説明

感染症の治療に有用なチオキサンテン誘導体

本発明は、抗感染症薬としての使用、特に感染症の治療に適切な特定のチオキサンテン誘導体およびフェノチアジン誘導体を目的とする。本発明はさらに、該抗感染症薬を含有する組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、感染症の治療のための抗感染症薬、特にチオキサンテン誘導体およびフェノチアジン誘導体の使用を目的とする。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
化学療法に対する耐性は感染症の患者に一般的な臨床問題である。感染症の治療の間、原核または真核微生物細胞の薬物標的は異なる構造および機能を有する種々の薬物に難治性であると分かることが多い。この現象は多剤耐性(MDR)と称されている。
【0003】
院内/集中治療室内感染を引き起こす細菌の多抗菌剤耐性の出現は増大しており、10を超える異なる抗生剤がきかない微生物の発見は例外ではない。そのような耐性細菌の例としては、メチシリン耐性およびメチシリン-バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌;大便連鎖球菌およびエンテロコッカス・フェシウムなどのバンコマイシン耐性腸球菌;ペニシリン耐性肺炎連鎖球菌、およびセファロスポリンおよびキノロン耐性グラム陰性桿菌(大腸菌)、例えば大腸菌(E. coli)、サルモネラ種、肺炎桿菌、緑膿菌種およびエンテロバクター種が挙げられる。より最近には、汎抗生剤耐性のグラム陰性菌およびグラム陽性菌が出現した。
【0004】
これらの多抗生剤耐性の出現の速さは、同速度の新たな抗生剤の発展によって反映されておらず、それゆえ重篤な感染症の患者はまもなく現在入手可能な抗感染症薬でもはや治療できなくなるであろうことが想像できる。いくつかの国際的な報告は、医薬の多くの領域における抗菌剤耐性の出現と関連する潜在的な問題を強調しており、これらの微生物により引き起こされる感染症の患者の管理における困難性もまた概説している。
【0005】
ほとんどのより強い微生物が院内に存在するが、肺炎連鎖球菌およびヒト結核菌などの多剤耐性細菌の菌株もまた、重篤な市中感染を引き起こした。薬物耐性肺炎連鎖球菌の有病率は、ペニシリンまたは第三世代セファロスポリンのそれぞれへの中レベルまたは高レベルの耐性を示す分離株の51%および8%により1980年以来60倍に増大している。従って、肺炎球菌性肺炎は、第一線抗感染症薬で治療するのにより困難になっている。病院からの耐性細菌、例えば多剤耐性黄色ブドウ球菌およびバンコマイシン耐性腸球菌は、家での継続治療のために退院した、それらを有する患者により地域社会に持ち込まれうる。
【0006】
フェノチアジンは、薬物群のうち特定の細菌にて1以上の抗菌剤に対する耐性を改変することが知られることが示されている。フェノチアジンおよびチオキサンテンは、神経遮断薬および制吐剤として臨床的に用いられる。フェノチアジン、および構造的に関連する抗精神病薬は、いくつかの細胞酵素を阻害し、重大な細胞レセプターの機能を遮断する。抗精神病薬療法に伴う錐体外路系副作用はドーパミンレセプター結合に起因する。一般にこれらの錐体外路系副作用は、抗癌治療などの非精神病領域にてフェノチアジンおよびチオキサンテンを用いる治験に限定される用量であると分かった。
【0007】
フェノチアジンおよび他の薬物がMDRを調節する機序は未だ明確でないが、それらの薬理学的特性は、少なくとも一部、排出ポンプの阻害により媒介することができることが示唆されている。また、プロメタジンは、大腸菌、腸炎エルシニア、黄色ブドウ球菌およびアグロバクテリウム・トゥメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)などの細菌種を含む培地中にて有効な抗プラスミド薬として認識されている。しかし、用いる濃度は一般に、臨床的に意義のある濃度より高い。
【0008】
近年、抗感染症化合物として用いられるいくつかのフェノチアジンおよびチオキサンテン誘導体が抗感染症薬とともに用いられる場合に、臨床的に意義のある濃度でさえ、多剤耐性病原菌などの病原菌の殺傷の補助に驚くほど有効であることが示されている。従って、国際公開公報WO05105145は、抗感染症薬と組み合わせた、感染症の治療のための抗感染症化合物としてのいくつかのチオキサンテン誘導体およびフェノチアジン誘導体の使用を開示する。
【0009】
いくつかのフェノチアジンおよびチオキサンテン誘導体はUS 6,569,853に開示されている。
【0010】
フルペンチキソールは、トランキライザー、精神安定剤、制吐剤、抗ヒスタミン剤、鎮痙薬および一般的な中枢神経系抑制としての有用性を有するものとして英国特許925,538に開示されている。抗感染活性または抗耐性活性のいずれかについての言及はない。
【0011】
いくつかのチオキサンテン誘導体は、トランキライザーとして英国特許863,699に開示されている。抗感染活性または抗耐性活性のいずれかについての言及はない。
【0012】
国際公開公報WO2005/105145 Aは、抗菌剤としていくつかのフェノチアジンおよびチオキサンテン、例えばフルペンチキソールおよびクロペンチキソールの議論を開示する。解決された課題は、感染症の併用治療に関し、開示化合物が単一抗生物質としての投与に適さないが、別の抗生剤がその開示化合物とともに同時に用いられる併用治療に適するということを教示する。この点、本発明は、驚くべきことに抗感染症薬のみとしての投与に適したことが見出された、新規化合物(WO2005/105145の一般的に開示された化合物)の条件により別の課題を解決する点で異なる。
【0013】
EP-A-0338532は、抗原虫薬としての他の化合物のうちのクロペンチキソールの使用を開示する。
Kolaczkowski Mらの文献(International Journal of Antimicrobial Agents (2003) vol 2, nr. 3)は、酵母多剤耐性のモジュレータとしての種々の化合物のうちのトランス-フルペンチキソールを開示する。
Kristensenらの文献(International Journal of Antimicrobial Agents (2000) vol 14, nr. 3)は、HIV阻害剤としてのシス-およびトランス-フルペンチキソールを開示する。
【0014】
フェノチアジンおよびチオキサンテンは本質的に中程度であるが広範な抗菌活性を示す。MIC(病原菌が阻害される化合物の最小濃度)は一般に、開示されたインビトロ最小有効濃度がおよそ20 mg/lから数百mg/lのオーダーであるため、臨床的に意義のある濃度を超えて高い。フェノチアジンおよびチオキサンテンの意義のある血清濃度は一般に、可能性のある副作用を回避するためにおよそ0.3μg/l〜0.5 mg/l(0.3 ng/ml〜0.5μg/ml)の範囲である。
【0015】
チオキサンテンは幾何学的立体異性体を示す。シスおよびトランス体は、ほぼ同程度に中程度の抗菌能を有することが先に示されている。MICは一般に、臨床的に意義のある濃度をはるかに超える。
【0016】
Mortensen&Kristiansen(Acta Pathologica Microbiologica Scandinavia, section B, 95B, no. 6 (1987))により、N-デアルキル-クロペンチキソールのシス/トランス混合物が異なる実験用菌株への中程度の阻害効果を有することが示された。菌株は抗感染症薬に耐性を示さなかった(すなわち獲得耐性をまったく有さず、「感受性」であるとして記載される)。阻害効果はIC50値(単一菌株の母集団の50%が阻害される濃度を意味する)として測定された。該文献にはN-デアルキル-クロペンチキソールのシス/トランス混合物が100μM(59,7μg/ml)の濃度でも試験されたグラム陰性菌株の50%を阻害することができなかったことが開示されている。該文献にはさらに、N-デアルキル-クロペンチキソールのシス/トランス混合物の12,5μg/mlの濃度がIC50により測定される、阻害された試験グラム陽性菌株のすべてに必要であったことを開示する。IC50の計算は、裸眼によりなされるプレート上で増殖したコロニーサイズの半定量化に基づく。この方法は、NCCLSまたはヨーロッパガイドラインにより承認されていない。Mortensen&Kristiansenは化合物の最小発育阻止濃度(MIC)について開示していない。最小発育阻止濃度(MIC)は化合物の抗感染性の国際的に承認された測定である。MICは、NCCLSガイドラインにより視覚的な増殖を示さない最低阻害濃度として定義される。IC50濃度は、大抵、全部ではないが、対応するMIC値より数倍低い。Kristensen in Danish Medical Bulletin Vol 37 No 2/april 1990による公報によれば、例えば上記Mortensen&Kristiansenによる検討の結果に基づき、抗生剤としての使用に必要な濃度は、ヒトにおける副作用なしで耐えられると測定される濃度の100-1000倍である。170頁に見られるように、「インビトロ実験にて用いられる精神治療薬(I、II、III、IV、V、VI、VIIおよびVIII)の濃度が治療下の精神病患者にて測定することができる遊離薬物の血漿濃度より少なくとも100-1000倍高い」ことが開示される。これにより著者は、176頁にて「...肺炎球菌に感染したマウスのトランス-クロペンチキソール治療でのインビトロ実験の評価は、治療用量の既知の精神治療薬およびその類似体のみをどのようにして抗生剤として使用することができるかを思い付くことが困難であることを示す」という結論を導いている。
【0017】
非常に高いレベルの化合物がIC50により測定される細菌増殖を阻害するために明らかに必要であるというKristiansenらによるこれらの報告はおそらく、このタイプの感染症の治療用のフェノチアジンおよびチオキサンテン誘導体の使用における問題および研究の欠如を引き起こしている。
【0018】
上記議論から、抗生剤などの抗感染症薬への耐性における増大は、感染症の治療への主な障害を与えることは明らかである。従って、抗感染症薬が緊急に必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、臨床的に意義のある量の抗感染症薬のそれを必要とする対象への投与により、臨床的に意義のある微生物、特に多剤耐性などの耐性を示す細胞または微生物の増殖を殺傷または阻害することができる、抗感染症薬を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記議論から理解されるように、これまでに先行技術により、チオキサンテンおよびフェノチアジンは、そのような治療的必要量の抗感染症薬が重篤な副作用を引き起こすため、単一抗感染症薬として感染症の治療に不適切であると考えられていた。
【0021】
従って、臨床的に意義のあるレベルをはるかに超えるチオキサンテンおよびフェノチアジンの濃度が微生物、特に耐性または多剤耐性を示す微生物に効くために必要であるという当分野の偏見にも関わらず、本発明者は、本明細書に記載の臨床的に意義のある量の抗感染症薬を用いて、耐性および多剤耐性を示す株などの臨床的に意義のある耐性および多剤耐性を示す分離株に対するそのような抗感染症薬の効果を単一抗感染症薬として検討することにより、さらに詳細にこの問題を調査することを決定した。さらに、本発明者は活性への立体異性的影響を検討した。
【0022】
驚くべきことに、本明細書に記載の臨床的に意義のある量の抗感染症薬を適用することにより、耐性または多剤耐性を示す臨床的に意義のある分離株などの微生物の有効な殺傷を達成したことを見出した。以前に信じられていたことに反して、この驚くべき発見は、本明細書に記載の抗感染症薬の単一抗感染症薬としての使用により、微生物に有効に効く可能性を広げる。
【0023】
従って、第一態様において、本発明は、感染症の治療または予防のための、一般式(I):
【化1】

