説明

感応材料用カリックスアレン誘導体およびカリックスアレン系複合材料ならびにそれらを用いたセンサー素子、センサー

【課題】ケトン分子などの特定の官能基を持つVOCsを選択的に吸着しうる新規な感応材料用カリックスアレン誘導体およびカリックスアレン系複合材料、およびそれらを用いたセンサー素子、センサーの提供。
【解決手段】下記式で表わされる感応材料用カリックスアレン誘導体。


上記式において、mは4〜8から選択される整数、X、Rの少なくとも一方は末端に二重結合を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なカリックスアレン誘導体およびカリックスアレン系複合材料ならびにそれらを用いたセンサー素子、センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゼン、トルエン、アルカン、アルコール類といった様々な揮発性有機化合物(以下、VOCsと記す)などの化学物質を検出する化学センサーの感度を高める研究や、検出対象となる化学物質に合わせた化学センサーについての研究がなされており、化学センサーの感応材料についてもいろいろな提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、カリックスアレンのフェノール性水酸基部位を環状カーボネート基で修飾したカリックスアレン誘導体が、有機分子の識別、人工酵素、高分子機能材料などに用いられることが記載される。
特許文献2には、カリックスアレンが分子認識に利用されること、カリックスアレンのベンゼン環をアルキル基などの側鎖で修飾したカリックスアレン誘導体の製造方法が記載される。
【0004】
特許文献3には、カリックスアレンが包接機能、カチオン補足機能などを有し、その機能により金属類の除去、センサー化合物、ある種の臨床検査試薬などとして応用されることが記載される。また特許文献3には、(2−オキソ−2−エトキシ)エチル化されたカリックスアレン誘導体が、カチオン補足機能を利用してシアノアクリレート系瞬間接着剤の接着促進剤として有用であることが記載される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−45743号公報
【特許文献2】特開2000−16956号公報
【特許文献3】特開2009−184996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および2には、ケトン分子などの特定の官能基を持つVOCsに対して感度を有するカリックスアレン誘導体については記載がない。また、特許文献3には、(2−オキソ−2−エトキシ)エチル化されたカリックスアレン誘導体がケトン分子などの特定の官能基を持つVOCsに対して感度を有することは記載がない。
病気にかかると呼気に含まれるVOCsの種類や濃度が変化すること、癌患者からケトン誘導体が放出されていることが知られており、ケトン分子などの特定の官能基を持つVOCsを選択的に吸着する感応材料が求められているが、このような感応材料は見出されていないのが現状である。
【0007】
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、ケトン分子などの特定の官能基を持つVOCsを選択的に吸着しうる新規な感応材料用カリックスアレン誘導体およびカリックスアレン系複合材料を提供することを目的とする。また、感応材料用カリックスアレン誘導体およびカリックスレゾルシンアレン系複合材料を用いたセンサー素子、センサーをも提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的のもと、本発明者等は、カリックスアレンを基本骨格として、ケトン分子など特定のVOCsを吸着する側鎖を導入することにより、ケトン分子などのVOCsを選択的に吸着しうることを見出した。
すなわち本発明は、 [化1]で表わされることを特徴とする感応材料用カリックスアレン誘導体である。
【0009】
【化1】

【0010】
[化1]において、mは4〜8から選択される整数、Xは炭素数1〜10の鎖式炭化水素基、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、あるいはエステル基、カルボキシル基、シアノ基、アミド基の少なくとも1種の官能基と結合してなる炭素数1〜20の炭化水素基から選択されるいずれか1種または2種以上を表す。ただし、X、Rの少なくとも一方は末端に二重結合を有する。
【0011】
また、本発明者等は、本発明のカリックスアレン誘導体をポリジメチルシロキサンと複合化させることでカリックスレゾルシンアレンの分子配列を制御することにより、ケトン分子を選択的かつ高感度に吸着しうることを見出した。
【0012】
本発明は、[化2]で表わされるカリックスアレン誘導体と、ポリジメチルシロキサンと、が複合化されたことを特徴とするカリックスアレン系複合材料である。
【0013】
【化2】

【0014】
[化2]において、mは4〜8から選択される整数、Xは炭素数1〜10の鎖式炭化水素基、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、あるいはエステル基、カルボキシル基、シアノ基、アミド基の少なくとも1種の官能基と結合してなる炭素数1〜20の炭化水素基、から選択されるいずれか1種または2種以上を表す。
【0015】
本発明のカリックスアレン系複合材料は、[化3]で表わされることが好ましい。
【0016】
【化3】

【0017】
[化3]において、mは4〜8から選択される整数、Xは炭素数1〜10の鎖式炭化水素基、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、あるいはエステル基、カルボキシル基、シアノ基、アミド基の少なくとも1種の官能基と結合してなる炭素数1〜20の炭化水素基、から選択されるいずれか1種または2種以上を表す。nは1〜500から選択される数を表す。
【0018】
また本発明のカリックスアレン系複合材料は、[化4]で表わされることが好ましい。
【0019】
【化4】

