説明

感染及び炎症の造影用強化シンチグラフィーイメージング剤

本発明は、哺乳動物における感染および炎症を局在化するために使用できる強化シンチグラフィーイメージング剤を記載する。特に、本発明は、多硫酸化グリカンまたはその混合物の組成物である放射性標識付けした、好ましくはテクネチウム- 99mで標識付けしたシンチグラフィーイメージング剤および放射性標識結合成分に共有結合的に連結した多塩基ペプチドを含む化合物に関する。そのような組成物を製造するための方法およびキット、ならびに哺乳動物体内において感染および炎症部分を造影するためにそのような組成物を使用するための方法もまた提供される。強化イメージング剤は、多硫酸化グリカンへの改良された結合親和力、より良好な生体内分布および感染取込を示し、かくて改良された造影結果を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に哺乳動物体内における、たとえば、感染または炎症の局在化のために有用な試薬、組成物、およびシンチグラフィーイメージング剤に関する。特に本発明は、少なくとも4個のアルギニン残基およびペプチドに共有結合した放射性標識結合成分を有する多塩基ペプチドを含む試薬、組成物、および強化造影剤に関し、該組成物はさらにテクネチウム-99m(Tc-99m)のような放射性同位体で随意に放射性標識付けされたデルマタン硫酸およびデルマタン二硫酸のような多硫酸化グリカンを含む。強化イメージング剤は、多硫酸化グリカンに対する増大された結合親和力および改良された感染取込を伴うより良い生体内分布を示し、かくしてより良い造影結果をもたらす。本発明にはまた、そのような試薬及び組成物を製造するための方法およびキット、ならびに特に哺乳動物体内における感染および炎症部位を撮像するための前記試薬、組成物、およびイメージング剤を使用する方法も含まれる。
【背景技術】
【0002】
焦点のまたは局在化した感染及び炎症部位の場所および/または程度を決定できることが臨床的に必要である。数多くの場合に、通常の診断方法(X線、身体検査、CTおよび超音波診断)では、膿瘍のようなある種の部位を特定できない。生検は頼りになるであろうが、少なくとも既知の場所の膿瘍に対する起因病原菌を同定するために診断的に適切となるまでは、そのような侵襲的手段を避けることが好ましい。問題の迅速な局在化および鑑別が有効な治療的介入にとり重要なので、感染部位を鑑別することは大切である。
【0003】
核医学分野において、病的部位に特異的に蓄積する投与放射性標識トレーサー化合物(すなわち放射性トレーサーまたは放射性医薬品)の体内分布を造影することにより、ある種の病的状態は局在化でき、またはそのような状態の程度は決定できる。67Ga、99mTc(Tc-99m)、111In、123I、125I、169Ybおよび186Reを含む、多種類の放射性核種は放射性造影に有用であることが知られている。
【0004】
しかしながら、膿瘍は数多くの可能性のある病原菌のいずれか一つにより惹起されるであろうから、特定の病原菌に対して特異的な放射性トレーサーの適用範囲は限定的であろう。一方、感染は殆ど不変的に、組織の損傷に対する身体の一般的な反応である炎症を伴う。それ故に、炎症部位に対して特異的な放射性トレーサーは、いかなる病原菌により生じた感染部位をも局在化するのに有用であろうし、同様に他の炎症部位を局在化するのにも有用であろう。
【0005】
炎症に伴う主要な現象の一つは、炎症部位での白血球、通常単球および好中球、の局在化である。白血球に対し特異的な放射性トレーサーは、局在化した感染部位において白血球を検出するために有用であろう。しかしながら、白血球のたとえば111Inを用いた直接的放射性標識付けは、数多くの技術的工程を含み、最適な結果を得るために注射から造影までに12から48時間を要する。一方Tc-99mで標識付けした白血球がこの遅延期間を短縮するために使用されていたが(たとえば、Vorne et al., 1989, J. Nucl. Med. 30; 1332-1336参照)、体外での標識付けが依然必要とされる。好ましい放射性トレーサーは、全血の白血球に標識を付けるかまたは身体から自己血成分を取出して操作する必要のないものであろう。
【0006】
白血球の放射性標識付けに対する代替的手法の一つは、高い親和力で白血球に特異的に結合する放射性標識付けしたペプチドの使用である。この手法は、白血球の取出しと標識付けに固有な問題を回避する。白血球に結合することが知られているペプチドの一種は、走化性ペプチドである。これらのペプチドは、高い親和力で白血球の表面の受容体に結合する。広範囲にわたり研究され、高い親和力で白血球に結合することが示されている一つの特別のペプチドは、血小板第4因子である。
【0007】
血小板第4因子(PF4)は、70個のアミノ酸からなる天然由来の走化性ペプチドであり、また走化性があり、生体内で感染および炎症部位に関係していることが既知の細胞型である好中球および単球に結合することが先行技術において知られている(Deuel et al., 1981, Proc. Natl. Acad. Sci., 78:4584-4587)。PF4は、脱顆粒反応で血小板から放出される7、8kDaのポリペプチドであり、ヘパリンを中和するのを助ける。PF4のアミノ酸配列は決定されている(Deuel et al., 1977, Proc. Natl. Acad. Sci., 74:2256-2258)。
【0008】
PF4のC-末端は、高親和力でヘパリンに結合する(Loscalzo et al., 1985, Arch. Biochem. Biophys., 246:446-455)。さらに、PF4のC-末端は、より高い単球走化性能を有する(Ostenman et al., 1982, Biochem. Biophys. Res. Comm. 107:130-135)。Holt & Niewiarowski, 1985, Sem. Hematol. 22:151-163は、血小板第4因子を含む血小板α-顆粒蛋白質の生化学を展望し、Goldman et al., 1985, Immunol. 54:163-171は、fMLF受容体仲介取込は、人の好中球において血小板第4因子およびそのカルボキシ末端ドデカペプチドにより阻害されることを示している。
【0009】
Thorbecke & Zucker, 1989, EP Publ. No. EP-A-0 301 458は、免疫調整量の血小板第4因子またはそれから誘導したペプチドの投与を含む免疫応答を調整するための組成物および方法を開示している。
【0010】
放射性標識付きポリペプチドに対するキレート剤の使用ならびにTc-99mを用いるペプチドおよびポリペプチドの標識方法は、先行技術で既知であり、米国特許No.5,654,272、米国特許No.5,443,815、米国特許No.5,720,934、米国特許No.5,508,020、米国特許No. 5,552,525、米国特許No.5,645,815、米国特許No.5,561,220、および特許協力条約国際出願PCT/US92/10716、PCT/US93/02320、およびPCT/US93/04794に開示されており、それらは本発明に参照として取入れられている。
【0011】
P483は、PF4のヘパリン結合トリデカペプチドC-末端の23-アミノ酸ペプチド誘導体である。P483のアミノ酸配列を、イタリック表示のPF4模擬配列と共に下記に示す:
アセチル-LysLysLysLysLysCysGlyCysGlyGlyProLeuTyrLysLysIleIleLysLysLeuLeuGluSer (配列番号:1)。
【0012】
P483は、Tc-99mの結合のためのCGC配列(肉太活字で表示)を含み、および5個のリジン残基を含むアセチル化N-末端を含む。PF4同様、P483はまたヘパリンに結合してペプチド-ヘパリン錯体(PHC)、P483H、を形成する。P483H錯体を含む組成物および造影用途でのTc-99m標識組成物(Tc-99m P483H)の使用法は、米国特許No.6,019,958に開示されている。
