説明

感熱性粘着シートの熱活性化方法、熱活性化装置、プリンタ、感熱性粘着シートの貼り付け方法、および貼り付け装置

【課題】エネルギー効率が良好で、感熱性粘着シートを被着体に強く貼り付けることができ、それらの強固な固定状態を短時間で得ることができるようにする。
【解決手段】一方の面に感熱性粘着剤層2aを有し、被着体1に対して貼り付けられる感熱性粘着シート2の熱活性化方法において、被着体1の表面粗さが大きい時には、大きな熱エネルギーで感熱性粘着剤層2aを加熱することにより、被着体1の凹部1a内にまで粘着剤を浸入しやすくする。被着体1の表面粗さが小さい時には、小さな熱エネルギーで感熱性粘着剤層2aを加熱することにより、粘着剤の粘性を高くして、感熱性粘着シート2が滑って剥がれることを防ぐ。被着体1の表面粗さを被着体1の材質ごとに分類しておき、被着体1の各々の材質に応じてその表面粗さを判定して熱エネルギーを決定してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱性粘着シートの熱活性化方法、熱活性化装置、プリンタ、感熱性粘着シートの貼り付け方法、および貼り付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着ラベル等として用いられる感熱性粘着シートは、一方の面に感熱性粘着剤層が設けられたものである。この感熱性粘着層は、常温では非粘着性であり、加熱されると粘着性が発現する。感熱性粘着シートは、他方の面に記録可能層を有している場合もある。そして、このような感熱性粘着シートを、特許文献1に開示されているようなラベルプリンタ等によって、表面に記録が施され裏面に粘着性を有する粘着ラベルにすることができる。通常、ラベルプリンタは、感熱性粘着シートの記録可能層に記録を行う記録部と、感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化させる熱活性化装置とを有している。さらに、特許文献2には、このようにして作製した粘着ラベルの感熱性粘着剤層を、自動的に被着体に押し付けて貼り付ける自動貼り付け装置が提案されている。
【0003】
また、特許文献3には、特許文献1〜2と同様に粘着ラベルを作製可能であり、かつ被着体の重量、または、その被着体に内包される物品が存在する場合には被着体とそれに内包される物品との総重量を計る計量部が付属している計量ラベルプリンタが開示されている。
【0004】
特許文献1〜3に記載されている構成では、感熱性粘着剤層を加熱する熱エネルギーは一定であり、また、加熱された感熱性粘着剤層を被着体に押し付ける押圧力も一定である。
【0005】
これに対し、特許文献4には、感熱性粘着シートを一旦貼り付けた後に剥がすことが多い用途において、感熱性粘着シートを剥がすときに被着体が破損しないように、被着体の強度に合わせて、感熱性粘着剤層に加えるエネルギー密度を変更できる構成が開示されている。
【0006】
特許文献5には、感熱性粘着剤層に加える熱エネルギーを、その感熱性粘着シートの用途や環境温度または被着体の温度に応じて適宜に変更できる構成が開示されている。この構成によると、例えば、貼り付け後に剥がすことが多い手荷物区別用のラベルなどを作製する場合には、熱エネルギーを低くして感熱性粘着剤層の粘着力を弱くすることができる。
【0007】
また、特許文献6には、感熱性粘着剤層に加える熱エネルギーを、環境温度や感熱性粘着シートの粘着剤の種類によって適宜に変更できる構成が開示されている。
【特許文献1】特開2001−88814号公報
【特許文献2】特開平6−127539号公報
【特許文献3】特開2005−25089号公報
【特許文献4】特開2001−48139号公報
【特許文献5】特開2004−53756号公報
