説明

感温変色性適温表示包装体

【課題】熱変色性物品を収容し、前記熱変色性物品の流通或いは保存時における温度が所定温度内であったか否かを表示する感温変色性適温表示包装体を提供する。
【解決手段】所定温度以下に保冷を要する熱変色性物品を収容した包装体は感温変色性色彩記憶性材料を含む可逆熱変色層を有し、熱変色性物品及び包装体の感温変色性色彩記憶性材料が色濃度−温度曲線に関してヒステリシス特性を示して有色と無色の互変性を呈し、有色から温度が上昇する過程では、消色開始温度tに達すると消色し始め完全消色温度t以上の温度域で完全に無色となり、温度が下降する過程で発色開始温度tに達すると着色し始め、完全発色温度t以下の温度域で完全に着色するヒステリシス特性を示し、熱変色性物品の完全消色温度(A)に対し、包装体の完全消色温度(A´)が下記式(1)を満たす感温変色性適温表示包装体。A−5≦A´≦A(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感温変色性適温表示包装体に関する。更に詳細には、温度変化により変色する物品を収容してなり、流通、保存時における温度変化が、適正温度域に保持されたか否かを検知する感温変色性適温表示包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度変化により変色する可逆熱変色層を設けた感温表示インジケーターが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
前記インジケーターは、色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を適用したものであり、熱又は冷熱が取り去られた状態にあっても、その温度を記憶保持して色表示するインジケーターであって、流通、保存時において、生鮮食品、冷凍食品、飲料、生花等の冷凍又は保冷物品、或いは、保温乃至高温の保存を要する薬剤等の物品が、適正保持温度域にあったか否かをチェックすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−46335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、この種の適正保持温度域にあったか否かをチェックすることができる感温変色性適温表示包装体であって、内部に熱変色性物品を収容してなり、熱変色性物品が常時適正な温度に保持されたかを確認でき、該熱変色性物品を包装体から取り出した直後から良好な熱変色機能を発現させることができる感温変色性適温表示包装体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、温度変化によってヒステリシス特性を示して変色する感温変色性色彩記憶性材料を用いた、所定温度以下に保冷を要する熱変色性物品を収容し、前記熱変色性物品の流通或いは保存時における温度が、所定温度以下であったか否かを表示する包装体であって、前記包装体は、温度変化によってヒステリシス特性を示して変色する感温変色性色彩記憶性材料を含む可逆熱変色層を有してなり、前記熱変色性物品及び包装体の感温変色性色彩記憶性材料が、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応の生起温度を決める反応媒体とから少なくともなる感温変色性色彩記憶性組成物をマイクロカプセルに内包したマイクロカプセル顔料であり、色濃度−温度曲線に関してヒステリシス特性を示して有色状態と無色状態の互変性を呈し、前記マイクロカプセル顔料は有色状態から温度が上昇する過程では、消色開始温度tに達すると消色し始め、温度tより高い完全消色温度t以上の温度域で完全に無色状態となり、無色状態から温度が下降する過程では、発色開始温度tに達すると着色し始め、温度tより低い完全発色温度t以下の温度域で完全に着色状態となるヒステリシス特性を示し、熱変色性物品の完全消色温度(A)に対し、包装体の完全消色温度(A´)が下記式(1)を満たす感温変色性適温表示包装体、或いは、
A−5≦A´≦A (1)
温度変化によってヒステリシス特性を示して変色する感温変色性色彩記憶性材料を用いた、所定温度以上に保温を要する熱変色性物品を収容し、前記熱変色性物品の流通或いは保存時における温度が、所定温度以上であったか否かを表示する包装体であって、前記包装体は、温度変化によってヒステリシス特性を示して変色する感温変色性色彩記憶性材料を含む可逆熱変色層を有してなり、前記熱変色性物品及び包装体の感温変色性色彩記憶性材料が、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応の生起温度を決める反応媒体とから少なくともなる感温変色性色彩記憶性組成物をマイクロカプセルに内包したマイクロカプセル顔料であり、色濃度−温度曲線に関してヒステリシス特性を示して有色状態と無色状態の互変性を呈し、前記マイクロカプセル顔料は有色状態から温度が上昇する過程では、消色開始温度tに達すると消色し始め、温度tより高い完全消色温度t以上の温度域で完全に無色状態となり、無色状態から温度が下降する過程では、発色開始温度tに達すると着色し始め、温度tより低い完全発色温度t以下の温度域で完全に着色状態となるヒステリシス特性を示し、熱変色性物品の完全発色温度(D)に対し、包装体の完全発色温度(D´)が下記式(2)を満たす感温変色性適温表示包装体を要件とする。
D≦D´≦D+5 (2)
【発明の効果】
【0006】
本発明は、内部に熱変色性物品を収容してなり、熱変色性物品が常時適正温度域に保持し得たか否かを検知し、該熱変色性物品を包装体から取り出した直後から良好な熱変色機能を発現させることができる実用性の高い感温変色性適温表示包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に適用する感温変色性色彩記憶性材料の温度−色濃度曲線を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前記熱変色性物品及び包装体の可逆熱変色層に含まれる感温変色性色彩記憶性材料は、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、前記成分(イ)、(ロ)の呈色反応を準可逆的に生起させる媒体となる化合物の三成分からなる感温変色性色彩記憶性組成物が用いられ、温度変化により温度−色濃度についてヒステリシス特性(ヒステリシス幅:ΔH)を示して変色する。すなわち変色温度域より低温側から温度を上昇させていく場合と、逆に変色温度域より高温側から温度を下降させていく場合とでは異なる経路をたどって変色する現象を呈するものである。
前記感温変色性色彩記憶性材料の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性を図1のグラフによって説明する。
図1において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t3(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
変色温度領域は前記tとt間の温度域であり、発色状態と消色状態のいずれかの状態を呈することができ、tとt間の温度域が実質変色温度域(二相保持温度域)である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が大きい程、変色前後の各状態の保持が容易である。
