説明

感熱孔版印刷原紙用薄葉紙および感熱孔版印刷原紙

【課題】 繊維分散性が良くインキ濃度が均一で、インキの出すぎを防ぎインキの裏写りを抑え、印刷時の寸法安定性が良好で高精細な感熱孔版印刷用原紙および感熱孔版印刷原紙用薄葉紙を提供する。
【解決手段】 天然繊維と合成繊維からなる感熱孔版印刷原紙用薄葉紙、及び合成繊維からなる感熱孔版印刷原紙用薄葉紙であって、下記式(1)で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリケトン繊維を3質量%以上含有する感熱孔版印刷原紙用薄葉紙、及び合成繊維感熱孔版印刷原紙用薄葉紙。
下記式(1)で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリケトン繊維を3質量%以上含有する感熱孔版印刷原紙用薄葉紙を支持体として用いた感熱孔版印刷用原紙。
−CH2 −CH2 −CO− (1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キセノンランプ等からの閃光照射、レーザー発振素子からの赤外線照射、または微細でかつ多数の加熱素子を有したいわゆるサーマルヘッドなどからなる直接または間接の接触伝熱による加熱によって、熱製版される感熱孔版印刷原紙用薄葉紙および感熱孔版印刷原紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、感熱孔版印刷用原紙としては、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムと、天然繊維または化学繊維を主成分とする薄葉紙、不織布、紗などを多孔性支持体として、両者を各種の接着剤で貼り合わせた構造の感熱孔版印刷用原紙(以下、原紙と略記する)が知られている(特許文献1)。
しかしながら、これらの原紙は、印刷画像の鮮明度を満足させるものではなかった。また、天然繊維に化学繊維を混抄した多孔性支持体を用いることにより、画像性が向上することが知られているが、これらの原紙は、特にベタ印刷の連続して穿孔された印刷物において白点、和紙目等の欠陥を無くして画像を向上することに主眼がおかれていた。
【0003】
天然繊維を主成分とする多孔性支持体を用いた原紙では、印刷インクが水性の場合には天然繊維の吸水による膨潤や、同一の原紙を用いて多枚数の印刷を行う際に、原紙にかかる負荷により原紙が伸びて印刷初期と多枚数印刷後とでの寸法変化が問題となる。
これに対して天然繊維と合成繊維を混抄し、樹脂で補強した支持体(特許文献2)や、湿潤ヤング率の高いセルロース繊維のフィブリル化物を主体繊維の一部として用いた支持体(特許文献3)が提案されているが、原紙の寸法安定性は十分とはいえない。ここでいう寸法安定性とは多枚数印刷後の原紙の寸法変化が少ないことを示す。
【0004】
また、化学繊維の混抄率の高い多孔性支持体や、ポリエステル繊維100%からなる多孔性支持体において多枚数の印刷ができたとの報告がなされている(特許文献4)が、化学繊維、特にポリエステル繊維100%の多孔性支持体では、印刷機内部で原紙を穿孔した後、印刷ドラムに原紙を搬送する際に原紙の剛性が低いため原紙に皺が入りやすく改良の余地がある。また、低い坪量の支持体を用いた場合、原紙の弾性率が小さくなり印刷時の寸法安定性が劣り、寸法安定性の向上が待たれていた。
【0005】
【特許文献1】特開昭51−2513号公報
【特許文献2】特開昭61−254396号公報
【特許文献3】特許第3342063号公報
【特許文献4】特許第2726105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、印刷時の寸法安定性が良く、印刷物の画像性が良く、インキ濃度が均一でインキの出すぎを防ぎインキの裏写りを抑え、高精細の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙および感熱孔版印刷原紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題の解決について鋭意研究を重ねた結果、天然繊維と合成繊維の混合不織布、あるいは合成繊維からなる湿式不織布において、合成繊維の組成の一部または全部に脂肪族ポリケトン繊維を用いることにより上記課題が解決できることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明の第1は、天然繊維と合成繊維からなる坪量3〜25g/m2 の不織布からなり、該不織布が合成繊維を30質量%以上含む不織布であって、下記式(1)で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリケトン繊維を3質量%以上含むことを特徴とする感熱孔版印刷原紙用薄葉紙である。