(I)
[式中、
VはS、SO2、SO、OおよびNHからなる群から選択され;
WはNまたはC=CHであり;
nは1〜6の範囲の整数であり;
Xはそれぞれ、独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルおよび適宜置換されていてもよいC1-6-アルコキシからなる群から選択され;
【0024】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R13およびR14はそれぞれ、独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキル、適宜置換されていてもよいC2-6-アルケニル、適宜置換されていてもよいC2-6-アルキニルおよび適宜置換されていてもよいC1-6-アルコキシ、適宜置換されていてもよいC2-6-アルケニルオキシ、カルボキシ、適宜置換されていてもよいC1-6-アルコキシカルボニル、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルカルボニル、ホルミル、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルスルホニルアミノ、適宜置換されていてもよいアリール、適宜置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、適宜置換されていてもよいアリールオキシ、適宜置換されていてもよいアリールカルボニル、適宜置換されていてもよいアリールアミノ、アリールスルホニルアミノ、適宜置換されていてもよいヘテロアリール、適宜置換されていてもよいヘテロアリールオキシカルボニル、適宜置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、適宜置換されていてもよいヘテロアリールカルボニル、適宜置換されていてもよいヘテロアリールアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、適宜置換されていてもよいヘテロシクリル、適宜置換されていてもよいヘテロシクリルオキシカルボニル、適宜置換されていてもよいヘテロシクリルオキシ、適宜置換されていてもよいヘテロシクリルカルボニル、適宜置換されていてもよいヘテロシクリルアミノ、ヘテロシクリルスルホニルアミノ、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ、カルバモイル、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノカルボニル、アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、C1-6-アルキルカルボニルアミノ、アミノ-C1-6-アルキル-カルボニルアミノ、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ-C1-6-アルキル-カルボニルアミノ、アミノ-C1-6-アルキル-アミノ、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ-C1-6-アルキル-アミノ、シアノ、グアニジノ、カルバミド、C1-6-アルカノイルオキシ、C1-6-アルキルスルホニル、C1-6-アルキルスルフィニル、C1-6-アルキルスルホニルオキシ、アミノスルホニル、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノスルホニル、および適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルチオからなる群から選択され;
【0025】
12は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルまたは適宜置換されていてもよいC1-6-アルコキシである]
で示される抗感染症薬またはその代謝体もしくは塩に関する。本発明はさらに、感染症の治療用または予防用医薬の製造のための本発明の抗感染症薬の使用に関する。本発明はさらに、感染症の治療または予防のための本発明の抗感染症薬の使用に関する。
好ましい態様にて、WはC=CHであり、R12は水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ハロゲン、CHY、CHYおよびCYである(ここに、Yはハロゲン原子である)。
【0026】
本発明の他の態様は、以下の記載および添付した特許請求の範囲から明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な記載
定義
本明細書において、用語「C1-6-アルキル」は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチルおよびn-ヘキシルなどの1〜6の炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素基を意味するものとする。
【0028】
本明細書において、用語「C3-6-シクロアルキル」は、炭素原子のみからなる3員、4員、5員および6員環を対象とするものとし、一方、用語「ヘテロシクリル」は、炭素原子が1〜3のヘテロ原子と一緒になって該環を構成する、3員、4員、5員および6員環を意味するものとする。ヘテロ原子は、独立して酸素、硫黄および窒素から選択される。しかしC3-6-シクロアルキルおよびヘテロシクリル環は、芳香族π-電子系が生じないように位置づけられた一以上の不飽和結合を適宜含んでいてもよい。
【0029】
「C3-6-シクロアルキル」の具体例は、炭素環シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、1,3-シクロヘキサジエンおよび1,4-シクロヘキサジエンである。
【0030】
「ヘテロシクリル」の具体例は、含窒素ヘテロ環2-ピロリニル、3-ピロリニル、ピロリジニル、2-イミダゾリニル、イミダゾリジニル、2-ピラゾリニル、3-ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニルおよびピペラジニルである。ヘテロ環への結合は、ヘテロ環のヘテロ原子の位置にて、または炭素原子を経由したものである。
【0031】
本明細書において、用語「C2-6-アルケニル」は、2〜6の炭素原子を有し、一以上の二重結合を含む、直鎖または分枝鎖の炭化水素基を意味するものとする。C2-6-アルケニル基の具体例としては、アリル、ホモアリル、ビニル、クロチル、ブテニル、ペンテニルおよびヘキセニルが挙げられる。二以上の二重結合を有するC2-6-アルケニル基の具体例としては、ブタジエニル、ペンタジエニルおよびヘキサジエニルが挙げられる。二重結合の位置は、炭素鎖に沿ったいずれかの位置であることができる。
【0032】
本明細書において、用語「C2-6-アルキニル」は、2〜6の炭素原子および一つ以上の三重結合を含む直鎖または分枝鎖の炭化水素基を意味するものとする。C2-6-アルキニル基の具体例としては、アセチレン、プロピニル、ブチニル、ペンチニルおよびヘキシニルが挙げられる。三重結合の位置は、炭素鎖に沿ったいずれかの位置であることができる。二以上の結合は、「C2-6-アルキニル」が当業者に知られているようなジインまたはエンジインであるように不飽和であることができる。
【0033】
本明細書において用語「C1-6-アルコキシ」は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、n-ペントキシ、イソペントキシ、ネオペントキシおよびn-ヘキソキシなどのC1-6-アルキル-オキシを意味するものとする。
用語「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。
【0034】
本明細書において用語「アリール」は、炭素環芳香環または環系を意味するものとする。さらに用語「アリール」としては、少なくとも二つのアリール環、または少なくとも一つのアリールと少なくとも一つのC3-6-シクロアルキル、または少なくとも一つのアリールと少なくとも一つのヘテロシクリルが少なくとも一つの化学結合を分ける縮合環系が挙げられる。「アリール」環の具体例としては、フェニル、ナフタレニル、フェナントレニル、アントラセニル、アセナフチレニル、テトラリニル、フルオレニル、インデニル、インドリル、クマラニル、クマリニル、クロマニル、イソクロマニルおよびアズレニルが挙げられる。
【0035】
本明細書において用語「ヘテロアリール」は、芳香環の一つ以上の炭素原子が窒素、硫黄、リンおよび酸素からなる群から選択される一つ以上のヘテロ原子で置き換えられているアリール基を意味するものとする。さらに、本明細書において用語「ヘテロアリール」は、少なくとも一つのアリール環と少なくとも一つのヘテロアリール環、少なくとも二つのヘテロアリール、少なくとも一つのヘテロアリールと少なくとも一つのヘテロシクリル、または少なくとも一つのヘテロアリールと少なくとも一つのC3-6-シクロアルキルが少なくとも一つの化学結合を分けている縮合環を含む。
【0036】
ヘテロアリールの具体例としては、フラニル、チエニル、ピロリル、フェノキサゾニル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イミダゾリル イソチアゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピペリジニル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピラゾリルおよびトリアジニル、イソインドリル、インドリニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾピラゾリル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリニル、キノリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、プテリジニルチエノフラニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサリニルおよびチアントレニルが挙げられる。
【0037】
本明細書において用語「適宜置換されていてもよい」は、問題の基が、C1-6-アルキル、C1-6-アルコキシ、オキソ(互変異性エノール体で示すことができる)、カルボキシル、アミノ、ヒドロキシ(エノール系にて存在するときに、互変異性ケト体で示すことができる)、ニトロ、スルホノ、スルファニル、C1-6-カルボキシル、C1-6-アルコキシカルボニル、C1-6-アルキルカルボニル、ホルミル、アリール、アリールオキシ、アリールオキシカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロアリール、アミノ、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ、カルバモイル、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノカルボニル、アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、C1-6-アルキルカルボニルアミノ、シアノ、グアニジノ、カルバミド、C1-6-アルカノイルオキシ、C1-6-アルキルスルホニルオキシ、ジハロゲン-C1-6-アルキル、トリハロゲン-C1-6-アルキルおよびハロゲン(ここに、アリールおよびヘテロアリール置換基は、それ自体C1-6-アルキル、C1-6-アルコキシ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アミノまたはハロゲンで1〜3回置換されていてもよい)からなる群から選択される一つ以上の基で、1〜5回、好ましくは1〜3回、最も好ましくは1〜2回など1回以上置換されていてもよいということを意味するものとする。一般に上記置換は、さらに任意の置換を受けることができる。
【0038】
用語「病原菌」は、細菌、ウイルス、菌類、および細胞内または細胞外寄生虫などの病原性微生物を意味するものとする。本発明の好ましい態様にて、用語「病原菌」は、細菌、真菌およびヴィラ(vira)などの病原微生物を意味するものである。本発明のより好ましい態様にて、用語「病原菌」は、病原性細菌、真菌およびヴィラのみである。本発明のさらにより好ましい態様にて、用語「病原菌」は、病原性細菌、真菌およびヴィラのみを意味するものである。本発明のある態様にて、用語「病原菌」は、病原性細菌のみを意味するものである。本発明のある態様にて、用語「病原菌」は、病原性真菌のみを意味するものである。本発明のある態様にて、用語「病原菌」は病原性ヴィラのみを意味するものである。
同様に、用語「感染症」は、病原菌により引き起こされる疾患について用いられる。
【0039】
本明細書において用語「抗感染症薬」は、病原菌を殺傷し、その増殖を阻害し、またはそうでなければ減退することができる物質を含む。本発明の好ましい態様にて、用語「抗感染症薬」は、20 mg/lを超えない量にて対象に投与された場合、病原菌を殺傷し、その増殖を阻害し、またはそうでなければ減退することができる物質を含む。従って、用語「抗感染症薬」は、本明細書の実施例に記載のとおりに測定される場合、20μg/ml以下のMIC値を示す物質を含む。用語「抗感染症薬」は、病原菌の性質に応じて用語「抗生剤」または「抗ウイルス薬」または「抗真菌薬」と同義で用いることができる。細菌感染および真菌感染症を治療するために一般に用いられる抗生剤の具体例としては、アミカシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルミシン、ストレプトマイシンおよびトブラマイシンなどのアミノグリコシド;ロラカルベフなどのカルベセフェム(cabecephem);エルタペネム、イミペネム/シラスタチンおよびメロペネムなどのカルバペネム;セファドロキシル、セファゾリン、セファレキシン、セファクロール、セファマンドール、セファレキシン、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セフジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソンおよびセフェピムなどのセファロスポリン;アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、エリスロマイシンおよびトロレアンドマイシンなどのマクロライド;モノバクタム;アモキシシリン、アンピシリン、カルベニシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンG、ペニシリンV、ピペラシリンおよびチカルシリンなどのペニシリン;バシトラシン、コリスチンおよびポリミキシン(polymyxin)Bなどのポリペプチド;シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシンおよびトロバフロキサシンなどのキノロン;マフェニド、スルファセタミド、スルファメチゾール、スルファサラジン、スルフイソキサゾールおよびトリメトプリム-スルファメトキサゾールなどのスルホンアミド;デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリンおよびテトラサイクリンなどのテトラサイクリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
ウイルス感染を治療するために一般に用いられる抗ウイルス剤の具体例としては、アシクロビル、アマンタジン、シドフォビル ファムシクロビル、ホミビルセン、フォスカルネット、ガンシクロビル、インターフェロンアルファ、オセルタミビル、ペンシクロビル、リバビリン、リマンタジン、トリフルリジン、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビダラビンおよびザナミビルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
重篤な真菌感染症を治療するために一般に用いられる抗真菌剤の具体例としては、アンフォテリシンB、カスポファンギン、フルコナゾール、フルシトシン、イトラコナゾール、ケトコナゾールおよびボリコナゾールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本明細書において、病原菌は、該病原菌が該病原菌により引き起こされる感染症を治すために通常用いられる抗感染症薬の有効性を軽減するか、または除去する変化を受けるならば、「耐性」または「薬物耐性」であるという。同様に、用語「薬物耐性」は、疾患、例えば感染症が抗感染症薬などの治療薬に応答しない環境を意味する。薬物耐性は、疾患が治療薬に決して応答しないことを意味する本質的なもの、または疾患が以前に応答した治療薬に応答しなくなることを意味する後天的なものであることができる。
【0043】
本明細書において、病原菌は、該病原菌が該病原菌により引き起こされる感染症を治すために通常用いられる二つ以上の抗感染症薬の有効性を軽減するか、または除去する変化を受けるならば、「多剤耐性」であるという。同様に、「多剤耐性」は、疾患、例えば感染症が種々の抗感染症薬などの種々の薬物に耐性を示す薬物耐性の型である。
【0044】
用語「臨床的に意義のある量」は、一方で感染症の症状を軽減するか、または患者が治療される感染症を治すことができるが、他方で患者に無毒性であり、許容されない副作用を生じない、量にて患者に抗感染症薬を投与することを意味するものである。上記に示すように、すべてでないならば多くの本明細書記載の抗感染症薬は、あまりに高すぎる濃度、すなわち「臨床的に意義」のない量にて投与されたときに患者に重篤な副作用を引き起こすことが知られている。
【0045】
本明細書において、用語「病原菌」、すなわち病原性微生物と関連して用いられるときの用語「天然」は、感染症を引き起こす病原菌がヒトなど自然に発見することができる微生物であることを意味する。遺伝子操作(gen-manipulated)実験室株などの病原菌、または他の手法により変化し、および/またはヒトの介入により操作される病原菌は、用語「天然」に含まれないものと考えることは理解されよう。
【0046】
用語「血清」は、その通常の意味、すなわちフィブリノゲンおよび他の凝固因子を有さない血漿として用いられる。
【0047】
本明細書において用語(抗感染症薬の)「定常状態血清濃度」は、各用量で繰り返される遊離非結合薬物の値として定義され、投与された抗感染症薬の量と与えられた時間間隔中に除去される量との平衡状態を示す。
【0048】
本明細書において用語「治療」は、対象に薬物を投与することを意味し、i)感染症を予防すること(すなわち感染症の臨床症状を発症しないようにすること)、ii)感染症を阻害すること(すなわち感染症の臨床症状の発症を阻むこと)およびiii)疾患を緩和すること(すなわち感染症の臨床症状の後退をもたらすこと)ならびにその組合せを含む。
【0049】
用語「予防」または「予防的治療」は、まだ感染していないが、感染しやすいか、または感染の危険性のありうる対象の治療を意味する。
【0050】
本明細書において用語「対象」は、生きた脊椎動物、例えばヒトなどの哺乳動物を意味する。
【0051】
「医薬的に許容される」は、哺乳動物、特にヒトにおける使用に適切であることを意味する。
【0052】
抗感染症薬
上記一般式(I)について、置換基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R13およびR14はそれぞれ、独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキル、適宜置換されていてもよいC2-6-アルケニル、適宜置換されていてもよいC2-6-アルキニルおよび適宜置換されていてもよいC1-6-アルコキシ、適宜置換されていてもよいC2-6-アルケニルオキシ、カルボキシ、適宜置換されていてもよいC1-6-アルコキシカルボニル、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルカルボニル、ホルミル、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルスルホニルアミノ、適宜置換されていてもよいアリール、適宜置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、適宜置換されていてもよいアリールオキシ、適宜置換されていてもよいアリールカルボニル、適宜置換されていてもよいアリールアミノ、アリールスルホニルアミノ、適宜置換されていてもよいヘテロアリール、適宜置換されていてもよいヘテロアリールオキシカルボニル、適宜置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、適宜置換されていてもよいヘテロアリールカルボニル、適宜置換されていてもよいヘテロアリールアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、適宜置換されていてもよいヘテロシクリル、適宜置換されていてもよいヘテロシクリルオキシカルボニル、適宜置換されていてもよいヘテロシクリルオキシ、適宜置換されていてもよいヘテロシクリルカルボニル、適宜置換されていてもよいヘテロシクリルアミノ、ヘテロシクリルスルホニルアミノ、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ、カルバモイル、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノカルボニル、アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、C1-6-アルキルカルボニルアミノ、アミノ-C1-6-アルキル-カルボニルアミノ、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ-C1-6-アルキル-カルボニルアミノ、アミノ-C1-6-アルキル-アミノ、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ-C1-6-アルキル-アミノ、シアノ、グアニジノ、カルバミド、C1-6-アルカノイルオキシ、C1-6-アルキルスルホニル、C1-6-アルキルスルフィニル、C1-6-アルキルスルホニルオキシ、アミノスルホニル、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノスルホニル、および適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルチオからなる群から選択される。
【0053】
R12は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルまたは適宜置換されていてもよいC1-6-アルコキシである。
好ましいR12は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロおよび適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルからなる群から選択される。より好ましいR12は水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ハロゲン、CH2Y、CHY2およびCY3であり、Yはそれぞれ水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロまたはハロゲンから選択される。
本発明の好ましい具体的態様にて、R12は水素、CH3およびCH2OHからなる群から選択される。
本発明のより好ましい具体的態様にて、R12は水素およびCH3からなる群から選択される。
最も好ましい態様にて、R12は水素である。
【0054】
本発明の好ましい具体的態様にて、R2置換基は、ハロゲン、ニトロまたはハロゲン-置換C1-6-アルキルなどの電子吸引基である。より好ましくは、R2はF、Cl、Br、I、CH2Y、CHY2およびCY3(ここに、Yはハロゲン原子を示す)からなる群から選択され、例えばCH2Cl、CH2F、CHCl2、CHF2、CCl3またはCF3、特にCCl3またはCF3である。最も好ましくは、R2はClまたはCF3である。
【0055】
置換基R1、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R13およびR14は、好ましくはそれぞれ独立して水素、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルおよび適宜置換されていてもよいC1-6-アルコキシからなる群から選択される。より好ましくは、すべてのR1、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R13およびR14は、水素である。
【0056】
従って、本発明の非常に好ましい具体的態様にて、R2はClまたはCF3であり、R1、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R13およびR14は、それぞれ水素である。
【0057】
上記のように、VはS、SO2、SO、OおよびNHからなる群から選択され、例えばSまたはSOである。本発明の非常に好ましい具体的態様にて、VはSである。
【0058】
当然のことながら、WがNであり、VがSである場合、一般式(I)の抗感染症薬は一般式(II):
【化2】