【特許文献6】特開2004−10710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記したように、特許文献4,5においては、主に、感熱性粘着シートを一旦貼り付けた後に剥がす可能性がある場合に、剥がすことができる程度に粘着力を弱めたり、剥がす際に被着体が破損しないように粘着力を弱めたりするために、感熱性粘着剤層に加える熱エネルギーを変更することが意図されている。また、特許文献4〜6において、強い粘着力を得るために、環境温度または被着体の温度や粘着剤の種類に応じて熱エネルギーを変えることが示唆されている。
【0009】
しかし、環境温度または被着体の温度や粘着剤の種類に応じて熱エネルギーを変えたとしても、それだけではあまり良好な貼り付けが行えない場合がある。すなわち、強固な貼り付けを行いたいにもかかわらず、最終的に強い粘着力が得られないこともあり、また、強い粘着力が得られるまでに長時間(例えば10分程度)を要することもある。後者は、最終的に強い粘着力が得られるとしても、感熱性粘着シートを被着体に貼り付けた後、長時間(例えば10分程度)にわたって感熱性粘着シートが被着体に強固に固定されず、剥がれやすい状態が続く。従って、貼り付け直後に誤って剥がしてしまうことを防ぐために、長時間にわたって人体や他の物品等に触れないように保管しておかなければならないため、作業効率が悪い。
【0010】
このように、感熱性粘着シートが被着体に強固に固定されるまでの時間が長くなることは、強い粘着力を得るために熱エネルギーを常に高く設定した結果として生じることもあり、強い粘着力と、固定までの時間の短縮化との両立が困難な場合がある。従来は、このような不具合が生じる原因について十分に分析されておらず、効果的な解決策は講じられていなかった。単純に熱エネルギーを高くすることによってこれらの不具合を解決しようと試みると、必ずしも十分な効果は得られないことがあるにもかかわらず、エネルギー効率が低下してしまうという問題を生じる。
【0011】
そこで、本発明の目的は、感熱性粘着シートを被着体に強く貼り付けることができ、しかも、感熱性粘着シートが被着体に強く固定された状態を、比較的早期に得ることができ、しかもエネルギー効率が良好な、感熱性粘着シートの熱活性化方法、熱活性化装置、プリンタ、感熱性粘着シートの貼り付け方法、および貼り付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、一方の面に感熱性粘着剤層を有し、被着体に対して貼り付けられる感熱性粘着シートの熱活性化方法において、被着体の表面粗さに応じて異なる熱エネルギーで感熱性粘着剤層を加熱することを特徴とする。これによると、従来は全く着目されていなかった被着体の表面粗さの影響を考慮して、感熱性粘着剤層の被着体への粘着状態を良好にすることができる。
【0013】
さらに、被着体の表面粗さと温度に応じて異なる熱エネルギーで感熱性粘着剤層を加熱すると、被着体の表面粗さと温度の両方の影響を考慮することにより、より強固かつ迅速な粘着状態の実現が可能になる。
【0014】
被着体の表面粗さを被着体の材質ごとに分類しておき、被着体の各々の材質に応じてその表面粗さを判定して熱エネルギーを決定するようにすると、表面粗さを逐一測定する必要が無く、容易に制御が行える。
【0015】
本発明の他の特徴は、一方の面に感熱性粘着剤層を有し、被着体に対して貼り付けられる感熱性粘着シートの熱活性化装置において、感熱性粘着剤層を加熱する加熱部と、加熱部を制御して、加熱部から感熱性粘着剤層に付与する熱エネルギーを被着体の表面粗さに応じて変化させる制御部と、を有するところにある。
【0016】
本発明の他の特徴は、一方の面に感熱性粘着剤層を有する感熱性粘着シートを被着体に対して貼り付ける貼り付け方法において、感熱性粘着剤層を加熱するステップと、加熱された感熱性粘着層を、被着体の表面粗さに応じて異なる押圧力で被着体に押し付けるステップとを含むところにある。これによると、やはり、被着体の表面粗さの影響を考慮して、感熱性粘着剤層の被着体への粘着状態を良好にすることができる。
【0017】
