS)2-TPCS2aおよび溶媒を含むキット
キットを、二つのバイアルを含むよう作製した:
バイアルAの組成:バイアル(100 ml)中に、乾燥粉末として実施例9の(TRIS)2-TPCS2a(20 mg)
バイアルBの組成:以下を含む水性溶液(52 ml):
塩化ナトリウム 120 mM
リン酸二水素カリウム 4.3 mM
リン酸水素二カリウム 4.3 mM
HCl/NaOH 適量を加えpH6.0にする。
【0096】
注射用の水 適量
バイアルBの溶液をバイアルAに加え、バイアルAを3分間手で振盪した。この溶液は、使用前に目に見える粒子があってはならない。
【0097】
[実施例17]皮膚上または粘膜上への投与用の(TRIS)2-TPCS2aを含む局所製剤
乳鉢と乳棒を用いて、実施例9の(TRIS)2-TPCS2a(20 mg)をメルクの軟膏[Unguentum Merck]とともに容積的に混合した。1mlあたり4 mgの(TRIS)2-TPCS2aを含む茶色のクリームを、ガラス製バイアルに詰めた。
【0098】
[実施例18]非経口投与用または腸内投与用の(TRIS)2-TPCS2aを含むエマルション製剤
2分間ミキサー(3M ESP CapMix)を使用して、実施例9で得られた(TRIS)2-TPCS2a(24 mg)を脂質エマルション(バクスター製200 mg/mlのClinOleic(20%))に溶解した。この茶色のエマルションには(TRIS)2-TPCS2a微粒子がなかった(顕微鏡により観察した)。
【0099】
[実施例19]クレモホル[Cremophor]とともにテトラフェニルクロリン二スルホン酸ビス(モノエタノールアミン)((MEA)2-TPCS2a)を含む製剤
以下の手順に従って、30または60 mg/mlの濃度になるように、水性10%クレモホルELP中に、実施例7で得られた(MEA)2-TPCS2aを処方した:
・(MEA)2-TPCS2aを容器に入れ、重さを量った;
・クレモホルELPを60〜70℃まで加熱した;
・撹拌条件下で(MEA)2-TPCS2aに、この加熱したクレモホルを加えた;
・この溶液を60〜70℃で約5分間撹拌し、クレモホルの濃度が10%になるまで、予め(60〜70℃に)加熱した滅菌水をゆっくり加えた。この手順の間、終始、溶液を60〜70℃に保持した;および
・その後、この溶液を加熱滅菌器で処理した。
【0100】
例えば開始投与量を0.25 mg/kg体重として、この30 mg/mlの製剤を静脈内投与に用いてもよい。
【0101】
[実施例20]ツイーン80[Tween 80]中にテトラフェニルクロリン二スルホン酸ビス(モノエタノールアミン)((MEA)2-TPCS2a)を含む製剤
以下の手順に従って、3%のツイーン80に(MEA)2-TPCS2aを処方した:
・(MEA)2-TPCS2aを瓶に入れ、重さを量った;
・この瓶に50 mMのトリス緩衝液(pH8.5)を加え、得られた溶液を10分間撹拌した(500〜700rpm);
・ツイーン80を加え、この溶液を10分間撹拌した(500〜700rpm)。製剤中のツイーン80の最終濃度は3%であった;
・マンニトールを加え、この溶液を20時間撹拌した(500〜700rpm)。製剤中のマンニトールの最終濃度は2.8%であった;
・粒子を除去するため、0.22μmのフィルターを用いて、この30 mg/mlの(MEA)2-TPCS2a製剤を濾過した;
・栓と蓋を有するバイアルにこの製剤を詰めた;
・この製剤を121℃で20分間、加熱滅菌器で処理した。
【0102】
この製剤は遮光して2〜8℃で保管しなければならない。
【0103】
[実施例21]癌患者[cancer patient]の第I/II相臨床試験
第I/II相臨床試験において、感光剤であるTPCS2a30 mg/mlのジエタノールアミン塩((MEA)2-TPCS2a))の、10%クレモホルELPの水性製剤(実施例19を参照)を、癌患者に投与した。体重1kg当たりそれぞれ0.25, 0.5および1.0 mgのTPCS2aを三群の患者11人に投与した四日後に、明らかな標的腫瘍に照射した(波長652nm、60 J/cm2)。加えて、患者らに、細胞毒性物質であるブレオマイシンを静脈内注射(15000 IU/m2体表)し、その3時間後に照射した。このTPCS2a製剤は静脈内にゆっくり注入され、患者らは痛みや投与に関連する他の副作用には悩まされなかった;これは、この投与が強い痛みと関連し得る、非水性製剤に処方された他の感光剤(例えばテモポルフィン[temoporfin])の使用とは対照的である。この水性製剤も、感光剤注射の後に注射針と静脈を生理食塩水で洗い流すことを可能とし、それによって、注射部位またはその近傍における感光剤の望ましくない効果(これは、このように洗い流すことができない、感光剤の非水性製剤でよく見られる。)が排除される。
【0104】
この患者集団には、頭頚部癌(有棘細胞癌)、骨肉腫および乳癌の皮膚転移を有する患者が含まれる。治療後数週間で、すべての患者において、臨床的に完全な標的腫瘍の退縮が誘導された。これによって、TPCS2aに媒介されるブレオマイシンの光化学的内部移行は、いくつかの異なる腫瘍型を超えて、固形腫瘍の効果的な治療を構成することが示された。
【0105】
[実施例22]経口投与用の、(MEA)2-TPPS2aを含有する錠剤組成物
(MEA)2-TPPS2a 100 mg
微結晶性セルロース 800 mg
クロスカルメルロース(Na)(AcDiSol)30 mg
ステアリン酸マグネシウム 30 mg
すべての成分を混合した。錠剤を圧縮した(錠剤直径:13 mm、錠剤重量:960 mg)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光化学的内部移行の方法に使用される両親媒性の感光剤の薬学的に許容し得る塩であって、少なくとも0.5 mg/mlの水溶性を有する塩。