−CH2 −CH2 −CO− (1)
【0008】
本発明の第2は、合成繊維100%からなる坪量3〜25g/m2 の不織布からなり、該不織布が下記式(1)で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリケトン繊維を3質量%以上含むことを特徴とする感熱孔版印刷原紙用薄葉紙である。
−CH2 −CH2 −CO− (1)
本発明の第3は、脂肪族ポリケトン繊維がフィブリル化されていることを特徴とする上記第1または2に記載の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙である。
本発明の第4は、上記第1〜3のいずれかに記載の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙と厚さが0.1〜5.0μmの熱可塑性樹脂フィルムを貼り合わせてなる特徴とする感熱孔版印刷原紙である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙および感熱孔版印刷原紙は、インキ濃度が均一で、インキの出すぎを防ぎ、インキの裏写りを抑え、印刷時の寸法安定性を得ることができ、多数枚の印刷のみならず、多色印刷の高精細孔版印刷に好適で、従来に無い機能を持ったものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明について具体的に説明する。
本発明の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙は、高強度、高弾性で低吸水性の脂肪族ポリケトン繊維を含むことにより、孔版印刷を多数枚印刷しても、また多色印刷しても印刷ずれの少ない、寸法安定性がよく高精細の画像を印刷できる印刷原紙を提供する。
本発明の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙は、天然繊維および合成繊維、あるいは合成繊維のみからなり、かつ脂肪族ポリケトン繊維を含む不織布であり、脂肪族ポリケトン繊維の融点付近で急激に軟化し変形する性質を利用し、脂肪族ポリケトン繊維同士の全部または一部が熱融着していることを特徴とする。したがって、薄くてもまた多孔性であっても均一で強靭な寸法安定性の良い感熱孔版印刷原紙用薄葉紙を提供することができる。
【0011】
本発明の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙に用いる脂肪族ポリケトン繊維は下記式(1)で示される繰り返し単位を含む構造をもつ脂肪族ポリケトン繊維である。好ましくは下記式(1)で示される繰り返し単位が90モル%以上からなる構造を有する。より好ましくは98モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
−CH2 −CH2 −CO− (1)
繰り返し単位が90モル%以上であると高強度、高弾性を得ることができ、耐熱性にも優れる。また、該繊維の結晶化度は30%以上が好ましい。より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上である。30%以上であると高強度、高弾性を発現し、非常に優れた寸法安定性が得られる。ポリケトン繊維の製造方法としては、亜鉛塩、カルシウム塩、イソシアネート塩などを用いたポリケトン水溶液から湿式紡糸法で得たうえで、熱延伸して製造したポリケトン繊維が高強度、高弾性を有しており、好ましい。
【0012】
