説明

感熱性粘着剤及び感熱性粘着材料

【課題】ダンボールのような粗面被着体への低温環境でも粘着力が長時間に亘って持続することができ、かつ耐ブロッキング性も良好な感熱性粘着剤及び感熱性粘着材料の提供。
【解決手段】少なくとも熱可塑性樹脂、固体可塑剤、及び粘着付与剤を含有してなり、前記粘着付与剤が、高分子乳化剤の存在下で乳化させてなる粘着付与剤エマルジョンである感熱性粘着剤とする。高分子乳化剤の質量平均分子量が、5,000〜40,000である態様、などが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温では非粘着性であるが加熱により粘着性が発現し、しかも粘着性発現後も粘着性が持続し、特にダンボールのような粗面被着体に対する十分な粘着力を有する水分散型の感熱性粘着剤及び感熱性粘着材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、感熱性粘着剤は、粘着性発現後の粘着性を持続させるため、公知のディレードタック型粘着剤に代表されるように水分散型粘着剤として使用される場合が多い。例えば、非特許文献1に記載されているように、熱可塑性樹脂、粘着付与剤及び固体可塑剤を基本組成としている。前記熱可塑性樹脂は粘着力及び接着力の根元となるものである。前記固体可塑剤は、常温では固体であるため樹脂に可塑性を与えず、加熱により溶融して樹脂を膨潤又は軟化させるため、常温では非粘着性の粘着剤に、加熱することによって粘着性を発現させる作用をする。この際、粘着付与剤が存在していると粘着性が一層顕著に現れ、実用特性が向上する。このような感熱性粘着剤は、例えば上質紙、コート紙、アート紙、蒸着紙等の紙、あるいはPETフィルム等のプラスチック基材上に塗工され、金属、ガラス、又はプラスチック等の被着体に貼り付けて使用される。
【0003】
また、特許文献1及び特許文献2には、ベンゾフェノンを固体可塑剤に用いたディレードタック型粘着剤が提案されている。しかし、この提案の粘着剤は、ポリオレフィンやガラスのような鏡面に対する粘着力はあるが、ダンボールのような粗面被着体に対する粘着力が弱く、ダンボールに貼り付け後、経時により接着力の低下が生じ、宅配便等の物流での使用に実用上大きな障害となっている。
また、特許文献3には、ヒンダードフェノール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、及び芳香族スルホンアミド化合物を含有し、更にアンダー層中に中空率50%の中空粒子を含有する感熱性粘着材料が提案されている。しかし、この提案の感熱性粘着材料を用いた場合であっても、ダンボールのような粗面被着体に対する粘着性と耐ブロッキング性は充分満足できるものではなかった。
【0004】
また、特許文献4には、ベンゾトリアゾールを固体可塑剤として用いたディレードタック糊が提案されている。耐ブロッキング性に比較的優れ、被着体として、紙、ガラス、金属等の材質、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂に対して長期に安定した接着力が持続することができる。しかし、この提案のディレードタック糊においても、ダンボールのような粗面被着体に対する接着力は不十分であるという問題がある。
【0005】
ダンボールに対する粘着特性に優れるディレードタック糊として、固体可塑剤にリン系の化合物を用いるものが提案されている(特許文献5、特許文献6、及び特許文献7参照)。また、支持体上に粘着アンダー層、中空中間層、及び感熱性粘着層を有する感熱性粘着材料が提案されている(特許文献8参照)。しかし、これらの提案では、ダンボールに対する低温環境下の粘着力を上げようとすると60℃保管でブロッキングが発生してしまい、60℃保管でのブロッキング品質を向上させようとすると低温環境下での粘着力が低下するという問題がある。
【0006】
ブロッキングは、サンプルを保管中に感熱性粘着剤が粘着性を発現してしまう現象であり、常温よりも高い温度雰囲気下に長時間曝された場合等に誘発することがある。ロール状態又はそれを枚葉に裁断して積み重ねた状態のいずれの場合においても、一度ブロッキングが誘発すれば、感熱性粘着層と外面(支持体を挟んで感熱性粘着層と反対面)とが接着し、紙送りに支障をきたすのみならず、外面の印刷にも悪影響を与えることになる。
【0007】
そこで、ブロッキングを防止する手段として、感熱性粘着剤中にブロッキング防止剤や滑性のあるワックスを配合する方法(特許文献9参照)、固体可塑剤の表面を無機化合物やコロイド粒子で保護し、固体可塑剤の軟化を抑制することでブロッキングを防止する方法(特許文献10、特許文献11、及び特許文献12参照)、などが提案されている。しかし、これらの提案は、ブロッキング防止剤及びワックスを配合するとブロッキング防止効果が不充分であるばかりか、逆に粘着性の低下をもたらす。また、固体可塑剤の表面を無機化合物及びコロイド粒子で保護すると、固体可塑剤の溶融乃至拡散に時間がかかり、感熱性粘着剤の粘着性が現れにくく、粘着性能が低下する等の問題を生じ、実用上不充分である。
また、特許文献13には、粘着付与剤に軟化点110℃以上150℃未満の石油系樹脂を用いることが提案されている。しかし、この提案では、60℃のブロッキング品質が不十分であり、ダンボールのような粗面被着体に対する接着力は不十分であるという問題がある。
また、高分子乳化剤の存在下で乳化させてなる粘着付与剤エマルジョン作製方法について、例えば特許文献14〜16に記載されているが、これらは、粘着剤としての特性や、粘着付与剤エマルジョンの安定性を向上させることを目的としたものであり、本発明の固体可塑剤を含んだ感熱性粘着剤の粘着力向上とブロッキング性向上技術とは効果及び目的が異なるものである。
【0008】
したがってダンボールのような粗面被着体への低温環境でも粘着力が長時間に亘って持続することができ、かつ耐ブロッキング性も良好な感熱性粘着剤及び感熱性粘着材料は、未だ得られておらず、その速やかな提供が望まれているのが現状である。
【0009】
【特許文献1】特開2003−206455号公報
【特許文献2】特開2002−38123号公報
【特許文献3】特開2002−105414号公報
【特許文献4】特許第3556414号公報
【特許文献5】特開2006−257163号公報
【特許文献6】特開2006−257320号公報
【特許文献7】特開2007−77288号公報
【特許文献8】特開2006−83196号公報
【特許文献9】特公昭62−21835号公報
【特許文献10】特開平6−57223号公報
【特許文献11】特開平6−100847号公報
【特許文献12】特開平6−100848号公報
【特許文献13】特開2000−96021号公報
【特許文献14】特許第3350910号公報
【特許文献15】特開2005−200440号公報
【特許文献16】特開2007−2106号公報
【非特許文献1】「接着便覧」第12版、131〜135頁、昭和55年、高分子刊行会発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、ダンボールのような粗面被着体への低温環境でも粘着力が長時間に亘って持続することができ、かつ耐ブロッキング性も良好な水分散型の感熱性粘着剤及び感熱性粘着材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも熱可塑性樹脂、固体可塑剤、及び粘着付与剤を含有してなり、
前記粘着付与剤が、高分子乳化剤の存在下で乳化させてなる粘着付与剤エマルジョンであることを特徴とする感熱性粘着剤である。
<2> 粘着付与剤エマルジョンが、重合ロジン及びテルペンフェノール樹脂のいずれかを含有する前記<1>に記載の感熱性粘着剤である。
<3> 粘着付与剤エマルジョンにおける樹脂の軟化点が150℃以上である前記<2>に記載の感熱性粘着剤である。
<4> 高分子乳化剤の質量平均分子量が、5,000〜40,000である前記<1>から<3>のいずれかに記載の感熱性粘着剤である。
<5> 固体可塑剤が、下記構造式(1)から下記構造式(3)の少なくともいずれかで表される化合物である前記<1>から<4>のいずれかに記載の感熱性粘着剤である。
【化4】

ただし、前記構造式(1)中、R及びRは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、及びα,α−ジメチルベンジル基のいずれかを表す。Xは、水素原子及びハロゲン原子のいずれかを表す。
【化5】