しかしながら、より高い画像コントラストのようなより良い造影結果を提供出来るシンチグラフィーイメージング剤に対する需要は依然として存在する。
【発明の開示】
【0013】
本発明は、放射性標識試薬および多硫酸化グリカンを含む組成物である強化シンチグラフィーイメージング剤を提供する。本発明の組成物は、生体内の炎症のような病理学的部位に蓄積する。本発明の組成物に含まれ、その調製に有用である試薬は、好ましくはペプチドのお陰で、感染または炎症部位に特異的に局在化できるペプチドを含む多塩基化合物を含むものである。その時に前記ペプチドは、放射性標識結合、好ましくはテクネチウム-99m結合、部分に共有結合している。
【0014】
ペプチドを含む放射性標識多塩基化合物および本発明により提供される如き多硫酸化グリカンの組合せにより、生体内で感染および炎症の焦点部位の高品質のシンチグラフィーイメージの取得が有利に可能となる。先行技術の薬品または放射性標識多塩基化合物単独の投与に比較して、この組合せの投与は、感染部位でのTc-99mのような放射性同位体の放射性信号の局在化度をより大きくする。
【0015】
今や驚くべきことに見出したのは、本発明に従う多塩基ペプチド化合物、たとえばPF4の切断片、またはリジン残基に加えてもしくは代わりにアルギニン残基を有するP483は、多硫酸化グリカンへのペプチドの強化された結合を生じる、ヘパリンおよび他の多硫酸化グリカンへの増強された結合親和力を示し、およびそれらの組合せ投与は、より好ましい生体内分布およびより高い画像コントラストを導くことである。さらに、より高度に、より均一に硫酸化した多硫酸化グリカンでヘパリンを交換すると、より一層好ましい生体内分布およびより高い画像コントラスト値を生じる。
【0016】
従って、本発明は、生体内の炎症部位に蓄積する放射性標識付けされたおよび標識付けされない組成物、試薬および前記組成物の調製法、ならびに哺乳動物体内での感染および炎症部位を造影するための前記放射性標識組成物の使用法を提供する。
【0017】
本発明の第一の観点において、(a) 少なくとも4個のアルギニン残基を含むペプチドを含む多塩基化合物、および(b) 該多塩基化合物に共有結合的に結びついた放射線標識結合成分を含む試薬が提供され、ここに該試薬は体内の病状部位に蓄積できる。該多塩基化合物が少なくとも4個のアルギニン残基を含む前記ペプチドである試薬が好ましい。本発明に従う組成物は、好ましくはここに含まれるペプチドのお陰で、体内の病状部位に蓄積できる。特に好ましい具体例において、該組成物は炎症または感染部位に蓄積できる。すなわち、前記組成物は白血球に、好ましくは単球および好中球に、最も好ましくは生体内の好中球に結合するであろう。
【0018】
本発明の目的のために、述語「生体内の感染または炎症部位での蓄積」は、本発明の組成物が感染または炎症部位にここに開示した如き組成物から調製された蓄積した放射性標識錯体をγシンチグラフィーにより検出できるような方法で、哺乳動物の体内の感染または炎症部位に蓄積出来ることを意味することを意図している。
【0019】
本発明の各多塩基ペプチド含有具体例は、アミノ酸配列を含む。本発明に使用されている如き述語アミノ酸は、天然由来であれ合成であれ、全てのL-およびD-アミノ酸を含むことを意図する。好ましい具体例において、該アミノ酸は天然由来のL-アミノ酸である。
好ましくは、ペプチドは約5〜約100個のアミノ酸を有する。本発明の好ましい具体例において前記試薬はペプチドを含み、その時該ペプチドは、人の血小板第4因子の約5〜70個の、好ましくは約50、40、30、20、15、14、13、12、11、10、または9個の隣接アミノ酸に相当する、または少なくとも40、50、60、70、80、90、95、96、97、98もしくは99%の前記配列に対する配列同一性を有する、アミノ酸配列を含む。隣接アミノ酸の配列は、好ましくは人の血小板第4因子(PF4)のC-末端由来である。
【0020】
本発明の実施に有用なペプチドは、哺乳動物の体内において感染および炎症部位に蓄積できるものを含む。そのようなペプチドおよび試薬の例は後記実施例に提示されている。
本発明の多塩基化合物を含む強化シンチグラフィーイメージング剤は、特に多硫酸化グリカンをさらに含む組成物での投与時に、下記により詳細に説明する如く、アルギニン残基の存在の結果として強調造影を生じる。
【0021】
該ペプチドがPF4配列、またはその切断片もしくは類似体を含む具体例において、多塩基化合物の少なくとも4個のアルギニン残基は、人のPF4のアミノ酸配列の相当するリジン残基の置換を表すか、または人のPF4の前記配列に相当するアミノ酸配列への付加を表すであろう。好ましくは、アルギニン残基は、リジン残基の置換を表すが、付加および置換の如何なる組合せもまた本発明の観点内にある。
原則として、本発明の多塩基化合物は、如何なる数のアルギニン残基をも含むであろう。然しながら、少なくとも4個の、および好ましくは5個のもしくは6個の、より好ましくは7個もしくは8個の、ならびに最も好ましくは9個のアルギニン残基が本発明の試薬中に存在する。
【0022】
第2の観点において、本発明は、式Iの放射性標識結合成分に共有結合した多塩基化合物を含む試薬を提供する。
I
Cp(aa)Cp
ここで、Cpは、保護されたまたは保護されていないシステイン残基であり、そして(aa)は如何なるアミノ酸をも表す。好ましい具体例において、該アミノ酸はαアミノ酸および最も好ましくはグリシンである。
【0023】
Cpが保護されたシステインを表す場合、S-保護基は同一または異なるものであり、そして限定されるものではないが以下のものであろう:
-CH2-アリール (アリールは、フェニル、またはアルキルもしくはアルキルオキシ置換フェニル);
-CH-(アリール)2 (アリールは、フェニルまたはアルキルもしくはアルキルオキシ置換フェニル);
-C-(アリール)3 (アリールは、フェニルまたはアルキルもしくはアルキルオキシ置換フェニル);
-CH2-(4-メトキシフェニル);
-CH-(4-ピリジル)(フェニル) 2
【0024】
-C(CH3) 3;
-9-フェニルフルオレニル;
-CH2-NHCOR (Rは無置換もしくは置換アルキルまたはアリール);
-CH2-NHCOR (Rは1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、フェニル、または低級アルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、カルボキシもしくは低級アルコキシカルボニルを有するフェニル置換体);
-CH2-NHCOOR (Rは無置換もしくは置換アルキルまたはアリール);
-CONHR (Rは無置換もしくは置換アルキルまたはアリール);
-CH2-S-CH2-フェニル。
【0025】
「(pgp)S」と指定されたシステイン-硫黄保護基、たとえば本発明のビスアミノ、ビスチオール成分を含む放射性標識結合成分はまた、上表の保護基により示される。
好ましい保護基は、式-CH2-NHCORを有する。ここにRは、低級アルキル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、フェニル、または低級アルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、カルボキシ、もしくは低級アルコキシカルボニルを有するフェニル置換体である。
【0026】
述語「低級」アルキル、アルコキシ、カルボキシ、またはアルコキシカルボニルおよびその他同様のものを用いる時に、「低級」は、明細書および特許請求の範囲を通じて、夫々の残基に1〜6個の炭素原子を含むことを意味すると理解すべきである。好ましい具体例において、低級アルキルは、CH3またはC2H5基である。従って、最も好ましい保護基はアセトアミドメチル基である。
【0027】
本発明の試薬の放射性標識結合成分の他の好ましい型は、下式を有する成分を含む単一のチオール基である。
II.
