説明

感光材料搬送ユニット及び写真処理装置

【課題】 感光材料にダメージを与えることなく、下流側にある処理部に感光材料を適正に送り込むことのできる写真処理装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 感光材料を圧着搬送する複数組のローラ対を備え、該複数組のローラ対が所定間隔をあけて配置されることで、感光材料を搬送しつつ所定の処理を行う処理部に繋がる搬送経路が形成された感光材料搬送ユニットにおいて、前記複数組のローラ対は、処理部に直結される最下流部が上流側よりも上方に位置した搬送経路を形成するように配置され、各ローラ対は、少なくとも一方のローラが駆動源からの駆動を受けて軸周りの一方向に回転駆動するように構成されるとともに、両ローラが感光材料の下流側への移動を許容すべく軸周りの一方向に回転自在に構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光材料を搬送しつつ所定の処理を行う処理部に繋がる搬送経路が形成された感光材料搬送ユニット、及び該感光材料搬送ユニットを備えた写真処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、写真処理装置として、感光材料を搬送しつつ所定の処理を行う処理部(例えば、露光処理された感光材料を搬送しつつ現像処理を行う現像処理部)と、該処理部に感光材料を供給する感光材料搬送ユニット(以下、単に搬送ユニットという)とを備えたものが提供されている。
【0003】
前記搬送ユニットは、感光材料を圧着搬送する複数組のローラ対を備えており、該複数組のローラ対が所定間隔をあけて配置されることで、前記処理部に繋がる搬送経路が形成されている。そして、複数組のローラ対は、処理部に直結される最下流部が上流側よりも下方に位置した搬送経路を形成するように配置されている。すなわち、複数組のローラ対は、下流側の処理部に向けて先下りした搬送経路を形成するように配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、ローラ対は、少なくとも一方のローラが駆動源からの駆動を受けて軸周りの一方向に回転駆動するように構成されるとともに、両ローラが感光材料の下流側への移動を許容すべく軸周りの一方向に回転自在に構成されている。これにより、下流側にあるローラ対が上流側のローラ対に圧着された感光材料を過度に引っ張るような状態になったときに、上流側のローラ対が空転して感光材料が無理なく引き抜かれるようになっている。
【0005】
ところで、上述の如く、搬送経路を下流側の処理部に向けて先下りに形成し、該搬送経路を構築する各ローラ対の両ローラを軸周りの一方向に空転可能に構成すると、ローラの駆動による搬送よりも感光材料の自重の作用による進行が先行してしまうことがある。そのため、搬送中の感光材料は、搬送速度がオーバースピードになり、そのままの搬送速度で最下流のローラ対をオーバーランするといった事態が発生する。この様な事態になると、感光材料は、下流側の処理部の搬送系と衝突し、搬送系で搬送トラブルが発生したり当該感光材料がダメージを受けたりするといった問題がある。
【0006】
そこで、この種の搬送ユニットは、処理部の直前となる最下流のローラ対(以下、このローラ対を送込ローラ対という)のみ、両ローラが軸周りの一方向に回転不能(空転不能)とされている。これにより、自重の作用によってオーバースピードで下流側に自走してくる感光材料を送込ローラ対で圧着して制動をかけ、該感光材料を適正な搬送速度で下流側の処理部に送り込むようになっている。
【特許文献1】特開2007−204216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、感光材料を搬送する搬送系は、一般的に感光材料の搬送速度が下流側ほど高速に設定され、搬送中の感光材料にテンションを付与するようになっている。これにより、搬送中の感光材料にシワや折れ曲がり等が発生したり、紙詰まり等が発生したりすることが防止されている。
【0008】
しかしながら、上記構成の搬送ユニットは、送込ローラ対の両ローラが軸周りの一方向に回転不能とされているため、感光材料が搬送ユニットと処理部とに跨った状態で該感光材料に下流側の処理部の搬送力が作用すると、感光材料に過大な引っ張り力が作用し、送込ローラ対との擦れ等で感光材料に大きなダメージを与えてしまうといった問題があった。すなわち、従来の搬送ユニットは、感光材料のオーバーランを防止する施策をとったために、感光材料にダメージを与えてしまうことになっている。
【0009】
そこで、本発明は、斯かる実情に鑑み、感光材料にダメージを与えることなく、下流側にある処理部に感光材料を適正に送り込むことのできる感光材料搬送ユニット、及び写真処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る写真処理装置は、感光材料を圧着搬送する複数組のローラ対を備え、該複数組のローラ対が所定間隔をあけて配置されることで、感光材料を搬送しつつ所定の処理を行う処理部に繋がる搬送経路が形成された感光材料搬送ユニットにおいて、前記複数組のローラ対は、処理部に直結される最下流部が上流側よりも上方に位置した搬送経路を形成するように配置され、各ローラ対は、少なくとも一方のローラが駆動源からの駆動を受けて軸周りの一方向に回転駆動するように構成されるとともに、両ローラが感光材料の下流側への移動を許容すべく軸周りの一方向に回転自在に構成されることを特徴とする。
【0011】
上記構成の感光材料搬送ユニットによれば、前記複数組のローラ対は、処理部に直結される最下流部が上流側よりも上方に位置した搬送経路を形成するように配置され、各ローラ対は、少なくとも一方のローラが駆動源からの駆動を受けて軸周りの一方向に回転駆動するように設けられるとともに、両ローラが感光材料の下流側への移動を許容すべく軸周りの一方向に回転自在に設けられているので、下流側のローラ対によって感光材料が引っ張られた状態になっても、上流側のローラ対が空転して感光材料の移動を許容することになる。これにより、感光材料に対して過度な引っ張り力が作用することがなく、感光材料にダメージを与えることがない。
【0012】
そして、搬送経路が処理部に直結される最下流部が上流側よりも上方に位置するように形成されるため、複数組のローラ対で搬送される感光材料の自重がローラ対による搬送方向とは逆向きに大きく作用する。これにより、各ローラ対のローラを軸周りの一方向に回転自在に構成しても感光材料が自重によって自走してしまうことがなく、処理部に対して適正な搬送速度で送り込むことができる。