【化6】

<6> 熱可塑性樹脂が、ガラス転移温度(Tg)が−70℃〜−30℃の(メタ)アクリル樹脂である前記<1>から<5>のいずれかに記載の感熱性粘着剤である。
<7> 支持体と、該支持体上に前記<1>から<6>のいずれかに記載の感熱性粘着剤からなる感熱性粘着層を有することを特徴とする感熱性粘着材料である。
<8> 感熱性粘着層と支持体の間にアンダー層を有する前記<7>に記載の感熱性粘着材料である。
<9> アンダー層が、中空粒子を含有する中空アンダー層である前記<8>に記載の感熱性粘着材料である。
<10> アンダー層が、粘着アンダー層と、中空粒子を含有する中空アンダー層とからなる前記<8>に記載の感熱性粘着材料である。
<11> ライン型サーマルヘッドによる加熱により粘着性が発現する前記<7>から<10>のいずれかに記載の感熱性粘着材料である。
<12> 支持体の感熱性粘着層を有する面の反対側面に記録層を有する前記<7>から<11>のいずれかに記載の感熱性粘着材料。
【0012】
本発明の感熱性粘着剤は、少なくとも熱可塑性樹脂、固体可塑剤、及び粘着付与剤を含有してなり、
前記粘着付与剤が、高分子乳化剤の存在下で乳化させてなる粘着付与剤エマルジョンである。これにより、ダンボールのような粗面被着体への低温環境でも粘着力が長時間に亘って持続することができ、かつ耐ブロッキング性も良好な水分散型の感熱性粘着剤が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、従来における諸問題を解決することができ、ダンボールのような粗面被着体への低温環境でも粘着力が長時間に亘って持続することができ、かつ耐ブロッキング性も良好な水分散型の感熱性粘着剤及び感熱性粘着材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(感熱性粘着剤)
本発明の感熱性粘着剤は、熱可塑性樹脂、固体可塑剤、及び粘着付与剤を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0015】
−粘着付与剤−
前記粘着付与剤は、高分子乳化剤の存在下で乳化させてなる粘着付与剤エマルジョンである。
前記粘着付与剤としては、特に制限はなく、各種公知のものを使用することができ、例えばロジン類、ロジン誘導体、石油系樹脂、テルペン系樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記ロジン類としては、例えばガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の原料ロジン、該原料ロジンを不均化乃至水素添加処理した安定化ロジン、重合ロジンなどが挙げられる。
前記ロジン誘導体としては、例えばロジンエステル類、ロジンフェノール類が挙げられる。
前記ロジンエステル類としては、(1)前記ロジン類と多価アルコールとをエステル化反応させて得られるロジンエステル、(2)原料ロジンを部分的にフマル化もしくはマレイン化し、次いでエステル化して得られる部分マレイン化もしくは部分フマル化ロジンの多価アルコールエステル、(3)原料ロジンを部分的にフマル化もしくはマレイン化させた後、不均化し、次いでエステル化して得られる部分マレイン化もしくは部分フマル化不均化ロジンの多価アルコールエステル、などが挙げられる。また、前記ロジンフェノール類とは、ロジン類にフェノール類を付加させて熱重合したもの、又は次いでエステル化したものをいう。
前記エステル化に用いられる多価アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリスリトール、などが挙げられる。
【0017】
前記石油系樹脂としては、例えばC5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5〜C9共重合系石油樹脂、クマロン樹脂、クマロン−インデン系樹脂、ピュアモノマー樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、又はこれらの水素化物などが挙げられる。
前記テルペン系樹脂としては、例えばα−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、α−ピネン、β−ピネン等のテルペン類とスチレン等の芳香族モノマーを共重合させた芳香族変性のテルペン系樹脂、又はこれらの水素化物などが挙げられる。
これらの中でも、ダンボールへの粘着性の点から、重合ロジン又はテルペンフェノール樹脂が特に好ましい。
前記粘着付与剤エマルジョンにおける樹脂の軟化点は、150℃以上が好ましく、耐ブロッキング性の点から150℃〜200℃がより好ましい。
【0018】
本発明において、前記粘着付与剤は、高分子乳化剤の存在下で乳化してエマルジョンとして用いられる。
前記高分子乳化剤としては高分子樹脂が用いられ、該高分子樹脂の質量平均分子量は、5,000〜40,000が好ましい。前記質量平均分子量が、5,000未満であると、耐ブロッキング性が悪くなることがあり、40,000を超えると、低温での粘着力が低下することがある。
前記質量平均分子量は、例えばGPC(Gel Permeation Chromatography)法により測定することができる。
【0019】
前記高分子乳化剤としては、特に制限はなく、従来公知の高分子乳化剤を用いることができ、例えば、反応性乳化剤、スチレン及び/又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルアニオン性単量体を主成分とする高分子乳化剤(特許第3350910号公報)、アニオン性単量体及び(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体からなる高分子乳化剤(特開2005−200440号公報)、スチレン類、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アニオン性モノマーを共重合したポリマー塩(特開2007−2106号公報)などが挙げられる。
【0020】
前記高分子乳化剤の使用量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粘着付与剤100質量部に対し、固形分換算で1質量部〜10質量部が好ましく、2質量部〜7質量部がより好ましい。前記使用量が、10質量部を超えると、得られる感熱性粘着剤の粘着力が低下し、1質量部未満であると、エマルジョン型粘着付与樹脂の貯蔵安定性が悪くなることがある。
【0021】
乳化方法としては、特に制限はなく、従来公知である高圧乳化法、反転乳化法等を採用できる。具体的には(1)前記粘着付与剤をベンゼン、トルエン等の溶剤に溶解した後前記高分子乳化剤及び軟水を添加し、高圧乳化機を用いてエマルジョン化した後減圧下に溶剤を除去する方法、(2)粘着付与剤に少量のベンゼン、トルエン等の溶剤を混合し、つづいて乳化剤を練り込み、更に熱水を徐々に添加していき、転相乳化させてエマルジョンを得たのち溶剤を減圧下に除去又はそのまま使用する方法、(3)加圧下又は常圧下にて樹脂の軟化点以上に昇温して乳化剤を練り込んだ後に熱水を徐々に添加していき、転相乳化させてエマルジョン化する方法、などが挙げられる。
【0022】
前記エマルジョン型粘着付与剤の固形分濃度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、20質量%〜70質量%が好ましく、40質量%〜60質量%がより好ましい。前記エマルジョン型粘着付与剤の平均粒子径は、0.2μm〜2μmが好ましく、大部分は0.5μm以下の粒子として均一に分散している。また、該エマルジョン型粘着付与剤は白色乃至乳白色の外観を呈し、2〜9程度のpHを有する。
【0023】
前記粘着付与剤の前記感熱性粘着剤における含有量は、固形分で、1質量%〜30質量%が好ましく、1質量%〜20質量%がより好ましい。前記含有量が、1質量%未満であると、著しく粘着力が低下することがあり、30質量%を超えると、通常の保存環境下温度で保存上の不具合(耐ブロッキング性が低下)及び低温環境下での初期粘着力の低下が生じることがある。
【0024】
本発明のエマルジョン型粘着付与剤は、ベース樹脂である熱可塑性樹脂、及び固体可塑剤と配合されて、感熱性粘着剤として用いられる。
【0025】
−熱可塑性樹脂−
前記熱可塑性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、(メタ)アクリル系重合体エマルジョンが好適に用いられる。該(メタ)アクリル系重合体エマルジョンとしては、特に制限はなく、一般に各種のアクリル系粘着剤に用いられているものを使用でき、例えば(メタ)アクリル酸エステルを一括仕込み重合法、モノマー逐次添加重合法、乳化モノマー逐次添加重合法、シード重合法等の公知の乳化重合法により容易に製造することができる。
【0026】
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、得られるエマルジョンに貯蔵安定性を付与するため前記(メタ)アクリル酸エステルに換えて(メタ)アクリル酸を少量使用してもよい。更に所望により(メタ)アクリル酸エステル重合体の接着特性を損なわない程度において、例えば、酢酸ビニル、スチレン等の共重合可能なモノマーを併用できる。
【0027】
前記(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする重合体のガラス転移温度は、−70℃〜−30℃が好ましい。前記ガラス転移温度が、−30℃より高くなると、粘着性が低下することがあり、−70℃より低くなると、耐ブロッキング性が低下することがある。
なお、アクリル系重合体エマルジョンに用いられる乳化剤にはアニオン系乳化剤、部分ケン化ポリビニルアルコール等を使用でき、その使用量は重合体100質量部に対して0.1質量部〜5質量部が好ましく、0.5質量部〜3質量部がより好ましい。
前記熱可塑性樹脂の前記感熱性粘着剤における含有量は、10質量%〜60質量%が好ましく、15質量%〜50質量%がより好ましい。前記熱可塑性樹脂の含有量が10質量%未満及び60質量%を超えた場合、いずれも粘着力の低下となるので好ましくない。一方、前記熱可塑性樹脂の含有量が60質量%を超えると、通常の保存環境下温度で粘着力が発現するなど保存上の不具合(ブロッキング)が生じることがある。
【0028】
−固体可塑剤−
前記固体可塑剤は、室温において固体であり、加熱時に溶融するものが用いられる。前記固体可塑剤の融点は、80℃以上好ましく、上限値は200℃程度である。前記融点が80℃未満であると、感熱性粘着剤としたときに通常の保存環境下温度で粘着力が発現するなど、保存上の不具合(ブロッキング)が生じる。また、感熱性粘着層塗布液を基材に塗布し、乾燥するときに粘着力が発現するなどの製造上の不具合も生じることがある。前記融点が200℃を超えると、粘着力を発現させるために大量のエネルギーが必要となり、実用上の不具合が生じる。また、感熱記録紙を基材として用い、大量のエネルギーで粘着力を発現させた場合には、感熱記録層が発色するため印字画像が読み取れなくなるという問題がある。
【0029】
前記固体可塑剤としては、例えば、下記構造式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物、下記構造式(2)で表されるトリフェニルホスフィン化合物、下記構造式(3)で表される化合物、更には下記構造式(4)で表されるヒドロキシ安息香酸エステル化合物、下記構造式(5)から(11)で表される化合物、などが挙げられる。
【0030】
【化7】

ただし、前記構造式(1)中、R及びRは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、及びα,α−ジメチルベンジル基のいずれかを表す。Xは、水素原子、及びハロゲン原子のいずれかを表す。
【0031】
前記構造式(1)におけるアルキル基としては、炭素数が1〜8のものが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基などが挙げられ、これらは置換基で更に置換されていてもよい。
前記置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基、シアノ基、特定の置換基(例えば、ハロゲン原子、ニトロ基)を有していてもよいアルキル基、アリール基、複素環基などが挙げられる。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0032】
前記構造式(1)で表されるベンゾトリアゾール化合物としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ(1,1−ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−sec−ブチル−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、などが挙げられる。
【0033】
【化8】

【化9】

【0034】
〔構造式(4)〕
【化10】

ただし、前記構造式(4)中、Rは、炭素数が1〜18のアルキル基、シクロヘキシル基、アルケニル基、アラルキル基(芳香環に置換基を有していてもよい)、及びフェニル基のいずれかを表す。
【0035】
前記構造式(4)で表されるヒドロキシ安息香酸エステル化合物としては、例えば、m−ヒドロキシ安息香酸メチル、m−ヒドロキシ安息香酸エチル、m−ヒドロキシ安息香酸フェニル、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸n−プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸n−ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ステアリル、p−ヒドロキシ安息香酸シクロヘキシル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸4−クロロベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸4−メチルベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸フェニル、などが挙げられる。
【0036】
〔構造式(5)〕
【化11】

ただし、前記構造式(5)中、R及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、アルキル基及びアルコキシ基のいずれかを表す。Yは、水素原子、及び水酸基のいずれかを表す。
【0037】
〔構造式(6)〕
【化12】

ただし、前記構造式(6)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、及びアルコキシ基のいずれかを表す。Yは、水素原子、及び水酸基のいずれかを表す。
【0038】
〔構造式(7)〕