本発明の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙に用いる脂肪族ポリケトン繊維は、感熱孔版印刷原紙用薄葉紙中に3質量%以上配合することにより、感熱孔版印刷原紙用薄葉紙および原紙の良好な寸法安定性を得ることが可能となる。より好ましくは5質量%以上配合することであり、さらに好ましくは7質量%以上配合することである。また脂肪族ポリケトン繊維を100質量%使用することもできる。
本発明の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙に用いる脂肪族ポリケトン繊維の平均繊維径は20μm以下であることが好ましい。20μm以下の繊維とすることで単位面積あたりの繊維本数を増やし、感熱孔版印刷原紙用薄葉紙の開口面積を小さくし、高精細な印刷を可能にすることができる。また、脂肪族ポリケトン繊維を叩解し、フィブリル化させることにより平均繊維径0.1μm〜20μmの繊維として用いることができる。ここでいうフィブリル化とは繊維に物理的衝撃を与えることによって繊維の微細化や木の枝状に繊維を分割することをいう。叩解処理機としては、ビーター、レファイナー、ジョルダン、ファイバライザー、PFIミル、ボールミル、高圧ホモジナイザーなどにより処理することができる。脂肪族ポリケトン繊維のフィブリル化後の平均繊維径を0.1μm以上とすることで極微細繊維によるインキの通過不良を防止できる。
【0013】
本発明の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙に用いる脂肪族ポリケトン繊維以外の合成繊維としては、アクリル繊維、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、PPS繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、ポリイミド繊維等を用いることができる。合成繊維の断面形状は、円形、中空、異形のいずれのものを用いても良い。また、ナイロン−ポリエステル、変成ポリエステル−ポリエステル等の芯鞘構造を有する繊維やいわゆるバインダー繊維を使用することもできる。バインダー繊維としては、例えば、繊維長3〜5mm、単糸繊度0.1〜2.0dtexの未延伸ポリエステル等が挙げられる。
これらの脂肪族ポリケトン繊維を含む合成繊維の配合比率を30質量%以上とすることで、感熱孔版印刷原紙用薄葉紙および原紙の寸法安定性を維持することができる。好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。
【0014】
本発明の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙に用いる天然繊維は特に制限されず、亜麻、大麻、ジュート(黄麻)、ラミ−(芋麻)、ケナフ、こうぞ、みつまた、ガンピ等の靭皮繊維、綿等の種子繊維、マニラ麻、エクアドル麻、サイザル麻、ニュージーランド麻などの葉脈繊維、その他の天然繊維としては、エスパルト、木材パルプ、竹、わら、桑などが使用できる。そのなかでも、マニラ麻、エクアドル麻、サイザル麻、黄麻(ジュート)、ケナフ、リンター、竹等は夾雑物が少なく好ましい。またセルロース由来の再生繊維である溶剤紡糸セルロースやレーヨン、アセテートなども天然繊維として適宜用いることができる。これらの天然繊維は適宜フィブリル化させて用いることができる。また、これらの天然繊維は適宜組み合わせて用いることができるが、天然繊維を70質量%未満とすることで感熱孔版印刷原紙用薄葉紙および原紙の寸法安定性を維持することができる。好ましくは60質量%未満であり、より好ましくは50質量%未満である。
【0015】
本発明の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙は坪量が3〜25g/m2 であり、好ましくは4〜20g/m2 であり、より好ましくは5〜15g/m2 である。坪量を3g/m2 以上とすることで寸法安定性を良くすることが可能となる。また、坪量を25g/m2 以下とすることで、インクの通過を良好にすることができる。