【0020】
[化4]において、mは4〜8から選択される整数、Xは炭素数1〜10の鎖式炭化水素基、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、あるいはエステル基、カルボキシル基、シアノ基、アミド基の少なくとも1種の官能基と結合してなる炭素数1〜20の炭化水素基、から選択されるいずれか1種または2種以上を表す。nは1〜500から選択される数を表す。
【0021】
本発明のカリックスアレン系複合材料は、センサー素子およびセンサー用の感応材料として好適である。
したがって、本発明のセンサー素子は、基板の上に感応膜が形成されてなるセンサー素子であって、感応膜が、[化5]で表わされるカリックスアレン誘導体と、ポリジメチルシロキサンと、が複合化されたカリックスアレン系複合材料からなることを特徴とする。
【0022】
【化5】

【0023】
上記[化5]において、mは4〜8から選択される整数、Xは炭素数1〜10の鎖式炭化水素基、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、あるいはエステル基、カルボキシル基、シアノ基、アミド基の少なくとも1種の官能基と結合してなる炭素数1〜20の炭化水素基、から選択されるいずれか1種または2種以上を表す。
【0024】
本発明のセンサー素子は、基板が、金からなる、またはSi系材料の表面に金薄膜を形成したものからなることが好ましい。
また本発明のセンサー素子は、カリックスアレン系複合材料と前記基板とが自己組織化単分子膜を介して結合されてなることが好ましい。
【0025】
本発明のセンサーは、基板の上に、[化6]で表わされるカリックスアレン誘導体とポリジメチルシロキサンとが複合化されたカリックスアレン系複合材料からなる感応膜が形成されてなるセンサー素子と、感応膜によりターゲット物質を吸着し、吸着した前記ターゲット物質による前記センサー素子の物理的な変化を検出する検出手段と、を有することを特徴とする。
【0026】
【化6】

【0027】
[化6]において、mは4〜8から選択される整数、Xは炭素数1〜10の鎖式炭化水素基、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、あるいはエステル基、カルボキシル基、シアノ基、アミド基の少なくとも1種の官能基と結合してなる炭素数1〜20の炭化水素基、から選択されるいずれか1種または2種以上を表す。
【0028】
本発明のセンサーは、検出手段が、吸着されたターゲット物質による質量変化を振動型質量検出センサーの周波数変化として検出する検出手段であることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ケトン分子などの特定の官能基を持つVOCsに選択性を有するカリックスアレン誘導体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】(a)センサー素子を構成する基板の斜視図、(b)基板上に感応膜を形成したセンサー素子の斜視図である。
【図2】カリックスアレン系複合材料の合成方法を説明するための図である。
【図3】QCMセンサーの模式図である。
【図4】(a)〜(d)はカリックスアレン誘導体の合成方法を説明するための図である。
【図5】アセトン、エタノール、トルエン、オクタンを各1000ppmずつ導入した場合の周波数変化を表わす図である。
【図6】カリックスアレン系複合材料の合成方法を説明するための図である。
【図7】アセトン、エタノール、トルエン、オクタンを各1000ppmずつ導入した場合の周波数変化を表わす図である。
【図8】オクタンを500ppm〜4000ppmの範囲で、500ppmずつ増加させて導入した場合の周波数変化を表わす図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明をより詳細に説明する。
<カリックスアレン誘導体>
本発明の感応材料用カリックスアレン誘導体(以下、カリックスアレン誘導体と略記する場合もある)は、[化1]で表わされ、ケトン分子に対する選択性を有すること、かつ他の材料との複合化が可能なことを特徴とする。選択性を有する理由について、本発明者等は次のように推察している。カリックスアレンは、カプセル型分子構造を有するため、ナノスペースに様々な分子を取り込むことができ、分子認識材料として用いることができる。このカリックスアレンにエステル基やアミド基などの官能基を有する機能性側鎖を導入することで、ケトン分子などの特定の官能基を持つVOCsに対する選択性が付与されている。また、本発明のカリックスアレン誘導体は、末端に二重結合を有する側鎖を導入するので、他の材料との複合化が可能である。
【0032】
本発明のカリックスアレン誘導体のm、X、Rについて説明する。
mは4〜8から選択される整数であり、4〜8の間で環員数を変えることでカリックスアレン誘導体のナノスペースの大きさを制御できる。
mが4の場合、カリックスアレン誘導体一分子当たり、X、Rはそれぞれ4か所に導入される。
【0033】
Xは、炭素数1〜10の鎖式炭化水素基であり、直鎖状、分岐状いずれであってもよく、飽和、不飽和いずれであってもよい。鎖式炭化水素基の長さや種類を変えることで、分子の溶解性、炭化水素などのVOCsに対する選択性を制御することができる。
カリックスアレン誘導体の分子同士の相互作用により密にパッキングするのを妨げるためには、Xは、炭素数3以上の鎖式炭化水素基を用いることが好ましく、tert−ブチル基(以下、t−ブチル基と略記する)、アリル基などを用いることができる。
【0034】
Rは、カリックスアレン誘導体に選択性を付与する役割を担う機能性側鎖である。Rとして導入する機能性側鎖を変えることで、カリックスアレン誘導体のVOCsに対する感度が変わる。Rは、炭素数1〜20のアルキル基、あるいはエステル基、カルボキシル基、シアノ基、アミド基の少なくとも1種の官能基と結合してなる炭素数1〜20の炭化水素基から選択されるいずれか1種または2種以上である。
【0035】
Rとしてアルキル基を用いた場合、炭化水素などのVOCsに対する選択性を制御することができる。Rとしてのアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、t-ペンチル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、オクチル基などが好ましい。
【0036】
Rとして、エステル基、カルボキシル基、シアノ基、アミド基の少なくとも1種の官能基と結合してなる炭素数1〜20の炭化水素基を用いた場合、極性のあるVOCsに対する感度が向上する。中でもエステル基、アミド基は、ケトン分子に対する感度向上の効果が大きい。
官能基と結合する炭素数1〜20の炭化水素基は、特に限定されないが、アルキル基またはアルケニル基を用いることが好ましい。また、炭化水素基に対する官能基の結合の位置を特に限定するものではなく、フェノール性水酸基部位に対して、炭化水素基−官能基−炭化水素基、官能基―炭化水素基、炭化水素基―官能基、いずれの順番で炭化水素基と官能基とが結合していてもよい。
【0037】
Rとして好ましい機能性側鎖の一例を[化7]の(1)〜(7)および[化8]の(8)〜(11)に例示する。[化7]の(4)に示すエステル基含有アルキル基、[化7]の(6)に示すアミド基含有アルキル基、[化8]の(10)に示すエステル基含有アルケニル基、[化8]の(11)に示すアミド基含有アルケニル基は、ケトン分子に対する選択性と感度に優れる。
【0038】
【化7】