[式中、nは2〜6の範囲の整数、例えば2、3、4、5または6であり、Xはそれぞれ水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルおよび適宜置換されていてもよいC1-6-アルコキシからなる群から選択される]
で示されるフェノチアジンとなる。
【0059】
本発明の好ましい具体的態様にて、nは2または3であり、Xは水素またはCH3であり、R12は水素またはCH3である。特に、nが2であり、Xがそれぞれ水素であり、R12は水素またはCH3である場合、一般式(II)の抗感染症薬は強力な抗感染活性を示すことが示される。従って、本発明の好ましい具体的態様にて、Wはそれが結合する官能基と一緒になって、適宜置換されていてもよいピペラジニル基を有するアルキル鎖(N-(CHX)n-)を形成する。ピペラジニル基は好ましくは置換されていないか、またはパラ位(R12)にて置換されている。従って、好ましい具体的態様にて、それが結合する官能基と一緒になったWは、N-(CH2)3-4-メチル-ピペラジニル、N-CH2-CH(CH3)-4-メチル-ピペラジニル、N-(CH2)3-ピペラジニルまたはN-CH2-CH(CH3)-4-メチル-ピペラジニルである。特に、それが結合する官能基と一緒になったWの構造はN-(CH2)3-ピペラジニルが好ましい。
上記フェノチアジンの具体例としては、ペルフェナジンおよびプロクロルペラジンが挙げられる。
【0060】
当然のことながら、WがC=CHであり、nが1〜5の範囲の整数であり、VがSである場合、一般式(I)の抗感染症薬は一般式(III):
【化3】

で示されるチオキサンテンとなる。
【0061】
一般式(III)のチオキサンテンはシスおよびトランス異性体を生じる。本明細書において、一般式(IIIa)の抗感染症薬はシスコンフィギュレーションと言われており(ここに、ピペラジニル基はR2基を含む分子の一部と二重結合の同じ側にあるものと解釈される)、一般式(IIIb)の抗感染症薬はトランスコンフィギュレーションと言われる(ここに、ピペラジニル基はR2基を含む分子の一部と二重結合の反対側にあるものと解釈される):
【化4】