本発明の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙は、厚さが6〜60μm(JIS−P−8118により測定)であることが好ましい。厚さを6μm以上とすることで感熱孔版印刷原紙用薄葉紙および原紙の剛性を維持することができ、また厚さを60μm以下とすることでインクの通過を良くすることができる。好ましくは10〜50μmであり、さらに好ましくは15〜45μmである。
【0016】
本発明の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙は、樹脂を塗工あるいは含浸することにより、感熱孔版印刷原紙用薄葉紙の強度、剛性、寸法安定性などの機械特性を向上させることができるため、適宜樹脂を塗工、含浸することが好ましい。樹脂の種類としては、エポキシ樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂、アクリル樹脂などを単独あるいはその混合物を用いても良い。感熱孔版印刷原紙用薄葉紙への樹脂付着量は3g/m2 以下とすると、繊維間の空隙を樹脂が埋めず、好ましい。
【0017】
本発明の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙の製造は、通常実施される抄紙方法で行われる。脂肪族ポリケトン繊維3〜100質量%と他の繊維97〜0質量%を離解機で水に均一に分散した後、円網抄紙機、長網抄紙機、または傾斜短網抄紙機、あるいはそれらを組み合わせたコンビネーション抄紙機などで抄造し、網上に該繊維が平面状に均一に分散した紙層を形成する。その後、ドラムドライヤー、ヤンキードライヤー、熱風ドライヤーなどの乾燥機で十分乾燥して、最終的に熱プレスなどで脂肪族ポリケトン繊維同士の全部または一部が、または脂肪族ポリケトン繊維が他の繊維と融着して紙の最終強度を発現させる。
以上は典型的な製造方法であるが、本発明の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙は該製造方法に限定されない。例えば、脂肪族ポリケトン繊維3〜100質量%と他の繊維97〜0質量%を混合する際は離解機で同時に混合しても、また別々に離解した後混合してもよく、何ら限定されない。
【0018】
また、抄造前に脂肪族ポリケトン繊維の全部または一部を叩解、破砕などの処理をしてフィブリル化し、及び/又は他の繊維の全部または一部を叩解、破砕などの処理をしてフィブリル化してから混合しても、あるいは脂肪族ポリケトン繊維と他の繊維を混合後、同時に叩解、破砕などの処理をしてもよく、叩解、破砕などの処理によって紙層強度を増して生産スピードを上げ、生産性向上を可能にしたり、フィブリル化したμmからサブμmの脂肪族ポリケトン繊維及び/又は他の繊維の細径繊維を用いてμmからサブμmの孔径(繊維で囲まれた開口部)を均一に分布させた感熱孔版印刷原紙用薄葉紙を造ることができるが、本発明は叩解、破砕などの処理によっても何ら限定されるものではない。
【0019】
さらに、100%脂肪族ポリケトン繊維紙をあらかじめ作製し、その後、脂肪族ポリケトン繊維及び/又は他の繊維を100%脂肪族ポリケトン繊維紙の上に抄紙してもよく、あるいは、脂肪族ポリケトン繊維及び/又は他の繊維を100%脂肪族ポリケトン繊維紙の表裏両面に抄紙してもよく、またその工程順序を反対に作製してもよく、製法には何ら限定されない。また繊維を水に均一に分散する際、分散剤、粘剤(好ましくはポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアマイドなど)、消泡剤、帯電防止剤及び抄紙時の紙力増強剤、サイズ剤等の配合をしてもよい。
脂肪族ポリケトン繊維同士の全部または一部を熱融着させるためには脂肪族ポリケトン繊維の融点温度の−40℃〜+40℃で熱プレスすることが好ましい。融点温度の−40℃以上の熱プレスでポリケトン繊維が熱融着する。また、融点温度の+40℃以下の熱プレスでは溶融、焼け付きを起こさず好ましい。熱プレス時のプレス線圧は、公知のプレス線圧範囲で実施することができるが、厚さをコントロールするために1〜200kN/mが好ましい。
【0020】
本発明の感熱孔版印刷原紙は、上記本発明の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙を多孔性支持体として、熱可塑性樹脂フィルムと接着することにより得られる。