【0039】
【化8】

【0040】
カリックスアレン誘導体一分子当たりに導入されるRは全て同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0041】
本発明において、Rは、フェノール性水酸基部位である−OH基のHをRで置換して導入するため、一部が置換されずに−OH基として残る場合もある。カリックスアレン誘導体一分子当たり少なくとも一か所にRが導入されていれば、ケトン分子など特定の官能基を持つVOCsを選択的に吸着することができる。
【0042】
[化9]に、本発明のカリックスアレン誘導体のフェノール性水酸部位において、RとHとが混在したカリックスアレン誘導体の化学構造式を示す。[化9]において、mは4〜8から選択される整数、pは1〜7から選択される整数であって、m>pである。X、Rは[化1]と同様であって、Xは炭素数1〜10の鎖式炭化水素基、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、あるいはエステル基、カルボキシル基、シアノ基、アミド基の少なくとも1種の官能基と結合してなる炭素数1〜20の炭化水素基から選択されるいずれか1種または2種以上を表す。ただし、X、Rの少なくとも一方は末端に二重結合を有する。また、ORを含む構成単位とOHとの結合順は任意である。
[化9]のカリックスアレン誘導体も[化1]同様、PDMSとの複合化が可能であるが、その場合、フェノール性水酸基はPDMSとの結合点とはならない。
【0043】
【化9】

【0044】
本発明カリックスアレン誘導体においては、X、Rの少なくとも一方は、末端に二重結合を有するようXとRを選択する。これは、ポリジメチルシロキサンと複合化する場合の結合点とするためである。本発明の感応材料用カリックスアレン誘導体は、複合化により高い感度を得ることができる。
【0045】
本発明者等が合成したカリックスアレン誘導体の一例として、Xとしてアリル基、Rとして[化7]の(4)に示すエステル基含有アルキル基を導入したカリックスアレン誘導体の合成方法を後述の実施例で詳しく説明する。
【0046】
<カリックスアレン系複合材料>
本発明のカリックスアレン系複合材料(以下、複合材料と略記する場合もある)は、感応材料用カリックスアレン誘導体をポリジメチルシロキサン(以下、PDMSと略記する場合もある)と複合化させることでカリックスアレンの分子配列を制御することにより、ケトン分子をなどのVOCsを選択的かつ感度よく吸着しうる。この理由について、本発明者等は次のように推察している。カリックスアレン誘導体分子のみで感応膜を形成すると分子内または分子間での結合によりカリックスアレン誘導体の分子同士が強く密にパッキングしVOCsの吸着が阻害されやすいが、ポリジメチルシロキサンと複合化すると、パッキングが阻止される。ポリジメチルシロキサンと複合化することで、PDMSの網状構造の架橋点としてカリックスアレン誘導体が配置され、カリックスアレン系複合材料の内部にターゲット物質が入り込みやすくなり、感応材料として用いる場合に感度が向上し、応答性も向上する。
【0047】
ポリジメチルシロキサンは、[化10]で表わされる。
【0048】
【化10】