【0009】
以下に感温変色性色彩記憶性組成物の(イ)、(ロ)、(ハ)の各成分について具体的に化合物を例示する。
本発明の(イ)成分である電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類等が挙げられる。
以下にこれらの化合物を例示する。
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、
3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、
3,3−ビス(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−4−アザフタリド、
3−〔2−エトキシ−4−(N−エチルアニリノ)フェニル〕−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、
3,6−ジフェニルアミノフルオラン、
3,6−ジメトキシフルオラン、
3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、
2−メチル−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、
2−(2−クロロアミノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、
2−(2−クロロアニリノ)−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−(3−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−(N−メチルアニリノ)−6−(N−エチル−N−p−トリルアミノ)フルオラン、
1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−クロロ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
2−アニリノ−3−メチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、
2−キシリジノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)フルオラン、
1,2−ベンツ−6−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)フルオラン、
2−(3−メトキシ−4−ドデコキシスチリル)キノリン、
スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−d)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3′−オン、
2−(ジエチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジ−n−ブチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(ジエチルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジ−n−ブチルアミノ)−8−(N−エチル−N−i−アミルアミノ)−4−メチル−スピロ〔5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕−3−オン、
2−(ジブチルアミノ)−8−(ジペンチルアミノ)−4−メチル−スピロ[5H−(1)ベンゾピラノ(2,3−g)ピリミジン−5,1′(3′H)−イソベンゾフラン]−3−オン、
3−(2−メトキシ−4−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−ペンチル−2−メチルインドール−3−イル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、
4,5,6,7−テトラクロロ−3−[4−(ジメチルアミノ)−2−メチルフェニル]−3−(1−エチル−2−メチル−1H−インドール−3−イル)−1(3H)−イソベンゾフラノン、
3′,6′−ビス〔フェニル(2−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9′−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3′,6′−ビス〔フェニル(3−メチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9′−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
3′,6′−ビス〔フェニル(3−エチルフェニル)アミノ〕−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9′−〔9H〕キサンテン]−3−オン、
4−[2,6−ビス(2−エトキシフェニル)−4−ピリジニル]−N,N−ジメチルベンゼンアミン等を挙げることができる。
【0010】
成分(ロ)の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群〔酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群〕、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等が挙げられる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o−クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ドデシルフェノール、n−ステアリルフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、o−フェニルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1−フェニル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ドデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)2−エチルヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)n−ノナン等がある。
【0011】
前記(ハ)成分としては、エステル類、ケトン類、エーテル類を挙げることができ、5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールとのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコール又はフェノールとのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコールとのエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコール又は分岐脂肪族アルコールとのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