【0013】
そして、このように感光材料が自走することがないため、最下流のローラ対の各ローラを軸周りの一方向に回転不能にする必要がなくなる結果、全ローラ対のローラを軸周りの一方向に回転自在にすることができる。従って、感光材料が処理部と搬送ユニットとに跨り、処理部の搬送力が搬送ユニット(ローラ対)の搬送力に勝っても、上流側にあるローラ対が空転して感光材料の移動を許容することになる。これにより、感光材料に対して過度な引っ張り力が作用することがなく、感光材料にダメージを与えることがない。
【0014】
本発明の一態様として、前記一方のローラは、ワンウェイクラッチを介して駆動源からの駆動を受けるように構成され、前記他方のローラは、回転自在なフリーローラで構成されていることが好ましい。このようにすれば、構造を複雑にすることなく、感光材料を搬送可能としつつも感光材料に引っ張りが生じたときに感光材料の移動を許容したものにすることができる。
【0015】
また、本発明の他態様として、前記搬送経路は、水平方向に対して90°未満の角度で傾斜して形成されていることが好ましい。このようにすれば複数組のローラ対で感光材料の自重の一部を受けた状態になるため、感光材料に対する各ローラ対の圧着力を大きくする必要がない。これにより、ローラ対による圧着で感光材料にダメージを与えるのを抑えることができる。
【0016】
そして、本発明の別の態様として、少なくとも何れか一方のローラに対して回転抵抗を付与する抵抗付与手段をさらに備え、該抵抗付与手段は、ローラに対する回転抵抗を変更可能に構成されてもよい。このようにすれば、ローラに回転抵抗を付与することで該ローラに適切な制動を加えることができるため、感光材料が下流側に引っ張られたとき(ローラが一方向に空転しようとするとき)にローラが無造作に回転(空転)して感光材料の移動を不必要に許容するのを防止することができる。また、ローラが駆動源から駆動を受ける場合には、回転抵抗を変更することでローラに対する制動力を変化さることができ、感光材料を適正に減速させることもできる。
【0017】
そして、本発明に係る写真処理装置は、搬送中の感光材料に対して露光処理を行う露光処理部と、露光処理された感光材料を搬送しつつ現像処理を行う前記処理部としての現像処理部と、上記何れかの感光材料搬送ユニットとを備え、該感光材料搬送ユニットは、露光処理部からの感光材料を受け取って前記複数組のローラ対で感光材料を現像処理部に向けて搬送するように構成されていることを特徴とする。
【0018】
かかる写真処理装置によれば、上記何れかの感光材料搬送ユニットを備えているので、搬送経路上で下流側のローラ対によって感光材料が引っ張られた状態になっても、上流側のローラ対が空転して感光材料の移動を許容することになる。これにより、感光材料に対して過度な引っ張り力が作用することがなく、感光材料にダメージを与えることがない。
【0019】
そして、搬送経路が現像処理部に直結される最下流部が上流側よりも上方に位置するように形成されるため、複数組のローラ対で搬送される感光材料の自重がローラ対による搬送方向とは逆向きに大きく作用する。これにより、各ローラ対のローラを軸周りの一方向に回転自在に構成しても感光材料が自重によって自走してしまうことがなく、現像処理部に対して適正な搬送速度で送り込むことができる。
【0020】
そして、このように感光材料が自走することがないため、全ローラ対のローラを軸周りの一方向に回転自在にすることができる。従って、感光材料が現像処理部と搬送ユニットとに跨り、現像処理部の搬送力が搬送ユニット(ローラ対)の搬送力に勝っても、上流側にあるローラ対が空転して感光材料の移動を許容することになる。これにより、感光材料に対して過度な引っ張り力が作用することがなく、感光材料にダメージを与えることがない。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明に係る感光材料搬送ユニットは、感光材料にダメージを与えることなく、下流側にある処理部に感光材料を適正に送り込むことができるといった優れた効果を奏し得る。
【0022】
また、本発明に係る写真処理装置は、感光材料にダメージを与えることなく、下流側にある処理部に感光材料を適正に送り込むことができるといった優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る感光材料搬送ユニット(以下、単に搬送ユニットという)、及びこれを備えた写真処理装置について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0024】
本実施形態に係る写真処理装置は、図1に示す如く、画像データを基に感光材料Pに露光処理を施す露光処理部1と、露光処理部1で露光処理された感光材料Pに対して現像処理を施す現像処理部2と、現像処理後の感光材料Pを乾燥処理する乾燥処理部3と、乾燥処理された感光材料Pが写真プリントとして排出されるプリント排出部4とを備えている。
【0025】
そして、本実施形態に係る写真処理装置は、別体の制御装置6が電気的に接続され、該制御装置6によって全体の制御が行われるとともに、その制御装置6で読み取った画像データや編集した画像データを基に露光処理等を行うようになっている。ここで、制御装置6について概略説明すると、制御装置6は、各処理の処理状況や操作案内等を表示するモニター60と、該モニター60の表示に基づいて入力操作を行うための入力手段61と、露光処理部1で感光材料Pに露光処理を行うための画像データを読み取る読取手段62と、露光処理を行うに際し、各種処理や写真処理装置の実質的な制御を行う演算処理装置(図示しない)とを備えている。
【0026】
前記モニター60には、ブラウン管モニター或いは液晶モニターを採用することができ、本実施形態においてはブラウン管モニターが採用されている。そして、前記入力手段61には、キーボード61aとマウス61bとが採用されている。
【0027】