本発明の感熱孔版印刷原紙に用いる熱可塑性樹脂フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン等の重合体、及びこれらの共重合体、並びにこれらの混合物からなる従来公知のフィルムを任意に用いることができるが、とくにポリエステルフィルムが遠赤外線、サーマルヘッドあるいはレーザーなどによって高精細な穿孔性を得ることができるため好ましい。また、良好な穿孔を達成するため、少なくとも1軸方向または2軸方向に延伸されているフィルムであることが好ましい。
【0021】
本発明の感熱孔版印刷原紙に用いる熱可塑性フィルムの厚さは0.1〜5.0μmの範囲であることが好ましい。より好ましくは0.5〜4.0μmの範囲である。0.1μm以上で印刷時の印圧に耐え得る強度を保つことができる。また5.0μm以下で良好な穿孔性が得られる。
本発明の感熱孔版印刷原紙に用いる熱可塑性樹脂フィルムと感熱孔版印刷原紙用薄葉紙との接着剤としては公知のものを適宜用いることができる。例えば、ホットメルト型接着剤、エマルジョンラテックス型接着剤、溶媒型接着剤、反応硬化型接着剤、紫外線または電子線硬化型接着剤等であり、酢酸ビニル系、プロピレン系、アクリル系、アクリル酸エステル系、塩化ビニル系、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリエステル系アクリレート、ウレタン系アクリレート、エポキシ系アクリレート、ポリオール系アクリレート等の配合物等が挙げられる。
【0022】
本発明の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙には必要に応じて他の添加剤、例えば、帯電防止剤、滑剤等を混合して用いてもよい。またこれらの添加剤を感熱孔版印刷原紙の繊維表面、熱可塑性樹脂フィルム表面に塗布してもよい。また合成繊維の比率を70質量%以上で用いるときに感熱孔版印刷原紙用薄葉紙の繊維表面にカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、リン酸エステル塩等の界面活性剤、導電性フィラー等付着あるいは混合させることにより静電気による印刷時搬送性不良が改善できるため好ましい。また、必要に応じて感熱孔版印刷原紙用薄葉紙や熱可塑性樹脂フィルム表面に、空気中、その他種々の雰囲気中でコロナ放電処理等を施しても良い。
【0023】
本発明の感熱孔版印刷原紙には、サーマルヘッド等との融着防止のために、熱可塑性樹脂フィルム表面に融着防止剤を塗布することが好ましい。融着防止剤としては、シリコーン系の樹脂またはオイル、フッ素系樹脂、リン酸エステル系等の界面活性剤、脂肪酸類、ワックス等を用いることができる。また、これらを塗布する場合、公知の各種添加剤、例えば、融着防止剤の分散助剤や界面活性剤、防腐剤、消泡剤、耐熱剤、耐酸化防止剤、有機粒子、無機粒子、顔料等を、原紙の特性を妨げない範囲で添加してもよい。塗布方法は公知の方法で特に限定されないが、ロールコーター、グラビアコーター、リバースコーター、バーコーター等を用いて塗布するのが好ましい。また、含浸による方法でもよい。
【実施例】
【0024】
以下、実施例などにより本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例などにより何等限定されるものではない。
なお、使用した繊維の種類、平均繊維径、叩解の有無を表1に、感熱孔版印刷原紙用薄葉紙(支持体)の配合(組成比)および支持体、原紙性能評価結果を表2に記した。
平均繊維径は任意に摘出したサンプルをSEMにて拡大撮影し、画像解析にて50本の繊維径を測定し平均値とした。
【0025】
(1)坪量
恒温恒湿(20℃、65%RH)雰囲気下で24時間静置した支持体試験片(31.6cm×31.6cm)10枚の質量を測定した。
(2)厚さ
JIS−P−8118により測定した。
(3)密度
(密度=坪量÷厚さ)の式に従い算出した。
【0026】
(4)画像性
実施例、及び比較例に基づいて作製した感熱孔版印刷用原紙を感熱孔版印刷機(GR273:理想科学社製)にて標準設定で印刷を行い、得られた画像について目視で比較評価した。
○:文字や細線の太さムラや黒ベタでの白抜けがないもの