【0049】
[化3][化4][化10]において、nは、ポリジメチルシロキサンの重合度である。重合度を変えることによって高分子の運動性(固さ)を変化させてVOCsガスの拡散を制御するので、所望の運動性に適合した重合度とすることができるが、重合度nは1〜500から選択されることが好ましい。
【0050】
カリックスアレン誘導体とPDMSとは、カリックスアレン誘導体のX、Rいずれか一方の末端の二重結合を利用して複合化させることができる。
カリックスアレン誘導体のRの末端を二重結合とし、PDMSと複合化させた場合、[化3]で表わされる複合材料となる。また、カリックスアレン誘導体のXの末端を二重結合とし、PDMSと複合化させた場合、[化4]で表わされる複合材料となる。
【0051】
本発明の複合材料は、誘導体とポリジメチルシロキサンとを溶媒に溶かして混合液を作成し、Pt触媒を加えて攪拌した後、放置および/または加熱して重合を進める。その後、溶媒を除去することにより、カリックスアレン誘導体とポリジメチルシロキサンとが結合したカリックスアレン系複合材料が得られる。本発明のカリックスアレン系複合材料は不溶性であるので、センサー素子の感応膜として用いる場合にはセンサー素子基板の上で重合させることが好ましい。
【0052】
<センサー素子>
本発明のセンサー素子は、基板の上に本発明カリックスアレン系複合材料からなる感応膜が形成された構成を有する。
基板は、金からなる、またはSi系材料の表面に金(Au)薄膜を形成した基板が好ましい。Si系材料の表面に金薄膜を形成した基板は、水晶振動子等の振動型質量検出センサーの電極として用いることができる。
【0053】
センサー素子の構成を図1(a)(b)に基づいて説明する。図1(a)に、センサー素子1を構成する基板2の斜視図を示す。図1(b)に、感応膜3を形成したセンサー素子1の斜視図を示す。
【0054】
図1(a)に示すように、基板2はディスク状で、基板2の一面側の中央部に金(Au)薄膜からなる金電極4が形成され、金電極4と接続される金電極端子部4aにより、外部から通電可能である。基板2としては、水晶素板サイズφ8.7mm、金電極14の径φ5.0mmの水晶振動子((株)多摩デバイス製)などを用いることができる。
図1(b)に示すように、センサー素子1は、図1(a)に示す金電極4上に感応膜3が形成された構成である。
なお、センサー素子1は、ディスク状に限るものではなく、一端または両端が固定されたカンチレバー状とすることもできる。
【0055】
基板2の上に、本発明の複合材料からなる感応膜3を形成する方法について、図2に基づいて説明する。図2は、Xとしてt−ブチル、Rとして[化8]の(11)に示すアミド基含有アルケニル基を導入したカリックスアレン誘導体とPDMSとの複合化を示す化学反応式である。
図2に示すように、カリックスアレン誘導体とPDMSとをTHFに溶解させN脱気した後Pt触媒を加えて攪拌し反応液を調整する。反応後、1時間程度放置して重合を進め、混合液が粘性を生じてから基板2の上にスピンコートなどで成膜する。成膜後、ホットプレートで焼結し、重合を進めることにより、カリックスアレン系複合材料からなる感応膜3が得られる。
【0056】
本発明の複合材料からなる感応膜3を基板2に強固に固定するためには、予め基板2上に自己組織化単分子膜(以下、SAMsと略記する場合もある)を形成することが好ましい。SAMsを基板2表面に形成することにより、基板2とSAMs、SAMsとカリックスアレン系複合材料、それぞれが化学的に結合する。
金表面を有する基板2にSAMsを形成する場合には、チオール分子が金と結合してSAMsが形成される。また、PDMSと重合可能なアリル基を有するSAMsを形成することが好ましい。このようなSAMsを形成する化合物としては、ジアリルジスルフィド、2−プロペン−1−チオールなどを用いることができる。
【0057】
本発明のカリックスアレン誘導体、カリックスアレン系複合材料およびこれを用いたセンサー素子1は、電気的検出、光学的検出、化学的検出、電気化学的検出等の検出手段を有するセンサーに好適である。
【0058】
本発明のセンサー素子1をセンサーに適用する場合、振動型質量検出センサーを用いて、ターゲット物質の吸脱着による質量変化を周波数変化として検出することが好ましい。振動型質量検出センサー上の電極を基板として本発明のカリックスレゾルシンアレン系複合材料を配設することにより、高感度なセンサーとなる。振動型質量検出センサーとしては水晶振動子を用いたものが好ましい。またMEMS(Micro Electrical Mechanical System)技術を用いた小型振動子を用いた振動型質量検出センサーを用いることもできる。この場合、QCMに比較して、集積化や回路との集積が容易である。
【0059】
例えば、水晶振動子微量天秤(QCM)では、水晶発振子の表面に物質が吸着すると、以下のSauerbrey式(1)に従い、吸着した物質の質量に比例して、水晶発振子の基本振動数が変化する。ここで、Δfは、周波数変化(Hz)、fは共鳴周波数(9MHz)、Δmは重量変化、Aは電極面積、ρは水晶の密度、μはAT−cut水晶の剛性率である。後述の実施例においては、Aが0.1963cm、ρが2.648g/cm、μが2.947×1011gHz/cmの条件で測定を行った。
【0060】
【数1】