A-CZ(B)-[C(R1R2)]n-X
ここにAは、H、HOOC、H2NOC、(ペプチド)-NHOC、(ペプチド)-OOCまたはR4であり;BはH、SH、-NHR3、-N(R3)-(ペプチド)、またはR4であり;XはH、SH、-NHR3、-N(R3)-(ペプチド)、またはR4であり;
ZはHまたはR4であり;R1,R2,R3および R4は独立にHあるいは低級直鎖もしくは分枝鎖または環状アルキルであり;nは0、1または2であり;そして
【0028】
(1) Bが-NHR3または-N(R3)-(ペプチド) である場合;XはSHであり、そしてnは1または2であり;
(2)Xが-NHR3または-N(R3)-(ペプチド) である場合;BはSHであり、そしてnは1または2であり;
(3) BがHまたはR4である場合、AはHOOC、H2NOC、(ペプチド)-NHOC、または(ペプチド)-OOCであり、XはSHであり、およびnは0または1であり;
【0029】
(4) AがHまたはR4である場合、BはSHであり、Xは-NHR3または-N(R3)-(ペプチド) であり;
(5) XがSHである場合、Bは-NHR3または、-N(R3)-(ペプチド) であり;
(6) XがHまたはR4である場合、AはHOOC、H2NOC、(ペプチド)-NHOC、または(ペプチド)-OOCであり;そしてBはSHであり;
(7) Zがメチルである場合、Xはメチル、AはHOOC、H2NOC、(ペプチド)-NHOC、または(ペプチド)-OOCであり、BはSHであり、そしてnは0であり;そして
チオール成分は還元型である。
【0030】
本発明の試薬のさらに別の好ましい放射性標識部分は、下式の一つを有する:
【化1】

ここで、XはHまたは保護基であり、そして(アミノ酸)は如何なるアミノ酸をも示す;あるいは
【0031】
【化2】

【0032】
であり、ここで各R5は独立にH、低級アルキル、フェニルまたは低級アルキルもしくは低級アルコキシで置換されたフェニルであり、そして各(pgp)Sは独立にチオール保護基またはHであり;m、nおよびpは、独立に2または3であり、そしてAは直鎖もしくは環状低級アルキル、アリール、ヘテロ環、これらの組合せもしくは置換誘導体である;あるいは
【0033】
【化3】

【0034】
であり、ここに各R5は独立にH、低級アルキル、フェニルまたは低級アルキルもしくは低級アルコキシで置換されたフェニルであり、そして各(pgp)Sは独立にチオール保護基またはHであり;m、nおよびpは、独立に1、2または3であり、そしてAは直鎖もしくは環状低級アルキル、アリール、ヘテロ環、またはこれらの組合せもしくは置換誘導体であり、VはHまたは-CO-ペプチドであり、R6はHまたはペプチドであり;そしてVがHの場合、R6はペプチドであり、R6がHの場合、Vは-CO−ペプチドである。
【0035】
本発明の幾つかの好ましい具体例において、上述の放射性標識結合成分は、約1〜約20個のアミノ酸を通して多塩基化合物に共有結合するであろう。該多塩基化合物および放射性標識結合成分に共有結合するための特に好ましいアミノ酸は、グリシンであるが、一般には如何なるアミノ酸も使用されるであろう。
【0036】
さらに別の好ましい具体例において、前記ペプチドの少なくとも4個、好ましくは5、6、7、8、そして最も好ましくは、試薬はP483のアミノ酸配列、すなわち、
KKKKKCGCGGPLYKKIIKKLLES (配列番号:2)
を含む。但し、9個のリジン残基がアルギニン残基により置換されている。
【0037】
本発明の特に適切な具体例は、多塩基化合物および放射性標識結合成分が下記からなる基から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを形成するために一緒に共有結合している試薬を含む:
アセチル-RRRRRCGCGGPLYRRIIRRLLES (配列番号:3);
アセチル-RRRRRCGCGGPLYKKIIKKLLES (配列番号:4);および
アセチル-KKKKKCGCGGPLYRRIIRRLLES (配列番号:5)。
【0038】
本発明の他の観点において、本発明の試薬は多価の結合成分をも含むであろうし、かくして、(a)上述の如く、同一または異なるであろう、少なくとも2個の多塩基化合物、(b)少なくとも1個の多塩基化合物に共有結合した上述の如き少なくとも1個の放射性標識結合成分、および(c)多塩基化合物、放射性標識結合成分またはその両者に共有結合した多価リンカー成分を含む多価試薬をもたらす。その時に多重結合の多価試薬の分子量は約20,000Da未満である。
【0039】
多塩基化合物または放射性標識結合成分に共有結合可能な少なくとも2個のリンカー官能基を含む多価結合成分は、本発明のこの観点の好ましい具体例の中にある。その時好ましくはリンカー官能基の少なくとも2個は同一である。随意に、リンカー官能基は、1級または2級アミン、水酸基、カルボン酸基またはチオール反応性基であろう。その時該チオール反応性基はマレイミド基ならびにクロロアセチル、ブロモアセチルおよびイオドアセチル基から選択される。
【0040】
本発明のこの観点において最も好ましいものは多重結合試薬であり、その場合、多価リンカーは、ビス-スクシンイミジルメチルエーテル(BSME)、4-(2,2-ジメチルアセチル)安息香酸(DMBA)、トリス(スクシンイミジルエチル)アミン(TSEA)、ビス-スクシンイミドヘキサン(BSH)、4-(O-H2CO-Gly-Gly-Cys.アミド)アセトフェノン(ETAC)、トリス(アセトアミドエチル)アミン(TAEA)、ビス(アセトアミドメチル)アミン、ビス(アセトアミドエチル)アミン、α,ε-ビス(アセチル)リジン、リジン、1,8-ビス-アセトアミド-3,6-ジオキサオクタン、または上述の多価リンカーのいずれか1個の誘導体から選択される。
【0041】
上述の試薬は、本発明の強調イメージング剤を調製するために有用な化合物である。
本発明のさらに別の観点において、(a)上述の好ましい具体例の一つを代表するであろう試薬のいずれかを含む、上述の如き試薬、(b)少なくとも約1000Daの分子量を有する多硫酸化グリカンを含む組成物が提供される。その時該組成物は哺乳動物の体内で感染および/または炎症のような病状部位に蓄積できる。
【0042】
本発明のこの観点において特に適切な多硫酸化グリカンは、ヘパリンまたはヘパラン硫酸のような他の既知の多硫酸化グリカンもまた使用されるであろうが、デキストラン硫酸、コンドロインチン硫酸、デルマタン硫酸、デルマタン二硫酸、またはこれらのいずれかの誘導体もしくは混合物を含む。本発明の組成物中の特に好ましい多硫酸化グリカンは、デルマタン硫酸またはデルマタン二硫酸のような一定のカルボキシル対硫酸塩比を有するこれらの多硫酸化グリカンである。
【0043】
ヘパリンは、2-デオキシ-2-アミノグルコピラノースおよびヘキスロン酸の直鎖高分子である。ヘパリンナトリウムUSPは、豚の腸管粘膜から単離され、種々の硫酸化度を有する5〜40kDaの範囲の分子量分布を示す。ヘパリンの陰性に荷電した硫酸塩基は、PF4(およびP483)上の陽性に荷電したリジン残基に結合することが報告されている。
【0044】
ヘパリンと対照的に、デルマタン硫酸(DS)は、β-イズロン酸およびN-アセチル-ガラクトサミン-4-硫酸からなる同一の二糖類部分の反復単位からなる直鎖同質高分子である。デルマタン硫酸は、豚の腸管粘膜からのヘパリン精製時の大分子量画分として精製される。DSにおける硫酸化度は、二糖類単位当たりただ一個の硫酸塩(カルボキシル対硫酸塩比=1.4)を含むので、首尾一貫している。デルマタン二硫酸(DDS)は、DSの部位特異的な過硫酸化誘導体である。DDSにおいて、N-アセチル-β-ベータ-ガラクトサミン-4-硫酸の6位もまた硫酸化される。DDSにおけるカルボキシル対硫酸塩比は1.7であり、DDSはDSの構造的/生理化学均質性を維持している。DSおよびDDSの両者は、P483および本発明の多塩基ペプチドに対して高親和力で結合して、いわゆる蛋白グリカン錯体(PGC)を形成する。
【0045】
多硫酸化グリカンに対する多塩基化合物の適正比(重量/重量)の測定は、当業者の技術の範囲内にある。特に好ましいのは、0.1:1〜20:1の範囲であり、好ましくは0.2:1〜10:1、0.5:1〜5:1、または1:1〜2:1、および最も好ましくは大凡または正確に1.45:1または1.5:1である。
本発明の組成物は、生体内の炎症部位に蓄積し、Tc-99mのような適切な放射性同位体を用いて標識付けした時に、シンチグラフィーイメージを得るために有用である。
【0046】