【0012】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n−ペンチルアルコール又はn−ヘプチルアルコールと炭素数10乃至16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17乃至23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
具体的には、酢酸n−ペンタデシル、酪酸n−トリデシル、酪酸n−ペンタデシル、カプロン酸n−ウンデシル、カプロン酸n−トリデシル、カプロン酸n−ペンタデシル、カプリル酸n−ノニル、カプリル酸n−ウンデシル、カプリル酸n−トリデシル、カプリル酸n−ペンタデシル、カプリン酸n−ヘプチル、カプリン酸n−ノニル、カプリン酸n−ウンデシル、カプリン酸n−トリデシル、カプリン酸n−ペンタデシル、ラウリン酸n−ペンチル、ラウリン酸n−ヘプチル、ラウリン酸n−ノニル、ラウリン酸n−ウンデシル、ラウリン酸n−トリデシル、ラウリン酸n−ペンタデシル、ミリスチン酸n−ペンチル、ミリスチン酸n−ヘプチル、ミリスチン酸n−ノニル、ミリスチン酸n−ウンデシル、ミリスチン酸n−トリデシル、ミリスチン酸n−ペンタデシル、パルミチン酸n−ペンチル、パルミチン酸n−ヘプチル、パルミチン酸n−ノニル、パルミチン酸n−ウンデシル、パルミチン酸n−トリデシル、パルミチン酸n−ペンタデシル、ステアリン酸n−ノニル、ステアリン酸n−ウンデシル、ステアリン酸n−トリデシル、ステアリン酸n−ペンタデシル、エイコサン酸n−ノニル、エイコサン酸n−ウンデシル、エイコサン酸n−トリデシル、エイコサン酸n−ペンタデシル、ベヘニン酸n−ノニル、ベヘニン酸n−ウンデシル、ベヘニン酸n−トリデシル、ベヘニン酸n−ペンタデシル等を挙げることができる。
【0013】
また、ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2−デカノン、3−デカノン、4−デカノン、2−ウンデカノン、3−ウンデカノン、4−ウンデカノン、5−ウンデカノン、2−ドデカノン、3−ドデカノン、4−ドデカノン、5−ドデカノン、2−トリデカノン、3−トリデカノン、2−テトラデカノン、2−ペンタデカノン、8−ペンタデカノン、2−ヘキサデカノン、3−ヘキサデカノン、9−ヘプタデカノン、2−ペンタデカノン、2−オクタデカノン、2−ノナデカノン、10−ノナデカノン、2−エイコサノン、11−エイコサノン、2−ヘンエイコサノン、2−ドコサノン、ラウロン、ステアロン等を挙げることができる。
また、総炭素数が12乃至24のアリールアルキルケトン類、例えば、n−オクタデカノフェノン、n−ヘプタデカノフェノン、n−ヘキサデカノフェノン、n−ペンタデカノフェノン、n−テトラデカノフェノン、4−n−ドデカアセトフェノン、n−トリデカノフェノン、4−n−ウンデカノアセトフェノン、n−ラウロフェノン、4−n−デカノアセトフェノン、n−ウンデカノフェノン、4−n−ノニルアセトフェノン、n−デカノフェノン、4−n−オクチルアセトフェノン、n−ノナノフェノン、4−n−ヘプチルアセトフェノン、n−オクタノフェノン、4−n−ヘキシルアセトフェノン、4−n−シクロヘキシルアセトフェノン、4−tert−ブチルプロピオフェノン、n−ヘプタフェノン、4−n−ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル−n−ブチルケトン、4−n−ブチルアセトフェノン、n−ヘキサノフェノン、4−イソブチルアセトフェノン、1−アセトナフトン、2−アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等を挙げることができる。
【0014】
また、エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
【0015】
また、前記(ハ)成分として、下記一般式(1)で示される化合物が好適に用いられる。
【化1】

〔式中、Rは水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X、Xのいずれか一方は−(CHOCOR又は−(CHCOOR、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、Rは炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y及びYは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。〕
前記式(1)で示される化合物のうち、Rが水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にRが水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
なお、式(1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(2)で示される化合物が用いられる。
【化2】

式中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12〜22のアルキル基である。
前記化合物として具体的には、オクタン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ノナン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、デカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ウンデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ドデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、トリデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、テトラデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ペンタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘキサデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、ヘプタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチル、オクタデカン酸−4−ベンジルオキシフェニルエチルを例示できる。
【0016】
更に、前記(ハ)成分として、下記一般式(3)で示される化合物を用いることもできる。
【化3】

(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。)
前記化合物として具体的には、オクタン酸1,1−ジフェニルメチル、ノナン酸1,1−ジフェニルメチル、デカン酸1,1−ジフェニルメチル、ウンデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ドデカン酸1,1−ジフェニルメチル、トリデカン酸1,1−ジフェニルメチル、テトラデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ペンタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘキサデカン酸1,1−ジフェニルメチル、ヘプタデカン酸1,1−ジフェニルメチル、オクタデカン酸1,1−ジフェニルメチルを例示できる。