[式中、nは1〜5の範囲の整数、例えば1、2、3、4または5であり、Xはそれぞれ水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルおよび適宜置換されていてもよいC1-6-アルコキシからなる群から選択される]。
【0062】
本発明の好ましい具体的態様にて、nは2または3であり、Xは水素またはCH3であり、R12は水素またはCH3である。特に、nが2であり、Xがそれぞれ水素であり、R12が水素またはCH3である場合、一般式(IIIa)および(IIIb)で示される物質は臨床的に意義のある濃度にて強力な抗感染活性を示すことが示されている。従って、本発明の好ましい具体的態様にて、Wはそれに結合する官能基と一緒になって、適宜置換されていてもよいピペラジニル基を有するアルケニル鎖(C=C-(CHX)n-)を形成する。ピペラジニル基は、好ましくはパラ位(R12)にて無置換または置換される。従って、好ましい具体的態様にて、Wはそれに結合する官能基と一緒になって、CCH-(CH2)2-4-メチル-ピペラジニル、CCH-CH2-CH(CH3)-4-メチル-ピペラジニル、CCH-(CH2)2-ピペラジニルまたはCCH-CH2-CH(CH3)-ピペラジニルである。特に、Wがそれに結合する官能基と一緒になって、CCH-(CH2)2-4-メチル-ピペラジニルである構造が好ましい。
【0063】
本発明のチオキサンテンの具体例としては、N-デアルキル-フルペンチキソール (4-[3-(2-(トリフルオロメチル)チオキサンテン-9-イリデン)プロピル]1-ピペラジン)、N-デアルキル-クロペンチキソール (4-[3-(2-クロロチオキサンテン-9-イリデン)プロピル]1-ピペラジン)、N-デメチル-フルペンチキソール (4-[3-(2-(トリフルオロメチル)チオキサンテン-9-イリデン)プロピル]1-メチルピペラジン)、N-デメチル-クロペンチキソール (4-[3-(2-クロロチオキサンテン-9-イリデン)プロピル]1-メチルピペラジン)が挙げられる。本発明の使用に特に好ましい抗感染症薬はN-デアルキル-フルペンチキソールおよびN-デアルキル-クロペンチキソールである。最も好ましくは、N-デアルキル-クロペンチキソールである。
【0064】
驚くべきことに、本発明のチオキサンテン抗感染症薬が異性体純度が増大した抗感染症薬としてますます有効であることが示されている。言い換えると、驚くべきことに、一般式(IIIa)で示される物質(シス-異性体)および一般式(IIIb)で示される物質(トランス-異性体)がともに強力な抗感染特性を示す一方、一般式(IIIa)および(IIIb)で示される物質の異性体混合物が抗感染活性の軽減を示すことが示されている。この驚くべき効果は例えば実施例6、7および8に見ることができる。
【0065】
特に驚くべきことに、本発明に至る一連の実験中、トランス-異性体の存在がシス-異性体の抗感染特性を阻害し、シス-異性体の存在がトランス-異性体の抗感染特性を阻害することを示している。一の異性体の少量の異性体不純物でさえも、他の関連する抗感染異性体の抗感染特性を阻害することができる。
【0066】
結果的に、一般式(III)で示される化合物は一般に、純粋または実質的に純粋な異性体として用いることが好ましい。従って、この具体的態様による化合物は、好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも98%の異性体純度にて用いる。
【0067】
上記チオキサンテンの具体例としては、N-デアルキル-トランス-フルペンチキソール(またはトランス-1-(3-(2-フルオロ-チオキサンテン-9-イリデン)プロピル)ピペラジン)、N-デアルキル-シス-フルペンチキソール(またはシス-1-(3-(2-フルオロ-チオキサンテン-9-イリデン)プロピル)ピペラジン)、N-デアルキル-トランス-クロペンチキソール(またはトランス-1-(3-(2-クロロ-チオキサンテン-9-イリデン)プロピル)ピペラジン)、N-デアルキル-シス-クロペンチキソール(またはシス-1-(3-(2−クロロ-チオキサンテン-9-イリデン)プロピル)ピペラジン)、N-デメチル-トランス-フルペンチキソール、N-デメチル-シス-フルペンチキソール、N-デメチル-トランス-クロペンチキソールおよびN-デメチル-シス-クロペンチキソールが挙げられる。
【0068】
本発明に至る一連の実験中、本発明化合物のトランス体が最も強力な抗感染症薬であることが示されている。さらに、トランス体の抗精神病活性または錐体外路副作用の明らかな欠如により、トランス体が抗感染症薬としての使用に特に魅力的となる。従って、一般に、一般式(III)で示される化合物がトランス立体配置、すなわち一般式(IIIb)に示される構造を有することが好ましい。
【0069】
従って、本発明の特に好ましい具体的態様にて、nは2であり、Xはそれぞれ水素であり、R12は水素またはCH3であり、一般式(IIIb)で示される物質は臨床的に意義のある濃度にて強力な抗感染活性を示す。従って、本発明の好ましい具体的態様にて、Wはそれに結合する官能基と一緒になって、トランス立体配置にて適宜置換されていてもよいピペラジニル基を有するアルケニル鎖(C=C-(CHX)n-)を形成する。ピペラジニル基は、好ましくはパラ位(R12)にて無置換または置換される。従って、好ましい具体的態様にて、Wはそれに結合する官能基と一緒になって、CCH-トランス-(CH2)2-4-メチル-ピペラジニル、CCH-トランス-CH2-CH(CH3)-4-メチル-ピペラジニル、CCH-トランス-(CH2)2-ピペラジニルまたはCCH-トランス-CH2-CH(CH3)-ピペラジニルである。特に、Wがそれに結合する官能基と一緒になって、CCH-トランス-(CH2)2-4-ピペラジニルである構造が好ましい。
【0070】
本発明の使用に特に好ましい抗感染症薬は、N-デアルキル-トランス-フルペンチキソールおよびN-デアルキル-トランス-クロペンチキソールである。最も好ましくは、N-デアルキル-トランス-クロペンチキソール(またはトランス-1-(3-(2-クロロ-チオキサンテン-9-イリデン)プロピル)ピペラジン)である。
【0071】
本明細書にて示される式およびそれと関連する定義から明らかなとおり、本明細書記載のいくつかの抗感染症薬はキラルである。さらに、いくつかの不飽和もしくは環状フラグメントまたは複数の立体異性原子の存在は、いくつかの抗感染症薬のジアステレオ形態の存在を提供する。本発明は、光学異性体およびその混合物などのすべての立体異性体ならびに純粋、部分的にリッチな(partially enriched)または関連があればラセミ体を含むものである。特に、本明細書記載の多くの抗感染症薬は、E-もしくはZ-立体異性体またはその異性体混合物の形態であってよい。
【0072】
さらに、本明細書に記載の抗感染症薬はその可能な塩を含み、その医薬的に許容される塩はもちろん特に治療用途に関連があることが理解されるべきである。塩は酸付加塩および塩基性塩を含む。酸付加塩の例は塩酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩などである。塩基性塩の例は、(残りの)対イオンがアルカリ金属(ナトリウムおよびカリウムなど)、アルカリ土類金属(カルシウム塩、カリウム塩など)およびアンモニウムイオン(+N(R')4(ここに、R'は独立して適宜置換されていてもよいC1-6-アルキル、適宜置換されていてもよいC2-6-アルケニル、適宜置換されていてもよいアリールまたは適宜置換されていてもよいヘテロアリールである)から選択される、塩である。医薬的に許容される塩は例えばRemingtonの文献(The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed. Alfonso R.Gennaro (Ed.), Lippincott, Williams&Wilkins; ISBN: 0683306472, 2000, and in Encyclopedia of Pharmaceutical Technology)に記載のものである。
【0073】
抗感染症薬の効果は本明細書に記載のように評価することができ、選択される微生物に対する抗感染症薬の効率はMIC値として示すことができる。
【0074】
最小発育阻止濃度(MIC)は、NCCLSガイドラインにより増殖を示さない最低阻害濃度として定義される。
【0075】
本明細書記載の抗感染症薬の抗感染性は、本明細書実施例に記載のインビトロアッセイなどの当業者に利用できるいずれかの方法により評価することができる。本発明の好ましい具体的態様にて、抗感染症薬および病原菌(および従って治療される感染症)は、本明細書実施例に記載のように測定された場合の20μg/ml以下のMIC値を示す。より好ましくは、抗感染症薬および病原菌は、本明細書実施例に記載のように測定される場合、16μg/ml以下のMIC値を示す。さらにより好ましくは、MIC値は8μg/ml以下、例えば4μg/ml以下、例えば最大4.0である。さらにより好ましくは、MIC値は2μg/ml以下、例えば最大2.0、最大1.0または最大0.5などである。
【0076】
治療、医薬組成物および投与量
上記に説明されるように、本明細書に記載の抗感染症薬は、感染症の治療に有用である。従って、本明細書に記載の抗感染症薬は、感染症の治療のための医薬の製造に用いることができ、ここに、抗感染症薬は単一抗感染症薬である。
従って、ある具体的態様にて本発明は、抗感染症薬が単一抗感染症薬である感染症の治療用の、本明細書記載の抗感染症薬に関する。
【0077】
さらに、本明細書に記載の抗感染症薬は、感染症の予防的治療に有用である。これはヒトが免疫抑制患者または外科手術を受けた患者などの感染症に罹る危険性が高いという状況に特に関連する。従って、本明細書に記載の抗感染症薬はまた、感染症の予防的治療のための医薬の製造にも用いることができ、ここに、抗感染症薬は単一抗感染症薬である。
【0078】
従って、別の具体的態様にて本発明は、抗感染症薬が単一抗感染症薬である感染症の予防的治療用の、本明細書記載の抗感染症薬に関する。
さらなる態様にて、本発明は、感染症の治療用医薬として用いられる本明細書記載の抗感染症薬を目的とする。
【0079】
さらなる態様にて、本発明は、多剤耐性感染症の治療用医薬として用いられる本明細書記載の抗感染症薬を目的とする。
【0080】
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載の抗感染症薬を対象に投与することを特徴とする、対象における感染症を治療または予防する方法に関する。
【0081】
治療
本明細書の開示事項から理解されるように、治療される感染症は通常、細菌、ウイルス、真菌または細胞内もしくは細胞外寄生虫、特に細菌などの病原菌により引き起こされる。病原菌は典型的に、天然、すなわち天然の細菌、天然のウイルス、天然の真菌または天然の細胞内もしくは細胞外寄生虫、特に天然の細菌である。
より具体的に、病原菌はグラム陰性菌またはグラム陽性菌であることができる。
【0082】
具体例としては、エシェリキア属、プロテウス属、サルモネラ属、クレブシエラ属、プロビデンシア属、エンテロバクター属、ブルクホリデリア属(Burkholderia)、シュードモナス属(Pseudomonas)、アシネトバクター属、アエロモナス属、ヘモフィルス属、エルシニア属、ナイセリア属、エルビニア属、ロドシュードモナス属(Rhodopseudomonas)およびブルクホリデリア属からなる群から選択される属のグラム陰性菌が挙げられる。
【0083】
グラム陽性菌の具体例としては、ラクトバチルス(Lactobacillus)、アゾリゾビウム属(Azorhizobium)、ストレプトコッカス属、ペジオコックス属、フォトバクテリウム属(Photobacterium)、バチルス属、エンテロコッカス属、スタヒロコッカス属、クロストリジウム属、ブチリビブリオ属、スフィンゴモナス属(Sphingomonas)、ロドコッカス属およびストレプトミセス属からなる群から選択される属の細菌が挙げられる。
【0084】
他の具体的態様にて、病原菌は例えば、メタノバクテリウム属(Methanobacierium)、スルホロブス属(Sulfolobus)、アーケオグロブ属(Archaeoglobu)、ロドバクター属(Rhodobacter)およびシノリゾビウム属(Sinorhizobium)からなる群から選択される属に由来する。
【0085】
さらに他の具体的態様にて、病原菌は、ケカビ属(Mucor)もしくはカンジダ属、例えばケカビ(Mucor racemosus)もしくはカンジダ・アルビカンス(Candida albicans);クリプトコッカス属(Crytococcus)、例えばクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cr. Neoformans);またはアスペルギルス属、例えばアスペルギルス・フミガーツスなどに由来する真菌である。
【0086】
さらに他の具体的態様にて、病原菌は、マラリアまたはクリプトスポリジウム寄生虫などの原虫である。
【0087】
本明細書に記載の抗感染症薬の毒性および治療有効性は、細胞培地または実験動物における標準的薬学手順、例えばLD50(個体群の50%が死に到る量)およびED50(個体群の50%に治療的に有効な量)を測定することにより決定することができる。毒性効果と治療効果との用量比は、治療指標であり、LD50とED50との比(LD50/ED50)として表すことができる。大きな治療指標を示す抗感染症薬が好ましい。これらの細胞培地アッセイまたは動物検討から得られたデータは、ヒト対象における使用のためにさまざまな投与量の製剤化に用いることができる。そのような抗感染症薬の投与量は、好ましくはほとんど、またはまったく毒性を示さずにED50を含む血中濃度の範囲内にある。投与量は、用いられる投薬形態および利用される投与経路に応じて、この範囲内にて変化することができる。
【0088】
医薬組成物
本明細書に記載の抗感染症薬は典型的に、製剤原料として用いられる前に医薬組成物に製剤化される。
【0089】
従って、さらなる態様にて本発明は、本明細書に記載の抗感染症薬および少なくとも一つの医薬的に許容される担体または賦形剤を含有する医薬組成物に関する。
【0090】
本明細書に記載の抗感染症薬の投与経路は、臨床的に意義のある濃度に対応する血液または組織における濃度を生じるいずれかの適切な経路であることができる。従って、本発明は以下のものに限定されないが、例えば次の投与経路が適用可能であることができる:経口経路、非経口経路、皮内経路、経鼻経路、直腸経路、膣内経路および眼球経路。投与経路が問題の特定の抗感染症薬に依存し、特に投与経路の選択は、患者の年齢および体重とともに抗感染症薬の物理化学的特性、および特定の疾患またはその病態および重篤度に依存することは当業者に明白であるべきである。しかし一般に、経口および非経口経路が好ましい。
【0091】
本明細書に記載の抗感染症薬は、医薬組成物にていずれかの適当な量にて含まれていてよく、一般に組成物の全重量の約0.1〜95重量%の量にて含まれる。組成物は、単位投与形態などの投薬形態にて存在することができ、これは経口、非経口、直腸、皮内、経鼻、膣内および/または眼球投与経路に適切である。従って組成物は、例えば錠剤、カプセル、丸剤、散剤、顆粒、懸濁剤、乳剤、溶液剤、ヒドロゲルなどのゲル、貼付剤、軟膏、クリーム、膏薬、水薬(drench)、運搬装置(delivery device)、坐剤、浣腸剤、注射剤、埋め込み剤(implant)、スプレー、エアロゾルおよび他の適切な形態などの形態であることができる。
【0092】
医薬組成物は、従来の医薬実践により製剤化することができ、例えば文献(Swarbrick, J.&J. C. Boylan, Marcel Dekker, Inc.により編集された「Remington's Pharmaceutical Sciences」および「Encyclopedia of Pharmaceutical Technology」New York, 1988)を参照のこと。典型的に、本明細書に記載の抗感染症薬は、(少なくとも)医薬的に許容される担体または賦形剤とともに製剤化される。医薬的に許容される担体または賦形剤は当業者に知られているものである。
【0093】
経口使用のための医薬組成物には、適宜少なくとも一つのさらなる抗感染症薬と組み合わされていてもよい、無毒性の医薬的に許容される賦形剤との混合物にて、本明細書に記載の抗感染症薬を含む錠剤が含まれる。これらの賦形剤は、例えば、スクロース、ソルビトール、糖、マンニトール、微結晶性セルロース、ジャガイモデンプンなどのデンプン、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤または増量剤;例えば微結晶性セルロースなどのセルロース誘導体、ジャガイモデンプンなどのデンプン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩またはアルギン酸などの顆粒化剤および崩壊剤;例えばスクロース、グルコース、ソルビトール、アカシア、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、前ゼラチン化(pregelatinized)デンプン、微結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたはポリエチレングリコールなどの結合剤;および例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、硬化植物油またはタルクなどの流動促進剤および抗接着剤などの滑沢剤であることができる。