本発明のさらに別の観点において、本発明の組成物は、たとえば感染筋肉のような造影部位への特異的蓄積、および同時に通常の筋肉または血液のような非感染領域における低濃度、により特徴付けられる有利な生体内分布を達成できる。本発明の放射性標識組成物の生体内分布は、画像コントラスト比により表現されるであろう。画像コントラスト比は、Imax(感染筋肉)/ Imax (対照筋肉)比、以後Imax:Cとして言及される。すなわち、対照すなわち非感染筋肉標本、に蓄積された最大放射能強度に対する感染筋肉標本に蓄積された最大放射能強度、として決定できるであろう。
【0047】
放射能強度は、組織/血液のg当りの注射投与量%、すなわち%ID/g、として測定される。Imax値(およびIavg値、下記参照)の測定のために、組織または血液標本は、同一寸法/重量に6分画され、各6標本の夫々の放射能強度がカウントされる。最高の放射能強度を有する標本がImax値のために使用される(全6標本の平均値はIavgのために使用された)。Imax(およびIavg)値は、%ID/gとして表される。
【0048】
あるいは、画像コントラスト比は、以後Imax:Bとして言及される、Imax(感染筋肉)/ Imax (血液)比、すなわち、血液中に蓄積された最大放射能強度に対する感染筋肉中に蓄積された最大放射能強度、として測定できる。また放射能強度は、組織/血液のg当りの注射投与量の%、すなわち%ID/g、として測定される。画像コントラスト比の測定および、本発明の幾つかの具体例のための結果を実施例に記載する。
本発明の好ましい組成物は、組成物の試薬がTc-99mで標識付けされ、かつ多硫酸化グリカンと共に投与される時に、ここに記載された(実施例5から8参照) 25より大の、好ましくは40より大の、最も好ましくは60より大の、ウサギ注射モデルにおける大腸菌により感染された筋肉組織と非感染筋肉標本の間の画像コントラスト比Imax:Cを達成出来る。
【0049】
あるいは、本発明の好ましい組成物は、組成物の試薬がTc-99mで標識付けされ、かつ多硫酸化グリカンと共に投与される時に、ここに記載された(実施例5から8参照) 3より大の、好ましくは、4、5、6、7、または8より大の、および最も好ましくは9より大の、ウサギ注射モデルにおける大腸菌により感染された筋肉組織と末端血の間の画像コントラスト比Imax:Bを達成出来る。
【0050】
本発明のさらに別の観点において、本発明はまた、本発明の上記記載のいずれかの組成物および放射性標識結合成分経由で組成物の試薬に複合した放射性同位体を含むシンチグラフィーイメージング剤をも提供する。本発明のイメージング剤は、病状、たとえば生体内の炎症または感染、の部位に特異的に結合する。放射性標識多塩基ペプチド含有化合物およびデルマタン硫酸のような多硫酸化グリカンの組合せは、感染および炎症部位での改善されたシンチグラフィーイメージの取得を可能にする。
【0051】
他の放射性同位体、たとえば、フッ素18、ガリウム67、ガリウム68、インジウム111、沃素123、沃素125、イッテルビウム169、またはレニウム186もまた本発明の試薬を標識付けるために使用されるであろうが、放射性標識は好ましくはテクネチウム99mである。
この核および放射性性質ゆえこの同位体はシンチグラフィーイメージング剤の理想的な成分となるので、Tc-99mでの標識付けの可能性は本発明の利点である。該同位体は、140keVの単一光エネルギーおよび約6時間の放射線半減期を有し、Mo- 99mTc発生機から容易に入手される(Pinkerton et al., 1985, Journal of Chemical Education, 62:965-973)。 先行技術で既知の他の放射線核種は、より長い有効半減期を有するかまたは有毒であろう。
【0052】
これらの放射性標識付けした、ことにTc-99m標識付けした試薬の投与は、デルマタン硫酸のような多硫酸化グリカンとの組合せにおいて、感染部位での放射性信号のより良い局在度、より良い生体内分布、および画像コントラストをもたらす。かくて、得られるシンチグラフィーイメージは、先行技術で既知のペプチドを用いて得られるイメージに比してより優れている。
【0053】
別の観点において、上記試薬、組成物または放射性標識シンチグラフィーイメージング剤を含む製薬組成物および1個以上の製薬的に受容できる担体もまた本発明により提供される。試薬、組成物、放射性標識付けシンチグラフィーイメージング剤、または製薬組成物もまた哺乳動物体内での炎症または感染のような病状部位を撮像するために適切な診断用薬を調製するために使用される。
【0054】
本発明はまた試験管内での化学合成により、シンチグラフィーイメージング剤の試薬を調製するための方法を提供する。本発明の試薬のペプチドの具体例は、当業者に良く知られた、以下に記載の方法および手段を用いて化学的に合成可能である。好ましい具体例において、ペプチドは固相ペプチド合成により合成される(Fieldsら、固相ペプチド合成の原理と実際、Synthetic peptides, 2002, Oxford University Press)。
【0055】
本発明の放射性標識結合成分は、ペプチド合成中にペプチドを含む標的特異的多塩基化合物に共有結合的に付加されるであろう。ピコリン酸(Pic-)を含む具体例[たとえばPic-Gly-Cys(保護基)-]のために、放射性標識結合成分は、合成の最後の(すなわちアミノ末端)残基として合成され得る。さらに、ピコリン酸含有放射性標識結合成分はリジンのε-アミノ基に共有結合して、たとえば、αN(Fmoc)-Lys-εN[Pic-Gly-Cys(保護基)]を与え、これはペプチド鎖の如何なる位置にも組み入れられるであろう。この配列は、標的結合ペプチドへの組み込みを容易にするので特に有利である。
【0056】
同様に、ピコリルアミン(Pica)含有放射性標識結合成分[-Cys(保護基)-Gly-Pica]は、ペプチド鎖のカルボキシル末端に [-Cys(保護基)-Gly-]配列を含むことによりペプチド合成中に調製できる。樹脂からのペプチドの開裂後、ペプチドのカルボキシ末端は、活性化され、ピコリルアミンに結合される。この合成経路では、ピコリルアミンの接合中に反応性側鎖官能性が遮蔽(保護)され、反応しないことが必要である。
本発明は、これらの放射性標識結合成分(キレート化剤)の実質的にいかなる多塩基ペプチドへの組込みをも提供し、その結果本発明のシンチグラフィーイメージング剤組成物の放射性標識ペプチド成分をもたらす。
【0057】
本発明により提供される放射性標識錯体は、還元剤の存在下、好ましくはTc-99m過テクネチウム酸塩の形で、Tc-99mのような放射性核種と本発明の試薬を反応させることにより形成される。好ましい還元剤は、これらに限定されるものではないが、ジチオナイトイオン、錫イオン、および第一鉄イオンを含むし、または固相還元剤であろう。代替的に、錯体は本発明の試薬をテクネチウムの予め形成された不安定錯体および転移配位子として知られる別の化合物と反応させることにより形成される。このプロセスは、配位子交換として知られ、当業者に良く知られている。
【0058】
この不安定錯体は、たとえば酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、マンニトールのような転移配位子を用いて形成される。本発明に有用なTc-99m過テクネチウム酸塩の中に、ナトリウム塩のようなアルカリ金属塩またはアンモニウム塩もしくは低級アルキルアンモニウム塩が含まれる。Tc-99m過テクネチウム酸塩または予形成Tc-99m不安定錯体と本発明の試薬の反応は、水系媒質中室温で遂行できる。陰イオン錯体が水系媒質中で形成される時、放射性標識錯体は、適切な陽イオン、たとえばナトリウム陽イオン、アンモニウム陽イオン、モノ、ジ-、もしくはトリ-低級アルキルアミン陽イオン、または製薬的に受容できる如何なる陽イオン、との塩の形である。他の放射性標識物との錯体は同様に調製できる。
【0059】
本発明により提供される放射性標識付けシンチグラフィーイメージング剤は、適量の放射能強度を有して提供される。放射性錯体の形成において、1mL当り約0.01ミリキューリー(mCi)〜100mCiの濃度の放射能強度を含む溶液で放射性錯体を形成することが一般に好ましい。
本発明により提供される放射性標識試薬および多硫酸化グリカンを含むシンチグラフィーイメージング剤を含む組成物は、膿瘍および「不顕在」炎症部位を含む炎症部位を映像化するために使用できる。放射性標識組成物はまた、炎症性大腸疾患および関節炎のような疾患を含む組織虚血により惹起される炎症部位を映像化するためにも使用できる。
【0060】