本実施形態に係る読取手段62には、写真フィルムFに形成された複数の駒画像を読み取るフィルムスキャナ62a、CD−R/RWやメモリカード等の各種メディアからデータ(例えば、画像データ)を読み込むメディアドライブ62bが採用されている。該読取手段62(フィルムスキャナ62a、メディアドライブ62b)は、演算処理装置に電気的に接続され、該演算処理装置に読み取った各画像データを伝送するようになっている。演算処理装置は、実質的な演算を行うCPU(図示せず)、該CPUに演算を実行させるためのソフトウェア等が記憶されるRAMやROM(図示せず)等から構成されており、I/Oインターフェース(図示せず)を介して、読取手段62や、モニター60、入力手段61等が電気的に接続されている。
【0028】
前記露光処理部1は、ロール状にされた長尺な感光材料Pを収納するマガジン10と、該マガジン10から引き出された感光材料Pを所定の長さで切断する切断装置11と、該切断装置11で切断された感光材料Pを露光処理する露光ユニット12と、該露光処理部1内の各構成間で感光材料Pを搬送し、マガジン10から引き出された感光材料Pを露光ユニット12に搬送するための主搬送系13とを備えている。
【0029】
前記マガジン10は、ロール状にした感光材料Pを軸支可能に構成され、感光材料Pを長手方向に円滑に引き出せるようになっている。前記切断装置11は、マガジン10から引き出されて搬送経路R1上で搬送される感光材料Pを所定長さ(サイズ)に切断するようになっている。
【0030】
前記露光ユニット12は、主搬送系13によって搬送されてきた感光材料Pを受け取って下流側に搬送する搬送系(以下、ユニット搬送系という)120と、該ユニット搬送系120で搬送される感光材料Pに対して露光処理を行う露光処理手段(以下、露光エンジンという)121とを備えている。
【0031】
ユニット搬送系120は、図2に示す如く、露光エンジン121による感光材料Pに対する露光領域Aを挟んで感光材料Pの搬送方向上流側及び下流側に配置された二組のローラ対123,124を備えている。各組のローラ対123,124は、一方のローラ123a,124aが他方のローラ123b,124bに対して接離可能に設けられており、感光材料Pに対する圧着とその解除との切り換えが可能になっている。本実施形態においては、一方のローラ123a,124aは、該ローラ123a,124aの軸線と平行又は略平行な軸周りで正逆回転可能なアーム123c,124cに取り付けられている。そして、アーム123c,124cは、バネ等の付勢手段(図示しない)によって他方のローラ123b,124b側に付勢されており、常態において一方のローラ123a,124aが他方のローラ123b,124bに当接した状態(感光材料Pを圧着できる状態)になるように構成されている。
【0032】
そして、本実施形態に係るユニット搬送系120は、ローラ対123,124が感光材料Pを圧着する状態と、ローラ対123,124間への感光材料Pの進入を許容する状態とに切り換えるべく、一方のローラ123a,124aを他方のローラ123b,124bに対して接離させるための駆動モータ(以下、第一駆動モータという)Mを備えている。そして、第一駆動モータMは、該ユニット搬送系120の骨組みとなるフレーム122に固定され、カム機構Cを介して前記アーム123c,124cを回転させるようになっている。さらに、本実施形態に係るユニット搬送系120は、ローラ対123,124の少なくとも何れか一方のローラ123a,123b,124a,124b(本実施形態においては他方のローラ123b,124b)を回転駆動させる図示しない駆動モータ(以下、第二駆動モータという)を備えている。
【0033】
これにより、本実施形態に係るユニット搬送系120は、第一駆動モータMでアーム123c,124cを正逆回転させることで、一方のローラ123a,124aが他方のローラ123b,124bに対して接離できるようになっている。そして、本実施形態に係るユニット搬送系120は、上述の如く、第二駆動モータで他方のローラ123b,124bを回転駆動するように構成されており、一方のローラ123a,124aが他方のローラ123b,124bの回転駆動に追従するフリーローラとされている。
【0034】
そして、本実施形態に係るユニット搬送系120は、二組のローラ対123,124の上流側に配置された別のローラ対(以下、受取ローラ対という)125を更に備えている。該受取ローラ対125は、主搬送系13から送り込まれる感光材料Pを受け取って下流側(二組のローラ対123,124)に向けて送り出すためのもので、一方のローラ125aがフリーローラとされ、他方のローラ125bが図示しない駆動モータ(以下、第三駆動モータという)で駆動される駆動ローラとされている。これにより、受取ローラ対125は、感光材料Pを圧着状態で搬送できるようになっている。
【0035】
そして、上記構成のユニット搬送系120は、下流側の現像処理部2における感光材料Pの受入位置よりも下方位置で感光材料Pを水平搬送して後述する搬送ユニット5に送り込むように配置されている。
【0036】
前記露光エンジン121は、レーザー光源(図示しない)や、該レーザー光源からのレーザー光を露光領域Aにまで導く光学系(例えば、ポリゴンミラーやレンズ:図示しない)等を備えた、いわゆるレーザーエンジンが採用されている。なお、露光エンジン121は、ハロゲンランプ等からなる光源と、該光源に光ファイバー束を介して接続された光シャッター(PLZT)とで構成されたものであってもよい。
【0037】
そして、露光エンジン121は、ユニット搬送系120で搬送される感光材料Pに対して二組のローラ対123,124間にレーザー光を照射させるように設置されている。すなわち、本実施形態に係る写真処理装置は、ユニット搬送系120における二組のローラ対123,124間が感光材料Pに対する露光領域Aに設定されている。
【0038】
図1に戻り、前記主搬送系13は、感光材料Pを圧着搬送する複数組のローラ対130…と、感光材料Pを圧着(把持)可能に構成されるとともに搬送経路に沿って往復動可能に構成されたスライド体131との組合せで構成されている。すなわち、主搬送系13は、複数組のローラ対130…を所定間隔あけて配置することで形成される搬送経路R1と、往復動するスライド体131によって形成される搬送経路R2とを構築している。本実施形態に係る主搬送系13は、複数組のローラ対130…がマガジン10とスライド体131の移動領域との間に配置され、前記スライド体131が、その下流側(ローラ対130…の下流側)と露光ユニット12との間で略水平方向に往復動するようになっている。
【0039】