【0017】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(4)で示される化合物を用いることもできる。
【化4】

(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、マロン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、こはく酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、こはく酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、グルタル酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アジピン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、ピメリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(3−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(4−クロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、スベリン酸と2−〔4−(2,4−ジクロロベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステル、アゼライン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、セバシン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,10−デカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−(4−ベンジルオキシフェニル)エタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−〔4−(2−メチルベンジルオキシ)フェニル)〕エタノールとのジエステルを例示できる。
【0018】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(5)で示される化合物を用いることもできる。
【化5】

(式中、Rは炭素数1乃至21のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは1乃至3の整数を示す。)
前記化合物としては、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとウンデカン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステル、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンと酪酸とのジエステル、1,4−ビス(ヒドロキシメトキシ)ベンゼンとイソ吉草酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと酢酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとプロピオン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンと吉草酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプロン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリル酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとカプリン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとラウリン酸とのジエステル、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとミリスチン酸とのジエステルを例示できる。
【0019】
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(6)で示される化合物を用いることもできる。
【化6】

(式中、Xは水素原子、炭素数1乃至4のアルキル基、炭素数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1乃至20の整数を示す。)
前記化合物としては、こはく酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、スベリン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、セバシン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、1,10-デカンジカルボン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステル、1,18-オクタデカンジカルボン酸と2−フェノキシエタノールとのジエステルを例示できる。
【0020】
本発明における(イ)、(ロ)、(ハ)成分の構成成分割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜50、好ましくは0.5〜20、(ハ)成分1〜800、好ましくは5〜200の範囲である(前記割合はいずれも質量部である)。
又、各成分は各々二種以上の混合であってもよく、機能に支障のない範囲で酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、溶解助剤等を添加することができる。
【0021】
前記三成分からなる感温変色性色彩記憶性組成物はマイクロカプセルに内包して感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料として使用される。それは、酸性物質、塩基性物質、過酸化物等の化学的に活性な物質又は他の溶剤成分と接触しても、その機能を低下させることがないことは勿論、耐熱安定性が保持できるためであり、種々の使用条件において感温変色性色彩記憶性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
前記マイクロカプセル顔料は、平均粒子径0.1〜20μm、好ましくは0.5〜15μm、より好ましくは、0.5〜10μmの範囲が実用性を満たす。
前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径が20μmを越える系では、インキ、塗料への使用に対して、分散安定性に欠ける。
一方、マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.1μm以下の系では、高濃度の発色性を示し難い。