【0094】
他の医薬的に許容される賦形剤は、着色剤、香料、可塑剤、湿潤剤、緩衝剤などであることができる。
【0095】
錠剤は、胃腸管における崩壊および吸収を適宜遅らせるためにコーティングされないか、または公知技術によりコーティングされていてもよく、それによりより長期間の持続作用を提供する。コーティングは、例えば制御放出製剤(以下を参照のこと)を達成するために、所定の形態で抗感染症薬を放出するために適用してもよく、または胃(腸溶コーティング)の通過後まで有効製剤原料を放出しないために適用してもよい。コーティングは、糖コーティング、フィルムコーティング(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸コポリマー(Eudragit E(登録商標))、ポリエチレングリコールおよび/またはポリビニルピロリドンに基づく)または腸溶コーティング(例えばメタクリル酸コポリマー(Eudragit(登録商標)LおよびSに基づく)、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ポリビニルアセテートフタレート、セラックおよび/またはエチルセルロース)であることができる。
【0096】
さらに、例えばモノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンなどの時間遅延物質を用いることができる。
さらに、上記固体錠剤組成物は、抗感染症薬の放出前の不要な化学変化、例えば化学的崩壊から該組成物を保護するために適用されるコーティングとともに提供することができる。
【0097】
コーティングは、Swarbrick, J.&J. C. Boylan, Marcel Dekker, Inc., New York, 1988により編集された「Encyclopedia of Pharmaceutical Technology」, Vol 1, pp.337-349中のJames A. Seitzによる「水性フィルムコーティング」に記載のものと同様の方法で固体投薬形態に適用することができる。
【0098】
経口使用のための製剤はまた、咀嚼錠剤として、または有効成分が不活性固体希釈剤、例えばジャガイモデンプン、ラクトース、微結晶性セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンと混合される硬ゼラチンカプセルとして、または有効成分が水もしくは油状媒体、例えばピーナッツ油、液体パラフィンもしくはオリーブ油と混合される軟ゼラチンカプセルとして存在することもできる。
【0099】
散剤および顆粒は、例えばミキサー、流動床装置またはスプレー乾燥装置を用いた従来法により、錠剤およびカプセルにて上記成分を用いて製造することができる。
【0100】
経口使用のための制御放出組成物は、例えば有効製剤原料の分解および/または拡散を制御することにより有効製剤原料を放出するために構築することができる。
【0101】
分解または拡散制御放出は、抗感染症薬の錠剤、カプセル、丸薬もしくは顆粒製剤の適当なコーティングにより、または例えば適当なマトリックスにおける問題の抗感染症薬の取り込みにより達成することができる。
【0102】
制御放出コーティングは、一つ以上の上記コーティング物質、および/または例えばセラック、蜜ろう(beeswax)、糖ろう(glycowax)、カストリウムろう(castor wax)、カルナウバろう(carnauba wax)、ステアリルアルコール、モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセロール(glycerol palmitostearate)、エチルセルロース、アクリル樹脂、dl-ポリ乳酸、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルクロリド、ポリビニルアセテート、ビニルピロリドン、ポリエチレン、ポリメタクリル酸、メチルメタクリル酸、2-ヒドロキシメタクリル酸、メタクリル酸ヒドロゲル、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコールメタクリル酸および/またはポリエチレングリコールを含有することができる。
【0103】
抗感染症薬の制御放出マトリックス製剤にて、マトリックス物質は、例えば水酸化メチルセルロース、カルナウバろうおよびステアリルアルコール、カルボポール934、シリコン、トリステアリン酸グリセリン、アクリル酸メチル-メタクリル酸メチル、ポリビニルクロリド、ポリエチレンおよび/またはハロゲン化過フッ化炭化水素を含有することができる。
【0104】
本明細書に記載の抗感染症薬の制御放出組成物はまた、浮揚性の錠剤またはカプセル、すなわち一定の期間、経口投与時に胃内容物の上部に浮揚する錠剤またはカプセルの形態であることもできる。問題の抗感染症薬の浮揚性錠剤製剤は、抗感染症薬、賦形剤、およびヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの20〜75%w/wの親水コロイドの混合物を顆粒化することにより製造することができる。次いで得られた顆粒は、錠剤に圧縮することができる。胃液と接触する際に、錠剤は、その表面の回りに実質的に水不浸透性ゲル障壁を形成することができる。このゲル障壁は、1未満の密度を維持することに関与し、それにより錠剤を胃液中にて浮揚性の状態のままとする。
【0105】
水の添加による水性懸濁液の調製に適した散剤、分散性散剤または顆粒はまた、便利な投薬形態でもある。懸濁液としての製剤は、分散剤もしくは湿潤剤、懸濁剤、および一つ以上の防腐剤と混合された抗感染症薬を提供する。
【0106】
適切な分散剤または湿潤剤は、例えばレシチン;またはエチレンオキシドと、例えば脂肪酸、長鎖脂肪族アルコール、または脂肪酸およびヘキシトールまたは無水ヘキシトールに由来する部分エステル、例えばポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートとの縮合生成物などとしての天然ホスファチドである。
【0107】
適切な懸濁剤は、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどである。
【0108】
医薬組成物はまた、投薬形態、製剤または例えば従来の、無毒性の医薬的に許容される担体およびアジュバントを含む適切な送達装置もしくはインプラントにおける、注射、輸液または移植(静脈内、筋肉内、関節内、皮下など)により非経口投与することもできる。
【0109】
そのような組成物の製剤化および製造は、医薬製剤の分野の当業者によく知られている。具体的な製剤は、標題「Remington's Pharmaceutical Sciences」の教科書に見ることができる。
【0110】
経口使用のための組成物は、いくらかの投与量を含む単位投与形態、例えばアンプルまたはバイアルにて存在することができ、その中に適切な防腐剤を加えることができる(以下を参照のこと)。組成物は、溶液剤、懸濁剤、乳剤、輸液用器具もしくは移植用送達装置の形態であることができるか、または使用前に水または別の適切なビヒクルで再構成するために乾燥散剤として存在することができる。本明細書に記載の抗感染症薬から離れて、組成物は、適切な非経口的に許容される担体および/または賦形剤を含有することができるか、または有効製剤原料は、制御放出のためのミクロスフェア、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソームなどに組み込むことができる。さらに、組成物は、懸濁剤、可溶化剤、安定化剤、pH調節剤および/または分散剤を都合よく含むことができる。
【0111】
本発明の別の興味深い具体的態様にて、医薬組成物は、WO 03/004001およびWO 2004/062643に記載の特定物質から製造される、錠剤などの固体投薬形態である。
【0112】
上記に示されるように、医薬組成物は、滅菌注射用形態にて抗感染症薬を含むことができる。そのような組成物を製造するために、抗感染症薬は、非経口的に許容される液体ビヒクルに溶解させ、または懸濁させる。用いることができる許容されるビヒクルおよび溶媒のうち、水は、適当な量の塩酸、水酸化ナトリウムまたは適切な緩衝液、1,3-ブタンジオール、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウム溶液の添加により適切なpHに調節する。水性製剤はまた、一つ以上の防腐剤、例えばp-ヒドロキシ安息香酸メチル、エチルまたはn-プロピルを含むこともできる。抗感染症薬が水に難溶性であるか、またはわずかに可溶性である場合、溶解増強剤または可溶化剤を加えることができるか、または溶媒が水とは別に、10〜60%w/wのプロピレングリコールなどを含むことができる。
【0113】
投与量
先に詳細に示したように、本発明の重要な態様は、臨床的に意義のある量、すなわち本明細書に記載の抗感染症薬に通常伴う重篤な副作用を回避するために十分に少ない量にて本明細書に記載の抗感染症薬が投与される場合に、抗感染症薬が病原菌を殺傷することができるという認識である。
【0114】
投与される投与量が投薬形態(以下を参照のこと)に依存するだろうことは理解されよう。独立して、投薬形態の抗感染症薬は、臨床的に意義のある量、すなわち一方で関連する治療効果を及ぼすが、他方で重篤な副作用を提供しない量にて投与されるべきである。
【0115】
好ましくは、本明細書に記載の抗感染症薬は、20 mg/l未満の定常状態血清濃度を生じる臨床的に意義のある量にて投与される。より好ましくは、抗感染症薬は、10 mg/l未満、例えば8.0 mg/l未満などの定常状態血清濃度を生じる意義のある量にて投与する。より好ましくは、抗感染症薬は、7.0 mg/l未満、例えば6.0 mg/l未満など、5.0 mg/l未満の定常状態血清濃度を生じる臨床的に意義のある量にて投与する。さらにより好ましくは、抗感染症薬は、3.0 mg/l未満、例えば2.0 mg/l未満など、4.0 mg/l未満の定常状態血清濃度を生じる臨床的に意義のある量にて投与する。最も好ましくは、抗感染症薬は、1.5 mg/l未満、例えば約1.0 mg/lまたは約0.5 mg/lの定常状態血清濃度を生じる臨床的に意義のある量にて投与する。
【0116】
言い換えると、抗感染症薬は好ましくは、0.02μg/l〜7.0 mg/l、例えば0.04μg/l〜6.0 mg/lなど、0.01μg/lから10.0 mg/l未満および0.01μg/lから8.0 mg/l未満など、0.01μg/lから20.0 mg/ml未満の間の定常状態血清濃度を生じる臨床的に意義のある量にて投与する。より好ましくは、抗感染症薬の定常状態血清濃度は、0.08μg/l〜4.0 mg/lなど、例えば0.1μg/l〜3.0 mg/lなど、0.06μg/l〜5.0 mg/lの間である。さらにより好ましくは、抗感染症薬の定常状態血清濃度は、0.4μg/l〜2.0 mg/l、例えば0.5μg/l〜2.0 mg/lなど、0.2μg/l〜2.0 mg/lの間である。さらにより好ましくは、抗感染症薬の定常状態血清濃度は、0.8μg/l〜2.0 mg/l、例えば0.9μg/l〜2.0 mg/lなど、0.6μg/l〜2.0 mg/lの間である。最も好ましくは、抗感染症薬の定常状態血清濃度は、1.5μg/l〜2.0 mg/l、例えば1.5μg/l〜1.5 mg/lなど、1.0μg/l〜2.0 mg/lの間である。
【0117】
抗感染症薬は、好ましくは約0.1〜3000 mg/日、約0.5〜2000 mg/日などの量にて投与する。当業者により理解されるであろうが、投与される実際の量はとりわけ投与経路、すなわち抗感染症薬が経口投与か、静脈内投与か、筋肉内投与かなどに依存するであろう。
【0118】
全身使用のための経口投与に適合させる組成物について、投与量は通常、治療される感染症に応じて、1 mg〜3 g/用量で、1〜4回/日にて1日〜12ヶ月間投与である。
【0119】
非経口投与、特に静脈内投与について、約0.1〜約2000 mg/日の用量が都合よい。静脈内投与について、1日〜12ヶ月間投与される約0.1〜約2000 mg/日の用量が都合よい。
【0120】
上記定常状態血清濃度および投与量は、所望の臨床効果を生じ、同時に本明細書に記載の抗感染症薬に通常伴う重篤な副作用を回避するだろう。しかし、いくつかの本明細書に記載の抗感染症薬、特に一般式IIIbの抗感染症薬は、より高用量にて投与することができ、それにより上記のレベルを超えた定常状態血清濃度を生じ得る。これは、これらの抗感染症薬が、より高用量にて投与された場合でさえも、重篤な副作用を示さないと考えられる事実による。
本発明はさらに、以下の限定されない実施例により例示される。
【0121】
物質および方法
細菌
臨床分離株をUSA, Canada, Europe and Middle Eastから得、標準対照株をATCC(American Type Culture Selection USA)およびCCUG(Control Culture University of Goteborg, Sweden)から得た。収集は多耐性分離株を含み、臨床的に重要な細菌および真菌を示す。
耐性細胞は感受性細胞株と比較しておよそ10〜1000倍耐性であり、薬物不含培地にて増殖させた場合に安定な薬物耐性表現型を維持した。分離株が同じクローン/菌株を示さないことを確認するためにすべてのブドウ球菌を打ち込んだ。
【0122】
薬物
培地での希釈前に薬物を少量の水または1% DMSO(0.05% DMSO未満のDMSO最終培養濃度)に溶解した。溶液を各実験のために新たに調製した。化合物の純度は>95%であった。
【0123】
微生物細胞増殖における薬物の効果
NCCLSガイドライン(NCCLS Guidelines, Methods for Dilution Antimicrobial Susceptibility Tests for Bacteria That Grow Aerobically; Approved Standard, Sixth Edition, Volume 23; Number 2)によれば、微量液体希釈法の使用により最小阻害濃度(MIC)感受性試験を用いて細胞増殖を試験した。最小阻害濃度(MIC)は、目に見えない増殖を検出する意味で、試験有機体の増殖を阻害する薬物の最低濃度(増殖の全阻害)として定義する。実施例2において、真菌性微生物に用いられる化合物のMICは、NCCLSガイドラインによりIC90測定から決定した。
【0124】
細菌の対数期を新たなあらかじめ温めたMueller-Hinton培地で希釈し、600 nmにて定義されたODに調節し、最終濃度1 x 104-5細菌/培地mlを得た。細菌培養物をマイクロタイタープレートに移し、培養液を各ウェルに加えた。薬物の2倍希釈物としてウェル中の細菌培養物に薬物を加え、0.03〜128μg/mlの最終濃度を得た。ロボットアナライザー, PowerWavex, software KC4, Kebo.Lab, Copenhagenにて16時間振盪することにより37℃にてトレーをインキュベーションし、インキュベーション中、光学密度を600 nmにて測定し、増殖曲線を記録した。薬物を含まない細菌培養物を含むウェルを対照として用い、インキュベーション中、正しい接種サイズおよび細菌増殖を確認した。培養物を試験し、汚染を検出した。各実験を三回繰り返した。MIC値は二の別々の三回実験の平均値を示す。イントラおよびインター・アッセイ変動は<5%であった。
【0125】
抗感染症薬の増殖阻害効果の定義
ウェル中の細菌増殖を遅滞期(lagphase)、すなわち増殖が開始するまで(前)の期間、対数期、すなわち最大増殖速度の期間、定常状態期、次いで死滅期(deathphase)により記載する。細菌増殖における薬物の阻害効果を評価する際に、薬物ありおよびなしで増殖曲線を比較することによりこれらのパラメータを用いる。
細菌増殖の全阻害は、NCCLSガイドラインによりOD (16h) = OD (0h)または増殖が見られないとして定義する。
阻害90(IC90)を90%増殖阻害対応するODとして定義する。
【実施例】
【0126】
実施例1:臨床的に意義のある分離株におけるデアルキル化またはデメチル化フェノチアジンおよびチオキサンテンの効果
表皮ブドウ球菌の臨床的に意義のある分離株を第1表に記載の化合物に対する感受性について上記のように培養しアッセイした。結果を第1表に示す。
【0127】
第1表.表皮ブドウ球菌の多耐性臨床的分離株におけるデアルキル化またはデメチル化フェノチアジンおよびチオキサンテンの効果
【表1】