前記スライド体131は、上流側のローラ対130…から送られてくる感光材料Pを受け取って、該感光材料Pを下流側に送り出すように構成されている。すなわち、各スライド体131は、感光材料Pの先端部を圧着した状態で下流側に移動した後、該感光材料Pの把持した先端を先頭にして下流側に配設されたローラ対(受取ローラ対)125に向けて送り出すようになっている。
【0040】
本実施形態に係る写真処理装置は、露光処理部1からの感光材料Pを現像処理部2に送り込むための感光材料搬送ユニット(以下、単に搬送ユニットという)5が露光処理部1と現像処理部2との間に設けられている。
【0041】
搬送ユニット5は、図3に示す如く、露光処理部1からの感光材料Pを受け取って搬送経路に対する感光材料Pの表裏を逆転させるためのリバース装置50,51と、リバース装置50,51で表裏逆転された感光材料Pを下流側に搬送するための複数組のローラ対52…と、複数組のローラ対52…で搬送される感光材料Pを案内するガイド体53とを備えている。
【0042】
前記リバース装置50,51は、ローラ対500,510と、感光材料Pをローラ対500,510間に導くためのガイド手段501,511と、該ローラ対52…の一端側を軸支する支持部材502,512と、該支持部材502,512をローラ対500,510(ローラ)の軸線と平行な軸周りで回転させる回転機構503,513とを備えている。これにより、該リバース装置50,51は、露光処理部1から略水平方向で送り出されてくる感光材料Pをローラ対500,510で圧着保持し、その状態で支持部材502,512を回転させることで、感光材料Pの表裏を搬送経路に対して反転させた上で感光材料Pを上方に向けて送り出せる状態になるように構成されている。
【0043】
すなわち、該リバース装置50,51は、支持部材502,512を回転させることで、ローラ対500,510が露光処理部1からの感光材料Pを受け取る受取姿勢と、ローラ対500,510が圧着した感光材料(露光処理部1から受け取った感光材料)Pを下流側のローラ対52…に向けて送り出す送出姿勢とに切り替わるようになっている。そして、該リバース装置50,51は、受取姿勢において、露光処理部1から送り込まれる感光材料Pを受け取るべく、ローラ対500,510が所定方向に回転し、送出姿勢において、受取姿勢への進入時の先端を後端にして感光材料Pを送り出すべく、ローラ対500,510が前記所定方向と逆方向に回転するようになっている。すなわち、該リバース装置50,51は、感光材料Pをスイッチバックさせて下流側に送り出すようになっている。なお、感光材料Pの表裏の反転は、下流側にある現像処理部2で感光材料Pの乳剤面(露光面)に現像処理液を効率的に付着させるために行われる。
【0044】
そして、受取姿勢でのローラ対500,510の回転数(感光材料Pの搬送速度)は、露光処理部1の露光処理に悪影響を与えない範囲に設定され、送出姿勢でのローラ対500,510の回転数(感光材料Pの搬送速度)は、受取姿勢での搬送速度よりも高速に設定される。すなわち、該搬送ユニット5は、複数組のローラ対52…で感光材料Pを搬送する際に高速搬送するようになっているため、リバース装置50,51は送出姿勢において複数組のローラ対52に対応した搬送速度に設定されている。なお、複数組のローラ対52…のうちの最上流にあるローラ対52の搬送速度は、リバース装置50,51のローラ対500,510の搬送速度よりも高速に設定される。
【0045】
前記ガイド手段501,511は、間隔をあけて対向配置された一対の板材501a,501b,511a,511bで構成されており、互いに対向する面で感光材料Pの両面を案内するように構成されている。各板材501a,501b,511a,511bは、ローラ対500,510の軸線と平行になるように配置されて支持部材502,512に固定されている。一対の板材501a,501b,511a,511bは、受取姿勢で露光処理部1からの感光材料Pが円滑に進入できるように、先端部において、間隔が拡大するように互いに離間している。
【0046】
そして、該搬送ユニット5は、複数組のローラ対52…が所定間隔をあけて配置されることで、感光材料Pを搬送しつつ所定の処理(現像処理)を行う現像処理部(処理部)2に繋がる搬送経路Ra,Rbが形成されている。本実施形態において、前記複数組のローラ対52…は、現像処理部2(受入位置)に直結される最下流部が上流側よりも上方に位置した搬送経路Ra,Rbを形成するように配置されている。より具体的には、本実施形態に係る複数組のローラ対52…は、リバース装置50,51から上方に向けて直線状に延びる搬送経路Raと、該搬送経路Raに連続する円弧状の搬送経路Rbとを形成するように配置されている。このように現像処理部2の受入位置に繋がる搬送経路Ra,Rbのうち、直線状に延びる搬送経路Raは、水平方向に対して90°未満の角度で傾斜して形成されている。
【0047】
複数組のローラ対52…のそれぞれは、少なくとも一方のローラ52aが駆動源(図示しない駆動モータ)からの駆動を受けて軸周りの一方向に回転駆動するように設けられるとともに、両ローラ52a,52bが感光材料Pの下流側への移動を許容すべく軸周りの一方向に回転自在(空転可能)に設けられている。本実施形態において、一方のローラ52aは、ワンウェイクラッチ(図示しない)を介して駆動源(図示しない)からの駆動を受けるように構成されている。すなわち、ワンウェイクラッチが一方のローラ52aの軸に連結されており、駆動源(モータ)から一方向の回転力がワンウェイクラッチに作用すると、ワンウェイクラッチがその回転力をローラ52aに伝達して該ローラ52aを回転駆動させる一方、ローラ52aに一方向の回転させる力(ローラ52aの外周接線方向の力)が作用すると、ローラ52aが一方向に空転するようになっている。これに対して、他方のローラ52bは、回転自在なフリーローラで構成されている。
【0048】
これにより、搬送ユニット5の搬送経路Ra,Rbを形成する全ローラ対52…は、駆動源からの駆動を受けて一方のローラ52aが回転することで、両ローラ52a,52bで圧着した感光材料Pを下流側に搬送でき、また、感光材料Pの下流側への引き出しがローラ52a,52bの駆動(回転)に拘束されることなく行えるようにもなっている。
【0049】