ただし、前記構造式(7)中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、及びアルコキシ基のいずれかを表す。
【0039】
前記構造式(5)〜(7)において、前記アルキル基としては、前記構造式(1)と同様のものが挙げられる。
前記構造式(5)〜(7)におけるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、などが挙げられる。
【0040】
前記構造式(5)で表される化合物としては、例えばトルオイン、アニソイン、m−アニソイン、デオキシトルオイン、デオキシアニソイン、4,4’−ジエチルベンゾイン、4,4’−ジエトキシベンゾイン、などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記構造式(6)で表される化合物としては、例えば1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸−p−クロロフェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸−o−クロロフェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸−p−メチルフェニル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸−o−メチルフェニル、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニル、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸−p−クロロフェニル、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸−o−クロロフェニルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記構造式(7)で表される化合物としては、例えば安息香酸−3−ヒドロキシフェニル、安息香酸−4−ヒドロキシフェニル、安息香酸−2−ヒドロキシフェニル、o−メチル安息香酸−3−ヒドロキシフェニル、p−クロロ安息香酸−3−ヒドロキシフェニル、などが挙げられる。
【0042】
〔構造式(8)〕
【化13】

ただし、前記構造式(8)中、R及びRは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよく、水素原子、又はアルキル基を表す。m及びnは、1〜5の整数を表す。
【0043】
〔構造式(9)〕
【化14】