【0061】
図3は、センサー20の構成を説明するための図である。
図3に示すように、センサー20は、振動を発する発振器23と、発振器23の上に端子24を介して載置されるセンサー素子1とが、チャンバー22内に設置されている。センサー素子1は、感応膜3がガス分子を吸着することによる質量変化に伴い周波数が変化する。チャンバー22は、VOCなどのガスを導入するガス導入バルブ27と窒素導入バルブ30と排気バルブ28とを備え、チャンバー22内を所望の雰囲気に制御することができる。ガス導入バルブ27にはヒーター29が設けられ、チャンバー22内に導入するガスを必要に応じて加熱することができる。発振器23は、チャンバー22外の周波数検出カウンタ25と接続され、周波数検出カウンタ25は周波数変化検出部26と接続される。
【0062】
チャンバー22内にガス導入バルブ27を通してガスが導入されると、センサー素子1は感応膜3がガス分子を吸着して質量が変化する。質量変化に伴い周波数が変化するので、この周波数変化を周波数検出カウンタ25によって計測し、周波数検出カウンタ25に接続される周波数変化検出部26により周波数変化を出力する。周波数検出カウンタ25としては、Agilent53131Aユニバーサル周波数カウンタ等を用いることができる。周波数変化検出部26としては、周波数変化等の物理的な変化を検出する検出手段26a、検出結果から吸着特性を求めてターゲット物質を認識する認識手段26bを機能として有するコンピュータ装置を用いる。
【0063】
図3では、センサー素子1を4つ配置したセンサー20を示したが、本発明のセンサー20は、センサー素子1を少なくとも1種配置することにより、センサー20としての機能を有する。また、センサー素子1は検出の対象に合わせて複数配置してもよい。
【0064】
本発明のセンサー20の実施の形態の一例として、本発明のセンサー素子1と、センサー素子1の物理的な変化を検出する検出手段26aと、を備える構成とすることが好ましい。本発明のセンサー素子1を少なくとも1種、好ましくは2種以上配設する。センサー素子1は、感応膜3を構成する有機物の選定により分子認識能が異なる。これは、有機物の選択性によるものである。検出対象があらかじめ決まっている場合には、本発明のセンサー素子1を少なくとも1種有することで検出可能であるが、2種以上のセンサー素子1を組み合わせることにより、それぞれのセンサー素子1における分子認識能の違いから検出の精度を高めることが可能となる。
【0065】
また本発明にかかるセンサー20の他の実施の形態の一例として、本発明のセンサー素子1と、センサー素子1の物理的な変化を検出する検出手段26aと、検出結果から吸着特性を求めてターゲット物質を認識する認識手段26bと、を備える構成とすることが好ましい。複数の成分で構成されるにおいや呼気などを検出対象とする場合には、2種以上のセンサー素子1を組み合わせ、それぞれのセンサー素子1における分子認識能の違いから、においや呼気を構成する成分を検出する。分子認識能の違いから、においや呼気を構成する成分を検出するためには、振動型質量検出センサーの周波数変化の波形や、周波数変化量から算出される質量変化量などの吸着特性を求めて、構成成分に特有の特徴をとらえて認識を行う手法が有効である。この場合、本発明のカリックスアレン誘導体やカリックスアレン系複合材料を用いたセンサー素子1とそれ以外のセンサー素子1とを組み合わせてもよいし、分子認識能の異なる本発明センサー素子1を2種以上組み合わせてもよい。
【実施例1】
【0066】
mが4、Xがアリル基、Rが[化7]の(4)に示すエステル基含有アルキル基からなる本発明の感応材料用カリックスアレン誘導体、5,11,17,23−テトラアリル−25,26,27,28−テトラエトキシカルボニルメトキシメチルカリックス[4]アレンの合成方法について、図4(a)〜(d)に基づいて説明する。
【0067】
(a)25,26,27,28−テトラヒドロキシカリックス[4]アレンの合成
p−t−ブチルカリックス[4]アレン1.00g(1.54×10−3mol)、フェノール0.29g(3.08×10−3mol)をトルエン10mlに入れ15分間撹拌し、さらに塩化アルミニウム1.23g(9.24×10−3mol)を加え30分撹拌した。その後、アスピレーターで減圧しながら室温で3時間撹拌した。氷を入れたビーカーに溶液を注ぎ、氷が溶けるまで撹拌した。氷が溶けたらジクロロメタン/ 水で3回分液を行った。硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を減圧除去した。ジエチルエーテルを加え冷凍庫で3時間放置した後、これを吸引濾過し減圧乾燥して25,26,27,28−テトラヒドロキシカリックス[4]アレンを得た。
【0068】
(b)25,26,27,28−テトラキス(アリルオキシ)カリックス[4]アレンの合成
耐圧ガラスチューブ中でp−t−ブチルカリックス[4]アレン 0.30g(7.07×10−4molをドライTHF5.0ml、ドライN,N−ジメチルホルムアミド(図4においてdryDMFと記す)1.5mlに溶解させ、水素化ナトリウム0.34g(2.26×10−2mol)をゆっくり加えた。さらに臭化アリル1.19ml(1.41×10−2mol)を添加し、80℃で25時間撹拌した。室温に戻してから減圧濃縮し、ジクロロメタン/水で3回分液分液を行った。硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を減圧除去した。その後シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:へキサン=1 : 1)で精製し、減圧乾燥して25,26,27,28−テトラキス(アリルオキシ)カリックス[4]アレンを得た。
【0069】
(c)5,11,17,23−テトラアリルカリックス[4]アレンの合成
窒素気流下、25,26,27,28−テトラキス(アリルオキシ)カリックス[4]アレン0.341g(5.83×10−4mol)をN,N−ジエチルアミン4.87mlに溶解させ、210℃で2時間撹拌還流した。氷を入れたビーカーに溶液を注ぎ、氷が溶けるまで撹拌した。氷が溶けたら塩酸を加えて再沈させた。これをジエチルエーテルに溶かし、ジエチルエーテル/ 水で3回分液を行った。硫酸マグネシウムで脱水した後、溶媒を減圧除去した。得られた物質をイソプロパノール中で再結晶を行い、吸引濾過して減圧乾燥し5,11,17,23−テトラアリルカリックス[4]アレンを得た
【0070】
(d)5,11,17,23−テトラアリル−25,26,27,28−テトラエトキシカルボニルメトキシメチルカリックス[4]アレンの合成
窒素気流下、5,11,17,23−テトラアリルカリックス[4]アレン0.15g(2.57×10−4mol)をアセトン4mlに溶解させ、炭酸カリウム0.21g(1.52×10−3mol)をゆっくり加えて5分室温で撹拌した。ブロモ酢酸エチル0.60ml(5.41×10−3mol)を加え70℃で48時間撹拌還流した。溶液を室温まで戻し、自然濾過を行い減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン→2.5%メタノール/ジクロロメタン)により精製し、減圧濃縮した。さらに分取液体クロマトグラフィーで精製し、減圧濃縮で5,11,17,23−テトラアリル−25,26,27,28−テトラエトキシカルボニルメトキシメチルカリックス[4]アレンを得た。
【実施例2】
【0071】
表1にカリックスアレン誘導体[化1]のm、X、Rを示す。表1の試料2−1、試料2−2、試料2−3のカリックスアレン誘導体をそれぞれ感応膜とするセンサー素子を作製し、周波数変化を測定し、VOCsに対する選択性を確認した。
【0072】
【表1】