本実施形態に係る搬送ユニット5は、各ローラ対52の少なくとも何れか一方のローラ52a,52bに対して回転抵抗を付与する抵抗付与手段(図示しない)を備えている。該抵抗付与手段は、ローラ52a,52bに対する回転抵抗を変更可能に構成されている。本実施形態に係る抵抗付与手段は、駆動源からの駆動を受ける一方のローラ52aに対して圧接可能に設けられた圧接部材(図示しない)を備えており、ローラ52aに対する圧接部材の圧接力(圧力)調整することでローラ52a,52bに対して回転抵抗(制動力)を変更できるようになっている。これにより、感光材料Pの搬送速度を円滑に減速できるようになっている。なお、抵抗付与手段は、ローラ52a,52bに圧接する態様のもの以外に、例えば、ローラ52a,52bと、該ローラ52a,52bの回転中心となる軸との摺接性(摩擦抵抗)でローラ52a,52bに対して回転抵抗を付与するように構成してもよい。
【0050】
前記ガイド体53は、直線状の搬送経路Ra及び円弧状の搬送経路Rbから感光材料Pが離脱することのないように、複数組のローラ対52…間に配置されている。
【0051】
前記ガイド体53は、間隔をあけて対向配置された一対の板材53a,53bで構成されており、一方の板材53aが感光材料Pの一方の面(表裏何れか一方)を案内し、他方の板材53bが感光材料Pの他方の面(表裏何れか他方)を案内するように構成される。そして、最上流のガイド体53は、リバース装置50,51から送り出される感光材料Pの受け入れが円滑になるように、最上流側(リバース装置50,51側)の端部は、リバース装置50,51側に向けて間隔が拡大するように互いに離間している。また、最下流のガイド体53は、円弧状の搬送経路Rbを通過した感光材料Pを略水平方向に送り出すように配置されている。
【0052】
本実施形態に係る搬送ユニット5は、前記リバース装置50,51が複数(二つ)設けられている。そして、二つのリバース装置50,51は、露光処理部1からの感光材料Pの搬送方向と直交する方向(左右)に変位(スライド)可能に設けられている。
【0053】
そして、本実施形態に係る写真処理装置(搬送ユニット5)は、二つのリバース装置50,51同士が最大に離間した位置が各リバース装置50,51のホームポジションに設定され、該ホームポジションの中間位置が両リバース装置50,51における感光材料Pの受取位置に設定されている。また、一方のリバース装置(以下、第一リバース装置という)50のホームポジションと受取位置との中間位置が、該第一リバース装置50が感光材料Pを送り出す送出位置(以下、この送出位置を第一送出位置という)に設定されるとともに、他方のリバース装置(以下、第二リバース装置という)51のホームポジションと受取位置との中間位置が、該第二リバース装置51が感光材料Pを送り出す送出位置(以下、この送出位置を第二送出位置という)に設定されている。これにより、露光処理部1から一列で搬送されてくる感光材料Pを二列に振り分けて下流側に搬送できるようになっている。
【0054】
本実施形態に係る写真処理装置は、前記露光処理部1における感光材料Pの搬送速度が現像処理部2における感光材料Pの搬送速度よりも高速に設定されている。そして、前記搬送ユニット5は、露光処理部1から受け取った感光材料Pを露光処理部1の搬送速度よりも高速で搬送し、現像処理部2に送り出す前に感光材料Pの搬送速度を現像処理部2の搬送速度と略同速に減速するように構成されている。
【0055】
図1に戻り、前記現像処理部2は、露光処理された感光材料Pを現像するためのもので、現像処理液が貯留される現像処理液槽20と、該現像処理液槽20内の現像処理液に対して感光材料Pを浸漬して引き上げる動作を繰り返すように、感光材料Pを搬送する現像処理部搬送系21とを備えている。
【0056】
前記現像処理液槽20は、複数の液槽200…が横並びに配置されることで構成されている。各液槽200…には、感光材料Pに対して現像処理、漂白処理、定着処理、安定処理を行うための現像処理液が貯留されている。すなわち、各液槽200…には、上流側から順に現像液(CD)、漂白・定着液(BF)、安定液(STB)、洗浄液が貯留されている。
【0057】
前記現像処理部搬送系21は、現像処理液槽20(各液槽200)の現像処理液(現像液、漂白・定着液、安定液、洗浄液)中で感光材料Pを搬送する液中搬送系210と、各液槽200…から引き上げられた感光材料Pを下流側で隣接する液槽内に導きつつ搬送する外部搬送系211とで構成されており、各搬送系210,211のそれぞれは、複数組のローラ対(採番しない)により構成されている。
【0058】
そして、かかる現像処理部搬送系21の最上流(受入位置)での感光材料Pの搬送速度は、搬送ユニット5の最下流での感光材料Pの搬送速度よりも高速に設定されている。また、現像処理部搬送系21においても、下流側のローラ対での感光材料Pの搬送速度が上流側のローラ対での感光材料Pの搬送速度よりも高速になるように設定されており、上流側及び下流側のローラ対に跨る感光材料Pに対してテンションを付与できるようになっている。
【0059】
前記乾燥処理部3は、現像処理部2から送り込まれる感光材料Pを搬送する乾燥処理部搬送系30と、該乾燥処理部搬送系30で搬送される感光材料Pを乾燥させる乾燥装置31とを備えている。
【0060】
前記乾燥処理部搬送系30は、感光材料Pの搬送方向に間隔をあけて配置された複数組のローラ対(採番しない)で構成されており、感光材料Pに対する乾燥処理に必要な時間を担保するように、搬送距離や搬送時間が設定されている。
【0061】
前記乾燥装置31は、感光材料Pを乾燥させるための熱風を発生させる熱風発生機(図示しない)と、熱風を吹き出すための吹出口が形成されたノズル体310と、熱風発生機とノズル体とを流体的に接続するダクト(図示しない)とを備えている。そして、該乾燥装置31は、前記ノズル体310が乾燥処理部搬送系30によって形成された搬送経路に吹出口を対向させるようにして配置されている。これにより、搬送中の感光材料Pに熱風を吹き付けて乾燥処理できるようになっている。
【0062】
前記プリント排出部4は、写真プリントを搬送するコンベア40を備えており、乾燥処理部3から送り出された感光材料Pをコンベア40で搬送するようになっている。
【0063】
本実施形態に係る写真処理装置は、以上の構成からなり、次に、該写真処理装置の作動について説明する。
【0064】
まず、収容された感光材料Pがマガジン10から引き出され、切断装置11によって枚葉状に切断される。そして、スライド体131が枚葉状になった感光材料Pを把持した状態で水平方向に向けて移動し、該感光材料Pが露光ユニット12に送り込まれる。
【0065】