なお、粒子径の測定はレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置〔(株)堀場製作所製;LA−300〕を用いて測定し、その数値を基に平均粒子径(メジアン径)を算出する。
前記マイクロカプセルは、内包物/壁膜=7/1〜1/1(質量比)の範囲が有効であり、内包物の比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を免れず、好適には、内包物/壁膜=6/1〜1/1(質量比)である。
前記マイクロカプセル化は、公知のイソシアネート系の界面重合法、メラミン−ホルマリン系等のin Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて更に二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
【0022】
本発明の感温変色性適温表示包装体は、感温変色性色彩記憶性材料を含む可逆熱変色層を設けた包装体であって、前記感温変色性色彩記憶性材料をビヒクル中に分散して、塗料や印刷インキ等の液状組成物を調製し、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷、転写等の印刷手段、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等の手段により、紙、合成紙、プラスチックフィルム、プラスチック、木材等の包装体に直接又はアンダーコート層を介して可逆熱変色層を形成する。
また、可逆熱変色層を設けたラベルを包装体に貼着することもできる。
更に、前記液状組成物として感温変色性色彩記憶性材料を含む筆記具インキを調製し、前記インキを収容した筆記具を用いて包装体に可逆熱変色層(筆記像)を形成したり、感温変色性色彩記憶性材料を含むスタンプインキを用いて包装体に可逆熱変色層(印像)を形成することもできる。
なお、前記液状組成物中には、一般の染料や顔料(非熱変色性)を配合し、有色(1)から有色(2)への変色挙動を呈することもできる。
前記包装体は、所望の熱変色性物品が収容できる大きさであればよく、特に形状が限定されるものではない。
【0023】
前記包装体に収容される熱変色性物品は、前記包装体と同様の感温変色性色彩記憶性材料を用いた物品であって、物品表面に前記感温変色性色彩記憶性材料を含む可逆熱変色層を形成した物品、物品内に感温変色性色彩記憶性材料を収容した物品が挙げられる。
【0024】
本発明感温変色性適温表示包装体は、収容する熱変色性物品が変色する温度、即ち、適正保持温度域外の温度環境下に置かれた時、その履歴を記憶保持することが可能である。
前記記憶保持には、保冷を要する物品の系では適正保持温度域外、すなわち温度の上がりすぎを、保温を要する物品の系では温度の下がりすぎをチェックできるよう構成される。
【0025】
前記熱変色性物品が保冷を要する系では、該熱変色性物品の感温変色性色彩記憶性材料は発色状態を保持している。前記熱変色性物品が昇温によって完全消色温度(t)以上の温度に晒されると、感温変色性色彩記憶性材料が消色するため、熱変色性物品を包装体から取り出して直ぐに使用することができないといった不具合を生じる。
前述した不具合を未然に防止するため、本発明においては、包装体に温度変化によってヒステリシス特性を示して変色する感温変色性色彩記憶性材料を含む可逆熱変色層を設ける。
なお、前記感温変色性色彩記憶性材料は、熱変色性物品に設けられた感温変色性色彩記憶性材料と同様に(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応の生起温度を決める反応媒体とから少なくともなる感温変色性色彩記憶性組成物をマイクロカプセルに内包したマイクロカプセル顔料であり、色濃度−温度曲線に関してヒステリシス特性を示して有色状態と無色状態の互変性を呈し、前記マイクロカプセル顔料は有色状態から温度が上昇する過程では、消色開始温度tに達すると消色し始め、温度tより高い完全消色温度t以上の温度域で完全に無色状態となり、無色状態から温度が下降する過程では、発色開始温度tに達すると着色し始め、温度tより低い完全発色温度t以下の温度域で完全に着色状態となるヒステリシス特性を示す。
ここで、前記熱変色性物品の感温変色性色彩記憶性材料の完全消色温度(A)に対し、包装体の感温変色性色彩記憶性材料の完全消色温度(A´)が下記式(1)を満たすように設定する。
A−5≦A´≦A (1)
前記式(1)を満たすことにより、熱変色性物品の感温変色性色彩記憶性材料が消色する直前、或いは、消色した時点で包装体の可逆熱変色層が変色するため、開封前に熱変色性物品の消色による不具合を検知することができ、開封前に再度完全発色温度(t)以下に冷却することにより熱変色性物品の商品性を回復することができる。
なお、A−5(℃)未満の温度で消色する感温変色性色彩記憶性材料を含む可逆熱変色層を別途設けることにより、開封前に熱変色性物品の消色による不具合を検知する機能を向上させることもできる。
【0026】
一方、前記熱変色性物品が保温を要する系では、該熱変色性物品の感温変色性色彩記憶性材料は消色状態を保持している。前記熱変色性物品が冷却によって完全発色温度(t)以下の温度に晒されると、感温変色性色彩記憶性材料が発色するため、熱変色性物品を包装体から取り出して直ぐに使用することができないといった不具合を生じる。
前述した不具合を未然に防止するため、熱変色性物品の完全発色温度(D)に対し、包装体の完全発色温度(D´)が下記式(2)を満たすように設定する。
D≦D´≦D+5 (2)
前記式(2)を満たすことにより、熱変色性物品の感温変色性色彩記憶性材料が発色する直前、或いは、発色した時点で包装体の包装体の可逆熱変色層が変色するため、開封前に熱変色性物品の発色による不具合を検知することができ、開封前に再度完全消色温度(t)以上に加温することにより熱変色性物品の商品性を回復することができる。
なお、D+5(℃)を超える温度で発色する感温変色性色彩記憶性材料を含む可逆熱変色層を別途設けることにより、開封前に熱変色性物品の発色による不具合を検知する機能を向上させることもできる。
【実施例】
【0027】
感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料aの調製
(イ)成分として3′,6′−ビス(ジフェニルアミノ)−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),9′−〔9H〕キサンテン]−3−オン1.5部、(ロ)成分として1,1−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)n−デカン5.0部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン3.0部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる感温変色性色彩記憶性組成物をマイクロカプセルに内包して感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料aを得た。
前記マイクロカプセル顔料は、完全発色温度tが−15℃、完全消色温度tが62℃であり、温度変化により青色から無色に変化するものであった。
【0028】