さらに、感熱性粘着層を被着体に押し付けるステップは、被着体の表面粗さと温度に応じて異なる押圧力で押し付けを行うことが好ましい。
【0018】
また、被着体の表面粗さを被着体の材質ごとに分類しておき、被着体の各々の材質に応じてその表面粗さを判断して押圧力を決定すると、容易に制御が行える。
【0019】
本発明の他の特徴は、一方の面に感熱性粘着剤層を有する感熱性粘着シートを被着体に対して貼り付ける貼り付け方法において、被着体の表面粗さにかかわらず、小さい熱エネルギーで感熱性粘着剤層を加熱するステップと、加熱された感熱性粘着層を、被着体の表面粗さが粗い場合には大きい押圧力で、被着体の表面粗さが小さい場合には小さい押圧力で、被着体に押し付けるステップとを含むところにある。
【0020】
本発明の他の特徴は、一方の面に感熱性粘着剤層を有する感熱性粘着シートを被着体に貼り付ける貼り付け装置において、感熱性粘着剤層を加熱する加熱部と、加熱された感熱性粘着層を被着体に押し付ける押圧部と、押圧部を制御して、感熱性粘着剤層を被着体に押し付ける押圧力を被着体の表面粗さに応じて変化させる制御部とを有するところにある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、従来は着目されていなかった被着体の表面粗さに応じて、熱エネルギーおよび/または押圧力の制御を行うことにより、感熱性粘着シートが被着体に強く固着するまでの時間を短くすることと強い粘着力を得ることとを両立できる。特に、被着体の表面粗さと温度の両方に基づいて、熱エネルギーおよび/または押圧力の制御を行うことにより、貼り付けの信頼性をより高くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
本発明の一実施形態では、感熱性粘着材層2aを有する感熱性粘着シート2を被着体1に貼り付ける上で、被着体1の表面粗さに応じて、感熱性粘着材層2aを熱活性化させるための熱エネルギーを変化させる。または、被着体1の表面粗さに応じて、感熱性粘着材層2aを被着体1に押しつける押圧力を変化させる。この技術的意義について以下に説明する。
【0024】
まず、本発明者が本発明に至った経緯について説明すると、前記した通り、従来は、感熱性粘着剤層に熱エネルギーを加えても、最終的に強い粘着力が得られないことや、また、強い粘着力が得られるまでに長時間(例えば10分程度)を要することがあった。そこで、このような不具合が生じる要因について本発明者が検討した結果、被着体の被着面の表面粗さが問題であることを見出した。
【0025】
すなわち、表面が比較的粗い被着体1(例えば段ボール)への貼り付けに最適な熱エネルギーよりも小さい熱エネルギー、例えば、表面が比較的平坦な被着体(例えばラップフィルム)への貼り付けに最適な熱エネルギーと同程度の熱エネルギーによって活性化された感熱性粘着シート2を、表面が比較的粗い被着体1(例えば段ボール)に貼り付ける場合、図1(a)に拡大して模式的に示すように、感熱性粘着シート2の感熱性粘着剤層2aを被着体1に押し付けても、感熱性粘着剤層2の粘着剤が被着体1の表面の凹部1a内にまで十分に押し込まれない可能性がある。図1(a)に示す状態で、粘着剤が即座に硬化してしまうと、感熱性粘着シート2は、被着体1の表面の一部(凸部1b)だけにしか固定されないため、粘着力が小さくなる。すなわち、強い粘着力は得られない。
【0026】
そこで、本発明では、被着体1の表面粗さが大きい場合には、図2に示すように、感熱性粘着剤層2の粘着剤が被着体1の表面の凹部1a内にまで入り込むようにする。
【0027】
その一例として、感熱性粘着剤層2aに大きな熱エネルギーを加えることによって、粘着剤の粘性を低くし(さらさらな状態にし)、かつ粘着剤が硬化するまでの時間が長くなるようにすることが考えられる。これによって、完全に硬化する前の粘着剤が徐々に、被着体1の表面に沿って被着体1の表面の凹部1a内にまで入り込むため、最終的に強い粘着力が得られる。ただし、この方法では、感熱性粘着剤シート2が被着体1に固定されるまでに長い時間が必要であるため、粘着剤が完全に硬化するまでの長い期間、粘着力が弱く、感熱性粘着シート2の貼付位置がずれたり、被着体1から剥がれたりする危険性が大きい。