このとき、露光ユニット12は、ローラ対123,124の一方のローラ123a,124aが他方のローラ123b,124bから離間した状態で他方のローラ123b,124bが回転駆動するとともに、受取ローラ対125の他方のローラ125bが回転駆動して待機している。そのため、スライド体131によって送り込まれた感光材料Pは、受取ローラ対125で圧着搬送されつつ先頭が上流側のローラ対123間に挿入された状態となる。
【0066】
そして、感光材料Pが上流側のローラ対123間に挿入されると、一方のローラ123aが他方のローラ123bに接近して感光材料Pを圧着する。このとき、既に他方のローラ123bは、一定回転数で回転しているため、当該上流側のローラ対123に圧着された感光材料Pは、露光領域Aに向けて搬送され、先頭側から順に露光領域Aを通過するに伴って露光エンジン121からのレーザー光によって露光されることになる。
【0067】
そして、かかる露光中の感光材料Pは、下流側のローラ対124に向けて搬送されることになるが、下流側のローラ対124は、一方のローラ124aが他方のローラ124bから離間した状態で他方のローラ124bが回転駆動して待機しているため、搬送されてきた感光材料Pは、上流側のローラ対123で圧着搬送されつつ先頭が下流側のローラ対123に対して干渉することなく円滑に挿入される。
【0068】
そして、感光材料Pが下流側のローラ対124間に挿入されると、該下流側のローラ対124は、一方のローラ124aが他方のローラ124bに接近して感光材料Pを圧着し、上流側のローラ対123と同期をとって感光材料Pを下流側に搬送する。
【0069】
そして、上流側のローラ対123は、感光材料Pの後端が通過する直前に一方のローラ123aが他方のローラ123bから離間し、下流側のローラ対124は、該感光材料Pの後端が通過した後に、一方のローラ124aが他方のローラ124bから離間する。これにより、二組のローラ対123,124は、後続の感光材料Pの進入を許容した状態で待機することになる。
【0070】
そして、露光ユニット12から送り出された感光材料Pは、搬送ユニット5を介して下流側の現像処理部2に送り込まれる。
【0071】
ここで搬送ユニット5の動作について具体的に説明すると、まず、露光処理部1から送り出される感光材料Pを受け取るリバース装置50,51(図においては第一リバース装置50)だけがホームポジションから受取位置にまでスライドし、該受取位置において受取姿勢で待機する。
【0072】
そして、図4(a)に示す如く、露光処理部1から搬送されてきた感光材料Pは、受入位置で待機する第一リバース装置50によって受け取られる。すなわち、感光材料Pは、ガイド手段501に案内されてローラ対500間に進入することになる。そして、かかる感光材料Pは、進入方向における先端と後端との間の中間位置でローラ対500が圧着した状態になるように、該ローラ対500で圧着搬送される。なお、図4(a)〜(h)において、ガイド手段501,511は省略している。
【0073】
そして、第一リバース装置50は、図4(b)及び図4(c)に示す如く、回転機構503によって支持部材502が回転して送出姿勢になりつつ受取位置から第一送出位置にスライドする。なお、図4(b)及び図4(c)に示す動作は、実動作では同時に行われる。
【0074】
そして、図4(d)に示す如く、第二リバース装置51がホームポジションから受取位置にスライドし、受取位置で待機する。このように第二リバース装置51がスライドするのに併せて、第一リバース装置50から下流側のローラ対52…に感光材料Pが送り出される。
【0075】
そして、第一リバース装置50から感光材料Pが送り出されると、第一リバース装置50が圧着保持していた感光材料Pと露光処理部1から送り出される感光材料Pとが干渉することのない状態となるため、露光処理部1から感光材料Pが送り出される。
【0076】
そして、露光処理部1から送り出された感光材料Pは、図4(e)に示す如く、受取位置で待機する第二リバース装置51によって受け取られる。すなわち、感光材料Pは、ガイド手段511に案内されてローラ対510間に進入することになる。そして、かかる感光材料Pは、進入方向における先端と後端との間の中間位置でローラ対510が圧着した状態になるように、該ローラ対510で圧着搬送される。
【0077】
そして、図4(f)に示す如く、第一リバース装置50が第一送出位置からホームポジションにスライドする。その後、図4(g)及び図4(h)に示す如く、第二リバース装置51は、回転機構513によって支持部材512が回転して送出姿勢になりつつ受取位置から第二送出位置にスライドする。また、第二リバース装置51が送出姿勢になりつつ第二送出位置にスライドするのに併せ、第一リバース装置50は送出姿勢から受取姿勢に姿勢変更しつつ受取位置に向けてスライドする。なお、図4(g)及び図4(f)に示す動作は、実動作では同時に行われる。
【0078】
しかる後、第二リバース装置51から下流側のローラ対52…に感光材料Pが送り出される。そして、第二リバース装置51から感光材料Pが送り出されると、第二リバース装置51が圧着保持していた感光材料Pと露光処理部1から送り出される感光材料Pとが干渉することのない状態となるため、露光処理部1から感光材料Pが送り出される。
【0079】
そして、露光処理部1から送り出された感光材料Pは、上述したのと同様に、受入位置で待機する第一リバース装置50によって受け取られる。そして、第二リバース装置51は、第二受取位置からホームポジションにスライドした後に、送出姿勢から受取姿勢に姿勢変更する。
【0080】
このような一連の動作を繰り返し行うことで、図3に示す如く、第一リバース装置50及び第二リバース装置51のそれぞれが、第一送出位置及び第二送出位置から下流側のローラ対52…に向けて感光材料Pを順々に送り出し、下流側に設けられた複数組のローラ対52…において、感光材料Pが千鳥状に配置された状態で下流側に搬送されることになる。
【0081】
そして、感光材料Pは、各ローラ対52…で下流側に向けて高速搬送され、搬送経路R2の最下流部に至るまでに搬送速度が減速されることになる。このように感光材料Pが高速搬送されるに当り、下流側のローラ対52による引っ張り力が感光材料Pに作用する場合があるが、本実施形態に係る搬送ユニット5は、各ローラ対52…の各ローラ52a,52bが一方向に回転自在にされているため、上流側のローラ対52が空転して感光材料Pの移動が許容されることになる。これにより、感光材料Pに対して過度な引っ張り力が作用することがなく、上流側のローラ対52から感光材料Pが円滑に引き抜かれ、感光材料Pがダメージを受けることが防止される。