本発明の放射性標識製剤組成物は、生理食塩水媒質のような静脈注射用のいずれかの通常の媒質で、または種々の臓器、病原性および本発明に従う同様のものを診断的に造影するための血漿媒質で、静脈注射で投与されるであろう。そのような媒質はまた、通常の製薬補助剤、たとえば浸透圧を調節するために製薬的に受容できる塩、緩衝剤、保存剤、および同様なもの、をも含む。好ましい媒質には、通常の生理食塩水および血漿がある。
【0061】
本発明に従って放射性標識組成物は、単一の単位注射用量で投与される。その時に試薬は錯体として、または製薬的に受容できる対イオンとの塩として提供される。一般に投与すべき単位用量は、約0.01mCi〜約100mCi、好ましくは、1mCi〜約20mCiの放射能強度を有する。単位用量で注射すべき組成物は、約0.01mLから約10mLである。Tc-99m標識組成物の静脈内投与後、生体内の臓器または病原性の造影は、僅か数分で起こりうる。然しながら、造影は、もし望むならば、患者に注射した数時間後またはさらにもっと後で行える。大抵の場合に、十分量の投与用量がシンチグラフィーイメージを撮るために約30分以内に造影領域に蓄積する。診断目的のシンチグラフィーイメージングの如何なる通常の方法も、本発明に従って利用可能である。
【0062】
本発明のさらに別の観点において、本発明のシンチグラフィーイメージング剤を調製するためのキットもまた提供される。該キットは、本発明の予定量の非標識試薬および該試薬を放射性核種、たとえばTc-99m、で標識付けするために十分な量の還元剤を含む第1の密封されたバイアル、ならびに予定量の本発明の多硫酸化グリカンを含む第2の密封されたバイアルを含む。本発明の放射性標識組成物は、放射性核種で第1の内容物を標識付けし、組成物の投与を準備するために第1のバイアルの内容物を第2のバイアルの内容物と混合することで製造される。代替的に適量の非標識試薬および多硫酸化グリカンは単一のバイアルに封入可能である。好ましい具体例において他の多硫酸化グリカンも使用されるであろうが、多硫酸化グリカンはデルマタン硫酸もしくはデルマタン二硫酸、またはそれらの誘導体もしくは混合物である。
【0063】
さらに別の観点において、本発明は生体内でγシンチグラフィーイメージを得ることにより哺乳動物体内における炎症および感染のような病状部位を造影するために、本発明の放射性標識付けした、好ましくはTc-99m標識付けしたシンチグラフィーイメージング剤の使用法を提供する。好ましい方法は、有効診断量の放射性標識シンチグラフィーイメージング剤または本発明の製薬組成物を投与し、および哺乳動物体内で検知すべき部位に局在化した放射性標識により放出されるγ放射能を検出する工程を含む。前述の試薬、組成物およびシンチグラフィーイメージング剤の全ては、前述の如き好ましい具体例を含む、本方法において使用されるであろう。
【0064】
全血を特異的に放射性標識付けし、および哺乳動物体内の炎症部位を造影するために放射性標識付けした全血を含む混合物を使用するための代替的な方法もまた提供される。本発明のこの観点において、該方法は混合物を形成するために、全血を好ましくは約1μg〜100mg量の多硫酸化グリカンと混合する工程を含む。放射性標識付けされた全血混合物は、次に約1μg〜100mg量の放射性標識付けの、好ましくはTc-99m標識付けした、放射性標識結合部に共有結合した多塩基成分を含む試薬である組成物を、最初の全血混合物に添加することにより形成される。あるいは、多硫酸化グリカンは先ず本発明の放射性標識付け試薬に添加され、次に生成組成物が放射性標識付けされた全血混合物を形成するために添加される。
【0065】
この放射性標識付けされた全血混合物は、生体内に炎症または感染部位を有するまたは有すると疑われている人のような動物に投与され、そしてここに記載の如く炎症または感染部位を局在化するために放射性信号が検出される。抗原性適合の、好ましくはしかし必ずしも自己由来でない、本発明の具体例において使用されるべきヘパリン化した全血に対する必要性は、当業者により理解されるであろう。本発明の方法が全血から白血球の分離および付随の広範囲にわたる全血の体外操作に対する必要性を無くすので、本方法は、先行技術で知られる白血球の標識法に対する優位性を提供する。
【0066】
これらの組成物を製造し、標識付けし、および使用する方法は、以下の実施例でより完全に例証される。本発明の特定の好ましい具体例は、以下の実施例のより詳細な叙述および特許請求の範囲から明白になろう。実施例は、例証により示されているが,それにより限定されるものでなく、かつ上述および下記に引用された全ての出願、特許、および文献の全ての開示は、ここに参照として取り入れられている。
【実施例】
【0067】
実施例1Tc-99m P483Hの調製
典型的に、Tc-99m P483(143μgのP483ペプチド)の調製用キットからのバイアルに、全容積1mLで約20mCiの過テクネチウム酸ナトリウムTc-99m注射溶液を再調製した。該バイアルを10分間沸騰水浴でインキュベート後、室温に冷却した。Lock-Flush(商標)注射器からの3USP単位のヘパリンナトリウムを、Tc-99m P483に添加し、混合物を穏やかに撹拌した。バイアルを室温で10分間貯蔵後、ITLCによる品質管理分析を実施した。
【0068】
実施例2Tc-99m P1827H、Tc-99m P1828H、Tc-99m P1829H、Tc-99m P2007H、およびTc-99m P2017Hの調製
0.9%生理食塩水(150μL容積)中の150μg部の各ペプチド(無水、対イオン無しのペプチド)をTc-99m P483調製用プラシボキットに添加した。0.85mLの約20mCiの過テクネチウム酸ナトリウムTc-99m注射溶液をバイアルに添加して全容積を1mLとした。各バイアルを沸騰水浴で10分間インキュベート後、室温に冷却した。Lock-Flush(商標)注射器からの3USP単位のヘパリンナトリウムを夫々のTc-99mペプチドに添加し、混合物を穏やかに撹拌した。バイアルを室温にて10分間貯蔵後、ITLCによる品質管理分析を実施した。
【0069】
実施例3Tc-99m ペプチドDSまたはDDSの調製
表2に示した如く、ヘパリンの代わりにDSまたはDDSをバイアルに添加したことを除けば、ペプチドは上述の如く放射性標識付けされた。簡単に言えば、DSまたはDDSの1mg/mL溶液は、固体DSまたはDDSを0.9%生理食塩水に溶解して調製した。適量のDSまたはDDSを添加後、生成Tc-99m ペプチド-DSまたは-DDS溶液を撹拌し、ITLCによる品質管理分析まで室温で10分間貯蔵した。
【0070】
実施例4品質管理分析
Tc-99m ペプチド-H、-DSまたは-DDS(Tc-99m PGC)の放射化学的純度を測定するための分析は、放射計ITLCにより実施した。3個の飽和パッド条片(2cm x 11cm)に約10μLの試料を染ませ、各条片を夫々IPW(イソプロパノール:水、1:1、v/v)、5% SDS溶液、およびAAA(3:3:1アセトニトリル:氷酢酸:(1M酢酸アンモニウム:メタノール 1:1))で展開した。溶媒が頂部まで溶出してから、条片をRf=0.75(IPW)、Rf=0.20(SDS)およびRf=0.50(AAA)で裁断した。放射化学的純度(RCP)は、IPWおよびSDS条片から計算したが、一方AAA条片からは分配比を得た。遊離Tc-99m過テクネチウム酸塩、Tc-99mエデト酸塩およびTc-99mグルコヘプトン酸は、「IPW」条片の頂部2cmに存在するが、一方ITLCの溶媒で移動しないTc-99m非ペプチド生成物(すなわち、「非可動」不純物)は、「S」条片の底部3cmに存在する。
【0071】
【数1】

【0072】
実施例5大腸菌感染法
大腸菌微生物は、微生物が成長期にあることを保証するために、羊の血の寒天プレート上で24時間周期で継代培養した。通常の成熟(2-2.5kg)ニュージーランドホワイト(NZW)兎の左ふくらはぎに、1mLの通常生理食塩水中に新しく培養した約108大腸菌微生物(1.35 OD@600nm)を投与する。細菌の接種を、Tc-99m ペプチド-H、-DSまたは-DDSの注射前18〜24時間に実施する。兎は活性感染の証明として、18〜24時間後に体温が上昇し、反応性の後脚収縮を示す。
【0073】
実施例6Tc-99m PGCの注射
500μL部のTc-99m PGC(Tc-99m ペプチド-H、-DSまたは-DDS)を、0.9%生理食塩水4.5mLに希釈する。各動物に対して、1mCi投与量を重量測定済み使い捨て注射器に取り、Tc-99m PGCの全量を耳に静脈注射する。兎は、造影時まで、平静に保たれる。
【0074】
実施例7造影プロトコール