【0028】
そこで、図2に示すように感熱性粘着剤層2aの粘着剤が被着体1の表面の凹部1a内にまで入り込むようにするための他の例として、感熱性粘着剤層2aを被着体1に押し付ける押圧力を大きくすることが考えられる。この場合、大きな押圧力によって、粘着剤は被着体1の表面の凹部1a内にも力ずくで押し込まれる。このように、表面が比較的粗い被着体(例えば段ボール)に対して最適な熱エネルギーよりも小さい熱エネルギーで活性化された感熱性粘着シートであっても、表面が比較的粗い被着体(例えば段ボール)に対して、大きな押圧力で貼り付けることによって、感熱性粘着シート2の粘着剤を被着体1の表面全体に行きわたらせることができ、最終的に強い粘着力を得ることができる。加えて、熱エネルギーが比較的小さいため、硬化するまでの時間が短く、感熱性粘着シート2の貼付位置がずれたり、被着体1から剥がれたりする危険性を減らすことができる。
【0029】
このようにして、本実施形態では、被着体1の被着面の表面粗さが大きい場合には、感熱性粘着剤層2aに加える熱エネルギーを大きくすることと、感熱性粘着剤層2aを被着体1に押し付ける押圧力を大きくすることによって、良好な貼り付けができるようにした。もちろん、熱エネルギーを大きくすることと、押圧力を大きくすることのいずれか一方のみを実施してもよく、両者を組み合わせて実施してもよい。
【0030】
一方、図1(b)に拡大して模式的に示すように、被着体1の表面粗さが小さい場合には、感熱性粘着シート2の感熱性粘着剤層2aに対して、互いに平滑な面同士が接触する状態になる。特に、粘着剤に大きな熱エネルギーが加えられて粘性が低くさらさらな状態になると、両面が平滑すぎて滑り易く、わずかな力が加わっただけで、感熱性粘着材層2aが剪断して感熱性粘着シート2の一部が横に滑って剥がれてしまうおそれがある。
【0031】
そこで、本発明では、被着体の表面粗さが小さい場合には、図3に示すように、感熱性粘着剤層2aに加える熱エネルギーを小さくする。粘着剤は、小さな熱エネルギーしか加えられないため、粘性が高くなりべとべとした状態になる。従って、被着体1の被着面から滑って剥がれる可能性が小さくなる。その状態で、やがて粘着剤が硬化して、感熱性粘着シート2が被着体1に固定される。加えて、熱エネルギーを小さくしているため、粘着剤が硬化するまでの時間が短くなり、感熱性粘着シート2の貼付位置がずれたり、被着体1から剥がれたりする危険性を減らすことができる。
【0032】
なお、このように被着体1の表面粗さが小さい場合には、粘着剤を押し込まなければならない凹部1aが小さいので、感熱性粘着剤層2aを被着体1に押し付ける押圧力は小さくても構わない。無駄に大きな押圧力を加えなくてすむため、エネルギーの節約ができる。
【0033】
以上説明した通り、本実施形態によると、被着体1の表面粗さが大きい場合には、感熱性粘着シート2の感熱性粘着剤層2aに加える熱エネルギーを大きくする、または、感熱性粘着剤層2aを被着体1に押し付ける押圧力を大きくする、または、これらの両方を実施する。そして、被着体1の表面粗さが小さい場合には、感熱性粘着シート2の感熱性粘着剤層2aに加える熱エネルギーを小さくする、または、感熱性粘着剤層2aを被着体1に押し付ける押圧力を小さくする、または、これらの両方を実施する。これによって、エネルギーの無駄を省き効率を高めつつ、感熱性粘着シート2を被着体1に良好に貼り付けることができる。
【0034】