【0082】
また、本実施形態に係る搬送ユニット5は、搬送経路R1、R2が現像処理部2に直結される最下流部が上流側よりも上方に位置するように形成されるため、複数組のローラ対52…で搬送される感光材料Pの自重がローラ対52…による搬送方向とは逆向きに大きく作用し、各ローラ対52…のローラ52a,52bが軸周りの一方向に回転自在であっても感光材料Pが自重によって自走することなく各ローラ対52…によって圧着搬送されることになる。
【0083】
そして、本実施形態に搬送ユニット5は、抵抗付与手段を備えているため、高速搬送の状態から短時間で適正な速度(現像処理部2での搬送速度に対応する速度)まで円滑に減速される。また、感光材料Pは、自重に逆らうように搬送されるため、該自重の作用によっても減速効果が得られることになる。感光材料Pの自重による減速率の変化は、搬送経路R1,R2の最下流部に至るまでの間で放物線状のカーブを描く(二次関数になる)ようになる。これにより、感光材料Pは、現像処理部2への進入に適正な速度に無理なく減速され、現像処理部2に対して適正な状態で送り込まれることになる。
【0084】
そして、上述の如く、搬送ユニット5は、全ローラ対52…のローラ52a,52bが軸周りの一方向に回転自在にされているため、感光材料Pが現像処理部2と搬送ユニット5とに跨り、感光材料Pに過度な引っ張りが作用しようとしたときに、搬送ユニット5の最下流部にあるローラ対52が空転して感光材料Pの移動を許容することになる。これにより、感光材料Pに対して過度な引っ張り力が作用することがなく、感光材料Pがダメージを受けることが防止される。
【0085】
そして、このように現像処理部2に送り込まれた感光材料Pは、現像処理液槽20(複数の液槽200…)の現像処理液に対して浸漬と引き上げとを繰り返すように現像処理部搬送系21(液中搬送系210及び外部搬送系211)によって搬送されて現像処理が行われる。そして、現像処理された感光材料Pは、乾燥処理部3に送り込まれ、乾燥処理された後にプリント排出部4(コンベア40)に排出されることになる。
【0086】
以上のように、本実施形態に係る写真処理装置及び搬送ユニット5によれば、複数組のローラ対52…は、現像処理部2に直結される最下流部が上流側よりも上方に位置した搬送経路R1,R2を形成するように配置され、各ローラ対52…は、少なくとも一方のローラ52aが駆動源からの駆動を受けて軸周りの一方向に回転駆動するように設けられるとともに、両ローラ52a,52bが感光材料Pの下流側への移動を許容すべく軸周りの一方向に回転自在に設けられているので、上流側のローラ対52によって感光材料Pが引っ張られた状態になっても、下流側のローラ対52が感光材料Pの移動を許容することになり、感光材料Pに対して過度な引っ張り力が作用することがない。
【0087】
そして、現像処理部2に直結される最下流部が上流側よりも上方に位置するように搬送経路Ra,Rbが形成されるため、各ローラ対52…のローラ52a,52bを軸周りの一方向に回転自在に構成しても感光材料Pが自重によって自走してしまうことがない。これにより、全ローラ対52…のローラ52a,52bを軸周りの一方向に回転自在にすることができ、感光材料Pが現像処理部2と搬送ユニット5とに跨って該感光材料Pに引っ張り力が作用しても、感光材料Pにダメージを与えることがない。
【0088】
また、搬送ユニット5のローラ対52の一方のローラ52aは、ワンウェイクラッチを介して駆動源からの駆動を受けるように構成され、該ローラ対52の他方のローラ52bは、回転自在なフリーローラで構成されているので、構造を複雑にすることなく、感光材料Pを搬送可能としつつも感光材料Pに引っ張りが生じたときに感光材料Pの移動を許容したものにすることができる。
【0089】
また、搬送ユニット5の搬送経路(直線状の搬送経路)R1は、水平方向に対して90°未満の角度で傾斜して形成されているので、複数組のローラ対52…で感光材料Pの自重の一部を受けた状態にすることができ、搬送経路R1を上り傾斜に形成しても感光材料Pに対する各ローラ対52…の圧着力を大きくする必要がない。これにより、ローラ対52…による圧着で感光材料Pにダメージを与えるのを抑えることができる。
【0090】
そして、各ローラ52a,52bに対して回転抵抗を付与する抵抗付与手段を備え、該抵抗付与手段は、ローラ52a,52bに対する回転抵抗を変更可能に構成されているので、搬送中の感光材料Pに対して制動力を与えることができ、適正な搬送速度で感光材料Pを搬送することができる。
【0091】
尚、本発明の写真処理装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0092】
上記実施形態において、現像処理部2に対して感光材料Pを供給するための搬送ユニット5を設けたが、搬送ユニット5は、現像処理部2に対して感光材料Pを供給するものに限定されるものではなく、例えば、感光材料Pに露光処理を行うための処理部(露光ユニット12)に感光材料Pを供給するためのもであってもよい。すなわち、搬送ユニット5は、枚葉状の感光材料Pを下流側の処理部に対して供給できるものであればよい。
【0093】
上記実施形態において、搬送ユニット5を組み込んだ写真処理装置について説明したが、これに限定されるものではなく、搬送ユニット5は、例えば、写真処理装置に着脱可能とされたものや、写真処理装置の部品等であってもよい。但し、感光材料Pを処理する写真処理装置に組み込まれた状態で、下流側の処理部に感光材料Pを供給することを目的とすることは勿論のことである。
【0094】
上記実施形態において、搬送ユニット5の搬送経路を直線状の搬送経路Raと円弧状の搬送経路Rbと連続させるようにして形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、下流側の処理部に向けて上り傾斜した真っ直ぐな搬送経路を形成したものであってもよい。
【0095】
上記実施形態において、直線状の搬送経路Raを水平方向に対して90°未満の角度で傾斜するように形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、搬送経路Raを垂直方向に延びるように形成してもよい。
【0096】