感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料bの調製
(イ)成分として2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン4.5部、(ロ)成分として4,4′−(2−メチルプロピリデン)ビスフェノール4.5部、2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン7.5部、(ハ)成分としてカプリン酸4−ベンジルオキシフェニルエチル50.0部からなる感温変色性色彩記憶性組成物をマイクロカプセルに内包して感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料bを得た。
前記マイクロカプセル顔料は、完全発色温度tが−20℃、完全消色温度tが57℃であり、温度変化により黒色から無色に変化するものであった。
【0029】
感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料cの調製
(イ)成分として2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン4.0部、(ロ)成分として1,1−ビス(4´−ヒドロキシフェニル)n−デカン8.0部、(ハ)成分としてパルミチン酸4−メチルベンジル50.0部からなる感温変色性色彩記憶性組成物をマイクロカプセルに内包して感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料dを得た。
前記マイクロカプセル顔料は、完全発色温度tが10℃、完全消色温度tが41℃であり、温度変化により黒色から無色に変化するものであった。
【0030】
感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料dの調製
(イ)成分として3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−−4−アザフタリド1.0部、(ロ)成分として2,2−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5.0部、(ハ)成分としてステアリン酸シクロヘキシルメチル50.0部からなる感温変色性色彩記憶性組成物をマイクロカプセルに内包して感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料eを得た。
前記マイクロカプセル顔料は、完全発色温度tが14℃、完全消色温度tが38℃であり、温度変化により青色から無色に変化するものであった。
【0031】
実施例1
保冷を要する熱変色性物品の作製
前記感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料a(予め−15℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を発色させた後、室温下に放置したもの)5.5部、キサンタンガム0.33部、尿素10部、グリセリン10部、ノニオン系浸透剤性付与剤0.6部、変性シリコーン系消泡剤0.1部、防腐剤0.2部、水73.27部からなる感温変色性色彩記憶性インキを調製した。
前記インキをポリプロピレン製パイプに吸引充填し、樹脂製ホルダーを介して0.5mmステンレス鋼ボールを先端に抱持したボールペンチップと連結させた。
次いで、前記ポリプレン製パイプの後端より、ポリブテンを主成分とする粘弾性を有するインキ逆流防止体(液栓)を充填し、更に尾栓をパイプの後部に嵌合させ、先軸胴、後軸胴を組み付け、キャップを嵌めた後、遠心分離により脱気処理を行い、熱変色性物品(可逆熱変色性ボールペン)を得た。
なお、前記軸筒後端部には摩擦体としてSEBS製ゴムを装着してなる。
前記ボールペンは青色の文字を筆記することができるが、完全消色温度(A)の62℃を超える熱が加わるとインキ中の感温変色性色彩記憶性組成物が消色するため、筆跡を形成できず、商品性を損なうことから、当該温度未満の範囲で保管、流通させる必要がある。
【0032】
感温変色性適温表示包装体の作製
前記感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料a(予め−15℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を発色させた後、室温下に放置したもの)40.0部、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン52.0部、増粘剤5.0部、レベリング剤3.0部を混合して感温変色性色彩記憶性スクリーン印刷用インキを調製した。
次いで、裏面に粘着層を設けた紙基材表面に前記インキを用いて円形の図柄(可逆熱変色層)を印刷し、その上層に紫外線カット機能付き透明ポリエステル樹脂フィルムを貼り合わせて感温変色性色彩記憶性ラベルを得た。
前記ラベルをダンボール箱の側面に貼着して感温変色性適温表示包装体(ダンボール箱)を得た。
前記包装体の側面に貼着したラベルは、室温下で円形の図柄を視認でき、完全消色温度(A´)である62℃を超える熱が加わらない限り、維持することができた。
【0033】
保冷を要する熱変色性物品の包装
前記包装体内に熱変色性物品を収容して流通、保管を行った。
前記包装体は流通、保管時、高温に曝されていない場合はラベルによる円形の図柄が視認され、当該熱変色性物品が所定温度以下で流通、保管されていることが簡易に確認でき、内部の熱変色性物品(可逆熱変色性ボールペン)を包装体から取り出して筆記すると青色の筆跡を形成可能であった。
また、前記包装体が62℃以上の高温に曝された場合はラベルによる円形の図柄が視認できなくなり、内部の熱変色性物品(可逆熱変色性ボールペン)を包装体から取り出して筆記しても筆跡を形成できなかった。
前記熱変色性物品の完全消色温度A(62℃)と前記感温変色性適温表示包装体の完全消色温度A´(62℃)は等しく、包装体内に収容した熱変色性物品の使用可否を簡易に判別することができた。
【0034】
実施例2
保冷を要する熱変色性物品の作製
前記感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料b(予め−20℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を発色させた後、室温下に放置したもの)40.0部、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン52.0部、増粘剤5.0部、レベリング剤3.0部を混合して感温変色性色彩記憶性スクリーン印刷用インキを調製した。
次いで、厚紙上に非熱変色性黒インキにて秘匿情報を印刷し、その上層に前記感温変色性色彩記憶性スクリーン印刷用インキにより長方形の図柄を印刷し、熱変色性物品(可逆熱変色性秘匿情報カード)を得た。
前記カードは室温下で長方形の図柄が視認されるのみで秘匿情報は視認されないが、完全消色温度(A)の57℃を超える熱が加わると図柄中の感温変色性色彩記憶性組成物が消色するため、秘匿情報が視認されて商品性を損なうことから、当該温度未満の範囲で保管、流通させる必要がある。
【0035】
感温変色性適温表示包装体の作製