さらに、被着体1の表面粗さに加えて、被着体1の温度にも基づいて、感熱性粘着シート2の感熱性粘着剤層2aに加える熱エネルギーと、感熱性粘着剤層を被着体に押し付ける押圧力とを制御してもよい。具体的には、図4に示すように、熱エネルギーE0を一定(0.23mJ)にし、押圧力(貼付応力)を一定(2kgf)にした場合、被着体1の温度が低い(例えば0℃)ときには、粘着力が小さい。これは、図1(a)に示す被着体1の表面粗さが大きいときと同様に、粘着剤が被着体1の表面の凹部1aに十分に入り込むよりも前に硬化してしまうことによる。一方、被着体1の温度が高い(例えば40℃)ときには、最終的には大きな粘着力が得られるが、図1(b)に示す被着体1の表面粗さが小さいときと同様に、粘着剤が硬化するまでの時間が長い。なお、ここでは粘着力を、幅40mmの感熱性粘着シート2を被着体1から長さ100mmだけ剥がした時に要した力で表している。
【0035】
そこで、図5に示すように、被着体1の温度が低いときには熱エネルギーE0を大きく(例えば0.35mJに)して、被着体1の温度が高いときには熱エネルギーE0を小さく(例えば0.12mJに)するとよい。また、図6に示すように、被着体1の温度が低いときには押圧力を大きく(例えば4kgfに)することが効果的である。そして、図示しないが、被着体1の温度が高いときには、押圧力が大きくても小さくても粘着力にあまり影響しないため、押圧力を小さくすることによってエネルギーの無駄が省きエネルギー効率を高めることができる。
【0036】
このように、被着体1の表面粗さのみならずその温度も検知して、感熱性粘着シート2の感熱性粘着剤層2aに加える熱エネルギーと、感熱性粘着剤層2aを被着体1に押し付ける押圧力のいずれか一方、または両方を制御することが効果的である。
【実施例】
【0037】
前記した本発明の実施形態の、より具体的な実施例について説明する。この実施例で用いられる感熱性粘着シート2は、感熱性粘着剤層2の反対側の面に感熱性の記録可能層(図示せず)を有している。
【0038】
図7,8に、本発明のプリンタの一実施例が示されている。このプリンタ11は、筐体12内に、ロール体収納部13と記録部6とカッター部7と熱活性化部8が設けられている。
【0039】
ロール体収納部13は、連続紙状の感熱性粘着シート2のロール体2aを回転可能に保持している。
【0040】
記録部6は、感熱性粘着シート2の記録可能層を加熱して記録を行う記録用サーマルヘッド14aと、記録用サーマルヘッド14aに圧接される搬送機構であるプラテンローラ15aとから構成されている。記録部6の記録用サーマルヘッド14aは、ロール体収納部13から送られて来た感熱性粘着シート2の一方の面(記録可能層)に接するように位置している。
【0041】
カッター部7は、記録部6によって記録可能層に記録が行われた連続紙状の感熱性粘着シート2を切断してラベル状にするためのものであり、1対のカッター部材7a,7b等から構成されている。なお、カッター部材7a,7bは、図示されていない支持部材によって支持されている。
【0042】
熱活性化部8は、記録部6と実質的に同一の構成であってよく、感熱性粘着シート2の感熱性粘着剤層を加熱して熱活性化する熱活性化用サーマルヘッド14bと、熱活性化用サーマルヘッド14bに圧接される搬送機構であるプラテンローラ15bとから構成されている。記録用サーマルヘッド14aと熱活性化サーマルヘッド14bは同じものであってよく、プラテンローラ15aと15bは同じものであってよい。熱活性化部8は、記録部6およびカッター部7を通る感熱性粘着シート2の進路から屈曲した位置にある。熱活性化用サーマルヘッド14bは、ロール体収納部13から繰り出され、記録部6によって記録可能層に記録され、カッター部7によって切断されたラベル状の感熱性粘着シート2の感熱性粘着剤層2aに接するように位置している。
【0043】
カッター部7の下流側に第1の排出口16が設けられ、カッター部7と第1の排出口16の間に1対の搬送ローラ18が配置されている。したがって、記録部6、カッター部7、1対の搬送ローラ18、第1の排出口16が、直線的に1列に配置されている。また、熱活性化部8の上方には、1対の排出ローラ19と、第2の排出口20が設けられている。
【0044】