上記実施形態において、ローラ対52の一方のローラ52aのみを駆動するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、両ローラ52a,52bを駆動するようにしてもよい。この場合においては、両ローラ52a,52bに対してワンウェイクラッチを介して駆動源の駆動を入力するようにすればよい。
【0097】
上記実施形態において、リバース装置50,51を設けたが、搬送ユニット5はリバース機構50,51を備えたものに限定されるものではなく、例えば、上流側から送り込まれる感光材料Pをローラ対52で直接受け取るようにしてもよい。但し、上述の如く、搬送ユニット5が感光材料Pを供給する対象が現像処理部2である場合には、感光材料Pの乳剤面に現像処理液を適正に付着させて良好な現像処理を行うことを考慮すれば、上記実施形態と同様にリバース装置50,51を設けることが好ましい。
【0098】
上記実施形態において、リバース装置50,51を二つ設け、これらをスライドさせることで感光材料Pを二列に振り分けて搬送するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、上流側での整列(一列)状態を維持させつつ下流側に搬送するようにしてもよい。
【0099】
上記実施形態において、駆動源からの駆動を受けるローラ52aに対して回転抵抗を付与する抵抗付与手段を設け、ローラ52aに回転抵抗を付与することで感光材料Pを減速させるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、駆動源にステッピングモータを採用し、該ステッピングモータを制御することで感光材料Pの減速するようにしてもよい。また、抵抗付与手段を設ける場合には、一方のローラ52aに対して設けたものに限定されるものではなく、他方のローラ52bに対して設けてもよいし、両ローラ52a,52bに対して設けるようにしてもよい。
【0100】
上記実施形態において、現像処理部2、及び乾燥処理部3を備えた写真処理装について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、露光処理部1のみで構成された写真処理装置であってもよい。また、別体で設けられた制御装置6で制御される写真処理装置について説明したが、これに限定されるものではなく、制御装置6が一体的に組み込まれた写真処置装置であっても勿論よい。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の一実施形態に係る写真処理装置及び制御装置の概略図を示す。
【図2】同実施形態に係る露光ユニットのユニット搬送系の概略説明図を示す。
【図3】同実施形態に係る写真処理装置のユニット搬送系及び現像処理部搬送系の一部を含んだ搬送ユニットの概略構成図を示す。
【図4】同実施形態に係る写真処理装置の搬送ユニットの作動説明図を示す。
【符号の説明】
【0102】
1…露光処理部、2…現像処理部、3…乾燥処理部、4…プリント排出部、5…搬送ユニット、6…制御装置、10…マガジン、11…切断装置、12…露光ユニット、13…主搬送系、20…現像処理液槽、21…現像処理部搬送系、30…乾燥処理部搬送系、31…乾燥装置、40…コンベア、50…第一リバース装置(リバース装置)、51…第二リバース装置(リバース装置)、52…ローラ対、52a,52b…ローラ、53…ガイド体、53a,53b…板材、60…モニター、61…入力手段、61a…キーボード、61b…マウス、62…読取手段、62a…フィルムスキャナ、62b…メディアドライブ、120…ユニット搬送系、121…露光エンジン、122…フレーム、123,124…ローラ対、123a,123b,124a,124b…ローラ、125…受取ローラ対(ローラ対)、125a,125b…ローラ、130…ローラ対、131…スライド体、200…液槽、210…液中搬送系、211…外部搬送系、310…ノズル体、500,510…ローラ対、501,511…ガイド手段、501a,501b,511a,511b…板材、502,512…支持部材、503,513…回転機構、A…露光領域、C…カム機構、F…写真フィルム、M…第一駆動モータ、P…感光材料、R1,R2,Ra,Rb…搬送経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光材料を圧着搬送する複数組のローラ対を備え、該複数組のローラ対が所定間隔をあけて配置されることで、感光材料を搬送しつつ所定の処理を行う処理部に繋がる搬送経路が形成された感光材料搬送ユニットにおいて、前記複数組のローラ対は、処理部に直結される最下流部が上流側よりも上方に位置した搬送経路を形成するように配置され、各ローラ対は、少なくとも一方のローラが駆動源からの駆動を受けて軸周りの一方向に回転駆動するように構成されるとともに、両ローラが感光材料の下流側への移動を許容すべく軸周りの一方向に回転自在に構成されることを特徴とする感光材料搬送ユニット。
【請求項2】
前記一方のローラは、ワンウェイクラッチを介して駆動源からの駆動を受けるように構成され、前記他方のローラは、回転自在なフリーローラで構成されている請求項1記載の感光材料搬送ユニット。
【請求項3】
前記搬送経路は、水平方向に対して90°未満の角度で傾斜して形成されている請求項1又は2記載の感光材料搬送ユニット。
【請求項4】
少なくとも何れか一方のローラに対して回転抵抗を付与する抵抗付与手段をさらに備え、該抵抗付与手段は、ローラに対する回転抵抗を変更可能に構成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の感光材料搬送ユニット。
【請求項5】
搬送中の感光材料に対して露光処理を行う露光処理部と、露光処理された感光材料を搬送しつつ現像処理を行う前記処理部としての現像処理部と、請求項1乃至4の何れか1項に記載の感光材料搬送ユニットとを備え、該感光材料搬送ユニットは、露光処理部からの感光材料を受け取って前記複数組のローラ対で感光材料を現像処理部に向けて搬送するように構成されていることを特徴とする写真処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−64799(P2010−64799A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229686(P2008−229686)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】