【0128】
実施例2.真菌の臨床的分離株におけるデメチル化/デアルキル化フェノチアジンまたはチオキサンテン化合物の抗菌効果
デメチル化/デアルキル化フェノチアジンまたはチオキサンテン化合物の抗菌効果を細胞を薬物0-32μg/mlに曝露する増殖阻害研究により検討した。各実験を三回繰り返した。MIC値は二の別々の三回実験の平均値を示す。
カンジダ種(3のフルコナゾール耐性分離株など)の4の臨床的分離株を感受性試験前にサブローブドウ糖寒天上で24時間継代培養した。微量液体希釈試験をNCCLS資料M27-A(Ref: National Commitee for Clinical Laboratory Standards. (1997). Reference Method for Broth Dilution Antifungal Susceptibility Testing of Yeasts: Approved Standard M27-A. NCCLS, Wayne, PA.)により行った。ピペッティングによりウェルを混合し、酵母下面を再懸濁した後、マイクロタイタープレートを530 nmにて分光学的に記録した。本実験にて、MICを90%増殖阻害をもたらす最低薬物希釈として定義した。結果を以下の第2表に示す。
【0129】
第2表.真菌の臨床的分離株における抗菌効果

FR: フルコナゾール耐性
結果は、試験されたチオキサンテン化合物がすべての多耐性分離株を含むカンジダ種の臨床的分離株に対して強い抗真菌活性を示すことを示す。フェノチアジン化合物のいくつかの阻害活性を示したが、チオキサンテン化合物の効果と比較したときにその効果は劣っていた。
【0130】
実施例3:広範な細菌種に対するN-デアルキル-クロペンチキソールの抗菌効果
広範な細菌を培養し、N-デアルキル-クロペンチキソールへの感受性に対して上記のようにアッセイした。結果を以下の第3表に示す。
【0131】
第3a表.N-デアルキル-クロペンチキソールの抗菌効果
【表2】

【0132】
第3b表.N-デアルキル-トランスフルペンチキソールの抗菌効果
【表3】

上記のように、N-デアルキル-トランスフルペンチキソールは多耐性細菌分離株に対する強力な抗菌効果を示す。
【0133】
第3aおよび3b表の結果は、試験化合物N-デアルキル-クロペンチキソールおよびN-デアルキル-トランスフルペンチキソールがすべての多耐性分離株を含む60すべてのグラム陽性臨床的分離株に対して強い抗菌活性を示すことを示す。さらに、化合物がまた、耐性分離株を含む25すべてのグラム陰性臨床的分離株に対して強い抗菌活性を示すことが示される。興味深いことに、シス化合物N-デアルキル-シス-クロペンチキソールと比較したときにN-デアルキル-トランス-クロペンチキソールは優位性を示す。
N-デアルキル-トランス-クロペンチキソールおよびN-デアルキル-トランスフルペンチキソールへの感受性における差異は耐性および感受性分離株間で見られなかった。
【0134】
実施例4:多耐性細菌および真菌への本発明化合物のトランス体およびシス体の抗菌/抗真菌効果
培養微生物を上記のようにアッセイした。N-デアルキル-クロペンチキソールのシス-およびトランス-異性体を培養物に加えた。以下の第4表に結果を示す。
【0135】
第4表.シス体およびトランス体の抗菌効果
【表4】

第4表の結果は、トランス-異性体と比較してシス-異性体がより弱い抗菌剤であることを示す。本実験にて、純粋なトランス-異性体の効果はシス-異性体の効果より32倍高かった。
【0136】
実施例5.エンテロコッカス・フェカリスおよびエンテロコッカス・フェシウムの耐性臨床的分離株へのN-デアルキル-トランス-クロペンチキソールの効果
臨床的に意義のある分離株を培養し、上記のようにアッセイした。結果を第5表に示す。
【0137】
第5表.耐性臨床的分離株へのN-デアルキル-トランス-クロペンチキソールの効果
【表5】