このプリンタ11には、図8に示す制御部5と記憶部3と入力部4が設けられている。制御部5は、サーマルヘッド14a,14bやプラテンローラ15a,15b等に接続されてこれらを駆動および制御する。
【0045】
このような構成のプリンタ11を用いた粘着ラベルの作製方法の概略について説明すると、まず、ロール体収納部13内に収容されたロール体2aから連続紙状の感熱性粘着シート2を引き出して、記録部6にセットする。そして、記録用サーマルヘッド14aに記録信号を供給して感熱性粘着シート2の記録可能層に記録を行う。この記録用サーマルヘッド14aの駆動と同期してプラテンローラ15aを回転させ、感熱性粘着シート2を搬送する。
【0046】
このようにして記録可能層に記録された連続紙状の感熱性粘着シート2は、カッター部7のカッター部材7a,7bの間を通る。感熱性粘着シート2の切断すべき位置がカッター部材7a,7bに対向する位置に到達したら、感熱性粘着シート2の搬送を一旦停止して、カッター部材7a,7bにより感熱性粘着シート2を切断してラベル状にする(ステップS5)。切断が完了したら、記録と切断が行われたラベル状の感熱性粘着シート2をさらに搬送する。やがて、感熱性粘着シート2の先端部は、第1の排出口16から外部に突出する。
【0047】
感熱性粘着シート2の後端部が1対の搬送ローラ18から脱出する前に、搬送ローラ18が逆回転し、ラベル状の感熱性粘着シート2は、進路が変更され、後端部を先頭にして熱活性化部8に送られる。そして、熱活性化部8において、熱活性化用サーマルヘッド14bが感熱性粘着剤層2aを加熱して熱活性化させる。ここで、本発明の一実施形態の熱活性化方法が行われる。具体的には、予め入力部4から入力された、被着体1の表面粗さに基づいて、記憶部3に記憶されているデータを参照して、制御部5が熱活性化用サーマルヘッド14bを駆動する駆動パルスを決定する。すなわち、制御部5が、被着体1の表面粗さに応じて、熱活性化用サーマルヘッド14bから感熱性粘着剤層2aに供給する熱エネルギーを決定する。なお、記憶部3に、被着体1に対応した表面粗さのレベルに基づいて適宜に設定された駆動パルスを記憶させておいてもよい。そうすると、被着体の表面粗さの数値そのものではなく、被着体1の種類(例えば表面粗さの大きい段ボール、表面粗さの小さいポリエチレンのラップフィルムなど)を入力部4から入力すると、制御部5が、その種類の被着体1の表面粗さに対応した、熱活性化用サーマルヘッド14bに供給する駆動パルス、すなわち感熱性粘着剤層2aに供給する熱エネルギーを決定する。この熱エネルギーの制御方法は、本発明の実施形態として前記したのと同じである。
【0048】
このような熱活性化部8による感熱性粘着剤層2aの熱活性化と同時に、プラテンローラ15bおよび排出ローラ19が回転してラベル状の感熱性粘着シート2(粘着ラベル)を第2の排出口20から外部に排出する。
【0049】
以上説明した構成のプリンタ11によって、本発明の感熱性粘着シートの熱活性化方法を実現することができるが、熱活性化部8と制御部5と記憶部3とによって熱活性化装置を構成し、記録部6等とは独立して用いることもできる。
【0050】
また、図示しないが、第2の排出口20から排出された感熱性粘着シート2(粘着ラベル)の感熱性粘着剤層2aを被着体1に押し付ける押圧部材を有する貼り付け装置を構成してもよい。このような感熱性粘着シートの貼り付け装置は、前記したプリンタ11に押圧部材を付加した構成であってもよいが、その場合、もちろん第2の排出口20の形状や位置等を変更してもよく、第2の排出口20の近傍にベルトコンベヤ等の搬送装置を設け、その搬送装置によって連続的に供給される複数の被着体1に、次々に作製した粘着ラベルを押圧部材によって貼り付け続ける構成としてもよい。押圧部材は、感熱性粘着シート2にエアを吹き付けて被着体1に押しつけるものであっても、棒状または板状の部材を感熱性粘着シート2に直接接触させて押し出すものであってもよい。
【0051】