【請求項2】
光化学的内部移行の方法に使用される治療薬を調製するための、少なくとも0.5 mg/mlの水溶性を有する両親媒性感光剤の薬学的に許容し得る塩。
【請求項3】
薬学的に許容し得る塩基、好ましくは有機アミン(例えばアミノアルコール)から形成される、請求項1または2に記載の塩。
【請求項4】
上記アミノアルコールが、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンおよび2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオールから選択される低級脂肪族アミノアルコール;例えば4-(2-ヒドロキシエチル)-モルホリンおよび1-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジンから選択される環式アミノアルコール;または、例えばグルカミンおよびN-メチルグルカミン(メグルミン)から選択されるアミノ糖である、請求項3に記載の塩。
【請求項5】
薬学的に許容し得る酸、好ましくはスルホン酸またはスルホン酸誘導体から形成される、請求項1または2に記載の塩。
【請求項6】
上記感光剤が、例えばジスルホン化されたアルミニウムフタロシアニン(特にスルホン化が近接しているもの)などのフタロシアニン;スルホン化されたテトラフェニルポルフィリン(TPPSn、例えばTPPS2aおよびTPPS1);クロリンならびにバクテリオクロリンおよびケトクロリンを含むクロリン誘導体;ならびに、ヘマトポルフィリンおよびベンゾポルフィリンを含む天然のおよび合成のポルフィリンからなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の塩。
【請求項7】
上記感光剤が、TPCS2a、TPPS2a、AlPcS2aまたはポルフィマー(Photofrin(登録商標))である、請求項6に記載の塩。
【請求項8】
TPCS2aのジエタノールアミン塩、
TPCS2aのエタノールアミン塩、
TPCS2aのN-メチル-グルカミン塩、
TPCS2aのトリエタノールアミン塩、
TPCS2aの1-(2-ヒドロキシメチル)-ピロリジン塩、
TPCS2aの2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール塩、
TPPS2aのジエタノールアミン塩、
TPPS2aのエタノールアミン塩、
TPPS2aのN-メチル-グルカミン塩、
TPPS2aのトリエタノールアミン塩、
TPPS2aの1-(2-ヒドロキシメチル)-ピロリジン塩、
TPPS2aの2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール塩、
ポルフィマーのジエタノールアミン塩、
ポルフィマーのエタノールアミン塩、
ポルフィマーのN-メチル-グルカミン塩、
ポルフィマーのトリエタノールアミン塩、
ポルフィマーの1-(2-ヒドロキシメチル)-ピロリジン塩、
ポリフィマーの2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオール塩
から選択される請求項1に記載の塩。
【請求項9】
請求項8に記載の塩。
【請求項10】
少なくとも一つの薬学的に許容し得る担体または賦形剤とともに、請求項9に記載の塩を含む医薬組成物。
【請求項11】
光化学的内部移行の方法において、同時に、別個に、または、順に使用される治療薬とともに、請求項1〜8のいずれか一項に記載の両親媒性の感光剤の薬学的に許容し得る塩を含む製品。
【請求項12】
下記(a)〜(c):
(a) 請求項1〜8のいずれか一項に記載の両親媒性の感光剤の薬学的に許容し得る塩を含む第一の容器;
(b) 治療薬を含む第二の容器;および
(c) 該塩が固形状である場合、使用前に該塩を溶解させるための水性溶液を含む第三の容器
を含む、光化学的内部移行の方法に使用されるキット。
【請求項13】
治療薬とともに、請求項1〜8のいずれか一項に記載の両親媒性感光剤の薬学的に許容し得る塩を含む医薬組成物。
【請求項14】
治療(例えば癌治療、遺伝子治療またはオリゴヌクレオチド(例えばsiRNA)治療)に使用される治療薬とともに、請求項1〜8のいずれか一項に記載の両親媒性の感光剤の薬学的に許容し得る塩を含む医薬組成物。
【請求項15】
治療(例えば癌治療、遺伝子治療またはオリゴヌクレオチド(例えばsiRNA)治療)に使用される薬剤の調製における、治療薬および/または請求項1〜8のいずれか一項に記載の両親媒性の感光剤の薬学的に許容し得る塩の使用であって、
該治療において、その感光剤の該塩および該治療薬は、対象[patient]の細胞または組織に(別個に、同時に、または、順に、のいずれかで)接触され、かつ、該細胞または該組織が、該感光剤を活性化するのに有効な波長の光で照射される、使用。
【請求項16】
対象の細胞のサイトゾルに薬物分子を導入する方法であって、下記の手順:
(a) 請求項1〜8のいずれか一項に記載の両親媒性の感光剤の薬学的に許容し得る塩を該細胞に接触させること;
(b) 該薬物分子を該細胞に接触させること;および
(c) 該感光剤を活性化するのに有効な波長の光で該細胞を照射すること
を含む、方法。

【公表番号】特表2013−501769(P2013−501769A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524278(P2012−524278)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001547
【国際公開番号】WO2011/018635
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(512038148)
【Fターム(参考)】