前記感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料b(予め−20℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を発色させた後、室温下に放置したもの)100.0部、アクリル酸エステル樹脂80.0部、消泡剤2.0部を混合して感温変色性色彩記憶性グラビア印刷用インキを調製した。
次いで、紙基材からなる包装紙表面に前記インキを用いて星形の図柄(可逆熱変色層)を印刷し、その上層に透明ポリエチレン樹脂フィルムを貼り合わせて感温変色性適温表示包装体(包装紙)を得た。
前記包装体は、室温下で星形の図柄を視認でき、完全消色温度(A´)である57℃を超える熱が加わらない限り、維持することができた。
【0036】
保冷を要する熱変色性物品の包装
前記包装体内に熱変色性物品を収容して流通、保管を行った。
前記包装体は流通、保管時、高温に曝されていない場合は星形の図柄が視認され、当該熱変色性物品が所定温度以下で流通、保管されていることが簡易に視認でき、内部の熱変色性物品を包装体から取り出しても長方形の図柄により秘匿情報が隠蔽されていた。
また、前記包装体が57℃以上の高温に曝された場合は星形の図柄が消色して視認できなくなり、内部の熱変色性物品を包装体から取り出すと長方形の図柄が消色して秘匿情報が視認できる状態であった。
前記熱変色性物品の完全消色温度A(57℃)と前記感温変色性適温表示包装体の完全消色温度A´(57℃)は等しく、包装体内に収容した熱変色性物品の使用可否を簡易に判別することができた。
【0037】
実施例3
保温を要する熱変色性物品の作製
前記感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料b(予め−20℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を発色させた後、室温下に放置したもの)40.0部、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン52.0部、増粘剤5.0部、レベリング剤3.0部を混合して感温変色性色彩記憶性スクリーン印刷用インキを調製した。
次いで、複数の厚紙表面に前記インキを用いて「当たり」、「はずれ」の文字をそれぞれ印刷した後、57℃以上に加熱して文字を消色させて熱変色性物品(可逆熱変色性籤)を得た。
前記籤は室温下では当落情報が視認されないが、完全発色温度(C)である−20℃以下になると文字が発色して当落情報を視認できる。また、−20℃以下では当落情報を予め視認できるため、籤としての商品性を損なうことから、当該温度を超える温度で保管、流通させる必要がある。
【0038】
感温変色性適温表示包装体の作製
前記感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料a(予め−15℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を発色させた後、室温下に放置したもの)40.0部、非熱変色性ピンク色顔料4.0部、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン52.0部、増粘剤5.0部、レベリング剤3.0部を混合して紫色からピンク色に変化する感温変色性色彩記憶性スクリーン印刷用インキを調製した。
次いで、裏面に粘着層を設けた紙基材表面に前記インキを用いて円形の図柄を印刷し、その上層に紫外線カット機能付き透明ポリエステル樹脂フィルムを貼り合わせた後、62℃以上に加熱して可逆熱変色性ラベルを得た。
前記ラベルをダンボール箱の上面に貼着して感温変色性適温表示包装体(ダンボール箱)を得た。
前記包装体の上面に貼着したラベルは、室温下でピンク色の円形を視認でき、完全発色温度(D´)である−15℃以下に冷却されない限り、維持することができた。
【0039】
保温を要する熱変色性物品の包装
前記包装体内に前記熱変色性物品を収容して流通、保管を行った。
前記包装体は流通、保管時、低温に曝されていない場合はラベルによるピンク色の円形が視認され、当該熱変色性物品が所定温度以上で流通、保管されていることが簡易に確認でき、内部の熱変色性物品(可逆熱変色性籤)を包装体から取り出しても当落情報が視認できず、籤としての機能を維持していた。
また、前記包装体が−20℃以下の低温に曝された場合はラベルによる紫色の円形が視認され、内部の熱変色性物品(可逆熱変色性籤)を包装体から取り出すと当落情報文字が視認できる状態であった。
前記熱変色性物品の完全発色温度D(−20℃)と前記感温変色性適温表示包装体の完全消色温度D´(−15℃)との差は小さく、包装体に収容した熱変色性物品の使用可否を簡易に目視判別することができた。
【0040】
実施例4
保冷を要する熱変色性物品の作製
前記感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料c(予め10℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を発色させた後、室温下に放置したもの)40.0部、ウレタン樹脂55.0部、増粘剤1.0部、レベリング剤4.0部を混合して感温変色性色彩記憶性スクリーン印刷用インキを調製した。
次いで、白色合成紙シート基材上に、前記インキを用いて空気の汚れを表す絵柄を印刷して熱変色性物品(可逆熱変色性シート)を得た。
前記シートは室温下では空気の汚れを表す絵柄が視認され、空気清浄機のデモンストレーション等を行う際にシートを加熱することで絵柄が消色し、空気清浄イメージを簡易に伝えることができる。
前記シートは完全消色温度(A)である41℃を超える熱が加わると消色し、再度発色させる為には10℃以下の冷却が必要となり商品性を損なうことから、当該温度未満の範囲で保管、流通させる必要がある。
【0041】
感温変色性適温表示包装体の作製
前記感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料d(予め14℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を発色させた後、室温下に放置したもの)40.0部、非熱変色性黄色顔料4.0部、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン52.0部、増粘剤5.0部、レベリング剤3.0部を混合して緑色から黄色に変色する感温変色性色彩記憶性スクリーン印刷用インキを調製した。
次いで、裏面に粘着層を設けた紙基材表面に前記インキを用いて円形の図柄を印刷し、その上層に紫外線カット機能付き透明ポリエステル樹脂フィルムを貼り合わせ、38℃以上に加熱して可逆熱変色性ラベルを得た。
前記ラベルをダンボール箱の上面に貼着して感温変色性適温表示包装体(ダンボール箱)を得た。
前記包装体の上面に貼着したラベルは、室温下で緑色の円形を視認でき、完全消色温度(A´)である38℃を超える熱が加わらない限り、維持することができた。
【0042】
保冷を要する熱変色性物品の包装
前記包装体内に前記熱変色性物品を収容して流通、保管を行った。
前記包装体は流通、保管時、高温に曝されていない場合はラベルにより緑色の円形が視認され、当該熱変色性物品が所定温度以下で流通、保管されていることが簡易に視認でき、内部の熱変色性物品を包装体から取り出すと可逆熱変色像が視認され、直ぐにデモンストレーションに使用することができた。