VanB: この分離株は、主にバンコマイシンに影響を及ぼし、テイコプラニンに影響を及ぼさない、vanB-グリコペプチド耐性を示す。
VanA: この分離株は、バンコマイシンおよびテイコプラニンの両方に影響を及ぼす、vanA-グリコペプチド耐性を示す。
HLAR: この分離株は、高レベルのアミノグリコシド耐性を示す。
BLR,CR: この分離株は、ベータラクタムおよびカルバペネム耐性を示す。
【0138】
実験は、試験化合物N-デアルキル-トランス-クロペンチキソールがバンコマイシン耐性、テイコプラニン耐性および高レベルのアミノグリコシド耐性エンテロコッカス種などの耐性および多耐性分離株に対して強い抗菌活性を示すことを示す。上記のように、トランス体の抗菌力がシス体よりも優位である。
【0139】
実施例6:シスおよびトランス化合物のみの効果と比較したシス-トランス代謝化合物の混合物の抗菌効果
文献(Kristensen et al.)に記載されるN-デアルキル-クロペンチキソールのシス/トランス異性体混合物の驚くべき週効果を試験し、シスおよびトランス-異性体のみの抗菌効果と比較するために、N-デアルキル-クロペンチキソールのシスおよびトランス異性体をそれらのみおよび1:1混合物にて微量液体希釈試験を用いて検討し、上記のようにNCCLSガイドラインにより行った。結果を第6表に示す。
【0140】
第6表.シスおよびトランス-N-デアルキル-クロペンチキソールのみの効果と比較したN-デアルキル-クロペンチキソールシス-トランス混合物の効果
【表6】

第6表に見られるように、それのみで試験されたときの細菌増殖の100%阻害に必要な濃度をはるかに超えた濃度にて強いトランス化合物を含むにもかかわらず、トランス化合物のみの非常に強い抗菌活性、シス化合物のみの週効果、および驚くべきことに1:1混合物の週効果のみを見つけた(それのみで試験されたときの0.5 ug/mlトランス化合物と比較して、混合物の観察されたMICは> 2 ug/mlトランス化合物 + 2 ug/mlシス化合物であった)。この驚くべき発見は、シス化合物がトランス化合物の抗感染性の阻害効果を有することを示す。これはKristiansenらにより報告された異性体混合物の弱い効果の説明の一つであってよい。
【0141】
実施例7:シス化合物によるトランス化合物の抗菌効果の阻害
実施例6にて示された、シス化合物がトランス化合物の抗感染性における阻害効果を有するという発見を立証するために、さらなる実験を別の臨床的に意義のある耐性細菌分離株S. Aureus.を用いて行った。アッセイを上記のように行い、結果を以下の第7表に示す。
【0142】
第7表.N-デアルキル-シスクロペンチキソールの存在がN-デアルキル-トランスクロペンチキソールの対応するトランス体の抗菌効果における阻害効果を有する。
【表7】

*指標100 トランス化合物:トランス化合物のみを用いた場合の100%阻害に必要な最小濃度(MIC) = 0,5 ug/ml。100%阻害を達成しない場合には、効果はゼロと記録する。
効果指標トランス化合物:MIC(トランスのみ)/MIC(トランス-シス混合物中のトランス) x 100
【0143】
第7表の結果は、シス化合物がトランス化合物の抗菌効果を阻害するという驚くべき発見を示す。本実験にて、シス化合物0.5 ug/mlの存在下トランス化合物3.0 ug/mlの濃度にて抗菌効果を示すが、シス化合物の非存在下では0.5 0 ug/mlにて抗菌効果を示す。従って、抗感染活性は100から17に83%減少する。
【0144】
実施例8:トランス化合物によるシス化合物の抗菌効果の阻害
トランス化合物がシス化合物の抗感染性における阻害効果を有する場合に試験するために、臨床的に意義のある耐性細菌分離株S. Aureus.を用いてさらなる実験を行った。上記のようにアッセイを行い、結果を以下の第8表に示す。
【0145】
第8表.N-デアルキル-トランスクロペンチキソールの対応するトランス体によるN-デアルキル-シスクロペンチキソールの抗菌効果の阻害。細菌分離株: S. Aureus.
【表8】

*指標100 シス化合物:シス化合物のみを用いた場合の100%阻害に必要な最小濃度(MIC) = 16 ug/ml。100%阻害を達成しない場合には、効果はゼロと記録する。
効果指標シス化合物:MIC(シスのみ)/MIC(シス-トランス混合物中のシス) x 100
【0146】
第8表の結果は、トランス化合物がシス化合物の抗菌効果を阻害するという驚くべき発見を示す。シス化合物の抗菌効果は、少量(トランス化合物のMIC値未満)のトランス化合物の存在下にて100から89に11%減少する。
このような発見は、非常に驚くべきことであり、本発明化合物のシスおよびトランス体がともに抗感染特性を有するが、二の異性体の混合物は抗感染性が弱いことを示唆する。
【0147】
実施例9:マウス腹膜炎/敗血症モデルにおけるN-デアルキル-トランス-クロペンチキソールの抗菌効果
ヒト尿からのエンテロコッカス・フェカリスBG-029 VSE-92の臨床的多耐性分離株を用いた。
細菌
ヒト尿からの大便連鎖球菌BG VSE-92の臨床多剤耐性分離株を用いた。
動物
雌NMRIマウス(年齢、約6〜8週;体重、30±2 g)をマウス肺炎腹膜炎モデルについて用いた(以下に示すとおり)。
【0148】
細菌懸濁液を上記のように5%血液寒天プレート上の新たな一晩培養物(凍結保存培養物由来)から調製した。マウス腹膜炎モデルについての接種は使用直前に調製し、約107 CFU/mlの密度を与える540 nmにおいて調節した。接種サイズは5%血液寒天における生存率により測定した。
マウスに腸球菌懸濁液0.5 mlを腹腔内注射し、接種の1時間以内に菌血症を生じた。抗生剤治療は接種して1時間後に開始した。N-デアルキル-トランス-クロペンチキソールを用量あたり0.7 mlの容積にて首の領域に皮下投与した。10匹のマウスを各処置群に用いた。接種未処置対照マウスをすべての試験に含んだ(Method reference: Erlandsdottir et al; Antimicrob Agents Chemother. 2001 Apr;45(4):1078-85)。
【0149】
【表9】

【0150】
種々の処置レジメの効果は、腹水中の細菌数の評価により処置の6時間の間に測定した。マウスを殺した後、血液をすぐに生理食塩水で10倍に希釈し、そのうちの20μlを5%血液寒天プレート上に所々に置き、次いで35℃にて一晩インキュベーションした後、コロニーを数えた。血液における細菌数についての最低検出レベルは50 CFU/mlであった。
【0151】
マウスモデルにおける処置レジメの殺菌効力は、処置の終わり(6時間)における対照マウスについての平均結果から各処置マウスについての結果を引くことにより算出した。<0.05のP値は有意であると考えられる。すべての統計的比較は両側検定であった。
【0152】
マウス血液におけるN-デアルキル-トランス-クロペンチキソールの殺菌活性を第9bに示す。示されているように、マウスがN-デアルキル-トランス-クロペンチキソールで処置した場合には、血液mlあたりの細菌数はおよそ2 log減少し(p<0.05)、それにより感染マウスにてN-デアルキル-トランス-クロペンチキソールの強抗菌活性を示す。
【0153】
第9b表.植菌後6時間における処置および未処置感染マウスにおける細菌/血液ml
【表10】

*: N-デアルキル.トランス-クロペンチキソール
【0154】
実施例10-チオキサンテン誘導体の真菌への抗菌効果
N-デアルキル-トランス-クロペンチキソールおよびN-デアルキル-トランス-フルペンチキソールの抗菌効果は、2倍希釈で0-8μg/mlの化合物に曝露することにより検討した。各実験を複製物で三回繰り返した。MIC値は二つの別々の実験の平均値を示す。
真菌菌株:
フルコナゾール耐性カンジダ・アルビカンスのカンジダ性敗血症患者からの臨床分離株
【0155】
感受性試験の前に、分離株をサブロー(Sabouraud)グルコース寒天にて24時間継代培養した。ブロス微量希釈試験は、NCCLS文書M27-A(参考文献: National Commitee for Clinical Laboratory Standards. (1997). Reference Method for Broth Dilution Antifungal Susceptibility Testing of Yeasts: Approved Standard M27-A. NCCLS, Wayne, PA.)に従い行った。
【0156】
ピペッティングして酵母堆積物を再懸濁させることによりウェルを混合した後、マイクロタイタープレートを分光学的に530 nmにて読み取った。80%増殖阻害を生じる最低薬物希釈としてMICを定義した。
【表11】

上記のように、N-デアルキル-トランス-フルペンチキソールおよびN-デアルキル-トランス-クロペンチキソールは強力な抗真菌効果を示す。
【0157】
実施例11−チオキサンテン誘導体の抗ウイルス化合物への増強効果
N-デアルキル-トランス-フルペンチキソールおよびN-デアルキル-トランス-クロペンチキソールの抗菌効果は、0〜3μMトランス-クロペンチキソールにHIV感染細胞を曝露するチェッカーボード検討により検討した。各実験は複製物で三回繰り返した。MIC値は二つの別々の実験の平均値を示す。
【0158】
方法:
ウイルスおよび細胞
HIV-1菌株HTLV-IIIBを、10%熱不活性化ウシ胎仔血清(FCS)および抗生剤(増殖培地)でRPMI 1640を用いて37℃、5%CO2にてH9細胞にて増殖させた。培養上清をろ過し(0.45 nm)、アリコートを取り、使用まで−80℃にて保存した。HIV-1菌株をNIH AIDS Research and Reference Programから得た。
化合物
N-デアルキル-トランス-フルペンチキソールおよびN-デアルキル-トランス-クロペンチキソール
【0159】
HIV−1複製の阻害
標的細胞としてMT4細胞を用いてHIV−1の菌株IIIBに対する可能性のある抗ウイルス活性について化合物を試験した。ウイルス感染培養物および化合物を加えない非感染対照培養物と並行して6日間、ウイルス(0.005 MOI)および化合物の試験希釈物を含む増殖培地でMT4細胞をインキュベーションした。培養物中のHIVの発現は先に記載のMTTアッセイを用いて間接的に定量した。HIV発現の30%未満の減少を媒介する化合物は生物学的活性を有さないものと考えた。上記の化合物の試験希釈物を含む非感染MT4培養物における細胞毒性効果について並行して化合物を試験した。抗ウイルス活性および細胞毒性効果の両方の試験についての培養物は、マイクロタイタープレート中の培養物あたり200 mlの複製物で三回行った。
対照培養物と関連する細胞増殖の30%阻害は有意であると考えた。
化合物の濃度に対する百分率阻害のプロットからの補間により50%阻害濃度を測定した。
EC50を、50%のウイルス生成、50%のウイルス感染性または50%のウイルス誘導細胞変性効果を阻害する有効濃度として定義する。
CC50を、非感染細胞の細胞増殖または生存率を50%減少させる阻害濃度として定義する。
【0160】
結果
第11表に見られるように、N-デアルキル-トランス-フルペンチキソールおよびN-デアルキル-トランス-クロペンチキソールはインビトロにて抗菌効果を示し、従ってインビボにてウイルス株を阻害するのに十分であることができる。
【0161】
第11表:N-デアルキル-トランス-フルペンチキソールおよびN-デアルキル-トランス-クロペンチキソールの抗菌効果。μMにおける濃度(本文参照)。
【表12】