Tc-99m PGCの注射4時間後に、動物にバルビツレート(Euthasol(商標))の致死的静脈注射を行う。各動物を、前面像のためのガンマカメラ(反転カメラ)の前に置く。低エネルギー/高効率コリメーターが好ましい。Tc-99m窓を、20%まで開く。画像収集プロトコールは、最大500キロカウントまたは最長300秒のいずれか早く到達する方を含む。
最終血液試料は、心穿刺により採取される。%注射投与量(%ID)およびg当り%注射投与量(%ID/g)の測定のために組織を集める。組織は、最終血、甲状腺、口蓋、唾液腺、肺、肝臓、腎臓、脾臓、消化管、膀胱、および排出尿(パッド)、感染筋肉(n=6x1g試料)ならびに対側(対照)筋肉(n=2x1g試料)を含む。
【0075】
実施例8生体内分布
生体内分布(表3参照)は、%IDおよび%ID/g、同様に画像コントラスト比Imax:B(感染筋肉対最終血)およびImax:C(感染筋肉対対照筋肉)として示される。
【0076】
実施例9リジン残基の効果
PF4誘導体ペプチドの多硫酸化グリカンへの結合は、リジンと硫酸塩基との間のイオン性相互作用の結果であるとされる。ヘパリンのP483への結合を増大するために、リジン残基はより高い親和力で多硫酸化グリカンに結合することが知られているアルギニン残基で置換された。
【0077】
Tc-99m PGC形成に対する一つの測定値は、分配比(DR、品質管理実施例参照)である。より高いDRは、ペプチドへの多硫酸化グリカンの強化された結合を示す。表2に示す如く、Tc-99m P483Hに対するDRは0.68であった。アルギニン残基でリジン残基を置換した時には、Tc-99m P483Hに対するよりもTc-99m P1827Hに対してより強いPGC錯体形成を示唆して、DRは著しく高かった(Tc-99m P1827Hに対するDR=0.86)。Tc-99m P1827Hに対する多硫酸化グリカンのより高い結合親和性は、もっと有利な生体内分布を生じる(表3)。
【0078】
感染取込は、Tc-99m P1827HおよびTc-99m P483Hに対して同程度であるが、画像コントラスト値Imax:CおよびImax:Bは、Tc-99m P483H(Imax:C=18およびImax:B=2.4)に対してよりもTc-99m P1827H(Imax:C=44およびImax: B=4.3)に対して著しく良かった。N-末端ペンタリジン配列中のリジン残基のみがアルギニン(P1828)で置換された場合またはPF4領域のリジンのみがアルギニン(P1829)で置換された場合には、Tc-99m P1827Hに対して著明な改善は無かった。かくて、Lys残基のArg残基での置換はより高い画像コントラスト値、より低い口蓋および甲状腺の蓄積をもたらし、ならびにより高い肺対肝臓比をもたらす(図1も参照)。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
実施例10キレート化剤の効果
P2007およびP2017は、Cys-Gly-Cysキレート化剤が夫々iso Cys-Gly-isoCysおよびPen-Gly-Cysで置換された2個のP483類似体である。これらのペプチドは、95%RCPより大となるまでTc-99mで放射性標識付けされ、およびヘパリンでPHCを形成した。Tc-99m P2007HおよびTc-99m P2017Hは、兎の感染モデルでTc-99m P483Hと比較した時(表3、図2)に、甲状腺での取込が低かった(有利)、しかし感染造影パラメーターは、Tc-99mキレート化剤のCys-Gly-CysからPen-Gly-CysまたはisoCys-Gly-isoCys配位子への変化(図2)により影響されなかった。
【0083】
実施例11多硫酸化グリカンの効果
ヘパリンは、変化し易い硫酸化グリカンの多分散混合物である。対照的に、デルマタン硫酸は、単一の反復二糖類単位を有する均質な直鎖多硫酸化グリカンである。デルマタン硫酸の硫酸化度は、ヘパリンに匹敵する。6-位置でDSを過硫酸化することにより、デルマタン二硫酸が形成される。デルマタン二硫酸は、DSの全ての構造的/生理化学的性質を有するが、二糖類当りDSの場合の1個ではなく2個の硫酸塩基を含む。リジン残基を含むペプチド(P483、P2007、P2017)またはアルギニン残基を含むペプチド(P1827、P1828、P1829)は、アミンまたはグアニジン対硫酸塩イオン性相互作用を介して多硫酸化グリカンに結合することが提案されている(Hilemann, R.E. et al. (1998) Bioassays, 20:156-167)。
【0084】
同様な結合相互作用は、DSおよびDDSとのこれらのペプチドに対して想像される。Tc-99m P483およびTc-99m P1827は、DSおよびDDSと錯体を形成する(表2)。 P1827は、これらのヘパリンの結合性質に対してP483類似体よりも高い親和性をもってDDSおよびDSと結合することが期待される。Tc-99m P1827DDS(DR=1.6)およびP1827DS(DR=10.5)は、PGCのより高度の形成を示唆して、P1827H(DR=0.86)より高いDRを示す。
【0085】
ヘパリン由来の多硫酸化グリカンからDSへ、さらにDDSへの変化は、感染取込および生体内分布の値に明白な差をもたらす。Tc-99m P483DSは、兎感染モデルにおけるTc-99m P483Hと同様な口蓋および甲状腺の%ID/gを示した(表3)。甲状腺取込は、Tc-99m P483と共にDDSを用いることで消失する。
【0086】
画像コントラスト比Imax:CおよびImax:Bは、多硫酸化グリカンがヘパリンに比較してDSまたはDDSのような良く規定され(表3)、均質および硫酸塩に富む実体である時に、劇的な増加を示す。コントラスト値Imax:Cは、Tc-99m P483のPGCに対して、H(Imax:C=18)からDS(Imax:C=40)へ、さらにDDS (Imax:C=56)へと徐々に増加する(図3)。Tc-99m P1827の場合には、コントラスト値Imax:Cもまた、H(Imax:C=4.3)からDS(Imax:C=165)へ、さらにDDS (Imax:C=101)へと増加した。
【0087】
感染取込およびコントラスト値は、さらにペプチド対多硫酸化グリカン比に依存する。ペプチドP1827および多硫酸化グリカンデルマタン硫酸に対して、2つの組成物間の最適な重量比が測定された。1.5:1(w/w)のP1827/DS比は、感染部位での最高の取込およびTc-99m P1827DSに対する最高のコントラスト値をもたらす(表4参照)。
【0088】
【表4】

【0089】
先行実施例は、先行実施例において使用されたものを本発明の一般的または特定的に記載された反応基質および/または操作条件で置き換えることにより、同様の成功を繰り返すことが出来る。
前述の記載から、当業者は本発明の本質的特徴を容易に確認でき、これらの精神および範囲から離れることなく、種々の使用方法および条件に適応するために種々の変更および修正を行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、大腸菌兎感染モデルにおけるTc-99m P1827Hに対するTc-99m P483Hの感染取込および生体内分布の比較を例証する。
【図2】図2は、大腸菌兎感染モデルにおけるTc-99m P483Hに対するTc-99m P2017Hの感染取込および生体内分布の比較を例証する。
【図3】図3は、大腸菌兎感染モデルにおけるTc-99m P483DSおよびTc-99m P483DDSに対するTc-99m P483Hの感染取込および生体内分布の比較を例証する。
【図4】図4は、大腸菌兎感染モデルにおけるTc-99m P1827DDSに対するTc-99m P1827Hの感染取込および生体内分布の比較を例証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
i) 少なくとも4個のアルギニン残基を含むペプチドを含む多塩基化合物、および
ii)該多塩基化合物に共有結合した放射性標識結合成分、
を含む試薬であって、該試薬が体内の病状部位に蓄積できることを特徴とする試薬。
【請求項2】
前記ペプチドが約5から約100個のアミノ酸を有する請求項1に記載の試薬。
【請求項3】
前記試薬が生体内の炎症または感染部位に蓄積され得る請求項1または請求項2に記載の試薬。
【請求項4】
前記ペプチドが約5〜70個の、好ましくは、約50、40、30、20、15、14、13、12、11、10、または9個の、人の血小板第4因子の隣接アミノ酸の配列に相当し、または前記配列に対し少なくとも40、50、60、70、80、90、95、96、97、98、もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項5】