【0073】
センサー素子は次のように作製した。基板として、水晶素板サイズφ8.7mm、金電極径φ5.0mmの水晶振動子((株)多摩デバイス製)を用い、試料2−1、試料2−2、試料2−3のカリックスアレン誘導体の6wt%THF溶液を調整し、基板の上にそれぞれスピンコートし成膜した。
【0074】
試料2−1、試料2−2、試料2−3のカリックスアレン誘導体からなる感応膜を形成したセンサー素子を用いて、図2に示すセンサーのガス供給手段である導入バルブ27とヒータ29を、液体状態で恒温槽内のバブラーに入れて、その温度によって飽和蒸気を発生させ、その飽和蒸気を流量制御装置で制御したキャリアガスで導入する構成に一部変更した以外は、図2に示すセンサーと同様の原理の装置で、常にガスフローの状態で周波数変化を測定した。はじめにセンサー素子を設置したチャンバー内を窒素雰囲気にした後、測定対象のガスを導入した。ガスの導入は数分間行い周波数変化を計測した。その後装置内のガスを排気し、窒素に置換することで周波数をベースラインに戻した。周波数変化は室温で計測した。
【0075】
アセトン、エタノール、トルエン、オクタンをそれぞれ1000ppmずつ導入した場合の周波数変化を図5に示す。図5に示す周波数変化は、感応膜の膜厚1μmあたりの周波数変化である。なお、アセトンはケトン分子である。
図5から、アセトン、エタノール、トルエン、オクタンそれぞれのガスを一定量導入した場合に、試料2−1、試料2−2、試料2−3いずれもガス種毎に周波数変化量が異なることからカリックスアレン誘導体がガス種に対する選択性を有すること、Rとしてエステル基を含む試料2−1とアミド基を含む試料2−3は、Rとして水素原子すなわちOH基を含む試料2−2に比べて周波数変化量が大きいことから感度に優れる感応材料であることがわかった。
【実施例3】
【0076】
実施例2の試料2−1のカリックスアレン誘導体とPDMSとを複合化したカリックスアレン系複合材料(試料3−1)、PDMS(試料3−2)、これら2種類を感応膜とするセンサー素子を作製し、周波数変化を測定した。
【0077】
試料3−1のカリックスアレン系複合材料を感応膜とするセンサー素子は、SAMsを形成した基板の上でカリックスアレン誘導体とPDMSとを重合し複合膜を成膜した。以下、(a)SAMs形成、(b)複合材料からなる感応膜の成膜の順に説明する。なお、用いた基板は実施例2と同様である。
(a)SAMs形成
UVオゾンクリーナーに基板を並べて表面をUVオゾン洗浄したセンサー素子基板をジアリルジスルフィド2mMエタノール溶液中に浸漬させ脱気を行った後、室温で24時間静置した。その後、基板をエタノールですすぎ、60℃で熱乾燥し、SAMsを形成した基板を得た。
【0078】
(b)複合材料(試料3−1)からなる感応膜の成膜
図6に示す試料2−1とPDMSとの化学反応式に基づき説明する。
5,11,17,23−テトラアリル−25,26,27,28−テトラエトキシカルボニルメトキシメチルカリックス[4]アレンをTHF400μlに溶解させ、24時間攪拌した。H末端ポリジメチルシロキサン25μlを加え1時間攪拌し、Nバブリングした後、白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体溶液(platinum(0)−1,3−divinyl−1,1,3,3−tetramethyl disiloxane complex solution)4.4μlを加えて24時間攪拌した。その後、滴下量5μl、回転数4000ppmでSAMsを形成した基板の上にスピンコートを行い、150℃で2時間加熱した。さらにイソプロピルアルコールで洗浄し、再び100℃で1時間加熱し、複合材料からなる感応膜を得た。
【0079】
(c)PDMS感応膜(試料3−2)の成膜
比較のため、PDMS単一の感応膜を基板の上に成膜し、センサー素子を作製した。PDMS単一の感応膜は、PDMSと環状シロキサンとを用いて、(b)の複合材料と同様の方法で重合し、センサー素子を作製した。
【0080】
作製したセンサー素子を用いて、アセトン、エタノール、トルエン、オクタンをそれぞれ1000ppmずつ導入した場合の周波数変化を実施例2と同様の方法で周波数を測定した。周波数変化を図7に示す。また、複合化前後の効果を比較するため、実施例2の試料2−1を用いたセンサー素子の周波数変化も図7に合わせて示す。図7に示す周波数変化は、感応膜の膜厚1μmあたりの周波数変化である。
【0081】
図7の周波数変化からKファクターを求めた結果を表2に示す。
【0082】
【表2】