EC50を、50%のウイルス生成、50%のウイルス感染性または50%のウイルス誘導細胞変性効果を阻害する有効濃度として定義する。
CC50を、非感染細胞の細胞増殖または生存率を50%減少させる阻害濃度として定義する。
【0162】
ウイルス試験方法参照:Petersen L, Jorgensen PT, Nielsen C, Hansen TH, Nielsen J, Pedersen EB. Synthesis and Evaluation of Double-Prodrugs against HIV. SATEプロドラッグアプローチによる、D4Tと6-ベンジル-1-(エトキシメチル)-5-イソプロピルウラシル(MKC-442, エミビリン(Emivirine))型逆転写酵素阻害剤とのコンジュゲーション J. Med. Chem. 2005, 48, 1211-1220。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染症の治療または予防のための、一般式(I):
【化1】

(I)
[式中、
WはC=CHであり;
VはS、SO2、SO、OおよびNHからなる群から選択され;
nは1〜6の範囲の整数であり;
Xはそれぞれ、独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルおよび適宜置換されていてもよいC1-6-アルコキシからなる群から選択され;
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R13およびR14はそれぞれ、独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキル、適宜置換されていてもよいC2-6-アルケニル、適宜置換されていてもよいC2-6-アルキニルおよび適宜置換されていてもよいC1-6-アルコキシ、適宜置換されていてもよいC2-6-アルケニルオキシ、カルボキシ、適宜置換されていてもよいC1-6-アルコキシカルボニル、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルカルボニル、ホルミル、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルスルホニルアミノ、適宜置換されていてもよいアリール、適宜置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、適宜置換されていてもよいアリールオキシ、適宜置換されていてもよいアリールカルボニル、適宜置換されていてもよいアリールアミノ、アリールスルホニルアミノ、適宜置換されていてもよいヘテロアリール、適宜置換されていてもよいヘテロアリールオキシカルボニル、適宜置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、適宜置換されていてもよいヘテロアリールカルボニル、適宜置換されていてもよいヘテロアリールアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、適宜置換されていてもよいヘテロシクリル、適宜置換されていてもよいヘテロシクリルオキシカルボニル、適宜置換されていてもよいヘテロシクリルオキシ、適宜置換されていてもよいヘテロシクリルカルボニル、適宜置換されていてもよいヘテロシクリルアミノ、ヘテロシクリルスルホニルアミノ、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ、カルバモイル、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノカルボニル、アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、C1-6-アルキルカルボニルアミノ、アミノ-C1-6-アルキル-カルボニルアミノ、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ-C1-6-アルキル-カルボニルアミノ、アミノ-C1-6-アルキル-アミノ、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ-C1-6-アルキル-アミノ、シアノ、グアニジノ、カルバミド、C1-6-アルカノイルオキシ、C1-6-アルキルスルホニル、C1-6-アルキルスルフィニル、C1-6-アルキルスルホニルオキシ、アミノスルホニル、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノスルホニル、および適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルチオからなる群から選択され;
12は水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ハロゲン、CHY、CHYまたはCYであり、Yはそれぞれ水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロまたはハロゲンから選択される]
で示される抗感染症薬またはその代謝体もしくは塩。
【請求項2】
2がF、Cl、Br、I、CH2Y、CHY2およびCY3(ここに、Yはハロゲン原子である)からなる群から選択される、請求項1記載の抗感染症薬。
【請求項3】
2がF、Cl、CF3およびCCl3からなる群から選択される、請求項2記載の抗感染症薬。
【請求項4】
2がClまたはCF3である、請求項3記載の抗感染症薬。
【請求項5】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R13およびR14がそれぞれ、独立して水素、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルおよび適宜置換されていてもよいC1-6-アルコキシからなる群から選択される、先の請求項のいずれか記載の抗感染症薬。
【請求項6】
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R13およびR14が水素である、請求項5記載の抗感染症薬。
【請求項7】
VがSまたはSOである、先の請求項のいずれか記載の抗感染症薬。
【請求項8】
VがSである、請求項7記載の抗感染症薬。
【請求項9】
nが1〜5の範囲の整数である、請求項1〜8のいずれか記載の抗感染症薬。
【請求項10】
nが2または3である、請求項9記載の抗感染症薬。
【請求項11】
nが2である、請求項10記載の抗感染症薬。
【請求項12】
12が水素、CHおよびCHOHからなる群から選択される、請求項1〜11のいずれか記載の抗感染症薬。
【請求項13】
12が水素およびCHからなる群から選択される、請求項12記載の抗感染症薬。
【請求項14】
Wがそれに結合した官能基と一緒になって、CCH-(CH-4-メチル-ピペラジニル、CCH-CH-CH(CH)-4-メチル-ピペラジニル、CCH-(CH-ピペラジニルまたはCCH-CH-CH(CH)-ピペラジニルである、請求項13記載の抗感染症薬。
【請求項15】
Wがそれに結合した官能基と一緒になって、CCH-(CH-ピペラジニルである、請求項14記載の抗感染症薬。
【請求項16】
抗感染症薬がN-デアルキル-フルペンチキソール、N-デアルキル-クロペンチキソール、N-デメチル-フルペンチキソール、N-デメチル-クロペンチキソールからなる群から選択される、請求項1〜15のいずれか記載の抗感染症薬。
【請求項17】
抗感染症薬がN-デアルキル-フルペンチキソールおよびN-デアルキル-クロペンチキソールからなる群から選択される、請求項16記載の抗感染症薬。
【請求項18】
抗感染症薬がN-デアルキル-クロペンチキソールである、請求項17記載の抗感染症薬。
【請求項19】
抗感染症化合物が60%を超える異性体純度を有する、請求項1〜18のいずれか記載の抗感染症薬。
【請求項20】
抗感染症化合物がトランス立体配置を有する、請求項1〜19のいずれか記載の抗感染症薬。
【請求項21】
抗感染症化合物がシス立体配置を有する、請求項1〜19のいずれか記載の抗感染症薬。
【請求項22】
感染症の治療用または予防用医薬の製造のための請求項1〜21のいずれか記載の抗感染症薬の使用。
【請求項23】
抗感染症薬が臨床的に意義のある量にて、用いられるか、または投与される、請求項22記載の使用。
【請求項24】
抗感染症薬が20.0mg/l未満の定常状態血清濃度を生じる臨床的に意義のある量にて用いられるか、または投与される、請求項23記載の使用。
【請求項25】
定常状態血清濃度が0.01μg/lから20.0mg/l未満の間である、請求項24記載の使用。
【請求項26】
抗感染症薬が単一抗感染症薬として用いられる、請求項22〜25のいずれか記載の使用。
【請求項27】
感染症の治療または予防のための請求項1〜21のいずれか記載の抗感染症薬の使用。
【請求項28】
抗感染症薬が臨床的に意義のある量にて、用いられるか、または投与される、請求項27記載の使用。
【請求項29】
抗感染症薬が20.0mg/l未満の定常状態血清濃度を生じる臨床的に意義のある量にて用いられるか、または投与される、請求項28記載の使用。
【請求項30】
定常状態血清濃度が0.01μg/lから20.0mg/l未満の間である、請求項29記載の使用。
【請求項31】
抗感染症薬が単一抗感染症薬として用いられる、請求項27〜30のいずれか記載の使用。
【請求項32】
感染症が病原菌により引き起こされる、請求項1〜21のいずれか記載の抗感染症薬。
【請求項33】
病原菌が薬物耐性を示す、請求項32記載の抗感染症薬。
【請求項34】
病原菌が多剤耐性を示す、請求項33記載の抗感染症薬。
【請求項35】
一般式(I):
【化2】

(I)
[式中、
VはS、SO2、SO、OおよびNHからなる群から選択され;
WはC=CHであり;
nは1〜6の範囲の整数であり;
Xはそれぞれ、独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルおよび適宜置換されていてもよいC1-6-アルコキシからなる群から選択され;
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R13およびR14はそれぞれ、独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキル、適宜置換されていてもよいC2-6-アルケニル、適宜置換されていてもよいC2-6-アルキニルおよび適宜置換されていてもよいC1-6-アルコキシ、適宜置換されていてもよいC2-6-アルケニルオキシ、カルボキシ、適宜置換されていてもよいC1-6-アルコキシカルボニル、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルカルボニル、ホルミル、適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルスルホニルアミノ、適宜置換されていてもよいアリール、適宜置換されていてもよいアリールオキシカルボニル、適宜置換されていてもよいアリールオキシ、適宜置換されていてもよいアリールカルボニル、適宜置換されていてもよいアリールアミノ、アリールスルホニルアミノ、適宜置換されていてもよいヘテロアリール、適宜置換されていてもよいヘテロアリールオキシカルボニル、適宜置換されていてもよいヘテロアリールオキシ、適宜置換されていてもよいヘテロアリールカルボニル、適宜置換されていてもよいヘテロアリールアミノ、ヘテロアリールスルホニルアミノ、適宜置換されていてもよいヘテロシクリル、適宜置換されていてもよいヘテロシクリルオキシカルボニル、適宜置換されていてもよいヘテロシクリルオキシ、適宜置換されていてもよいヘテロシクリルカルボニル、適宜置換されていてもよいヘテロシクリルアミノ、ヘテロシクリルスルホニルアミノ、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ、カルバモイル、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノカルボニル、アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ-C1-6-アルキル-アミノカルボニル、C1-6-アルキルカルボニルアミノ、アミノ-C1-6-アルキル-カルボニルアミノ、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ-C1-6-アルキル-カルボニルアミノ、アミノ-C1-6-アルキル-アミノ、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノ-C1-6-アルキル-アミノ、シアノ、グアニジノ、カルバミド、C1-6-アルカノイルオキシ、C1-6-アルキルスルホニル、C1-6-アルキルスルフィニル、C1-6-アルキルスルホニルオキシ、アミノスルホニル、モノおよびジ(C1-6-アルキル)アミノスルホニル、および適宜置換されていてもよいC1-6-アルキルチオからなる群から選択され;
12は水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、ハロゲン、CHY、CHYまたはCYであり、ここに、Yはそれぞれ水素、ヒドロキシ、アミノ、ニトロまたはハロゲンから選択される]
で示される抗感染症薬またはその代謝体もしくは塩を対象に投与することを特徴とする、対象における感染症を治療または予防する方法。
【請求項36】
抗感染症薬が請求項1〜21のいずれかに定義されるとおりである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
抗感染症薬が請求項27〜31のいずれかに定義されているように投与される、請求項35または36記載の方法。
【請求項38】
感染症が病原菌により引き起こされる、請求項35〜37のいずれか記載の方法。
【請求項39】
病原菌が請求項33または34に定義されるとおりである、請求項38記載の方法。
【請求項40】
請求項1〜22のいずれか記載の抗感染症薬および少なくとも一つの医薬的に許容される担体または賦形剤を含有する、医薬組成物。
【請求項41】
組成物がさらなる抗感染症薬を含有しない、請求項35記載の医薬組成物。
【請求項42】
組成物が単位投与形態である、請求項35または36記載の医薬組成物。
【請求項43】
組成物が錠剤の形態である、請求項42記載の医薬組成物。
【請求項44】
組成物が滅菌溶液の形態である、請求項43記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2010−514814(P2010−514814A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544361(P2009−544361)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【国際出願番号】PCT/DK2008/000005
【国際公開番号】WO2008/080408
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(506363654)ベーコーゲー・ファーマ・アンパルトセルスカブ (4)
【氏名又は名称原語表記】BKG Pharma ApS
【Fターム(参考)】