また、熱活性化部8と制御部5と記憶部3と押圧部材によって貼り付け装置を構成し、記録部6等とは独立して用いることもできる。
【0052】
これらの貼り付け装置においては、前記したような、被着体1の表面粗さに基づく熱エネルギーの制御を行わず、その代わりに、押圧部材による、感熱性粘着シート2の感熱性粘着剤層2aの被着体1への押圧力を制御してもよい。この押圧力の制御方法は、本発明の実施形態として前記したのと同じであってよい。さらに、前記した熱エネルギーの制御と押圧力の制御とを同時に行ってもよい。
【0053】
また、被着体の温度を測定する温度センサー(図示せず)を設け、この温度センサーで測定した温度に応じて、熱エネルギーおよび/または押圧力の制御を行ってもよい。
【0054】
さらに、図示しないが、前記したプリンタに計量部を設け、特許文献3と同様な計量ラベルプリンタとして構成してもよい。この場合、被着体の温度を測定する温度センサー(図示せず)を計量部に近接して設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】(a)は、従来の、表面粗さが大きい被着体への感熱性粘着シートの貼り付け工程を示す模式図、(b)は、従来の、表面粗さが小さい被着体への感熱性粘着シートの貼り付け工程を示す模式図である。
【図2】本発明による、表面粗さが大きい被着体への感熱性粘着シートの貼り付け工程を示す模式図である。
【図3】本発明による、表面粗さが小さい被着体への感熱性粘着シートの貼り付け工程を示す模式図である。
【図4】従来の方法によって感熱性粘着シートを被着体に貼り付けた際の、貼り付け後の時間と粘着力の関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第1の方法によって感熱性粘着シートを被着体に貼り付けた際の、貼り付け後の時間と粘着力の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第2の方法によって感熱性粘着シートを被着体に貼り付けた際の、貼り付け後の時間と粘着力の関係を示すグラフである。
【図7】本発明のプリンタの内部機構を示す概略図である。
【図8】図7のプリンタの要部を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0056】
1 被着体
1a 凹部
1b 凸部
2 感熱性粘着シート
2a 感熱性粘着剤層
3 記憶部
4 入力部
5 制御部
6 記録部
7 カッター部
7a,7b カッター部材
8 熱活性化部
11 プリンタ
12 筐体
13 ロール体収納部
14a 記録用サーマルヘッド
14b 熱活性化用サーマルヘッド
15a,15b プラテンローラ
16 第1の排出口
18 搬送ローラ
19 排出ローラ
20 第2の排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に感熱性粘着剤層を有し、被着体に対して貼り付けられる感熱性粘着シートの熱活性化方法において、
前記被着体の表面粗さに応じて異なる熱エネルギーで前記感熱性粘着剤層を加熱することを特徴とする、感熱性粘着シートの熱活性化方法。
【請求項2】
前記被着体の表面粗さと温度に応じて異なる熱エネルギーで前記感熱性粘着剤層を加熱する、請求項1に記載の感熱性粘着シートの熱活性化方法。
【請求項3】
前記被着体の表面粗さを該被着体の材質ごとに分類しておき、該被着体の各々の材質に応じてその表面粗さを判定して前記熱エネルギーを決定する、請求項1または2に記載の感熱性粘着シートの熱活性化方法。
【請求項4】
一方の面に感熱性粘着剤層を有し、被着体に対して貼り付けられる感熱性粘着シートの熱活性化装置において、
前記感熱性粘着剤層を加熱する加熱部と、
前記加熱部を制御して、前記加熱部から前記感熱性粘着剤層に付与する熱エネルギーを前記被着体の表面粗さに応じて変化させる制御部と、