また、前記包装体が41℃以上の高温に曝された場合はラベルによる黄色の円形が視認され、内部の熱変色性物品を包装体から取り出すと可逆熱変色像が視認されず、直ぐにデモンストレーションに使用することはできなかった。
前記熱変色性物品の完全消色温度A(41℃)と前記感温変色性適温表示包装体の完全消色温度A´(38℃)の差は小さく、包装体内に収容した熱変色性物品の使用可否を簡易に判別することができた。
【0043】
実施例5
感温変色性適温表示包装体の作製
前記感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料a(予め−15℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を発色させた後、室温下に放置したもの)40.0部、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン52.0部、増粘剤5.0部、レベリング剤3.0部を混合して感温変色性色彩記憶性スクリーン印刷用インキを調製した。
これとは別に、前記感温変色性色彩記憶性マイクロカプセル顔料c(予め10℃以下に冷却してマイクロカプセル顔料を発色させた後、室温下に放置したもの)40.0部、ウレタン樹脂55.0部、増粘剤1.0部、レベリング剤4.0部を混合して感温変色性色彩記憶性スクリーン印刷用インキを調製した。
裏面に粘着層を設けた紙基材表面に前記各インキを用いて円形の図柄を印刷し、その上層に紫外線カット機能付き透明ポリエステル樹脂フィルムを貼り合わせて感温変色性色彩記憶性ラベルを得た。
前記ラベルをダンボール箱の側面に貼着して感温変色性適温表示包装体(ダンボール箱)を得た。
前記包装体の側面に貼着したラベルは、室温下で青色と黒色の円形を視認でき、41℃を超える熱が加わると黒色の円形が消色し、62℃を超える熱が加わると青色の円形も消色する。
【0044】
保冷を要する熱変色性物品の包装
前記感温変色性適温表示包装体内に実施例1で得た熱変色性物品(可逆熱変色性ボールペン)を収容して流通、保管を行った。
前記包装体は流通、保管時、高温に曝されていない場合はラベルによる青色と黒色の円形が視認され、当該熱変色性物品が所定温度以下で流通、保管されていることが簡易に確認でき、内部の熱変色性物品(可逆熱変色性ボールペン)を包装体から取り出して筆記すると青色の筆跡を形成可能であった。
また、前記包装体が高温に曝された場合はラベルの黒色の円形、及び青色の円形が順次消色し、内部の熱変色性物品(可逆熱変色性ボールペン)を包装体から取り出して筆記しても筆跡を形成できなかった。
なお、昇温過程で黒色の円形は先に消色するため、更なる高温環境条件へ曝されることへの警告表示として機能し、この段階(黒色の円形は消色、青色の円形は発色)で内部の熱変色性物品(可逆熱変色性ボールペン)は青色の筆跡を形成可能であった。
最終的に前記包装体が62℃以上の高温に曝された場合は青色の円形も消色し、内部の熱変色性物品(可逆熱変色性ボールペン)を包装体から取り出して筆記しても筆跡を形成できなくなる。
前記感温変色性適温表示包装体に、完全消色温度の異なる2種の熱変色表示を付与することにより、熱変色性物品の使用可否が簡易に判別できるのみならず、流通、保管過程での高温曝露への警告、抑制効果を付与できた。
【0045】
比較例
実施例1の保冷を要する熱変色性物品の包装を、実施例4の感温変色性適温表示包装体に代えて流通、保管を行った。
前記包装体は流通、保管時、高温に曝されていない場合はダンボール箱上面に緑色の円形が視認されたが、38℃以上の温度に曝されると黄色に変色し、熱変色性物品が問題なく使用できるにも関わらず使用不可の表示を示していた。
【符号の説明】
【0046】
完全発色温度
発色開始温度
消色開始温度
完全消色温度
ΔH ヒステリシス幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度変化によってヒステリシス特性を示して変色する感温変色性色彩記憶性材料を用いた、所定温度以下に保冷を要する熱変色性物品を収容し、前記熱変色性物品の流通或いは保存時における温度が、所定温度以下であったか否かを表示する包装体であって、前記包装体は、温度変化によってヒステリシス特性を示して変色する感温変色性色彩記憶性材料を含む可逆熱変色層を有してなり、前記熱変色性物品及び包装体の感温変色性色彩記憶性材料が、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応の生起温度を決める反応媒体とから少なくともなる感温変色性色彩記憶性組成物をマイクロカプセルに内包したマイクロカプセル顔料であり、色濃度−温度曲線に関してヒステリシス特性を示して有色状態と無色状態の互変性を呈し、前記マイクロカプセル顔料は有色状態から温度が上昇する過程では、消色開始温度tに達すると消色し始め、温度tより高い完全消色温度t以上の温度域で完全に無色状態となり、無色状態から温度が下降する過程では、発色開始温度tに達すると着色し始め、温度tより低い完全発色温度t以下の温度域で完全に着色状態となるヒステリシス特性を示し、熱変色性物品の完全消色温度(A)に対し、包装体の完全消色温度(A´)が下記式(1)を満たす感温変色性適温表示包装体。
A−5≦A´≦A (1)
【請求項2】
温度変化によってヒステリシス特性を示して変色する感温変色性色彩記憶性材料を用いた、所定温度以上に保温を要する熱変色性物品を収容し、前記熱変色性物品の流通或いは保存時における温度が、所定温度以上であったか否かを表示する包装体であって、前記包装体は、温度変化によってヒステリシス特性を示して変色する感温変色性色彩記憶性材料を含む可逆熱変色層を有してなり、前記熱変色性物品及び包装体の感温変色性色彩記憶性材料が、(イ)電子供与性呈色性有機化合物と、(ロ)電子受容性化合物と、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応の生起温度を決める反応媒体とから少なくともなる感温変色性色彩記憶性組成物をマイクロカプセルに内包したマイクロカプセル顔料であり、色濃度−温度曲線に関してヒステリシス特性を示して有色状態と無色状態の互変性を呈し、前記マイクロカプセル顔料は有色状態から温度が上昇する過程では、消色開始温度tに達すると消色し始め、温度tより高い完全消色温度t以上の温度域で完全に無色状態となり、無色状態から温度が下降する過程では、発色開始温度tに達すると着色し始め、温度tより低い完全発色温度t以下の温度域で完全に着色状態となるヒステリシス特性を示し、熱変色性物品の完全発色温度(D)に対し、包装体の完全発色温度(D´)が下記式(2)を満たす感温変色性適温表示包装体。
D≦D´≦D+5 (2)

【図1】
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【公開番号】特開2012−88095(P2012−88095A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233244(P2010−233244)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000111890)パイロットインキ株式会社 (832)
【Fターム(参考)】