隣接アミノ酸の前記配列が人の血小板第4因子(PF4)のC-末端由来である請求項4に記載の試薬。
【請求項6】
前記多塩基化合物の少なくとも4個のアルギニン残基が、人の血小板第4因子のアミノ酸配列中の対応するリジン残基の置換を表し、または人の血小板第4因子の前記配列に対応するアミノ酸配列への付加を表す請求項4または請求項5に記載の試薬。
【請求項7】
前記多塩基化合物が4〜9個、好ましくは5、6、7、8、そして最も好ましくは9個のアルギニン残基を含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項8】
前記放射性標識結合成分が
I
Cp(aa)Cp
(式中、Cpは保護されたまたは保護されていないチオール基を有するシステインであり、そして(aa)はアミノ酸である)
あるいは
II
単一のチオール成分を含む放射性標識結合成分、
〔ここで、前記単一のチオール成分は、下記の式:
A-CZ(B)-[C(R1R2)]n-X
を有し、ここで、
AはH、HOOC、H2NOC、(ペプチド)-NHOC、(ペプチド)-OOCまたはR4であり;
BはH、SH、-NHR3、-N(R3)-(ペプチド)、またはR4であり;
XはH、SH、-NHR3、-N(R3)-(ペプチド)、またはR4であり;
ZはHまたはR4であり;
R1,R2,R3および R4は独立にH又は低級直鎖もしくは分枝鎖または環状アルキル基であり;
nは0、1または2であり;そして
Bが-NHR3または-N(R3)-(ペプチド)である場合、XはSHであり、そしてnは1または2であり;
Xが-NHR3または-N(R3)-(ペプチド)である場合、BはSHであり、そしてnは1または2であり;
BがHまたはR4である場合、AはHOOC、H2NOC、(ペプチド)-NHOC、または(ペプチド)-OOCであり、XはSHであり、そしてnは0または1であり;
AがHまたはR4であり、かつBがSHである場合、Xは-NHR3または-N(R3)-(ペプチド) であり、そしてXがSHである場合、Bは-NHR3または-N(R3)-(ペプチド) であり;
XがHまたはR4である場合、AはHOOC、H2NOC、(ペプチド)-NHOC、または(ペプチド)-OOCでありそしてBはSHであり;
Zがメチルである場合、Xはメチルであり、AはHOOC、H2NOC、(ペプチド)-NHOC、または(ペプチド)-OOCであり、BはSHでありそしてnは0であり;そして
ここで、チオール成分は還元型である〕
【化1】

〔ここで、XはHまたは保護基であり、
(アミノ酸)はいかなるアミノ酸でもよい〕
あるいは
【化2】

〔ここで、XはHまたは保護基であり
(アミノ酸)はいかなるアミノ酸でもよい〕
または
V
【化3】

〔ここで、各R5は独立にH、低級アルキル、フェニルまたは低級アルキルもしくは低級アルコキシで置換されたフェニルであり;
各(pgp)Sは独立にチオール保護基またはHであり;
m、nおよびpは、独立に2または3であり;
Aは直鎖もしくは環状低級アルキル、アリール、ヘテロ環、あるいはこれらの組合せまたは置換誘導体である〕
あるいは
VI
【化4】

〔ここで、各R5は独立にH、低級アルキル、フェニル、または低級アルキルもしくは低級アルコキシで置換されたフェニルであり;
各(pgp)Sは独立にチオール保護基またはHであり;
m、nおよびpは、独立に1、2または3であり;
Aは直鎖もしくは環状低級アルキル、アリール、ヘテロ環、またはこれらの組合せもしくは置換誘導体であり;
VはHまたは-CO-ペプチドであり;そして
R6はHまたはペプチドであり;そして
VがHの場合、R6はペプチドであり、そしてR6がHの場合、Vは-CO−ペプチドである〕
ことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項9】
前記放射性標識結合成分がCp(aa)Cpであり、そしてCpは下式の保護基を有する保護されたシステインであり:
-CH2-NH-CO-R
ここで、Rは低級アルキル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、フェニル、または低級アルキル、水酸基、低級アルコキシ、カルボキシもしくは低級アルコキシカルボニルで置換されたフェニルである、請求項8に記載の試薬。
【請求項10】
前記放射性標識結合成分が、式
【化5】

を有する、請求項9に記載の試薬。
【請求項11】
前記多塩基化合物および放射性標識結合成分が約1〜約20個のアミノ酸を通して共有結合している、請求項1〜10のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項12】
前記多塩基化合物および放射性標識結合成分を共有結合的に連結するアミノ酸が1個以上のグリシンである請求項11に記載の試薬。
【請求項13】
前記試薬が、下記のアミノ酸配列
KKKKKCGCGGPLYKKIIKKLLES (配列番号:2)
(但し、前記ペプチドの少なくとも4個、好ましくは5、6、7、8個、および最も好ましくは9個のリジン残基がアルギニン残基により置換されている)
を含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項14】
前記多塩基化合物およびそれに共有結合した放射性標識結合成分が、一緒になって、
アセチル-RRRRRCGCGGPLYRRIIRRLLES (配列番号:3);
アセチル-RRRRRCGCGGPLYKKIIKKLLES (配列番号:4);および
アセチル-KKKKKCGCGGPLYRRIIRRLLES (配列番号:5)
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するペプチドを形成することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項15】
前記多塩基化合物およびそれに共有結合した放射性標識結合成分が一緒になって、下記アミノ酸配列:
アセチル-RRRRRCGCGGPLYRRIIRRLLES (配列番号:3)
を有するペプチドを形成する、請求項1〜14のいずれか1項に記載の試薬。
【請求項16】
i)請求項1〜15のいずれか1項に記載の同一または異なる少なくとも2個の多塩基化合物;
ii)少なくとも1個の前記多塩基化合物に共有結合した請求項1〜15のいずれか1項に記載の少なくとも1個の放射性標識結合成分;および
iii)前記多塩基化合物、放射性標識結合成分、または両者に共有結合した多価リンカー成分;
を含む多重結合試薬であって、当該多重結合多価試薬の分子量が約20.000Da未満であることを特徴とする多重結合試薬。
【請求項17】
前記多価結合成分が多塩基化合物または放射性標識結合成分に共有結合可能な少なくとも2個のリンカー官能基を含み、好ましくは、該リンカー官能基の少なくとも2個は同一であり、随意に該リンカー官能基は1級または2級アミン、水酸基、カルボン酸基またはチオール反応性基であり、該チオール反応性基はマレイミド基およびクロロアセチル、ブロモアセチルおよびヨードアセチル基から選択される、請求項16に記載の多重結合試薬。
【請求項18】
前記多価リンカーが、
ビス-スクシンイミジルメチルエーテル;
4-(2,2-ジメチルアセチル)安息香酸;
トリス(スクシンイミジルエチル)アミン;
ビス−スクシンイミドヘキサン;
4-(O-H2CO-Gly-Gly-Cys.アミド)アセトフェノン;
トリス(アセトアミドエチル)アミン;
ビス(アセトアミドメチル)アミン;
ビス(アセトアミドエチル)アミン;
α,ε-ビス(アセチル)リジン;
リジン;および
1,8-ビス-アセトアミド-3,6-ジオキサ-オクタン;
または上述の多価リンカーのいずれかの誘導体からなる群から選択される、請求項16または請求項17に記載の多重結合試薬。
【請求項19】
(a)請求項1〜請求項18のいずれか1項に記載の試薬を、還元剤、好ましくはジチオナイトイオン、錫イオンおよび第一鉄イオンからなる群から選択される還元剤、の存在下テクネチウム-99mと反応させ、または(b) 請求項1〜請求項18のいずれか1項に記載の試薬を予め還元したテクネチウム-99m錯体の配位子交換によりテクネチウム-99mで標識付けする、ことにより形成される錯体。
【請求項20】
(a)請求項1〜請求項18のいずれか1項に記載の試薬、(b)少なくとも約1000Daの分子量を有する多硫酸化グリカンを含む組成物であって、該組成物が哺乳動物体内において病状部位に蓄積され得ることを特徴とする組成物。
【請求項21】