【0044】
〔構造式(10)〕
【化15】

ただし、前記構造式(10)中、Rは、水素原子、又はアルキル基を表す。nは1〜5の整数を表す。
【0045】
前記構造式(1)〜(10)で表される固体可塑剤は、体積平均粒子径で10μm以下、好ましくは3μm以下に粉砕して用いることができる。また、体積平均粒子径を更に細かく、例えば、0.5μm以下にすることにより、動的な熱感度が上がり低エネルギーで熱可塑性樹脂及び粘着付与剤と相溶して熱活性粘着剤となる。
前記固体可塑剤は、1種を単独で用いる以外に、前記構造式(1)〜(10)で表される化合物と任意の割合で併用することができるが、その場合の配合比は任意に調整することが可能である。
【0046】
本発明においては、0℃の環境下でのダンボールに対する粘着性の点から固体可塑剤として、上記構造式(1)、上記構造式(2)、及び上記構造式(3)の少なくともいずれかで表される化合物を用いることが好ましく、上記構造式(1)及び上記構造式(2)の混合物、上記構造式(3)の化合物が特に好ましい。
前記感熱性粘着剤における固体可塑剤の含有量は、25質量%〜80質量%が好ましく、35質量%〜70質量%がより好ましい。前記固体可塑剤の含有量が、25質量%未満であると、熱可塑性樹脂と組合せた場合、ブロッキングが生じやすく、また粘着力の低下をきたすことがあり、80質量%を超えると、粘着力の低下が生じることがある。
前記固体可塑剤中における前記構造式(2)で表されるトリフェニルホスフィンの含有量は、80質量%〜95質量%が好ましく、80質量%〜90質量%がより好ましい。前記トリフェニルホスフィンの含有量が、80質量%未満であると、23℃〜40℃の貼り付け直後の粘着力が弱い問題があり、95質量%を超えると、ディレード性及び耐ブロッキング性が低下することがある。
【0047】
前記感熱性粘着剤には、必要に応じて、共融化剤、分散剤、消泡剤、増粘剤、ブロッキング防止剤等のその他の成分を添加することができる。
【0048】
(感熱性粘着材料)
本発明の感熱性粘着剤は、支持体上に感熱性粘着剤を塗布し、感熱性粘着材料として用いることができる。
【0049】
本発明の感熱性粘着材料は、支持体と、該支持体の一方の面上に感熱性粘着層を設けたものであり、必要に応じて、支持体と感熱性粘着層の間にアンダー層(中間層)を設けることができ、更に必要に応じてその他の層を有してなる。なお、前記支持体の感熱性粘着層を有しない他方の面上には、各種記録層、及び保護層を設けることができる。
【0050】
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、平板状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記感熱性粘着材料の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0051】
前記支持体の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、無機材料と有機材料に大別される。前記無機材料としては、例えばガラス、石英、シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、SiO、金属などが挙げられる。前記有機材料としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、合成紙等の紙;三酢酸セルロース等のセルロース誘導体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンなどが挙げられる。これらの中でも、上質紙、コート紙、プラスチックフィルム、合成紙が特に好ましい。
【0052】
前記支持体は、塗布層の接着性を向上させる目的で、コロナ放電処理、酸化反応処理(クロム酸等)、エッチング処理、易接着処理、帯電防止処理等の表面改質を行うことが好ましい。なお、前記支持体には、酸化チタン等の白色顔料を添加することが好ましい。
前記支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50μm〜2,000μmが好ましく、100μm〜1,000μmがより好ましい。
本発明の感熱性粘着剤を基材の片面に塗布することにより、塩化ビニルラップやポリオレフィンラップ、特にダンボールに対する粘着力が強く、かつ耐ブロッキング性も良好な感熱性粘着材料を得ることができる。
【0053】
前記感熱性粘着材料は、従来公知のバーコーター、ロールコーター、アプリケーター、ホットメルトコーター等により塗工後、熱風乾燥、赤外線、マイクロ波、高周波等の乾燥を行い作製される。
感熱性粘着層の塗布量は、乾燥塗工量で通常2〜35g/m、好ましくは5〜25g/mの範囲で塗布される。感熱性粘着層の塗工量が2g/m未満であると、加熱による接着を行う際に十分な接着力が得られない。また、35g/mを超えると、接着機能が飽和し経済上好ましくない。
【0054】
<アンダー層>
本発明において、前記感熱性粘着層と支持体の間にアンダー層を設けることで被着体との粘着力を向上させることができる。
前記アンダー層には、中空粒子を含有する中空アンダー層と、粘着アンダー層とがあり、(1)中空アンダー層のみを有する態様、(2)粘着アンダー層と中空アンダー層とを有する態様とが挙げられる。なお、前記(2)の場合には、支持体上に粘着アンダー層と、中空アンダー層とをこの順に設けることが好ましい。
【0055】
−中空アンダー層−
前記中空アンダー層は、少なくとも熱可塑性樹脂及び中空粒子を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記中空アンダー層を設けることで熱効率が向上し、粘着力を向上させることができる。
【0056】
前記熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度(Tg)−70℃〜−30℃の熱可塑性樹脂をもちいることができるこれら樹脂としては、例えば、ビニル系モノマーをグラフト共重合した天然ゴムラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル−酢酸ビニル−共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル−酢酸ビニル−共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル−スチレン共重合体が特に好ましい。
【0057】
前記中空粒子としては、体積平均粒子径が2.0μm〜5.0μmであり、かつ中空率が70%以上である球状プラスチック中空粒子が好ましく、中空粒子の最大粒子径が10.0μm以下であると共に、体積平均粒子径が2.0μm〜5.0μmであり、かつ中空率が70%以上の球状中空粒子がより好ましい。前記中空率は85〜95%が更に好ましい。
前記中空率が70%未満であると、断熱効果が不充分であるためにサーマルヘッドからの熱エネルギーが支持体を通じて外へ放出され、粘着力向上の効果が劣ることがある。前記体積平均粒子径が5.0μmを超えると、このような中空粒子を用いたアンダー層上に感熱性粘着層を設けた場合、大きな粒子の部分には感熱性粘着層が形成されない部分が生じて、熱活性化した場合に粘着力が低下しやすくなることがあり、2.0μm未満であると、中空率70%以上を確保することが困難になり、粘着力向上効果が劣ることがある。
【0058】
ここで、前記球状プラスチック中空粒子とは、熱可塑性樹脂を殻とし、内部に空気、その他の気体を含有し、すでに発泡状態となっている中空粒子を意味する。前記中空率とは、前記中空微粒子の外径基準の体積と内径基準の体積との比率を意味する。
【0059】
前記球状中空粒子の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−塩化ビニリデン−メタクリル酸メチル共重合体、アクリロニトリル−メタクリロニトリル−イソボニルメタクリレート共重合体などが挙げられる。
【0060】
前記中空アンダー層における前記ガラス転移温度(Tg)が−70℃〜−30℃である熱可塑性樹脂と前記中空粒子との混合割合は、前記熱可塑性樹脂1質量部に対し前記中空粒子0.1質量部〜2質量部が好ましく、0.3質量部〜1質量部がより好ましい。前記中空粒子が0.1質量部未満であると、粘着力向上効果が劣ることがあり、2質量部を超えると、中空アンダー層の結着力が劣って粘着力が弱くなることがある。
【0061】
前記中空アンダー層は、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、上記成分を配合してなるアンダー層塗布液を用いた塗布法により好適に形成することができる。
前記塗布法としては、例えば、ブレード塗工法、グラビア塗工法、グラビアオフセット塗工法、バー塗工法、ロール塗工法、ナイフ塗工法、エアーナイフ塗工法、コンマ塗工法、Uコンマ塗工法、AKKU塗工法、スムージング塗工法、マイクログラビア塗工法、リバースロール塗工法、4本又は5本ロール塗工法、ディップ塗工法、落下カーテン塗工法、スライド塗工法、ダイ塗工法、などが挙げられる。
【0062】
前記アンダー層が中空アンダー層のみを有する場合には、前記中空アンダー層塗布液の塗布量は、乾燥塗布量で1g/m〜35g/mが好ましく、1g/m〜5g/mがより好ましい。前記アンダー層塗布液の塗布量が1g/m未満であると、加熱による接着を行う際に十分な接着力が得られず、また断熱効果が劣ることがあり、35g/mを超えると、接着力や断熱効果が飽和してしまうことがある。
【0063】
−粘着アンダー層−
本発明においては、前記中空粒子を含む中空アンダー層と、支持体との間に粘着樹脂からなる粘着アンダー層を設けることでさらなる粘着力の向上が図られる。
前記アンダー層が粘着アンダー層と中空アンダー層とを有する場合には、前記中空アンダー層の塗布量は乾燥塗布量で、1g/m〜5g/mが好ましく、1g/m〜2g/mがより好ましい。前記中空アンダー層の塗布量が、1g/m未満であると、熱活性時の断熱効果が少なく、5g/mを超えると、粘着アンダー層からの粘着力向上の効果が少なくなり好ましくない。
前記粘着アンダー層の塗布量は乾燥塗布量で、2g/m〜35g/mが好ましく、4g/m〜35g/mがより好ましい。
【0064】
前記粘着アンダー層における熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度(Tg)が−70℃〜−5℃の熱可塑性樹脂が工程であり、該熱可塑性樹脂としては、例えばビニル系モノマーをグラフト共重合した天然ゴムラテックス、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−スチレン共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル−スチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、などが挙げられる。高ガラス転移温度の樹脂の場合は、粘着アンダー層及び中間層の特徴が全く得られず、ダンボール等の粗面被着体等に対する粘着力が弱く、上層に設けられた感熱性粘着層のみの粘着力となってしまう。一方、ほとんどの樹脂はガラス転移温度が−70℃以上であり、本発明の上記熱可塑性樹脂のTg範囲に満たない低Tg樹脂の場合でも特に問題はないが、コスト高となり経済的に好ましくない。
【0065】
前記粘着アンダー層の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができるが、例えば、上記成分、及び更に必要に応じてその他の成分を水に攪拌分散してなる粘着アンダー層塗布液を用いた塗布法により好適に形成することができる。前記塗布法としては、例えば、ブレード塗工法、グラビア塗工法、グラビアオフセット塗工法、バー塗工法、ロール塗工法、ナイフ塗工法、エアーナイフ塗工法、コンマ塗工法、Uコンマ塗工法、AKKU塗工法、スムージング塗工法、マイクログラビア塗工法、リバースロール塗工法、4本又は5本ロール塗工法、ディップ塗工法、落下カーテン塗工法、スライド塗工法、ダイ塗工法、などが挙げられる。
【0066】
<感熱性粘着層>
前記感熱性粘着層は、本発明の前記感熱性粘着剤を含んでなる。
本発明の前記感熱性粘着剤は、熱可塑性樹脂、及び熱溶融性物質を含んでなり、非熱溶融性物質、粘着付与剤、共融化剤、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
各成分の詳細は、前記感熱性粘着剤の説明で述べたとおりである。
【0067】
前記感熱性粘着層の形成方法としては、特に制限はなく、公知の方法に従って形成することができ、例えば、上記成分を配合してなる感熱性粘着剤液を用いた塗布法により好適に形成することができる。
前記塗布法としては、例えば、ブレード塗工法、グラビア塗工法、グラビアオフセット塗工法、バー塗工法、ロール塗工法、ナイフ塗工法、エアーナイフ塗工法、コンマ塗工法、Uコンマ塗工法、AKKU塗工法、スムージング塗工法、マイクログラビア塗工法、リバースロール塗工法、4本又は5本ロール塗工法、ディップ塗工法、落下カーテン塗工法、スライド塗工法、ダイ塗工法、などが挙げられる。
なお、前記塗布若しくは印刷の際の乾燥条件としては、使用される熱溶融性物質及び共融化剤が融解しない温度範囲で乾燥する。前記乾燥の手段としては、例えば熱風乾燥の他に赤外線、マイクロ波、高周波による熱源を利用した乾燥方法が使用できる。
【0068】
前記感熱性粘着剤液の塗布量は、乾燥塗布量で、5〜30g/mが好ましく、10〜20g/mがより好ましい。前記乾燥塗布量が5g/m未満であると、低温で貼り付ける際に十分な接着力が得られないことがあり、30g/mを超えると、アンダー層の断熱効果が薄れたり、経済性が劣ることがある。
【0069】
本発明の感熱性粘着材料は、上記構成を備えることにより、特にダンボール等の粗面被着体に対する0〜10℃の低温環境下での粘着力が強く、耐ブロッキング性も良好であり、更に、低エネルギーでの粘着性発現(熱活性化)が可能なものである。
【0070】
次に、本発明の前記感熱性粘着材料において、支持体の感熱性粘着層を有さない側の面上に、少なくとも記録層を有し、保護層、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0071】
<記録層>
本発明の感熱性粘着材料は、感熱性粘着層の反対面に記録層を設けることで画像等を記録することができる。
前記記録層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、感熱記録層、熱転写記録用インク受容層、及びインクジェット用インク受容層、などが好適に挙げられる。
【0072】
〔感熱記録用の感熱性粘着材料〕
前記感熱記録用の感熱性粘着材料における感熱記録層は、ロイコ染料、顕色剤、及びバインダー樹脂を含み、更に必要に応じてその他の成分を含んでなる。
【0073】
前記ロイコ染料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリフェニルメタン系染料、フルオラン系染料、フェノチアジン系染料、オーラミン系染料、スピロピラン系染料、インドリノフタリド系染料などが好適に挙げられる。
前記ロイコ染料としては、例えば、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(別名:クリスタルバイオレットラクトン)、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジエチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−クロルフタリド、3,3−ビス(p−ジブチルアミノフェニル)フタリド、3−シクロヘキシルアミノ−6−クロルフルオラン、3−ジメチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンズフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロルフルオラン、3−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、2−{N−(3’−トリフルオルメチルフェニル)アミノ}−6−ジエチルアミノフルオラン、2−{3,6−ビス(ジエチルアミノ)−9−(o−クロルアニリノ)キサンチル安息香酸ラクタム}、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリクロロメチルアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−ジブチルアミノ−7−(o−クロルアニリノ)フルオラン、3−N−メチル−N−アミルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)フルオラン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、6’−クロロ−8’−メトキシ−ベンゾインドリノ−ピリロスピラン、6’−ブロモ−3’−メトキシ−ベンゾインドリノ−ピリロスピラン、3−(2’−ヒドロキシ−4’−ジメチルアミノフェニル)−3−(2’−メトキシ−5’−クロルフェニル)フタリド、3−(2’−ヒドロキシ−4’−ジメチルアミノフェニル)−3−(2’−メトキシ−5’−ニトロフェニル)フタリド、3−(2’−ヒドロキシ−4’−ジエチルアミノフェニル)−3−(2’−メトキシ−5’−メチルフェニル)フタリド、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2’,4’−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−(2’−メトキシ−4’−ジメチルアミノフェニル)−3−(2’−ヒドロキシ−4’−クロル−5’−メチルフェニル)フタリド、3−モルホリノ−7−(N−プロピル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−トリフルオロメチルアニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロロ−7−(N−ベンジル−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン、3−ピロリジノ−7−(ジ−p−クロルフェニル)メチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−5−クロル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−(N−エチル−p−トルイジノ)−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(o−メトキシカルボニルフェニルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−5−メチル−7−(α−フェニルエチルアミノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ピペリジノフルオラン、2−クロロ−3−(N−メチルトルイジノ)−7−(p−n−ブチルアニリノ)フルオラン、3−(N−ベンジル−N−シクロヘキシルアミノ)−5,6−ベンゾ−7−α−ナフチルアミノ−4’,0−ブロモフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−メシチジノ−4’,5’−ベンゾフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2’,4’−ジメチルアニリノ)フルオラン、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−{1,1−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル}フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−{1,1−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル}−6−ジメチルアミノフタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1−フェニルエチレン−2−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル−3−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1−p−クロロフェニルエチレン−2−イル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4’−ジメチルアミノ−2’−メトキシ)−3−(1”−p−ジメチルアミノフェニル−1”−p−クロロフェニル−1”,3”−ブタジエン−4”−イル)ベンゾフタリド、3−(4’−ジメチルアミノ−2’−ベンジルオキシ)−3−(1”−p−ジメチルアミノフェニル−1”−フェニル−1”,3”−ブタジエン−4”−イル)ベンゾフタリド、3−ジメチルアミノ−6−ジメチルアミノ−フルオレン−9−スピロ−3’−(6’−ジメチルアミノ)フタリド、3,3−ビス{2−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−(p−メトキシフェニル)エテニル}−4,5,6,7−テトラクロロフタリド、3−ビス{1,1−ビス(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル}−5,6−ジクロロ−4,7−ジブロモフタリド、ビス(p−ジメチルアミノスチリル)−1−ナフタレンスルホニルメタン、3−(N−メチル−N−プロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリドフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,6−ビス(ジメチルアミノ)フルオランスピロ(9,3’)−6’−ジメチルアミノフタリド、3−ジエチルアミノ−6−クロル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−(2−エトキシプロピル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−メシチジノ−4’,5’−ベンゾフルオラン、3−N−メチル−N−イソブチル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−N−エチル−N−イソアミル−6−メチル−7−アニリノフルオラン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