△:○と×の中間程度で実用上何とか使えるレベルのもの
×:文字や細線が部分的に切れたり太さムラのあるもの、また黒ベタ部では白抜けが
目立つもの
【0027】
(5)インキの裏写りの評価
印刷むらと同じ評価方法にて、一枚のマスタ−で30枚印刷し、30枚目の印刷物の裏側に転写された29枚目の印刷物のインキ転移量を目視判定し次のように評価した。
○:インキの転移量が極めて少ない
△:○と×の中間程度の転移量で、実用上何とか使えるレベル
×:インキ転移量が大きい
【0028】
(6)寸法安定性
前述の印刷機を用いて、印刷方向に対して垂直に罫線を2本引き、2本の罫線の間隔を25cmあけた原稿を用いて印刷し、印刷速度130枚/分、印圧設定最大で3000枚印刷し、印刷1枚目と印刷3000枚目での罫線の間隔を次の式により算出した。
伸び率=(印刷3000枚目の罫線間隔−印刷1枚目の罫線間隔)/印刷1枚目の罫
線間隔。
○:伸び率が0.5%未満
△:伸び率が0.5%〜1%
×:伸び率1%を超える
【0029】
[実施例1]
マニラ麻をアルカリ蒸解し、水洗後、水で濃度3%に希釈して、ビーターにて濾水度18°SR(JIS−P−8121準拠)に叩解したもの10質量%と、平均繊維径10μm、繊維長3mmの脂肪族ポリケトン繊維10質量%と、平均繊維径8μm、長さ3mmのポリエステル繊維40質量%と、平均繊維径4μm、長さ3mmのポリエステル繊維40質量%をパルパーにて水分散したものを、混合槽にて均一に混合しさらに、これにエポキシ化ポリアミドポリアミン樹脂を繊維に対して2%となるように水溶液にして添加し均一に混合した。これを紙の原料として傾斜短網抄紙機による湿式抄紙法にて不織布を得た。さらにこの不織布を温度265℃、プレス圧7kN/mの熱ロールにより熱圧着して得られた不織布の坪量は10g/m2 、厚さ34μmであった。次に、厚さ1μmに延伸された共重合ポリエステルフィルムと不織布を、ウエットラミネ−ト用接着剤(エポキシ樹脂とポリアミン樹脂を質量比で17:83になるように配合し溶媒としてイソプロピルアルコ−ルを用いた溶液)を用いて、ウエットラミネ−タ−で貼り合わせ感熱孔版印刷原紙とした。
【0030】
[実施例2]
マニラ麻をアルカリ蒸解し、水洗後、水で濃度3%に希釈して、ビーターにて濾水度18°SR(JIS−P−8121準拠)に叩解したもの20質量%と、平均繊維径10μm、繊維長3mmの脂肪族ポリケトン繊維をパルパーにて水分散したものをレファイナーで叩解し平均繊維径0.5μmに調整したもの(A2)10質量%と、平均繊維径10μm、繊維長3mmの脂肪族ポリケトン繊維30質量%、平均繊維径8μm、長さ3mmのポリエステル繊維40質量%をパルパーにて水分散したものを、混合槽にて均一に混合しさらに、これにエポキシ化ポリアミドポリアミン樹脂を繊維に対して2%となるように水溶液にして添加し均一に混合した。これを紙の原料として傾斜短網抄紙機による湿式抄紙法にて不織布を得た。さらにこの不織布を温度255℃、プレス圧7kN/mの熱ロールにより熱圧着して得られた不織布の坪量は8g/m2 、厚さ25μmであった。次に厚さ2μmに延伸された共重合ポリエステルフィルムと不織布を、ウエットラミネ−ト用接着剤(エポキシ樹脂とポリアミン樹脂を質量比で17:83になるように配合し溶媒としてイソプロピルアルコ−ルを用いた溶液)を用いて、ウエットラミネ−タ−で貼り合わせ感熱孔版印刷原紙とした。
【0031】
[実施例3〜6]
実施例2と同様にして表2で示す配合の合成繊維(および天然繊維)を水に混合分散した後、これにエポキシ化ポリアミドポリアミン樹脂を繊維に対して2%となるように水溶液にして添加し均一に混合した。これを紙の原料として傾斜短網抄紙機による湿式抄紙法にて抄紙した後、実施例2と同様に熱圧着して不織布を得た。次に厚さ1μmに延伸された共重合ポリエステルフィルムと不織布を、ウエットラミネ−ト用接着剤(エポキシ樹脂とポリアミン樹脂を質量比で17:83になるように配合し溶媒としてイソプロピルアルコ−ルを用いた溶液)を用いて、ウエットラミネ−タ−で貼り合わせ感熱孔版印刷原紙とした。
【0032】
[比較例1]