を有することを特徴とする、感熱性粘着シートの熱活性化装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記加熱部を制御して、前記加熱部から前記感熱性粘着剤層に付与する熱エネルギーを前記被着体の表面粗さと温度に応じて変化させる、請求項4に記載の感熱性粘着シートの熱活性化装置。
【請求項6】
前記被着体の表面粗さを該被着体の材質ごとに分類して記憶しておく記憶部をさらに有し、
前記制御部は、前記被着体の各々の材質に応じて前記記憶部を参照して前記被着体の表面粗さを判定して、その判定結果に応じて前記熱エネルギーを決定する、請求項4または5に記載の感熱性粘着シートの熱活性化装置。
【請求項7】
一方の面に前記感熱性粘着層を有し他方の面に記録可能層を有する前記感熱性粘着シートに対して、前記感熱性粘着層の熱活性化と前記記録可能層への記録とを行うプリンタであって、
請求項4から6のいずれか1項に記載の感熱性粘着シートの熱活性化装置と、
前記記録可能層に記録を行う記録部と
を有するプリンタ。
【請求項8】
一方の面に感熱性粘着剤層を有する感熱性粘着シートを被着体に対して貼り付ける貼り付け方法において、
前記感熱性粘着剤層を加熱するステップと、
加熱された前記感熱性粘着層を、前記被着体の表面粗さに応じて異なる押圧力で該被着体に押し付けるステップと
を含むことを特徴とする、感熱性粘着シートの貼り付け方法。
【請求項9】
前記感熱性粘着層を前記被着体に押し付けるステップは、前記被着体の表面粗さと温度に応じて異なる押圧力で押し付けを行う、請求項8に記載の感熱性粘着シートの貼り付け方法。
【請求項10】
前記被着体の表面粗さを該被着体の材質ごとに分類しておき、該被着体の各々の材質に応じてその表面粗さを判定して前記押圧力を決定する、請求項8または9に記載の感熱性粘着シートの貼り付け方法。
【請求項11】
一方の面に感熱性粘着剤層を有する感熱性粘着シートを被着体に対して貼り付ける貼り付け方法において、
前記被着体の表面粗さにかかわらず、小さい熱エネルギーで前記感熱性粘着剤層を加熱するステップと、
加熱された前記感熱性粘着層を、前記被着体の表面粗さが粗い場合には大きい押圧力で、前記被着体の表面粗さが小さい場合には小さい押圧力で、該被着体に押し付けるステップと
を含むことを特徴とする、感熱性粘着シートの貼り付け方法。
【請求項12】
一方の面に感熱性粘着剤層を有する感熱性粘着シートを被着体に貼り付ける貼り付け装置において、
前記感熱性粘着剤層を加熱する加熱部と、
加熱された前記感熱性粘着層を前記被着体に押し付ける押圧部と、
前記押圧部を制御して、前記感熱性粘着剤層を前記被着体に押し付ける押圧力を前記被着体の表面粗さに応じて変化させる制御部と、
を有することを特徴とする、感熱性粘着シートの貼り付け装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記押圧部を制御して、前記感熱性粘着剤層を前記被着体に押し付ける押圧力を前記被着体の表面粗さと温度に応じて変化させる、請求項12に記載の感熱性粘着シートの貼り付け装置。
【請求項14】
前記被着体の表面粗さを該被着体の材質ごとに分類して記憶しておく記憶部をさらに有し、
前記制御部は、前記被着体の各々の材質に応じて前記記憶部を参照して前記被着体の表面粗さを判断し、その判定結果に応じて前記押圧力を決定する、請求項12または13に記載の感熱性粘着シートの貼り付け装置。
【請求項15】
前記感熱性粘着シートの他方の面に設けられている記録可能層に記録を行う記録部をさらに有する、請求項12から14のいずれか1項に記載の感熱性粘着シートの貼り付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−179398(P2008−179398A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15185(P2007−15185)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】