前記顕色剤としては、特に制限はなく、公知の電子受容性化合物の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノール性化合物、チオフェノール性化合物、チオ尿素誘導体、有機酸又はその金属塩等が挙げられる。該顕色剤としては、例えば、4,4’−イソプロピリデンビスフェノール、3,4’−イソプロピリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(o−メチルフェノール)、4,4’−セカンダリーブチリデンビスフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(o−ターシャリーブチルフェノール)、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、4,4’−イソプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−ターシャリーブチル−2−メチル)フェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−ターシャリーブチルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、4,4’−チオビス(6−ターシャリーブチル−2−メチル)フェノール、4,4’−ジフェノールスルホン、4,2’−ジフェノールスルホン、4−イソプロポキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−ベンジロキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジフェノールスルホキシド、p−ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、プロトカテキュ酸ベンジル、没食子酸ステアリル、没食子酸ラウリル、没食子酸オクチル、1,7−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3,5−ジオキサヘプタン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3−オキサヘプタン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−プロパン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−ターシャリーブチルフェノール)、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)−2−ヒドロキシプロパン、N,N’−ジフェニルチオ尿素、N,N’−ジ(m−クロロフェニル)チオ尿素、サリチルアニリド、5−クロロ−サリチルアニリド、サリチル−o−クロロアニリド、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、チオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、2−アセチルオキシ−3−ナフトエ酸の亜鉛塩、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ヒドロキシナフトエ酸の亜鉛、アルミニウム、カルシウム等の金属塩、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチルエステル、ビス−(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジルエステル、4−{β−(p−メトキシフェノキシ)エトキシ}サリチル酸、1,3−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、1,4−ビス(4−ヒドロキシクミル)ベンゼン、2,4’−ジフェノールスルホン、3,3’−ジアリル−4,4’−ジフェノールスルホン、α,α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−α−メチルトルエンチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールS、4,4’−チオビス(2−メチルフェノール)、3,4−ヒドロキシ−4’−メチル−ジフェニルスルホン、4,4’−チオビス(2−クロロフェノール)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
前記顕色剤の前記感熱記録層における添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記発色剤1質量部に対して1質量部〜20質量部が好ましく、2質量部〜10質量部がより好ましい。
【0076】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール、澱粉又はその誘導体;メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸三元共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子;ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリブチルメタクリレート、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のエマルジョン;スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリル系共重合体等のラテックス類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
前記感熱記録層には、填料として種々の熱可融性物質を使用することができる。該熱可融性物質としては、例えば、ステアリン酸、ベヘン酸等の脂肪酸類、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アミド類、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類、p−ベンジルビフェニル、ターフェニル、トリフェニルメタン、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、β−ベンジルオキシナフタレン、β−ナフトエ酸フェニルエステル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸メチルエステル、ジフェニルカーボネート、テレフタル酸ジベンジルエステル、テレフタル酸ジメチルエステル、1,4−ジメトキシナフタレン、1,4−ジエトキシナフタレン、1,4−ジベンジルオキシナフタレン、1,2−ビス(フェノキシ)エタン、1,2−ビス(3−メチルフェノキシ)エタン、1,2−ビス(4−メチルフェノキシ)エタン、1,4−ビス(フェノキシ)ブタン、1,4−ビス(フェノキシ)−2−ブテン、1,2−ビス(4−メトキシフェニルチオ)エタン、ジベンゾイルメタン、1,4−ビス(フェニルチオ)ブタン、1,4−ビス(フェニルチオ)−2−ブテン、1,2−ビス(4−メトキシフェニルチオ)エタン、1,3−ビス(2−ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、p−(2−ビニルオキシエトキシ)ビフェニル、p−アリールオキシビフェニル、p−プロパギルオキシビフェニル、ジベンゾイルオキシメタン、1,3−ジベンゾイルオキシプロパン、ジベンジルジスルフィド、1,1−ジフェニルエタノール、1,1−ジフェニルプロパノール、p−(ベンジルオキシ)ベンジルアルコール、1,3−ジフェノキシ−2−プロパノール、N−オクタデシルカルバモイル−p−メトキシカルボニルベンゼン、N−オクタデシルカルバモイルベンゼン、蓚酸ジベンジルエステル、1,5−ビス(p−メトキシフェニルオキシ)−3−オキサペンタンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0078】
前記感熱記録層には、更に必要に応じて、各種補助添加成分、例えば、界面活性剤、滑剤等を併用することができる。該滑剤としては、例えば、高級脂肪酸又はその金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル、動物性ワックス、植物性ワックス、鉱物性ワックス、石油系ワックス、などが挙げられる。
【0079】
前記感熱記録層の形成方法としては、特に制限はなく、一般に知られている方法により形成することができ、例えば、ロイコ染料、顕色剤を別々に結合剤、その他の成分と共に、ボールミル、アトライター、サンドミルなどの分散機により、分散粒径が1μm〜3μmになるまで粉砕分散した後、必要に応じて填料、熱可融性物質(増感剤)分散液等と共に、一定処方で混合して感熱記録層塗布液を調製し、支持体上に塗布することによって感熱記録層を形成することができる。
前記感熱記録層の厚みは、前記感熱記録層の組成や感熱性粘着材料の用途等により異なり一概には規定できないが、1μm〜50μmが好ましく、3μm〜20μmがより好ましい。
【0080】
〔熱転写記録用又はインクジェット記録用の感熱性粘着材料〕
前記熱転写記録用の感熱性粘着材料における熱転写記録用インク受容層又インクジェット記録用の感熱性粘着材料におけるインク受容層は、フィラー、バインダー樹脂、耐水化剤を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0081】
前記フィラーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、水酸化アルミニウム、クレー、焼成クレー、ケイ酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、表面処理された炭酸カルシウムやシリカ、尿素−ホルマリン樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合体、ポリスチレン等の微粉末などが挙げられる。
【0082】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知の水溶性樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール、デンプン又はその誘導体、メトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタクリル酸三元共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン−無水マレイン共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子化合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記インク受容層における前記フィラーと水溶性樹脂との割合は、耐ブロッキング性に関わり、その含有質量比(固形分)は、前記フィラー1に対して、水溶性樹脂0.1〜0.2が好ましい。
【0083】
前記耐水化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、クロムミョウバン、メラミン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂などが挙げられる。
前記耐水化剤と前記水溶性樹脂の割合も耐ブロッキング性に関わり、その含有質量比(固形分)は、水溶性樹脂1に対して、耐水化剤0.3〜0.5が好ましい。このようにインク受容層はフィラー及び水溶性樹脂を、また更に、水溶性樹脂と耐水化剤を特定の割合で含有させて形成させるが、更に、インク受容層の表面をキャレンダーなどにより、平滑度500秒以上に処理することにより、上記フィラーによる効果に加えて印字品質を一層向上させることができる。
【0084】
<保護層>
前記保護層は、樹脂成分を含有してなり、更に必要に応じて有するポリビニルアルコールとヒドラジド化合物との組み合わせなどである。
これらの中でも、反応性カルボニル基を有するポリビニルアルコールと架橋剤としてヒドラジド化合物を含有する保護層は、極めて耐熱性、耐水性が高く圧力、温度、湿度の付加による影響を受け難いので、耐ブロッキング性を大きく向上させることができる。
【0085】
前記反応性カルボニル基を有するポリビニルアルコールは、反応性カルボニル基を有するビニルモノマーと脂肪酸ビニルエステルとを共重合して得た重合体を鹸化する等の公知の方法により製造することができる。該反応性カルボニル基を有するビニルモノマーとしては、エステル残基を有する基、アセトン基を有する基が挙げられるが、ジアセトン基を有するビニルモノマーが好ましく、具体的にはジアセトンアクリルアミドやメタジアセトンアクリルアミドが好ましい。前記脂肪酸ビニルエステルとしては、例えば蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられるが、これらの中でも、酢酸ビニルが特に好ましい。
【0086】
前記反応性カルボニル基を有するポリビニルアルコール(PVA)は、共重合可能な他のビニルモノマーを共重合したものであってもよい。これらの共重合可能なビニルモノマーとしては、例えばアクリル酸エステル、ブタジエン、エチレン、プロピレン、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、などが挙げられる。
前記反応性カルボニル基を有するPVA中の反応性カルボニル基の含有量は、ポリマー全体の0.5モル%〜20モル%が好ましく、耐水化を考慮すると2モル%〜10モル%がより好ましい。前記含有量が、2モル%より少ないと実用上耐水性が不十分となり、10モル%を超えてもそれ以上耐水化の向上が見られず高価になるだけなので経済的でない。また、前記反応性カルボニル基を有するPVAの重合度は300〜3,000が好ましく、500〜2,200がより好ましい。また、前記反応性カルボニル基を有するPVAの鹸化度は80%以上が好ましい。
【0087】
前記ヒドラジド化合物は、ヒドラジド基を持つものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カルボヒドラジド、蓚酸ジヒドラジド、蟻酸ヒドラジド、酢酸ヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、安息香酸ヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,7−ナフトエ酸ジヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐水性や安全性の面からアジピン酸ジヒドラジドが特に好ましい。
前記ヒドラジド化合物の含有量は、前記反応性カルボニル基を有するポリビニルアルコール100質量部に対し、5質量部〜40質量部が好ましく、15質量部〜25質量部がより好ましい。
【0088】
前記保護層には、フィラーを含有することが好ましい。該フィラーは塩基性のものがよく、その例としては、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、タルク、アルカリ性の珪酸類等が挙げられるが、サーマルヘッドとのマッチング(カス付着)等から水酸化アルミニウムと炭酸カルシウムが好ましく、適度な水溶性によるpHコントロールを考慮すると特に水酸化アルミニウムが好ましい。前記感熱発色層に含有されるフィラーとしては公知のものが使用でき、その例としては、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、シリカ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、アルミナ、クレー等の無機顔料又は公知の有機顔料などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、耐水性(耐水剥がれ性)を考慮すると酸性顔料(水溶液中で酸性を示すもの)であるシリカ、カオリン、アルミナが好ましく、発色濃度の点からシリカが特に好ましい。
【0089】
前記保護層の形成方法としては、特に制限はなく、一般に知られている方法により形成することができるが、例えば、常法により保護層塗布液を調製し、前記記録層上に塗布することによって保護層を形成することができる。
前記保護層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.0μm〜7.0μmが好ましい。
【0090】
前記支持体と前記感熱記録層との間には、更に必要に応じて、前記中間層などを設けることもできる。前記中間層を構成する成分としては、前記の中空粒子を含む顔料、結合剤、熱可融性物質、界面活性剤などを用いることができる。
【0091】
本発明の感熱性粘着材料は、その感熱性粘着層の熱活性化時(加熱時)の前又は後でカットされて好適に使用することができ、この場合、該感熱性粘着材料に、予め切れ目が形成されていてもよい。前記感熱性粘着材料を、ラベル、タグ等の様々な用途に好適に用いることができる点で有利である。
本発明の感熱性粘着材料の形状としては、特に制限はなく、ラベル状、シート状、ラベルシート状、ロール状、などが好適に挙げられる。これらの中でも、利便性、保管場所、取り扱い性の点から円筒状の芯材に巻き取って、長尺状でロール状に巻かれて保管されるのが好ましい。
【0092】
本発明の感熱性粘着材料が貼付される被着体としては、特に制限はなく、目的に応じてその大きさ、形状、構造、材質等を適宜選択することができるが、前記材質としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、アクリル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、ナイロン等の樹脂板;SUS、アルミニウム等の金属板;封筒、ダンボール等の紙製品;ポリオレフィン製のラップ類;ポリ塩化ビニル製のラップ類;ポリエチエレン製不織布(封筒等)、などが好適に挙げられる。
【0093】
本発明の感熱性粘着材料における前記感熱性粘着層を熱活性化する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、熱風による活性化方法、熱ロールによる活性化方法、サーマルヘッドによる活性化方法、などが挙げられる。これらの中でも、サーマルヘッドによる活性化方法が好ましく、本発明の感熱性粘着材料の熱活性化方法が特に好ましい。この場合、既存の感熱記録プリンタ装置を用いて前記感熱粘着材料の両面を加熱することにより、前記感熱記録層への記録と、前記感熱性粘着層の熱活性化を行うことができる点で有利である。
【0094】
本発明の前記感熱性粘着材料は、本発明の前記感熱性粘着剤を用いることにより、低温環境でも室温環境でも優れた粘着力が発現でき、ダンボール等の粗面被着体に対する粘着力が強く、かつ耐ブロッキング性も良好で保存性に優れる感熱性粘着材料を得ることができる。また、支持体の片面に記録層を塗布し、他方の面に本発明の前記感熱性粘着剤を塗布することにより、ダンボール等の粗面被着体に対する低温(0℃)環境から高温(40℃)環境における粘着力が強く、サーマルヘッドによる粘着性の発現が可能で、かつ耐ブロッキング性も良好な記録用の感熱性粘着材料を得ることができる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下に示す部及び%はいずれも質量基準である。
【0096】
(合成例1)
−高分子乳化剤の合成−
窒素ガス導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた四つ口フラスコ内に、ポリオキシエチレンフェニルエーテル系の反応性乳化剤(商品名:アクアロンRN−50、第一工業製薬株式会社製)を固形分換算で25部、スチレン12.5部、メタクリル酸メチル12.5部、メタクリル酸40部、及びスチレンスルホン酸ソーダ10部を仕込み、更に水20部を加えて前記仕込み成分を透明な均一系とした。次いで、これにドデカンチオール1部、ベンゾイルパーオキシド2部、及び水300部を混合し重合を開始した。65℃で2時間撹拌した後、28%のアンモニア水29部を添加し、更に65℃で6時間撹拌して重合を終了した後に常温まで冷却した。不揮発分22.5%、質量平均分子量32,000の高分子乳化剤の分散液を得た。
【0097】
(合成例2)
−高分子乳化剤の合成−
窒素ガス導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた四つ口フラスコ内に、ポリオキシエチレンフェニルエーテル系の反応性乳化剤(商品名:アクアロンRN−50、第一工業製薬株式会社製)を固形分換算で25部、スチレン12.5部、メタクリル酸メチル12.5部、メタクリル酸40部、及びスチレンスルホン酸ソーダ10部を仕込み、更に水20部を加えて前記仕込み成分を透明な均一系とした。次いで、これにドデカンチオール1部、ベンゾイルパーオキシド2部、及び水300部を混合し重合を開始した。65℃で2時間撹拌した後、28%のアンモニア水29部を添加し、更に65℃で8時間撹拌後イソプロピルアルコール1部を添加して重合を終了した後に常温まで冷却した。不揮発分22.5%、質量平均分子量43,000の高分子乳化剤の分散液を得た。
【0098】
(製造例1)
−エマルジョン型粘着付与剤〔A−1〕の作製
軟化点125℃の重合ロジンエステル(粘着付与剤、荒川化学株式会社製、商品名:ペンセルD−125)100部を、トルエン60部に100℃にて約1時間溶解した後、80℃まで冷却した。次いで、合成例1で得られた高分子乳化剤を固形分換算で3部、及び水160部を添加し、75℃にて1時間強撹拌し予備乳化を行った。更に得られた予備乳化物を高圧乳化機(マントンガウリン社製)により300kg/cmの圧力で高圧乳化して乳化物を得た。次いで、減圧蒸留装置に前記乳化物200部を仕込み、50℃、100mmHgの条件下で8時間減圧蒸留を行い、固形分50%のエマルジョン型粘着付与剤〔A−1〕を作製した。
【0099】
(製造例2)
−エマルジョン型粘着付与剤〔A−2〕の作製−
製造例1において、軟化点125℃の重合ロジンエステル(粘着付与剤、荒川化学株式会社製、商品名:ペンセルD−125)を、軟化点135℃の重合ロジンエステル(粘着付与剤、荒川化学株式会社製、商品名:ペンセルD−135)に代えた以外は、製造例1と同様にして、固形分50%のエマルジョン型粘着付与剤〔A−2〕を作製した。
【0100】
(製造例3)
−エマルジョン型粘着付与剤〔A−3〕の作製−
製造例1において、軟化点125℃の重合ロジンエステル(粘着付与剤、荒川化学株式会社製、商品名:ペンセルD−125)を、軟化点160℃の重合ロジンエステル(粘着付与剤、荒川化学株式会社製、商品名:ペンセルD−160)に代えた以外は、製造例1と同様にして、固形分50%のエマルジョン型粘着付与剤〔A−3〕を作製した。
【0101】
(製造例4)
−エマルジョン型粘着付与剤〔A−4〕の作製−
製造例1において、軟化点125℃の重合ロジンエステル(粘着付与剤、荒川化学株式会社製、商品名:ペンセルD−125)を、軟化点165℃の重合ロジンエステル(粘着付与剤、荒川化学株式会社製、商品名:ペンセルKK)に代えた以外は、製造例1と同様にして、固形分50%のエマルジョン型粘着付与剤〔A−4〕を作製した。
【0102】
(製造例5)
−エマルジョン型粘着付与剤〔A−5〕の作製−
製造例1において、軟化点125℃の重合ロジンエステル(粘着付与剤、荒川化学株式会社製、商品名:ペンセルD−125)を、軟化点150℃のテルペンフェノール(粘着付与剤、荒川化学株式会社製、商品名:タマノル803L)に代えた以外は、製造例1と同様にして、固形分50%のエマルジョン型粘着付与剤〔A−5〕を作製した。
【0103】
(製造例6)
−エマルジョン型粘着付与剤〔A−6〕の作製−
製造例1において、軟化点125℃の重合ロジンエステル(粘着付与剤、荒川化学株式会社製、商品名:ペンセルD−125)を、軟化点120℃のC9系石油樹脂(粘着付与剤、日本石油化学株式会社製、商品名:ネオポリマー120)に代えた以外は、製造例1と同様にして、固形分50%のエマルジョン型粘着付与剤〔A−6〕を作製した。
【0104】
(製造例7)
−エマルジョン型粘着付与剤〔A−7〕の作製−
製造例1において、高分子乳化剤を、低分子乳化剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、商品名:ネオゲンR、花王株式会社製)に変えた以外は、製造例1と同様にして、エマルジョン型粘着付与剤〔A−7〕を作製した。
【0105】
(製造例8)
−エマルジョン型粘着付与剤〔A−8〕の作製−
製造例3において、高分子乳化剤を、低分子乳化剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、商品名:ネオゲンR、花王株式会社製)に変えた以外は、製造例3と同様にして、エマルジョン型粘着付与剤〔A−8〕を作製した。
【0106】
(製造例9)
−エマルジョン型粘着付与剤〔A−9〕の作製−
製造例4において、高分子乳化剤を、低分子乳化剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、商品名:ネオゲンR、花王株式会社製)に変えた以外は、製造例4と同様にして、エマルジョン型粘着付与剤〔A−9〕を作製した。
【0107】
(製造例10)
−エマルジョン型粘着付与剤〔A−10〕の作製−
製造例6において、高分子乳化剤を、低分子乳化剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、商品名:ネオゲンR、花王株式会社製)に変えた以外は、製造例6と同様にして、エマルジョン型粘着付与剤〔A−10〕を作製した。
【0108】
(製造例11)
−エマルジョン型粘着付与剤〔A−11〕の作製−
製造例5において、合成例1の高分子乳化剤を、低分子乳化剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、商品名:ネオゲンR、花王株式会社製)に変えた以外は、製造例5と同様にして、エマルジョン型粘着付与剤〔A−11〕を作製した。
【0109】
(製造例12)
−エマルジョン型粘着付与剤〔A−12〕の作製
製造例1において、合成例1で得られた高分子乳化剤の代わりに合成例2で得られた高分子乳化剤を用いた以外は、製造例1と同様にして、エマルジョン型粘着付与剤〔A−12〕を作製した。
【0110】
(製造例13〜17)
−熱可塑性樹脂液(〔B−1液〕〜〔B−5液〕)の作製−
下記表1に示す組成のモノマー混合体(〔B−1〕〜〔B−5〕)を調製した。
次いで、下記組成の混合物を、撹拌しながら70℃で9時間かけて重合した。この共重合体を水酸化ナトリウム水溶液でpH7〜9に調整し、水蒸気蒸留にて未反応単量体等を除去し、水を添加して不揮発分を調整し、不揮発分50%の各共重合体エマルジョン〔熱可塑性樹脂液(〔B−1液〕〜〔B−5液〕)〕を調製した。
・水・・・170部
・乳化剤(三洋化成工業株式会社製、エレミノールES−70)・・・2.5部
・過硫酸カリウム・・・0.5部
・モノマー混合体(表1中の〔B−1〕〜〔B−5〕)・・・100部
【0111】
【表1】