【0083】
なお、Kファクターは空気中のガスや分子が、高分子等の吸着材料にどの程度溶け込むかを示す指数であって、式(2)により算出することができる。ここで、Mcvは膜中のチャンバーの重量濃度(g/cm)、fはガス吸着時の周波数、fは高分子膜成膜時の周波数、fは成膜前の水晶の周波数、ρは高分子膜の密度である。
Kファクターは、高分子膜とVOCとの組み合わせによって差異があり、Kファクターの値が大きいほど、感応膜の感度が良いことを表す。
【0084】
【数2】

【0085】
図7および表2より、複合材料からなる試料3−1は、アセトン、エタノール、トルエンに対する周波数変化が最も大きく、これらのガスに対して高い感度を有することがわかる。
試料3−1は、試料2−1と試料3−2を複合化させたものであるが、これらを単なる足し合わせた以上に周波数変化およびKファクターが増大している。
【0086】
これは、試料2−1のカリックスアレン誘導体では分子同士の相互作用が強く、吸着部位としてカリックスアレン誘導体が十分に機能していなかったが、複合材料ではPDMSの網状高分子の架橋点としてカリックスアレン誘導体が配置されることで、アセトンなどの極性分子に対する吸着サイトとして有効に機能するようになったためと考えられる。
また試料3−1は、ケトン分子であるアセトンに対しても高い感度を有することから、ケトン分子を対象とする感応材料として有用である。
オクタンに対しては、試料3−2のPDMSが最も周波数変化が大きい。これは非極性のPDMSでは、分子構造による双極子モーメントは極めて小さいため、ファンデルワールス力がガス吸着に対し支配的であるためである。
【実施例4】
【0087】
実施例3で作製した試料3−1からなるセンサー素子を用いて、実施例2と同様の方法でオクタンの導入と窒素の導入を繰り返して周波数変化を計測した。オクタンの導入量は、500ppm〜4000ppmの範囲で、500ppmずつ増加させた。オクタン導入による周波数変化を図8に示す。図8に示す周波数変化は、膜厚400nmの感応膜の周波数変化である。
図8より、濃度増加に伴い周波数がほぼ一定の割合で変化することから、導入ガスを再現性よく吸着、脱離することが確認できた。
【実施例5】
【0088】
実施例3と同様の方法でSAMsを形成した基板を用いて、[化1]のmが4、Rが2−エチル−ヘキシル基、Xがアリル基であるカリックスアレン誘導体とPDMSとを複合化したカリックスアレン系複合材料(試料5−1)を感応膜とするセンサー素子を作製し、アセトン、エタノール、トルエン、オクタンをそれぞれ1000ppmずつ導入した場合の周波数変化を実施例2と同様の方法で測定した。測定した周波数変化の最大値を表3に示す。
【0089】
実施例3と同様の方法でSAMsを形成した基板を用いて、実施例2の試料2−2のカリックスアレン誘導体とPDMSとを複合化したカリックスアレン系複合材料(試料5−2)を感応膜とするセンサー素子を作製し、アセトン、エタノール、トルエン、オクタンをそれぞれ1000ppmずつ導入した場合の周波数変化を実施例2と同様の方法で測定した。測定した周波数変化の最大値を表3に示す。
【0090】
比較のため、Rがエステル基のカリックスアレン系複合材料を感応膜とする実施例3の試料3−1、PDMS単一の感応膜である試料3−2についても、周波数変化の最大値を表3に示す。
表3に示した周波数変化の最大値は、いずれも感応膜の膜厚1μmあたりの周波数変化の最大値である。また、周波数変化の最大値が大きいほど、ガスの吸着量が多いことを示す。
【0091】
【表3】