マニラ麻をアルカリ蒸解し、水洗後、水で濃度3%に希釈して、ビーターにて濾水度18°SR(JIS−P−8121準拠)に叩解したもの50質量%と、平均繊維径8μm、繊維長3mmのポリエステル繊維30質量%、平均繊維径4μm、長さ3mmのポリエステル繊維20質量%をパルパーにて水分散したものを、混合槽にて均一に混合しさらに、これにエポキシ化ポリアミドポリアミン樹脂を繊維に対して2%となるように水溶液にして添加し均一に混合した。これを紙の原料として傾斜短網抄紙機による湿式抄紙法にて不織布を得た。次に厚さ1μmに延伸された共重合ポリエステルフィルムと不織布を、ウエットラミネ−ト用接着剤(エポキシ樹脂とポリアミン樹脂を質量比で17:83になるように配合し溶媒としてイソプロピルアルコ−ルを用いた溶液)を用いて、ウエットラミネ−タ−で貼り合わせ感熱孔版印刷原紙とした。
【0033】
[比較例2]
比較例1と同様にして表2で示す配合の合成繊維および天然繊維を水に混合分散した後、これにエポキシ化ポリアミドポリアミン樹脂を繊維に対して2%となるように水溶液にして添加し均一に混合した。これを紙の原料として傾斜短網抄紙機による湿式抄紙法にて不織布を得た。次に厚さ1μmに延伸された共重合ポリエステルフィルムと不織布を、ウエットラミネ−ト用接着剤(エポキシ樹脂とポリアミン樹脂を質量比で17:83になるように配合し溶媒としてイソプロピルアルコ−ルを用いた溶液)を用いて、ウエットラミネ−タ−で貼り合わせ感熱孔版印刷原紙とした。
【0034】
[比較例3]
比較例1と同様にして表2で示す配合の合成繊維を水に混合分散した後、これにエポキシ化ポリアミドポリアミン樹脂を繊維に対して2%となるように水溶液にして添加し均一に混合した。これを紙の原料として傾斜短網抄紙機による湿式抄紙法にて抄紙し、実施例1と同様に熱圧着して不織布を得た。次に厚さ1μmに延伸された共重合ポリエステルフィルムと不織布を、ウエットラミネ−ト用接着剤(エポキシ樹脂とポリアミン樹脂を質量比で17:83になるように配合し溶媒としてイソプロピルアルコ−ルを用いた溶液)を用いて、ウエットラミネ−タ−で貼り合わせ感熱孔版印刷原紙とした。表1に繊維の性状、表2に組成と作製条件および特性を示す。
【0035】
[比較例4]
実施例1で得た不織布に厚さ7μmに延伸された共重合ポリエステルフィルムを、ウエットラミネ−ト用接着剤(エポキシ樹脂とポリアミン樹脂を質量比で17:83になるように配合し溶媒としてイソプロピルアルコ−ルを用いた溶液)を用いて、ウエットラミネ−タ−で貼り合わせ感熱孔版印刷原紙とした。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の薄葉紙は繊維分散性が良くインキ濃度が均一で、インキの出すぎを防ぎインキの裏写りを抑え、印刷時の寸法安定性が良好である。また、この薄葉紙と熱可塑性樹脂フィルム等から作製された原紙は薄葉紙と同様の性能を有し、感熱孔版印刷用原紙として好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維と合成繊維からなる坪量3〜25g/m2 の不織布からなり、該不織布が合成繊維を30質量%以上含む不織布であって、合成繊維として下記式(1)で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリケトン繊維を3質量%以上含むことを特徴とする感熱孔版印刷原紙用薄葉紙。
−CH2 −CH2 −CO− (1)
【請求項2】
合成繊維100%からなる坪量3〜25g/m2 の不織布からなり、該合成繊維が下記式(1)で示される繰り返し単位を含む脂肪族ポリケトン繊維を3質量%以上含むことを特徴とする感熱孔版印刷原紙用薄葉紙。
−CH2 −CH2 −CO− (1)
【請求項3】
脂肪族ポリケトン繊維がフィブリル化されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載の感熱孔版印刷原紙用薄葉紙と厚さが0.1〜5.0μmの熱可塑性樹脂フィルムを貼り合わせてなる感熱孔版印刷原紙。

【公開番号】特開2007−15135(P2007−15135A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196273(P2005−196273)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】