【0112】
(製造例18)
−熱可塑性樹脂液〔B−6液〕の作製−
熱可塑性樹脂エマルジョン(アクリル酸−2−エチルヘキシル樹脂主成分、昭和高分子株式会社製、AP5570、固形分55%、ガラス転移温度(Tg)=−65℃)を用意した。
【0113】
(製造例19)
−固体可塑剤分散液〔C−1〕の調製−
下記組成からなる混合物を、体積平均粒径が1.0μmとなるようにサンドミルを用いて分散して、固体可塑剤分散液〔C−1〕を調製した。
・トリフェニルホスフィン(商品名:TPP、北興化学工業株式会社製)・・・30部
・ビニルアルコール及びアリルスルホン酸ナトリウム共重合体(商品名:L−3266、日本合成化学株式会社製、数平均分子量15,000、鹸化度88%)10%水溶液・・・15部
・アルキル−アリルスルホン酸塩(界面活性剤)・・・0.15部
・水・・・54.85部
【0114】
(製造例20)
−固体可塑剤分散液〔C−2〕の調製−
下記組成からなる混合物を、体積平均粒径が1.0μmとなるようにサンドミルを用いて分散して、固体可塑剤分散液〔C−2〕を調製した。
・2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(商品名:Evesorb73、台湾永光化学工業股分有限公司製)・・・30部
・ビニルアルコール及びアリルスルホン酸ナトリウム共重合体10%水溶液(商品名:L−3266、日本合成化学株式会社製、平均分子量15,000、鹸化度88%)・・・15部
・アルキル−アリルスルホン酸塩(商品名:Newcol−290M、日本乳化剤株式会社製)・・・0.15部
・水・・・54.85部
【0115】
(製造例21)
−固体可塑剤分散液〔C−3〕の調製−
下記組成からなる混合物を、体積平均粒径が1.0μmとなるようにサンドミルを用いて分散して、固体可塑剤分散液〔C−3〕を調製した。
・ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォネート(商品名:PRONOX1222、ソート社製)・・・30部
・ビニルアルコール及びアリルスルホン酸ナトリウム共重合体10%水溶液(商品名:L−3266、日本合成化学株式会社製、平均分子量15,000、鹸化度88%)・・・15部
・アルキル−アリルスルホン酸塩(商品名:Newcol−290M、日本乳化剤株式会社製)・・・0.15部
・水・・・54.85部
【0116】
(製造例22)
−中空アンダー層塗布液〔D−1液〕の調製−
・プラスチック球状中空粒子(アクリロニトリル/塩化ビニリデン/メタクリル酸メチル共重合体、固形分濃度41%、平均粒子径3.6μm、中空率90%)・・・14.6部
・熱可塑性樹脂液〔B−1液〕・・・24.0部
・界面活性剤(ダプロW−77、エレメンティスジャパン社製)・・・0.1部
・水・・・60.4部
上記組成からなる混合物を攪拌分散して、中空アンダー層塗布液〔D−1液〕を調製した。
【0117】
(製造例23)
−粘着アンダー層塗布液〔D−2液〕の調製−
下記組成の混合物を攪拌して、粘着アンダー層塗布液〔D−2液〕を調製した。
・熱可塑性樹脂液〔B−1液〕・・・100.0部
・界面活性剤(ダプロW−77、エレメンティスジャパン社製)・・・0.1部
【0118】
(実施例1)
−水分散型感熱性粘着剤液〔E−1液〕の調製−
・エマルジョン型粘着付与剤〔A−1液〕・・・8.1部
・熱可塑性樹脂液〔B−1液〕・・・8.1部
・固体可塑剤分散液〔C−1液〕・・・49.1部
・固体可塑剤分散液〔C−2液〕・・・32.7部
・水・・・2.0部
上記組成からなる混合物を攪拌して、水分散型感熱性粘着剤液〔E−1液〕を調製した。
【0119】
(実施例2)
実施例1において、エマルジョン型粘着付与剤〔A−1液〕を〔A−2液〕に変更した以外は、実施例1と同様にして、水分散型感熱性粘着剤液〔E−2液〕を調製した。
【0120】
(実施例3)
実施例1において、エマルジョン型粘着付与剤〔A−1液〕を〔A−3液〕に変更した以外は、実施例1と同様にして、水分散型感熱性粘着剤液〔E−3液〕を調製した。
【0121】
(実施例4)
実施例1において、エマルジョン型粘着付与剤〔A−1液〕を〔A−4液〕に変更した以外は、実施例1と同様にして、水分散型感熱性粘着剤液〔E−4液〕を調製した。
【0122】
(実施例5)
実施例1の組成を下記配合に変更した以外は、実施例1と同様にして、水分散型感熱性粘着剤液〔E−5液〕を調製した。
・エマルジョン型粘着付与剤〔A−3液〕・・・8.1部
・熱可塑性樹脂液〔B−1液〕・・・8.1部
・固体可塑剤分散液〔C−3液〕・・・81.8部
・水・・・2.0部
【0123】
(実施例6)
実施例1において、エマルジョン型粘着付与剤〔A−1液〕を〔A−5液〕に変更した以外は、実施例1と同様にして、水分散型感熱性粘着剤液〔E−6液〕を調製した。
【0124】
(実施例7)
実施例1において、エマルジョン型粘着付与剤〔A−1液〕を〔A−6液〕に変更した以外は、実施例1と同様にして、水分散型感熱性粘着剤液〔E−7液〕を調製した。
【0125】
(実施例8)
実施例1の組成を下記配合に変更した以外は、実施例1と同様にして、水分散型感熱性粘着剤液〔E−8液〕を調製した。
・エマルジョン型粘着付与剤〔A−1液〕・・・8.1部
・熱可塑性樹脂液〔B−2液〕・・・8.1部
・固体可塑剤分散液〔C−3液〕・・・49.1部
・固体可塑剤分散液〔C−2液〕・・・32.7部
・水・・・2.0部
【0126】
(実施例9)
実施例8において、熱可塑性樹脂液〔B−2液〕を、〔B−3液〕に変更した以外は、実施例8と同様にして、水分散型感熱性粘着剤液〔E−9液〕を調製した。
【0127】
(実施例10)
実施例8において、熱可塑性樹脂液〔B−2液〕を、〔B−4液〕に変更した以外は、実施例8と同様にして、水分散型感熱性粘着剤液〔E−10液〕を調製した。
【0128】
(実施例11)
実施例8において、熱可塑性樹脂液〔B−2液〕を、〔B−5液〕に変更した以外は、実施例8と同様にして、水分散型感熱性粘着剤液〔E−11液〕を調製した。
【0129】
(実施例12)
実施例1において、エマルジョン型粘着付与剤〔A−1液〕を〔A−12液〕に変更した以外は、実施例1と同様にして、水分散型感熱性粘着剤液〔E−12液〕を調製した。
【0130】
(比較例1)
実施例1において、エマルジョン型粘着付与剤〔A−1液〕を、〔A−7液〕に変更した以外は、実施例1と同様にして、水分散型感熱性粘着剤液〔E−15液〕を調製した。
【0131】
(比較例2)
実施例1において、エマルジョン型粘着付与剤〔A−1液〕を、〔A−8液〕に変更した以外は、実施例1と同様にして、水分散型感熱性粘着剤液〔E−16液〕を調製した。
【0132】
(比較例3)
実施例1において、エマルジョン型粘着付与剤〔A−1液〕を、〔A−9液〕に変更した以外は、実施例1と同様にして、水分散型感熱性粘着剤液〔E−17液〕を調製した。
【0133】
(比較例4)
実施例5において、エマルジョン型粘着付与剤〔A−3液〕を、〔A−8液〕に変更した以外は、実施例5と同様にして、水分散型感熱性粘着剤液〔E−18液〕を調製した。
【0134】
(比較例5)
実施例1において、エマルジョン型粘着付与剤〔A−1液〕を、〔A−10液〕に変更した以外は、実施例1と同様にして、水分散型感熱性粘着剤液〔E−19液〕を調製した。
【0135】
(比較例6)
実施例1において、エマルジョン型粘着付与剤〔A−1液〕を、〔A−11液〕に変更した以外は、実施例1と同様にして、水分散型感熱性粘着剤液〔E−20液〕を調製した。
【0136】
(実施例13)
<感熱記録紙の作製>
−非発泡性断熱層形成用塗布液[F液]の調製−
下記組成の混合物を攪拌分散して非発泡性断熱層形成用塗布液[F液]を調製した。
・微小中空粒子分散体(塩化ビニリデン−アクリロニトリルを主体とする共重合樹脂、固形分濃度32%、平均粒子径3.6μm、中空度92%)・・・30部
・スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(ガラス転移温度(Tg)4℃、固形分濃度48%、日本エイアンドエル株式会社製)・・・10部
・界面活性剤(ダプロW−77、エレメンティスジャパン社製)・・・0.1部
・水・・・60部
【0137】
−発色剤分散液[G液]の調製−
下記組成の混合物を、体積平均粒径が1.5μm程度となるようにサンドミルを用いて分散して発色剤分散液[G液]を調製した。
・3−ジ−n−ブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン・・・20部
・ポリビニルアルコ−ル(10%水溶液、日本合成化学工業株式会社製、ゴーセランL−3266)・・・10部
・水・・・70部
【0138】
−顕色剤分散液[H液]の調製−
下記組成の混合物を、体積平均粒径が1.5μm程度となるようにサンドミルを用いて分散して顕色剤分散液[H液]を調製した。
・4−イソプロポキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン・・・10部
・ポリビニルアルコ−ル(10%水溶液、日本合成化学工業株式会社製、ゴーセランL−3266)・・・25部
・炭酸カルシウム(白石工業株式会社、CALSHITEC Bririant−15)・・・15部
・水・・・50部
【0139】
−感熱記録層塗布液[I液]の調製−
次に[G液]:[H液]=1:8(質量比)となるように混合攪拌して、感熱記録層塗布液[I液]を調製した。
【0140】
次に、平均坪量80g/mの基紙の表面に、上記[F液]を、乾燥後質量が4g/m2となるように塗布し、乾燥して非発泡性断熱層を設けた。その上に、上記[I液]を、乾燥後質量が5g/mとなるように塗布し、乾燥して感熱記録層を設けた。次いで、王研式平滑度が2,000秒になるようにスーパーキャレンダー処理して、感熱記録層塗布済み紙を得た。
【0141】
[保護層塗布液の調製]
−保護層一次分散液の調製−
下記組成の混合物を縦型サンドミルで体積平均粒径が1μm以下になるように粉砕し、分散化して保護層一次分散液を調製した。
・水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、H−42M)・・・20部
・ポリビニルアルコ−ル(10%水溶液、日本合成化学工業株式会社製、ゴーセランL−3266)・・・20部
・水・・・40部
【0142】
次いで、下記組成の混合物を混合し、分散化して保護層塗布液を調製した。
・保護層一次分散液・・・10部
・ポリビニルアルコ−ル(10%水溶液、日本合成化学工業株式会社製、ゴーセランL−3266)・・・20部
・エピクロヒドリン(12.5%水溶液)・・・5部
・ステアリン酸亜鉛の30%分散液・・・2部
【0143】
−感熱記録紙の作製−
次に、上記保護層塗布液を、前記感熱発色層塗布済み紙上に、乾燥塗布量が3.0g/mになるように塗工し、乾燥した。その後、王研式平滑度が2,000秒になるようにスーパーキャレンダー処理して、感熱記録紙を作製した。
前記感熱記録紙における感熱発色層を有さない側の面に、水分散型感熱性粘着剤液〔E−1液〕を乾燥付着量が15g/mとなるように塗布し、乾燥して感熱性粘着層を形成した。以上により、実施例13の感熱性粘着材料を作製した。
【0144】
(実施例14)
実施例13において、水分散型感熱性粘着剤液〔E−1液〕を、〔E−2液〕に変えた以外は、実施例13と同様にして、実施例14の感熱性粘着材料を作製した。
【0145】
(実施例15)
実施例13において、水分散型感熱性粘着剤液〔E−1液〕を、〔E−3液〕に変えた以外は、実施例13と同様にして、実施例15の感熱性粘着材料を作製した。
【0146】
(実施例16)
実施例13において、水分散型感熱性粘着剤液〔E−1液〕を、〔E−4液〕に変えた以外は、実施例13と同様にして、実施例16の感熱性粘着材料を作製した。
【0147】
(実施例17)
実施例13において、水分散型感熱性粘着剤液〔E−1液〕を、〔E−5液〕に変えた以外は、実施例13と同様にして、実施例17の感熱性粘着材料を作製した。
【0148】
(実施例18)
実施例13において、水分散型感熱性粘着剤液〔E−1液〕を、〔E−6液〕に変えた以外は、実施例13と同様にして、実施例18の感熱性粘着材料を作製した。
【0149】
(実施例19)
実施例13において、水分散型感熱性粘着剤液〔E−1液〕を、〔E−7液〕に変えた以外は、実施例13と同様にして、実施例19の感熱性粘着材料を作製した。
【0150】
(実施例20)
実施例13において、水分散型感熱性粘着剤液〔E−1液〕を、〔E−8液〕に変えた以外は、実施例13と同様にして、実施例20の感熱性粘着材料を作製した。
【0151】
(実施例21)
実施例13において、水分散型感熱性粘着剤液〔E−1液〕を、〔E−9液〕に変えた以外は、実施例13と同様にして、実施例21の感熱性粘着材料を作製した。
【0152】
(実施例22)
実施例13において、水分散型感熱性粘着剤液〔E−1液〕を、〔E−10液〕に変えた以外は、実施例13と同様にして、実施例22の感熱性粘着材料を作製した。
【0153】
(実施例23)
実施例13において、水分散型感熱性粘着剤液〔E−1液〕を、〔E−11液〕に変えた以外は、実施例13と同様にして、実施例23の感熱性粘着材料を作製した。
【0154】
(実施例24)
実施例13において作製した前記感熱記録紙における感熱発色層を有さない側の面に、中空アンダー層塗布液(D−1液)を付着量5g/mとなるように塗布し、乾燥した中空アンダー層を設けた上に感熱性粘着層を設けた以外は、実施例13と同様にして、実施例24の感熱性粘着材料を作製した。
【0155】
(実施例25)
実施例13において作製した前記感熱記録紙における感熱発色層を有さない側の面に、粘着アンダー層塗布液(D−2液)を付着量20g/mとし、中空アンダー層塗布液(D−1液)を付着量2g/mとなるように順次塗布し、乾燥させて粘着アンダー層と中空アンダー層を形成した以外は、実施例13と同様にして、実施例25の感熱性粘着材料を作製した。
【0156】
(実施例26)
実施例13において、水分散型感熱性粘着剤液〔E−1液〕を、〔E−12液〕に変えた以外は、実施例13と同様にして、実施例26の感熱性粘着材料を作製した。
【0157】
(比較例7)
実施例13において、水分散型感熱性粘着剤液〔E−1液〕を、〔E−15液〕にした以外は、実施例13と同様にして、比較例7の感熱性粘着材料を作製した。
【0158】
(比較例8)
実施例13において、水分散型感熱性粘着剤液〔E−1液〕を、〔E−16液〕に変えた以外は、実施例13と同様にして、比較例8の感熱性粘着材料を作製した。
【0159】
(比較例9)
実施例13において、水分散型感熱性粘着剤液〔E−1液〕を、〔E−17液〕に変えた以外は、実施例13と同様にして、比較例9の感熱性粘着材料を作製した。
【0160】
(比較例10)
実施例13において、水分散型感熱性粘着剤液〔E−1液〕を、〔E−18液〕に変えた以外は、実施例13と同様にして、比較例10の感熱性粘着材料を作製した。
【0161】
(比較例11)
実施例13において、水分散型感熱性粘着剤液〔E−1液〕を、〔E−19液〕に変えた以外は、実施例13と同様にして、比較例11の感熱性粘着材料を作製した
【0162】
(比較例12)
実施例13において、水分散型感熱性粘着剤液〔E−1液〕を、〔E−20液〕に変えた以外は、実施例13と同様にして、比較例12の感熱性粘着材料を作製した。
【0163】
ここで、実施例13〜26及び比較例7〜12の各感熱性粘着材料の内容をまとめて、下記表2に示す。
【0164】
【表2】