【0092】
表3より次のことがわかった。
アルキル基である2−エチル−ヘキシル基をRとして導入した試料5−1は、アルキルであるオクタンに対しての吸着量が最も多い。Rとしてアルキル基を導入すると、アルキルに対する感度が向上する。
Rがヒドロキシル基(水素原子)の複合材料である試料5−2は、複合化前の図5の試料2−2に比べて、極性分子であるアセトン、エタノールに対しての吸着量が増えた。PDMSと複合化することによって、感度が向上することが確認できた。
【0093】
上記実施の形態では、Rとしてエステル基含有アルキル基、アミド基含有アルケニル基、Xとしてアリル基、t−ブチル基のカリックスアレン誘導体を用いた。またRとしてアルキル基、エステル基含有アルキル基、Xとしてアリル基を用いたカリックスアレン系複合材料を用いた。しかし、これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0094】
1…センサー素子、2…基板、3…感応膜、4…金電極、20…センサー、23…発振器、24…端子、25…周波数検出カウンタ、26…周波数変化検出部、26a…検出手段、26b…認識手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記[化1]で表わされることを特徴とする感応材料用カリックスアレン誘導体。
【化1】

(上記[化1]において、mは4〜8から選択される整数、Xは炭素数1〜10の鎖式炭化水素基、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、あるいはエステル基、カルボキシル基、シアノ基、アミド基の少なくとも1種の官能基と結合してなる炭素数1〜20の炭化水素基から選択されるいずれか1種または2種以上を表す。ただし、X、Rの少なくとも一方は末端に二重結合を有する。)
【請求項2】
下記[化2]で表わされるカリックスアレン誘導体と、ポリジメチルシロキサンと、が複合化されたことを特徴とするカリックスアレン系複合材料。
【化2】

(上記[化2]において、mは4〜8から選択される整数、Xは炭素数1〜10の鎖式炭化水素基、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、あるいはエステル基、カルボキシル基、シアノ基、アミド基の少なくとも1種の官能基と結合してなる炭素数1〜20の炭化水素基、から選択されるいずれか1種または2種以上を表す。)
【請求項3】
前記カリックスアレン系複合材料が、下記[化3]で表わされることを特徴とする請求項2に記載のカリックスアレン系複合材料。
【化3】

(上記[化3]において、mは4〜8から選択される整数、Xは炭素数1〜10の鎖式炭化水素基、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、あるいはエステル基、カルボキシル基、シアノ基、アミド基の少なくとも1種の官能基と結合してなる炭素数1〜20の炭化水素基、から選択されるいずれか1種または2種以上を表す。nは1〜500から選択される数)
【請求項4】
前記カリックスアレン系複合材料が、下記[化4]で表わされることを特徴とする請求項2に記載のカリックスアレン系複合材料。
【化4】

(上記[化4]において、mは4〜8から選択される整数、Xは炭素数1〜10の鎖式炭化水素基、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、あるいはエステル基、カルボキシル基、シアノ基、アミド基の少なくとも1種の官能基と結合してなる炭素数1〜20の炭化水素基、から選択されるいずれか1種または2種以上を表す。nは1〜500から選択される数)
【請求項5】
基板の上に感応膜が形成されてなるセンサー素子であって、前記感応膜が、下記[化5]で表わされるカリックスアレン誘導体と、ポリジメチルシロキサンと、が複合化されたカリックスアレン系複合材料からなることを特徴とするセンサー素子。
【化5】

(上記[化5]において、mは4〜8から選択される整数、Xは炭素数1〜10の鎖式炭化水素基、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、あるいはエステル基、カルボキシル基、シアノ基、アミド基の少なくとも1種の官能基と結合してなる炭素数1〜20の炭化水素基、から選択されるいずれか1種または2種以上を表す。)
【請求項6】
前記基板が、金からなる、またはSi系材料の表面に金薄膜を形成したものからなることを特徴とする請求項5に記載のセンサー素子。
【請求項7】
前記カリックスアレン系複合材料と前記基板とが自己組織化単分子膜を介して結合されてなることを特徴とする請求項5または6に記載のセンサー素子。
【請求項8】
基板の上に、[化6]で表わされるカリックスアレン誘導体とポリジメチルシロキサンとが複合化されたカリックスアレン系複合材料からなる感応膜が形成されてなるセンサー素子と、前記感応膜によりターゲット物質を吸着し、吸着した前記ターゲット物質による前記センサー素子の物理的な変化を検出する検出手段と、を有することを特徴とするセンサー。
【化6】

(上記[化6]において、mは4〜8から選択される整数、Xは炭素数1〜10の鎖式炭化水素基、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、あるいはエステル基、カルボキシル基、シアノ基、アミド基の少なくとも1種の官能基と結合してなる炭素数1〜20の炭化水素基、から選択されるいずれか1種または2種以上を表す。)
【請求項9】
前記検出手段が、吸着された前記ターゲット物質による質量変化を振動型質量検出センサーの周波数変化として検出する検出手段であることを特徴とする請求項8に記載のセンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−84487(P2011−84487A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236670(P2009−236670)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、文部科学省、地域科学技術振興事業委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】