前記多硫酸化グリカンが、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸もしくはデルマタン二硫酸、またはこれらのいずれかの誘導体もしくは混合物であり、好ましくは該多硫酸化グリカンはデルマタン硫酸またはデルマタン二硫酸である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記多塩基化合物と前記多硫酸化グリカンとの(w/w)比が0.1:1〜20:1、好ましくは、0.2:1〜10:1、より好ましくは0.5:1〜5:1、または1:1〜2:1、そして最も好ましくは約1.45:1または1.5:1である、請求項20または請求項21の組成物。
【請求項23】
生体内で炎症または感染部位に蓄積できることを特徴とする請求項20〜請求項22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
当該組成物の試薬がTc-99mで標識付けされ、そして多硫酸化グリカンと共に投与される場合に、当該組成物が25より大の、好ましくは40より大の、最も好ましくは60より大の、ウサギ注射モデルにおける大腸菌により感染された筋肉組織と非感染筋肉組織との間の画像コントラスト比Imax:Cを得ることが出来、そして/または該組成物が3より大の、好ましくは4、5、6、7、または8より大の、そして最も好ましくは9より大の、ウサギ注射モデルにおける大腸菌により感染された筋肉組織と末端血の間の画像コントラスト比Imax:Bを得ることが出来る、ことを特徴とする請求項20〜請求項23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記試薬が配列;
アセチル-RRRRRCGCGGPLYRRIIRRLLES (配列番号:3)
を有するペプチドであり、そして前記多硫酸化グリカンがデルマタン硫酸である、請求項20〜請求項24のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項26】
(a) 請求項20〜請求項25のいずれか1項に記載の組成物および(b)放射性同位体を含むシンチグラフィーイメージング剤であって、該放射性同位体が放射性標識結合成分を経由して組成物内で試薬に合成されることを特徴とするシンチグラフィーイメージング剤。
【請求項27】
前記放射性同位体が、テクネチウム99m、フッ素18、ガリウム67、ガリウム68、インジウム111、沃素123、沃素125、イッテルビウム169、またはレニウム186からなる群から選択される請求項26に記載のシンチグラフィーイメージング剤。
【請求項28】
前記放射性同位体がテクネチウム99mである、請求項26または請求項27に記載のシンチグラフィーイメージング剤。
【請求項29】
前記イメージング剤が、25より大の、好ましくは40より大の、最も好ましくは60より大の、ウサギ注射モデルにおける大腸菌により感染された筋肉組織と非感染筋肉組織との間の画像コントラスト比Imax:Cを達成し、そして/または該イメージング剤が、3より大の、好ましくは4、5、6、7、または8より大の、および最も好ましくは9より大の、ウサギ注射モデルにおける大腸菌により感染された筋肉組織と末端血の間の画像コントラスト比Imax:Bを達成する、請求項26〜請求項28のいずれか1項に記載のシンチグラフィーイメージング剤。
【請求項30】
請求項1〜請求項18のいずれか1項に記載の試薬、請求項19に記載の錯体、請求項20〜請求項25のいずれか1項に記載の組成物、または請求項26〜請求項29のいずれか1項に記載のシンチグラフィーイメージング剤を含み、さらに製薬的に受容できる担体を含む製薬組成物。
【請求項31】
哺乳動物体内の病状部位を造影するための、請求項1〜請求項18のいずれか1項に記載の試薬、請求項19に記載の錯体、請求項20〜請求項25のいずれか1項に記載の組成物、請求項26〜請求項29のいずれか1項に記載のシンチグラフィーイメージング剤、または請求項30に記載の製薬組成物。
【請求項32】
造影部位が炎症または感染部位である、請求項31に記載の試薬、錯体、組成物、シンチグラフィーイメージング剤、または製薬組成物。
【請求項33】
哺乳動物体内の病状部位を造影するための診断用薬の製造における、請求項1〜請求項18のいずれか1項に記載の試薬、請求項19に記載の錯体、請求項20〜請求項25のいずれか1項に記載の組成物、請求項26〜請求項29のいずれか1項に記載のシンチグラフィーイメージング剤、または請求項30に記載の製薬組成物の使用。
【請求項34】
造影部位が炎症または感染部位である請求項33に記載の使用。
【請求項35】
放射性製剤を調製するためのキットであって、前記キットが
(a) (i) 請求項1〜請求項18のいずれか1項に記載の所定量の試薬;および
(ii)当該試薬を放射性同位体で標識付けするための十分量の還元剤;
を含む第1の密封バイアル;ならびに
(b) 請求項20〜請求項23のいずれか1項に記載の所定量の多硫酸化グリカンを含む第2の密封バイアル;
を含むことを特徴とするキット。
【請求項36】
前記還元剤がジチオン酸、錫イオン、第1鉄イオンからなる群から選択される請求項35に記載のキット。
【請求項37】
前記試薬が式:
アセチル-RRRRRCGCGGPLYRRIIRRLLES (配列番号:3)
を有し、そして前記多硫酸化グリカンがデルマタン硫酸である請求項35または請求項36に記載のキット。
【請求項38】
前記放射性同位体がテクネチウム-99mである請求項35〜請求項37のいずれか1項に記載のキット。
【請求項39】
試験管内の化学合成により請求項1〜請求項18のいずれか1項に記載の試薬を調製するための方法。
【請求項40】
前記試薬が固相ペプチド合成により調製される請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記放射性標識結合成分が固相ペプチド合成を通じてペプチドに共有結合する請求項39または請求項40に記載の方法。
【請求項42】
(a) 請求項26〜請求項29のいずれか1項に記載のシンチグラフィーイメージング剤または請求項30に記載の製薬組成物の有効診断量を投与し;そして
(b) 前記部位に局在化した放射性標識から放射性信号を検知する;
工程を含む、哺乳動物体内の病状部位の、造影方法。
【請求項43】
前記放射性標識が炎症または感染部位に局在化する請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記試薬が、
アセチル-RRRRRCGCGGPLYRRIIRRLLES (配列番号:3);
アセチル-RRRRRCGCGGPLYKKIIKKLLES (配列番号:4);および
アセチル-KKKKKCGCGGPLYRRIIRRLLES (配列番号:5)
からなる群から選択されるペプチドである請求項42または請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記多硫酸化グリカンがデルマタン硫酸である請求項42〜請求項44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記放射性同位体がテクネチウム-99mである請求項42〜請求項45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
(a) 全血および約1μg〜約100mgの請求項26〜請求項29のいずれか1項に記載のシンチグラフィーイメージング剤または請求項30に記載の製薬組成物を混合し;
(b) 前記混合物を哺乳動物に投与し;そして
(c) 前記部位に局在化した放射性同位体からの放射性信号を検知する;
工程を含む哺乳動物体内の炎症または感染部位の造影方法。
【請求項48】
前記放射性同位体がテクネチウム-99mである請求項47に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−515612(P2006−515612A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500527(P2006−500527)
【出願日】平成16年1月7日(2004.1.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000051
【国際公開番号】WO2004/060409
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(300049958)シエーリング アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】