【0165】
次に、実施例13〜26及び比較例7〜12の各感熱性粘着材料について、以下のようにして、粘着特性及び耐ブロッキング性の評価を行った。
【0166】
<粘着特性の評価>
得られた各感熱性粘着材料を40mm×150mmの長方形にカットし、感熱印字装置(大倉電気株式会社製、TH−PMD)を用いて、ヘッド条件:エネルギー0.50mJ/dot、印字スピード:4ms/line、プラテン圧:6kgf/lineの条件にて、感熱性粘着シートを熱活性化させた。次いで、0℃、5℃、22℃、及び40℃の4環境条件下に1日放置したダンボールに加圧2kgのゴムローラーで長手方向に貼り付けて、各温度環境下に1日間保管した後に剥離角度180度、剥離速度300mm/minの条件で剥離させた。
その時の粘着力をフォースゲージ(MODEL DPS−5、IMADA社製)で測定し、0.1秒間隔でデータを読み取り平均化した数値で示した。結果を表4に示した。単位はN/40mmであった。
なお、粘着力ランクは、以下の判定基準により行った。
◎:10N/40mm以上
○:5N/40mm以上
△:3N/40mm以上5N/40mm未満
×:3N/40mm以下
【0167】
<耐ブロッキング性の評価>
得られた各感熱性粘着材料における感熱性粘着層面と反対側の面(感熱記録層)を接触させ、200g/cmの圧力を掛け、60℃、Dry条件下で1日間及び3日間放置した。その後、室温で放置後サンプルを剥がし、その時の耐ブロッキング性を表3に示すような基準で評価し、その結果を表4に示す。なお、本発明においては、ランク7以上が実用可能なレベルである。
【0168】
【表3】

【0169】
【表4】

表4の結果から、実施例13〜26では、粘着付与剤として高分子乳化剤の存在下で乳化して得られる粘着付与剤エマルジョンを用いることにより、耐ブロッキング性が向上することが分かった。
実施例13〜18では、粘着付与剤に重合ロジン又はテルペンフェノール樹脂を用いることで実施例19のC9系石油樹脂からなる粘着付与剤よりも粘着力が高く、耐ブロッキング性も優れていることが分かった。
実施例15と17を比較すると、実施例15ではトリフェニルホスフィンとベンゾトリアゾール化合物の混合物を使用したことで、実施例17に比べて0℃の粘着力に対して優れた効果を有することが分かった。
実施例13は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)が高いため、高温の粘着力が若干劣ることが分かった。
実施例23は、熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)が低いため、耐ブロッキング性がやや劣る結果となった。
また、実施例24及び25では、更にアンダー層を設けたことで粘着力を大幅に向上させることができた。
これに対し、比較例7〜12は、低分子乳化剤の存在下で乳化して得られる粘着付与剤エマルジョンを用いたため、耐ブロッキング性が劣ることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明の感熱性粘着剤は、ダンボール等の粗面被着体に対する粘着力が強く、経時的な粘着力低下も少なく、サーマルヘッドで低エネルギー活性が可能であり、かつ耐ブロッキング性も良好であるので、各種感熱性粘着材料として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも熱可塑性樹脂、固体可塑剤、及び粘着付与剤を含有してなり、
前記粘着付与剤が、高分子乳化剤の存在下で乳化させてなる粘着付与剤エマルジョンであることを特徴とする感熱性粘着剤。
【請求項2】
粘着付与剤エマルジョンが、重合ロジン及びテルペンフェノール樹脂のいずれかを含有する請求項1に記載の感熱性粘着剤。
【請求項3】
粘着付与剤エマルジョンにおける樹脂の軟化点が150℃以上である請求項2に記載の感熱性粘着剤。
【請求項4】
高分子乳化剤の質量平均分子量が、5,000〜40,000である請求項1から3のいずれかに記載の感熱性粘着剤。
【請求項5】
固体可塑剤が、下記構造式(1)から下記構造式(3)の少なくともいずれかで表される化合物である請求項1から4のいずれかに記載の感熱性粘着剤。
【化1】

ただし、前記構造式(1)中、R及びRは、互いに同一であってもよいし異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、及びα,α−ジメチルベンジル基のいずれかを表す。Xは、水素原子及びハロゲン原子のいずれかを表す。
【化2】

【化3】

【請求項6】
熱可塑性樹脂が、ガラス転移温度(Tg)が−70℃〜−30℃の(メタ)アクリル樹脂である請求項1から5のいずれかに記載の感熱性粘着剤。
【請求項7】
支持体と、該支持体上に請求項1から6のいずれかに記載の感熱性粘着剤からなる感熱性粘着層を有することを特徴とする感熱性粘着材料。
【請求項8】
感熱性粘着層と支持体の間にアンダー層を有する請求項7に記載の感熱性粘着材料。
【請求項9】
アンダー層が、中空粒子を含有する中空アンダー層である請求項8に記載の感熱性粘着材料。
【請求項10】
アンダー層が、粘着アンダー層と、中空粒子を含有する中空アンダー層とからなる請求項8に記載の感熱性粘着材料。
【請求項11】
ライン型サーマルヘッドによる加熱により粘着性が発現する請求項7から10のいずれかに記載の感熱性粘着材料。
【請求項12】
支持体の感熱性粘着層を有する面の反対側面に記録層を有する請求項7から11のいずれかに記載の感熱性粘着材料。

【公開番号】特開2010−59389(P2010−59389A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321174(P2008−321174)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】